説明

現像剤供給装置

【課題】 供給対象に対して常に良好な帯電状態の現像剤を供給すること。
【解決手段】 搬送基板は、起動処理動作部と常時搬送動作部とを備えている。起動処理動作部は、現像剤担持部材の近傍であって担持位置よりも下方に設けられ、現像剤搬送動作の初期に行われる起動処理の際には現像剤を現像剤搬送経路から離脱させて現像剤収容部に向かって落下させるための起動処理電圧が印加される一方、起動処理の後には搬送バイアス電圧が印加される。常時搬送動作部は、現像剤収容部に面する位置から起動処理動作部の下方にて当該起動処理動作部と隣接する位置まで設けられ、搬送動作中に搬送バイアス電圧が常時印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定極性に帯電した粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成された、現像剤供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、特開2010−145911号公報等に開示されているものが知られている。かかる装置は、現像剤担持部材と、搬送基板と、を備えている。
【0003】
前記現像剤担持部材は、円柱面状の周面を有するローラ状の部材であって、前記供給対象と対向するように設けられている。前記搬送基板は、前記現像剤搬送経路に沿って配列された複数の搬送電極を備えていて、これらの搬送電極への電圧印加に伴って発生する電界により、前記現像剤搬送経路に沿った現像剤搬送方向に前記現像剤を搬送するように構成されている。
【0004】
前記搬送基板は、垂直搬送基板と、底部搬送基板と、を備えている。前記垂直搬送基板は、前記現像剤を前記現像剤搬送方向としての垂直上方に搬送するように立設されている。前記現像剤担持部材は、前記垂直搬送基板の上端部と対向するように設けられている。前記底部搬送基板は、現像剤貯留部の底面を構成するように設けられている。この底部搬送基板は、前記現像剤との摩擦により当該現像剤を帯電させるとともに帯電した当該現像剤を前記垂直搬送基板の下端部に向けて搬送するように当該下端部と接続されている。
【0005】
前記所定極性に帯電した前記現像剤が前記垂直搬送基板の前記上端部から前記現像剤担持部材に向かう電界が形成されるように、前記垂直搬送基板と前記現像剤担持部材との間に所定の電圧が印加されている。
【0006】
かかる構成においては、前記現像剤は、前記垂直搬送基板により、前記現像剤搬送経路に沿って、前記現像剤搬送方向としての垂直上方に搬送される。そして、前記垂直搬送基板の前記上端部と前記現像剤担持部材とが対向する位置にて、前記所定極性に帯電した前記現像剤は、上述の所定の電圧の印加によって形成される電界により、前記現像剤担持部材側に移行する。すなわち、当該現像剤は、前記現像剤担持部材の前記周面に担持される。
【発明の概要】
【0007】
この種の装置において、前記現像剤の搬送が(一旦)停止された場合に、搬送途中の前記現像剤が前記搬送基板(前記垂直搬送基板)上に残留することがあり得る。このような残留現像剤が、搬送再開時にそのまま前記現像剤担持部材に向けて搬送されると、帯電が充分でない前記残留現像剤が前記現像剤担持部材上に担持されてしまい、画像形成に悪影響が及ぼされる。
【0008】
発明は、かかる課題に対処するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、前記供給対象に対して常に良好な帯電状態の前記現像剤を供給することにある。
【0009】
<構成>
本発明の適用対象である現像剤供給装置は、現像剤担持部材と、ケーシングと、搬送基板と、を備えていて、所定極性に帯電した粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成されている。
【0010】
前記現像剤担持部材は、所定の現像剤供給位置にて前記供給対象と最近接しつつ対向するように配置されている。前記現像剤担持部材は、主走査方向と平行な円柱面状の周面である現像剤担持面を有している。そして、前記現像剤担持部材は、回転駆動されることによる前記現像剤担持面の前記主走査方向と直交する方向への移動により、当該現像剤担持面上に担持された前記現像剤を前記現像剤供給位置に供給するように構成されている。
【0011】
前記ケーシングは、前記供給対象に対向する位置に開口部が設けられた箱状部材であって、前記現像剤を収容するための空間である現像剤収容部を内部に備えている。前記ケーシングは、前記現像剤担持部材を、前記現像剤担持面を前記開口部にて前記供給対象に対向させつつ回転可能に支持するように構成されている。
【0012】
前記搬送基板は、複数の搬送電極を備えている。複数の前記搬送電極は、前記主走査方向と交差するように上下方向に沿って設けられた現像剤搬送経路に沿って配列されている。そして、前記搬送基板は、複数の前記搬送電極への多相交流電圧成分を含む搬送バイアス電圧の印加によって発生する進行波状の搬送電界により、前記現像剤を、前記現像剤収容部から前記現像剤担持面と最近接しつつ対向する担持位置に向かって前記現像剤搬送経路に沿って上方に搬送するとともに当該担持位置近傍にて前記現像剤担持面上に担持させるように、前記ケーシングの内部に収容されている。
【0013】
本発明の特徴は、前記搬送基板が、起動処理動作部と、常時搬送動作部と、を備えたことにある。前記起動処理動作部は、前記現像剤担持部材の近傍であって前記担持位置よりも下方に設けられている。この起動処理動作部は、前記現像剤の搬送動作の初期(搬送動作の再開初期を含む)に行われる起動処理の際には前記現像剤を前記現像剤搬送経路から離脱させて前記現像剤収容部に向かって落下させるための起動処理電圧が印加される一方で、前記起動処理の後には前記搬送バイアス電圧が印加されるように構成されている。前記常時搬送動作部は、少なくとも、前記現像剤収容部に面する位置から前記起動処理動作部の下方にて当該起動処理動作部と隣接する位置まで設けられている。この常時搬送動作部は、前記搬送動作中に前記搬送バイアス電圧が常時印加されるように構成されている。
【0014】
具体的には、例えば、前記現像剤供給装置は、前記起動処理の際における、
前記起動処理動作部における前記搬送電極の電位をV1、
前記搬送基板の前記起動処理動作部を除く部分(すなわち前記常時搬送動作部)における前記搬送電極の電位をV2、
前記現像剤担持部材の電位をV3、とした場合に、
前記所定極性が正極性のときは
V2<V1≦V3
前記所定極性が負極性のときは
V3≦V1<V2
となるように構成されていてもよい。
【0015】
前記起動処理動作部は、前記起動処理の際に、前記搬送電界とは逆方向の進行波状の電界を形成するための逆搬送バイアス電圧が印加されるようになっていてもよい。
【0016】
また、前記起動処理動作部の下端は、前記現像剤担持部材の下端と等しい位置に設けられていてもよい。
【0017】
<作用・効果>
かかる構成を備えた本発明の現像剤供給装置においては、複数の前記搬送電極への前記搬送バイアス電圧の印加によって、前記搬送基板(前記現像剤搬送経路)に沿って、進行波状の前記搬送電界が発生する。この搬送電界によって、前記現像剤が、前記現像剤搬送経路に沿って、前記担持位置(前記現像剤担持部材)に向かって上方に搬送される。そして、前記担持位置の近傍にて、前記現像剤は、前記現像剤担持面上に担持される。
【0018】
前記担持位置の近傍にて前記現像剤を担持した前記現像剤担持面は、前記現像剤担持部材の回転駆動により前記主走査方向と直交する方向に移動し、前記現像剤供給位置に達する。この現像剤供給位置(の近傍)にて、前記現像剤担持面上に担持された前記現像剤は、前記供給対象に供給される。
【0019】
ここで、前記搬送基板による前記現像剤の搬送が(一旦)停止された場合、当該現像剤が前記現像剤搬送経路上に残留する(すなわち前記搬送基板上に付着する)ことがあり得る。このような残留現像剤が、搬送再開時にそのまま前記現像剤担持部材に向けて搬送されると、帯電が充分でない前記残留現像剤が前記現像剤担持部材上に担持されてしまい、画像形成に悪影響が及ぼされるおそれがある。
【0020】
そこで、本発明の構成においては、前記現像剤の搬送動作の初期(搬送動作の再開初期を含む)に行われる前記起動処理の際に、前記現像剤担持部材の近傍であって前記担持位置よりも下方に設けられた前記起動処理動作部における前記搬送電極に、前記起動処理電圧が印加される。一方、少なくとも、前記現像剤収容部に面する位置から前記起動処理動作部の下方にて当該起動処理動作部と隣接する位置まで設けられた前記常時搬送動作部には、前記起動処理中であっても、通常の前記搬送バイアス電圧が印加される。
【0021】
すると、前記起動処理動作部に対応する位置における前記残留現像剤は、前記起動処理電圧の印加に伴って発生する電界の作用により、前記現像剤搬送経路から離脱して、前記現像剤収容部に向かって落下する。一方、前記常時搬送動作部における前記残留現像剤は、前記搬送電界の作用により、あるいは、前記現像剤収容部から新たに搬送されてきた前記現像剤(新規搬送分)によって押し出されることにより、前記起動処理動作部あるいはこれとの境界に達した後、前記現像剤搬送経路から離脱して、前記前記現像剤収容部に向かって落下する。
【0022】
このように、前記現像剤搬送経路上に残留した(すなわち前記搬送基板上に付着した)前記残留現像剤は、前記担持位置まで搬送されて前記現像剤担持面上に担持されることなく、前記現像剤搬送経路から離脱して、前記現像剤収容部に向かって落下する。前記残留現像剤が前記現像剤搬送経路上から良好に除去された後は(すなわち前記起動処理の後は)、前記起動処理動作部に通常の前記搬送バイアス電圧が印加されることで、前記搬送基板は通常の搬送動作を行う。
【0023】
このため、本発明の構成においては、常に良好な帯電状態の前記現像剤が、前記搬送基板によって前記担持位置(の近傍)まで搬送され、当該担持位置(の近傍)にて前記現像剤担持面上に担持される。したがって、本発明によれば、前記供給対象に対して常に良好な帯電状態の前記現像剤を供給することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態が適用された画像形成装置としてのレーザープリンタの概略構成を示す側面図である。
【図2】図1に示されているトナー供給装置を拡大した側断面図である。
【図3】図2に示されている搬送基板を拡大した側断面図である。
【図4A】図3に示されている各電源回路の出力波形の一例を示すグラフである。
【図4B】図3に示されている各電源回路の出力波形の一例を示すグラフである。
【図5】図4Bに示されている起動処理電圧の一変形例による作用・効果を説明するための模式図(シミュレーション結果を示す図)である。
【図6】図5に示されている構成を変更した変形例による作用・効果を説明するための模式図(シミュレーション結果を示す図)である。
【図7】図5及び図6に示されている構成を変更した比較例による動作を説明するための模式図(シミュレーション結果を示す図)である。
【図8】図2に示されているトナー供給装置の一変形例の概略構成を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態に対して施され得る各種の変更(modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
【0026】
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態が適用された画像形成装置としての、レーザープリンタ1の概略構成を示す側面図である。図1を参照すると、レーザープリンタ1は、用紙搬送機構2と、感光体ドラム3と、帯電器4と、スキャナーユニット5と、トナー供給装置6と、を備えている。
【0027】
レーザープリンタ1内に設けられた図示しない給紙トレイには、シート状の用紙Pが、積み重ねられた状態で収容されている。用紙搬送機構2は、上述の給紙トレイに収容された用紙Pを、所定の用紙搬送経路PPに沿って一枚ずつ搬送するように構成されている。
【0028】
感光体ドラム3の周面には、静電潜像担持面LSが形成されている。静電潜像担持面LSは、主走査方向(図中z軸方向:用紙幅方向あるいは単に幅方向とも称され得る)と平行な円柱面であって、電位分布による静電潜像が形成されるとともに当該静電潜像に対応した位置にてトナーT(図2参照)を担持するようになっている。感光体ドラム3は、前記主走査方向と平行な中心軸Cを中心として、所定方向(図中反時計回り)に回転駆動されることで、前記主走査方向と直交する副走査方向に沿って静電潜像担持面LSが移動するように構成されている。
【0029】
帯電器4は、静電潜像担持面LSを一様に正帯電させるために、静電潜像担持面LSと対向するように配置されている。スキャナーユニット5は、感光体ドラム3の回転によって前記副走査方向に沿って移動する静電潜像担持面LS(帯電器4によって一様に正帯電されている)上に、画像データに基づいて変調されたレーザービームLBをスキャン位置SPにて結像させつつ前記主走査方向に沿って走査することで、静電潜像担持面LS上に静電潜像を形成するように、構成及び配置されている。
【0030】
トナー供給装置6は、スキャン位置SPよりも感光体ドラム3の回転による静電潜像担持面LSの移動方向における下流側の現像位置DPにて、静電潜像担持面LSと対向するように、感光体ドラム3の下方に配置されている。トナー供給装置6は、現像位置DPにて、正帯電した状態のトナーT(図2参照)を下方から静電潜像担持面LSに供給するように構成されている。次に、レーザープリンタ1の各部の具体的な構成について、より詳細に説明する。
【0031】
用紙搬送機構2は、一対のレジストローラ21と、転写ローラ22と、を備えている。レジストローラ21は、用紙Pを所定のタイミングにて感光体ドラム3と転写ローラ22との間の転写位置TP(現像位置DPよりも感光体ドラム3の回転による静電潜像担持面LSの移動方向における下流側)に向けて送出するように構成されている。
【0032】
転写ローラ22は、静電潜像担持面LSと、転写位置TPにて、用紙搬送経路PP(用紙P)を挟んで対向するように配置されている。この転写ローラ22は、感光体ドラム3の回転方向と反対方向(図中時計回り)に回転駆動されるように構成されている。また、転写ローラ22は、静電潜像担持面LS上に付着したトナーT(図2参照)を用紙Pに転写させるための所定の転写バイアス電圧が感光体ドラム3との間に印加されるように、図示しない転写バイアス電源回路と電気的に接続されている。
【0033】
<トナー供給装置>
図2は、図1に示されているトナー供給装置6を拡大した側断面図である。図2を参照すると、トナー供給装置6は、正極性に帯電したトナーTを、進行波状の搬送電界によりトナー搬送経路TTPに沿って搬送しつつ、感光体ドラム3に対して供給するように構成されている。
【0034】
トナー供給装置6のケーシングをなすトナーボックス61は、側断面視にて長円状に形成された箱状部材であって、その長手方向が上下方向(図中y軸方向)と平行となるように配置されている。トナーボックス61の内部には、粉末状の乾式現像剤としてのトナーTが収容されている。すなわち、トナーボックス61における、半円筒状の下端部の内側の空間によって、トナー収容部61aが形成されている。なお、本実施形態においては、トナーTは、正帯電性、非磁性1成分の、黒色のものが用いられている。また、トナーボックス61の頂部、すなわち、感光体ドラム3と対向する位置には、開口部61bが設けられている。
【0035】
トナーボックス61の内側には、本発明の現像剤担持部材としての現像ローラ62が収容されている。現像ローラ62は、トナーボックス61によって、回動可能に支持されている。この現像ローラ62は、円柱面状の周面であるトナー担持面62aを有するローラ状の部材であって、開口部61bにて感光体ドラム3と対向するように設けられている。すなわち、現像ローラ62におけるトナー担持面62aが現像位置DPにて感光体ドラム3における静電潜像担持面LSと最近接しつつ所定間隔のギャップを介して対向するように、現像ローラ62がトナーボックス61によって支持されている。
【0036】
<<トナー電界搬送手段>>
トナーボックス61の内部には、トナー搬送経路TTPに沿って、搬送基板63が設けられている。搬送基板63は、トナーボックス61の内壁面に固定されている。本実施形態においては、搬送基板63は、底部搬送基板63aと、垂直搬送基板63b(常時搬送動作部63b2及び起動処理動作部63b1を含む)と、回収基板63cと、を備えている。なお、搬送基板63(底部搬送基板63a、垂直搬送基板63b、及び回収基板63c)の内部構成の詳細については後述する。
【0037】
底部搬送基板63aは、トナー収容部61aの底面を構成するように、トナーボックス61の内側の空間における底部に配置されている。底部搬送基板63aは、搬送基板63の底部の、側断面視にて半円筒形状に屈曲された凹状の曲面状の部分であって、垂直搬送基板63bの下端部と滑らかに接続されている。この底部搬送基板63aは、トナー収容部61a内のトナーTを、垂直搬送基板63bの下端部に向けて搬送するように、当該下端部と接続されている。
【0038】
垂直搬送基板63bは、平板状に形成されていて、底部搬送基板63aから受け渡されたトナーTを垂直上方に搬送するように、垂直に立設されている。垂直搬送基板63bの上端部と現像ローラ62(トナー担持面62a)とが最近接しつつ対向するトナー担持位置TCPには、所定間隔のギャップが設けられている。本実施形態においては、上述のように、垂直搬送基板63bは、起動処理動作部63b1と、常時搬送動作部63b2と、を備えている。
【0039】
起動処理動作部63b1は、現像ローラ62(トナー担持面62a)の近傍に配置されている。具体的には、本実施形態においては、起動処理動作部63b1は、垂直搬送基板63bの上端からトナー担持位置TCPよりも下方にわたって設けられている。すなわち、起動処理動作部63b1の上端は垂直搬送基板63bの上端に対応する位置(高さ)に設けられ、起動処理動作部63b1の下端は現像ローラ62の下端に対応する位置(高さ)に設けられている。
【0040】
常時搬送動作部63b2は、起動処理動作部63b1の下方にて、当該起動処理動作部63b1と隣接するように配置されている。具体的には、常時搬送動作部63b2の上端は起動処理動作部63b1の下端と隣接するように設けられ、常時搬送動作部63b2の下端は垂直搬送基板63bのトナー収容部61aに面する下端に対応する位置(高さ)に設けられている。
【0041】
起動処理動作部63b1は、垂直搬送基板63bによるトナーTの搬送動作の初期(搬送動作の再開初期を含む)に行われる起動処理の際には、トナーTをトナー搬送経路TTPから離脱させてトナー収容部61aに向かって落下させる一方、起動処理の後には、トナーTをトナー収容部61aからトナー担持位置TCPに向かうトナー搬送方向TTDに搬送するように構成されている。これに対し、常時搬送動作部63b2は、垂直搬送基板63bによるトナーTの搬送動作中は、トナーTを、トナー収容部61aからトナー担持位置TCPに向かうトナー搬送方向TTDに常時搬送するように構成されている。
【0042】
回収基板63cは、垂直搬送基板63bの上端部と現像ローラ62を挟んだ反対側にて、現像ローラ62と対向するように設けられている。すなわち、回収基板63cは、トナーボックス61の開口部61bよりもトナー搬送方向TTDにおける下流側に配置されている。本実施形態においては、回収基板63cのトナー搬送方向TTDにおける終端部は、現像ローラ62の下端に対応する位置に設けられている。
【0043】
回収基板63cは、現像位置DPにて消費されなかったトナーTを現像ローラ62から回収するとともに、この回収されたトナーTを下方のトナー収容部61aに向けて搬送するように構成されている。具体的には、回収基板63cの上部は、現像ローラ62と所定間隔のギャップを隔てて対向するように、凹状の曲面状に屈曲されている。また、回収基板63cの下端部は、トナーTを垂直下方に搬送するように設けられている。
【0044】
<<<電源回路>>>
底部搬送基板63a及び垂直搬送基板63bにおける常時搬送動作部63b2は、常時搬送動作部電源回路64aと電気的に接続されている。垂直搬送基板63bにおける起動処理動作部63b1は、起動処理動作部電源回路64bと電気的に接続されている。回収基板63cは、回収電源回路65と電気的に接続されている。現像ローラ62は、現像バイアス電源回路66と電気的に接続されている。
【0045】
常時搬送動作部電源回路64aは、底部搬送基板63a及び垂直搬送基板63bにおける常時搬送動作部63b2に備えられた複数の搬送電極631(図3参照)に対して、多相交流電圧成分を含む搬送バイアス電圧を印加することで、底部搬送基板63a及び常時搬送動作部63b2にて、トナーTをトナー搬送方向TTDに搬送するための進行波状の搬送電界を発生させるようになっている。
【0046】
起動処理動作部電源回路64bは、垂直搬送基板63bにおける起動処理動作部63b1に備えられた複数の搬送電極631(図3参照)に対して、(1)起動処理の際には所定の起動処理電圧を印加することで起動処理動作部63b1にてトナーTをトナー搬送経路TTPから離脱させてトナー収容部61aに向かって落下させるような電界を発生させる一方、(2)起動処理の後には搬送バイアス電圧(図4A参照)を印加することで起動処理動作部63b1にて上述の搬送電界を発生させるようになっている。具体的には、本実施形態においては、起動処理動作部電源回路64bは、起動処理の際に、トナーTをトナー搬送方向TTDとは逆方向に搬送するような進行波状の逆搬送電界を発生させるための、逆搬送バイアス電圧(図4B参照)を出力するようになっている。
【0047】
回収電源回路65は、回収基板63cにてトナーTを現像ローラ62(トナー担持面62a)から回収しつつ進行波状の回収搬送電界によってトナー収容部61aに向かって垂直下方に搬送するための、多相交流電圧成分を含む回収バイアス電圧を、回収基板63cに備えられた複数の搬送電極631(図3参照)に対して印加するようになっている。この回収バイアス電圧は、静電潜像担持面LSにおけるトナーTを供給すべき露光部位の電位よりも低い平均電位となるように設定されている。
【0048】
現像バイアス電源回路66は、正帯電したトナーTが垂直搬送基板63bから現像ローラ62に向かう電界が形成されるような現像バイアス電圧を、垂直搬送基板63bと現像ローラ62との間に印加するようになっている。
【0049】
そして、常時搬送動作部電源回路64a、起動処理動作部電源回路64b、回収電源回路65、及び現像バイアス電源回路66は、起動処理の後の通常のトナーTの電界搬送の際に、トナーTをトナー搬送経路TTPに沿ってトナー搬送方向TTDに循環させる(トナー収容部61a内のトナーTを垂直搬送基板63bによってトナー担持位置TCPまで搬送し、このトナー担持位置TCPの近傍にてトナーTを現像ローラ62側に移行させてトナー担持面62a上に一旦担持させ、現像位置DPにて消費されなかったトナーTを現像ローラ62から回収して下方のトナー収容部61aに還流させる)ために必要な電圧を出力するようになっている。
【0050】
具体的には、常時搬送動作部電源回路64aは、+400V〜+1000V(振幅300V、DCオフセット+700V)、300Hzの矩形波状の4相交流電圧(図4A参照)を出力するようになっている。一方、起動処理動作部電源回路64bは、起動処理の際には、常時搬送動作部電源回路64aと波形が同一で位相のずれ方向が逆となるような4相交流電圧(図4B参照)を出力するようになっている。また、起動処理動作部電源回路64bは、起動処理の後には、前述の常時搬送動作部電源回路64aと同様の電圧を出力するようになっている。
【0051】
また、回収電源回路65は、−300V〜+300V(振幅300V、DCオフセット0V)、300Hzの矩形波状の交流電圧を出力するようになっている。さらに、現像バイアス電源回路66は、DCオフセット+400Vの直流電圧を出力するようになっている。
【0052】
<<<搬送基板の内部構成>>>
図3は、図2に示されている搬送基板63を拡大した側断面図である。図3を参照すると、搬送基板63は、薄板状の部材であって、フレキシブルプリント配線基板と同様の構成を有している。具体的には、搬送基板63は、搬送電極631と、搬送電極支持フィルム632と、搬送電極コーティング層633と、搬送電極オーバーコーティング層634と、から構成されている。
【0053】
搬送電極631は、前記主走査方向と平行な(すなわち前記副走査方向と直交する)長手方向を有する線状の配線パターンであって、銅箔によって形成されている。複数の搬送電極631は、トナー搬送経路TTPに沿って配列されていて、互いに平行に配置されている。
【0054】
トナー搬送経路TTPに沿って多数配列された各搬送電極631は、3本置きに同一の電源回路に接続されている。すなわち、電源回路VAに接続された搬送電極631,電源回路VBに接続された搬送電極631,電源回路VCに接続された搬送電極631,電源回路VDに接続された搬送電極631,電源回路VAに接続された搬送電極631,電源回路VBに接続された搬送電極631,電源回路VCに接続された搬送電極631・・・が、トナー搬送経路TTPに沿って順に配列されている(なお、これらの電源回路VAないしVDは、図2における常時搬送動作部電源回路64a等の構成要素である。)。
【0055】
ここで、図4A及び図4Bは、図3に示されている各電源回路VAないしVDの出力波形の一例を示すグラフである。本実施形態においては、図4A及び図4Bに示されているように、各電源回路VAないしVDは、ほぼ同一波形の交流電圧である駆動電圧を出力するように構成されている。また、各電源回路VAないしVDが発生する電圧の波形における位相が、90°ずつ異なるように、各電源回路VAないしVDが構成されている。
【0056】
そして、常時搬送動作部電源回路64aは、搬送基板63によるトナーTの電界搬送動作中において常時、図4Aに示されているように、電源回路VAから電源回路VDに向かう順に電圧の位相が90°ずつ遅れるようになっている。一方、起動処理動作部電源回路64bは、起動処理の際には、図4Bに示されているように、電源回路VAから電源回路VDに向かう順に電圧の位相が90°ずつ進む一方、起動処理の後には、図4Aに示されているように、電源回路VAから電源回路VDに向かう順に電圧の位相が90°ずつ遅れるようになっている。
【0057】
複数の搬送電極631は、搬送電極支持フィルム632の表面上に形成されている。搬送電極支持フィルム632は、可撓性のフィルムであって、ポリイミド樹脂等の絶縁性の合成樹脂から構成されている。
【0058】
搬送電極コーティング層633は、絶縁性の合成樹脂から構成されている。この搬送電極コーティング層633は、搬送電極支持フィルム632における搬送電極631が設けられている表面、及び搬送電極631を覆うように設けられている。
【0059】
搬送電極コーティング層633の上には、搬送電極オーバーコーティング層634が設けられている。すなわち、上述の搬送電極コーティング層633は、搬送電極オーバーコーティング層634と搬送電極631との間に形成されている。搬送電極オーバーコーティング層634の表面は、トナーTがスムーズに搬送され得るように、凹凸の極めて少ない平滑な面として形成されている。
【0060】
<レーザープリンタによる画像形成動作の説明>
次に、上述のように構成されたレーザープリンタ1による画像形成動作の概要を、図面を適宜参照しつつ説明する。
【0061】
<<給紙動作>>
まず図1を参照すると、図示しない上述の給紙トレイ上に積載された用紙Pの先端が、レジストローラ21まで送られる。このレジストローラ21にて、用紙Pの斜行が補正されるとともに、搬送タイミングが調整される。その後、用紙Pは、転写位置TPまで給送される。
【0062】
<<静電潜像担持面上へのトナー像の担持>>
上述のように用紙Pが転写位置TPに向けて搬送されている間に、感光体ドラム3の周面である静電潜像担持面LS上に、以下のようにしてトナーTによる像が担持される。
【0063】
<<<静電潜像の形成>>>
感光体ドラム3の静電潜像担持面LSは、まず、帯電器4によって、正極性に一様に帯電される。帯電器4によって帯電された静電潜像担持面LSは、感光体ドラム3の図中矢印で示されている方向(反時計回り)の回転により、スキャナーユニット5と対向する(正対する)位置であるスキャン位置SPまで、前記副走査方向に沿って移動する。
【0064】
このスキャン位置SPにて、画像情報に基づいて変調されたレーザービームLBが、前記主走査方向に沿って走査されつつ、静電潜像担持面LSに照射される。このレーザービームLBの変調状態に応じて、静電潜像担持面LS上の正電荷が消失する部分が生じる。これにより、静電潜像担持面LS上に、正電荷のパターン(画像状分布)による静電潜像が形成される。
【0065】
静電潜像担持面LSに形成された静電潜像は、感光体ドラム3の図中矢印で示されている方向(反時計回り)の回転により、トナー供給装置6と対向する現像位置DPに向かって移動する。
【0066】
<<<帯電トナーの搬送・供給>>>
図2及び図3を参照すると、トナーボックス61内に貯留されているトナーTは、底部搬送基板63aにおける搬送電極オーバーコーティング層634との接触や摩擦等により帯電する。底部搬送基板63aにおける搬送電極オーバーコーティング層634と接触あるいは近接している、帯電したトナーTは、底部搬送基板63aにおける搬送電極631に対する搬送バイアス電圧の印加によって発生する搬送電界により、トナー搬送方向TTDに搬送され、垂直搬送基板63bに受け渡される。
【0067】
ここで、本実施形態においては、底部搬送基板63aのトナー搬送方向TTDにおける下流側の端部、すなわち、垂直搬送基板63bとの接続部が、曲面状に形成されている。これにより、垂直搬送基板63bの下端部における、底部搬送基板63aからのトナーTの受け渡しが、スムーズに行われ得る。
【0068】
垂直搬送基板63bは、その下端部にて底部搬送基板63aから受け渡されたトナーTを、トナー担持位置TCPに向けて垂直上方に搬送する。この間に、トナーTは、垂直搬送基板63bにおける搬送電極オーバーコーティング層634との接触あるいは摩擦により、さらに帯電(チャージアップ)する。
【0069】
ところで、底部搬送基板63aから垂直搬送基板63bに受け渡されたトナーTには、気流による巻き込み等により、無帯電のものが混入している。もっとも、本実施形態の構成においては、かかる無帯電トナーは、重力の作用で、トナー搬送経路TTPから逸脱して、垂直搬送基板63bから下方に落下する。垂直搬送基板63bから下方に落下したトナーTは、トナー収容部61a内に還流する(戻る)。
【0070】
垂直搬送基板63b上を搬送中のトナーTは、上述のようにしてさらに帯電(チャージアップ)することで所定の帯電量に達した状態で、トナー担持位置TCPの近傍に到達する。このトナー担持位置TCPの近傍にて、現像バイアス電圧の作用で、正帯電のトナーTがトナー担持面62a上に担持される。
【0071】
トナー担持位置TCPの近傍にてトナーTを担持したトナー担持面62aは、現像ローラ62の回転駆動により前記主走査方向と直交する方向に移動し、現像位置DPの近傍に達する。この現像位置DPの近傍にて、トナー担持面62a上に担持されたトナーTは、感光体ドラム3に供給される。すなわち、静電潜像担持面LSに形成された静電潜像が、トナーTによって現像される。具体的には、静電潜像担持面LS上であって、静電潜像における正電荷が消失した部分に、トナーTが付着する。これにより、トナーTによる画像(以下、「トナー像」と称する。)が、静電潜像担持面LS上に担持される。
【0072】
現像位置DPを通過した(現像位置DPにて消費されなかった)トナー担持面62a上のトナーTは、上述の回収バイアス電圧により現像ローラ62(トナー担持面62a)と回収基板63cとの間に発生する回収電界の作用で、回収基板63c側に移行する。すなわち、かかるトナーは、回収基板63cによってトナー担持面62aから回収される。
【0073】
ここで、本実施形態においては、現像ローラ62に対して、交流の回収バイアス電圧が印加されている。かかる回収バイアス電圧の交流成分の作用で、現像ローラ62におけるトナー担持面62aの近傍のトナーTが振動する。この振動により、トナー担持面62aから浮き上がっているトナーTが、トナー担持面62aに担持されている(付着している)トナーTと衝突する。かかる衝突により、トナー担持面62aに担持されているトナーTは、トナー担持面62aから浮き上がりやすくなる。
【0074】
また、本実施形態においては、回収バイアス電圧の平均電位(0V)は、静電潜像担持面LSにおけるトナーTを供給すべき露光部位の電位(240V)よりも低い電位に設定されている。このような回収バイアス電圧により、トナー担持面62aにおける、現像位置DPを通過した部分から、消費されなかったトナーTが、良好に剥離され、回収基板63c側に移行する。したがって、形成画像におけるゴーストの発生が、可及的に抑制される。
【0075】
トナー担持面62aから回収基板63c側に移行したトナーTは、回収基板63cにおける搬送電極631に対する回収バイアス電圧の印加によって発生する電界により、下方のトナー収容部61aに向けて搬送される。回収基板63cの下端部にて、トナーTは、垂直下方に搬送される。このとき、トナーTには、重力と同方向の慣性が作用する。そして、回収基板63cの下端部よりも下方においては、トナーTは、重力と、この重力と同方向の慣性の作用で、トナー収容部61aに落下する。よって、回収基板63cがトナー収容部61aに達するまで設けられていなくても、トナーTがトナー収容部61aに良好に還流する。
【0076】
<<潜像形成面から用紙へのトナー像の転写>>
図1を参照すると、上述のようにして感光体ドラム3の静電潜像担持面LS上に担持されたトナー像は、感光体ドラム3の図中矢印で示されている方向(反時計回り)の回転によって当該静電潜像担持面LSが前記副走査方向に移動することで、転写位置TPに向けて搬送される。そして、この転写位置TPにて、トナー像が、静電潜像担持面LSから用紙P上に転写される。その後、トナー像は、図示しない定着手段によって用紙P上に定着される。これにより、用紙P上にトナー像が形成される。
【0077】
<実施形態の構成による作用・効果>
ここで、搬送基板63によるトナーTの搬送が(一旦)停止された場合、当該トナーTがトナー搬送経路TTP上に残留する(すなわち搬送基板63上に付着する)ことがあり得る。
【0078】
このような残留トナー(特に垂直搬送基板63b上に残留したもの)は、トナー担持位置TCPまでの搬送距離が充分確保されていないために、トナー担持位置TCPの近傍に達した時点での帯電量が不十分となる。よって、このような残留トナーが、搬送再開時にそのまま現像ローラ62に向けて搬送されると、帯電が充分でない残留トナーが現像ローラ62上に担持されてしまい、画像形成に悪影響が及ぼされるおそれがある。
【0079】
そこで、本実施形態においては、トナーTの搬送動作の初期(搬送動作の再開初期を含む)に、起動処理が行われる。この起動処理は、例えば、レーザープリンタ1の電源投入後最初の画像形成動作開始時、ジョブデータ待機後の画像形成動作開始時、用紙補給や用紙ジャム処理等のメンテナンス処理後の画像形成動作開始時、等において行われる。
【0080】
この起動処理の際、現像ローラ62の回転駆動が停止される。そして、現像ローラ62の近傍であってトナー担持位置TCPよりも下方に設けられた起動処理動作部63b1における搬送電極631に、起動処理電圧としての逆搬送バイアス電圧が印加される。一方、トナー収容部61aに面する位置から起動処理動作部63b1の下方にて当該起動処理動作部63b1と隣接する位置まで設けられた常時搬送動作部63b2には、起動処理中であっても、通常の搬送バイアス電圧が印加される。
【0081】
すると、起動処理動作部63b1に対応する位置における残留トナーは、上述の起動処理電圧の印加に伴って発生する逆搬送電界の作用により、トナー担持位置TCPから下方に向かって(トナー担持位置TCPから遠ざかるように)搬送される。そして、起動処理動作部63b1の下端と常時搬送動作部63b2の上端との境界部分(逆搬送電界と搬送電界とがぶつかる部分)で、トナー搬送経路TTPから離脱して、トナー収容部61aに向かって落下する。
【0082】
一方、常時搬送動作部63b2における残留トナーは、搬送電界の作用により、あるいは、トナー収容部61aから新たに搬送されてきたトナーT(新規搬送分)によって押し出されることにより、起動処理動作部63b1の下端との上述の境界部分に達し、トナー搬送方向TTDへの搬送が遮られることで当該境界部分に一旦滞留する。もっとも、かかる滞留トナーは、自重により、直ちに、トナー搬送経路TTPから離脱して、トナー収容部61aに向かって落下する(このため、上述の境界部分における滞留トナーの滞留時間は、実際には非常に短い。)。
【0083】
このように、トナー搬送経路TTP上に残留した(すなわち搬送基板63上に付着した)残留トナーは、トナー担持位置TCPまで搬送されてトナー担持面62a上に担持されることなく、トナー搬送経路TTPから離脱して、トナー収容部61aに向かって落下する。
【0084】
残留トナーがトナー搬送経路TTP上から良好に除去された後、起動処理が終了される。その後は、起動処理動作部63b1に通常の搬送バイアス電圧が印加されることで、搬送基板63は通常の搬送動作を行う。
【0085】
このため、本実施形態においては、常に良好な帯電状態のトナーTが、搬送基板63によってトナー担持位置TCP(の近傍)まで搬送され、トナー担持位置TCP(の近傍)にてトナー担持面62a上に担持される。したがって、本実施形態によれば、感光体ドラム3(静電潜像担持面LS)に対して常に良好な帯電状態のトナーTを供給することが可能になる。
【0086】
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態は、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の代表的な実施形態を、単に例示したものにすぎない。よって、本発明はもとより上述の実施形態に何ら限定されるものではない。したがって、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、上述の実施形態に対して種々の変形が施され得ることは、当然である。
【0087】
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成及び機能を有する部材に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部材の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が援用され得るものとする。
【0088】
もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたもの限定されるものではない。また、複数の変形例が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0089】
本発明(特に、本発明の課題を解決するための手段を構成する各構成要素における、作用的・機能的に表現されているもの)は、上述の実施形態及び下記変形例の記載に基づいて限定解釈されてはならない。このような限定解釈は、(先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、発明の保護及び利用を目的とする特許法の目的に反し、許されない。
【0090】
(1)本発明の適用対象は、単色のレーザープリンタに限定されない。例えば、本発明は、カラーのレーザープリンタや、単色及びカラーの複写機等の、いわゆる電子写真方式の画像形成装置に対して、好適に適用され得る。このとき、感光体の形状は、上述の実施形態のようなドラム状でなくてもよい。例えば、感光体の形状は、平板状や無端ベルト状等であってもよい。
【0091】
露光光源としては、レーザースキャナ以外のもの(LED、EL(エレクトロルミネッセンス)素子、蛍光体、等)が好適に用いられ得る。この場合、「主走査方向」は、発光素子(LED等)の配列方向と平行な方向となる。
【0092】
また、帯電極性も、上述の実施形態に開示された具体的態様(正帯電現像剤・正帯電感光体)に限定されない。すなわち、例えば、負帯電現像剤や負帯電感光体にも本発明は好適に適用され得ることは、いうまでもない。
【0093】
あるいは、本発明は、上述の電子写真方式以外の方式(例えば、感光体を用いないトナージェット方式、イオンフロー方式、マルチスタイラス電極方式、等)の画像形成装置に対しても、好適に適用され得る。
【0094】
感光体ドラム3と現像ローラ62とは、接触していてもよい。また、円柱状の現像ローラ62に代えて、円筒状の現像スリーブが用いられ得る。
【0095】
(2)垂直搬送基板63bは、実質的に上下方向に沿って立設していればよく、多少傾いていてもよい。同様に、回収基板63cの下端部も、多少傾いていてもよい。また、垂直搬送基板63bの上端部(トナー担持位置TCP近傍)と下端部との間には、トナーTが搬送される面が下方を向く(トナー収容部61aを向く)ように屈曲された部分(背面搬送部分)が設けられていてもよい。
【0096】
(3)底部搬送基板63aの中央部は、平坦であってもよい。すなわち、底部搬送基板63aにおける曲面状の部分は、垂直搬送基板63bの下端部との接続部のみであってもよい。
【0097】
(4)回収基板63cのトナー搬送方向TTDにおける終端部は、底部搬送基板63aと接続されていてもよい。
【0098】
(5)搬送基板63の構成は、上述の実施形態のものに限定されない。例えば、搬送電極オーバーコーティング層634は省略され得る。あるいは、搬送電極631が搬送電極支持フィルム632内に埋め込まれることで、搬送電極コーティング層633及び搬送電極オーバーコーティング層634の双方が省略され得る。
【0099】
(6)図4A等を参照すると、各電源回路VA〜VDが発生する電圧の波形は、矩形波状以外にも、正弦波状や三角波状等の任意のものが用いられ得る。
【0100】
また、上述の実施形態においては、4つの電源回路VA〜VDが設けられるとともに、各電源回路VA〜VDが発生する電圧の位相が90°ずつ異なっていた。もっとも、本発明はこれに限定されず、例えば、3つの電源回路が備えられるとともに、各電源回路が発生する電圧の位相が120°ずつ異なるようになっていてもよい。
【0101】
(7)本発明は、図2等に示されているような、起動処理動作部63b1と常時搬送動作部63b2とが別々の電源回路が接続される構成に限定されない。すなわち、例えば、起動処理動作部63b1における搬送電極631に対する給電用配線部のパターンや構成を適宜設定することで、起動処理動作部63b1と常時搬送動作部63b2とは同一の電源回路に接続され得る。
【0102】
(8)起動処理動作部63b1における搬送電極631に印加される起動処理電圧は、逆搬送バイアス電圧に限定されない。具体的には、例えば、起動処理電圧は、直流電圧成分のみからなるものであってもよい。
【0103】
図5は、図4Bに示されている起動処理電圧の一変形例による作用・効果を説明するための模式図(シミュレーション結果を示す図)である(なお、シミュレーションを行った電子計算機の設定の都合により、図5に示されている状態は、図2に示されているトナー担持位置TCP近傍の構成を左右反転したものとなっているが、シミュレーション結果はこれに何ら左右されるものではないことは自明である。)。
【0104】
図中、矢印はトナーが受ける力の大きさ及び方向を示し、曲線は等電位線を示す。また、起動処理動作部63b1に対する印加電圧である起動処理電圧は+800V、現像ローラ62に対する印加電圧である現像バイアス電圧は+800V、常時搬送動作部63b2に対する印加電圧である搬送バイアス電圧の直流バイアス成分は+500V(交流電圧成分は振幅300V)とする。
【0105】
すなわち、本変形例(トナー帯電極性は正極性)においては、起動処理動作部63b1における搬送電極631(図3参照)の電位をV1、常時搬送動作部63b2における搬送電極631(図3参照)の電位をV2、現像ローラ62の電位をV3、とした場合に、
V2<V1=V3
となっている。
【0106】
また、図6及び図7は、図5と同様に、起動処理電圧が直流電圧成分のみからなる場合であって、起動処理動作部63b1の下端位置を変更したときの模式図(シミュレーション結果を示す図)である。
【0107】
図7に示されているように、起動処理動作部63b1の下端位置がトナー担持位置TCPに近すぎると(すなわち起動処理動作部63b1が実質的にトナー担持位置TCPよりも下方とはいえないような位置にあると)、トナー担持位置TCPの近傍にて、トナーがトナー担持面62aに向かうような電界が作用する。また、上述の境界部分にて、現像ローラ62からトナーが垂直搬送基板63bに向かう方向の強い電界の作用で、トナーが垂直搬送基板63bに押しつけられる。すなわち、トナーが、起動処理動作部63b1によって一旦トナー搬送経路TTP(図2参照)から離脱しても、このトナーは、垂直搬送基板63bに向かう方向の強い電界によって捕捉されることで、垂直搬送基板63bに押しつけられる。よって、図7に示されている構成においては、上述の残留トナーを良好に下方のトナー収容部61a(図2参照)に落下させることができない。
【0108】
これに対し、図5及び図6に示されているように、起動処理動作部63b1の下端位置がトナー担持位置TCPから遠ざかると(すなわち、起動処理動作部63b1が、実質的にトナー担持位置TCPよりも下方といえるような位置にあると)、上述のような不具合が発生せず、上述の残留トナーをトナー担持面62a上に担持させることなく良好に下方に落下させることが可能となる。
【0109】
ここで、図5は、起動処理動作部63b1の下端位置が現像ローラ62の下端位置と一致する構成を示している。また、図6は、起動処理動作部63b1の下端位置が現像ローラ62の下端位置よりも下方にシフトさせた構成を示している。
【0110】
図5に示されている構成によれば、トナーが現像ローラ62から垂直搬送基板63bに向かう方向の電界が弱まり、トナーが起動処理動作部63b1から下方に向かう電界が良好に形成される。これにより、常時搬送動作部63b2によって上方に搬送されたトナーは、起動処理動作部63b1の下端と常時搬送動作部63b2の上端との境界部分に達したとき、より上方への搬送が妨げられることで当該境界部分に次第に溜まっていき、搬送基板62bによって保持しきれなくなると下方に良好に落下する。
【0111】
起動処理の際における搬送基板63bのクリーニング面積を向上させるためには、トナーを下方に良好に落下させる効果が奏され得る範囲内で、起動処理動作部63b1の下端をできるだけトナー担持位置TCPに近づけることが望ましいが(例えば図5に示されている構成)、図6に示されている構成も、起動処理動作部63b1から下方に向かう電界が良好に形成されるため、採用可能である。すなわち、起動処理動作部63b1の下端位置は、トナー担持面62aの下端の近傍(上述の作用・効果が得られる範囲でトナー担持面62aの下端よりも若干上方であることはあり得る)、あるいはこれより下方であればよい。
【0112】
なお、上述のようにV1=V3である必要はなく、
V2<V1≦V3
であれば、同様の効果が得られる。
【0113】
また、このようなバイアス関係は、上述の実施形態(起動処理の際、起動処理動作部63b1における搬送電極631に、起動処理電圧としての逆搬送バイアス電圧が印加される構成)と合わせて採用することもできる。
【0114】
さらに、トナー帯電極性が負極性の場合、上述の関係は、
V3≦V1<V2
となる。
【0115】
(9)起動処理動作部63b1は、トナー担持位置TCPよりも上方まで設けられていてもよいし、トナー担持位置TCPよりも下方にのみ設けられていてもよい。図8は、図2に示されているトナー供給装置6の一変形例の概略構成を示す側断面図である。図8に示されているように、起動処理動作部63b1は、トナー担持面62aの下端の近傍にのみ設けられていてもよい。この場合、起動処理動作部63b1は、搬送電極631(図3参照)1〜数個分に相当する範囲であってもよい。
【0116】
(10)現像ローラ62への印加電圧である現像バイアス電圧は、直流成分(接地を含む)のみであってもよい。その他、各種バイアス電圧については、適宜変更され得る。
【0117】
(11)その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。
【0118】
また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。さらに、本明細書にて引用した各公報の内容(明細書及び図面を含む)は、本明細書の一部を構成するものとして援用され得る。
【符号の説明】
【0119】
1…レーザープリンタ 3…感光体ドラム
6…トナー供給装置 61…トナーボックス
61a…トナー収容部 61b…開口部
62…現像ローラ 62a…トナー担持面
63…搬送基板 63a…底部搬送基板
63b…垂直搬送基板 63b1…起動処理動作部
63b2…常時搬送動作部 63c…回収基板
64a…常時搬送動作部電源回路 64b…起動処理動作部電源回路
65…回収電源回路 66…現像バイアス電源回路
631…搬送電極 DP…現像位置
LS…静電潜像担持面 P…用紙
T…トナー TCP…トナー担持位置
TTD…トナー搬送方向 TTP…トナー搬送経路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0120】
【特許文献1】特開特開2010−145911号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定極性に帯電した粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成された、現像剤供給装置において、
主走査方向と平行な円柱面状の周面である現像剤担持面を有し、現像剤供給位置にて前記供給対象と最近接しつつ対向するように配置され、回転駆動されることによる前記現像剤担持面の前記主走査方向と直交する方向への移動により、当該現像剤担持面上に担持された前記現像剤を前記現像剤供給位置に供給するように構成された、現像剤担持部材と、
前記現像剤を収容するための空間である現像剤収容部を内部に備えるとともに前記供給対象に対向する位置に開口部が設けられた箱状部材であって、前記現像剤担持面を前記開口部にて前記供給対象に対向させつつ前記現像剤担持部材を回転可能に支持するように構成された、ケーシングと、
前記主走査方向と交差するように上下方向に沿って設けられた現像剤搬送経路に沿って配列された複数の搬送電極を備え、これらの搬送電極への多相交流電圧成分を含む搬送バイアス電圧の印加によって発生する進行波状の搬送電界により、前記現像剤を、前記現像剤収容部から前記現像剤担持面と最近接しつつ対向する担持位置に向かって前記現像剤搬送経路に沿って上方に搬送するとともに当該担持位置近傍にて前記現像剤担持面上に担持させるように、前記ケーシングの内部に収容された、搬送基板と、
を備え、
前記搬送基板は、
前記現像剤担持部材の近傍であって前記担持位置よりも下方に設けられていて、前記現像剤の搬送動作の初期に行われる起動処理の際には前記現像剤を前記現像剤搬送経路から離脱させて前記現像剤収容部に向かって落下させるための起動処理電圧が印加される一方で前記起動処理の後には前記搬送バイアス電圧が印加されるように構成された、起動処理動作部と、
少なくとも、前記現像剤収容部に面する位置から前記起動処理動作部の下方にて当該起動処理動作部と隣接する位置まで設けられていて、前記搬送動作中に前記搬送バイアス電圧が常時印加されるように構成された、常時搬送動作部と、
を備えたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の、現像剤供給装置であって、
前記起動処理の際における、前記起動処理動作部における前記搬送電極の電位をV1、前記搬送基板の前記起動処理動作部を除く部分における前記搬送電極の電位をV2、前記現像剤担持部材の電位をV3、とした場合に、
前記所定極性が正極性のときは
V2<V1≦V3
前記所定極性が負極性のときは
V3≦V1<V2
であることを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載の、現像剤供給装置であって、
前記起動処理動作部は、前記起動処理の際に、前記搬送電界とは逆方向の進行波状の電界を形成するための逆搬送バイアス電圧が印加されることを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の、現像剤供給装置であって、
前記起動処理動作部の下端は、前記現像剤担持部材の下端と等しい位置に設けられたことを特徴とする、現像剤供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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