説明

現像剤リサイクルシステム

【課題】OA機器等の画像形成装置に使用される2成分現像剤(トナー及びキャリア)を処理する現像剤リサイクルシステムにおいて、リサイクルの経済価値をさらに高めているため、企業が積極的かつ継続的な環境保全活動を行うことを可能とする。
【解決手段】キャリアの材料物性を全て生かしきることで、リサイクルシステム上においてキャリアの一部の成分除去し処分するような工程(キャリアリサイクルの従来技術には存在する工程)を省くことで、リサイクル工程のコストを最小限化し、さらに、素材として見た場合に、リサイクル対象(キャリア自体のこと)のみでなく、より付加価値の高いもの(白金族系金属)のリサイクルに活用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OA機器の現像剤のうち、2成分現像剤(キャリア及びトナー)のリサイクルシステムに関し、アルミニウムの製造工程で発生するアルミ粉粒体(アルミダスト)のリサイクルシステム、テルミット酸化還元反応剤を利用して自動車等の排ガス用触媒に分散している白金族金属を凝集し低コストで回収するリサイクルシステムに組み合わせ可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会においては、環境問題に関する重要性が以前に増して認識されている。そのため、消費者や投資家は、環境への配慮を切り口に企業を厳しく選別するようになってきている。よって、企業にとっては、これまで行ってきた利益創出活動と共に、今後は環境保全活動を行うことが課題となる。
【0003】
したがって、資源の有効活用、廃棄物の削減の点から、企業は、製品、部品、材料をリサイクルして活用することが急務となっている。消費エネルギー削減や有害物質の排出防止と同時に、このリサイクルの領域で率先して取組む企業ほど成長の道が開けてくると言える。
【0004】
ところで、このリサイクルに関して、その手段(リサイクル処理)を大別すると以下のようなものがある。
<手段1>自家再使用
製品を使用するユーザー自身が、製品内の一部(部品等)を再使用するリサイクル処理である。この自家再使用は、ユーザーが簡易に実施できるという前提で行われるものとなるので、環境負荷低減効果が最も大きく、且つ、コストが最も小さい処理の仕方であるといえる。
<手段2>製品再使用
使用済みとなり市場から回収される製品(以下「回収機」)に対して、所定の再生処理を施して「再生機」として再使用するリサイクル処理である。この処理の場合は、製品を構成する大部分はそのまま再使用されるので、環境負荷低減効果が非常に大きい。
<手段3>部品再使用
回収機から部品またはユニットを取り出し、新既の製品内の部品またはユニットとして再使用するリサイクル処理である。この処理の場合、本来は加工等の相当量のエネルギーを注いで製造される部品、ユニットに対し、その製造工程が省略されるという点で、環境負荷低減効果は大きい。
<手段4>マテリアルリサイクル
回収機を材料単位に分解、分別し、その後何らかの処理をして再生材料として使用するリサイクル処理である。なお、この処理の場合、同一分野の製品の材料として再利用するクローズドループマテリアルリサイクルと、他分野の製品の材料として再利用するオープンループマテリアルリサイクルとがある。
<手段5>再原料化
回収機を分解、分別し、最終的に原材料まで戻して再使用するリサイクル処理である。この処理を行うことにより、廃棄物ゼロを具現化することができる。
<手段6>エネルギーリカバリ
プラスチックを燃焼させる等で、熱エネルギーを有効活用する処理である。
【0005】
上記1〜6の手段においては、環境負荷低減効果の点で、一般に最も望ましいのが1で、以下2、3、・・・、6 の順となっている。したがって、いかに上位の手段で継続的にリサイクルを可能とさせていくかが、企業が具体的にリサイクルを推進していく上での重要なポイントとなる。しかし、実際は、上位にあるもの、例えば手段1の自家再使用のみで半永久的に処理し続けることは不可能で、ある一定の期間後には必ずその手段を断念しなければならない。なぜならば、その製品が有している機能そのものが、ある一定の期間後には陳腐化し、もはや市場(またはユーザー)対してその機能が有用なものでは無くなってしまうので、その手段でリサイクルをすることに経済的価値が無くなってしまうからである。
【0006】
その場合、これまで上位の手段で行われていたリサイクルが、下位の手段(例えば、これまで上記「自家再使用」のリサイクルを行っていた物は、手段2以下の手段)になっていくことになる。そのようにして、下位に下がった手段でまた一定の期間リサイクルが行われ、それが陳腐化したらまた下位へ、・・・・という推移を示していくことになる。
【0007】
よって、リサイクルにおいては、上記1〜6のどれかの手段のみを実施していればよいというわけではなく、その全ての手段が実施されていかなければならない。また実際、それら1〜6の手段は、同時並行で実施されなければならない。なぜなら、製品の種類毎によって、手段の段階(上記1〜6のこと)は異なってくるだろうし、また、一つの製品に限定しても、その内部の部品、ユニットによって各々リサイクル手段の段階は違ってくると考えられるからである。
【0008】
以上のリサイクル処理は、例えば特許文献1に「リサイクルシステム」と題して開示されており、リサイクルシステムの概念をフロー(コメットサークル)として明確化している(特許文献1の図8参照)。但し、リサイクルの実際の運用においては、この基本概念(コメットサークル)をどのように具体化させるかが重要である。
【0009】
特に、コピー機、ファクシミリ等のOA機器(画像形成機器)の場合、使用済みとなるのは機械本体の所謂構造体(及びその部品)のみではなく、サプライ品として使用する現像剤なども含まれる。そしてこの画像形成装置は、最近においては静電複写方式のうちの乾式方式と呼ばれるものが主流であるため、上記の現像剤は粉体であることが一般的になっている。よって、OA機器においては、粉体(=現像剤)のリサイクルシステムをどのように具体的に構築するかが重要な観点の一つとなる。
【0010】
ところで、企業が継続的な環境保全活動を行うためには、「いかにして環境保全活動そのものに経済性もたせるか」という課題がある。できるだけ環境保全活動コストを下げて実施すること、さらに言えば、環境保全活動と利益創出活動とが同軸となり、環境保全活動そのものが利益を生み出す活動となることが望ましい。つまり、前述リサイクル処理手段(手段1〜6)が逆有償にて実施されるよりも、有償(つまり利益を得る)にて実施できるようにすることが望まれる。
【0011】
ここで、OA機器の現像剤のリサイクルを考えてみると、従来の提案としては、例えば特許文献2に「電子写真用キヤリアの被覆樹脂と磁性体を分離する方法及びリサイクル方法及びその装置」と題して開示されている。
【0012】
この提案は、磁性体と被覆樹脂から構成されるキャリアとトナーからなる現像剤のうちのキャリアに対して、超臨界水または亜臨界水の条件下で処理することを特徴とする前記磁性体から前記被覆樹脂を分離してキャリアを再使用する方法である。環境影響が少ない条件でリサイクル(キャリアの再使用)させる点では、極めて画期的な考案ではある。しかしながら、経済性の点で大きな課題がある。即ち、超臨界水または亜臨界水の条件下を設定することは新品のキャリアを製造するのと比較して多大なるコストがかかり、上記提案にてリサイクルしたキャリアでは企業は利益を創出することができず、したがって、極めて限定的な範囲においてのみ使用可能なものであると言わざるを得ないからである。
【0013】
この「(環境保全の点では画期的ではあるが)経済性を確立できない」という問題点は他の従来例にも見られ、例えば、「電子写真用現像剤のリサイクル方法」と題した特許文献3においても全く同様である。この提案もキャリアの再使用の提案ではあるが、廃キャリアに付着した廃トナーを分離するために加熱処理+溶剤処理(洗浄処理)を実施していて、これが新品キャリアの製造と比較して利益創出できないレベルの多大なるコストアップを生んでいる。
【0014】
ここで、上記に挙げたいくつかの従来技術が有している共通の課題、すなわち課題の本質は、廃キャリア(すなわち、使用済み品や製造企画外品などの廃キャリア)の材料成分を活用しきれていないことにある。上記提案例の場合は、キャリアを再使用するために、トナー(キャリアに付着したトナー)やキャリアのコーティング材などが「余分なもの」=「価値を生まないもの」=「リサイクルできないもの」という扱いになっている。もし、この「余分なもの」扱いされた成分も、価値を生み出すことに転換できれば、リサイクルの実施においても経済性の問題を大きく改善することができるはずである。
【0015】
それに対し、本願発明者らは、現像剤のリサイクルに関して、材料の成分を生かしきる手段を考案することにより環境保全と経済性を両立させるいくつかの提案をこれまで行ってきた。
【0016】
例えば「トナーリサイクル方法、トナーリサイクルシステム」と題した特許文献4がある。この提案は、工場にて排出される製造規格外トナーや、市場で使用済みとなった廃トナーと、アルミドロス、アルミ灰、アルミ滓などと混合し、製鋼用フラックスを製造するシステムである。このモデルを活用すると、「トナーの成分にムダになるものを発生させないリサイクル」=「環境保全と経済性を両立させたリサイクル」を実施することができる。但し、上記提案は、あくまでも現像剤(キャリア及びトナー)のうちのトナーに対する最適リサイクルシステムであって、キャリアについてのリサイクルの提案ではない。例えば製鋼用フラックスにおいてはキャリアは全く有効機能しない。
【0017】
よって、リサイクルに対する姿勢(考え方)に関しては対象素材を全て有効成分として使い切るという特許文献5のような例に倣い、キャリアについても考慮したリサイクルシステムを構築する必要がある。
【0018】
なお、「成形材料および成形体並びにその製造方法、および廃トナーの再利用方法」と題した特許文献5においては、廃トナーを、変性ポリフェニレンエーテルと溶融混練して成形材料として使用する。このとき廃トナーは、トナー成分として、スチレンアクリル系樹脂を含むトナー成分を含んでいることが好ましく、これにより、製品として使用できない廃トナーを有効利用して、引張強度、曲げ弾性、曲げ強度等の物性に優れ、広い用途、分野に利用可能な成形体を、安価に製造することができる、というものである。しかし、やはりこの提案もトナーが対象であり、キャリアのリサイクルではない。さらに、この提案は一見すると環境保全と経済性を両立させているかに見えるが、実は環境保全の面で不十分さがある。つまり、スチレンアクリル系樹脂と変性ポリフェニレンエーテルとを溶融混練した材料は極めて特殊な材料であるので、この提案が示すように極めて限定した部品への使用に限られる。よって、一旦はマテリアルリサイクルできるが、その部品が再度市場に出て、その後再度使用済みになった場合には、その段階でも当時の部品の需要が継続されている可能性は少ない。よって、重層的なマテリアルリサイクルは成立せず、エネルギーリカバリにまわすしかなくなってしまう。これは、変性ポリフェニレンエーテルそのもの及びトナーそのものの重層的マテリアルリサイクル(何度もマテリアルリサイクルして資源を枯渇させない)の可能性を壊してしまう提案に他ならない。
【特許文献1】特開2000−181958号公報
【特許文献2】特開2001−290311号公報
【特許文献3】特許第3133146号
【特許文献4】特開2004−033960号公報
【特許文献5】特開2004−033960号公報
【特許文献6】特開2004−027125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は以上の点に鑑み、キャリアの材料物性を生かすことで、企業が継続的な環境保全活動を行うことを可能となるリサイクルシステムを提供し、加えて、アルミニウムの製造工程で発生するアルミ粉粒体(アルミダスト)のリサイクルを促進させ、さらに自動車等の排ガス用触媒に分散している白金族系金属を凝集し低コストで回収するリサイクルビジネスに資することが可能なシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の請求項1に係る現像剤リサイクルシステムは、OA機器等の画像形成装置に使用される2成分現像剤(トナー及びキャリア)を処理する現像剤リサイクルシステムにおいて、キャリアを一定量集めるキャリア収集工程と、還元金属粉を一定量集める還元金属粉収集工程と、上記キャリア収集工程と還元金属粉収集工程にて集められたキャリアと還元金属粉とを配合してテルミット反応を起こすテルミット反応工程とを有することを特徴とする。
【0021】
同請求項2に係るものは、請求項1に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリア収集工程が、市場にて使用済みになった現像剤からトナーとキャリアとを分別するトナー・キャリア分別工程を含むことを特徴とする。
【0022】
同請求項3に係るものは、請求項1に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリア収集工程が、市場にて使用済みになった現像剤を収集する使用済み現像剤収集工程と、使用済み現像剤からトナーとキャリアとを分別するトナー・キャリア分別工程の2工程からなることを特徴とする。
【0023】
同請求項4に係るものは、請求項1に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリア収集工程が、現像剤工場にて発生する廃キャリアを回収する工場内廃キャリア収集工程であることを特徴とする。
【0024】
同請求項5に係るものは、請求項1から4のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記還元金属粉収集工程が、アルミニウム工場にて発生する廃アルミ粉や市中の廃アルミ粉を収集する廃アルミ粉収集工程を含むことを特徴とする。
【0025】
同請求項6に係るものは、請求項1から5のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記テルミット反応工程は、触媒に含まれている白金族元素を溶融して回収する白金族元素回収工程であることを特徴とする。
【0026】
同請求項7に係るものは、請求項1から5のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリア収集工程では、前記テルミット反応工程から出されるキャリア需要量情報に基づいて必要量のキャリアを前記テルミット反応工程に供給し、前記廃アルミ粉回収工程では、前記テルミット反応工程から出される前記廃アルミ粉需要量情報に基づいて必要量の廃アルミ粉を前記テルミット反応工程に送ることを特徴とする。
【0027】
同請求項8に係るものは、請求項7に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、さらに前記キャリア収集工程では、前記テルミット反応工程に送るキャリアに対して商品コードを設け、かつ前記キャリア需要量情報に基づいて、必要量のキャリアを送る際に送付ロット毎の製造コードを設けることを特徴とする。
【0028】
同請求項9に係るものは、請求項7に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、さらに前記廃アルミ粉回収工程では、前記テルミット反応工程に送る廃アルミ粉に対して商品コードを設け、かつ前記廃アルミ粉需要量情報に基づいて、必要量の廃アルミ粉を送る際に送付ロット毎の製造コードを設けることを特徴とする。
【0029】
同請求項10に係るものは、請求項7から9のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、通信手段を用いて情報の伝達を行うことを特徴とする。
【0030】
同請求項11に係るものは、請求項10に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記通信手段として、情報処理機器を用いたインターネットによる通信手段を用いることを特徴とする。
【0031】
同請求項12に係るものは、請求項10に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリア収集工程、前記廃アルミ粉収集工程及び前記テルミット反応工程各々が、送受信される情報をデータ保管手段に保管し、該データ保管手段に保管した前記情報を出力手段を介して出力することを特徴とする。
【0032】
同請求項13に係るものは、請求項1から12のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリア収集工程と、前記キャリアのリサイクル実施情報を、情報処理機器にてデータ管理することを特徴とする。
【0033】
同請求項14に係るものは、請求項13に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリアのリサイクル実施情報には、
集めたキャリアの量のデータ、
前記テルミット反応工程に送ったキャリアの量データ、
前記テルミット反応工程以外にキャリアを送ってキャリアを処理した場合での、その手段の内容及び量のデータ、
これらの前記データから算出されるリサイクル率データ、マテリアルリサイクル率データ、エネルギーリカバリ率データ、
を含むことを特徴とする。
【0034】
同請求項15に係るものは、請求項6から14のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記テルミット反応工程は、前記白金族元素回収工程に加えて、市場で使用済みになった触媒を収集する廃触媒収集工程の2工程からなることを特徴とする。
【0035】
同請求項16に係るものは、請求項15に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記廃触媒収集工程は、廃触媒の収集量の管理も行い、さらに、前記白金族元素回収工程への廃触媒収集量情報の伝達を行うことを特徴とする。
【0036】
同請求項17に係るものは、請求項15または16に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記白金族元素回収工程は、前記廃触媒収集工程から白金族元素を溶融回収するためのテルミット反応に必要なキャリアの量とアルミ粉の量を算出して、キャリア需要量情報とアルミ粉需要量情報を作成することを特徴とする。
【0037】
同請求項18に係るものは、請求項3から18のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記トナー・キャリア分別工程にて分別したトナーをリサイクルするトナーリサイクル工程をさらに有することを特徴とする。
【0038】
同請求項19に係るものは、請求項18に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記トナーリサイクル工程が、製鋼用副原料である製鋼用フラックスの製造工程であり、トナーを製鋼用フラックス製造工程にてバインダとして活用することを特徴とする。
【0039】
同請求項20に係るものは、請求項3から19のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記トナー・キャリア分別工程は、さらに、トナーリサイクル実施情報を情報処理機器にてデータ管理することを特徴とする。
【0040】
同請求項21に係るものは、請求項20に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記トナーリサイクル実施情報が、
集めたトナーの量のデータ、
前記製鋼用フラックス製造工程に送ったトナー量データ、
前記製鋼用フラックス製造工程以外にトナーを送ってトナーを処理した場合の、その手段の内容及び量のデータ、
これらデータから算出されるリサイクル率データ、マテリアルリサイクル率データ、エネルギーリカバリ率データ
を含むことを特徴とする。
【0041】
同請求項22に係るものは、請求項14から21のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリアリサイクル実施情報と前記トナーリサイクル実施情報によるキャリア量とトナー量を加重平均して、
総合的な現像剤リサイクル率データ、現像剤のマテリアルリサイクル率データ、現像剤のエネルギーリカバリ率データを算出可能とすることを特徴とする。
【0042】
同請求項23に係るものは、請求項1から22のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記還元金属粉が、廃アルミ粉、廃マグネシウム、廃チタニウム、廃シリコン、及びそれらの合金、及びそれら金属の単一金属を主成分もしくは2種以上の複合金属を主成分とした粉粒体も含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0043】
本発明は、キャリアの材料物性を全て生かしきることで、リサイクルシステム上においてキャリアの一部の成分除去し処分するような工程(キャリアリサイクルの従来技術には存在する工程)を省くことで、リサイクル工程のコストを最小限化し、さらに、素材として見た場合に、リサイクル対象(キャリア自体のこと)のみでなく、より付加価値の高いもの(白金族系金属)のリサイクルに活用することで、リサイクルの経済価値をさらに高めているため、企業が積極的かつ継続的な環境保全活動を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下本発明を実施するための最良の形態を、図に示す実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0045】
本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、酸化物の標準生成エネルギー観点から、おおよその酸化物を還元できる副産物および産業廃棄物となっている金属粉粒体を還元金属材料とし、画像形成装置の2成分現像剤であるキャリアを酸化材料として使用することにより、産業廃棄物の資源化活用と低コストのテルミット酸化還元剤が製造可能であることを見出した。
【0046】
以下、キャリアをリサイクルするシステムを説明する。なお、以下に説明するシステムにおいては、キャリのリサイクル処理の種類としては上述した「<手段4>マテリアルリサイクル」に該当する。
【0047】
図1において、キャリア収集工程(011)にてキャリアが集められる。ここで集める対象となるキャリアは、何らかの理由により、本来の機能であるOA機器等の画像形成用として活用しないものに限定されるが、もちろんその他にも種々の形態のものが考えられる。そして一方で、還元金属粉収集工程(012)ではマグネシウム、チタニウム、シリコン、またはそれらの合金、および還元成分化合物の単一金属を主成分もしくは2種以上の複合金属を主成分とした粉粒体が集められる。その後、各々集められたキャリア、及び還元金属粉は、次のテルミット反応工程(013)に運ばれる。
【0048】
テルミット反応工程(013)においては、キャリアは酸化金属原料として使用する。現在、キャリアとして使用される材料は、酸化鉄、マグネタイト、及び、Zn−Cu系フェライトが主流である。そして、Zn−Cu系フェライトにおいてもFeが80重量%近く含まれており、還元金属への酸素供給材料としての効果は十分である。
【0049】
一方、前述の還元金属粉は、各単一金属または合金の切削、研磨、その他多種多様な製造加工工程から発生している集塵粉、切削粉、研磨粉等の3mm以下の粉末または3mm以下に加工した副産物品もしくは廃棄物を原料として使用することが特徴である。
【0050】
マグネシウムおよびマグネシウム合金における研磨、ショットブラスト、切削、切断等の加工工程時に発生する粉体および集塵粉等は、通常は金属マグネシウムが60重量%以上含まれており、また、集塵粉については粒形も150ミクロン以上と表面積が大きく物理的酸化反応性も高くテルミット酸化還元剤原料として適している。また実際、酸素との親和力が強いという特徴から湿式回収された粉粒体も多いが、これらは脱水または乾燥処理をすれば反応性が高い還元金属原料となりえる。
【0051】
また、チタニウム、チタニウム合金、シリコン、シリコン還元成分化合物等の切削、切断、研磨加工時に発生する還元金属粉についても、還元金属成分が60重量%以上含まれているものが多く、3mm以下の粉粒体は物理的性質観点からもテルミット酸化還元剤に適した原料となる。また、これらも湿式回収された粉粒体が多いが、やはり脱水または乾燥処理をすれば反応性が高い還元金属原料となりえる。
【0052】
ここで、テルミット反応剤としての活用として、各種原料混合粉体として使用してもよいし、粉粒体を造粒成形加工して活用しても良い。特に後者の場合、造粒成形用バインダとして廃トナーを活用する手段もある。
【0053】
酸化物の標準生成エネルギー観点からおおよその酸化物を還元できるマグネシウム、チタニウム、シリコンまたは、それらの合金および還元成分化合物の単一金属を主成分もしくは2種以上の複合金属を主成分とした粉粒体を還元金属原料とし、キャリアを酸化金属原料とすることにより、反応性が高く、また、副産物的発生品および廃棄物を使用することにより低コストのテルミット酸化還元剤の提供が可能となる。
【0054】
また、上記還元金属原料においては、酸化物の標準生成エネルギー観点からも活用用途として単一原料もしくは2種以上を複合化しての各種酸化金属還元剤、昇温剤、焼熱剤としての活用も可能である。
【0055】
なお本願出願人は、「テルミット酸化還元反応剤と有価金属回収方法」と題して以下のような技術を既に提案している。
その課題としては、アルミニウム、マグネシウム、チタニウム、シリコン、それらの合金またはこれら金属の還元性化合物由来の単一金属又は2種以上の複合金属を主成分とした還元性原料と、該還元性原料の含量に対し化学当量以下の量の不完全酸化状態にある酸化鉄原料とを含むテルミット酸化還元反応剤を製造する際に、該還元性原料と酸化鉄原料が共に粉粒体状で存在し、該還元性原料は、その中の前記アルミニウム、マグネシウム、チタニウム又はシリコンの含有率が50重量%以上であり、製品の平均径が4mm以下であることを特徴とすることにより、酸化金属として電子写真現像剤由来の酸化鉄原料等を活用することができ、各種原料の組み合わせ配合比の調整により、多種多様な反応調整が可能であり、他の貴重な材料を原料として添加することを必ずしも要さず、配合原料が小径であって各原料の配合が比較的容易であり、かつ材料各部均一な組成を有し、粘着性や凝集性がなく粉体流動性に優れ、取り扱いが簡単で、また、ブリケットに成型することが容易で、テルミット酸化還元反応剤として優れ、低コストのテルミット酸化還元反応剤の提供が可能となり、資源の有効利用ならび最終処分場の延命に貢献し、主として自動車排ガス用触媒等に微量に含まれている白金族元素の濃縮工程を簡易的に行なうことによる有価金属回収加工コストを低減可能な方法を提供することである。そして解決手段としては、金属アルミニウム、金属マグネシウム、金属チタニウム、金属シリコン、それらの合金、若しくはこれら金属の還元性化合物由来の単一金属又は2種以上の複合金属を主成分とした還元性原料と、該還元性原料の含量に対し化学当量以下の量の不完全酸化状態にある酸化鉄原料とを含むテルミット酸化還元反応剤であって、該還元性原料と該酸化鉄原料が共に平均径4mm以下の粉粒体状で存在し、該還元性原料は、その中の前記アルミニウム・マグネシウム・チタニウム又はシリコンの含有率が50重量%以上であり、製品の平均径が3mm以下であることを特徴とするテルミット酸化還元反応剤を提供している。
【実施例2】
【0056】
本発明の第2の実施例を説明する。この実施例2は、還元金属粉として廃アルミニウム粉を活用する場合の例である。
【0057】
アルミニウムおよびアルミニウム合金の研磨、ショットブラスト、切削、切断等の加工工程時に発生する粉体および集塵粉等においても、通常は金属アルミが60重量%以上含まれており、集塵粉については粒形もマグネシウムと同様150ミクロン以上と表面積が大きく物理的酸化反応性も高い。さらに、湿式回収された粉粒体も多いが、脱水または乾燥処理をすれば反応性が高い還元金属原料となりえる点もマグネシウム、チタニウム、シリコン等と同様である。よって、アルミニウムもテルミット酸化還元剤原料として適している。
【0058】
なお、本発明者によりアルミニウム粉とキャリアとを混合させた場合のテルミット反応性を調査した結果を表1から3に示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【0059】
この実施例2の場合、図1で説明した実施例の還元金属粉収集工程(012)は、具体的には図2の如く廃アルミ収集工程(022)に該当する。この廃アルミ収集工程(022)とは、例えばアルミ工場内で発生する廃アルミを収集する工程のことである。また、市中にて発生したアルミ粉を回収して集める工程であっても良い。
【0060】
ここで、テルミット反応の具体的活用方法を説明する。例としては、自動車用排ガス触媒から白金族元素(白金族系金属)回収=白金族元素のマテリアルリサイクル、が挙げられる。
【0061】
自動車用排ガス触媒に関しては、廃車と共に廃棄処分となった廃触媒、及び、触媒生産工場が製品(触媒)の生産時に発生している副産物(工場廃棄品)からの白金族元素回収は従来から行われている。しかし、触媒内の白金族元素各成分のPt、Pd、Rhの含有比率が0.1%と低濃度のため、湿式精錬前に溶融白金族元素濃縮工程が必要となっている。そして、触媒はアルミナ、シリカ、コージライト、セレニル等が主成分であるため、溶融し分散している白金族元素を濃縮するためには1400℃以上の熱源が確保できる溶融炉が必要となり、溶融するためには大きな設備投資と電気エネルギーが必要となっている。
【0062】
そこで、テルミット酸化還元剤を使用することにより、坩堝溶解にて可能な高効率な溶融白金族元素濃縮が可能となる。そのため、図2において、まず廃触媒収集工程(024)にて、廃棄処分自動車の廃触媒、及び工場排出の廃触媒を集め、それら廃触媒を白金族元素回収工程(023)に供給する。そして、白金族元素回収工程(023)においてテルミット反応により白金族元素の濃縮を行う。なお、この濃縮プロセスは白金族元素回収工程の一部であることから、以下では「白金族元素回収」と「白金族元素の濃縮」を同意語として用いて表現する。
【0063】
ここで実際に行った試験の一例として、廃車となった自動車から収集された廃触媒を使用し、アルミ粉を還元金属粉としたテルミット酸化還元反応を利用して濃縮確認をした結果を示す。
【0064】
まず、廃触媒試料の蛍光×線分析値の主とした成分を表4に記載する。
【表4】

【0065】
次に表5の如く、
【表5】

アルミナ、ジルコニア、セレニルが主成分でPtが1000ppm、Pdが2000ppm含有している触媒原料を40W%、Alショット粉:複写機キャリアを50:50配合のテルミット酸化還元反応剤原料を30W%、さらに、溶融促進剤として炭酸ナトリウム:ホウ酸ナトリウムを50:50配合のフラックスを20W%配合、白金族系金属吸着剤として銅切削スクラップを10W%配合混合し高圧成形機で25mm角のカンパン状に成形した[表5:試料No,A]。
【0066】
そして、溶融確認比較試料としてテルミット酸化還元剤の配合をしない試料にて溶融状態の確認をした[表5:試料No,B]。
【0067】
テルミット酸化還元剤配合試料と配合なし各試料500gを坩堝へ入れ灯油バーナで温度を上げていく常温からの加熱溶融確認試験結果においては、試料Aは炉内温度950℃でテルミット反応を起こし、坩堝内温度が急激に1100℃まで上昇し、局部的に溶融している。それに対して試料Bにおいては1100℃まで炉内温度を上げたが溶融はみられない。
【0068】
実務ベースでの溶融確認試験においては、1000℃に昇温した坩堝内に試料Aを連続的に500g投入した結果、瞬時にテルミット酸化還元反応が確認され、炉内温度も急激に1200℃まで昇温し個々の溶融体となった。一方試料Bにおいては変化はない。
【0069】
試料A・Bとも破砕しmeshe20以上の金属の形状および成分確認をした結果、試料Aの銅を主成分とした金属は粒状となりICP分析結果からもPt・Pdとも検出された。しかし、試料Bにおいては原料添加状態の銅切削粉形状でICP分析結果からはPt・Pdの検出は認められなかった。
【0070】
上記の結果により、明らかにテルミット酸化還元剤を配合することにより溶融促進され、廃触媒に分散している白金族系金属を吸着金属目的とした銅金属において吸着濃縮が可能となる。
【0071】
なお、試料重量を表6、溶融状態確認結果を表7、成分確認結果を表8に記す。
【表6】

【表7】

【表8】

【実施例3】
【0072】
本発明の第3の実施例を説明する。この実施例3では、既述の実施例1、2のキャリア収集工程(011)の具体例を図3、図4等を用いて示す。図1、図2で示すキャリア集約工程(011)とは、具体的には、図3の如く、キャリアを製造する工場内にある工場内廃キャリア収集工程(031)であってもよい。そしてこの場合、工場内廃キャリア収集工程(031)にて集められるものは、工場の製造工程における規格外となったキャリアとなる。
【0073】
図4は、キャリア製造工場でのキャリア製造、及び、廃キャリア収集のフローを示す。
<STEP1>コーティング
キャリア芯材(フェライト等)に樹脂をコーティングする。このコーティングは、流動床式と呼ばれる方式が一般的である。そして、この方式の製造装置である流動床式キャリアコーティング装置には、通常装置内部にサイクロンが取り付けてある。そのため、キャリアのうち微粉となっているもの(大きさの規格外キャリアのこと)はサイクロンにて取り出され、廃キャリアとして集められる(041)。
<STEP2>品質検査
コーティング後のキャリアの検査を行う。所望の検査手段によって、キャリアの磁性などが検査される。ここで検査不合格となったもの(検査規格外キャリアのこと)も廃キャリアとして集められる(042)。そしてその後、廃キャリアは、リサイクルされるために、図3の白金族元素回収工程(023)に供給されることになる。ここで、以上のフロー(図4)において、工場内廃キャリア収集工程(031)に送られるものは、サイクロンによる微粉キャリア収集(041)と不合格キャリア収集(042)となる。
【0074】
次に、図3のシステム全体を円滑に行うために、各工程(031、022、023、024)には色々な情報伝達が行われるので、情報伝達の例を説明する。システムを円滑に行うための情報伝達の例として、以下、白金族元素回収の実施計画を満足するための情報伝達が行われる例を説明する。
【0075】
白金族元素回収工程(023)による白金族系金属の回収計画(白金族金属のマテリアルリサイクル計画とも言える)は、基本的に廃自動車内の廃触媒の収集状況によって決定する。つまり、テルミット反応を起こす廃キャリアと廃アルミ粉がどれだけ必要になるかは、廃触媒の収集量によって換算されて決定する。そこで、まず廃触媒収集工程(024)では、収集した廃触媒の収集量を「廃触媒収集量情報」(03a)として白金族元素回収工程(023)に情報伝達する。そして、その情報(03a)に基づいて、白金族元素回収工程(023)は、情報処理手段により白金族系金属の回収予定量を算出し、さらに上記の白金族系金属回収に必要なテルミット反応を発生させるのに、どの程度の廃キャリアと廃アルミ粉が必要となるか、即ち廃キャリアと廃アルミ粉需要量を各々換算する。
【0076】
その結果、求めた需要量に基づいて白金族元素回収工程(023)は、工場内廃キャリア収集工程(031)に対して「キャリア需要量情報」(03b)を伝達し、また、廃アルミ粉収集工程(03c)に対して「廃アルミ粉需要量情報」(03c)を伝達する。なお、上記情報伝達形式の一例としては以下のようなものがある。
【0077】
すなわち、白金族元素回収工程(023)に設置されたパソコン(032)等にて「キャリア需要量情報」(03b)を作成し、やはりパソコン(032)にて「キャリア需要量情報」(03b)を工場内廃キャリア収集工程(031)に対してインターネット通信をする。一方、工場内廃キャリア収集工程(031)側にもパソコン(032)が設置されていて、パソコン(032)にてインターネット通信にて送られてきた「キャリア需要量情報」(03b)を受信して、その内容(03b)の確認を行う。同様にして、白金族元素回収工程(023)のパソコン(032)等にて「廃アルミ粉需要量情報」(03c)を作成し、インターネット通信にて送信する。一方、廃アルミ粉収集工程(03c)では、設置されているパソコン(032)にてインターネットで送られてきた「廃アルミ粉需要量情報」(03c)を受信して、その内容(03c)の確認を行う。種々の情報伝達手法を採用できる。
【0078】
これらで伝達される情報は、一例として、「キャリア需要量情報」(03b)を図5に示す表(05a)のような形で表される。この表(05a)は、白金族元素回収工程(023)側が作成し、工場内廃キャリア収集工程(031)側が表(05a)の内容確認を行う。この表(05a)では、白金族元素回収工程(023)がテルミット反応を発生させるのに必要なキャリアの量、すなわち、購入したいキャリアの量を、例えば月毎で記載する(05b)。
【0079】
さらに、キャリアに商品コード(05c)を設け、加えて、月毎などでロット番号(05d)を設けることにより、白金族元素回収工程(023)と工場内廃キャリア収集工程(031)双方が、より管理をし易くすることも可能である。
【0080】
なお、白金族元素回収工程(023)や工場内廃キャリア収集工程(031)は、インターネット通信で伝達された表(05a)をプリンタ(033)やインターネットFAX(図示せず)等で予め紙に出力しておき、紙にて照らし合わせを行っても良い。
【0081】
ここで、上記の伝達方式は、白金族元素回収工程(023)と工場内廃キャリア収集工程(031)との間のものであるが、全く同様手段の情報伝達が白金族元素回収工程(023)と廃アルミ粉収集工程(03c)との間で行うことは可能である。このとき、図5の商品名(05e)を廃アルミ粉にして全く同様の手順で行えばよい。
【実施例4】
【0082】
本発明の第4の実施例を説明する。この実施例4は、キャリア収集工程(011)に関する実施例3と異なる例を示すものである。図1、2で示すキャリア集約工程(011)で収集するキャリアとは、具体的には市場で使用済みになった現像剤(=キャリアとトナーの混合物)に混合されているもの=使用済みキャリアであってもよい。
【0083】
ところで、現像剤(ここでは2成分現像剤)は、キャリアとトナーからなる。そのため、もしテルミット剤をブリケット化(固める)して使用しようとする場合には、後述の如くトナーはバインダとして活用可能なので、現像剤のままで活用することも可能ではある。しかしながら、使用済み回収現像剤の中のキャリア/トナー量比が回収毎に変動する(即ち、一律でない)ため、所望量のテルミット反応を起こすためのキャリア量を特定することを考えると、キャリアとトナーとが現像剤として混合されているよりも両者が分離されていることが望ましい。
【0084】
そこで、これを具現化するシステムとして図6に示すものを案出した。図6は、キャリアのうち、市場で使用済みになったもの活用したシステムである。図6の初工程は、市場済み現像剤収集工程である。ここで、市場済み現像剤収集工程(061)とは、市場で使用されている複写機等から現像剤を単独で取り出す場合(サービスマンが複写機のメンネテナンスを行って、機械内部にある現像剤を交換する場合など)もあれば、市場で使用されている複写機そのものが使用済み品となってメーカー等に回収される場合もある。但し、後者の場合は使用済み複写機の回収後に複写機を分解/分別して「使用済み現像剤」を取り出すことになる。
【0085】
そのため、市場済み現像剤収集工程(061)とは、例えば図8の回収センター(8)のことである場合があり、また、図8に示すリサイクルセンター(10)のことである場合もある。
【0086】
次に、2番目の工程であるキャリア/トナー分離工程(062)とは、実際に現像剤をキャリアとトナーとに分離する作業を行う工程である。これは、図8のコメットサークルで言うと、リサイクルセンター(10)または材料再生業者(14)が該当する。但し、材料再生業者(14)にキャリア/トナー分離工程(062)当てはめる場合、前段階として、シュレッダー業者(図8の13)にて複写機の現像ユニットを破砕して現像剤とそれ以外とを分離するか、または、リサイクルセンター(10)の段階で現像剤を取り出してしまって、シュレッダー業者(13)を介さずに材料再生業者(14)に現像剤を送るなどの作業が必要となる。
【0087】
このキャリア/トナー分離工程(062)におけるキャリアとトナーの具体的な分離方法であるが、一例としては、サイクロンを用いた風力選別が考えられる。キャリアは大きさ数10μmであるのに対し、トナー(2成分系トナー)は大きさ数μm〜10μm程度であるので、粉体としての大きさはキャリアとトナーとで異なるので分級、すなわち粉体の分離は容易である。
【0088】
また、キャリアとトナーの別の分離方法としては、図7の如く、磁力選別方法であっても良い。2成分系トナーにおいては、キャリアは磁性粉であり、一方のトナーは成分の殆どが樹脂であって非磁性粉である。そこで図7において、ポッパー(071)に使用済み現像剤を投入し、ベルトコンベア(072)にて搬送した後に、マグネット(073)にてキャリア・トナーを磁力選別する。そして、選別されたキャリアとトナーとは、各々別々にフレコン(074)に落とされて収集されることになる。
【0089】
なお、風力選別であっても磁力選別であっても上記の分別を行った結果、所望のキャリアを収集することはできるが、同時に、廃トナーも溜まってしまうことになる。この場合、本願発明者らが提案している特許文献4に開示したシステムを活用するのが非常に有効である。つまり、キャリア/トナー分離工程(062)にて分離したキャリアの方は白金族回収工程(023)に供給すると同時に、トナーの方はバインダ原料として製鋼用フラックス製造メーカー(063)に供給するのが良い。
【0090】
このとき、テルミット剤の原料としてのキャリアにおいても製鋼用フラックス原料としてのトナーにおいても、原料として機能し切る=原料として無駄になるものがない、ため、原料としての経済価値を有し、有価にての取引が可能であることが両手段の共通点となっている。
【0091】
上述してきたように、本発明は、キャリアの材料物性を全て生かしきることで、リサイクルシステム上においてキャリアの一部の成分除去し処分するような工程(キャリアリサイクルの従来技術には存在する工程)を省くことで、リサイクル工程のコストを最小限化し、さらに、素材として見た場合に、リサイクル対象(キャリア自体のこと)のみでなく、よりも付加価値の高いもの(白金族系金属)のリサイクルに活用することで、リサイクルの経済価値をさらに高めているため、企業が積極的かつ継続的な環境保全活動を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施例1を示す概念図
【図2】本発明の実施例2のシステムにおける各種工程の関連図
【図3】本発明の実施例3を示す概念図
【図4】本発明の実施例3のフロー図
【図5】本発明の実施例3で伝達される情報の一例を示す図
【図6】本発明の実施例4のシステムにおける各種工程の関連図を示す斜視図
【図7】キャリアとトナーの別の分離方法を示す図
【図8】市場済み現像剤収集工程の一例を示す図
【符号の説明】
【0093】
(03a) 廃触媒収集量情報
(03b) キャリア需要量情報
(03c) 廃アルミ粉収集工程
(05a) 表
(05b) 購入したいキャリアの量に月毎記載
(05c) キャリアの商品コード
(05d) ロット番号
(05e) 商品名
(011) キャリア収集工程
(012) 還元金属粉収集工程
(013) テルミット反応工程
(022) 廃アルミ収集工程
(023) 白金族元素回収工程
(024) 廃触媒収集工程
(031) 工場内廃キャリア収集工程
(032) パソコン
(033) プリンタ
(061) 市場済み現像剤収集工程
(062) キャリア/トナー分離工程
(063) 製鋼用フラックス製造メーカー
(071) ポッパー
(072) ベルトコンベア
(073) マグネット
(074) フレコン
(8) 回収センター
(10) リサイクルセンター
(14) 材料再生業者
(13) シュレッダー業者


【特許請求の範囲】
【請求項1】
OA機器等の画像形成装置に使用される2成分現像剤(トナー及びキャリア)を処理する現像剤リサイクルシステムにおいて、キャリアを一定量集めるキャリア収集工程と、還元金属粉を一定量集める還元金属粉収集工程と、上記キャリア収集工程と還元金属粉収集工程にて集められたキャリアと還元金属粉とを配合してテルミット反応を起こすテルミット反応工程とを有することを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリア収集工程が、市場にて使用済みになった現像剤からトナーとキャリアとを分別するトナー・キャリア分別工程を含むことを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリア収集工程が、市場にて使用済みになった現像剤を収集する使用済み現像剤収集工程と、使用済み現像剤からトナーとキャリアとを分別するトナー・キャリア分別工程の2工程からなることを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリア収集工程が、現像剤工場にて発生する廃キャリアを回収する工場内廃キャリア収集工程であることを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記還元金属粉収集工程が、アルミニウム工場にて発生する廃アルミ粉や市中の廃アルミ粉を収集する廃アルミ粉収集工程を含むことを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記テルミット反応工程は、触媒に含まれている白金族元素を溶融して回収する白金族元素回収工程であることを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリア収集工程では、前記テルミット反応工程から出されるキャリア需要量情報に基づいて必要量のキャリアを前記テルミット反応工程に供給し、前記廃アルミ粉回収工程では、前記テルミット反応工程から出される前記廃アルミ粉需要量情報に基づいて必要量の廃アルミ粉を前記テルミット反応工程に送ることを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項8】
請求項7に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、さらに前記キャリア収集工程では、前記テルミット反応工程に送るキャリアに対して商品コードを設け、かつ前記キャリア需要量情報に基づいて、必要量のキャリアを送る際に送付ロット毎の製造コードを設けることを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項9】
請求項7に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、さらに前記廃アルミ粉回収工程では、前記テルミット反応工程に送る廃アルミ粉に対して商品コードを設け、かつ前記廃アルミ粉需要量情報に基づいて、必要量の廃アルミ粉を送る際に送付ロット毎の製造コードを設けることを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項10】
請求項7から9のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、通信手段を用いて情報の伝達を行うことを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項11】
請求項10に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記通信手段として、情報処理機器を用いたインターネットによる通信手段を用いることを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項12】
請求項10に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリア収集工程、前記廃アルミ粉収集工程及び前記テルミット反応工程各々が、送受信される情報をデータ保管手段に保管し、該データ保管手段に保管した前記情報を出力手段を介して出力することを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリア収集工程と、前記キャリアのリサイクル実施情報を、情報処理機器にてデータ管理することを特徴とする現像剤リサイクルシステム
【請求項14】
請求項13に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリアのリサイクル実施情報には、
集めたキャリアの量のデータ、
前記テルミット反応工程に送ったキャリアの量データ、
前記テルミット反応工程以外にキャリアを送ってキャリアを処理した場合での、その手段の内容及び量のデータ、
これらの前記データから算出されるリサイクル率データ、マテリアルリサイクル率データ、エネルギーリカバリ率データ、
を含むことを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項15】
請求項6から14のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記テルミット反応工程は、前記白金族元素回収工程に加えて、市場で使用済みになった触媒を収集する廃触媒収集工程の2工程からなることを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項16】
請求項15に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記廃触媒収集工程は、廃触媒の収集量の管理も行い、さらに、前記白金族元素回収工程への廃触媒収集量情報の伝達を行うことを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項17】
請求項15または16に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記白金族元素回収工程は、前記廃触媒収集工程から白金族元素を溶融回収するためのテルミット反応に必要なキャリアの量とアルミ粉の量を算出して、キャリア需要量情報とアルミ粉需要量情報を作成することを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項18】
請求項3から18のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記トナー・キャリア分別工程にて分別したトナーをリサイクルするトナーリサイクル工程をさらに有することを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項19】
請求項18に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記トナーリサイクル工程が、製鋼用副原料である製鋼用フラックスの製造工程であり、トナーを製鋼用フラックス製造工程にてバインダとして活用することを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項20】
請求項3から19のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記トナー・キャリア分別工程は、さらに、トナーリサイクル実施情報を情報処理機器にてデータ管理することを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項21】
請求項20に記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記トナーリサイクル実施情報が、
集めたトナーの量のデータ、
前記製鋼用フラックス製造工程に送ったトナー量データ、
前記製鋼用フラックス製造工程以外にトナーを送ってトナーを処理した場合の、その手段の内容及び量のデータ、
これらデータから算出されるリサイクル率データ、マテリアルリサイクル率データ、エネルギーリカバリ率データ
を含むことを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項22】
請求項14から21のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記キャリアリサイクル実施情報と前記トナーリサイクル実施情報によるキャリア量とトナー量を加重平均して、
総合的な現像剤リサイクル率データ、現像剤のマテリアルリサイクル率データ、現像剤のエネルギーリカバリ率データを算出可能とすることを特徴とする現像剤リサイクルシステム。
【請求項23】
請求項1から22のいずれかに記載の現像剤リサイクルシステムにおいて、前記還元金属粉が、廃アルミ粉、廃マグネシウム、廃チタニウム、廃シリコン、及びそれらの合金、及びそれら金属の単一金属を主成分もしくは2種以上の複合金属を主成分とした粉粒体も含むことを特徴とする現像剤リサイクルシステム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−114567(P2007−114567A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307213(P2005−307213)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(593153222)株式会社シンコーフレックス (6)
【Fターム(参考)】