説明

現像剤収容箱及び画像形成装置

【課題】 箱本体32と閉塞部材33との合わせ面での密閉性を特段に高めることなく、合わせ面から現像剤が外部に漏れ出てしまうことを防止する
【解決手段】 現像剤収容箱30を、収容空間31を構成する箱本体32、及び箱本体32の開口部を閉塞する閉塞部材33等から構成し、アジテータ25を、収容空間31のうち箱本体32の底壁部32Aと閉塞部材33との間に配設し、アジテータ25を、帯状に形成された複数の搬送部25B、及び複数の搬送部25Bを保持する複数のフレーム25Cを備えた格子状とするとともに、箱本体32の底壁部32Aと閉塞部材33との間の寸法Aに対する、搬送部25Bの高さ寸法Cの比(=C/A)を、0.1以下とする。これにより、合わせ面Dでの密閉性を特段に高めることなく、合わせ面Dから現像剤が外部に漏れ出てしまうことを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング部材によって回収された現像剤(廃トナー)が収容される現像剤収容箱等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発明では、クリーニング装置にて回収された廃トナーをトナー回収装置等の現像剤収容箱にて貯留するとともに、現像剤収容箱内に設けたアジテータをクランクシャフトにて水平方向に往復運動させることにより、回収口から現像剤収容箱内に落下した廃トナーを水平方向に搬送(移動)させている。
【0003】
そして、現像剤収容箱内に溜まった廃トナーの量が所定値を超えたときに、画像形成装置の使用を停止させるべく、現像剤収容箱内に溜まった廃トナーの量を検知する検知部を設けている。
【特許文献1】特開2004−77607公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発明者等は、箱本体及びその上部を閉塞する閉塞部材等からなる現像剤収容箱を試作検討したところ、現像剤収容箱内に溜まった現像剤の量が所定値を超えて検知部にて検知される前に、箱本体と閉塞部材との合わせ面から現像剤が外部に漏れ出てしまった。
【0005】
これに対して、箱本体と閉塞部材との合わせ面における密閉性を高めれば解決することができるものの、この手段では、現像剤収容箱の製造原価上昇を招いてしまう。
本発明は、上記点に鑑み、合わせ面での密閉性を特段に高めることなく、合わせ面から現像剤が外部に漏れ出てしまうことを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、現像剤像を記録シートに転写することにより、記録シートに画像を形成する電子写真方式の画像形成装置に用いられ、クリーニング部材によって回収された現像剤が収容される現像剤収容箱であって、現像剤を収容する収容空間を構成する箱本体と、箱本体の上部を閉塞する閉塞部材と、収容空間内に落下した現像剤を、その落下ポイントからずれた位置に移動させるアジテータと、アジテータを現像剤の移動方向に往復運動させながら、その移動方向と直交する方向に揺動させるクランクシャフトと、収容空間に溜まった現像剤の量が所定量を超えたか否かを検知する検知手段とを具備し、箱本体は、閉塞部材と対向する位置にて拡がる底壁部、及び底壁部から閉塞部材側に突出する側壁部を備えて構成され、アジテータは、現像剤の移動方向と略直交する面を有し、かつ、移動方向及びアジテータの揺動方向と略直交する方向に延びて帯状に形成された複数の搬送部、及び移動方向に延びて複数の搬送部を保持する複数のフレームを備えて格子状に構成されており、アジテータは、収容空間のうち底壁部と閉塞部材との間に配設され、かつ、アジテータのうち移動方向前進側の端部と側壁部との間には、空隙部が設けられており、さらに、底壁部と閉塞部材との間の寸法に対する、搬送部の高さ寸法の比は、0.1以下であることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、底壁部と閉塞部材との間の寸法に対する、底壁部から搬送部の上端までの寸法の比は、0.35以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
特許請求の範囲に記載された発明(以下、本願発明という。)では、搬送部の高さ寸法を大きくすると、現像剤の搬送能力(移動能力)を大きくすることができるが、搬送能力が高まると、箱本体と閉塞部材との合わせ面から現像剤が外部に漏れ出る可能性が高まる。
【0009】
これに対して、本願発明のごとく、底壁部と閉塞部材との間の寸法に対する、搬送部の高さ寸法の比は、0.1以下とすれば、合わせ面での密閉性を特段に高めることなく、合わせ面から現像剤が外部に漏れ出てしまうことを防止することが可能となる。
【0010】
また、底壁部と閉塞部材との間の寸法に対する、底壁部から搬送部の上端までの寸法の比は、0.35以下とすれば、更に効果的に合わせ面から現像剤が外部に漏れ出ることを防止できる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明では、現像剤像を記録シートに転写することにより、記録シートに画像を形成する画像形成手段と、請求項1又は2に記載の現像剤収容箱とを備えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本実施形態はダイレクトタンデム方式のカラーレーザプリンタ(以下、画像形成装置という。)用のベルトクリーナに本発明に係る現像剤収容箱を適用したものであり、以下に本実施形態を図面と共に説明する。
【0013】
1.図面の説明
図1は本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す中央断面図であり、図2はベルトクリーナ20の上面側斜視図であり、図3はベルトクリーナ20の下面側斜視図であり、図4はベルトクリーナ20を前面側から見た図であり、図5はベルトクリーナ20の構造を示す断面斜視図である。
【0014】
また、図6〜図9は図4のA−A断面図であり、図10は箱本体32及びアジテータ25等の斜視図であり、図11はオーガ27等の斜視図であり、図12は図11のA部拡大図であり、図13は図11のB矢視図であり、図14は図13のA−A断面図である。
【0015】
また、図15は図13のB部拡大図であり、図16は遮蔽部材40を駆動するための機構を示す図であり、図17は、底壁部32Aと閉塞部材33との間の寸法A、底壁部32Aから搬送部25Bの上端までの寸法B、及び搬送部25Bの高さ寸法Cをパラメータとして、合わせ面Dから現像剤が外部に漏れ出るか否かを試験した際の試験結果を示す図表である。
【0016】
2.画像形成装置の構成
2.1.画像形成装置の概略構造
画像形成装置1の筐体3内には、図1に示すように、記録用紙やOHPシート等の記録シート(以下、用紙という。)に現像剤像を転写することにより、用紙に画像を形成する電子写真方式の画像形成部5が収納されており、この画像形成部5は、周知のごとく、プロセスカートリッジ7、露光器9及び定着器11等から構成されている。
【0017】
なお、本実施形態に係る画像形成装置1は、ダイレクトタンデム方式のカラーレーザプリンタであるため、用紙の搬送方向に沿って直列に複数個(本実施形態では、4個)のプロセスカートリッジ7が配設されている。
【0018】
具体的には、用紙の搬送方向上流側から順に、ブラック用のプロセスカートリッジ7K、イエロー用のプロセスカートリッジ7Y、マゼンタ用のプロセスカートリッジ7M、シアン用のプロセスカートリッジ7Cである。
【0019】
また、各プロセスカートリッジ7K〜7Cは、収納されている現像剤の色が異なるのみで、その構造等はほぼ同じであり、具体的には、各プロセスカートリッジ7K〜7Cは、現像剤像が担持される感光ドラム7A、及び感光ドラム7Aを帯電させる帯電器7B等から構成されている。なお、図1においては、紙面の都合上、シアン用のプロセスカートリッジ7Cのみに感光ドラム7A及び帯電器7Bの符号を付した。
【0020】
以上に説明した構成において、帯電した感光ドラム7Aを露光器9にて露光して感光ドラム7Aの外周面に静電潜像を形成した後、電荷を帯びた現像剤を感光ドラム7Aに供給すると、感光ドラム7Aの外周面に現像剤像が担持(形成)される。
【0021】
また、用紙を搬送する転写ベルト13を挟んで感光ドラム7Aと対向する位置には、感光ドラム7Aに担持された現像剤を用紙に転写させる転写ローラ15が設けられており、この転写ローラ15には、感光ドラム7Aに担持された現像剤像を用紙に転写させるための電圧が印加されている。
【0022】
このため、感光ドラム7Aに担持されていた現像剤像は、転写ベルト13により搬送される用紙に転写される。そして、現像剤像が転写された用紙は、定着器11に搬送されて加熱され、用紙に転写された現像剤像が用紙に溶着(定着)する。
【0023】
2.2.ベルトクリーナの構成
ベルトクリーナ20は、転写ベルト13を挟んでプロセスカートリッジ7と反対側に配設され、被クリーニング体である転写ベルト13の表面に付着した現像剤や紙粉等の付着物を除去する装置である。
【0024】
すなわち、本実施形態では、ダイレクトタンデム方式を採用した画像形成装置1において、用紙の搬送を行わない適当なタイミングで現像剤(トナー)濃度調整用のパッチ又は色ずれ検知用のレジマークを転写ベルト13上に印刷(転写)し、その後にパッチ又はレジマークを廃現像剤(廃トナー)としてベルトクリーナ20にて除去(回収)するようにしたものである。
【0025】
なお、ベルトクリーナ20は、図2及び図3に示すように、扁平状に形成された箱状のものであって、画像形成装置(装置本体)1に対して前後方向に変位可能として装置本体に着脱可能に組み付けられているとともに、その変位方向一端側(本実施形態では、前端側)には、図2及び図4に示すように、ベルトクリーナ20を把持するための把持部20Aが設けられている。
そして、このベルトクリーナ20は、図6に示すように、クリーニングローラ21、クリーニングシャフト22、剥離ブレード23、飛散防止ブレード24、アジテータ25、バックアップローラ26(図1参照)、オーガ27、及び現像剤収容箱30等から構成されている。
【0026】
クリーニングローラ21は、転写ベルト13と対向配置されて転写ベルト13の表面に付着した付着物(主に、現像剤)を転写ベルト13から回収するクリーニング部材であり、クリーニングシャフト22はクリーニングローラ21の表面に付着した現像剤を回収して収容空間31に搬送するクリーニング部材である。
【0027】
バックアップローラ26は、図1に示すように、転写ベルト13を挟んでクリーニングローラ21と反対側に配設され、転写ベルト13をクリーニングローラ21に押し付けるためのバックアップ部材である。
【0028】
また、クリーニングローラ21及びクリーニングシャフト22には、現像剤が帯びている電荷と反対の極性を有する電位(本実施形態では、負電位)が印加されている。すなわち、クリーニングローラ21と現像剤との間に発生する静電吸引力により転写ベルト13の表面に付着した現像剤がクリーニングローラ21に静電吸着されて転写ベルト13がクリーニングされる。
【0029】
なお、クリーニングローラ21は、転写ベルト13の走行方向と逆方向に回転駆動されるため、転写ベルト13に付着している現像剤は、機械的(物理的)に掻き取られつつ、静電的に回収される。
【0030】
このとき、クリーニングシャフト22へ印加される電位の絶対値がクリーニングローラ21より大きくなるように制御されているので、クリーニングローラ21に静電吸着されている現像剤は、静電吸引力によりクリーニングシャフト22に転写されるようにしてクリーニングローラ21から回収される。
【0031】
そして、クリーニングシャフト22の表面に回収された現像剤は、図6に示すように、薄板状の剥離ブレード23によって掻き落とされ、この掻き落とされた現像剤は、飛散防止ブレード24によりクリーニングローラ21側に飛散してしまうことを防止されるとともに、アジテータ25により現像剤収容箱30に構成された収容空間31に移送される。
【0032】
なお、現像剤収容箱30は、図5に示すように、収容空間31を構成する箱本体32、並びに箱本体32の上部側開口部を閉塞する閉塞部材33及びブレードフレーム35等からなるもので、閉塞部材33及びブレードフレーム35は、ネジ等の機械的な締結(結合)手段により箱本体32に固定されている。
【0033】
3.2.1.アジテータ
アジテータ25は、図6に示すように、収容空間31のうち箱本体32の底壁部32Aと閉塞部材33との間に配設されており、このアジテータ25の移動方向前進側端部(図6の左端)と箱本体32の側壁との間には隙間31Aが設けられている。
【0034】
また、アジテータ25は、現像剤の移送方向(本実施形態では、用紙の搬送方向と平行な方向)に往復運動しながら、その移送方向と直交する方向(本実施形態では、上下方向)に揺動することにより、剥離ブレード23によって掻き落とされた現像剤を移送方向に移動させるものであり、このアジテータ25はクランクシャフト25Aによって稼働させられる。
【0035】
なお、クランクシャフト25Aは、図10に示すように、その長手方向端部に設けられた歯車25Dを介して歯車機構20B(図2参照)から駆動力を得て回転することにより、アジテータ25を往復運動させながら揺動させる(図6〜図9参照)。
【0036】
因みに、歯車機構20Bは、図6に示すように、クリーニングローラ21等を回転駆動させる機構であって、装置本体から駆動力を得てクリーニングローラ21等の回収機構を回転駆動する。
【0037】
また、アジテータ25は、現像剤の移動方向と略直交する面を有し、かつ、移動方向及びアジテータ25の揺動方向と略直交する方向(本実施形態では、紙面と直交する方向)に延びて帯状に形成された複数の搬送部25B、及び移動方向に延びて複数の搬送部25Bを保持する複数のフレーム25Cを備えた格子状に構成されている。
【0038】
そして、アジテータ25のうち往復運動方向一端側であって、クランクシャフト25A側と反対側の端部には、アジテータ25を往復運動可能としながら回転可能に保持するために左右一対の摺動ピン25Eがアジテータ25側の保持部として設けられており、これらの摺動ピン25Eは、図5に示すように、箱本体32に設けられた第1保持部32Aと閉塞部材33に設けられた第1保持部33Aとの間に挟持されている。このため、摺動ピン25Eは、第1保持部32Aと第1保持部33Aとの間に形成されたガイド溝(水平溝)に沿って水平方向に摺動可能に支持されることとなる。因みに、図5では右側の摺動ピン25Eのみ図示されている。
【0039】
つまり、第1保持部32A、33A(摺動ピン25E側)は、図6に示すように、クランクシャフト25Aを挟んで落下ポイントPを含む仮想平面S1(図6の太い二点鎖線)と反対側に位置しているとともに、アジテータ25は、第1保持部32A、33A(摺動ピン25E)側からクランクシャフト25Aを超えて落下ポイントPを含む仮想平面S1側まで延びている。
【0040】
ここで、「落下ポイントP」とは、剥離ブレード23の先端を通り、かつ、底壁部32Aに直交するラインの集合をいい、「落下ポイントPを含む仮想平面S1」とは、前記ラインの集合により構成される仮想の平面をいう。なお、以下、「落下ポイントPを含む仮想平面S1」を落下ポイントPと略す。
【0041】
そして、アジテータ25のうちクランクシャフト25Aより落下ポイントP側の部分であって、その少なくとも一部(本実施形態では、アジテータ25のうちクランクシャフト25Aより落下ポイントP側の端部25F)は、図6〜図9に示すように、落下ポイントPを挟んでクランクシャフト25Aと反対側とクランクシャフト25A側との間を行き来するように往復運動する。
【0042】
なお、クランクシャフト25Aの長手方向両端側も、図5に示すように、箱本体32に設けられた第2保持部32Bと剥離ブレード23等を保持するためのブレードフレーム35に設けられた第2保持部35Aとにより回転可能に挟持されており、オーガ27もクランクシャフト25Aと同様に、箱本体32に設けられた第3保持部32Cとブレードフレーム35に設けられた第3保持部35Bとにより回転可能に挟持されている。
【0043】
2.2.2.廃現像剤検出部
収容空間31のうち落下ポイントP側であって、その幅方向(本実施形態では、左右方向)一端側には、図11に示すように、幅方向に延びて収容空間31の一部を区画する壁部36が設けられており、この壁部36を挟んで落下ポイントPと反対側には、廃現像剤検出部37が設けられている。
【0044】
そして、廃現像剤検出部37には、壁部36によって区画されていない収容空間31、つまり壁部36が設けられていない側(図11の左側)の収容空間31からオーガ27によって廃現像剤検出部37に流入した廃トナーが溜まる空間38(以下、この空間を検知用空間38という。)が設けられており、この検知用空間38は、図13に示すように、箱本体32に設けられた凹部32Dから下方側に突出するように形成されている。
【0045】
そして、検知用空間38に対応する装置本体の部位には、検知用空間38にビーム状の光を入射させるとともに、その入射された光を受光する光センサ39(図11参照)が組み付け固定されている。
【0046】
すなわち、ベルトクリーナ20が装置本体に組み付けられた状態においては、図15に示すように、検知用空間38を挟んで一方側に光センサ39の発光部39Aが位置し、他方側に光センサ39の受光部39Bが位置する。
【0047】
そして、受光部39Bが光を受光した際に発する信号は、コンパレータ(図示せず)に入力されており、このコンパレータは、受光部39Bが光を受光した際に発する信号レベルが基準レベルを超えたときにはLo信号を出力し、信号レベルが基準レベル未満のときにはHi信号を出力する。
【0048】
因みに、検知用空間38を構成する部材のうち、発光部39Aから発光される光の光路Lに対応する部位には、光が通過可能な窓部を設ける必要があるが、本実施形態では、検知用空間38を構成する部材全体をアクリル等の透明な部材にて構成することにより光が通過可能としている。
【0049】
また、検知用空間38には、光路Lを遮る位置と光路Lを開放する位置との間で変位する遮蔽部材40が設けられており、この遮蔽部材40は、図14に示すように、遮蔽部材40の上端側に設定された揺動シャフト40Aにより水平方向(本実施形態では、前後方向)に周期的に揺動させられる。
【0050】
なお、廃現像剤検出部37の近傍に設けられた壁部36は、収容空間31に貯留された廃現像剤が直接的に廃現像剤検出部37に流入することを防止する直接流入防止手段である。このため、収容空間31に貯留された廃現像剤を検知用空間38に搬送するオーガ27が設けられており、このオーガ27により幅方向一端側以外の部位、つまり壁部36が設けられていない部位から廃現像剤検出部37に流入した廃現像剤が幅方向一端側に設けられた検知用空間38に搬送される。
【0051】
因みに、オーガ27は、図12に示すように、螺旋状の羽根27Aが回転軸27B周りに設けられたスクリューにて構成されたスクリュー型の粉体搬送用ポンプである。そして、オーガ27は、収容空間31に貯留されている廃現像剤が羽根27Aに接触する高さとなるまでは、廃現像剤を廃現像剤検出部37に搬送させることはなく、羽根27Aに廃現像剤が接触する高さ以上に盛り上がった廃現像剤を順次、廃現像剤検出部37に向かって搬送する。
【0052】
また、検知用空間38には、図14に示すように、オーガ27により搬送されてきた廃トナーを光路L側、つまり検知用空間38のうち発光部39Aと受光部39Bとにより挟まれた部位に導く傾斜案内面38Aが設けられており、この傾斜案内面38Aは、検知用空間38の下端側のうちオーガ27の排出口27Cに対向する部位にて、鉛直方向に対して傾斜している。
【0053】
また、遮蔽部材40の揺動シャフト40Aは、その揺動中心40Bが、図16に示すように、オーガ27(回転軸27B)の回転中心27Dから水平方向にずれた位置に設定されているとともに、回転軸27Bの回転運動を揺動運動に変換するリンク機構41を介して回転軸27B(オーガ27)に連結されている。このため、オーガ27(回転軸27B)が回転すると、この回転速度に比例した周期にて遮蔽部材40が水平方向に揺動変位する。
【0054】
因みに、リンク機構41は、回転軸27Bの回転中心27Dから偏心した位置に設けられたクランクピン41A、及び一端側が揺動シャフト40Aに固定され、他端側にクランクピン41Aの外周面と摺動可能に接触するU字状のカム溝41Cが設けられたリンクレバー41B等から構成された機構である。
【0055】
3.アジテータ等の作動(図6〜図9参照)
クランクシャフト25Aが回転してアジテータ25が稼働すると、アジテータ25が現像剤の移送方向に往復運動するので、アジテータ25が隙間31A側に移動するときに、収容空間31に落下してきた現像剤は、搬送部25Bにて隙間31A側に押圧され、順次、その落下ポイントから隙間31A側に移送される。
【0056】
すなわち、落下ポイントPにて山状に積み上がった現像剤は、アジテータ25の搬送部25Bによって山の頂部の部分が掻き取られながら、他の搬送部25Bによって順次、隙間31A側へ移送される。したがって、積み上がった現像剤の山がアジテータ25を超えるまでは現像剤の山が隙間31A側に拡大していく(図18参照)。
【0057】
そして、収容空間31のうち隙間31A側から順次、現像剤の山が盛り上がっていくと、アジテータ25の運動に伴って、移送される現像剤は、格子状に形成されたアジテータ25を乗り越えて収容空間31の上部まで溜まりながら、盛り上がった現像剤の山のすそ部分が次第に落下ポイントP側に近づいていく(図19参照)。
【0058】
そして、収容空間31に貯留している現像剤が落下ポイントPを超えてオーガ27まで到達し、さらにオーガ27の羽根27Aに接触する高さ以上になると、オーガ27により現像剤が廃現像剤検出部37に移送され、収容空間31に貯留された現像剤の量が所定量を超えたことが光センサ39によって検出される。なお、収容空間31に貯留された現像剤の量が所定量を超えたことが検出されると、その旨及び現像剤収容箱30を交換すべき旨が利用者に対して報知される。
【0059】
以上の説明から明らかなように、アジテータ25は上側で動いているときと、下側で動いているときとで、廃現像剤を反対方向に移送している。したがって、収容空間31に貯留された現像剤が漏れてしまう程度まで溜まらないうちに廃現像剤検出部37まで確実に送ることができる。
【0060】
しかも、アジテータ25のクランクシャフト25Aに近い側は、下側で動いているときは現像剤を隙間31A側に送り、上側で動いているときは隙間31A側からクランクシャフト25A側に送るが、隙間31A(摺動ピン25E)側は、上下には殆ど動かない。したがって、隙間31A側では、現像剤はいずれの方向にも殆ど移動しないので、現像剤の漏れが発生し難い。
【0061】
4.ベルトクリーナの装着判定、及び収容空間内の現像剤量の判定
遮蔽部材40は、揺動シャフト40Aにより周期的に揺動させられるので、ベルトクリーナ20が装置本体に装着され、かつ、検知用空間38に現像剤が溜まっていない場合には、光路Lが周期的に遮られる。
【0062】
したがって、ベルトクリーナ20が装置本体に装着され、かつ、検知用空間38に現像剤が溜まっていない場合には、Hi信号とLo信号とが周期的に交互にコンパレータから出力される。一方、ベルトクリーナ20が装置本体に装着され、かつ、検知用空間38に現像剤が溜まっている場合には、光路Lが現像剤により遮られたままとなるので、Hi信号が連続的にコンパレータから出力される。
【0063】
また、光センサ39は装置本体に装着されているので、ベルトクリーナ20が装置本体に装着されていない場合には、光路Lを遮るものが無い状態となり、Lo信号が連続的にコンパレータから出力される。
【0064】
そこで、本実施形態では、光を周期的に検知したときには、ベルトクリーナ20が装置本体に装着され、かつ、収容空間31に更に現像剤を蓄積することが可能な状態であると判定し、光を周期的に検知できないときには、収容空間31に更に現像剤を蓄積することが不可能な状態であると判定し、光を連続的に検知したときには、ベルトクリーナ20が装置本体に組み付けられていない状態であると判定している。
【0065】
5.本実施形態に係る現像剤収容箱の特徴
本実施形態では、図6に示すように、クランクシャフト25Aは、落下ポイントPに対して第1保持部32A、33A(摺動ピン25E)側にずれた部位に位置することとなるので、剥離ブレード23にて掻き取られて落下する現像剤が、クランクシャフト25A上に積もってしまうことを防止できる。したがって、箱本体32内に落下した現像剤を効率良く移動させることができるので、現像剤の回収効率が悪化してしまうことを防止できる。
【0066】
ところで、本実施形態では、アジテータ25が第1保持部32A、33A側に変位する際に、現像剤を第1保持部32A、33A側に押すことにより現像剤を第1保持部32A、33A側に移動させる(搬送する)ので、少なくとも、移動方向始点側である落下ポイントP側にて現像剤を第1保持部32A、33A側に押す必要がある。
【0067】
一方、アジテータ25が1往復する際に移動(搬送)させることが可能な現像剤の量(搬送量)は、揺動変位によるアジテータ25の移動量、つまり移動方向と直交する方向の移動量(揺動量)が大きくなるほど大きくなる。
【0068】
そして、本実施形態では、クランクシャフト25Aが落下ポイントP側に設けられているので、揺動量は落下ポイントP側にて最も大きくなる。
したがって、本実施形態では、移動方向始点側である落下ポイントP側での搬送量を大きくすることができるので、箱本体32内に落下した現像剤をより効率良く移動させることができ、現像剤の回収効率が向上させることを防止できる。
【0069】
以上のように、本実施形態では、クランクシャフト25A上に現像剤が積もってしまうことを防止しつつ、動方向始点側である落下ポイントP側での搬送量を大きくすることが可能であるので、箱本体32内に落下した現像剤をより効率良く移動させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、アジテータ25のうちクランクシャフト25Aより落下ポイントP側の端部25Fは、図6〜図9に示すように、落下ポイントPを挟んでクランクシャフト25Aと反対側とクランクシャフト25A側との間を行き来するように往復運動するので、落下した現像剤を確実に搬送することができる。
【0071】
また、本実施形態では、クランクシャフト25Aは、クリーニングローラ21等を回転駆動させる歯車機構20Bから動力を得て回転するので、クランクシャフト25Aを歯車機構20Bに近接配置することが可能となる。したがって、現像剤収容箱30を小型にすることが可能となる。
【0072】
ところで、アジテータ25に設けられた搬送部25Bの高さ寸法C(図6参照)を大きくすると、現像剤の搬送能力(移動能力)を大きくすることができるが、搬送能力が高まると、箱本体32と閉塞部材33との合わせ面(図6のD部)から現像剤が外部に漏れ出る可能性が高まる。
【0073】
これに対して、本実施形態では、底壁部32Aと閉塞部材33との間の寸法A(図6参照)に対する、搬送部25Bの高さ寸法C(図6参照)の比(=C/A)を、0.1以下とすることにより、合わせ面Dでの密閉性を特段に高めることなく、合わせ面Dから現像剤が外部に漏れ出てしまうことを防止している。
【0074】
そして更に、底壁部32Aと閉塞部材33との間の寸法Aに対する、底壁部32Aから搬送部25Bの上端までの寸法B(図6参照)の比(=B/A)を、0.35以下とすれば、更に効果的に合わせ面Dから現像剤が外部に漏れ出ることを防止できる。
【0075】
すなわち、図17は、底壁部32Aと閉塞部材33との間の寸法A、底壁部32Aから搬送部25Bの上端までの寸法B、及び搬送部25Bの高さ寸法Cをパラメータとして、合わせ面Dから現像剤が外部に漏れ出るか否かを試験した際の試験結果を示す図表である。
【0076】
なお、箱本体32と閉塞部材33との合わせ面Dは、図6に示すように、箱本体32と閉塞部材33との隙間(本実施形態では、約0.4mm)を蛇行させた迷路構造とすることにより、現像剤が漏れ出ることを防止している。また、寸法A、Bは、アジテータ25が底壁部32Aから最も離間したときにおける寸法である。因みに、本実施形態では、図6に示すように、最も離間した状態において、アジテータ25は、略水平となるように底壁部32Aに対して略平行となっている。
【0077】
そして、図17において、「廃トナーもれ」とは、合わせ面Dから現像剤が漏れ出したか否かを目視にて判断した結果であり、「○」は漏れが発生していないことを示し、「×」は漏れが発生したことを示している。
【0078】
また、「満タン検知時廃トナー量」とは、廃現像剤検出部37にて現像剤が検出された時に収容空間31に貯留されていた現像剤の量を示しており、「廃トナー量判定」とは、「廃トナーもれ」にて判定が「×」となった現像剤収容箱30のうち、最小値となる満タン検知時廃トナー量(以下、この値を最小検出量という。)を基準に良否を決定した結果である。
【0079】
すなわち、廃トナー量判定では、収容空間31に貯留されている現像剤の量が、最小検出量を基準とした所定量(本実施形態では、最小検出量の約90%)を超えたときに、合わせ面Dから現像剤が漏れ出る(「×」)とみなし、廃現像剤検出部37にて現像剤が検出された時に収容空間31に貯留されていた現像剤の量が、最小検出量を基準とした所定量以下のときには、合わせ面Dから現像剤が漏れ出ない(「○」)とみなして、現像剤収容箱30の良否を判定している。そして、本実施形態では、最小検出量を約500gとし、最小検出量を基準とした所定量を450gとして、現像剤収容箱30の良否を判定した。
【0080】
因みに、図17に示す結果では、廃トナーもれにて判定が「×」となったときの満タン検知時廃トナー量は、506.7g〜558.6gであり、そのバラツキ幅は、平均の満タン検知時廃トナー量に対して約±25gである。
【0081】
したがって、廃トナー量判定のための閾値を450gとした場合に、約±25gのバラツキが発生しても、その最大値である475gは、最小検出量である500g未満であるので、合わせ面Dから現像剤が漏れ出す可能性は、十分に小さいと思われる。
【0082】
以上により、C/Aを0.1以下とし、更に望ましくは、B/Aを0.35以下とすれば、効果的に合わせ面Dから現像剤が外部に漏れ出ることを防止できる。
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、合わせ面Dを迷路構造としたシール構造が採用されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばパッキンを介在させる等のシール構造としてもよい。
【0083】
また、収容空間31内の現像剤を搬送する圧送手段は、アジテータ25及びクランクシャフト25A等からなるものに限定されるものではない。
また、本発明の適用対象は、ダイレクトタンデム方式のカラーレーザプリンタに限定されるものではない。
【0084】
すなわち、本実施形態では、ダイレクトタンデム方式を採用した画像形成装置1において、用紙の搬送を行わない適当なタイミングで現像剤(トナー)濃度調整用のパッチ又は色ずれ検知用のレジマークを転写ベルト13上に印刷(転写)し、その後にパッチ又はレジマークを廃現像剤(廃トナー)としてベルトクリーナ20にて除去(回収)するようにしたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば現像剤像が転写される中間転写方式の転写ベルトを対象として、濃度パッチ又は色ずれ検知用のレジマークの他に、いわゆる転写残現像剤を回収するようにしたものであってもよい。さらに、感光体ベルト等の転写残現像剤を回収するベルトクリーナ等にも適用可能である。
【0085】
また、収容空間31に溜まった現像剤の量が所定量を超えたか否かを検知する検知手段(廃現像剤検出部37)の具体的な構成は、上述の実施形態に示されたものに限定されるものではない。
【0086】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す中央断面図である。
【図2】ベルトクリーナ20の上面側斜視図である。
【図3】ベルトクリーナ20の下面側斜視図である。
【図4】ベルトクリーナ20を前面側から見た図である。
【図5】ベルトクリーナ20の構造を示す断面斜視図である。
【図6】図4のA−A断面図である。
【図7】図4のA−A断面図である。
【図8】図4のA−A断面図である。
【図9】図4のA−A断面図である。
【図10】箱本体32及びアジテータ25等の斜視図である。
【図11】オーガ27等の斜視図である。
【図12】図11のA部拡大図である。
【図13】図11のB矢視図である。
【図14】図13のA−A断面図である。
【図15】図13のB部拡大図である。
【図16】遮蔽部材40を駆動するための機構を示す図である。
【図17】試験結果を示す図表である。
【図18】アジテータ25の作用を説明する図である。
【図19】アジテータ25の作用を説明する図である。
【符号の説明】
【0088】
1…画像形成装置、5…画像形成部、7…プロセスカートリッジ、
7A…感光ドラム、7C…プロセスカートリッジ、7K…プロセスカートリッジ、
7M…プロセスカートリッジ、7Y…プロセスカートリッジ、9…露光器、
11…定着器、13…転写ベルト、15…転写ローラ、20…ベルトクリーナ、
20A…把持部、20B…歯車機構、21…クリーニングローラ、
22…クリーニングシャフト、23…剥離ブレード、24…飛散防止ブレード、
25…アジテータ、25A…クランクシャフト、25B…搬送部、
25C…フレーム、25D…歯車、25E…摺動ピン、25F…端部、
26…バックアップローラ、27…オーガ、27A…羽根、27B…回転軸、
27C…排出口、27D…回転中心、30…現像剤収容箱、31…収容空間、
31A…隙間、32…箱本体、32A…第1保持部、32A…底壁部、
32B…第2保持部、32C…第3保持部、32D…凹部、33…閉塞部材、
33A…第1保持部、35…ブレードフレーム、35A…第2保持部、
35B…第3保持部、36…壁部、37…廃現像剤検出部、38…検知用空間、
38A…傾斜案内面、39…光センサ、39A…発光部、39B…受光部、
40…遮蔽部材、40A…揺動シャフト、40B…揺動中心、41…リンク機構、
41A…クランクピン、41C…カム溝、P…落下ポイント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤像を記録シートに転写することにより、記録シートに画像を形成する電子写真方式の画像形成装置に用いられ、クリーニング部材によって回収された現像剤が収容される現像剤収容箱であって、
現像剤を収容する収容空間を構成する箱本体と、
前記箱本体の上部を閉塞する閉塞部材と、
前記収容空間内に落下した現像剤を、その落下ポイントからずれた位置に移動させるアジテータと、
前記アジテータを現像剤の移動方向に往復運動させながら、その移動方向と直交する方向に揺動させるクランクシャフトと、
前記収容空間に溜まった現像剤の量が所定量を超えたか否かを検知する検知手段とを具備し、
前記箱本体は、前記閉塞部材と対向する位置にて拡がる底壁部、及び前記底壁部から前記閉塞部材側に突出する側壁部を備えて構成され、
前記アジテータは、現像剤の移動方向と略直交する面を有し、かつ、前記移動方向及び前記アジテータの揺動方向と略直交する方向に延びて帯状に形成された複数の搬送部、及び前記移動方向に延びて前記複数の搬送部を保持する複数のフレームを備えて格子状に構成されており、
前記アジテータは、前記収容空間のうち前記底壁部と前記閉塞部材との間に配設され、かつ、前記アジテータのうち前記移動方向前進側の端部と前記側壁部との間には、空隙部が設けられており、
さらに、前記底壁部と前記閉塞部材との間の寸法に対する、前記搬送部の高さ寸法の比は、0.1以下であることを特徴とする現像剤収容箱。
【請求項2】
前記底壁部と前記閉塞部材との間の寸法に対する、前記底壁部から前記搬送部の上端までの寸法の比は、0.35以下であることを特徴とする請求項1に記載の現像剤収容箱。
【請求項3】
現像剤像を記録シートに転写することにより、記録シートに画像を形成する画像形成手段と、
請求項1又は2に記載の現像剤収容箱と
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−26155(P2010−26155A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186076(P2008−186076)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】