説明

現像剤用キャリアと二成分現像剤、それらの製法、画像形成方法、及びプロセスカートリッジ

【課題】トナースペント性、被膜の耐摩耗性(削れ・剥がれ)に優れるキャリア、該キャリアを有する現像剤及び該現像剤を有する現像剤入り容器並びに該現像剤を用いる画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供すること。
【解決手段】磁性を有する芯材粒子とその表面を被覆する樹脂層とからなる静電潜像現像剤用キャリアであって、該樹脂層は、シロキサン結合を有するアクリレート系樹脂とシラノール基またはそれを生成可能な前駆体官能基を有するアクリレート系樹脂を有機アルミニウム触媒を用いて縮合架橋させたものであることを特徴とする静電潜像現像剤用キャリア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材粒子の表面に被覆層が形成されているキャリアとその製法、現像剤、現像剤入り容器、画像形成方法及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成では、光導電性物質等の静電潜像担持体上に静電潜像を形成し、この静電潜像に対して、帯電したトナーを付着させてトナー像を形成した後、トナー像を記録媒体に転写し、定着され、出力画像となる。近年、電子写真方式を用いた複写機やプリンタの技術は、モノクロからフルカラーへの展開が急速になりつつあり、フルカラーの市場は拡大する傾向にある。
【0003】
フルカラー画像形成では、一般に、イエロー、マゼンタ、シアンの3色のカラートナー又はこれに黒色を加えた4色のカラートナーを積層させて全ての色の再現を行う。したがって、色再現性に優れ、鮮明なフルカラー画像を得るためには、定着されたトナー像の表面を平滑にして光散乱を減少させる必要がある。このような理由から、従来のフルカラー複写機等の画像光沢は、10〜50%の中〜高光沢のものが多かった。
【0004】
一般に、乾式のトナー像を記録媒体に定着させる方法としては、平滑な表面を持ったローラやベルトを加熱し、トナーと圧着する接触加熱定着方法が多用されている。このような方法は、熱効率が高く、高速定着が可能であり、カラートナーに光沢や透明性を与えることが可能である反面、加熱定着部材の表面と溶融状態のトナーとを加圧下で接触させた後、剥離するために、トナー像の一部が定着ローラ表面に付着して別の画像上に転移する、いわゆるオフセット現象が生じる。
【0005】
このようなオフセット現象を防止することを目的として、離型性に優れたシリコーンゴムやフッ素樹脂で定着ローラの表面を形成し、さらにその定着ローラ表面にシリコーンオイル等のトナー固着防止用オイルを塗布する方法が一般に採用されている。しかしながら、このような方法は、トナーのオフセットを防止する点では極めて有効であるが、オイルを供給するための装置が必要であり、定着装置が大型化するという問題がある。
【0006】
このため、モノクロ画像形成では、溶融したトナーが内部破断しないように、溶融時の粘弾性が大きく、離型剤を含有するトナーを用いることにより、定着ローラにオイルを塗布しないオイルレスシステム、或いはオイルの塗布量を微量とするシステムが採用される傾向にある。
【0007】
一方、フルカラー画像形成においても、モノクロ画像形成と同様に、定着装置の小型化、構成の簡素化の目的で、オイルレスシステムが採用される傾向がある。しかしながら、フルカラー画像形成では、定着されたトナー像の表面を平滑にするために、溶融時のトナーの粘弾性を低下させる必要があるため、光沢のないモノクロ画像形成の場合よりもオフセットが発生しやすく、オイルレスシステムの採用が困難になる。また、離型剤を含有するトナーを用いると、トナーの付着性が高まり、記録媒体への転写性が低下する。さらに、トナーのフィルミングが発生して、帯電性が低下することにより、耐久性が低下するという問題がある。
【0008】
一方、キャリアとしては、トナーのフィルミングの防止、均一な表面の形成、表面の酸化の防止、感湿性の低下の防止、現像剤の寿命の延長、感光体の表面への付着の防止、感光体のキズあるいは摩耗からの保護、帯電極性の制御、帯電量の調節等の目的で、キャリア芯材表面に、表面エネルギーの低い樹脂、例えばフッ素樹脂、シリコーン樹脂などをコートすることによりキャリアの長寿命化がはかられてきた。
【0009】
低表面エネルギーの樹脂を被覆したキャリアの例としては、特許文献1の特開昭55−127569号公報開示の常温硬化型シリコーン樹脂と正帯電性窒素樹脂で被覆したキャリア、特許文献2の特開昭55−157751号公報開示の変性シリコーン樹脂を少なくとも1種含有した被覆材をコートしたキャリア、特許文献3の特開昭56−140358号公報開示の常温硬化型シリコーン樹脂およびスチレン・アクリル樹脂を含有した樹脂被覆層を有するキャリア、特許文献4の特開昭57−96355号公報開示の核粒子表面を2層以上のシリコーン樹脂でコートし、層間に接着性がないようにしたキャリア、特許文献5の特開昭57−96356号公報開示の核粒子表面にシリコーン樹脂を多層塗布したキャリア、特許文献6の特開昭58−207054号公報開示の炭化ケイ素を含有するシリコーン樹脂で表面を被覆したキャリア、特許文献7の特開昭61−110161号公報開示の20dyn/cm以下の臨界表面張力を示す材料で被覆した正帯電性キャリア、特許文献8の特開昭62−273576号公報開示のフッ素アルキルアクリレートを含有する被覆材でコートしたキャリアと、含クロムアゾ染料を含むトナーからなる現像剤のようなものがあげられる。
【0010】
また、縮合反応性のシラノール基又はその前駆体(例えばハロシリル基、アルコキシシリル基等の加水分解性基等)を有するシロキサン系材料を含む塗工液を、アルミニウム系触媒を用いてポリシロキサン材料に縮合させてなる被覆層をキャリア芯材粒子表面に設けることは従来公知であり、例えば、特許文献9の特開2003−345070号公報、特許文献10の特開2005−249923号公報には、アルミニウムアルコキシドを有機アルミニウム系触媒として使用し、シリコーン系樹脂を芯材粒子の周囲に被覆してなるものが開示されている。
さらに、特許文献11の特開平06−222621号公報には、オルガノポリシロキサンと、オルガノシランと、チタン(例えばテトライソプロポキシチタン)、錫(例えばジブチル錫ジアセテート)、亜鉛、コバルト、鉄、アルミニウム系化合物及びアミン類からなる群の中から選択される少なくとも1種である硬化触媒からなる被覆性組成物を主成分とするコーティング剤を、芯材粒子の表面に被覆してなるものが開示されているが、用いているオルガノポリシロキサンは、トリアルキルシロキサン基を有するアクリル系のラジカル重合性のものと、重縮合可能なヒドロキシ基に変化する複数のアルコキシ基含有のアクリル系のラジカル重合性のものとの共重合体ではない。また、特許文献12の特開2001−92189号公報には、各種有機金属触媒のうち最も優れている触媒として、有機チタン系触媒を含有するシリコーン系樹脂を芯材粒子の周囲に被覆することを推奨しており、チタン系触媒の例としてジイソプロポキシビス(アセチルアセトンネート)が、テトライソプロポキシチタン、イソプロポキシ(2−エチルヘキサンジオラト)チタン、ビス(アクリロイルオキシ)イソプロポキシイソステアロイルオキシチタン、ビス(2,4−ペンタンジオナト)(1,3−プロパンジオナト)チタン等と同効なものとして羅列されているが、しかしながら、トリアルキルシロキサン基を有するアクリル系のラジカル重合性のものと、重縮合可能なヒドロキシ基に変化する複数のアルコキシ基含有のアクリル系のラジカル重合性のものとの共重合体の場合には、有機アルミニウム系触媒が有機チタン系触媒に比しさほど遜色ない耐久性キャリアを形成することは、開示していない。
【0011】
そして、近年は高画質化のためにトナーが小粒径化する傾向にあり、また、プリント速度の高速化も相まって、キャリアへのトナースペントが一段と生じ易くなっている。更にトナーにワックスを含有させてメンテナンスを容易にした現像剤の場合には、トナースペント量が非常に多くなり、トナー帯電量の低下、トナー飛散および地肌汚れに対する余裕度が低下しているのが現状である。
【0012】
フルカラー電子写真システムでは、キャリアのトナースペントやコート被膜削れ・剥がれが起こると、キャリア抵抗や現像剤の汲み上げ量(現像サイトへの現像剤の供給量)が変化し、画像濃度、特にハイライト部の濃度が変化し、また、被膜の削れによるフィラーの離脱などによって、カラートナー(特にイエロートナー)が色汚れし、高画質が維持できないのが現状である。
また、被覆層を形成する際にブロッキングが発生したり、耐久性が低下したりするという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、トナースペント性、被膜の耐摩耗性(削れ・剥がれ)に優れるキャリア、該キャリアを有する現像剤及び該現像剤を有する現像剤入り容器並びに該現像剤を用いる画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は、次の(1)〜(16)の本発明により解決される。
(1)「磁性を有する芯材粒子とその表面を被覆する樹脂層とからなる静電潜像現像剤用キャリアであって、該樹脂層は、少なくとも下記一般式(1)で表される部分(A部分)と下記一般式(2)で表される部分(B部分)とを含む共重合体を加熱処理して得られた樹脂を含有するものであり、該樹脂は前記共重合体中のシラノール基またはそれを生成可能な前駆体官能基を有機アルミニウム触媒を用いて縮合架橋させたものであることを特徴とする静電潜像現像剤用キャリア。
【0015】
【化1】

【0016】
【化2】

ただし、前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを表し、mは、1〜8の整数を表し、(CHは、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基のいずれかを表し、X及びYは、モル比を表し、それぞれ10モル%〜90モル%である。
【0017】
(2)「前記共重合体は、下記一般式(3)で表される共重合体を含むことを特徴とする前記(1)項に記載の静電潜像現像剤用キャリア;
【0018】
【化3】

(式中において、R、m、R、R、X、Y、及びZは以下に該当するものを示す。)
:水素原子、またはメチル基
m:炭素原子数1〜8のアルキレン基
:炭素原子数1〜4のアルキル基
:炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
X:10〜40モル%
Y:10〜40モル%
Z:30〜80モル%
60モル%<Y+Z<90モル%。」
【0019】
(3)「前記被覆層を被覆して、しかる後に加熱処理して得られたことを特徴とする前記(1)項又は(2)項に記載の静電潜像現像剤用キャリア。」
(4)「前記加熱処理時の熱処理温度が100〜350℃であることを特徴とする前記(1)項乃至(3)項のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア。
(5)「前記被覆層は、導電性粒子をさらに含有することを特徴とする請求項前記(1)項乃至(4)項のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア。」
(6)「体積固有抵抗が1×10Ω・cm以上1×1017Ω・cm以下であることを特徴とする前記(1)項乃至(5)項のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア。」
(7)「前記被覆層は、平均膜厚が0.05μm以上4μm以下であることを特徴とする前記(1)項乃至(6)項のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア。」
(8)「前記芯材粒子は、重量平均粒径が20μm以上65μm以下であることを特徴とする前記(1)項乃至(7)項のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア。」
(9)「1kOeの磁場における磁化が40Am/kg以上90Am/kg以下であることを特徴とする前記(1)項乃至(8)項のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア。」
(10)「前記(1)項乃至(9)項のいずれか一項に記載のキャリア及びトナーを有することを特徴とする現像剤。」
(11)「前記トナーは、カラートナーであることを特徴とする前記(10)項に記載の現像剤。」
(12)「キャリア1質量部に対してトナーを2〜50重量部の配合割合で含有する補給用現像剤であって、該キャリアが前記(1)項乃至(9)項のいずれかに記載のキャリアであることを特徴とする補給用現像剤。」
(13)「芯材粒子の表面に被覆層を形成する工程を有するキャリアの製造方法であって、前記被覆工程は、一般式(1)で示される部分(A部分)と一般式(2)で示される部分(B部分)を含む共重合体を加水分解し、シラノール基を生成し、有機アルミニウム触媒を用いて縮合することにより得られる架橋物を含有する前記被覆層を形成する工程であることを特徴とするキャリアの製造方法。
【0020】
【化4】

【0021】
【化5】

ただし、前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを表し、mは、1〜8の整数を表し、(CHは、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基のいずれかを表わす。」
【0022】
(14)「前記(10)項乃至(12)項のいずれかに記載の現像剤を有することを特徴とする現像剤入り容器。」
(15)「静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、前記(10)項乃至(12)項のいずれかに記載の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程と、該静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する工程と、該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程とを有することを特徴とする画像形成方法。」
(16)「静電潜像担持体、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、前記(10)項乃至(12)項のいずれかに記載の現像剤を用いて現像する手段が少なくとも一体に支持されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。」
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、トナースペント性、被膜の耐摩耗性(削れ・剥がれ)に優れるキャリア、該キャリアを有する現像剤及び該現像剤を有する現像剤入り容器並びに該現像剤を用いる画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のキャリアの体積固有抵抗を測定する際に用いられるセルを示す図である。
【図2】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
本発明の静電潜像現像剤用キャリアは、磁性を有する芯材粒子とその表面を被覆する樹脂層とからなり、磁性を有する芯材粒子と該芯材粒子表面を被覆する被覆層とからなる静電潜像現像剤用キャリアであって、該被覆層は、下記[構造式1]で示した共重合体の加水分解性基(低級アルコキシ基)を加水分解し、シラノール基を生成し、有機アルミニウム系触媒を用いて縮合することにより得られる架橋物を含有することを特徴とする静電潜像現像剤用キャリアである。
即ち、本発明のキャリアは、後述のモノマーA成分、モノマーB成分、および所望により加えられるモノマーC成分をラジカル共重合して得られるアクリル系共重合体を加水分解し、シラノール基を生成し、有機アルミニウム系触媒を用いて縮合することにより架橋、被覆した後、加熱処理して得られる静電潜像現像用キャリアである。
【0026】
芯材粒子表面を被覆する樹脂について説明する。
芯材粒子表面を被覆する樹脂は、下記一般式(1)A部分(及びそのためのモノマー成分A;以下同じ)、と下記一般式(2)で表されるB部分(及びそのためのモノマー成分B;以下同じ)とを含み、ラジカル共重合して得られるアクリル系共重合体を被覆した後、加熱処理して得られる樹脂である。
A部分(及びそのためのモノマー成分A):
【0027】
【化6】

前式中、
:水素原子、またはメチル基、
m:炭素原子数1〜8のメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基、
:炭素原子数1〜4のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基を表わす。
【0028】
A部分(及びモノマー成分A)において、X=10〜90モル%であり、好ましくは10〜40モル%であり、より好ましくは、20〜30モル%である。
A部分(モノマー成分A)は、側鎖にメチル基が多数存在する原子団・トリス(トリメチルシロキシ)シランを有しており、樹脂全体に対してA部分(モノマー成分A)の比率が高くなると表面エネルギーが小さくなり、トナーの樹脂成分、ワックス成分などの付着が少なくなる。A部分(モノマー成分A)が10モル%未満だと十分な効果が得られず、トナー成分の付着が急増する。また、90モル%より多くなると、B部分(モノマー成分B)、強靭性が不足すると共に、芯材と樹脂層の接着性が低下し、キャリア被膜の耐久性が悪くなる。
【0029】
は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、このようなA部分を生じるモノマー成分Aとしては、次式で示されるトリス(トリアルキルシロキシ)シラン化合物が例示される。
下式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基である。
CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
CH=CH−COO−C−Si(OSiMe
CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
CH=CMe−COO−C−Si(OSiEt
CH=CH−COO−C−Si(OSiEt
CH=CMe−COO−C−Si(OSiEt
CH=CMe−COO−C−Si(OSiPr
CH=CH−COO−C−Si(OSiPr
CH=CMe−COO−C−Si(OSiPr
【0030】
A部分のためのモノマー成分Aの製造方法は特に限定されないが、トリス(トリアルキルシロキシ)シランを白金触媒の存在下にアリルアクリレートまたはアリルメタクリレートと反応させる方法や、特開平11−217389号公報に記載されている、カルボン酸と酸触媒の存在下で、メタクリロキシアルキルトリアルコキシシランとヘキサアルキルジシロキサンとを反応させる方法などにより得られる。
【0031】
B部分(及びモノマー成分B/前駆体モノマーB):(架橋成分)
【0032】
【化7】

前式中、
:水素原子、またはメチル基、
m:炭素原子数1〜8のメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基。
:炭素原子数1〜4のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基。
:炭素数1〜8のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など)、又は炭素数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基)。
【0033】
即ち、B部分のためのモノマーB成分(前駆体を含む)は、ラジカル重合性の2官能(Rがアルキル基の場合)、又は3官能性(Rもアルコキシ基の場合)のシラン化合物であり、Y=10〜90モル%であるが、好ましくは10〜80モル%であり、より好ましくは15〜70モル%である。
B部分(モノマーB)が10モル%未満だと、強靭さが十分得られない。一方、90モル%より多いと、被膜は固くて脆くなり、膜削れが発生し易くなる。また、環境特性が悪化する。加水分解した架橋成分がシラノール基として多数残り、環境特性(湿度依存性)を悪化させていることも考えられる。
【0034】
このようなモノマーB成分としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリトキシプロピルトリ(イソプロペキシ)シラン、3−アクリロキシプロピルトリ(イソプロペキシ)シランが例示される。
【0035】
被膜の架橋による高耐久化技術としては、特許第3691115号公報に開示がある。
この特許第3691115号公報には、磁性粒子表面を、少なくとも末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサンとヒドロキシル基、アミノ基、アミド基およびイミド基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するラジカル共重合性単量体との共重合体をイソシアネート系化合物により架橋させた熱硬化性樹脂で被覆した静電荷像現像用キャリアが記載されているが、被膜の剥がれ・削れにおいて十分な耐久性が得られていないのが現状である。
その理由は十分明らかになっているとは言えないが、前述の共重合体をイソシアネート系化合物により架橋させた熱硬化性樹脂の場合、構造式からも分かるように、共重合体樹脂中のイソシアネート化合物と反応(架橋)する単位重量当りの官能基(アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキル基、メルカプト基等の活性水素含有基)が少なく、架橋点において、二次元、あるいは三次元的な緻密な架橋構造を形成することができず、そのために長時間使用すると、被膜剥がれ・削れなどが生じ(被膜の耐磨耗性が小さく)易く、十分な耐久性が得られていないと推察される。
【0036】
被膜の剥がれ・削れが生じると、キャリア抵抗低下による画像品質の変化、キャリア付着が起こる。また、被膜の剥がれ・削れは、現像剤の流動性を低下させ、汲み上げ量低下を引き起こし、画像濃度低下、TCアップに伴う地汚れ、トナー飛散の原因となっている。
【0037】
本発明は樹脂単位重量当たりでみても、二官能、あるいは三官能の架橋可能な官能基(点)を多数(重量当り、2倍〜3倍多い)有した共重合樹脂であり、これを更に、縮重合により架橋させたものであるため、被膜が極めて強靭で削れ難く、高耐久化が図られていると考えられる。
また、イソシアネート化合物による架橋より、本発明のシロキサン結合による架橋の方が、結合エネルギーが大きく熱ストレスに対しても安定しているため、被膜の経時安定性が保たれていると推察される。
【0038】
本発明においては、十分な可とう性を付与し、かつ、芯材と樹脂層、及び樹脂層と導電性微粒子との接着性を良好にするため、さらに下記一般式(4)で表されるC部分(モノマー成分C)を含むことができる。
C部分(及びモノマー成分C):(アクリル成分)
【0039】
【化8】

前式中、
:水素原子、またはメチル基、
:炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基であるアクリロイル基、またはメタアクリロイル基を有するラジカル重合性アクリル系化合物である。
【0040】
前記C部分(モノマー成分C)が加わることにより、当然、前記A部分(成分A)およびB部分(成分B)のモル比範囲も変わることになる。前記C部分(モノマー成分C)を含む場合の前記A部分(成分A)及び前記B部分(成分B)の含有量としては、X=10〜40モル%、Y=10〜40モル%であり、C部分(成分C)の含有量は、Z=30〜80モル%、好ましくは、35〜75モル%であり、かつ、60モル%<Y+Z<90モル%であり、更に好ましくは、70モル%<Y+Z<85モル%である。
C部分(モノマー成分C)が80モル%より大きくなると、X、およびYのいずれかが10以下となるため、キャリア被膜の撥水性、硬さと可とう性(膜削れ)を両立させることが難しくなる。
【0041】
C部分のためのモノマー成分Cのアクリル系化合物(モノマー)としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましく、具体的には、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレートが例示される。これらの内ではアルキルメタクリレートが好ましく、特にメチルメタクリレートが好ましい。また、これらの化合物の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上の混合物を使用してもよい。
【0042】
本発明における共重合樹脂は、成分A及び成分Bを含む各モノマーをラジカル共重合して得られたアクリル系共重合体であり、樹脂単位重量当たりの架橋可能な官能基が多いものであるのに加えて、加熱処理によりB部分(成分B)中の架橋部位を縮重合させ架橋させたものであるため、樹脂層が極めて強靭で削れ難く、高耐久化がはかれていると考えられる。
また、イソシアネート化合物による架橋より、本発明におけるシロキサン結合による架橋の方が、結合エネルギーが大きく熱ストレスに対しても安定しているため、樹脂層の経時安定性が保たれていると推察される。
【0043】
本発明の樹脂層組成物は、シラノール基、及び/又は加水分解によりシラノ−ル基を生成することが可能な官能基を有するシリコーン樹脂を含むことが好ましい。
シラノール基、及び/又は加水分解によりシラノ−ル基を生成することが可能な官能基(例えば、アルコキシ基やSi原子に結合するハロゲノ基等の陰性基)を有するシリコーン樹脂は、前記共重合体の架橋成分Bと直接的に、あるいはシラノール基に変化した状態の架橋成分Bと縮重合することができる。そして、前記共重合体に、シリコーン樹脂成分を含有させることにより、トナースペント性を更に改善される。
【0044】
本発明において、樹脂層を形成する際に用いられるシラノール基、及び/又は加水分解によりシラノ−ル基を生成することが可能な官能基を有するシリコーン樹脂は、下記一般式(I)で示される繰り返し単位の少なくとも一つを含有することが好ましい。
【0045】
【化9】

【0046】
ここで、上記式(I)中、Aは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、炭素数1〜4の低級アルキル基、またはアリール基(フェニル基、トリル基など)であり、Aは炭素数1〜4のアルキレン基、またはアリーレン基(フェニレン基など)である。
【0047】
上記式のアリール基において、その炭素数は6〜20、好ましくは6〜14である。このアリール基には、ベンゼン由来のアリール基(フェニル基)の他、ナフタレンやフェナントレン、アントラセン等の縮合多環式芳香族炭化水素由来のアリール基及びビフェニルやターフェニル等の鎖状多環式芳香族炭化水素由来のアリール基等が包含される。なお、アリール基は、各種の置換基で置換されていてもよい。
【0048】
アリーレン基の炭素数は、6〜20、好ましくは6〜14である。このアリーレン基としては、ベンゼン由来のアリーレン基(フェニレン基)の他、ナフタレンやフェナントレン、アントラセン等の縮合多環式芳香族炭化水素由来のアリーレン基及びビフェニルやターフェニル等の鎖状多環式芳香族炭化水素由来のアリーレン基等が包含される。なお、アリーレン基は、各種の置換基で置換されていてもよい。
【0049】
本発明に使用できるシリコーン樹脂の市販品としては、特に限定されないが、KR251、KR271、KR272、KR282、KR252、KR255、KR152、KR155、KR211、KR216、KR213(以上、信越シリコーン社製)、AY42−170、SR2510、SR2400、SR2406、SR2410、SR2405、SR2411(東レ・ダウコーニング株式会社製)(東レ・シリコーン社製)等が挙げられる。
【0050】
上述のように、種々のシリコーン樹脂が使用可能であるが、中でも、メチルシリコーン樹脂は、低トナースペント性、帯電量の環境変動が小さいことなどの理由から特に好ましい。
シリコーン樹脂の重量平均分子量としては、1,000〜100,000、好ましくは、1,000〜30,000程度である。用いる樹脂の分子量が100,000より大きい場合、塗布時に塗布液の粘度が上昇しすぎ、塗膜の均一性が十分得られなかったり、硬化後に樹脂層の密度が十分上がらない場合がある。1,000より小さいと硬化後の樹脂層がもろくなるなどの不具合が生じやすい。
【0051】
シリコーン樹脂の含有比率としては、前記共重合体に対して、5重量%〜80重量%、好ましくは、10重量%〜60重量%である。
5重量%より少ないとスペント性などの改良効果が得られず、80重量%より多いと樹脂層の強靭性が不足して、膜削れし易くなる。
また、本発明では、導電性微粒子の分散性向上、およびトナー帯電量調整などのために、シランカップリング剤を用いることも可能である。
特に、シリコーン樹脂に対しては、トナー帯電量調整のため、以下に示すアミノシランカップリング剤を適量(0.001〜30重量%)含有させることが有効である。
【0052】
アミノシランカップリング剤としては、以下のようなものが挙げられる。
N(CHSi(OCH MW 179.3
N(CHSi(OC MW 221.4
NCHCHCHSi(CH(OC) MW 161.3
NCHCHCHSi(CH)(OC MW 191.3
NCHCHNHCHSi(OCH MW 194.3
NCHCHNHCHCHCHSi(CH)(OCH MW 206.4
NCHCHNHCHCHCHSi(OCH MW 224.4
(CHNCHCHCHSi(CH)(OC MW 219.4
(CNCSi(OCH MW 291.6
【0053】
また、本発明の樹脂層組成物は、前記シラノール基及び/又は加水分解性官能基を有するシリコーン樹脂以外の樹脂も含有することができ、そのような樹脂としては、特に限定されないが、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体のターポリマー等のフルオロターポリマー、シラノール基又は加水分解性官能基を有さないシリコーン樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、芯材粒子及び導電性微粒子との密着性が強く、脆性が低いことから、アクリル樹脂が好ましい。
【0054】
アクリル樹脂は、ガラス転移点が20〜100℃であることが好ましく、25〜80℃がさらに好ましい。このようなアクリル樹脂は、適度な弾性を有しているため、現像剤を摩擦帯電させる際に、トナーとキャリアの摩擦あるいはキャリア同士の摩擦による樹脂層への強い衝撃を伴う場合に、衝撃を吸収することができ、樹脂層及び導電性微粒子の劣化を防止できる。
【0055】
また、樹脂層組成物は、アクリル樹脂とアミノ樹脂の架橋物を含有することがさらに好ましい。これにより、適度な弾性を維持したまま、樹脂層同士の融着を抑制することができる。アミノ樹脂としては、特に限定されないが、キャリアの帯電付与能力を向上させることができるため、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。また、適度にキャリアの帯電付与能力を制御する必要がある場合には、メラミン樹脂及び/又はベンゾグアナミン樹脂と、他のアミノ樹脂を併用してもよい。
【0056】
アミノ樹脂と架橋し得るアクリル樹脂としては、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有するものが好ましく、ヒドロキシル基を有するものがさらに好ましい。これにより、芯材粒子や導電性微粒子との密着性をさらに向上させることができ、導電性微粒子の分散安定性も向上させることができる。このとき、アクリル樹脂は、水酸基価が10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上がさらに好ましい。
【0057】
また、架橋成分Bの縮合反応を促進するために、チタン系触媒、スズ系触媒、ジルコニウム系触媒、アルミニウム系触媒を使用できる。これら各種触媒のうち、優れた結果をもたらすアルミニウム系触媒の中でも、特にアルミニウムアルコキシドが好ましい。
これは、架橋成分Bに由来するシラノール基の縮合反応を促進する効果が大きく、且つ触媒が失活しにくいためであると考えられる。アルミニウムアルコキシド系触媒の例としては、下記構造式2,3のものが挙げられる。
Al(CH)(CHCF・・・[構造式2]
Al(CF(CF(COC)・・・[構造式3]
【0058】
前記樹脂層は、前記A部分及び前記B部分を含む共重合体、アルミニウムアルコキシド触媒、必要に応じて、前記A部分及び前記B部分を含む共重合体以外の樹脂、溶媒を含む樹脂層用組成物を用いて形成することができる。
具体的には、樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆しながら、シラノール基を縮合させることにより形成してもよいし、樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆した後に、シラノール基を縮合させることにより形成してもよい。
樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆しながら、シラノール基を縮合させる方法としては、特に限定されないが、熱、光等を付与しながら、樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆する方法等が挙げられる。また、樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆した後に、シラノール基を縮合させる方法としては、特に限定されないが、樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆した後に加熱する方法等が挙げられる。
【0059】
また、通常は分子量の大きな樹脂は粘度が非常に高く、粒径の小さな基体に塗布する場合、粒子の凝集、樹脂層の不均一化などが生じ易く、コートキャリアを製造することが極めて難しい。
したがって、本発明の共重合樹脂は、重量平均分子量が5,000〜100,000であることが好ましく、10,000〜70,000であることがより好ましく、30,000〜40,000であることがさらに好ましい。5,000より小さいと、樹脂層の強度が不足し、100,000であると、液粘度が高くなり、キャリア製造性が悪くなる。
【0060】
本発明において、被覆層は、平均膜厚が0.05〜4μmであることが好ましい。平均膜厚が0.05μm未満であると、被覆層が破壊されやすくなり、膜が削れてしまうことがあり、4μmを超えると、被服層は磁性体でないため、画像にキャリア付着し易くなる。
【0061】
本発明において、芯材粒子としては、磁性体であれば、特に限定されないが、鉄、コバルト等の強磁性金属;マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄;各種合金や化合物;これらの磁性体を樹脂中に分散させた樹脂粒子等が挙げられる。中でも、環境面への配慮から、Mn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Mn−Mg−Srフェライト等が好ましい。
【0062】
本発明において、芯材粒子は、重量平均粒径が20〜65μmであることが好ましい。
重量平均粒径が20μm未満であると、キャリア付着が発生することがあり、65μmを超えると、画像細部の再現性が低下し、精細な画像を形成できなくなることがある。
なお、重量平均粒径は、マイクロトラック粒度分布計モデルHRA9320―X100(日機装社製)を用いて測定することができる。
【0063】
また、本発明のキャリアは、1kOe(10/4π[A/m])の磁場における磁化が、40〜90Am/kgであることが好ましい。この磁化が40Am/kg未満であると、画像にキャリアが付着することがあり、90Am/kgを超えると、磁性穂が硬くなり、画像カスレが発生することがある。
なお、磁化は、VSM−P7−15(東英工業社製)を用いて測定することができる。
【0064】
本発明のキャリアは、体積固有抵抗が1×10〜1×1017Ω・cmであることが好ましい。体積固有抵抗が1×10Ω・cm未満であると、非画像部でキャリア付着が発生することがあり、1×1017Ω・cmを超えると、エッジ効果が許容できないレベルになることがある。
なお、体積固有抵抗は、図1に示すセルを用いて測定することができる。具体的には、まず、表面積2.5cm×4cmの電極(1a)及び電極(1b)を、0.2cmの距離を隔てて収容したフッ素樹脂製容器(2)からなるセルに、キャリア(3)を充填し、落下高さ1cm、タッピングスピード30回/分で、10回のタッピングを行う。次に、電極(1a)及び(1b)の間に1000Vの直流電圧を印加して30秒後の抵抗値r[Ω]を、ハイレジスタンスメーター4329A(横河ヒューレットパッカード社製)を用いて測定し、下式1から、体積固有抵抗[Ω・cm]を算出することができる。
【0065】
【数1】

【0066】
本発明の現像剤は、本発明のキャリア及びトナーを有する。
トナーは、結着樹脂と着色剤を含有するが、モノクロトナー及びカラートナーのいずれであってもよい。また、定着ローラにトナー固着防止用オイルを塗布しないオイルレスシステムに適用するために、トナーは、離型剤を含有してもよい。このようなトナーは、一般に、フィルミングが発生しやすいが、本発明のキャリアは、フィルミングを抑制することができるため、本発明の現像剤は、長期に亘り、良好な品質を維持することができる。
さらに、カラートナー、特に、イエロートナーは、一般に、キャリアの被覆層の削れによる色汚れが発生するという問題があるが、本発明の現像剤は、色汚れの発生を抑制することができる。
【0067】
トナーは、粉砕法、重合法等の公知の方法を用いて製造することができる。例えば、粉砕法を用いてトナーを製造する場合、まず、トナー材料を混練することにより得られる溶融混練物を冷却した後、粉砕し、分級して、母体粒子を作製する。次に、転写性、耐久性をさらに向上させるために、母体粒子に外添剤を添加し、トナーを作製する。
【0068】
このとき、トナー材料を混練する装置としては、特に限定されないが、バッチ式の2本ロール;バンバリーミキサー;KTK型2軸押出し機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出し機(東芝機械社製)、2軸押出し機(KCK社製)、PCM型2軸押出し機(池貝鉄工社製)、KEX型2軸押出し機(栗本鉄工所社製)等の連続式の2軸押出し機;コ・ニーダ(ブッス社製)等の連続式の1軸混練機等が挙げられる。
また、冷却した溶融混練物を粉砕する際には、ハンマーミル、ロートプレックス等を用いて粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機、機械式の微粉砕機等を用いて微粉砕することができる。なお、平均粒径が3〜15μmとなるように粉砕することが好ましい。
【0069】
さらに、粉砕された溶融混練物を分級する際には、風力式分級機等を用いることができる。なお、母体粒子の平均粒径が5〜20μmとなるように分級することが好ましい。
また、母体粒子に外添剤を添加する際には、ミキサー類を用いて混合攪拌することにより、外添剤が解砕されながら母体粒子の表面に付着する。
【0070】
結着樹脂としては、特に限定されないが、ポリスチレン、ポリp−スチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単独重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は芳香族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0071】
圧力定着用の結着樹脂としては、特に限定されないが、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂等のオレフィン共重合体;エポキシ樹脂、ポリエステル、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、マレイン酸変性フェノール樹脂、フェノール変性テルペン樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0072】
着色剤(顔料又は染料)としては、特に限定されないが、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等の赤色顔料;ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等の緑色顔料;カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物等の黒色顔料等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0073】
離型剤としては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、アミド系ワックス、多価アルコールワックス、シリコーンワニス、カルナウバワックス、エステルワックス等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0074】
また、トナーは、帯電制御剤をさらに含有してもよい。帯電制御剤としては、特に限定されないが、ニグロシン;炭素数が2〜16のアルキル基を有するアジン系染料(特公昭42−1627号公報参照);C.I.Basic Yello 2(C.I.41000)、C.I.Basic Yello 3、C.I.Basic Red 1(C.I.45160)、C.I.Basic Red 9(C.I.42500)、C.I.Basic Violet 1(C.I.42535)、C.I.Basic Violet 3(C.I.42555)、C.I.Basic Violet 10(C.I.45170)、C.I.Basic Violet 14(C.I.42510)、C.I.Basic Blue 1(C.I.42025)、C.I.Basic Blue 3(C.I.51005)、C.I.Basic Blue 5(C.I.42140)、C.I.Basic Blue 7(C.I.42595)、C.I.Basic Blue 9(C.I.52015)、C.I.Basic Blue 24(C.I.52030)、C.I.Basic Blue25(C.I.52025)、C.I.Basic Blue 26(C.I.44045)、C.I.Basic Green 1(C.I.42040)、C.I.Basic Green 4(C.I.42000)等の塩基性染料;これらの塩基性染料のレーキ顔料;C.I.Solvent Black 8(C.I.26150)、ベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルクロライド等の4級アンモニウム塩;ジブチル、ジオクチル等のジアルキルスズ化合物;ジアルキルスズボレート化合物;グアニジン誘導体;アミノ基を有するビニル系ポリマー、アミノ基を有する縮合系ポリマー等のポリアミン樹脂;特公昭41−20153号公報、特公昭43−27596号公報、特公昭44−6397号公報、特公昭45−26478号公報に記載されているモノアゾ染料の金属錯塩;特公昭55−42752号公報、特公昭59−7385号公報に記載されているサルチル酸;ジアルキルサルチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のZn、Al、Co、Cr、Fe等の金属錯体;スルホン化した銅フタロシアニン顔料;有機ホウ素塩類;含フッ素4級アンモニウム塩;カリックスアレン系化合物等が挙げられるが、二種以上併用してもよい。なお、ブラック以外のカラートナーにおいては、白色のサリチル酸誘導体の金属塩等が好ましい。
【0075】
外添剤としては、特に限定されないが、シリカ、酸化チタン、アルミナ、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素等の無機粒子;ソープフリー乳化重合法により得られる平均粒径が0.05〜1μmのポリメタクリル酸メチル粒子、ポリスチレン粒子等の樹脂粒子が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、表面が疎水化処理されているシリカ、酸化チタン等の金属酸化物粒子が好ましい。さらに、疎水化処理されているシリカ及び疎水化処理されている酸化チタンを併用し、疎水化処理されているシリカよりも疎水化処理されている酸化チタンの添加量を多くすることにより、湿度に対する帯電安定性に優れるトナーが得られる。
【0076】
[画像形成装置、画像形成方法]
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程と、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、本発明の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程と、静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する工程と、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程とを有する。
【0077】
図2に、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す。プロセスカートリッジ(10)は、感光体(11)、感光体(11)を帯電する帯電装置(12)、感光体(11)上に形成された静電潜像を本発明の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像装置13及び感光体(11)上に形成されたトナー像を記録媒体に転写した後、感光体(11)上に残留したトナーを除去するクリーニング装置(14)が一体に支持されており、プロセスカートリッジ(10)は、複写機、プリンタ等の画像形成装置の本体に対して着脱可能である。
【0078】
以下、プロセスカートリッジ(10)を搭載した画像形成装置を用いて画像を形成する方法について説明する。まず、感光体(11)が所定の周速度で回転駆動され、帯電装置(12)により、感光体(11)の周面が正又は負の所定電位に均一に帯電される。次に、スリット露光方式の露光装置、レーザービームで走査露光する露光装置等の露光装置(不図示)から感光体(11)の周面に露光光が照射され、静電潜像が順次形成される。さらに、感光体(11)の周面に形成された静電潜像は、現像装置(13)により、本発明の現像剤を用いて現像され、トナー像が形成される。次に、感光体(11)の周面に形成されたトナー像は、感光体(11)の回転と同期されて、給紙部(不図示)から感光体(11)と転写装置(不図示)の間に給紙された転写紙に、順次転写される。さらに、トナー像が転写された転写紙は、感光体(11)の周面から分離されて定着装置(不図示)に導入されて定着された後、複写物(コピー)として、画像形成装置の外部へプリントアウトされる。一方、トナー像が転写された後の感光体(11)の表面は、クリーニング装置(14)により、残留したトナーが除去されて清浄化された後、除電装置(不図示)により除電され、繰り返し画像形成に使用される。
【0079】
本発明のキャリアを、キャリアとトナーから成る補給用現像剤とし、現像装置内の余剰の現像剤を排出しながら画像形成を行う画像形成装置に適用することで、極めて長期に渡って安定した画像品質が得られる。つまり、現像装置内の劣化したキャリアと、補給用現像剤中の劣化していないキャリアを入れ替え、長期間に渡って帯電量を安定に保ち、安定した画像が得られる。本方式は、特に高画像面積印字時に有効である。高画像面積印字時は、キャリアへのトナースペントによるキャリア帯電劣化が主なキャリア劣化であるが、本方式を用いることで、高画像面積時には、キャリア補給量も多くなるため、劣化したキャリアが入れ替わる頻度があがる。これにより、極めて長期間に渡って安定した画像を得られる。
【0080】
補給用現像剤の混合比率は、キャリア1質量部に対してトナーを2〜50質量部の配合割合とすることが好ましい。トナーが2質量部未満の場合には、補給キャリア量が多すぎ、キャリア供給過多となり現像装置中のキャリア濃度が高くなりすぎるため、現像剤の帯電量が増加しやすい。又、現像剤帯電量が上がる事により、現像能力が下がり画像濃度が低下してしまう。また50質量部を超えると、補給用現像剤中のキャリア割合が少なくなるため、画像形成装置中のキャリアの入れ替わりが少なくなり、キャリア劣化に対する効果が期待できなくなる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、「部」は、重量部を表わす。
【0082】
<共重合体の合成>
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算で求めた。粘度は25℃でJIS−K2283に準じて測定した。また、不揮発分はコーティング剤組成物1gをアルミ皿に秤取り、150℃で1時間加熱した後の重量を測定して、次式に従って算出した。
不揮発分(%)=(加熱前の重量−加熱後の重量)×100/加熱前の重量
以下、本発明に使用する樹脂の合成例を示す。
【0083】
[樹脂合成実施例1](A成分:B成分=9:1)
撹拌機付きフラスコにトルエン500gを投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温した。次いでこれに、CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe(式中、Meはメチル基である。)で示される3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン379.8g(900ミリモル:サイラプレーン TM−0701T/チッソ株式会社製)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン24.8g(100ミリモル)、および、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.58g(3ミリモル)の混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.06g(0.3ミリモル)をトルエン15gに溶解した溶液を加えて(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量0.64g=3.3ミリモル)、90〜100℃で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体を得た。得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は37,000であった。
次いで、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が25重量%になるようにトルエンで希釈した。このようにして得られた共重合体溶液の粘度は8.4mm/sであり、比重は0.92であった。
【0084】
[樹脂合成実施例2](A成分:B成分=1:9)
撹拌機付きフラスコにトルエン500gを投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温した。次いでこれに、CH=CMe−COO−CH6−Si(OSiMe(式中、Meはメチル基である。)で示される3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン42.2g(100ミリモル:サイラプレーン TM−0701T/チッソ株式会社製)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン223.2g(900ミリモル)、および、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.58g(3ミリモル)の混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.06g(0.3ミリモル)をトルエン15gに溶解した溶液を加えて(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量0.64g=3.3ミリモル)、90〜100℃で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体を得た。得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は34,000であった。
次いで、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が25重量%になるようにトルエンで希釈した。このようにして得られた共重合体溶液の粘度は8.7mm/sであり、比重は0.90であった。
【0085】
[樹脂合成実施例3]<3元系>
撹拌機付きフラスコにトルエン300gを投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温
した。次いでこれに、CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe(式中、Meはメチル基である。)で示される3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン84.4g(200ミリモル:サイラプレーン TM−0701T/チッソ株式会社製)、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン39g(150ミリモル)、メタクリル酸メチル65.0g(650ミリモル)、および、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.58g(3ミリモル)の混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.06g(0.3ミリモル)をトルエン15gに溶解した溶液を加えて(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量0.64g=3.3ミリモル)、90〜100℃で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体を得た。
得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は33,000であった。次いで、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が25重量%になるようにトルエンで希釈した。
このようにして得られた共重合体溶液の粘度は8.8mm/sであり、比重は0.91であった。
【0086】
[樹脂合成実施例4]<3元系>
3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン39g(150ミリモル)を3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン37.2g(150ミリモル)に替える以外は、樹脂合成例1と全く同じようにして、ラジカル共重合させてメタクリル系共重合体を得た。
得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は34,000であった。次いで、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が25重量%になるようにトルエンで希釈した。
このようにして得られた共重合体溶液の粘度は8.7mm/sであり、比重は0.91であった。
【0087】
[樹脂合成比較例1](A成分:B成分=10:0)
撹拌機付きフラスコにトルエン500gを投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温した。次いでこれに、CH=CMe−COO−CH6−Si(OSiMe(式中、Meはメチル基である。)で示される3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン422g(500ミリモル:サイラプレーン TM−0701T/チッソ株式会社製)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.58g(3ミリモル)の混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.06g(0.3ミリモル)をトルエン15gに溶解した溶液を加えて(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量0.64g=3.3ミリモル)、90〜100℃で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体を得た。得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は37,000であった。次いで、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が25重量%になるようにトルエンで希釈した。このようにして得られた共重合体溶液の粘度は8.4mm/sであり、比重は0.91であった。
【0088】
[樹脂合成比較例2](A成分:B成分=0:10)
撹拌機付きフラスコにトルエン500gを投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温した。次いでこれに、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン248.0g(1000ミリモル)、および、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.58g(3ミリモル)の混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.06g(0.3ミリモル)をトルエン15gに溶解した溶液を加えて(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量0.64g=3.3ミリモル)、90〜100℃で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体を得た。得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は33,000であった。次いで、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が25重量%になるようにトルエンで希釈した。このようにして得られた共重合体溶液の粘度は8.7mm/sであり、比重は0.90であった。
【0089】
[樹脂合成比較例3]
攪拌器、コンデンサー、温度計、窒素導入管、滴下装置を備えた容量500mlのフラスコにMEK(メチルエチルケトン)を100部を仕込んだ。別に窒素雰囲気下80℃でMMA(メチルメタクリレート)を32.6部、HEMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)を2.5部、MPTS(オルガノポリシロキサン−1:3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン)を64.9部、V−40(1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル))を1部をMEK100部に溶解させて得られた溶液を2時間にわたり反応容器中に滴下し、5時間熟成させた。
この共重合体溶液の不揮発分が25重量%になるようにMEK(メチルエチルケトン)で希釈した。
【0090】
[キャリア製造例]
[キャリア製造実施例1]
合成例1で得られた重量平均分子量35,000のメタクリル系共重合体(100部)、構造式2で示すアルミニウム系触媒5部、酸化亜鉛化合物(K−23)2部を、トルエンで希釈して、固形分10wt%の樹脂溶液を得た。
芯材として重量平均粒径が35μmのMnフェライト粒子を用いて、芯材表面において平均膜厚が0.20μmになるように、流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥した。得られたキャリアを電気炉中にて、180℃/2時間焼成し、キャリアAを得た。
【0091】
[キャリア製造実施例2]
樹脂を合成実施例2の樹脂に替える以外は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造実施例2にあたるキャリアBを得た。
【0092】
[キャリア製造実施例3]
樹脂を合成実施例3の樹脂に替える以外は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造実施例3にあたるキャリアCを得た。
【0093】
[キャリア製造実施例4]
樹脂を合成実施例4の樹脂に替える以外は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造実施例4にあたるキャリアDを得た。
【0094】
[キャリア製造比較例1]
樹脂を合成比較例1の樹脂に替える以外は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造比較例1にあたるキャリアEを得た。
【0095】
[キャリア製造比較例2]
樹脂を合成比較例2の樹脂に替える以外は、キャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造比較例2にあたるキャリアFを得た。
【0096】
[キャリア製造比較例3]
樹脂合成例3で得られた樹脂に対して、架橋剤としてイソホロンジイソシアネート/トリメチロールプロパンアダクト(IPDI/TMP系:NCO%=6.1%)をOH/NCOモル比率が(OHは合成例10の樹脂中OH)1/1となるように調整した後MEKで希釈して固形比3重量%であるコート樹脂溶液を調合した。
芯材として重量平均粒径が35μmのMnフェライト粒子を用いて、芯材表面において平均膜厚が0.20μmになるように、流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥した。
得られたキャリアを電気炉中にて、160℃/1時間焼成し、キャリアGを得た。
【0097】
[キャリア製造比較例4]
2官能または3官能のモノマーから作成された重量平均分子量15,000のメチルシリコーンレジン(固形分25%)30部を加える以外はキャリア製造実施例1と全く同じ方法で、キャリア製造比較例4のキャリアHを得た。
【0098】
[キャリア特性評価]
以下、キャリアの特性の評価方法を示す。
[芯材粒子の重量平均粒径]
マイクロトラック粒度分布計モデルHRA9320−X100(日機装社製)を用いて、芯材粒子の粒度分布を測定した。
【0099】
[1kOeの磁場における磁化]
キャリア約0.15gを、内径が2.4mm、高さが8.5mmのセルに充填した後、VSM−P7−15(東英工業社製)を用いて、1kOeの磁場において、磁化を測定した。
【0100】
[体積固有抵抗]
体積固有抵抗は、図1に示すセルを用いて測定した。具体的には、まず、表面積2.5cm×4cmの電極(1a)及び電極(1b)を、0.2cmの距離を隔てて収容したフッ素樹脂製容器(2)からなるセルに、キャリア(3)を充填し、落下高さ1cm、タッピングスピード30回/分で、10回のタッピングを行った。次に、電極(1a)及び(1b)の間に1000Vの直流電圧を印加して30秒後の抵抗r[Ω]を、ハイレジスタンスメーター4329A(横川ヒューレットパッカード社製)を用いて測定し、つぎの[数式1]から、体積固有抵抗[Ωcm]を算出した。
【0101】
【数2】

【0102】
[被覆層の平均膜厚]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、キャリアの断面を観察して、被覆層の平均膜厚を測定した。得られたキャリアの特性を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
[トナー製造例]
[ポリエステル樹脂Aの合成例]
温度計、攪拌機、冷却器および窒素導入管の付いた反応槽中にビスフェノールAのPO付加物(水酸基価 320)443部、ジエチレングリコール135部、テレフタル酸422部およびジブチルチンオキサイド2.5部を入れて、200℃で酸価が10になるまで反応させて、[ポリエステル樹脂A]を得た。本樹脂のTgは63℃、ピーク個数平均分子量6000であった。
【0105】
[ポリエステル樹脂Bの合成例]
温度計、攪拌機、冷却器および窒素導入管の付いた反応槽中にビスフェノールAのPO付加物(水酸基価 320)443部、ジエチレングリコール135部、テレフタル酸422部およびジブチルチンオキサイド2.5部を入れて、230℃で酸価が7になるまで反応させて、[ポリエステル樹脂B]を得た。本樹脂のTgは65℃、ピーク個数平均分子量16000であった。
ポリエステル樹脂A・・・・40部
ポリエステル樹脂B・・・・60部
カルナバワックス・・・・1部
カーボンブラック(#44 三菱化学社製)・・・・10部
上記のトナー構成材料を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製のヘンシェル20Bで1500rpmで3分間)で混合し、一軸混練機(Buss社製の小型ブス・コ・ニーダー)にて以下の条件で混練を行い(設定温度:入口部100℃、出口部50℃で、フィード量:2kg/Hr)、[母体トナーA1]を得た。
更に、[母体トナーA1]を混練後圧延冷却し、パルペライザーで粉砕し、更に、I式ミル(日本ニューマチック社製IDS−2型にて、平面型衝突板を用い、エアー圧力:6.8atm/cm、フィード量:0.5kg/hrの条件)にて微粉砕を行い、更に分級を行って(アルピネ社製の132MP)、[母体トナー粒子1]を得た。
【0106】
(外添剤処理)
「母体トナー粒子1」100部に対し、外添剤として疎水性シリカ微粒子(R972:日本アエロジル社製)を1.0部添加し、ヘンシェルミキサーで混合してトナー粒子を得た(以下「トナー1」という)。
【0107】
[現像剤の作成]
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、「部」は、重量部を表わす。
キャリア製造例で得られたキャリアA〜H(93部)に対して、トナー製造例で得られたトナー1(7.2μm)を7.0部を加えて、ボールミルで20分攪拌して、現像剤A〜Hを作成した。
【0108】
[現像剤特性評価]
得られた現像剤を用いて、デジタルフルカラー複合機Imagio Neo C600(リコー社製)を用いて、画像評価を実施した。具体的には、まず、実施例及び比較例の現像剤A〜Hと、実施例のトナー1を用いて、画像面積率20%で、初期及び10万枚のランニング後のキャリアの帯電量及び体積固有抵抗を測定し、帯電量の低下量及び体積固有抵抗の変化量を算出した。
なお、初期のキャリアの帯電量(Q1)は、キャリアA〜Nと、実施例のトナー1を、質量比93:7で混合し、摩擦帯電させたサンプルを、ブローオフ装置TB−200(東芝ケミカル社製)を用いて測定した。また、ランニング後のキャリアの帯電量(Q2)は、ブローオフ装置を用いてランニング後の現像剤中の各色のトナーを除去したキャリアを用いた以外は、上記と同様にして測定した。なお、帯電量の変化量の目標値は10μC/g以下である。
【0109】
一方、初期のキャリアの体積固有抵抗(LogR1)は、上記[体積固有抵抗]と同様にして測定したキャリアの体積固有抵抗の常用対数値である。ランニング後のキャリアの体積固有抵抗(LogR2)は、ブローオフ装置を用いてランニング後の現像剤中の各色のトナーを除去したキャリアを用いた以外は、上記と同様にして測定した。なお、体積固有抵抗の目標値は絶対値で1.5[Log(Ωcm)]以下である。現像剤評価結果を表2に示す。
【0110】
【表2】

【符号の説明】
【0111】
(図1)
1a 電極
1b 電極
2 フッ素樹脂製容器
3 キャリア
(図2)
10 プロセスカートリッジ
11 感光体
12 帯電装置
13 現像装置
14 クリーニング装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特開昭55−127569号公報
【特許文献2】特開昭55−157751号公報
【特許文献3】特開昭56−140358号公報
【特許文献4】特開昭57−96355号公報
【特許文献5】特開昭57−96356号公報
【特許文献6】特開昭58−207054号公報
【特許文献7】特開昭61−110161号公報
【特許文献8】特開昭62−273576号公報
【特許文献9】特開2003−345070号公報
【特許文献10】特開2005−249923号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性を有する芯材粒子とその表面を被覆する樹脂層とからなる静電潜像現像剤用キャリアであって、該樹脂層は、少なくとも下記一般式(1)で表される部分(A部分)と下記一般式(2)で表される部分(B部分)とを含む共重合体を加熱処理して得られた樹脂を含有するものであり、該樹脂は前記共重合体中のシラノール基またはそれを生成可能な前駆体官能基を有機アルミニウム触媒を用いて縮合架橋させたものであることを特徴とする静電潜像現像剤用キャリア。
【化1】

【化2】

ただし、前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを表し、mは、1〜8の整数を表し、(CHは、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基のいずれかを表し、X及びYは、モル比を表し、それぞれ10モル%〜90モル%である。
【請求項2】
前記共重合体は、下記一般式(3)で表される共重合体を含むことを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像剤用キャリア。
【化3】

(式中において、R、m、R、R、X、Y、及びZは以下に該当するものを示す。)
:水素原子、またはメチル基
m:炭素原子数1〜8のアルキレン基
:炭素原子数1〜4のアルキル基
:炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
X:10〜40モル%
Y:10〜40モル%
Z:30〜80モル%
60モル%<Y+Z<90モル%
【請求項3】
前記被覆層を被覆して、しかる後に加熱処理して得られたことを特徴とする請求項1又は2に記載の静電潜像現像剤用キャリア。
【請求項4】
前記加熱処理時の熱処理温度が100〜350℃であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア。
【請求項5】
前記被覆層は、導電性粒子をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア。
【請求項6】
体積固有抵抗が1×10Ω・cm以上1×1017Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア。
【請求項7】
前記被覆層は、平均膜厚が0.05μm以上4μm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア。
【請求項8】
前記芯材粒子は、重量平均粒径が20μm以上65μm以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア。
【請求項9】
1kOeの磁場における磁化が40Am/kg以上90Am/kg以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のキャリア及びトナーを有することを特徴とする現像剤。
【請求項11】
前記トナーは、カラートナーであることを特徴とする請求項10に記載の現像剤。
【請求項12】
キャリア1質量部に対してトナーを2〜50重量部の配合割合で含有する補給用現像剤であって、該キャリアが請求項1乃至9のいずれかに記載のキャリアであることを特徴とする補給用現像剤。
【請求項13】
芯材粒子の表面に被覆層を形成する工程を有するキャリアの製造方法であって、前記被覆工程は、一般式(1)で示される部分(A部分)と一般式(2)で示される部分(B部分)を含む共重合体を加水分解し、シラノール基を生成し、有機アルミニウム触媒を用いて縮合することにより得られる架橋物を含有する前記被覆層を形成する工程であることを特徴とするキャリアの製造方法。
【化4】

【化5】

ただし、前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを表し、mは、1〜8の整数を表し、(CHは、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基のいずれかを表わす。
【請求項14】
請求項10乃至12のいずれかに記載の現像剤を有することを特徴とする現像剤入り容器。
【請求項15】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、請求項10乃至12のいずれかに記載の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程と、該静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する工程と、該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程とを有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項16】
静電潜像担持体、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、請求項10乃至12のいずれかに記載の現像剤を用いて現像する手段が少なくとも一体に支持されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−58421(P2012−58421A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200368(P2010−200368)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】