説明

珍味蒲鉾及びその製造方法並びに製造装置

【課題】チーズのようなクリーム状の包入食材を包み込んだ珍味チーズの容易な製造手段を提供する。
【解決手段】長尺の蒲鉾シートBの長尺中心にクリーム状の包入食材Cを所定量載置し、蒲鉾シートを短尺方向で二つ折りにして、折り目近傍内に包入食材を包み込んだ帯状体(二つ折りシート)Dに形成した後、長尺方向の所定間隔毎に前記帯状体を表裏から強く押圧して、当該箇所(押圧箇所b)から内包した包入食材を長尺方向へ押し分け、当該箇所を切断して製品個体Eとしてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チーズ等のクリーム状の食品を蒲鉾で包んだ珍味蒲鉾、及びその製造方法、同製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒲鉾に、蒲鉾以外の食品(例えばチーズやサラミ等)を混在させる珍味蒲鉾は従前より広く実施されている。例えばチーズ入り蒲鉾は、単に蒲鉾内にチーズを散在させ、チーズの一部が露出したケーシング入りのものや、竹輪の穴内にチーズを充填したり、笹の葉形状の蒲鉾(笹蒲鉾)に凹所を形成し、当該凹所にチーズを充填するものなどが知られている。
【0003】
然し前記のチーズ入り珍味蒲鉾は、チーズがクリーム状(若しくはペースト状)の場合には、露出チーズが漏出したりしてしまうので、ある程度の固形化が必要である。そこでクリーム状のチーズ等の混入食材が外部に全く露出せず、且つ混入食材が漏出することがないように、混入食材(チーズ)を包入食材として、蒲鉾全体で包んだ形態のチーズ入り蒲鉾の製造手段が従前より提案されている。
【0004】
特許文献1(特開平9−275940号公報)には、蒲鉾生地を予め定められた形状に成形して第1半製品を得、これに周囲に非載置部を残してチーズを載せ、第1半製品とほぼ同形状に成形された第2半製品を、チーズの表面全部を覆うように載せて一体化し、これを加熱処理して製造する手段が開示されている。
【0005】
また特許文献2(特開平9−285272号公報)には、コンベア搬送されるすり身にチーズを間欠的に供給載置し、更にその上にすり身を連続的に供給してチーズを被覆し、チーズが内在していない箇所で切断し、しかる後加熱処理して製造する手段が開示されている。
【0006】
また特許文献3(特開2002−253176号公報)には、魚肉すり身の内側層にチーズ層を含む中間層を巻き付け、さらに前記中間層の上に魚肉すり身の外側層を巻き、しかる後加熱処理してチーズ入り竹輪を製造する手段が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−275940号公報
【特許文献2】特開平9−285272号公報
【特許文献3】特開2002−253176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のチーズ入り蒲鉾は、すり身でチーズを包んだ状態で加熱処理している。即ち生の柔らかいクリーム状の状態で包入食材の包み込みを実現しているもので、製造途中における包入食材の露出(製造後の製品において、包入食品チーズの漏出の原因となる)を防止するには、当然相応の厚さを以って包入食品を包み込む必要があり、蒲鉾部分の比率が大きい食品に限定されてしまう。
【0009】
またすり身状態でのクリーム状包入食材の包み込みとなるため、ペースト状食材を所定の状態で供給(すり身の連続供給、包入食材の間欠供給、すり身の被覆供給)することが必要となり、製造装置自体が複雑になると共に、その制御も煩瑣である。
【0010】
そこで本発明は、すり身によって包入食材を被覆するものではなく、取り扱いが容易な蒲鉾シートで包入食材を包装する新規な珍味蒲鉾及びその製造方法並びにその製造装置を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る珍味蒲鉾の製造方法は、長尺蒲鉾シートの長尺中心にクリーム状の包入食材を所定量載置し、蒲鉾シートを短尺方向で二つ折りにして、折り目近傍内に包入食材を包み込んだ帯状体を形成した後、長尺方向の所定間隔毎に前記帯状体を表裏から強く押圧して、当該箇所から内包した包入食材を長尺方向へ押し分け、当該箇所を切断して個体としてなることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明に係る珍味蒲鉾の製造装置は、すり身をシート状にして供給し、所定の熱処理を行ってシート状の蒲鉾を製造する蒲鉾シート製造供給機構と、進行する蒲鉾シート上の所定位置に所定量のクリーム状包入食材を供給する包入食材供給機構と、蒲鉾シートを搬送する2列に並走するコンベアを、同軸ロールに巻回する横並び進行状態からV状に対向させ、更に並列対向ロールに巻回して対面させてなる二つ折り機構と、二つ折りされた帯状体を挟持すると共に、所定間隔で強圧突部を設けた対向ロールを備えた間欠押圧機構と、前記対向ロールの回転と同期して強圧突部通過位置と一致する切断刃を設けた切断ロール及び受けロールを備えた切断機構とで構成してなることを特徴とするものである。
【0013】
また本発明に係る珍味蒲鉾は、二つ折りシート状の蒲鉾の端縁部分を密着させて、内部にクリーム状食材を封入してなることを特徴とするものである。
【0014】
従って形状が不安定なクリーム状のすり身で包入食材を包むものではなく、ある程度固形化した蒲鉾シートで包むものであるから、安定した製造が容易であり、特に蒲鉾シートを短尺方向で二つ折りにして、包入食材を包み込むものであるから、すり身の二回供給を行なう必要がなく、連続製造が容易になされ、また包入食材を包んだ帯状体を長尺方向の所定間隔毎に表裏から強く押圧して、当該箇所から内包した包入食材を長尺方向に押し分けるので、包入食材の供給を連続的に行なっても、製品個体においては包入食材の全体が蒲鉾シートで封入されることになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記の通りで、蒲鉾シートに包入食材を連続供給し、蒲鉾シートの二つ折りと間欠的な押圧による内部包入食材の移動を行なうことで、蒲鉾シートBで包入食材全体を包み込んだ珍味蒲鉾が容易に製造できたもので、包入食材を包み込んだ珍味蒲鉾において、すり身で包み込んだ後に加熱処理(すり身のゲル化を行う)する製造手段に比較して、蒲鉾の使用量(包む蒲鉾の厚さ)の変更が容易にでき、また製造装置も簡素化することができたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示した製造装置は、製造工程順に、蒲鉾シート製造供給機構1、包入食材供給機構2、二つ折り機構3、間欠押圧機構4、切断機構5、包装ボイル機構6で構成される。
【0017】
蒲鉾シート製造供給機構1は、搬送コンベア11にすり身(一般の魚肉練り製品の原材料となる魚肉すり身、澱粉、その他調味料を混合したもの)Aを、シート状に供給する供給部12と、搬送コンベア11を、蒸気室を通過させてすり身Aをゲル化し、シート状の蒲鉾(蒲鉾シート)Bとする蒸熱部13と、蒲鉾シートBに対して長尺方向に浅い細かい切れ目aを入れる切れ目形成部14と、上下に配置した耐熱コンベア15と耐熱コンベア15の背面に配置した放熱部16からなる焼き部17とで構成される。
【0018】
包入食材供給機構2は、包入食材Cをホッパー状貯蔵部(図示せず)から圧送されたのを受けて、搬送される蒲鉾シートBの上方位置で包入食材Cを放出する放出部(図示)で構成され、後述する二つ折り機構3の水平抑えロール34の搬送上流側に配置してなる。
【0019】
二つ折り機構3は、二列に並走するコンベア31a,31bと、コンベア31a,31bを巻回駆動する同軸ロール32a,32bと対向ロール33a,33bと、同軸ロール32a,32bと対向ロール33a,33bの間に配置した水平抑えロール34及びベルト起立ロール35a,35bで構成される。
【0020】
同軸ロール32a,32bは、蒲鉾シートAの搬送上流に配置し、次に並走するコンベア31a,31bが起立状態に移行するのを抑えるように並走コンベア31a,31bの上方に位置させてなる。その下流に並走するコンベア31a,31bを起立させるために対向させたベルト起立ロール35a,35bを配置し、下流終端にコンベア31a,31bが対面するようにした対向ロール33a,33bを設け、特にコンベア31a,31bの内面には凹凸条を形成し、同軸ロール32a,32b及び対向ロール33a,33bは前記凹凸条と対応する周面を備えさせたものである。
【0021】
間欠押圧機構4は、対向ロール41a,41bの外周に突部42を一定間隔で設けてなるもので、切断機構5は、切断刃ロール51と受けロール52を対向させたもので、間欠押圧機構4と切断機構5は同期させてなるので、切断刃ロール51の切断刃53の位置は、突部42の形成部位と一致させてなる。
【0022】
包装ボイル機構6は、搬送コンベア61と搬送コンベア61の通過位置に設けた湯槽62で構成され、製品個体Eを単数若しくは複数を適宜密封包装を施して、湯槽62を通過させるようにしたものである。
【0023】
而して前記製造装置を使用して本発明の製造方法の実施について説明する。最初に蒲鉾シートBを製出するもので、蒲鉾シート製造供給機構1において、搬送コンベア11にすり身Aをシート状に供給し、搬送コンベア11が蒸気室(蒸熱部13)を通過し、すり身Aをゲル化して蒲鉾シートBとし、更に蒲鉾シートBに対して長尺方向に浅い細かい切れ目aを入れ、更に上下の耐熱コンベア15で挟んで搬送する間に、焼き処理を行うもので、特に下面(製品個体Eの表面となる)は、焼色bが付くような温度(220℃程度)で焼き処理を行う。
【0024】
前記の蒲鉾シートBが二つ折り機構3の並走コンベア31a,31b上に送られると、 包入食材供給機構2の放出部から包入食材(例えばクリーム状のチーズ)Cを進行する蒲鉾シートBの中央に流下させ、並走コンベア31a,31bの起立移行で蒲鉾シートBが二つ折り状態となり、対向ロール33a,33bの箇所を通過することで、包入食材Cを内包した二つ折りシート(帯状体)Dが形成される。
【0025】
そして二つ折りシートDを、間欠押圧機構4を通過させると、対向ロール41a,41bの突部42によって、表裏から強く押圧されて押圧箇所c内の包入食材Cを長尺方向に押し分ける。この際切れ目aは、包入食材Cの移動路としても作用する。
【0026】
前記の押し分けが実施された直後に、切断機構5によって押圧箇所cが切断されて製品個体Eが製出される。
【0027】
更に製出個体Eをトレーやフィルムによって適宜密封包装し、湯槽62を通過させることで、再加熱処理がなされ、再加熱処理によって製品個体Eの完全な殺菌処理や、蒲鉾シートの当接面の再付着を実現するものである。
【0028】
従ってクリーム状の包入食材(勿論チーズに限定されるものではない)を蒲鉾で包み込んだ珍味蒲鉾を容易に製造できたものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明方法の実施形態の製造工程の説明図。
【図2】同製出された製品個体の一部切断平面図。
【図3】同製出された製品個体の一部切断正面図。
【図4】本発明装置の実施形態の製造装置の全体の説明図。
【図5】同二つ折り機構の説明図(平面図)。
【図6】同二つ折り機構の説明図(斜視図)。
【図7】同間欠押圧機構及び切断機構の説明図。
【符号の説明】
【0030】
1 蒲鉾シート製造供給機構
11 搬送コンベア
12 供給部
13 蒸熱部
14 切れ目形成部
15 耐熱コンベア
16 放熱部
17 焼き部
2 包入食材供給機構
3 二つ折り機構
31a,31b コンベア
32a,32b 同軸ロール
33a,33b 対向ロール
34 水平抑えロール
35a,35b ベルト起立ロール
4 間欠押圧機構
41a,41b 対向ロール
42 突部
5 切断機構
51 切断刃ロール
52 受けロール
53 切断刃
6 包装ボイル機構
61 搬送コンベア
62 湯槽
A すり身
B 蒲鉾シート
C 包入食材
D 二つ折りシート(帯状体)
E 製品個体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺蒲鉾シートの長尺中心にクリーム状の包入食材を所定量載置し、蒲鉾シートを短尺方向で二つ折りにして、折り目近傍内に包入食材を包み込んだ帯状体を形成した後、長尺方向の所定間隔毎に前記帯状体を表裏から強く押圧して、当該箇所から内包した包入食材を長尺方向に押し分け、当該箇所を切断して個体としてなることを特徴とする珍味蒲鉾の製造方法。
【請求項2】
包入食材がチーズである請求項1記載の珍味蒲鉾の製造方法。
【請求項3】
蒲鉾シートが折り畳み表面となる面に焼き目を有する加熱処理を施してなる請求項1又は2記載の珍味蒲鉾の製造方法。
【請求項4】
個体製出後に密封包装を施し、再度熱湯による加熱処理を施してなる請求項1乃至3記載のいずれかの珍味蒲鉾の製造方法。
【請求項5】
すり身をシート状にして供給し、所定の熱処理を行ってシート状の蒲鉾を製造する蒲鉾シート製造供給機構と、進行する蒲鉾シート上の所定位置に所定量のクリーム状包入食材を供給する包入食材供給機構と、蒲鉾シートを搬送する2列に並走するコンベアを、同軸ロールに巻回する横並び進行状態からV状に対向させ、更に並列対向ロールに巻回して対面させてなる二つ折り機構と、二つ折りされた帯状体を挟持すると共に、所定間隔で強圧突部を設けた対向ロールを備えた間欠押圧機構と、前記対向ロールの回転と同期して強圧突部通過位置と一致する切断刃を設けた切断ロール及び受けロールを備えた切断機構とで構成してなることを特徴とする珍味蒲鉾製造装置。
【請求項6】
蒲鉾シート製造供給機構に、シート状のすり身を蒸熱する蒸熱部と、長尺方向に浅い細かい切れ目を入れる切れ目形成部と、二つ折りに際して表側となる面を加熱して焼き目を形成する焼き部とを備えてなる請求項5記載の珍味蒲鉾製造装置。
【請求項7】
二つ折りシート状の蒲鉾の端縁部分を密着させて、内部にクリーム状食材を封入してなることを特徴とする珍味蒲鉾。
【請求項8】
クリーム状食材がチーズである請求項7記載の珍味蒲鉾。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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