説明

状態検知装置

【課題】サンドに簡単に取り付けることができ、紙幣投入操作の異常やコイン払い出しの異常を当該サンドの消費電流から正確に検知することができる状態検知装置を提供する。
【解決手段】スロットマシンで使用するコインの貸出機であるサンド20の状態を検知する状態検知装置1において、サンド電源2から当該サンドの消費電流を検出する電流センサ11と、検出した消費電流に基づいて、サンドの状態を解析する状態解析部32と、状態を解析した結果に基づいて、サンドが異常状態であるか否かを判定する状態判定部33と、サンドが異常状態であると判定した場合に、異常状態であることを示す情報を出力する出力制御部34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットマシンで使用するコインの貸出機の状態を検知する状態検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコホール等の遊技場に設置されるスロットマシンには、それぞれの装置間に遊技媒体であるコインを貸し出すコイン貸出機(以下、サンドという)が設置されている。利用者が、現金(例えば、1000円札)をサンドの紙幣投入口に投入すると、投入した金額に相当する枚数(例えば、50枚)のコインがコイン払出口から排出され、排出されたコインを使ってスロットマシンで遊技が行われる。
【0003】
近年、サンドに対して電波を発信したり、紙幣の投入において特定の操作を行うことで、サンド内に収納されているコインを不正に入手する利用者が増えている。このような不正に対して、所定の周波数帯域の電波ノイズを検知して、払い出しの動作を停止することで不正を防止する技術が開示されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−259120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す技術は、電波検知装置を筐体内に配設するものであるため、既にスロットマシン間に設置されているサンドに対して電波検知装置を取り付ける場合には、非常に手間と時間が掛かってしまうという課題を有する。特にサンドの横幅は一般的に狭く設計されており、それに併せてスロットマシンが隣接されているため、作業が非常に困難なものとなってしまう。
【0006】
また、特許文献1に示す技術では、特定の紙幣の操作(例えば、偽札の連続投入、紙幣の読み取り不良等)を検知することができないという課題を有する。
そこで、本発明はサンドに簡単に取り付けることができ、紙幣投入操作の異常やコイン払い出しの異常を当該サンドの消費電流から正確に検知することができる状態検知装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本願に開示する状態検知装置は、スロットマシンで使用するコインの貸出機の異常を検知する状態検知装置において、前記貸出機の電源から当該貸出機の消費電流を検出する電流検出手段と、前記電流検出手段が検出した消費電流に基づいて、前記貸出機の状態を解析する状態解析手段と、前記状態解析手段が解析した結果に基づいて、前記貸出機が異常状態であるか否かを判定する異常判定手段と、前記異常判定手段が、前記貸出機が異常状態であると判定した場合に、異常状態であることを示す情報を出力する出力制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
このように、本願に開示する状態検知装置においては、サンドの電源から消費電流を検出し、検出されたサンド全体の消費電流に基づいてサンドの状態を解析するため、サンドから延出する電源コードとホール内のコンセントとの間に装置を設置するだけで、サンドの状態検知が可能となり、装置を設置するための作業の手間を格段に減らすことができるという効果を奏する。
【0009】
(2)本願に開示する状態検知装置は、前記状態解析手段が、前記貸出機の消費電流の値に応じて当該貸出機の状態を動作状態と不動作状態とに区分し、前記異常判定手段が、前記区分された動作状態の時間に基づいて、前記貸出機が異常状態であるか否かを判定することを特徴とするものである。
【0010】
このように、本願に開示する状態検知装置においては、貸出機の消費電流の値に応じて当該貸出機の状態を動作状態と不動作状態とに区分するため、貸出機が動作している状態での異常と動作していない状態での異常とを切り分けて判定することができるという効果を奏する。例えば、動作している状態では、貸出機の特定の動作を解析して異常を検知することが可能となり、動作していない状態では、連続して動作していない時間の長さを解析することで、貸出機の故障や動作不良等の異常状態を検知することが可能となる。
【0011】
(3)本願に開示する状態検知装置は、前記状態解析手段が、前記動作状態における前記貸出機の消費電流の値に応じて、投入された紙幣に関する紙幣動作状態とコインを払い出す払出動作状態とに区分し、前記異常判定手段が、前記区分された紙幣動作状態の時間、及び/又は払出動作状態の時間に基づいて、前記貸出機が異常状態であるか否かを判定することを特徴とするものである。
【0012】
このように、本願に開示する状態検知装置においては、貸出機の消費電流の値に応じて、紙幣に関する動作状態とコインに関する動作状態とに区分するため、紙幣の投入時における特定の動作を解析して紙幣投入に関する異常を検知すると共に、コインの払出時における特定の動作を解析してコインの払い出しに関する異常を切り分けて検知することで、貸出機の故障箇所、劣化箇所、磨耗箇所、不正の種類等の異常状態を明確に検知することができるという効果を奏する。
【0013】
(4)本願に開示する状態検知装置は、前記状態解析手段が、前記紙幣動作状態における前記貸出機の消費電流に基づいて、投入された紙幣が前記貸出機に吸い込まれる紙幣吸込動作状態と投入された紙幣が前記貸出機内の紙幣格納部に格納される紙幣格納動作状態とに区分し、前記異常判定手段が、前記紙幣吸込動作状態、紙幣格納動作状態、及び払出動作状態が連続しており、且つ前記払出動作状態が所定の時間以内である場合に、前記貸出機が異常状態ではないと判定することを特徴とするものである。
【0014】
このように、本願に開示する状態検知装置は、投入された紙幣の吸込動作状態と投入された紙幣の格納動作状態とに区分し、紙幣の吸込み、格納、コイン払い出しの動作が連続し、且つコイン払い出しの動作が所定の時間以内である場合に貸出機が正常であると判定するため、貸出機の状態が通常の動作を行っていることを正確に判定して状態を検知することができるという効果を奏する。
【0015】
(5)本願に開示する状態検知装置は、前記異常判定手段が、前記払出動作状態の時間が所定の時間以上連続する場合に、前記貸出機が異常状態であると判定することを特徴とするものである。
【0016】
このように、本願に開示する状態検知装置は、払出動作状態の時間が所定の時間以上連続する場合に、貸出機が異常状態であると判定するため、例えば通常であれば50枚単位を5秒程度で払い出すはずの貸出機が、5秒を超えて(例えば、7秒程度以上)連続して動作している場合には、上述したような電波の発信による不正やホッパーの制御不良(例えば、枚数をカウントするための光センサやリミットセンサの不良)等により必要以上にコインが払い出されていると判断し、早急に警告して対応することで被害を最小限に抑えることができるという効果を奏する。
【0017】
(6)本願に開示する状態検知装置は、前記異常判定手段にて前記貸出機が異常状態ではないと判定される状態が、所定の時間以下の間隔で連続して繰り返している場合に、前記貸出機が異常状態であると判定することを特徴とするものである。
【0018】
このように、本願に開示する状態検知装置は、正常状態が所定の時間以下の間隔で連続して繰り返している場合に、貸出機が異常状態であると判定するため、例えば、通常は一回分(1000円で50枚)のコインを購入してスロットマシンでの遊技を行い、コインを使い切ってから再度貸出機によりコインの購入を行うのが一般的であるが、スロットマシンで遊技する時間を空けずに、複数回連続して貸出機からコインを購入するのは、偽札や何らかの不正を利用してコインを大量に購入している可能性が高く、このような不正を早期に検知して対応することで、被害を最小限に抑えることができるという効果を奏する。
【0019】
(7)本願に開示する状態検知装置は、前記状態解析手段が、前記払出動作状態における前記貸出機の消費電流の値に基づいて、前記コインを払い出すホッパーの回転方向が正回転である正回転状態と負回転である負回転状態とに区分し、前記異常判定手段が、前記正回転状態から前記負回転状態となり、当該2つの状態の繰り返しが所定の回数以上連続している場合に、前記貸出機が異常状態であると判定することを特徴とするものである。
【0020】
このように、本願に開示する状態検知装置は、ホッパーの回転方向が正回転である正回転状態と負回転である負回転状態とに区分し、正回転状態と負回転状態とが所定の回数以上繰り返している場合に貸出機が異常状態であると判定するため、貸出機内のコイン切れの場合のホッパー動作を正確に検知して、早急に対応することができるという効果を奏する。
【0021】
(8)本願に開示する状態検知装置は、前記異常判定手段が、前記紙幣吸込動作状態が所定の時間以上連続している場合に、前記貸出機が異常状態であると判定することを特徴とするものである。
【0022】
このように、本願に開示する状態検知装置は、紙幣吸込動作状態が所定の時間以上連続している場合に、貸出機が異常状態であると判定するため、例えば、紙幣を紙幣投入口に投入する瞬間に紙幣のみを抜き出すような操作をした場合の貸出機の動作を正確に検知して、不正を見つけることができるという効果を奏する。
【0023】
(9)本願に開示する状態検知装置は、前記状態解析手段が、前記紙幣動作状態における前記貸出機の消費電流に基づいて、前記紙幣吸込動作状態と前記紙幣格納動作状態とに区分すると共に、投入された紙幣を貸出機の外部に排出する紙幣排出動作状態をさらに区分し、前記異常判定手段が、前記紙幣吸込動作状態の直後に前記紙幣排出動作状態となり、当該2つの状態の繰り返しが所定の回数以上連続している場合に、前記貸出機が異常状態であると判定することを特徴とするものである。
【0024】
このように、本願に開示する状態検知装置は、紙幣の吸込動作と格納動作とに区分すると共に紙幣の排出動作を区分し、吸込動作の直後に排出動作となり、この2つの状態の繰り返しが所定の回数以上連続している場合に、貸出機が異常状態であると判定するため、例えば偽札を貸出機に読み込ませようと何度も紙幣の出し入れをしている状態や、紙幣の読み込みセンサが劣化して取り替えが必要である状態を正確に検知して、早急に対応することができるという効果を奏する。
【0025】
(10)本願に開示する状態検知装置は、前記出力制御手段が、前記貸出機の異常状態の種別に応じて出力態様を異ならせることを特徴とするものである。
【0026】
このように、本願に開示する状態検知装置は、貸出機の異常状態の種別に応じて出力態様を異ならせるため、ホールのスタッフが貸出機の故障の状態や不正の有無を出力態様に応じて把握することができ、適切な対応を取り易くなるという効果を奏する。
これまで、本発明を装置として示したが、所謂当業者であれば明らかであるように本発明を方法、及び、プログラムとして捉えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係る状態検知装置のハードウェア構成図である。
【図2】サンドの一例を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る状態検知装置の機能ブロック図である。
【図4】正常状態である場合のサンドの消費電流波形を示す図である。
【図5】連続してコインを購入した場合のサンドの消費電流波形を示す図である。
【図6】収納されているコインが不足した場合のサンドの消費電流波形を示す図である。
【図7】紙幣の投入直後に紙幣投入口から紙幣を抜き出した場合のサンドの消費電流波形を示す図である。
【図8】紙幣の投入後に紙幣が格納されずに排出された場合のサンドの消費電流波形を示す図である。
【図9】第1の実施形態に係る状態検知装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】第1の実施形態に係る状態検知装置における状態判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は多くの異なる形態で実施可能である。従って、本実施形態の記載内容のみで本発明を解釈すべきではない。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0029】
以下の実施の形態では、主に装置について説明するが、所謂当業者であれば明らかな通り、本発明は方法、及び、コンピュータを動作させるためのプログラムとしても実施できる。また、本発明はハードウェア、ソフトウェア、または、ハードウェア及びソフトウェアの実施形態で実施可能である。プログラムは、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、光記憶装置、または、磁気記憶装置等の任意のコンピュータ可読媒体に記録できる。さらに、プログラムはネットワークを介した他のコンピュータに記録することができる。
【0030】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る状態検知装置について、図1ないし図10を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る状態検知装置のハードウェア構成図である。図1において、スロットマシンの遊技媒体となるコインを貸し出すサンドの電源であるサンド電源2と、サンドのコンセントのプラグ3と、サンド電源2とプラグ3との間に接続されサンドの消費電流からサンドの状態を検知する状態検知装置1とを有する。
【0031】
状態検知装置1は、プラグ3とサンド電源2との間に接続されサンドの消費電流を取り出す電流センサ(例えば、CT(Current Transformer))11と、取り出した電流を増幅する増幅回路12と、増幅された電流をフィルタリングするフィルタ回路13と、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路14と、入力された電気信号に基づいて情報処理を行うワンチップマイコン15と、ワンチップマイコン15が行った処理結果を出力する出力回路16と、出力結果を表示する表示LED17と、状態検知装置1の電源を制御する電源回路18と、ワンチップマイコンが情報処理を行う場合の参考データを設定する時間設定スイッチ19とを備える。
【0032】
ワンチップマイコン15では、ROM15cに格納されたプログラムを必要に応じてRAM15bに読み出し、読み出されたプログラムがCPU15aにより実行される。タイマ15dでは時間の計測が行われ、CPU15aの演算に用いられる。
なお、図1において、AD変換回路14とワンチップマイコン15とが一体的であるAD変換回路を有するワンチップマイコンとして捉えてもよい。
【0033】
図2は、サンドの一例を示す図である。図2(A)がサンドの全体斜視図、図2(B)がサンド内のコイン収納部の側面図、図2(C)がサンド内のコイン収納部の上面図である。図2(A)において、サンド20は2台のスロットマシン間に配設され、スロットマシンの利用者が現金と引き換えに遊技媒体であるコインを購入するための装置である。サンド20は、スロットマシン1台につき1台設置される場合もあれば、スロットマシン2台につき1台設置される場合もある。
【0034】
サンド20は、紙幣を投入するための紙幣投入口21と、コインを搬入するコイン搬入口22と、筐体により図示されていないがコインを収納するためのコイン収納部23と、コインを払い出すコイン払出口24と、払い出されたコインの枚数やエラーコード等の情報を表示する表示部25とを備え、電源コードの先にコンセント受けに接続するためのプラグ3を有する。
【0035】
図2(B)、(C)において、コイン収納部23の下方にはコインを払い出すためのホッパー26が備えられており、ホッパー26表面の円形溝内に嵌め込まれたコインを回動により矢印方向に放出する。放出されたコインはリミットスイッチ27により枚数がカウントされ、所定枚数が放出されるとホッパー26の回動が停止する。
【0036】
図2の例に示すような一般的なサンドでは、1000円で50枚のコインが放出されるが、不正等の行為によりリミットスイッチ27を狂わせ、1000円で50枚以上のコインを払い出す利用者が増えている。また、光センサにより払い出されたコインの枚数を計測してホッパー26の動作を制御するサンドもあるが、不正等の行為により光センサを狂わせる利用者も増えている。
【0037】
図2のサンドにおいては、主に不動作時の待機電流、紙幣に関連する動作により消費される電流、コインの払い出しにより消費される電流があり、それらの電流波形に基づいて、本実施形態に係る状態検知装置1がサンドの状態を検知することが可能となる。
【0038】
図3は、本実施形態に係る状態検知装置の機能ブロック図である。状態検知装置1は、サンド電源2から消費電流を取り出す電流センサ11と、電流センサ11が取り出した電流の電流波形を入力する電流波形入力部31と、電流波形入力部31が入力した電流波形に基づいてサンドの状態を解析する状態解析部32と、時間設定スイッチ19により設定された状態判定の基準となる時間情報を設定情報30として格納する設定情報部36と、状態解析部32が解析した解析結果及び設定情報部36に記憶された設定情報に基づいてサンドの状態を判定する状態判定部33と、状態判定部33が判定した判定結果を表示部35に出力する際の制御を行う出力制御部34と、状態判定部33が判定した判定結果を表示する表示部35とを備える。
【0039】
ここで、状態解析部32、及び状態判定部33の処理について詳細に説明する。以下に説明する図4ないし図8の波形は、電流波形入力部31が入力した電流波形のパターン例を示すものであり、電流波形パターンを解析することでサンドの状態を判定する。
【0040】
図4は、正常状態である場合のサンドの消費電流波形を示す図である。図中(a)は不動作状態を示し、状態(b)、(c)、(d)は動作状態を示している。動作状態において、特に状態(b)が紙幣がサンド内に吸い込まれる際の紙幣吸込動作状態を示し、状態(c)が紙幣がサンド内の紙幣格納部に格納される際の紙幣格納動作状態を示し、状態(d)がコインを払い出す払出動作状態を示している。このように、動作状態が紙幣吸込動作状態(b)→紙幣格納動作状態(c)→払出動作状態(d)と連続し、且つ払出動作状態(d)が所定の設定時間(図3において、設定情報部36に格納された設定情報30の情報)以下の場合に、サンドの状態が正常状態であると判定される。このとき、動作状態が紙幣吸込動作状態(b)→紙幣格納動作状態(c)→払出動作状態(d)と連続し、払出動作状態(d)が所定の設定時間より大きい場合は、不正行為により図2におけるリミットスイッチが狂わされ、必要以上にコインが払い出されている可能性が高いため、払い出しの異常状態であると判定される。
【0041】
図5は、連続してコインを購入した場合のサンドの消費電流波形を示す図である。(a)、(b)、(c)、(d)が示す状態は、図4の場合と同じであるが、ここでは図4の正常状態が、所定の間隔以下で複数回連続している。通常、スロットマシンの利用者は、一回分のコイン(例えば、1000円で50枚)を購入し、そのコインを使い切ってから再度コインを購入するものである。しかし、図5に示すように、正常なコインの購入が所定の間隔(例えば、5秒、10秒、30秒等)以下で複数回連続している場合は、偽札を使用するなどの不正行為でコインを大量に購入している可能性が高いため、購入操作の異常状態であると判定される。
【0042】
図6は、収納されているコインが不足した場合のサンドの消費電流波形を示す図である。(a)、(b)、(c)、(d)が示す状態は図4の場合と同じである。(e)はホッパー26が正回転している状態を示し、(f)はホッパー26が逆回転している状態を示す。これは、残りが少なくなったコインが全て払い出されたと認識された後に、図2(C)に示した円形溝内に自然に嵌らなかったコインを嵌めるためにホッパー26を逆回転させることで現れる動作である。このように、ホッパー26の正回転と逆回転とが繰り返されている場合は、サンド内のコインが不足している可能性が高いため、コイン不足の異常状態であると判定される。
【0043】
図7は、紙幣の投入直後に紙幣投入口から紙幣を抜き出した場合のサンドの消費電流波形を示す図である。(a)、(b)が示す状態は図4の場合と同じである。(g)は紙幣がサンドの外部に排出される紙幣排出動作状態を示す。これは、まず紙幣を紙幣投入口に投入することで紙幣吸込動作が開始されるが、その瞬間に紙幣が抜き出されると紙幣吸込動作がしばらく持続され、所定の時間以上経過すると、サンドが紙幣の吸い込みに失敗したということを認識して、紙幣を排出する動作が行われるために現れるものである。このように、紙幣吸込動作状態(b)が所定の時間以上(例えば、3秒以上)連続した場合は、紙幣の投入の際に不正な操作が行われている可能性が高いため、紙幣の吸い込みの異常状態であると判定される。なお、このとき、所定の時間以上の紙幣吸込動作状態(b)のみを解析して判定してもよいが、所定の時間以上の紙幣吸込動作状態(b)の後に紙幣排出動作状態(g)になったことを解析して判定するほうが、より正確な異常検知を行うことができる。
【0044】
図8は、紙幣の投入後に紙幣が格納されずに排出された場合のサンドの消費電流波形を示す図である。(a)、(b)、(g)が示す状態は図7の場合と同じである。これは、紙幣を投入することで紙幣吸込動作が行われるが、紙幣の読み込みに失敗すると紙幣格納部に格納されずに排出されることで現れる動作である。このように、紙幣吸込動作状態(b)と紙幣排出動作状態(g)とが、所定の回数以上(例えば、3回以上)繰り返されている場合は、偽札の使用や、紙幣の読み取り装置の劣化等の可能性が高いため、紙幣の読み込みの異常状態であると判定される。
【0045】
なお、上記各波形の解析において、状態の区分を行う際には区分の開始時点で一瞬大きく変化している突入電流値が検出されたタイミング、又は不動作状態の電流値からの増加量とその増加した電流値が安定している時間とに基づいて状態の区分を行うようにしてもよい。また、区分の終了時を検出する際には、次の区分の開始時を示す突入電流値が検出されたタイミング、又は不動作状態の電流値にまで減衰しその減衰した電流値が安定している時間によって区分の終了時を検出してもよい。
【0046】
状態解析部32、及び状態判定部33による上記の処理が行われると、判定結果が出力される。判定結果は、出力制御部34の制御によりLEDからなる表示部35に表示される。このときの表示態様として、上記各異常状態に応じて可変にすることができる。例えば、異常の種類に応じてLEDの色、点滅、表示記号等を異ならせるようにしてもよい。
【0047】
なお、判定結果の出力は、表示のみではなく音声による出力であってもよい。
また、判定結果は、上述するように表示部35に出力してもよいし、各スロットマシンごとに設置された呼出ランプ(店員の呼び出しやその他種々の情報(例えば、台の状態、不正情報等)を表示する表示装置)に表示するようにしてもよい。
【0048】
次に、本実施形態に係る状態検知装置の動作について説明する。図9は、本実施形態に係る状態検知装置の動作を示すフローチャートである。まず、不動作状態におけるサンドの消費電流値(以下、基準電流値とする)を初期化する(S91)。測定された消費電流値(以下、測定電流値とする)が所定の値(通常の待機電流値程度の値)より大きいかどうかを判定し、小さければサンドの電源線の外れや断線等による電源断状態であると判定する(S97)。
【0049】
測定電流値が所定の値より大きい場合は、その値で所定の時間以上(例えば、15秒以上)安定しているかどうかを判定し(S93)、安定していなければ安定するまで待機する(S94)。安定していれば、測定電流値を基準電流値として設定する(S95)。基準電流値が設定されると状態判定処理が実行される(S96)。
【0050】
基準電流値は、サンドのメーカや機種ごとに値が一定でない場合がある。また、ホール全体における電気の負荷が変動することで、サンドの基準電流値も変動する場合がある。それらのような場合には、基準電流値を装置ごとに一台ずつ設定したり、ホール全体の電気の負荷に応じて基準電流値を再設定する必要があるが、上述したS95までの処理を行うことで、それらの設定を行うことなく、環境に応じて常時適した基準電流値の設定が可能となる。
【0051】
ここで、S96の状態判定処理について説明する。図10は、本実施形態に係る状態検知装置における状態判定処理を示すフローチャートである。まず、測定電流値が基準電流値より大きいかどうかを判定し(S101)、大きくなければサンドの状態を不動作状態と判定する(S102)。測定電流値が基準電流値より大きい場合は、紙幣吸込動作状態が所定の時間以上連続しているかどうかを判定する(S103)。紙幣吸込動作状態が所定の時間以上連続している場合は、図7で説明したように、紙幣の投入の際に不正な操作が行われている可能性があり、紙幣の吸い込み異常状態であると判定する(S104)。
【0052】
紙幣吸込動作状態が所定の時間以上連続していない場合は、紙幣吸込動作状態と紙幣排出動作状態とが、所定の回数以上繰り返しているかどうかを判定し(S105)、繰り返していれば、図8で説明したように、偽札の使用や、紙幣の読み取り装置の劣化等の可能性があり紙幣の読み取り異常状態であると判定する(S106)。S105で繰り返していなければ、紙幣格納動作状態後に所定の時間内の払出動作状態となっているかどうかを判定する(S107)。
【0053】
S107で紙幣格納動作状態後に所定の時間内の払出動作状態となっている場合は、所定の回数以上繰り返されているかどうかを判定し(S108)、繰り返されている場合は、図5で説明したように、偽札を使用するなどの不正行為でコインを大量に購入している可能性があり、サンドに対する不正操作が発生している異常状態であると判定する(S109)。繰り返されていない場合は正常動作状態であると判定する(S110)。
【0054】
S107で紙幣格納動作状態後に所定の時間内の払出動作状態となっていない場合は、ホッパーの回転方向転換が所定の回数以上(例えば、3回程度以上)繰り返しているかどうかを判定し(S111)、繰り返していれば、図6で説明したように、サンド内のコインが不足している可能性があり、コイン不足の異常状態であると判定する(S112)。繰り返していなければ不正行為によりホッパーのリミットスイッチが狂わされ、必要以上にコインが払い出されている可能性があり、不正により払い出しの異常状態であると判定する(S113)。
【0055】
図9に戻って、図10における各判定処理による判定結果が得られると、上述したように、判定結果における状態に応じた出力態様でサンドの状態を出力して(S98)、処理を終了する。
【0056】
以上の前記各実施形態により本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は実施形態に記載の範囲には限定されず、これら各実施形態に多様な変更又は改良を加えることが可能である。そして、かような変更又は改良を加えた実施の形態も本発明の技術的範囲に含まれる。このことは、特許請求の範囲及び課題を解決する手段からも明らかなことである。
【符号の説明】
【0057】
1 状態検知装置
2 サンド電源
3 プラグ
11 電流センサ
12 増幅回路
13 フィルタ回路
14 AD変換回路
15 ワンチップマイコン
15a CPU
15b RAM
15c ROM
15d タイマ
16 出力回路
17 表示LED
18 電源回路
19 時間設定スイッチ
20 サンド
21 紙幣投入口
22 コイン搬入口
23 コイン収納口
24 コイン払出口
25 表示部
26 ホッパー
27 リミットセンサ
30 設定情報
31 電流波形入力部
32 状態解析部
33 状態判定部
34 出力制御部
35 表示部
36 設定情報部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットマシンで使用するコインの貸出機の状態を検知する状態検知装置において、
前記貸出機の電源から当該貸出機の消費電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段が検出した消費電流に基づいて、前記貸出機の状態を解析する状態解析手段と、
前記状態解析手段が解析した結果に基づいて、前記貸出機が異常状態であるか否かを判定する異常判定手段と、
前記異常判定手段が、前記貸出機が異常状態であると判定した場合に、異常状態であることを示す情報を出力する出力制御手段とを備えることを特徴とする状態検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の状態検知装置において、
前記状態解析手段が、前記貸出機の消費電流の値に応じて当該貸出機の状態を動作状態と不動作状態とに区分し、
前記異常判定手段が、前記区分された動作状態の時間に基づいて、前記貸出機が異常状態であるか否かを判定することを特徴とする状態検知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の状態検知装置において、
前記状態解析手段が、前記動作状態における前記貸出機の消費電流の値に応じて、投入された紙幣に関する紙幣動作状態とコインを払い出す払出動作状態とに区分し、
前記異常判定手段が、前記区分された紙幣動作状態の時間、及び/又は払出動作状態の時間に基づいて、前記貸出機が異常状態であるか否かを判定することを特徴とする状態検知装置。
【請求項4】
請求項3に記載の状態検知装置において、
前記状態解析手段が、前記紙幣動作状態における前記貸出機の消費電流に基づいて、投入された紙幣が前記貸出機に吸い込まれる紙幣吸込動作状態と投入された紙幣が前記貸出機内の紙幣格納部に格納される紙幣格納動作状態とに区分し、
前記異常判定手段が、前記紙幣吸込動作状態、紙幣格納動作状態、及び払出動作状態が連続しており、且つ前記払出動作状態が所定の時間以内である場合に、前記貸出機が異常状態ではないと判定することを特徴とする状態検知装置。
【請求項5】
請求項4に記載の状態検知装置において、
前記異常判定手段が、前記払出動作状態の時間が所定の時間以上連続する場合に、前記貸出機が異常状態であると判定することを特徴とする状態検知装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の状態検知装置において、
前記異常判定手段にて前記貸出機が異常状態ではないと判定される状態が、所定の時間以下の間隔で連続して繰り返している場合に、前記貸出機が異常状態であると判定することを特徴とする状態検知装置。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれかに記載の状態検知装置において、
前記状態解析手段が、前記払出動作状態における前記貸出機の消費電流の値に基づいて、前記コインを払い出すホッパーの回転方向が正回転である正回転状態と負回転である負回転状態とに区分し、
前記異常判定手段が、前記正回転状態から前記負回転状態となり、当該2つの状態の繰り返しが所定の回数以上連続している場合に、前記貸出機が異常状態であると判定することを特徴とする状態検知装置。
【請求項8】
請求項4ないし7のいずれかに記載の状態検知装置において、
前記異常判定手段が、前記紙幣吸込動作状態が所定の時間以上連続している場合に、前記貸出機が異常状態であると判定することを特徴とする状態検知装置。
【請求項9】
請求項4ないし7のいずれかに記載の状態検知装置において、
前記状態解析手段が、前記紙幣動作状態における前記貸出機の消費電流に基づいて、前記紙幣吸込動作状態と前記紙幣格納動作状態とに区分すると共に、投入された紙幣を貸出機の外部に排出する紙幣排出動作状態をさらに区分し、
前記異常判定手段が、前記紙幣吸込動作状態の直後に前記紙幣排出動作状態となり、当該2つの状態の繰り返しが所定の回数以上連続している場合に、前記貸出機が異常状態であると判定することを特徴とする異常検知装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の異常検知装置において、
前記出力制御手段が、前記貸出機の異常状態の種別に応じて出力態様を異ならせることを特徴とする異常検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−115321(P2011−115321A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274544(P2009−274544)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(397003091)株式会社明和エレクトロン (7)
【Fターム(参考)】