特殊化オリゴヌクレオチドならびに核酸の増幅および検出でのその使用
核酸増幅反応での使用に有用な標識プローブおよび非標識オリゴヌクレオチドが本明細書に記載される。これらのプローブおよびオリゴヌクレオチドは、その対応する非修飾の対応物に比べて、耐熱性DNAポリメラーゼのプライマー非依存的5’エキソヌクレアーゼ活性に対するそれらの感度を変化させるように修飾される。これらの標識プローブおよび非標識オリゴヌクレオチドを用いる非対称ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅および検出方法もまた記載される。標識プローブおよび非標識オリゴヌクレオチドを含む、核酸増幅反応用のキットもまた記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2006年7月17日に出願した米国仮出願第60/831223号に対する優先権およびその利益を主張するものである。
【0002】
本出願は、具体的には、PCRとして一般に知られているポリメラーゼ連鎖反応を利用する増幅を含む、核酸増幅反応および増幅産物の検出に関する。
【背景技術】
【0003】
核酸増幅の技術およびアッセイはよく知られている。DNAを増幅するためのいくつかの反応は、核酸配列ベース増幅(NASBA)等の等温のものである。他は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の熱性のサイクルを用いる。PCRを利用する増幅および増幅を用いるアッセイは、たとえば米国特許第4683202号、第4683195号、および第4965188号ならびに一般的に、PCR PROTOCOLS,a guide to Methods and Applications,INNISら編,Academic Press(San Diego,CA(USA)1990)に記載され、これらのそれぞれはこれによってその全体が参照によって組み込まれる。PCR増幅は、対称となるよう、すなわち、等モルまたは約等モルの濃度の1対のマッチするプライマー、すなわち、等しい融解温度(Tm)を有するフォワードプライマーおよびリバースプライマーを利用することによって、二本鎖産物(または「アンプリコン」)を作製するよう一般的に設計される。直接PCR増幅反応で一本鎖アンプリコンを主として作製するための、用途が限られている技術は、GyllenstenおよびErlich,「Generation of Single−Stranded DNA by the Polymerase Chain Reaction and Its Application to Direct Sequencing of the HLA−DQA Locus」,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)85:7652〜7656(1988);および米国特許第5066584号に記載される「非対称PCR」である。非対称PCRは、一方のプライマーが、他方のプライマーの濃度の1〜20パーセントの限られた量で存在するように5倍〜100倍に希釈される点で対称PCRと異なる非対称のPCR増幅方法である。結果として、増幅は、一方のプライマーのみが残存して一本鎖アンプリコンを産出する線形増幅が後に続く、両方のプライマーが伸長して二本鎖アンプリコンを産出する対数期からなる。
【0004】
より最近の非対称のPCR増幅方法は、「Linear−After−The−Exponential PCR」(LATE−PCR)であり、これは異なる濃度のプライマーを利用するが、プライマーは、対称PCRおよび非対称PCRでのように「マッチしない」。Sanchezら(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)101:1933〜1938、公開国際特許出願第03/054233号(2003年7月3日)、およびPierceら(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)102;8609〜8614、これらのすべてはそれらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。DNA増幅方法は、逆転写を最初に行って、cDNAを生成し、次いで、cDNAを、たとえば先のPCR法のうちの1つによって増幅することによってRNA標的に使用することができる。
【0005】
核酸増幅産物の検出および分析は様々な形で行うことができる。二本鎖アンプリコンは、SYBR GreenまたはSYBR Gold等の、二本鎖DNA中にインターカレートするまたはその他の形でそれと相互作用する際に蛍光を発する色素で監視することができる。たとえば、米国特許第5994056号を参照されたい。アンプリコンは、シークエンシング反応、たとえば従来のジデオキシシークエンシング法、パイロシークエンシング法、リアルタイムの合成によるシークエンシング法にかけることができる。ハイブリダイゼーションプローブは一般に検出に使用される。プローブは標識されてもよくまたは非標識であってもよい。ハイブリダイズしたプローブの検出は、サイズ等の物理的特徴によるもの、続いて起こるイベント、たとえば発色反応への関与によるもの、または放射性標識もしくは蛍光標識等の、プローブに適用された標識の検出によるものであってもよい。標識プローブの例は、プライマー伸長の間に切断される5’ヌクレアーゼプローブ(米国特許第5210015号、第5487972号、および第5538848号)、分子ビーコンプローブ(米国特許第5925517号、第6103476号、および第6365729号)、Yin−Yang二本鎖プローブ(Li, Q.ら(2002)Nucl.Acids Res.30:e5)、ならびにFRETプローブ対である。
【0006】
増幅の上記のPCRベースの方法はすべて、細菌源から回収された耐熱性DNAポリメラーゼの作用に依存する。それらの天然の形態では、これらの酵素は、いくつかのドメインおよびいくつかの活性:3’から5’へのポリメラーゼ、5’から3’へのエキソヌクレアーゼ、および3’から5’への編集機能(商業的に使用される酵素から除去される)を含む、を有する単一のポリペプチドである。Taq DNAポリメラーゼ(サーマス アクアティカス由来)は、ホットスタート形態を含めて最も広く使用されているが、Tfi DNAポリメラーゼ(Invitrogen社、製品#30342−011)は別のそのような酵素である。これらの耐熱性DNAポリメラーゼに加えて、DNA鎖の重合およびある5’末端のエキソヌクレアーゼ切断と共にDNAへのRNAの逆転写もまた実行するいくつかの耐熱性DNAポリメラーゼがある。これらの酵素は、ZO5ポリメラーゼおよびサーマス サーモフィラス(TTH)ポリメラーゼを含む。
【0007】
耐熱性DNAポリメラーゼで見つかった5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性はTaqポリメラーゼを使用して非常に研究されてきた。たとえば、このエキソヌクレアーゼ活性は、対称PCRに関連して使用されるいわゆる5’ヌクレアーゼアッセイのベースとなる。5’ヌクレアーゼアッセイは2つのプライマーおよび1つのプローブを利用する。プローブは、一方の末端ヌクレオチドに共有結合された蛍光体および他方の末端ヌクレオチドに共有結合された非蛍光消光剤を有する直鎖またはランダムコイルのDNAオリゴヌクレオチドである。プローブは、2つのプライマーのうちの一方が結合する、2つの標的鎖のうちの一方とハイブリダイズする。5’ヌクレアーゼプローブの融解温度はその上流プライマーの融解温度よりも高く、したがって、プローブは、伸長プライマーの下流に配置される。酵素の3’から5’へのポリメラーゼドメインがプライマーの3’末端を伸長するとき、5’から3’へのTaqポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性はプローブの5’末端に遭遇し、これを切断する。プローブがその5’末端に蛍光成分を有する場合、その成分およびそれが共有結合されたヌクレオチドは切断によってオリゴマーの残りから分離される。オリゴヌクレオチドの残部が標的配列にまだ結合している場合、それは、前進しているポリメラーゼの5’エキソヌクレアーゼによってさらに切断される。これはプローブのプライマー依存的切断である。
【0008】
プローブのプライマー依存的切断は次の特徴を有する:1)プライマーの3’末端は非ブロック(または非キャップ)3’−OH基を有していなければならない。したがって、3’−OHに対する−PO4もしくは他の化学成分の追加および/または3’OHの除去は切断を予防する。2)プライマーは、プローブの5’末端まで前進またはプローブの5’末端「の下に侵入」しなければならない。したがって、プライマーがプローブの5’末端まで前進することができないという条件において、下記に示されることを除いて、プライマー依存的反応からの1つまたは複数のヌクレオチド三リン酸の除外は切断を予防するであろう。このルールに対する例外は、さらなる伸長を伴わない、プローブの5’末端の下に既に侵入している、3’OHを有するプライマーが設計され得るということである。3)プライマーの3’末端がプローブの5’末端の下に既に侵入している場合、その3’末端は標的配列に相補的でなければならない。したがって、3’−OHが非キャップでも、プライマーの3’末端での2つ以上のヌクレオチドの非相補的3’伸長(アーム)は、プローブのプライマー依存的切断を予防する。Taqポリメラーゼの5’から3’へのドメインを除去すると、Stoffel断片として知られている酵素が産出される。Stoffel断片を利用するPCR増幅は5’ヌクレアーゼ(TAQMAN、Roche Molecular Systems社の商標)プローブを使用することができない。それらの全長にわたって2’o−メチルヌクレオチド等のある種の修飾されたヌクレオチドを使用する、分子ビーコンプローブ等の構築はプローブプライマー依存的切断を予防する。
【0009】
Lyamichevら(Biochemistry(2000)39:9523〜9532)は、プローブのプライマー依存的切断に特有の3つのオリゴヌクレオチドの構造的特色に基づいた侵入型シグナル増幅反応(invasive signal amplification reaction)を記載した。彼らは、「上昇した温度で反応を実施することによって、下流オリゴヌクレオチドは標的に循環的に結合および解離して、温度サイクルを伴うことなく標的分子当たりに多数の切断イベントをもたらす」ことを報告した。
【0010】
耐熱性DNAポリメラーゼの5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性はまたプローブ−標的ハイブリッドのプライマー非依存的切断を実行することでも知られている。この反応は、16塩基対のステム、4つのヌクレオチドのループ、およびP32−PO4で標識された5’末端を有するヘアピン型標的分子を使用して研究された。ヘアピンの2つのアームは長さが等しい(つまり、それは平滑断端にされている)または3’アームは5’末端を超えて伸長しているまたは5’末端は3’末端を超えて伸長している。このデザインの分子を使用して、Taqポリメラーゼのプライマー非依存的5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性は次の特徴を有することが示された:1)Lyamichev,V.ら(Science260,778〜783(1993))は、プライマーの非存在下で、Taqポリメラーゼの5’から3’へのヌクレアーゼは、基質鎖および標的鎖の最後の2つの塩基対の間でヘアピン基質の陥凹5’末端を切断したことを報告した。2)Lyamichevら(Proc.National Acad.Sci.96:6143〜6148(1999))は、完全なTaqポリメラーゼ(TaqNP)の5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性は、3’末端が6つのヌクレオチドだけ陥凹したヘアピン構造の5’末端を効率的に切断しないことを実証した。これらの著者らは、「効率の低い切断は、おそらく、鋳型−プライマー複合体に類似する二重鎖の端への、この酵素のポリメラーゼドメインの結合に起因する」と結論づけた。彼らは、標的とハイブリダイズしたプライマーではなく標的とハイブリダイズしたプローブに類似している基質を試験しなかった。
【0011】
ある種の増幅目的およびある種の検出目的については、当技術分野で知られている増幅方法および検出方法は適さないまたは制限を有する。たとえば、多重PCRアッセイは、異なる色の蛍光プローブによって5つまたは6つの標的を区別することができるにすぎない。また、大量の対立遺伝子を含むサンプル中でまれな対立遺伝子を検出するのは非常に難しい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態では、その対応する非修飾の対応物に比べて、耐熱性DNAポリメラーゼのプライマー非依存的5’エキソヌクレアーゼ活性に感受性にするように修飾された低温直鎖DNAハイブリダイゼーションプローブを使用するシグナル増幅を含む非対称のPCR法が提供される。
【0013】
他の実施形態では、耐熱性DNAポリメラーゼのプライマー非依存的5’エキソヌクレアーゼ活性に抵抗性にするように修飾された低温直鎖DNAハイブリダイゼーションプローブのハイブリダイゼーションの検出を含む非対称のPCR法が提供される。
【0014】
さらなる他の実施形態では、ある標的または対立遺伝子の増幅が選択的にブロックされるPCR法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】異なる種類のプローブを示す図である。
【図2】図1に示されるプローブに対する切断の多種多様のメカニズムを示す図である。
【図3】プライマーおよび標的に対する低温プローブについての最適なTm関係を示す図である。
【図4】多種多様のプローブ構造を切断するZO5の性能を示す図である。
【図5】図5A:ZO5ポリメラーゼ、TET EXO−Rプローブで検出されたH5およびFAM EXO−Rプローブで検出されたH3の10,000コピーの増幅を示す図である。 図5B:図5Aについての融解曲線を示す図である。 図5C:プラチナTaqポリメラーゼ、TET EXO−Rプローブで検出されたH5およびFAM EXO−Rプローブで検出されたH3の10,000コピーの増幅を示す図である。 図5D:図5Bについての融解曲線を示す図である。
【図6】実施例3および図7で利用されるEXO−Rプローブおよび多種多様のプライマー対の関係を示す図である。
【図7】図7A:高Tmプライマー対を用いたリアルタイムLATE−PCRアッセイでのEXO−Rオリゴヌクレオチドの下流のBGプローブの95℃分析を示す図である。 図7B:高Tmプライマー対を用いたリアルタイムLATE−PCRアッセイでのEXO−Rオリゴヌクレオチドの下流のBGプローブの45℃分析を示す図である。 図7C:高Tmプライマー対を用いたEXO−RオリゴヌクレオチドLATE−PCRアッセイの下流のBGプローブの終末点融解曲線分析を示す図である。 図7D:中間Tmプライマー対を用いたリアルタイムLATE−PCRアッセイでのEXO−Rオリゴヌクレオチドの下流のBGプローブの95℃分析を示す図である。 図7E:中間Tmプライマー対を用いたリアルタイムLATE−PCRアッセイでのEXO−Rオリゴヌクレオチドの下流のBGプローブの45℃分析を示す図である。 図7F:中間Tmプライマー対を用いたEXO−RオリゴヌクレオチドLATE−PCRアッセイの下流のBGプローブの終末点融解曲線分析を示す図である。 図7G:低Tmプライマー対を用いたリアルタイムLATE−PCRアッセイでのEXO−Rオリゴヌクレオチドの下流のBGプローブの95℃分析を示す図である。 図7H:低Tmプライマー対を用いたリアルタイムLATE−PCRアッセイでのEXO−Rオリゴヌクレオチドの下流のBGプローブの45℃分析を示す図である。 図7I:低Tmプライマー対を用いたEXO−RオリゴヌクレオチドLATE−PCRアッセイの下流のBGプローブの終末点融解曲線分析を示す図である。
【図8】5’末端上にFAMを使用するEXO−Sプローブを示す図である。
【図9】5’末端上にBHQ1を使用するEXO−Rプローブを示す図である。
【図10】ニューカッスルDNAアンプリコンの7500コピーを検出するためのEXO−R ROXプローブを示す図である。
【図11】等温条件対変動条件下でのEXO−Sプローブの切断の速度を示す図である。
【図12】その相補的標的の3’末端に対するEXO−Sプローブの距離は切断の速度に影響を与えることを示す図である。
【図13】45℃および70℃の間の変動の間の、標的に対する、プローブの5’末端での単一塩基対ミスマッチでのシグナル生成の異なる速度を示す図である(ケース1)。
【図14】45℃および70℃の間の変動の間の、標的に対する、プローブの5’末端での単一塩基対ミスマッチでのシグナル増幅の異なる速度を示す図である(ケース2)。
【図15】30分間の等温条件(50℃)下でのシグナル増幅の速度を示す図である。
【図16】変動条件(45℃〜70℃)下でのシグナル増幅の速度を示す図である。
【図17】プローブの5’アームの長さを増加させると、プローブはEXO−SプローブまたはEXO−Rプローブとなることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.定義
本明細書に使用されるように、「サンプル」は、たとえば生物学的サンプルまたは環境サンプル等の試験されることとなる任意の物質とすることができる。生物学的サンプルは任意の生物から得ることができる。一実施形態では、サンプルは、ヒト、コンパニオンアニマル、または家畜等の哺乳動物から得ることができる。サンプルはまた、たとえばトリ等の他の動物から得ることができる。一実施形態では、動物からのサンプルは、鼻咽頭吸引液、血液、唾液、糞便、尿、または任意の他の体液を含む。他の実施形態では、環境サンプルは、たとえば土壌、水、人工建造物の環境および表面等の任意の環境から得ることができる。
【0017】
本明細書に使用されるように、「増幅標的配列」、「標的配列」、および「核酸標的配列」は、増幅反応、たとえばPCR増幅技術によるコピーのための鋳型を提供するDNA配列を区別なく意味する。増幅標的配列は一本鎖とすることができるまたは二本鎖とすることができる。出発物質がRNA、たとえばメッセンジャーRNAである場合、DNA増幅標的配列は、相補的DNA(cDNA)を生成するための、RNAの逆転写によって生成され、増幅標的配列はcDNA分子となる。したがって、RNAについてのPCRアッセイでは、ハイブリダイゼーションプローブは、cDNA増幅標的配列のコピーとハイブリダイズし、それによってそれを反映し、逆転写によって、増幅標的配列を含むcDNA分子を産生したRNAの存在を間接的に表す。増幅標的配列は、その増幅に使用される1対のプライマーによって、典型的に挟まれる。伸長産物または「アンプリコン」は、二本鎖または一本鎖かにかかわらず、プライマー対によって境界を定められる。増幅標的配列は単一の核酸配列とすることができる。ある場合では、しかしながら、増幅標的配列は対立遺伝子の変異または突然変異を含んでよく、したがって、単一の配列ではなくてよい。
【0018】
本明細書に使用されるように、「Tm」は、対象の核酸物質の半分が二本鎖形態で存在し、残部が単鎖である温度を指す。歴史的に、プライマー、プローブ、またはアンプリコンのTmは、標準的なプライマーの状態および塩濃度での、両方ともよく知られている「%GC」法(Wetmar,J.G.(1991)「DNA Probes:Applications of the Principles of Nucleic Acid Hybridization」,Crit.Rev.Biochem.Mol.Biol.26:227〜259)または「2(A+T)+4(G+C)」法を使用する算出値であった。LATE−PCRは、しかしながら、「最近傍」法を使用して(Santa Lucia,J.(1998)PNAS(USA)95:1460〜1465)、式Tm=ΔH/(ΔS+R ln(C/2))+12.5 log[M]−273.15を使用して、Tmを算出することによって(Le Novere,N.(2001),「MELTING,Computing the Melting Temperature of Nucleic Acid Duplex」,Bioinformatics17:1226〜7)Tmを決定する際に実際のプライマーおよびプローブの開始濃度を考慮に入れる(Sanchezら(2004)PNAS(USA)101:1933〜1938,およびPierceら(2005)PNAS(USA)102:8609〜8614)。ΔHはエンタルピーであり、ΔSはエントロピーであり(ΔHおよびΔSの算出の両方は、Allawi,H.T.およびSanta Lucia,J.(1997)Biochem.36:10581〜10594に基づく)、Cはオリゴヌクレオチドの濃度であり、Rは一般気体定数であり、[M]は一価カチオンのモル濃度である(実施例では0.07)。この式によれば、オリゴヌクレオチドのヌクレオチド塩基組成(用語ΔHおよびΔSに含有される)、一価塩濃度、ならびにオリゴヌクレオチドの濃度(用語Cに含有される)はTmに影響を及ぼす。しかしながら、PCRバッファー中に使用されるマグネシウムまたは他の二価カチオンの濃度はこの式に含まれておらず、二価カチオンはTmを増加させることで知られている。本発明者らは典型的に3mMマグネシウムを使用する。これはプローブTmを約5℃上げる。したがって、所望されるTmが50℃であり、3mMマグネシウムが使用されることになる場合、マグネシウムなしでのTmについての上記の最近傍式は、Tmを45度とするべきであり、次いで、必要に応じ、プローブの長さまたは組成に対する微量の調整と共に経験的に確認することができる。本発明者は、DNA Software社(アナーバー、MI)の許諾ソフトウェア、Visual OMP(バージョン6.1.9)ソフトウェアが最近傍式に対するそのような調整を含み、本発明者が経験的に決定したものに近い結果が得られることを見出した。プライマーまたはプローブのTmに対する本明細書の言及は、他に述べられない限り、マグネシウム濃度を考慮に入れる値を意味する。
【0019】
本明細書に使用されるように、「対立遺伝子識別力のある」および「配列特異的」の両方は、完全に相補的な標的配列と選択的にハイブリダイズするおよび1つまたは少数のミスマッチの塩基を有する、密接に関連する配列を強く拒絶する、プローブ(ある場合ではプライマー)の能力を指す。本明細書に使用されるように、「ミスマッチ認容性」は、完全に相補的な配列および1つまたは複数のミスマッチの塩基を有する部分的に相補的な配列の両方とハイブリダイズするプローブ(ある場合ではプライマー)の能力を指す。
【0020】
本明細書に使用されるように、「単一管」は、試験管、反応ウェル、マイクロフルイディクスデバイス中のチャンバー、スライドガラス、または反応混合物を保持することができる他の装置等のある容器から別の容器にサンプルを移動させずに行うことができる一連の少なくとも2つの操作、たとえばサンプルの調製、増幅、またはシークエンシングを含む方法を指す。
【0021】
本明細書に使用されるように、「エキソヌクレアーゼ活性」は、PCR増幅に使用される、Taq DNAポリメラーゼを含む耐熱性ポリメラーゼの酵素特性のうちの1つを指す。エキソヌクレアーゼ活性は、3’から5’への消化と別個の5’から3’への消化を指し、これは酵素の校正機能と見なされる。エキソヌクレアーゼ活性は、DNA糖リン酸主鎖の切断の正確なモードまたは場所、特に、切断が、5’末端に付けられた成分および末端5’ヌクレオチドの間にまたは末端ヌクレオチドおよび最後から2番目の5’ヌクレオチドもしくは3’末端の下流の1つまたは複数のヌクレオチドの間にあるかどうかを明示することを意味しない。他に述べられない限り、その使用が本明細書に記載されるポリメラーゼはすべて、エキソヌクレアーゼドメインを単独でまたは上流プライマーの3’末端に対する塩基対追加を実行するポリメラーゼドメインと共に含むことが理解される。
【0022】
本明細書に使用されるように、「プライマー依存的」切断は、ポリメラーゼがプライマーのその伸長の間に出会った、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの切断を指す。伸長鎖上の3’末端−OH基の存在がプライマー依存的切断に必要とされることが知られている。本明細書に使用されるように、「プライマー依存的」切断はまた、上流のオリゴヌクレオチドの3’OHが、dNTPの非存在下でさえ、下流のオリゴヌクレオチド、たとえばハイブリダイズしたプローブの5’末端に取って代わる場合に生じる切断を含む。たとえばリン酸基の化学的追加(キャッピング)および末端2’3’ジデオキシヌクレオチドの存在は、下流のオリゴヌクレオチド中のある種の非天然ヌクレオチドおよび非天然ヌクレオチド間連結のように、プライマー依存的切断を予防することで知られている方法である。
【0023】
本明細書に使用されるように、「プライマー非依存的」切断は、プライマー依存的切断ではない、ポリメラーゼの5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性による、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの5’から3’への切断を指す。この場合では、ポリメラーゼは、オリゴヌクレオチド/標的ハイブリッドに直接結合し、結合したオリゴヌクレオチドの5’末端を切断する。プライマーもプライマー伸長も含まれない。
【0024】
本明細書に使用されるように、「LATE−PCR」は、蛍光検出可能な二本鎖アンプリコンを産生するために、およそ十分なPCRサイクルで消耗されて、それ自体は200nMまでの低濃度で利用される他方のプライマー(「制限プライマー」)と比較して少なくとも5倍過剰の、あるオリゴヌクレオチドプライマー(「過剰プライマー」)を利用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロセスを用いる非対称のDNA増幅を意味し、増幅の開始時の制限プライマーの濃度調整した融解温度、Tm[0]Lは、増幅の開始時の過剰プライマーの濃度調整した融解温度、Tm[0]Xよりも5℃を超えて下回ることはなく、好ましくは少なくとも同じくらい高く、より好ましくは3〜10℃高く、熱性のサイクルは制限プライマーの消耗の後に複数回のサイクルの間、継続されて、一本鎖産物、すなわち、「過剰プライマー鎖」と時に称される、過剰プライマーの伸長産物を産生する。
【0025】
本明細書に使用されるように、用語「低Tmプローブ」は、その標的に対するハイブリダイゼーション後にシグナルを出す標識ハイブリダイゼーションプローブを意味し、これは、LATE−PCRでは過剰プライマーの伸長によって産出される過剰プライマー鎖であり、LATE−PCRでは制限プライマーである、過剰プライマー鎖とハイブリダイズし、それに沿って伸長する、プライマーのTm[0]よりも少なくとも5℃、より好ましくは少なくとも10℃下回るTm[0]Pを有する。本明細書に使用されるように、低Tmプローブは直鎖プローブである。
【0026】
B.詳細な説明
DNA増幅反応での特定の目的のために修飾される標識プローブおよび非標識オリゴヌクレオチドならびに増幅の間にまたは増幅後検出の間に特定の効果を達成するためのそれらの使用が記載される。DNA増幅反応、たとえばPCR増幅はDNAポリメラーゼによるプライマー伸長を含む。本明細書に記載されるように、プローブ−標的構造は、ハイブリダイズしたプローブが5’方向にあるよりも3’方向に長い鋳型鎖を含む。したがって、プローブは、可変数のヌクレオチドだけ標的鎖の一本鎖3’末端から陥凹しており、プローブは、標的鎖に完全にマッチし得るまたは可変長の伸長5’アームを有する5’末端を有する。これらの構造的特色を有する単分子ヘアピン分子は、本明細書に記載されるように、構築されたこれらのものをまねるために使用することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼは、標的非依存的プローブ切断を呈しないまたは組成物が耐熱性ポリメラーゼに標的非依存的プローブ切断を呈するようにさせる反応混合物中で使用される耐熱性ポリメラーゼでなければならない。「標的非依存的プローブ切断を呈する」とは、オリゴヌクレオチドが、3〜5ヌクレオチド長のループおよび2〜5ヌクレオチド長のステムを有する末端ヘアピンを含有する場合に、また10分間、酵素の最適な伸長温度を20℃以下下回る温度で上述の酵素とインキュベートされた場合に、標的配列の非存在下で上述のオリゴヌクレオチドを切断する酵素の能力を意味する。Mn++を有するビシンバッファー中のZO5ポリメラーゼは標的非依存的プローブ切断を呈する酵素の例である。対照的に、Mg++を含有し、ナトリウムTrisで緩衝した反応混合物中のTaq DNAポリメラーゼは、標的非依存的プローブ切断を呈しない酵素の例である。本明細書に記載される方法は、標的非依存的プローブ切断を呈しないポリメラーゼの使用を含むことを理解されたい。酵素が標的非依存的プローブ切断を呈するかどうかは、プローブの5’末端に5’ヌクレオチドが伸長したプローブの使用により確立することができ、上述の伸長により、70℃よりも高い温度での自己アニーリングによって2〜5ヌクレオチド長のステムを有するヘアピン構造を形成する。標的非依存的プローブ切断を呈しない酵素は、リアルタイムPCRまたは終末点等温条件もしくは終末点変動温度条件でこれらのヘアピンプローブを切断することができない。
【0028】
本明細書に記載されるプローブは、標的アンプリコン鎖とハイブリダイズし、プライマーの中間に位置し、プローブが含まれる増幅反応の平均プライマーアニーリング温度を少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃下回るTm[0]を有する低温プローブである、構造上修飾された直鎖またはランダムコイルのDNAハイブリダイゼーションプローブである。増幅反応がたとえば3段階温度PCR反応である場合、増幅の後の最後にまたはLATE−PCR増幅の線形期の間等のいくつかの増幅サイクルの間に低温ステップが加えられなければ、プローブはハイブリダイズしない。切断されていないプローブは、好ましくはDABCYL、Black Hole消光剤等の非蛍光消光剤またはQSY 7もしくは9等の別の消光剤によって、プローブが溶液中で遊離している場合に消光される蛍光体を有する2重標識蛍光プローブである。Black Hole消光剤は、Biosearch Technologies社、ノバート、CA(米国)の知的所有権付き消光剤である。QSY消光剤はInvitrogen社、カールスバード、CA(米国)から入手可能である。切断されているプローブもまた2重標識蛍光プローブであってもよいが、その必要はない。切断されたプローブについては、必要とされることは、いずれにせよ、断片上の標識または断片のいくつかの特性、たとえば重量もしくはサイズまたはたとえば色の形成を引き起こす等の検出可能な働きを行うための能力を用いて、切断されたプローブ断片を検出することである。この最後の場合では、切断の検出は間接的である。
【0029】
本明細書に記載されるブロッキングオリゴヌクレオチドは、プライマーに対して下流(3’)にハイブリダイズし、非標識である修飾された直鎖オリゴヌクレオチドである。
【0030】
ある種類の修飾されたハイブリダイゼーションプローブは、増幅に先立ってPCR反応混合物に添加した場合に、等温プライマー非依存的5’エキソヌクレアーゼ切断を増強するように構造が修飾されたプローブである。そのようなプローブを「エキソ感受性」、または略してEXO−Sプローブと称する。それは、プローブが使用される増幅反応で平均プライマーアニーリング温度を少なくとも5、好ましくは少なくとも10℃下回るTmを有する直鎖またはランダムコイルのDNAプローブである。等温プライマー非依存的切断条件にかけられた場合、それは、対応する非修飾のプローブの少なくとも2倍速く、好ましくは5倍速く、より好ましくは少なくとも10倍速く切断される。
【0031】
一実施形態では、プローブをエキソ感受性にする修飾は、少なくとも3つの連続した、好ましくは3つを超える、最も好ましくは6つの連続したメチレン(CH2)基からなる鎖による、少なくとも1つの標識成分、たとえばプローブの5’末端に対する蛍光体または非蛍光消光剤の共有結合を含む。前記メチレン鎖の前に、5’ヌクレオチドに連結された端で、カルボキシル基、アミン、アミド、または別のかさ高い化学基を置くことはできないが、連続したメチレン基の前記鎖の前に、エーテル基(−O−)を置く(5’ヌクレオチドに連結された端で)ことができることが予想される。他の実施形態では、プローブの5’末端での修飾は、ハイブリダイズしたプローブのすぐ「上流」(3’)の標的のヌクレオチドに対して相補的ではない追加のヌクレオチドからなる。この修飾はまたプローブの5’末端での1塩基「アーム」として記載することもできる。EXO−Sプローブは、5’アームを有していなくてもよい、すなわち、標的に対して相補的ではないヌクレオチドはないまたは多くても、5ヌクレオチド未満、好ましくは1ヌクレオチドだけの短いアームを有していてもよい。EXO−Sプローブは、その標的鎖の3’末端から6ヌクレオチド、好ましくは3’末端から10〜30ヌクレオチドを超えて配置されるハイブリッドを形成するように設計されるべきである。端から40ヌクレオチドを超えるハイブリッドは、プローブの標的非依存的等温切断を遅くするので、それほど好ましくない。当業者は十分に理解するであろうが、その特異的標的の3’末端に対して特定のEXO−Sプローブを位置づけるための最適な場所は、プローブが用いられる増幅反応の正確な条件および組成物に依存する。最も重要な因子は、EXO−Sプローブの上流の制限プライマーの長さおよびプローブされることとなる標的配列の塩基組成である。すべての場合で、しかしながら、EXO−Sプローブの5’末端は、制限プライマーが消耗される前に制限プライマーの3’末端がハイブリダイズする標的鎖上の場所と重複するべきでない。言い換えれば、制限プライマーの3’末端に相補的な標的鎖上の塩基は、プローブの5’末端またはEXO−Sプローブの5’末端上のアームの5’末端の少なくとも2塩基上流とするべきである。
【0032】
本明細書に記載される方法は、エキソ感受性プローブの存在下で少なくとも1つのDNA標的配列を増幅することを含み、増幅プロセスは、伸長によりプローブに相補的なアンプリコン鎖を産出するプライマーが消耗されるまで、プローブがハイブリダイズするであろう低温ステップを含まない、すなわち、プローブのTmを下回る温度でのインキュベーションを含まない。PCR増幅で使用される場合、EXO−Sプローブは、低温検出ステップを有しないサイクルの間にアンプリコンとハイブリダイズしない。制限プライマーの消耗の後の増幅サイクル中に、すなわち、プローブが相補的な一本鎖過剰プライマーアンプリコン鎖を産出するサイクル中に低温検出ステップを含む非対称のPCR法により、プローブはハイブリダイズし、プライマー非依存的様式で切断され、それによって、プローブによって産出されたシグナルを増幅する。増幅後低温検出ステップのみが含まる場合、蛍光体および消光剤、好ましくは非蛍光消光剤を含有する2重蛍光標識プローブからのシグナルはまた、30分以上生じ続けることがあり、繰り返しのハイブリダイゼーションおよび切断が、リアルタイム検出と同様にそのような終末点検出で起こることを示唆する。このため、終末点での読み取りは、所定の時間、好ましくは少なくとも1分後に、より好ましくは少なくとも2分後になされるべきである。たとえば、プローブが蛍光体および消光剤で標識される場合、繰り返しのハイブリダイゼーションおよび切断は、非消光断片の産生の増加および蛍光発光シグナルの増幅をもたらす。そのような方法は、プローブ切断の均一な検出を含む。
【0033】
本明細書に記載される別の種類のプローブは、増幅に先立ってPCR反応物に添加された場合に、プライマー非依存的5’ヌクレアーゼ切断に抵抗するように構造が修飾されたプローブである。そのようなプローブを「エキソ抵抗性」プローブまたは略してEXO−Rプローブと称する。エキソ抵抗性プローブは低温プローブである。エキソ抵抗性プローブはプライマー依存的エキソヌクレアーゼ切断に抵抗性である必要はない。しかしながら、ある実施形態は、プライマー非依存的5’エキソヌクレアーゼ切断およびプライマー依存的5’エキソヌクレアーゼ切断の両方に抵抗性である。エキソ抵抗性プローブは、蛍光体および消光剤で標識され、相補的な標的鎖とハイブリダイズされ、等温プライマー非依存的5’ヌクレアーゼ切断条件にかけられた場合に、蛍光発光での測定可能な発生はなく、25分間の期間にわたって10%以下であるといった程度までプライマー非依存的切断に抵抗する。いくつかの実施形態は、下記に記載されるように、プローブ−標的Tmのあたりの急速な熱変動にかけられた場合でも抵抗性のままであるが、他の実施形態は、そのような変動によって切断されて、増幅されたシグナルを産出することができる。エキソ抵抗性プローブは、その非修飾構造が標識されたまたは非標識であるDNAオリゴヌクレオチドである、直鎖またはランダムコイルのハイブリダイゼーションプローブである。プローブをエキソ抵抗性にするための1つの修飾は、標識成分、たとえば蛍光体または非蛍光消光剤を5’末端ヌクレオチドにメチレン鎖以外のものによって連結することである。プローブをエキソ抵抗性にするための別の修飾は、プローブの標的とハイブリダイズしない2〜7つのヌクレオチドを含む5’末端アームを追加することである。プローブをエキソ抵抗性にするための別の修飾は、プローブの5’末端にヌクレオチド伸長を追加することであり、上述の伸長により、70℃よりも高い温度での自己アニーリングによって2〜5ヌクレオチド長のステムを有するヘアピン構造を形成する。これらの5’ヘアピンもまた変動温度誘発性の切断に抵抗する。
【0034】
本明細書に記載される方法は、非対称のPCR増幅方法、好ましくはエキソ抵抗性プローブの存在下でのLATE−PCR法によって少なくとも1つのDNA標的配列を増幅することを含み、増幅プロセスは、プローブがハイブリダイズする低温ステップを制限プライマーの消耗の後まで含まない。PCR増幅で使用される場合、EXO−Rプローブは、低温検出ステップを有しないサイクルの間にアンプリコンとハイブリダイズしない。増幅の後にまたは非対称の方法については制限プライマーの消耗の後に低温検出ステップを含むPCR法により、プローブはハイブリダイズする。検出が等温である、すなわち、プローブのTmのあたりの急速な温度変動がない場合では、プローブは切断されないであろう、また、そのシグナルはハイブリダイゼーションのみから起きる。そのような実施形態では、プローブは、ハイブリダイゼーション後に検出可能なものを発しなければならない。検出が終末点であり、プローブのTmのあたりの急速な熱性の変動、たとえば、Tmの5℃上〜5℃下または好ましくは10℃上〜10℃下を含み、各変動サイクルは30秒間以下である場合、ある実施形態は、上記に述べられるようにプライマー非依存的様式で切断されるが、他の実施形態は切断されない。プライマー非依存的様式での急速な変動による切断は、プローブシグナルが産出される速度を増加させる。これらの実施形態では、エキソ感受性プローブについて上記に記載されるように、切断はシグナルを直接または間接的に産出する。任意の所与の時点でのシグナルの大きさは、切断の速度および反応中のプローブの全体量に依存する。たとえば、プローブが蛍光体および消光剤で標識される場合、繰り返しの変動は、すべての利用可能なプローブが切断されるまで、非消光蛍光体含有断片の産生の増加および蛍光発光シグナルの増幅をもたらす。そのような方法は、プローブハイブリダイゼーションまたはプローブ切断の均一な検出を含む。
【0035】
相補鎖とハイブリダイズし、プライマー依存的5’ヌクレアーゼ切断およびプライマー非依存的5’ヌクレアーゼ切断の両方に抵抗性のハイブリッドを形成する、構造上修飾されたオリゴヌクレオチドもまた本明細書に記載される。時に、そのようなオリゴヌクレオチドをEXO−Nオリゴヌクレオチドと称する。EXO−Nは、EXO−Nが使用されるPCR増幅反応、対称PCR増幅または非対称のPCR増幅のいずれかのプライマー伸長ステップの間に、プライマーのうちの一方から下流の標的鎖とハイブリダイズするのに十分に高いTmを有する直鎖オリゴヌクレオチドである。EXO−Nはプライマー伸長の間にポリメラーゼによって切断されないので、EXO−Nは、ハイブリダイズした鎖の伸長を阻害し、それによってその鎖の増幅を非効率にする。オリゴヌクレオチドをEXO−Nオリゴヌクレオチドにする直鎖オリゴヌクレオチドの1つの修飾は、オリゴヌクレオチドの標的に相補的ではない直鎖オリゴヌクレオチドの5’末端にオリゴヌクレオチド伸長を追加することであり、そのような伸長は、2〜5ヌクレオチド長のステムを有し、少なくとも70℃のTmを有するヘアピン構造を形成する。
【0036】
本明細書に記載される方法は、本来なら使用されるプライマー対によって増幅されるはずである、考えられる1つの標的対立遺伝子に特異的なEXO−Nオリゴヌクレオチドの存在下で対称または非対称のPCR増幅反応を行い、それによって、EXO−Nオリゴヌクレオチドがプライマー伸長の間にハイブリダイズしない1つまたは複数の代替の対立遺伝子の変異体配列の増幅を促進するステップを含む。本明細書に記載される方法はまた、所望される時点で、すなわち2回以上の熱サイクル後に、一方の鎖、プラス鎖またはマイナス鎖の増幅を非効率にし、それによって、続いて起こるサイクルで他方の鎖の増幅を促進するために、対称PCR増幅反応にEXO−Nオリゴヌクレオチドを挿入するステップを含む。
【0037】
一方のプライマー、過剰プライマーは、少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1で、他方のプライマー、制限プライマーと比較して実質的に過剰に存在する、DNA増幅標的配列(cDNA配列を含む)についてのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によるDNA増幅、特に、非対称PCRおよびLATE−PCR等の非対称のPCR法が記載される。好ましい増幅方法は、LATE−PCRであるが、他の方法を使用することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、その方法は、修飾された低温DNAハイブリダイゼーションプローブを利用する。DNAハイブリダイゼーションプローブは、それらの標的に相補的な非伸長性のDNAオリゴヌクレオチドであり、標的は、この場合では、PCR増幅反応によって産生されたアンプリコンである、過剰プライマーの伸長産物(過剰プライマー鎖)中のDNA配列である。非修飾のプローブは、プローブの標的相補的配列であるDNAのストレッチであるまたはそれを含有する。プローブの標的相補的配列は、反応中で産生され得る過剰プライマー鎖に完全に相補的であってもよく、反応中で産生され得る少なくとも1つの過剰プライマー鎖に不完全に相補的であってもよく、またはその両方であってもよい。プローブは、完全に相補的な標的に対して、不完全に相補的な標的に対するよりも高いTm(LATE−PCRの場合、Tm[0])を有する。たとえば、プローブが55℃の、完全に相補的な標的に対してTmを有するように設計される場合、1つまたは複数のミスマッチ塩基、ヌクレオチド欠失またはヌクレオチド挿入を含有する標的に対するそのTmは、時に10℃以上低くなる。これは、プローブが、形成された1つまたは複数のハイブリッドのTmによって標的を区別することを可能にする。すべての実施形態で、プローブは低温プローブである。
【0039】
プローブを利用する非対称のPCR法は、開始増幅反応混合物中にプローブを含み、プライマー、dNTP、バッファー、耐熱性DNAポリメラーゼ、および核酸出発物質がRNAである場合、逆転写酵素もまた含む。増幅の間にまたはその最後に切断されないあらゆるプローブは、ハイブリダイゼーション後に検出可能な蛍光シグナルを発する2重蛍光標識プローブであろう。適した標識手法が当技術分野で知られている。好ましい標識は、一方の末端に共有結合された蛍光体および他方の末端に共有結合された非蛍光消光剤であるが、他の標識法を使用することができる。入手可能なDABCYL、DABMI、Black Hole消光剤、QSY消光剤、Deep Dark消光剤、および他を含む多数の消光剤が当技術分野で知られている。検出の一部として切断されることとなるあらゆるプローブもまた同様に標識されてもよいが、その必要はない。そのようなプローブに必要とされることは、切断が検出可能であるということであり、したがって、プローブは、検出可能な標識で別々に標識することができるまたはプローブは非標識とすることができる。
【0040】
使用されるプローブは、PCR増幅の間に、すなわちリアルタイム検出でまたは増幅の後に、すなわち終末点検出で標的とハイブリダイズした場合のそれらのプライマー非依存的等温5’ヌクレアーゼ切断を増強するまたは実質的に排除するように修飾される直鎖またはランダムコイルのDNAハイブリダイゼーションプローブとすることができる。示されるように、増強された切断性を有するプローブをエキソ感受性またはEXO−Sプローブと称し、また、切断に抵抗性のプローブをエキソ抵抗性またはEXO−Rプローブと称する。EXO−Rプローブは、25分間の等温プライマー非依存的切断条件にかけられた場合、実質的に未切断のままである。いくつかのEXO−Rプローブは、プローブ−標的ハイブリッドのTmのあたりの急速な温度変動によって切断することができるが、他のものはそのような変動にさえ抵抗する。検出が制限プライマーの消耗後に起こり、したがって、起こるあらゆる切断はプライマー非依存的5’ヌクレアーゼ酵素活性によるものである。EXO−SプローブおよびEXO−Rプローブは低温プローブである。
【0041】
ランダムコイルDNAプローブをEXO−Sプローブにするためのそのプローブに対する修飾は、プローブの標的に相補的ではない5’ヌクレオチドを追加することおよびプローブの5’ヌクレオチドに標識成分を、好ましくは蛍光成分を少なくとも3つの、好ましくは6つのメチレン基のメチレン鎖によって連結することである。
【0042】
ランダムコイルDNAプローブをEXO−Rプローブにするためのそのプローブに対する修飾は、それらの5’末端の構造的修飾に基づいた3つのクラスがあると考えることができる:
クラス(1)5’末端が完全に相補的な標的配列とハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドプローブの5’末端に対するある非核酸化学成分の追加;
クラス(2)プローブの5’末端が標的配列に相補的ではなく、したがって、1つまたは複数の塩基について伸長された一本鎖「アーム」を形成するような、オリゴヌクレオチドプローブの5’末端に対する1つまたは複数の非相補的ヌクレオチドの追加;
クラス(3)5’末端の一本鎖「アーム」が、3〜5つのヌクレオチドのステムおよび>70℃の自己アニーリングTmを有する、ヘアピン構造を形成するような、オリゴヌクレオチドプローブの5’末端に対する複数の非相補的ヌクレオチドの追加。
【0043】
図1は、比較のための例示的な5’ヌクレアーゼプローブと共に各クラスのEXO−Rプローブの例を示す。図2は、クラス(1)〜(3)のプローブについての例示的な切断メカニズムを示す。
【0044】
Taqシステムでは、たとえば、いくつかのクラス(1)およびクラス(2)のEXO−Rプローブは、プローブ−標的ハイブリッドのTmが伸長プライマーの通り道でのプローブ結合を回避するのに十分に低くなかった場合、プライマー依存的切断によって切断され得る。対照的に、クラス(3)プローブは、プローブ−標的ハイブリッドのTmが伸長プライマーの通り道でのプローブ結合を回避するのに十分に低くなかった場合、伸長プライマーによって切断されず、またプライマー伸長を非効率にする。
【0045】
特定の修飾されたランダムコイルプローブがEXO−SかEXO−Rプローブかどうか決定するために、その切断性を、等温プライマー非依存的切断条件が後続するPCR増幅反応条件にかけられた場合の、対応する非修飾のプローブのものと比較することができる。EXO−RプローブがそのTmのあたりの急速な温度変動によって切断可能かどうか決定するために、その切断を、温度サイクルの時間または数の関数としてプロットすることができる。
【0046】
述べられたように、EXO−Sプローブ法およびEXO−Rプローブ法は、非対称のPCR増幅およびハイブリダイズされたプローブの検出または切断されたプローブ断片の検出である。プローブが、ハイブリダイズされたことによりまたは切断されたことにより、検出可能なシグナル、たとえば蛍光シグナルを発する場合、検出は、変動を含んでいてもよくまたは含んでいなくてもよい低温検出ステップの手段を用いて増幅反応の間に(リアルタイム)または反応の完了後に(終末点)行うことができる。そのようなプローブでの検出はまた、プローブ−標的ハイブリッドについての融解曲線の生成を含んでいてもよい。
【0047】
以下の説明は、同じまたは異なる標識を有するいくつかのEXO−SプローブまたはいくつかのEXO−Rプローブを、そのような反応物が産出する情報量を増加させるために、多重PCR反応物にどのように添加することができるかを示す。同様の結果は、同じ反応中でEXO−SプローブおよびEXO−Rプローブを組み合わせることにより達成することができる。
【0048】
多重非対称のPCR反応は、それぞれ異なる標的配列に対するいくつかの対のプライマーを使用するように構築することができる。結果として生じる一本鎖アンプリコンのそれぞれは、一本鎖標的アンプリコン中のその相補的配列との1つまたは複数のEXO−Sプローブのハイブリダイゼーションを達成するために反応の間にまたは反応の最後に温度を低下させることにより検出することができる。EXO−Sプローブのそれぞれが、異なった色の蛍光体でまたは固有の分子量もしくは電気的なサインを有する異なる成分で標識される場合、それぞれのプローブ−アンプリコンハイブリッドはその固有のシグナルを産出する。しかしながら、2つのEXO−Sプローブはまた、それらが異なる温度でプローブ−アンプリコンハイブリッドを形成することを条件として、同じシグナル基で標識することができる。同様に、EXO−Sプローブは、同じ色だが区別可能に異なるTmのEXO−Rプローブと共に使用することができ、この場合には、プローブのうちの一方のみがプローブおよびアンプリコンの等温インキュベーションの間に切断され、第2のプローブは続いて起こるまたは先の温度の変動の間に切断されるので、EXO−Rプローブが温度変動によって切断可能である場合、区別を高めることができる。
【0049】
EXO−Sプローブを用いて別個のシグナルを産出する可能な標的のレパートリーは、Kramer(米国特許第6150097号)によって記載される「Color Triplet Coding」の原理を利用することによりさらに高めることができる。この場合では、各アンプリコン、ユニーク配列または対立遺伝子変異体のいずれかは、2つまたは3つの異なる5’標識で標識されたそれ自体のEXO−Sプローブで標的にされる。したがって、プローブ−アンプリコンハイブリッドが形成され、切断された場合、2つまたは3つの標識は切断を介して放出される。Kramerによって記載されるように、2つまたは3つのグループで複数の標識を組み合わせるための複数の方法がある。
【0050】
同様に、多重非対称PCR反応は、温度が反応の間にまたはその最後に低下する場合に、複数のEXO−Rプローブで検出される複数の一本鎖アンプリコンを産出するためにいくつかの対のプライマーを使用して構築することができる。この場合では、各EXO−Rプローブは異なる色の蛍光体で標識することができる。加えて、各EXO−Rプローブは、その長さに依存して、配列特異的、つまり対立遺伝子識別力があるまたはミスマッチ認容性とすることができる。この場合では、プローブ−アンプリコンハイブリダイゼーションを区別するための最良の方法は、反応の温度が、あらかじめ設定された低温から徐々に低くなるまたは徐々に増加する融解曲線分析を行うことである。これらの状況下で、各EXO−Rプローブはその固有の融解プロフィルを表し、同じ色の2つのEXO−Rプローブの組合せは複合融解曲線をもたらす。加えて、温度変動は、プローブのうちの一方のみのシグナルを変化させるので、温度変動に抵抗性のEXO−Rプローブおよび温度変動に感受性のEXO−Rプローブは多重化することができる。
【0051】
EXO−Rプローブを用いて別個のシグナルを産出する可能な標的のレパートリーは、Kramer(米国特許第6150097号)によって記載される「Color Triplet Coding」の原理を利用することによりさらに高めることができる。この場合では、各アンプリコン、ユニーク配列または対立遺伝子変異体のいずれかは、2つまたは3つの異なる5’標識で標識されたそれ自体のEXO−Rプローブで標的にされる。したがって、プローブ−アンプリコンハイブリッドが形成され、融解される場合、そのハイブリッドは2つまたは3つの色で同じ融解曲線を産出する。Kramerによって記載されるように、2つまたは3つのグループで複数の標識を組み合わせるための複数の方法がある。
【0052】
EXO−SプローブおよびEXO−Rプローブを使用する別の手段は、シングル多重非対称PCR反応中でそれらを組み合わせることを含む。この場合では、異なるプローブは、融解曲線分析または切断分析のいずれかによって異なる一本鎖アンプリコンを検出することができる。たとえば、反応の温度を低下させるので、ミスマッチ認容性EXO−Rプローブは、固有の融解曲線を産出する有色の蛍光体で標識することができる。その標的へのEXO−Rプローブの最大の結合が低温で達すると、反応温度は、その標的に対して同じ色であってもよく、その標的に対するEXO−RプローブのTmよりも低いTmを有するEXO−Sプローブのハイブリダイゼーションおよび等温または変動温度依存性の切断を達成するためにさらに低下させることができる。EXO−Sプローブ切断産物の検出は低温で実行することができるが、好ましくはより上の温度、たとえば、EXO−SプローブもEXO−Rプローブもその標的とハイブリダイズしない70℃で実行される。これらの各直鎖プローブ上に消光剤が存在するので、EXO−Sプローブの5’末端から切断された蛍光体のみが、そのより上の温度でバックグラウンドを上回るシグナルを産出する。
【実施例】
【0053】
実施例1(図4)
本実施例は、ここで使用される条件下で、ポリメラーゼZO5がプライマー非依存的抵抗性を呈しないことを実証する。
【0054】
増幅反応は、1×RT−PCRバッファー(Roche Diagnostic社)、50mMビシン/KOH、pH8.2(25℃)、115mM K−酢酸、8%グリセロール(v/v)、および3mM酢酸マンガン(Mn OAc2)をそれぞれ含有する。ZO5ポリメラーゼ濃度は反応当たり200ユニットとし、プローブは0.5μMとし、相補的標的は1.5μMとする。反応は等温とし、52℃で実施する。蛍光発光データは20秒間隔で15分間収集する。反応はABI社製7700サーモサイクラーを使用して実施する。
【0055】
以下のプローブおよびそれらの相補的標的を使用した:
プローブ名 配列(5’−3’)
直鎖FT(アームなし) Fam-CCATGATACAAGCTTCC-BHQ1
直鎖FT BHQ5' BHQ1-CCATGATACAAGCTTCC-Fam
直鎖FT(5'3'アーム) Fam-TTTTTTCCATGATACAAGCTTCCTTTTTT-BHQ1
0-4-0 MW-BG Fam-CGGTGAAACCGCGCCTGCAATATACAGC-BHQ1
標的名
FT標的 ACTTAGTAATTGGGAAGCTTGTATCATGGCACTTAGAAC
BG標的 AAAAAAGCTGTATATTGCAGGCGAAAAAA
【0056】
以下のプローブ−標的の組合せを試験した(各2通り)。カットが最も速い速度の2つ(41)の線は、FT標的+6つの非相補的ヌクレオチド(すべてT)の5’3’アームを有する直鎖FTプローブである。カットが2番目に速い速度の2つ(42)の線(赤線)は、FT標的+5’3’アームなしの直鎖FTプローブである。2つ(43)の線は、BG標的+4bpステムおよび3塩基ループを有する5’ヘアピンを含有する0−4−0 MW−BGプローブである。上記のプローブの3つはすべて5’FAM蛍光体を有する。
【0057】
2つ(44)の線は、FT標的+5’3’アームなしの直鎖FTプローブであるが、Black Hole消光剤1が5’末端上にある。
【0058】
2つ(45)の点線は、5’ヘアピンを有する0−4−0 MW−BGプローブであるが、BG標的を反応物に添加しなかった。
【0059】
図4に示される結果は、これらの条件下で、ポリメラーゼZO5が、BG標的の非存在下でさえ、5’ヘアピンを有する0−4−0 MW−BGプローブを切断することを実証する。すべての他のプローブは、それらの標的配列の非存在下で切断されなかった(結果は示さず)。したがって、これらの結果は、これらの条件下のポリメラーゼZO5が標的非依存的プローブ切断を呈することを実証する。この結論は、これらの条件下で、ポリメラーゼZO5はまた、6つの非相補的ヌクレオチド(すべてのT)の5’3’アームを有する直鎖FTプローブがそのFT標的に結合した場合に、このEXO−RプローブはTaqポリメラーゼによって切断されないが、その直鎖FTプローブを切断した事実によって支持される。
【0060】
実施例2(図5(A〜D))
本実施例では、標的非依存的プローブ切断を呈する酵素ZO5ポリメラーゼ(実施例1)は、EXO−Rプローブを切断するが、標的非依存的プローブ切断を呈しないプラチナTaqポリメラーゼは、EXO−Rプローブを切断しないことを示す。図5は、唯一の変更を重合反応中で使用される酵素とする同じ反応条件下での、各実行を10,000コピーで始めた、H5およびH3のインフルエンザ遺伝子の検出についての4回の実験の結果を示す。H5遺伝子は5’TET EXO−Rプローブ(実線)によって検出し、H3遺伝子は5’FAM EXO−Rプローブ(破線)によって検出する。NTC値は点線で示す。
【0061】
図5Aは、LATE−PCR増幅についてZO5酵素を用いた結果を示し、TETプローブおよびFAMプローブの両方を用いた(51)はTETプローブ蛍光発光の、(52)はFAMプローブ蛍光発光の、および(53)はNTCの結果である。
【0062】
図5Bは、プローブの融解を示し、FAMおよびTETのプローブの両方について、(54)はTETプローブ蛍光発光の、(55)はFAMプローブ蛍光発光の、および(56)はNTCの結果である。
【0063】
図5Cは酵素としてプラチナTaqポリメラーゼを使用したLATE−PCR増幅の結果を示し、TETおよびFAMのプローブの蛍光発光で、(57)はTETプローブ蛍光発光、(58)はFAMプローブ蛍光発光、および(59)はNTCである。
【0064】
図5Dは、プローブの融解を示し、TETおよびFAMのプローブの蛍光発光で、(510)はTETプローブ蛍光発光、(511)はFAMプローブ蛍光発光、および(512)はNTCである。
【0065】
LATE−PCRはZO5の実施例(図5A)でより効率的に見え、Ct値は両遺伝子について29であり、一方、プラチナTaq(図5C)については、Ct値は30(H5)および33(H3)である。しかしながら、2つの融解曲線によって示されるようにこれは事実ではない。ZO5反応中でのTETプローブ(54)は完全にカットされていき、反応中に遊離TETを放出するが、ZO5を用いたFAMプローブ(55)は部分的にカットされる。これは図6Bに見ることができ、ZO5反応プローブ融解曲線で、プローブがもはや標的に結合しなくなると、プローブ蛍光発光(54、55)はNTC蛍光発光値(56)に達する。これもまた増幅でのCt値をより低くする。結果は、プラチナTaq反応で全く異なり(図5D)、プローブがもはや標的に結合しなくなると、プローブ融解曲線は遊離TET(510)またはFAM(511)を示さない。したがって、遊離FAMまたはTETが検出されないので、Ct値(図5C)はより後になる。
【0066】
EXO−Rプローブ:
5' TET-CACTAGGGAACTCGCTG-BHQ1 3', Tm=52.7 (H5)
5' FAM-CGTTTCTCGAGGTCCTGCG-BHQ1 3', Tm=54.5 (H3)
制限プライマー:
5' AAGGATAGACCAGCTACCATGATTGCC 3', Tm=66.8 (H5)
5' CGTTGTATGACCAGAGATCTATTTTAGTGTCCT 3', Tm=67.9 (H3)
過剰プライマー:
5' ATAAGTGGAGTAAAATTGGAATCAATAGG 3', Tm=63.6 (H5)
5' CCATCAGATTGAAAAAGAATTCT 3', Tm=62.7 (H3)
【0067】
反応条件(ミリモル(mM)またはマイクロモル(μM)での濃度、マイクロリットル(μL)での容量):
10×PCRバッファー 1× 2.5μL
10mM dNTPs 250μM 0.625μL
50mM Mg++ 3mM 1.5μL
10μM制限プライマー 2× 0.125μL
100μM過剰プライマー 2× 0.250μL
10μMプローブ 500nM 2× 1.25μL
10μM C3 Primesafe 500nM 1.50μL
混合合計: 9.375μL
ZO−5(5ユニット),プラチナTAQ(1.25u): 1.0/0.25最終ユニット
水: 12.625μLまたは13.375μL
DNAアンプリコン(10,000コピー/μLで2) 2.0
合計容量: 25.0μL
【0068】
熱性条件:(アニーリングZO−5=58℃、Taq=62℃)
段階1:95℃/3:00分間
段階2:(95℃/10秒間:58℃または62℃、15秒間:72℃、30秒間)20回繰り返す
段階3:(95℃/10秒間−58℃または62℃/15秒間−72℃/30秒間−45℃/20秒間)30回繰り返す
段階4:融解35℃〜94℃
【0069】
実施例3(図7A〜I)
プライマー依存的およびプライマー非依存的LATE−PCR反応でのEXO−Nプローブ
本実施例では、5’ヘアピンEXO−RプローブはLATE−PCRサイクルの最初のサイクルの間にプライマー依存的様式でTAQポリメラーゼによって切断されず、制限プライマーが消耗された場合にプライマー非依存的様式で切断されないことを示す。さらに、使用されるLATE−PCRプライマーの対のTmに依存して、EXO−RプローブはBG標的の増幅を非効率にする。結果を図7A〜Iに示す。
【0070】
図7A〜Cは、高Tmプライマー対についての結果を示す:図7A 95℃でのリアルタイム分析、図7B 45℃でのリアルタイム分析、図7C 終末点融解曲線分析((73)標的ありのプローブ、(74)プローブのみ)。図7D〜Fは、中間Tmプライマー対についての結果を示す:図7D 95℃でのリアルタイム分析、図7E 45℃でのリアルタイム分析、図7F 終末点融解曲線分析((77)標的ありのプローブ、(78)プローブのみ)。図7G〜Iは、低Tmプライマー対についての結果を示す:図7G 95℃でのリアルタイム分析、図7H 45℃でのリアルタイム分析、図7I 終末点融解曲線分析((711)標的ありのプローブ、(712)プローブのみ)。
【0071】
図7A、7D、7Gは、プローブのシグナルが、あらゆるプライマー対を用いても50サイクルにわたって95℃で変化しないことを示す。この結果は、EXO−Rプローブがプライマー依存的メカニズムによってカットされなかったことを示し、LATE−PCRの間にEXO−Rプローブがプライマー非依存的切断によってカットされなかったことをさらに示す。図7B、7E、7Hは、3つのプライマー対についての72℃での伸長ステップの後の45℃でのプローブ蛍光発光のリアルタイムの結果を示す。高Tmプライマー対の場合には(図7B)、EXO−Rプローブは結合せず、増幅をブロックしない。中間Tmプライマー対の場合には(図7E)、EXO−Rプローブは、Ctの遅延およびシグナル強度の減少に見られるように増幅をブロックし始める。低Tmプライマー対の場合には(図7H)、EXO−Rプローブは、Ctの大幅な遅延およびシグナル強度の大幅な減少に見られるように増幅を著しく阻害する。図7C、7F、7Iは、プライマー実施例のそれぞれについてのEXO−R FAMプローブ35℃〜94℃の融解曲線を示す。7Cでは、最大量のPCR産物が示されるが、7Fは、EXO−Rプローブのブロッキング能力によりより少量が示され、(7I)では、産生されるPCR産物はほとんどない。融解曲線はLATE−PCR後に描くので、遊離FAMは検出されず、プローブがプライマー依存的または非依存的様式でカットされなかったことを示す。黒色の実線は、10,000コピーのBG開始コピーを用いた反応を示し、一方、黒色の点線はNTCを示す。
配列:
制限プライマー:
TGCGTTCTGACTGAACAGTGATCGAG, Tm=72℃ (高Tmプライマー対)
TTCTGACTGAACAGCTGATCGAG, Tm=64℃ (中間Tmプライマー対)
TGACTGAACAGCTGATCGAG, Tm=61℃ (低Tmプライマー対)
過剰プライマー:
CCCTCTTGAAATTCCCGAATGG, Tm=66℃ (高Tmプライマー対)
TCTTGAAATTCCCGAATGG, Tm=61℃ (中間Tmプライマー対)
TTGAAATTCCCGAATGG, Tm=58℃ (低Tmプライマー対)
EXO−Rプローブ04017:
5' FAM-CGCTGAAAGCGCGCCTGCAATTTACAGC-BHQ1, 3' Tm=60C
【0072】
反応条件:マイクロリットル(μL)
10× PCRバッファー 1× 2.5μL
10mM dNTPs 250μM 0.625μL
50mM Mg++ 3mM 1.5μL
10μM 制限プライマー 50nM 0.125μL
100μM 過剰プライマー 1000nM 0.250μL
10μM EXO-Nプローブ 100nM 0.250μL
10μM Primesafe9-3DD 500nM 1.250μL
1.25U プラチナTAQ 0.250μL
水 17.25μL
BG標的 104コピー/μL 1.0μL
合計 25μL
熱性条件:
段階1:5分間95℃
段階2:繰り返し50サイクル、10秒間95℃、15秒間61℃/58℃、20秒間72℃、および20秒間45℃。
段階3:融解35℃〜94℃
【0073】
実施例4(図8)
5’末端にFAMを使用するEXO−Sプローブ
実施例4についての図8は、LATE−PCR反応の完了の後の15分間の変動によるEXO−Sプローブシグナル増幅を示す。反応条件は、95℃で10秒、64℃で10秒、および72℃で20秒の45ラウンドとした。最終の試薬濃度は、25マイクロリットル(μL)の容量中、1×Invitrogen社製PCRバッファー、3mM Mg++、および1.25ユニットのInvitrogen社製Taqポリメラーゼ、200nMのdNTP、50ナノモル(nM)FT#2制限プライマー、1000nM FT#2過剰プライマー、および0.6×PrimeSafe(商標)#022(PrimeSafeは、Smiths Detection社から入手可能な試薬である、ならびに300nM FT MBseq4とした。
【0074】
FT#2制限プライマーの配列は、
5' GGAAGTGTAAGATTACAATGGCAGGCTCCAGA 3'
とした。
【0075】
FT#2過剰プライマーの配列は、
5' GTTGCCCAAGTTTTATCGTTCTTCTCA 3'
とした。
【0076】
FT MBseq4 EXO−Sプローブは、
5' FAM-CATGATACAAGCTTC-BHQ1 3'
とした。
【0077】
PCRの完了後に;45℃(10秒間)および65℃(20秒間)の間の45ラウンドの変動。蛍光発光を65℃で収集した。線(81)は、FT MBseq4プローブおよび増幅されたFT産物の両方を含有する複製物であり、一方、線(82)は鋳型なしコントロールサンプルである。
【0078】
実施例5(図9)
5’末端にBHQ1を使用するEXO−Rプローブ
本実施例では、(1)Exo−Sプローブの5’蛍光体を5’BHQ−1消光剤に交換することにより、TAQ DNAポリメラーゼによってプライマー非依存的様式でもはや切断されないExo−RプローブにExo−Sプローブを変換すること、および(2)LATE−PCRによって産出された一本鎖DNAに結合されたExo−Rプローブは、プライマー非依存的様式でTAQ DNAポリメラーゼによって切断されないことを示す。図xxは、本実施例の結果を示す。パネルAは、TAQ DNAポリメラーゼの非存在(線91)または存在(線92)下でのExo−Sプローブ/標的ハイブリッドの融解プロファイルを示す。この特定のExo−Sプローブは5’HEX蛍光体および3’BHQ−1消光剤からなる。線93は、鋳型なしコントロールサンプルのバックグラウンド蛍光発光シグナルに相当する。反応は、25μL容量中で実行し、1×PCRバッファー(Invitrogen社、カールスバード、CA)、3mM MgCl2、150nM合成標的(下記参照)、500nM Exo−Sプローブ(下記参照)、およびTAQ DNAポリメラーゼを用いたサンプルの場合には、1.25ユニット TAQ DNAポリメラーゼ(invitrogen社、カールスバード、CA)からなるものとした。鋳型なしコントロールサンプルについては、TAQ DNAポリメラーゼを含み、標的配列は10mM Tris−Cl pH 8.3と交換した。サンプルは10秒間95℃で、次いで20分間20℃でインキュベートし、Exo−Sプローブ/標的ハイブリッドの形成を可能にした。次いで、サンプル温度を、それぞれ90秒間の長さの1℃の間隔で20℃から95℃まで上げると共に、蛍光発光シグナルを収集した。TAQ DNAポリメラーゼなしのサンプル(線91)については、プローブ蛍光発光シグナルは、65℃の上で、プローブが標的から完全に融解される温度範囲で鋳型なしコントロールからのプローブ蛍光発光シグナルにマッチする。対照的に、TAQ DNAポリメラーゼを用いたサンプルについては、65℃の上のプローブ蛍光発光シグナルは、鋳型なしコントロールからの蛍光発光シグナルよりも高く、BHQ−1消光剤からのHEX蛍光体のプローブ切断および分離を示す。この結果は、合成標的に結合されたExo−Sプローブがプライマー非依存的様式でTAQ DNAポリメラーゼによる切断に感受性であることを実証する。
配列
Exo-Sプローブ: 5' HEX AGCATACGGTTCAGTT 3' BHQ1
合成標的:
5' AAGATCCTGAATAACTGAACCGTATGCTTGGCTAAAGTTC 3'
下線を引いた配列はプローブ標的部位に相当する。
【0079】
上記の同じプローブ配列を5’BHQ−1消光剤および3’HEX蛍光体を有するように修飾した。5’BHQ−1成分の存在は、プライマー非依存的様式でのTAQ DNAポリメラーゼによる切断に対して抵抗性であるExo−Rプローブにそのプローブを変える。パネルBは、TAQ DNAポリメラーゼの存在下でのそのようなExo−Rプローブ−標的ハイブリッドの融解プロファイルを示す(線94)。線95は、TAQ DNAポリメラーゼ存在下でのプローブのみ/鋳型なしコントロールサンプルのバックグラウンド蛍光発光シグナルに相当する。反応条件は、25μlの最終容量中、1×PCRバッファー(Invitrogen社、カールスバード、CA)、3mM MgCl2、150nM合成標的、500nM Exo−Rプローブ(下記参照)、および1.25ユニットTAQ DNAポリメラーゼ(Invitrogen社、カールスバード、CA)から成った。鋳型なしコントロールサンプルについては、標的配列は10nM Tris−Cl Ph 8.3と交換した。サンプルは20分間20℃でインキュベートし、Exo−Rプローブ/標的ハイブリッドの形成を可能にし、次いで、サンプル温度を、それぞれ90秒間の長さの1℃の間隔で20℃から95℃まで上げると共に、蛍光発光シグナルを収集した。Exo−Rプローブ/標的ハイブリッドを用いたサンプル(線94)については、蛍光発光シグナルは、65℃の上で、プローブが標的から完全に融解される温度範囲で鋳型なしコントロールからの蛍光発光シグナル(線95)にマッチする。この結果は、(1)合成標的に結合したExo−Rプローブは、プライマー非依存的様式のTAQ DNAポリメラーゼによる切断に対して抵抗性であること、および(2)5’HEX蛍光体を5’BHQ−1消光剤に交換することによりExo−SプローブをExo−Rプローブに変えることを実証する。
配列
Exo-Rプローブ: 5' BHQ-1 AGCATACGGTTCAGTT 3' HEX
【0080】
合成標的:(上記のものと同じ)
5' AAGATCCTGAATAACTGAACCGTATGCTTGGCTAAAGTTC 3'
下線を引いた配列はプローブ標的部位に相当する。
【0081】
パネルCは、LATE−PCRによって産出された一本鎖DNAに結合した場合、上記に記載されるExo−RプローブはまたTAQ DNAポリメラーゼによる切断に対して抵抗性であることを示す。上記に記載されるExo−Rプローブについての標的配列を含有する一本鎖DNA産物は、Exo−Rプローブの存在下でLATE−PCRを介して産出された。増幅の最後に、温度を20℃に低下させ、20分間インキュベートして、Exo−R/一本鎖アンプリコンハイブリッドの形成を可能にした。この図は、Exo−Rプローブ/一本鎖アンプリコンハイブリッドのPCR後の融解曲線分析を示す(線96)。線97は、プローブのみ/鋳型なしコントロールサンプルのバックグラウンド蛍光発光シグナルに相当する。合成標的とハイブリダイズしたExo−Rプローブと同様に(パネルB)、65℃の上でのExo−Rプローブ−アンプリコンハイブリッドの完全融解は、鋳型なしコントロールサンプルに等しいバックグラウンド蛍光発光シグナルをもたらす。この結果は、PCRによって産出された標的に結合されたExo−Rプローブがプライマー非依存的様式でのTAQ DNAポリメラーゼによる切断に対して抵抗性であることを実証する。LATE−PCR増幅についての反応条件は、25ulの最終容量中、1×PCRバッファー(Invitrogen社、カールスバード、CA)、3mM MgCl2、250nM dNTPミックス(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)、25nM 9−22DD PrimeSafe、500nM 9−C3 PrimeSafe、1.25ユニットTAQ DNAポリメラーゼ(Invitrogen社、カールスバード、CA)、50nM制限プライマー、1uM過剰プライマー、500nM Exo−Rプローブ、ヒトDNAの1000ゲノム等価物(Corriell Cell Repository社、キャムデン、NJ、カタログ番号;NA07348)とした。熱サイクルプロファイルは、3分間95℃、10秒間95℃、10秒間64℃、および20秒間72℃の70サイクル、次いで20分間20℃、ならびに1℃で各90秒間の長さの間隔での20℃から95℃までの蛍光発光取得を伴う融解ステップとした。
配列:
制限プライマー:
5' CCATTTCTTCCTCCTCCTCATAAGCATGGTACCTAT 3'
過剰プライマー:
5' CCCGCTGGTTCAATAATGTCTTTAA 3'
Exo-Rプローブ(上記と同じ)
5' BHQ-1 AGCATACGGTTCAGTT 3' HEX
【0082】
パネルA−合成標的上で試験したExo−Sプローブの実施例:このパネルは、TAQ DNAポリメラーゼの非存在(線91)または存在(線92)下でのExo−Sプローブ−標的ハイブリッドの融解曲線分析を示す。線93は、TAQ DNAポリメラーゼ存在下でのプローブのみ/鋳型なしコントロールサンプルのバックグラウンド蛍光発光シグナルに相当する。TAQ DNAポリメラーゼなしのサンプル(線91)については、65℃の上でのプローブ−標的ハイブリッドの完全融解は、鋳型なしコントロールに等しいバックグラウンド蛍光発光シグナルをもたらす。TAQ DNAポリメラーゼ(線91)ありのサンプルについては、65℃の上でのプローブ−標的ハイブリッドの完全な融解は、プローブ切断およびBHQ−I消光剤からのHEX蛍光体の分離により、非結合プローブよりも高い蛍光発光シグナルをもたらす。この結果は、合成物質に結合されたExo−Sプローブがプライマー非依存的様式のTAQ DNAポリメラーゼによる切断に感受性であることを実証する。蛍光発光シグナルは複製サンプルの比較を容易にするために95℃で標準化した。
【0083】
パネルB:合成標的上で試験したExo−Rプローブの実施例:このパネルは、TAQ DNAポリメラーゼの存在下でのExo−Rプローブ−標的ハイブリッドの融解曲線分析を示す(線94)。線95は、TAQ DNAポリメラーゼ存在下でのプローブのみ/鋳型なしコントロールサンプルのバックグラウンド蛍光発光シグナルに相当する。TAQ DNAポリメラーゼが存在するにもかかわらず、プローブ−標的ハイブリッドの融解は、非結合プローブと等しいバックグラウンド蛍光発光シグナルをもたらす。この結果は、合成標的に結合したExo−Rプローブがプライマー非依存的様式でのTAQ DNAポリメラーゼによる切断に対して抵抗性であることを実証する。蛍光発光シグナルは複製サンプルの比較を容易にするために95℃で標準化した。
【0084】
パネルC:PCR産物上で試験したExo−Rプローブの実施例:LATE−PCRによって産出された一本鎖DNAに結合した場合、上記に記載されるExo−RプローブはTAQ DNAポリメラーゼによる切断に対して抵抗性である。上記に記載されるExo−Rプローブについての標的配列を含有する一本鎖DNA産物は、Exo−Rプローブの存在下でLATE−PCRを介して産出された。増幅の最後に、温度を20℃に低下させ、20分間インキュベートして、Exo−R/アンプリコンハイブリッドの形成を可能にした。この図は、Exo−Rプローブ/アンプリコンハイブリッドのPCR後の融解曲線分析を示す(線95)。線96は、プローブのみ/標的なしサンプルのバックグラウンド蛍光発光シグナルに相当する。合成標的とハイブリダイズしたExo−Rプローブと同様に、Exo−Rプローブ−アンプリコンハイブリッドの融解は、鋳型なしコントロールと等しいバックグラウンド蛍光発光シグナルをもたらす。この結果は、PCRによって産出された標的に結合されたExo−Rプローブがプライマー非依存的様式でのTAQ DNAポリメラーゼによる切断に対して抵抗性であることを実証する。蛍光発光シグナルは複製サンプルの比較を容易にするために95℃で標準化した。
【0085】
実施例6(図10)
本実施例では、LATE−PCR増幅の間にROX EXO−Rプローブの分解が観察されない、ニューカッスルDNAアンプリコンの7500コピーを検出するためにEXO−R ROXプローブを使用するLATE−PCR反応を示す。
【0086】
図10Aは、7500コピーのニューカッスルウイルスアンプリコン(線101)のLATE−PCR増幅およびROX EXO−Rプローブ融解曲線(実線)対NTC(線102)の両方を示す。プローブが高温で非結合である場合、すべてのプローブ蛍光発光(線103)およびNTC蛍光発光(線104)が重なり合うので、プローブ分解は融解曲線の図10Bで観察されず、遊離ROX蛍光発光がないことを示す。
配列:
制限プライマー:
5' GCATCAAATTCCCCACTGAGCCTC 3', Tm: 67.9℃
過剰プライマー:
5' CCTGGTATTTATTCCTGTTTGAG 3', Tm: 63.2℃
プローブ配列:
5' ROX-ATTTTGCGATATGATACCC-BHQ2 3', Tm: 56℃
【0087】
ストック濃度: 最終濃度 25μLアッセイ中の容量(μL)
10×PCRバッファー 1× 2.5μL
10mM dNTPs 250μM 0.625μL
50mM Mg++ 3mM 1.5μL
10μM制限プライマー 0.125μL
100μM過剰プライマー 0.250μL
10μMプローブ 500nM 2× 1.25μL
10μM C3-12B Primesafe 300nM .750μL
混合合計: 8.25μL
Pt TAQ(1.25ユニット):
水: 14.5μL
DNAアンプリコン
(750、7,500コピー/μLで2) 2.0μL
合計容量: 25.0μL
熱サイクル条件:
段階1:95℃/3:00分間
段階2:(95℃/0:10秒間−58°/62℃/0:15秒間−72℃/0:30秒間)20回繰り返す
段階3:(95℃/0:10秒間−58°/62℃/0:15秒間−72℃/0:30秒間−45℃/0:20秒間−25℃/0:20秒間)20回繰り返す
段階4:25℃/2:00分間保持
段階5:融解25℃〜94℃
【0088】
実施例7(図11)
等温対変動条件下でのEXO−Sプローブの切断の速度
5分間の等温条件50℃または50℃から70℃の温度の間での変動下でのシグナル増幅の速度の比較。プローブおよび相補標的の濃度の両方は0.5μMとした;最終試薬濃度は、1×Invitrogen社製PCRバッファー、3mM Mg++、および1.25ユニットのInvitrogen社製Taqポリメラーゼとした。線(111)は変動条件下での複製物であり、一方、線(112)は等温条件下での複製物である。
E9Lプローブ:
FAM 5' TTTCTAAATCCCATCAGACC 3' BHQ1
12塩基対の3’および5’突出を有するE9L標的:
3' ATATCTCGTGATAAAGATTTAGGGTAGTCTGGTATATGACTCA 5'
【0089】
実施例8(図12)
その相補的標的の3’末端に対するEXO−Sプローブの距離は切断の速度に影響を与える。
【0090】
E9Lプローブは0.2uMで使用し、一方、両標的は0.05uMとした;最終試薬濃度は、1×Invitrogen社製PCRバッファー、3mM Mg++、および1.25ユニットのInvitrogen社製Taqポリメラーゼとした。線(121)は、プローブ−標的ハイブリッド複合体の端に対して12塩基対の5’および3’突出を有する複製物である。一方、線(122)は、プローブ−標的ハイブリッド複合体の5’末端に対して44塩基対の3’突出を有する複製物である。
E9Lプローブ:
FAM 5' TTTCTAAATCCCATCAGACC 3' BHQ1
12塩基対の3’および5’突出を有するE9L標的:
3' ATATCTCGTGATAAAGATTTAGGGTAGTCTGGTATATGACTCA 5'
44塩基対の3’突出を有するE9L標的:
3 'ACCTACACGTTGAGAATCGGCTTCCCATACTCATATCTCGT
GATAAAGATTTAGGGTAGTCTGG 5'
【0091】
実施例9(図13)
45℃および70℃の間の変動の間の、標的に対するプローブの5’末端での単一塩基対ミスマッチでのシグナル発生についての異なる速度(ケース1)。
【0092】
プローブの濃度は0.2μM rs498とし、0.05μMの標的とする;最終試薬濃度は、1×Invitrogen社製PCRバッファー、3mM Mg++、および1.25ユニットのInvitrogen社製Taqポリメラーゼとした。70℃でデータ収集した。線(131)は、Aに対するミスマッチAを含有する複製物であり、線(132)は、Tに対してAにマッチした複製物である。線(133)はプローブのみでの複製物である。
rs498プローブ: FAM 5' AGACATGTTCCCTACT 3' BHQ1.
末端塩基がミスマッチの標的、(ボールド)
CTTGAGTGGGAGGGTAGGGAACATGTCAGCCATAGGTTTC
完全にマッチした標的
CTTGAGTGGGAGGGTAGGGAACATGTCTGCCATAGGTTTC
【0093】
実施例10(図14)
45℃および70℃の間の変動の間の、標的に対するプローブの5’末端での単一塩基対ミスマッチでのシグナル増幅についての異なる速度(ケース2)。
【0094】
プローブの濃度は0.2μM rs498とし、0.05μMの標的とし、試薬は上記と同じとし、70℃でデータ収集した。線(141)は、Aに対するミスマッチCを含有する複製物であり、線(142)は、Tに対するミスマッチCを含有する複製物であり、線(143)は、Cに対するミスマッチCを含有する複製物であり、線(144)は、G塩基対に対してマッチしたCを含有する複製物である。線(145)はプローブのみでの複製物である。rs498プローブ配列は3’FAM CGACATGTTCCCTACT BHQ15’とする。プローブ配列の端での5’Tは、標的鎖内で、その相補的配列(下線)の3’末端に対してミスマッチ(ボールド)とした:
5' CTTGAGTGGGAGGGTAGGGAACATGTCAGCCATAGGTTTC 3',
5' CTTGAGTGGGAGGGTAGGGAACATGTCTGCCATAGGTTTC 3',
5' CTTGAGTGGGAGGGTAGGGAACATGTCCGCCATAGGTTTC 3',
または標的鎖内でその相補的配列(下線)の3’末端にマッチした(ボールドなし)。
5' CTTGAGTGGGAGGGTAGGGAACATGTCGGCCATAGGTTTC 3'.
【0095】
実施例11(図15)
30分間の等温条件(50℃)下でのシグナル増幅の速度。FTプローブは0.5μMとし、その相補標的は1.0μMとした;最終試薬濃度は、1×Invitrogen社製PCRバッファー、3mM Mg++、および1.25ユニットのInvitrogen社製Taqポリメラーゼとした。線(151)はFTプローブおよびその相補標的の複製物であり、一方、線(152)はFTプローブのみである。FTプローブに対する配列は5’CCATGATACAAGCTTCC3’とし、相補的配列は5’ACTTAGTAATTGGGAAGCTTGTATCATGGCACTTAGAACCT3’とする
【0096】
実施例12(図16)
変動条件(45℃〜70℃)下でのシグナル増幅の速度。FTプローブは0.5μMとし、その相補標的は0.5μMとした;最終試薬濃度は、1×Invitrogen社製PCRバッファー、3mM Mg++、および1.25ユニットのInvitrogen社製Taqポリメラーゼとした。線(161)はFTプローブおよびその相補標的の複製物であり、一方、線(162)はFTプローブのみである。FTプローブに対する配列は5’CCATGATACAAGCTTCC3’とし、相補配列は、5’ACTTAGTAATTGGGAAGCTTGTATCATGGCACTTAGAACCT3’とする
【0097】
実施例13(図17)
プローブの5’アームの長さを増加させると、プローブはEXO−SまたはEXO−Rプローブとなる。図17A〜Cは、Taqポリメラーゼの存在下または非存在下での50℃でのプローブおよびその相補的標的の30分間の等温インキュベーション後に行った融解分析を示す。Taqを含有し、Taqを含有していないものと同じ蛍光発光値に達するサンプルは、EXO−Rプローブを示す。蛍光発光値はすべて70℃に標準化する。図17Aについては、線(171)は、TaqポリメラーゼなしのFTプローブ(修飾なし)標的複合体の複製サンプルである。線(172)は、TaqポリメラーゼありのFTプローブおよび標的を含有する複製サンプルである。一方、線(173)はFTプローブのみである。図17Bについては、線(174)は、Taqポリメラーゼなしの標的の存在下でプローブの5’末端で標的に対する単一の非相補的塩基を有するFT(1bp)プローブの複製サンプルである。線(175)は、TaqポリメラーゼありのFT(1bp)プローブおよび標的を含有する複製サンプルである。一方、線(176)はFT(1bp)プローブのみである。図17Cについては、線(177)は、Taqポリメラーゼなしの標的の存在下でプローブの5’末端で標的に対する5つの非相補塩基を有するFT(5bp)プローブの複製サンプルである。線(178)は、TaqポリメラーゼありのFT(5bp)プローブおよび標的を含有する複製サンプルである。一方、線(179)はFT(5bp)プローブのみである。
【0098】
FTプローブ配列は5’CCATGATACAAGCTTCC3’とし;FT(1bp)プローブ配列は5’ACCATGATACAAGCTTCC3’とし;FT(5bp)プローブは5’TTTTTCCATGATACAAGCTTCC3’とした。FT標的は3’TCCAAGATTCACGGTACTATGTTCGAAGGGTTAATGATTCA5’とした。
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2006年7月17日に出願した米国仮出願第60/831223号に対する優先権およびその利益を主張するものである。
【0002】
本出願は、具体的には、PCRとして一般に知られているポリメラーゼ連鎖反応を利用する増幅を含む、核酸増幅反応および増幅産物の検出に関する。
【背景技術】
【0003】
核酸増幅の技術およびアッセイはよく知られている。DNAを増幅するためのいくつかの反応は、核酸配列ベース増幅(NASBA)等の等温のものである。他は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の熱性のサイクルを用いる。PCRを利用する増幅および増幅を用いるアッセイは、たとえば米国特許第4683202号、第4683195号、および第4965188号ならびに一般的に、PCR PROTOCOLS,a guide to Methods and Applications,INNISら編,Academic Press(San Diego,CA(USA)1990)に記載され、これらのそれぞれはこれによってその全体が参照によって組み込まれる。PCR増幅は、対称となるよう、すなわち、等モルまたは約等モルの濃度の1対のマッチするプライマー、すなわち、等しい融解温度(Tm)を有するフォワードプライマーおよびリバースプライマーを利用することによって、二本鎖産物(または「アンプリコン」)を作製するよう一般的に設計される。直接PCR増幅反応で一本鎖アンプリコンを主として作製するための、用途が限られている技術は、GyllenstenおよびErlich,「Generation of Single−Stranded DNA by the Polymerase Chain Reaction and Its Application to Direct Sequencing of the HLA−DQA Locus」,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)85:7652〜7656(1988);および米国特許第5066584号に記載される「非対称PCR」である。非対称PCRは、一方のプライマーが、他方のプライマーの濃度の1〜20パーセントの限られた量で存在するように5倍〜100倍に希釈される点で対称PCRと異なる非対称のPCR増幅方法である。結果として、増幅は、一方のプライマーのみが残存して一本鎖アンプリコンを産出する線形増幅が後に続く、両方のプライマーが伸長して二本鎖アンプリコンを産出する対数期からなる。
【0004】
より最近の非対称のPCR増幅方法は、「Linear−After−The−Exponential PCR」(LATE−PCR)であり、これは異なる濃度のプライマーを利用するが、プライマーは、対称PCRおよび非対称PCRでのように「マッチしない」。Sanchezら(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)101:1933〜1938、公開国際特許出願第03/054233号(2003年7月3日)、およびPierceら(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)102;8609〜8614、これらのすべてはそれらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。DNA増幅方法は、逆転写を最初に行って、cDNAを生成し、次いで、cDNAを、たとえば先のPCR法のうちの1つによって増幅することによってRNA標的に使用することができる。
【0005】
核酸増幅産物の検出および分析は様々な形で行うことができる。二本鎖アンプリコンは、SYBR GreenまたはSYBR Gold等の、二本鎖DNA中にインターカレートするまたはその他の形でそれと相互作用する際に蛍光を発する色素で監視することができる。たとえば、米国特許第5994056号を参照されたい。アンプリコンは、シークエンシング反応、たとえば従来のジデオキシシークエンシング法、パイロシークエンシング法、リアルタイムの合成によるシークエンシング法にかけることができる。ハイブリダイゼーションプローブは一般に検出に使用される。プローブは標識されてもよくまたは非標識であってもよい。ハイブリダイズしたプローブの検出は、サイズ等の物理的特徴によるもの、続いて起こるイベント、たとえば発色反応への関与によるもの、または放射性標識もしくは蛍光標識等の、プローブに適用された標識の検出によるものであってもよい。標識プローブの例は、プライマー伸長の間に切断される5’ヌクレアーゼプローブ(米国特許第5210015号、第5487972号、および第5538848号)、分子ビーコンプローブ(米国特許第5925517号、第6103476号、および第6365729号)、Yin−Yang二本鎖プローブ(Li, Q.ら(2002)Nucl.Acids Res.30:e5)、ならびにFRETプローブ対である。
【0006】
増幅の上記のPCRベースの方法はすべて、細菌源から回収された耐熱性DNAポリメラーゼの作用に依存する。それらの天然の形態では、これらの酵素は、いくつかのドメインおよびいくつかの活性:3’から5’へのポリメラーゼ、5’から3’へのエキソヌクレアーゼ、および3’から5’への編集機能(商業的に使用される酵素から除去される)を含む、を有する単一のポリペプチドである。Taq DNAポリメラーゼ(サーマス アクアティカス由来)は、ホットスタート形態を含めて最も広く使用されているが、Tfi DNAポリメラーゼ(Invitrogen社、製品#30342−011)は別のそのような酵素である。これらの耐熱性DNAポリメラーゼに加えて、DNA鎖の重合およびある5’末端のエキソヌクレアーゼ切断と共にDNAへのRNAの逆転写もまた実行するいくつかの耐熱性DNAポリメラーゼがある。これらの酵素は、ZO5ポリメラーゼおよびサーマス サーモフィラス(TTH)ポリメラーゼを含む。
【0007】
耐熱性DNAポリメラーゼで見つかった5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性はTaqポリメラーゼを使用して非常に研究されてきた。たとえば、このエキソヌクレアーゼ活性は、対称PCRに関連して使用されるいわゆる5’ヌクレアーゼアッセイのベースとなる。5’ヌクレアーゼアッセイは2つのプライマーおよび1つのプローブを利用する。プローブは、一方の末端ヌクレオチドに共有結合された蛍光体および他方の末端ヌクレオチドに共有結合された非蛍光消光剤を有する直鎖またはランダムコイルのDNAオリゴヌクレオチドである。プローブは、2つのプライマーのうちの一方が結合する、2つの標的鎖のうちの一方とハイブリダイズする。5’ヌクレアーゼプローブの融解温度はその上流プライマーの融解温度よりも高く、したがって、プローブは、伸長プライマーの下流に配置される。酵素の3’から5’へのポリメラーゼドメインがプライマーの3’末端を伸長するとき、5’から3’へのTaqポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性はプローブの5’末端に遭遇し、これを切断する。プローブがその5’末端に蛍光成分を有する場合、その成分およびそれが共有結合されたヌクレオチドは切断によってオリゴマーの残りから分離される。オリゴヌクレオチドの残部が標的配列にまだ結合している場合、それは、前進しているポリメラーゼの5’エキソヌクレアーゼによってさらに切断される。これはプローブのプライマー依存的切断である。
【0008】
プローブのプライマー依存的切断は次の特徴を有する:1)プライマーの3’末端は非ブロック(または非キャップ)3’−OH基を有していなければならない。したがって、3’−OHに対する−PO4もしくは他の化学成分の追加および/または3’OHの除去は切断を予防する。2)プライマーは、プローブの5’末端まで前進またはプローブの5’末端「の下に侵入」しなければならない。したがって、プライマーがプローブの5’末端まで前進することができないという条件において、下記に示されることを除いて、プライマー依存的反応からの1つまたは複数のヌクレオチド三リン酸の除外は切断を予防するであろう。このルールに対する例外は、さらなる伸長を伴わない、プローブの5’末端の下に既に侵入している、3’OHを有するプライマーが設計され得るということである。3)プライマーの3’末端がプローブの5’末端の下に既に侵入している場合、その3’末端は標的配列に相補的でなければならない。したがって、3’−OHが非キャップでも、プライマーの3’末端での2つ以上のヌクレオチドの非相補的3’伸長(アーム)は、プローブのプライマー依存的切断を予防する。Taqポリメラーゼの5’から3’へのドメインを除去すると、Stoffel断片として知られている酵素が産出される。Stoffel断片を利用するPCR増幅は5’ヌクレアーゼ(TAQMAN、Roche Molecular Systems社の商標)プローブを使用することができない。それらの全長にわたって2’o−メチルヌクレオチド等のある種の修飾されたヌクレオチドを使用する、分子ビーコンプローブ等の構築はプローブプライマー依存的切断を予防する。
【0009】
Lyamichevら(Biochemistry(2000)39:9523〜9532)は、プローブのプライマー依存的切断に特有の3つのオリゴヌクレオチドの構造的特色に基づいた侵入型シグナル増幅反応(invasive signal amplification reaction)を記載した。彼らは、「上昇した温度で反応を実施することによって、下流オリゴヌクレオチドは標的に循環的に結合および解離して、温度サイクルを伴うことなく標的分子当たりに多数の切断イベントをもたらす」ことを報告した。
【0010】
耐熱性DNAポリメラーゼの5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性はまたプローブ−標的ハイブリッドのプライマー非依存的切断を実行することでも知られている。この反応は、16塩基対のステム、4つのヌクレオチドのループ、およびP32−PO4で標識された5’末端を有するヘアピン型標的分子を使用して研究された。ヘアピンの2つのアームは長さが等しい(つまり、それは平滑断端にされている)または3’アームは5’末端を超えて伸長しているまたは5’末端は3’末端を超えて伸長している。このデザインの分子を使用して、Taqポリメラーゼのプライマー非依存的5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性は次の特徴を有することが示された:1)Lyamichev,V.ら(Science260,778〜783(1993))は、プライマーの非存在下で、Taqポリメラーゼの5’から3’へのヌクレアーゼは、基質鎖および標的鎖の最後の2つの塩基対の間でヘアピン基質の陥凹5’末端を切断したことを報告した。2)Lyamichevら(Proc.National Acad.Sci.96:6143〜6148(1999))は、完全なTaqポリメラーゼ(TaqNP)の5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性は、3’末端が6つのヌクレオチドだけ陥凹したヘアピン構造の5’末端を効率的に切断しないことを実証した。これらの著者らは、「効率の低い切断は、おそらく、鋳型−プライマー複合体に類似する二重鎖の端への、この酵素のポリメラーゼドメインの結合に起因する」と結論づけた。彼らは、標的とハイブリダイズしたプライマーではなく標的とハイブリダイズしたプローブに類似している基質を試験しなかった。
【0011】
ある種の増幅目的およびある種の検出目的については、当技術分野で知られている増幅方法および検出方法は適さないまたは制限を有する。たとえば、多重PCRアッセイは、異なる色の蛍光プローブによって5つまたは6つの標的を区別することができるにすぎない。また、大量の対立遺伝子を含むサンプル中でまれな対立遺伝子を検出するのは非常に難しい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態では、その対応する非修飾の対応物に比べて、耐熱性DNAポリメラーゼのプライマー非依存的5’エキソヌクレアーゼ活性に感受性にするように修飾された低温直鎖DNAハイブリダイゼーションプローブを使用するシグナル増幅を含む非対称のPCR法が提供される。
【0013】
他の実施形態では、耐熱性DNAポリメラーゼのプライマー非依存的5’エキソヌクレアーゼ活性に抵抗性にするように修飾された低温直鎖DNAハイブリダイゼーションプローブのハイブリダイゼーションの検出を含む非対称のPCR法が提供される。
【0014】
さらなる他の実施形態では、ある標的または対立遺伝子の増幅が選択的にブロックされるPCR法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】異なる種類のプローブを示す図である。
【図2】図1に示されるプローブに対する切断の多種多様のメカニズムを示す図である。
【図3】プライマーおよび標的に対する低温プローブについての最適なTm関係を示す図である。
【図4】多種多様のプローブ構造を切断するZO5の性能を示す図である。
【図5】図5A:ZO5ポリメラーゼ、TET EXO−Rプローブで検出されたH5およびFAM EXO−Rプローブで検出されたH3の10,000コピーの増幅を示す図である。 図5B:図5Aについての融解曲線を示す図である。 図5C:プラチナTaqポリメラーゼ、TET EXO−Rプローブで検出されたH5およびFAM EXO−Rプローブで検出されたH3の10,000コピーの増幅を示す図である。 図5D:図5Bについての融解曲線を示す図である。
【図6】実施例3および図7で利用されるEXO−Rプローブおよび多種多様のプライマー対の関係を示す図である。
【図7】図7A:高Tmプライマー対を用いたリアルタイムLATE−PCRアッセイでのEXO−Rオリゴヌクレオチドの下流のBGプローブの95℃分析を示す図である。 図7B:高Tmプライマー対を用いたリアルタイムLATE−PCRアッセイでのEXO−Rオリゴヌクレオチドの下流のBGプローブの45℃分析を示す図である。 図7C:高Tmプライマー対を用いたEXO−RオリゴヌクレオチドLATE−PCRアッセイの下流のBGプローブの終末点融解曲線分析を示す図である。 図7D:中間Tmプライマー対を用いたリアルタイムLATE−PCRアッセイでのEXO−Rオリゴヌクレオチドの下流のBGプローブの95℃分析を示す図である。 図7E:中間Tmプライマー対を用いたリアルタイムLATE−PCRアッセイでのEXO−Rオリゴヌクレオチドの下流のBGプローブの45℃分析を示す図である。 図7F:中間Tmプライマー対を用いたEXO−RオリゴヌクレオチドLATE−PCRアッセイの下流のBGプローブの終末点融解曲線分析を示す図である。 図7G:低Tmプライマー対を用いたリアルタイムLATE−PCRアッセイでのEXO−Rオリゴヌクレオチドの下流のBGプローブの95℃分析を示す図である。 図7H:低Tmプライマー対を用いたリアルタイムLATE−PCRアッセイでのEXO−Rオリゴヌクレオチドの下流のBGプローブの45℃分析を示す図である。 図7I:低Tmプライマー対を用いたEXO−RオリゴヌクレオチドLATE−PCRアッセイの下流のBGプローブの終末点融解曲線分析を示す図である。
【図8】5’末端上にFAMを使用するEXO−Sプローブを示す図である。
【図9】5’末端上にBHQ1を使用するEXO−Rプローブを示す図である。
【図10】ニューカッスルDNAアンプリコンの7500コピーを検出するためのEXO−R ROXプローブを示す図である。
【図11】等温条件対変動条件下でのEXO−Sプローブの切断の速度を示す図である。
【図12】その相補的標的の3’末端に対するEXO−Sプローブの距離は切断の速度に影響を与えることを示す図である。
【図13】45℃および70℃の間の変動の間の、標的に対する、プローブの5’末端での単一塩基対ミスマッチでのシグナル生成の異なる速度を示す図である(ケース1)。
【図14】45℃および70℃の間の変動の間の、標的に対する、プローブの5’末端での単一塩基対ミスマッチでのシグナル増幅の異なる速度を示す図である(ケース2)。
【図15】30分間の等温条件(50℃)下でのシグナル増幅の速度を示す図である。
【図16】変動条件(45℃〜70℃)下でのシグナル増幅の速度を示す図である。
【図17】プローブの5’アームの長さを増加させると、プローブはEXO−SプローブまたはEXO−Rプローブとなることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.定義
本明細書に使用されるように、「サンプル」は、たとえば生物学的サンプルまたは環境サンプル等の試験されることとなる任意の物質とすることができる。生物学的サンプルは任意の生物から得ることができる。一実施形態では、サンプルは、ヒト、コンパニオンアニマル、または家畜等の哺乳動物から得ることができる。サンプルはまた、たとえばトリ等の他の動物から得ることができる。一実施形態では、動物からのサンプルは、鼻咽頭吸引液、血液、唾液、糞便、尿、または任意の他の体液を含む。他の実施形態では、環境サンプルは、たとえば土壌、水、人工建造物の環境および表面等の任意の環境から得ることができる。
【0017】
本明細書に使用されるように、「増幅標的配列」、「標的配列」、および「核酸標的配列」は、増幅反応、たとえばPCR増幅技術によるコピーのための鋳型を提供するDNA配列を区別なく意味する。増幅標的配列は一本鎖とすることができるまたは二本鎖とすることができる。出発物質がRNA、たとえばメッセンジャーRNAである場合、DNA増幅標的配列は、相補的DNA(cDNA)を生成するための、RNAの逆転写によって生成され、増幅標的配列はcDNA分子となる。したがって、RNAについてのPCRアッセイでは、ハイブリダイゼーションプローブは、cDNA増幅標的配列のコピーとハイブリダイズし、それによってそれを反映し、逆転写によって、増幅標的配列を含むcDNA分子を産生したRNAの存在を間接的に表す。増幅標的配列は、その増幅に使用される1対のプライマーによって、典型的に挟まれる。伸長産物または「アンプリコン」は、二本鎖または一本鎖かにかかわらず、プライマー対によって境界を定められる。増幅標的配列は単一の核酸配列とすることができる。ある場合では、しかしながら、増幅標的配列は対立遺伝子の変異または突然変異を含んでよく、したがって、単一の配列ではなくてよい。
【0018】
本明細書に使用されるように、「Tm」は、対象の核酸物質の半分が二本鎖形態で存在し、残部が単鎖である温度を指す。歴史的に、プライマー、プローブ、またはアンプリコンのTmは、標準的なプライマーの状態および塩濃度での、両方ともよく知られている「%GC」法(Wetmar,J.G.(1991)「DNA Probes:Applications of the Principles of Nucleic Acid Hybridization」,Crit.Rev.Biochem.Mol.Biol.26:227〜259)または「2(A+T)+4(G+C)」法を使用する算出値であった。LATE−PCRは、しかしながら、「最近傍」法を使用して(Santa Lucia,J.(1998)PNAS(USA)95:1460〜1465)、式Tm=ΔH/(ΔS+R ln(C/2))+12.5 log[M]−273.15を使用して、Tmを算出することによって(Le Novere,N.(2001),「MELTING,Computing the Melting Temperature of Nucleic Acid Duplex」,Bioinformatics17:1226〜7)Tmを決定する際に実際のプライマーおよびプローブの開始濃度を考慮に入れる(Sanchezら(2004)PNAS(USA)101:1933〜1938,およびPierceら(2005)PNAS(USA)102:8609〜8614)。ΔHはエンタルピーであり、ΔSはエントロピーであり(ΔHおよびΔSの算出の両方は、Allawi,H.T.およびSanta Lucia,J.(1997)Biochem.36:10581〜10594に基づく)、Cはオリゴヌクレオチドの濃度であり、Rは一般気体定数であり、[M]は一価カチオンのモル濃度である(実施例では0.07)。この式によれば、オリゴヌクレオチドのヌクレオチド塩基組成(用語ΔHおよびΔSに含有される)、一価塩濃度、ならびにオリゴヌクレオチドの濃度(用語Cに含有される)はTmに影響を及ぼす。しかしながら、PCRバッファー中に使用されるマグネシウムまたは他の二価カチオンの濃度はこの式に含まれておらず、二価カチオンはTmを増加させることで知られている。本発明者らは典型的に3mMマグネシウムを使用する。これはプローブTmを約5℃上げる。したがって、所望されるTmが50℃であり、3mMマグネシウムが使用されることになる場合、マグネシウムなしでのTmについての上記の最近傍式は、Tmを45度とするべきであり、次いで、必要に応じ、プローブの長さまたは組成に対する微量の調整と共に経験的に確認することができる。本発明者は、DNA Software社(アナーバー、MI)の許諾ソフトウェア、Visual OMP(バージョン6.1.9)ソフトウェアが最近傍式に対するそのような調整を含み、本発明者が経験的に決定したものに近い結果が得られることを見出した。プライマーまたはプローブのTmに対する本明細書の言及は、他に述べられない限り、マグネシウム濃度を考慮に入れる値を意味する。
【0019】
本明細書に使用されるように、「対立遺伝子識別力のある」および「配列特異的」の両方は、完全に相補的な標的配列と選択的にハイブリダイズするおよび1つまたは少数のミスマッチの塩基を有する、密接に関連する配列を強く拒絶する、プローブ(ある場合ではプライマー)の能力を指す。本明細書に使用されるように、「ミスマッチ認容性」は、完全に相補的な配列および1つまたは複数のミスマッチの塩基を有する部分的に相補的な配列の両方とハイブリダイズするプローブ(ある場合ではプライマー)の能力を指す。
【0020】
本明細書に使用されるように、「単一管」は、試験管、反応ウェル、マイクロフルイディクスデバイス中のチャンバー、スライドガラス、または反応混合物を保持することができる他の装置等のある容器から別の容器にサンプルを移動させずに行うことができる一連の少なくとも2つの操作、たとえばサンプルの調製、増幅、またはシークエンシングを含む方法を指す。
【0021】
本明細書に使用されるように、「エキソヌクレアーゼ活性」は、PCR増幅に使用される、Taq DNAポリメラーゼを含む耐熱性ポリメラーゼの酵素特性のうちの1つを指す。エキソヌクレアーゼ活性は、3’から5’への消化と別個の5’から3’への消化を指し、これは酵素の校正機能と見なされる。エキソヌクレアーゼ活性は、DNA糖リン酸主鎖の切断の正確なモードまたは場所、特に、切断が、5’末端に付けられた成分および末端5’ヌクレオチドの間にまたは末端ヌクレオチドおよび最後から2番目の5’ヌクレオチドもしくは3’末端の下流の1つまたは複数のヌクレオチドの間にあるかどうかを明示することを意味しない。他に述べられない限り、その使用が本明細書に記載されるポリメラーゼはすべて、エキソヌクレアーゼドメインを単独でまたは上流プライマーの3’末端に対する塩基対追加を実行するポリメラーゼドメインと共に含むことが理解される。
【0022】
本明細書に使用されるように、「プライマー依存的」切断は、ポリメラーゼがプライマーのその伸長の間に出会った、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの切断を指す。伸長鎖上の3’末端−OH基の存在がプライマー依存的切断に必要とされることが知られている。本明細書に使用されるように、「プライマー依存的」切断はまた、上流のオリゴヌクレオチドの3’OHが、dNTPの非存在下でさえ、下流のオリゴヌクレオチド、たとえばハイブリダイズしたプローブの5’末端に取って代わる場合に生じる切断を含む。たとえばリン酸基の化学的追加(キャッピング)および末端2’3’ジデオキシヌクレオチドの存在は、下流のオリゴヌクレオチド中のある種の非天然ヌクレオチドおよび非天然ヌクレオチド間連結のように、プライマー依存的切断を予防することで知られている方法である。
【0023】
本明細書に使用されるように、「プライマー非依存的」切断は、プライマー依存的切断ではない、ポリメラーゼの5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性による、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの5’から3’への切断を指す。この場合では、ポリメラーゼは、オリゴヌクレオチド/標的ハイブリッドに直接結合し、結合したオリゴヌクレオチドの5’末端を切断する。プライマーもプライマー伸長も含まれない。
【0024】
本明細書に使用されるように、「LATE−PCR」は、蛍光検出可能な二本鎖アンプリコンを産生するために、およそ十分なPCRサイクルで消耗されて、それ自体は200nMまでの低濃度で利用される他方のプライマー(「制限プライマー」)と比較して少なくとも5倍過剰の、あるオリゴヌクレオチドプライマー(「過剰プライマー」)を利用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロセスを用いる非対称のDNA増幅を意味し、増幅の開始時の制限プライマーの濃度調整した融解温度、Tm[0]Lは、増幅の開始時の過剰プライマーの濃度調整した融解温度、Tm[0]Xよりも5℃を超えて下回ることはなく、好ましくは少なくとも同じくらい高く、より好ましくは3〜10℃高く、熱性のサイクルは制限プライマーの消耗の後に複数回のサイクルの間、継続されて、一本鎖産物、すなわち、「過剰プライマー鎖」と時に称される、過剰プライマーの伸長産物を産生する。
【0025】
本明細書に使用されるように、用語「低Tmプローブ」は、その標的に対するハイブリダイゼーション後にシグナルを出す標識ハイブリダイゼーションプローブを意味し、これは、LATE−PCRでは過剰プライマーの伸長によって産出される過剰プライマー鎖であり、LATE−PCRでは制限プライマーである、過剰プライマー鎖とハイブリダイズし、それに沿って伸長する、プライマーのTm[0]よりも少なくとも5℃、より好ましくは少なくとも10℃下回るTm[0]Pを有する。本明細書に使用されるように、低Tmプローブは直鎖プローブである。
【0026】
B.詳細な説明
DNA増幅反応での特定の目的のために修飾される標識プローブおよび非標識オリゴヌクレオチドならびに増幅の間にまたは増幅後検出の間に特定の効果を達成するためのそれらの使用が記載される。DNA増幅反応、たとえばPCR増幅はDNAポリメラーゼによるプライマー伸長を含む。本明細書に記載されるように、プローブ−標的構造は、ハイブリダイズしたプローブが5’方向にあるよりも3’方向に長い鋳型鎖を含む。したがって、プローブは、可変数のヌクレオチドだけ標的鎖の一本鎖3’末端から陥凹しており、プローブは、標的鎖に完全にマッチし得るまたは可変長の伸長5’アームを有する5’末端を有する。これらの構造的特色を有する単分子ヘアピン分子は、本明細書に記載されるように、構築されたこれらのものをまねるために使用することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼは、標的非依存的プローブ切断を呈しないまたは組成物が耐熱性ポリメラーゼに標的非依存的プローブ切断を呈するようにさせる反応混合物中で使用される耐熱性ポリメラーゼでなければならない。「標的非依存的プローブ切断を呈する」とは、オリゴヌクレオチドが、3〜5ヌクレオチド長のループおよび2〜5ヌクレオチド長のステムを有する末端ヘアピンを含有する場合に、また10分間、酵素の最適な伸長温度を20℃以下下回る温度で上述の酵素とインキュベートされた場合に、標的配列の非存在下で上述のオリゴヌクレオチドを切断する酵素の能力を意味する。Mn++を有するビシンバッファー中のZO5ポリメラーゼは標的非依存的プローブ切断を呈する酵素の例である。対照的に、Mg++を含有し、ナトリウムTrisで緩衝した反応混合物中のTaq DNAポリメラーゼは、標的非依存的プローブ切断を呈しない酵素の例である。本明細書に記載される方法は、標的非依存的プローブ切断を呈しないポリメラーゼの使用を含むことを理解されたい。酵素が標的非依存的プローブ切断を呈するかどうかは、プローブの5’末端に5’ヌクレオチドが伸長したプローブの使用により確立することができ、上述の伸長により、70℃よりも高い温度での自己アニーリングによって2〜5ヌクレオチド長のステムを有するヘアピン構造を形成する。標的非依存的プローブ切断を呈しない酵素は、リアルタイムPCRまたは終末点等温条件もしくは終末点変動温度条件でこれらのヘアピンプローブを切断することができない。
【0028】
本明細書に記載されるプローブは、標的アンプリコン鎖とハイブリダイズし、プライマーの中間に位置し、プローブが含まれる増幅反応の平均プライマーアニーリング温度を少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃下回るTm[0]を有する低温プローブである、構造上修飾された直鎖またはランダムコイルのDNAハイブリダイゼーションプローブである。増幅反応がたとえば3段階温度PCR反応である場合、増幅の後の最後にまたはLATE−PCR増幅の線形期の間等のいくつかの増幅サイクルの間に低温ステップが加えられなければ、プローブはハイブリダイズしない。切断されていないプローブは、好ましくはDABCYL、Black Hole消光剤等の非蛍光消光剤またはQSY 7もしくは9等の別の消光剤によって、プローブが溶液中で遊離している場合に消光される蛍光体を有する2重標識蛍光プローブである。Black Hole消光剤は、Biosearch Technologies社、ノバート、CA(米国)の知的所有権付き消光剤である。QSY消光剤はInvitrogen社、カールスバード、CA(米国)から入手可能である。切断されているプローブもまた2重標識蛍光プローブであってもよいが、その必要はない。切断されたプローブについては、必要とされることは、いずれにせよ、断片上の標識または断片のいくつかの特性、たとえば重量もしくはサイズまたはたとえば色の形成を引き起こす等の検出可能な働きを行うための能力を用いて、切断されたプローブ断片を検出することである。この最後の場合では、切断の検出は間接的である。
【0029】
本明細書に記載されるブロッキングオリゴヌクレオチドは、プライマーに対して下流(3’)にハイブリダイズし、非標識である修飾された直鎖オリゴヌクレオチドである。
【0030】
ある種類の修飾されたハイブリダイゼーションプローブは、増幅に先立ってPCR反応混合物に添加した場合に、等温プライマー非依存的5’エキソヌクレアーゼ切断を増強するように構造が修飾されたプローブである。そのようなプローブを「エキソ感受性」、または略してEXO−Sプローブと称する。それは、プローブが使用される増幅反応で平均プライマーアニーリング温度を少なくとも5、好ましくは少なくとも10℃下回るTmを有する直鎖またはランダムコイルのDNAプローブである。等温プライマー非依存的切断条件にかけられた場合、それは、対応する非修飾のプローブの少なくとも2倍速く、好ましくは5倍速く、より好ましくは少なくとも10倍速く切断される。
【0031】
一実施形態では、プローブをエキソ感受性にする修飾は、少なくとも3つの連続した、好ましくは3つを超える、最も好ましくは6つの連続したメチレン(CH2)基からなる鎖による、少なくとも1つの標識成分、たとえばプローブの5’末端に対する蛍光体または非蛍光消光剤の共有結合を含む。前記メチレン鎖の前に、5’ヌクレオチドに連結された端で、カルボキシル基、アミン、アミド、または別のかさ高い化学基を置くことはできないが、連続したメチレン基の前記鎖の前に、エーテル基(−O−)を置く(5’ヌクレオチドに連結された端で)ことができることが予想される。他の実施形態では、プローブの5’末端での修飾は、ハイブリダイズしたプローブのすぐ「上流」(3’)の標的のヌクレオチドに対して相補的ではない追加のヌクレオチドからなる。この修飾はまたプローブの5’末端での1塩基「アーム」として記載することもできる。EXO−Sプローブは、5’アームを有していなくてもよい、すなわち、標的に対して相補的ではないヌクレオチドはないまたは多くても、5ヌクレオチド未満、好ましくは1ヌクレオチドだけの短いアームを有していてもよい。EXO−Sプローブは、その標的鎖の3’末端から6ヌクレオチド、好ましくは3’末端から10〜30ヌクレオチドを超えて配置されるハイブリッドを形成するように設計されるべきである。端から40ヌクレオチドを超えるハイブリッドは、プローブの標的非依存的等温切断を遅くするので、それほど好ましくない。当業者は十分に理解するであろうが、その特異的標的の3’末端に対して特定のEXO−Sプローブを位置づけるための最適な場所は、プローブが用いられる増幅反応の正確な条件および組成物に依存する。最も重要な因子は、EXO−Sプローブの上流の制限プライマーの長さおよびプローブされることとなる標的配列の塩基組成である。すべての場合で、しかしながら、EXO−Sプローブの5’末端は、制限プライマーが消耗される前に制限プライマーの3’末端がハイブリダイズする標的鎖上の場所と重複するべきでない。言い換えれば、制限プライマーの3’末端に相補的な標的鎖上の塩基は、プローブの5’末端またはEXO−Sプローブの5’末端上のアームの5’末端の少なくとも2塩基上流とするべきである。
【0032】
本明細書に記載される方法は、エキソ感受性プローブの存在下で少なくとも1つのDNA標的配列を増幅することを含み、増幅プロセスは、伸長によりプローブに相補的なアンプリコン鎖を産出するプライマーが消耗されるまで、プローブがハイブリダイズするであろう低温ステップを含まない、すなわち、プローブのTmを下回る温度でのインキュベーションを含まない。PCR増幅で使用される場合、EXO−Sプローブは、低温検出ステップを有しないサイクルの間にアンプリコンとハイブリダイズしない。制限プライマーの消耗の後の増幅サイクル中に、すなわち、プローブが相補的な一本鎖過剰プライマーアンプリコン鎖を産出するサイクル中に低温検出ステップを含む非対称のPCR法により、プローブはハイブリダイズし、プライマー非依存的様式で切断され、それによって、プローブによって産出されたシグナルを増幅する。増幅後低温検出ステップのみが含まる場合、蛍光体および消光剤、好ましくは非蛍光消光剤を含有する2重蛍光標識プローブからのシグナルはまた、30分以上生じ続けることがあり、繰り返しのハイブリダイゼーションおよび切断が、リアルタイム検出と同様にそのような終末点検出で起こることを示唆する。このため、終末点での読み取りは、所定の時間、好ましくは少なくとも1分後に、より好ましくは少なくとも2分後になされるべきである。たとえば、プローブが蛍光体および消光剤で標識される場合、繰り返しのハイブリダイゼーションおよび切断は、非消光断片の産生の増加および蛍光発光シグナルの増幅をもたらす。そのような方法は、プローブ切断の均一な検出を含む。
【0033】
本明細書に記載される別の種類のプローブは、増幅に先立ってPCR反応物に添加された場合に、プライマー非依存的5’ヌクレアーゼ切断に抵抗するように構造が修飾されたプローブである。そのようなプローブを「エキソ抵抗性」プローブまたは略してEXO−Rプローブと称する。エキソ抵抗性プローブは低温プローブである。エキソ抵抗性プローブはプライマー依存的エキソヌクレアーゼ切断に抵抗性である必要はない。しかしながら、ある実施形態は、プライマー非依存的5’エキソヌクレアーゼ切断およびプライマー依存的5’エキソヌクレアーゼ切断の両方に抵抗性である。エキソ抵抗性プローブは、蛍光体および消光剤で標識され、相補的な標的鎖とハイブリダイズされ、等温プライマー非依存的5’ヌクレアーゼ切断条件にかけられた場合に、蛍光発光での測定可能な発生はなく、25分間の期間にわたって10%以下であるといった程度までプライマー非依存的切断に抵抗する。いくつかの実施形態は、下記に記載されるように、プローブ−標的Tmのあたりの急速な熱変動にかけられた場合でも抵抗性のままであるが、他の実施形態は、そのような変動によって切断されて、増幅されたシグナルを産出することができる。エキソ抵抗性プローブは、その非修飾構造が標識されたまたは非標識であるDNAオリゴヌクレオチドである、直鎖またはランダムコイルのハイブリダイゼーションプローブである。プローブをエキソ抵抗性にするための1つの修飾は、標識成分、たとえば蛍光体または非蛍光消光剤を5’末端ヌクレオチドにメチレン鎖以外のものによって連結することである。プローブをエキソ抵抗性にするための別の修飾は、プローブの標的とハイブリダイズしない2〜7つのヌクレオチドを含む5’末端アームを追加することである。プローブをエキソ抵抗性にするための別の修飾は、プローブの5’末端にヌクレオチド伸長を追加することであり、上述の伸長により、70℃よりも高い温度での自己アニーリングによって2〜5ヌクレオチド長のステムを有するヘアピン構造を形成する。これらの5’ヘアピンもまた変動温度誘発性の切断に抵抗する。
【0034】
本明細書に記載される方法は、非対称のPCR増幅方法、好ましくはエキソ抵抗性プローブの存在下でのLATE−PCR法によって少なくとも1つのDNA標的配列を増幅することを含み、増幅プロセスは、プローブがハイブリダイズする低温ステップを制限プライマーの消耗の後まで含まない。PCR増幅で使用される場合、EXO−Rプローブは、低温検出ステップを有しないサイクルの間にアンプリコンとハイブリダイズしない。増幅の後にまたは非対称の方法については制限プライマーの消耗の後に低温検出ステップを含むPCR法により、プローブはハイブリダイズする。検出が等温である、すなわち、プローブのTmのあたりの急速な温度変動がない場合では、プローブは切断されないであろう、また、そのシグナルはハイブリダイゼーションのみから起きる。そのような実施形態では、プローブは、ハイブリダイゼーション後に検出可能なものを発しなければならない。検出が終末点であり、プローブのTmのあたりの急速な熱性の変動、たとえば、Tmの5℃上〜5℃下または好ましくは10℃上〜10℃下を含み、各変動サイクルは30秒間以下である場合、ある実施形態は、上記に述べられるようにプライマー非依存的様式で切断されるが、他の実施形態は切断されない。プライマー非依存的様式での急速な変動による切断は、プローブシグナルが産出される速度を増加させる。これらの実施形態では、エキソ感受性プローブについて上記に記載されるように、切断はシグナルを直接または間接的に産出する。任意の所与の時点でのシグナルの大きさは、切断の速度および反応中のプローブの全体量に依存する。たとえば、プローブが蛍光体および消光剤で標識される場合、繰り返しの変動は、すべての利用可能なプローブが切断されるまで、非消光蛍光体含有断片の産生の増加および蛍光発光シグナルの増幅をもたらす。そのような方法は、プローブハイブリダイゼーションまたはプローブ切断の均一な検出を含む。
【0035】
相補鎖とハイブリダイズし、プライマー依存的5’ヌクレアーゼ切断およびプライマー非依存的5’ヌクレアーゼ切断の両方に抵抗性のハイブリッドを形成する、構造上修飾されたオリゴヌクレオチドもまた本明細書に記載される。時に、そのようなオリゴヌクレオチドをEXO−Nオリゴヌクレオチドと称する。EXO−Nは、EXO−Nが使用されるPCR増幅反応、対称PCR増幅または非対称のPCR増幅のいずれかのプライマー伸長ステップの間に、プライマーのうちの一方から下流の標的鎖とハイブリダイズするのに十分に高いTmを有する直鎖オリゴヌクレオチドである。EXO−Nはプライマー伸長の間にポリメラーゼによって切断されないので、EXO−Nは、ハイブリダイズした鎖の伸長を阻害し、それによってその鎖の増幅を非効率にする。オリゴヌクレオチドをEXO−Nオリゴヌクレオチドにする直鎖オリゴヌクレオチドの1つの修飾は、オリゴヌクレオチドの標的に相補的ではない直鎖オリゴヌクレオチドの5’末端にオリゴヌクレオチド伸長を追加することであり、そのような伸長は、2〜5ヌクレオチド長のステムを有し、少なくとも70℃のTmを有するヘアピン構造を形成する。
【0036】
本明細書に記載される方法は、本来なら使用されるプライマー対によって増幅されるはずである、考えられる1つの標的対立遺伝子に特異的なEXO−Nオリゴヌクレオチドの存在下で対称または非対称のPCR増幅反応を行い、それによって、EXO−Nオリゴヌクレオチドがプライマー伸長の間にハイブリダイズしない1つまたは複数の代替の対立遺伝子の変異体配列の増幅を促進するステップを含む。本明細書に記載される方法はまた、所望される時点で、すなわち2回以上の熱サイクル後に、一方の鎖、プラス鎖またはマイナス鎖の増幅を非効率にし、それによって、続いて起こるサイクルで他方の鎖の増幅を促進するために、対称PCR増幅反応にEXO−Nオリゴヌクレオチドを挿入するステップを含む。
【0037】
一方のプライマー、過剰プライマーは、少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1で、他方のプライマー、制限プライマーと比較して実質的に過剰に存在する、DNA増幅標的配列(cDNA配列を含む)についてのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によるDNA増幅、特に、非対称PCRおよびLATE−PCR等の非対称のPCR法が記載される。好ましい増幅方法は、LATE−PCRであるが、他の方法を使用することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、その方法は、修飾された低温DNAハイブリダイゼーションプローブを利用する。DNAハイブリダイゼーションプローブは、それらの標的に相補的な非伸長性のDNAオリゴヌクレオチドであり、標的は、この場合では、PCR増幅反応によって産生されたアンプリコンである、過剰プライマーの伸長産物(過剰プライマー鎖)中のDNA配列である。非修飾のプローブは、プローブの標的相補的配列であるDNAのストレッチであるまたはそれを含有する。プローブの標的相補的配列は、反応中で産生され得る過剰プライマー鎖に完全に相補的であってもよく、反応中で産生され得る少なくとも1つの過剰プライマー鎖に不完全に相補的であってもよく、またはその両方であってもよい。プローブは、完全に相補的な標的に対して、不完全に相補的な標的に対するよりも高いTm(LATE−PCRの場合、Tm[0])を有する。たとえば、プローブが55℃の、完全に相補的な標的に対してTmを有するように設計される場合、1つまたは複数のミスマッチ塩基、ヌクレオチド欠失またはヌクレオチド挿入を含有する標的に対するそのTmは、時に10℃以上低くなる。これは、プローブが、形成された1つまたは複数のハイブリッドのTmによって標的を区別することを可能にする。すべての実施形態で、プローブは低温プローブである。
【0039】
プローブを利用する非対称のPCR法は、開始増幅反応混合物中にプローブを含み、プライマー、dNTP、バッファー、耐熱性DNAポリメラーゼ、および核酸出発物質がRNAである場合、逆転写酵素もまた含む。増幅の間にまたはその最後に切断されないあらゆるプローブは、ハイブリダイゼーション後に検出可能な蛍光シグナルを発する2重蛍光標識プローブであろう。適した標識手法が当技術分野で知られている。好ましい標識は、一方の末端に共有結合された蛍光体および他方の末端に共有結合された非蛍光消光剤であるが、他の標識法を使用することができる。入手可能なDABCYL、DABMI、Black Hole消光剤、QSY消光剤、Deep Dark消光剤、および他を含む多数の消光剤が当技術分野で知られている。検出の一部として切断されることとなるあらゆるプローブもまた同様に標識されてもよいが、その必要はない。そのようなプローブに必要とされることは、切断が検出可能であるということであり、したがって、プローブは、検出可能な標識で別々に標識することができるまたはプローブは非標識とすることができる。
【0040】
使用されるプローブは、PCR増幅の間に、すなわちリアルタイム検出でまたは増幅の後に、すなわち終末点検出で標的とハイブリダイズした場合のそれらのプライマー非依存的等温5’ヌクレアーゼ切断を増強するまたは実質的に排除するように修飾される直鎖またはランダムコイルのDNAハイブリダイゼーションプローブとすることができる。示されるように、増強された切断性を有するプローブをエキソ感受性またはEXO−Sプローブと称し、また、切断に抵抗性のプローブをエキソ抵抗性またはEXO−Rプローブと称する。EXO−Rプローブは、25分間の等温プライマー非依存的切断条件にかけられた場合、実質的に未切断のままである。いくつかのEXO−Rプローブは、プローブ−標的ハイブリッドのTmのあたりの急速な温度変動によって切断することができるが、他のものはそのような変動にさえ抵抗する。検出が制限プライマーの消耗後に起こり、したがって、起こるあらゆる切断はプライマー非依存的5’ヌクレアーゼ酵素活性によるものである。EXO−SプローブおよびEXO−Rプローブは低温プローブである。
【0041】
ランダムコイルDNAプローブをEXO−Sプローブにするためのそのプローブに対する修飾は、プローブの標的に相補的ではない5’ヌクレオチドを追加することおよびプローブの5’ヌクレオチドに標識成分を、好ましくは蛍光成分を少なくとも3つの、好ましくは6つのメチレン基のメチレン鎖によって連結することである。
【0042】
ランダムコイルDNAプローブをEXO−Rプローブにするためのそのプローブに対する修飾は、それらの5’末端の構造的修飾に基づいた3つのクラスがあると考えることができる:
クラス(1)5’末端が完全に相補的な標的配列とハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドプローブの5’末端に対するある非核酸化学成分の追加;
クラス(2)プローブの5’末端が標的配列に相補的ではなく、したがって、1つまたは複数の塩基について伸長された一本鎖「アーム」を形成するような、オリゴヌクレオチドプローブの5’末端に対する1つまたは複数の非相補的ヌクレオチドの追加;
クラス(3)5’末端の一本鎖「アーム」が、3〜5つのヌクレオチドのステムおよび>70℃の自己アニーリングTmを有する、ヘアピン構造を形成するような、オリゴヌクレオチドプローブの5’末端に対する複数の非相補的ヌクレオチドの追加。
【0043】
図1は、比較のための例示的な5’ヌクレアーゼプローブと共に各クラスのEXO−Rプローブの例を示す。図2は、クラス(1)〜(3)のプローブについての例示的な切断メカニズムを示す。
【0044】
Taqシステムでは、たとえば、いくつかのクラス(1)およびクラス(2)のEXO−Rプローブは、プローブ−標的ハイブリッドのTmが伸長プライマーの通り道でのプローブ結合を回避するのに十分に低くなかった場合、プライマー依存的切断によって切断され得る。対照的に、クラス(3)プローブは、プローブ−標的ハイブリッドのTmが伸長プライマーの通り道でのプローブ結合を回避するのに十分に低くなかった場合、伸長プライマーによって切断されず、またプライマー伸長を非効率にする。
【0045】
特定の修飾されたランダムコイルプローブがEXO−SかEXO−Rプローブかどうか決定するために、その切断性を、等温プライマー非依存的切断条件が後続するPCR増幅反応条件にかけられた場合の、対応する非修飾のプローブのものと比較することができる。EXO−RプローブがそのTmのあたりの急速な温度変動によって切断可能かどうか決定するために、その切断を、温度サイクルの時間または数の関数としてプロットすることができる。
【0046】
述べられたように、EXO−Sプローブ法およびEXO−Rプローブ法は、非対称のPCR増幅およびハイブリダイズされたプローブの検出または切断されたプローブ断片の検出である。プローブが、ハイブリダイズされたことによりまたは切断されたことにより、検出可能なシグナル、たとえば蛍光シグナルを発する場合、検出は、変動を含んでいてもよくまたは含んでいなくてもよい低温検出ステップの手段を用いて増幅反応の間に(リアルタイム)または反応の完了後に(終末点)行うことができる。そのようなプローブでの検出はまた、プローブ−標的ハイブリッドについての融解曲線の生成を含んでいてもよい。
【0047】
以下の説明は、同じまたは異なる標識を有するいくつかのEXO−SプローブまたはいくつかのEXO−Rプローブを、そのような反応物が産出する情報量を増加させるために、多重PCR反応物にどのように添加することができるかを示す。同様の結果は、同じ反応中でEXO−SプローブおよびEXO−Rプローブを組み合わせることにより達成することができる。
【0048】
多重非対称のPCR反応は、それぞれ異なる標的配列に対するいくつかの対のプライマーを使用するように構築することができる。結果として生じる一本鎖アンプリコンのそれぞれは、一本鎖標的アンプリコン中のその相補的配列との1つまたは複数のEXO−Sプローブのハイブリダイゼーションを達成するために反応の間にまたは反応の最後に温度を低下させることにより検出することができる。EXO−Sプローブのそれぞれが、異なった色の蛍光体でまたは固有の分子量もしくは電気的なサインを有する異なる成分で標識される場合、それぞれのプローブ−アンプリコンハイブリッドはその固有のシグナルを産出する。しかしながら、2つのEXO−Sプローブはまた、それらが異なる温度でプローブ−アンプリコンハイブリッドを形成することを条件として、同じシグナル基で標識することができる。同様に、EXO−Sプローブは、同じ色だが区別可能に異なるTmのEXO−Rプローブと共に使用することができ、この場合には、プローブのうちの一方のみがプローブおよびアンプリコンの等温インキュベーションの間に切断され、第2のプローブは続いて起こるまたは先の温度の変動の間に切断されるので、EXO−Rプローブが温度変動によって切断可能である場合、区別を高めることができる。
【0049】
EXO−Sプローブを用いて別個のシグナルを産出する可能な標的のレパートリーは、Kramer(米国特許第6150097号)によって記載される「Color Triplet Coding」の原理を利用することによりさらに高めることができる。この場合では、各アンプリコン、ユニーク配列または対立遺伝子変異体のいずれかは、2つまたは3つの異なる5’標識で標識されたそれ自体のEXO−Sプローブで標的にされる。したがって、プローブ−アンプリコンハイブリッドが形成され、切断された場合、2つまたは3つの標識は切断を介して放出される。Kramerによって記載されるように、2つまたは3つのグループで複数の標識を組み合わせるための複数の方法がある。
【0050】
同様に、多重非対称PCR反応は、温度が反応の間にまたはその最後に低下する場合に、複数のEXO−Rプローブで検出される複数の一本鎖アンプリコンを産出するためにいくつかの対のプライマーを使用して構築することができる。この場合では、各EXO−Rプローブは異なる色の蛍光体で標識することができる。加えて、各EXO−Rプローブは、その長さに依存して、配列特異的、つまり対立遺伝子識別力があるまたはミスマッチ認容性とすることができる。この場合では、プローブ−アンプリコンハイブリダイゼーションを区別するための最良の方法は、反応の温度が、あらかじめ設定された低温から徐々に低くなるまたは徐々に増加する融解曲線分析を行うことである。これらの状況下で、各EXO−Rプローブはその固有の融解プロフィルを表し、同じ色の2つのEXO−Rプローブの組合せは複合融解曲線をもたらす。加えて、温度変動は、プローブのうちの一方のみのシグナルを変化させるので、温度変動に抵抗性のEXO−Rプローブおよび温度変動に感受性のEXO−Rプローブは多重化することができる。
【0051】
EXO−Rプローブを用いて別個のシグナルを産出する可能な標的のレパートリーは、Kramer(米国特許第6150097号)によって記載される「Color Triplet Coding」の原理を利用することによりさらに高めることができる。この場合では、各アンプリコン、ユニーク配列または対立遺伝子変異体のいずれかは、2つまたは3つの異なる5’標識で標識されたそれ自体のEXO−Rプローブで標的にされる。したがって、プローブ−アンプリコンハイブリッドが形成され、融解される場合、そのハイブリッドは2つまたは3つの色で同じ融解曲線を産出する。Kramerによって記載されるように、2つまたは3つのグループで複数の標識を組み合わせるための複数の方法がある。
【0052】
EXO−SプローブおよびEXO−Rプローブを使用する別の手段は、シングル多重非対称PCR反応中でそれらを組み合わせることを含む。この場合では、異なるプローブは、融解曲線分析または切断分析のいずれかによって異なる一本鎖アンプリコンを検出することができる。たとえば、反応の温度を低下させるので、ミスマッチ認容性EXO−Rプローブは、固有の融解曲線を産出する有色の蛍光体で標識することができる。その標的へのEXO−Rプローブの最大の結合が低温で達すると、反応温度は、その標的に対して同じ色であってもよく、その標的に対するEXO−RプローブのTmよりも低いTmを有するEXO−Sプローブのハイブリダイゼーションおよび等温または変動温度依存性の切断を達成するためにさらに低下させることができる。EXO−Sプローブ切断産物の検出は低温で実行することができるが、好ましくはより上の温度、たとえば、EXO−SプローブもEXO−Rプローブもその標的とハイブリダイズしない70℃で実行される。これらの各直鎖プローブ上に消光剤が存在するので、EXO−Sプローブの5’末端から切断された蛍光体のみが、そのより上の温度でバックグラウンドを上回るシグナルを産出する。
【実施例】
【0053】
実施例1(図4)
本実施例は、ここで使用される条件下で、ポリメラーゼZO5がプライマー非依存的抵抗性を呈しないことを実証する。
【0054】
増幅反応は、1×RT−PCRバッファー(Roche Diagnostic社)、50mMビシン/KOH、pH8.2(25℃)、115mM K−酢酸、8%グリセロール(v/v)、および3mM酢酸マンガン(Mn OAc2)をそれぞれ含有する。ZO5ポリメラーゼ濃度は反応当たり200ユニットとし、プローブは0.5μMとし、相補的標的は1.5μMとする。反応は等温とし、52℃で実施する。蛍光発光データは20秒間隔で15分間収集する。反応はABI社製7700サーモサイクラーを使用して実施する。
【0055】
以下のプローブおよびそれらの相補的標的を使用した:
プローブ名 配列(5’−3’)
直鎖FT(アームなし) Fam-CCATGATACAAGCTTCC-BHQ1
直鎖FT BHQ5' BHQ1-CCATGATACAAGCTTCC-Fam
直鎖FT(5'3'アーム) Fam-TTTTTTCCATGATACAAGCTTCCTTTTTT-BHQ1
0-4-0 MW-BG Fam-CGGTGAAACCGCGCCTGCAATATACAGC-BHQ1
標的名
FT標的 ACTTAGTAATTGGGAAGCTTGTATCATGGCACTTAGAAC
BG標的 AAAAAAGCTGTATATTGCAGGCGAAAAAA
【0056】
以下のプローブ−標的の組合せを試験した(各2通り)。カットが最も速い速度の2つ(41)の線は、FT標的+6つの非相補的ヌクレオチド(すべてT)の5’3’アームを有する直鎖FTプローブである。カットが2番目に速い速度の2つ(42)の線(赤線)は、FT標的+5’3’アームなしの直鎖FTプローブである。2つ(43)の線は、BG標的+4bpステムおよび3塩基ループを有する5’ヘアピンを含有する0−4−0 MW−BGプローブである。上記のプローブの3つはすべて5’FAM蛍光体を有する。
【0057】
2つ(44)の線は、FT標的+5’3’アームなしの直鎖FTプローブであるが、Black Hole消光剤1が5’末端上にある。
【0058】
2つ(45)の点線は、5’ヘアピンを有する0−4−0 MW−BGプローブであるが、BG標的を反応物に添加しなかった。
【0059】
図4に示される結果は、これらの条件下で、ポリメラーゼZO5が、BG標的の非存在下でさえ、5’ヘアピンを有する0−4−0 MW−BGプローブを切断することを実証する。すべての他のプローブは、それらの標的配列の非存在下で切断されなかった(結果は示さず)。したがって、これらの結果は、これらの条件下のポリメラーゼZO5が標的非依存的プローブ切断を呈することを実証する。この結論は、これらの条件下で、ポリメラーゼZO5はまた、6つの非相補的ヌクレオチド(すべてのT)の5’3’アームを有する直鎖FTプローブがそのFT標的に結合した場合に、このEXO−RプローブはTaqポリメラーゼによって切断されないが、その直鎖FTプローブを切断した事実によって支持される。
【0060】
実施例2(図5(A〜D))
本実施例では、標的非依存的プローブ切断を呈する酵素ZO5ポリメラーゼ(実施例1)は、EXO−Rプローブを切断するが、標的非依存的プローブ切断を呈しないプラチナTaqポリメラーゼは、EXO−Rプローブを切断しないことを示す。図5は、唯一の変更を重合反応中で使用される酵素とする同じ反応条件下での、各実行を10,000コピーで始めた、H5およびH3のインフルエンザ遺伝子の検出についての4回の実験の結果を示す。H5遺伝子は5’TET EXO−Rプローブ(実線)によって検出し、H3遺伝子は5’FAM EXO−Rプローブ(破線)によって検出する。NTC値は点線で示す。
【0061】
図5Aは、LATE−PCR増幅についてZO5酵素を用いた結果を示し、TETプローブおよびFAMプローブの両方を用いた(51)はTETプローブ蛍光発光の、(52)はFAMプローブ蛍光発光の、および(53)はNTCの結果である。
【0062】
図5Bは、プローブの融解を示し、FAMおよびTETのプローブの両方について、(54)はTETプローブ蛍光発光の、(55)はFAMプローブ蛍光発光の、および(56)はNTCの結果である。
【0063】
図5Cは酵素としてプラチナTaqポリメラーゼを使用したLATE−PCR増幅の結果を示し、TETおよびFAMのプローブの蛍光発光で、(57)はTETプローブ蛍光発光、(58)はFAMプローブ蛍光発光、および(59)はNTCである。
【0064】
図5Dは、プローブの融解を示し、TETおよびFAMのプローブの蛍光発光で、(510)はTETプローブ蛍光発光、(511)はFAMプローブ蛍光発光、および(512)はNTCである。
【0065】
LATE−PCRはZO5の実施例(図5A)でより効率的に見え、Ct値は両遺伝子について29であり、一方、プラチナTaq(図5C)については、Ct値は30(H5)および33(H3)である。しかしながら、2つの融解曲線によって示されるようにこれは事実ではない。ZO5反応中でのTETプローブ(54)は完全にカットされていき、反応中に遊離TETを放出するが、ZO5を用いたFAMプローブ(55)は部分的にカットされる。これは図6Bに見ることができ、ZO5反応プローブ融解曲線で、プローブがもはや標的に結合しなくなると、プローブ蛍光発光(54、55)はNTC蛍光発光値(56)に達する。これもまた増幅でのCt値をより低くする。結果は、プラチナTaq反応で全く異なり(図5D)、プローブがもはや標的に結合しなくなると、プローブ融解曲線は遊離TET(510)またはFAM(511)を示さない。したがって、遊離FAMまたはTETが検出されないので、Ct値(図5C)はより後になる。
【0066】
EXO−Rプローブ:
5' TET-CACTAGGGAACTCGCTG-BHQ1 3', Tm=52.7 (H5)
5' FAM-CGTTTCTCGAGGTCCTGCG-BHQ1 3', Tm=54.5 (H3)
制限プライマー:
5' AAGGATAGACCAGCTACCATGATTGCC 3', Tm=66.8 (H5)
5' CGTTGTATGACCAGAGATCTATTTTAGTGTCCT 3', Tm=67.9 (H3)
過剰プライマー:
5' ATAAGTGGAGTAAAATTGGAATCAATAGG 3', Tm=63.6 (H5)
5' CCATCAGATTGAAAAAGAATTCT 3', Tm=62.7 (H3)
【0067】
反応条件(ミリモル(mM)またはマイクロモル(μM)での濃度、マイクロリットル(μL)での容量):
10×PCRバッファー 1× 2.5μL
10mM dNTPs 250μM 0.625μL
50mM Mg++ 3mM 1.5μL
10μM制限プライマー 2× 0.125μL
100μM過剰プライマー 2× 0.250μL
10μMプローブ 500nM 2× 1.25μL
10μM C3 Primesafe 500nM 1.50μL
混合合計: 9.375μL
ZO−5(5ユニット),プラチナTAQ(1.25u): 1.0/0.25最終ユニット
水: 12.625μLまたは13.375μL
DNAアンプリコン(10,000コピー/μLで2) 2.0
合計容量: 25.0μL
【0068】
熱性条件:(アニーリングZO−5=58℃、Taq=62℃)
段階1:95℃/3:00分間
段階2:(95℃/10秒間:58℃または62℃、15秒間:72℃、30秒間)20回繰り返す
段階3:(95℃/10秒間−58℃または62℃/15秒間−72℃/30秒間−45℃/20秒間)30回繰り返す
段階4:融解35℃〜94℃
【0069】
実施例3(図7A〜I)
プライマー依存的およびプライマー非依存的LATE−PCR反応でのEXO−Nプローブ
本実施例では、5’ヘアピンEXO−RプローブはLATE−PCRサイクルの最初のサイクルの間にプライマー依存的様式でTAQポリメラーゼによって切断されず、制限プライマーが消耗された場合にプライマー非依存的様式で切断されないことを示す。さらに、使用されるLATE−PCRプライマーの対のTmに依存して、EXO−RプローブはBG標的の増幅を非効率にする。結果を図7A〜Iに示す。
【0070】
図7A〜Cは、高Tmプライマー対についての結果を示す:図7A 95℃でのリアルタイム分析、図7B 45℃でのリアルタイム分析、図7C 終末点融解曲線分析((73)標的ありのプローブ、(74)プローブのみ)。図7D〜Fは、中間Tmプライマー対についての結果を示す:図7D 95℃でのリアルタイム分析、図7E 45℃でのリアルタイム分析、図7F 終末点融解曲線分析((77)標的ありのプローブ、(78)プローブのみ)。図7G〜Iは、低Tmプライマー対についての結果を示す:図7G 95℃でのリアルタイム分析、図7H 45℃でのリアルタイム分析、図7I 終末点融解曲線分析((711)標的ありのプローブ、(712)プローブのみ)。
【0071】
図7A、7D、7Gは、プローブのシグナルが、あらゆるプライマー対を用いても50サイクルにわたって95℃で変化しないことを示す。この結果は、EXO−Rプローブがプライマー依存的メカニズムによってカットされなかったことを示し、LATE−PCRの間にEXO−Rプローブがプライマー非依存的切断によってカットされなかったことをさらに示す。図7B、7E、7Hは、3つのプライマー対についての72℃での伸長ステップの後の45℃でのプローブ蛍光発光のリアルタイムの結果を示す。高Tmプライマー対の場合には(図7B)、EXO−Rプローブは結合せず、増幅をブロックしない。中間Tmプライマー対の場合には(図7E)、EXO−Rプローブは、Ctの遅延およびシグナル強度の減少に見られるように増幅をブロックし始める。低Tmプライマー対の場合には(図7H)、EXO−Rプローブは、Ctの大幅な遅延およびシグナル強度の大幅な減少に見られるように増幅を著しく阻害する。図7C、7F、7Iは、プライマー実施例のそれぞれについてのEXO−R FAMプローブ35℃〜94℃の融解曲線を示す。7Cでは、最大量のPCR産物が示されるが、7Fは、EXO−Rプローブのブロッキング能力によりより少量が示され、(7I)では、産生されるPCR産物はほとんどない。融解曲線はLATE−PCR後に描くので、遊離FAMは検出されず、プローブがプライマー依存的または非依存的様式でカットされなかったことを示す。黒色の実線は、10,000コピーのBG開始コピーを用いた反応を示し、一方、黒色の点線はNTCを示す。
配列:
制限プライマー:
TGCGTTCTGACTGAACAGTGATCGAG, Tm=72℃ (高Tmプライマー対)
TTCTGACTGAACAGCTGATCGAG, Tm=64℃ (中間Tmプライマー対)
TGACTGAACAGCTGATCGAG, Tm=61℃ (低Tmプライマー対)
過剰プライマー:
CCCTCTTGAAATTCCCGAATGG, Tm=66℃ (高Tmプライマー対)
TCTTGAAATTCCCGAATGG, Tm=61℃ (中間Tmプライマー対)
TTGAAATTCCCGAATGG, Tm=58℃ (低Tmプライマー対)
EXO−Rプローブ04017:
5' FAM-CGCTGAAAGCGCGCCTGCAATTTACAGC-BHQ1, 3' Tm=60C
【0072】
反応条件:マイクロリットル(μL)
10× PCRバッファー 1× 2.5μL
10mM dNTPs 250μM 0.625μL
50mM Mg++ 3mM 1.5μL
10μM 制限プライマー 50nM 0.125μL
100μM 過剰プライマー 1000nM 0.250μL
10μM EXO-Nプローブ 100nM 0.250μL
10μM Primesafe9-3DD 500nM 1.250μL
1.25U プラチナTAQ 0.250μL
水 17.25μL
BG標的 104コピー/μL 1.0μL
合計 25μL
熱性条件:
段階1:5分間95℃
段階2:繰り返し50サイクル、10秒間95℃、15秒間61℃/58℃、20秒間72℃、および20秒間45℃。
段階3:融解35℃〜94℃
【0073】
実施例4(図8)
5’末端にFAMを使用するEXO−Sプローブ
実施例4についての図8は、LATE−PCR反応の完了の後の15分間の変動によるEXO−Sプローブシグナル増幅を示す。反応条件は、95℃で10秒、64℃で10秒、および72℃で20秒の45ラウンドとした。最終の試薬濃度は、25マイクロリットル(μL)の容量中、1×Invitrogen社製PCRバッファー、3mM Mg++、および1.25ユニットのInvitrogen社製Taqポリメラーゼ、200nMのdNTP、50ナノモル(nM)FT#2制限プライマー、1000nM FT#2過剰プライマー、および0.6×PrimeSafe(商標)#022(PrimeSafeは、Smiths Detection社から入手可能な試薬である、ならびに300nM FT MBseq4とした。
【0074】
FT#2制限プライマーの配列は、
5' GGAAGTGTAAGATTACAATGGCAGGCTCCAGA 3'
とした。
【0075】
FT#2過剰プライマーの配列は、
5' GTTGCCCAAGTTTTATCGTTCTTCTCA 3'
とした。
【0076】
FT MBseq4 EXO−Sプローブは、
5' FAM-CATGATACAAGCTTC-BHQ1 3'
とした。
【0077】
PCRの完了後に;45℃(10秒間)および65℃(20秒間)の間の45ラウンドの変動。蛍光発光を65℃で収集した。線(81)は、FT MBseq4プローブおよび増幅されたFT産物の両方を含有する複製物であり、一方、線(82)は鋳型なしコントロールサンプルである。
【0078】
実施例5(図9)
5’末端にBHQ1を使用するEXO−Rプローブ
本実施例では、(1)Exo−Sプローブの5’蛍光体を5’BHQ−1消光剤に交換することにより、TAQ DNAポリメラーゼによってプライマー非依存的様式でもはや切断されないExo−RプローブにExo−Sプローブを変換すること、および(2)LATE−PCRによって産出された一本鎖DNAに結合されたExo−Rプローブは、プライマー非依存的様式でTAQ DNAポリメラーゼによって切断されないことを示す。図xxは、本実施例の結果を示す。パネルAは、TAQ DNAポリメラーゼの非存在(線91)または存在(線92)下でのExo−Sプローブ/標的ハイブリッドの融解プロファイルを示す。この特定のExo−Sプローブは5’HEX蛍光体および3’BHQ−1消光剤からなる。線93は、鋳型なしコントロールサンプルのバックグラウンド蛍光発光シグナルに相当する。反応は、25μL容量中で実行し、1×PCRバッファー(Invitrogen社、カールスバード、CA)、3mM MgCl2、150nM合成標的(下記参照)、500nM Exo−Sプローブ(下記参照)、およびTAQ DNAポリメラーゼを用いたサンプルの場合には、1.25ユニット TAQ DNAポリメラーゼ(invitrogen社、カールスバード、CA)からなるものとした。鋳型なしコントロールサンプルについては、TAQ DNAポリメラーゼを含み、標的配列は10mM Tris−Cl pH 8.3と交換した。サンプルは10秒間95℃で、次いで20分間20℃でインキュベートし、Exo−Sプローブ/標的ハイブリッドの形成を可能にした。次いで、サンプル温度を、それぞれ90秒間の長さの1℃の間隔で20℃から95℃まで上げると共に、蛍光発光シグナルを収集した。TAQ DNAポリメラーゼなしのサンプル(線91)については、プローブ蛍光発光シグナルは、65℃の上で、プローブが標的から完全に融解される温度範囲で鋳型なしコントロールからのプローブ蛍光発光シグナルにマッチする。対照的に、TAQ DNAポリメラーゼを用いたサンプルについては、65℃の上のプローブ蛍光発光シグナルは、鋳型なしコントロールからの蛍光発光シグナルよりも高く、BHQ−1消光剤からのHEX蛍光体のプローブ切断および分離を示す。この結果は、合成標的に結合されたExo−Sプローブがプライマー非依存的様式でTAQ DNAポリメラーゼによる切断に感受性であることを実証する。
配列
Exo-Sプローブ: 5' HEX AGCATACGGTTCAGTT 3' BHQ1
合成標的:
5' AAGATCCTGAATAACTGAACCGTATGCTTGGCTAAAGTTC 3'
下線を引いた配列はプローブ標的部位に相当する。
【0079】
上記の同じプローブ配列を5’BHQ−1消光剤および3’HEX蛍光体を有するように修飾した。5’BHQ−1成分の存在は、プライマー非依存的様式でのTAQ DNAポリメラーゼによる切断に対して抵抗性であるExo−Rプローブにそのプローブを変える。パネルBは、TAQ DNAポリメラーゼの存在下でのそのようなExo−Rプローブ−標的ハイブリッドの融解プロファイルを示す(線94)。線95は、TAQ DNAポリメラーゼ存在下でのプローブのみ/鋳型なしコントロールサンプルのバックグラウンド蛍光発光シグナルに相当する。反応条件は、25μlの最終容量中、1×PCRバッファー(Invitrogen社、カールスバード、CA)、3mM MgCl2、150nM合成標的、500nM Exo−Rプローブ(下記参照)、および1.25ユニットTAQ DNAポリメラーゼ(Invitrogen社、カールスバード、CA)から成った。鋳型なしコントロールサンプルについては、標的配列は10nM Tris−Cl Ph 8.3と交換した。サンプルは20分間20℃でインキュベートし、Exo−Rプローブ/標的ハイブリッドの形成を可能にし、次いで、サンプル温度を、それぞれ90秒間の長さの1℃の間隔で20℃から95℃まで上げると共に、蛍光発光シグナルを収集した。Exo−Rプローブ/標的ハイブリッドを用いたサンプル(線94)については、蛍光発光シグナルは、65℃の上で、プローブが標的から完全に融解される温度範囲で鋳型なしコントロールからの蛍光発光シグナル(線95)にマッチする。この結果は、(1)合成標的に結合したExo−Rプローブは、プライマー非依存的様式のTAQ DNAポリメラーゼによる切断に対して抵抗性であること、および(2)5’HEX蛍光体を5’BHQ−1消光剤に交換することによりExo−SプローブをExo−Rプローブに変えることを実証する。
配列
Exo-Rプローブ: 5' BHQ-1 AGCATACGGTTCAGTT 3' HEX
【0080】
合成標的:(上記のものと同じ)
5' AAGATCCTGAATAACTGAACCGTATGCTTGGCTAAAGTTC 3'
下線を引いた配列はプローブ標的部位に相当する。
【0081】
パネルCは、LATE−PCRによって産出された一本鎖DNAに結合した場合、上記に記載されるExo−RプローブはまたTAQ DNAポリメラーゼによる切断に対して抵抗性であることを示す。上記に記載されるExo−Rプローブについての標的配列を含有する一本鎖DNA産物は、Exo−Rプローブの存在下でLATE−PCRを介して産出された。増幅の最後に、温度を20℃に低下させ、20分間インキュベートして、Exo−R/一本鎖アンプリコンハイブリッドの形成を可能にした。この図は、Exo−Rプローブ/一本鎖アンプリコンハイブリッドのPCR後の融解曲線分析を示す(線96)。線97は、プローブのみ/鋳型なしコントロールサンプルのバックグラウンド蛍光発光シグナルに相当する。合成標的とハイブリダイズしたExo−Rプローブと同様に(パネルB)、65℃の上でのExo−Rプローブ−アンプリコンハイブリッドの完全融解は、鋳型なしコントロールサンプルに等しいバックグラウンド蛍光発光シグナルをもたらす。この結果は、PCRによって産出された標的に結合されたExo−Rプローブがプライマー非依存的様式でのTAQ DNAポリメラーゼによる切断に対して抵抗性であることを実証する。LATE−PCR増幅についての反応条件は、25ulの最終容量中、1×PCRバッファー(Invitrogen社、カールスバード、CA)、3mM MgCl2、250nM dNTPミックス(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)、25nM 9−22DD PrimeSafe、500nM 9−C3 PrimeSafe、1.25ユニットTAQ DNAポリメラーゼ(Invitrogen社、カールスバード、CA)、50nM制限プライマー、1uM過剰プライマー、500nM Exo−Rプローブ、ヒトDNAの1000ゲノム等価物(Corriell Cell Repository社、キャムデン、NJ、カタログ番号;NA07348)とした。熱サイクルプロファイルは、3分間95℃、10秒間95℃、10秒間64℃、および20秒間72℃の70サイクル、次いで20分間20℃、ならびに1℃で各90秒間の長さの間隔での20℃から95℃までの蛍光発光取得を伴う融解ステップとした。
配列:
制限プライマー:
5' CCATTTCTTCCTCCTCCTCATAAGCATGGTACCTAT 3'
過剰プライマー:
5' CCCGCTGGTTCAATAATGTCTTTAA 3'
Exo-Rプローブ(上記と同じ)
5' BHQ-1 AGCATACGGTTCAGTT 3' HEX
【0082】
パネルA−合成標的上で試験したExo−Sプローブの実施例:このパネルは、TAQ DNAポリメラーゼの非存在(線91)または存在(線92)下でのExo−Sプローブ−標的ハイブリッドの融解曲線分析を示す。線93は、TAQ DNAポリメラーゼ存在下でのプローブのみ/鋳型なしコントロールサンプルのバックグラウンド蛍光発光シグナルに相当する。TAQ DNAポリメラーゼなしのサンプル(線91)については、65℃の上でのプローブ−標的ハイブリッドの完全融解は、鋳型なしコントロールに等しいバックグラウンド蛍光発光シグナルをもたらす。TAQ DNAポリメラーゼ(線91)ありのサンプルについては、65℃の上でのプローブ−標的ハイブリッドの完全な融解は、プローブ切断およびBHQ−I消光剤からのHEX蛍光体の分離により、非結合プローブよりも高い蛍光発光シグナルをもたらす。この結果は、合成物質に結合されたExo−Sプローブがプライマー非依存的様式のTAQ DNAポリメラーゼによる切断に感受性であることを実証する。蛍光発光シグナルは複製サンプルの比較を容易にするために95℃で標準化した。
【0083】
パネルB:合成標的上で試験したExo−Rプローブの実施例:このパネルは、TAQ DNAポリメラーゼの存在下でのExo−Rプローブ−標的ハイブリッドの融解曲線分析を示す(線94)。線95は、TAQ DNAポリメラーゼ存在下でのプローブのみ/鋳型なしコントロールサンプルのバックグラウンド蛍光発光シグナルに相当する。TAQ DNAポリメラーゼが存在するにもかかわらず、プローブ−標的ハイブリッドの融解は、非結合プローブと等しいバックグラウンド蛍光発光シグナルをもたらす。この結果は、合成標的に結合したExo−Rプローブがプライマー非依存的様式でのTAQ DNAポリメラーゼによる切断に対して抵抗性であることを実証する。蛍光発光シグナルは複製サンプルの比較を容易にするために95℃で標準化した。
【0084】
パネルC:PCR産物上で試験したExo−Rプローブの実施例:LATE−PCRによって産出された一本鎖DNAに結合した場合、上記に記載されるExo−RプローブはTAQ DNAポリメラーゼによる切断に対して抵抗性である。上記に記載されるExo−Rプローブについての標的配列を含有する一本鎖DNA産物は、Exo−Rプローブの存在下でLATE−PCRを介して産出された。増幅の最後に、温度を20℃に低下させ、20分間インキュベートして、Exo−R/アンプリコンハイブリッドの形成を可能にした。この図は、Exo−Rプローブ/アンプリコンハイブリッドのPCR後の融解曲線分析を示す(線95)。線96は、プローブのみ/標的なしサンプルのバックグラウンド蛍光発光シグナルに相当する。合成標的とハイブリダイズしたExo−Rプローブと同様に、Exo−Rプローブ−アンプリコンハイブリッドの融解は、鋳型なしコントロールと等しいバックグラウンド蛍光発光シグナルをもたらす。この結果は、PCRによって産出された標的に結合されたExo−Rプローブがプライマー非依存的様式でのTAQ DNAポリメラーゼによる切断に対して抵抗性であることを実証する。蛍光発光シグナルは複製サンプルの比較を容易にするために95℃で標準化した。
【0085】
実施例6(図10)
本実施例では、LATE−PCR増幅の間にROX EXO−Rプローブの分解が観察されない、ニューカッスルDNAアンプリコンの7500コピーを検出するためにEXO−R ROXプローブを使用するLATE−PCR反応を示す。
【0086】
図10Aは、7500コピーのニューカッスルウイルスアンプリコン(線101)のLATE−PCR増幅およびROX EXO−Rプローブ融解曲線(実線)対NTC(線102)の両方を示す。プローブが高温で非結合である場合、すべてのプローブ蛍光発光(線103)およびNTC蛍光発光(線104)が重なり合うので、プローブ分解は融解曲線の図10Bで観察されず、遊離ROX蛍光発光がないことを示す。
配列:
制限プライマー:
5' GCATCAAATTCCCCACTGAGCCTC 3', Tm: 67.9℃
過剰プライマー:
5' CCTGGTATTTATTCCTGTTTGAG 3', Tm: 63.2℃
プローブ配列:
5' ROX-ATTTTGCGATATGATACCC-BHQ2 3', Tm: 56℃
【0087】
ストック濃度: 最終濃度 25μLアッセイ中の容量(μL)
10×PCRバッファー 1× 2.5μL
10mM dNTPs 250μM 0.625μL
50mM Mg++ 3mM 1.5μL
10μM制限プライマー 0.125μL
100μM過剰プライマー 0.250μL
10μMプローブ 500nM 2× 1.25μL
10μM C3-12B Primesafe 300nM .750μL
混合合計: 8.25μL
Pt TAQ(1.25ユニット):
水: 14.5μL
DNAアンプリコン
(750、7,500コピー/μLで2) 2.0μL
合計容量: 25.0μL
熱サイクル条件:
段階1:95℃/3:00分間
段階2:(95℃/0:10秒間−58°/62℃/0:15秒間−72℃/0:30秒間)20回繰り返す
段階3:(95℃/0:10秒間−58°/62℃/0:15秒間−72℃/0:30秒間−45℃/0:20秒間−25℃/0:20秒間)20回繰り返す
段階4:25℃/2:00分間保持
段階5:融解25℃〜94℃
【0088】
実施例7(図11)
等温対変動条件下でのEXO−Sプローブの切断の速度
5分間の等温条件50℃または50℃から70℃の温度の間での変動下でのシグナル増幅の速度の比較。プローブおよび相補標的の濃度の両方は0.5μMとした;最終試薬濃度は、1×Invitrogen社製PCRバッファー、3mM Mg++、および1.25ユニットのInvitrogen社製Taqポリメラーゼとした。線(111)は変動条件下での複製物であり、一方、線(112)は等温条件下での複製物である。
E9Lプローブ:
FAM 5' TTTCTAAATCCCATCAGACC 3' BHQ1
12塩基対の3’および5’突出を有するE9L標的:
3' ATATCTCGTGATAAAGATTTAGGGTAGTCTGGTATATGACTCA 5'
【0089】
実施例8(図12)
その相補的標的の3’末端に対するEXO−Sプローブの距離は切断の速度に影響を与える。
【0090】
E9Lプローブは0.2uMで使用し、一方、両標的は0.05uMとした;最終試薬濃度は、1×Invitrogen社製PCRバッファー、3mM Mg++、および1.25ユニットのInvitrogen社製Taqポリメラーゼとした。線(121)は、プローブ−標的ハイブリッド複合体の端に対して12塩基対の5’および3’突出を有する複製物である。一方、線(122)は、プローブ−標的ハイブリッド複合体の5’末端に対して44塩基対の3’突出を有する複製物である。
E9Lプローブ:
FAM 5' TTTCTAAATCCCATCAGACC 3' BHQ1
12塩基対の3’および5’突出を有するE9L標的:
3' ATATCTCGTGATAAAGATTTAGGGTAGTCTGGTATATGACTCA 5'
44塩基対の3’突出を有するE9L標的:
3 'ACCTACACGTTGAGAATCGGCTTCCCATACTCATATCTCGT
GATAAAGATTTAGGGTAGTCTGG 5'
【0091】
実施例9(図13)
45℃および70℃の間の変動の間の、標的に対するプローブの5’末端での単一塩基対ミスマッチでのシグナル発生についての異なる速度(ケース1)。
【0092】
プローブの濃度は0.2μM rs498とし、0.05μMの標的とする;最終試薬濃度は、1×Invitrogen社製PCRバッファー、3mM Mg++、および1.25ユニットのInvitrogen社製Taqポリメラーゼとした。70℃でデータ収集した。線(131)は、Aに対するミスマッチAを含有する複製物であり、線(132)は、Tに対してAにマッチした複製物である。線(133)はプローブのみでの複製物である。
rs498プローブ: FAM 5' AGACATGTTCCCTACT 3' BHQ1.
末端塩基がミスマッチの標的、(ボールド)
CTTGAGTGGGAGGGTAGGGAACATGTCAGCCATAGGTTTC
完全にマッチした標的
CTTGAGTGGGAGGGTAGGGAACATGTCTGCCATAGGTTTC
【0093】
実施例10(図14)
45℃および70℃の間の変動の間の、標的に対するプローブの5’末端での単一塩基対ミスマッチでのシグナル増幅についての異なる速度(ケース2)。
【0094】
プローブの濃度は0.2μM rs498とし、0.05μMの標的とし、試薬は上記と同じとし、70℃でデータ収集した。線(141)は、Aに対するミスマッチCを含有する複製物であり、線(142)は、Tに対するミスマッチCを含有する複製物であり、線(143)は、Cに対するミスマッチCを含有する複製物であり、線(144)は、G塩基対に対してマッチしたCを含有する複製物である。線(145)はプローブのみでの複製物である。rs498プローブ配列は3’FAM CGACATGTTCCCTACT BHQ15’とする。プローブ配列の端での5’Tは、標的鎖内で、その相補的配列(下線)の3’末端に対してミスマッチ(ボールド)とした:
5' CTTGAGTGGGAGGGTAGGGAACATGTCAGCCATAGGTTTC 3',
5' CTTGAGTGGGAGGGTAGGGAACATGTCTGCCATAGGTTTC 3',
5' CTTGAGTGGGAGGGTAGGGAACATGTCCGCCATAGGTTTC 3',
または標的鎖内でその相補的配列(下線)の3’末端にマッチした(ボールドなし)。
5' CTTGAGTGGGAGGGTAGGGAACATGTCGGCCATAGGTTTC 3'.
【0095】
実施例11(図15)
30分間の等温条件(50℃)下でのシグナル増幅の速度。FTプローブは0.5μMとし、その相補標的は1.0μMとした;最終試薬濃度は、1×Invitrogen社製PCRバッファー、3mM Mg++、および1.25ユニットのInvitrogen社製Taqポリメラーゼとした。線(151)はFTプローブおよびその相補標的の複製物であり、一方、線(152)はFTプローブのみである。FTプローブに対する配列は5’CCATGATACAAGCTTCC3’とし、相補的配列は5’ACTTAGTAATTGGGAAGCTTGTATCATGGCACTTAGAACCT3’とする
【0096】
実施例12(図16)
変動条件(45℃〜70℃)下でのシグナル増幅の速度。FTプローブは0.5μMとし、その相補標的は0.5μMとした;最終試薬濃度は、1×Invitrogen社製PCRバッファー、3mM Mg++、および1.25ユニットのInvitrogen社製Taqポリメラーゼとした。線(161)はFTプローブおよびその相補標的の複製物であり、一方、線(162)はFTプローブのみである。FTプローブに対する配列は5’CCATGATACAAGCTTCC3’とし、相補配列は、5’ACTTAGTAATTGGGAAGCTTGTATCATGGCACTTAGAACCT3’とする
【0097】
実施例13(図17)
プローブの5’アームの長さを増加させると、プローブはEXO−SまたはEXO−Rプローブとなる。図17A〜Cは、Taqポリメラーゼの存在下または非存在下での50℃でのプローブおよびその相補的標的の30分間の等温インキュベーション後に行った融解分析を示す。Taqを含有し、Taqを含有していないものと同じ蛍光発光値に達するサンプルは、EXO−Rプローブを示す。蛍光発光値はすべて70℃に標準化する。図17Aについては、線(171)は、TaqポリメラーゼなしのFTプローブ(修飾なし)標的複合体の複製サンプルである。線(172)は、TaqポリメラーゼありのFTプローブおよび標的を含有する複製サンプルである。一方、線(173)はFTプローブのみである。図17Bについては、線(174)は、Taqポリメラーゼなしの標的の存在下でプローブの5’末端で標的に対する単一の非相補的塩基を有するFT(1bp)プローブの複製サンプルである。線(175)は、TaqポリメラーゼありのFT(1bp)プローブおよび標的を含有する複製サンプルである。一方、線(176)はFT(1bp)プローブのみである。図17Cについては、線(177)は、Taqポリメラーゼなしの標的の存在下でプローブの5’末端で標的に対する5つの非相補塩基を有するFT(5bp)プローブの複製サンプルである。線(178)は、TaqポリメラーゼありのFT(5bp)プローブおよび標的を含有する複製サンプルである。一方、線(179)はFT(5bp)プローブのみである。
【0098】
FTプローブ配列は5’CCATGATACAAGCTTCC3’とし;FT(1bp)プローブ配列は5’ACCATGATACAAGCTTCC3’とし;FT(5bp)プローブは5’TTTTTCCATGATACAAGCTTCC3’とした。FT標的は3’TCCAAGATTCACGGTACTATGTTCGAAGGGTTAATGATTCA5’とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非対称ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅および検出方法であって、
(a)プライマーアニーリング温度を含む繰り返しの熱サイクルを通して反応混合物を熱的に循環させるステップであって、前記反応混合物が、第1のデオキシリボ核酸(DNA)増幅標的配列、第1の過剰プライマーおよび第1の制限プライマー、dNTP、標的非依存的プローブ切断を呈しない耐熱性DNAポリメラーゼ、ならびに第1の制限プライマーの濃度調整した融解温度を少なくとも5℃下回る濃度調整した融解温度を有し、プライマー非依存的5’エキソヌクレアーゼ切断に対する感受性がオリゴヌクレオチドの構造的修飾によって変化した直鎖DNAオリゴヌクレオチドである低温の第1のハイブリダイゼーションプローブを含有するステップと、
(b)制限プライマーの消耗後に第1の温度で過剰プライマーの伸長産物である第1のアンプリコン鎖に前記プローブをハイブリダイズするステップと、
(c)前記プローブのハイブリダイゼーションを検出するステップと
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記プローブの構造的修飾がプライマー非依存的5’ヌクレアーゼ切断を増強し、検出するステップはプローブが切断されたかどうかを検出するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
構造的修飾が、前記アンプリコン鎖の対応するヌクレオチドに対して相補的ではない5’ヌクレオチドおよび少なくとも3つの連続したメチレン基からなる鎖によって連結された標識成分を有する5’ヌクレオチドからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記鎖が3つを超える連続したメチレン基からなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記鎖が6つの連続したメチレン基からなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
反応混合物が、第2のDNA増幅標的配列、前記第2のDNA増幅標的配列に対する第2の過剰プライマーおよび第2の制限プライマー、ならびに第2の過剰プライマーの伸長によって形成された第2のアンプリコン鎖に対する第2のハイブリダイゼーションプローブを含有し、検出するステップが、前記第2のプローブが第2の温度でハイブリダイズしたかどうかを検出するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1および第2のプローブが同じ蛍光体で標識された2重標識蛍光プローブである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のプローブが、第1の制限プライマーの濃度調整した融解温度を少なくとも5℃下回り、かつ前記第1の温度と少なくとも5℃異なる、濃度調整した融解温度を有する低温プローブである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の温度が前記第1の温度を少なくとも10℃下回る、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第2のプローブがその融解温度のあたりで反応温度を急速に変動させることにより切断される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の温度が前記第1の温度を少なくとも10℃上回る、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記プローブの構造的修飾が等温プライマー非依存的5’ヌクレアーゼ切断を予防する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
構造的修飾は、第1のアンプリコン鎖とハイブリダイズしない2〜7つのヌクレオチドから構成される5’末端アーム、3つ以上の連続したメチレン基の鎖以外によって連結された標識成分を有する5’末端ヌクレオチド、および70℃を上回る温度での自己アニーリングにより2〜5ヌクレオチド長のステムを有するヘアピン構造を形成するプローブの5’末端における非相補的ヌクレオチドからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
プローブが、プローブのTmのあたりの温度での熱変動によって誘発された切断に対して抵抗性ではなく、検出が、プローブ切断をもたらす、その融解温度のあたりでのプローブ−アンプリコンハイブリッドの急速な熱変動を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅でDNA標的鎖の伸長を予防するための方法であって、混合物中で前記鎖とハイブリダイズするプライマーおよび標的非依存的プローブ切断を呈しないDNAポリメラーゼを含有するPCR反応混合物に、前記プライマーから下流(5’)の前記標的鎖とハイブリダイズし、前記DNAポリメラーゼによる前記プライマーの伸長を予防するオリゴヌクレオチドを添加するステップを含む、前記方法。
【請求項16】
前記オリゴヌクレオチドが、前記標的鎖とハイブリダイズせず、少なくとも70℃の融解温度を有する2〜5つのヌクレオチドのステムを有する5’末端オリゴヌクレオチドヘアピンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記オリゴヌクレオチドが、本来ならすべて増幅されるはずである少なくとも2つの考えられる対立遺伝子のうちの一方とハイブリダイズする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記PCR反応混合物は、前記プライマーが1対の釣り合いのとれたプライマーのうちの一方である対称PCR反応混合物であり、前記オリゴヌクレオチドが、前記プライマーの伸長を予防するために、2回以上の熱サイクル後に反応混合物に添加される、請求項15に記載の方法。
【請求項1】
非対称ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅および検出方法であって、
(a)プライマーアニーリング温度を含む繰り返しの熱サイクルを通して反応混合物を熱的に循環させるステップであって、前記反応混合物が、第1のデオキシリボ核酸(DNA)増幅標的配列、第1の過剰プライマーおよび第1の制限プライマー、dNTP、標的非依存的プローブ切断を呈しない耐熱性DNAポリメラーゼ、ならびに第1の制限プライマーの濃度調整した融解温度を少なくとも5℃下回る濃度調整した融解温度を有し、プライマー非依存的5’エキソヌクレアーゼ切断に対する感受性がオリゴヌクレオチドの構造的修飾によって変化した直鎖DNAオリゴヌクレオチドである低温の第1のハイブリダイゼーションプローブを含有するステップと、
(b)制限プライマーの消耗後に第1の温度で過剰プライマーの伸長産物である第1のアンプリコン鎖に前記プローブをハイブリダイズするステップと、
(c)前記プローブのハイブリダイゼーションを検出するステップと
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記プローブの構造的修飾がプライマー非依存的5’ヌクレアーゼ切断を増強し、検出するステップはプローブが切断されたかどうかを検出するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
構造的修飾が、前記アンプリコン鎖の対応するヌクレオチドに対して相補的ではない5’ヌクレオチドおよび少なくとも3つの連続したメチレン基からなる鎖によって連結された標識成分を有する5’ヌクレオチドからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記鎖が3つを超える連続したメチレン基からなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記鎖が6つの連続したメチレン基からなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
反応混合物が、第2のDNA増幅標的配列、前記第2のDNA増幅標的配列に対する第2の過剰プライマーおよび第2の制限プライマー、ならびに第2の過剰プライマーの伸長によって形成された第2のアンプリコン鎖に対する第2のハイブリダイゼーションプローブを含有し、検出するステップが、前記第2のプローブが第2の温度でハイブリダイズしたかどうかを検出するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1および第2のプローブが同じ蛍光体で標識された2重標識蛍光プローブである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のプローブが、第1の制限プライマーの濃度調整した融解温度を少なくとも5℃下回り、かつ前記第1の温度と少なくとも5℃異なる、濃度調整した融解温度を有する低温プローブである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の温度が前記第1の温度を少なくとも10℃下回る、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第2のプローブがその融解温度のあたりで反応温度を急速に変動させることにより切断される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の温度が前記第1の温度を少なくとも10℃上回る、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記プローブの構造的修飾が等温プライマー非依存的5’ヌクレアーゼ切断を予防する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
構造的修飾は、第1のアンプリコン鎖とハイブリダイズしない2〜7つのヌクレオチドから構成される5’末端アーム、3つ以上の連続したメチレン基の鎖以外によって連結された標識成分を有する5’末端ヌクレオチド、および70℃を上回る温度での自己アニーリングにより2〜5ヌクレオチド長のステムを有するヘアピン構造を形成するプローブの5’末端における非相補的ヌクレオチドからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
プローブが、プローブのTmのあたりの温度での熱変動によって誘発された切断に対して抵抗性ではなく、検出が、プローブ切断をもたらす、その融解温度のあたりでのプローブ−アンプリコンハイブリッドの急速な熱変動を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅でDNA標的鎖の伸長を予防するための方法であって、混合物中で前記鎖とハイブリダイズするプライマーおよび標的非依存的プローブ切断を呈しないDNAポリメラーゼを含有するPCR反応混合物に、前記プライマーから下流(5’)の前記標的鎖とハイブリダイズし、前記DNAポリメラーゼによる前記プライマーの伸長を予防するオリゴヌクレオチドを添加するステップを含む、前記方法。
【請求項16】
前記オリゴヌクレオチドが、前記標的鎖とハイブリダイズせず、少なくとも70℃の融解温度を有する2〜5つのヌクレオチドのステムを有する5’末端オリゴヌクレオチドヘアピンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記オリゴヌクレオチドが、本来ならすべて増幅されるはずである少なくとも2つの考えられる対立遺伝子のうちの一方とハイブリダイズする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記PCR反応混合物は、前記プライマーが1対の釣り合いのとれたプライマーのうちの一方である対称PCR反応混合物であり、前記オリゴヌクレオチドが、前記プライマーの伸長を予防するために、2回以上の熱サイクル後に反応混合物に添加される、請求項15に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2009−543578(P2009−543578A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520800(P2009−520800)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/016157
【国際公開番号】WO2008/011004
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(501442345)ブランディーズ・ユニバーシティ (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/016157
【国際公開番号】WO2008/011004
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(501442345)ブランディーズ・ユニバーシティ (4)
【Fターム(参考)】
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