説明

特殊複合糸及びその製造方法並びにその織物、編物

【課題】 撚糸としての特徴を有しつつ、伸縮性を有する特殊複合糸及びその製造方法並びにそれを使用して得られる織物、編物を提供する。
【解決手段】特殊複合糸10は、複数本の加工糸を撚り合わせて得られた撚糸である。この特殊複合糸10は、その糸条表面に凸部11と凹部12とを糸条方向交互に備えている。これら凸部11及び凹部12は、特殊複合糸10の撚りによって生じたものであり、それぞれが糸条方向へ螺旋状に連なっている。加工糸は、マルチフィラメント糸に仮撚り加工を施すことにより、同加工糸を構成するフィラメント13に捲縮による山13a及び谷13bを付与して製糸されたものである。そして、特殊複合糸10の凸部11及び凹部12は、各加工糸をそれぞれ形成していたフィラメント13の山13a及び谷13bが螺旋状に連なることによって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の加工糸を撚り合わせて得られた撚糸でありながら、伸縮性を有する特殊複合糸及びその製造方法並びにその織物、編物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、伸縮性を有する複合糸は、異なる種類の材料からなる糸を交撚する方法で得られていた。例えば、特許文献1に示す複合糸は、芯糸と、この芯糸に巻回された鞘糸とからなり、芯糸に伸縮性を有する仮撚糸を用いている。特許文献2に示す複合糸は、ポリエステルマルチフィラメント糸Aと、複屈折率0.02〜0.08の高配向未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸Bとを仮撚りして得られたものである。なお、ポリエステルマルチフィラメント糸Aは、熱収縮特性の相違する少なくとも2成分の合成重合体からなる複合繊維からなる糸である。特許文献3に示す複合糸は、芯糸と鞘糸とからなり、芯糸に複合マルチフィラメントを用い、かつ芯糸をスパイラル構造としている。そして、特許文献4に示す複合糸は、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント糸条と他のマルチフィラメント糸条とから構成される交絡交撚糸とすることで伸縮を可能としている。
【0003】
これらの複合糸は、同複合糸を構成する糸の一部に伸縮性を有するものを用い、交撚後においても当該糸の伸縮性を維持することによって伸縮性を付与している。例えば、特許文献1及び特許文献3に示す複合糸は、芯鞘構造とし、芯糸に伸縮性を有するものを使用しつつ、該芯糸の伸縮を阻害しないように鞘糸を交撚させることで伸縮性の付与を実現している。特許文献2に示す複合糸であれば、仮撚糸とする、つまりは撚りを加えた後にその撚りを解くことにより、糸の伸縮を阻害しないように構成されている。また、特許文献4に示す複合糸は、撚りを加えることなく糸を絡ませる交絡で糸を構成することにより、糸の伸縮性を維持している。
【特許文献1】特開2001−303378号公報
【特許文献2】特開2003−27341号公報
【特許文献3】特開2003−155636号公報
【特許文献4】特開2004−91991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のように伸縮性を有する複合糸は従来から多数提案されてはいるものの、糸に撚りが加わったままの状態、即ち撚糸としたままの状態で伸縮性を有するものは存在しなかった。これは、撚糸を無理に伸ばそうとすれば、糸同士の撚りがずれたり、糸同士が解れたり等してしまうためである。なお、繊維(フィラメント)が一定の撚り数で精度良く撚り合わさる撚糸の特徴として、例えば糸条表面が毛羽立ちにくく滑らか、断面が略真円状となる、太さが略均一な太い糸を得ることができる等が挙げられる。そして、近年では風合いに対する所望の多様化等に伴い、このような撚糸によって得られる特徴に加え、伸縮性をも有する複合糸が求められている。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、撚糸としての特徴を有しつつ、伸縮性を有する特殊複合糸及びその製造方法並びにその織物、編物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の特殊複合糸の発明は、複数本の加工糸を撚り合わせて得られ、撚りによる凸部と凹部とを糸条方向交互に備える特殊複合糸であって、前記加工糸は、マルチフィラメント糸に仮撚り加工を施すことにより、同加工糸を構成するフィラメントに捲縮による山及び谷を付与して製糸されたものであり、前記凸部及び前記凹部は、各加工糸が互いのフィラメントの山同士及び谷同士をそれぞれ螺旋状に連ねることによって形成されていることを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の特殊複合糸の発明は、請求項1に記載の発明において、前記加工糸には仮撚り加工において加撚時の撚り数が同じのものが使用されており、前記凸部は1m当たりの個数が当該撚り数と同一であることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の特殊複合糸の製造方法の発明は、請求項1又は請求項2に記載の特殊複合糸の製造方法であって、マルチフィラメント糸に仮撚り加工を施して製糸した加工糸を使用して複数本の加工糸を撚り合わせる撚糸工程と、撚糸工程後の加工糸をオーバーフィード条件下で加熱してそれぞれの撚りを保持する加熱処理工程とを備え、前記撚糸工程は撚り数を60〜80t/mとして行われ、前記加熱処理工程はタッチヒータを使用してオーバーフィード率を20〜100%、加熱温度を220〜300℃として行われることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の特殊複合糸の製造方法の発明は、請求項3に記載の発明において、前記加工糸は、沸騰水収縮率が8.0%以上であり、捲縮収縮率が35%以上であることを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の織物の発明は、請求項1又は請求項2に記載の特殊複合糸を織り上げて得られることを要旨とする。
請求項6に記載の編物の発明は、請求項1又は請求項2に記載の特殊複合糸を編み上げて得られることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撚糸としての特徴を有しつつ、伸縮性を有する特殊複合糸及びその製造方法並びにその織物と編物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。
図1(a)は張力のない自然な状態の特殊複合糸を示す模式図であり、図1(b)は伸張させた状態の特殊複合糸を示す模式図である。特殊複合糸10は、複数本の加工糸を撚り合わせて得られた撚糸である。この特殊複合糸10は、その糸条表面に凸部11と凹部12とを糸条方向交互に備えている。これら凸部11及び凹部12は、特殊複合糸10の撚りによって生じたものであり、それぞれが糸条方向へ螺旋状に連なっている。
【0013】
前記加工糸は、マルチフィラメント糸に仮撚り加工を施して製糸された糸である。このマルチフィラメント糸とは、複数本の合成繊維(フィラメント)を糸条方向に引き揃えて得られた糸である。また、仮撚り加工とは、マルチフィラメント糸に撚りを加える加撚処理を施した後、この撚りを解く解撚処理を施す加工方法である。この仮撚り加工が施されたマルチフィラメント糸は、各フィラメントに天然繊維調の縮れ(捲縮)が付与されることとなる。そして、捲縮が付与されたフィラメントは、波状をなすように延びており、平面視の状態で波の頂部に山を、波の底部に谷を有している。なお、このフィラメントは立体的な波状をなすように延びており、山及び谷はそれぞれ糸条周り360°の方向へ形成されている。
【0014】
前記複数本の加工糸にはそれぞれ同一条件で仮撚り加工されたものが用いられており、これら加工糸が均等に撚り合わされて1本の特殊複合糸10を形成している。各加工糸をそれぞれ構成していたフィラメント13は、互いの山13a同士及び谷13b同士がそれぞれ螺旋状に連なるように絡み合っている。そして、フィラメント13の山13a同士が螺旋状に連なることによって当該特殊複合糸10の前記凸部11が形成され、フィラメント13の谷13b同士が螺旋状に連なることによって当該特殊複合糸10の前記凹部12が形成されている。なお、各加工糸は、同一条件で仮撚り加工されたものが均等に撚り合わされたことによって芯鞘等の明確な区別を有しておらず、特殊複合糸10とした状態で各加工糸をそれぞれ1本ずつ判別することが困難となっている。
【0015】
当該特殊複合糸10は、同一条件で仮撚り加工された複数の加工糸が均等に撚り合わされて得られた撚糸である。従って、従来の撚糸と同様に太さが略均一であり、糸条の断面が略真円状となるという特徴を有している。また、当該特殊複合糸10は、各凸部11及び各凹部12がそれぞれ各フィラメント13の山13a同士及び谷13b同士が連なって形成されていることから、フィラメント13同士の間に隙間14を有している。このような隙間14を有していることから、特殊複合糸10は、柔らかく、同一太さの従来の撚糸に比べて軽量となるという特徴を有している。そして、当該特殊複合糸10は、フィラメント13の山13a同士及び谷13b同士が連なり、かつフィラメント13同士の間に隙間14を有していることから、伸縮性を有している。
【0016】
即ち、当該特殊複合糸10に張力等が加えられたとき、まず各フィラメント13は、それぞれの山13a及び谷13bを略直線状とすることにより、伸びる。この各フィラメント13の伸びに伴い、当該特殊複合糸10は、各凸部11及び各凹部12がそれぞれ前記隙間14を詰めつつ伸びることにより、糸条全体が伸長する。このとき、各フィラメント13は、それぞれの山13a同士及び谷13b同士を連ねつつも、糸条周り360°の方向で立体的に絡み合っていることから、互いに対する位置ずれを抑制される。また、張力等が無くなり、糸条全体が収縮するときには、各フィラメント13がそれぞれ縮み、元の捲縮が付与された状態へと復帰することにより、糸条全体が収縮する。そして、各凸部11及び各凹部12がそれぞれ伸びることから、当該特殊複合糸10は大きな伸縮性を有する糸条となる。
【0017】
なお、従来の撚糸は、一定のテンションを加えつつ複数本の加工糸を加撚することにより製糸されている。このため、従来の撚糸においては、捲縮を付与された各フィラメントが山又は谷に係わらず絡み合い、フィラメント同士の間にほとんど隙間が形成されていない。さらに、山又は谷に係わらず絡み合った各フィラメントは、互いに拘束し合うこととなる。従って、従来の撚糸は各凸部及び各凹部でフィラメント間に隙間が無く、また各フィラメントが互いに拘束し合い伸縮しづらいことから各凸部及び各凹部で伸縮させることができず、伸縮性を全く有さない糸条となる。
【0018】
次に、特殊複合糸の製造方法について説明する。
当該特殊複合糸は、図2に示すような製造装置を用いて製造される。この製造装置においては、最も上流側(図中で上側)に第1フィードローラ21が配設されており、この第1フィードローラ21よりも下流(図中で下方)には上流側から順番に、タッチヒータ22及び第2フィードローラ23が配設されている。第1フィードローラ21及び第2フィードローラ23は、これらの間でオーバーフィード条件となるように製造装置に給糸された加工糸10aを支持するものである。タッチヒータ22は、オーバーフィード条件下にある加工糸10aがその内部を通過する際、内面に接触した加工糸10aを加熱することにより、加工糸10aの撚りを保持して特殊複合糸10とするものである。なお、このオーバーフィード条件とは、第2フィードローラ23の回転速度に比べて第1フィードローラ21の回転速度を速めることにより、第1フィードローラ21及び第2フィードローラ23の間で加工糸10aを弛ませた状態とする条件をいう。また、第2フィードローラ23の側方にはドラム24及びチーズ25が設けられている。ドラム24及びチーズ25は、特殊複合糸10を製造装置外へと引き出し、同特殊複合糸10をチーズ25に巻き取ることによって回収するものである。
【0019】
当該特殊複合糸の製造において、その工程は、複数本の加工糸を撚り合わせる撚糸工程と、撚糸工程後の加工糸をオーバーフィード条件下で加熱してそれぞれの撚りを保持する加熱処理工程とに分けられる。
【0020】
前記撚糸工程は、前記製造装置以外の撚糸機等を用いることによって予め行われる。この撚糸工程においては、マルチフィラメント糸に仮撚り加工を施して製糸した加工糸が用いられる。この仮撚り加工においては、加撚処理時においてマルチフィラメント糸を従来の仮撚糸を得る条件に比べて強撚することが好ましい。具体的には、加撚処理としてマルチフィラメント糸を撚り数が2800〜3000t/mとなるように加撚し、この加撚による撚りを215〜230℃の条件下で加熱保持することが好ましい。これは、各フィラメントに付与される捲縮を大きなものとすることにより、各フィラメントの山同士及び谷同士を連ねやすくするためである。そして、当該撚糸工程は、撚り数を60〜80t/mとして行われる。この撚り数は従来の撚糸を得る条件に比べて弱撚である。このように撚り数を弱撚に調整し、各加工糸が互いに締め付け合うことを抑制することで、加熱処理工程時に各フィラメントの山同士及び谷同士を揃えやすくしている。
【0021】
なお、当該撚糸工程において、加工糸は、4〜16本が撚糸される。また、加工糸には太さが165デシテックス(150デニール)程度のものが使用される。その結果、特殊複合糸は、その太さが660〜6670デシテックス(600〜6000デニール)となり、従来の撚糸に比べて太い糸条となる。また、加工糸は、沸騰水収縮率が8.0%以上であり、捲縮収縮率が35%以上であることが好ましい。これは、加撚処理工程の際、加工糸を加熱収縮させることにより、前記隙間14を拡げるためである。
【0022】
前記加熱処理工程は、前記撚糸工程で撚糸された複数本の加工糸と、前記製造装置とを用いて行われる。当該加熱処理工程において、第1フィードローラ21及び第2フィードローラ23の間のオーバーフィード率は20〜100%である。換言すれば、第2フィードローラ23に対して第1フィードローラ21は、その回転速度が20〜100%速められる。オーバーフィード率が20%未満の場合、第1フィードローラ21及び第2フィードローラ23の間で加工糸に張力が加わってしまい、各フィラメントの山同士及び谷同士が揃いにくくなる。一方、オーバーフィード率が100%を超える場合、第1フィードローラ21及び第2フィードローラ23の間で加工糸に全く張力が加わらず、各フィラメントの山同士及び谷同士を揃えることができなくなる。加えて、第1フィードローラ21及び第2フィードローラ23の間で加工糸が詰まるという不具合も生じる。
【0023】
前記タッチヒータ22は、加熱温度が220〜300℃となるように設定される。加熱温度が220℃未満の場合、前記撚糸工程で加えられた撚りが十分に保持されず、特殊複合糸を伸長させたときに各フィラメントが互いに位置ずれしてしまい、特殊複合糸が元の状態に収縮することができなくなる。一方、加熱温度が300℃を超える場合、撚りが過剰に保持され、各フィラメントが互いを拘束し合ったり、あるいはフィラメント同士が熱溶着される等の不具合が生じる。
【0024】
オーバーフィード条件下にある加工糸は、第1フィードローラ21と第2フィードローラ23とによって把持された状態で弛むことにより、タッチヒータ22の内部を転がるように大きく回転しながらゆっくり移動する。このとき、複数の加工糸は、弱撚状態にあることからその撚りが若干緩んでおり、回転等の影響により各フィラメントの山同士及び谷同士が揃えられる。そして、各フィラメントの山同士及び谷同士が揃った状態が加熱保持され、特殊複合糸が得られる。なお、当該特殊複合糸において、前記凸部は、1m当たりの個数が前記仮撚り加工の加撚処理でのマルチフィラメント糸の撚り数と同一となる。これは、当該凸部はフィラメントの山同士が連なって形成されたものであり、このフィラメントの山の数は仮撚り加工の加撚処理における撚り数に依存するためである。従って、当該特殊複合糸において、凸部の1m当たりの個数は、2800〜3000個である。
【0025】
次に、図2に示す製造装置を用いて以下の条件で特殊複合糸を製造した。
加工糸:ポリエステル製で253デシテックス(230デニール)/36フィラメントのマルチフィラメント糸に、ドローレシオが1.6、撚り数が2900t/m、加撚時の加熱温度が220℃、仮撚装置内での糸の速度を100m/mの条件で仮撚り加工を施して得られた仮撚糸。
【0026】
加工糸の太さ:165デシテックス(150デニール)。
加工糸の本数:8本。
撚糸工程における撚り数:70t/m
タッチヒータの温度:215〜230℃。
【0027】
オーバーフィード率:20〜100%。
製造装置内での糸の速度:100m/m。
上記のような加工条件により、大きな伸縮性を有する撚糸である特殊複合糸を得ることができた。また、この特殊複合糸において、1m当たりの凸部の個数は、2900個であった。
【0028】
以上のようにして製糸された特殊複合糸を経糸又は緯糸の少なくとも一方に使用して織りあげることにより織物が得られ、特殊複合糸を編機で平編み、横編み、丸編み等して編みあげることにより編物が得られる。そして、この特殊複合糸を使用した織物及び編物は、柔らかで軽いことから風合いが向上されるとともに、撚糸による織物及び編物でありながら、大きな伸縮性を有するものとなる。
【0029】
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態の特殊複合糸によれば、糸条を構成する各フィラメントがそれぞれの山同士及び谷同士を連ねることにより、撚りによる凸部及び凹部を形成している。このため、山同士及び谷同士が連ねられた各フィラメントは、互いに拘束し合うことがなく、さらに凸部及び凹部でフィラメント間に隙間が形成されていることから、付与された捲縮に基づいて伸長又は収縮することができる。従って、各フィラメントが伸長又は収縮することができることから、特殊複合糸は伸縮自在となる。加えて、各凸部及び各凹部がそれぞれ伸長又は収縮することから、特殊複合糸は大きな伸縮性を有する糸条となる。
【0030】
・ また、凸部は1m当たりの個数が、仮撚り加工において加撚時の撚り数と同一であることから、複数本の加工糸を撚り合わせる際の撚り数に影響されておらず、この複数本の加工糸を撚り合わせによって、各フィラメントが互いを拘束することを抑制することができる。
【0031】
・ また、製造時において撚糸工程での撚り数を60〜80t/mという弱撚(甘撚り)とし、オーバーフィード率を20〜100%とし、加熱温度を220〜300℃とすることにより、仮撚り加工時に付与されたフィラメントの捲縮を保持したまま、加工糸を撚り合わせることができる。
【0032】
・ また、加工糸は、沸騰水収縮率が8.0%以上であり、捲縮収縮率が35%以上であることから、タッチヒータによる加熱時に加工糸が若干熱収縮することにより、フィラメント間の隙間が拡がることから、好適な伸縮性を付与することができる。
【0033】
・ また、当該特殊複合糸を用いることにより、撚糸による織物又は編物でありながら、伸縮性を有する織物又は編物を得ることができる。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0034】
・ 加工糸として、それぞれが互いに異なる色に着色された原着糸を使用してもよい。このように構成した場合、糸条全体で色合いの異なる特殊複合糸を得ることができる。
・ 本実施形態の上流に従来の仮撚加工装置を配設し、加工糸の仮撚りから特殊複合糸を得るまでの作業を続けて行ってもよい。
【0035】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記仮撚り加工は、マルチフィラメント糸を撚り数が2800〜3000t/mとなるように加撚し、この加撚による撚りを215〜230℃の条件下で加熱保持した後、マルチフィラメント糸を解撚して行われることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の特殊複合糸の製造方法。
【0036】
・ 太さが660〜6670デシテックスであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の特殊複合糸。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)は実施形態の特殊複合糸の張力のない自然な状態を示す模式図、(b)は実施形態の特殊複合糸を伸張させた状態を示す模式図。
【図2】特殊複合糸の製造装置を示す概念図。
【符号の説明】
【0038】
10…特殊複合糸、10a…加工糸、11…凸部、12…凹部、13…フィラメント、13a…フィラメントの山、13b…フィラメントの谷、22…タッチヒータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の加工糸を撚り合わせて得られ、撚りによる凸部と凹部とを糸条方向交互に備える特殊複合糸であって、
前記加工糸は、マルチフィラメント糸に仮撚り加工を施すことにより、同加工糸を構成するフィラメントに捲縮による山及び谷を付与して製糸されたものであり、
前記凸部及び前記凹部は、各加工糸が互いのフィラメントの山同士及び谷同士をそれぞれ螺旋状に連ねることによって形成されていることを特徴とする特殊複合糸。
【請求項2】
前記加工糸には仮撚り加工において加撚時の撚り数が同じのものが使用されており、前記凸部は1m当たりの個数が当該撚り数と同一であることを特徴とする請求項1に記載の特殊複合糸。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の特殊複合糸の製造方法であって、
マルチフィラメント糸に仮撚り加工を施して製糸した加工糸を使用して複数本の加工糸を撚り合わせる撚糸工程と、撚糸工程後の加工糸をオーバーフィード条件下で加熱してそれぞれの撚りを保持する加熱処理工程とを備え、
前記撚糸工程は撚り数を60〜80t/mとして行われ、
前記加熱処理工程はタッチヒータを使用してオーバーフィード率を20〜100%、加熱温度を220〜300℃として行われることを特徴とする特殊複合糸の製造方法。
【請求項4】
前記加工糸は、沸騰水収縮率が8.0%以上であり、捲縮収縮率が35%以上であることを特徴とする請求項3に記載の特殊複合糸の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の特殊複合糸を織り上げて得られる織物。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の特殊複合糸を編み上げて得られる編物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−2279(P2006−2279A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178823(P2004−178823)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(599141353)カワボウテキスチャード 株式会社 (2)
【Fターム(参考)】