説明

特に帯状に連続鋳造された中間材料からの熱間圧延バンドの製造装置

この発明は、少なくとも一つの連続鋳造機と、少なくとも一つの切断機と、少なくとも一つの校正炉と、デスケーラーと、場合によっては粗延べ機列と、仕上げ圧延機列(多段構成の圧延機又はステッケル圧延機)と、クーリングゾーン及び少なくとも一つの熱間圧延バンド用巻取り機を備えたローラーテーブルとを有する熱間圧延鋼帯の製造装置に関する。鋳造方向と圧延方向が互いにほぼ反対方向を向く形で、この装置の鋳造ラインと圧延ラインを、互いに平行又はほぼ平行に配置することによって、コンパクトな構造形態を実現している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、少なくとも一つの連続鋳造機と、少なくとも一つの切断機と、少なくとも一つの校正炉と、デスケーラと、場合によっては粗延べ機列と、仕上げ圧延機列(多段構成の圧延機又はステッケル圧延機)と、クーリングゾーンを備えたローラーテーブルと、少なくとも一つの熱間圧延バンド用巻取機とを有する熱間圧延鋼帯の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の薄い及び中間的な厚さのスラブ製造設備では、鋳造機、切断機、加熱炉/校正炉、多段構成の圧延機、クーリングゾーンを備えたランアウトローラーテーブル及び巻取機が、列を成して配置されている。多列構成の設備では、鋳造機と加熱炉が、平行に並べて設置されている。所謂運搬機によって、スラブを圧延ラインに運んでいる。そのような設備構想では、300m〜500mの設備長が必要である。
【0003】
特許文献1により、連続鋳造した中間材料、有利には薄いスラブから、熱間圧延鋼帯を製造する方法及び装置が周知であり、この場合鋳造機で鋳造された中間材料は、凝固後に切断機を用いて、所望のベルト重量に対応する長さに分割されている。これらの薄いスラブは、校正炉内で均一化され、次に粗延べ機列で粗延べされて、仕上げ圧延機列で仕上げ圧延され、クーリングゾーンで冷却されて、巻取機で巻き取られる。様々な鋼の品質を考慮に入れて、薄いスラブは、均一化の後でかつ粗延べ工程の前に、1150°C以上の温度に加熱される。そして、薄いスラブの粗延べを行って、次にこの粗延べされたバンドの再結晶化と仕上げ圧延機列に向けての圧延温度への冷却を行い、それに続いて仕上げ圧延している。この熱間圧延バンドの製造設備は、特に二つの切断機と二つの校正炉を備えた平行に配置された二つの連続鋳造機を特徴としている。この校正炉には、運搬用台車を備えた薄いスラブ用運搬機が繋がっている。この運搬用台車を用いて、薄いスラブを、校正炉とそれぞれ別の圧延ラインとの間を交互に運搬している。一定した鋳造・圧延プロセスを保証するために、運搬機の後には、鋳造済みの薄いスラブ用の貯留機が配備されており、この貯留機は、加熱しておくか、或いは又加熱しないでおくことも可能であり、圧延機列と共に列を成して配置されている。
【0004】
特許文献2は、特に連続鋳造した中間材料から成る特殊鋼に関する、熱間圧延鋼帯の製造方法及び設備を記載している。鋳造機で鋳造した中間材料を、凝固後に薄いスラブの長さに分割して、校正炉で均一にするとともに圧延温度にまで加熱し、次に圧延機に運んで、一連の圧延工程で所定の最終的なサイズに仕上げ圧延している。薄いスラブを、校正炉から台車に移送して、この台車により、連続鋳造機を備えたラインのその出口位置から、それと平行の圧延機列を備えたラインに横方向に移動しており、その際同時に又はその前に、この台車に対応するローラーテーブルの部分を、圧延機列を備えたラインから、同じく横方向に運び出している。それに続いて、台車から出された薄いスラブを、圧延機列が移送されている圧延速度にまで加速して、圧延機列の前段で巻き取り可能なコイルにまで粗延べし、このコイルを、最終段から出た直後に、ステッケル炉に運び込んで、そこで温度損失を防止するために巻き取っている。このローラーテーブルの部分及び同時又はその前に台車を、その出口位置に戻すとともに、圧延機を、逆方向運転に切り換えて、バンドを、この逆方向運転において、ステッケル炉のリールから巻き戻しつつ、仕上げ圧延し、それに続く最終段から、ローラーテーブルにより運び出して、最終的な巻取機構でコイルに巻き取っている。
【0005】
特許文献3は、事前に鋳造した薄いスラブを圧延した熱間圧延バンドの製造設備に関する。この設備は、溶鋼用の取鍋とタンデッシュを備えた鋳造機及び鋳造した鋼をタンディシュから流し込む鋳型から構成されており、薄いスラブを、この鋳型の下方の端部から流し出している。この鋳造機の後には粗延べ機が、この粗延べ機の後には鋳造したバンドをスラブの長さに折り曲げる切断装置が有る。それに続いて温度校正・加熱炉としての誘導炉が、その誘導炉の後には厚さを低減された中間バンド用の巻取炉が配置されている。この巻取炉の後には、多段構成の圧延機、クーリングゾーンを備えたローラーテーブル、仕上げ圧延機、仕上げ圧延された熱間圧延バンド用の巻取機が有る。
【0006】
前述した特許文献に記載された従来技術には共通して、設備の集合体又は機械全体が列を成して配置されており、そのことによって、これらの設備が列を成して並んで配置されて、台車により互いに繋げられているか否かに関わらず、この設備構想は、設備の長さが長大となっている。
【特許文献1】ドイツ特許公開明細書第4236307A1号
【特許文献2】ドイツ特許発明明細書第4041206A1号
【特許文献3】国際特許発明明細書第92/00815号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前に述べた従来技術を背景として、この発明の課題は、所要スペースと特に設備の長さが明らかにより短くなる、新しい設備構想を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、この発明では、鋳造方向と圧延方向が互いにほぼ逆方向を向くような形で、鋳造ラインと圧延ラインを、平行に或いはほぼ平行に並んで配置することを提案する。この措置によって、驚くほど簡単な方法で、薄いスラブ設備の従来から周知の長さが、非常に大幅に低減されるとともに、薄いバンドを製造するためのコンパクトな設備が、初めて提供されるものである。
【0009】
この発明の実施形態では、鋳造ラインと圧延ラインとの間の繋がりを、加熱炉によって実現しており、この加熱炉は、台車という意味において、スラブを鋳造ラインから圧延ラインに運ぶと同時に、スラブの温度を所要の開始温度にまで上昇させるものである。
【0010】
この発明による考えの延長として、鋳造ラインと圧延ラインとの間の間隔を、加熱炉における十分な滞留及び許容時間が保証されるように設計することを提案する。更に進んだ提案では、この予熱炉は、少なくとも三つで、かつ最大で十二のスラブが、校正炉内に存在できるように設計する。
【0011】
この場合、加熱炉は、それぞれ好適な炉形式、例えば、ローラーハース炉、多段炉床炉、巻取炉、ウォーキングビーム炉、これらの好適な炉形式を組み合わせたものの中の一つとすることができる。
【0012】
この発明の改善構成した実施形態では、鋳造ラインを、一つ以上の鋳造機又は複数の鋳造機列から構成することを提案し、この目的に適うこととして、これらの鋳造機又は鋳造機列の位置を、同じ高さにするか、さもなければ鋳造平面と圧延平面の高さを互いにずらずこともできる。
【0013】
更に、この発明では、鋳造機と加熱炉の間に、少なくとも一つの連続炉を配置することを提案する。更に、圧延機と加熱炉の間に、少なくとも一つの連続炉を配置することは、目的に適ったことと看做される。
【0014】
これらに代わって、この発明では、空間又は場所の条件が必要とする場合に、鋳造ラインと圧延ラインを、互いに0°から約150°までの角度を成して配置することができる。そのような措置によって、所要空間・スペースに応じて、鋳造ラインと圧延ラインを互いに直角に配置して、これらのラインを校正炉で繋げることも可能である。
【0015】
鋳造ラインと圧延ライン間の別の角度配置を、これらの両ラインを繋ぐ旋回する台車を用いて実現することができる。
【0016】
この発明の別の実施形態では、鋳造ラインにおいて鋳造機とその後に有る連続炉とを、圧延ラインにおいて圧延機とその前に有る連続炉とを、平行な又は旋回する台車を用いて、互いに繋げることを提案する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施例にもとづき、この発明を模式図に示してより詳しく述べる。
【0018】
図1は、この発明によるコンパクトな設備を図示しており、この設備では、鋳造ラインGLと圧延ラインWLが互いに平行に配置されるとともに、鋳造方向と圧延方向が逆向きである。鋳造ラインと圧延ライン間の繋がりが、加熱炉AOによって実現されており、この加熱炉は、台車という意味において、スラブを鋳造ラインから圧延ラインに運ぶと同時に、スラブの温度を圧延機WLに必要な開始温度にまで高めるものである。加熱炉AOには、少なくとも三つで、かつ最大で十二のスラブを収容できる。鋳造機GMを備えた鋳造ラインと圧延機WMを備えた圧延ラインとの間の間隔を、常に加熱炉での十分な滞留及び許容時間が保証されるように設計する。
【0019】
鋳造ラインGLは、周知の通り、複数の集合体又は機械、並びに鋳型から構成されるとともに、通常鋳造対象の溶解した金属を収容するための鋳造用取鍋とタンディッシュを有し、この鋳型には、融解した金属が、鋳込み用パイプを用いて、タンディッシュから流し込まれて、鋳型の中で、薄いスラブが鋳造され、このスラブを、次に曲がった支持構造内で冷却して、切断装置を用いて、所謂バンド重量に合わせて、長さを短くする。これらの設備部分は、単純化するために図示していない。
【0020】
加熱炉に関しては、それぞれ好適な炉形式、例えば、ローラーハース炉、多段炉床炉、巻取炉、ウォーキングビーム炉、これらの好適な炉形式を組み合わせたものの中の一つとすることができる。
【0021】
圧延ラインWLは、周知の通り、デスケーラ、場合によっては粗延べ機、多段構成の圧延機、場合によっては少なくとも一つのステッケル圧延機、その後に配置された、圧延した熱間圧延バンド用冷却機を備えたローラーテーブル、それに続く、所謂バンド重量に仕上げ圧延されたバンドを巻き取るための少なくとも一つの巻取機から構成される。これらの設備部分は、同じく図示していない。
【0022】
図2と2aは、この発明による鋳造ラインGLと圧延ラインWLを備えたコンパクトな設備を図示しており、その際鋳造機GMの鋳造方向と圧延機WWの圧延方向は、逆向きとなっている。鋳造機の後で、かつ加熱炉AOの前には、更にトンネル炉TOが、連続炉として配置されている。図2aは、図2によるコンパクトな設備に追加して、加熱炉の後で、かつ圧延機の前に、同じくトンネル炉が、連続炉として配置されていることを図示している。
【0023】
図3は、この発明による鋳造ラインGLと圧延ラインWLが逆方向であることの基本概念を示しており、この場合鋳造機GMの後にトンネル炉TOが、圧延機WWの後にトンネル炉TOが配置されるとともに、両トンネル炉を旋回する台車SFを用いて、互いに繋いでいる。
【0024】
図4は、この発明による鋳造ラインと圧延ラインが相当程度逆方向を向いたコンパクトな設備の代替形態であり、これにより、例えば、鋳造ラインと圧延ラインが互いに平行な方向を向いておらず、0°より大きく、かつ150°より小さい角度範囲をとることができる一定の角度αを成して互いに位置するという方法で、様々なスペース・空間条件を考慮に入れることが可能となる。有利には、この措置により、コンパクトな設備を、L字形に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】鋳造ラインと圧延ラインの逆向きの配置とこれらを繋ぐ校正炉のブロック接続図
【図2】図1の鋳造ラインと圧延ラインの逆向きの配置に、鋳造機の後にトンネル炉 を追加配置したブロック接続図
【図2a】図1の設備で、鋳造機と圧延機にそれぞれトンネル炉を組み込んだ形のブ ロック接続図
【図3】鋳造ラインと圧延ラインの逆向きの配置とこれらを互いに繋ぐ旋回する台車 のブロック接続図
【図4】互いに角度αを成す鋳造ラインと圧延ラインの逆向きの配置図
【符号の説明】
【0026】
AO 加熱炉
GL 鋳造ライン
GM 鋳造機
SF 台車
TO トンネル炉
WL 圧延ライン
WW 圧延機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの連続鋳造機と、少なくとも一つの切断機と、少なくとも一つの校正炉と、デスケーラと、場合によっては粗延べ機列と、仕上げ圧延機列(多段構成の圧延機又はステッケル圧延機)と、クーリングゾーンを備えたローラーテーブルと、少なくとも一つの熱間圧延バンド用巻取機とを有する熱間圧延鋼帯の製造装置において、
この装置の鋳造ラインと圧延ラインは、鋳造方向と圧延方向が互いにほぼ反対方向を向く形で、互いに平行又はほぼ平行に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
当該の鋳造ラインと圧延ラインが、加熱炉によって、互いに繋げられていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
当該の鋳造ラインと圧延ラインとの間の間隔は、薄いスラブに関して、加熱炉での十分な滞留及び許容時間が保証されるように設計されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
当該の加熱炉が、少なくとも三つで、かつ最大で十二のスラブを収容できるように設計されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】
当該の加熱炉が、多段炉床炉であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
当該の加熱炉が、ローラーハース炉、巻取炉、ウォーキングビーム炉、これらの好適な炉形式を組み合わせたものの中の一つであることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
当該の鋳造ラインが、一つ以上の鋳造機又は複数の鋳造機列から構成されることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
当該の鋳造平面と圧延平面が、有利には同じ高さに有ることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項9】
当該の鋳造平面と圧延平面の高さが、互いにずれていることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
当該の鋳造機と加熱炉の間に、少なくとも一つの連続炉が配置されていることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
当該の圧延機と加熱炉の間に、少なくとも一つの連続炉が配置されていることを特徴とする請求項1から10までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項12】
当該の鋳造機とその後に有る連続炉、並びに当該の圧延機とその前に有る連続炉とが、平行な又は旋回する台車により繋ぐことが可能であることを特徴とする請求項1から11までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項13】
少なくとも一つの連続鋳造機と、少なくとも一つの切断機と、少なくとも一つの校正炉と、場合によっては粗延べ機列と、仕上げ圧延機列と、クーリングゾーンを備えたローラーテーブルと、巻取機とを有する、特に請求項6から12までのいずれか一つに記載の熱間圧延鋼帯の製造装置において、
この装置の鋳造ラインと圧延ラインが、有利には、互いに0°から約150°までの角度を成して配置されていることを特徴とする装置。
【請求項14】
当該の鋳造ラインと圧延ラインが、旋回する台車を用いて、互いに繋がっていることを特徴とする請求項13に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−506554(P2007−506554A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515962(P2006−515962)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006505
【国際公開番号】WO2005/002749
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・デマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】