説明

物質変換のためのテイラー反応器

本発明によるテイラー反応器の択一的な第1の構成では、反応容積の横断面が、流入部から流出部へ向かって少なくとも最初は増大し、そして流出部の方向における該横断面増大率が少なくともロータの長さの一部にわたって減少するように反応器ハウジング(403)および/またはロータ(404)が形成されている。第1の構成に対して付加的にも使用され得る本発明の択一的な第2の構成では、反応容積が少なくともほぼ死容積なしに流出部に開口するようにロータの端面側の端部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理的および/または化学的な物質変換の経過中に反応媒体の粘度の増大が生じる、物理的および/または化学的な物質変換のためのテイラー反応器(Taylorreaktor)に関する。さらに本発明は、テイラー反応器を用いた物質変換のための新規方法ならびに該新規方法により製造された物質の使用に関する。
【0002】
テイラー渦流の条件下に物質の交換のために働くテイラー反応器は久しく以前より知られている。テイラー反応器の最初の構成は同心的に配置された2つの同軸的な円筒体から成っていて、両円筒体のうち外側の円筒体は定位置に静止しており、内側の円筒体は回転する。反応室としては、外側の円筒体の内周面と内側の円筒体の外周面との間に形成される容積が使用される。内側の円筒体の角速度が増大するにつれて、種々異なる一連の流動形態が出現する。これらの流動形態は無次元特性数、つまり「テイラー数Ta」により特徴付けられている。テイラー数は、ロータを形成する内側の円筒体の角速度に対して付加的に、反応容積中の流体の運動粘度と、ジオメトリ的なパラメータ、つまり内側円筒体の外側半径Ri、外側円筒体の内側半径とにも関連して次の式により求められる:
Ta=ωr−1(d/r)1/2 (I)
ただしd=r-rである。
【0003】
低い角速度では、層状のクエットの流れ(Couette-Stroemung)、つまり単純な剪断流が生じる。内側円筒体の回転速度が一層高められると、臨界値よりも上で、周方向に沿った軸線を有する交互に逆向きに回転する(反転する)渦が発生する。このいわゆる「テイラー渦」は回転対称的であって、トーラスのジオメトリ形状(テイラー渦リング)を有しており、しかも間隙幅にほぼ等しい大きさの直径を有している。2つの隣接した渦は渦ペア(渦対)または渦セル(渦細胞)を形成する。
【0004】
このような挙動は、外側円筒体が静止している状態で内側円筒体が回転させられると、内側円筒体の近傍の流体粒子が、内側円筒体から大きく遠ざけられている流体粒子よりも強力な遠心力にさらされることに基づいている。作用する遠心力のこのような差は、流体粒子を内側円筒体から外側円筒体へ向かって押しのける。遠心力は粘性力に抗して作用する。なぜならば、流体粒子の運動時に摩擦が克服されなければならないからである。回転速度が増大すると、遠心力も増大する。テイラー渦は、遠心力が、安定化作用を発揮する粘性力よりも大きくなると発生する。
【0005】
テイラー反応器に供給部と流出部とが装備され、そしてこのテイラー反応器が連続的に運転されると、小さな軸方向流を有するテイラー渦流が生ぜしめられる。このときに、各渦対は間隙を通って移動し、この場合、隣接し合った渦対の間では僅かな物質交換しか行われない。このような渦対の内部での混合は極めて高いが、それに対して渦対境界を越えた軸方向での混合は極めて僅かでしかない。したがって、1つの渦対は良好に混合された攪拌釜であるとみなすことができる。したがって、渦対が一定の滞留時間で理想的な攪拌釜のように間隙を通って移動することにより、流動システムは理想的な流動管のような挙動を示す。
【0006】
しかし、塊状重合の場合にそうであるように変換が進むにつれて流体の粘度νが軸方向の通流方向で強力に変化してしまうと、テイラー渦は減衰するか、または完全に消滅する。その場合、環状間隙内にはなおクエット(Couette)の流れ、つまり同心的な層流が観察され得る。この場合、テイラー反応器内の混合・流動特性の望ましくない変化が生じる。テイラー反応器はこの運転状態では、層状に通流される管の流動特性と比較可能となる流動特性を有しており、このことは著しい不都合となる。すなわち、たとえば塊状重合の場合には、望ましくない程広い分子量分布(Molmassenverteilung)と、ポリマーの不均一性とが生じる。さらに、不良な反応実施に基づき、著しい量の残留モノマーが生じる恐れがある。その場合、この残留モノマーはテイラー反応器から搬出されなければならない。また、ポリマーの凝集および沈積が生じる恐れもあり、このことは事情によっては反応器の閉塞または生成物出口の閉塞さえをも招く恐れがある。総合的に見て、比較的狭い分子量分布を有するポリマーのような所望の生成物はもはや得ることができなくなり、その性質プロフィールの点で前記要求には応えられないような生成物しか得られなくなる。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19828742号明細書に基づき公知のテイラー反応器では、この問題を解決するために、
a)外側の反応器壁と、この反応器壁内に位置する、同心的に配置されたロータと、反応器底部と、反応器カバーとが設けられていて、これらの構成部分が一緒になって環状間隙状の反応容積を規定しており、
b)反応用の原料(Edukt)を調量するための少なくとも1つの装置が設けられており、
c)生成物流出のための装置が設けられている。
【0008】
この場合、環状間隙状の反応容積は通流方向で拡幅されており、特に円錐状に拡幅されている。これにより、この公知のテイラー反応器は反応媒体中の運動粘度νの著しい増大時にテイラー流を維持する問題を実質的に解決することができる。
【0009】
この公知のテイラー反応器では、環状間隙状の反応容積が、同心的に配置されたロータと反応器底部と反応器カバーとにより規定される。このことに起因して、生成物流出部はテイラー反応器の側方または反応器カバーに配置されなければならなくなり、エッジレスに形成され得なくなる。このような配置構成を用いると、スムーズな生成物流出を実現することは極めて困難となる。
【0010】
流れとジオメトリ的な配置構成との不都合な協働に基づき、この公知のテイラー反応器では第1に、塊状重合時に生じる安全技術的および方法技術的な全ての問題を解決することができず、第2にモノマーの変換率を、十分なモノマー不含性および狭い分子量分布およびポリマーの分子量の均一性が得られる程度に向上させることもまだ不可能である。
【0011】
原料の不十分な混合の問題は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19960389号明細書に記載されているように、原料の供給部の手前に混合ユニットを前置することによってたしかにある程度までは解決され得るが、しかし前で述べた塊状重合時の問題は相変わらず出現する。
【0012】
米国特許第4174097号明細書に基づき公知のテイラー反応器では、ロータが原料の流入範囲に回転可能に支承されている。このロータの他方の端部は支承されておらず、流出範囲のほぼ手前で成端しており、この流出範囲の最も広幅な個所は外側の反応器壁と同じ直径を有している。この流出範囲はホッパ状に減径されて流出管に通じている。この公知のテイラー反応器は種々異なる粘度および導電率の液体を混合するために働く。さらに、この公知のテイラー反応器はポリイソシアネートをポリオールと反応させるために働くこともできる。この公知のテイラー反応器がオレフィン不飽和モノマーの塊状重合のためにどの程度使用され得るのかは、上記米国特許第号明細書からは明らかでない。
【0013】
この公知のテイラー反応器では、反応器底部を貫く駆動軸の貫通案内と、ロータとの結合とが原料の流入範囲で行われる。しかし、環状間隙状の反応容積は通流方向に拡幅されていない。たしかに、上記米国特許第4174097号明細書の第10欄、第29行〜第33行には、同心的な両部分が、円筒状の配置構成とは異なる配置構成、たとえばほぼ球面状または円錐状の配置構成をも有していてよいことが記載されているが、しかしどのような配置構成が塊状重合のために特に有利になるのかは教示されない。
【0014】
たしかに、通流方向に拡幅された反応容積を有するテイラー反応器を用いると、モノマーの変換率を向上させ、かつゲル粒子の形成を低減させることができたが、しかしポリアクリレート樹脂の製造の場合には、多分散性が>3であることが判った。ある程度のアクリレートモノマーが含有されている場合にしか>99%の変換率は実現され得なかった。
【0015】
したがって、本発明の課題は、多分散性を低減させると同時に変換率を向上させることである。
【0016】
この課題は、請求項1、請求項10および請求項13にそれぞれ記載のテイラー反応器により解決される。以下において「テイラー反応器」と言えば、ロータの回転軸線の方向で見て、つまり言い換えれば反応媒体の通流方向で見て、反応器の運転中に少なくとも反応容積の部分範囲にわたってテイラー渦が発生することを言い表すものとする。
【0017】
意想外にも、反応容積の横断面が流入部から流出部へ向かって少なくとも最初は増大し、そして流出部の方向、つまり反応媒体の通流方向における該横断面増大率が少なくともロータの長さの一部にわたって減少するように反応器ハウジングおよび/またはロータが形成されているテイラー反応器を用いると、多分散性を著しく減少させることができることが判った。この効果を説明し得る考えら得る理由は、反応容積を仕切る縁部において、テイラー渦が該縁部にまで延びていない場合に発生する恐れのある短絡流が低減されるか、またはそれどころか回避されることにある。したがって、「短絡流」とは、混合プロセスを部分的に迂回して、ひいては反応器内での滞留時間を減少させて反応器内部を反応媒体の通流方向に進む流れを意味し、このような流れは重合度減少を招く。
【0018】
実験により、本発明によるテイラー反応器は意想外にも、反応媒体の運動粘度νが通流方向で著しく変化するような全ての物質変換のために適していることが判った。
【0019】
とりわけ、本発明によるテイラー反応器および本発明による方法が、塊状のオレフィン不飽和モノマーのラジカル性、アニオン性およびカチオン性の(共)重合、グラフト混合重合およびブロック混合重合(まとめて「重合」と呼ぶ)を>70モル%の変換率で可能にすることは意想外である。本発明によるテイラー反応器において、妨害因子となる気泡および/または(コ)ポリマー、グラフト混合ポリマーおよびブロック混合ポリマー(まとめて「ポリマー」と呼ぶ)の沈積が生じることなしに>98モル%の変換率を問題なく達成し得ることは、なお一層意想外である。
【0020】
さらに、本発明によるテイラー反応器および本発明による方法が塊状重合の特に確実な反応実施を可能にするので、ポリマーが極めて確実に、信頼性良くかつ再現可能に製造され得ることも意想外である。ポリマーの極めて低いモノマー含量に基づき、安全技術的、方法技術的、毒物学的および生態学的な問題および悪臭公害が発生することなしに、前記ポリマーを別の清浄化なしに多種多様の使用目的に供給することができる。
【0021】
本発明によるテイラー反応器は、有利には環状間隙状の反応容積を有しており、この反応容積は有利には円形の周面を有している。環状間隙状の反応容積は、外側の反応器壁と、この反応器壁内部に同心的に配置されたロータとにより規定されているか、もしくは形成される。ロータは回転軸線を中心にして回転可能に配置されている。
【0022】
外側の反応器壁およびロータは反応容積の全長にわたって横断面で見て円形の周面を有している。「円形」とは、厳格な円形、卵形、楕円形または丸められた角隅(頂点)を有する多角形を意味する。より簡単な製造可能性、単純な構造および環状間隙状の反応容積の全長にわたる一定条件の著しく容易な維持の理由から、厳格な円形の周面が有利である。
【0023】
外側の反応器壁の内壁および/またはロータの表面は平滑であるか、または凹凸状に形成されていてよい。すなわち、当該面は小さな表面粗さを有しているか、または高い表面粗さを有していてよい。これに対して付加的にまたは択一的に、外側の反応器壁の内壁および/またはロータの表面は、たとえば米国特許第4174907号明細書または英国特許第1358157号明細書に記載されているようなレリーフ状の半径方向および/または軸方向の、有利には半径方向の表面プロファイルを有していてよい。半径方向の表面プロファイルが存在している場合、この表面プロファイルは、ほぼまたは正確にテイラー渦リングと同様に寸法設定されていると有利である。
【0024】
しかし、気泡または原料、プロセス材料および生成物が沈積する恐れのある死角を回避するためには、外側の反応器壁の内壁およびロータの表面が平滑でかつプロファイルなしに形成されていると有利である。
【0025】
本発明によるテイラー反応器は、長手方向で見て鉛直方向または水平方向に支承されているか、あるいはこれら両方向の間の位置に支承されている。鉛直方向での支承が有利である。本発明によるテイラー反応器が水平方向に支承されていない場合、反応媒体はテイラー反応器を重力に抗して下方から上方へ向かってまたは重力に従って上方から下方へ向かって通流することができる。本発明によれば、反応媒体が重力に抗して運動させられると有利である。
【0026】
流入部への供給速度を変えることにより反応器を通る反応媒体の通過速度に影響を与えることによって、反応媒体の粘度発生に影響を与えることが可能となる。したがって、反応器は種々の反応混合物のために使用可能となる。
【0027】
本発明によれば、通流方向における反応容積の横断面の増大率の減少が、適当な数学的な関数に基づいて連続的にまたは不連続的に、特に連続的に行われる。適当な数学的な関数の例は直線、互いに鈍角の角度で交差する少なくとも2つの直線、放物線、双曲線、e−関数(指数関数)またはこれらの関数の組合せであり、その場合、これらの関数は連続的または不連続的に、特に連続的に、互いに移行する。数学的な関数は直線であると有利である。すなわち、反応容積の、有利には環状間隙状の横断面が通流方向で第1の区分において、第2の区分におけるよりも著しく一定に拡幅されており、第2の区分では横断面はほとんど増大しておらず、有利には一定であることが有利である。横断面増大の程度は通流方向における反応媒体の粘度の予想される増大率に左右され、当業者によってテイラー式Iにつき見積もられ、かつ/または簡単な前実験につき求められ得る。
【0028】
環状間隙状の反応容積の横断面の増大時では、外側の反応器壁が円筒状に成形されていて、ロータが円錐状に成形されていてよい。この場合、ロータは流入側に最大直径を有している。択一的には、外側の反応器壁が円錐状に成形されていて、ロータが円筒状に形成されていてもよい。すなわち、ロータの横断面はロータ全長にわたって一定となる。本発明によれば、外側の反応器壁が第1の流入側の範囲では円錐状に形成されていて、第2の範囲では円筒状に成形されており、ロータが円筒状に形成されていると有利である。
【0029】
流出部が軸方向に配置されていると、つまり流出部がロータの回転軸線に沿った方向で反応容積に開口していると、反応用の原料および/またはプロセス材料の供給により、反応容積内では流出部の方向でかつ流出部を通る流れが生ぜしめられる。
【0030】
テイラー反応器のさらに別の構成では、回転軸線を中心とした流れも反応生成物を導出するための駆動力として利用される。この場合、流出部は半径方向で回転軸線から間隔を置いて配置されて反応容積に開口している。
【0031】
反応容積への開口は、回転軸線と、流出部により規定された流出線との間の任意の角度で行うことができる。しかし、流出線と回転軸線とが0〜90゜の角度を形成していると、つまり流出部が回転軸線に対して直交する方向で反応容積に開口していると、有利である。
【0032】
特に、流出部が開口範囲で回転軸線に対してほぼ直角に延びていると、反応生成物を導出するための駆動力に寄与する、回転軸線を中心とした流れ成分が最大となる。その場合、流出部に隣接した端部を一種のポンプロータとして形成し、これによりこの範囲への回転軸線を中心としたできるだけ強力な流れを発生させることが有利である。
【0033】
このことは、反応器内での反応過程に対する不都合な作用なしに可能となる。なぜならば、高い粘度と、既に得られた約99%の物質変換率とに基づき、テイラー渦もしくは反応過程はもはや必要とならないからである。
【0034】
環状間隙状の反応容積の最も狭い範囲では、反応器底部の上方に反応用の原料、特にオレフィン不飽和モノマーならびに適当なプロセス材料、たとえば触媒および開始剤のための少なくとも1つの供給部が設けられている。この供給部は側方に配置されているか、または反応器底部を貫いて延びていてよい。側方に配置されていて、かつ/または反応器底部を貫いて延びている少なくとも2つの供給部が設けられていると有利である。場合によっては、通流方向に別の供給部が設けられていてよい。その場合、この供給部を通じて別の反応用の原料、触媒または開始剤が調量され得るので、物質変換、特に重合を多段式に実施することができる。
【0035】
反応用の原料は汎用の公知の方法および装置、たとえば調量ポンプを用いて供給部に供給され得る。これらの装置は汎用の公知の機械的、ハイドロリック的、光学的および電子的な測定・制御装置を備えていてよい。さらに、供給部には、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第19960389号明細書の第4欄、第55行〜第5欄、第34行に記載されているような混合装置の1つが前置されていてよい。
【0036】
請求項10に記載の本発明によるテイラー反応器では、通流方向で生成物流出部へ向かって先細りになった流出範囲が設けられている。
【0037】
ロータの、流出部寄りの端面側の端部は、反応容器が少なくともほぼデッドボリュームもしくは死容積なしに生成物流出部に開口するように形成されている。
【0038】
流出範囲および生成物流出部は、外側の反応器壁により規定されている。
【0039】
流出範囲の先細りは、前で述べた数学的な関数により説明することができる。この場合、直線が有利である。したがって、流出範囲は円錐状に先細りになっていると有利である。その場合、ロータの端面側の端部は円錐状に形成されていると有利である。これにより、有利であるように、軸線の方向で流出範囲の横断面がほぼ一定となることが達成される。これにより、死容積が回避されるようになると同時に、不都合なよどみ圧も生じなくなる。
【0040】
流入範囲に位置する反応器壁、環状間隙状の反応容器の範囲に位置する反応器壁および流出範囲に位置する反応器壁ならびに1つまたは複数の供給部および生成物流出部は、加熱ジャケットまたは冷却ジャケットを備えていてよいので、これらの反応器壁ならびに供給部および生成物流出部は並流または向流で加熱または冷却され得るようになる。さらに、本発明によるテイラー反応器は汎用で公知の機械的、ハイドロリック的、光学的および電子的な測定・制御装置、たとえば温度センサ、圧力計、流量計、光学的または電子的なセンサおよび物質濃度、粘度およびその他の物理・化学的な量を測定するための装置を有していてよい。これらの測定・制御装置はその測定値をデータ処理装置へ伝送し、このデータ処理装置は方法経過全体を制御する。
【0041】
本発明によるテイラー反応器は圧力密に設計されていると有利である。これにより、反応媒体は1〜100バールの圧力下に存在し得るようになると有利である。本発明によるテイラー反応器は、反応用の原料および反応生成物によって腐食させる恐れがなくかつ比較的高い圧力に耐えられるのであれば、多種多様の材料から成っていてよい。金属、有利には鋼、特に特殊鋼が使用されると有利である。
【0042】
本発明によるテイラー反応器は多種多様の使用目的に供給され得る。本発明によるテイラー反応器は、反応媒体中の運動粘度νが通流方向で増大して行くような物質変換のために使用されると有利である。
【0043】
本発明によるテイラー反応器中で特に有利に実施され得る物質変換の例は、オリゴマーの物質および高分子量の物質の形成または分解、たとえばモノマーの塊状重合、溶液重合、乳化重合または懸濁重合または沈殿重合である。
【0044】
このような物質変換の別の例は、
−等重合度反応(polymeranalog. Reaktion)、たとえばこのような反応のために適した側基を有するポリマーのエステル化、アミド化またはウレタン化、
−電子ビームまたは紫外線を用いて硬化可能なオレフィン不飽和材料の製造、
−ポリウレタン樹脂および改質ポリウレタン樹脂、たとえばアクリル化されたポリウレタンの製造、
−(ポリ)尿素または改質(ポリ)尿素の製造、
−イソシアネート基で成端された化合物の分子量増大、
−またはたとえばAngewandte Chemie、第109巻、1997年、第944頁〜第964頁のAntoniettiおよびGoeltner著の論文「Ueberstruktur funktioneller Kolloide: eine Chemie im Nanometerbereich」またはAdvanced Materials、第9巻、第1号、1997年、第17頁〜第31頁のOberおよびWengner著の論文「Polyelectrolyte-Surfactant Complexes in the Solid State: Facile Building Blocks for Self-Organizing Materials」に記載されているような、メソフェーズ(Mesophase)の形成をもたらす反応
である。
【0045】
本発明による方法が、オレフィン不飽和モノマーの塊状重合のために使用されると極めて特に有利である。なぜならば、この場合、本発明によるテイラー反応器の特別な利点が特に十分に発揮されるからである。
【0046】
すなわち、本発明によるテイラー反応器は、化学的に単一に構成されたポリマーおよびコポリマーの製造のために使用されると特に有利である。共重合の場合には、1つまたは複数の、より迅速に重合する方のコモノマーが、軸方向で相前後して配置された供給部を介して調量され得るので、コモノマー比は反応器の全長にわたって一定に維持され得る。
【0047】
また、グラフト混合重合(Pfropfmischpolymerisation)のためにも、テイラー反応器は特に有利に使用される。
【0048】
この場合、「基幹ポリマー」を別個に製造して、別個の供給部を介して、または少なくとも1種のモノマーとの混合物の形で、本発明によるテイラー反応器内へ調量することができる。
【0049】
しかし、基幹ポリマーを本発明によるテイラー反応器の第1の部分において製造し、その後に、軸方向にずらされた少なくとも1つの別の供給部を介して、接ぎ木区分を形成する少なくとも1種のモノマーを調量することもできる。モノマーまたはコモノマーは次いで本発明によるテイラー反応器の少なくとも1つの別の部分で基幹ポリマーへ接ぎ木され得る。複数種のコモノマーが使用される場合、これらのコモノマーは個々にそれぞれ1つの供給部を介して調量されるか、または混合物として1つまたは複数の供給部を通じて調量され得る。少なくとも2種のコモノマーが個々にかつ順次に少なくとも2つの供給部を通じて調量されると、それ自体で見てブロック混合ポリマーである接ぎ木区分の製造が特に簡単にかつエレガントに実施され得る。
【0050】
当然ながら、前で説明したこのコンセプトはブロック混合ポリマー自体の製造のためにも使用することができる。
【0051】
同様に、本発明によるテイラー反応器を用いて、コアシェルラテックス(Kern-Schale-Latices)の製造を特に簡単にかつエレガントに実現することもできる。すなわち、まず本発明によるテイラー反応器の第1の部分において少なくとも1種のモノマーの重合によりコアが製造される。少なくとも1つの別の供給部を介して、少なくとも1種の別のコモノマーが調量され、本発明によるテイラー反応器の少なくとも1つの別の部分において前記コアに被さるようにシェルが重合により被着される。このようにして、複数のシェルをコアに被着させることができる。
【0052】
本発明によるテイラー反応器を用いると、ポリマー分散液の製造を行うこともできる。たとえば、少なくとも1種のモノマーが均質相の形で、特に溶液の形で、本発明によるテイラー反応器の第1の部分において(共)重合され、その後に、少なくとも1つの別の装置を介して沈殿剤が供給され、これによりポリマー分散液が生ぜしめられる。
【0053】
全ての用途において、本発明によるテイラー反応器は、特に確実な反応実施を可能にする大きな固有冷却面を有するという特別な利点を有している。
【0054】
本発明によるテイラー反応器は、本発明による方法により少なくとも1種のオレフィン不飽和モノマーをラジカル(共)重合、アニオン(共)重合またはカチオン(共)重合、特にラジカル(共)重合、ブロック混合重合またはグラフト混合重合(重合)により塊状重合させることによって(コ)ポリマー、ブロック混合ポリマーおよびグラフト混合ポリマーを連続的に製造するために使用されると極めて特に有利である。
【0055】
本発明による方法のために使用される適当なモノマーの例は、非環式および環式の、場合によっては官能化されたモノオレフィンおよびジオレフィン、ビニル芳香族化合物、ビニルエーテル、ビニルエステル、ビニルアミド、ハロゲン化ビニル、アリルエーテルおよびアリルエステル、アクリル酸およびメタクリル酸およびそのエステル、アミドおよびニトリルおよびマレイン酸、フマル酸およびイタコン酸およびそのエステル、アミド、イミドおよび無水物である。
【0056】
適当なモノオレフィンの例は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、シクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンテンおよびシクロヘキセンである。
【0057】
適当なジオレフィンの例はブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエンおよびシクロヘキサンジエンである。
【0058】
適当なビニル芳香族化合物の例は、スチロール、α−メチルスチロール、2−、3−および4−クロロ−、メチル−、エチル−、−プロピル−および−ブチル−およびtert.−ブチルスチロールおよび−α−メチルスチロールである。
【0059】
適当なビニル化合物もしくは官能化されたオレフィンの例はビニルシクロヘキサンジオールである。
【0060】
適当なビニルエーテルの例は、メチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−およびペンチルビニルエーテル、アリルモノプロポキシレートならびにトリメチロールプロパン−モノ、−ジ−およびトリアリルエーテルである。
【0061】
適当なビニルエステルの例はビニルアセテートおよびビニルプロピオネートならびにバーサティック酸(Versaticsaeure)およびその他の第四級酸のビニルエステルである。
【0062】
適当なビニルアミドの例は、N−メチル−、N,N−ジメチル−、N−エチル−、N−プロピル−、N−ブチル−、N−アミル−、N−シクロペンチル−およびN−シクロヘキシルビニルアミドならびにN−ビニルピロリドンおよび−エプシロン−カプロラクタムである。
【0063】
適当なハロゲン化ビニルの例は、フッ化ビニルおよび塩化ビニルである。
【0064】
適当なハロゲン化ビニリデンの例はフッ化ビニリデンおよび塩化ビニリデンである。
【0065】
適当なアリルエーテルの例は、メチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、ペンチル−、フェニル−およびグリシジルモノアリルエーテルである。
【0066】
適当なアリルエステルの例は、アリルアセテートおよびアリルプロピオネートである。
【0067】
アクリル酸およびメタクリル酸の適当なエステルの例は、メチル−、エチル−、プロピル−、n−ブチル−、イソブチル−、n−ペンチル−、n−ヘキシル−、2−エチルヘキシル−、イソデシル−、デシル−、シクロヘキシル−、t−ブチルシクロヘキシル−、ノルボニル−、イソボルニル−、2−および3−ヒドロキシプロピル−、4−ヒドロキシブチル−、トリメチロールプロパンモノ−、ペンタエリトリトモノ−およびグリシジル(メト)アクリレートである。さらに、エチレングリコール、ジ−、トリ−およびテトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ジブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトのジ−、トリ−およびテトラ(メト)アクリレートが挙げられる。ただし、これらのエステルは単独で使用されるのではなく、常に二義的な量で単官能性のモノマーと一緒に使用される。
【0068】
アクリル酸およびメタクリル酸の適当なアミドの例は、(メト)アクリル酸アミドならびに(メト)アクリル酸−N−メチル−、−N,N−ジメチル−、−N−エチル−、−N−プロピル−、−N−ブチル−、−N−アミル−、−N−シクロペンチル−および−N−シクロヘキシルアミドである。
【0069】
適当なニトリルの例は、アクリルニトリルおよびメタクリルニトリルである。
【0070】
マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸の適当なエステル、アミド、イミドおよび無水物の例は、マレイン酸−、フマル酸−およびイタコン酸ジメチル−、−ジエチル−、−ジプロピル−および−ジブチルエステル、マレイン酸−、フマル酸−およびイタコン酸ジアミド、マレイン酸−、フマル酸−およびイタコン酸−N,N′−ジメチル−、N,N,N′,N′−テトラメチル−、−N,N′−ジエチル−、−N,N′−ジプロピル−、−N,N′−ジブチル−、−N,N′−ジアミル−、−N,N′−ジシクロペンチル−および−N,N′−ジシクロヘキシルアミド、マレイン酸−、フマル酸−およびイタコン酸アミドおよびマレイン酸−、フマル酸−およびイタコン酸−N−メチル−、−N−エチル−、−N−プロピル−、−N−ブチル−、−N−アミル−、−N−シクロペンチル−および−N−シクロヘキシルイミドならびに無水マレイン酸、無水フマル酸および無水イタコン酸である。
【0071】
前記モノマーはラジカル重合されるか、カチオン重合されるか、またはアニオン重合され得る。前記モノマーはラジカル重合されると有利である。このためには、汎用の公知の無機のラジカル開始剤または開始剤、たとえば過酸化水素または過酸化硫酸カリウムまたは汎用の公知の有機のラジカル開始剤または開始剤、たとえばジアルキルペルオキシド、たとえばジ−tert.−ブチルペルオキシド、ジ−tert.−アミルペルオキシドおよびジクミルペルオキシド;ヒドロペルオキシド、たとえばクメンヒドロペルオキシドおよびtert.−ブチルヒドロペルオキシド;ペルエステル、たとえばtert.−ブチルペルベンゾエート、tert.−ブチルペルピバレート、tert.−ブチルペル−3,5,5−トリメチルヘキサノエートおよびtert.−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート;ビアゾ化合物、たとえばアゾビスイソブチロニトリル;またはC−C−開始剤、たとえば2,3−ジメチル−2,3−ジフェニル−ブタンまたは−ヘキサンを使用することができる。しかし、ラジカル開始剤なしでも重合を熱により開始させるスチロールも挙げられる。
【0072】
本発明による方法では、前記モノマーのうちの少なくとも1種のモノマーが側方の供給部を介して本発明によるテイラー反応器の流入範囲へ調量される。前記ラジカル開始剤または開始剤のうちの少なくとも1種が、有利には少なくとも1種のモノマーと一緒に別の側方の供給部を介して調量されると有利である。
【0073】
1種または複数種のモノマーは反応容積内で少なくとも部分的にテイラー流の条件下に重合させられる。得られた液状のポリマーは環状間隙状の反応容積から流出範囲へ搬送され、さらにこの流出範囲から生成物流出部へ搬送され、そして圧力保持弁を介して搬出される。
【0074】
本発明による方法では、環状間隙状の反応容積の一部または環状間隙状の反応容積全体において、特に環状間隙状の反応容積全体において、テイラー流のための条件が満たされていると有利である。
【0075】
反応媒体の温度は、本発明による方法の場合、広く変動することができ、特に最も低い分解温度を有するモノマー、解重合が開始する温度ならびにモノマーおよび開始剤の反応性に左右される。重合は100〜200℃、有利には130〜180℃および殊に150〜180℃の温度で実施されると有利である。
【0076】
重合は圧力下に実施され得る。圧力は1〜100バール、有利には1〜25バールおよび殊に1〜15バールであると有利である。
【0077】
通過時間は広く変動することができ、特にモノマーの反応性および本発明によるテイラー反応器のサイズ、特に長さに左右される。通過時間は15分〜2時間、殊に20分〜1時間であると有利である。
【0078】
モノマーの変換率が>70モル%であることは、本発明によるテイラー反応器および本発明による方法の極めて特別な利点である。意想外にも、>80モル%、有利には>90モル%、特に有利には>95モル%、極めて特に有利には>98モル%および殊に>98.5モル%の変換率を問題なく得ることができる。この場合、塊状重合の場合に普通であるように、運動粘度νは少なくとも10倍、特に少なくとも100倍になり得る。
【0079】
本発明による方法を用いて製造されたポリマーの分子量は広く変動することができ、主として本発明によるテイラー反応器がテイラー流の条件を維持し得る最大運動粘度νによってしか制限されない。本発明による方法で製造されたポリマーの数値平均分子量は800〜50000ダルトン、有利には1000〜25000ダルトンおよび殊に1000〜10000ダルトンであると有利である。分子量の不統一性は<10、殊に<8であると有利である。
【0080】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【0081】
図1は、本発明の択一的な第1の構成による本発明によるテイラー反応器の実施例を示す縦断面図であり、
図2は、本発明の択一的な第1の構成による本発明によるテイラー反応器の別の実施例を示す、図1に相当する縦断面図であり、
図3は、本発明の択一的な第2の構成による本発明によるテイラー反応器の実施例を示す、図1に相当する縦断面図であり、
図4は、本発明の択一的な第1の構成および第2の構成が実現されている、本発明によるテイラー反応器の実施例を示す、図1および図2に相当する縦断面図であり、
図5は、本発明の択一的な第3の構成による本発明によるテイラー反応器の実施例を示す、図1に相当する縦断面図であり、
図6は、図5のVI−VI線に沿った断面図である。
【0082】
図1には、符号101でテイラー反応器全体が示されている。このテイラー反応器101は反応器ハウジング103を有している。テイラー反応器101の標準の運転位置に相当する図1の状態で見て、この反応器ハウジング103の下側の範囲は挿入範囲108として形成されている。この挿入範囲108には、側方で互いに向かい合って位置する2つの流入部108.1が開口しており、これらの流入部108.1を通じて原料および/またはプロセス材料を反応容積102に供給することができる。この反応容積12は円筒状のロータ104の外周面104.3と、反応器ハウジング103の内周面103.1との間に形成されている。
【0083】
反応器ハウジング103の、流入範囲108に続いた部分103.2は、個所103.3にまで上方へ向かって円錐状に拡張するように形成されているので、この部分103.2において反応容積102の横断面は増大する。前記個所103.3には、上方へ向かって反応器ハウジング103の円筒状の部分103.4が続いており、この円筒状の部分103.4はロータ104の上端面104.2を超えるまで延びている。この円筒状の部分103.4には、ホッパ状に先細りになった流出範囲109が続いている。この流出範囲109は流出部110に通じており、この流出部110は反応生成物の搬出のために働く。流出部110には圧力保持弁111が後置されている。すなわち、流出部110の下流側には圧力保持弁111が接続されている。この圧力保持弁111を用いて、反応容積内の反応媒体を、予め設定可能な圧力下に保持することができる。
【0084】
ロータ104は、図1で見て下部に図示された流入部側の端面壁105に軸線Aを中心にして回転可能に支承されている。回転を生ぜしめるトルクをロータ104に導入するためには、端面壁105を貫通案内された駆動軸107が働く。この駆動軸7は回転駆動装置(図示しない)、たとえば電動モータに結合されている。端面壁105を貫いた駆動軸107の貫通部の範囲で反応容積12をシールするためには、スライドリングパッキン106が働く。このスライドリングパッキン106はロータ104の、図面で見て下部に図示された端部104.1と端面壁105との間に配置されている。
【0085】
反応容積12に供給された原料および/またはプロセス材料の予混合の目的で、1つまたは複数の流入部が混合装置112を備えていてよい。
【0086】
図1から判るように、反応器ハウジング103およびロータ104のこのような構成に基づき、反応容積12の横断面は流入部から流出部へ向かって見て反応器ハウジング部分103.2において、まずは増大するが、しかしこの増大率は個所103.3を越えると、円筒状のハウジング部分103.4における流出部へ向かって、図示の実施例では値0にまで減少する。
【0087】
図2に示した実施例はその技術的な構成の点では大部分、図1に示した実施例と一致している。繰り返しを避けるために、以下においては図1に示した実施例に対する相違点についてのみ説明する。図1に示した実施例に相当する構成部分は、図1で使用された符号の数字に100を加算した符号で示されている。
【0088】
図2に示した実施例では、反応器ハウジング203が流出範囲209にまで円錐状に拡張するように形成されている。流出部の反応容積の横断面の増大率を本発明により減少させるためには、図2で見て下側の範囲において円筒状に形成されたロータ204が個所204.3を越えると、流出範囲209に向かって円錐状に拡張する範囲204.4へ移行する。円錐度は反応器ハウジング203の円錐度に相当しているので、反応容積の横断面は個所204.3が越えられると、ロータ204の上端部にまで一定に維持される。
【0089】
図3には、テイラー反応器全体が符号301で示されている。このテイラー反応器301は本発明の択一的な第2の構成による実施例である。以下に、やはり図1に示したテイラー反応器に対する相違点についてのみ説明する。その他の点については、図1に示した実施例につき説明した通りである。図1に示した実施例に相当する構成部分は図3では、図1で使用された符号の数字に200を加算した符号で示されている。
【0090】
テイラー反応器301の反応器ハウジング303は流入範囲308から流出範囲309にまで円錐状に拡張するように形成されている。ロータ304は円筒状の形状を有しており、この円筒状の形状は個所304.3において円錐体313へ移行している。円錐頂角dは、円錐面314が、反応器ハウジング303の、流出範囲309を仕切る壁303.4に対して平行に延びるように設定されている。こうして、反応容積が少なくともほぼ死容積(デッドボリューム)なしに流出部310へ開口することが得られる。これにより、ロータ304の上方で反応媒体の一部が沈積し、ひいては反応器内での滞留時間の延長に基づいて引き続き望ましくない重合が生ぜしめられることが有効に回避される。
【0091】
図4には、本発明によるテイラー反応器の特に有利な実施例が示されている。この場合、本発明の2つの構成が実現されている。符号401で示されたテイラー反応器は反応器ハウジング403を有しており、この反応器ハウジング403は図1に示した反応器ハウジング103に相当している。ロータ404は、図3に示したロータ303と同様に、その上端部に円錐体413を備えている。
【0092】
したがって、この特に有利な実施例では、反応容積402内での短絡流が回避されると同時に、流出範囲409における死容積の形成も回避される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の択一的な第1の構成による本発明によるテイラー反応器の実施例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の択一的な第1の構成による本発明によるテイラー反応器の別の実施例を示す、図1に相当する縦断面図である。
【図3】本発明の択一的な第2の構成による本発明によるテイラー反応器の実施例を示す、図1に相当する縦断面図である。
【図4】本発明の択一的な第1の構成および第2の構成が実現されている、本発明によるテイラー反応器の実施例を示す、図1および図2に相当する縦断面図である。
【図5】本発明の択一的な第3の構成による本発明によるテイラー反応器の実施例を示す、図1に相当する縦断面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テイラー反応器(101,201,301,401)であって、
反応器ハウジング(103,203,303,403)が設けられており、
該反応器ハウジング(103,203,303,403)によって取り囲まれた容積内に配置された、1つの軸線を中心にして回転可能なロータ(104,204,304,404)が設けられており、
反応器ハウジング(103,203,303,403)の内周面と、ロータ(104,204,304,404)の外周面(104.3,204.3,304.3,404.3)との間に形成された反応容積(102,202,302,402)が設けられており、
反応用の原料および/またはプロセス材料のための少なくとも1つの流入部(108.1,208.1,308.1,408.1)と、反応生成物のための少なくとも1つの流出部(110,210,310,410)とが設けられており、該流出部(110,210,310,410)が、前記軸線(A)に沿った方向で流入部(108.1,208.1,308.1,408.1)から間隔を置いて配置されている
形式のものにおいて、
反応容積(102,202,302,402)の横断面が、流入部(108.1,208.1,308.1,408.1)から流出部(110,210,310,410)へ向かって最初は増大し、そして該横断面増大率が少なくともロータ(104,204,304,404)の長さの一部にわたって増加しなくなるように反応器ハウジング(103,203,303,403)および/またはロータ(104,204,304,404)が形成されている
ことを特徴とするテイラー反応器。
【請求項2】
ロータ(104,204,304,404)が反応器ハウジング(103,203,303,403)内に同心的に配置されている、請求項1記載のテイラー反応器。
【請求項3】
反応容積(102,202,302,402)が環状間隙状に形成されている、請求項1または2記載のテイラー反応器。
【請求項4】
反応容積(102,202,302,402)が円形の周面を有している、請求項3記載のテイラー反応器。
【請求項5】
反応容積(102,202,302,402)の横断面の増大率の減少が連続的に行われている、請求項1から4までのいずれか1項記載のテイラー反応器。
【請求項6】
反応容積(102,202,302,402)の横断面の増大率の減少が不連続的に行われている、請求項1から4までのいずれか1項記載のテイラー反応器。
【請求項7】
反応器ハウジング(103,203,303,403)および/またはロータ(104,204,304,404)が、前記軸線(A)に沿った方向に、前記軸線(A)に対して互いに異なる角度を成す内周面および/または外周面を備えた少なくとも2つの区分を有している、請求項6記載のテイラー反応器。
【請求項8】
反応器ハウジングの半径(r)対ロータの半径(r)の比が、少なくとも反応容積(102,202,302,402)の長さの一部に関して<1.4である、請求項1から7までのいずれか1項記載のテイラー反応器。
【請求項9】
ロータ(104,204,304,404)が円筒状に形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のテイラー反応器。
【請求項10】
テイラー反応器であって、
反応器ハウジング(103,203,303,403)が設けられており、
該反応器ハウジング(103,203,303,403)によって取り囲まれた容積内に1つの軸線(A)を中心にして回転可能に配置されたロータ(104,204,304,404)が設けられており、
反応器ハウジング(103,203,303,403)の内周面(103.1,203.1,303.1,403.1)と、ロータ(104,204,304,404)の外周面(104.3,204.3,304.3,404.3)との間に形成された反応容積(102,202,302,402)が設けられており、
反応用の原料および/またはプロセス材料のための少なくとも1つの流入部(108.1,208.1,308.1,408.1)が設けられている
形式のものにおいて、
流出部(110,210,310,410)に開口した流出範囲(109,209,309,409)が設けられており、該流出範囲が、反応器ハウジング(103,203,303,403)内でロータ(104,204,304,404)の端面側の端部において反応容積(102,202,302,402)に続いていて、流出部(110,210,310,410)に向かって狭められており、しかもロータ(104,204,304,404)の前記端面側の端部は、反応容積(102,202,302,402)が少なくともほぼ死容積なしに流出部(110,210,310,410)に開口するように形成されている
ことを特徴とする、特に請求項1から9までのいずれか1項記載のテイラー反応器。
【請求項11】
前記軸線(A)に沿った方向で前記流出範囲(109,209,309,409)の横断面が少なくともほぼ一定になるようにロータ(104,204,304,404)の前記端面側の端部が形成されている、請求項10記載のテイラー反応器。
【請求項12】
前記流出範囲(109,209,309,409)がホッパ状に形成され、かつロータ(104,204,304,404)の前記端面側の端部が円錐状に形成されるように反応器ハウジング(103,203,303,403)が形成されている、請求項10または11記載のテイラー反応器。
【請求項13】
テイラー反応器であって、
反応器ハウジング(503)が設けられており、
該反応器ハウジング(503)によって取り囲まれた容積内に1つの軸線(A)を中心にして回転可能に配置されたロータ(504)が設けられており、
反応器ハウジング(503)の内周面(503.1)と、ロータ(504)の外周面(504.3)との間に形成された反応容積(502)が設けられており、
反応用の原料および/またはプロセス材料のための少なくとも1つの流入部(508.1)と、反応生成物のための少なくとも1つの流出部(510)とが設けられている
形式のものにおいて、
流出部(510)が、前記軸線(A)から半径方向の間隔を置いて配置されて反応容積(502)に開口している
ことを特徴とする、特に請求項1から12までのいずれか1項記載のテイラー反応器。
【請求項14】
流出部(510)が、前記軸線(A)に対して直交する方向で、有利には直角な方向で、反応容積(502)に開口している、請求項13記載のテイラー反応器。
【請求項15】
ロータ(504)の、流出部(510)に隣接した範囲(B)が、前記軸線(A)を中心とした円流を発生させるための手段を有している、請求項13または14記載のテイラー反応器。
【請求項16】
ロータ(504)の、流出部(510)に隣接した範囲(B)が、一種の渦巻きポンプロータとして形成されている、請求項15記載のテイラー反応器。
【請求項17】
反応媒体の運動粘度νが反応器の通流方向で増大する、物質を変換するための方法において、このために請求項1から16までのいずれか1項記載のテイラー反応器を使用することを特徴とする、物質を変換するための方法。
【請求項18】
ポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、グラフト混合ポリマー、重縮合生成物、重付加生成物、コアシェルラテックス、ポリマー分散液の製造、等重合度反応、たとえばこのような反応のために適した側基を有しているポリマーのエステル化、アミド化またはウレタン化による生成物の製造、電子ビームまたは紫外線を用いて硬化可能なオレフィン不飽和材料またはメソフェーズの製造のための、請求項17記載の方法の使用。
【請求項19】
成形部分、シート、被覆材料、特にラッカー、接着剤およびシールコンパウンドとしての、請求項17記載の方法により製造された物質の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−504513(P2006−504513A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547490(P2004−547490)
【出願日】平成15年9月16日(2003.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010278
【国際公開番号】WO2004/039491
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【Fターム(参考)】