説明

玩具

【課題】ユーザが楽しむことができるとともに、環境に配慮した玩具を提供する。
【解決手段】卵形に形成した容器11、12と、前記容器11、12内に収容される育成用の種子2と、を備え、前記容器11、12を生分解性の材料から構成し、さらに前記容器11、12に肥料成分を添付又は収容した玩具1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への取り組みの一環として、生分解性樹脂を用いた包装材や玩具等がある(例えば、特許文献1参照)。生分解性樹脂は廃棄された後土壌中で水や二酸化炭素等の無害なものに分解されるため、自然環境を配慮した材料として用いられることが多い。
【0003】
また、緑化促進のため、植物の種子を生分解性の包装袋に内包し、空中散布可能に構成しているものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−182772号公報
【特許文献2】特開2006−56760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、玩具においても、ユーザが楽しみつつ、環境問題に取り組むことができるようなものが求められている。環境問題や緑化に対するユーザの意識を高めることは、自然環境を改善するにあたり重要なことである。
【0005】
本発明の課題は、ユーザが楽しむことができるとともに、環境に配慮した玩具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、
卵形に形成した容器と、
前記容器内に収容される育成用の種子と、を備え、
前記容器を生分解性の材料から構成し、さらに前記容器に肥料成分を添付又は収容した玩具が提供される。
【0007】
請求項2に記載の発明によれば、
前記容器の材料に肥料成分を混入させて添付する請求項1に記載の玩具が提供される。
【0008】
請求項3に記載の発明によれば、
前記容器の内面に肥料成分を塗布して添付する請求項1に記載の玩具が提供される。
【0009】
請求項4に記載の発明によれば、
前記容器の内面に溝を形成した請求項1〜3の何れか一項に記載の玩具が提供される。
【0010】
請求項5に記載の発明によれば、
前記容器の内面全体を複数の領域に分け、各領域の輪郭が滑らかとなるように溝を形成した請求項4に記載の玩具が提供される。
【0011】
請求項6に記載の発明によれば、
さらに遊技用の玩具を備え、
前記容器に前記遊技用の玩具を収容する請求項1〜5の何れか一項に記載の玩具が提供される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、種子を収容する容器を卵形とし、生分解性の材料により構成する。さらに容器には肥料成分を添付又は収容する。これにより、ユーザは種子の生育過程を楽しむことができるとともに、容器を廃棄する代わりに種子2の肥料として土壌に用いることができる。容器は種子とともに土壌中におくことにより生分解するので、自然環境に害無く還元することができ、環境問題に配慮した玩具とすることができる。また、容器は卵に模しているので、ユーザの興味を高めることができる。実際に、植物を育成する際に肥料成分として卵殻を土壌上に置いていることが多く、卵殻に模した容器を土壌に用いた風景はユーザにとってなじみ深いため、観賞用としても非常に適している。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、容器の成形時に容器と一体として肥料成分を添付することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、容器の成形後に肥料成分を添付することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、ユーザが容器を破砕しやすい構造とすることができる。破砕により容器を小片化して土壌中に置くことができ、生分解の速度を高めるとともに土壌中へ均一に肥料成分を供給することが可能となる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、一定の大きさで小片化することができるとともに、破砕時に各破片の輪郭が鋭利となることを防ぐことができ、玩具の安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1及び図2に、本実施形態における玩具1を示す。
図1及び図2に示すように、玩具1は卵形に形成された容器10に、植物の種子2、ひよこの玩具3が収容されてなるものである。玩具1は種子2を土壌に蒔くことで植物の育成を楽しむことができるものである。容器10は収容物を取り出す際に破砕し、その破片を種子2を蒔いた土壌と混ぜ合わせることで肥料とすることができる。
【0018】
容器10は図2に示すように上蓋11と底蓋12からなり、これらを図1に示すように嵌め合わせて嵌合部分をシール留め等することで収容物を密封する。収容物を取り出すときは容器10を破砕して取り出す。
容器10は上蓋11及び底蓋12を嵌合したときに卵形状となるように形成される。形成は射出成形等によって行われ、その質感、色、大きさ、厚み等は卵殻を模したものとされる。
【0019】
容器10は生分解性の材料から構成される。生分解性の材料とは、微生物等の自然界に存在するものの作用により、最終的に水や二酸化炭素等の自然環境に無害なものに分解する有機材料をいう。生分解性の材料としては、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリコハク酸エステル、ポリシュウ酸エステル、ポリカプロラクトン等を用いることができるが、玩具1がユーザの手に触れやすいという観点からすれば、植物由来のポリ乳酸が好ましい。また、射出成形を行うことを考慮すると、熱可塑性のものが好ましい。
【0020】
また、容器10は収容物を取り出す際に破砕するので、ユーザが破砕可能な硬度及び厚さで形成する必要がある他、容器10を卵殻に模しているため、色は白が好ましい。容器10の材料は、これら条件に合った材料を選択するか、或いは複数の材料を混合する等して硬度や色等を調整する。
なお、セルロース、デンプン、キチン等の多糖誘導体、コラーゲン、カゼイン等のペプチド等の比較的低分子量の生分解性の材料を混合することとしてもよいし、硬度調整のための添加剤を混入してもよい。
【0021】
容器10は、ユーザが破砕しやすいようにその内面全体に図3に示すような溝13が形成されている。図3は、上蓋11を開口部分から見た図であるが、底蓋12の内面についても同様に溝13が形成されている。この溝13は、容器10の内面を複数の領域14に分けるように形成するとともに、各領域14の輪郭が滑らかとなるように形成している。溝13の部分は他の部分より厚みが小さいため、圧力を加えた際に溝13に沿って亀裂が入り、溝13によって分けられた領域14ごとに破片が生じることとなる。つまり、形成する溝13によって容器10の内面を分ける各領域14の大きさや形を調整することにより、破砕によってできる破片の大きさを調整したり、破片の輪郭が鋭利とならないように形を調整しているのである。なお、形状は図3に示すものに限らず、多角形や円形等の他の形状にしてもよい。
【0022】
容器10には、種子2を育成する際の肥料成分が添付又は収容される。添付の方法としては容器10の材料に予め肥料成分を混入しておく方法が挙げられる。つまり、容器10の材料に肥料成分を混合して容器10の成形を行う。また、肥料成分を容器10の内面に塗布する方法も挙げられる。液状の肥料成分を塗布する、固体であれば水に溶解させて塗布する、或いは糊剤(生分解性のもの。例えば、セルロース等)と混合して塗布する。この方法によれば、容器10の成形後に肥料成分を塗布すればよく、製造工程上簡易な方法となる。
【0023】
肥料成分としては、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の化合物が挙げられるが、育成する種子2に応じて配合する化合物の種類、配合量等を選択する。上記のように肥料成分を容器10の材料に混入させる方法の場合には、射出成形の際に熱等によって変質しない化合物を選択する。
なお、肥料成分を円い形に固形化して黄色の包装紙で覆うなどし、卵の黄身に模したものを種子2等とともに容器10に収容することとしてもよい。これにより、卵の疑似感をより高めることができる。
【0024】
種子2は、育成用の植物の種子であり、図2に示すようにパネル21により包装されている。パネル21は中央部分に穴が空いており、この穴部分には水溶性の繊維質のシート22が張設されている。一方のパネル21のシート22部分に種子2を置き、その上から他方のパネル21を重ねて種子2を挟み込むことにより、種子2が包装される。
パネル21に包装された状態で種子2を土壌の中へ差し込めば、シート22自体は土中の水分によって溶解するので、種子2のみが土壌中に残ることとなる。よって、ユーザが土に触れることなく種子2を蒔くことが可能である。
【0025】
パネル21には上方に種子2の植物の名称等を記載しておく。この名称部分が見える位置までパネル21を土壌中に差し込ませることにより、どこまで土壌中に差し込めばよいのかを示す指標とすることができるとともに、育成中に何の種子2であるのかを示すことができる。
なお、パネル21ではなく、2枚のシート22により種子2を挟み込みこんで包装することとしてもよい。これによれば、種子2を土壌中に置いた後、シート22は溶解するので、ゴミの削減となる。また、生分解性のフィルムにより種子2を包装し、ユーザ自身が種子2を土壌中に置くこととしてもよい。
【0026】
玩具3は、ひよこを模した遊技用の動物玩具である。ひよことすることにより卵の疑似感を高めることができるが、その他の遊技用の玩具であってもよい。
【0027】
次に、玩具1の製造方法について説明する。
まず、容器10の成形を行う。容器10を構成する生分解性の材料の他、添加剤や肥料成分を混入する場合はこれを混合しておく。そして、例えば熱可塑性を有するポリ乳酸を主な材料として用いる場合には、ポリ乳酸を含む材料の混合物を加熱した後、容器10を卵形にする型に流し込み、射出成形を行う。冷却により容器10は完成する。
なお、肥料成分を塗布する場合には、生分解性の材料に肥料成分を混入せず、成形後に糊剤を用いて容器10の内面に塗布する。
【0028】
種子2は糊剤を塗布したパネル21により挟み込むことにより作製する。また、玩具3はひよこの型を用いて射出成形する。顔料を用いて模様を描くこととしてもよい。
次いで、作製した種子2及び玩具3を底蓋12に収容する。上蓋11と底蓋12を嵌合することで玩具1が完成する。
【0029】
次に、玩具1の使用方法について説明する。
玩具1は購入時、図1に示すように容器10の上蓋11、底蓋12が嵌合された状態となっている。ユーザは卵を割るように容器10を破砕し、容器10内に収容されている種子2、玩具3を取り出す。玩具3はその後遊技に用いたり、置物として用いたりすることができる。
【0030】
次いで、図4に示すように種子2をパネル21ごと土壌中に差し込む。このとき、パネル21には種子2の名称が記載されているので、この名称が見える位置まで差し込む。これにより、土壌中にあるパネル21のシート22部分は土壌中の水分によって溶解し、種子2が直接土壌に置かれることとなる。一方、土壌上のパネル21の部分は種子2の植物が何であるかを示す指標として残る。
【0031】
種子2を土壌に置く際、破砕した容器10を土壌に混ぜ合わせる。破砕によって、容器10内面に形成された溝13に沿って割れ、小領域の破片となっているはずである。ユーザはこの破片を、図4に示すように種子2周辺の土壌に混ぜ合わせるか、或いは土壌上に蒔いてもよい。容器10の破片には肥料成分が添付されているため、この肥料成分が土壌に溶けだして種子2の育成過程において肥料となる。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、種子2を収容する容器10を卵形とし、生分解性の材料により構成する。さらに容器10には肥料成分を添付又は収容する。これにより、ユーザは種子2の生育過程を楽しむことができるとともに、容器10を廃棄する代わりに種子2の肥料として土壌に用いることができる。容器10は種子2とともに土壌中におくことにより生分解するので、自然環境に害無く還元することができ、環境問題に配慮した玩具1とすることができる。さらに、容器10に添付又は収容された肥料成分が土壌を介して種子2に供給されるので、別途ユーザが肥料を用意する必要はなく、種子2の成長を助けることができる。
【0033】
容器10の収容物を取り出す際は破砕すればよいので取り出しが容易である。また、容器10は卵に模しているので破砕時にユーザは卵を割る疑似感を得ることができ、ユーザの興味を高めることができる。破砕後の破片は土壌と混ぜ合わせることにより、土壌中に均一に肥料成分を供給できるとともに、容器10の生分解性を高めることができる。
また、実際に植物を育成する際に肥料成分として卵殻を土壌上に置いていることが多く、これと同様に卵殻に模した容器10を土壌に用いた風景はユーザにとってなじみ深いため、観賞用としても非常に適している。また、生分解する過程を観察することもできるので、ユーザの環境問題に対する意識を高めることができる。
【0034】
容器10はその内面に溝13を設けるので、ユーザが容器10を破砕しやすい構造とすることができる。溝13は容器10内面を複数領域に分けるように形成するため、破砕時には容器10は領域毎の破片となり、容器10を小片化して土壌へ蒔きやすい状態にすることができる。また、各領域の輪郭が滑らかになるように溝13を形成することにより、破砕時に各破片の輪郭が鋭利となることを防ぐことができ、玩具1の安全性を高めることができる。
【0035】
さらに、卵形の容器10にひよこの玩具3を収容するので、卵の疑似感を高めてよりユーザを楽しませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態における玩具の外観図である。
【図2】図1の容器に収容される種子、玩具を示す図である。
【図3】容器内部を示す図である。
【図4】玩具の使用方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0037】
1 玩具
10 容器
11 上蓋
12 底蓋
13 溝
2 種子
21 パネル
22 シート
3 玩具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵形に形成した容器と、
前記容器内に収容される育成用の種子と、を備え、
前記容器を生分解性の材料から構成し、さらに前記容器に肥料成分を添付又は収容した玩具。
【請求項2】
前記容器の材料に肥料成分を混入させて添付する請求項1に記載の玩具。
【請求項3】
前記容器の内面に肥料成分を塗布して添付する請求項1に記載の玩具。
【請求項4】
前記容器の内面に溝を形成した請求項1〜3の何れか一項に記載の玩具。
【請求項5】
前記容器の内面全体を複数の領域に分け、各領域の輪郭が滑らかとなるように溝を形成した請求項4に記載の玩具。
【請求項6】
さらに遊技用の玩具を備え、
前記容器に前記遊技用の玩具を収容する請求項1〜5の何れか一項に記載の玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−95283(P2009−95283A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270201(P2007−270201)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】