説明

物質乱用の治療

本発明は薬物乱用および/またはその症候の治療、予防および/または緩和に有効な方法および組成物を提供する。特に、本発明は式(I)の化合物を含む組成物がかかる治療、予防および/または緩和に有用であることを示す。式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩は次のとおりであり、n、R、R、R、R、RおよびRは明細書に記載されるとおりである。
式(I):


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は2006年1月13日出願の米国仮出願番号60/759148号の優先権を主張するものであり、その内容を出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
(発明の分野)
本発明は物質乱用および/またはその症候の治療における化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
米国保健福祉省の薬物乱用・精神衛生管理庁により作成された薬物使用と健康に関する国民調査によれば、2003年にて、推定2160万人のアメリカ人(12歳以上の全人口の9.1%)が物質依存症または乱用であると分類された。このうち、310万人はアルコールと非合法ドラッグの両方の依存症であるかまたはその両方を乱用していると分類され、380万人はアルコールに依存も乱用もしていないが、非合法ドラッグの依存症であるかまたは乱用しており、そして1480万人は非合法ドラッグに依存も乱用もしていないが、アルコールの依存症であるかまたは乱用している。
【0004】
乱用される物質として、気分、考えまたは感情を変えるのに気張らしに使用されるもの(例えば、タバコ、アルコール等)、治療効果を得るために処方されるか、さもなければ投与されるが、その際に依存症を発現するもの(例えば、ビコジン(登録商標)、ロータブ(登録商標)、ロルセット(登録商標)、ペルコセット(登録商標)、ペルコダン(登録商標)、タイロックス(登録商標)、タイロックス(登録商標)、ヒドロコドン、オキシコンチン(登録商標)、メタドン、トラマドール等などの鎮痛剤、トランキライザー、興奮剤または鎮静剤)、および特定の生理学的作用または「高揚」を得る目的で不法に得られるもの(例えば、マリジュアーナ、ヘロイン、コカイン、LSD、PCPまたはメタンフェタミン等)が挙げられる。
【0005】
上記した乱用物質の使用を止めたいと思う多くの人は、1種または複数の依存性誘発の成分(例えば、オピオイド、ニコチン等)に対して中毒となっているため、止めることはできない。その上、物質乱用を治療することで、依存症が、依存誘発剤でもある他の物質の依存症に移行することも多い。たとえ治療に成功したとしても、有意かつ不快な離脱症状を生じることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
物質乱用の症状を治療するための改良された治療法に対する要求が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、離脱症状を含む、物質乱用および/またはその症候を治療するための方法および組成物を提供する。特に、本発明は、式I:
【化1】


[式中:
【化2】

は単結合または二重結合を示し;
nは1または2であり;
およびRは、各々独立して、ハロゲン、−CN、−R、−OR、−C1−6ペルフルオロアルキル、−OC1−6ペルフルオロアルキル、あるいはハロゲン、−R、−OR、−C1−6ペルフルオロアルキルまたは−OC1−6ペルフルオロアルキルから独立して選択される1ないし5個の基により置換されていてもよいフェニルであり;Rは、各々独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
およびRは、それらの結合する炭素原子と一緒になって、飽和または不飽和の4−8員の炭素環式環を形成する、ここで該環はハロゲン、−Rまたは−ORから独立して選択される1−3個の基で置換されていてもよく;
およびRは、各々独立して、−Rを意味する]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩が、物質乱用および/またはその症候を治療するのに有用であるという知見を含むものである。
【0008】
例えば、本発明は、治療有効量の式Iの化合物またはその医薬上許容される塩、プロドラッグもしくは代謝物を、それを必要とする個体に投与することを含む、方法を提供する。本発明はまた、式Iの化合物またはその医薬上許容される塩、および1種または複数の医薬上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む、物質乱用を治療するために処方される組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
1.化合物および定義
【0010】
上記したように、本発明は、離脱症状を含む、物質乱用の症状および/またはその症候を治療するための方法および組成物を提供する。
【0011】
一般に、本発明に従って有用な化合物またはその医薬上許容される塩は、式I:
【化3】


[式中:
【化4】

は単結合または二重結合を示し;
nは1または2であり;
およびRは、各々独立して、ハロゲン、−CN、−R、−OR、−C1−6ペルフルオロアルキル、−OC1−6ペルフルオロアルキル、あるいはハロゲン、−R、−OR、−C1−6ペルフルオロアルキルまたは−OC1−6ペルフルオロアルキルから独立して選択される1ないし5個の基により置換されていてもよいフェニルであり;Rは、各々独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
およびRは、それらの結合する炭素原子と一緒になって、飽和または不飽和の4−8員の炭素環式環を形成する、ここで該環はハロゲン、−Rまたは−ORから独立して選択される1−3個の基で置換されていてもよく;
およびRは、各々独立して、−Rを意味する]
で示される構造を有する。
【0012】
本明細書で使用される「アルキル」なる語は、限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはt−ブチルなどの直鎖および分岐鎖を包含する。特定の実施形態においては、「アルキル」なる語は炭素数1−3の直鎖または分岐鎖をいう。
【0013】
本明細書で使用される「ハロゲン」または「ハロ」なる語は、塩素、臭素、フッ素またはヨウ素をいう。
【0014】
本明細書で使用される「ペルフルオロアルキル」なる語は、アルキル基の水素原子がすべてフッ素原子と置換されている、本明細書にて定義されているアルキル基をいう。かかるペルフルオロアルキル基として−CFが挙げられる。
【0015】
本明細書で使用される「有効量」および「治療有効量」なる語は、患者に投与した場合に、その患者が患っている症状を少なくとも部分的に治療するのに効果的である、本発明の組成物の量をいう。
【0016】
「医薬上許容される塩」なる語は、式Iの化合物を、例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、桂皮酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、シュウ酸、プロピオン酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、グリコール酸、ピルビン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、サリチル酸、安息香酸、あるいは同様に既知の許容しうる酸などの有機または無機酸を用いて処理することより誘導される塩をいう。特定の実施形態において、本発明は式Iの化合物の塩酸塩を提供する。
【0017】
本明細書にて使用される「患者」なる語は哺乳動物をいう。特定の実施形態において、「患者」なる語はヒトをいう。
【0018】
本明細書で使用される「投与する」または「投与」なる語は、化合物または組成物を患者に直接投与するか、または体内にて等量の活性な化合物または物質を形成するであろう、該化合物のプロドラッグ誘導体またはアナログを患者に投与することをいう。
【0019】
本明細書で使用される「治療」または「治療すること」なる語は、その症状、あるいは1種または複数のその症候を部分的または完全に緩和する、阻害する、防止する、改善するおよび/または和らげることをいう。当業者であれば、物質乱用の症状が肉体的および/または精神的依存の症候を含むことが多いことが解るであろう。また、乱用物質が依存症の個体から撤収されると、該個体は、睡眠および気分障害、ならびに離脱症状として知られている、乱用物質の激しい熱望を含む特定の症候を発症することが多い。本発明は、物質乱用それ自体、依存症およびまた離脱症状の治療を包含する。
【0020】
「離脱症状」とは、関連する物質の投与を減らした場合、遅らせた場合、または停止した場合に生じる総称をいう。離脱症状の物質特異的症状は、社会、職場または他の活動する重要な地域で臨床的に重大な苦痛または障害の原因となる。これらの症状は一般的な病状に起因するものではなく、別の障害によってはうまく説明されない。離脱症状は、通常、必ずというわけではないが、物質依存症に付随している。
【0021】
離脱症状は種々の物質のいずれかを減らした際に起こりうる。例えば、ニコチンを含有する、タバコ製品の使用を中断すると、ニコチン離脱症状を発症する。個体は、限定されるものではないが、巻きタバコ、葉巻またはパイプの喫煙、あるいはタバコまたは噛みタバコの経口摂取または鼻腔内摂取を含む、何らかの形態でのタバコの使用を中断した結果として、ニコチンの離脱症状を経験することが多い。かかる経口または鼻腔内タバコとして、嗅ぎタバコおよび噛みタバコが挙げられる。ニコチン使用の中断またはニコチン使用量の減少は、24時間以内に、不快な気分、憂鬱な気分;眩暈(light−headedness);不眠症;興奮、欲求不満または怒り;不安;神経的震え;集中力の欠如;落ち着きのなさ;心拍数の減少;食欲増進または体重増;およびタバコまたはニコチンの切望を含む症候を伴うことが多い。これらの症状は、社会、職場または他の活動する重要な地域で臨床的に重大な苦痛または障害の原因となることが多い。本発明は、かかる症状が一般的な病状に起因するものではなく、別の障害によってはうまく説明されない場合で、ニコチンの離脱症状に起因する1種または複数の症状を緩和するのに用いるのが最も好ましい。本発明の方法はまた、喫煙をニコチン代替療法を使用して置き換えられている人、または部分的に置き換えられている人を支援するものでもある。かくして、かかる患者はその支援によりあらゆる形態のニコチンに対する依存症を軽減し、完全に排除することさえできる。
【0022】
オピオイドの投与、典型的には、注射または経口を介しての、喫煙または鼻腔内摂取を介しての自己投与の中断または軽減は、特徴的なオピオイド離脱症状を発症する。この離脱症状はまた、オピオイドを用いた後のナロキソンまたはナルトレキソンなどのオピオイドアンタゴニストの投与によっても惹起されうる。オピオイドの離脱症状はオピオイドアゴニスト作用とは略反対の症状により特徴付けられる。これらの離脱症状として、不安;落ち着きのなさ;背中および脚に多い筋肉痛;オピオイドに対する切望;敏感および痛みに対する感度の増大;不快な気分;吐き気または嘔吐;流涙;鼻漏(rhinorrhoea);乳頭拡張;立毛;発汗;下痢;あくび;発熱;および不眠症を挙げることができる。依存症が短期作用性オピオイド、例えばヘロインに対するものである場合、離脱症状はその最後の使用から通常6−24時間以内に起こるのに対して、長期作用性オピオイド、例えばメタドンの場合、その症状は出現にまで2−4日を要する。これらの症状は、社会、職場または他の活動する重要な地域で臨床的に重大な苦痛または障害の原因となることが多い。本発明は、かかる症状が一般的な病状に起因するものではなく、別の障害によってはうまく説明されない場合で、オピオイドの離脱症状に起因する1種または複数の症状を緩和するのに用いるのが最も好ましい。
【0023】
エタノール(エタノール含有飲料)の使用における中断または減少はエタノール中毒症状を発症させる。エタノール中毒症状は、エタノールの使用を止めてからまたは減少させてから4ないし12時間以内に、エタノールの血中濃度が急激に低下する症候により特徴付けられる。これらのエタノール中毒症候として、エタノールの切望、自律神経系の活動亢進(発汗または脈拍数が100以上など);手の震え;不眠症;吐き気;嘔吐;一過性視覚、触覚または聴覚の幻覚または錯覚;精神運動性激越;不安;および痙攣大発作が挙げられる。これらの症候は、社会、職場または他の活動する重要な地域で臨床的に重大な苦痛または障害の原因となることが多い。本発明は、かかる症候が一般的な病状に起因するものではなく、別の障害によってはうまく説明されない場合で、エタノール中毒に起因する1種または複数の症状を緩和するのに用いるのが最も好ましい。
【0024】
本明細書で使用する「罹患」または「罹る」なる語は、患者が1または複数の症状に罹患していると診断されているか、または罹患していると疑われることをいう。
【0025】
本明細書で使用する「物質乱用」なる語は、Task Force on Nomenclature and Statistics of the American Psychiatric Associationにより調製されたDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第4版(1994)(「DSM−IV」)に示される基準に基づいて定義されてもよい。物質乱用の特徴は、物質の反復使用と関連付けられる、再発性の有意な悪影響により顕在化される物質使用の不適応パターンである。DSM−IVに示されるように、物質乱用は、12ヶ月以内に生じる次の1種(または複数)の特徴により顕在化されるような、臨床的に重大な障害または苦痛に至る物質乱用の不適応パターンとして定義される:(1)職場、学校または家庭で主たる役割の義務を果たせない結果をもたらす再発性物質の使用;(2)身体を害する状況にある再発性物質の使用;(3)再発性物質関連の法的問題;および(4)物質の作用により惹起または悪化される持続的または再発的な社会的または対人的問題があるにも拘わらず、物質の使用を継続すること。加えて、DSM−IVでは、物質乱用の症候は物質依存症の基準に合致する必要はない。
【0026】
本明細書で使用する「物質依存症」なる語は、Task Force on Nomenclature and Statistics of the American Psychiatric Associationにより調製されたDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第4版(1994)(「DSM−IV」)に示される基準に基づいて定義されてもよい。DSM−IVに示される物質依存症の基準は、同じ12ヶ月以内のいずれの時点でも生じる、以下の群より選択される少なくとも3種の特徴により顕在化されるような、臨床的に重大な障害または苦痛に至る物質使用のパターンである:(1)(a)所望の効果を得るのに実質的に大量の物質を必要とするか;または(b)同じ量の物質を継続的に使用しても実質的に少ない効果しかない、かのいずれかで定義されるような耐性;(2)(a)特定の物質の特徴的な禁断徴候群;または(b)同じまたは密接に関連付けられる物質を摂取して禁断症候群を緩和または回避する、かのいずれかで示されるような離脱症状;(3)意図するよりも物質を多量に、または長期間にわたって摂取することが多い;(4)物質の使用を打ち切るかまたは調節しようと継続的な望ましいまたは無駄な努力をする;(5)物質を得るために、該物質を使用するために、あるいはその作用から回復するために、活動において多大な時間を要する;(6)物質の使用が原因で、重要な社会での、職場での、または余暇での活動を諦めるか、縮小する;(7)物質により惹起または悪化されると考えられる持続的または再発的な肉体的または精神的な問題があると解っているにも拘わらず、物質の使用を継続する。物質依存症は精神的依存を伴うことができる;すなわち、耐性または離脱症状の形跡があるか、または精神的依存はなく、その場合、耐性または離脱症状の痕跡は存在しない。DSM−IVは4種の症状の寛解を包含する。これらの型の寛解は、依存症の中断後に経過した時間、および依存症の基準に含まれる1種または複数の症状が継続して存在するかどうかに基づくものである。
【0027】
少なくとも1ヶ月で、12ヶ月に満たない間、全く依存症の症候と合致しない場合に、「早期の完全な寛解」なる修飾語句を用いる。
【0028】
少なくとも1ヶ月で、12ヶ月に満たない間、1種または複数の依存症の症候と合致するが、完全な依存症の基準に合致しない場合に、「早期の部分的な寛解」なる修飾語句を用いる。
【0029】
12ヶ月以上の間、いずれの時点でも、全く依存症の症候と合致しない場合に、「持続的な完全な寛解」なる語を用いる。
【0030】
12ヶ月以上の間、依存症の症候と合致しないが、1種または複数の依存症の症候と合致するならば、「持続的な部分的な寛解」なる語を用いる。
【0031】
対象を規定したアゴニスト療法に置き、依存症の症候と、少なくとも先月の療法の症候と合致しないならば、「アゴニスト療法での」なる語を用いる。それはまた、部分アゴニストを用いて依存症を治療される人にも適用される。
【0032】
対象が乱用物質とのアクセスが制限されている環境下にあり、少なくとも先月の間は依存症の症候と合致しないならば、「制御された環境下」なる語を用いる。
【0033】
「中断および離脱症状」なる語は、限定されるものではないが、DSM−IVにて特徴付けられる以下の症状を包含する:ニコチン離脱症状;特に限定されないニコチン関連の障害;精神的依存を伴うニコチン依存症;精神的依存を伴わないニコチン依存症;早期の完全な寛解のニコチン依存症;早期の部分的な寛解のニコチン依存症;持続的な完全な寛解のニコチン依存症;持続的な部分的な寛解のニコチン依存症;アゴニスト療法でのニコチン依存症;オピオイド離脱症状;特に限定されないオピオイド関連の障害;精神的依存を伴うオピオイド依存症;精神的依存を伴わないオピオイド依存症;早期の完全な寛解のオピオイド依存症;早期の部分的な寛解のオピオイド依存症;持続的な完全な寛解のオピオイド依存症;持続的な部分的な寛解のオピオイド依存症;アゴニスト療法でのオピオイド依存症;および制御された環境下にあるオピオイド依存症;エタノール離脱症状;精神的依存を伴うエタノール依存症;精神的依存を伴わないエタノール離脱症状;早期の完全な寛解のエタノール離脱症状;早期の部分的な寛解のエタノール離脱症状;持続的な完全な寛解のエタノール離脱症状;持続的な部分的な寛解のエタノール離脱症状;アゴニスト療法でのエタノール離脱症状;および制御された環境下にあるエタノール離脱症状を包含する。
【0034】
2.代表的な化合物の記載
特定の実施形態において、本発明は、物質乱用の1種または複数の症候および/またはその症状を治療するのに使用される、式I:
【化5】


[式中:
【化6】

は単結合または二重結合を示し;
nは1または2であり;
およびRは、各々独立して、ハロゲン、−CN、−R、−OR、−C1−6ペルフルオロアルキル、−OC1−6ペルフルオロアルキル、あるいはハロゲン、−R、−OR、−C1−6ペルフルオロアルキルまたは−OC1−6ペルフルオロアルキルから独立して選択される1ないし5個の基により置換されていてもよいフェニルであり;Rは、各々独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
およびRは、それらの結合する炭素原子と一緒になって、飽和または不飽和の4−8員の炭素環式環を形成する、ここで該環はハロゲン、−Rまたは−ORから独立して選択される1−3個の基で置換されていてもよく;
およびRは、各々独立して、−Rを意味する]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0035】
上記した式Iの化合物、または本明細書に記載のクラスおよびサブクラスの化合物は、2Cサブタイプの脳セロトニン受容体に対して親和性を有し、そのアゴニストまたは部分アゴニスト活性を示す。
【0036】
特定の実施形態において、
【化7】

は単結合を示す。他の実施形態において、
【化8】

は二重結合を示す。
【0037】
特定の実施形態において、式IのR基はR、OR、ハロゲン、シアノまたは−C1−3ペルフルオロアルキルである。他の実施形態において、式IのR基は水素、ハロゲン、シアノ、ORであり、ここでRはC1−3アルキルまたはトリフルオロメチルである。もう一つ別の実施形態によれば、式IのR基は水素である。
【0038】
特定の実施形態において、式IのR基はR、OR、ハロゲン、シアノまたは−C1−3ペルフルオロアルキルである。他の実施形態において、式IのR基は水素、ハロゲン、シアノ、−OR(ここで、Rは水素、C1−3アルキルまたはトリフルオロメチルである)である。もう一つ別の実施形態によれば、式IのR基は水素である。
【0039】
本発明の一の態様によれば、式IのRおよびR基の少なくとも1つは−OHである。本発明のもう一つ別の態様によれば、式IのRおよびR基は共に−OHである。
【0040】
もう一つ別の態様によれば、式IのRおよびR基の各々は水素である。さらにもう一つ別の態様によれば、式IのRおよびR基の各々は水素である。
【0041】
上記されるように、式IのRおよびR基は一緒になって飽和または不飽和の4−8員の炭素環式環を形成し、ここで該環はハロゲン、−RまたはORから独立して選択される1−3個の基で所望により置換されていてもよい。一の実施形態によれば、式IのRおよびR基は一緒になって飽和または不飽和の5−8員の炭素環式環を形成し、ここで該環はハロゲン、−RまたはORから独立して選択される1−3個の基で所望により置換されていてもよい。特定の実施形態において、式IのRおよびR基は一緒になって飽和または不飽和の5−6員の炭素環式環を形成し、ここで該環はハロゲン、−RまたはORから独立して選択される1−3個の基で所望により置換されていてもよい。
【0042】
上記したように、nは1または2である。したがって、本発明は、式I−aおよびI−b:
【化9】

I−a I−b
[式中、R、R、R、R、RおよびRは式Iの化合物について上記したとおりであり、上記および本明細書に記載のクラスおよびサブクラスに記載されている]
で示される化合物あるいはその医薬上許容される塩を用いる方法および組成物を提供する。
【0043】
他の実施形態において、nは1であり、式IのRおよびR基は一緒になって5員の炭素環式環を形成し、該化合物は式II:
【化10】

II
[式中、R、R、RおよびRは、各々、式Iの化合物について上記したとおりであり、上記および本明細書に記載のクラスおよびサブクラスに記載されている]
で示される化合物あるいはその医薬上許容される塩である。
【0044】
本発明の化合物は不斉炭素原子を含有し、かくしてエナンチオマーおよびジアステレオマーを含む、立体異性体が得られる。したがって、本発明はこれらすべての立体異性体ならびにその立体異性他の混合物に関すると考えられる。本願明細書を通して、本発明の生成物の名称は、不斉中心の絶対配置が示されておらず、個々の立体異性体ならびに立体異性体の混合物を包含することを意図とする。
【0045】
もう一つ別の態様によれば、本発明は式I−cまたはI−d:
【化11】

I−c I−d
[式中、n、R、R、R、R、RおよびRは、各々、式Iの化合物について上記したとおりであり、上記および本明細書に記載のクラスおよびサブクラスに記載されている]
で示されるいずれかの化合物を用いる方法および組成物を提供する。
【0046】
特定の実施形態において、本発明は、式III:
【化12】

III
[式中、R、R、RおよびRは、各々、式Iの化合物について上記したとおりであり、上記および本明細書に記載のクラスおよびサブクラスに記載されている]
で示される化合物あるいはその医薬上許容される塩を用いる方法および組成物を提供する。
【0047】
一のエナンチオマーが好ましい場合、ある種の実施形態において、そのエナンチオマーは対応するエナンチオマーを実質的に含まないで提供されてもよい。かくして、対応するエナンチオマーを実質的に含まない一のエナンチオマーは、分離方法を介して単離または分離されるか、あるいは対応するエナンチオマーを含まずに調製される化合物をいう。本明細書で使用する「実質的に含まない」とは、化合物が1のエナンチオマーにて有意に大きな割合で製造されることを意味する。特定の実施形態において、化合物は好ましいエナンチオマーが少なくとも約90重量%で製造される。本発明の他の実施形態において、該化合物は好ましいエナンチオマーが少なくとも約99重量%で製造される。好ましいエナンチオマーは、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、当業者に既知の方法を用いてラセミ混合物より単離され、キラル塩を形成かつ結晶化させてもよく、あるいは本明細書に記載の方法により調製してもよい。例えば、Jacquesら、Enantiomers, Racemates and Resolutions(Wiley Interscience、New York、1981);Wilen、S.H.ら、Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,E.L. Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill、NY、1962);Wilen, S.H. Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions 268頁(E.L. Eliel、Ed.、Univ. of Notre Dame Press、Notre Dame、IN 1972)を参照のこと。
【0048】
本発明の方法に有用な代表的化合物を以下の表1に示す。
表1.式Iの代表的化合物
4,5,6,7,9a,10,11,12,13,13a−デカヒドロ−9H−[1,4]ジアゼピノ[6,7,1−de]フェナントリジン;
2−ブロモ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
2−ブロモ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,13,14,14a−ドデカヒドロシクロヘプタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
2−クロロ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
2−クロロ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,13,14,14a−ドデカヒドロシクロヘプタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
2−フェニル−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
2−メトキシ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
1−フルオロ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
1−フルオロ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,13,14,14a−ドデカヒドロシクロヘプタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
1−(トリフルオロメチル)−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
1−フルオロ−2−メトキシ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
1−フルオロ−2−メトキシ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,13,14,14a−ドデカヒドロシクロ−ヘプタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
4,5,6,7,9,9a,10,11,12,13,14,14a−ドデカヒドロシクロヘプタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
4,5,6,7,9,9a10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
(9aR,12aS)−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
(9aS,12aR)−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
(9aR,14aS)−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,13,14,14a−ドデカヒドロシクロヘプタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;or
(9aS,14aR)−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,13,14,14a−ドデカヒドロシクロヘプタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
または上記した化合物の各々の塩酸塩を含む、その医薬上許容される塩。
【0049】
3.本発明の化合物を提供する一般的方法
本発明に従って使用するための式Iの化合物は、2003年4月24日出願の米国特許出願番号10/422524、および2005年11月4日出願の米国特許出願番号11/267448に、ならびに2005年7月26日出願の米国仮特許出願番号60/702509および2005年10月17日出願の米国仮特許出願番号60/727606に詳細に記載されている方法を含む、いずれか利用可能な手段に従って得されるか、あるいは製造されてもよく、その各内容を出典明示により本明細書の一部とする。
【0050】
4.使用、処方および投与
本発明によれば、式Iの化合物は、例えば、リクレーション物質(例えば、アルコール、タバコ)、薬物(例えば、鎮痛剤[ビコジン(登録商標)、ロータブ(登録商標)、ロルセット(登録商標)、ペルコセット(登録商標)、ペルコダン(登録商標)、タイロックス(登録商標)、ヒドロコドン、オキシコンチン(登録商標)、メタドン、トラマドール等]、トランキライザー、興奮剤または鎮静剤)および非合法ドラッグ(例えば、マリジュアーナ、ヘロイン、コカイン、エクスタシー、LSD、PCPまたはメタンフェタミン等)を含む、種々の物質のいずれかについての依存症、離脱症状またはその症候を治療、防止または緩和するために使用され得る。
【0051】
本発明に従って物質乱用を評価するにおいて、例えば、National Survey on Drug Use and Health(NSDUH)を参考にしてもよく、非合法ドラッグ:マリジュアーナ、コカイン、ヘロイン、幻覚剤、吸入剤の使用、および処方型鎮痛薬、トランキライザー、興奮剤および鎮静剤の非医学的使用の9種の異なるカテゴリーに関する情報が得られる。これらのカテゴリーにおいて、ハシシはマリジュアーナに含まれ、クラックはコカインの一形態であると考えられる。LSD、PCP、ペヨーテ、メスカリン、マッシュルームおよび「エクスタシー」(MDMA)を含む、いくつかの薬物は幻覚剤のカテゴリーに分類される。吸入剤は種々の物質、例えば亜硝酸アミル、洗浄液、ガソリン、塗料および接着剤を包含する。4種のカテゴリーの処方型薬物(鎮静剤、トランキライザー、興奮剤および鎮静剤)は処方箋を介して、時に「路上」にて違法に利用可能な多種の薬物に及ぶものである。メタンフェタミンは興奮剤の一の型であると考えられる。応答者は、彼らのために処方されなかった薬物、またはその動機が経験またはフィーリングのためだけで服用した薬物の使用においてのみ報告することを要求される。店頭薬物および処方薬の合法的使用は含まれない。NSDUHの報告では、4種の処方型の薬物群を合し、「精神治療薬」と称されるカテゴリーにまとめている。
【0052】
NSDUHは、ビール、ワイン、ウイスキー、ブランデーおよび混合ドリンクなどのアルコール飲料の消費頻度に関する問題となる使用を通して、アルコールの乱用を分類する。分類されている飲料の広範囲に及ぶ種類の例示の一覧が問題の投与の前に応答者に与えられる。「飲酒」は、カンまたはビンのビール、1杯のワインまたはワインクーラー、1杯の酒、またはその中に酒の入った混合ドリンクとして定義される。応答者がドリンクを1口または2口しか飲まなかった時は消費と考えない。この報告では、アルコール使用の普及の評価を、男性および女性の両方について、すべての年齢を対象として以下に定義されるように主として3段階で報告する:
カーレント(Current)使用−過去30日で少なくとも1杯の飲酒(ビング使用およびヘービー使用を含む)
ビング(Binge)使用−過去30日で少なくとも1回同じ場面で5杯以上の飲酒(ヘービー使用を含む)
ヘービー(Heavy)使用−過去30日で少なくとも5日異なる日に同じ場面で5杯以上の飲酒
【0053】
NSDUHはまた、巻きタバコ、噛みタバコ、嗅ぎタバコおよびパイプを含む、タバコ製品の使用を特徴付ける。分析を目的として、噛みタバコおよび嗅ぎタバコについてのデータを「無煙タバコ」として一緒にする。巻きタバコの使用を「巻きタバコの一部または全部」を喫煙するものとして定義する。現行の巻きタバコの喫煙者の間でニコチン依存を決定するための問題もまたNSDUHに記載されている。ニコチン依存症はNicotine Dependence Syndrome Scale(NDSS)またはFagerstrom Test of Nicotine Dependence (FTND)から由来の基準に基づくものである。
【0054】
本発明は、患者、好ましくはヒトにおいて、上記した各々の症状を治療する方法であって、治療有効量の少なくとも1つの式Iの化合物またはその医薬上許容される塩を物質依存症または物質乱用に関与している、あるいは関与している疑いのある個体に、および/または物質離脱症状を患っている個体に投与することを含む、方法を提供する。
【0055】
特定の実施形態において、本発明の化合物は、アルコール依存症(例えば、習慣性の飲酒の治療、アルコール摂取の軽減の熱望および再発性予防を含む、アルコールの乱用、常用および/または依存症)および/またはタバコの乱用(例えば、喫煙の軽減の熱望および再発性予防を含む、喫煙常用、中断および/または依存症)を治療するのに有用である。
【0056】
5.医薬組成物
本発明はまた、式Iの少なくとも1つの化合物、またはその医薬上許容される塩、および1種または複数の医薬上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む、物質依存症または乱用、および/またはその症候を治療、予防または軽減するための投与用に処方された、組成物に関する。かかる医薬処方は、例えば、Remingtons Pharmaceutical Sciences、第17版、Alfonoso R. Gennaro編、Mack Publishing Company、Easton、PA(1985)(その出典を明示することで本明細書の一部とする)に記載されているような、許容される製薬手段により調製されてもよい。医薬上許容される担体は処方における他の成分と適合しうる担体であり、生物学的に許容されるものである。
【0057】
特定の実施形態において、式Iの化合物は組成物における唯一の薬理学的に活性な成分であり;他の実施形態においては、例えば、物質依存症または乱用の同じまたは異なる症候を治療するために1種または複数の他の薬剤が含まれている。
【0058】
本発明のある実施形態において、式Iの化合物を用いる療法を、教育修飾プログラムおよび/または行動修飾プログラムと同時に、連動して、および/またはその後で行い、物質依存症または乱用からの継続的節制を強化する。本発明の方法は、リハビリテーションまたは他の治療プログラムにて観察されることが多い離脱症状を治療するのに特に有用であり得る。したがって、該プログラムは教育および行動修飾を目的として焦点を当て、さらにはプログラム非達成の発生率を減少させることでより効果的とすることができる。
【0059】
式Iの化合物は、経口的または非経口的に、ニートで、あるいは慣用的な医薬担体と組み合わせて投与され得る。適用しうる固体担体として、矯味矯臭剤、滑沢剤、可溶化剤、沈殿防止剤、充填剤、滑剤、圧縮助剤、結合剤、錠剤崩壊剤、あるいはカプセル化物質としても作用しうる、1種または複数の物質を挙げることができる。粉末の場合、担体は微細化された固体であり、微細化された有効成分と混合される。錠剤の場合、有効成分は、圧縮特性を必須とする担体と適当な割合で混合され、所望の形状および大きさに圧縮される。散剤および錠剤は、好ましくは、99%までの有効成分を含有する。適当な固体担体として、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、ラクトース、デキストリン、澱粉、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂が挙げられる。
【0060】
液剤、懸濁液、エマルジョン、シロップおよびエリキシルを調製するのに液体担体を用いることができる。有効成分を、水、有機溶媒、その両者の混合液、または医薬上許容される油脂などの医薬上許容される液体担体に溶解させるか、または懸濁させることができる。液体担体は、例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味剤、矯味矯臭剤、沈殿防止剤、増粘剤、着色剤、粘度調節剤、安定化剤または浸透圧調節剤などの他の適当な医薬添加剤と含有しうる。経口および非経口投与用の液体担体の適当な例として、水(特に上記の添加剤、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を含有する)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコールを含む)およびその誘導体、ならびに油状物(例えば、分別ココヤシ油および落花生油)が挙げられる。非経口投与の場合、担体はまた、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルとすることができる。非経口投与用の滅菌液体形態の組成物においては滅菌液体担体が使用される。圧縮組成物用の液体担体はハロゲン化炭化水素または他の医薬上許容される噴射剤とすることができる。
【0061】
滅菌溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋肉内、腹腔内または皮下注射により投与することができる。滅菌溶液は静脈内投与することもできる。経口投与用の組成物は液体であるか、固体の形態であるかのいずれかである。
【0062】
式Iの化合物は通常の坐剤の形態にて直腸または膣を介して投与することができる。鼻腔内または気管支内吸入または注入による投与の場合、式Iの化合物は水性または部分水性溶液中に処方され、ついでそれはエアロゾルの形態にて利用され得る。式Iの化合物はまた、有効成分と、該有効成分に対して不活性であり、かつ皮膚に対して非毒性であり、全身性吸収用の該成分が皮膚を介して血流にデリバリーされることを可能とする、担体とを含有する経皮パッチを用いて経皮的に投与することもできる。担体は、クリームおよび軟膏、ペースト、ゲルおよび閉鎖装置などの種々の形態とすることができる。クリームおよび軟膏は粘性液体あるいは水中油滴型または油滴中水型のいずれかの半固体エマルジョンとすることができる。有効成分含有の石油または親水性の石油中に分散させた吸着性粉末からなるペーストも適している。担体と共にまたはなしで有効成分を含有するリザバーをカバーするか、有効成分を含有するマトリックスをカバーする半透膜などの、種々の閉鎖装置を用いて有効成分を血流に放出することができる。他の閉鎖装置は文献に記載されている。
【0063】
好ましくは、医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル、散剤、液剤、懸濁液、エマルジョン、顆粒または坐剤のような単位剤形のものである。かかる形態において、該組成物は適量の有効成分を含有する単位用量に細分化され;その単位剤形はパッケージされた組成物、例えばパケット散剤、バイアル、アンプル、予め充填されたシリンジまたは液体含有のサッシェであり得る。単位剤形は、例えば、カプセルまたは錠剤そのものであってもよく、あるいはパッケージ形態の適当な数のかかる組成物とすることもできる。
【0064】
患者に付与される式Iの化合物の量は、投与される物、投与の目的、例えば予防か治療か、患者の状態、投与方法等に応じて変化するであろう。治療への応用において、式Iの化合物は、あの症状の症候およびその合併症を治療するのに、あるいは少なくとも部分的に治療するのに十分な量にてその症状を患っている患者に提供される。このことを達成するのに適する量は、本明細書にて上記するような「治療有効量」である。特定のケースの治療にて使用される用量は顧問医が主観的に決定しなければならない。関与する可変因子として、特定の条件、患者の大きさ、年齢および応答パターンが挙げられる。物質依存症または乱用の治療は、顧問医の指針の下、主体となる薬物の投与と同じ方法を用いる。一般に、出発用量は一日当たり約0.5mgであり、一日当たり約500mgまで日毎に徐々に増加させ、患者にて所望の用量レベルを得る。本発明を実施する上で使用される式Iの化合物の適当な用量は、約0.5ないし約500mg、あるいは1mgないし500mgの範囲内にあると考えられる。
【0065】
特定の実施形態において、本発明は式Iの化合物のプロドラッグの使用に関する。本明細書にて使用される「プロドラッグ」なる語は、インビボにて代謝手段により(例えば、加水分解により)式Iの化合物に変換可能な化合物を意味する。種々の形態のプロドラッグは、例えば、Bundgaard(編)、Design of Prodrugs、Elsevier(1985);Widderら(編)、Methods in Enzymology、第4巻、Academic Press(1985);Krogsgaard−Larsenら(編)、「Design and Application of Prodrugs、Textbook of Drug Design and Development、第5章、113−191(1991)、Bundgaardら、Journal of Drug Delivery Reviews、8:1−38(1992)、Bundgaard、J. of Pharmaceutical Sciences、77:285(1988);およびHiguchiおよびStella(編) Prodrugs as Novel Drug Delivery Systems、American Chemical Society(1975)(その各々を出典明示により本明細書の一部とする)に記載されるに当該分野にて公知である。
【0066】
もう一つ別の態様によれば、本発明の化合物は、物質乱用を治療するのに有用な一または複数の薬剤と組み合わせて投与される。特定の実施形態において、本発明の化合物はタバコ乱用を治療するための一または複数の薬剤と組み合わせて投与される。かかる薬剤はニコチン受容体部分アゴニスト、塩酸ブプロピオン(Zyban(登録商標))およびニコチン代替治療薬を包含する。
【0067】
もう一つ別の実施形態によれば、本発明の化合物は、アルコール依存症を治療するための1種または複数の薬剤、例えばオピオイドアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソン、N−メチルナルトレキソン、ReVia(登録商標))、ナルメフェン、ジスルフィラム(Antabuse(登録商標))およびアカムプロサート(Campral(登録商標))と組み合わせて投与される。
【0068】
特定の実施形態において、一の化合物は、ベンゾジアゼピン、ベータブロッカー、クロニジン、カルバムアゼピン、プレガバリン、およびガバペンチン(Neurontin(登録商標))などのアルコールの離脱症状を軽減する一または複数の薬剤と組み合わせて投与される。本発明の他の実施形態において、本発明の化合物を用いる療法を、教育修飾プログラムおよび/または行動修飾プログラムと同時に、連動して、および/またはその後で行い、物質依存症または乱用からの継続的節制を強化する。本発明の方法は、リハビリテーションまたは他の治療プログラムにて観察されることが多い離脱症状を治療するのに特に有用であり得る。したがって、該プログラムは教育および行動修飾を目的として焦点を当て、さらにはプログラム非達成の発生率を減少させることでより効果的とすることができる。
【0069】
実施例
1.実施例1:ベンゾジアゼピン化合物を投与することでコカインの作用が阻害される
一例として(9aR、12aS)−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン塩酸塩(化合物1)を用いる。化合物1(1.7mg/kg、皮下)の存在または不存在下でラットにビヒクルまたはコカインのいずれかを投与した。投与(腹腔内および皮下)から一時間後、ラットをオープンフィールドに置いた。そこでは移動距離および区域交叉がエトビジョン(ethovision)プログラムにより記録された。
【表1】

【0070】
実験を開始する1時間前に動物を実験室1に連れてきた。オープンフィールドに置く1時間前にラットに化合物を注射した。ついで、ラットをオープンフィールドに置き、試験を五分間続けた。結果(図1)はコカイン(3mg/kg、腹腔内)が移動距離および区域交叉の回数の両方を増加させることを示した。化合物1(1.7mg/kg、皮下)は単独では自発運動に対して作用せず、コカインにより生じる過敏性を完全に反転させた。
【0071】
2.実施例2:アルコール摂取に対する式Iの化合物の効果
式Iの化合物の有用な薬理学的特性をさらに証明するために、化合物を全身投与させ、その効果をアルコール選択性(P)ラットにて測定する。その飲酒パターン故に、P動物はアルコール依存のヒトの状態に近い遺伝学を基礎とする有効なモデルを示すと思われる(McBrideら、Alcohol 7:199−205、1990;Lankfordら、Pharmacol. Biochem. Behav. 8:293−299,1991)。最大限好ましいアルコール濃度を4日間安定化させた後、試験化合物を、例えば、2.5および10mg/kgの用量にて、一日に二回、4日間連続して投与する。セイラインの対照注射は、このモデルのアルコール消費に対して効果がなく、その一方で式Iの化合物は、絶対量(g/kg)およびアルコールの液体全体に対する摂取の割合の両方にて、アルコールの摂取を減少させる。かくして、式Iの化合物はアルコールの摂取を減少させる。
【0072】
3.実施例3:付加的なアッセイ
当業者であれば、本発明の化合物の効能を本発明の方法にて試験するのに有用な付加的なアッセイを認識するであろう。そのような別の方法がPastor R. Couceyroら、「CART Peptides Modulate the Locomotor and Motivational Properties of Psychostimulants」JPET Fast Forward、2005年8月11日出版、DOI:10.1124/jpet.105.091678(その内容を出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0073】
本明細書にて引用されている、あるいは記載されている各特許、特許出願および刊行物の内容はすべて出典明示により本明細書の一部とする。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】コカインにより生じる過敏性が式Iの化合物により阻害されることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質乱用、依存症または離脱症状の1種または複数の症候に罹患しているあるいは罹りやすい患者を治療する方法であって、式I:
【化1】


[式中:
【化2】

は単結合または二重結合を示し;
nは1または2であり;
およびRは、各々独立して、ハロゲン、−CN、−R、−OR、−C1−6ペルフルオロアルキル、−OC1−6ペルフルオロアルキル、あるいはハロゲン、−R、−OR、−C1−6ペルフルオロアルキルまたは−OC1−6ペルフルオロアルキルから独立して選択される1ないし5個の基により置換されていてもよいフェニルであり;
Rは、各々独立して、水素またはC1−6アルキル基であり;
およびRは、それらの結合する炭素原子と一緒になって、飽和または不飽和の4−8員の炭素環式環を形成する、ここで該環はハロゲン、−Rまたは−ORから独立して選択される1−3個の基で置換されていてもよく;
およびRは、各々独立して、−Rを意味する]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩を該患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
およびRが、各々独立して、R、OR、ハロゲン、シアノまたは−C1−3ペルフルオロアルキルである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
およびRが、各々独立して、水素、ハロゲン、シアノ、OR(ここで、Rは水素、C1−3アルキルである)またはトリフルオロメチルである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
およびRの各々が水素である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
およびRが一緒になって飽和または不飽和の5−8員の炭素環式環を形成し、ここで該環は、ハロゲン、−RまたはORより独立して選択される1−3個の基で置換されていてもよい、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
およびRが一緒になって飽和または不飽和の5−6員の炭素環式環を形成し、ここで該環は、ハロゲン、−RまたはORより独立して選択される1−3個の基で置換されていてもよい、請求項5記載の方法。
【請求項7】
化合物が、式II:
【化3】

II
で示されるもの、またはその医薬上許容される塩である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
化合物が、式I−aまたはI−b:
【化4】

I−a I−b
で示されるもの、またはその医薬上許容される塩である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
化合物が、式I−cまたはI−d:
【化5】

I−c I−d
で示されるもの、またはその医薬上許容される塩である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
化合物が、式III:
【化6】

III
で示されるもの、またはその医薬上許容される塩である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
およびRの各々が水素である、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
化合物が、
4,5,6,7,9a,10,11,12,13,13a−デカヒドロ−9H−[1,4]ジアゼピノ[6,7,1−de]フェナントリジン;
2−ブロモ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
2−ブロモ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,13,14,14a−ドデカヒドロシクロヘプタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
2−クロロ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
2−クロロ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,13,14,14a−ドデカヒドロシクロヘプタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン塩酸塩;
2−フェニル−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
2−メトキシ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
1−フルオロ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
1−フルオロ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,13,14,14a−ドデカヒドロシクロヘプタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
1−(トリフルオロメチル)−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
1−フルオロ−2−メトキシ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
1−フルオロ−2−メトキシ−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,13,14,14a−ドデカヒドロシクロ−ヘプタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
4,5,6,7,9,9a10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
4,5,6,7,9,9a,10,11,12,13,14,14a−ドデカヒドロシクロヘプタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
(9aR,12aS)−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
(9aS,12aR)−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,12a−デカヒドロシクロペンタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
(9aR,14aS)−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,13,14,14a−ドデカヒドロシクロヘプタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;または
(9aS,14aR)−4,5,6,7,9,9a,10,11,12,13,14,14a−ドデカヒドロシクロヘプタ[c][1,4]ジアゼピノ[6,7,1−ij]キノリン;
あるいはその医薬上許容される塩である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
物質乱用、依存症または離脱症状からの1種または複数の症候に罹患しているあるいは罹りやすい患者を治療する方法であって、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の化合物、および1種または複数の医薬上許容される担体を含む組成物を該患者に投与することを含む、方法。
【請求項14】
物質がリクレーション物質、薬理作用のある物質または非合法ドラッグである、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
物質が鎮痛薬、トランキライザー、興奮剤、タバコ製品または鎮静剤である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
物質がビコジン(登録商標)、ロータブ(登録商標)、ロルセット(登録商標)、ペルコセット(登録商標)、ペルコダン(登録商標)、タイロックス(登録商標)、ヒドロコドン、オキシコンチン(登録商標)、メタドン、トラマドール、マリジュアーナ、ヘロイン、コカイン、LSD、PCPまたはメタンフェタミンである、請求項14記載の方法。
【請求項17】
物質乱用、依存症または離脱症状からの1種または複数の症候を治療するための医薬の製造における、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の化合物または組成物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−523731(P2009−523731A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550448(P2008−550448)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/000959
【国際公開番号】WO2007/084424
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】