説明

物質移動用カラム及び物質移動用カラムのための冠状要素

【課題】カラム壁部に沿った液体の迂回が大幅に回避できるカラムを提供すること。
【解決手段】物質移動用カラム1内でパッキング2を固定するための、頂部要素5と、壁部要素6と、底部要素7とを備える細長いシート4を備える冠状要素3であって、第1の曲げ線8が頂部要素5と壁部要素6との間に形成されるように、壁部要素6は頂部要素5と底部要素7との間に配置される、冠状要素。第2の曲げ線9が壁部要素6と底部要素7との間に形成され、頂部要素5は複数の切り込み15を伴って設けられ、底部要素7は複数の溝17を伴って設けられる。切り込み15の数は溝17の数より少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物質移動用カラムのパッキングのための冠状要素に関する。本発明はまた、その種の冠状要素を有する物質移動用カラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特に上方向に流れる気体及び逆流する液体が接触する、このようなカラムの交換部分は、カラム壁部の環状の間隔を除いて、カラムの断面を充填するパッキングから成る。パッキングを取り囲む冠状要素は、これらの物質の流れの偏向に役立つ。気体の流れは冠状要素によってパッキング内に押し入れられる。気体は、それによって、液体と接触せずにカラムの縁部の領域に沿ってそこを通過して部分的に流れることを妨害される。特に、パッキングはカラムの断面を横切って物質の2つの流れの分配を引き起こす整列したパッキングである。このような冠状要素は、例えば、特許文献1又は特許文献2に開示される。
【0003】
パッキングは、例えば起伏する波状の層、又は、ジグザグに折られた薄層から構成される。波状は箔状の材料から成り、折り目又は隆起部の縁部は、カラムの軸に対して、例えば45度又は30度に達する軸に対する角度で傾いた方向に延在する。波状によって形成される層は軸と平行に位置合わせされる。それらは代替的に、斜め及び交差して通る開口チャネルが生じるように、折り目の縁部の傾斜に対して配置される。パッキングは、層の方向について異なる断片で構成される。隣接する断片の間で方向が毎回約90度変わる。
【0004】
パッキング内の斜めのチャネルを通って、液体の部分は縁部の領域まで流れる。この液体がカラム壁部に接触することを防ぐために、縁部の間隔、すなわち、上述の環状の間隔が施される。縁部の間隔がないと、液体の相当な部分がカラム壁部に沿って流れ落ちることとなる。
【0005】
縁部の間隔の手段によって、液体がパッキングの縁部に到達し、他のチャネルを通って再びパッキングの内部に戻ることが可能になる。しかし、液体の一定の割合がカラム壁部にあふれ出て、それによって、物質移動の工程を損なうことを実際上回避できない。冠状要素は液体をパッキングへカラム壁部から運び戻し、そこでは、次いで液体がいくつかのチャネルを通ってパッキングの内部に戻るように導かれる追加の機能を有する。
【0006】
カラムの断面を横切る2つの物質の流れの分配を引き起こす整列したパッキングの更なる例は、特許文献3及び特許文献4に記載される。
【0007】
物質移動用カラムのパッキングの1つは少なくとも1つのパッキング要素を備える。複数のパッキング要素は、積層を形成するように、相互の上に固定できる。パッキング要素は、物質移動用カラムの内部に適合する実質的に円筒に形成された構造、又は、あらゆる他の構造を形成するパッキング層の組立体として規定される。このようなパッキング要素は複数のパッキング片に細分できる。従って、パッキング片は、パッキング要素を形成する薄片として看做され得る。
【0008】
カラムの簡易な取り付けのために、パッキングを据え付ける前にすでに取り付けられている要素にカラーが締結されている必要がある。パッキングが薄肉の材料から成るため、溶接、ねじ締め、又は、リベット打ちによって行われ得るカラーの締結は高価な製造ステップである。
【0009】
パッキングの各々の境界要素に付着される、固着されたカラーを伴わないパッキング要素を使用する場合、遮水は固締していないカラーによって保証されなければならない。組み立てられる場合、最初に固締していないカラーがカラム壁部に沿って水平に位置付けられ、次いでパッキング要素が取り付けられる。最後にパッキング要素が壁部に対して中央の位置から押し付けられる。それによって、カラーは壁部に向かって引き伸ばされ、従って、パッキングから生じる圧縮力によって張力下に置かれる。従来技術による固締していないカラーは可撓ではなく、従って、適切な遮水を提供しない。これは、カラム性能の減少をもたらす、作動中に液体の迂回がカラム壁部に隣接して発生する結果を有する。それらの幾何学的配置によって、固締していないカラーは、パッキングが、水平な長軸を有するカラム壁部に組み付けられなくてはならない場合に、平らに伸ばされ、特に破壊される恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5456865号明細書
【特許文献2】特開平8−000983号公報
【特許文献3】欧州特許第0070917号明細書
【特許文献4】欧州特許第0069241号明細書
【特許文献5】米国特許第6170805号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、上述の従来技術より費用のかからない、カラム壁部に沿った液体の迂回が大幅に回避できる解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
課題は、物質移動用カラム内でパッキングを固定するための、頂部要素と、壁部要素と、底部要素とを備える細長いシートを備える冠状要素によって解決される。第1の曲げ線が頂部要素と壁部要素との間に形成されるように、壁部要素は頂部要素と底部要素との間に配置される。第2の曲げ線が壁部要素と底部要素との間に形成される。頂部要素は複数の切り込みを伴って設けられる。底部要素は、切り込みの数が溝の数より少なくなるように、複数の溝を伴って設けられる。
【0013】
頂部要素は頂部要素縁部を有し、切り込みは頂部要素縁部から第1の曲げ線まで延在する。それによって、切り込みの少なくともいくつかは頂部要素縁部と第1の曲げ線との間の距離の一部分だけを占める。好都合な実施例において、切り込みは切断であり得る。
【0014】
底部要素は底部要素縁部を有し、溝は頂部要素縁部から第2の曲げ線まで延在する。
【0015】
好都合に、突起部が壁部要素上に配置される。
【0016】
好ましい一実施例において、切り込みの一部分が溝に対して互い違いに配置される。それによって、カラム壁部に沿った液体の迂回が回避できる。共通する壁部を滴れ落ちるあらゆる液体は頂部要素によって捕捉され、切り込みを通ってパッキングに向かって導かれる。何らかの理由により、この液体の一部分が第1の曲げ線を通過する場合、それは、切り込みが与えられた箇所で第1の曲げ線を通過する可能性が高い。更に滴れ落ちる場合、それは第2の曲げ線に面する。そこで、それは、最も近い溝、又は、代替的に壁部要素に施される開口部のいずれかへ導かれ得る。それによって、液体は、壁部要素のこの開口部を通過し、パッキングに向かって導かれるだろう。
【0017】
壁部要素、頂部要素及び底部要素の少なくとも1つは、好ましい実施例において、0.05mmから0.2mm未満の厚さを有する。従来技術に比較して、より薄い厚さのシートは、カラム壁部の湾曲により正確に従うことができる。従って、第1の曲げ線とカラム壁部との間のあらゆる漏れは大幅に回避される。
【0018】
従って、従来技術に比較して、切り込みの数は溝の数よりもより少なく保持される。その結果として、頂部要素片は、長さが増加する。これは、このようなより長い頂部要素片がカラム壁部の湾曲に従いにくいという結果を有する。このため、従来技術において、切り込みの数は通常溝の数に対応する。
【0019】
驚いたことに、先見的なより長い、及び/又は、より高い頂部要素片によって、カラム壁部の湾曲は、頂部要素片がカラム内に据え付けられる場合、頂部要素片によって、より正確に従われたことが発明者によって示され得た。
【0020】
特に、頂部要素の厚さが、0.05mmから0.2mm未満の範囲のように薄い場合、頂部要素片の反りのために、頂部要素縁部はまた、カラム壁部の湾曲に従う。
【0021】
開口部は、壁部要素、頂部要素又は底部要素の少なくとも1つに施され得る。このような開口部は、カラム壁部に沿って滴るあらゆる液体をパッキングに向かって戻し導くために使用される。従って、このような迂回する液体は、パッキングに導かれる場合、物質移動に再び加わることができる。従って、物質移動用カラムの性能が改善できる。
【0022】
スペーサ要素が壁部要素に施され得る。壁部要素の機械的安定性を増大するために、このようなスペーサ要素は施され得る。これらのスペーサ要素は突起部であってよく、特許文献5によるどのような形状も有し得る。
【0023】
好ましくは組み立て前に、頂部要素は壁部要素に対して5度から60度の角度、好ましくは10度から40度の角度で配置される。冠状要素がカラム内に組み立てられた状態である場合、この角度は減少する。組み立て後の角度は約2度から最大30度、好ましくは5度から最大20度である。パッキングは、頂部要素が変形される場合にだけ、カラム内に適合する。つまり、頂部要素と壁部要素との間の角度が減少する。
【0024】
頂部要素は複数の頂部要素片から成り、底部要素は複数の底部要素片から成り、少なくとも1つの頂部要素片について、各々の頂部要素片は底部要素片の長さよりもより大きい長さを有する。従って、頂部要素片又は底部要素片の長さは実質的にカラム壁部の方向、従って、物質移動用カラムの軸が垂直である場合には、水平方向に延在する寸法である。
【0025】
頂部要素片の長さは、2つの隣接する切り込みの間の距離である。底部要素片の長さは、2つの隣接する溝の間の長さである。切り込み又は溝が、例えばV字形状である場合、長さは、V字の最も低い点、従って、V字形状の谷によって形成される縁部の点、又は、最も深い点から測定される寸法である。冠状要素の据え付け位置によって、切り込み又は溝の縁部の点は、切り込み又は溝の最も高い位置になり得ることに留意されたい。従って、上記の定義はV字形状の一般概念に関し、冠状要素の据え付けの位置に関するものではない。
【0026】
好ましくは、頂部要素片は40mmから120mmの範囲内にあり、特に好ましくは60mmから90mmの範囲内にある長さを有する。
【0027】
好ましくは、頂部要素は15mmから40mmの範囲内にあり、特に好ましくは25mmから35mmの範囲内にある高さを有する。頂部要素の高さは、各々の頂部要素片の長さに実質的に直角に延在する寸法である。従って、頂部要素の高さは、第1の曲げ線と頂部要素縁部との間の測定された距離である。
【0028】
そのような頂部要素の高さ、及び、そのような頂部要素片の各々の高さは、対応する従来技術の解決策の高さよりもより高く、それは、更に湾曲したカラム壁部への頂部要素片の位置合わせを改良する。従って、好ましい実施例によると、頂部要素縁部は湾曲した形状を有する。すなわち、先に述べられた反りの可能性のために、頂部要素縁部は、カラム壁部の湾曲に従い、それは、頂部要素片の高さが15mm未満であり、頂部要素片の厚さが約2mm以上である場合、不可能である。
【0029】
長さ及び高さの変更の更なる結果、頂部要素片の寸法は、組み立てられた場合、頂部要素とカラム壁部との間の角度を減ずる。
【0030】
代替的に、又は、それに追加して、底部要素は、湾曲した形状を有する底部要素縁部を有する。特に、底部要素の厚さが0.05mmから最大2mm未満の範囲内にある場合、先に述べられた反りの可能性のために、底部要素縁部はパッキングの輪郭湾曲に従う。
【0031】
前述の実施例のいずれかによる冠状要素は、第1の表面と第2の表面とを備え、第1の表面は実質的に台形の形状であり、第2の表面は実質的に三角形である。
【0032】
物質移動用カラムはパッキングを収容し、更に管状壁部を備える。パッキングは管状壁部内に設けられる。前述の実施例のいずれかによる冠状要素は管状壁部とパッキングとの間に配置される。
【0033】
組み立てられた際、壁部要素はパッキングと接触し、カラム壁部の内側に位置付けられた際、壁部要素はカラム壁部から間隔を隔てて配置される。頂部要素はカラム壁部の方向に延在し、底部要素がパッキングの方向に延在するように、頂部要素及び底部要素は、壁部要素に対して斜角に壁部要素から延在し、そこで、冠状要素はカラム壁部内でパッキングを固着し、そのような位置において、物質移動カラムが稼働状態にある場合、物質移動が行われることを可能にするようにパッキングに保持力を及ぼすために、弾性的に変形可能である。
【0034】
特に、大きい直径のカラムについては、パッキングは複数のパッキング要素を備えることができ、パッキング要素の各々は複数のパッキング片を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】冠状要素の断面図の詳細な図である。
【図2】図1による冠状要素の正面図である。
【図3】カラム壁部の内側に配置される図1による冠状要素の一部分の図である。
【図4】冠状要素及びパッキングを示す図1の断面図である。
【図5】パッキングの上面図である。
【図6】パッキングの縁部上の流れの詳細な図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は冠状要素3の断面の詳細である。冠状要素3は細長いシート4を備え、その一部分はまた、図2に示される。この細長いシート4は頂部要素5と壁部要素6と底部要素7とを備える。壁部要素6は頂部要素5と底部要素7との間に配置される。頂部要素は壁部要素6に対して角度13で配置される。また、底部要素7は壁部要素6に対して角度14で配置される。
【0037】
壁部要素6は突起部16を備えることができる。このような突起部は、第1及び第2の曲げ線に基本的に平行に延在する突状であってよく、それは複数の泡状要素を備えることもできる。突起部16は、冠状要素が組み立てられた状態において、距離、すなわち、図3に見られるカラム壁部10と壁部要素6との間の縁部の間隔12を保持するのに役立つ。
【0038】
図2は、図1による冠状要素を構成する細長いシート4の一部分の正面図である。細長いシート4は頂部要素5と壁部要素6と底部要素7とから成る。壁部要素6は頂部要素5及び底部要素7に連結される。第1の曲げ線8は頂部要素5と壁部要素6との間に形成される。第2の曲げ線9は壁部要素6と底部要素7との間に形成される。
【0039】
頂部要素5は複数の切り込み15を伴って設けられる。頂部要素5は頂部要素縁部18を有する。頂部要素縁部18は、第1の曲げ線8に実質的に平行に延在する。切り込み15は頂部要素縁部18から第1の曲げ線8まで延在する。少なくともいくつかの切り込みは、頂部要素5の一部分だけに亘って延在できる。好ましい一実施例によると、切り込みは切断部として形成される。
【0040】
底部要素7は複数の溝17を伴って設けられる。好ましい一実施例において、溝はV字形状を有する。切り込み15の数は溝17の数より少ない。
【0041】
壁部要素6は第1の表面31及び第2の表面32を備え、第1の表面31は実質的に台形の形状であり、第2の表面32は実質的に三角形である。好ましくは、壁部要素6は複数の第1の表面31と第2の表面32とから成る。第1の表面31の各々は、1組の共通する縁部線33、34に沿って2つの隣接する第2の表面32に接触する。共通する縁部線33、34の各々はまた曲げ線であってよい。第2の表面32の各々は、1組の共通する縁部線34、35に沿って、2つの隣接する第1の表面31に接触する。共通する縁部線34、35の各々はまた曲げ線であってよい。
【0042】
図3は、カラム壁部10の内側に配置される冠状要素3の一部分である。図3において、冠状要素3はカラム壁部10内でその使用の位置に配置されているが、パッキングから分離され斜視に示される。冠状要素3は薄箔片のような細長いシート4から非常に簡易に製作できる。
【0043】
図3はまた、頂部要素5が縁部の間隔12を実質的に覆っていることを示す。壁部要素に対して斜角の頂部要素の屈曲に役立つために設計された切り込み15は頂部要素5内に提供される。壁部要素6が円筒表面に平坦な細長いシート4から屈曲される場合、切り込みの提供によって複数のV字形状の溝が形成できるという事実のために、頂部要素5は屈曲できる。これらの間隔が図3に示される。切り込み15の間にタブが形成される。第1の曲げ線8に沿って頂部要素5を折る場合、図4又は図5に示されるように、頂部要素5は縁部の間隔12を実質的に覆う。カラムが操作状態である場合、カラム壁部に到達した液体は頂部要素5によってパッキングへ再び戻るように導かれる。
【0044】
頂部要素5の厚さが0.05mmから0.2mmの範囲内にあるという事実のために、頂部要素は円筒形状から実質的な円錐形状に容易に変形できる。壁部要素6は実質的に円筒形状を維持する。底部要素7も屈曲されるが、その屈曲方向は頂部要素5に対して反対方向である。
【0045】
図4は、冠状要素3の組み立てられた状態での断面図を示す。更に、冠状要素3によってカラム内の所定の位置に位置付けられたパッキング2の一部分が示される。頂部要素5はまた、パッキング及び冠状要素がカラム壁部に組み付けられる前に屈曲していてよい。頂部要素5と壁部要素6との間の角度13は、冠状要素3のカラム壁部への挿入前は、挿入後よりも大きくてよい。従って、頂部要素は、曲げモーメント、及び、カラムの軸に垂直な方向に作用する力を受ける。この曲げモーメント及び力は、冠状要素3をカラム内の所望の位置に維持するのに役立つ。すなわち、頂部要素5はバネとして作用できる。
【0046】
知られているカラーとの相違点として、本発明の冠状要素3は、パッキングの縁部に締結されない独立した構成要素であり、バネの力及び/又は摩擦力によってカラム壁部10とパッキング2との間の縁部の間隔12にしっかりと保たれる。
【0047】
更に、壁部要素6は、複数の突起部16として特に形成できるスペーサ要素22として設けられ得る。組み立てられた場合、突起部16はカラム壁部に接触する。突起部の深さと壁部要素6の直径との合計がカラムの内径を超える場合、圧縮力が突起部に作用する。この圧縮力は、突起部、及び、結果として壁部要素6をカラム内の所望の位置に保持するのに役立つ。従って、摩擦力とバネの力との組合せはカラムに冠状要素3を保持するのに役立つ。更には、それは正しい方向、具体的には壁部要素6の垂直方向に保持される。
【0048】
底部要素7は、図4に示されるように、所望の位置及び/又は方向にパッキング2を保つのに役立つ。底部要素7は、相互に上に配置される2つの隣接するパッキング要素の間の間隔に延在すると、第1のパッキング要素と第2のパッキング要素との間で少なくとも部分的に締め付けられる。第1及び第2のパッキング要素がパッキング要素の積層を形成するという事実のために、底部要素の少なくとも縁部は、2つのパッキング要素の間でその位置に固着される。この結果、冠状要素3全体が物質移動用カラム内の正しい位置に固着される。垂直のカラムの軸を伴う物質移動用カラムの場合に、正しい位置は水平の位置である。底部要素はカラム壁部を滴れ落ちるどのような液体もパッキングに再び導き戻すのに役立つ。図5は、物質移動用カラム1の壁部10とパッキング2との間に存在する環状又は縁部の間隔12の部分を示す。パッキング層はジグザグに折られた波状20及び21から成り、波状の縁部200及び210によって形成される縁部へパッキングの内部から矢印25の方向か、又は、矢印26に従った反対方向にそれぞれ液体を運ぶ。パッキングの縁部での状態が図6に例示される。部分的に示された波状20及び21は点C及びC’で接触し、それらを覆って液体の膜を有する。矢印25によって示されるように波状20を亘って外側に導かれる液体により、矢印27によって示されるように、縁部200に液体の強力な流れが形成される。矢印27に従ったこの流れの部分は、矢印28によって示されるように、突出部A、A’、A”で点B、B’へ、隣接する波状21の縁部210上で転換し、次いで液体は、矢印26によって示されるように、パッキングの内側に導き戻される。パッキング2とカラム壁部10との間が接触するならば、縁部へ導かれる液体はカラム壁部10の内側表面11に沿って流れる傾向を有していたであろう。
【0049】
開口部が壁部要素6、頂部要素5又は底部要素7の少なくとも1つに施され得る。開口部は、カラム壁部10から離れて導かれる液体が冠状要素を通過することを可能にする。これらの開口部は特許文献5の開口部と同様な形状であり得る。
【0050】
パッキングの取り付けは片毎に行われる。そうする際に、例えばあらかじめ取り付けられているパッキングの片上に、まず第1に、冠状要素3はカラムの断面の円周に沿って配置される。次のパッキングの片が冠状要素3によって形成される環内に押し込まれ、そのようにすることで、冠状要素3はカラム壁部10に対して押し付けられる。
【0051】
本発明によって作製される冠状要素3を伴う物質移動用カラム1は、円周上に閉じられた冠状要素の少なくとも1つの環をパッキングの断片毎に配置する。環は単に1つの冠状要素から成ることができる。冠状要素は基本的にパッキングと同じ材料から好都合に製作できる。好ましくは、パッキング又は冠状要素の材料は金属合金から成る。代替的に、冠状要素は、プラスチックから作製できる。図1及び2に示されるパッキングは単に例示として理解されるものである。従って、パッキングは、落下線を横切る方向に処理される流れの分配を引き起こすあらゆる構造を示すことができる。パッキングのような冠状要素は、壁部厚さが0.05mmと2mmとの間の範囲、好ましくは約0.15mmである箔状の材料から好都合に製作される。
【符号の説明】
【0052】
1 物質移動用カラム
2 パッキング
3 冠状要素
4 細長いシート
5 頂部要素
6 壁部要素
7 底部要素
8 第1の曲げ線
9 第2の曲げ線
15 切り込み
17 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質移動用カラム(1)内でパッキング(2)を固定するための、頂部要素(5)と、壁部要素(6)と、底部要素(7)とを備える細長いシート(4)を備え、第1の曲げ線(8)が前記頂部要素(5)と前記壁部要素(6)との間に形成され、第2の曲げ線(9)が前記壁部要素(6)と前記底部要素(7)との間に形成されるように、前記壁部要素(6)は前記頂部要素(5)と前記底部要素(7)との間に配置され、前記頂部要素(5)は複数の切り込み(15)を伴って設けられ、前記底部要素(7)は複数の溝(17)を伴って設けられる、冠状要素(3)であって、切り込み(15)の数が溝(17)の数より少なく、前記壁部要素(6)、前記頂部要素(5)及び前記底部要素(7)の少なくとも1つは0.05mmから0.2mm未満の厚さを有することを特徴とする冠状要素(3)。
【請求項2】
前記頂部要素(5)は頂部要素縁部(18)を有し、前記切り込み(15)は前記頂部要素縁部(18)から前記第1の曲げ線(8)まで延在する、請求項1に記載の冠状要素(3)。
【請求項3】
前記切り込み(15)の少なくともいくつかは前記頂部要素縁部(18)と前記第1の曲げ線(8)との間の距離の一部分だけを占める、請求項2に記載の冠状要素(3)。
【請求項4】
前記底部要素(7)は底部要素縁部(19)を有し、前記溝(17)は前記底部要素縁部(19)から前記第2の曲げ線(9)まで延在する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の冠状要素(3)。
【請求項5】
突起部(16)が前記壁部要素(6)上に配置される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の冠状要素。
【請求項6】
前記溝(17)の一部分が前記切り込み(15)に対して互い違いに配置される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の冠状要素。
【請求項7】
前記頂部要素(5)は前記壁部要素(6)に対して5度から60度の角度、好ましくは10度から40度の角度で配置される、請求項1から6までのいずれか一項に記載の冠状要素。
【請求項8】
前記頂部要素(5)は複数の頂部要素片から成り、前記頂部要素片の各々は、40mmから120mmの範囲内にあり、60mmから90mmの範囲内にあることが特に好ましい長さを有する、請求項1から7までのいずれかに記載の冠状要素。
【請求項9】
前記頂部要素は、15mmから40mmの範囲内にあり、25mmから35mmの範囲内にあることが特に好ましい高さを有する、請求項1から8までのいずれかに記載の冠状要素。
【請求項10】
前記頂部要素は頂部要素縁部を有し、前記頂部要素縁部は湾曲している、並びに/或いは、前記底部要素は底部要素縁部を有し、前記底部要素縁部は湾曲している、請求項1から9までのいずれか一項に記載の冠状要素。
【請求項11】
パッキング(2)を収容する物質移動用カラム(1)であって、管状壁部(27)を備え、前記パッキング(2)は前記カラム壁部(10)内に設けられ、請求項1から10のいずれかに記載の冠状要素(3)は前記カラム壁部(10)と前記パッキング(2)との間に配置される、物質移動用カラム。
【請求項12】
組み立てられた際、前記壁部要素(6)は前記パッキング(2)と接触し、前記カラム壁部(10)の内側に位置付けられた際、前記壁部要素(6)は前記カラム壁部(10)の前記内側表面(27)から間隔を隔てて配置され、前記頂部要素(5)は前記カラム壁部(10)の方向に延在し、底部要素(7)が前記パッキング(2)の方向に延在するように、前記頂部要素(5)及び前記底部要素(7)は、前記壁部要素(6)に対して斜角に前記壁部要素(6)から延在し、それによって、前記冠状要素(3)は前記パッキングに保持力を及ぼして、前記カラム壁部(10)内で前記パッキング(2)を固着し、そのような位置において、前記カラムが稼働状態にある場合、物質移動が行われることを可能にするように、弾性的に変形可能である、請求項11に記載の物質移動用カラム。
【請求項13】
前記パッキング(2)は複数のパッキング片を備える、請求項12に記載の物質移動用カラム(1)。
【請求項14】
前記底部要素(7)は少なくとも部分的に第1のパッキング要素と第2のパッキング要素との間で締め付けられる、請求項12又は13に記載の物質移動用カラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−224560(P2011−224560A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90678(P2011−90678)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(505150095)スルザー ケムテック アクチェンゲゼルシャフト (40)
【Fターム(参考)】