説明

球体選別ユニットと球体選別機

【課題】球体を寸法管理がなされた選別隙間に通し、その選別隙間を通過するか否かで外径が規定値未満の球体と規定値以上の球体を選別する球体選別機の選別処理能力を向上させることを課題としている。
【解決手段】所定長さの第1部材1と第2部材2を平行に配置し、両部材間に寸法wの選別隙間5と両端間に高低差が生じるように傾斜した球体転動溝6を形成し、第1部材1に選別隙間5よりも孔径の大きい球体排出孔4を第1部材の長さ方向に所定の間隔をあけて複数設け、球体転動溝6に選別対象の球体Bを導入し、選別隙間5よりも外径の小さい球体を選別隙間5から流出させ、外径の大きい球体を球体排出孔4から取り出すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、量産される球体の中から外径寸法が寸法公差から外れた球体を選別して取り除く球体選別ユニットと、それを用いて高能率選別処理を可能ならしめた球体選別機に関する。
【背景技術】
【0002】
首記の球体選別機の従来技術として、下記特許文献1などに開示されたものがある。同文献に開示された選別機は、2本の選別ローラを、各選別ローラの両端間に高低差が生じるように傾斜させて配置し、その2本の選別ローラ間に高さの低い側(この発明ではこれを下流側という)に向って間隔が広がるテーパの選別隙間を設けており、2本の選別ローラ間に生じた球体転動溝に選別対象の球体を導入する。
その球体は、球体転動溝内を転がり降り、前記テーパ隙間の大きさが球体の外径と適合した位置で選別隙間を通り抜けてサイズ毎に区分された受け皿に収納される。
【0003】
この選別機を用いると、外径が寸法公差の下限値に満たない球体、寸法公差の上限値を超えた球体(いづれも不良品)、寸法公差内に収まっている球体(良品)の各落下点に位置的なずれが生じ、それを利用して不良品の高精度選別処理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平8−15690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の球体選別機は、選別対象の球体を一列に整列した状態で球体転動溝に流すので、選別処理能力に限界があり、選別処理能力の向上、それによる選別処理時間短縮の要求に応えることができなかった。
【0006】
この発明は、その問題を解決して球体選別機の大幅な選別処理能力の向上、選別処理時間の短縮を可能にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、この発明においては、外径の異なる球体を選別する選別ユニットを以下の通りに構成した。
所定長さの第1部材と第2部材を平行に配置し、その第1部材と第2部材間に所定寸法の選別隙間と、水平面に対して所要角度傾いて両端間に高低差がついた下すぼみの球体転動溝(選別隙間の入口側に配置される断面V字状の空間)を形成し、
前記第1部材に、球体転動溝を第1部材の長さ方向に分ける、前記選別隙間よりも孔径の大きい球体排出孔を第1部材の長さ方向に所定の間隔をあけて複数設け、前記球体転動溝に選別対象の球体を導入し、前記選別隙間よりも外径の小さい球体を前記選別隙間から流出させ、前記選別隙間よりも外径の大きい球体を前記球体排出孔から取り出すようにした。
【0008】
この球体選別ユニットを用いて下記の球体選別機を構成する。
その球体選別機は、各々が上記した球体選別ユニットで構成された第1選別部及び第2選別部と、球体排出孔によって複数に区画された第1選別部の各球体転動溝にそれぞれ選別対象の球体を個別に導入する複数の球体投入部と、前記第1選別部で選別処理された球体を前記第2選別部に案内する誘導路とからなり、
前記1選別部の選別隙と第2選別部の選別隙間のどちらか一方が寸法公差上限値に、他方が寸法公差下限値にそれぞれ設定されているものにする。この発明は、その球体選別機も提供する。なお、ここで云う第1選別部で選別処理された球体とは、外径寸法が公差内にある良品が含まれた方の球体を指す。
【0009】
この球体選別機の好ましい構成を以下に列挙する。
(1)第1選別部の選別隙間を寸法公差上限値に、第2選別部の選別隙間を寸法公差下限値にそれぞれ設定し、第1選別部の選別隙間を通過した球体を第2選別部に導入するようにしたもの。
(2)第2選別部を第1選別部の斜め下方に配置し、その第2選別部と第1選別部との間に斜面の上面を有するガイド部材を設置し、そのガイド部材の上面に、第1選別部の選別隙間を通過した球体を導入して転動させる所定の勾配を有したガイド溝を設け、そのガイド溝で前記誘導路を形成したもの。
(3)前記ガイド溝を、水平面に対して傾く方向と、第1選別部の下流側からそれに対応した位置(選別部中心からの球体転動溝の長さ方向の距離が等しい位置)よりも第2選別部の上流側に向う方向の2方向に傾斜させたもの。
(4)第1選別部の下方に第1選別部の選別隙間を通過した球体を受け入れる出口を絞ったダクトを設け、そのダクトの内部通路で前記誘導路を形成して第1選別部の選別隙間を通過した球体を前記第2選別部に案内するようにしたもの。
(5)第1選別部と第2選別部の各第2部材をそれぞれローラ(この発明でも選別ローラという)で構成し、その選別ローラで構成された第1、第2選別部の各第2部材を選別中に駆動装置で駆動して回転させるようにしたもの。さらに好ましくは、回転数を制御できる回転数可変のローラを用いたもの。
(6)第1選別部と第2選別部の球体転動溝の傾斜角を可変とし、角度調整機構を設けてその傾斜角の調整を可能にしたもの。
【発明の効果】
【0010】
この発明の球体選別ユニットは、選別隙間と傾斜した球体転動溝を間に作り出す第1部材と第2部材との間に、選別隙間よりも孔径の大きい球体排出孔を第1部材の長さ方向に所定の間隔をあけて複数設けており、その複数の球体排出孔によって球体転動溝の転動面が長さ方向に分断され、球体転動溝の各部が球体排出孔を境にして個別に区画された状態になっている。この構造によれば、球体転動溝の各区画領域において同時に別々に並行して選別処理を行うこと(複数個所での同時選別処理)が可能であり、選別処理能力を向上させることができる。
【0011】
また、かかる球体選別ユニットで選別できる球体は、寸法公差の下限値よりも外径の小さい球体又は寸法公差の上限値よりも外径の大きい球体のどちらかに限定されるが、この球体選別ユニットを2基組み合わせて用いたこの発明の球体選別機は、第1、第2のどちらか一方の選別部で寸法公差上限値よりも外径の大きい球体が、他方の選別部で寸法公差下限値よりも外径の小さい球体がそれぞれ除去され、不良球体の選別除去が1回の作業で完了して処理能力がさらに向上する。
【0012】
なお、量産された球体は、一般的に、良品の数に比べて不良品の数が極端に少ないので、一般的なケースでは、第1選別部の選別隙間を寸法公差上限値に設定するのが望ましい。選別隙間から流出させる一定時間当たりの球体の数は、第1部材に設けた球体排出孔から排出できる球体の数に比べて格段に多くし得るので、絶対数の多い良品が含まれている球体を選別隙間に通した方が有利であり、選別処理時間を短縮できる。
【0013】
上記において好ましいとしたその他の構成についての作用・効果は、実施の形態の項で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の球体選別ユニットの一例を示す斜視図
【図2】図1の球体選別ユニットの横断断面図
【図3】図1の球体選別ユニットを2基用いて構成したこの発明の球体選別機の一例を示す斜視図
【図4】図3の球体選別機の横断断面図
【図5】この発明の球体選別機の他の例を示す斜視図
【図6】図5の球体選別機のダクトの内部通路(誘導路)を示す縦断断面図
【図7】この発明の球体選別機のさらに他の例を示す正面図
【図8】図7の球体選別機の側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面の図1〜図8に基づいて、この発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1及び図2に、この発明の球体選別ユニットの一例を示す。この球体選別ユニット7は、所定長さの第1部材1と回転駆動用の駆動装置3を伴った第2部材2を平行に配置して構成されている。第1部材1は、矩形断面のブランク材のコーナの1箇所に斜面1aを形成し、さらに、その斜面1aが側面と交差した位置に複数の球体排出孔4を第1部材1の長さ方向に一定間隔をあけて設けており、斜面1aが第2部材2の表面に沿う側、かつ、上側になるようにこの第1部材1を第2部材2に寄り添わせている。
【0017】
第2部材2は選別ローラで構成し、この第2部材2を第1部材1の斜面1a側の側面と対面する側に配置し、この第2部材2と第1部材1との間に、寸法wを所定値に設定した選別隙間5と、その選別隙間5の入口側に位置させる下すぼみの球体転動溝(図1におけるV字状の空間)6を形成している。第1部材1と第2部材2は、それぞれの部材の長さ方向両端間に高低差が生じるように水平面基準で角度α傾斜させており、そのために、球体転動溝6も同方向に同じ角度で傾斜している。この球体転動溝6に選別対象の球体を導入し、選別隙間5を通過できない大きさの球体Bを、傾斜を利用して転がして球体排出孔4に落とし込む。
【0018】
第1部材1と第2部材2間に生じさせた選別隙間5は、その寸法w(図2参照)が選別される球体Bの外径の寸法公差上限値又は寸法公差下限値に設定される。また、第1部材1に設けた球体排出孔4は、その孔径が選別隙間5よりも大に設定される。その孔径は、想定される最大外径の球体Bを楽に通過させ得る大きさ(例えば、球体外径の2倍程度)にしている。
【0019】
第1部材1と第2部材2は、両端を支持部材(図示せず)で支持する。また、例示の球体選別ユニット7は、選別ローラで構成された第2部材2を選別処理時に駆動装置(図のそれは減速機付きモータ)3で駆動して回転させる。その第2部材2の回転により、球体転動溝6に導入された球体Bの転動が助勢され、球体Bが球体転動溝6の下流側に向けてスムーズに流れる。このときの第2部材2の回転の方向は、以下の理由から、図2に矢印で示した方向、即ち、第2部材(選別ローラ)2の表面が第1部材1に対面する側で上向きに移動する方向とするのがよい。
【0020】
上記とは反対向きの回転であると、選別隙間5よりも外径が僅かに大きい球体が第1部材1と第2部材2間に挟まれて選別隙間5に強制的に引き込まれ、その球体が選別隙間5を通過することで選別処理の精度が低下する。
これに対し、第2部材2の回転方向が上述した好ましい方向であると、選別隙間5よりも外径が大きいために選別隙間5を通り抜けることができない球体に対して、それに接触した第2部材2から上向きの力が加えられるため、上述した強制引き込みが起こらない。
【0021】
また、第2部材(選別ローラ)2は、回転数の制御ができるものを用いると、球体の大きさや重さなどに応じた最適速度の回転調整を行うことができる。
【0022】
このように構成した球体選別ユニット7は、選別隙間5の大きさを選別される球体Bの寸法公差上限値に設定することで、外径が寸法公差上限値を越えた球体Bを球体排出孔4から落下させて取り除き、寸法公差上限値よりも外径の小さな球体Bのみを選別隙間5に通して回収することができる。
【0023】
また、選別隙間5の大きさを、選別処理される球体Bの外径の寸法公差下限値に設定することで、外径が寸法隙間上限値よりも小さな球体Bは選別隙間5に通して排出し、外径が寸法公差下限値よりも大きい球体Bのみを球体排出孔4から回収することができる。いずれの場合も、複数の球体排出孔によって球体転動溝6が長さ方向に複数に区画されており、それぞれの区画領域で同時に別々に並行して選別処理を行うことができ、選別処理能力が向上する。
【0024】
なお、球体転動溝6の区画数は、第1部材1に設ける球体排出孔4の数を増やすほど多くなるが、例えば、μmレベルでの選別処理といった高精度選別処理が要求されるときには、第1部材1と第2部材2の長さが制限される(長すぎると部材の撓み量を設計値以下に維持できない)ので、これらの部材の長さも考慮して区画数の上限を設定するとよい。
【0025】
第1、第2部材の太さと長さにもよるが、6区画程度までの区画数であれば、第1部材1と第2部材2の撓みを設計値以下に抑えることが可能であり、選別処理の精度を低下させずに選別処理能力を高めることができる。そのことを、後述する図7の選別機を試作して確認した。
【0026】
図3、図4に、図1の球体選別ユニット7を2基組み合わせて構成したこの発明の球体選別機の一例の概要を示す。この球体選別機10は、第1選別部11、その第1選別部11の斜め下方に配置された第2選別部12、第1選別部11に選別対象の球体Bを供給する複数の球体投入部13、第1選別部11で除去されなかった球体Bを第2選別部12に案内する誘導路14を備えている。
【0027】
第1選別部11と第2選別部12は、各々が図1の球体選別ユニット7で構成されている。第1選別部11は、選別隙間5が、選別処理される球体Bの外径の寸法公差上限値w1に設定され、第2選別部12は、その選別隙間5が、選別処理される球体Bの外径の寸法公差下限値w2に設定されている。
【0028】
また、第1選別部11と第2選別部12の各第1部材1は、それぞれが複数(図は5)の球体排出孔4を有している。その球体排出孔4は、第1選別部11に設けられたものは同選別部の選別隙間5(寸法公差上限値w1)よりも孔径が大きく、また、第2選別部12に設けられたものは同選別部の選別隙間5(寸法公差下限値w2)よりも孔径が大きい。
【0029】
第1選別部11に設けられる球体投入部13は、球体排出孔4によって長さ方向に区画された球体転動溝6の各部に設けられている。図示の球体投入部13は、選別対象の球体Bを球体転動溝6に連続的に落とし込むノズルで構成されており、球体転動溝6の区画されたそれぞれの領域の上流側(区画された領域の球体排出孔4よりも高さ位置が上になる部分)にある。この球体投入部13を構成するノズルは球体収納容器(図示せず)の底の出口にホースなどを介して接続されていてもよいし、出口に直接取付けられていてもよい。また、それぞれのノズルが球体を順次送り込むフィーダ(これも図示せず)に個別につながっていてもよい。
【0030】
誘導路14は、図示の選別機では、第2選別部12と第1選別部11との間に水平面に対して傾きを有するガイド部材15を設置し、そのガイド部材15の上面に、第1選別部11の選別隙間5を通過した球体Bを導入して転動させる所定の勾配を有したガイド溝を設けてそのガイド溝で形成している。
【0031】
誘導路14となすガイド溝は、選別対象の球体Bの大きさや質量を考慮して第1選別部11から第2選別部12に誘導される球体Bが転がり下る際に勢いがつきすぎて第2選別部12の球体転動溝6から外に飛び出すことがないように、その溝の傾斜角と経路長さを設定したり、飛び出し防止のためのカバーや遮蔽材を付随させたりすると好ましい。ガイド溝で構成されたこの誘導路14は、加工性に優れており、簡単に設置することができる。
【0032】
なお、誘導路14となすガイド溝は、水平面に対して傾く方向と、第1選別部11の下流側から第2選別部12の上流側に向う方向の2方向に傾斜させており、第1選別部11の選別隙間5を通過した球体Bは第2選別部12の上流側に案内される。このために、第1選別部11での選別領域を球体転動溝6の長さ直角方向に延長した領域で第2選別部12での選別が行われ、スペースの有効利用がなされて機械の寸法増加が抑えられる。
【0033】
図示の選別機10は、第1選別部11の選別隙間5を選別処理される球体Bの外径の寸法公差下限値に設定し、第2選別部12の選別隙間5を選別処理される球体Bの外径の寸法公差上限値に設定して用いることもできる。その設定の場合、第1選別部11において選別処理された球体B(寸法公差が下限値に満たないものが除去されたもの)が球体排出孔4から排出され、その球体Bを誘導路14に通して第2選別部12に導く。
【0034】
この構造は、外径が寸法公差内に収まっている良品の球体と寸法公差上限値を越えた球体の選別対象球体中に占める比率が寸法公差下限値以下の球体が占める比率よりも小さいときに有利である。
【0035】
誘導路14は、ガイド溝からなるものに限定されない。図5、図6にその例を示す。この図5の球体選別機10Aは、第2選別部12を第1選別部11の直下付近に設け、その第2選別部12と第1選別部11との間に図3のガイド部材15に代わるダクト16を設置し、そのダクト16の内部通路で誘導路14を形成している。
【0036】
第1選別部11と第2選別部12は、図3の選別機と同様に、各々が図1の球体選別ユニット7で構成されている。図3の選別機との構成上の相違点は、ダクト16の内部通路で誘導路14を形成した点のみであり、その他の構成は図3の選別機と同じである。従って、同一構成に関する説明は省く。
【0037】
ダクト16は、第1選別部11の選別隙間5を通過した球体Bを受け入れて第2選別部12に案内する。このダクト16は、入口に比べて出口を絞った構造になっている。出口は、図6に示すように、区画された選別領域の中で上流側に偏らせており、図3の選別機と同様に、第2選別部12での選別処理が、第1選別部11での選別領域を球体転動溝と直交する方向に延長した領域において行われ、スペースの有効利用がなされて機械寸法の増加が抑えられる。
【0038】
誘導路14をダクト16の内部通路で形成すると、図のように、第2選別部12を第1選別部11の直下近傍に配置して選別機の小型化とダクト16の形状の簡素化を図ることができるが、第2選別部12が第1選別部11の直下近傍にあることは必須の要件にはならない。第1選別部11からの球体Bが第2選別部12に送り込まれる構造になっていればよい。
【0039】
第1選別部11で選別処理された球体を既知の適当な搬送装置で搬送して第2選別部12に導入することも可能である。この選別機も、選別処理能力向上の目的を達成することができるが、搬送装置を必要としない図示の選別機の方が構造の簡素化やコスト低減が図れて有利である。
【0040】
図7、図8は、この発明の球体選別機のさらに他の例を示している。この球体選別機10Bは、角度調整機構17を設けて第1選別部11と第2選別部12の各球体転動溝6の傾斜角αを0°〜30°の範囲で任意に変化させられるようにしている。
【0041】
第1選別部11に設けた6箇所の球体投入部13は、各々がノズルで構成されている。各ノズルは、選別機の機枠18上に固定して設けた球体収納容器19の底の出口にホース20を介して個々に接続されている。球体収納容器19の内部には、収納された球体を1個ずつ振り分けて6本のホース20に順番に流し込む球体供給装置(図示せず)が設置されており、その球体供給装置による振り分け供給の動作が繰り返されて6つに区画された選別領域の各々に均等に球体が供給される。
【0042】
21は、球体転動溝に供給した球体が外部に飛散することを防止する遮蔽材である。この遮蔽材21は、ゴム板などで形成されており、球体の飛散経路を遮る位置(図示の装置の場合、第1、第2選別部11,12の各第2部材2の上部と球体転動溝6の下流側の端部)に設けている。
【0043】
図示の選別装置に設けた角度調整機構17は、可動ベース22の下面に垂下して設けた可動ブラケット17aを、機枠18上に立設した固定ブラケット17bに水平配置の支軸17cでピボット結合させ、支軸17cを支点にして可動ブラケット17aを図7の矢印方向に回転させることで可動ベース22の傾斜角を変化させて第1選別部11と第2選別部12の球体転動溝の傾斜角αを一括して調整するものにしている。
【0044】
第1選別部11と第2選別部12は、それぞれの構成要素の支持枠も含めて可動ベース22上に設置されており、可動ベース22を傾けるとその第1選別部11と第2選別部12の傾斜角が変化する。
【0045】
図7、図8の17dは、可動ブラケット17aの傾斜角度を変化させる調整ボルト、図7の17eは、可動ブラケット17aを調整後の位置に固定して調整後の傾斜角度を保持する角度保持手段である。
【0046】
角度調整機構17は、図示の構造に限定されない。図7の角度保持手段17eは、可動ブラケット17aに固定したボルト17fを固定ブラケット17bに向けた長孔17gに挿入し、ボルト17fをそのボルトに螺合したナット(図示せず)で長孔17g内での変位の各点に固定するものになっているが、同図の例えば左側のボルト17fをピボット軸に代え、そのピボット軸を支点にして可動ブラケット17aを任意角度回転させ、その回転に伴って同図の右側の長孔内で変位したボルトを変位の各点にナットで固定するように構成した機構でも球体転動溝の傾斜角の調整が行える。
【実施例1】
【0047】
図7の球体選別機(球体転動溝6の区画数を5にしたもの)を試作し、それを使用して外径φ0.3mm、寸法公差±5μmの球体(半田球)Bの選別処理を行った。
試作機の寸法諸元は以下の通り。
第1選別部
・第1部材1 有効長さ:300mm
・第2部材2(選別ローラ) 外径:φ30mm、有効長さ300mm
・球体排出孔4 孔径:φ6mm、設置ピッチP:40mm、孔総数:5個
・選別隙間5の寸法 w1:0.305mm
・球体転動溝6の傾斜角 α(図7参照):25°
第2選別部
・第1部材1 有効長さ:300mm
・第2部材2(選別ローラ) 外径:φ30mm、有効長さ300mm
・球体排出孔4 孔径:φ5mm、設置ピッチP:40mm、孔総数:5個
・選別隙間5の寸法 w2:0.295mm
・球体転動溝の傾斜角 α(図7参照):25°
・第1選別部との高低差 H(図4参照):140mm
・ガイド部材15の傾斜角 β(図8参照):30°
・球体転動溝6の傾斜角 α(図7参照):25°
【0048】
この試験の結果、この発明の選別機(試作機)は、対をなす傾斜配置の2本の選別ローラ間にテーパの選別隙間を設けた従来の選別機に比べて選別処理能力が大幅に向上することを確認した。総量35gの球体(半田球)Bの選別処理に要した時間が従来機の場合、約60分を要したのに対し、発明品の試作機では、約13分で選別処理が完了した。1分間当たりの処理量は、従来機の場合0.58g/min、試作機の場合2.69g/minであり、選別処理能力は5倍弱になっている。
【0049】
試作機での選別処理は5箇所で同時に並行して行われる。従って、単純計算での選別処理能力は従来機の5倍となるが、実際の結果はそれよりも若干低かった。その理由として以下のことが考えられる。
【0050】
球体転動溝内での球体の流れは選別ローラの回転によって助勢される。従来機は対をなす2本の選別ローラをともに回転させたのに対し、この発明の選別機は、第2部材2のみを選別ローラで構成してその第2部材2のみを選別処理中に回転させており、それにより助勢力に差が出たために、選別箇所1箇所当たりの選別処理能力が従来機と同等にならなかったと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明の選別機で選別する球体は、半田バンプ用の半田球、ICパッケージの封止などに利用されるガラス球、シリコン球、セラミックス球、軸受用ベアリング球などが挙げられる。但し、これらは一例であってこれに限定されるものではない。
【0052】
軸受に使用するベアリング球は、外径を公差内に管理する必要がある。また、例えば、アトマイズ法で製造される半田バンプ用の半田球は、半田量の過不足をなくすために、外径を公差内に管理することが要求される。この発明の球体選別ユニットや球体選別機は、このような球体の選別処理に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 第1部材
1a 斜面
2 第2部材
3 駆動装置
4 球体排出孔
5 選別隙間
6 球体転動溝
7 球体選別ユニット
10,10A、10B 球体選別機
11 第1選別部
12 第2選別部
13 球体投入部
14 誘導路
15 ガイド部材
16 ダクト
17 角度調整機構
17a 可動ブラケット
17b 固定ブラケット
17c 支軸
17d 調整ボルト
17e 角度保持手段
17f ボルト
17g 長孔
18 機枠
19 球体収納容器
20 ホース
21 遮蔽材
22 可動ベース
w 選別隙間の寸法
w1 寸法公差上限値
w2 寸法公差下限値
H 第1選別部と第2選別部の高低差
α 球体転動溝の傾斜角
β ガイド部材の傾斜角
B 球体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さの第1部材(1)と第2部材(2)を平行に配置し、その第1部材(1)と第2部材(2)間に所定寸法の選別隙間(5)と、水平面に対して所要角度(α)傾いて両端間に高低差がついた下すぼみの前記選別隙間(5)の入口側に配置される球体転動溝(6)を形成し、
前記第1部材(1)に、前記球体転動溝(6)をその溝の長さ方向に区画する、前記選別隙間(5)よりも孔径の大きい球体排出孔(4)を第1部材(1)の長さ方向に所定の間隔をあけて複数設け、前記球体転動溝(6)に選別対象の球体(B)を導入し、前記選別隙間(5)よりも外径の小さい球体を前記選別隙間(5)から流出させ、前記選別隙間(5)よりも外径の大きい球体を前記球体排出孔(4)から取り出すようにした球体選別ユニット。
【請求項2】
各々が請求項1に記載の球体選別ユニット(7)で構成された第1選別部(11)及び第2選別部(12)と、
球体排出孔(4)によって長さ方向に複数に区画された第1選別部(11)の球体転動溝(6)の各区画領域に選別対象の球体(B)を個別に導入する複数の球体投入部(13)と、
前記第1選別部(11)で選別された球体(B)を前記第2選別部(12)に案内する誘導路(14)とからなり、
前記1選別部(11)の選別隙間(5)と第2選別部(12)の選別隙間(5)のどちらか一方が寸法公差上限値(w1)に、他方が寸法公差下限値(w2)にそれぞれ設定された球体選別機。
【請求項3】
前記第1選別部(11)の選別隙間(5)を寸法公差上限値(w1)に、第2選別部(12)の選別隙間(5)を寸法公差下限値(w2)にそれぞれ設定し、第1選別部(11)の選別隙間(5)を通過した球体(B)を第2選別部(12)に導入するようにした請求項2に記載の球体選別機。
【請求項4】
前記第2選別部(12)を第1選別部(11)の斜め下方に配置し、その第2選別部(12)と前記第1選別部(11)との間に水平面に対して傾斜したガイド部材(15)を設置し、そのガイド部材(15)の上面に、第1選別部(11)の選別隙間(5)を通過した球体(B)を導入して転動させる所定の勾配を有したガイド溝を設け、そのガイド溝で前記誘導路(14)を形成した請求項2又は3に記載の球体選別機。
【請求項5】
誘導路(14)を形成する前記ガイド溝を、水平面に対して傾く方向と、第1選別部(11)の下流側からそれに対応した位置よりも第2選別部(12)の上流側に向う方向の2方向に傾斜させた請求項4に記載の球体選別機。
【請求項6】
前記第1選別部(11)の下方に第1選別部の選別隙間(5)を通過した球体を受け入れる出口を絞ったダクト(16)を設け、そのダクト(16)の内部通路で前記誘導路(14)を形成して第1選別部(11)の選別隙間(5)を通過した球体(B)を前記第2選別部(12)に案内するようにした請求項2又は3に記載の球体選別機。
【請求項7】
前記第1選別部(11)と第2選別部(12)の各第2部材(2)をそれぞれ選別ローラで構成し、その選別ローラで構成された第1、第2選別部(11,12)の各第2部材(2,2)を選別中に駆動装置(3)で駆動して回転させるようにした請求項2〜6のいずれかに記載の球体選別機。
【請求項8】
前記第1選別部(11)と第2選別部(12)の球体転動溝(6)の傾斜角(α)を可変とし、その傾斜角(α)を調整する角度調整機構(17)を設けた請求項2〜7のいずれかに記載の球体選別機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−162448(P2010−162448A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5349(P2009−5349)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(392010050)株式会社ユタカ (13)
【Fターム(参考)】