説明

特有の多孔度を有する酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムを含む組成物、この調製方法および触媒作用におけるこの使用

本発明は、少なくとも30重量%の酸化セリウムを含有する酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムを主成分とする組成物に関する。温度900℃で4時間のか焼後、本組成物は、2種の細孔群を有し、第1の群の直径は、30%から65%の酸化セリウム含有率を有する組成物については5nmから15nmの値または65%超の酸化セリウム含有率を有する組成物については10nmから20nmの値付近に集中し、第2の群の直径は、30%から65%の酸化セリウム含有率を有する組成物については45nmから65nmの値または65%超の酸化セリウム含有率を有する組成物については60nmから100nmの値付近に集中する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特有の多孔度を有する酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムを主成分とする組成物、この調製方法および触媒作用におけるこの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、内燃機関の排ガスを処理するため、いわゆる多機能触媒が使用されている(自動車燃焼後触媒作用)。用語「多機能触媒」は、特に排ガス中に存在する一酸化炭素および炭化水素の酸化についての酸化モードだけでなく、特にこのガス中に同様に存在する窒素酸化物の還元についての還元モードで機能することができる触媒(即ち、「三元」触媒)を意味すると解される。今日、酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムは、このタイプの触媒に特に重要で有用な2種の構成成分であると考えられている。
【0003】
このタイプの生成物は、これらの使用に適合する多孔度を有しなければならない。従って、このタイプの生成物は、良好なガス拡散を可能にするために十分に大きい細孔を有しなければならない。
【0004】
しかしながら、これらの同一生成物は、小さい細孔も有しなければならない。これというのも、触媒作用において使用することができるようにするために十分高い比表面積値を有する生成物の一因となるのは、これらの細孔であるからである。
【0005】
従って、小さいサイズの細孔により提供される高い表面積値と、大きいサイズの細孔によって提供される良好なガス拡散との良好な折衷を見出すことが有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、この折衷を達成する生成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明による組成物は、少なくとも30重量%の酸化セリウムを含有する酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムを主成分とし、温度900℃で4時間のか焼後、2種の細孔の群を有し、これらのそれぞれの直径は、第1の群の場合、30%から65%の酸化セリウム含有率を有する組成物については5nmから15nmの値または65%超の酸化セリウム含有率を有する組成物については10nmから20nmの値付近に集中し、第2の群の場合、30%から65%の酸化セリウム含有率を有する組成物については45nmから65nmの値または65%超の酸化セリウム含有率を有する組成物については60nmから100nmの値付近に集中することを特徴とする。
【0008】
下記において理解することができるとおり、本発明の組成物は、高温においてさえ高比表面積値を生じさせる一因となる重要な小さいサイズの細孔の群を有する。
【0009】
さらに、別の利点として、本発明の組成物は、容易に脱アグロメレート化することができ、顕著により小さい粒子をもたらすことができる粒子の形態を取り、このことによりこれらの組成物が触媒用途において特に有用となる。
【0010】
本発明の他の特徴、詳細および本質は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を理解することにより、よりいっそう十分に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】900℃でか焼後の本発明による組成物についての細孔分布プロットである。
【図2】1000℃でか焼後の本発明による組成物についての細孔分布プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明に関し、特に記載のない限り、挙げられる全ての値の範囲または限度値、境界値は両端を含むものであり、従って、こうして定義される値の範囲または限度値は、少なくとも下限値以上および/または多くとも上限値以下における任意の値を包含することも留意される。
【0013】
本詳細な説明において、用語「希土類」は、イットリウムおよび原子番号57から71(両端含む。)を有する周期表の元素により形成される群の元素を意味すると解される。
【0014】
用語「比表面積値」は、「The Journal of the American Chemical Society」、1938年、60巻、309頁に記載のブルナウア−エメット−テラー法により確立されたASTM D 3663(1978)規格に従う窒素吸着により測定されるB.E.T.比表面積値を意味すると解される。
【0015】
さらに、表面積値が計測される前のか焼は、空気中のか焼である。
【0016】
挙げられる含有率は、特に記載がない限り、組成物の全質量に対する酸化物の質量含有率である。酸化セリウムは酸化第二セリウムの形態である一方、他の希土類の酸化物は、Ln(Lnは、希土類を表す。)として表現され、但し、プラセオジムはPr11として表現される。
【0017】
粒子サイズ値は、Coulterタイプの機器を用いて実施されるレーザー散乱技術を使用する計測により得られる。
【0018】
本発明の組成物は、これらの構成成分の性質により異なる2種の実施形態に従って提示される。
【0019】
第1の実施形態によれば、これらの組成物は、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムを主成分とする。より正確には、これらの組成物は、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムからなり、または本質的にこれらからなる組成物であり得る。このことは、組成物がこの組成物またはこの表面を安定化させるための安定剤の構成元素であり得る別の元素、例えば、希土類などの別の酸化物を含有しないことを意味する。しかしながら、組成物は、セリウムおよびジルコニウムとともに通常存在する不純物を含有してよい。
【0020】
本発明の第2の実施形態の場合、組成物は、酸化セリウム、酸化ジルコニウムおよびセリウム以外の希土類の少なくとも1種の酸化物を主成分とする。従って、この場合、組成物は、少なくとも3種の酸化物を含有する。セリウム以外の希土類は、特に、イットリウム、ランタン、ネオジムおよびプラセオジムから選択することができる。従って、さらに特定して挙げることができるこの第2の実施形態による例は、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタンおよび酸化プラセオジムを主成分とするもの、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタンおよび酸化ネオジムを主成分とするものならびに酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタンおよび酸化イットリウムを主成分とするものである。
【0021】
第2の実施形態に関してもやはり、本発明は、組成物が酸化セリウム、酸化ジルコニウムおよび別の希土類の少なくとも1種の他の酸化物からなり、または本質的にこれらからなり、この場合、組成物が、この組成物および/またはこの表面を安定化させるための安定剤の構成元素であり得る上記3種の酸化物以外の元素の酸化物を含有しない場合に適用するものと解されなければならない。この場合においてもやはり、組成物は、ジルコニウムおよび希土類元素とともに通常存在する不純物を含有してよい。
【0022】
さらに、上記実施形態の両方に関し、本発明の組成物は、貴金属(noble metal)または貴金属(precious metal)タイプの元素を構成元素として含有しない。本発明およびこのタイプの金属に関し、用語「構成元素」は、当該金属が、他の元素、セリウム、ジルコニウムおよび場合によってはセリウム以外の希土類との均質混合物の形態で組成物内に存在し得ることを意味すると解され、このような均質混合物は、例えば、貴金属または貴金属が組成物の実際の調製時に用いられる場合に得られる。しかしながら、前記貴金属または貴金属に適用される用語「構成元素」は、本発明の意味の範囲内で、触媒作用の分野における使用について後述する場合、例えば、貴金属または貴金属が事前に調製された本発明の組成物との混合物として使用される場合には適用されない。
【0023】
本発明の組成物のセリウムおよびジルコニウム含有率は、いずれの実施形態であろうと広く変動し得、酸化セリウム含有率は少なくとも約30%であると解される。一般に、この含有率は、元素の酸化物の質量により表現されるCe/Zr比が3/10から9/10、さらに特定すると、2.5/2から8/2であるような含有率である。
【0024】
第2の実施形態の場合、セリウム以外の希土類の酸化物の含有率は、さらに特定すると、多くとも20重量%であり得る。この含有率は、さらに特定すると、多くとも15重量%、いっそうさらに特定すると、多くとも10重量%であり得る。通常、この含有率はまた、少なくとも1重量%、さらに特定すると少なくとも5重量%である。
【0025】
本発明の変形例によれば、酸化セリウム含有率は、さらに特定すると、少なくとも40重量%であり得、特に第2の実施形態による組成物の場合、いっそうさらに特定すると、少なくとも50重量%であり得る。
【0026】
上記のとおり、本発明の組成物の主な特徴はこれらの多孔度である。
【0027】
従って、温度900℃で4時間のか焼後、本発明の組成物は、上記値付近に集中する2種の極めて異なる細孔群を有する。
【0028】
本明細書における、または詳細な説明にわたる指標として、表示される多孔度は、ASTM D 4284(1983)規格(水銀圧入ポロシメトリーにより触媒の細孔体積分布を測定する標準的方法)に従う水銀圧入ポロシメトリーにより計測される。
【0029】
上記の多孔度計測法により、公知の様式において、細孔体積を細孔サイズの関数として与える細孔サイズプロットを得ることが可能になる(V=f(d)、Vは、細孔体積を示し、dは細孔直径を示す。)。この細孔サイズプロットから、やはり公知の様式において、Vの微分をdの関数として与える曲線(C)を得ることが可能である。この曲線は、細孔の直径に従うピークを有することができる。
【0030】
本発明に関し、表現「所与の値付近に集中する細孔群」は、曲線(C)が、最大値がこの所与の値に位置するピークを有することを意味すると解される。
【0031】
本発明の組成物の有利な特性は、これらの組成物が、高温においてさえ、例えば、900℃超の温度においてさえ、これらの2種の細孔群および従ってこれらに伴う利点を保持するという事実である。
【0032】
従って、本発明の組成物は、温度1000℃で4時間のか焼後、一方が小さいサイズの細孔および他方が大きいサイズの細孔の2種の細孔群を依然として有する。第1の群については、細孔直径は8nmから20nmの値付近に集中し、第2の群については、30%から50%の酸化セリウム含有率を有する組成物について、この直径は30nmから70nmの値または50%超の酸化セリウム含有率を有する組成物について、70nmから80nmの値付近に集中する。
【0033】
第2の細孔群は、この群中の細孔のほとんどが、対応するピークが集中する値に極めて近いままであるサイズを有するので、狭いまたは単分散の群である。この特性は、中間高さ(midheight)におけるピークの幅lとベースラインにおけるピークの幅Lとの比により計測することができる。従って、900℃または1000℃でか焼後の細孔サイズプロットに基づき計測されるl/L比は、一般に、少なくとも30%、さらに特定すると、少なくとも40%である。
【0034】
本発明の組成物は、高い全細孔体積も有する。従って、900℃で4時間のか焼後の組成物は、少なくとも0.6mlHg/gの全細孔体積を有する。細孔体積は、さらに特定すると、少なくとも0.7mlHg/gであり得る。この同一温度において、約0.90mlHg/gの細孔体積を達成することができる。
【0035】
全細孔体積は、より高い温度においても依然として高いままである。例えば、温度1000℃で4時間のか焼後、組成物は、少なくとも0.5mlHg/g、さらに特定すると、少なくとも0.65mlHg/gの全細孔体積を有することができる。この同一温度において、約0.70mlHg/gの細孔体積を達成することができる。
【0036】
本明細書に挙げられる全細孔体積は、3nmから100μmの直径を有する細孔から得られるものである。
【0037】
本発明の別の有利な特性は、小さいサイズの細孔、即ち上記の第1の群の細孔が、全細孔体積の相当大きい比率を提供することである。この比率は、組成物がか焼された温度に依存し、より低温においてか焼された組成物についてはより高く、一般に、5から20%で変動し得る。
【0038】
従って、この比率は、900℃で4時間のか焼の場合、8から12%であり得る。
【0039】
本発明の組成物の特有の多孔度は、これらの高い比表面積を作出する。
【0040】
従って、本発明の組成物は、第2の実施形態による組成物について、900℃で4時間のか焼後、少なくとも30m/g、さらに特定すると、少なくとも45m/gの比表面積を有することができる。同一温度におけるか焼後、第1および第2の実施形態の組成物について、それぞれ最大約35m/gおよび最大約55m/gの表面積値を得ることができる。
【0041】
表面積値は、よりいっそう高い温度においても高いままであり得る。温度1000℃で4時間のか焼後、比表面積は、第1の実施形態について少なくとも15m/g、第2の実施形態による組成物について少なくとも30m/gであり得る。同一温度におけるか焼後、第1および第2の実施形態の組成物について、それぞれ最大約17m/gおよび最大約45m/gの表面積値を得ることができる。
【0042】
本発明の組成物の比表面積は、同一時間であるが1100℃でか焼後、第1の実施形態について少なくとも5m/g、第2の実施形態について少なくとも15m/gであり得る。
【0043】
最後に、1200℃で10時間のか焼後、少なくとも5m/gの比表面積を得ることができる。
【0044】
本発明の組成物の別の特に有利な特性は、これらの脱アグロメレート化される能力である。
【0045】
本発明の組成物は、実際、一般に、これらの調製後、通常7μmから20μmの平均サイズ(d50)を有する粒子の形態を取る。
【0046】
これらの粒子は、実際、顕著により微細な平均サイズ、特に多くとも3μm、さらに特定すると、多くとも2μmのアグリゲートに容易に脱アグロメレート化させることができるアグロメレートであり、これらのアグリゲートは、相互にアグリゲート化した微結晶からなる。
【0047】
用語「容易に脱アグロメレート化可能」は、例えば、超微粉砕または湿式微粉砕とは異なり大量のエネルギーを要しない処理によりアグロメレートをアグリゲートに変えることができることを意味すると解される。この処理は、例えば、超音波または組成物を懸濁液中に入れることによる脱アグロメレート化であり得る。
【0048】
アグリゲートを容易に、即ちエネルギーをほとんど用いずに得るという事実は、本発明の組成物の有利な特性である。従って、触媒用途において、例えば、モノリス上での堆積が意図される塗膜(または薄め塗膜)として使用される微細生成物を容易に得ることは重要である。
【0049】
本発明の組成物は、良好な相純度のものであることも留意することができる。従って、これらの組成物は、特に第2の実施形態による組成物について、高温まで、即ち1100℃でか焼後でさえ固溶体の形態を取ることができる。
【0050】
表現「固溶体の形態で」は、これらの組成物が、所与の温度におけるか焼後、これらのX線回折パターンから明確に識別可能な単相の存在を示すことを意味すると解される。この単相の性質は、組成物の種々の元素のそれぞれの比率に依存する。セリウムが比較的豊富な組成物について、この相は、実際、結晶化酸化第二セリウムCeOと同様に蛍石タイプの結晶構造に対応し、この格子パラメータは、純粋な酸化第二セリウムと比べていくぶんシフトし、こうして酸化セリウムの結晶格子中のジルコニウムの取り込みを表し、および適切な場合、他の希土類の取り込みを表し、従って、真の固溶体の形成を表す。ジルコニウムが比較的豊富な組成物の場合、相は、正方晶系で結晶化した酸化ジルコニウムの相に対応し、この格子パラメータもシフトされ得、同様に、酸化ジルコニウムの結晶格子中へのセリウムおよび場合により他の元素の取り込みを表す。
【0051】
以下、本発明の組成物を調製する方法を記載する。
【0052】
本方法は、以下の段階:
−ジルコニウム化合物、セリウムIII化合物、硫酸イオン、酸化剤および適切な場合、セリウム以外の希土類の化合物を含む第1の液体媒体を形成する段階、
−前記媒体を塩基と接触させ、この接触により沈殿物を形成する段階、
−前記沈殿物を分離および洗浄する段階、
−前段階から得られた前記沈殿物を水中で再懸濁させ、およびこうして形成された前記媒体を、少なくとも温度90℃の熱処理に供する段階、および
−前記沈殿物を分離およびか焼する段階
を含む。
【0053】
本方法の第1の段階は、好ましくは水である液体媒体を形成することであり、この媒体中で、調製が所望される組成物の構成をなす種々の元素の化合物が必要量で見出される。従って、これらの化合物は、ジルコニウムおよびセリウム化合物であり、第2の実施形態による組成物の調製の場合、セリウム以外の(1種以上の)希土類の化合物である。
【0054】
これらの化合物は、好ましくは、可溶性化合物であり、特にこれらの化合物はこれらの元素の塩であり得る。
【0055】
これらの化合物は、多数の条件に適合しなければならない。
【0056】
セリウム化合物は、セリウムがIII形態である化合物である。さらに特定すると、ハロゲン化セリウム、特に塩化セリウムおよび硝酸セリウムを挙げることができる。
【0057】
ジルコニウムの場合、硝酸ジルコニルまたは塩化ジルコニル、硫酸ジルコニウム、さらに特定すると、オルト硫酸ジルコニウムまたはそうでなければ塩基性硫酸ジルコニウムを使用することができる。
【0058】
セリウム以外の(1種以上の)希土類に関しては、化合物は、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩および塩化物から選択することができる。
【0059】
出発液体媒体は、例えば、過酸化水素であり得る酸化剤も含有しなければならない。
【0060】
出発液体媒体は、硫酸イオンも含有しなければならない。硫酸イオンは、硫酸イオン/Zrの原子比が少なくとも0.5、好ましくは、少なくとも2であるような量で存在しなければならない。
【0061】
硫酸イオンは、例えば、硫酸により提供することができる。硫酸イオンは、少なくとも部分的には、ジルコニウム化合物(この化合物が硫酸塩化合物である場合)によっても提供することができる。
【0062】
本方法の第2の段階は、第1の段階において調製された液体媒体を塩基と接触させることである。水酸化物タイプの生成物を塩基として使用することができる。アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を挙げることができる。第2級、第3級または第4級アミンを使用することも可能である。しかしながら、アルカリまたはアルカリ土類金属カチオンによる汚染のリスクを低減させる限り、アミンおよびアンモニア水が好まれ得る。尿素も挙げることができる。塩基は、さらに特定すると、溶液の形態で使用することができる。
【0063】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、第1の液体媒体と塩基との接触は、媒体を塩基中に導入することにより、例えば、ストックとして塩基を含有する反応器中に媒体を導入することにより行うことができる。
【0064】
第1の液体媒体と塩基との接触または反応は、段階的であろうと連続的であろうと、単一操作において実施することができ、好ましくは、撹拌しながら実施される。好ましくは、少なくとも45℃の温度において実施される。
【0065】
塩基との反応は、沈殿物の形成をもたらす。沈殿物は、得られた反応混合物から、任意の公知手段、例えば濾過により分離される。
【0066】
分離された沈殿物は水により洗浄されて沈殿物中に依然として存在する硫酸塩が除去され、この洗浄操作は、室温の水またはそうでなければ、例えば、少なくとも50℃の温度の温水により実施される可能性がある。
【0067】
本方法の次の段階は、沈殿物を水性媒体中で熱処理する段階である。
【0068】
熱処理は、洗浄された沈殿物を水中に戻した後に得られた懸濁液について実施される。媒体が加熱される温度は、少なくとも90℃、さらに特定すると、少なくとも100℃、いっそうさらに特定すると、少なくとも150℃であり、150℃から200℃である可能性が相当高い。熱処理操作は、液体媒体を気密封止容器(オートクレーブタイプの密封反応器)中に導入することにより実施することができる。従って、上記の温度条件下、水性媒体中で、説明として、密封反応器中の圧力は、1bar(10Pa)超から165bar(1.65×10Pa)、好ましくは、5bar(5×10Pa)から165bar(1.65×10Pa)の値で変動し得ることを挙げることができる。熱処理は、空気中または不活性ガス雰囲気中、好ましくは、窒素中で実施することができる。
【0069】
熱処理時間は、例えば、1から48時間、好ましくは、1から24時間で広範に変動し得る。同様に、温度上昇速度は重要ではなく、従って固定反応温度は、例えば、30分間から4時間にわたり媒体を加熱することにより達成することができ、これらの値は、単に指標として挙げられるにすぎない。
【0070】
本発明による方法の最終段階において、回収された沈殿物は、熱処理が行われた媒体から、任意の好適な手段、例えば濾過により分離され、次いでか焼される。このか焼により、形成された生成物の結晶度の発達が可能になり、か焼は、本発明による組成物について確保される後続の使用温度に従って容易に調整および/または選択することもでき、用いられるか焼温度が高くなれば生成物の比表面積が低くなることを考慮する。このようなか焼は、一般に、空気中で実施されるが、例えば、不活性ガスまたは制御された(酸化または還元)雰囲気中で実施されるか焼が除外されないことは明確である。
【0071】
実際的に、か焼温度は、一般に、500℃から900℃、さらに特定すると、600℃から800℃の値の範囲に限定される。
【0072】
1つの変形例によれば、沈殿物は、熱処理が実施された液体媒体をアトマイズすることにより分離することができる。
【0073】
用語「噴霧乾燥」は、混合物が高温雰囲気中に噴霧されることにより乾燥される操作を意味すると解される。噴霧乾燥は、自体公知のタイプの任意の噴霧器により、例えば、シャワーヘッド散水口の噴霧ノズルなどにより実施することができる。タービンアトマイザと呼ばれるものを使用することも可能である。本発明において使用することができる種々の噴霧技術に関し、特にMasters著、標題「Spray Drying」,second edition 1976,published by George Godwinの基本的な著作を参照することができる。
【0074】
噴霧乾燥後、こうして得られた乾燥沈殿物は、上記条件下でか焼される。
【0075】
上記の本発明の組成物または上記方法により得られるような組成物は粉末の形態を取るが、形成操作を施してこれらを種々の寸法の顆粒、ビーズ、円筒体またはハニカムにすることができる可能性があり得る。
【0076】
本発明の組成物は、触媒または触媒担体として使用することができる。従って、本発明はまた、本発明の組成物を含む触媒系に関する。このような系について、これらの組成物は、触媒作用分野において通常使用される任意の担体、即ち、特に熱的に不活性な担体上に適用することもできる。担体は、アルミナ、二酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、シリカ、スピネル、ゼオライト、ケイ酸塩、結晶性リン酸ケイ素アルミニウムおよび結晶性リン酸アルミニウムから選択することができる。
【0077】
組成物は、これらの組成物に基づく触媒特性を有する薄め塗膜を含む触媒系において使用することもでき、前記薄め塗膜は、例えば、金属またはセラミックモノリスタイプの基体上に適用される。薄め塗膜自体は、上記のタイプの担体を含むことができ、組成物を担体と混合し、続いて基体上に堆積させることができる懸濁液を形成することにより得られる。
【0078】
これらの触媒系、さらに特定すると本発明の組成物は、極めて多くの用途を有し得る。従って、例えば、これらの触媒系、さらに特定すると、本発明の組成物は、種々の反応、例えば炭化水素または他の有機化合物の脱水、水素化硫化、水素化脱窒素、脱硫、水素化脱硫、脱ハロゲン化水素、改質、水蒸気改質、クラッキング、水素化分解、水素化、脱水素、異性化、不均化、オキシ塩素化および脱水素環化、酸化および/または還元反応、クラウス反応、内燃機関についての排ガス処理、脱金属化、メタン化、シフト転化、内燃機関、例えば、希薄混合気により作動するディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンから排出された煤の触媒的酸化などの触媒作用に特に十分に適しており、従ってこれらにおいて使用することができる。最後に、本発明の触媒系および組成物は、NOxトラップとして、もしくは酸化媒体中でさえNOxの還元を促進するために使用することができ、またはそうでなければ、例えば、硝酸製造ユニットもしくは静的ユニット内でNOを分解する方法における触媒として使用することができる。
【0079】
本発明の組成物は、触媒作用におけるこれらの使用の場合、貴金属と組み合わせて用いられ、従って、組成物は、これらの金属の担体として機能する。これらの金属の性質およびこれらを担体組成物中に取り込む技術は、当業者に周知である。例えば、金属は、白金、ロジウム、パラジウムまたはイリジウムであり得、特にこれらの金属は含浸により組成物中に取り込むことができる。
【0080】
挙げられた使用のうち、内燃機関の排ガスの処理(自動車燃焼後触媒作用)は、1つの特に有利な用途を構成する。従って、本発明はまた、上記の触媒系または上記の本発明による組成物を触媒として使用することを特徴とする、内燃機関の排ガスを処理する方法に関する。
【0081】
以下、実施例を示す。
【0082】
本実施例において、多孔度は、上記技術により、および標準に従って、以下のさらに特定された計測条件下で計測する:
−計測に供される試験体は、100℃の通風型オーブン内で100℃で10時間脱ガスを施し、前記試験体は、約300mgの質量を有し、
−セルが3.28cmの体積を有する14番の粉末針入度計(powder penetrometer)を、0.413cmのキャピラリーを用いて使用し、
−計測を、130°の接触角ならびに貫入および押出モードにおける圧力表を用いて実施する。
【実施例1】
【0083】
本実施例は、酸化ジルコニウムおよびセリウムを主成分とし、それぞれの酸化物比率が20重量%および80重量%である組成物の調製に関する。
【0084】
使用されるジルコニウム化合物は、塩基性硫酸ジルコニウムを室温において硫酸中で溶解させることにより得られた溶液のオルト硫酸ジルコニウムであり、この濃度は253.5g/l、密度は1.478であり、使用されるセリウム化合物は、溶液の硝酸セリウムCe(NOであり、この濃度は496g/lであり、密度は1.716であった。
【0085】
上記化合物を、意図される組成物の最終酸化物を得るために適切な量で混合し、この後、35%のH140mlをこの混合物に添加した。
【0086】
得られた溶液を100g/lの濃度に希釈し、次いで塩基ストック(5mol/lのNHOH1500mlからなる。)中に、連続撹拌しながら一滴ずつ導入した。第2の連続撹拌反応器中へのオーバーフローによる半連続沈殿後、得られた沈殿物を濾過し、次いでリパルピング(repulping)しながら2回連続で洗浄した。沈殿反応器における濃度は、反応にわたり100g/lであった。
【0087】
オーバーフロー反応器中で得られた沈殿物を、100g/lの濃度で水中で再懸濁させ、次いでオートクレーブ中に200℃で1時間撹拌しながら入れた。次いで、沈殿物を空気中で850℃で2時間か焼した。
【0088】
こうして得られた組成物は、以下の特徴を有する:
比表面積
900℃、4時間 30m/g
1000℃、4時間 15m/g
1100℃、4時間 7m/g
第1の細孔群 15nmに集中(900℃、4時間)
第2の細孔群 80nmに集中(900℃、4時間)
第2の細孔群に対応するピークのl/L比 45%
全多孔度 0.63mlHg/g
1100℃で4時間のか焼後、組成物は、純粋な蛍石型立方晶相の形態であった。
【実施例2】
【0089】
本実施例は、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタンおよび酸化プラセオジムを主成分とし、それぞれの酸化物の重量比率が30%、60%、3%および7%である組成物の調製に関する。
【0090】
使用されるジルコニウムおよびセリウム化合物は、実施例1において使用されたものと同一であった。ランタン化合物は、溶液のLa(NOであり、濃度は454g/lであり、密度は1.687であり、プラセオジム化合物は、溶液のPr(NOの形態であり、濃度は500g/lであり、密度は1.732であった。
【0091】
上記化合物を、意図される組成物の最終酸化物を得るために適切な量で混合し、この後、H(11.6mol/lの濃度および1.132の密度)107mlをこの混合物に添加した。
【0092】
得られた溶液を100g/lの濃度に希釈し、次いで塩基ストック(5mol/lのNHOH1500mlからなる。)中に、連続撹拌しながら一滴ずつ導入した。沈殿させ、50℃で1時間撹拌した後、得られた沈殿物を濾過し、次いでリパルピングしながら2回連続で洗浄した。
【0093】
得られた沈殿物を、100g/lの濃度で水中で再懸濁させてからオートクレーブ中に撹拌しながら200℃で1時間入れた。次いで、沈殿物を空気中で850℃で2時間か焼した。
【0094】
こうして得られた組成物は、以下の特徴を有した:
【0095】
【表1】

1100℃で4時間のか焼後、組成物は、純粋な蛍石型立方晶相の形態であった。
【0096】
図1は、900℃で4時間のか焼後の実施例2の組成物についての細孔サイズプロットである。この図は、約10nmに集中するプロットの右側から始まる第1のピークおよび約45nmに集中する第2のピークを明らかに示す。図2は、同一組成物であるが1000℃で4時間のか焼後の組成物についての細孔サイズプロットである。やはり、図1のプロットと同一のピークが存在するが、これらのピークは、左にシフトしており、第1のピークは15nmに、第2のピークは60nmに集中する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも30重量%の酸化セリウムを含有する、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムを主成分とする組成物であって、温度900℃で4時間のか焼後、2種の細孔の群を有し、これらのそれぞれの直径は、第1の群の場合、30%から65%の酸化セリウム含有率を有する組成物については、5nmから15nmの値、または、65%超の酸化セリウム含有率を有する組成物については、10nmから20nmの値付近に集中し、第2の群の場合、30%から65%の酸化セリウム含有率を有する組成物については、45nmから65nmの値、または、65%超の酸化セリウム含有率を有する組成物については、60nmから100nmの値付近に集中することを特徴とする組成物。
【請求項2】
少なくとも30重量%の酸化セリウムを含有する酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムを主成分とする組成物であって、温度1000℃で4時間のか焼後、2種の細孔の群を有し、これらのそれぞれの直径は、第1の群の場合、8nmから20nmの値付近に集中し、第2の群の場合、30%から50%の酸化セリウム含有率を有する組成物については、30nmから70nmの値、50%超の酸化セリウム含有率を有する組成物については、70nmから80nmの値付近に集中する組成物。
【請求項3】
少なくとも0.6mlHg/gの全細孔体積を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも0.5mlHg/gの全細孔体積を有することを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1の群の前記細孔が、8から12%の前記全細孔体積の比率を表す細孔体積を提供することを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
セリウム以外の希土類、さらに特定すると、イットリウム、ランタン、ネオジムおよびプラセオジムから選択することができる希土類の少なくとも1種の酸化物を含むことを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の組成物。
【請求項7】
元素の酸化物の質量により表現されるCe/Zr比が、3/10から9/10、さらに特定すると、2.5/4から8/2のセリウムおよびジルコニウム含有率を有することを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の組成物。
【請求項8】
多くとも20%の、酸化物の質量により表現されるセリウム以外の希土類の含有率を有することを特徴とする、請求項6または7に記載の組成物。
【請求項9】
900℃で4時間のか焼後に少なくとも30m/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1、3または5から8の一項に記載の組成物。
【請求項10】
1200℃で10時間のか焼後に少なくとも5m/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1から9の一項に記載の組成物。
【請求項11】
多くとも3μmの平均サイズを有する粒子に脱アグロメレート化させることができる7μmから20μmの平均サイズを有する粒子の形態を取ることを特徴とする、請求項1から10の一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1から11の一項に記載の組成物を調製する方法であって、以下の段階:
−ジルコニウム化合物、セリウムIII化合物、硫酸イオン、酸化剤および適切な場合、セリウム以外の希土類の化合物を含む第1の液体媒体を形成する段階、
−前記媒体を塩基と接触させ、この接触により沈殿物を形成する段階、
−前記沈殿物を分離および洗浄する段階、
−前段階から得られた前記沈殿物を水中で再懸濁させ、およびこうして形成された前記媒体を、少なくとも温度90℃の熱処理に供する段階、および
−前記沈殿物を分離およびか焼する段階
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
オルト硫酸ジルコニウムをジルコニウム化合物として使用することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の液体媒体を塩基と接触させる段階を、前記塩基をストックとして含有する反応器中で、前記媒体を反応器中に導入することにより行うことを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から11の一項に記載の組成物を含むことを特徴とする触媒系。
【請求項16】
請求項15に記載の触媒系または請求項1から11の一項に記載の組成物を触媒として使用することを特徴とする、内燃機関の排ガスを処理する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−533499(P2012−533499A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519967(P2012−519967)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059465
【国際公開番号】WO2011/006780
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(508183151)ロデイア・オペラシヨン (70)
【Fターム(参考)】