説明

現金自動取引装置の制御

【課題】 ユーザが異なる取引用媒体を用いて偽券を伴う取引を繰り返し試みる行為を抑制することのできる技術を提供する。
【解決手段】 現金自動取引装置は、第1の取引用媒体を用いて偽券を伴う第1の不正取引が試みられた後に、第1の取引用媒体とは異なる第2の取引用媒体を用いて偽券を伴う第2の不正取引が試みられる場合に、第1の不正取引において取得されたユーザの同一性の判断に利用される第1のユーザ情報と、第2の不正取引において取得されたユーザの同一性の判断に利用される第2のユーザ情報と、に基づいて、第1の取引と第2の取引とが同一のユーザによって試みられたか否かを判断する。第1の取引と第2の取引とが同一のユーザによって試みられたと判断される場合には、第2の取引用媒体を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金自動取引装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現金自動取引装置は、銀行等に設置され、ユーザによって操作される。ユーザは、キャッシュカードなどの取引用媒体を用いて、現金の入出金を行う。入金時には、現金自動取引装置は、投入された紙幣の真偽を判断する。これにより、偽券の入金が防止される。
【0003】
特許文献1には、現金自動取引装置において、偽券が所定枚数以上投入されたときに、キャッシュカードを返却しないようにする技術が開示されている。特許文献2には、現金自動取引装置において、他人のキャッシュカードの不正使用を抑制する技術が開示されている。具体的には、暗証番号の誤入力が繰り返された場合に、ユーザの顔画像データが登録される。そして、該ユーザが現金自動取引装置を操作しようとすると、登録済みの顔画像データと該ユーザの顔画像データとが一致すると判断され、警報信号が生成される。特許文献3には、自動販売機において、偽券の投入が所定回数以上行われた場合に、紙幣を返却しないようにする技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−143120号公報
【特許文献2】特開2001−312469号公報
【特許文献3】特開平9−293156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の現金自動取引装置では、ユーザが異なる取引用媒体を用いて偽券の入金を繰り返し試みることができてしまうという問題があった。これは、従来の現金自動取引装置では、取引用媒体が異なる場合には、ユーザが異なると認識されるためである。
【0006】
この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、ユーザが異なる取引用媒体を用いて偽券を伴う取引を繰り返し試みる行為を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の装置は、現金自動取引装置であって、
取引用媒体を取り扱う媒体取扱部と、
紙幣を取り扱う紙幣取扱部であって、前記紙幣取扱部に投入された紙幣の真偽を判断する真偽判断部を備える前記紙幣取扱部と、
ユーザの同一性の判断に利用されるユーザ情報を取得するユーザ情報取得部と、
前記現金自動取引装置の動作を制御するための制御部と、
を備え、
前記制御部は、
第1の取引用媒体を用いた第1の取引であって、前記真偽判断部によって投入された紙幣が偽券であると判断された前記第1の取引が試みられた後に、前記第1の取引用媒体とは異なる第2の取引用媒体を用いた第2の取引であって、前記真偽判断部によって投入された紙幣が偽券であると判断された前記第2の取引が試みられる場合に、前記第1の取引において取得された第1のユーザ情報と、前記第2の取引において取得された第2のユーザ情報と、に基づいて、前記第1の取引と前記第2の取引とが同一のユーザによって試みられたと判断されることを条件に、前記媒体取扱部に前記第2の取引用媒体を回収させることを特徴とする。
【0008】
この装置では、ユーザ情報に基づいてユーザの同一性が判断されるため、偽券を伴う第1の取引と第2の取引とが異なる取引媒体を用いて試みられる場合にも、第1の取引と第2の取引とが同一のユーザによって試みられたか否かを判断することができる。そして、第1の取引と第2の取引とが同一のユーザによって試みられたと判断される場合には、第2の取引用媒体を回収することができる。この結果、同一のユーザが異なる取引用媒体を用いて偽券を伴う取引を繰り返し試みる行為を抑制することが可能となる。
【0009】
上記の装置において、さらに、
ユーザの存在を検知するための検知部を備え、
前記制御部は、
前記第1の取引と前記第2の取引とが試みられる前記場合において、さらに、前記検知部によって、前記第1の取引と前記第2の取引とが試みられる際にユーザの存在が継続して検知されることを条件に、前記媒体取扱部に前記第2の取引用媒体を回収させることが好ましい。
【0010】
こうすれば、第1の取引を試みるユーザと第2の取引を試みるユーザとが同一人物であるか否かを、より正確に判断することができる。
【0011】
上記の装置において、
前記制御部は、
前記第1のユーザ情報と前記第2のユーザ情報とに基づいて、前記第1の取引と前記第2の取引とが同一のユーザによって試みられたか否かを判断するユーザ判断部を備えるようにしてもよい。
【0012】
こうすれば、現金自動取引装置が、第1の取引と第2の取引とが同一のユーザによって試みられたか否かを判断することができる。
【0013】
また、上記の装置において、さらに、
前記現金自動取引装置と接続される制御装置と通信するための通信部を備え、
前記制御部は、
前記通信部を介して、前記制御装置に前記第1のユーザ情報と前記第2のユーザ情報とを送信し、
前記制御装置が、前記第1のユーザ情報と前記第2のユーザ情報とに基づいて、前記第1の取引と前記第2の取引とが同一のユーザによって試みられたと判断する場合に、前記通信部を介して、前記制御装置から所定の信号を受信し、
前記制御部は、
前記所定の信号に従って、前記媒体取扱部に前記第2の取引用媒体を回収させるようにしてもよい。
【0014】
こうすれば、制御装置が第1の取引と第2の取引とが同一のユーザによって試みられたか否かを判断するため、現金自動取引装置は判断を行わずに済む。
【0015】
前記ユーザ情報は、ユーザの身体的な特徴に関する情報を含むことが好ましい。前記ユーザの身体的な特徴に関する情報は、ユーザの顔の特徴に関する情報を含んでいてもよい。
【0016】
こうすれば、第1の取引と第2の取引とが同一のユーザによって試みられたか否かを正確に判断することができる。
【0017】
上記の装置において、
前記制御部は、前記媒体取扱部に前記第2の取引用媒体を回収させる際に、前記紙幣取扱部に前記第2の取引において投入された偽券を回収させるようにしてもよい。
【0018】
こうすれば、偽券が繰り返し使用されることを抑制することができる。
【0019】
本発明のシステムは、現金自動取引システムであって、
複数台の現金自動取引装置と、
前記複数台の現金自動取引装置と接続されるホストコンピュータと、
を備え、
前記各現金自動取引装置は、
取引用媒体を取り扱う媒体取扱部と、
紙幣を取り扱う紙幣取扱部であって、前記紙幣取扱部に投入された紙幣の真偽を判断する真偽判断部を備える前記紙幣取扱部と、
ユーザの同一性の判断に利用されるユーザ情報を取得するユーザ情報取得部と、
前記ホストコンピュータと通信する第1の通信部と、
前記現金自動取引装置の動作を制御するための第1の制御部であって、対応する前記真偽判断部によって紙幣が偽券であると判断される場合に、前記第1の通信部を介して、前記ホストコンピュータへ前記ユーザ情報を送信する、前記第1の制御部と、
を備え、
前記ホストコンピュータは、
前記各現金自動取引装置と通信する第2の通信部と、
前記ホストコンピュータの動作を制御するための第2の制御部であって、前記第2の通信部を介して、前記各現金自動取引装置から前記ユーザ情報を受信する、前記第2の制御部と、
を備え、
前記第2の制御部は、
第1の現金自動取引装置において、第1の取引用媒体を用いた第1の取引であって、対応する前記真偽判断部によって投入された紙幣が偽券であると判断された前記第1の取引が試みられたときに、前記第1の現金自動取引装置から受信した前記第1の取引において取得された第1のユーザ情報と、前記第1の取引が試みられた後に、第2の現金自動取引装置において、前記第1の取引用媒体とは異なる第2の取引用媒体を用いた第2の取引であって、対応する前記真偽判断部によって投入された紙幣が偽券であると判断された前記第2の取引が試みられたときに、前記第2の現金自動取引装置から受信した前記第2の取引において取得された第2のユーザ情報と、に基づいて、前記第1の取引と前記第2の取引とが同一のユーザによって試みられたか否かを判断するユーザ判断部を備え、
前記第2の制御部は、
前記ユーザ判断部によって前記第1の取引と前記第2の取引とが同一のユーザによって試みられたと判断された場合に、前記第2の通信部を介して、前記第2の現金自動取引装置に所定の信号を送信し、
前記第2の現金自動取引装置の前記第1の制御部は、
前記第1の通信部を介して、前記ホストコンピュータから受信した前記所定の信号に従って、前記媒体取扱部に前記第2の取引用媒体を回収させることを特徴とする。
【0020】
なお、第1の現金自動取引装置と第2の現金自動取引装置とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
このシステムでは、ユーザ情報に基づいてユーザの同一性が判断されるため、第1および第2の現金自動取引装置において偽券を伴う第1の取引と第2の取引とが異なる取引媒体を用いて試みられる場合にも、第1の取引と第2の取引とが同一のユーザによって試みられたか否かを判断することができる。そして、第1の取引と第2の取引とが同一のユーザによって試みられたと判断される場合には、第2の取引用媒体を回収することができる。この結果、同一のユーザが異なる取引用媒体を用いて偽券を伴う取引を繰り返し試みる行為を抑制することが可能となる。
【0022】
上記のシステムにおいて、
前記各現金自動取引装置の前記第1の制御部は、
対応する前記真偽判断部によって紙幣が偽券であると判断される場合に、前記ユーザ情報と共に、前記媒体取扱部によって前記取引用媒体から読み取られた口座情報を、前記第1の通信部を介して、前記ホストコンピュータへ送信し、
前記第2の制御部は、
前記ユーザ判断部によって前記第1の取引と前記第2の取引とが同一のユーザによって試みられたと判断された場合に、前記第1のユーザ情報に対応する口座情報によって特定される前記第1の取引用媒体を回収対象に設定することが好ましい。
【0023】
こうすれば、第1の取引用媒体がいずれかの現金自動取引装置で使用されるときに、第1の取引用媒体を回収することができる。
【0024】
この発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、現金自動取引装置、現金自動取引装置を備える現金自動取引システム、現金自動取引装置および現金自動取引システムの制御装置および方法、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき以下の順序で説明する。
A.現金自動取引システムの構成:
A−1.全体構成:
A−2.ATMの構成:
A−3.ホストコンピュータの構成:
B.入金処理:
B−1.ATMの処理:
B−2.ホストコンピュータの処理:
C.不正取引の例:
【0026】
A.現金自動取引システムの構成:
A−1.全体構成:
図1は、現金自動取引システム1000の概略構成を示す説明図である。このシステム1000は、3台の現金自動取引装置(以下、単に「ATM」と呼ぶ)100a,100b,100cと、ホストコンピュータ200と、を備えている。3台のATMとホストコンピュータとは、ネットワークNWを介して接続されている。なお、実際には、より多くのATMがホストコンピュータに接続され、各ATMは銀行等に設置される。このシステム1000では、ユーザが任意のATMにおいて任意のキャッシュカードや通帳を用いて偽券の入金を繰り返し試みる場合に、ATMに挿入されたキャッシュカードや通帳を回収することができる。
【0027】
A−2.ATMの構成:
図2は、第1のATM100aの外観を模式的に示す説明図である。図3は、第1のATM100aの内部構成を示す説明図である。なお、他のATM100b,100cについても同様である。
【0028】
図示するように、第1のATM100aは、表示部112と、操作部114と、通帳取扱部120と、カード取扱部130と、紙幣取扱部140と、ユーザ検知部150と、顔データ生成部160と、制御部170と、通信部190と、を備えている。
【0029】
表示部112は、ユーザがATMを操作する際に、ガイダンスを表示するためのインタフェースである。操作部114は、ユーザがATMを操作する際に、ユーザからの入力を受け取るためのインタフェースである。本実施例では、表示部112および操作部114として機能するタッチパネルが利用されている。なお、表示部と操作部とは、それぞれ、ディスプレイと、ボタン等を備える操作盤と、で構成されてもよい。
【0030】
通帳取扱部120は、通帳を取り扱うための機構である。通帳取扱部120は、通帳に付加されたテープ状の磁気メモリに記録された口座データを読み取る。口座データには、金融機関番号、科目、口座番号などが含まれる。また、通帳取扱部120は、通帳に記されたマークの読み取りや、印字処理などを行う。通帳取扱部120は、回収ボックス(図示せず)を備えており、ユーザが偽券の入金を試みたときに通帳を回収することができる。
【0031】
カード取扱部130は、キャッシュカード(以下、単に「カード」と呼ぶ)を取り扱うための機構である。カード取扱部130は、カードに付加されたテープ状の磁気メモリやICチップに記録された口座データを読み取る。この口座データにも、金融機関番号、科目、口座番号などが含まれる。カード取扱部130は、回収ボックス(図示せず)を備えており、ユーザが偽券の入金を試みたときにカードを回収することができる。
【0032】
紙幣取扱部140は、紙幣を取り扱うための機構であり、紙幣入出金口を介して、ユーザから紙幣を受け取ったり、ユーザに紙幣を渡したりする。紙幣取扱部140は、紙幣鑑別部142を備えている。
【0033】
紙幣鑑別部142は、投入された紙幣の種類(金種)を判断する。また、紙幣鑑別部142は、投入された紙幣に偽券が含まれているか否かを判断する。具体的には、まず、投入された紙幣の特徴を示す特徴データが生成される。特徴データは、例えば、紙幣をスキャンして得られる画像データや、磁気特性、紫外線等に対する光学特性、寸法、紙幣表面の凹凸データなどを用いて生成される。次に、生成された特徴データと、予め準備された真券の特徴を示す真券特徴データと、が比較される。そして、投入された紙幣の特徴データが真券特徴データと一致する場合には、投入された紙幣は、真券であると判断される。一方、投入された紙幣の特徴データが真券特徴データと一致しない場合には、投入された紙幣は、偽券であると判断される。ただし、投入された紙幣の特徴データが真券特徴データと一致しない場合であっても、投入された紙幣の特徴データの一部が欠落している場合(例えば紙幣が折れ曲がっている場合)には、偽券であると判断されない。すなわち、本実施例では、偽券の可能性が高い場合に、投入された紙幣が偽券であると判断される。なお、投入された紙幣の特徴データと、過去に使用された偽券の特徴を示す偽券特徴データと、を比較することによって、投入された紙幣の真偽が判断されるようにしてもよい。紙幣取扱部140は、回収ボックス(図示せず)を備えており、投入された紙幣に偽券が含まれると判断された場合には、偽券のみを選択的に回収することができる。
【0034】
ユーザ検知部150(図2)は、ATM付近のユーザの存在を検知するセンサーを備えている。このセンサによって、ユーザの接近および立ち去りが検知される。なお、センサーとしては、例えば、赤外線センサを用いることができる。
【0035】
顔データ生成部160は、撮影部162(図2)と画像処理部164と顔データ格納部166とを備えている。撮影部162は、ATMを利用するユーザの顔を撮影して、ユーザの顔を含む画像データを生成する。なお、撮影部162は、ユーザによってカードや通帳がATM内に挿入されたときに、ユーザの顔を撮影する。画像処理部164は、撮影部162から与えられた画像データに対して、ユーザの顔の特徴を抽出するための画像処理を施し、顔の特徴を示すデータ(以下、「顔データ」と呼ぶ)を生成する。顔データには、例えば、右眼と左眼との間の間隔や、眼・鼻・口の位置関係などが含まれる。生成された顔データは、顔データ格納部166に保存される。
【0036】
通信部190は、ネットワークNWを介して、取引に関する情報を、ホストコンピュータ200に送信したり、ホストコンピュータ200から受信したりする。
【0037】
制御部170は、CPUとメモリとを備えるマイクロコンピュータであり、ATMの各部の動作を制御する。制御部170は、判断部172を備えている。判断部172は、顔データ生成部160によって生成された顔データを利用して、不正な取引(すなわち偽券の入金)を繰り返し試みるユーザが同一人物であるか否かを判断する。具体的には、判断部172は、第1の不正取引の際に取得した第1の顔データと、第2の不正取引の際に取得した第2の顔データと、を比較し、2つの顔データの一致の程度が高い場合に、第1の不正取引を試みたユーザと第2の不正取引を試みたユーザとが同一人物であると判断する。
【0038】
制御部170は、通帳取扱部120やカード取扱部130によって読み取られた口座データを、通信部190を介して、ホストコンピュータ200に送信する。また、制御部170は、ホストコンピュータ200から通信部190を介して受信した情報を利用して、ATMの各部を制御する。特に、本実施例では、制御部170は、紙幣鑑別部142によって偽券が存在すると判断された場合には、偽券が存在することを示す不正取引通知をホストコンピュータ200に送信する。このとき、制御部170は、口座データと顔データとをホストコンピュータ200に送信する。そして、制御部170は、ホストコンピュータから与えられる回収指示に従って、通帳取扱部120やカード取扱部130に通帳やカードを回収させる。
【0039】
A−3.ホストコンピュータの構成:
図4は、ホストコンピュータ200の内部構成を示す説明図である。ホストコンピュータ200は、通信部210と、情報格納部220と、制御部230と、を備えている。
【0040】
通信部210は、ネットワークNWを介して、取引に関する情報を、各ATM100a〜100cに送信したり、各ATM100a〜100cから受信したりする。
【0041】
情報格納部220は、口座管理情報を格納する口座管理情報格納部222と、不正取引情報を格納する不正取引情報格納部224と、を含んでいる。口座管理情報には、金融機関番号や、科目、口座番号、暗証番号、口座の名義(すなわちユーザの名前)、取引履歴、預金残高などが含まれる。不正取引情報には、不正取引(偽券の入金)が試みられた際に使用されたカードや通帳によって特定される口座データと、該不正取引を試みたユーザの顔の特徴を示す顔データと、が含まれる。なお、本実施例では、不正取引情報には、さらに、口座データに対応するカードや通帳の回収に関する回収データ(後述する)が含まれる。なお、口座データと顔データと回収データとは、関連付けて保存されている。
【0042】
制御部230は、CPUとメモリとを備えるマイクロコンピュータであり、ホストコンピュータの各部の動作を制御する。制御部230は、判断部232を備えている。判断部232は、不正取引情報格納部224に格納された顔データと、任意のATMから受け取った顔データと、を比較して、該ATMにおいて不正取引を試みるユーザが過去に不正取引を試みたことがあるか否かを、すなわち、該ATMを操作するユーザが偽券を繰り返し投入しているか否かを判断する。
【0043】
制御部230は、偽券が存在すると判断された場合に、各ATMから通信部210を介して口座データと顔データとを受け取ると、不正取引情報格納部224に保存する。特に、本実施例では、制御部230は、判断部232によって特定のATMにおいて不正取引を試みるユーザが過去に不正取引を試みたことがあると判断されると、該特定のATMにカードや通帳の回収指示を送信する。
【0044】
B.入金処理:
B−1.ATMの処理:
図5,図6は、各ATM100a〜100cにおける入金時の処理手順を示すフローチャートである。なお、この処理は、ユーザが「預け入れ」や「振り込み」、「両替」などの紙幣の入金を要する取引を選択したときに、実行される。本実施例では、カードを用いて取引が行われる場合について説明するが、通帳を用いて取引が行われる場合も同様である。
【0045】
ステップS102(図5)では、ユーザ検知部150は、ユーザがATMに接近したことを検知する。
【0046】
ステップS104では、ユーザによってATM内にカードが挿入される。このとき、カード取扱部130は、挿入されたカードから口座データを読み取る。そして、制御部170は、口座データをホストコンピュータへ送信する。また、ステップS104では、顔データ生成部160はユーザの顔を撮影して顔データを生成し、顔データを保存する。
【0047】
ステップS106では、制御部170は、ホストコンピュータ200から回収指示を受信したか否かを判断する。具体的には、ホストコンピュータは、ATMから受け取った口座データに基づいて、該ATMが取り扱うカードが回収すべきであるにも関わらず未だ回収できていない「回収対象カード」であるか否かを判断する。なお、ATMが取り扱うカードが回収対象カードであるか否かは、後述するように、不正取引情報格納部224に格納された不正取引情報に基づいて判断される。ATMが取り扱うカードが回収対象カードである場合には、制御部170は、ホストコンピュータから回収指示を受信する。
【0048】
ステップS106で回収指示を受信した場合には、ステップS152(図6)に進む。ステップS152では、カード取扱部130はカードを回収する。このとき、制御部170は、カードの回収が完了したことを示す回収完了通知をホストコンピュータに送信する。また、ステップS154では、表示部112はカードを回収したことを示す回収メッセージを表示する。この後、ステップS116(後述する)に進む。
【0049】
一方、ステップS106で回収指示を受信しない場合には、ステップS108に進む。ステップS108では、紙幣取扱部140は、ユーザから紙幣を受け取る。ステップS110では、紙幣鑑別部142は、紙幣の真偽を判断する。
【0050】
ステップS110で偽券が存在すると判断される場合には、すなわち投入された紙幣に偽券が含まれると判断される場合には、ステップS122(図6)に進む。ステップS122以降の処理については後述する。
【0051】
一方、ステップS110で偽券が存在しないと判断される場合には、ステップS112に進む。ステップS112では、通常の取引(入金処理)が行われる。入金処理が終了すると、制御部170は、通常の取引が終了したことを示す取引終了通知をホストコンピュータに送信する。そして、ステップS114では、カード取扱部130は、ユーザにカードを返却する。
【0052】
ステップS116では、ユーザ検知部150は、ユーザがATMから立ち去ったか否かを判断する。具体的には、ユーザの存在が継続して検知される場合には、ユーザがATMから立ち去っていないと判断され、ユーザの存在が継続して検知されない場合には、ユーザがATMから立ち去ったと判断される。
【0053】
ステップS116でユーザがATMから立ち去ったと判断される場合には、ステップS118に進む。ステップS118では、制御部170は、偽券投入回数を示す「CX」をリセットして「0」に設定する。なお、偽券投入回数は、ATMにおいて、ユーザが立ち去ることなく偽券を投入した回数を示す。
【0054】
一方、ステップS116でユーザがATMから立ち去っていないと判断される場合には、ステップS104に戻る。
【0055】
前述したように、ステップS110で偽券が存在すると判断される場合には、ステップS122(図6)に進む。ステップS122では、制御部170は、偽券投入回数「CX」が「0」であるか否かを判断する。「CX」が「0」である場合には、換言すれば、特定のATMにおける今回の不正取引が1回目である場合には、ステップS124に進む。一方、「CX」が「0」でない場合には、換言すれば、特定のATMにおける今回の不正取引が2回目である場合には、ステップS142に進む。ステップS142以降の処理については後述する。
【0056】
ステップS124では、制御部170は、偽券投入回数「CX」に「1」を設定する。また、制御部170は、口座データを示す「ACNTX」にステップS104で取得したカードの口座データを設定する。なお、本実施例では、「ACNTX」に金融機関番号と科目と口座番号とを含む口座データが設定されるが、これに代えて、口座番号のみが設定されるようにしてもよい。
【0057】
ステップS126では、制御部170は、偽券が存在することを示す不正取引通知をホストコンピュータ200に送信する。このとき、制御部170は、ステップS104で取得した口座データと顔データとをホストコンピュータ200に送信する。
【0058】
ステップS128では、制御部170は、ホストコンピュータ200からの回収指示の有無を判断する。具体的には、ホストコンピュータは、ATMから受け取った顔データを用いて、ステップS104で挿入されたカードを回収すべきか否かを、換言すれば、ユーザが不正取引を繰り返し行っているか否かを判断する。ステップS104で挿入されたカードが回収すべきカードである場合には、制御部170は、ホストコンピュータから回収指示を受信する。
【0059】
ステップS128で回収指示を受信する場合には、ステップS150に進む。ステップS150では、紙幣取扱部140は紙幣(偽券)を回収する。ステップS152では、前述したように、カード取扱部130はカードを回収し、制御部170は回収完了通知をホストコンピュータに送信する。そして、ステップS154では、表示部112は回収メッセージを表示する。
【0060】
一方、ステップS128で回収指示を受信しない場合には、ステップS130に進む。ステップS130では、紙幣取扱部140はユーザに紙幣(偽券)を返却する。そして、ステップS132では、カード取扱部130はユーザにカードを返却する。
【0061】
前述したように、ステップS122で、「CX=0」でないと判断される場合には、すなわち、特定のATMにおける今回の不正取引が2回目である場合には、ステップS142に進む。ステップS142では、制御部170は、2回目の不正取引において用いられたカードから読み取られた口座データが、1回目の不正取引において用いられたカードから読み取られた口座データ「ACNTX」と一致するか否かを判断する。
【0062】
ステップS142で口座データが一致すると判断される場合には、換言すれば、前回の不正取引と今回の不正取引とが同じカードを用いて試みられたと判断される場合には、ステップS150,152,S154に進む。ステップS150,152,S154では、前述したように、紙幣(偽券)とカードとが回収され、回収メッセージが表示される。また、回収完了通知がホストコンピュータに送信される。
【0063】
一方、ステップS142で口座データが一致しないと判断される場合には、換言すれば、前回の不正取引と今回の不正取引とが異なるカードを用いて試みられたと判断される場合には、ステップS144に進む。
【0064】
ステップS144では、判断部172は、今回の不正な取引を試みるユーザが、前回の不正な取引を試みたユーザと同一であるか否かを判断する。具体的には、判断部172は、前回の不正取引の際に得られた第1の顔データと、今回の不正取引で得られた第2の顔データと、を比較して、第2の顔データで特定されるユーザが、第1の顔データで特定されるユーザと同一人物であるか否かを判断する。
【0065】
なお、ステップS144の処理は、1台のATMでユーザの存在が継続して検知され、かつ、2回の不正取引が試みられたときに実行される。このため、今回の不正取引を試みるユーザと前回の不正取引を試みたユーザとは、通常、同一人物のはずである。しかしながら、ユーザ検知部150の検知結果が誤りである場合も想定され得る。そこで、本実施例では、判断部172は、顔データを利用して、ユーザの同一性を判断している。これにより、ユーザの同一性を正確に判断することができる。なお、本実施例のように、ユーザの存在が継続して検知される場合に、顔データを利用してユーザの同一性を判断すれば、ユーザの同一性をより正確に判断することができるという利点がある。
【0066】
ステップS144で同一人物でないと判断される場合には、前述のステップS126に進み、前述した処理が実行される。
【0067】
一方、ステップS144で同一人物であると判断される場合には、ステップS146に進む。ステップS146では、制御部170は、カードを回収する旨を示す回収通知をホストコンピュータ200に送信する。このとき、制御部170は、ステップS104で取得した口座データと顔データとをホストコンピュータ200に送信する。その後、ステップS150,152,S154に進み、前述したように、紙幣(偽券)とカードとが回収され、回収メッセージが表示される。また、回収完了通知がホストコンピュータに送信される。
【0068】
B−2.ホストコンピュータの処理:
図7は、ホストコンピュータ200における入金時の処理手順を示すフローチャートである。
【0069】
ステップS202では、制御部230は、特定のATMから口座データを受信する。なお、ステップS202の処理は、図5のステップS104の処理に対応する。
【0070】
ステップS204では、判断部232は、不正取引情報を参照して、特定のATMが取り扱うカードが回収すべきであるにも関わらず未だ回収できていない「回収対象カード」に設定されているか否かを判断する。
【0071】
ステップS204において特定のATMが取り扱うカードが回収対象カードであると判断される場合には、ステップS206に進む。ステップS206では、制御部230は、特定のATMに対して、回収指示を送信する。なお、ステップS206の処理は、図5のステップS106の処理に対応する。その後、ステップS230(後述する)に進む。
【0072】
一方、ステップS204において特定のATMが取り扱うカードが回収対象カードでないと判断される場合には、ステップS212に進む。
【0073】
ステップS212では、制御部230は、特定のATMから取引終了通知を受信したか否かを判断する。なお、ステップS212の処理は、ステップS112の処理に対応する。取引終了通知を受信した場合には、図7の処理は完了する。
【0074】
ステップS213では、制御部230は、特定のATMから回収通知を受信したか否かを判断する。なお、ステップS213の処理は、図6のステップS146の処理に対応する。回収通知を受信しない場合には、ステップS214に進む。一方、回収通知を受信した場合には、ステップS230(後述する)に進む。
【0075】
ステップS214では、制御部230は、特定のATMから不正取引通知を受信したか否かを判断する。なお、ステップS214の処理は、図6のステップS126の処理に対応する。不正取引通知を受信しない場合には、ステップS212に戻る。一方、不正取引通知を受信した場合には、ステップS218に進む。
【0076】
ステップS218では、判断部232は、今回の不正取引を試みるユーザと過去に不正取引を試みたユーザとが同一人物であるか否かを判断する。具体的には、判断部232は、特定のATMから不正取引通知と共に受信した顔データと、不正取引情報格納部224に既に格納されている1以上の他の顔データと、を比較して、受信した顔データで特定されるユーザが、他の顔データで特定されるユーザと同一人物であるか否かを判断する。
【0077】
ステップS218で同一人物でないと判断された場合には、ステップS230(後述する)に進む。一方、ステップS218で同一人物であると判断された場合には、ステップS220に進む。ステップS220では、制御部230は、回収指示を特定のATMに対して送信する。なお、ステップS220の処理は、図6のステップS128の処理に対応する。その後、ステップS230に進む。
【0078】
ステップS230では、制御部230は、不正取引情報格納部224に格納された不正取引情報を更新する。例えば、制御部230は、特定のATMから受け取った口座データと顔データとを不正取引情報に追加する。また、制御部230は、カードに関する回収データを変更する。特に、制御部230は、同一人物によって過去に使用された他のカードが未だ回収されていない場合には、該カードに対応する回収データを変更して、該カードを回収対象カードに設定する。具体的には、ステップS220の回収指示によって、今回の不正取引の際に用いられたカードは回収されるが、今回の不正取引の際に用いられたカードと過去の不正取引の際に用いられたカードとが異なる場合には、過去の不正取引の際に用いられた他のカードが未だ回収されていないこともある。このため、ステップS230では、未だ回収されていない他のカードが回収対象カードに設定される。これにより、未回収の回収対象カードが今後いずれかのATMで使用される場合に、回収対象カードを回収することができる(ステップS204,S106参照)。
【0079】
本実施例の現金自動取引システムは、上記の処理を実行することによって、同一のユーザが任意のATMにおいて任意のカードを用いて不正取引を繰り返し試みる場合に、後の不正取引で使用されるカードを回収することができる。
【0080】
C.不正取引の例:
図8は、不正取引の例を示す説明図である。この例では、ユーザAは以下のように不正取引を4回試みる。なお、この例では、ユーザAは、不正取引を初めて試みると仮定している。
(a)1回目の不正取引:ユーザAは、第1のATM100aにおいて第1のカードC1を用いて偽券の入金を試みる。
(b)2回目の不正取引:ユーザAは、第1のATM100aから立ち去らずに、第2のカードC2を用いて偽券の入金を試みる。
(c)3回目の不正取引:ユーザAは、第2のATM100bにおいて第1のカードC1を用いて偽券の入金を試みる。
(d)4回目の不正取引:ユーザAは、第3のATM100cにおいて第3のカードC3を用いて偽券の入金を試みる。
【0081】
図9は、不正取引情報格納部224に格納された不正取引情報の内容を示す説明図である。図9(A)〜(D)は、それぞれ1回目〜4回目の不正取引が終了したときの不正取引情報の内容を示している。
【0082】
(a)1回目の不正取引:
ユーザAが第1のATMに近づくと、ユーザAの接近が検知される(ステップS102)。そして、ユーザAが第1のATMに第1のカードC1を挿入すると、第1のカードC1から口座データが読み取られてホストコンピュータに送信されると共に、ユーザAの顔データが取得されて第1のATM内に格納される(ステップS104,S202)。この時点では、第1のカードC1は、過去に不正取引に使用されておらず、回収対象カードに設定されていない。このため、第1のATMは回収指示を受信しない(ステップS204,S106)。ユーザAが第1のATMに偽券を投入すると、偽券が存在すると判断される(ステップS108,S110)。
【0083】
第1のATMにおけるユーザAによる偽券の投入は1回目であるため、「CX=0」であると判断される(ステップS122)。このとき、「CX」が「1」に設定されると共に、「ACNTX」が第1のカードC1の口座データに設定される(ステップS124)。そして、第1のATMは、不正取引通知をホストコンピュータに送信すると共に、口座データと顔データとをホストコンピュータに送信する(ステップS126,S214)。ユーザAは初めて不正取引を試みており、この時点で、不正取引情報格納部224には、ユーザAの顔データと一致する他の顔データは格納されていない。このため、ユーザAは過去に不正取引を試みた人物と同一人物でないと判断され、第1のATMは、ホストコンピュータから回収指示を受信しない(ステップS218,S128)。そして、ユーザAに、紙幣(偽券)と第1のカードC1とが返却される(ステップS130,S132)。
【0084】
1回目の不正取引では、ホストコンピュータは、図9(A)に示すように、不正取引情報格納部224に、カードC1に対応する口座データ「ACNT1」と、ユーザAの顔データ「IM1」と、を登録する(ステップS230)。
【0085】
(b)2回目の不正取引:
ユーザAは、第1のATMから立ち去らずに、第1のカードC1とは異なる第2のカードC2を用いて偽券の入金を試みる。このため、ユーザの立ち去りは検知されない(ステップS116)。ユーザAが第1のATMに第2のカードC2を挿入すると、第2のカードC2から口座データが読み取られてホストコンピュータに送信されると共に、ユーザAの顔データが取得されて第1のATM内に格納される(ステップS104,S202)。第2のカードC2は、過去に不正取引に使用されておらず、回収対象カードに設定されていない。このため、第1のATMは回収指示を受信しない(ステップS204,S106)。ユーザAが第1のATMに偽券を投入すると、偽券が存在すると判断される(ステップS108,S110)。
【0086】
第1のATMにおけるユーザAによる偽券の投入は2回目であり、前述したように、「CX」は「1」に設定されている。このため、「CX=0」でないと判断される(ステップS122)。2回目の不正取引で使用された第2のカードC2は、1回目の不正取引で使用された第1のカードC1と異なる。このため、「ACNTX」(1回目の不正取引で使用された第1のカードC1の口座データが設定されている)は、2回目の不正取引で使用された第2のカードC2の口座データと一致しないと判断される(ステップS142)。ただし、2回目の不正取引を試みるユーザAと、1回目の不正取引を試みたユーザAとは、同一人物である。このため、第1のATMは、2回目の不正取引で得られたユーザAの顔データと、1回目の不正取引で得られた顔データと、を比較して、2回目の不正取引を試みるユーザAが1回目の不正取引を試みたユーザと同一人物であると判断する(ステップS144)。第1のATMは、回収通知をホストコンピュータに送信すると共に、第2のカードから読み取られた口座データと顔データとをホストコンピュータに送信する(ステップS146)。そして、第1のATMによって、紙幣(偽券)と第2のカードC2とが回収されると共に、回収メッセージが表示される(ステップS150,S152,S154)。また、第1のATMは、第2のカードC2の回収完了通知をホストコンピュータに送信する(ステップS152)。
【0087】
2回目の不正取引において、ホストコンピュータは、図9(B)に示すように、不正取引情報格納部224に、第2のカードC2に対応する口座データ「ACNT2」と、ユーザAの顔データ「IM2」と、を登録すると共に、第2のカードC2を回収済みに設定する(ステップS230)。また、ホストコンピュータは、顔データ「IM2」と既に登録された他の顔データとを比較して、顔データ「IM2」に対応するユーザAが、顔データ「IM1」に対応するユーザと同一人物であると判断する。そして、ホストコンピュータは、図9(B)に示すように、第1のカードC1を回収すべき回収対象カードに設定する(ステップS230)。
【0088】
上記のように、ユーザAが第1のATMにおいて異なるカードC1,C2を用いた不正取引を2回試みると、2回目の不正取引で使用された第2のカードC2が回収される。1回目の不正取引と2回目の不正取引とは、同じ第1のATMにおいて試みられているため、ユーザの同一性は第1のATMによって判断されている。すなわち、第1のATMは、ホストコンピュータからの回収指示無しで、後の不正取引で使用された第2のカードC2を回収することができる。
【0089】
(c)3回目の不正取引:
次に、ユーザAは、第1のATMから立ち去って、第2のATMにおいて第1のカードC1を用いて偽券の入金を試みる。ユーザAが第2のATMに近づくと、ユーザの接近が検知される(ステップS102)。そして、ユーザAが第1のカードC1を第2のATMに挿入すると、第1のカードC1から口座データが読み取られてホストコンピュータに送信されると共に、ユーザAの顔データが取得されて第2のATM内に格納される(ステップS104,S202)。この時点で、第1のカードC1は回収対象カードとして設定されているため、第2のATMは、回収指示を受信する(ステップS204,S206,S106)。そして、第2のATMによって、第1のカードC1が回収され、回収メッセージが表示される(ステップS152,S154)。また、第2のATMは、第1のカードC1を回収完了通知をホストコンピュータに送信する(ステップS152)。
【0090】
3回目の不正取引において、ホストコンピュータは、図9(C)に示すように、第1のカードC1を回収済みに設定する(ステップS230)。
【0091】
上記のように、予め回収対象カードを設定しておけば、顔データを利用したユーザの同一性の判断を実行せずに、1回目の不正取引で使用された第1のカードを回収することができる。
【0092】
(d)4回目の不正取引:
最後に、ユーザAは、第2のATMから立ち去って、第3のATMにおいて第3のカードC3を用いて偽券の入金を試みる。ユーザAが第3のATMに近づくと、ユーザの接近が検知される(ステップS102)。そして、ユーザAが第3のカードC3を第3のATMに挿入すると、カードC3から口座データが読み取られてホストコンピュータに送信されると共に、ユーザAの顔データが取得されて第3のATM内に格納される(ステップS104,S202)。第3のカードC3は過去に不正取引に使用されておらず、回収対象カードに設定されていない。このため、第3のATMは、回収指示を受信しない(ステップS204,S106)。ユーザAが第3のATMに偽券を投入すると、偽券が存在すると判断される(ステップS108,S110)。
【0093】
第3のATMにおけるユーザAによる偽券の投入は1回目であるため、「CX=0」であると判断される(ステップS122)。このとき、「CX」に「1」が設定されると共に、「ACNTX」に第3のカードC3の口座データが設定される(ステップS124)。そして、第3のATMは、不正取引通知をホストコンピュータに送信すると共に、口座データと顔データとをホストコンピュータに送信する(ステップS126,S214,S216)。不正取引情報格納部224には、ユーザAの顔データと一致する他の顔データが既に格納されている。このため、ホストコンピュータは、受け取ったユーザAの顔データと、不正取引情報格納部224に格納された他の顔データと、を比較して、今回の不正取引を試みるユーザAが過去に不正取引を試みたユーザと同一人物であると判断する(ステップS218)。第3のATMはホストコンピュータから回収指示を受信する(ステップS220,S128)。そして、第3のATMによって、紙幣(偽券)とカードC2とが回収されると共に、回収メッセージが表示される(ステップS150,S152,S154)。また、第3のATMは、第3のカードC3の回収完了通知をホストコンピュータに送信する(ステップS152)。
【0094】
4回目の不正取引において、ホストコンピュータは、図9(D)に示すように、不正取引情報格納部224に、第3のカードC3に対応する口座データ「ACNT3」と、ユーザAの顔データ「IM3」と、を登録すると共に、第3のカードC3を回収済みに設定する(ステップS230)。
【0095】
上記のように、ユーザAが第1のATMにおいて第1のカードC1を用いた1回目の不正取引を試みた後に、ユーザAが第3のATMにおいて第3のカードを用いた4回目の不正取引を試みると、4回目の不正取引で使用された第3のカードC3が回収される。1回目の不正取引と4回目の不正取引とは、異なるATMにおいて試みられているため、ユーザの同一性はホストコンピュータによって判断されている。すなわち、ホストコンピュータがユーザの同一性を判断すれば、ユーザAが異なるATMにおいて異なるカードを用いて不正取引を繰り返し試みる場合にも、後の不正取引で使用された第3のカードC3を回収することができる。
【0096】
以上説明したように、本実施例では、同一のユーザが任意のATMにおいて任意のカードを用いて不正取引を繰り返し試みる場合に、後の不正取引で使用されたカードを回収することができる。特に、同一のユーザが1台のATMにおいて異なるカードを用いて不正取引を繰り返し試みる場合には、該ATMが顔データを利用してユーザの同一性を判断することによって、後の不正取引で使用されたカードが回収される。また、同一のユーザが異なるATMにおいて異なるカードを用いて不正取引を試みる場合には、ホストコンピュータが顔データを利用してユーザの同一性を判断することによって、後の不正取引で使用されたカードが回収される。この結果、同じユーザが異なるカードを用いて不正取引を繰り返し試みる行為を効率よく抑制することができる。
【0097】
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0098】
(1)上記実施例では、ATMは、ユーザの顔の特徴に関する情報(顔データ)を取得しているが、これに代えて、ユーザの指紋の特徴に関する情報が取得されるようにしてもよい。このように、ユーザに固有の身体的特徴に関する情報が取得されれば、ユーザの同一性を正確に判断することができるという利点がある。
【0099】
また、ATMは、ユーザに固有の身体的特徴に関する情報に代えて、カードに対応する口座の名義(ユーザの名前)を取得してもよい。例えば、ATMは、ステップS104(図5)において、第1のカードに対応する口座の名義と、第2のカードに対応する口座の名義と、をホストコンピュータから取得し、ステップS144(図6)において、2つのカードに対応する2つの口座の名義が一致する場合に、2つのカードを用いるユーザを同一人物であると判断すればよい。このように、口座の名義が取得されれば、顔データが取得される場合と比較して、ユーザの同一性を容易に判断することができるという利点がある。
【0100】
一般には、ユーザの同一性の判断に利用可能なユーザ情報が取得されればよい。
【0101】
(2)上記実施例では、1台のATMにおいて異なるカードを用いて不正取引が繰り返し試みられる場合には、該1台のATMがユーザの同一性を判断しているが、これに代えて、ホストコンピュータがユーザの同一性を判断するようにしてもよい。こうすれば、ATMはユーザの同一性の判断を行わずに済む。
【0102】
(3)上記実施例では、ホストコンピュータが、顔データを利用して、回収すべき未回収のカードを検索し、該カードを回収対象カードに設定しているが、これに代えて、ATMがホストコンピュータへ特定のカードを回収対象カードに設定するように要求してもよい。例えば、前述の不正取引の例(図8)において、第1のATMが、2回目の不正取引が試みられたときに使用された第2のカードC2を回収する際に、第1のATMがホストコンピュータに対して1回目の不正取引が試みられたときに使用された第1のカードC1を回収対象カードに設定するように要求すればよい。こうすれば、ホストコンピュータは、顔データを利用して、回収すべき未回収の第1のカードC1を検索せずに済む。
【0103】
(4)上記実施例では、カードが回収される際には偽券も回収されているが、これに代えて、カードのみが回収されるようにしてもよい。ただし、偽券を回収すれば、該偽券が繰り返し使用されることを抑制することができるという利点がある。
【0104】
(5)上記実施例では、不正取引が繰り返し行われた際にカードが回収されているが、これと共に、カードに対応する口座の利用が禁止されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】現金自動取引システム1000の概略構成を示す説明図である。
【図2】第1のATM100aの外観を模式的に示す図である。
【図3】第1のATM100aの内部構成を示す説明図である。
【図4】ホストコンピュータ200の内部構成を示す説明図である。
【図5】各ATM100a〜100cにおける入金時の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】各ATM100a〜100cにおける入金時の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】ホストコンピュータ200における入金時の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】不正取引の例を示す説明図である。
【図9】不正取引情報格納部224に格納された不正取引情報の内容を示す説明図である。
【符号の説明】
【0106】
1000…現金自動取引システム
100a,100b,100c…ATM
112…表示部
114…操作部
120…通帳取扱部
130…カード取扱部
140…紙幣取扱部
142…紙幣鑑別部
150…ユーザ検知部
160…顔データ生成部
162…撮影部
164…画像処理部
166…顔データ格納部
170…制御部
172…判断部
190…通信部
200…ホストコンピュータ
210…通信部
220…情報格納部
222…口座管理情報格納部
224…不正取引情報格納部
230…制御部
232…判断部
NW…ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現金自動取引装置であって、
取引用媒体を取り扱う媒体取扱部と、
紙幣を取り扱う紙幣取扱部であって、前記紙幣取扱部に投入された紙幣の真偽を判断する真偽判断部を備える前記紙幣取扱部と、
ユーザの同一性の判断に利用されるユーザ情報を取得するユーザ情報取得部と、
前記現金自動取引装置の動作を制御するための制御部と、
を備え、
前記制御部は、
第1の取引用媒体を用いた第1の取引であって、前記真偽判断部によって投入された紙幣が偽券であると判断された前記第1の取引が試みられた後に、前記第1の取引用媒体とは異なる第2の取引用媒体を用いた第2の取引であって、前記真偽判断部によって投入された紙幣が偽券であると判断された前記第2の取引が試みられる場合に、前記第1の取引において取得された第1のユーザ情報と、前記第2の取引において取得された第2のユーザ情報と、に基づいて、前記第1の取引と前記第2の取引とが同一のユーザによって試みられたと判断されることを条件に、前記媒体取扱部に前記第2の取引用媒体を回収させることを特徴とする現金自動取引装置。
【請求項2】
請求項1記載の現金自動取引装置であって、さらに、
ユーザの存在を検知するための検知部を備え、
前記制御部は、
前記第1の取引と前記第2の取引とが試みられる前記場合において、さらに、前記検知部によって、前記第1の取引と前記第2の取引とが試みられる際にユーザの存在が継続して検知されることを条件に、前記媒体取扱部に前記第2の取引用媒体を回収させる、現金自動取引装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の現金自動取引装置であって、
前記制御部は、
前記第1のユーザ情報と前記第2のユーザ情報とに基づいて、前記第1の取引と前記第2の取引とが同一のユーザによって試みられたか否かを判断するユーザ判断部を備える、現金自動取引装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の現金自動取引装置であって、さらに、
前記現金自動取引装置と接続される制御装置と通信するための通信部を備え、
前記制御部は、
前記通信部を介して、前記制御装置に前記第1のユーザ情報と前記第2のユーザ情報とを送信し、
前記制御装置が、前記第1のユーザ情報と前記第2のユーザ情報とに基づいて、前記第1の取引と前記第2の取引とが同一のユーザによって試みられたと判断する場合に、前記通信部を介して、前記制御装置から所定の信号を受信し、
前記制御部は、
前記所定の信号に従って、前記媒体取扱部に前記第2の取引用媒体を回収させる、現金自動取引装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の現金自動取引装置であって、
前記ユーザ情報は、ユーザの身体的な特徴に関する情報を含む、現金自動取引装置。
【請求項6】
請求項5記載の現金自動取引装置であって、
前記ユーザの身体的な特徴に関する情報は、ユーザの顔の特徴に関する情報を含む、現金自動取引装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の現金自動取引装置であって、
前記制御部は、前記媒体取扱部に前記第2の取引用媒体を回収させる際に、前記紙幣取扱部に前記第2の取引において投入された偽券を回収させる、現金自動取引装置。
【請求項8】
現金自動取引システムであって、
複数台の現金自動取引装置と、
前記複数台の現金自動取引装置と接続されるホストコンピュータと、
を備え、
前記各現金自動取引装置は、
取引用媒体を取り扱う媒体取扱部と、
紙幣を取り扱う紙幣取扱部であって、前記紙幣取扱部に投入された紙幣の真偽を判断する真偽判断部を備える前記紙幣取扱部と、
ユーザの同一性の判断に利用されるユーザ情報を取得するユーザ情報取得部と、
前記ホストコンピュータと通信する第1の通信部と、
前記現金自動取引装置の動作を制御するための第1の制御部であって、対応する前記真偽判断部によって紙幣が偽券であると判断される場合に、前記第1の通信部を介して、前記ホストコンピュータへ前記ユーザ情報を送信する、前記第1の制御部と、
を備え、
前記ホストコンピュータは、
前記各現金自動取引装置と通信する第2の通信部と、
前記ホストコンピュータの動作を制御するための第2の制御部であって、前記第2の通信部を介して、前記各現金自動取引装置から前記ユーザ情報を受信する、前記第2の制御部と、
を備え、
前記第2の制御部は、
第1の現金自動取引装置において、第1の取引用媒体を用いた第1の取引であって、対応する前記真偽判断部によって投入された紙幣が偽券であると判断された前記第1の取引が試みられたときに、前記第1の現金自動取引装置から受信した前記第1の取引において取得された第1のユーザ情報と、前記第1の取引が試みられた後に、第2の現金自動取引装置において、前記第1の取引用媒体とは異なる第2の取引用媒体を用いた第2の取引であって、対応する前記真偽判断部によって投入された紙幣が偽券であると判断された前記第2の取引が試みられたときに、前記第2の現金自動取引装置から受信した前記第2の取引において取得された第2のユーザ情報と、に基づいて、前記第1の取引と前記第2の取引とが同一のユーザによって試みられたか否かを判断するユーザ判断部を備え、
前記第2の制御部は、
前記ユーザ判断部によって前記第1の取引と前記第2の取引とが同一のユーザによって試みられたと判断された場合に、前記第2の通信部を介して、前記第2の現金自動取引装置に所定の信号を送信し、
前記第2の現金自動取引装置の前記第1の制御部は、
前記第1の通信部を介して、前記ホストコンピュータから受信した前記所定の信号に従って、前記媒体取扱部に前記第2の取引用媒体を回収させることを特徴とする現金自動取引システム。
【請求項9】
請求項8記載の現金自動取引システムであって、
前記各現金自動取引装置の前記第1の制御部は、
対応する前記真偽判断部によって紙幣が偽券であると判断される場合に、前記ユーザ情報と共に、前記媒体取扱部によって前記取引用媒体から読み取られた口座情報を、前記第1の通信部を介して、前記ホストコンピュータへ送信し、
前記第2の制御部は、
前記ユーザ判断部によって前記第1の取引と前記第2の取引とが同一のユーザによって試みられたと判断された場合に、前記第1のユーザ情報に対応する口座情報によって特定される前記第1の取引用媒体を回収対象に設定する、現金自動取引システム。
【請求項10】
取引用媒体を取り扱う媒体取扱部と、紙幣を取り扱う紙幣取扱部であって、前記紙幣取扱部に投入された紙幣の真偽を判断する真偽判断部を備える前記紙幣取扱部と、ユーザの同一性の判断に利用されるユーザ情報を取得するユーザ情報取得部と、を備える前記現金自動取引装置の制御方法であって、
第1の取引用媒体を用いた第1の取引であって、前記真偽判断部によって投入された紙幣が偽券であると判断された前記第1の取引が試みられた後に、前記第1の取引用媒体とは異なる第2の取引用媒体を用いた第2の取引であって、前記真偽判断部によって投入された紙幣が偽券であると判断された前記第2の取引が試みられる場合に、前記第1の取引において取得された第1のユーザ情報と、前記第2の取引において取得された第2のユーザ情報と、に基づいて、前記第1の取引と前記第2の取引とが同一のユーザによって試みられたと判断されることを条件に、前記媒体取扱部に前記第2の取引用媒体を回収させることを特徴とする制御方法。
【請求項11】
複数台の現金自動取引装置と、前記複数台の現金自動取引装置と接続されるホストコンピュータと、を備える現金自動取引システムであって、前記各現金自動取引装置は、取引用媒体を取り扱う媒体取扱部と、紙幣を取り扱う紙幣取扱部であって、前記紙幣取扱部に投入された紙幣の真偽を判断する真偽判断部を備える前記紙幣取扱部と、ユーザの同一性の判断に利用されるユーザ情報を取得するユーザ情報取得部と、を備える、前記現金自動取引システムの制御方法であって、
(a)第1の現金自動取引装置において、第1の取引用媒体を用いた第1の取引であって、対応する前記真偽判断部によって投入された紙幣が偽券であると判断された前記第1の取引が試みられた場合に、第1の現金自動取引装置が、前記ホストコンピュータへ前記第1の取引おいて取得された第1のユーザ情報を送信する工程と、
(b)前記第1の取引が試みられた後に、第2の現金自動取引装置において、前記第1の取引用媒体とは異なる第2の取引用媒体を用いた第2の取引であって、対応する前記真偽判断部によって投入された紙幣が偽券であると判断された前記第2の取引が試みられた場合に、第2の現金自動取引装置が、前記ホストコンピュータへ前記第2の取引おいて取得された第1のユーザ情報を送信する工程と、
(c)前記ホストコンピュータが、前記第1のユーザ情報と前記第2のユーザ情報とに基づいて、前記第1の取引と前記第2の取引とが同一のユーザによって試みられたか否かを判断する工程と、
(d)前記ホストコンピュータが、前記工程(c)において前記第1の取引と前記第2の取引とが同一のユーザによって試みられたと判断された場合に、前記第2の現金自動取引装置に所定の信号を送信する工程と、
(e)前記第2の現金自動取引装置が、前記所定の信号に従って、前記媒体取扱部に前記第2の取引用媒体を回収させる工程と、
を備えることを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−209163(P2006−209163A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16209(P2005−16209)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】