説明

状態変数及び状態変数の変化を決定する方法

本発明は、検査対象の検査領域における物理的、化学的及び/又は生物学的状態変数、特には物質濃度、温度、pH及び/又は物理的場、並びに/又はこれら状態変数の変化を、この検査領域における磁性粒子の空間分布の、少なくとも部分領域に対する影響変数の効果の関数としての、並びに/又は前記検査領域の少なくとも部分領域における条件の変化を、下記ステップ、即ち、a)前記検査領域の少なくとも一部に磁性粒子を、前記検査領域において又は該領域の一部において、調査されるべき前記磁性粒子の少なくとも幾つかが互いに対に又はそれ以上に結合され及び/又は凝集されたような第1状態で導入するか、又は前記検査領域の少なくとも一部に磁性粒子を、前記粒子が凝集解除され及び/又は結合解除されており、且つ、凝集され及び/又は結合され得るような第2状態で導入するステップ、b)磁界を、前記検査領域に低磁界強度を持つ第1部分領域と高磁界強度を持つ第2部分領域とが生成されるような磁界強度の空間的プロファイルで発生するステップ、c)前記粒子の磁化が局部的に変化されるように、前記検査領域における前記2つの部分領域の特には相対的な空間位置を変化させるか、又は前記第1部分領域における前記磁界強度を変化させるステップ、d)この変化により影響された前記検査領域における前記磁化に依存するような信号を検出するステップ、及びe)前記検査領域における物理的、化学的及び/若しくは生物学的状態変数又は該状態変数の変化に関する、並びに/又は前記磁性粒子の空間分布の変化に関する情報を得るために前記信号を評価するステップによって決定することにより、決定する方法に関するものである。本発明は、更に、磁性粒子組成物、特には官能化された磁性粒子組成物、及び本発明による方法における斯かる組成物の使用にも関するものである。本発明は、更に、検査領域における状態変数の測定のための装置も関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査領域における磁性粒子の空間分布及び/又は空間分布の変化を決定することにより、この検査領域における状態の特には局部的な変化を決定する方法に関する。また、本発明は、磁性粒子組成物、特には官能化された磁性粒子組成物、及び本発明による方法における斯かる組成物の使用に関する。本発明は、更には、検査領域における状態変数の測定のための装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
如何なる種類の物理的、化学的及び生物学的状態変数を決定するためにも、当業者にとっては所望の目的及び検査されるべき対象に依存して数多くの直接的及び間接的測定方法が利用可能である。測定器具又は測定探針にとり直接アクセス可能ではない媒体の状態パラメータを決定するために使用することができる測定方法は、しばしば、特に関心があるものである。間接的パラメータ決定の好適な例は、化学製造方法における温度等の反応パラメータ及び反応の進行の光学的方法による監視、又は例えば亀裂の存在等の材料部分の品質の超音波による決定を含む。特に生体組織を検査する場合、例えば温度、pH又は特定の物質の濃度を決定するために間接的測定方法を使用することが、しばしば、必要となる。しかしながら、斯様な間接的測定方法は、時には、一層複雑となり、直接的決定方法よりも大きな測定誤差となる。従って、多くの製造方法又は対象にとり、検査されるべきパラメータを非破壊的且つ間接的な態様で非常に精密に決定することが可能な方法に対する一層の要求が存在する。検査対象の局部的に極限られた領域に関する情報を狙った態様で決定するために使用することが可能な測定方法が、特に重要である。
【0003】
動物又は人の身体内の化学的及び物理的状態の非侵襲的決定のための1つの方法は、例えばヨーロッパ特許出願公開第EP095124A号に見付けることができる。該文献によると、検査領域における選択された体積セグメント内の温度及びpHは、均一な一定磁界及び高周波磁界による磁気共鳴分光分析法を使用することにより測定された核共鳴スペクトルのパラメータから決定又は見付けることができる。
【0004】
ヨーロッパ特許出願公開第EP095124A号による方法の1つの改良例においては、均一な一定磁界の他に、時間に関して非同期的に変調された3つの直交的に走る勾配磁界が発生され、その結果として、局部的磁気共鳴信号が上記勾配磁界の3つの面の交差部においてのみ検出される。この実施例は文献に“敏感点”方法として記載されている(Hinshaw, J. Appl. Phys. 47 (1976), 頁3709〜3721参照)。ヨーロッパ特許出願公開第EP095124A号によれば、均一な磁界上に勾配磁界を、検査されるべき測定点の領域内の狭く限られた体積のみが高い均一性を有する一方、全ての周囲の領域が大きな不均一性を有するように、重畳することにより、生体対象内の温度及びpHに関する情報を得ることが更に可能である。この方法は該文献では“FONAR”方法として知られている(Damadian, Physiol. Chem. Phys. 8 (1976), 頁61〜65参照)。ヨーロッパ特許出願公開第EP095124A号で提案された測定方法の1つの問題点は、局部的に限定された検査領域を移動させることが容易にできず、又は例えば一層大きなコヒーレントな検査領域に関する信頼性のある情報を得ることができるように、若しくは検査対象における局部的変化を同時に監視することができるように斯かる検査領域を移動させることが容易にできない点にある。近年、磁気共鳴画像化(MRI)方法を改善することにより測定速度を大幅に増加させることが可能になったが、温度、圧力及びpH等のパラメータの決定は依然として多くの用途にとっては遅すぎ、且つ、不正確である。
【0005】
文献DE3751918T2は、核スピン共鳴技術の補助により動物又は人の臓器又は組織の生体内画像を得る方法を記載しており、該方法においては、画像改善投与量分の核スピントモグラフィコントラスト剤が、固有の態様で準備されるべき超常磁性粒体の形態で使用される。検査される組織の磁気特性は、上記磁性コントラスト剤により、照射された陽子が改善された緩和動作を示すように影響されると言われる。超常磁性及び強磁性物質は、磁気共鳴画像がTを減少させることにより一層暗く見えるのを可能にする。それにも拘わらず、核スピントモグラフィ用の好適なコントラスト剤は、核共鳴測定の感度を効果的に増加させることができるために、時には極端に安定した溶液を必要とする。しかしながら、超常磁性酸化鉄の好適な水性流体の安定性は、粒子間の磁気吸引力の結果として一緒に凝集することにより、しばしば、大幅に限定される。文献DE3751918T2は、二価及び三価の金属塩から安定した超常磁性流体を製造する4段階方法を提案している。この方法により得られる磁性粒子は解剖学的及び生理学的コントラストを増加させる助けとなり得るが、これら粒子は温度及びpH等のパラメータをMRI技術を用いて一層正確及び迅速に検出可能にさせるには適していない場合がある。加えて、核スピントモグラフィは、高度の均一性を持つ非常に強い磁界の使用を必要とする。このために、通常は、液体ヘリウムによる冷却を用いた超伝導コイルが利用される。結果として、磁気共鳴トモグラフィの方法は常に装置に対する大きな出費を伴う。
【0006】
ペレス他(J. Am. Chem. Soc., 2002, 124 (12), 頁2856及び2867)により記載された核スピン共鳴測定も、DNA相互作用を検出するために使用される。ここでは、磁性粒子に結合されたDNA又はオリゴヌクレオチド(oligonucleotide)配列が相補的DNAと混成する(hybridize)という事実が利用される。相補的DNAも磁性粒子に結合されている場合は、これは安定した塊の形成となり、その結果として水素核に隣接する水分子のT緩和時間が減少する。この変化は、核スピントモグラフィにより可視化することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、検査領域における特に局部的に限定された状態変数を決定する方法を、装置の点で簡素であり、従って費用効果的であると共に、再現性があり且つ正確な態様で利用可能にすることにあり、該方法は、最早、従来技術の測定方法の欠点を有さないものである。更に、本発明の目的は、物理的、化学的又は生物学的状態変数及び状態変数の変化の局部的に限定された決定のための方法であって、これら状態変数のその場での決定のために使用することができると共に、物質及び生物の検査も可能にするような方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、検査対象の検査領域における物理的、化学的及び/又は生物学的特性若しくは状態変数、特には物質濃度、温度、pH及び/又は物理的場、並びに/又は物理的、化学的及び/又は生物学的特性若しくは状態変数の変化を、この検査領域における若しくは該領域の一部における磁性粒子の空間的分布の、少なくとも部分領域に対する特には物理的、化学的及び/又は生物学的影響変数の効果の関数としての、並びに/又は前記検査領域の少なくとも部分領域における特には物理的、化学的及び/又は生物学的条件の変化を、下記ステップ、即ち、
a)前記検査領域の少なくとも一部に磁性粒子を、前記検査領域において又は該領域の一部において、調査されるべき前記磁性粒子の少なくとも幾つかが特には共有的に、イオン的に、配位的に又は水素架橋結合若しくはファンデルワールス結合を介して互いに対に又はそれ以上に結合され及び/又は凝集されたような、特には斯かる粒子の移動自由度に関して少なくとも部分的に制限されたような第1状態で導入するか、又は前記検査領域の少なくとも一部に磁性粒子を、前記粒子が凝集解除され及び/又は結合解除されており、且つ、凝集され及び/又は結合され得るような第2状態で導入するステップ、
b)磁界を、前記検査領域に低磁界強度を持つ第1部分領域と高磁界強度を持つ第2部分領域とが生成されるような磁界強度の空間的プロファイルで発生するステップ、
c)前記粒子の磁化が局部的に変化されるように前記検査領域における前記2つの部分領域の特には相対的な空間位置を変化させるか、又は前記第1部分領域における前記磁界強度を変化させるステップ、
d)前記変化により影響された前記検査領域における前記磁化に依存するような信号を検出するステップ、及び
e)前記信号を評価して、前記磁性粒子の空間分布の変化に関する、並びに/又は前記検査領域における物理的、化学的及び/又は生物学的状態変数若しくは該状態変数の変化に関する情報を得るステップ、
によって決定することにより、特にその場で決定する方法が見いだされた。
【0009】
本発明による方法は、磁性粒子が、これら粒子が互いに非常に接近する場合に自身の特性を変化させるという効果を利用している。磁性粒子が互いに接近する場合、これら粒子は互いの磁界の影響下にある。これにより、外部磁界に対する個々の粒子の応答は、隣接する粒子の磁界との結合により変化される。粒子の環境を変更することにより、粒子間の距離の変化及び/又はこれら粒子の運動の自由度の変化を、狙った態様で生じさせることができる。距離の変化及び磁気特性の付随する変化の結果、磁性粒子画像化方法において印加される外部磁界に対して異なる応答が得られる。該異なる応答は、当該画像にコントラストを生じさせるために使用される。好ましくは、粒子間の距離は、斯かる磁性粒子の平均直径の10倍未満、好ましくは8倍未満、更に好ましくは5倍未満とする。距離とは、心間距離を意味する。粒子がより近い程、相互磁気作用が強くなると共に、所与の距離の変化に対して磁気特性の変化が大きくなる。平均距離の10倍より大きい距離では、相互作用は相対的に弱くなり、距離の変化が磁気特性の大きな変化とはならない。同様に、磁性粒子が非常に接近しているか又は一緒にかたまっている場合、距離の変化は、画像化の目的のための磁気特性の大きな変化とはならない。更に、磁性粒子は過度に接近している場合、斯かる粒子を互いから移動させることは非常に困難である。これに鑑み、上記距離は、好ましくは、平均粒子直径の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍、更に好ましくは少なくとも4倍とする。
【0010】
本発明による方法は、番号10151778.5の未公開ドイツ国特許出願に記載された装置をかなり利用している。本明細書は、上記特許出願を、この装置の好ましい実施例に関連して参照する。
【0011】
本発明により使用される装置により、検査領域に空間的に不均一な磁界が発生される。第1部分領域においては、磁界は、上記粒子の磁化が外部磁界とはより大きい又は小さい程度に相違するように(即ち飽和されないように)弱い。この第1部分領域は好ましくは空間的にコヒーレントな領域とする。また、該領域は点状の領域、又はその以外として線状の若しくは平らな領域とすることができる。第2領域においては(即ち、上記第1部分領域外の試験領域の残部においては)、磁界は当該粒子を飽和状態に維持するほど充分に強い。磁化は、実質的に全ての粒子の磁化が外部磁界の方向に略整列される場合に飽和するので、そこでの磁化は、磁界の更なる増加に対して、磁界の対応する増加が付与された場合の前記第1部分領域におけるよりも、大幅に少なくしか増加しない。
【0012】
上記2つの部分領域の位置を検査領域内で変化させることにより、該検査領域における(全体の)磁化は変化する。従って、当該検査領域における磁化又は該磁化により影響される物理的パラメータが測定されれば、これから該検査領域における磁性粒子の空間分布に関する情報を導出することができる。
【0013】
検査領域における上記2つの部分領域の空間位置を変化させるため、又は第1部分領域における磁界強度を変化させるためには、例えば局部的に及び/又は時間的に変化することが可能な磁界を発生することができる。また、検査領域における磁化の時間的変化により少なくとも1つのコイルに誘起される信号が受信されると共に評価されて、該検査領域における磁性粒子の空間分布に関する情報を得るようにすることもできる。可能な限り大きな信号は、上記2つの部分領域の空間位置が可能な限り高速で変化するようにすることにより得ることができる。上記検査領域に磁界を発生するために使用されるコイルは、上記信号を検出するために使用することができる。しかしながら、好ましくは、少なくとも1つの特別なコイルが使用されるようにする。
【0014】
上記部分領域の空間位置の変化が、例えば時間的に変化され得る磁界により生じると、同様に周期的な信号がコイルに誘起される。しかしながら、この信号は受信するのが困難であろう。何故なら、当該検査領域で発生される上記信号及び時間的に変化する磁界は同時に活性となり、従って、当該検査領域において上記磁界により誘起される信号と、磁化を変化させることにより誘起される信号との間を区別することは容易には可能ではない。しかしながら、これは、時間的に変化する磁界が第1の周波数帯域で検査領域に作用するようにすると共に、上記コイルで受信された信号から、上記第1周波数帯域より高い周波数成分を含むような第2周波数帯域が評価されて前記磁性粒子の空間分布に関する方法を得るようにすることにより回避することができる。これは、第2周波数帯域の周波数成分が、磁化特性の非線形さの結果としての当該検査領域における磁化の変化によってのみ生じ得るという事実を利用している。上記の時間的に変化する磁界が正弦状の周期的プロファイルを有しているなら、第1周波数帯域は単一の周波数成分、即ち正弦状基本成分のみからなる。対照的に、第2周波数帯域は、この基本成分とは別に、該正弦状基本成分の高い調波(所謂、高調波)をも含み、これは評価のために使用することができる。
【0015】
本発明による方法の1つの好ましい構成は、前記磁界を発生する手段が、前記検査領域の第1部分領域において自身の方向を逆転すると共に零交差部を有するような勾配磁界を発生するための勾配コイル装置を有することを特徴とする。この磁界は、上記勾配コイル装置が例えば上記検査領域の両側に配置されるが反対の電流が流されるような2つの同一の巻線を有する(マックスウェルコイル)場合、巻線軸上の点で零となり、この点の両側において反対の極性で実質的に線形に増加する。この磁界零点の周囲の領域に位置する粒子の場合のみ、磁化は飽和されない。この領域の外側の粒子に関しては、磁化は飽和状態となる。
【0016】
検査領域における上記2つの部分領域を移動させる目的で上記勾配磁界上に重畳されるような時間的に変化する磁界を発生する手段を備える装置を設けることができる。この場合、前記勾配コイル装置により発生される領域は、該時間的に変化する磁界により、当該検査領域内で前記磁界零点の周辺を、即ち第1部分領域を移動する。この磁界の適切な時間的プロファイル及び向きが与えられた場合、この様にして、上記磁界零点は検査領域全体を通過することができる。
【0017】
磁界零点の移動に関わる磁化の変化は、適切なコイル装置により受信することができる。検査領域で発生された信号を受信するために使用されるコイルは、該検査領域において前記磁界を発生するために既に使用されたコイルとすることができる。しかしながら、受信のための特別なコイルを使用する利点も存在する。何故なら、これは、時間的に変化する磁界を発生する前記コイル装置から減結合することができるからである。更に、1つのコイルでも改善された信号対雑音比を達成することができるが、複数のコイルの方が、かえってそうである。
【0018】
上記コイル装置に誘起される信号の振幅は、検査領域における磁界零点の位置が速く変化する程、即ち前記勾配磁界に重畳される時間的に変化する磁界が速く変化する程、大きくなる。しかしながら、一方においては、振幅が前記磁界零点を検査領域の点まで移動させるのに充分であると共に、変化率が充分な振幅を持つ信号を発生するのに充分高いような時間的に変化する磁界を発生するのは技術的に困難である。これに特に適したものは、上記勾配磁界に重畳される第1の及び少なくとも第2の磁界を発生する手段であって、第1の磁界が時間的にゆっくり且つ大きな振幅で変化する一方、第2の磁界が時間的に速く且つ小さな振幅で変化するような手段を持つ構成である。好ましくは2コイル構成により、異なる速度で且つ異なる振幅で変化するような2つの磁界が発生される。更なる利点は、上記磁界変化が、人の聴覚の限界より高いほど速く(例えば、>20kHz)し得る点にある。同様に、上記2つの磁界が検査領域において互いに実質的に垂直に走るようにすることもできる。これは、前記磁界零点の二次元領域内での移動を可能にする。三次元領域への拡張は、上記2つの磁界に対して垂直に走る成分を持つような更なる磁界により得られる。上記コイル装置の下流側に接続されたフィルタを有する構成も同様に有利であり、該フィルタは上記コイル装置により誘起された信号から第1周波数帯域内の信号成分を抑圧すると共に、該第1周波数成分より高い周波数成分を含むような第2周波数帯域内の信号成分を通過させる。これは、磁化が非飽和状態から飽和状態に移行するような領域における磁化特性が非線形であるという事実を利用している。この非線形さは、例えば時間にわたり周波数fで正弦状に非線形範囲内を進む磁界は、周波数f(基本成分)及び該周波数fの整数倍(上側調波又は高調波)を持つような時間的に変化する誘導を生じるということを意味する。斯かる高調波の評価は、前記磁界零点を移動させるために同時に活性な磁界の基本成分が、該評価に如何なる影響も有さないという利点を有している。
【0019】
本発明による方法の一実施例によれば、磁性粒子が第1状態から第2状態に移行する状態変数が、特に斯かる磁性粒子の相対配置が凝集解除及び/又は結合解除に向かって変化することにより、並びに/又は個々の磁性粒子が平均して互いから一層大きな距離を呈することにより検査領域において検出されるようにするか、又は上記磁性粒子が前記第2状態から前記第1状態に移行する状態変数が検査領域において検出されるようにする。
【0020】
本発明による方法の1つの改良例は、上記磁性粒子の第1状態から第2状態への及び/又は第2状態から第1状態への移行が、熱的に、放射、酸、塩基、電界、磁界又は超音波により及び/又は酵素的に生じることを特徴とする。例示として、前述したように、最初に自由な粒子は、これら粒子に例えば互いに反応し得る適切な被覆(コーティング)が設けられる場合、互いに共有結合を形成することができる。
【0021】
特に磁性粒子が共有又は配位結合を介して結合されている場合、本発明による方法は、結合に切れ目があり、その結果として互いに対する以前に結合されていた粒子の相対的空間位置が検査領域において変化するような、例えば動物又は人の組織のような検査対象における状態又は状態の変化を調べるために使用することができる。例えば、どのpHにおいてエステル又はアミド結合が2つの磁性粒子を結合するスペーサ分子において切断されるかが分かる場合、検査領域は、これから直接的に推測することができる。検査領域における物理的、化学的又は生物学的影響変数による互いに対する磁性粒子の位置の相対変化は、上述した方法により知ることができる。
【0022】
従って、検査領域において決定された磁性粒子の空間分布の変化は、局部的な濃度、圧力、ずれ(shear)、粘度、温度及び/又は局部的pH値と相関させることができる。従って、本発明による方法は、互いに対する磁性粒子の相対位置又は相対位置の変化に対する物質の濃度、温度、圧力、ずれ、pH及び物理的場の影響を確かめると共に、その位置及び/又はその位置の変化を前述した画像化方法により決定するのに適している。また、磁性粒子が例えば剪断(shear)により微粉砕又は粉砕されたかを確かめることができる。
【0023】
本発明による方法の他の特徴によれば、第1状態により、凝集された及び/又は一緒に結合された磁性粒子は、物理的に、化学的に及び/又は生物学的に改変され、溶解され及び/又は分解(degrade)され得るようなボンド又は液状、固形若しくは粘性媒質により空間的に限定(delimit)されるようにする。外部の影響による全体の殻の溶解により、上記粒子はより大きな運動の自由度を獲得し、互いから遠くへ移動することができ、その何らかは、上記粒子が前記勾配磁界の第1部分領域内にある場合に検出することができる。
【0024】
共有結合により磁性粒子を互いに或る相互距離で固定する可能性の代替として、又は斯かる可能性に加えて、磁性粒子を適切な媒質内に、これら粒子が可能な限り一緒に接近して隔てられるように拘束する(immobilize)可能性が同様に提供される。多数の斯様な空間的に限定された磁性粒子の塊を検査領域に導入することにより、非常に不均一な粒子分布が先ず形成される。斯かる粒子が埋め込まれた媒質を、例えば該媒質を溶解し、該媒質を分解し又は該媒質が膨張する若しくは体積を得るようにさせること等により、操作することによって、上記磁性粒子は、最早、運動の自由度に関して制限されなくなり、当該検査領域における条件に依存して、該検査領域内に分散するか又は該検査領域内で自由に移動することができる。これは、或る粒子の他の粒子への影響を減少させる。
【0025】
上記媒質が多糖類(polysaccharides)、澱粉、特にはデキストリン(dextrins)若しくはシクロデキストリン(cyclodextrins)、ワックス、油、脂肪又はゲルを有するようにすることができる。
【0026】
本発明の更なる改良によれば、上記媒質が同様に微生物、特にはバクテリアを有するようにすることができる。
【0027】
磁性粒子をバクテリア又は寄生虫(例えば、プラズモイド)に導入することにより、例えば、同時に、何時及びどのような条件下でバクテリアが組織中に溶かされ、結果として上記磁性粒子がバクテリアから逃れることが可能になるのを観察することが可能である。
【0028】
本発明による方法の更なる改良においては、凝集された又は一緒に結合された状態の磁性粒子が、粒子状の、特には液体又は気体の媒質の表面の領域に位置するようになされる。
【0029】
上記磁性粒子は、例えばゲル又は液体の滴の境界領域又は界面に限定されるので、簡単な方法で、何時及びどのような条件下で該滴体の大きさの減少又は増加が生じるかを確かめることができる。一例として、このようにして、血液のような体液のみならず、化学的方法の進行を、特にその場で、観察することができる。
【0030】
従って、この場合、検査対象の検査領域における(特には局部的な)状態の変化を、この検査領域における磁性粒子の空間分布を決定することにより決定するような方法が存在し、斯かる検査領域においては、第1状態の磁性粒子は局部的に限定された媒質内で凝集され及び/又は互いに釈放可能に結合される一方、該検査領域における局部的条件又は該検査領域における条件の変化により、斯かる磁性粒子が少なくとも部分的に凝集解除され及び/又は互いから分離若しくは減結合されるような第2状態に移行される。この第2状態においては、上記磁性粒子は、平均して、より大きな距離離れる。
【0031】
本発明によれば、磁性粒子は外部磁界(特には、約100mT又はそれ以下の強度を有する)が印加されると飽和されるようにする。勿論、本発明の方法にとっては、より大きな飽和磁界強度も好適である。
【0032】
多くのアプリケーションに対しては、適切な磁界強度は約10mT又はそれ以下でさえある。この強度は、多くの組織及び臓器検査にとってさえも充分である。しかしながら、良好な測定結果は、1mT若しくはそれ以下、又は約0.1mT若しくはそれ以下の周辺の磁界強度でも達成することができる。例示として、濃度、温度、圧力又はpHは、約10mT又はそれ以下、約1mT又はそれ以下及び0.1mT又はそれ以下の磁界強度において、高度の精度及び精細度(definition)で決定することができる。
【0033】
本発明の前後関係において、磁性粒子が飽和状態となり又は飽和される外部磁界なる用語は、約半分の飽和磁化が達成されるような磁界を意味するものと理解されるべきである。
【0034】
好適な磁性粒子は、充分に小さな磁界の場合において飽和状態となり得る磁性粒子である。これのための必要な前提条件は、斯かる磁性粒子が最小のサイズ又は最小の双極子モーメントを持つということである。本発明の前後関係において、磁性粒子なる用語は磁化可能な粒子も指す。
【0035】
好適な磁性粒子は、有利には、ボクセルのサイズと比較して小さな寸法を有し、斯かる磁性粒子の磁化は本発明による方法により決定されるべきである。更に、斯かる粒子の磁化は、好ましくは、可能な限り低い磁界の強度で飽和状態となるべきである。このために必要な磁界強度が低いほど、空間解像能力が高くなり、検査領域において発生されるべき(外部)磁界は弱くなる。更に、磁化の変化の結果として可能な限り大きな出力信号が得られるように、磁性粒子は可能な限り高い双極子モーメント及び高飽和誘導(saturation induction)を有すべきである。医療検査に本方法を使用する場合、当該粒子は非毒性であることが重要である。
【0036】
本発明による方法の好ましい改良例によれば、上記磁性粒子は、磁化をネール回転(Neel’s rotation)により及び/又はブラウン回転(Brown’s rotation)により逆転することが可能な単磁区(monodomain)粒子であることが提案される。
【0037】
好適な磁性単磁区粒子は、好ましくは、単一の磁区(上記単磁区)のみが内部に形成され得、白領域(white regions)が存在しないような寸法とされる。本発明の特に好ましい変形例によれば、好適な粒径は20nmから約800nmまでの範囲内に入り、上限は使用される材料にも依存する。単磁区粒子に関しては、好ましくは、磁鉄鉱(Fe3O4)、マグヘマイト(g-Fe2O3)及び/又は非化学量論的磁気酸化鉄が利用される。
【0038】
一般的には、特にネール回転による急速な磁化逆転が望まれる場合、単磁区粒子が低実効異方性を持つことが有利である。この場合、実効異方性なる用語は、形態異方性(form anisotropy)及び平均結晶異方性から生じる異方性を意味するものと理解されるべきである。上述した場合、磁化方向の変化は粒子の如何なる回転も必要としない。他の例として、高実効異方性を持つ単磁区粒子は、外部磁界が印加された際に磁化逆転がブラウン回転又は幾何学回転により生じることが望まれる場合にも使用することができる。磁化逆転がネール回転及びブラウン回転の両者に基づくものであるような粒子は、特に粘度測定に特別に適している。
【0039】
本発明による方法の代替実施例によれば、当該磁性粒子が硬磁性又は軟磁性多磁区(multidomain)粒子であるとすることができる。これらの多磁区粒子は、通常は、複数の磁区を形成することができるような相対的に大きな磁性粒子である。このような多磁区粒子は、有利には、低飽和誘導を有する。
【0040】
硬磁性多磁区粒子は、高実効異方性を持つ単磁区粒子と本質的に同一の磁気特性を有する。低飽和磁化を持つ軟磁性多磁区粒子は、本発明による方法に使用することができるように、どの様な仕方においても整形することができるという利点を有している。斯かる粒子が非対称な外形を有するなら、これら粒子は検査領域における局部的粘度測定にも特に適している。高飽和磁化を持つ軟磁性多磁区粒子は、有利には、減磁率(demagnetization factor)が小さくなるように構成される。対称的及び非対称的形状の両者を使用することができる。例えば、高飽和磁化を持つ軟磁性活性物質は、自身を磁化することができない球又は立方体に薄い被覆として塗布することができる。例えば円盤又は針の形態のような非対称な形状を持つ高飽和磁化の軟磁性多磁区粒子も、粘度測定のために使用することができる。
【0041】
従って、ネール回転及びブラウン回転により磁化が逆転される単磁区粒子、並びに非対称な外形を有する低又は高飽和磁化の軟磁性多磁区粒子は、検査領域における局部的粘度測定に特に適している。
【0042】
既述したように、当該磁性粒子は、同様に、磁性材料からなる被覆及び非磁性核を持つような粒子も含む。更に、原理的に、低実効異方性を持つ磁性粒子及び高実効異方性を持つ磁性粒子も、かくして、使用することができる。準硬磁石、特には硬磁石の場合、磁化を零にするために、しばしば、高保磁力Hが必要とされる。好適な硬磁性材料は、Al-Ni、Al-Ni-Co及びFe-Co-V合金並びにバリウムフェライト(BaO 6xFe2O3)を含む。
【0043】
本発明による方法の他の態様によれば、特には官能基、DNA配列、RNA配列及び/又はアプタマ(aptamer)等の少なくとも1つの官能結合単位(functional binding unit)と結合された第1磁性粒子、並びに特には官能基、DNA配列、RNA配列及び/又はアプタマ等の少なくとも1つの官能結合単位に結合された少なくとも第2磁性粒子が検査領域に存在する及び/又は導入されるようにすると共に、上記第1磁性粒子の少なくとも1つの官能結合単位と結合的に作用し合う特には官能基、相補的DNA配列、相補的RNA配列及び/又は相補的アプタマ配列等の少なくとも第1官能結合単位、並びに上記第2磁性粒子の少なくとも1つの官能結合単位と結合的に作用し合う特には官能基、相補的DNA配列、相補的RNA配列及び/又は相補的アプタマ配列等の少なくとも第2官能結合単位を有するような少なくとも1つの化合物が当該検査領域に存在し及び/又は導入されるようにする。
【0044】
このようにして、検査領域又は検査溶液において、例えば、第1及び第2磁性粒子に直接的に又は間接的に結合された異なる官能結合単位に対する例えば2以上の固有の結合点を有するような目標分子が存在するか、及び該目標分子がどの濃度で存在するかを確かめることができる。このように、例えば、DNA配列Aを有する第1磁性粒子及びDNA配列Bを有する他の、第2磁性粒子が結合され得る。もし該検査領域又は検査溶液に配列Aと相補的なオリゴヌクレオチド鎖及び配列Bと相補的なオリゴヌクレオチド鎖の両方を有する目標分子も存在するなら、前述した2つの第1及び第2磁性粒子は該目標分子に僅かな距離離れて固定され得る。このようにして、上述した本方法により観察することができるような検出可能な磁化逆転挙動は、検査領域に対して変化する。このようにして、検査領域又は検査溶液に結合相手が存在するか及びどの様な結合相手が存在するかを非常に高速且つ効率的に決定することができる。
【0045】
一方、初期状態が第1及び第2磁性粒子が同一の又は異なる結合単位を介して共通の目標分子上に存在するような状態であるなら、これら結合が例えばDNAse等の適切な酵素により切断された場合、磁性粒子の空間的変化を、同様にして、変化された磁化逆転挙動により検出することができる。
【0046】
磁性粒子に結合されたオリゴヌクレオチド配列及びDNAは、例えばPerez他(J. Am. Chem. Soc., 2002, 124 (12), 頁2856〜2867)により、及びJosephson他(Angew. Chem., Int. Ed. 2001, 40 (17), 頁3204〜3206)により記載されている。
【0047】
磁性粒子は、例えば、これら粒子の表面が完全に又は部分的に官能化(functionalized;例えばシラン化)され、且つ斯様に官能化された粒子の表面の間の結合が1以上のスペーサ分子を介して生成されることによっても、互いに結合することができる。シラン化された磁性酸化物粒子の製造は、例えば米国特許第4,554,088号に記載されている。シラン化された常磁性酸化鉄粒子は、例えばPaesel & Lorei, FrankfurtからBioMag 4100として市販されている。これらの磁性粒子は、0.5μmと1.5μmとの間の直径を有し、官能単位として第1級アミノ基を有している。更に、磁性粒子はトシル塩化物により活性化することができる。
【0048】
他の実施例によれば、当該磁性粒子には、例えば米国特許第4,267,234号に記載されたようなポリグルタールアルデヒド(polyglutaraldehyde)シェル等のポリマ被覆、又は米国特許第4,452,773号に記載されたようなデキストラン被覆を設けることができる。更に、当該磁性材料には、同様に、多糖類(polysaccharides)、タンパク質及び/又はポリペプチドの被覆を設けることもできる。これらの被覆(コーティング)は、当業者にとり既知の態様で、直接的に又は少なくとも1つのスペーサ分子を介して更なるステップにおいて互いに共有的に結合することができる。勿論、当該磁性粒子には、次いで結合が生じるように、例えばポリスチレンラテックスの又はポリアクリルアミドの層等のプラスチック被覆を設けることもできる。選択される結合反応の型式は、本質的に、当該磁性粒子の被覆の表面上の官能基及びスペーサ分子の官能基に依存する。適切な結合反応は、ラジカルに、熱的に、酸性若しくは塩基性条件下で、又は放射により誘発することができる。磁性粒子の有機ポリマによる被覆は、例えば、磁性粒子が、凝集された若しくは一緒に結合された状態においても又は自由な運動の状態においても、磁気吸引力により一緒にかたまる傾向がないという作用効果を更に有している。
【0049】
被覆された又は被覆されていない磁性粒子の適切な塊は、例えば多数の斯様な磁性粒子を、固体の又は粘性の殻(シェル)内に、例えばワックス、オイル又は脂肪の球体又は滴体内に導入することにより生成することができる。更に、塊は多数の磁性粒子をゲル(例えば、特には膨潤可能なゲル等の寒天ゲル、又はグリセリン)に組み込み又は埋め込むことにより得ることができる。
【0050】
本発明による方法を用いて、例えば局部温度、pH及び/若しくは濃度値又はこれらの変化を、当該検査領域における粒子分布の変化が生じる前に該検査領域における斯かる磁性粒子の分布の画像を生成することにより決定することができる。
【0051】
例示として、粒子塊がゲル又はワックスの滴体内に存在する場合、飽和磁化は相対的に高い電界強度においてのみ発生し、結果として、得られた画像では解像度が劣り又は精細度が不足する。上記塊が例えば温度及び/又はpHの変化により溶解し、上記粒子の間の距離が増加すると、磁化曲線は一層急峻なプロファイルを呈し、飽和磁化は相対的に低い磁界強度でさえも達成されるので、一層高い解像度が得られるのを可能にする。変化する粒子分布を、以前に決定された粒子分布(例えば、塩基(basic)状態で決定されたもの)と比較することにより、当該検査領域においてどの様な条件下で状態の変化が生じるか及び斯かる変化の程度を容易に推定することができる。
【0052】
更に、第2の効果によれば、検査領域における磁性粒子間の距離の変化を、本発明による方法の補助により、個々の(即ち、自由な)磁性粒子が磁界内では等方性的に振る舞う一方、2以上の凝集された磁性粒子又はスペーサ分子を介して互いに結合された磁性粒子に関しては異方性的挙動が見られるという事実により可視的にすることもできる。この場合、当該手順は、例えば強い略均一な磁界が1つの方向に印加され、次いで全ての磁性粒子が揃うまで待つというものであり得る。この状態は、本発明による方法を用いて、好ましくは秩序が過度に変化しないように選択された非常に短い測定間隔で決定される。この検査処理は、測定磁界の向きが変化されて繰り返され、これにより、得られた測定データの差から異方性的挙動を推定することができるようにする。異方性が発生する位置を本発明による方法を用いて精密に決定することができると共に、更に、どの様な外部条件下で該状態又は異方性の変化が生じたかも容易に決定することができるので、小さな明確に規定された検査領域において、例えば測定された局部温度、pH及び/又は濃度パラメータに関して有用な情報を決定することができる。
【0053】
更に、代替例として又は付加的に、当該検査領域が本発明による方法を用いて調べられる、即ち無磁界点で走査される場合に、該検査領域におけるパラメータの局部的決定に対する更なる第3の貢献を利用することができる。例えば、小さな検査対象の場合、ヒステリシスの存在により、無磁界点の応答信号は時間遅れ態様で得ることができ、これを、得られた画像における相対的ズレにより可視化することができる。互いに結合された又は凝集した磁性粒子は磁化曲線により囲まれた領域に対して影響を有するので、所与の測定周波数においては、磁性粒子の結合又は凝集に関する結論を出すことができる。この場合、上述したヒステリシス的振る舞いは、通常は、全ての磁性粒子が非常に小さい場合は、決定されたデータに対して影響は有さない。何故なら、この場合、熱エネルギの影響が優勢であるからである。
【0054】
上述した現象により正確且つ信頼性のあるデータを得ることができるようにするためには、上流側に少なくとも1つの校正測定を含めるのが有利であることが分かった。このために、測定は、磁性粒子を変化させる充分に多数の外部的影響の場合において充分に多数の位置で予め決められたシーケンスでなされる。このシーケンスは、受信される信号が、位置から位置へ且つ異なる外部パラメータの場合に充分に大きな程度に変化するように構成されねばならない。校正により測定されていない点及び値は、適切な補間により得られる。このようにして、一連の基本関数が得られる。対象又は検査領域において測定された信号は、これら基本関数により展開(develop)される。展開係数は、その都度異なる外部パラメータに対して、種々の画像を形成するために組み合わせることができる。これら画像において当該検査領域における所与の位置での強度は、この場合、この位置での外部パラメータの目安として使用することができる。
【0055】
従って、本発明の他の態様によれば、本質的に下記のステップを有するような評価方法が提供される:
a)当該検査領域内の低い磁界を有する第1部分領域の移動のための経路を選択するステップ;
b)a)による経路に沿った基準サンプルによる基準データを、少なくとも第1受信コイルを用いて、少なくとも2つの(特には複数の)外部パラメータの場合において、少なくとも1つの位置で(特には複数の位置で)記録するステップ;
c)b)において記録された基準データを、ステップb)において記録されなかった点及び外部パラメータに関して補間及び/又は補外するステップ;
d)当該検査領域内の前記経路を、少なくとも第1及び/又は第2受信コイルを介して、b)により基準サンプルによるデータの記録に使用されたものと同一又は略同一のシーケンスで測定するステップ;及び
e)d)により得られたデータを、b)及び/又はc)による基準データと、特にはエラー自乗最少化により比較するステップ。
【0056】
他の実施例においては、ステップc)に続くステップc’)において、ステップb)及び/又はc)において得られた基準データが、ステップd)における測定に使用された少なくとも第2受信コイルの特性に変換される。
【0057】
本発明によれば、更なるステップf)において、ステップe)における比較により得られたデータは、画像を与えるためのピクセルに対するグレイ値に割り当てられ、相対ピクセル輝度は、決定された外部パラメータの程度を表すようにすることができる。
【0058】
本発明によれば、更なるステップg)において、ステップf)において得られた画像は、合併された画像に表示されるようにすることができる。この場合、例えば、輝度は解像度に関する情報を提供することができ、選択されたカラーは当該検査領域における温度、濃度又はpH等のパラメータに関する情報を提供することができる。
【0059】
特に好ましい実施例では、本発明による方法は、ステップc’)ないしg)又はd)ないしg)が少なくとも2回(特には、多数回)実行されることを特徴とする。
【0060】
検査領域において特性を測定するための適切な経路は、例えば、低磁界強度を持つ部分領域がコイル装置を駆動及び/又は移動させることにより移動されるようにして果たすことができる。更に、低磁界強度を持つ静止型部分領域の場合は、検査対象が所望の態様で移動されるようにすることも可能である。検査対象及び低磁界強度を持つ部分領域の同時的移動も可能である。
【0061】
経路は、勾配磁界における弱磁界又は無磁界部分領域の検査領域を介しての空間的変化により規定される。従って、これは、所謂、零点経路である。適切な経路は、例えば異なる方向ではあるが同一の周波数を持つような2つの交番する磁界により規定することができ、円を描くことができる。他の例として、これら磁界の周波数の比は整数倍とすることができ、折り返し構造につながる。特に密なサンプリング、従って検査領域の参照(referencing)も、当該(零点)経路がリサージュ図形を描く場合に達成される。当該検査領域における各位置において決定される基準データは、該検査領域における少なくとも2つの既知の外部パラメータ(例えば、異なる温度又はpH値)の場合において決定され、参照のために使用される。基準サンプルは、当該検査領域における磁気状態(例えば、粒子タイプ、濃度及び分布)が既知の領域を特徴付ける。参照又は校正は、当該検査領域における測定条件が信頼性を以って調整することができる限り、実際の検査対象に対して及び(生体内)基準サンプルに対しての両者に対して実行することができる。
【0062】
基準データの記録は、参照される検査領域における磁性粒子の特性又は挙動が既に充分に分かっており、全ての必要な基準データが該検査領域の磁気的挙動の単一の記録から計算することができるなら、省略することができる。
【0063】
基準データの記録は、検査領域の可能性のあるパラメータの場合においてコントラスト剤(造影剤)の特性が充分正確に分かっている場合は省略することができる。この様にして、必要な基準データは、それまでに計算することができる。磁化挙動の変化の検出を介してのみ、検査領域における物理的、機械的、化学的若しくは生物学的状態又は状態の変化に関する結論を出すことができる。
【0064】
本発明による方法は、固体の、液体の、粘性の及び気体の検査領域又は媒質における状態の変化を制御又は決定するのに適している。これらの検査領域及び媒質は、生きた若しくは死んだ組織若しくは臓器内、又は生きた若しくは死んだ生物(例えば、微生物、植物若しくは人)内に存在してもよい。これらの検査領域又は媒質は、更に、例えばプラスチック等の有機又は無機物質内に存在しても良い。
【0065】
また、本発明は、本発明による方法に使用することが可能な磁性粒子組成物にも関する。以下に説明するように、本発明者は斯様な磁性粒子組成物の種々の実施例を見出した。
【0066】
磁性粒子組成物の一実施例は、液体媒質内の1以上の気泡を有し、磁性粒子が斯かる気泡と上記液体媒質との間の界面に存在するような磁気気泡組成物である。上記気泡と滴体媒質との間の界面における磁性粒子の間の平均粒子間距離は、好ましくは、斯かる磁性粒子の平均直径の3倍と10倍との間であり、磁性粒子のサイズの好ましくは8倍未満、より好ましくは5倍未満とする。該磁気気泡組成物は、磁性粒子を気泡と液体媒質との間の略界面に局在させるために界面活性剤を含むことができる。好ましくは、当該磁性粒子は界面活性剤分子に付着される。当該磁気気泡のサイズは原理的に広い範囲で変化することができる。生きた生物を検査するための、磁性粒子画像化方法の好ましい使用例においては、該気泡の直径は好ましくは1μメートルと10μメートルとの間である。好ましくは、当該磁気気泡は低い水溶性を持つ気体を有し、特には、該気体は水に実質的に溶解せず及び/又は急速には溶解しない。人体へのアプリケーションにおけるための好適な溶解しない気体は、ペルフルオレーテッド(perfluorated)ガスである。
【0067】
磁気気泡組成物は種々の方法で生成することができる。1つの方法は、液体媒質に気泡を導入することである。液体磁気気泡組成物の欠点は、貯蔵安定性が相対的に低く、生成するのが相対的に困難である点にある。本発明の他の態様によれば、磁気気泡組成物を製造するための磁気気泡前駆体であって、気体ボリュームを囲むシェル(殻)を有すると共に該殻が磁性粒子を含むような磁気気泡前駆体が提供される。磁気乾性気泡は、乾燥状態で使用することができるが、好ましくは、例えば乾性磁気気泡前駆体を適切な液体媒質に溶解することにより、上述したような磁気気泡組成物の製造に使用されるようにする。この乾性磁気気泡前駆体の利点は、相対的に長い保管期間で貯蔵することができる点にある。
【0068】
上記磁気気泡前駆体は、当該検査領域が液体媒質を含む場合は、該検査領域に直接的に投与することができる。該磁気気泡前駆体は、液体媒質中に分散させた後に投与することもできる。前記殻材料は、液体媒質中に分散された場合に当該磁性粒子が回転運動に対する自由度を獲得するように、該液体媒質と接触して少なくとも部分的に溶解するか又は粘性を低下させることができる。該殻材料は、例えば、血液のような水性媒質に溶解する、例えば多糖類、澱粉又は低粘度親水性ポリマ物質等の物質とすることができる。上記殻材料は、当該検査領域で優勢な温度において溶融し若しくは粘性を減じるような物質、又は当該検査領域において優勢な条件において低粘度に分解又は劣化するような物質とすることもできる。
【0069】
上記乾性気泡前駆体は、エーロゾルとしても使用することができる。
【0070】
また、本発明は、本発明による磁気気泡組成物又は磁気気泡前駆体の、磁性粒子画像化技術における撮像剤(imaging agent)であって、特には該技術により検査領域における圧力を画像化するための、更に詳細には音響波により検査領域の弾性特性を画像化するための撮像剤としての使用にも関する。
【0071】
上記気泡は薬剤を含むことができる。該薬剤は、当該検査場所における特定の領域に当該画像化技術によって制御された制御態様で移送され、且つ、例えば磁気歪効果を用いることにより又は電磁照射のような照射により又は音響波により当該気泡を破壊することによって局所的に釈放される。
【0072】
また、本発明は上述した本発明による方法で使用するための磁性粒子組成物のキットであって、第1磁性粒子組成物、第2磁性粒子組成物及び第3化合物を有し、第1磁性粒子組成物において第1磁性粒子は特には官能基、DNA配列、RNA配列及び/又はアプタマ(aptamer)等の少なくとも1つの官能結合単位(functional binding unit)と結合され、第2磁性粒子組成物において第2磁性粒子は特には官能基、DNA配列、RNA配列及び/又はアプタマ等の少なくとも1つの官能結合単位と結合され、
第3化合物は上記第1磁性粒子の少なくとも1つの官能結合単位と結合的に作用し合う特には官能基、相補的DNA配列、相補的RNA配列及び/又は相補的アプタマ配列等の少なくとも第1官能結合単位を有し、該第3化合物は上記第2磁性粒子の少なくとも1つの官能結合単位と結合的に作用し合う特には官能基、相補的DNA配列、相補的RNA配列及び/又は相補的アプタマ配列等の少なくとも第2官能結合単位を有し、第1及び第2磁性粒子が第3化合物と結合した状態における平均の粒子間距離は、第1及び第2磁性粒子が第1の凝集状態で結合され、好ましくは磁性粒子のサイズの3倍と10倍との間の磁性粒子間の距離を有するようなものとする。
【0073】
また、本発明によれば、2以上の磁性粒子を有する磁気組成物であって、これら磁性粒子は、第1状態によれば、ボンド(結合剤)により及び/又は固体の若しくは粘性の媒質に埋め込むことにより空間的に限定された態様で凝集及び/又は一緒に結合され、斯かるボンド及び/又は埋め込み媒質は、減少された凝集度の第2状態へ物理的、化学的及び/若しくは生物学的に変性、溶解及び/又は分解させることができ、上記磁性粒子間の平均粒子間距離は該磁性粒子の平均的サイズの10倍未満であるような磁気組成物が提供される。
【0074】
上記磁気組成物の好ましい実施例においては、上記2以上の磁性粒子は、急速には溶解又は分解しない殻材料により被覆されると共に、減少された凝集度の第2状態へ物理的、化学的及び/又は生物学的に破壊することが可能なボンドにより凝集され且つ一緒に維持される。この実施例の利点は、上記磁性粒子上の殻が、上記ボンドが破壊された後に上記粒子が再凝集する又はかたまるのを防止する点にある。好ましくは、上記殻を含む被覆された磁性粒子の直径は、該磁性粒子の直径の少なくとも2倍とする。
【0075】
上記磁気組成物の状態又は形状は広く規定することができる。これは、例えば、表面の動きの変化又は物理的若しくは化学的状態を検出するために表面上に被覆されたペーストとすることもできる。生きた生物の検査のためには、上記磁気組成物は、好ましくは、粒子の形状又は粒子のエマルジョンとする。凝集された第1状態では、上記磁性粒子の平均粒子間距離は、好ましくは、上述した理由により該磁性粒子の平均サイズの3倍と10倍との間とする。
【0076】
本発明の好ましい実施例は、2以上の磁性粒子を含む被覆された粒子を有するような官能化された磁性粒子組成物であって、上記磁性粒子の間の平均粒子間距離が該磁性粒子のサイズの3倍と10倍との間であり、これら粒子は、第1状態においては凝集され及び/又は一緒に結合されていると共に、物理的、化学的及び/又は生物学的に変性され、溶解され及び/又は分解され得るような固体の又は粘性の被覆材料により被覆されているような磁性粒子組成物に関する。好ましくは、上記磁性粒子は、当該検査領域における条件に依存した程度に膨張又は収縮し、これにより斯かる磁性粒子間の距離を変化させるような被覆材料により被覆される。この官能化された磁性粒子組成物において、上記被覆材料の膨張の程度は、例えば、特には体液のような当該検査領域における水性媒質のイオン強度に依存し、従って斯かるイオン強度を測定するために使用することができる。
【0077】
一般的に、上記磁性粒子組成物における磁性粒子は、所与の磁界勾配において、良好な磁性粒子画像(特には、良好な解像度)が得られるように選択される。未公開のドイツ国特許出願第10151778.5号には、磁性粒子画像化方法が記載されている。この方法においては、20ナノメートルと800ナノメートルとの間のサイズを持つ磁性単磁区粒子又は磁気被覆により被覆されたガラスビードを使用することができることが概略説明されている。しかしながら、相対的に低い磁界勾配で良好な磁気画像化コントラスト及び解像度を達成するためには、改善された磁性粒子組成物が極めて望ましい。本発明者は、改善された磁性粒子画像化特性を有するような磁性粒子を見出した。
【0078】
好ましくは、当該磁性粒子組成物における磁性粒子はステップ状変化を持つ磁化曲線を有し、該ステップ状変化は、該ステップ状変化の変曲点の近辺の振幅デルタ(magnitude delta)の第1磁界強度窓における水性懸濁で測定された磁化変化が、該第1磁界強度窓より下の振幅デルタの磁界強度窓における又は該第1磁界強度窓より上の振幅デルタの磁界強度窓における磁化変化より少なくとも3倍大きいことを特徴とし、デルタは2000マイクロテスラ未満、好ましくは1000マイクロテスラ未満とし、上記磁化のステップ状変化が第1デルタ窓において完了する時間は0.01秒未満、好ましくは0.005秒未満、より好ましくは0.001秒未満、最も好ましくは0.0005秒未満とする。このような磁性粒子は、磁性粒子画像化、特には該画像の良好な解像度を得るために特に適していることが分かった。更に、上記磁性粒子組成物は、上記ステップ状変化が、1テスラの外部磁界において測定された当該磁性粒子組成物の全磁化の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも50%となるような磁化曲線を有することが好ましい。更に、上記ステップ状変化の変曲点の近辺の振幅デルタの第1磁界強度窓における磁化変化が、該第1磁界強度窓より下の振幅デルタの磁界強度窓における又は該第1磁界強度窓より上の振幅デルタの磁界強度窓における磁化変化より少なくとも4倍、好ましくは少なくとも5倍大きいことが好ましい。
【0079】
上記磁性粒子組成物は、磁性粒子画像化技術において使用するのに特に有効である。斯かる粒子は、相対的に低い磁界強度勾配において良好な空間解像度を示す。更に、上記磁性粒子組成物は大きな検査領域を検査するために相対的に高い走査速度を可能にする。例えば、ステップ状変化が好ましくは1000マイクロテスラより低いデルタ値で発生するような医療用磁性粒子画像化における用途の場合、該磁性粒子組成物は、10T/mと0.1T/mとの間の磁界強度勾配において0.1mmと10mmとの間より良好な解像値を有する。本発明による磁性粒子組成物を使用する磁性粒子画像化技術によれば、例えば顕微鏡法におけるような、非常に高い磁界勾配を達成することができるような用途においては、例えば0.1マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲の極端に良好な解像度を得ることができる。
【0080】
上述したような所要のステップ状変化を示す磁性粒子組成物は、本発明による方法及び全ての磁性粒子組成物において使用されることが好ましい。
【0081】
厳格に言うと、磁界強度はH(A/m)で表されることに注意されたい。しかしながら、本出願においては、磁界強度を参照する場合、B磁界を意味する。前述した2000μTの磁界Bは、2mT/μ=1.6kA/mのH磁界、即ち真空中で2mTのB磁界を生じるであろう等価H磁界に相当する。
【0082】
上記磁化曲線及び所要のステップ状変化を測定する方法は下記の通りである。磁性粒子組成物のサンプルが、オプションとして単純な界面活性剤(detergent)の補助により、水に懸濁される。造塊を防止し及び/又は磁性粒子を凝集解除するために、可能な超音波処理を使用することができる。該磁性粒子組成物の濃度は、溶剤1リットル当たり0.01grコア質量未満である。コア質量とは、当該磁性粒子組成物における磁性粒子の質量を意味する。該懸濁物は高速磁力計(即ち、外部磁界が印加されている間にサンプルの磁化を測定する装置)に運ばれる。好適な高速磁力計は専門家により知られている。該磁力計には、同一の位置で少なくとも2つの直交する方向に同時に外部磁界を生成するのを可能にする、即ち所与の最大振幅及び所与の最大変化速度より低い如何なる磁界をも生成するのを可能にする手段が設けられる。磁化は、同一面内の少なくとも2つの直交する方向にも測定される。
【0083】
先ず、飽和磁化が測定される。これのために、約1テスラの磁界が一方向に印加され、少なくとも10秒後に磁化の大きさが測定される。次いで、ステップ状変化を決定するための測定シーケンスが開始する。該シーケンスは、20mTより低い外部磁界の大きさを持つ磁界ベクトルを選択することにより開始する。この磁界は最大で100秒の間印加される。次いで、第2の方向が選択される。この方向は、磁界H及び磁化Mのスカラ値を規定する。該磁界は急速に、好ましくは1ミリ秒未満で、変化され、かくして、該磁界は−H方向に20mTより低い何らかの大きさで位置する。次いで、該磁界は−Hから+Hへ、例えば線形な方法で変化され、(この場合はスカラの、即ち投影された)磁化が記録される。当該磁化曲線は、1μ秒より長いが0.01秒未満内で記録される。該磁化曲線がステップ状変化を示す場合、該磁化のステップ状変化の変曲点を中心としてサイズデルタの第1窓が配置される。同様にして、サイズデルタの窓が該第1窓の上及び下に配置され、必要とされるステップ状変化が、上記窓の各々において磁化の変化を決定することにより評価される。
【0084】
所与の磁性粒子組成物が所要のステップ状変化を有するか否かは、複雑な形で、例えば、粒子のサイズ、粒径分布、粒子の形状、ネール回転に対する減衰定数、磁性材料のタイプ、磁性材料の組成の結晶度及び化学量論等の多くの変数に依存する。当該粒子組成物の粒径分布が狭いことが特に重要であることが分かった。好ましくは、本発明による磁性粒子組成物は、当該粒子の少なくとも50重量%が平均粒径のプラス又はマイナス50%、好ましくは25%、より好ましくは10%の粒径を持つような狭い粒径分布を持つものとする。好ましくは、指定された窓内の粒子の量は、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%であるとする。特に良好な結果は、実質的に10mTより低い、好ましくは5mTより低い、より好ましくは2mTより低い、ネール回転を誘起するのに要する磁界で低磁性異方性を有するような単磁区粒子の場合に得られる。好ましくは、当該磁性粒子は、20ナノメートルと80ナノメートルとの間の、より好ましくは25ナノメートルと70ナノメートルとの間の、最も好ましくは30ナノメートルと60ナノメートルとの間の平均粒径を有するような単磁区粒子であり、ここで、斯かる粒子の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%は平均粒径のプラス及びマイナス10ナノメートルの間の粒径を有する。
【0085】
本発明による磁性粒子組成物の他の実施例においては、当該磁性粒子は、0.001未満の減磁率(demagnetization factor)を持つ略針状の形状を持つ多磁区粒子である。この磁性粒子組成物は、針の形状が不利益とならない非医療用アプリケーションに特に有効である。他の代替実施例では、本発明による磁性粒子組成物は磁性被覆材料により被覆された非磁性コアを有するような磁性粒子を有し、該被覆の厚さは5ナノメートルと80ナノメートルとの間であり、減磁率は0.01未満であり、直径は300μmより小さい。また、これらの代替実施例では、前述したように、小さな粒径分布を有するのが有利である。これらの実施例における磁性粒子の物理的パラメータは、好ましくは、良好な画像化特性を達成するために前述したようなステップ状変化の要件を満たすように選択される。
【0086】
本発明による磁性粒子組成物は、前述したように、例えばフェロス(鉄)及びフェリック(鉄)イオンを含む溶液を、水酸化ナトリウムを含む溶液と接触させること等による例えば沈殿によって先ず磁性粒子を形成することにより製造することができる。本質的に、既知の沈殿処理を使用することができる。また、例えば高速ボールミルを使用して、バルク材料から粒子を粉砕生成することもできる。良好な磁性粒子組成物を得るための次の必須ステップは、粒子の選択及び分離である。最初のステップは、フィルタ処理及び/又は遠心機法によりサイズ選択処理を実行することである。次のステップは、例えば振動する勾配磁界を使用して、粒子の磁気特性に基づく選択処理を実行することである。
【0087】
また、本発明は、磁性粒子の空間分布、並びに/又はその場での物理的、化学的及び/又は生物学的特性若しくは状態変数、特には検査対象の検査領域における物質濃度、温度、pH及び/又は物理的場、並びに/又は物理的、化学的及び/又は生物学的特性若しくは状態変数の変化を決定する装置であって、
a)磁界を、磁界強度の空間分布が、上記検査領域が低磁界強度を持つ第1部分領域及び高磁界強度を持つ第2部分領域からなるように発生する手段と、
b)上記検査領域における両部分領域の空間位置を、上記粒子の磁化が局部的に変化するように変化させる手段と、
c)この変化により影響を受ける上記検査領域内の磁化に依存するような信号を収集する手段と、
d)上記信号を評価して、上記検査領域における上記信号の空間分布に関する情報を得る手段と、
e)好ましくは前述したような校正方法により校正測定を実行する手段であって、基準サンプルに対する基準データを記録する手段と、c)及び/又はd)で得られた信号を該基準データと比較して前記検査領域におけるその場での物理的、化学的及び/又は生物学的特性若しくは状態変数に関する空間的に分解された情報を評価する手段とを有する手段と、
を有するような装置にも関する。
【0088】
本発明は、検査領域における特徴的な物理的、化学的若しくは生物学的特性又は斯かる特性の変化に関する有効な結論を、該検査領域における磁性粒子の互いからの距離の変化のみにより引き出すことができるという驚くべき認識に基づくものである。例示として、2以上の磁性粒子をスペーサ単位を介して互いに共有的に結合することができ、このスペーサは適切な酵素の存在により切断することができ、その結果として、検査領域における特定の酵素の存在及び濃度を決定することができる。上記スペーサは、特定の酵素の存在のみにより切断されるような、特徴的なエステル又はアミド結合を有することもできる。同様に、磁性粒子は、例えば酸性の、塩基性の又は熱的な条件下で切断され得るような1以上の官能基が結合単に統合されるように互いに共有的に結合することもできる。この様にして、斯かる結合された磁性粒子を局所的に限定された態様で分離することができ、その結果として、例えば局部的な温度、圧力及びpH値並びに局部的粒子剪断の事例を決定することができる。また、本発明の1つの利点は、当該検査領域又はその一部に関する物理的、化学的及び生物学的情報を、高空間解像度で得ることができる点にある。これは、生物学的及び非生物学的の両方の対象及び現象に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0089】
以下、本発明を図面に示される実施例を参照して更に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0090】
検査対象1内の磁性粒子に影響を及ぼすことができると共に勾配磁界を発生するために、該検査対象の上側及び下側には複数対のコイルが存在し、斯かるコイルの作用範囲が検査領域2を規定する。検査対象1内の磁性粒子の空間濃度に関する情報を得ることができるように、更なるコイルの対も設けることができる(図示略)。この場合、第1対のコイル4は同軸的な同一に設計された巻線4a及び4bを有し、これら巻線は当該検査対象の上側及び下側に配置されると共に、同一の強度ではあるが反対の方向を持つ電流が流される。これによって発生される勾配磁界が、図1に磁界線6の補助により示されている。コイル対の(垂直)軸の方向において、該勾配磁界は実質的に一定の勾配を有し、この軸上の点8において該勾配磁界は値0に到達する。この無磁界点から開始して、磁界の強度は距離が増加するにつれて3つの全空間方向に増加する。無磁界点8の周囲の領域10(第1部分領域)においては(該領域は点線で示されている)磁界強度は非常に低いので、そこに位置する磁性粒子の磁化は飽和されないが、該領域10の外側では磁化は飽和状態となる。
【0091】
図2は、弱磁界領域10の空間位置が変化した場合、又はこの検査領域における磁界強度が変化した場合の、該弱磁界領域10における自由な、結合されていない且つ凝集されていない個々の磁性粒子の振る舞いを示している。該図からは、磁性粒子の磁化が、零交差部を通過するに際して磁界強度Hの関数として相対的に速く変化すると共に、適切に低い磁界強度において飽和状態に到達することが分かる。該磁界強度が新たな零交差部に対して逆転された場合も、同じ特性が得られる。即ち、ヒステリシスは見られない。磁性粒子の磁気的振る舞いは、例えば適切なコイル装置により容易に正確に検出することができる。
【0092】
対照的に、例えば共有スペーサユニットを介して互いに結合されたもののような、結合された磁性粒子の磁化は、弱磁界領域10内で結合方向及び該結合方向に垂直な方向の両方において、自由な磁性粒子のものとは著しく異なる磁化プロファイルを示す。図3から分かるように、結合された磁性粒子の磁化は、結合方向の磁界強度の関数としてヒステリシスが生じるように変化する。結合された磁性粒子の磁気的振る舞いが、結合方向に対して垂直な磁界強度の変化の場合に観測されると、零交差の領域においては自由な磁性粒子の場合におけるものと比較して余り急峻でないプロファイルの磁気特性が見られる(図4参照)。従って、この場合は、飽和磁化は相対的に高い磁界強度においてのみ達成される。かくして、結合された又は凝集された磁性粒子の該異なる磁気的振る舞いを、どの様な外部条件又は影響変数の下で個々の自由粒子に対して変化が存在するかを確かめるために使用することができる。例えば、どの様な条件下で(例えば、どの温度で、又はどのpHで)共有結合が切断されるかが分かる場合、検査領域における磁化の振る舞いの変化は、そこを支配する条件に関して直接的に結論が引き出されるのを可能にする。勿論、逆の手順、即ち自由な磁性粒子の結合された又は凝集された粒子への移行、及び斯かる移行の程度を、同様の態様で確かめることができる。
【0093】
図5は、磁界強度が変化した場合の、弱磁界領域10における殻内に凝集された磁性粒子の磁気的振る舞いを示している。この場合においても、磁界強度が零交差部に対して変化された場合にヒステリシス挙動が観察され、各々の場合における飽和磁化は自由な磁性粒子のものと比較して相対的に高い磁界強度において達成される。かくして、殻に又は滴に凝集された磁性粒子の場合、飽和磁化の遅れた到達及びヒステリシス挙動の両者が、検査領域における磁性粒子が存在する状態に関しての情報を提供する。例えば、どの様な条件下で例えば粘りのある性質の殻材料が溶解するかが分かる場合、このようにして、検査領域において優勢な条件に関しての情報を得ることができる。
【0094】
上記記載、図面及び請求項において開示された本発明の特徴は、種々の実施例での本発明の実施化にとり、個別的及び何らかの所望の組合せの両者において必須であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、本発明による方法で使用される勾配磁界の磁界線プロファイルを示す。
【図2】図2は、自由な磁性粒子が存在する場合の磁化のプロファイルを示す。
【図3】図3は、結合方向と平行な磁界変化の場合の磁化のプロファイルを示す。
【図4】図4は、結合方向と垂直な磁界変化の場合の磁化のプロファイルを示す。
【図5】図5は、シェル内の粒子凝集の場合の磁化のプロファイルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の検査領域における物理的、化学的及び/又は生物学的特性若しくは状態変数、特には物質濃度、温度、pH及び/又は物理的場、並びに/又は物理的、化学的及び/又は生物学的特性若しくは状態変数の変化を、この検査領域における若しくは該領域の一部における磁性粒子の空間分布の、少なくとも部分領域に対する特には物理的、化学的及び/又は生物学的影響変数の効果の関数としての、並びに/又は前記検査領域の少なくとも部分領域における特には物理的、化学的及び/又は生物学的条件の変化を、下記ステップ、即ち、
a)前記検査領域の少なくとも一部に磁性粒子を、前記検査領域において又は該領域の一部において、調査されるべき前記磁性粒子の少なくとも幾つかが特には共有的に、イオン的に、配位的に又は水素架橋結合若しくはファンデルワールス結合を介して互いに対に又はそれ以上に結合され及び/又は凝集されたような、特には斯かる粒子の移動自由度に関して少なくとも部分的に制限されたような第1状態で導入するか、又は前記検査領域の少なくとも一部に磁性粒子を、前記粒子が凝集解除され及び/又は結合解除されており、且つ、凝集され及び/又は結合され得るような第2状態で導入するステップ、
b)磁界を、前記検査領域に低磁界強度を持つ第1部分領域と高磁界強度を持つ第2部分領域とが生成されるような磁界強度の空間的プロファイルで発生するステップ、
c)前記粒子の磁化が局部的に変化されるように前記検査領域における前記2つの部分領域の特には相対的な空間位置を変化させるか、又は前記第1部分領域における前記磁界強度を変化させるステップ、
d)この変化により影響された前記検査領域における前記磁化に依存するような信号を検出するステップ、及び
e)前記検査領域における物理的、化学的及び/若しくは生物学的状態変数及び/又は該状態変数の変化に関する、並びに/又は前記磁性粒子の空間分布の変化に関する情報を得るために前記信号を評価するステップ、
によって決定することにより、特にその場で決定する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、少なくとも磁性粒子が前記第1状態から前記第2状態へ移行するような状態変数が、特には前記磁性粒子の相対配置が凝集解消及び/又は結合解消に向かって変化することにより並びに/又は個々の磁性粒子が平均して互いに一層大きな距離を呈することにより、検査領域において検査されるか、又は前記磁性粒子が前記第2状態から前記第1状態に移行するような状態変数が検出されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記磁性粒子の前記第1状態から前記第2状態への及び/又は前記第2状態から前記第1状態への前記移行が、熱的に、放射により、酸により、塩基により、電界若しくは磁界により、超音波により及び/又は酵素的に生じることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の方法において、前記検査領域において決定される前記磁性粒子の空間分布の変化が、局部的濃度、温度、圧力、粘度及び/又は局部的pH値と相関されるか又は相関することができることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の方法において、第1状態によれば、凝集された及び/又は一緒に結合された磁性粒子は、物理的に、化学的に及び/又は生物学的に変性され、溶解され及び/又は分解され得るような空間的に限定された固体の又は粘性の媒質内にあることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記媒質が多糖類、澱粉、特にはデキストリン若しくはシクロデキストリン、ワックス、油、脂肪又はゲルを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、前記媒質が微生物、特にはバクテリアを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載の方法において、前記凝集され又は一緒に結合された状態の前記磁性粒子が、粒子状の特には液体の又は気体の媒質の表面の領域に位置することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の方法において、前記磁性粒子は、外部磁界、特には約100mT又はそれ以下の強度を持つ外部磁界が印加されると飽和状態になることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか一項に記載の方法において、前記磁性粒子は、磁化をネール回転により及び/又はブラウン回転により逆転することが可能な多磁区又は単磁区粒子であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一項に記載の方法において、前記磁性粒子が硬磁性又は軟磁性多磁区粒子であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか一項に記載の方法において、前記磁性粒子は、磁化がネール回転及びブラウン回転により逆転されるような単磁区粒子、又は非対称形状の軟磁性多磁区粒子であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1ないし12の何れか一項に記載の方法において、特には官能基、DNA配列、RNA配列及び/又はアプタマである少なくとも1つの官能結合単位と結合された第1磁性粒子、並びに特には官能基、DNA配列、RNA配列及び/又はアプタマである少なくとも1つの官能結合単位に結合された少なくとも第2磁性粒子が検査領域に存在する及び/又は導入される一方、前記第1磁性粒子の少なくとも1つの官能結合単位と結合的に作用し合う、特には官能基、相補的DNA配列、相補的RNA配列及び/又は相補的アプタマ配列であるような少なくとも第1官能結合単位、並びに前記第2磁性粒子の少なくとも1つの官能結合単位と結合的に作用し合う、特には官能基、相補的DNA配列、相補的RNA配列及び/又は相補的アプタマ配列であるような少なくとも第2官能結合単位を有する少なくとも1つの化合物が前記検査領域に存在し及び/又は導入されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1ないし13の何れか一項に記載の方法において、前記評価するステップは、下記のステップ、即ち、
a)前記検査領域内の低い磁界を有する第1部分領域の移動のための経路を選択するステップ;
b)a)による経路に沿った基準サンプルによる基準データを、少なくとも第1受信コイルを用いて、少なくとも2つの、特には複数の外部パラメータの場合において、少なくとも1つの位置、特には複数の位置で記録するステップ;
c)b)において記録された前記基準データを、ステップb)において記録されなかった点及び外部パラメータに関して補間及び/又は補外するステップ;
d)前記検査領域内の前記経路を、少なくとも第1及び/又は第2受信コイルを介して、b)により基準サンプルによるデータの記録に使用されたものと同一又は略同一のシーケンスで測定するステップ;及び
e)d)により得られたデータを、b)及び/又はc)による前記基準データと、特にはエラー自乗最少化により比較するステップ、
により行われることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記ステップc)に続くステップc’)において、前記ステップb)及び/又はc)において得られた前記基準データが、前記ステップd)における測定に使用された少なくとも第2受信コイルの特性に変換されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の方法において、更なるステップf)において、前記ステップe)における比較により得られたデータが、画像を与えるためのピクセルに対するグレイ値に割り当てられ、相対ピクセル輝度が、決定された前記外部パラメータの程度を表すことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、更なるステップg)において、前記ステップf)において得られた画像が、合併された画像に表示されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項14ないし17の何れか一項に記載の方法において、前記ステップc’)ないしg)又はd)ないしg)のシーケンスが、少なくとも2回、特には複数回実行されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項14ないし18の何れか一項に記載の方法において、前記低磁界強度を持つ部分領域が前記コイル装置を駆動及び/又は移動することにより移動されるか、又は低磁界強度を持つ静止型部分領域の場合に前記検査対象が移動されか、又は前記検査対象及び低磁界強度を持つ前記部分領域が相対的に同時に移動されることを特徴とする方法。
【請求項20】
磁化がネール回転及びブラウン回転により逆転される単磁区粒子及び/又は非対称形状の軟磁性多磁区粒子の、特には請求項1ないし19の何れか一項に記載の方法による粘度測定のための使用。
【請求項21】
液体媒質内の1以上の気泡を有し、磁性粒子が前記気泡と前記液体媒質と界面に存在するような磁気気泡組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の磁気気泡組成物において、前記磁性粒子を前記気泡と前記液体媒質との間の実質的に界面に局在させるための界面活性剤を更に含むことを特徴とする磁気気泡組成物。
【請求項23】
請求項22に記載の磁気気泡組成物において、前記磁性粒子が界面活性剤分子に付着されることを特徴とする磁気気泡組成物。
【請求項24】
請求項21ないし23の何れか一項に記載の磁気気泡組成物において、前記気泡の直径が1μメートルと10μメートルとの間であることを特徴とする磁気気泡組成物。
【請求項25】
請求項21ないし24の何れか一項に記載の磁気気泡組成物において、前記気泡が薬剤を含むことを特徴とする磁気気泡組成物。
【請求項26】
請求項21ないし25の何れか一項に記載の磁気気泡組成物において、前記気泡の気体は低い水溶性を有し、特に前記気体は水に実質的に及び/又は急速には溶解せず、好ましくはペルフルオレーテッドガスであることを特徴とする磁気気泡組成物。
【請求項27】
請求項21ないし26の何れか一項に記載の磁気気泡組成物において、前記気泡と前記液体媒質との間の界面における前記磁性粒子間の平均粒子間距離が、前記磁性粒子のサイズの10倍未満であることを特徴とする磁気気泡組成物。
【請求項28】
請求項21ないし27の何れか一項に記載の磁気気泡組成物において、前記磁性粒子が異方性を持つ単磁区粒子であることを特徴とする磁気気泡組成物。
【請求項29】
請求項21ないし28の何れか一項に記載の磁気気泡組成物を製造するための磁気気泡前駆体において、該磁気気泡前駆体が気体ボリュームを囲む殻を有し、該殻が磁性粒子を含むことを特徴とする磁気気泡前駆体。
【請求項30】
請求項29に記載の磁気気泡前駆体において、前記殻は、液体媒質中に分散された場合に前記磁性粒子が運動の自由度を獲得するように、該液体媒質と接触して溶解するか又は粘性を低下させるような材料を有していることを特徴とする磁気気泡前駆体。
【請求項31】
請求項21ないし28の何れか一項に記載の磁気気泡組成物又は請求項29若しくは30に記載の磁気気泡前駆体の、磁性粒子画像化技術における、特には該技術による検査領域での圧力を画像化するための、もっと特定的には音響波による該検査領域の弾性特性を画像化するための撮像剤としての使用。
【請求項32】
第1磁性粒子組成物、第2磁性粒子組成物及び第3化合物を有する磁性粒子組成物のキットであって、前記第1磁性粒子組成物においては第1磁性粒子が特には官能基、DNA配列、RNA配列及び/又はアプタマであるような少なくとも1つの官能結合単位に結合され、前記第2磁性粒子組成物においては第2磁性粒子が特には官能基、DNA配列、RNA配列及び/又はアプタマであるような少なくとも1つの官能結合単位に結合され、前記第3化合物は前記第1磁性粒子の少なくとも1つの官能結合単位と結合的に作用し合う特には官能基、相補的DNA配列、相補的RNA配列及び/又は相補的アプタマ配列であるような少なくとも第1官能結合単位を有し、該第3化合物は前記第2磁性粒子の少なくとも1つの官能結合単位と結合的に作用し合う特には官能基、相補的DNA配列、相補的RNA配列及び/又は相補的アプタマ配列であるような少なくとも第2官能結合単位を有し、前記第1及び第2磁性粒子が前記第3化合物と結合した状態における平均の粒子間距離は、前記第1及び第2磁性粒子が第1の凝集状態で結合され、好ましくは前記磁性粒子のサイズの3倍と10倍との間の磁性粒子間の距離を有するようなものであることを特徴とするキット。
【請求項33】
2以上の磁性粒子を有する官能化された磁性粒子組成物であって、これら磁性粒子は、第1状態によれば、ボンドにより及び/又は固体の若しくは粘性の媒質に埋め込むことにより空間的に限定された態様で一緒に結合され及び/又は凝集され、前記ボンド又は埋め込み媒質は、減少された凝集度の第2状態へ物理的、化学的及び/若しくは生物学的に変性、溶解及び/又は分解させることができ、前記磁性粒子間の平均粒子間距離は該磁性粒子の平均サイズの10倍未満であることを特徴とするような官能化された磁性粒子組成物。
【請求項34】
請求項33に記載の官能化された磁性粒子組成物において、前記2以上の磁性粒子は、急速には溶解又は分解しない殻材料により被覆されると共に、減少された凝集度の第2状態へ物理的、化学的及び/又は生物学的に変性、溶解及び/又は分解され得るようなボンドにより凝集され且つ一緒に維持されることを特徴とする官能化された磁性粒子組成物。
【請求項35】
請求項33に記載の官能化された磁性粒子組成物において、2以上の磁性粒子を含む被覆された粒子を有し、前記磁性粒子の間の平均粒子間距離は該磁性粒子のサイズの3倍と10倍との間であり、これら粒子は、第1状態においては、ボンドにより空間的に限定された態様で一緒に結合され及び/又は凝集されるか、又は物理的、化学的及び/又は生物学的に変性され、溶解され及び/又は分解され得るような固体の又は粘性の被覆材料により埋め込まれることを特徴とする官能化された磁性粒子組成物。
【請求項36】
請求項35に記載の官能化された磁性粒子組成物において、前記磁性粒子は前記検査領域における条件に依存した程度に膨張又は収縮するような被覆材料により被覆され、これにより前記磁性粒子間の距離を変化させることを特徴とする官能化された磁性粒子組成物。
【請求項37】
請求項36に記載の官能化された磁性粒子組成物において、前記被覆材料の膨張の程度が前記検査領域における水性媒質、特には体液のイオン強度に依存することを特徴とする官能化された磁性粒子組成物。
【請求項38】
ステップ状変化を持つような磁化曲線を有する磁性粒子組成物において、前記ステップ状変化は、該ステップ状変化の変曲点の近辺の振幅デルタの第1磁界強度窓における水性懸濁で測定された磁化変化が、該第1磁界強度窓より下の振幅デルタの磁界強度窓における又は該第1磁界強度窓より上の振幅デルタの磁界強度窓における磁化変化より少なくとも3倍大きいことを特徴とし、デルタは2000マイクロテスラより小さく、前記磁化のステップ状変化が第1デルタ窓において完了する時間が0.01秒より小さいことを特徴とする磁性粒子組成物。
【請求項39】
請求項38に記載の磁性粒子組成物の請求項1ないし37の何れか一項における使用。
【請求項40】
磁性粒子の空間分布、並びに/又はその場での物理的、化学的及び/又は生物学的特性若しくは状態変数、特には検査対象の検査領域における物質濃度、温度、pH及び/又は物理的場、並びに/又は物理的、化学的及び/又は生物学的特性若しくは状態変数の変化を決定する装置であって、
a)磁界を、磁界強度の空間分布が、前記検査領域が低磁界強度を持つ第1部分領域及び高磁界強度を持つ第2部分領域からなるように発生する手段と、
b)前記検査領域における両部分領域の空間位置を、前記粒子の磁化が局部的に変化するように変化させる手段と、
c)この変化により影響を受ける前記検査領域内の磁化に依存するような信号を収集する手段と、
d)前記信号を評価して、前記検査領域における前記信号の空間分布に関する情報を得る手段と、
e)請求項14ないし19の何れか一項に記載の方法におけるように校正測定を実行する手段であって、基準サンプルに対する基準データを記録する手段と、c)及び/又はd)で得られた前記信号を該基準データと比較して前記検査領域におけるその場での物理的、化学的及び/又は生物学的特性若しくは状態変数に関する空間的に分解された情報を評価する手段とを有するような手段と、
を有することを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−525506(P2006−525506A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506854(P2006−506854)
【出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050449
【国際公開番号】WO2004/091397
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】