説明

特に構造用接着剤としての使用に適した二成分ポリウレタン組成物

本発明では、ポリオール成分K1およびポリイソシアネート成分K2からなり、ポリオール成分K1が少なくとも1つのアルコキシル化芳香族ジオールA1、および少なくとも1つの脂肪族トリオールA2を含んでなり、かつポリイソシアネート成分K2が少なくとも1つのポリイソシアネートB1を含んでなる、特に構造用接着剤として使用するための二成分ポリウレタン組成物が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分ポリウレタン組成物、特に構造用二成分ポリウレタン接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオールおよびポリイソシアネートに基づく二成分ポリウレタン接着剤はすでにかなり以前から使用されている。二成分ポリウレタン接着剤には、混合後に迅速に硬化するため、すでに短時間後に即座に大きな力を受けることができるという利点がある。しかし、構造用接着剤として使用するには強度および接着力に関してかかる接着剤に対して高い要求があるが、それはかかる接着剤が支持する構造の要素を構成するためである。高い強度は通常、高い架橋によって達成される。これは通常、高官能性ポリオールまたはポリアミン、および高官能性ポリイソシアネートの使用によって達成される。
【0003】
例えば、欧州特許出願公開第1253159A1号明細書は、実施例において、そのポリオール成分が四官能性脂肪族ポリオールと二官能性脂肪族ポリオールの混合物を含んでなり、かつそのイソシアネート成分がポリプロピレングリコールおよび4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートに基づくプレポリマーである構造用接着剤を開示している。
【0004】
しかし、高官能性反応剤の使用量が多いことから、一方では伸びが大幅に減少し、それによって負荷時の応力ピークが出現し、この種の接着剤が脆弱になるという結果がもたらされる。
【0005】
したがって、高い強度で、それにもかかわらず高い弾性を示す高速接着剤が必要とされている。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1253159A1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、高い強度と同時に高い伸びが得られる、二成分ポリウレタン組成物、特に構造用二成分ポリウレタン接着剤を提供することである。これは請求項1に記載の二成分ポリウレタン組成物によって可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
意外にもポリオール成分における脂肪族トリオールにアルコキシル化芳香族ジオールを添加することによって、伸びは上昇するが、強度は低下しない。
【0008】
この改善された伸びにより、硬化した材料の衝撃強度が上がる。さらに、本発明による化合物は、特にアルコキシル化芳香族ジオールの使用によって、金属表面への接着が改善されることが確認された。最後に、本発明による組成物は、特に湿度および温度変化に対する顕著な経時安定性を特徴とすることを確認することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ポリオール成分K1およびポリイソシアネート成分K2からなる二成分ポリウレタン組成物に関する。ポリオール成分K1は、この場合、少なくとも1つのアルコキシル化芳香族ジオールA1および少なくとも1つの脂肪族トリオールA2を含んでなる。ポリイソシアネート成分K2は、少なくとも1つのポリイソシアネートB1を含んでなる。
【0010】
「ポリオール」、「ポリイソシアネート」、「ポリエーテル」、または「ポリアミン」などの物質名における接頭辞「ポリ」は、本明細書において、それぞれの物質が、一分子当たり、その名称で示される官能基を2つ以上含有することを示す。
【0011】
「芳香族ジオール」によって、ここでは、かつ以下において、少なくとも1つの芳香族核および2つのヒドロキシ基を有するジオールであることが理解される。ジオールには多くの芳香族核も存在しうる。好ましくは、ヒドロキシル基はフェノール基ではなく、すなわち、それらは芳香族核に直接配置されていないことが有利である。
【0012】
芳香族核は、縮合しかつ/またはヘテロ芳香族であってもよく、および/または別の置換基も有しうる。ヘテロ芳香族核には、芳香環または環システムの一部にヘテロ原子が存在する。
【0013】
このような芳香族核の例は、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、イミダゾール、ピリジン、ピロール、ピリミジン、ピラジン、キノリン、フェナジンである。2つ以上の芳香族核を有するジオールの例は、ビフェニル、ターフェニル、2,2’−ビピリジン、ジフェニルメタン、1,1−ジフェニルエタン、または2,2−ジフェニルプロパンの親構造を有するジオールである。
【0014】
特に、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、もしくはアセトン、またはその混合物とから製造される芳香族ジオール、特にビスフェノール−A、ビスフェノール−F、またはビスフェノール−A/Fが適している。
【0015】
好ましくは、アルコキシル化芳香族ジオールA1はエトキシル化および/またはプロポキシル化芳香族ジオールである。
【0016】
この種のアルコキシル化ジオールは、好ましくは、式(I)
【化1】

の構造を有する。
【0017】
式中、置換基Rは、基CH、CH(CH)、またはC(CHを示す。
【0018】
指数n、n’、m、およびm’は、n+n’+m+m’=1〜20、特にn+n’+m+m’=1〜8であるような任意の値である。
【0019】
さらに、置換基RおよびRは、R=HおよびR=メチル、またはR=メチルおよびR=Hを示す。
【0020】
部分aおよびa1’はオキシプロピレン単位(PO)を意味し、aおよびa2’はオキシエチレン単位(EO)を意味する。式(I)の点線は、互いに結合された一連のアルキレングリコール部分a、a1’、a、およびa2’が可変であることを概略的に示す。例えば、これらのオキシアルキレン単位のブロック配列もしくは交互配列またはランダム配列が可能である。この種のアルコキシル化芳香族ジオールの製造は、当業者の周知のやり方で行われる。
【0021】
ジオールのアルコキシル化に際して、両方の鎖においてさまざまなアルコキシル化度を有する分子もそこから生じうることが当業者には明らかである。さらに、アルコキシル化に際してはつねにさまざまな分子の分布が発生することも当業者には明らかである。これは、とりわけ、全アルコキシル化度(「TAG」=n+n’+m+m’)が奇数または整数以外の値であってもよいという事実に示されている。
【0022】
式(I)の純粋なプロポキシル化芳香族ジオールは、式(I)の純粋なエトキシル化またはEO/PO混合アルコキシル化芳香族ジオールよりも好ましく、すなわち、n=n’=0が好ましい。
【0023】
特に好ましくは、芳香族ジオールA1は、R=CHまたはC(CHH、特にC(CHである式(I)のジオールである。
【0024】
最も好ましいことが示されているのは、R=C(CH、n=n’=0、および全アルコキシル化度が2〜16である式(I)の芳香族ジオールA1である。
【0025】
二成分ポリウレタン組成物はまた、さまざまな芳香族ジオールA1の混合物を含有することが有利でありうる。
【0026】
芳香族ジオールA1は、好ましくは、組成物全体に対して2〜10重量%の量で使用される。
【0027】
脂肪族トリオールA2は、120〜2000のOH当量質量に相当する360〜6000g/モルの分子量、特に120〜2000g/モル、好ましくは、160〜1700g/モルの分子量を有する脂肪族トリオールである。
【0028】
さまざまな種類のそのような脂肪族トリオールが存在する。例えば、それらはウレタン基および/または尿素基および/またはエーテル基を含有しうる。トリオールの形状はきわめてさまざまでありうる。例えば、星状または櫛状のトリオールが可能である。さらに、トリオールには一級だけでなく二級ヒドロキシル基が存在することも可能である。好ましくは、3つのすべてのヒドロキシル基は一級ヒドロキシル基である。
【0029】
例えば、脂肪族トリオールA2は、脂肪族トリイソシアネート、特に、3つのジイソシアネート分子から形成されるイソシアヌレートから、脂肪族ジオール、特にポリエーテルジオールの過剰下で、場合により、脂肪族ジイソシアネートおよび脂肪族ジオールによる別の後伸長によって達成される。
【0030】
別の例となる脂肪族トリオールA2は、低分子脂肪族トリオール、例えば、トリメチロールプロパンまたはグリセリン、および脂肪族ジイソシアネート、かつその後の脂肪族ジオールとの反応から得られる。
【0031】
さらに例となる脂肪族トリオールA2は、低分子脂肪族トリオール、例えば、トリメチロールプロパンまたはグリセリンのアルコキシル化反応の生成物である。特にこれらはエトキシル化、もしくはプロポキシル化またはブトキシル化脂肪族トリオールであり、特にトリメチロールプロパンまたはグリセリンからのものである。
【0032】
二成分ポリウレタン組成物がさまざまな脂肪族トリオールA2の混合物も含有することが有利でありうる。特に、より低い分子量、特に360〜2700g/モルを有する脂肪族トリオールA2と、より高い分子量、特に4200〜6000g/モルを有する脂肪族トリオールA2との混合物が使用されることが有利であることが示された。
【0033】
一つの脂肪族トリオールA2のみが使用される場合、中程度の分子量、特に2000〜4000g/モルを有するものを選択することが有利である。
【0034】
芳香族ジオールA1および脂肪族トリオールA2の重量比A1/A2は、好ましくは、0.05〜0.3である。
【0035】
さらに、ポリオール成分K1はその他の構成要素を含んでいてよい。有利には硬化触媒が使用される。このような触媒は、ポリオール、場合によりポリアミンまたは水と、ポリイソシアネートとの反応について、当業者には周知である。このような触媒の例としては、スズ、亜鉛、およびビスマス有機金属触媒、例えば、ジブチルスズジラウレート、または三級アミン、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)が挙げられる。
【0036】
追加の構成要素としては、さらにジオール、特にポリオキシアルキレンジオール、および/またはジアミンがありうる。アミンとしては、特に脂肪族、芳香脂肪族(アラアリファティック)、脂環族、および毒性学的に問題のない芳香族のアミンが適している。適切なアミンおよび触媒の選択および濃度によって、可使時間および硬化挙動のほかスリップ挙動に有利な作用を及ぼしうる。
【0037】
ポリイソシアネート成分K2は、少なくとも1つのポリイソシアネートB1を含んでなる。
【0038】
ポリイソシアネートB1として特に適しているのは、一方では、2つもしくはそれ以上の遊離イソシアネート基のほかに少なくとも1つの尿素基またはウレタン基またはビウレット基またはウレトジオン基を有するポリイソシアネートB1’である。特に、芳香族ポリイソシアネート、特にジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−および/または4,4’−MDI)、に基づくポリイソシアネートが適している。一方では、バイエル(Bayer)のDesmodur(登録商標)VH20として市販されている種類のポリイソシアネートが特に好適であることがわかった。さらに適しているポリイソシアネートB1’は、ジイソシアネートのイソシアヌレートまたはビウレット、特にHDIおよび/またはIPDIおよび/またはTDIのイソシアネートまたはビウレットである。
【0039】
ポリイソシアネートB1’の混合物が使用されることは十分に可能である。一つの好ましい実施形態においては、Desmodur(登録商標)VH20タイプとHDI−イソシアヌレートとのポリイソシアネートB1’混合物が使用される。
【0040】
他方では、ポリイソシアネートB1として特に適していたのは、300g/モル未満の、特に150g/モル〜270g/モルの分子量を有する少なくとも1つのポリイソシアネートと、少なくとも1つのポリオールAB1との反応から形成され、かつ少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーB1’’である。ポリオールAB1としては、特に、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、不飽和モノマーから形成されるポリオール、およびその混合物を含む群から選択されるポリオールが適切である。この種のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーの製造方法は周知の方法で行われ、かつ一般的には、ポリオールに対してポリイソシアネートの化学量論的過剰下で行われる。このために使用されるポリイソシアネートとしては、特に2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、およびそれらの異性体混合物、および互いの混合物である。特に好ましくは、MDIである。
【0041】
ポリエーテルポリオール(ポリオキシアルキレンポリオールともよばれる)は、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−または2,3−ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、またはそれらの混合物の重合生成物であり、場合により、これらは、例えば水、アンモニア、または、2つ以上のOH又はNH基を有する化合物、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコールの異性体類、ブタンジオールの、ペンタンジオールの、ヘキサンジオールの、ヘプタンジオールの、オクタンジオールの、ノナンジオールの、デカンジオールの、ウンデカンジオールの異性体類、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセリン、アニリン、および前記化合物の混合物などの、2つもしくはそれ以上の活性水素原子を有する開始剤分子の助けを借りて重合される。低い不飽和度を有する(ASTM D−2849−69に従って測定され、1グラムポリオール当りのミリ当量不飽和(mEq/g)で示される)、例えば、いわゆる二重金属シアン化物錯体触媒(DMC触媒)によって製造されるポリオキシアルキレンポリオールだけでなく、NaOH、KOH、またはアルカリアルコラートなどアニオン触媒を用いて製造される高い不飽和度を有するポリオキシアルキレンポリオールも使用されうる。
【0042】
特に適しているのは、ポリオキシアルキレンジオールまたはポリオキシアルキレントリオール、特にポリオキシプロピレンジオールまたはポリオキシプロピレントリオールである。
【0043】
特に適しているアクレイム(Acclaim)タイプは、0.02mEq/gよりも低い不飽和度および1,000〜30,000g/モルの範囲の分子量を有するポリオキシアルキレンジオールまたはポリオキシアルキレントリオール、および400〜8,000g/モルの分子量を有するポリオキシプロピレンジオールおよびトリオールである。「分子量」または「モル質量」によって本明細書ではつねに平均分子量Mであることが理解される。
【0044】
同じく特に適しているのは、いわゆる「EO末端キャップされた」(エチレンオキシド−末端キャップされた)ポリオキシプロピレンジオールまたはトリオールである。後者は、例えば、ポリプロポキシル化の完了後に純粋なポリオキシプロピレンポリオールをエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られ、その結果、一級ヒドロキシル基を有する特別なポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールである。
【0045】
ポリエステルポリオールは、特に、例えば、1,2−エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、またはそれらの混合物などの2価〜3価アルコールと、有機ジカルボン酸もしくはその無水物またはエステル、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびヘキサヒドロフタル酸、または前記酸の混合物とから形成されるポリオール、あるいはε−カプロラクトンなどのラクトンから生成されたポリエステルポリオールである。
【0046】
ポリカーボネートポリオールとして特に好ましいのは、上記の−ポリエステルポリオール合成のために使用される−アルコールを、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、またはホスゲンと反応させることによって得られるものである。
【0047】
「不飽和モノマーから形成されるポリオール」は、特に、エチレン、プロピレン、ブチチン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルエステル、アクリロニトリル、アクリル酸の、メタクリル酸の、マレイン酸の、フマル酸の、クロトン酸の、およびイタコン酸の酸、アミド、およびエステル、ならびにその混合物、を含む群から選択される少なくとも一種のモノマーの重合から形成される種類のポリオールを意味する。
【0048】
不飽和モノマーから形成される特に適したポリオールは、ポリブタジエンポリオールおよび水素化ポリブタジエンポリオール、ならびにポリ(メタ)アクリレートポリオールなどのヒドロキシ官能性ポリブタジエンである。「(メタ)アクリレート」によって、ここで、かつ本明細書の以下において、つねにアクリル酸およびメタクリル酸のエステルであることを意味する。同様に、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸を指す。
【0049】
「ポリ(メタ)アクリレートポリオール」は、この場合、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルと、モノマーであるアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のC−C18アルキルエステル、スチレン、ビニルエステル、およびビニルアルコールを含む群から選択される少なくとも1種のさらなるモノマーとのコポリマーであるポリマーである。ヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルとして好ましいのは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである。
【0050】
上記ポリオールAB1は、好ましくは、250〜30,000g/モル、特に1,000〜8,000g/モルの平均分子量を有し、かつ好ましくは、特に1.6〜3の範囲の平均OH官能基数を有するジオールまたはトリオールである。
【0051】
好ましい一つの実施形態において、ジオールとトリオールの混合物であるポリオールAB1の混合物が使用される。
【0052】
本発明の一つの実施形態において、ポリイソシアネート成分K2は少なくとも1つのポリイソシアネートB1’および少なくとも1つのポリイソシアネートポリウレタンポリマーB1’’を含んでなる。
【0053】
成分K1およびK2の両方は、すでに述べた以外に、二成分ポリウレタン化学から当業者に公知である追加の構成成分を含みうる。これら成分は一方の成分においてのみ、または両方において存在しうる。用いられるこの種の追加の構成成分の例には、例えば、溶剤、可塑剤および/または増量剤、充填剤、例えば、カーボンブラック、チョーク、またはタルク、接着促進剤、特にトリアルコキシシラン、および、チキソ性付与剤、例えば、非晶質シリカ、及びゼオライト、が含まれる。
【0054】
当業者がポリウレタン接着剤について知っているように、成分の製造に際して、特にポリイソシアネート成分K2においては、原料ができる限り水を含まないこと、かつ製造中および製造後には実質的に湿気が成分に入ることができないように確実にすること必要である。これは一方では出発物質の物理的または化学的乾燥、および不活性ガス、通常は窒素下の作業によって達成される。
【0055】
成分K1およびK2は、成分K1とK2の体積比が1:3〜3:1、特に1:2〜2:1であるように配合されることが有利である。特に好ましくは、この比はおよそ1:1である。混合比は、成分K2のNCO基が、K1のNCO反応性基に対して化学量論的であるのが好ましい。混合が実質的に化学量論的に行われない場合、すなわち、5%超の逸脱のある場合、成分K1およびK2の反応は最適には行われず、これは硬化したポリウレタン組成物の機械的特性の低下をもたらす。これは、とりわけ、ポリオール成分が過剰の場合に特に真実である。ポリイソシアネートが過剰の場合には、状況は同様に基本的に不利であるが、未反応イソシアネート基と、例えば、大気中の湿分に由来する湿気との引き続いての反応によって少なくとも部分的に回復されることができ、この反応は適当な場合にはさらなる架橋をもたらしうる。
【0056】
適用前には、成分K1およびK2は互いに別々に貯蔵され、かつ適用時または適用直前に互いに混合される。これらの成分は、互いに分離された2つのチャンバーから構成された容器中に存在し、ポリオール成分K1が一方のチャンバー中に存在し、ポリイソシアネート成分K2が他方のチャンバー中に存在することが有利である。成分K1およびK2は、容器の上記のチャンバーに入れられ、空気および湿気に対して密封される。
【0057】
好ましいこの種のパッケージは、一方では並列二重カートリッジまたは同軸カートリッジであり、この場合、2つの管状のチャンバーが互いに平行して、または一方が他方の内側に配置され、ピストンで空気および湿気に対して密封される。このピストンの押出しが、成分がカートリッジから押し出されることを可能にする。ピストンに対抗したチューブ端は、適当な場合には、アダプターを介して、開口部の領域の2つのチャンバー開口部が隔壁を介して違いに直接連結されるように修正されている。有利には、チャンバーの出口開口部の領域に作られたネジ山があり、スタティックミキサーまたは動的ミキサーがしっかりと装着されうる。この種のパッケージは、特に小規模の用途、特に1リットルまでの充填量に対して好ましい。
【0058】
大規模用途、特に工業生産における用途には、成分K1およびK2はドラム缶またはペール缶に詰められて貯蔵されることが有利である。この場合、成分は油圧を介して、特に伴板によって押出され、かつ通常、工業生産における二成分接着剤のために通常使用される混合装置へ、パイプラインを介して供給される。
【0059】
任意のパッケージで、ポリイソシアネート成分K2が、少なくとも空気及び湿気に対して密封されて、両方の成分が、長期間、すなわち、一般には6ヶ月よりも長く貯蔵されうることが重要である。
【0060】
本発明の接着方法は、以下のステップを含む。すなわち、
− 上述した成分K1とK2を混合するステップ、
− 混合されたポリウレタン組成物を、接着すべき少なくとも1つの物質表面に塗布するステップ、
− 開放時間(オープンタイム)内に結合するステップ、
− ポリウレタン組成物を硬化させるステップ。
【0061】
混合は、一般的にはスタティックミキサーを介して、または動的ミキサーの助けを借りて行われる。混合段階では、2つの成分ができる限り均一に混合されることを確実にすることが重要である。2つの成分の混合が不十分だと、最適な混合比(すなわち化学両論的)からの局所的逸脱が生じ、これは硬化されたポリウレタン組成物の機械的特性の低下をもたらす。混合の質を視覚的にも判定するために、2つの成分K1およびK2が2つの異なる色を有すると有利であり、2つの成分はお互いに及び混合物からも視覚的によく区別されうる。この種の色の組合せの例は、一方の成分が黒、他方が白である場合である。その場合、均一な灰色である場合、および、いかなる筋も、あるいは明るい灰色もしくは暗い灰色のパターン、または白もしくは黒のパターンも存在しない場合に、有効な混合となる。
【0062】
混合されたポリウレタン組成物は、接着すべき少なくとも1つの基材表面に塗布される。接着すべき基材は、好ましくは、金属、プラスチック、ガラス、またはセラミックスである。一般的には、接着されるべき2つの基材が存在し、接着することが意図される。パートナー被着体、すなわち、第2の基材、が第1の基材と同じであり、またはこれと異なることが可能である。接着剤は第1および/または第2の被着体に塗布されうる。接着剤の塗布後、被着体を開放時間内に結合させる。結合に引き続き、ポリウレタン組成物の硬化が行われる。
【0063】
これにより被着体の組み立て体が得られ、接着剤はこれらの被着体を互いに確実に結合する。
【0064】
ポリウレタン組成物は、好ましくは、構造用接着剤として使用される。そのような接着剤の使用の典型例は、建物、自動車、輸送機器、または船において見られる。これらの場合、硬化された接着剤は荷重負荷構造の一部であり、したがって、その機械的特性に厳格な要求のある重要な結合要素を構成する。本発明は実際にこの厳格な要求を非常に良く満たす。
【0065】
さらに、その高い伸びによって、本発明による接着剤組成物は、高い衝撃強度および特に湿度および温度の変化に対する顕著な経時安定性を示す。さらに、本発明による組成物は、特にアルコキシル化芳香族ジオールの使用によって、金属表面への接着力が改善されることが発見された。
【実施例】
【0066】
〔製造〕
表1に例として示した、組成物Ex1およびEx2、ならびに比較例としてのRef.1は、すべて同じ成分K2を有する。
【0067】
成分K1、ExA1およびExA2、ならびに比較成分RefA.1の製造のために、ポリオール混合物を真空溶解機に投入し、触媒および乾燥剤の添加後に、湿気の不存在下で、混合物を20分間25℃下で攪拌した。その後、これらのポリオール成分K1をポリプロピレン製の並列二重カートリッジ(体積/体積=1:1)の一つのチャンバーに充填し、プラスチックピストンで空気及び湿気に対して密封した。
【0068】
成分K2については、乾燥したチョークをポリイソシアネートに添加し、攪拌しながら真空下に均一に25℃で真空溶解機において20分間混合した。その後、このポリイソシアネート成分K2を上記の並列二重カートリッジの第2のチャンバーに充填し、同様にしてプラスチックピストンを用いて空気および湿気に対して密封した。
【0069】
成分K1およびK2を表1に示された量で、スタティックミキサーを用いて1:1の体積で混合した。
【0070】
〔測定〕
混合された成分K1およびK2をISO 527、第2部、1Bに従って、ダンベル型に入れ、24時間25℃およびその後3時間105℃で硬化させた。25℃で24時間のコンディショニング時間後、こうして製造された試験体の弾性率、引張り強度、および伸びをISO 527に準拠して、ツビック(Zwick) Z020引張り試験機で20℃の試験温度および試験速度50mm/分で測定した。
【0071】
【表1】

【0072】
この結果から、実施例Ex1およびEx2はRef.1と比較して、より高い引張り強度のみならず、高い破断時伸びをも有することが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分K1およびポリイソシアネート成分K2からなる二成分ポリウレタン組成物であって、前記ポリオール成分K1が
少なくとも1つのアルコキシル化芳香族ジオールA1、および
少なくとも1つの脂肪族トリオールA2
を含み、
かつ前記ポリイソシアネート成分K2が
少なくとも1つのポリイソシアネートB1
を含む二成分ポリウレタン組成物。
【請求項2】
前記ポリイソシアネートB1がポリイソシアネートB1’であり、かつ2つもしくはそれ以上の遊離イソシアネート基のほかに少なくとも1つの尿素基もしくはウレタン基またはビウレット基もしくはウレトジオン基を有することを特徴とする請求項1に記載の二成分ポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネートB1’がジイソシアネート、特にHDIおよび/またはIPDIおよび/またはTDIのイソシアヌレートまたはビウレットであることを特徴とする請求項2に記載の二成分ポリウレタン組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートB1が、少なくとも2つのイソシアネートB1基を有し、かつ300g/モル未満の、特に150g/モル〜270g/モルの分子量の少なくとも1つのポリイソシアネートと、少なくとも1つのポリオールAB1との反応から製造されるポリウレタンプレポリマーB1’’であることを特徴とする請求項1に記載の二成分ポリウレタン組成物。
【請求項5】
300g/モル未満の分子量を有する前記ポリイソシアネートが、MDI、HDI、またはTDI、特にMDIであることを特徴とする請求項4に記載の二成分ポリウレタン組成物。
【請求項6】
前記組成物が、請求項2または3に記載されている少なくとも1つのポリイソシアネートB1’、および請求項4または5に記載されている少なくとも1つのポリウレタンプレポリマーB1’’を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の二成分ポリウレタン組成物。
【請求項7】
前記アルコキシル化芳香族ジオールA1がエトキシル化および/またはプロポキシル化芳香族ジオールであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の二成分ポリウレタン組成物。
【請求項8】
前記ジオールが、式(I)
【化1】

[式中、R=CH、CH(CH)またはC(CHであり、
=HおよびR=メチルまたはR=メチルおよびR=Hであり、およびn+n’+m+m’=1〜20、特にn+n’+m+m’=1〜8であり、かつ、点線は、互いに結合された一連のアルキレングリコール部a、a1’、a、およびa2’が可変であることを表す。]を有することを特徴とする請求項7に記載の二成分ポリウレタン組成物。
【請求項9】
n=n’=0であることを特徴とする請求項8に記載の二成分ポリウレタン組成物。
【請求項10】
前記脂肪族トリオールA2が360〜6000g/モル、特に160〜1700g/モルを有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の二成分ポリウレタン組成物。
【請求項11】
前記A1/A2の重量比が0.05〜0.3であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の二成分ポリウレタン組成物。
【請求項12】
前記芳香族ジオールA1が、組成物全体に対して2〜10重量%の量で存在することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の二成分ポリウレタン組成物。
【請求項13】
成分K1とK2の容積比が1:3〜3:1、好ましくは、約1:1であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の二成分ポリウレタン組成物。
【請求項14】
互いに分離された2つのチャンバーをもつ容器と、請求項1〜13のいずれか一項に記載の二成分ポリウレタン組成物とからなるパッケージであって、一方のチャンバーに前記ポリオール成分K1、およびもう一方のチャンバーに前記ポリイソシアネート成分K2が存在するパッケージ。
【請求項15】
−請求項1〜13のいずれか一項に記載の二成分ポリウレタン組成物の成分K1とK2を混合するステップと、
−混合されたポリウレタン組成物を接着すべき少なくとも1つの物質表面に塗布するステップと、
−開放時間内に結合するステップと、
−前記ポリウレタン組成物を硬化させるステップと
を含む接着方法。
【請求項16】
前記接着すべき物質が金属、プラスチック、ガラス、またはセラミックであることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の方法に従い接着された接着物品。
【請求項18】
接着剤として、特に構造用接着剤としての請求項1〜13のいずれか一項に記載の二成分ポリウレタン組成物の使用
【請求項19】
建物、自動車、輸送用機器または船の建造用の接着剤としての請求項18に記載の使用。

【公表番号】特表2008−530294(P2008−530294A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554566(P2007−554566)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050853
【国際公開番号】WO2006/084900
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】