物質投与用インプラント及びインプラントの製造方法

【課題】微量栄養素、微量元素または微量ミネラルを投与するためのインプラントの提供。
【解決手段】再吸収性または生体浸食性の多孔質シリコンに基づく担体材料と、有効物質とを含むデバイス。有効物質、例えば健康生理機能のために必要な微量ミネラルを含浸させた多孔質シリコンインプラント60を皮下に移植し、前記微量ミネラルを制御的に放出するためにその後数ヶ月/年にわたり完全に腐蝕させる。第2の実施態様で、インプラント62は、有効物質を含み、ドアが破れてからの有効物質の長時間に亘る放出に時間差が生じるように厚さの異なる生物侵食性ドア76,78で閉じられている孔72を多数含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質を投与するためのインプラントに関する。本発明の1実施態様は特に、限定的ではないが、微量栄養素、微量元素または微量ミネラルを投与するためのインプラントに適用され得る。
【背景技術】
【0002】
薬物は、通常錠剤、カプセル剤またはエアゾル剤の摂取により経口的に、または皮下、筋肉内または静脈注射により、またはインプラントを介して投与されることが非常に多い。経口固体剤型は市場の40〜50%、非経口剤型は〜33%、他のより「新規な」剤型(NDF)は数%のみを占めている。それにもかかわらず、薬物の治療比を高め、患者の服用違反を避けることができるNDFの潜在性は非常に高いと思われる。患者の95%がその結果に気づいているにもかかわらず、服用違反は依然として重大な問題である。一般的な例は、抗生物質治療が不完全にしか進まなかったり、抗うつ剤を非常に短期間しか使用しなかったり、避妊ピルの服用を忘れたりすることである。
【0003】
皮下に移植され、薬物を長期間にわたり制御的に送達するインプラントは公知である。これらのインプラントは、通常高分子材料系を主成分としている。制御薬物送達のためのインプラントには2つの基本的タイプ、すなわち「レザバー」(貯蔵)構造及び「モノリシック」(一体)構造がある。「レザバー」デバイスは、制御層の下に薬物デポ剤を放出するために身体により腐蝕または吸収される層を複数有する。制御層及び薬物層を交互に順次配置することにより、薬物は長期間にわたり放出され得る。「モノリシック」デバイスでは、放出速度がゆっくりした腐蝕及び拡散過程により制御されるように薬物は全体にわたって分布している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
問題として、インビボで接触すると直ぐに望ましくないほど高量の薬物がポリマーカプセルの内表面から放出される所謂「バースト効果」が挙げられる。別の問題は、(幾つかの用途のために)薬物を数ヶ月もしくは数年にわたり持続的に送達し得る高純度で費用効率的なホストが常に必要とされていることである。
【0005】
他の公知のインプラントとして、薬物がその孔中に保持されている不活性セラミックインプラントが挙げられ、前記薬物は微孔の曲がりくねった路を経てセラミックインプントを離れ、これにより該薬物の放出が遅くなり、薬物放出が制御され得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、低ペイロードの治療物質を特定部位及び/または長期間(長期間は数ヶ月または数年であり得る)にわたり送達するのに特に適した、徐放性組織適合性インプラントに関する。有効物質はインプラントの部位に送達されるが、有効物質は身体により広範囲に吸収され得、別の部位でも効果を発揮し得る。従来の移植材料(ポリマーまたはセラミックス)を使用する多くの薬物送達システムを制限する重大な要因は達成可能な「ペイロード」にあった。新しい遺伝子操作したより有効な薬物(ペプチド、タンパク質、DNA断片)の出現と共に、小型化送達システムは患者の安全性が確保される設計ならばますます魅力的となりつつある。インビボ投与に対する安全性の問題の例は、大きなオンチップ液体レザバーに電子「ゲート」が結合しないことである。前記問題は、再吸収可能なホスト材料に薬物送達のアレーを使用するかまたは薬物を配合することにより解決され得る。
【0007】
本発明はまた、多孔質シリコンを含めた多孔質半導体材料の含浸に関する。有利には、インプラントは1つ以上の有効物質を含浸させた多孔質半導体材料からなる。また、前記物質をできるだけ高濃度で且つ多孔質半導体材料の表面からできるだけ深く存在させることが有利である。例えばR.Herino著の「多孔質シリコンの含浸(Impregnation of porous silicon)」と題する論文[EMIS datareview on porous silicon,p.66(1977)]、またはD.Andsager,J.Hilliard,J.M.Hetrick,L.H.Abu Hassan,M.Pilsch及びM.H.Nayfen著の「金属吸収物質の沈着による多孔質シリコンフォトルミネセンスの消光(Quenching of porous silicon photoluminescence by deposition of
metal adsorbates)」と題する論文[J.Appl.Phys.,74,p.4783(1993)]に記載されているような従来の含浸方法の問題は、含浸深さが非常に浅く、通常300nm以下で数原子%であることである。
【0008】
第1の態様によれば、本発明は移植対象者に投与すべき物質を含むシリコンインプラントに関する。
【0009】
好ましくは、前記インプラントは多孔質シリコンからなる。多孔質シリコンは、少なくとも2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくはそれ以上の多孔度(多孔度は容量基準の空隙率である)を有し得る。多孔質シリコンは、上記した2つの数値間の範囲の多孔度を有し得る。
【0010】
前記インプラントはシリコンの被覆、領域または層を有し得るかまたは断面の実質的全体にわたりシリコンであり得る。前記インプラントは、シリコン上に材料層、例えばヒドロキシアパタイトの被覆を有し得る。材料の被覆層はインプラントを移植したときに生理学的効果を有し得る。
【0011】
シリコンは多結晶シリコンであってもよい。
【0012】
前記物質は、固相シリコン材料中に実質的に均一に分布され得る。多孔質シリコンの場合、前記物質は多孔質網状組織及び/またはシリコン骨格中に分布され得る。骨格材料中に物質が分布されると、物質の放出速度がよりうまく制御されると予測される。なぜならば、物質の放出速度がシリコン材料の侵食速度に直接関係するであろうからである。物質が孔内に保持されている場合、放出速度は(骨格が侵食する前に)物質が孔からいかに迅速に逃げることができるかに依存する。これは望ましく、許容され得る場合もあり、またそうでない場合もある。多結晶シリコンの場合、物質は結晶及び/または粒界中に分布され得る。
【0013】
シリコン、特に多孔質シリコンが薬物または微量栄養素の送達ビヒクルとして役立ち得る非常に良好な性質を有することは認められている。多孔質シリコンのインプラント中の物質送達ビヒクルとしての適性を裏付ける証拠は実験的に得られている。本研究者が実施した研究で、多孔質シリコンは再吸収性または生体侵食性であり、長期間多孔質シリコンインプラントを薬物/物質を送達するための実際的な方法とするのに十分に遅い速度で哺乳動物の身体により再吸収または侵食されることが分かった。
【0014】
高多孔質シリコンが構造的及び化学的に不安定であることは長い間公知であり、光学−電子分野の研究者は光学−電子用途のために高多孔質シリコンをより安定とするためにかなり苦労してきた。皮肉なことに、多孔質シリコンの安定性/不活性の欠乏がインプラントによる物質の制御送達に利用される。
【0015】
試験から、高多孔度(例えば、80%)シリコンは中多孔度(例えば、50%)シリコンよりも速く再吸収され、また中多孔度(例えば、50%)シリコンはバルクシリコン(再吸収されるとしても殆ど再吸収されない)よりも速く再吸収されることが分かる。よって、孔径及び多孔質シリコン中の骨格に対する孔の総容積を調節することにより、シリコン材料をより速くまたはより遅く再吸収するように変更することが可能である。
【0016】
微細孔質シリコン(孔径<2nm)、中間孔質シリコン(孔径2〜50nm)及び巨大孔質シリコン(孔径>50nm)すべてが侵食に適した担体材料である。
【0017】
シリコンは安価であり、非常に純粋な形態で入手可能である(例えば、電子業界ではクリーンで純粋なシリコンウェーハが既に要求されている)。更に、異なる分野であり、また非常に低濃度(微量栄養素に対して要求されるよりも低い濃度)であるが、シリコン結晶に非常に広範囲の元素をドープする方法は既に公知である。
【0018】
送達機構として有効物質を多孔質シリコンインプラントに存在させることは、高量で送達する必要のない物質を送達するために特に好適であると予想される。多孔質シリコンインプラントは、約0.5×0.5×4mm(または、>0〜2mm×>0〜20mm×>0〜20mmの範囲)の大きさを有し得る。各インプラントは1mg未満、数mg、または数十もしくは数百mgの重量を有し得、各錠剤に数十もしくは数百μgの物質、場合により数mgまでの物質の「ドライペイロード」をドープすることが有利であり得る(または、前記物質を担持することができる)。これは、多量栄養素または多量薬物を送達するためには不十分であるが、μg〜mgの範囲の量を必要とする物質を送達するためには十分である。
【0019】
多孔質シリコンが治療または有効物質用担体として好適である1つの分野が、微量栄養素または微量ミネラルの対象者への投与である。
【0020】
身体が必要とする数種の微量ミネラル(例えば、セレン、クロム、マンガン及びモリブデン)は身体中に非常に低濃度でしか存在しない。微量ミネラルの所要量は<0.1mg/日であり得、なお不足していることは公知である(例えば、ヨウ化セレン)。このことは、経口摂取した微量ミネラルの少量(その量は大きく変動する)しか吸収されず、よって生体利用されないので、しばしば見られる。完全に吸収される移植シリコン錠剤により微量ミネラルを送達することは、不足の問題に対する魅力的な解決法である。更に、インプラント中に物質を配合することにより、物質を特定部位に(例えば、ヨウ素を甲状腺またはその近くに)送達することが可能である。
シリコンそれ自体が必須微量元素であり、勿論多孔質シリコンインプラントが他の有効物質を担持していなくとも該インプラントがシリコンを送達するために使用され得る。
【0021】
インプラントは1つ以上の有効物質を有し得る。2、3、4、5もしくはそれ以上の微量元素を有する多必須微量元素インプラントが提供され得る。
【0022】
他の元素は、治療目的で臨床上広く使用されている。例えば、うつ病に対してリチウム、抗菌性に対して金及び銀、新生物疾患に対して白金が使用されている。これらの元素は、対象者の生理機能において所望の「正常」ミネラル含量を達成する程多く投与され得ないが、微量ミネラルのレベルを可能ならば特定の局所での治療レベルに高められ得る。血流中の前記治療元素の用量レベルは、通常μg/lの範囲であり、これは多孔質シリコンインプラントの能力の範囲内である。前記インプラントは、前記元素(微量元素、有効物質中の元素、または周期表の幾つかの他の元素)がサンプル表面から0.35〜1000μmの深さに1〜90原子%の濃度で含浸されている多孔質シリコンサンプルからなり得る。より好ましくは、前記元素はサンプル表面から1〜1000μmの深さに1〜90原子%の濃度で存在し得る。より好ましくは、前記元素はサンプル表面から10〜1000μmの深さに1〜90原子%の濃度で存在し得る。更に好ましくは、前記元素はサンプル表面から30〜1000μmの深さに濃度で存在し得る。元素が哺乳動物の身体にゆっくり放出されることがしばしば有利である。このような遅い放出を促進するためには、多孔質シリコンの表面から比較的深いところに高濃度の元素を存在させることが有利である。
【0023】
治療薬または必須微量元素(または、他の元素)は非元素形態で送達され得る。例えば、金属イオンが患者の身体で利用され得る金属の塩が有効物質であり得る。物質が生理学的に有用な形態で送達される限り、侵食性材料(化合物形態または元素形態)中に担持させる方法は重要でない。
【0024】
制御量の薬物/微量栄養素/微量ミネラルを1ヶ月間、2ヶ月もしくは3ヶ月、1年、可能ならば数年間送達し得るインプラントを移植することは、患者が正しく食べたり、正しく錠剤を服用することに頼る方法に比して非常に有利である。特に、治療すべき疾患により患者が治療薬を規則正しく服用する困難さが増す場合にそうである。シリコンインプラントがゆっくり分解するように製造され得るという事実から、インプラントを長期間放置することが可能となる。徐放レベルの薬物送達が要求される場合、シリコンインプラントは長期間徐放的に実質的に一定(または、所定目的のために十分に一定)レベルの薬物またはミネラルを送達するように設計され得る。微量元素を送達するためにインプラントを使用することは、胃腸管疾患を患っているヒトや幾つかの元素を経口的に吸収することができないヒトにとって魅力的である。たとえ患者が経口的に治療可能であったとしても、ヒトの消化管で達成される吸収レベルは大きく変動し、同一レベルの経口栄養補助食品でも吸収されるミネラルの量は異なり得る。皮下吸収の場合ヒトによる差が有意に少なく、よってより容易に制御され得る。
【0025】
しかしながら、実質的にすべての薬物、特に大型の有機物質の特徴は耐熱性に欠けることである。シリコンインプラントを高温ドーピング法を用いて製造するならば、幾つかの分子を機能的状態で吸収するためのインプラントの構造シリコン材料を得ることができないことがある。しかしながら、このことは治療元素(例えば、Li、Se等)にとって問題でない。
【0026】
勿論、インプラントの深部及び/または多孔質骨格の固相に薬物を進入させるために熱ドライブイン以外の方法を使用することができる。本発明者らは、真空蒸発を使用したり、物質を主に各層の表面に付着させてインプラントを層状に構築したり、または実際に侵食性インプラントのバルク全体に物質を分布するために適当な方法を使用することができた。
【0027】
薬物の放出速度を制御するために公知のモノリシック薬物放出インプラントの幾何学的形状を使用することができ、シリコンインプラントからの物質の放出を制御するために類似の幾何学的設計方法を使用することができる。これは、インプラントの溶解速度を制御するために多孔質シリコンの多孔度及び孔径を調節することに付加され得る。インプラントは深さにより異なる多孔度を有し得る。
【0028】
勿論、シリコンインプラントが必ずしも純粋なシリコンまたは実質的に純粋なシリコンの侵食可能な担体材料から構成されなくてもよい。シリコン研究で炭化ケイ素や窒化ケイ素も同様の性質を有すると予想され得ることが示された。実際、一般論として、所望の腐蝕性(数ヶ月または数年にわたり通常一定速度で腐蝕する)を有し、放出レベルで非毒性であり、許容できない有害作用を持たないシリコン主成分の化合物は、担体材料として純粋な(または、実質的に純粋な)シリコンの好適代替物であろうが、なお現在のところシリコンが好ましい。
【0029】
第2の態様によれば、本発明は、移植対象者に対して投与すべき物質を含む多孔質または多結晶インプラントに関し、前記インプラントは実質的に元素から製造される。
【0030】
好ましくは、前記インプラントは多孔質または多結晶半導体から製造される。
【0031】
本発明者らが実施したインビボ試験で多孔質シリコンは皮下に移植したときに腐蝕することが分かったが、本発明者らは模擬体液(SBF)を用いてインビトロ試験を実施し、多孔質シリコン及び多結晶シリコンがSBFにおいて同様に挙動することが分かった。
【0032】
シリコン、特に多孔質シリコン及び/または多結晶シリコンが身体において制御的に生体侵食される好適材料であること並びに前記シリコンが身体(または、局所域)に薬物/物質を放出するために使用可能であることを更に説明する。インプラントはシリコン本体に規定される複数の薬物ペイロード域を有し得、前記シリコン本体は使用時に身体により再吸収されるように構成された複数のバリヤー領またはドアを有し、前記バリヤー領域は、第1バリヤー領域に隣接する薬物ペイロード域中の薬物ペイロードが身体に放出されてから第2薬物ペイロード域に隣接する第2バリヤー領域が第2薬物ペイロードが放出され得るように十分に再吸収され、よって少なくとも第1及び第2バリヤー領域の分解に時間差が設けられて第1及び第2薬物ペイロードが逐次放出されるように使用時に少なくとも第1バリヤー領域が侵食または再吸収されるような形状及び大きさを有することを特徴とする。
【0033】
第1及び第2薬物ペイロードは同一の薬物を含んでいても、または異なる薬物を含んでいてもよい。
【0034】
各バリヤー領域が異なる時間に腐蝕されるように構成され、各薬物ペイロード域から薬物ペイロードが異なる時間に放出されるように構成された3つ以上のバリヤー領域が存在し得る。
【0035】
前記バリヤー領域は多孔質シリコン、例えば中間孔質シリコンまたは微細孔質シリコンからなり得る。前記バリヤー領域は多結晶シリコンから構成され得る。シリコンの侵食速度は、多孔度(多孔度が高い材料はより速く腐蝕する)、孔径(同じ多孔度の場合小さい孔径の方がより速く腐蝕する)、及びバリヤーの厚さを調節することにより制御され得る。
【0036】
複数の薬物ペイロードを有する1つのインプラントの代わりに、薬物ペイロードが異なる時間に放出されるように構成した薬物ペイロード及びバリヤー領域を有する別個のインプラントを複数用いることが望ましいことがある。
【0037】
インプラントは錠剤からなり得る。錠剤は、それぞれが薬物ペイロードを含む薬物ペイロードレザバーのアレーからなり得る。錠剤は縦方向を有し得、各薬物ペイロードに関連するバリヤー領域は縦方向に離間され得る。前記インプラントは、各薬物ペイロードが放出されるように縦方向を横断する方向に、好ましくは直角に腐蝕されるように構成され得る。インプラントは縦方向に延びる表面部分を有し得、薬物ペイロード域は腐蝕させるために体液による攻撃時間を変える必要があるバリヤー領域により表面部分から離してもよい。各バリヤー領域の腐蝕時間の差は、バリヤー領域の厚さを変えることによりもたらされ得る。代替または追加として、インプラントのシリコン材料はバリヤー領域毎に異なる腐蝕性を有し得る(例えば、異なる多孔度を有する多孔質シリコンから製造され得る)。
【0038】
本発明の第3態様によれば、含浸物質を多孔質半導体材料と接触させるステップを含む多孔質半導体材料を含浸物質で含浸させる方法が提供され、その方法は、更に
(a)含浸物質を溶融相とするステップ、及び
(b)溶融した含浸物質を多孔質半導体材料に導入するステップ
を含む。
【0039】
幾つかの用途、特に医療用途では、多孔質半導体サンプルの表面から少なくとも数百nmの深さに物質を含浸させる方法が有利である。含浸させる物質を溶融相とすることにより深い含浸が達成され得ることが判明した。
【0040】
好ましくは、多孔質半導体材料の含浸方法は、更に多孔質半導体材料に導入した含浸物質を熱分解するステップを含む。
【0041】
有利には、多孔質半導体材料の含浸方法は、半導体材料に導入した含浸物質を酸化剤(例えば、酸素)と反応させるステップを含む。
【0042】
含浸物質は、含浸物質を半導体の内部に導入してから熱分解することにより多孔質半導体に固定され得る。或いは、含浸物質は、酸化剤(例えば、酸素)と反応させることにより多孔質半導体に固定され得る。
【0043】
本明細書中、用語「サンプル表面」は(多孔質シリコンを含めた)多孔質半導体のサンプルをその周囲から隔離する表面を意味する。前記用語は、該表面が多孔質半導体をその周囲から隔離する表面の一部を構成しない限り、孔を規定する表面を意味しない。
【0044】
本発明の第4の態様によれば、含浸物質を含浸させた多孔質シリコンのサンプルが提供され、前記サンプルはサンプル表面及び含浸元素からなる含浸物質を有し、前記含浸元素がサンプル表面から0.35〜1000μmの深さに1〜90原子%の濃度で存在することを特徴とする。
【0045】
本発明の実施態様を添付図面を参照しながら例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1A】図1Aは、移植から0週後にモルモットから外植したチタンインプラントの走査型電子顕微鏡写真(倍率3,000倍)である。
【図1B】図1Bは、移植から1週後にモルモットから外植したチタンインプラントの走査型電子顕微鏡写真(倍率3,000倍)である。
【図1C】図1Cは、移植から4週後にモルモットから外植したチタンインプラントの走査型電子顕微鏡写真(倍率3,000倍)である。
【図1D】図1Dは、移植から12週後にモルモットから外植したチタンインプラントの走査型電子顕微鏡写真(倍率3,000倍)である。
【図2A】図2Aは、移植から0週後にモルモットから外植した多孔質シリコンインプラントの走査型電子顕微鏡写真(倍率3,000倍)である。
【図2B】図2Bは、移植から1週後にモルモットから外植した多孔質シリコンインプラントの走査型電子顕微鏡写真(倍率3,000倍)である。
【図2C】図2Cは、移植から4週後にモルモットから外植した多孔質シリコンインプラントの走査型電子顕微鏡写真(倍率3,000倍)である。
【図2D】図2Dは、移植から12週後にモルモットから外植した多孔質シリコンインプラントの走査型電子顕微鏡写真(倍率3,000倍)である。
【図3A】図3Aは、移植から0週後にモルモットから外植した、ヒドロキシアパタイト(HA)を部分被覆した多孔質シリコンインプラントの走査型電子顕微鏡写真(倍率3,000倍)である。
【図3B】図3Bは、移植から1週後にモルモットから外植した、ヒドロキシアパタイト(HA)を部分被覆した多孔質シリコンインプラントの走査型電子顕微鏡写真(倍率3,000倍)である。
【図3C】図3Cは、移植から4週後にモルモットから外植した、ヒドロキシアパタイト(HA)を部分被覆した多孔質シリコンインプラントの走査型電子顕微鏡写真(倍率3,000倍)である。
【図3D】図3Dは、移植から12週後にモルモットから外植した、ヒドロキシアパタイト(HA)を部分被覆した多孔質シリコンインプラントの走査型電子顕微鏡写真(倍率3,000倍)である。
【図4A】図4Aは、数千個のインプラントを形成するために微細機械加工されるシリコンウェーハの概略図である。
【図4B】図4Bは、2つのインプラントの構造を示す。
【図4C】図4Cは、2つのインプラントの構造を示す。
【図5】本発明により投与され得る元素の表を示す。必須微量元素である及び/または不足の問題を有するとして記号で示した元素はインプラントに好ましく配合される元素である。
【図6】再吸収可能な錠剤上に複数の薬物ペイロードが設けられている本発明の別の実施態様を示す。
【図7】別の多錠剤インプラントを示す。
【図8】別の多錠剤インプラントを示す。
【図9】別の多錠剤インプラントを示す。
【図10】4つのモルモット群の各群についての毎日の平均(±標準誤差)体温を示す。
【図11】4つのモルモット群の各群についての毎日の平均(±標準誤差)体重を示す。
【図12】7日の制御期間及びその後の1、4、12及び26週間のモルモットの平均(+標準誤差)体温の比較を示す。
【図13】7日の制御期間及びその後の1、4、12及び26週間のモルモットの平均(+標準誤差)体重の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1A〜1Dは、12週の試験期間中モルモットに皮下移植したチタンインプラントではその表面が殆ど変化を示さず、該チタンインプラントが生物学的不活性であることを示す。
【0048】
図2A〜2Dは、多孔質(多孔度30%)シリコン皮下インプラントを0、1、4及び12週目に検査したとき該インプラントの多孔質表面が実質的に変化していることを示す。多孔質シリコンが、バルクシリコン本体(その上に多孔質シリコンが形成されている)上の多孔質シリコンの層がその場で完全に侵食される程度にかなり腐蝕している。
【0049】
インビトロ試験で使用したディスクは下記するように作成した。
【0050】
(a)チタンディスク
純度99.6+%のチタン箔を、厚さ0.5mm及び直径11.5mmの打抜きディスクの形態でGoodfellow Metals Limitedから購入した。その後、前記ディスク(の両面)を12μmのダイアモンド粉を用いて研磨して、打抜き過程により導入されたかえりを除去し、両面上の表面の粗度を均等にした。次いで、10個のディスクを超音波撹拌したアセトン浴において20分間清浄した後、一度に化学エッチングした。ディスクを、(表面損傷を除くために)HO(35ml)、HNO(10ml)及び40%HF(5ml)の撹拌溶液中で等方的に2分間エッチングした。エッチング過程をDI水で停止し、ディスクをDI水で十分に濯いだ後、濾紙上で乾燥した。
【0051】
(b)バルクシリコンディスク
幅12mmのディスクを、直径〜5”(100mm)のCZウェーハ(N、リンドープした0.0104.0.0156Ωcm抵抗率、0.5mm厚さ、(100)配向)から特注ドリルビットを用いてのこで切り落とした。ディスクを“meths”中、次いで酢酸エチル中、次いで超音波撹拌したアセトン浴において清浄した。HNO(25ml)+40%HF(5ml)+酢酸(5ml)の「研磨エッチング」を用いて、ディスクの端を滑らかにし、のこ損傷を除去し、両面の表面粗度を均等にした。10個のディスクを連続撹拌しながら一度に5分間エッチングし、その後DI HOで停止し、濯ぎ、濾紙上で乾燥した。
【0052】
(c)多孔質シリコンディスク
化学的に研磨したバルクSiディスクを、両面及び端部を多孔質とし得る特注電解セルを用いて順次1回に1つずつ陽極酸化した。ディスクの一端を白金“クロック−クリップ”により保持し、カソードを形成する円筒状Ptるつぼ中の電解液にステッピングモータにより制御しながら該ディスクを上下させた。各ディスクを40%HF水溶液を用いてポテンシオスタット的に(すなわち、1.0Vの一定電圧で)10分間陽極酸化した。この種の配置では多くの電流がメニスカスを介して流れる。ここでは、前記メニスカスをディスクの中心までゆっくり上昇させ、半陽極酸化したディスクを取り出し、乾燥し、次いで逆にし、他の半分も同様に陽極酸化する方法を採用した。この方法により、十分に陽極酸化したディスクを〜30μm厚さの多孔質シリコン被覆で完全に被覆した。前記ディスクをDI HOで濯ぎ、濾紙上で乾燥した。
【0053】
(d)滅菌
すべてのディスクは、圧力流下134℃で10分間オートクレーブ処理する滅菌前空気中で保存した。
【0054】
図3A〜3Dは、ヒドロキシアパタイトを被覆した多孔質(多孔度30%)シリコンの同等の腐蝕/再吸収を示す。腐蝕速度は、被覆した多孔質シリコンの場合遅いようである。シリコンを他の材料で被覆すると、使用した被覆材料に依存して早期段階での腐蝕が遅くなったり速くなったりする。これは、最初に物質を高量投与後低量(多分長期間)投与するか、または最初に低量投与(または投与せず)後高量投与するために使用することができる。
【0055】
図2及び3は、哺乳動物において多孔質シリコンが徐々に腐蝕することを示す。
【0056】
試験は、シリコンインプラントがモルモットに対して重大な問題を引き起こさなかったことを確認するためにも実施した。この試験は、生物学的に許容され得る材料としてのシリコン、特に多孔質シリコンが皮下部位において生存可能であることをも示す。病理学的試験結果は、本明細書の一部をなす「多孔質シリコンインプラントのインビボ試験」及び「評価点」と題する以下の段落に示す。
【0057】
上記した12週試験の後に、26週試験を実施した。この試験でも全く一致した結果が示された。すなわち、多孔質シリコンは着実に腐蝕し、インプラントが腐蝕しても被験者に有害な影響を与えなかった。肉眼で見えるほどの炎症応答はなく、有意な線維性瘢痕は形成されず、腐蝕したシリコンの排出は問題でなかった。
【0058】
ポリマーの腐蝕は薬物の送達機構として公知であり、試験されているので、検討した試験に裏付けられた本発明は十分に実現可能である。しかしながら、長期間のインビボ薬物送達のために半導体錠剤を使用するという思想は完全に新規である。
【0059】
図4は、数千個のインプラント錠剤42を作成するために機械加工されるシリコンディスク40を示す。数百もしくは数千個の錠剤が直径8インチ(200mm)のウェーハから作成され得ると考えられる。
【0060】
前記ウェーハを、深さ全体が多孔質になるように処理し、ばらばらの錠剤に分割した。次いで、皮下挿入及び許容性を高めるために錠剤を滑らかとした。図示するような細長い錠剤は針を用いて注射するのに適している。細長い錠剤の丸みを帯びた端部44がこれを助け得る。錠剤は、図4Bに示すような形状を取り得る。
【0061】
図4Cに示す別の構成では、直径20〜25mmのディスク46が示されている。この錠剤は外科的に皮下移植される。
【0062】
インプラント42,46は体内で完全に侵食し、外科的に取り出す必要はないことに理解されたい。
【0063】
図5は、シリコンインプラントに配合するのに好適な元素を示し、シリコン材料の腐蝕/再吸収に応じて活性物質(元素)が送達される。必須微量元素として示されている元素、最も好ましくは不足しがちな必須微量成分として示されている元素を1つ以上含むインプラントが提供されると予想される。
【0064】
勿論、特定疾患のために治療元素または物質を投与することも考えられる。
【0065】
また、過剰の元素または過剰の物質に関する問題の場合には、インプラントは、過剰物質が正しく機能するのを防ぐために遮断薬、または過剰物質と結合するかまたは反応させるために或る物質を投与して、有効な過剰物質を低減するために使用することができる。例えば、ケイ酸の形態のシリコンはアルミニウム排泄を効果的に促進し得ることが提案されている。
【0066】
鉄のような元素を本発明により投与できない理論的理由はないが、インプラントを移植し得るように十分高量のFeをシリコン錠剤に配合することは実際困難であり得る。
【0067】
シリコン微量ミネラル錠剤に好ましく配合される元素には、Vn、Cr、Mn、Se、Mo(栄養要件)、Li、Ag、Au、Pt(治療効果)が含まれる。
【0068】
シリコン以外に、有効物質用担体として使用するための他の好適な生物腐蝕性半導体には、ゲルマニウム、炭化ケイ素及び窒化ケイ素が含まれる。半導体材料は任意にドープされていてもよい。炭化ケイ素は抗血栓形成性を有し得、窒化ケイ素は整形外科的用途を有し得る。
【0069】
薬物/望ましい物質をインプラントに配合する方法が物質の有効性を低下させない限り、またシリコンを分解したときに分子及び元素が活性である形態で放出される限り、分子及び元素が送達され得ない理由はない。
【0070】
ミネラル/微量元素の場合、微量ミネラル錠剤を製造する1つの方法は以下の通りである:
(1)多孔質シリコンの作成−例えば、低濃度の中間孔(例えば、多孔度30%)を導入するためにシリコンウェーハ全体を陽極酸化することによる。これは、公知方法(例えば、部分的な電気化学的溶解を達成するためにHFを使用する多孔質シリコンの作成を記載している米国特許第5,348,618号明細書参照。この明細書の開示内容は援用により本明細書に含まれるとする。)によりHF酸及び電位を用いて実施される;
(2)錠剤を滑らかとする(鋭い端部は望ましくない)ためにシリコン半導体業界(または他の技術)で一般的なウェーハダイシング及びウエットエッチングを用いる;
(1)及び(2)の順序を逆にしてもよい。
(3)錠剤の含浸 − 例えば、含浸すべきミネラル(錠剤は2種以上のミネラルを含み得る)の水溶液中に錠剤を浸漬し、その後熱ドライブイン方法(例えば、800℃のオーブン中に飽和錠剤を30分間置く)を用いてミネラルに入れる;
(4)(所要により)錠剤をきれいにする。
【0071】
物質をインプラントに配合する別の方法は、ミネラル塩を表面上に置き、不活性雰囲気(例えば、アルゴン)中でミネラルが溶融し、多孔質構造を湿らすまで加熱することからなる。次いで、インサート/ウェーハを冷却し、過剰物質を水中で洗い落としてもよい。その後、熱ドライブイン操作を実施してもよい。
【0072】
ミネラルを単に孔中に残すよりもミネラルを多孔質構造の固相に進入させることが好ましい。こうすると、ミネラルの溶解速度が十分に制御され、ポリマーを主成分とする系で一般的な「バースト効果」の問題が解消される。
【0073】
錠剤の溶解速度が分かっており、錠剤の経時的な挙動、錠剤のドーピングレベル及び均一性が分かっていると、長時間にわたり投与される物質の用量を制御することができる。
【0074】
図6は、多レザバーシリコン錠剤60の概略断面図である(一定縮尺でない)。錠剤60は、界面65において第2部分64に、例えば医用接着剤により(または、ウェーハ結合により)連結した第1部分62を含む。この例では、第1及び第2部分は相互に鏡像であり、同一である(対称である)。錠剤の半分62または64は、側辺すなわちリム部分66及び上(または、下)壁部分68を有する。錠剤の半分を、完成錠剤に組立てたときに薬物72を含む多数のレザバー70を有するように微細機械加工した。レザバーはシリコンの島状壁74で隔離されている。(リム部分66、上/下部分68及び島状壁74を含めた)錠剤60は、移植したとき身体により腐食、吸収される再吸収性多孔質シリコンから製造される。2つの部分62及び64が実質的に同一であるという事実から、機械加工する形は1つだけなので製造コストが下がる。
【0075】
図6に示す具体例では、距離D4が最短であり、領域D4の壁が最初に多孔質シリコンが腐食されて破れ、よってレザバーR1の内容物が最初に放出される。次に、前記領域において次に薄い壁部分76が腐食して破れることによりレザバーR2及びR3の内容物が放出される。次に、壁部分78が腐食してレザバーR4及びR5の内容物が放出される。以後同様である。
【0076】
バリヤー壁の厚さを変えることにより、レザバーが順次開くにつれて薬物を徐放的に制御的且つ持続的に放出することが可能である。
【0077】
距離D1、D2及びD3は、「蓋」厚さD4がリム厚さD2よりも十分に薄いようにする。よって、レザバーの深さを微細機械加工して、シリコンウェーハの周囲端の近くよりも外のレザバーの放出時間を制御する。同様に、D3は、隣接レザバー間の島状壁74(1つのレザバーが体液に対して開放された後に島状壁の腐蝕が起こる)ではなく、最初に腐食される「蓋」厚さであるように隣接レザバー間で十分広い。
【0078】
勿論、錠剤の周辺表面を腐蝕する代わりにまたはそれに加えて、隣接レザバー間の分割壁を腐蝕させてレザバーを段階的に開放することが好ましい。
【0079】
薬物材料のレザバーは任意の形態の有効物質、例えば液体薬物、粉末薬物または固体薬物を保持し得ると考えられる。薬物は複合有機分子であり得、または前記した微量栄養分または微量ミネラルであり得る。
【0080】
薬物のレザバーは、微量ミネラル錠剤、または他の錠剤/インプラントを含み得る。レザバー孔は、同一または異なる有効物質を含有し得る及び/または異なる/同一の速度で腐蝕され得る複数の侵食性薬物/元素送達錠剤/インプラントを含み得る。従って、レザバーに対するドアは、錠剤に生理学的に接近し得るように別々に侵食され、前記錠剤は数日間、数週間または数月間にわたり制御的に有効物質を放出する。レザバー中に数個の錠剤、数十個または数百の錠剤が存在し得る。
【0081】
レザバーは、必ずしも再吸収性多孔質シリコン材料のバルク中に機械加工した孔であるする必要はなく、壁に比して有効物質を差別的に含浸させた領域であり得る(または、他の方法で壁領域に比して異なるレベルの有効物質を有する領域であり得る)。従って、インプラントは、(多分別個の部分品から作成されるが、実際には孔を持たない)充実体であり得る。しかしながら、現在、孔のアレーを微細機械加工することが最良であろうと考えられている。
【0082】
壁領域は、レザバーの内容物の放出時を遅らすための時延手段であると見做され得る。
【0083】
シリコン技術は、実際本発明で有用な属性である薬物ペイロードを区画化するために理想的に適していると考えられる。基本的なアイデアは、多数(例えば、10〜10)の独立レザバーをSiの再吸収性ブロックに微細機械加工して薬物放出速度を制御する新しい方法を提供することである。各レザバーからの放出時間は、インビボで次第に侵食される微孔質「蓋」の上部(overlying)厚さにより予め決められる。
【0084】
図6の例は、2つのSiウェーハ全体を直角に陽極酸化し、次いで両ウェーハ中のフォトリソグラフィーにより規定した孔のアレーを深ドライエッチングし、最後にレザバーを充填後両方を結合することにより作成され得る。放出速度は、容量分布及びアレー内の蓋厚さ分布により決定される。この場合、「蓋」を介する高分子量薬物(典型的な薬物であり得る)の拡散時間を侵食時間に比較して非常に長くする。これは、蓋トポグラフィー(幅<2nmの微孔を使用)または孔表面化学(例えば、親水性薬物では疎水性)により達成される。或いは、薬物堆積物は、生理学的流体がレザバーに流れるまで固体形態である。
【0085】
図6の構成は、マルチレザバーの時差放出インプラントを提供するための1つの方法である。同様の効果が、非常にゆっくり腐蝕する材料からなる蓋73及びより速く腐蝕する材料からなるベース75が示されている図7のインプラント71により達成され得る。蓋71とベース73の間の平らな界面により、インプラントは容易に組立てられる。深さ77により、レザバーの放出時間が制御される。
【0086】
図7のレザバーの1つは多数の微量ミネラル多孔質シリコン錠剤79を含有するように図示されている。勿論、蓋73は、ベースと同一速度で腐蝕する材料(例えば、同一材料)で作成され得る。
【0087】
図8は、構成及び平らな下面86を示す。蓋のプロフィールは、特定のレザバーに隣接する領域の蓋及びベースが通常同時に突破されるようにベースの「ドア」と整合している。
【0088】
図9は、ベース及び蓋92を有するインプラント90を示す。ベース91は、通常同じ深さのレザバー93及び通常同じ深さのバリヤー領域94を有する。蓋92は、レザバーに時差をもって逐次突破されるように構成されるステップド/プロフィールド上面輪郭を有する(ベースではなく、蓋がまず腐蝕する)。
【0089】
移植されるマルチレザバーは完全に再吸収可能であり、外科的に除去する必要はないが、本発明は腐蝕性ドアを有する非腐蝕性インプラントにも適用され得る。インプラントの非腐蝕性部分はバルクシリコンであり得る。
【0090】
上記したタイプの送達システムは、従来の「モノリシック」ポリマーシステムよりも送達速度を非常に良好に制御し、予測できる。後者の場合、薬物の放出速度は、少なくとも徐放されている間曲がりくねった孔網状構造を介する拡散によりしばしば決定される。
【0091】
図6〜9の具体例により達成される技術的効果は、シリコン以外に他の腐蝕性材料を用いて達成され得ることも認められる。実際、1態様で、本発明は多レザバーの段階的薬物放出インプラントの構築のためのシリコン材料に限定されない。任意の好適材料が使用され得る。
【0092】
別の態様によれば、本発明は、複数のレザバー、前記レザバー上に設けられた複数の有効物質チャージ、及び前記レザバーに隣接して設けられている複数のバリヤー領域またはドアを有するインプラントに関し、前記ドアの移植したときの侵食時間は異なり、レザバーの内容物の放出に時間差が生ずるように使用時にドアが逐次破れるように構成されていることを特徴とする。
【0093】
最高10個のレザバー、数十のレザバー、場合により数百のレザバーもしくはそれ以上のレザバーが存在し得る。
【0094】
また、本発明はインプラント中の有効物質の放出に時間差を設ける方法に関する。
【0095】
シリコンが余り急速に再吸収しないことも重要である。少なくとも1ヶ月、最も好ましくは少なくとも2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年もしくはそれ以上取り替える必要のないインプラントが好ましい。
【0096】
インプラント材料中に埋め込んだ薬物を放出するためにインプラントの侵食を使用する場合の問題は、インプラントの表面積が経時的に変化し(または、経時的に変化し得る)、よって薬物送達も経時的に変化することである。例えば、球は小さくなる。この問題は、外部表面の収縮を補うために内部表面が広がるようにインプラントを幾何学的に設計することにより部分的に解消され得る。
【0097】
多孔質シリコン及び多結晶シリコンにより現在実現され得る代替または相補的方法は、薬物/有効物質をインプラントの異なる領域に異なる濃度で存在させ得ることである。これは、多孔性シリコン本体の深さ全体の孔径を調節するかまたは粒界の粒径/数を調節することにより達成され得る。粒界の数/粒径は、多結晶シリコン本体の深さ全体で調節され得る。よって、露出表面積の減少のバランスを取るために薬物/微量ミネラル濃度が中心に向かって増加しているために、多孔質シリコン錠剤は再吸収されるにつれて経時的に実質的に一定速度で薬物を送達することが可能である。
【0098】
実質的に2次元の形状(例えば、ディスク)は表面積の変化をさほど受けず、(図4B及びCに示す)細長い線形状も同様である。
【0099】
微孔質シリコン内に保持され得る物質の量に影響を及ぼす多孔度(多孔度が大きくなると、物質の含有能力も大きくなる)に加えて、孔径もインプラントの溶解速度に影響を及ぼし得る。従って、多孔質シリコンインプラントの内部領域は外部領域よりも速く腐蝕するように構成され得、これにより露出表面積の損失が補償される。
【0100】
多くの国では手術または治療によるヒトまたは動物の身体の治療方法の特許をまだ取ることはできないが、幾つかの国(例えば、米国)では特許を取ることができる。特許を受けることができる国で上記発明に対してパリ条約優先権が確実に主張できるように、本発明は、シリコンインプラントを移植し、疾患を改善または緩解させるかまたは前記疾患の発症を予防すべく前記インプラントを腐蝕または再吸収させて有効物質を放出させることによるヒトまたは動物の身体の疾患の処置、治療または予防方法をも提供する。前記インプラントは、通常皮下移植される。
【0101】
更に、前記技術は、治療物質をたぶん身体の局所に放出するために使用され得る。治療物質は「有効物質」である。
【0102】
シリコン構造、特に多孔質シリコン及び多結晶シリコン構造が重大な有害作用を呈することなく長期間(数ヶ月)にわたり身体により分解され得ると、有効物質(例えば、ミクロ栄養分及び薬物)送達インプラントが製造され得ることが認められる。移植の有害作用を示さない証拠から、本発明者らは成功が合理的に予測され得た。それは推測を越える。
【0103】
現在、インプラントに対する薬物ペイロードの物理的サイズを制限すると、実際の使用を微量ミネラルまたは高レベルを必要としない他の物質(例えば、遺伝子操作したタンパク質、ペプチド、及び遺伝子断片、及び他のDNA物質)の送達に限定することが考えられる。しかしながら、実際に巨大薬物の送達インプラントが製造されるならば、本発明は必ずしも前記分野に限定されない。
【0104】
「有効物質」は、全体的に有効なものを指す。望ましくない細胞に対して毒性の毒素/望ましくない生理学的過程を干渉する毒素であり得る。例えば、抗ガン剤は、その目的は癌細胞を殺すことであるが、「有効」と見做される。
【0105】
本明細書中、「侵食」、「腐蝕」、「再吸収」という用語が本明細書中で使用されていることに注目されたい。腐蝕のメカニズムは十分に公知でないが、侵食、腐蝕が起こることは認められている。「生物学的侵食」、「生物学的再吸収」、「生分解」も他の使用可能な用語である。現在、シリコン/担体材料が細胞に吸収されるかまたは細胞外にとどまっているかが重要であると見做されていない。本発明では、使用される「腐蝕」という用語間の正確な生物学的区別に限定することを必ずしも意図していない。
【0106】
多孔質半導体材料の含浸
本発明の1態様に従った多孔質シリコンサンプルの多数の金属(マンガン、銀及びクロム)または前記金属の化合物(例えば、酸化物)による含浸を示すために実験を実施した。金属塩を多孔質シリコンサンプルの表面上に置いた。塩の温度を、塩が溶融するまで上昇した。次いで、溶融した塩を多孔質シリコンのバルクに導入した。熱を加えると、塩が分解して金属または金属酸化物が生じた。
【0107】
出発材料は、3〜5Ωcmのn型(100)シリコンであった。これを、50/50容量比のエタノール及び40重量%のフッ化水素酸の混合物において陽極酸化した。陽極酸化電流は100mAcm−2であり、陽極酸化時間は5分であった。こうして、厚さ30ミクロン、重量分析により測定して38%の多孔度を有する多孔質シリコンフィルムが得られた。この方法により作成した(非陽極酸化のバルクシリコン上に担持されている)多孔質シリコンのサンプルを分割して、約2×2cmの大きさのピースを複数作成した。
【0108】
選択した金属塩は、硝酸マンガン(II)、硝酸クロム(II)及び硝酸銀(II)であった。本発明の1態様に従う一般的方法を採用した。硝酸塩を多孔質シリコンサンプルの表面上に置いた。多孔質シリコンのサンプルを、多孔質面を上向きにしてグラファイトブロック上に置いた。前記表面上に、大量の金属硝酸塩粉末を置いた。その上にシリコンウェーハを置いたグラファイトブロックをCVD反応装置に装入した。反応装置を組立て、大気から閉鎖した。CVD反応装置にアルゴン(不活性雰囲気を作成するため)または水素(還元雰囲気を作成するため)を流した。
【0109】
その後、金属硝酸塩の溶融が観察されるまでサンプル温度を上げた。数個のサンプルでは、この初期の温度期間後温度を更に上げ、塩は泡を発生しながら分解するのが観察された。高温でしばらく置いた後、サンプルを室温に冷却し、CVD反応装置から取り出した。次いで、この方法により作成した多数のサンプルを脱イオン水で洗浄し、乾燥した。洗浄後、金属含量を開裂端部上でEDXにより分析した。
【0110】
各含浸方法毎に、含浸前に多孔質シリコンのサンプルの重量を測定した。含浸後、サンプルを脱イオン水で洗浄し、重量を再度測定した。試験した3種の硝酸塩の各々で、重量の増加が観察された。3種の硝酸塩はすべて水にかなり可溶性であるので、重量の増加から、多孔質シリコンサンプルに加えた熱により硝酸塩は多分金属または金属の酸化物に侵食されたことが示唆される。
【0111】
上記した一般的方法に一致する硝酸マンガン(II)に対する方法を以下記載する。多孔質シリコン表面1cmあたり約0.5gの粉末を与えるのに十分な硝酸マンガン粉末を多孔質シリコンサンプルの表面上に置く。700cm/分の流速で不活性ガス(アルゴン)をCVD反応装置中に10分間流した。この時点で、その上にウェーハを置いたグラファイトブロックの温度は50℃に上昇した。硝酸マンガンの溶融が観察され、温度はこの値(50℃)で1時間維持した。次いで、温度を150℃に上昇し、この値を更に1時間維持した。この段階で、溶融塩からのガスの発生が観察された。次いで、温度を室温に冷却し、サンプルを取出した。次いで、サンプルを脱イオン水中に約5分間浸漬することにより洗浄した。こうすると、多孔質シリコンの表面上に残存している大部分の塩が除去されることが観察された。その後、前記サンプルを分割して、元素分析用サンプルを得た。
【0112】
硝酸マンガンで処理した多孔質シリコンサンプルを水で洗浄して、表面上にある過剰の未反応塩を除去した。しかしながら、多孔質シリコン基板上で塩が溶融したことを明らかに示す区域は残っていた。サンプルの開裂部分(開裂は多孔質シリコンとバルクシリコンの境界またはその付近で生じた)の元素分析を使用して、マンガンの含浸度を調べた。マンガンに関するすべての例において、実験で使用した基板では金属または多分金属酸化物が多孔質層の底部に30μmの深さに達していた。マンガンは、溶融塩が存在している区域の下にのみ観察された。孔の底部の下の組成でも、EDXで容易に検出し得るのに十分な量であり、1原子%よりも多いことが示唆された。EDXの方法は1原子%より多い金属濃度を検出することができることに注目すべきである。硝酸マンガンによる処理の場合、上記方法を水素雰囲気及びアルゴン雰囲気中で実施した。いずれの雰囲気においても、同等の深さで同等の濃度のマンガン原子が観察された。
【0113】
前記した一般的方法に一致する硝酸クロム(II)に対する方法は上に記載した硝酸マンガン(II)の方法と同一であった。ただし、グラファイトブロックを90℃に加熱して溶融させ、1時間後この温度を150℃に上げ、この値を更に1時間維持した。前記した一般的方法に一致する硝酸銀(I)に対する方法も上に記載した硝酸マンガン(II)の方法と同一であった。ただし、グラファイトブロックを250℃に加熱して溶融させ、1時間後この温度を450℃に上げ、この値を更に1時間維持した。
【0114】
硝酸クロム及び硝酸銀で処理したサンプルについてEDX分析を同様に実施した。処理した多孔質シリコンサンプルを水で洗浄して、表面上に残っている過剰の未反応塩を除去した。サンプルの開裂部分(開裂は多孔質シリコンとバルクシリコンの境界またはその付近で生じた)の元素分析を使用して、塩の含浸度を調べた。(硝酸クロムで処理したサンプルの場合)酸化クロムは実験で使用した基板では多孔質層の底部に30μmの深さに達していた。(硝酸銀で処理したサンプルの場合)銀は実験で使用した基板では多孔質層の底部に30μmの深さに達していた。硝酸クロム及び硝酸銀で処理したサンプルの場合と異なり、銀は多孔質構造全体に分布しており、溶融物の下の区域だけに限定されなかった。孔の底部の組成でも、EDXで容易に検出し得るに十分な量であり、1原子%よりも多いことが示唆された。
【0115】
マンガンに対する含浸方法を周囲空気中で実施した。すなわち、硝酸マンガンを多孔質シリコンフィルムの表面上に置いた。フィルムを一般的実験室熱板上に置いた。サンプルを熱板上で56℃に70分間、150℃に70分間加熱した。こうして、多孔質シリコン層の表面上にブラックフィルムが形成された。このフィルムのEDX分析から、層全体に1%を越える量のマンガンが示された。数ミクロンの深さでより高濃度(数原子%)のバンドもあった。
【0116】
本明細書に記載されている方法と類似の方法を、金属塩以外の含浸物質を多孔質半導体(多孔質シリコン材料は多孔質半導体の亜群である)に導入するために使用することができる。含浸物質は(本明細書に記載の金属硝酸塩を含めた)金属塩及び/または有効物質であり得る。含浸物質は周期表の元素であり得る。本明細書に記載の方法と同一または類似の方法で含浸させたサンプル表面を有する多孔質シリコンのサンプルを、本明細書の他のところに記載したインプラントの構成部分として使用することができる。
【0117】
多孔質シリコンインプラントのインビトロ試験
本試験の目的は、モルモットの皮下部位に移植したときの多孔質シリコンの生体親和性を評価して、移植可能なデバイスに使用するための材料の適性を試験した。試験を1、4、12及び26週にわたり実施した。
【0118】
実験は、医用デバイスの生物学的評価のための国際基準、パート6(ISO 10993−6)に詳述されている方法に従って実施した。
【0119】
試験標本はディスク(直径10mm×厚さ0.3mm)の形状であった。表面特性の操作は、生物活性(すなわち、組織付着を促進する)タイプの1標本(以下、「多孔質シリコン」と呼ぶ)、生物不活性(すなわち、生存組織と相互作用を生じない))タイプの1標本(以下、「バルクシリコン」と呼ぶ)、及びヒドロキシアパタイトを予備被覆した生物活性タイプの1標本(以下、「被覆した多孔質シリコン」と呼ぶ)を作成することを目的とした。1、4及び12週研究では1動物あたり1個の各標本タイプ及び1個の対照(試験標本と同じ大きさのチタンディスク)を使用した。26週研究では1動物あたり2個の多孔質シリコンサンプル及び2個のチタンサンプルを使用した。
【0120】
1、4及び12週試験では、全部で30匹のモルモット(各週試験につき10匹のモルモット)を使用した。26週試験では、更に5匹のモルモットを使用して、モルモットの総数を35匹とした。1、4、12及び26週の期間前に7日間の試験のパイロット相を設けた。パイロット研究は、3匹のモルモット(1、4及び12週群の各群から1匹)で実施した。パイロット研究は成功し(すなわち、インプラントに対して肉眼で見える程の反応は生じなかった)、研究を計画通り完全実施した。
【0121】
実験前、動物を実験動物ハウス(EAH)環境で少なくとも5日間順化させた。この期間後、同定目的で、また実験中体温をモニターできるように各動物にトランスポンダー(Biomedia Data Systems)を移植した。トランスポンダーは、背部のその後のシリコン標本または対照標本の移植を妨げない部位に12ゲージ針を用いて皮下に移植した。注入部分の体毛を剃り、局部麻酔した。
【0122】
4〜7日後、動物を全身麻酔(1.5〜2.5%ハロタン)し、4個の試験標本を移植した。動物の背部を剃り、皮膚を切開した。皮下ポケットを、該ポケットの底が切開線から少なくとも15mmとなるように鈍的剥離して作成した。1個のインプラントを各ポケットに配置し、インプラントを互いに少なくとも5mm離した。4個のインプラントが配置され得るように4個のポケットを作成した。適当な縫合材料を用いて切り口を閉じた。
【0123】
体温を(7日間のパイロット研究を含めた)研究期間中手術後1日2回(トランスポンダーを用いて)測定した。インプラントの各部位を綿密に検査し、反応の程度を調べた。各インプラント部位の直径を測定して、膨潤を調べ、赤みを採点した(0=正常、周りの皮膚との差違なし;1=数個の明るい赤色斑点;2=均一に明るく赤色化したかまたは複数の暗赤色斑点;3=インプラント部位全体にわたり暗赤色)。当該研究期間(1、4、12または26週)終了後、動物に過剰量のペントバルビタールを投与して動物を殺した。インプラント部位を精査し、各部位の標準組織切片を取り、ヘマトキシリン及びエオシンで染色し、Zeiss Axioplan光学顕微鏡写真機を用いて各種病理学的特徴を評価した。急性炎症及び線維症を含めた組織応答を反映する広範囲の病理学的特徴を、各特徴にスコアを割り当てることにより等級付けた。評価点を時間及びインプラント部位に関して比較することにより、シリコン材料を客観的に比較した。評価した各病理学的特徴に対する評価点を割り当てる際に使用した基準を表A〜Dに要約する。各インプラント部位の標本タイプは無作為に選び、実験及び評価は盲検で実施した。
【0124】
各標本タイプ及び各時間のスコアまたは値を、適当なノンパラメトリック検定を用いて対照標本と比較した。分散の多元分析を、可能ならば群間の差に対するアドホック試験と一緒に使用した。
【0125】
平均体温及び平均体重のデータを、それぞれ図10及び図11にグラフの形で示す。すべての3群(1、4及び12週)の動物では、手術後7日間体温の有意な上昇(図9)及び体重増加の有意な低下(図10)があった。26週の動物群では、同様の変化が観察されなかった。その後、体温は確実に低下し、体重は確実に増加するようであり、インプラントに対する慢性的な炎症反応が生じなかったことが示された。体温及び体重増加に対する一時的な影響は、外科処置のためであり、インプラントの種類と無関係である。
【0126】
組織学的評価を実施するとき、各実験動物に対する試験部位及び対照部位の割付けは知らされておらず、組織学的検査は盲検的に実施した。評価後、結果をデコードした。各インプラントタイプに対する動物数、組織学的特徴及び時点の評価点の要約を表E〜Hに示す。一般に、剖検試験で、3つの時点のいずれでも有意な病理学的変化は認められなかった。特に、すべてのインプラントが各移植部位から容易に抽出され、周りの結合組織に対する繊維性拘束の証拠は見られなかった。最も早い時点で、各部位は軽〜中程度の血管新生を伴う明らかな急性炎症を示した。26週で、試験した20部位のうち3部位がマクロファージ、リンパ球及び所々に異物巨細胞のカフから構成される移植部位の近傍に軽〜中程度の慢性炎症/線維症を示した。各場合で、前記変化は殆どもっぱら移植部位に限定された。組織学的所見は、剖検で記録した特徴と完全に一致していた。4つの病理学的クラス(表E〜H)の各々のスコアを、時間(すなわち、1週対4週対12週対26週)及びインプラントのタイプ(各シリコンタイプのスコアをチタン対照と比較した)に関して比較した。統計分析の詳細を表I及びJに示す。
【0127】
1週目の急性炎症は、4週目及び12週目に比して有意に高かったが、4、12及び26週目で差は見られなかった(表I)。1週目及び4週目での組織変性は12週目と比較したとき有意に高かったが、1週目と4週目との間に差はなかった。いずれの週においても試験サンプルと対照サンプルの間で組織変性/壊死の点で有意な差はなかった。1週目及び4週目での新血管/肉芽組織形成は12週目及び26週目と比較したとき有意に高かったが、1週目と4週目との間に有意差はなかった。4週目での慢性炎症は1週目、12週目及び26週目と比較したとき有意に高く、12週目での慢性炎症は1週目と比較したとき有意に高かった。一般に、前記した有意な所見は、以下に要約する3つの切開時点で観察された病理学的変化の3つの明確なパターンと一致していた。
【0128】
移植後の1週目のすべての部位で、材料を移植するための外科処置により生ずる損傷に対する直接的応答を反映する特徴を示した。多くの部位が、移植部位の組織の好中球及びマクロファージによる浸潤を伴う中程度の急性炎症を示した。これらの変化は、大部分の部位で結合組織の浮腫、巣状出血、移植部位の縁の増殖性毛細血管係蹄による壊死及び早期侵襲を伴っていた。いずれの部位でも、前記変化はインプラントの縁を越えて上の周囲皮膚または下の骨格筋にまで広がっていなかった。
【0129】
非常に少数の部位が移植後4週目に持続性の低レベルの急性炎症を示したが、大部分の部位は、1週目に記載した特徴の進行に一致した特徴を示し、シリコンインプラントに対して反応するよりもむしろ手術後の組織を修復しようとしていた。多くの部位が、弛緩性肉芽組織により包囲された出血部分、新血管の活性な増殖及び活性な線維芽細胞の限定集団を示した。少数例で、修復特徴が移植部位を越えて広がっていたが、この場合でも周囲の組織構造に対して重大な分裂を生起しなかった。
【0130】
12週までに、組織学的特徴は4週目に観察された肉芽(修復)組織応答の成熟を示した。多くの移植部位はマクロファージ、リンパ球及び所々の繊維芽細胞による有意な侵潤をなお示したが、明らかな繊維性瘢痕及び血管増殖の明確な減少は認められなかった。更に、いずれの場合も持続性の病理学的変化は移植部位を越えて広がっていなかった。
【0131】
通常、26週後、移植部位のいずれも試験または標準インプラントに対する有意な組織反応を殆ど示さなかった。マクロファージ、リンパ球及び所々の異物巨細胞のカフからなる移植部位のすぐ近くで軽〜中程度の慢性炎症を示す部位は、連続的な軟らかい結合組織に影響を与えず、隣接構造のゆがんだ繊維症を有していなかった。
【0132】
移植から26週後に主要内臓を剖検でも検査し、代表的なブロックを通常の組織病理的検査のために採取した。剖検時に行った観察と同様に、主要内臓の組織学的検査で、シリコンまたはチタンインプラントまたは実験集団中の既存の疾患に起因するであろう病理学的変化は見られなかった。
【0133】
各インプラントのタイプについてのスコアの評価後分析は、多孔質シリコン(非被覆)標本のチタン対照と比較した4週目及び12週目の有意な高いレベルの慢性炎症/線維症を示した(表J)。観察された組織反応の種類は、多孔質シリコンインプラントのタイプの生物活性特性を反映しているようであり、この材料が組織増殖を促進し、生物学的系と相互作用することが示唆される。いずれの時点でも他の生物学的特徴またはインプラントのタイプに関して他に統計的に有意な差はなかった。
【0134】
本研究の結果は、試験インプラント材料または標準インプラント材料で反応は殆どもしくは全くなかったことを明らかに示す。病理学的特徴の有意差は外科処置から予想される変化を表し、インプラント材料の種類に無関係である。
【0135】
多変量解析により強調される4週目及び12週目での多孔質シリコンの慢性炎症スコアの有意差は、生体適合性の点で生物学的に有意でないようである。この結論は26週研究の結果により確認される。
【0136】
評価点
表A〜Dは、病理中の急性炎症反応、組織変性、浮腫形成、出血及び皮膚壊死;新血管及び肉芽組織形成;及び持続性(慢性)炎症及び組織線維症を評価するために使用した採点基準を示す。
【0137】
表E〜Hは、それぞれ移植から1、4、12及び26週目の病理学的スコアを示す。
【0138】
表Iは、生体適合性研究の統計分析を示す。表Iの場合、各時点での各組織カテゴリーのスコアの平均点を示す。表Iでは、有意差の欄の2つの列間の線は2つの群の有意差(p<0.05,Kruskall−Wallis分析)を示す。
【0139】
表Jは、生体適合性研究の統計分析を示す。表Jの場合、各期間について組織学的カテゴリーによる各インプラントのタイプのスコアの平均点を示す。表J中、“”はシリコンタイプとチタン対照との差が有意であることを示す(p<0.05;Friedman分析)。BSi=バルクシリコン、PSi=多孔質シリコン、CoPSi=被覆した多孔質シリコン。
【0140】
図10〜13は、生体適合性研究からの生理学的パラメータを示す。図10は、4つのモルモット群の各群についての毎日の平均(±標準誤差)体温を示す。図11は、4つのモルモット群の各群についての毎日の平均(±標準誤差)体重を示す。図12は、モルモットの平均(+標準誤差)体温の、手術前の7日間の制御期間(−1週、n=30)と動物の各群を選択する前の4時点(1週、n=35;4週、n=24;12週、n=14;26週、n=5)との比較を示す。図12中の二重星印“**”は、対照期間と比較したp<0.01を示す。1動物の体温トランスポンダーは誤動作した。よって、この動物のデータは抜かした。図13は、モルモットの平均(+標準誤差)体重の、手術前の7日間の制御期間(−1週、n=30)と動物の各群を選択する前の4時点(1週、n=35;4週、n=25;12週、n=15;26週、n=5)との比較を示す。図12中の二重星印“**”は、制御期間と比較したp<0.01を示す。
【0141】
【表1】

【0142】
【表2】

【0143】
【表3】

【0144】
【表4】

【0145】
【表5】

【0146】
【表6】

Ti=チタン対照、
BSi=バルクシリコン、
PSi=多孔質シリコン、
CoPSi=ヒドロキシアパタイトを被覆した多孔質シリコン。
【0147】
【表7】

【0148】
【表8】

Ti=チタン対照、
BSi=バルクシリコン、
PSi=多孔質シリコン、
CoPSi=ヒドロキシアパタイトを被覆した多孔質シリコン。
【0149】
【表9】

【0150】
【表10】

Ti=チタン対照、
BSi=バルクシリコン、
PSi=多孔質シリコン、
CoPSi=ヒドロキシアパタイトを被覆した多孔質シリコン。
【0151】
【表11】

【0152】
【表12】

Ti=チタン対照、
PSi=多孔質シリコン、
N/A=適用不可、対照(非移植動物)。
【0153】
【表13】

【0154】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
再吸収性または生体浸食性の多孔質シリコンに基づく担体材料と、有効物質とを含むデバイス。
【請求項2】
担体材料が、組成物が体液と接触した時に制御された様式で有効物質を放出する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
有効物質と、再吸収性または生体浸食性の中間孔質シリコンに基づく担体材料とを含むデバイスであって、前記有効物質は元素でも金属塩でもなく、メソ孔が実質的に平行である、前記デバイス。
【請求項4】
有効物質が分子からなる、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
担体材料が、シリカまたは酸化ケイ素の表面を有する、請求項3または4に記載のデバイス。
【請求項6】
有効物質が、有機分子、タンパク質、ペプチド、または遺伝子断片もしくは他のDNA物質から選択される薬物である、請求項3〜5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
デバイスが、1mg未満の重量を有する、請求項3〜6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
有効物質を哺乳動物に送達するための組成物であって、再吸収性または生体浸食性であり中間孔質の半導体担体材料と、少なくとも一部が前記担体材料の孔中に在る有効物質と、を含む前記組成物。
【請求項9】
有効物質と、再吸収性または生体浸食性であり中間孔質の陽極酸化されたシリコンに基づく担体材料とを含むインプラントであって、前記有効物質は元素でも金属塩でもない、前記インプラント。
【請求項10】
デバイスを製造する方法であって、有効物質を中間孔質であり再吸収性または生体浸食性のシリコンに基づく担体材料の孔中に導入することを含む、前記製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−34863(P2013−34863A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−161631(P2012−161631)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【分割の表示】特願2010−50426(P2010−50426)の分割
【原出願日】平成11年4月16日(1999.4.16)
【出願人】(504235883)サイメデイカ リミテツド (16)
【Fターム(参考)】