説明

特定のStaphylococcus種の分析のためのペプチド核酸プローブ

【課題】ペプチド核酸(PNA)プローブの提供。
【解決手段】本発明は、(必要に応じてサンプル中に存在する)特定のStaphylococcus種の分析のためのペプチド核酸(PNA)プローブに関する。本発明はまた、(必要に応じてサンプル中に存在する)特定のStaphylococcus種の分析のためのPNAプローブセットに関する。本発明はまた、(必要に応じてサンプル中に存在する)特定のStaphylococcus種の分析のための方法に関する。本発明は、そのようなPNAプローブを含む診断キットにさらに関する。本発明は、そのようなPNAプローブセットを含む診断キットにさらに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2003年11月26日に出願した米国仮特許出願第60/525,591号の利益を主張する。この仮出願の内容全体が、この言及によって本明細書中にて援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、特定のStaphylococcus種(必要に応じて、サンプル中に存在する)の分析のための、ペプチド核酸(PNA)プローブ、PNAプローブセット、および方法に関する。本発明は、そのようなPNAプローブまたはPNAプローブセットを含む、診断キットにさらに関する。本発明の方法およびキットは、S.aureus以外の1種以上のStaphylococcus種およびS.aureusの同時分析のために特に有用である。
【背景技術】
【0003】
(背景)
Staphylococcus aureusは、外科部位感染、血流感染(BSI)および他の深刻な感染に関連する、周知のヒト病原体である。対照的に、皮膚において一般的に見出される他のStaphylococcus種(例えば、特に、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus lugdenensis、およびStaphylococcus saprophyticus)は、カテーテル関連感染以外は、臨床的には稀にしか重要ではない。さらに、BSIがS.aureus以外のStaphylococcus種によって引き起こされる場合において、しばしば、それらの生物とS.aureusとの間に、抗生物質感受性または生存能の差が存在する。従って、S.aureus以外のStaphylococcus種と、S.aureusとの間の区別が、適切な患者治療および患者管理を指示するためには非常に重要である。
【0004】
臨床標本におけるStaphylococcus種の存在は、グラム染色および顕微鏡分析によりグラム陽性球菌クラスター(GPCC)の存在によって慣用的に決定される。しかし、S.aureusと他のStaphylococcus種との間の区別は、継代培養、一晩インキュベーションと、その後の生化学的分析(例えば、コアグラーゼ試験およびラテックス凝集試験)またはより最近では分子試験を待たなければならない。他のStaphylococcus種の存在は、しばしば、試験管コアグラーゼ試験の陰性の結果に基づいて決定され、代表的には、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)として報告されている。これは、GPCC陽性の血液培養ビンの分析のために特に問題である。なぜなら、GPCC陽性血液ビンのうちのわずか20%〜30%しか、S.aureusに起因しないからである(非特許文献1)。従って、大多数の場合において、医師は、陰性の試験結果(例えば、S.aureusの不在)に基づいて判断を行わなければならない。
【0005】
Staphylococcus aureusおよびすべてのStaphylococcus種の分析のためのDNAプローブ(属特異的プローブ)が、記載されており(特許文献1、非特許文献2)、同様に、S.aureusの分析のためのPNAプローブも、記載されている(特許文献2、非特許文献3)。これらのプローブは、すべて、種特異的または属特異的のいずれかである配列を標的とする。
【0006】
リボソームRNA(rRNA)配列またはそのrRNAに対応するゲノムDNA配列(rDNA)の比較分析は、細菌種間の系統発生的関係を確立するための広く受け入れられた方法となっている(非特許文献4)。結果的に、Bergey’s Manual of systematic bacteriologyが、rRNA配列比較またはrDNA配列比較に基づいて修正された。近縁種間でのリボソームRNA配列またはrDNA配列の差によって、微生物同定のための種特異的プローブの設計が可能になり、それによって、診断微生物学は、伝統的微生物学におけるような一連の表現型マーカーではなく単一の遺伝子マーカーに基づくことが可能になる(非特許文献5)。しかし、種コホートを標的とするプローブの設計は、特に問題があり、非常に特異的なプローブ構築物と独特な標的配列との組み合わせを必要とする。
【0007】
PNAは、種サブセットを標的とするプローブを開発する場合の有用な研究候補である。なぜなら、PNAは、DNAプローブと比較して増加した配列特異性で核酸にハイブリダイズするからである。従って、先行技術はまた、Mycobacterium tuberculosis以外のマイコバクテリアを標的とするPNAプローブの例(特許文献3)およびEnterococcus faecalis以外の腸球菌を標的とするPNAプローブの例(非特許文献6)を包含する。
【0008】
その名前にも関わらず、ペプチド核酸(PNA)は、ペプチドでも核酸でもなく、酸でさえない。PNAは、天然に存在しないポリアミドであり、これは、Watson−Crick塩基対形成規則に従って配列特異性を備えて核酸(DNAおよびRNA)にハイブリダイズし得る(特許文献4および非特許文献7を参照のこと)。しかし、核酸は、生存種の一生において遺伝子伝達および遺伝子発現の作用因子として中心的役割を果たす生物学的物質であるが、PNAは、最近開発された全体的に人工の分子であり、化学者の頭脳において着想され合成有機化学を使用して作製された。PNAはまた、核酸とは構造的に異なる。両方とも、一般的な核酸塩基(A、C、G、TおよびU)を使用し得るが、これらの分子の骨格は、構造的に多岐にわたる。RNAの骨格およびDNAの骨格は、反復するホスホジエステルリボース単位および2−デオキシリボース単位から構成される。対照的に、最も一般的なPNAの骨格は、(アミノエチル)−グリシンサブユニットから構成される。さらに、PNAにおいて、その核酸塩基は、さらなるメチレンカルボニル部分によってその骨格に接続される。従って、PNAは、酸ではなく、従って、荷電酸性基(例えば、DNAおよびRNA中に存在する荷電酸性基)を含まない。その非荷電骨格によって、PNAプローブは、DNAおよびRNAに対しては不安定な条件下でハイブリダイズ可能である。そのような属性によって、PNAプローブは、DNAプローブに接近不能であることが公知である標的(例えば、高度に構造化されたrRNAおよび二本鎖DNA)に接近可能である(非特許文献8を参照のこと)。PNAプローブは、構造においても機能においても、核酸プローブの等価物ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第0066788号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6664045号明細書
【特許文献3】米国特許第6753421号明細書
【特許文献4】米国特許第5,539,082号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Karlowskyら、Ann Clin Microbiol Antimicrob(2004)3:7
【非特許文献2】Kempfら、J.Clin.Microbiol(2000)38:830〜838
【非特許文献3】Oliveiraら、J.Clin.Microbiol.(2002)40:247〜251
【非特許文献4】Woese、Microbiol.Rev.(1987)51:221〜271
【非特許文献5】Delongら、Science(1989)342:1360〜1363
【非特許文献6】Oliveiraら、Abstract #D−2003,Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2002,September 27〜30,San Diego,CA
【非特許文献7】Egholmら、Nature(1993)365:566〜568
【非特許文献8】StephanoおよびHyldig−Nielsen,IBC Library Series Publication #948,International Business Communication,Southborough,1997,MA,pp.19〜37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の積極的同定は、多くの場合において有利である。Staphylococcus aureusおよび他のStaphylococcus種の同時分析が、理想的である。なぜなら、S.aureusまたは他のStaphylococcus種のいずれかの存在についての処置判断は、常に、陽性の試験結果に基づくからである。この特徴はまた、S.aureusと他のStaphylococcus種との混合物が存在する場合に、有意な利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、(必要に応じて、対象サンプル中に存在する)特定のStaphylococcus種(好ましくは、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種)の分析のために有用な、PNAプローブもしくはPNAプローブセット、およびそれらの使用ならびにキットに関する。特許請求の範囲に従って、上記PNAプローブは、リボソームRNA(rRNA)、またはそのrRNAもしくはその相補体に対応するゲノム配列(rDNA)に関する。
【0013】
一実施形態において、本発明は、Staphylococcus aureus以外のあるStaphylococcus種(例えば、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus lugdenensis、およびStaphylococcus saprophyticusであるが、これらに限定されない)の分析のためのPNAプローブに関する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、Staphylococcus aureus以外の2種以上のStaphylococcus種の分析のためのPNAプローブに関する。
【0015】
PNAプローブ(元々、米国特許第5,539,082号およびEgholmら、Nature 365:566〜568(1993)(本明細書に参考として添付される)に記載される)は、天然に存在する核酸プローブと比較した場合の固有の物理化学的特徴/化学的特徴を有し、その特徴によって、迅速かつ正確なアッセイの設計が可能である。PNAプローブは、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイにおいて適用された場合に、核酸プローブを超える別の利点を提供する。この利点は、PNAプローブによる、グラム陽性細菌(例えば、Staphylococcus種)の強固な細胞壁の改良された細胞浸透に起因する。核酸プローブが、架橋剤および/または酵素による固定および透過化処理を必要とする(例えば、Kempfら、J.Clin.Microbiol 38:830〜838(2000)を参照のこと)場合、PNAプローブは、実施例1において例証されるような塗抹標本調製の後に直接適用され得る。
【0016】
好ましい実施形態において、PNAプローブは、比較的短い核酸塩基配列(例えば、実施例1に記載されるような15核酸塩基)を有する。天然に存在する核酸プローブは、PNAプローブよりも弱いその安定性および低いその融解温度(Tm)が原因で、代表的には、少なくとも18ヌクレオチド長である(例えば、Kempfら、J.Clin.Microbiol 38:830〜838(2000)を参照のこと)。核酸プローブよりも高いPNAプローブの特異性は、密接に関連するStaphylococcus種のrRNAまたはrDNAの分析のために必要とされるような、一核酸塩基の差もしくはほんの少数の核酸塩基の差しかない密接に関連する非標的配列を、核酸プローブよりも良好に識別する。
【0017】
本発明に従う例示的なPNAプローブ核酸塩基配列としては、Staphylococcus epidermidisを標的とするTCT−AAC−ATG−TTC−TTT(配列番号1);Staphylococcus saprophyticusを標的とするTCT−AGT−CTG−TTC−TTT(配列番号2);Staphylococcus haemolyticusを標的とするTCT−AAT−ATA−TTC−CTT(配列番号3);Staphylococcus warneriを標的とするTCT−AAT−ATA−TAC−TTT(配列番号4);Staphylococcus aureus以外の数種のStaphylococcus種を標的とするGCT−CCA−AAT−GGT−TAC(配列番号5);Staphylococcus epidermidisを標的とするTCC−TCG−TCT−GTT−CGC(配列番号6);Staphylococcus saprophyticusを標的とするCTC−CTT−ATC−TGT−TCG−C(配列番号7);Staphylococcus haemolyticusを標的とするCTC−CTT−GTC−TGT−TCG−C(配列番号8);Staphylococcus sciuriを標的とするCTT−CTC−ATC−TGT−TCG−C(配列番号9);Staphylococcus schleiferiを標的とするTCC−TCG−TCC−GTT−CGC(配列番号10);およびStaphylococcus schleiferiの改変体を標的とするTCC−TTG−TCC−GTT−CGC(配列番号11)が挙げられる。これらのPNAプローブは、これらのPNAプローブが標的とするブドウ球菌の種によって記載されているが、これらのPNAプローブは、必ずしもその特定の生物に対して特異的ではなく、実際には、それらのプローブのうちのいくつかは、他のStaphylococcus種における標的と完全に相補的であるか、またはほぼ完全に相補的である。
【0018】
なお別の実施形態において、上記PNAプローブは、Staphylococcus aureus以外の2種以上のStaphylococcus種の分析のための2種以上のPNAプローブを含むか、またはStaphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析のための少なくとも1種のPNAプローブとStaphylococcus aureusの分析のためのPNAプローブとを含む、PNAプローブセットの一部であり得る。すなわち、本発明のいくつかのPNAプローブは、Staphylococcus aureus以外の2種以上のStaphylococcus種に対して特異的である。好ましくは、PNAプローブセット内のPNAプローブは、2種以上のStaphylococcus種の独立した分析のために別々に標識される。この実施形態の改変形において、そして実施例5において例証されるように、複数のプローブが、特定のStaphylococcus種またはStaphylococcus種コホートを検出するために同じように標識され得、一方、必要に応じた他のプローブが、第二の種または種コホートの分析のために別々に標識される。
【0019】
本発明に従う方法は、サンプルを、上記のPNAプローブのうちの1つ以上と接触させる工程を包含する。この方法によると、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の存在、不在、および/または数が、適切なハイブリダイゼーション条件下での標的配列に対する上記プローブのプロービング核酸塩基配列のハイブリダイゼーションを相関付けることによって、検出、同定、および/または定量される。結果的に、この分析は、決定的な結果を伴う単一のアッセイに基づく。対照的に、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の決定的分析のための現行の慣用的方法は、複数の試験を含む複数の表現型特徴に基づく。
【0020】
別の実施形態において、上記PNAプローブは、Staphylococcus aureusと、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種との同時分析のために、並列反応または同一反応(多重反応)のいずれかにおいて、Staphylococcus aureusの分析のための以前に公開されたPNAプローブ(Oliveiraら、J.Clin.Microbiol.40:247〜251(2002)を参照のこと)と同時に適用される。Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の存在がStaphylococcus aureus特異的シグナルの不在によってさらに支持され、逆もまた同様であるこの様式においては、そのような最終的試験結果は、ポジティブな反応およびネガティブな反応の両方に基づいて解釈される。従って、上記PNAプローブセットは、別個のコントロール実験を実施する必要性を排除する内部コントロールを提供する。好ましくは、上記2種のPNAプローブは、その分析が1つの反応(多重反応)において実施されるように、独立して標識される。同時分析はまた、Staphylococcus aureusと、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種との両方の混合物を含む標本にとって、有利である。そのような場合、FISHのための上記PNAプローブの使用は、単一細胞検出という利点を提供し、その結果、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種と、Staphylococcus aureusとの両方の細胞が、下記に例証されるような特異的標識によって同時に観察され得かつ区別され得る。対称的に、他の技術は、さらなるコントロール実験を実施することなく、混合培養物を擬陽性反応から区別することはできない。
【0021】
なお別の実施形態において、本発明は、(必要に応じてサンプル中に存在する)Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus aureus種を検出、同定、および/または定量するアッセイを実施するため、ならびに/あるいは抗生物質耐性の決定のために適切な、キットに関する。本発明のキットは、1種以上のPNAプローブと、アッセイを実施するように選択されるかまたはそうでなければアッセイの実施を簡単にするように選択される他の試薬もしくは組成物とを、含む。特に、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus aureus種と、Staphylococcus aureusとの組み合わせ分析は、GPCC陽性血液培養ビンの慣用的試験(複数のPNAプローブの使用が二次的に内部コントロールとして役立つ)のために充分に適している。
【0022】
複数のPNAプローブの使用に由来する別の利点は、ブロッキングプローブの使用である。この好ましい実施形態において、ブロッキングプローブストラテジーが、密接に関連する生物における保存された標的分子の類似領域にプローブが指向されている多重アッセイにおける使用のためのプローブの設計において、使用される。例えば、核酸塩基配列およびTmが実質的に類似している独立して検出可能な一対のプローブが、標的核酸塩基配列が1塩基だけ異なる2つの標的の非常に保存された領域に対してハイブリダイズするように設計され得る。この場合、第一プローブが第二プローブの相補的標的に対して非特異的にハイブリダイズする傾向は、第二プローブ/標的ハイブリッドの存在および相対的安定性によって妨害される。同様に、独立して検出可能であるかまたは非独立的に検出可能であるか、または独立して検出可能であるものと非独立的に検出可能であるものとの組み合わせであるかのいずれかである、複数のプローブが、設計され得、これらの複数のプローブは、すべて、わずか一塩基だけ互いに異なり、これらの複数のプローブは、系統的に関連する生物の部分的に保存された標的領域に対して相補的であるかまたは少なくとも実質的に相補的である。標的部位に対する競合は、より高いプローブ特異性を生じ得ると同時に交差ハイブリダイゼーションの可能性を低下させ得る。
【0023】
当業者は、適切なPNAプローブが、本明細書において有効であると記載されるこれらのプロービング核酸塩基配列を正確に有する必要はないが、特定のアッセイ条件に従って改変され得ることを、認識する。例えば、ハイブリッドの安定性が改変されてそのTmを低下させかつ/またはストリンジェンシーについて調節する必要がある場合に、その核酸塩基配列の短縮によって、より短いPNAプローブが調製され得る。同様に、その核酸塩基配列は、区別する核酸塩基がそのPNAプローブの配列中に残る限り、一端において短縮され得、もう一端において伸長され得る。本明細書中に記載されるパラメーター内における上記プロービング核酸塩基配列のそのような変化は、本発明の実施形態であると考えられる。
【0024】
当業者はまた、相補的プロービング配列が、標的配列としてのrDNAに対して指向されているアッセイ(例えば、リアルタイムPCRであるが、これに限定はされない)のために等しく適切であることを、認識する。
・本発明はまた、以下を提供する:

・(項目1)
Staphylococcus aureus以外の1種以上のStaphylococcus種の分析のために適切な核酸塩基配列を含む、PNAプローブ。
・(項目2)
Staphylococcus aureus以外の2種以上のStaphylococcus種の分析のために適切な核酸塩基配列を含む、PNAプローブ。
・(項目3)
項目1〜2に記載のPNAプローブであって、上記Staphylococcus種の標的配列は、rRNA、rDNA、またはrRNAの相補体もしくはrDNAの相補体である、PNAプローブ。
・(項目4)
項目1〜2に記載のPNAプローブであって、Staphylococcus epidermidisの分析のために適切な核酸塩基配列を含み、当該PNAプローブは、Staphylococcus epidermidis rRNAの標的配列もしくはStaphylococcus epidermidis rDNAの標的配列または当該rRNAの標的配列の相補体もしくは当該rDNAの標的配列の相補体に対して、相補的である、PNAプローブ。
・(項目5)
項目1〜2に記載のPNAプローブであって、Staphylococcus hominisの分析のために適切な核酸塩基配列を含み、当該PNAプローブは、Staphylococcus hominis rRNAの標的配列もしくはStaphylococcus hominis rDNAの標的配列または当該rRNAの標的配列の相補体もしくは当該rDNAの標的配列の相補体に対して、相補的である、PNAプローブ。
・(項目6)
項目1〜2に記載のPNAプローブであって、Staphylococcus haemolyticusの分析のために適切な核酸塩基配列を含み、当該PNAプローブは、Staphylococcus haemolyticus rRNAの標的配列もしくはStaphylococcus haemolyticus rDNAの標的配列または当該rRNAの標的配列の相補体もしくは当該rDNAの標的配列の相補体に対して、相補的である、PNAプローブ。
・(項目7)
項目1〜2に記載のPNAプローブであって、Staphylococcus lugdunensisの分析のために適切な核酸塩基配列を含み、当該PNAプローブは、Staphylococcus lugdunensis rRNAの標的配列もしくはStaphylococcus lugdunensis rDNAの標的配列または当該rRNAの標的配列の相補体もしくは当該rDNAの標的配列の相補体に対して、相補的である、PNAプローブ。
・(項目8)
項目1〜2に記載のPNAプローブであって、Staphylococcus saprophyticusの分析のために適切な核酸塩基配列を含み、当該PNAプローブは、Staphylococcus saprophyticus rRNAの標的配列もしくはStaphylococcus saprophyticus rDNAの標的配列または当該rRNAの標的配列の相補体もしくは当該rDNAの標的配列の相補体に対して、相補的である、PNAプローブ。
・(項目9)
項目1に記載のPNAプローブであって、Staphylococcus epidermidisと、Staphylococcus aureus以外の1種以上の他のStaphylococcus種との分析のために適切な核酸塩基配列を含み、当該PNAプローブは、Staphylococcus epidermidis rRNAの標的配列もしくはStaphylococcus epidermidis rDNAの標的配列または当該rRNAの標的配列の相補体もしくは当該rDNAの標的配列の相補体に対して、相補的である、PNAプローブ。
・(項目10)
項目1に記載のPNAプローブであって、Staphylococcus hominisと、Staphylococcus aureus以外の1種以上の他のStaphylococcus種との分析のために適切な核酸塩基配列を含み、当該PNAプローブは、Staphylococcus hominis rRNAの標的配列もしくはStaphylococcus hominis rDNAの標的配列または当該rRNAの標的配列の相補体もしくは当該rDNAの標的配列の相補体に対して、相補的である、PNAプローブ。
・(項目11)
項目1に記載のPNAプローブであって、Staphylococcus haemolyticusと、Staphylococcus aureus以外の1種以上の他のStaphylococcus種との分析のために適切な核酸塩基配列を含み、当該PNAプローブは、Staphylococcus haemolyticus rRNAの標的配列もしくはStaphylococcus haemolyticus rDNAの標的配列または当該rRNAの標的配列の相補体もしくは当該rDNAの標的配列の相補体に対して、相補的である、PNAプローブ。
・(項目12)
項目1に記載のPNAプローブであって、Staphylococcus lugdunensisと、Staphylococcus aureus以外の1種以上の他のStaphylococcus種との分析のために適切な核酸塩基配列を含み、当該PNAプローブは、Staphylococcus lugdunensis rRNAの標的配列もしくはStaphylococcus lugdunensis rDNAの標的配列または当該rRNAの標的配列の相補体もしくは当該rDNAの標的配列の相補体に対して、相補的である、PNAプローブ。
・(項目13)
項目1に記載のPNAプローブであって、Staphylococcus saprophyticusと、Staphylococcus aureus以外の1種以上の他のStaphylococcus種との分析のために適切な核酸塩基配列を含み、当該PNAプローブは、Staphylococcus saprophyticus rRNAの標的配列もしくはStaphylococcus saprophyticus rDNAの標的配列または当該rRNAの標的配列の相補体もしくは当該rDNAの標的配列の相補体に対して、相補的である、PNAプローブ。
・(項目14)
項目1、2、または9〜13に記載のPNAプローブであって、当該プローブの少なくとも一部は、
TCT−AAC−ATG−TTC−TTT(配列番号1)、
TCT−AGT−CTG−TTC−TTT(配列番号2)、
TCT−AAT−ATA−TTC−CTT(配列番号3)、
TCT−AAT−ATA−TAC−TTT(配列番号4)、
GCT−CCA−AAT−GGT−TAC(配列番号5)
TCC−TCG−TCT−GTT−CGC(配列番号6)、
CTC−CTT−ATC−TGT−TCG−C(配列番号7)、および
CTC−CTT−GTC−TGT−TCG−C(配列番号8)、
CTT−CTC−ATC−TGT−TCG−C(配列番号9)、
TCC−TCG−TCC−GTT−CGC(配列番号10)、
TCC−TTG−TCC−GTT−CGC(配列番号11)、
から選択される核酸塩基配列もしくはその相補体に対して少なくとも約86%同一である、PNAプローブ。
・(項目15)
項目1、2、または9〜13に記載のPNAプローブであって、当該プローブの少なくとも一部は、
TCT−AAC−ATG−TTC−TTT(配列番号1)、
TCT−AGT−CTG−TTC−TTT(配列番号2)、
TCT−AAT−ATA−TTC−CTT(配列番号3)、
TCT−AAT−ATA−TAC−TTT(配列番号4)、
GCT−CCA−AAT−GGT−TAC(配列番号5)
TCC−TCG−TCT−GTT−CGC(配列番号6)、
CTC−CTT−ATC−TGT−TCG−C(配列番号7)、および
CTC−CTT−GTC−TGT−TCG−C(配列番号8)、
CTT−CTC−ATC−TGT−TCG−C(配列番号9)、
TCC−TCG−TCC−GTT−CGC(配列番号10)、
TCC−TTG−TCC−GTT−CGC(配列番号11)、
から選択される、PNAプローブ。
・(項目16)
項目1、2、または9〜13に記載のPNAプローブであって、上記プローブ配列は、長さが8サブユニット〜17サブユニットである、PNAプローブ。
・(項目17)
項目1、2、または9〜13に記載のPNAプローブであって、当該プローブは、少なくとも1つの検出可能な部分で標識されている、PNAプローブ。
・(項目18)
項目17に記載のPNAプローブであって、上記検出可能な部分は、結合体、分枝型検出系、発色団、フルオロフォア、スピン標識、放射性同位体、酵素、ハプテン、アクリジニウムエステル、および発光化合物からなる群より選択される、PNAプローブ。
・(項目19)
項目17に記載のPNAプローブであって、当該PNAプローブは、自己報告プローブである、PNAプローブ。
・(項目20)
項目19に記載のPNAプローブであって、当該プローブは、PNA Linear Beaconである、PNAプローブ。
・(項目21)
項目1、2、または9〜13に記載のPNAプローブであって、当該PNAプローブは、標識されていない、PNAプローブ。
・(項目22)
項目21に記載のPNAプローブであって、当該プローブは、支持体に結合されている、PNAプローブ。
・(項目23)
項目1、2、または9〜13に記載のPNAプローブであって、当該プローブは、スペーサーまたはリンカーをさらに含む、PNAプローブ。
・(項目24)
項目1、2、または9〜13に記載のPNAプローブであって、インサイチュハイブリダイゼーションが、Staphylococcus aureus以外の1種以上のStaphylococcus種の分析のために使用される、PNAプローブ。
・(項目25)
項目1〜24に記載の1つ以上のPNAプローブと、Staphylococcus aureusの分析のための少なくとも1つのPNAプローブと、を含む、PNAプローブセット。
・(項目26)
項目25に記載のPNAプローブセットであって、上記プローブは、2種以上のStaphylococcus種の独立した分析のために別々に標識されている、PNAプローブセット。
・(項目27)
項目25に記載のPNAプローブセットであって、上記1つ以上のPNAプローブはPNAプローブを含み、当該PNAプローブにおいて各プローブの少なくとも一部は、
TCC−TCG−TCT−GTT−CGC(配列番号6)、
CTC−CTT−ATC−TGT−TCG−C(配列番号7)、
CTC−CTT−GTC−TGT−TCG−C(配列番号8)、
CTT−CTC−ATC−TGT−TCG−C(配列番号9)、
TCC−TCG−TCC−GTT−CGC(配列番号10)、
TCC−TTG−TCC−GTT−CGC(配列番号11)、
から選択される、PNAプローブセット。
・(項目28)
項目25に記載のPNAプローブセットであって、上記Staphylococcus
aureusの分析のための少なくとも1つのPNAプローブは、項目1〜24に記載の1つ以上のPNAプローブとは別々に標識されている、PNAプローブセット。
・(項目29)
項目28に記載のPNAプローブセットであって、上記Staphylococcus
aureusの分析のための少なくとも1つのPNAのうちの1つの少なくとも一部は、GCT−TCT−CGT−CCG−TTCから選択される、PNAプローブセット。
・(項目30)
項目1〜24に記載の1つ以上のPNAプローブと、Staphylococcus aureus以外の1種以上のStaphylococcus種の分析のための少なくとも1つのPNAブロッキングプローブと、を含む、PNAプローブセット。
・(項目31)
項目30に記載のPNAプローブセットであって、Staphylococcus aureusの分析のためのPNAブロッキングプローブをさらに含む、PNAプローブセット。
・(項目32)
項目31に記載のPNAプローブセットであって、上記Staphylococcus
aureusの分析のためのPNAブロッキングプローブのうちの少なくとも一部は、
TCC−TCG−TCT−GTT−CGC(配列番号6)、
CTC−CTT−ATC−TGT−TCG−C(配列番号7)、
CTC−CTT−GTC−TGT−TCG−C(配列番号8)、
CTT−CTC−ATC−TGT−TCG−C(配列番号9)、
TCC−TCG−TCC−GTT−CGC(配列番号10)、
TCC−TTG−TCC−GTT−CGC(配列番号11)、
から選択される、PNAプローブセット。
・(項目33)
サンプル中にあるStaphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析のための方法であって、当該方法は、
a)項目1〜24に記載のPNAプローブのうちの少なくとも1つを、当該サンプルと接触させる工程、
b)当該PNAプローブを、当該サンプル中にあるStaphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の標的配列に対してハイブリダイズさせる工程、および
c)当該ハイブリダイゼーションを検出する工程であって、当該ハイブリダイゼーションの検出は、当該サンプルにおけるStaphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の存在、正体、および/または量を示す、工程、
を包含する、方法。
・(項目34)
2種以上のStaphylococcus種の分析のための方法であって、当該方法は、
a)項目1〜24に記載のPNAプローブセットを、当該サンプルと接触させる工程、
b)当該PNAプローブを、当該サンプルにあるStaphylococcus種の標的配列に対してハイブリダイズさせる工程、および
c)当該ハイブリダイゼーションを検出する工程であって、当該ハイブリダイゼーションの検出は、当該サンプルにおけるStaphylococcus種の存在、正体、および/または量を示す、工程、
を包含する、方法。
・(項目35)
項目33〜34に記載の方法であって、上記2種以上のStaphylococcus種は、Staphylococcus aureusと、Staphylococcus
aureus以外の1種以上のStaphylococcus種とである、方法。
・(項目36)
Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種のコホートの分析のための、項目33〜35に記載の方法。
・(項目37)
項目36に記載の方法であって、上記検出されるStaphylococcus aureus以外のStaphylococcus種のコホートは、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、臨床的に重要なコアグラーゼ陰性ブドウ球菌、または臨床的に重要なコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の部分集合である、方法。
・(項目38)
項目33〜37に記載の方法であって、上記プローブは、独立して検出可能であるか、非独立的に検出可能であるか、または独立して検出可能であるものと非独立的に検出可能であるものとの組み合わせであり、当該プローブは、わずか一塩基だけ互いに異なり、当該プローブは、系統的に関連する生物の部分的に保存された標的領域に対して相補的であるかまたは実質的に相補的である、方法。
・(項目39)
項目38に記載の方法であって、プローブまたはプローブセットが、Staphylococcus aureus特異的プローブと、Staphylococcus schleiferi標的との間の交差ハイブリダイゼーションを排除または減少するために使用される、方法。
・(項目40)
項目33〜39に記載の方法であって、Staphylococcus aureusと、Staphylococcus aureus以外の1種以上のStaphylococcus種とが、同時かつ独立的に検出される、方法。
・(項目41)
項目33〜40に記載の方法であって、上記分析は、インサイチュで行われる、方法。
・(項目42)
項目41に記載の方法であって、上記分析は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーションにより行われる、方法。
・(項目43)
項目33〜40に記載の方法であって、当該方法は、標的配列を含む核酸を検出するために使用され、当該核酸は、反応において合成または増幅されている、方法。
・(項目44)
項目43に記載の方法であって、好ましい核酸合成反応または核酸増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、転写媒介性増幅(TMA)、ローリングサークル増幅(RCA)、およびQβレプリカーゼからなる群より選択される、方法。
・(項目45)
項目33〜44に記載の方法であって、当該方法は、
非標的配列に対する上記PNAプローブのハイブリダイゼーションを減少または排除するために、少なくとも1つのブロッキングプローブを添加する工程、
をさらに包含する、方法。
・(項目46)
項目33〜40に記載の方法であって、上記標的配列は、表面に固定される、方法。
・(項目47)
項目33〜40に記載の方法であって、上記PNAプローブは、表面に固定される、方法。
・(項目48)
項目33〜40に記載の方法であって、上記PNAプローブは、アレイの一構成成分である、方法。
・(項目49)
項目33〜48に記載の方法であって、上記サンプルは、生物学的サンプルである、方法。
・(項目50)
項目49に記載の方法であって、上記生物学的サンプルは、血液、尿、分泌物、汗、痰、糞便、粘液、またはそれらの培養物である、方法。
・(項目51)
サンプルにおけるStaphylococcus aureus以外の1種以上のStaphylococcus種の分析のためのアッセイを実施するために適切なキットであって、当該キットは、
a)項目1〜24に記載のPNAプローブ、および
b)当該アッセイを実施するために必要な他の試薬または組成物、
を備える、キット。
・(項目52)
項目51に記載のキットであって、必要に応じてサンプル中に存在する、Staphylococcus aureus以外の1種以上のStaphylococcus種と、少なくとも1種の他の微生物とが、独立して、検出、同定、および/または定量される、キット。
・(項目53)
項目52に記載のキットであって、必要に応じてサンプル中に存在する、Staphylococcus aureus以外の1種以上のStaphylococcus種と、Staphylococcus aureusとが、独立して、検出、同定、および/または定量される、キット。
・(項目54)
項目51〜53に記載のキットであって、必要に応じてサンプル中に存在する、Staphylococcus aureus以外の1種以上のStaphylococcus種が、検出、同定、および/または定量され、抗菌剤に対する当該Staphylococcus種の感受性が、決定される、キット。
・(項目55)
項目51〜54に記載のキットであって、検出されるStaphylococcus aureus以外の1種以上のStaphylococcus種は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、臨床的に重要なコアグラーゼ陰性ブドウ球菌、または臨床的に重要なコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の部分集合である、キット。
・(項目56)
項目51〜55に記載のキットであって、当該キットは、インサイチュハイブリダイゼーションにおいて使用される、キット。
・(項目57)
項目56に記載のキットであって、当該キットは、Staphylococcus aureus以外の1種以上のStaphylococcus種とStaphylococcus aureusとの、同時の独立的(多重)同定のための蛍光インサイチュハイブリダイゼーションアッセイにおいて使用される、キット。
・(項目58)
項目51〜55に記載のキットであって、当該キットは、リアルタイムPCRアッセイのために使用される、キット。
・(項目59)
項目51〜58に記載のキットであって、当該キットは、臨床標本またはその培養物などの、臨床サンプルを検査するために使用される、キット。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
(1.定義)
本明細書中に記載される場合、用語「核酸塩基」とは、核酸技術を利用するかまたはペプチド核酸技術を利用することによって、核酸に配列特異的に結合し得るポリマーを作製する者にとって一般的に公知である、天然に存在する複素環式部分および天然に存在しない複素環式部分を意味する。
【0026】
本明細書において使用される場合、用語「核酸塩基配列」とは、核酸塩基含有サブユニットを含むポリマーの任意のセグメントを意味する。適切なポリマーまたはポリマーセグメントの非限定的例としては、オリゴデオキシヌクレオチド、オリゴリボヌクレオチド、ペプチド核酸、核酸アナログ、核酸模倣物、および/またはキメラが挙げられる。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「標的配列」とは、アッセイにおいて検出されるべき核酸塩基配列を意味する。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「プローブ」とは、対象生物の標的分子の標的配列に対して配列特異的にハイブリダイズするように設計されたプロービング核酸塩基配列を有する、ポリマー(例えば、DNA、RNA、PNA、キメラ、または連結ポリマー)を意味する。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「ペプチド核酸」または「PNA」とは、2つ以上のPNAサブユニット(残基)を含む、任意のオリゴマー、連結ポリマー、またはキメラオリゴマーを意味し、米国特許第5,539,082号、同第5,527,675号、同第5,623,049号、同第5,714,331号、同第5,736,336号、同第5,773,571号、同第5,786,461号、同第5,837,459号、同第5,891,625号、同第5,972,610号、同第5,986,053号、同第6,107,470号、および同第6,357,163号においてペプチド核酸として言及または特許請求されているポリマーのいずれをも包含する。最も好ましい実施形態において、PNAサブユニットは、メチレンカルボニル結合を介してN−[2−(アミノエチル)]グリシン骨格のアザ窒素に結合した、天然に存在する核酸塩基または天然に存在しない核酸塩基からなる。
【0030】
本明細書において使用される場合、用語「標識」および「検出可能な部分」は、互換可能であり、そしてこれらの用語は、プローブに結合されることによってそのプローブを器具または方法によって検出可能にし得る、部分を指す。
【0031】
本明細書における「Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種」に対する言及または関連する語句は、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus属の本質的に1種以上のStaphylococcus種を意味する。少数の例外として、Staphylococcus
aureus以外のStaphylococcus種は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(これは、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種についての医学的表現である)と等価である。Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種のコホートとは、Staphylococcus aureus以外の2種以上のStaphylococcus種を本質的には意味し、これは、すべてのコアグラーゼ陰性ブドウ球菌、臨床的に重要なコアグラーゼ陰性ブドウ球菌、またはこれらの部分集合を包含し得る。Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種としては、例えば、S.capitis、S.cohnii、S.epidermidis、S.saprophyticus、S.intermedius、S.hyicus、S.haemolyticus、S.hominis、S.lugdunensis、S.saccharolyticus、S.schleiferi、S.sciuri、S.simulans、S.warneri、および/またはS.xylosusが挙げられ得る。
【0032】
用語「サンプル」とは、本明細書中で使用される場合、検出用分析物を含み得る、任意の生物学的サンプルまたは臨床サンプルを指す。好ましくは、この生物学的サンプルは、液体形態であるかまたは組織サンプルとして存在する。最も好ましくは、そのサンプルは、血液培養物由来である。液体サンプルとしては、臨床サンプル(例えば、尿、血液、創傷、痰、咽頭スワブ、胃洗浄物、気管支洗浄物、吸引物、血清、鼻分泌物、汗、血漿、精液、脳脊髄液、涙、膿、羊水、唾液、肺吸引物、胃腸内容物、膣分泌物、尿道分泌物、吐出物、およびそれらの培養物が挙げられる。好ましい組織サンプルまたはその培養物としては、絨毛膜絨毛標本、皮膚上皮、生殖器上皮、歯肉上皮、咽頭上皮、毛、および生検が挙げられる。組織サンプルは、新たに調製されてもよいし、または特定の期間の間、固定剤(例えば、エタノール、メタノール、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ホルマリン、パラフィン、ホルムアルデヒド、ホルムアミド、またはそれらの混合物であるが、これらに限定されない)中に保存されてもよい。非臨床サンプルとして、食物、飲料、水、薬学的製品、パーソナルケア製品、日用品、または環境サンプル、およびそれらの培養物が挙げられる。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「多重アッセイ」とは、複数の標的が検出および同定される可能性があり得るアッセイを包含する。同定は、具体的(例えば、特定の微生物種)または包括的(例えば、特定の微生物属)であり得る。包括的同定はまた、微生物種のコホートの同定を包含し、このコホートは、規定された種群の1種以上のメンバーを含む。規定された種群の一例は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌である。
【0034】
本明細書中で使用される場合、独立的かつ同時の検出は、1つよりも多い標的について一度に同定結果を生じ得るアッセイを含む。例えば、Staphylococcus aureus以外の1種以上のStaphylococcusと、Staphylococcus aureusとの検出は、各プローブについて独特の標識を用いて同時に行われ得、それによって、独立的かつ同時の検出がもたらされる。
【0035】
このアッセイを実施するために必要な他の試薬または組成物(例えば、洗浄溶液、スライドガラス、カバーガラス、本発明に従う1種以上のPNAプローブ、培養容器、スライドガラス加温器、インキュベーター、封入液、ならびにPCR成分(酵素および緩衝液を含む))が、含められ得る。
【0036】
(2.説明)
(1.一般)
(PNA合成)
PNAの化学的構築のための方法は、周知である(米国特許第5,539,082号、同第5,527,675号、同第5,623,049号、同第5,714,331号、同第5,736,336号、同第5,773,571号、同第5,786,461号、同第5,837,459号、同第5,891,625号、同第5,972,610号、同第5,986,053号、および同第6,107,470号を参照のこと)。
【0037】
(PNA標識)
PNAを標識するための好ましい非限定的方法は、米国特許第6,110,676号、同第6,361,942号、および同第6,355,421号、これらの明細書の実施例部分において記載されているか、またはそうではなければ、PNA合成およびペプチド合成の分野において周知である。
【0038】
(標識)
本発明の実施において使用されるPNAプローブを標識するために適切な検出可能な部分(標識)の非限定的例としては、デキストラン結合体、分枝型核酸検出系、発色団、フルオロフォア、スピン標識、放射性同位体、酵素、ハプテン、アクリジニウムエステル、および発光化合物が挙げられる。
【0039】
他の適切な標識試薬および好ましい付着方法は、PNA合成、ペプチド合成、または核酸合成の当業者によって認識される。
【0040】
好ましいハプテンとしては、5(6)−カルボキシフルオレセイン、2,4−ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、およびビオチンが挙げられる。
【0041】
好ましい蛍光色素(フルオロフォア)としては、5(6)−カルボキシフルオレセイン(Flu)、テトラメチル−6−カルボキシローダミン(tamra)、6−((7−アミノ−4−メチルクマリン−3−アセチル)アミノ)ヘキサン酸(Cou)、5(および6)−カルボキシ−X−ローダミン(Rox)、Cyanine 2(Cy2)Dye、Cyanine 3(Cy3)Dye、Cyanine 3.5(Cy3.5)Dye、Cyanine 5(Cy5)Dye、Cyanine 5.5(Cy5.5)Dye、Cyanine 7(Cy7)Dye、Cyanine 9(Cy9)Dye(Cyanine色素2、Cyanine色素3、Cyanine色素3.5、Cyanine色素5およびCyanine色素5.5は、Amersham(Arlington Heights,IL)からNHSエステルとして入手可能である)、JOE、Tamara、またはAlexa色素シリーズ(Molecular Probes,Eugene,OR)が挙げられる。
【0042】
好ましい酵素としては、ポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ、Klenow PNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Sequenase、DNAポリメラーゼ1、およびΦ29ポリメラーゼ)、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)が挙げられ、最も好ましくは、ダイズペルオキシダーゼ(SBP)が挙げられる。
【0043】
(非標識プローブ)
本発明の実施のために使用されるプローブは、本発明の方法において有効であるためには検出可能な部分で標識される必要はない。例えば、本発明のプローブは、固体支持体に付着され得、これによって、本発明のプローブは、公知のアレイ技術によって検出可能になる。
【0044】
(自己指示(self−indicating)プローブ)
Beaconプローブは、ドナー部分とアクセプター部分とを備える自己指示プローブの例である。そのドナー部分およびアクセプター部分は、そのアクセプター部分がドナー部分から移動したエネルギーを受容するかまたはそうでなければドナー部分からのシグナルをクエンチングするように、作動する。上記に列挙されたフルオロフォア(適切なスペクトル特性を有する)はまた、エネルギー移動アクセプターとして作動し得るが、好ましくは、そのアクセプター部分は、クエンチャー部分である。好ましくは、そのクエンチャー部分は、非蛍光芳香族部分または非蛍光複素芳香族部分である。好ましくは、クエンチャー部分は、4−((4−ジメチルアミノ)フェニル)アゾ)安息香酸(ダブシル)である。好ましい実施形態において、その自己指示Beaconプローブは、米国特許第6,485,901号においてより充分に記載されるPNA Linear Beaconである。
【0045】
別の実施形態において、本発明の自己指示プローブは、WIPO特許出願WO97/45539に記載される型である。これらの自己指示プローブは、シグナルを生成するためにはレポーターが核酸と相互作用しなければならないという点が主に、Beaconプローブと比較して異なる。
【0046】
(スペーサー/リンカー部分)
一般的には、スペーサーは、嵩高い標識試薬がプローブのハイブリダイゼーション特性に対して有し得る有害作用を最小にするために使用される。本発明の核酸塩基ポリマーのための好ましいスペーサー/リンカーは、1つ以上のアミノアルキルカルボン酸(例えば、アミノカプロン酸)、アミノ酸の側鎖(例えば、リジンの側鎖またはオルニチンの側鎖)、天然アミノ酸(例えば、グリシン)、アミノオキシアルキル酸(例えば、8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸)、アルキル二酸(例えば、コハク酸)、アルキルオキシ二酸(例えば、ジグリコール酸)、またはアルキルジアミン(例えば、1,8−ジアミノ−3,6−ジオキサオクタン)からなる。
【0047】
(ハイブリダイゼーション条件/ハイブリダイゼーションストリンジェンシー)
核酸ハイブリダイゼーションの当業者は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを付与または制御するために一般的に使用される要因としては、ホルムアミド濃度(もしくは他の化学的変性試薬)、塩濃度(例えば、イオン強度)、ハイブリダイゼーション温度、界面活性剤濃度、pH、およびカオトロープの存在または不在が挙げられることを認識する。プローブ/標的配列の組み合わせについてのストリンジェンシーが、上記のストリンジェンシー要因のうちのいくつかを固定し、その後、単一のストリンジェンシー要因を変化させる影響を決定するという周知技術によって、しばしば見出される。同じストリンジェンシー要因が、調節され、それによって核酸に対するPNAのハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを制御するようにされ得るが、但し、PNAのハイブリダイゼーションは、イオン強度とは全く独立している。アッセイについてのストリンジェンシーは、望ましい区別の程度が達成されるまで、各ストリンジェンシー要因の検討によって経験的に決定され得る。
【0048】
(適切なハイブリダイゼーション条件)
一般的には、核酸混入物の原因となるバックグラウンドが標的配列に対して密接に関連しているほど、ストリンジェンシーはより注意深く制御されなければならない。ブロッキングプローブもまた、ストリンジェンシー要因の最適化によって可能な限界を上回って区別を改善するための手段として使用され得る。従って、適切なハイブリダイゼーション条件は、望ましい区別の程度が達成されて、アッセイが正確(そのアッセイのための望まれる許容範囲内にある)かつ再現可能な結果を生じるようになる条件を包含する。
【0049】
慣用的に過ぎない実験および本明細書中にて提供される開示により補助されて、当業者は、本明細書中に記載される方法および組成物を利用するアッセイを実施するための適切なハイブリダイゼーション条件を容易に決定可能である。適切なインサイチュハイブリダイゼーション条件またはPCR条件は、インサイチュハイブリダイゼーションまたはPCR手順を実施するために適切な条件を包含する。従って、適切なインサイチュハイブリダイゼーション条件またはPCR条件は、さらなる慣用的実験を伴ってかまたは伴うこともなく、本明細書中にて提供される開示を使用して、当業者にとって明らかになる。
【0050】
(ブロッキングプローブ)
ブロッキングプローブは、非標的配列に対するプロービングポリマーのプロービング核酸塩基配列の結合を抑制するために使用され得る、核酸プローブまたは非核酸プローブである。好ましいブロッキングプローブは、PNAプローブ(米国特許第6,110,676号を参照のこと)である。ブロッキングプローブは、非標的配列に対するハイブリダイゼーションによって作動し、それによって、そのプロービング核酸塩基配列と非標的配列との間のハイブリダイゼーションにより形成されるよりも熱力学的に安定な複合体を形成すると考えられる。そのより安定かつ好ましい複合体の形成を介して、プロービング核酸塩基配列と非標的配列との間の、より安定ではなく好ましくはない複合体が、形成するのを防止される。従って、ブロッキングプローブは、存在し得かつそのアッセイの実施を妨害し得る非標的配列に対するそのプローブの結合を抑制するために、本発明の方法、キット、および組成物とともに使用され得る。
【0051】
(プロービング核酸塩基配列)
本発明のプローブのプロービング核酸塩基配列は、その構築物の特定配列認識部分である。従って、そのプロービング核酸塩基配列は、特定の標的配列にハイブリダイズするように設計された核酸塩基配列であり、その標的配列の存在、不在、または量が、サンプル中の対象生物の存在、不在、または数を直接的もしくは間接的に検出するために使用され得る。結果的に、選択されたアッセイ形式のためのプローブの要件を考慮して、そのプローブのプロービング核酸塩基配列の長さおよび配列組成は、一般的には、安定な複合体が適切なハイブリダイゼーション条件下で標的配列とともに形成されるように選択される。
【0052】
Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析のための本発明のプローブの好ましい核酸塩基配列は、TCT−AAC−ATG−TTC−TTT(配列番号1)、TCT−AGT−CTG−TTC−TTT(配列番号2)、TCT−AAT−ATA−TTC−CTT(配列番号3)、TCT−AAT−ATA−TAC−TTT(配列番号4)、GCT−CCA−AAT−GGT−TAC(配列番号5)、TCC−TCG−TCT−GTT−CGC(配列番号6)、CTC−CTT−ATC−TGT−TCG−C(配列番号7)、CTC−CTT−GTC−TGT−TCG−C(配列番号8)、CTT−CTC−ATC−TGT−TCG−C(配列番号9)、TCC−TCG−TCC−GTT−CGC(配列番号10)、TCC−TTG−TCC−GTT−CGC(配列番号11)、およびそれらの相補体である。
【0053】
本発明は、同定されたこれらのプロービング核酸塩基配列における変化もまた、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析のために適切なプローブを提供することを企図する。本明細書中に記載されるパラメーター内でのプロービング核酸塩基配列のこのような変化は、本発明の一実施形態であると考えられる。一般的な変化としては、欠失、挿入、およびフレームシフトが挙げられる。さらに、より短いプロービング核酸塩基配列が、上記で同定された配列の短縮によって作製され得る。
【0054】
本発明のプローブは、一般的には、標的配列と正確に相補的であるプロービング核酸塩基配列を有する。あるいは、実質的に相補的なプロービング核酸塩基配列が、使用され得る。なぜならば、プローブと標的配列との間に1つ以上の点変異(塩基ミスマッチ)が存在するプローブを利用する場合に、より優れた配列区別が得られることが、実証されているからである(Guoら、Nature Biotechnology 15:331〜335(1997)を参照のこと)。結果的には、そのプロービング核酸塩基配列は、上記で同定されたプロービング核酸塩基配列に対してほんの86%程度しか相同でないものであり得る。上記のパラメーター内にある実質的に相補的なプロービング核酸塩基配列は、本発明の一実施形態であると考えられる。
【0055】
そのプロービング核酸塩基配列の相補体は、本発明の一実施形態であると考えられる。なぜなら、検出されるべき標的配列が増幅またはコピーされ、それによって同定された標的配列に対する相補体を作製した場合には、適切なプローブを作製することが可能であるからである。
【0056】
(検出、同定、および/または計数)
「検出」によって、(必要に応じて、サンプル中に存在する)生物の存在または不在についての分析が意味される。「同定」によって、属名、属および種名、または対象生物を分類するために役立つ他の適切なカテゴリーによる、生物の正体の確立が意味される。「定量」によって、サンプル中の生物の計数が意味される。いくつかのアッセイ形式は、同時の検出、同定、および計数を提供し(例えば、Stender,H.ら、J.Microbiol.Methods 45:31〜39(2001)を参照のこと)、他のアッセイ形式は、検出および同定を提供し(例えば、Stender,H.ら、Int.J.Tuberc.Lung Dis.3:830〜837(1999)を参照のこと)、なお他のアッセイ形式は、同定だけを提供する(例えば、Oliveira,K.ら、J.Clin.Microbiol.40:247〜251(2002)を参照のこと)。
【0057】
(独立的かつ同時の検出)
本発明の好ましい実施形態において、多重アッセイが、標識されたプローブを用いて1つの標的を検出すると同時に、別々に標識されたプローブを用いて別の標的を検出するように、設計される。本発明のより好ましい実施形態において、それらの標的は、2つ以上のStaphylococcus種由来のrRNAまたはrDNAの構成要素である。最も好ましい実施形態において、上記アッセイは、Staphylococcus aureus以外の1種以上のStaphylococcusと、Staphylococcus aureusとを検出するように設計された、PNA FISHアッセイである。
【0058】
(抗生物質耐性)
抗生物質に対する耐性の決定によって、特定の遺伝子もしくは遺伝子産物、または抗菌剤に対する耐性もしくは感受性に関連する変異に基づく、抗生物質に対する生物の感受性の分析が意味される。
【0059】
(II.本発明の好ましい実施形態)
(a.PNAプローブ)
一実施形態において、本発明は、PNAプローブに関する。本発明のPNAプローブは、(必要に応じてサンプル中に存在する)Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種を検出、同定、および/または定量するために適切である。その分析のために適切なPNAプローブの一般的特徴(例えば、長さ、標識、核酸塩基配列、リンカーなど)は、本明細書中にて上記されている。本発明のPNAプローブの好ましいプロービング核酸塩基配列が、表1において列挙される。
【0060】
(表1)
【0061】
【表1】

【0062】
本発明のPNAプローブは、プロービング核酸塩基配列(本明細書中に上記される)のみを含んでもよいし、またはさらなる部分を含んでもよい。さらなる部分の非限定的例としては、検出可能な部分(標識)、リンカー、スペーサー、天然アミノ酸もしくは非天然アミノ酸、または他のPNAサブユニット、DNAサブユニット、もしくはRNAサブユニットが挙げられる。さらなる部分は、アッセイにおいて機能的であっても機能的でなくてもよい。しかし、一般的には、さらなる部分は、そのPNAプローブが使用されるべきアッセイの設計において機能的であるように選択される。本発明の好ましいPNAプローブは、フルオロフォア、酵素、およびハプテンからなる群より選択される、1つ以上の検出可能な部分で標識される。
【0063】
好ましい実施形態において、本発明のプローブは、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)アッセイおよび蛍光インサイチュハイブリダイゼーションアッセイにおいて使用される。ISHアッセイまたはFISHアッセイにおいて使用される過剰なプローブは、代表的には、特異的に結合したプローブの検出可能な部分が、依然として存在するがハイブリダイズはしていないプローブから生じるバックグラウンドシグナルを超えて検出され得るように除去されなければならない。一般的には、過剰なプローブは、サンプルが一定期間プローブとともにインキュベートされた後に洗い流される。しかし、自己指示プローブの使用は、本発明の好ましい実施形態である。なぜなら、検出可能なバックグラウンドを自己指示プローブがほとんどまたは全く生じないので、過剰な自己指示プローブがサンプルから完全に除去される(洗い流される)必要がないからである。ISHアッセイまたはFISHアッセイに加えて、本明細書中に記載される選択されたプロービング核酸塩基配列を含む自己指示プローブは、すべての種類の均質アッセイ(例えば、リアルタイムPCR)において特に有用であるか、または自己指示デバイス(例えば、側流(lateral flow)アッセイ)または自己指示アレイとともに有用である。
【0064】
(b.PNAプローブセット)
本発明のプローブセットは、2つ以上のPNAを含む。一実施形態において、そのセットのPNAプローブのうちのいくつかは、ブロッキングプローブであり得る。他の実施形態において、そのプローブセットは、Staphylococcus aureus以外の2種以上のStaphylococcus種を分析するために、または、Staphylococcus aureus以外の1種以上のStaphylococcus種と、Staphylococcus aureusとの分析のために、使用され得る。
【0065】
(c.方法)
別の実施形態において、本発明は、(必要に応じてサンプル中に存在する)Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析のために適切な方法に関する。Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析のために適切なPNAプローブの一般的特徴および特殊な特徴が、本明細書中に上記されている。好ましいプロービング核酸塩基配列は、表1に列挙されている。
【0066】
サンプル中のStaphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析のための方法は、そのサンプルを、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種に対して特異的な標的配列に対するハイブリダイゼーションのために適切な1種以上のPNAプローブと、接触させる工程を包含する。この方法によると、その後、そのサンプル中のStaphylococcus
aureus以外のStaphylococcus種が、検出、同定、および/もしくは定量されるか、またはその抗生物質耐性が、決定される。これは、適切なハイブリダイゼーション条件下または適切なインサイチュハイブリダイゼーション条件下での、検出されるよう努力されるStaphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の標的配列に対するPNAプローブのプロービング核酸塩基配列のハイブリダイゼーションを、そのサンプル中のStaphylococcus aureus生物以外のStaphylococcus種の存在、不在、もしくは数と相関付けることによって可能になる。代表的には、この相関性は、上記プローブ/標的配列ハイブリッドの直接的検出または間接的検出によって可能になる。好ましい実施形態において、PNAプローブセットが、別々に標識されたPNAプローブを使用する、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種とStaphylococcus aureusとの同時分析のために使用される。
【0067】
(蛍光インサイチュハイブリダイゼーションおよびリアルタイムPCR)
本発明のPNAプローブ、方法、キット、および組成物は、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の迅速なプローブベースの分析のために、特に好ましい。この分析は、好ましくは、2種以上のStaphylococcus種の同時分析のためのPNAプローブセットを使用する。好ましい実施形態において、インサイチュハイブリダイゼーションまたはPCRが、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析のためのアッセイ形式として使用される。最も好ましくは、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(PNA
FISH)またはリアルタイムPCRが、そのアッセイ形式である(Stenderら、J.Microbiol.Methods 48:1〜17(2002)により概説されている)。好ましくは、PNA FISH分析のための塗抹標本は、ハイブリダイゼーション前には架橋剤でも酵素でも処理されない。
【0068】
一実施形態において、上記方法は、サンプルから、例えば核酸増幅によって、核酸を合成する工程を包含する。好ましい核酸増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(Strand Displacement Amplification)(SDA)、転写媒介性増幅(Transcription−Mediated Amplification)(TMA)、ローリングサークル増幅(Rolling Circle Amplification)(RCA)、およびQβレプリカーゼ(Q beta replicase)からなる群より選択される。
【0069】
本発明の実施は、そうではないと示されない限りは、当業者の範囲内にある、有機化学、ポリマー技術、分子生物学(組換え技術を含む)、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来技術および説明を使用し得る。そのような従来技術としては、ポリマーアレイ合成、ハイブリダイゼーション、ライゲーション、および標識を使用するハイブリダイゼーションの検出が挙げられる。適切な技術の具体的な例示は、本明細書中下記の実施例を参照することによって得られ得る。しかし、他の等価な従来の手順もまた、当然、使用され得る。そのような従来技術および説明は、標準的な実験室マニュアルにおいて見出され得る。そのようなマニュアルは、例えば、Genome Analysis:A Laboratory Manual Series(Vol.I〜IV)、Using Antibodies:A Laboraoty Manual、Cells:A Laboratory Manual、PCR Primer:A Laboratory Manual、およびMolecular Cloning:A Laboratory Manual(すべて、Cold Spring Harbor Laboratory Pressより)、Stryer,L.(1995)Biochemistry(第4版)である。ポリマー(タンパク質を含む)アレイ合成に適用可能な方法および技術は、米国特許出願第09/536,841号、WO00/58516、米国特許第5,143,854号、同第5,242,974号、同第5,252,743号、同第5,324,633号、同第5,384,261号、同第5,405,783号、同第5,424,186号、同第5,451,683号、同第5,482,867号、同第5,491,074号、同第5,527,681号、同第5,550,215号、同第5,571,639号、同第5,578,832号、同第5,593,839号、同第5,599,695号、同第5,624,711号、同第5,631,734号、同第5,795,716号、同第5,831,070号、同第5,837,832号、同第5,856,101号、同第5,858,659号、同第5,936,324号、同第5,968,740号、同第5,974,164号、同第5,981,185号、同第5,981,956号、同第6,025,601号、同第6,033,860号、同第6,040,193号、同第6,090,555号、同第6,136,269号、同第6,269,846号、および同第6,428,752号、PCT出願番号PCT/US99/00730(国際公開番号WO99/36760)およびPCT/US01/04285において記載されている。これらは、すべての目的のためにその全体が参考として援用される。具体的な実施形態において合成技術を記載する特許としては、米国特許第5,412,087号、同第6,147,205号、同第6,262,216号、同第6,310,189号、同第5,889,165号、および同第5,959,098号が挙げられる。PCR方法について、例えば、PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification(H.A.Erlich編、Freeman Press,NY,N.Y.,1992);PCR Protocols:A Guide to Methods and Appplcations(Innisら編、Academic Press,San Diego,Calif.,1990);Mattilaら、Nucleic Acids Res.19:4967(1991);Eckertら、PCR Methods and Applications 1,17(1991);PCR(McPhersonら編、IRL Press,Oxford);ならびに米国特許第4,683,202号、同第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,965,188号、および同第5,333,675号を参照のこと。これらは各々、すべての目的のためにその全体が参考として本明細書中に援用される。上記サンプルは、アレイ上で増幅され得る。例えば、米国特許第6,300,070号および米国特許出願第09/513,300号を参照のこと。これらは、参考として本明細書中に援用される。本発明において有用な核酸アレイとしては、Affymetrix(Santa Clara,Calif.)から市販されている核酸アレイが挙げられる。他の適切な増幅方法としては、リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えば、WuおよびWallace,Genomics 4,560(1989)、Landegrenら、Science 241,1077(1988)、ならびにBarringerら、Gene 89:117(1990))、転写増幅(Kwohら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,1173(1989)およびWO88/10315)、自己保持配列複製(Guatelliら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 87,1874(1990)およびWO90/06995)、標的ポリヌクレオチド配列の選択的増幅(米国特許第6,410,276号)、コンセンサス配列プライムドポリメラーゼ連鎖反応(CP−PCR)(米国特許第4,437,975号)、アービトラリリープライムド(arbitrarily primed)ポリメラーゼ連鎖反応(AP−PCR)(米国特許第5,413,909号、同第5,861,245号)、ならびに核酸ベースの配列増幅(NABSA)(米国特許第5,409,818号、同第5,554,517号、および同第6,063,603号(これらは各々、参考として本明細書中に援用される)を参照のこと)が挙げられる。使用され得る他の増幅方法は、米国特許第5,242,794号、同第5,494,810号、同第4,988,617号、および米国特許出願第09/854,317号(これらは各々、本明細書中に参考として援用される)において記載される。
【0070】
さらなるサンプル調製方法および核酸サンプルの複雑度を減少するための技術が、Dongら、Genome Reserach 11,1418(2001)、米国特許第6,361,947号、同第6,391,592号、ならびに米国特許出願第09/916,135号、同第09/920,491号、同第09/910,292号、および同第10/013,598号に記載されている。
【0071】
ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイを実施するための方法は、当該分野において充分に開発されている。ハイブリダイゼーションアッセイの手順および条件は、その適用に依存して変化し、そして公知の一般的結合方法に従って選択される。そのような公知の一般的結合方法としては、Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor,N.Y.,1989);BergerおよびKimmel,Methods in Enzymology,Vol.152,Guide to Molecular Cloning Techniques(Academic Press,Inc.,San Diego,Calif.,1987);YoungおよびDavism,P.N.A.S.80:1194(1983)において言及される方法が挙げられる。反復的な制御されたハイブリダイゼーション反応を実行するための方法および装置が、米国特許第5,871,928号、同第5,874,219号、同第6,045,996号および同第6,386,749号、同第6,391,623号(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される)に記載されている。
【0072】
(例示的なアッセイ形式)
PNA FISHを実施するための例示的な方法は、Oliveiraら、J.Clin.Microbiol.40:247〜251(2002);Rigbyら、J.Clin.Microbiol.40:2182〜2186(2002);Stenderら、J.Clin.Microbiol.37:2760〜2765(1999);Perry−O’Keefeら、J.Microbiol.Methods 47:281〜292(2001)において見出され得る。一方法に従って、サンプル(例えば、陽性血液培養物であるが、これに限定されない)の塗抹標本が、顕微鏡スライドガラス上で調製され、ハイブリダイゼーション緩衝液中にある1滴の蛍光標識PNAプローブでカバーされる。カバーガラスが、その塗抹標本上に配置されて均一な被覆が確保される。その後、そのスライドガラスは、55℃のスライドガラス加温器またはインキュベーターに90分間配置される。ハイブリダイゼーションの後、予熱したストリンジェントな洗浄溶液中にそのスライドガラスを浸漬することによって、そのカバーガラスは取り外される。そのスライドガラスは、30分間洗浄される。その塗抹標本は、最終的には、1滴の封入液を用いて封入され、カバーガラスで覆われ、蛍光顕微鏡によって検査される。
【0073】
本発明のキット中に含まれるPNAプローブを用いて分析され得る、(必要に応じてサンプル中に存在する)Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種が、数種の器具によって評価され得る。そのような器具は、例えば、顕微鏡(例えば、Oliveiraら、J.Clin.Microbiol.40:247〜251(2002)を参照のこと)、放射線感光フィルム(例えば、Perry−O’Keefeら、J.Appl.Microbiol.90:180〜189(2001)を参照のこと)、カメラおよびインスタントフィルム(例えば、Stenderら、J.Microbiol.Methods 42:245〜253(2000)を参照のこと)、照度計(例えば、Stenderら、J.Microbiol.Methods.46:69〜75(2001)を参照のこと)、レーザー走査デバイス(例えば、Stenderら、J.Microbiol.Methods.45:31〜39(2001)を参照のこと)、またはフローサイトメーター(例えば、Wordonら、Appl.Environ.Microbiol.66:284〜289(2000)を参照のこと)であるが、これらに限定されない。自動スライドガラススキャナーおよびフローサイトメーターが、対象サンプル中に存在する微生物の数を迅速に定量するために特に有用である。
【0074】
自己報告(self−reporting)PNAプローブを使用してリアルタイムPCRを実施するための例示的方法が、Fiandacaら、Abstract,Nucleic Acid−Based technologies,DNA/RNA/PNA Diagnostics,Washington,DC,May 14−16,2001;およびPerry−O’Keefeら、Abstract,International Conference on Emerging Infectious Diseases,Atlanta,2002において見出され得る。
【0075】
(d.キット)
なお別の実施形態において、本発明は、アッセイを実施するために適切なキットに関する。このアッセイは、(必要に応じてサンプル中に存在する)Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種を分析する。Staphyl
ococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析のために適切なPNAプローブの一般的特徴および好ましい特徴が、本明細書中に上記されている。好ましいプロービング核酸塩基配列は、表1において列挙されている。さらに、サンプル中にあるStaphylococcus aureus以外のStaphylococcus種を分析するためにPNAプローブを使用するのに適切な方法が、本明細書中に上記されている。
【0076】
本発明のキットは、サンプル中のStaphylococcus aureus以外のStaphylococcus種を分析するために、1種以上のPNAプローブと、アッセイを実施するようにかそうでなければ用いられるアッセイの実施を簡単にするように選択される、他の試薬もしくは組成物とを備える。好ましい実施形態において、上記キットは、独立して検出可能なPNAプローブを使用してStaphylococcus aureus以外のStaphylococcus種とStaphylococcus aureusとを同時分析するための、PNAプローブを備える。
【0077】
(e.本発明を使用するための例示的適用)
本発明のPNAプローブ、方法、およびキットは、臨床サンプル(例えば、尿、血液、創傷、痰、咽頭スワブ、胃洗浄物、気管支洗浄物、生検、吸引物、吐出物(expectorate))中、ならびに食物、飲料、水、薬学的製品、パーソナルケア製品、日用品、または環境サンプル、ならびにそれらの培養物において、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析のために特に有用である。好ましい実施形態において、上記PNAプローブは、Staphylococcus aureusの分析のためのPNAプローブも含むPNAプローブセットにおいて適用される。
【0078】
本発明の好ましい実施形態が記載されているが、本明細書中に記載される概念を組み込む他の実施形態が使用され得ることが、今や当業者にとって明らかになる。従って、これらの実施形態は、開示される実施形態に限定されるべきではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲の精神および範囲によってのみ限定されるべきであると思われる。
【実施例】
【0079】
(実施例1)
(蛍光インサイチュハイブリダイゼーションによるStaphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析)
PNAプローブ: (配列番号): 配列
Sep16S01/tamra: (配列番号5):Tamra−OO−GCT−CCA−AAT−GGT−TAC
Sau16S03/flu: Flu−OO−GCT−TCT−CGT−CCG−TTC
(注記:このPNAプローブの末端を示すために使用される従来の術語;O=8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸;flu=5(6)−カルボキシ−フルオレセイン;tamra=テトラメチル−6−カルボキシローダミン。配列識別番号(配列番号)が、コアのプローブ配列と、実験において合成しそして使用した実際のプローブとを区別するために、内部参照に与えられることもまた注意されたい。)
(細菌株)
参照株(American Type Culture Collection,(ATCC)Manassas,VA)の一晩培養物、またはStaphylococcus
aureus以外のStaphylococcus種(Staphylococcus
epidermidisを含む)に相当する臨床単離株の一晩培養物、およびStaphylococcus aureusの一晩培養物を、調製した。また、種の正体についての情報をもたないコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)も含んだ。
【0080】
(塗抹標本の調製)
各株について、テフロン(登録商標)コートした顕微鏡用スライドガラス(AdvanDx,Woburn,MA)の直径8mmのウェルに、培養液1滴と1%(v/v)Triton X−100を含むリン酸緩衝化生理食塩水1滴とを混合することにより、塗抹標本を調製した。その後、そのスライドガラスを、55℃のスライドガラス加温器の上に20分間配置した。その時点で、塗抹標本が乾燥した。その後、その塗抹標本を、96%(v/v)エタノール中へ5分間〜10分間浸漬することによって殺菌し、風乾した。
【0081】
(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH))
塗抹標本を、1滴のハイブリダイゼーション溶液(10%(w/v)硫酸デキストラン、10mM NaCl、30%(v/v)ホルムアミド、0.1%(w/v)ピロリン酸ナトリウム、0.2%(w/v)ポリビニルピロリドン、0.2%(w/v)フィコール、5mM EDTA二ナトリウム塩、1%(v/v)Triton X−100、50mM Tris/HCl(pH7.5)ならびに500nM Sep16S01/tamraおよび/またはSta16S03/fluを含む)で覆った。カバーガラスをその塗抹標本上に静置して、ハイブリダイゼーション溶液によって均一に被覆されていることを確実にした。その後、そのスライドガラスを、スライドガラス加温器(Slidemoat,Boekel,Feasterville,PA)に配置し、55℃で90分間インキュベートした。ハイブリダイゼーション後に、スライドガラス1枚当たり約20mlの予熱した25mM Tris(pH10)、137mM NaCl、3mM KClの中へ55℃の水浴中でそのスライドガラスを浸漬することによって、そのカバーガラスを取り外し、そのスライドガラスを30分間洗浄した。最後に、各塗抹標本を、1滴の封入剤(AdvanDx、Woburn、MA)を使用して顕微鏡標本作製し、各塗抹標本をカバーガラスにより被覆した。顕微鏡による検査を、FITC/Texas Redデュアルバンドフィルターセットを装備する蛍光顕微鏡を用いて行った。Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種を、赤色蛍光球菌により同定し、Staphylococcus aureusを、緑色蛍光球菌として同定した。
【0082】
(実施例2)
(Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析のためのPNAプローブの評価)
この実験は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーションによるStaphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析のための本発明のPNAプローブの性能を試験するように設計した。方法およびプローブ混合物は、PNAプローブであるSta16S03を添加しなかったことを除いて、実施例1に記載されているとおりである。
(表2)
【0083】
【表2】

【0084】
表2に関して、この表は、実施例2からのデータを示し、列1に種の識別を、列2にその培養物の供給源を、そして列3にtamra標識されたプローブであるSep16S01からのシグナルを表す。表2の列3、行Cに関して、赤色蛍光シグナルは、Sep16S01が、最も一般的に存在するコアグラーゼ陰性ブドウ球菌種であるStaphylococcus epidermidis、ならびに同定されていないコアグラーゼ陰性ブドウ球菌にハイブリダイゼーションする(行D、行E)が、Staphylococcus aureusにはハイブリダイゼーションしない(行B)ことを示す。従って、Sep16S01は、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析に適している。
【0085】
(実施例3:Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種と、Staphylococcus aureusとの分析のためのPNAプローブセットの評価)
この実験は、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の混合物の分析のためのPNAプローブを、Staphylococcus
aureusの分析のためのPNAプローブとともに含む、本発明のPNAプローブセットの性能を試験するために設計した。上記2種のプローブを、それぞれ、tamra(赤色)およびフルオレセイン(緑色)で標識した。tamraおよびフルオレセインは、FITC/Texas Redデュアルバンドフィルターを使用して同時に観察され得る。方法およびプローブ混合物は、Enterococcus faecalisの臨床単離株を代表的非ブドウ球菌として含んだこと以外は、実施例1において記載されるとおりである。
【0086】
(表3)
【0087】
【表3】

【0088】
表3に関して、この表は、実施例3からのデータを示す。列1に種の識別を、列2に培養物の供給源を、列3に、tamraで標識したプローブであるSep16S01またはfluで標識したプローブであるSta16S03からのシグナルを示す。表3の列3行Bに関して、Staphylococcus aureusの存在下で観察される蛍光シグナルは、緑色であり、これは、上記Sta16S03プローブのハイブリダイゼーションを示す。同じ列の行Cにおいて、その蛍光シグナルは、Staphylococcus
epidermidis細胞の存在下では赤色であり、これは、上記Sep16S03プローブのハイブリダイゼーションを示す。列Dにおいて蛍光シグナルが存在しないことは、Sta16S03プローブもSep16S01プローブも、Enterococcus faecalis細胞にハイブリダイズしないことを示す。Enterococcus faecalisは、グラム陽性球菌であり、明視野顕微鏡によってブドウ球菌と類似する外観を有し、ブドウ球菌と混同される可能性があり得る。このデータはまた、同じ結果が、サンプルの供給源に関わらずにStaphylococcus aureus細胞から得られ得る(列Bの臨床単離株、または列Eの血液培養ビン)ことを示す。これらの結果は、上記PNAプローブセットが、Staphylococcus aureusと、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種との同時分析のために適切であることを示す。
【0089】
(実施例4:Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種とStaphylococcus aureusとの混合培養物の分析)
この実験は、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の混合物の分析のための本発明のPNAプローブを、Staphylococcus aureusの分析のためのPNAプローブとともに含むプローブセットを使用するという、利点を示すように設計した。これらの2種のプローブを、それぞれ、tamra(赤色)およびフルオレセイン(緑色)で標識した。tamraおよびフルオレセインは、FITC/Texas Redデュアルバンドフィルターを使用して同時に観察され得る。方法およびプローブ混合物は、この実験の一部においてはSep16S01プローブを使用しなかったこと以外は、実施例1において記載されるとおりである。
【0090】
(表4)
【0091】
【表4】

【0092】
1.塗抹標本は、純粋単離株を混合することにより調製した。
2.塗抹標本は、GPCC陽性血液培養ビンから直接調製した。
【0093】
表4に関して、この表は、実施例4からのデータを示す。列1に種の識別を、列2に培養物の供給源を、列3において、tamraで標識したプローブであるSep16S01またはfluで標識したプローブであるSta16S03からのシグナルを、列4においてはSta16S03プローブのみからのシグナルを、示す。表4の列3において観察され得るように、Sep16S01とSta16S03とのプローブセットを使用した場合、緑色蛍光球菌と赤色蛍光球菌との両方が、Staphylococcus aureusとCNSとの混合培養物を検出した場合と同じ視野に存在した。表2の列Bと列Cとを比較することにより理解され得るように、サンプルの供給源は、その結果には影響を与えなかった。対照的に、Sta16S03のみを使用した場合には緑色蛍光球菌のみが観察され、それによりCNSの存在を欠いた(表4の列4を参照のこと)。
【0094】
(実施例5:蛍光インサイチュハイブリダイゼーションによるStaphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析)
PNAプローブ: (配列番号): 配列
CNS3: (配列番号6): Tamra−OO−TCC−TCG−TCT−GTT−CGC
CNS4: (配列番号7): Tamra−OO−CTC−CTT−ATC−TGT−TCG−C
CNS5: (配列番号8): Tamra−OO−CTC−CTT−GTC−TGT−TCG−C。
【0095】
この実験は、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種に対するPNAプローブを試験するために設計した。方法およびプローブ混合物は、上記のtamraで標識したPNAプローブ、CNS3、CNS4、またはCNS5のうちのいずれか500nMからPNAプローブ混合物がなったこと以外は、実施例1に記載されるとおりである。この実験におけるプローブすべては、Staphylococcus種間でわずかに変化するrRNA標的配列の系統学的に保存された領域に対する。これもまた実施例1とは異なるのは、同定されていないCNS細胞を省略し、Staphylococcus hominisのATCC参照株の一晩培養物、Staphylococcus haemolyticusのATCC参照株の一晩培養物、Staphylococcus lugdunensisのATCC参照株の一晩培養物、およびStaphylococcus saprophyticusのATCC参照株の一晩培養物を含めたことである。
【0096】
(表5)
【0097】
【表5】

【0098】
表5に関して、この表は、実施例5からのデータを示し、列1には種の識別を、列2にはCNS3プローブについての蛍光シグナルを、列3においてCNS4プローブを、そして列4においてCNS5プローブを示す。行Bの列2、列3および列4に関して、試験したどのプローブも、Staphylococcus aureusにおける赤色蛍光シグナルを生じない。対称的に、行C〜行Gに記載される種のすべてが、列2、列3、および列4において記載されるプローブを用いて検出した場合に、2つ以上の場合において赤色蛍光を示す。これらの結果は、プローブCNS3、プローブCNS4、およびプローブCNS5がすべて、Staphylococcus aureus以外の数種のStaphylococcus種の検出のために個々に使用され得ることを示す。
【0099】
(実施例6:蛍光インサイチュハイブリダイゼーションによるStaphylococcus aureus以外のStaphylococcus種の分析)
この実験は、Staphylococcus aureus以外のStaphylococcus種のコホートに対するPNAプローブ混合物を、Staphylococcus aureusの分析のためのPNAプローブと一緒に試験するために設計した。方法およびプローブ混合物は、PNAプローブ混合物が、500nMのSta16S03(セットA)からなったか、または500mM Sta16S03と、実施例5に記載される3種のtamraで標識されたPNAプローブ(CNS3、CNS4、およびCNS5)の各々とからなった以外は、実施例1に記載されるとおりである。この実験におけるプローブすべては、Staphylococcus種間でわずかに変化するrRNA標的配列の系統学的に保存された領域に対する。これもまた実施例1とは異なって、同定されていないCNS細胞を省略し、Staphylococcus hominisのATCC参照株の一晩培養物、Staphylococcus haemolyticusのATCC参照株の一晩培養物、Staphylococcus lugdunensisのATCC参照株の一晩培養物、Staphylococcus saprophyticusのATCC参照株の一晩培養物、Staphylococcus schleiferiのATCC参照株の一晩培養物、およびEnterococcus faecalisのATCC参照株の一晩培養物を、含めた。
【0100】
(表6)
【0101】
【表6】

【0102】
表6に関して、この表は、実施例6からのデータを示す。列1に種の同定を示し、列2にセットAプローブ混合物についての蛍光シグナルを示し、列3にセットBプローブ混合物についての蛍光シグナルを示す。列2に関して、プローブセットAの使用は、試験した細菌種のうちの2種(Staphylococcus aureusおよびStaphylococcus schleiferi)において緑色蛍光シグナルを生じ、試験した他の細菌においては、何の蛍光シグナルも生じない。列3において理解され得るように、プローブセットBの使用は、Staphylococcus aureusについて緑色蛍光シグナルを生じ、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus hominis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus lugdunensis、Staphylococcus saprophyticus、およびStaphylococcus schleiferiについて赤色蛍光シグナルを生じた。Enterococcus faecalisについては、いずれのプローブセットを用いても蛍光シグナルは観察されなかった。
【0103】
Sta16S03プローブは、そのプローブと標的配列とが完全には相補的ではない(Oliveiraら、J.Clin.Microbiol.40:247〜251(2002))が、Staphylococcus schleiferiと安定なハイブリッドを形成することが、上記の実験において実証された。プローブセットAを用いた場合の緑色から、プローブセットBを用いた場合の赤色への、Staphylococcus schleiferiの蛍光において観察される変化は、標的配列についてのプローブ間の競合を反映する。すべてのプローブは、類似する標的配列に対するが、ただ1つのプローブのみが、1回に標的配列に結合し得るので、最も安定なハイブリッドが形成される。この様式で、Staphylococcus schleiferiに対するSta16S03プローブの交差ハイブリダイゼーションは、セットB中に他のプローブを含めることによって防止される。
【0104】
これらのデータは、ある1つの蛍光標識により種コホートを検出し、第二の蛍光標識を用いて単一種を検出する、プローブ混合物が作製され得ることを示す。この実験において試験するStaphylococcus種は、最も臨床的に適切であると考えられるが、本明細書中には含めていない他の実験は、他の多くのStaphylococcus種が、プローブセットBを用いて検出され得ることを実証した。プローブセットBを用いて試験したすべての種のうち、Staphylococcus aureusのみが、緑色蛍光シグナルを生じた。
【0105】
本明細書中で引用されるすべての参考文献は、それが活字出版形態であろうと、電子媒体形態であろうと、コンピュータ読出し可能記憶媒体形態であろうと、他の形態であろうと、その全体が参考として明示的に援用される。その参考文献としては、要約、論文、雑誌、刊行物、教科書、学術論文、技術データシート、インターネットウェブサイト、データベース、特許、特許出願、および特許公開物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
本発明の多くの実施形態が、記載されている。それにも関わらず、種々の実施形態が、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることが、理解される。従って、他の実施形態が、特許請求の範囲の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明。

【公開番号】特開2011−97958(P2011−97958A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−33903(P2011−33903)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【分割の表示】特願2006−541471(P2006−541471)の分割
【原出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(506177523)アドバンディーエックス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】