説明

珪質組成物および製紙におけるその使用

コロイダルポリシリケート由来の粒子と会合したポリシリケートミクロゲルベースの成分を含む水性ポリシリケート組成物。本発明はまた、水性コロイダルポリシリケートとポリシリケートミクロゲルの水相とを混合することを含む、水性ポリシリケート組成物の製造方法に関する。該水性ポリシリケート組成物は、コロイダルシリカよりもより有効であり、従来のポリシリケートミクロゲルよりもより安定である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ポリシリケート組成物およびその製造に関するものである。さらに、本発明は、該水性ポリシリケート組成物を凝集システム(flocculation system)の一部として含む紙および板紙の製造方法も含んでいる。
【0002】
紙または板紙の製造における保持または水抜きシステムの一部としてポリシリケートミクロゲルを使用することは公知である。ポリシリケートミクロゲルの1つの製造方法および製紙プロセスにおけるそれらの使用は、US 4954220に記載されている。ポリシリケートミクロゲルの概説は、December 1994 Tappi Journal (vol. 77, No 12), p. 133-138に記載されている。US 5176891は、ポリケイ酸ミクロゲルを先ず形成すること、続いてこのミクロゲルとアルミネートとを反応させポリアルミノシリケートを形成することを含む、ポリアルミノシリケートミクロゲルの製造方法を開示している。製紙におけるこのようなポリアルミノシリケートミクロゲルの使用も記載されている。
【0003】
US 5176891に記載されるポリアルミノシリケートミクロゲルの作製は、3つの工程を含み、その第1工程は、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を酸性化し、ポリケイ酸ミクロゲルを形成することである。二番目に、水溶性アルミネートがこのポリケイ酸ミクロゲルへ添加され、ポリアルミノシリケートミクロゲルが形成され、次いで最後に、これが希釈され、生成物がゲル化に対して安定化される。
【0004】
WO 95/25068は、ミクロゲルが2工程プロセスによって作製される点で、US 5176891の方法に比べて改善されたポリアルミノシリケートミクロゲルの製造方法を記載している。具体的には、該方法は、アルミニウム塩を含有する酸性水溶液を使用して、0.1〜6重量%のSiOを含有するアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液をpH2〜10.5へ酸性化することを含む。第2の必須工程は、2重量%以下でしかないSiO含有量へゲル化の前に第1工程の生成物を希釈することである。希釈工程がない場合、ポリアルミノシリケートミクロゲルは、ほんの数分間でゲル化する。1%程度の低さにまで希釈した後であっても、これらのミクロゲルは、数日間しか安定ではなく、従って、この期間内に使用されなければならず、そうでなければ生成物は固体ゲルとなる。
【0005】
WO 98/30753は、希釈工程を含まない方法によるポリアルミノシリケートミクロゲルの製造方法を記載している。ポリアルミノシリケートを希釈する代わりに、pHが1〜4へ調節され、このようにしてミクロゲルが4または5重量%までの遥かにより高い濃度で保存されることを可能にしている。しかし、この方法はより濃縮された生成物が製造されることを可能にするが、実際には、生成物の安定性は顕著により良くなる傾向にはなく、この場合もまた、生成物は数日内に消費されなければならず、そうでなければそれはゲルとなる。さらに、pHが4の上位値に近づくにつれて、安定性は低下する傾向にある。
【0006】
前述のポリシリケートミクロゲル生成物は、現場で製造される傾向にあり、何故ならば、このような生成物の出荷は、生成物がゲル化する前に、製紙工場へそれらが配達されそして消費されるに充分な時間を与えない場合があるためである。さらに、2%以下でしかない固体物濃度の希釈ミクロゲルを出荷することは、経済的に採算がとれない場合がある。
【0007】
WO 98/56715は、保存安定性がより高くかつより高い濃度を有するポリシリケートミクロゲルを提供しようとしている。高濃度ポリシリケートおよびアルミネート化(aluminated)ポリシリケートミクロゲルは、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液と、11以下のpHを好ましくは有するシリカ系材料の水相とを混合することを含む。ポリシリケートミクロゲルを作製するために使用されるアルカリ金属ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムなどのあらゆる水溶性ケイ酸塩であると記載されている。アルカリ金属ケイ酸塩溶液と混合されるシリカ系材料は、多種多様の珪質材料より選択され得、これらとしては、シリカ系ゾル、ヒュームド・シリカ、シリカゲル、沈降シリカ、アルカリ金属ケイ酸塩の酸性化溶液、およびスメクタイト型の粘土を含有するシリカの懸濁液が挙げられる。シリカ系材料のpHは1〜11であると記載されているが、最も好ましくは、それは7〜11であることも示されている。ポリシリケートミクロゲルのpHは、通常6を超え、好適には9を超えるが、一般的には14未満であると記載されている。10を超えるpH値を示すミクロゲルが例示されている。実施例2は、作製後1、3、5または10日のミクロゲルの安定性を示している。
【0008】
本発明の目的は、有効な保持または水抜き助剤(retension and drainage aid)であり、かつ、従来のポリシリケートミクロゲルよりも顕著により長い保存安定性を有する珪質生成物を提供することである。また、多くの従来のポリシリケートミクロゲルよりも顕著により高いシリカ固形分を有する製紙に有効な珪質材料を製造することも目的である。従来のコロイダルポリシリケートよりも有効であり、保存安定性が高く、より高い固形分の生成物を提供することもまた望ましい。
【0009】
本発明によれば、本発明者は、コロイダルポリシリケート由来の粒子と会合しているポリシリケートミクロゲル成分を含む、水性ポリシリケート組成物を提供する。このような組成物は、コンポジット(composite)と呼ばれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、従来のコロイダルポリシリケート、ポリシリケートミクロゲルおよび本発明の8%ポリシリケート組成物より選択される珪質材料と共にカチオン性ポリアクリルアミドを使用する場合の脱水値を示している。
【図2】図2は、異なるカチオン性ポリマーを使用するが図1と類似の脱水値を示す。
【図3】図3は、ミクロゲル、従来のコロイダルシリカおよび本発明の組成物より選択される珪質材料を使用する脱水値を示す。
【図4】図4は、本発明の水性組成物、構造化シリカ、ボロシリケートより選択される珪質材料を使用しての脱水性能を示している。
【図5】図5は、脱水性能を示す。
【図6】図6は、2つのコンポジット、ミクロゲルおよび従来のポリシリケートミクロゲルの脱水性能を実証する。
【図7】図7は、2つのコンポジットならびに構造化シリカおよびボロシリケートプロダクトの脱水性能を示す。
【図8】図8は、真空水抜き結果を示す。
【0011】
好ましくは、ポリシリケート組成物は、1.5〜5.5のpHを有する。
【0012】
好ましくは、ポリシリケート組成物は、25℃、100rpmでBrookfield RVT粘度計を使用して測定した場合、500mPa.s未満の粘度を有する。
【0013】
ポリシリケートミクロゲル成分とコロイダルシリカ由来の粒子との会合は、共有結合、例えば、2つのシラノール(ケイ酸)末端基の縮合反応間の反応によって生じ得る、Si−O−Si結合連結を含み得る。
【0014】
【化1】

【0015】
しかし、会合は、ミクロゲル粒子とコロイダルシリカ由来のシリカ粒子との間に会合を生じさせる他のタイプの会合であり得る。会合は、例えば、イオン会合を含み得、または、コロイダルシリカ由来の粒子は、ミクロゲルと物理的に結合され得る。
【0016】
pHは、好ましくは1.5〜5.5の範囲内にあり、しかしより好ましくは3〜5である。予期し得ないことに、本発明者は、前記シリカ組成物は、この範囲内において、特にpHが5に近づくにつれ、より長い期間より安定であることを見出した。
【0017】
本発明の水性シリカ組成物は、それが容易にポンピングされ得るように、充分な流動性を有するべきである。好ましくは、それは450mPa.s未満の粘度を有し、通常、粘度は400mPa.s未満である。より望ましくは、粘度はかなり低く、例えば300未満、または250mPa.s未満、特には150mPa.s未満である。それにもかかわらず、シリカ組成物の粘度は、ウォーターシン(water thin)であり得、少なくとも1mPa.sの粘度を示し得る。典型的に、前記組成物は、新たに作製されたとき、5〜50mPa.s、しばしば20〜40mPa.sの粘度をしばしば示す。本発明の生成物は、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも2週間、最も好ましくは少なくとも1ヶ月間、保存安定性が高い(即ち、流体)のままである。シリカ組成物は、2ヶ月までまたはそれ以上の間、安定のままに維持され得る。保存期間の間、粘度は、上昇し得るが、ゲル化せず、一般的に、500mPa.s未満、好ましくは実質的にこれ未満、特に150mPa.s未満、例えば20〜150mPa.sの範囲内に保たれる。
【0018】
粘度は、25℃、100rpmで、スピンドル2を使用するBrookfield RVTDV−II粘度計を使用して測定しされる。
【0019】
驚くべきことに、コロイダルシリカ由来の粒子の存在は、ミクロゲルの安定性を改善する原因であるようである。理論に制限されないが、シリカ組成物がより濃縮された形態にある場合、ミクロゲルとの会合におけるこれらのシリカ粒子の存在は、ゲル化を防止するかまたは少なくともゲル化速度を顕著に低下させるか立体障害を誘導し得ると考えられる。それにもかかわらず、本発明者は、製紙ストック(セルロース懸濁液)への希釈および/または添加時に、シリカ組成物は、充分に活性であり、保持または水抜き助剤として有効に機能することを見出した。
【0020】
一般的に、前記ポリシリケート組成物のSiO固形分は、該シリカ組成物が製紙プロセスにおいて使用される際に希釈され得るが、作製においてミクロゲルの従来の製造方法によって達成され得るもの(即ち、2重量%以下でしかない)を超える。通常、作製されるシリカ組成物の濃度は、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも4重量%である。より好ましくは、SiO含有量は、少なくとも5.5重量%であり、15または20重量%ほどまたはそれ以上であり得る。しばしば、SiO固形分は、5.5〜12重量%の範囲にあり得る。
【0021】
本発明に従うシリカ組成物は、通常、少なくとも20nmの体積平均粒径を有する。しばしば、平均粒度は、かなりより大きく、120nmほどまたはそれ以上であり得る。好ましくは、それは、少なくとも25nm、典型的に30〜100nm、特には40〜90nmの範囲内である。体積平均粒径は、MPT−2自動滴定装置を備えるMalvern nano ZSを使用して測定され得る。条件:温度20℃および使用される時間60秒。
【0022】
場合によっては、水性ポリシリケート組成物は、水性媒体にわたって分配されたポリシリケート組成物粒子のみを、本質的に含有し得る。しかし、水性ポリシリケート組成物は、場合によっては、組成物粒子と未会合ポリシリケートミクロゲル粒子との水性混合物であり得る。他の場合には、水性組成物は、会合粒子とコロイダルシリカ由来の未会合シリカベース粒子との混合物を含有し得る。水性ポリシリケート組成物は、全て水性媒体中に分配された、シリカ会合粒子、いくらかの未会合ミクロゲル、およびいくらかの未会合コロイダルシリカ由来粒子を含み得る。シリカ組成物粒子の構造は、少なくとも20nm、しばしばかなりより大きい、例えば120nmまでのサイズの多粒子状(polyparticulate)ミクロゲルとして一緒に連結されたしばしば約1〜2nmの範囲内の一次粒子から構成されているミクロゲル粒子を含有すると考えられる。コロイダルシリカ由来粒子は、ミクロゲルのオープン構造内に配置され得るか、または会合してミクロゲル周りに配置され得る。1つの形態において、ポリシリケートミクロゲル粒子は、コロイダルシリカの粒子をコーティングし得る。一般的に、コロイダルシリカ由来粒子は、ミクロゲルの一次粒子よりも大きいが、多粒子状ミクロゲル(polyparticulate microgel)よりも小さい。典型的に、粒子は、3〜10nmの範囲内、しばしば4または5nmのサイズを有し得る。ポリシリケート組成物は、粒度の単峰性分布を有し得、またはそれは二峰性分布であり得る。シリカ組成物の成分の粒度は、レーザー後方散乱を使用する方法を適用することによって測定され得る。
【0023】
本発明によれば、本発明者はまた、水性ポリシリケート組成物の製造方法を提供する。該方法は、水性コロイダルポリシリケートとポリシリケートミクロゲルの水相とを混合することを含む。
【0024】
ポリシリケートミクロゲルは、特に、希釈工程を回避するWO 98/30753に従ってそれが作製された場合、4または5重量%までの活性SiO含有量を有し得る。とはいえ、どのミクロゲル製造方法が使用されたとしても、本発明の方法において使用される場合、それは、しばしば、2重量%以下でしかない活性SiO含有量を有し得る。一般的に、ミクロゲル組成物は、酸性(即ち、pH7未満)である傾向にあり、典型的にpH1〜4の範囲内にある。一般的に、ミクロゲルの表面積は少なくとも1000m/gである。好ましくは、これは1200〜1700m/gの範囲内にある。
【0025】
本方法において使用される水性コロイダルポリシリケートは、ミクロゲルのそれを超える活性SiO含有量を有するべきであり、一般的に、これは、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも14または15重量%である。SiO含有量は、25%ほどまたはそれ以上であり得るが、一般的に、20重量%以下である。通常、水性コロイダルポリシリケートは、7を超える、一般的には8を超えるpHを有し、10.5ほどまたはそれ以上であり得、しかし、好ましくは、それは、8.5〜10.0の範囲内にある。
【0026】
本発明に従って使用されるコロイダルポリシリケートは、一般的に、1000m/g未満、しばしば顕著により低い、例えば700m/g未満の表面積を有する。典型的に、表面積は、200m/gより大きく、通常300m/gより大きい。表面積は、通常、400〜600m/g、例えば450〜500m/gである。表面積は、Journal of Analytical Chemistry, Vol 28, No.12 Dec 1956, p.1981-1983に記載されるようなSears滴定法を使用して測定され得る。
【0027】
コロイダルポリシリケートは、例えば、ポリシリケートの粒子を好適なアルミニウム化合物、例えばアルミン酸Naによって表面処理をすることによって、アルミネート化され得る。
【0028】
水性ポリシリケート組成物の製造方法において、水性コロイダルポリシリケートを、好ましくは、ポリシリケートミクロゲルの水相へ添加する。次いで、pHを1.5〜5.5へ調節することがしばしば好ましい。場合によっては、pHを1.5〜3へ調節することが望ましい場合があり、他の場合においては、pHを3〜5へ調節する場合に、所望の結果が得られる。より好ましくは、水性コロイダルポリシリケートおよび水性ポリシリケートミクロゲルは、一緒に混合され、そしてpH調節の前に少なくとも2分間経過させる。なおより好ましくは、pHは、少なくとも5分間後、特には少なくとも10分間後、最も好ましくは少なくとも20分間後に調節される。水性ポリシリケートと水性ポリシリケートミクロゲルとの組み合わせは、より長い時間の後に、例えば2時間までまたはそれ以上後に、pH調節され得る。それにもかかわらず、pH調節は、通常、90分まで、通常60分以下の期間中に行われる。
【0029】
一般的に、本発明の水性ポリシリケート組成物は、10〜60%、例えば35〜55%の範囲内のS値を有し得る。
【0030】
これは、イオン交換樹脂、または酸もしくは二酸化炭素などの酸前駆体の添加を使用して達成され得る。好ましくは、酸は、25℃で測定した場合、4未満、好ましくは2未満のpKaを有する。酸は、必要とされる範囲内へpHをもっていくことができる任意の好適な酸であってもよく、好ましくは、強鉱酸、例えば、硫酸または塩酸である。それにもかかわらず、場合によっては、酸性化する必要がない場合があり、何故ならば、水性ポリシリケートとポリシリケートミクロゲルとの比率に依存して、得られるpHが、さらに酸性化することなしに、1.5〜5、好ましくは3〜5の範囲内にであってもよいためである。
【0031】
予想外なことに、ポリシリケートミクロゲルとコロイダルポリシリケートとのこの組み合わせは、たとえpHが1.5〜5の範囲内にあり得るとしても、固体ゲルを形成せず、何故ならば、このpHでは未反応コロイダルポリシリケートはゲルを容易に形成するためである。
【0032】
ポリシリケートミクロゲルと水性コロイダルポリシリケートとの比は、好適には、活性シリカの重量で1:99〜99:1の範囲内であり得る。好ましくは、前記比は、1:1〜1:60、より好ましくは1:5〜1:50、最も好ましくは1:15〜1:45の範囲内にある。
【0033】
好ましくは、水性ポリシリケートミクロゲルを、先ず、好適な反応容器中へ導入し、次いで、水性コロイダルポリシリケートを導入し、そして水性ポリシリケートミクロゲルと混合する。または、逆の順序の添加が適用され得、または両成分の同時添加が使用され得る。この逆の順序において、ポリシリケートミクロゲルの添加の前に、水性コロイダルポリシリケートを酸性化することがしばしば好ましい場合がある。場合によっては、反応容器中へ同時にコロイダルポリシリケートおよびポリシリケートミクロゲルを大胆に添加することが望ましい場合がある。
【0034】
本方法の好ましい形態において、水性コロイダルポリシリケートは、制御された添加によって水性ポリシリケートミクロゲル中へ添加される。可変な速度が場合によっては望ましいかもしれないが、これは、例えば、実質的に一定の速度で水性コロイダルポリシリケートを導入することを含み得る。一般的に、水性コロイダルポリシリケートは、少なくとも0.1ml/sの速度で添加される。大規模な工業的プロセスにおいて、遥かにより高い速度で、例えば100ml/sまでまたはそれ以上で、コロイダルポリシリケートを導入することが望ましい場合がある。好ましくは、ポリシリケートは、0.1〜20ml/s、しばしば0.2〜10ml/s、より好ましくは0.5〜5ml/s、特には1〜3ml/sの速度で導入される。
【0035】
望ましくは、水性ポリシリケートミクロゲルは、コロイダルポリシリケートの添加の間、継続的に、撹拌されるかまたはかき混ぜられる。撹拌またはかき混ぜの量は、水性ポリシリケートミクロゲルにわたってコロイダルポリシリケートが分配されることを可能にするに充分であるべきである。水性ポリシリケート組成物の作製は、水性ポリシリケートミクロゲルおよび水性コロイダルポリシリケートを導入するための従来の手段を使用し、かつ、好適な量の混合を可能にするための従来の羽根車(impeller)手段を使用する、従来の反応容器を使用し得る。成分を導入しそして共に混合することを可能にする他の好適な容器が使用され得る。
【0036】
ポリシリケートミクロゲルは、任意の公知の先行技術、例えば、US 6274112、US 6060523、US5853616、US5980836、US5648055、US5503820、US5470435、US5482693、US5312595、US 5176891、US 4954220、WO 95/25068およびWO 98/30753に従って作製され得る。
【0037】
特に好ましい方法において、コロイダルポリシリケートは、ポリシリケートミクロゲル中へ混合され、中性pH、好ましくは6〜8、より好ましくは6.5〜7.5にある混合物を提供する。コロイダルポリシリケートは、上記に定義される通りであり得、好ましくは、450〜600m/g、より好ましくは500〜550の範囲内の表面積を有する。加えて、コロイダルシリカは、典型的に、0.4%〜0.8%、例えば0.5〜0.7%のNaOレベル、および、13〜20%、特には15〜18%の活性シリカレベルを有する。コロイダルポリシリケートは、表面処理され得、しかし、好ましくは、それは表面処理されず、しかし微量のアルミニウムを含有し得る。ポリシリケートミクロゲルは、本明細書に明記されるポリシリケートミクロゲルの任意のものであり得るが、好ましくは、それはUS 6274112および/またはUS 6060523に従って作製される。
【0038】
この特に好ましい態様において、コロイダルポリシリケートおよびポリシリケートミクロゲルの混合物は、ある期間の後に、酸性化される。好ましくは、これは、少なくとも15分、より好ましくは少なくとも20分である。前記期間は、90分ほどであり得、通常、50分または60分以下、特に30分または40分までである。または、一般的に、前記混合物は、好適な粘度が達される場合に、酸性化されるべきである。通常、この粘度は、100mPa.sよりも顕著に下であり、特に1〜60mPa.sの範囲内、特に20〜50mPa.sの範囲内にある。
【0039】
酸性化は、本明細書に定義される任意の好適な手段を使用して行われ得、好ましくは、前に定義されるように、強鉱酸である。酸性化は、1.5〜3.5、特に1.5〜2.5のpHとされるべきである。
【0040】
予想外なことに、本発明者は、今回、この特に好ましい形態が、構成要素ポリシリケートミクロゲルとほぼ同じくらいかまたは同じくらい有効であるポリシリケート組成物を提供することを見出した。しかし、この生成物は、一般的に、遥かにより低い量のミクロゲルおよび遥かに高いレベルのコロイダルポリシリケート成分を含有する。一般的に、この特に好ましい形態に従う好ましい生成物は、活性シリカ基準で10〜30重量%のポリシリケートミクロゲル、特に15〜25%、および、活性シリカ基準で70〜90%コロイダルポリシリケート、特に75〜85%を使用して作製される。
【0041】
一般的に、この好ましい態様によって作製された、本発明の水性ポリシリケート組成物は、3.5〜20%、特に好ましくは4.5〜15%、より特には8〜13%のシリカ固形分を有する。生成物の最終pHは、一般的に、1.5〜3.5の範囲内、より好ましくは1.9〜3.5の範囲内にある。この特に好ましい態様に従う生成物のS値は、10〜55%、特に16〜44%の範囲内にある。
【0042】
水性コロイダルポリシリケートは、例えばUS 4388150またはEP464289に記載されるような、任意の従来のコロイダルポリケイ酸またはシリカゾルであり得る。水性コロイダルポリシリケートは、例えばWO00/66491またはWO00/66192またはWO2000075074に記載されるような、例えば10〜45%のS値を有する、構造化ポリシリケートであり得る。水性コロイダルポリシリケートは、例えば、EP1023241、EP1388522に記載されるようなボロシリケート、ならびに市販の構造化シリカ、例えば、BMA NP 780(商標)、BMA NP 590(商標)およびNalco 8692(商標)であり得る。
【0043】
本発明に従うシリカ組成物は、紙または板紙の製造方法において凝集剤として使用され得る。
【0044】
本発明のさらなる局面において、本発明者は、セルロース懸濁液を形成し、該懸濁液を凝集させ、スクリーンにおいて該懸濁液から水を抜き、シートを形成し、次いで該シートを乾燥させることを含む、紙または板紙の製造方法であって、ここで、
i)アニオン性、非イオン性、カチオン性または両性ポリマー、および
ii)本明細書に定義される水性ポリシリケート組成物、または任意で該水性ポリシリケート組成物の水性希釈物
を含む凝集システムを使用して該懸濁液を凝集させる方法を提供する。好ましくは、前記ポリマーは、カチオン性または両性のいずれかである。
【0045】
ポリシリケート組成物およびアニオン性、非イオン性、カチオン性または両性ポリマーは、任意の従来の方法によってセルロース懸濁液中へ導入され得る。両方の成分を、別々にまたは合わされた混合物としてのいずれかで、同時に導入することが望ましい場合がある。好ましくは、凝集システムの成分は、連続的にセルロース懸濁液中へ導入される。場合によっては、アニオン性、非イオン性、カチオン性または両性ポリマーの添加より前に、水性ポリシリケート組成物をセルロース懸濁液中へ添加することが望ましい場合がある。しかし、先ずポリマーを添加し、次いでポリシリケート組成物を添加することが、一般的により好ましい。
【0046】
アニオン性、非イオン性、カチオン性または両性ポリマーは、保持または水抜き助剤として製紙プロセスにおいて使用される従来のポリマーであり得る。ポリマーは、線形、架橋、またはそうでなければ構造化、例えば、分岐であり得る。好ましくは、ポリマーは、水溶性である。
【0047】
前記ポリマーは、実質的に水溶性のアニオン性、非イオン性、カチオン性および両性ポリマーからなる群の任意のものであり得る。ポリマーは、修飾されているかまたは未修飾であり得る、デンプンまたはグアーガムなどの天然ポリマーであり得る。または、ポリマーは、合成であり得、例えば、アクリルアミド、アクリル酸、アルカリ金属もしくはアンモニウムアクリレート、または四級化ジアルキルアミノアルキル−(メタ)アクリレートもしくは−(メタ)アクリルアミドなどの水溶性エチレン性不飽和モノマーを重合することによって作製されるポリマーであり得る。通常、ポリマーは、固有粘度が少なくとも1.5dl/gとなるように、高分子量を有する。好ましくは、ポリマーは、少なくとも4dl/gの固有粘度を有し、これは、20または30dl/gほどであり得る。典型的に、ポリマーは、5〜20dl/g、例えば6〜18dl/g、しばしば7または10〜16dl/gの固有粘度を示す。
【0048】
ポリマーの固有粘度は、ポリマーの活性含有量に基づいてポリマーの水溶液(0.5〜1%w/w)を作製することによって測定され得る。この0.5〜1%ポリマー溶液2gを、pH7.0へ緩衝化されている(脱イオン水1リットル当たり1.56gリン酸二水素ナトリウムおよび32.26gリン酸水素二ナトリウムを使用)2M塩化ナトリウム溶液50mlを含む容量フラスコ中において100mlへ希釈し、そして全体を脱イオン水で100mlマークまで希釈する。ポリマーの固有粘度は、1M緩衝化塩溶液中25℃でナンバー1懸濁レベル(suspended level)粘度計を使用して測定する。
【0049】
水溶性合成ポリマーは、任意の水溶性モノマーまたはモノマーブレンドから誘導され得る。水溶性によって、本発明者は、該モノマーが25℃で少なくとも5g/100ccの水中溶解度を有することを意味する。一般的に、水溶性ポリマーは、同一の溶解度基準を満たす。
【0050】
前記ポリマーがイオン性である場合、イオン含有量は低〜中程度であることが好ましい。例えば、該イオン性ポリマーの電荷密度は、5meq/g未満、好ましくは4、特に3meq/g未満であり得る。典型的に、イオン性ポリマーは、50重量%までのイオン性モノマー単位を含み得る。ポリマーがイオン性である場合、それは、アニオン性、カチオン性または両性であり得る。ポリマーがアニオン性である場合、それは、少なくとも1つのモノマーがアニオン性または潜在的にアニオン性である、水溶性モノマーまたはモノマーブレンドから誘導され得る。アニオン性モノマーは、単独で重合され得るか、または任意の他の好適なモノマー、例えば任意の水溶性非イオン性モノマーと共重合され得る。典型的に、アニオン性モノマーは、任意のエチレン性不飽和カルボン酸またはスルホン酸であり得る。好ましいイオン性ポリマーは、アクリル酸または2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸より誘導される。水溶性ポリマーがアニオン性である場合、それは、好ましくは、アクリル酸(またはその塩)とアクリルアミドとのコポリマーである。
【0051】
ポリマーが非イオン性である場合、それは、任意の水溶性非イオン性モノマーまたはモノマーのブレンドから誘導される、任意のポリアルキレンオキサイドまたはビニル付加ポリマーであり得る。典型的に、水溶性非イオン性ポリマーは、ポリエチレンオキサイドまたはアクリルアミドホモポリマーである。
【0052】
好ましいカチオン性水溶性ポリマーは、カチオン性または潜在的にカチオン性の官能性を有する。例えば、カチオン性ポリマーは、遊離アミン基を含み得、それは遊離アミン基をプロトン化するに充分に低いpHを有するセルロース懸濁液中へいったん導入されるとカチオン性となる。しかし、好ましくは、カチオン性ポリマーは、第4級アンモニウム基などの、永久にカチオン性の電荷を有する。望ましくは、ポリマーは、水溶性エチレン性不飽和カチオン性モノマーまたはモノマーのブレンドから形成され得、ここで、ブレンド中のモノマーの少なくとも1つはカチオン性である。カチオン性モノマーは、好ましくは、ジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドのいずれかの酸付加塩または第4級アンモニウム塩より選択される。カチオン性モノマーは、単独で重合され得るか、または水溶性非イオン性、カチオン性またはアニオン性モノマーと共重合され得る。特に好ましいカチオン性ポリマーとしては、ジメチルアミノエチルアクリレートまたはメタクリレートの塩化メチル第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0053】
ポリマーが両性である場合、それは、アニオン性または潜在的にアニオン性の官能性およびカチオン性または潜在的にカチオン性の官能性の両方を含む。従って、両性ポリマーは、少なくとも1つがカチオン性または潜在的にカチオン性であり、少なくとも1つがアニオン性または潜在的にアニオン性であり、任意で少なくとも1つの非イオン性モノマーが存在する、モノマーの混合物から形成され得る。好適なモノマーとしては、本明細書に提供される任意のカチオン性、アニオン性および非イオン性モノマーが挙げられる。好ましい両性ポリマーは、アクリル酸またはその塩と塩化メチル四級化ジメチルアミノエチルアクリレートおよびアクリルアミドとのポリマーである。
【0054】
水性ポリシリケート組成物は、望ましくは、懸濁液の乾燥重量に対するポリシリケート組成物の重量に基づいて、1トン当たり少なくとも50gの量で、セルロース懸濁液中へ混合される。前記量は、好ましくは1トン当たり少なくとも100gであろうし、著しく高くすることもできる。本発明者は、あるシステムについて、最適な保持および水抜きは、1トン当たり3kgほど高いか、またはそれ以上高い量を使用して達成されることを見出した。1つの好ましい形態において、前記量は、1トン当たり200または300〜750gの範囲内である。水性ポリシリケート組成物は、供給された形態で、例えば少なくとも4重量%SiOの濃度で、セルロース懸濁液中へ投入され得る。しかし、より希釈された形態で、例えば2重量%未満のSiOの濃度で、組成物を添加することが好ましい場合がある。これは、0.1%ほどになり得、製紙プロセスにおいて、かなりより低い濃度、例えば0.01%ほどの活性シリカを使用することが望ましい場合がある。それにもかかわらず、ポリシリケート組成物は製紙ストック中へ充分に混ざるので、過度の希釈は一般的に必要とされない。
【0055】
非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性ポリマーは、凝集をもたらすための任意の好適な量で添加され得る。好適には、ポリマーは、懸濁液の乾燥重量に対する活性ポリマーの重量に基づいて、1トン当たり少なくとも20グラム、通常少なくとも50または100グラムの量で添加される。ポリマーは、1トン当たり1000グラムほどで添加され得るが、一般的に、1トン当たり700グラムを超えない量で添加される。好ましい量は、通常、1トン当たり200〜600グラムの範囲内である。望ましくは、ポリマーは、ポリマーの水溶液または水性希釈物としてセルロース懸濁液へ添加され得る。典型的に、ポリマーは、0.01〜0.5重量%、通常、約0.05重量%〜0.1重量%の濃度でセルロース懸濁液中へ投入され得る。
【0056】
カチオン性デンプンをセルロース懸濁液へ添加することが望ましい場合もある。これは、保持または水抜きを改善し得るか、または、恐らく、強度を改善し得る。一般的に、カチオン性デンプンは、アニオン性、非イオン性、カチオン性もしくは両性ポリマーまたはポリシリケート組成物の両方の添加より前に含められる。それにもかかわらず、場合によっては、カチオン性デンプンを、プロセスの後半に、例えば、凝集システムの成分の少なくとも1つの後に、添加することも望ましい場合がある。カチオン性デンプンは、任意の好都合な量、例えば、懸濁液の乾燥重量に基づいて、1トン当たり少なくとも50g、通常かなりより高く、例えば、1トン当たり少なくとも400または500グラムで添加され得る。カチオン性デンプンは、1トン当たり5kgまでまたはさらにそれ以上の量で添加され得る。しばしば、それは、1トン当たり1〜3kgで添加される。カチオン性デンプンは、希薄なストック懸濁液中へ、または希釈前に濃厚なストック中へ、添加され得る。場合によっては、カチオン性デンプンを製紙プロセスのさらに後に、例えば、ブレンドチェストまたは混合チェスト中へ添加することが望ましい場合がある。
【0057】
カチオン性材料、例えば、カチオン性凝固剤をセルロース懸濁液中へ混合することも望ましい場合がある。典型的に、このようなカチオン性材料は、通常、高カチオン性電荷密度でありかつ比較的低い分子量、例えば、100万未満、しばしば500,000未満である、比較的低い分子量のカチオン性ポリマーであり得る。このようなポリマーとしては、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、塩化メチルによって四級化された、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA.MeCl)、塩化メチルによって四級化された、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA.MeCl)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)およびメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)が挙げられるが、これらに限定されない、カチオン性モノマーのホモポリマーが挙げられ得る。ポリビニルアセトアミドの加水分解によって作製される、ポリビニルアミンは、有用な凝固剤であり得る。または、凝固剤ポリマーは、ビニル付加ポリマー以外、例えば、ジシアンジアミドポリマー、ポリエチレンイミン、およびエピクロロヒドリンとジメチルアミンなどのアミンとの反応生成物であり得る。他のカチオン性材料としては、ミョウバン、ポリアルミニウムクロリド、アルミニウムクロロハイドレートが挙げられる。典型的に、カチオン性材料は、任意の好都合な量で、例えば、セルロース懸濁液の乾燥重量に基づいて、1トン当たり少なくとも50グラム、しばしば1トン当たり1または2kgほどで添加され得る。カチオン性材料は、希薄ストック、濃厚ストック、混合チェスト、ブレンドチェストおよび/または供給懸濁液中へ添加され得る。
【0058】
本方法を行う(operate)特に好ましい仕方において、セルロース懸濁液を、望ましくは、先ず、カチオン性または両性ポリマーの添加によって凝集させる。次いで、凝集された懸濁液を、機械的縮小(mechanical degradation)へ供し得る。多くの場合、この機械的縮小は、大きくなりかつ不安定となる傾向にある、最初に形成されたフロック(floc)を、マイクロフロックと呼ばれ得る、より小さくより安定した集合構造へと細分する(breakdown)。フロックの機械的縮小に続いて、次いで、ポリシリケート組成物が、機械的に縮小されたフロックのさらなる凝集または集合をもたらすために添加される。凝集された懸濁液の機械的縮小は、それを一つまたは複数のせん断段階に通過させることによって達成され得る。
【0059】
典型的に、充分な機械的縮小をもたらすことができるせん断段階は、混合、洗浄およびふるい分け段階を含む。好適には、せん断段階は、一つまたは複数のファンポンプまたは一つまたは複数のセントリスクリーン(centriscreen)を含み得る。
【0060】
一般的に、水性ポリシリケート組成物および非イオン性、アニオン性、両性またはカチオン性ポリマーの両方が、希薄ストック懸濁液へ添加され、しかし、場合によってはいずれか一方または両方を希薄ストックへ添加することが望ましい場合がある。
【0061】
1つの好ましい方法において、前記ポリマー、好ましくはカチオン性または両性ポリマーは、セントリスクリーンより前に場合によっては一つまたは複数のファンポンプより前に希薄ストックへ添加される。次いで、水性ポリシリケート組成物が、望ましくは、そのせん断段階の後に添加される。これは、そのせん断段階の後、しかし、任意の他のせん断段階の前または2またはそれ以上のせん断段階の後であり得る。例えば、ポリマーは、ファンポンプの1つより前に添加され得、水性ポリシリケート組成物は、そのファンポンプの後しかし任意の次のファンポンプの前および/またはセントリスクリーンの前に添加され得、または、ポリシリケート組成物は、セントリスクリーンの後に添加され得る。別の望ましい方法において、ポリマーは、セントリスクリーンの前しかし任意のファンポンプの後で添加され、ポリシリケート組成物は、セントリスクリーンの後で添加される。
【0062】
本発明のポリシリケート組成物(コンポジット)は、公知のシリカ化合物または膨潤性クレイ化合物の代わりとしてまたはこれと併用して、微粒子材料として使用され得る。例えば、WO0233171、WO01034910、WO01034909によって記載されるプロセスのいずれかにおける珪質材料としてまたはWO01034907において使用されるアニオン性材料としてポリシリケートコンポジットを使用することが望ましい場合がある。
【0063】
以下の実施例によって本発明を例示する。
【0064】
実施例1
450〜500m/gの表面積および8.5〜9.5の範囲内のpH値を有する15重量%活性SiOの市販のシリカゾルであるコロイダルポリシリケート450gを、1200〜1400m/gの表面積および2〜2.5の範囲内のpH値および1.0%のシリカ含有量を有するUS6274112に従って作製されたポリシリケートミクロゲル150gへ、連続的に撹拌しながら、徐々に添加することによって、本発明のシリカ組成物サンプルを作製した。最終シリカ組成物サンプルのpHを、93%硫酸溶液を添加することによって制御した。
【0065】
3つのサンプル、サンプル3、5および6を作製した。サンプルの最終pH値は、それぞれ、2.1、4.4および5であった
【0066】
表1は、1ヶ月間にわたってのシリカ組成物サンプル3、5および6の安定性を示している:
【表1】

【0067】
実施例2
ポリシリケートミクロゲルおよびコロイダルポリシリケートと比較することによって、本発明のポリシリケート組成物を使用して、移動するベルトフォーマー(moving belt former)(MBF)において、テストワークを行った。
【0068】
塗工上質紙機(coated freesheet machine)のマシーンチェストからの完成紙料(furnish)及び透明濾液(clear filtrate)を第1テストのために使用し、使用したフィラーはHydracarb 90(GCC)であり、使用したフィラーのレベルは40%であった。第2テストのために、ミドル・プライ・ファーニッシュ1(middle ply furnish 1)をフィラーなしで使用した。ミドル・プライ・ファーニッシュを使用し、折りたたみ箱等級(folding box board grade)を作製し、ここで、特に迅速な脱水が必要とされる。各場合において、ターゲット坪量は80gsmである。
【0069】
カチオン性ポリアクリルアミドを、セントリスクリーンの前に150g/トンでプロセス中へ投入し、300g/トンの種々のシリカを該スクリーン後に投入した。テストにおいて、セントリスクリーン効果を提供するために30秒間1500rpmの高せん断領域を使用して高せん断を模擬し、低せん断領域については、500rpmのせん断速度を使用して低せん断を模擬した。塗工上質紙で使用したシリカは、ポリシリケートミクロゲル、従来のコロイダルシリカ、ボロシリケートおよび本発明のポリシリケート組成物(8%シリカ組成物)であった。
【0070】
本発明の8%シリカ組成物は、以下の通りに作製した:50グラムのポリシリケートミクロゲルをマグネチックスターラーで徐々に混合した。従来のコロイダルポリシリケートを50グラム滴下し、必要である場合は濃硫酸を添加することによって、pHを1.8〜2.0に調節した。10%ポリシリケート組成物を上記のように作製し、但し、しかしポリシリケートミクロゲルおよび従来のコロイダルポリシリケートをそれぞれ35.71グラムおよび64.29グラムで使用した。8%および10%組成物を、それぞれ、塗工上質紙およびミドル・プライ・ファーニッシュのケースにおいて使用した。アルミニウムを含むまたは含まないポリシリケートミクロゲル溶液を、EP 1240104に従って作製した。フォーメーション(ベータホーメーション)、第一パス保持、フィラー保持(塗工上質紙の完成紙料からのみ)および脱水を記録した。全ての結果は、10回の反復の平均値である。
【0071】
テスト1:塗工上質紙の完成紙料
【表2】


表1.カチオン性ポリアクリルアミドを使用した場合のフォーメーション、第一パス保持およびフィラー保持値
【0072】
本発明のポリシリケート組成物は、従来のコロイダルポリシリケートよりも良好な保持値を有し、しかし、ポリシリケートミクロゲルと比較しての性能は、多かれ少なかれ同様である。従来のコロイダルポリシリケートは、最良のフォーメーションを有し、ポリシリケートミクロゲルは最も貧弱である。
【0073】
図1は、従来のコロイダルポリシリケート、ポリシリケートミクロゲルおよび本発明の8%ポリシリケート組成物より選択される珪質材料と共にカチオン性ポリアクリルアミドを使用する場合の脱水値を示している。
【0074】
本発明のポリシリケート組成物は、最も速い脱水性能を有することが理解され得る。
【0075】
【表3】


表2.種々のカチオン性ポリアクリルアミドを使用した場合のフォーメーション、第一パス保持およびフィラー保持値。
【0076】
本発明のポリシリケート組成物は、ボロシリケートを使用する場合に見られるよりも僅かにより良い保持性能を有する。フォーメーション読み取り値(formation reading)は等しい。
【0077】
図2は、異なるカチオン性ポリマーを使用するが図1と類似の脱水値を示す。
【0078】
本発明の水性組成物は、ボロシリケートと等しい脱水性能を有する。
【0079】
テスト2:ミドル・プライ・ファーニッシュ
【0080】
【表4】


表3.ポリシリケートミクロゲル、従来のコロイダルポリシリケートおよび本発明の水性ポリシリケート組成物のフォーメーションおよび第一パス保持性能
【0081】
ミクロゲル、従来のコロイダルシリカおよび本発明の組成物間で、第一パス保持値の有意差はない。
【0082】
図3は、ミクロゲル、従来のコロイダルシリカおよび本発明の組成物より選択される珪質材料を使用する脱水値を示す。
【0083】
本発明の組成物は、最も速い脱水性能を有する。
【0084】
【表5】


表4.構造化ポリシリケート、ボロシリケートおよび本発明の水性組成物のフォーメーションおよび第一パス保持性能。
【0085】
図4は、本発明の水性組成物、構造化シリカ、ボロシリケートより選択される珪質材料を使用しての脱水性能を示している。
【0086】
構造化ポリシリケート、ボロシリケートおよび本発明のエーカーズ(acres)組成物のフォーメーションおよび第一パス保持性能は、等しい。
【0087】
本発明の水性組成物が、最も速い脱水性能を有する。
【0088】
これらのMBF研究に基づいて、本発明のポリシリケート組成物は、その原材料−従来のコロイダルシリカおよびポリシリケートミクロゲルと比較して、優れた適用性能を有することが理解され得る。本発明の水性組成物はまた、ボロシリケートおよび構造化シリカと比較して等しいかまたはより良い性能を有すると見られる。
【0089】
実施例3
このテストは、混合チェストからとられた非塗工上質紙パルプを使用しかつ希釈水として透明な濾液を用いるMBF研究である。使用したフィラーはFS 240(PCC)であり、ローディングは40%であった。ターゲット秤量は80gsmであった。
【0090】
添加ポイントは以下の通りである。
【表6】


表5.添加ポイント。
【0091】
カチオン性ポリアクリルアミド(PAM)をスクリーン前に200g/t投入し、種々のシリカ微粒子500g/t(活性SiO)をスクリーン後に投入した。高せん断領域は、セントリスクリーンの効果をシミュレートするために30秒間1500rpmであり、低せん断領域のシミュレーションを、500rpmを使用して達成した(プレセントリスクリーン)。種々のシリカコンポジットを以下の通り作製した:
【0092】
【表7】


表6.本発明の水性ポリシリケート組成物の作製。
【0093】
カラム添加されたAlは、ミクロゲル溶液作製においてアルミニウムが使用されたかどうかを示す。アルミニウムを含むかまたは含まないポリシリケートミクロゲルを、EP 1240104に従って作製した。5N硫酸をこれらのコンポジットサンプルの作製において使用したことに注意のこと。ボロシリケート、および2つの異なるタイプの構造化ポリシリケートSPS1およびSPS2ならびに従来のポリシリケートを、コントロールサンプルとして使用した。
【0094】
フォーメーション(ベータホーメーション)、第一パス保持、フィラー保持および脱水を記録した。全ての結果は、10回の反復の平均値である。
【表8】


表7.フォーメーション、第一パス保持およびフィラー保持値。
【0095】
最も良い保持値および最も悪いフォーメーション値が、ポリシリケートミクロゲル溶液(アルミニウム有りおよび無し)で達成された。ミクロゲル溶液はフロックを形成する充分な可能性を有する。一般的に、本コンポジットは、コントロールサンプルと等しいかまたはコントロールサンプルよりも良い性能を有する。Compo3およびCompo4は、最も良いコンポジットである。
【0096】
図5は、脱水性能を示す。
【0097】
図5は、ミクロゲルサンプルが最も速い脱水を有することを示している。コンポジットは、コントロールサンプルと等しいかまたはコントロールサンプルよりも速い脱水を有する。最も速い脱水は、コンポジットサンプルCompo3およびCompo4 Alを使用して見られ得る。
【表9】


表8.2つのコンポジット、ミクロゲルおよび従来のコロイダルシリカの、フォーメーション、第一パス保持およびフィラー保持。
【0098】
2つのコンポジット(Compo3およびCompo4 Al)は、従来のコロイダルシリカよりも良い保持性能を有する。ミクロゲルは、最も高い保持値を示す。
【0099】
図6は、2つのコンポジット、ミクロゲルおよび従来のポリシリケートミクロゲルの脱水性能を実証する。ミクロゲルは最も速い脱水であり、従来のコロイダルポリシリケートは最も遅い。
【表10】


表9.2つの最も良いコンポジットおよび競争相手の微粒子のフォーメーション、第一パス保持およびフィラー保持。
【0100】
サンプル ボロシリケートおよび2つの構造化ポリシリケートを比較することによって、試験した2つのコンポジットは、上記表8および表9に記載されるように等しいかまたはより良い保持性能を有する。
【0101】
図7は、2つのコンポジットならびに構造化シリカおよびボロシリケートプロダクトの脱水性能を示す。これは、2つのコンポジットが、ボロシリケートおよび構造化シリケートプロダクトのそれよりも速い脱水性能を有することを示している。
【0102】
この研究におけるCompo4およびCompo4 Alに対応するコンポジットサンプルは、ミクロゲルまたは従来のポリシリケートよりも良い性能さえ有することを示している。
【0103】
実施例4
コンポジットシリカを、以下の原材料で作製した:コロイダルシリカ、シリカミクロゲルおよび硫酸。典型的に、コロイダルシリカは60より高いS値を有し、一方、シリカミクロゲルは20未満のS値を有する。硫酸以外の原材料は、各々の構造の程度を測定するために、S値について試験するべきである。
【0104】
表11に詳述する方法のように、原材料のS値を試験した。シリカミクロゲルを50%体積で反応容器へ導入しながら、50%体積でコロイダルシリカをボルテックスでかき混ぜた。較正されたpHプローブを使用しながら、pHを硫酸で8.3から7.0へ調節した。pH7.0で、50:50コロイダルシリカおよびシリカミクロゲルの混合物を20分間反応させた。20分間、積極的なボルテックスを反応容器中において維持し、適切な混合を確実にした。20分後、硫酸および較正されたpHプローブを使用して、pHを2.0へ低下させた。
【0105】
個々に、コロイダルシリカおよびシリカミクロゲルプロダクトのS値を評価し、種々の時間および種々のpHで得られたコンポジットシリカと比較した。多数のS値測定の結果を表10に示す。S値データに基づいて、最良のコンポジットシリカを、pH7で20分間反応させた。S値は、理論値または期待値未満であり、このことは、独特な材料が作製されたことを暗示している。S値測定は、製紙用途において使用されるシリカの構造を決定することにおいて有用な手段である。
【0106】
【表11】


表10−一定の反応時間での種々のpHでのコンポジットシリカのS値
【0107】
【表12】


表11
【0108】
10%消費財廃棄物を含む非塗工上質紙を作製するために使用されるパルプを、400〜300のろ水度へ調製し、実験室での実験のために0.8濃度へ希釈した。0.8%濃度ストックの500mlアリコートを、1000rpmで混合する。カチオン性凝集剤およびコンポジットシリカを、混合の間、30秒間隔で添加する。カチオン性凝集剤を1トン当たり0.75ポンドで添加し、コンポジットシリカを1トン当たり0.25、0.5、0.75、1.0、1.5、2.0ポンドに従って与える。処理後、ストックを、541 Whatman濾紙を用いて真空下にてBuchner漏斗で濾過し、液体シールが壊れるまで計時する。その時、真空水抜きを記録する。1/100秒測定可能なストップウォッチを試験において使用し、真空結果を秒で記録する。結果を図8に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダルポリシリケート由来の粒子と会合したポリシリケートミクロゲルベース成分を含む、水性ポリシリケート組成物。
【請求項2】
ポリシリケート組成物が1.5〜5.5のpHを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ポリシリケート組成物が、25℃、100rpmでBrookfield RVT粘度計を使用して測定した場合、500mPa.s未満の粘度を有する、請求項1または請求項2記載の組成物。
【請求項4】
pHが3〜5である、前記請求項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
pHが1.5〜3である、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
粘度が150mPa.s未満である、前記請求項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
活性SiO含有量が少なくとも4重量%である、前記請求項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
体積平均粒径が少なくとも20nmである、前記請求項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
水性コロイダルポリシリケートとポリシリケートミクロゲルの水相とを混合することを含む、水性ポリシリケート組成物の製造方法。
【請求項10】
ポリシリケートミクロゲルが2重量%以下でしかない活性SiOを有する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
水性コロイダルポリシリケートが少なくとも15重量%の活性SiOを有する、請求項9または請求項10記載の方法。
【請求項12】
水性コロイダルポリシリケートが8.5〜10.0のpHを有する、請求項9〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
水性コロイダルポリシリケートが1000m/g未満の表面積を有する、請求項9〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
水性コロイダルポリシリケートをポリシリケートミクロゲルの水相へ添加し、続いてpHを1.5〜5.5、好ましくは1.5〜3に調節する、請求項9〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
pHの調節に強鉱酸を用いる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
pHの調節の前に少なくとも10分間経過させる、請求項14または請求項15記載の方法。
【請求項17】
ポリシリケートミクロゲルと水性コロイダルポリシリケートとの比が、1:5〜1:0.2である、請求項9〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
紙または板紙の製造における凝集剤としての、請求項1〜8のいずれか1項記載のまたは請求項9〜17のいずれか1項に従って得ることができる組成物の使用。
【請求項19】
セルロース懸濁液を形成し、該懸濁液を凝集させ、スクリーンにおいて該懸濁液から水を抜き、シートを形成し、次いで該シートを乾燥させることを含む、紙または板紙の製造方法であって、ここで、
i)非イオン性、アニオン性、カチオン性ポリマーまたは両性ポリマー、および
ii)請求項1〜8のいずれか1項記載のもしくは請求項9〜17のいずれか1項に従って得ることができる水性ポリシリケート組成物、または任意で該水性ポリシリケート組成物の水性希釈物
を含む凝集システムを使用して該懸濁液を凝集させる、方法。
【請求項20】
凝集システムの成分を連続的にセルロース懸濁液へ導入する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
非イオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーまたは両性ポリマーを、水性ポリシリケート組成物より前にセルロース懸濁液中へ添加する、請求項19または請求項20記載の方法。
【請求項22】
非イオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーまたは両性ポリマーが、少なくとも500,000の重量平均分子量を示す合成ポリマーである、請求項19〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
カチオン性デンプンをセルロース懸濁液中へ添加する、請求項19〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
セルロース懸濁液を、カチオン性ポリマーまたは両性ポリマーの添加によって凝集させ、次いで、そのように形成されたフロックを縮小する機械的縮小へ供し、その後、水性ポリシリケート組成物を添加する、請求項19〜23のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−505048(P2010−505048A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529652(P2009−529652)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059618
【国際公開番号】WO2008/037593
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】