球状弾性表面波素子の製造方法および露光マスク
【課題】好適に球面基体に対しすだれ状電極パターンを形成することのできる弾性表面波素子の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の球状弾性表面波素子の製造方法は、ポジ型レジストに対し、すだれ状電極パターンを非露光部とする露光を行った後、すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする露光を行う。すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする二度目の露光を行うことにより、球面基体の表面に対し露光光が斜めに照射される領域を現像工程に必要なエネルギー量まで露光することが出来る。よって、弾性表面波周回路上に導電膜が残存することを抑制することが出来る。
【解決手段】本発明の球状弾性表面波素子の製造方法は、ポジ型レジストに対し、すだれ状電極パターンを非露光部とする露光を行った後、すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする露光を行う。すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする二度目の露光を行うことにより、球面基体の表面に対し露光光が斜めに照射される領域を現像工程に必要なエネルギー量まで露光することが出来る。よって、弾性表面波周回路上に導電膜が残存することを抑制することが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状弾性表面波素子の製造方法、および、該球状弾性表面波素子の製造方法の実施に適した露光マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波周回路を有する球面基体に導電膜からなるすだれ状電極が形成された球状弾性表面波素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
球状弾性表面波素子では、すだれ状電極から発生した弾性表面波が、球面基体表面の弾性表面波周回路を周回する。
【0003】
従来、弾性表面波周回路を有する球面基体にすだれ状電極を形成する場合、露光光を用いたフォトリソグラフィによりすだれ状電極パターンを転写していた。
【0004】
以下、図1を用いながら、従来の球状弾性表面波素子の製造方法について説明する。
まず、球面基体1に導電膜6を膜形成する(図1(a))。
次に、導電膜6を覆うようにポジ型レジスト膜7を膜形成する(図1(b))。
次に、透明基板8にすだれ状電極パターンである遮光パターン9が形成された露光マスク10を用意する(図1(c))。
次に、露光マスク10を介して、球面基体1上のポジ型レジスト膜7に露光光を照射する(図1(d))。
次に、ポジ型レジスト膜7を現像し、露光光があたらなかった低露光量領域11をポジ型レジスト膜7上にすだれ状電極パターンとして形成する(図1(e))。
次に、すだれ状電極パターンが形成されたポジ型レジスト膜7をマスクとしてエッチングを行い導電膜からなるすだれ状電極を形成する(図1(f))。
【特許文献1】特開2005−94609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の球状弾性表面波素子の製造方法では、すだれ状電極の形成に際して問題があった。
【0006】
図2を用いて、具体的に説明する。
図2は、露光マスク10を介して、球面基体1上のポジ型レジスト膜7に露光光を照射する(図1(d))工程における拡大断面図である。
【0007】
すだれ状電極パターンは微細な櫛形状端子部に対応するパターンを有するため、可能な限り露光マスク上の遮光パターンと被露光面である球面基体の表面とは、接近して露光することが望ましい。
また、露光光13は露光マスクの透明基板8に対し垂直に入射する。
このため、「すだれ状電極パターンが形成される遮光パターン9に対応する球面基体の領域」(図2(a))においては、球面基体表面に対しほぼ垂直に露光光が照射される。
【0008】
一方、図2(a)に示す領域から離れる従い、被露光面である球面基体の表面が傾斜しているため、露光光は球体基体表面に対し角度を持って入射する。よって、図2(b)、図2(c)となるに従い、球体基体表面の露光量は低下する。なお、図2(c)に示す領域は、ポジ型レジスト膜7が後工程の現像工程において除去されるに充分な露光量が得られていない領域(図1(e)における低露光量領域11に対応する領域)である。
このとき、「導電膜6が膜形成されている領域と、図2(c)に示す領域と、が重なる領域」(図2(d))は、現像工程を経ても、ポジ型レジスト膜7が残存する。よって、現像工程に続くエッチング工程において、弾性表面波周回路2上に残存した導電膜12が形成される(図1(f)参照)。
ここで、弾性表面波周回路2上の残存した導電膜12は、弾性表面波周回路2を周回する弾性表面波の障害になる。
【0009】
図2(c)の領域を充分に露光するために、照射する露光光をより長時間照射したり、露光の短時間当たりの照射エネルギー量を増やしたり、した場合、図2(a)に示す領域が露光過多となり、遮光パターン9により遮光された部位に相当する部分のレジストパターンが細ったり、除去されるべきではない領域(マスクの遮光領域に相当するパターン領域)のレジストも除去されたり、するため、結果的にすだれ状電極パターンを形成する事が出来ない。
【0010】
球面基体にすだれ状電極パターンをフォトリソグラフィを用いて形成する場合、球面に露光を行うため、すだれ状電極パターンを形成するために照射する露光光は、すだれ状電極部分から離れた領域では球表面に対し斜めに照射されることになる。よって、露光光が斜めに照射された部位は現像工程に必要なエネルギー量に達せず、すだれ状電極から離れた領域の除去されるべき弾性表面波周回路上に導電膜が残り、弾性表面波の周回の障害になる問題点があった。
【0011】
そこで、本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、好適に球面基体に対しすだれ状電極パターンを形成することのできる弾性表面波素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の本発明は、弾性表面波周回路を有する球面基体に導電膜からなるすだれ状電極が形成された球状弾性表面波素子の製造方法であって、球面基体の表面に導電膜を形成する工程と、前記導電膜の表面にポジ型レジストを塗布する工程と、前記ポジ型レジスト膜に露光によりすだれ状電極パターンをパターニングする工程と、前記導電膜にパターニングされた前記ポジ型レジストをマスクとしてエッチングを行うことによりすだれ状電極を形成する工程と、を備え、前記ポジ型レジスト膜を露光によりパターニングする工程は、すだれ状電極パターンを非露光部とする露光を行う第1の露光工程と、すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする露光を行う第2の露光工程と、前記第1の露光工程および前記第2の露光工程により感光した前記ポジ型レジストを除去する現像工程と、を備えた工程であることを特徴とする球状弾性表面波素子の製造方法である。
【0013】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の弾性表面波素子の製造方法であって、すだれ状電極パターンは、電極接続部を含むパターンであることを特徴とする弾性表面波素子の製造方法である。
【0014】
請求項3に記載の本発明は、透明基板に遮光パターンを形成した露光マスクであって、前記遮光パターンは、すだれ状電極パターンを形成したすだれ状電極遮光パターンと、前記すだれ状電極パターンを包括する領域内を遮光する包括遮光パターンと、を備えた遮光パターンであり、遮光パターンは導電膜よりなることを特徴とする露光マスクである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の球状弾性表面波素子の製造方法は、ポジ型レジスト膜に対し、すだれ状電極パターンを非露光部とする露光を行った後、すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする露光を行う。すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする二度目の露光を行うことにより、球面基体の表面に対し露光光が斜めに照射される領域を現像工程に必要なエネルギー量まで露光することが出来る。よって、弾性表面波周回路上に導電膜が残存することを抑制することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の球状弾性表面波素子の製造方法について、図3を用いながら、具体的に説明を行う。
【0017】
<球面基体の表面に導電膜を形成する工程>
まず、弾性表面波周回路を有する球面基体1に導電膜6を膜形成する(図3(a))。
【0018】
弾性表面波周回路を有する球面基体は、(1)弾性表面波を励起させることが出来ない材料からなる球面基体に弾性表面波が励起可能な材料を円環状に被覆した基体、(2)弾性表面波が励起可能な材料からなる球面基体、などを用いる。また、一般的に、弾性表面波が励起可能な材料として、圧電材料が挙げられる。
【0019】
また、弾性表面波周回路を有する球面基体は、圧電材料からなる球状基体である圧電性結晶球を用いることが好ましい。
圧電性結晶球としては、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)及びランガサイトファミリー、などの結晶球が挙げられる。上述した圧電性結晶球は、それぞれの材料の結晶面に応じて、外表面に弾性表面波周回路を備える。
具体的には、例えば、圧電性結晶球は製造コストや動作する際の周波数を考慮して、略10mm〜略1mmの径の球形状である。
【0020】
導電膜は、すだれ状電極パターンが形成されたときにすだれ状電極として機能するように、導電性を備えた材料であればよい。例えば、金属膜(例えば、クロム膜、金薄膜、それらの合金膜など)などで形成してよい。
具体的な一例を挙げると、球面基体として直径3.3mmの水晶からなる圧電性結晶球を用いた場合、導電膜は、クロム膜50nm及び金薄膜を100nmとした2層膜であってもよい。
【0021】
また、導電膜の形成方法を適宜公知の薄膜形成方法により行って良い。薄膜形成方法としては、例えば、具体的には、真空蒸着などが挙げられる。
【0022】
<導電膜の表面にポジ型レジストを塗布する工程>
次に、導電膜6が形成された球面基体1に、ポジ型レジスト膜7を形成する(図3(b))。
【0023】
ポジ型レジストは、露光光により感光した後、現像することにより除去される樹脂であり、形成するすだれ状電極パターンのラインパターン幅、用いる露光光などに応じて適宜公知の樹脂を選択してよい。
【0024】
ポジ型レジストの膜形成方法としては、適宜公知の薄膜形成方法を用いて良い。薄膜形成方法としては、例えば、具体的には、スピンコート法、ディップコート法、スプレー法、滴下法、などが挙げられる。
スピンコート法およびディップコート法を用いる場合、塗布時のポジ型レジストは液状であるため、ポジ型レジスト膜は球面基体の略全面に広がる。
【0025】
ポジ型レジスト膜の厚みは、形成するすだれ状電極パターンのラインパターン幅、用いる露光光およびポジ型レジスト、などに応じて適宜決定してよい。
【0026】
<ポジ型レジスト膜に露光を行う工程>
次に、すだれ状電極遮光パターン9が形成された露光マスク10を介して球面基体1に対し露光光を照射し(図3(c))、包括遮光パターン14が形成された露光マスク10を介して球面基体1に対し露光光を照射し、(図3(d))ポジ型レジスト膜7を現像し低露光量領域11をすだれ状電極パターンとして形成する(図3(e))。
なお、本発明の球状弾性表面波素子の製造方法において、すだれ状電極パターンを非露光部とする露光を行う第1の露光工程と、すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする露光を行う第2の露光工程と、は互いに相前後して行ってよく、第1の露光工程の後に第2の露光工程行っても良いし、第2の露光工程の後に第1の露光工程行っても良い。
【0027】
ポジ型レジストに対し、すだれ状電極パターンを非露光部とする露光を行った後、すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする露光を行うことにより、球面基体の表面に対し露光光が斜めに照射される領域を現像工程に必要なエネルギー量まで露光することが出来る。よって、弾性表面波周回路上に導電膜が残存することを抑制することが出来る。
このため、図3(e)に示すように、低露光量領域11はすだれ状電極に対応する部位にのみとなり、後工程であるエッチング工程において、弾性表面波周回路上に導電膜が残存することを抑制することが出来る。
【0028】
また、ポジ型レジスト膜に対する露光量は、ポジ型レジストの状態、露光マスクの状態、周囲の湿度、などによって適切な条件は変わることから、随時適切な露光量を求めて実施をすることが好ましい。
【0029】
<導電膜にエッチングを行う工程>
次に、すだれ状電極パターンが形成されたポジ型レジスト膜7をマスクとしてエッチングを行い、すだれ状電極を形成する(図3(f))。
【0030】
エッチング方法は、用いたポジ型レジスト膜および導電膜に適したエッチング方法を適宜選択してよい。エッチング方法として、例えば、具体的には、エッチング溶液に入れて化学的に溶解して除去する方法、真空中で電子線などの粒子を照射して削り取る方法、などが挙げられる。
【0031】
エッチング工程後に、ポジ型レジスト膜7が残存した場合、残存したポジ型レジスト膜7を剥離する工程を行っても良い。ポジ型レジスト膜を剥離する方法は、選択したポジ型レジストに応じて適宜公知の方法を用いて良い。例えば、具体的には、剥離液への浸漬、O2アッシングなどを用いても良い。
【0032】
すだれ状電極は、球面基体上の弾性表面波周回路を伝播する弾性表面波の励起/検知手段として設置される。
すだれ状電極は様々な形状のものが提案されているが、最も基本的なものは一対の櫛形状端子部を夫々の複数の櫛形状端子部を交互に配置して組み合わせた形状である。
【0033】
すだれ状電極は、一対の櫛歯状電極枝の間にインパルスもしくは所定の周波数の高周波信号をバースト状に適用することにより、相互に隣接した2つの櫛歯状電極枝の周期長に対応した波長の弾性表面波を励起させることが出来る(具体的には、櫛歯状電極枝を構成するラインアンドスペースパターンの幅が励起する弾性表面波の波長の4分の1に対応する)。
また、励起された弾性表面波のビーム幅は、相互に隣接した2つの櫛歯状電極枝において相互に対向している部分の長さに対応する。
また、すだれ状電極の一対の櫛形状端子部の複数の櫛歯状電極枝が交互に配列された方向が、励起された弾性表面波の波面が略進行する方向になる。
【0034】
図4に、すだれ状電極の一例を示す。図4において、対向する櫛歯状電極枝の重なり合う幅Wが、励起された弾性表面波のビーム幅に対応する。また、電極周期が、励起された弾性表面波の波長に対応する。
【0035】
図5に、一般的な球状弾性表面波素子の一例を示す。図5では、球面基体1の弾性表面波周回路2上にすだれ状電極3が形成されている。また、すだれ状電極3は、電極接続部4を介して高周波信号送受信装置5と接続されている。なお、図1において、球面基体は水晶の圧電性結晶球である。水晶の圧電性結晶球において、弾性表面波周回路2は、結晶軸であるZ軸を軸として外表面を周回するような位置にある。
【0036】
圧電性結晶球の外表面にすだれ状電極を形成し、該圧電性結晶球の弾性表面波周回路を周回する弾性表面波を該すだれ状電極により励起する場合、(1)すだれ状電極の複数の電極枝が相互に対向している部分の長さ、(2)すだれ状電極の複数の電極枝の配列周期、などを圧電性結晶球に応じて設定することが望ましい。
例えば、具体的には、球面基体として水晶の圧電性結晶球を用いた150MHzの周波数で動作させる球状弾性表面波素子において、すだれ状電極の櫛歯状電極枝部位におけるラインアンドスペース幅は約5.3μmである。
【0037】
また、すだれ状電極には、電極接続部を設けることが好ましい。電極接続部を設けることにより、弾性表面波の周回経路以外の球形表面上で外部と電気的に接続することが出来る。接続に際しては、超音波ボンダ、導電ペースト、などを用いても良い。
【0038】
また、球状弾性表面波素子は、弾性表面波周回路上に外部環境の変化に感応する感応膜を設けることにより、外部環境の変化を測定することに利用することが出来る。
これは、外部環境の変化に弾性表面波周回路上の感応膜が反応し、(1)弾性表面波周回路を1周する間におけるバースト状の弾性表面波の周回速度の変化、(2)弾性表面波周回路をバースト状の弾性表面波が1周するのに要する時間の変化、(3)1周する毎の弾性表面波の位相の遅延、(4)1周する毎の弾性表面波の強度の低下、などが起こり、周回した弾性表面波を検出することで弾性表面波が受けた感応膜の影響を把握することが出来るためである。
【0039】
球状弾性表面波素子は、弾性表面波が弾性表面波周回路を周回することから、周回回数が増加すればするほど感応膜からの変化は累積され大きくなり、微少な感応膜の変化であっても測定することが出来る。
ただし、感応膜以外の弾性表面波の変化要因がある場合、弾性表面波周回路を周回する弾性表面波の変化を検出するにあたり、感応膜以外の影響も累積されるため好ましくない。このため、特に、球状弾性表面波素子に感応膜を設けセンサとして用いる場合、弾性表面波周回路上に残存した導電膜が周回する弾性表面波に影響を与えるため好ましくない。
【0040】
以下、本発明の露光マスクについて、図6を用いて説明を行う。
本発明の露光マスク15は、透明基板上8に、すだれ状電極遮光パターン9と、包括遮光パターン14と、備える。
【0041】
透明基板は、用いる露光光を透過できる材料であれば良い。例えば、石英基板などを用いても良い。
【0042】
すだれ状電極遮光パターンは、仕様に応じたすだれ状電極の櫛歯状電極枝の電極周期および幅に対応するパターンとして形成する。
また、すだれ状電極遮光パターンは、用いる露光光を遮光し、導電性を有する材料であればよい。例えば、透明基板として石英基板を用いた場合、遮光パターンは金属膜(例えば、クロム膜、金薄膜、など)などで形成してよい。
【0043】
包括遮光パターンは、少なくともすだれ状電極パターンの櫛歯状電極枝(微細なパターン部位)の全域を覆う遮光パターンであればよい。
また、包括遮光パターンは、用いる露光光を遮光する材料であればよい。例えば、透明基板として石英基板を用いた場合、遮光パターンは金属膜(例えば、クロム膜、金薄膜、など)などで形成してよい。
【0044】
本発明の露光マスクでは、すだれ状電極遮光パターンを導電膜より形成することにより、露光マスクを弾性表面波周回路を有する球面基体に近接させ、すだれ状電極遮光パターンにインパルスもしくは所定の周波数の高周波信号をバースト状に適用することで、球面基体に弾性表面波を発生させることが出来る。
このため、すだれ状電極遮光パターンから弾性表面波を発生することにより、すだれ状電極遮光パターンから発生した弾性表面波を球面基体表面上の弾性表面波周回路に周回させることが出来る。
よって、球面基体表面上の弾性表面波周回路に周回する「すだれ状電極遮光パターンから発生した弾性表面波」を検出することにより、弾性表面波周回路を有する球面基体と、本発明の露光マスクと、との位置決め(アライメント)を好適に行うことが出来る。
【0045】
また、すだれ状電極遮光パターンと包括遮光パターンとを同一の透明基板上に形成した場合、透明基板上のすだれ状電極遮光パターンと包括遮光パターンとの相対位置は常に変わらない。このため、すだれ状電極遮光パターンを用いて露光した後、包括遮光パターンを露光するに際して、すだれ状電極遮光パターンおよび包括遮光パターンの設計時に把握した相対距離だけ移動することにより、包括遮光パターンの位置決め(アライメント)を好適に行うことが出来る。
すだれ状電極遮光パターンと包括遮光パターンとを個別の透明基板に形成した場合、包括遮光パターンの位置決め(アライメント)は、すだれ状電極遮光パターンの位置決め(アライメント)を利用できないため、困難である。
【0046】
図7に、本発明の露光マスクを用いた露光方法の一例について具体的に示す。
まず、本発明の露光マスク15上のすだれ状電極遮光パターン9を、導電膜6およびポジ型レジスト膜7が膜形成された球面基体1に近接させ、すだれ状電極遮光パターン9から弾性表面波を発生させ、位置決め(アライメント)を行う(図7(a))。
次に、本発明の露光マスク15のすだれ状電極遮光パターン9を介して、露光光13を照射する(図7(b))。
次に、設計時のパターン形成位置を元に、すだれ状電極遮光パターン9と包括遮光パターン14との相対距離の値だけ、露光マスク15を動かす(図7(c))。
次に、本発明の露光マスク15の包括遮光パターン14を介して、露光光13を照射する(図7(d))。
【実施例】
【0047】
以下、具体的に本発明の球状弾性表面波素子の製造方法について、図3を用いて説明を行う。
【0048】
まず、球面基体1として、直径3.3mmの水晶の圧電性結晶球を用意した。
上記水晶の圧電性結晶球は弾性表面波周回路(Z軸シリンダー)を備える。
【0049】
次に、球面基体1に真空蒸着により導電膜6を形成した(図3(a))。
このとき、真空蒸着はクロムと金との2元蒸着であり、形成された導電膜は、クロム50nm、金100nmの2層膜であった。
【0050】
次に、導電膜6が形成された球面基体1にポジ型レジスト膜7を形成した(図3(b))。
このとき、ポジ型レジスト(東京応化製、商品名:OFPR−800)をスピンコート法を用いて塗布した。また、ポジ型レジスト膜7の厚みは最も厚い中央付近で約1500nmであった。
【0051】
次に、櫛歯状電極枝を構成するラインアンドスペースパターンの幅が5.3μmであり、一対の櫛歯状電極枝が重なる幅Wが265μmである、すだれ状電極遮光パターン9を備えた露光マスク10を介して、球面基体1に対し紫外光を照射した(図3(c))。
このとき、露光量は120mJであった。
【0052】
次に、櫛歯状電極枝の部位を包括する領域を遮蔽する包括遮光パターン14を備えた露光マスク10を介して、球面基体1に対し紫外光を照射した(図3(d))。
このとき、露光量は400mJであった。
【0053】
次に、球面基体1を現像液(東京応化製、商品名:OFPR−NMD−3)に120秒浸漬し、現像を行い、ポジ型レジスト膜7に低露光量領域11に対応するすだれ状電極パターンを形成した(図3(e))。
【0054】
次に、すだれ状電極パターンが形成されたポジ型レジスト膜7をマスクとして導電膜6のエッチングを行った(図3(f))。
このとき、導電膜6の金薄膜に対するエッチング液の組成は、よう素:ヨウ化カリウム=100g:100g/純水1リットルとし、10秒間浸漬した。
また、導電膜6のクロム膜に対するエッチング液として、エッチング液(関東化学製、商品名:Cr−10N)を用い、90秒間浸漬した。
【0055】
次に、剥離液に浸漬し、残存したポジ型レジスト膜7の剥離を行った。
このとき、剥離液として、剥離液(東京応化製、商品名:104剥離液)を用いた。
【0056】
以上より、駆動周波数が150MHzの水晶の圧電結晶球を用いた弾性表面波素子を製造することが出来た。また、製造された球状弾性表面波素子は、弾性表面波周回路に導電膜が残存していなかった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】従来の球状弾性表面波素子の製造方法を示す概略工程図である。
【図2】球状弾性表面波素子の製造方法における露光工程を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の球状弾性表面波素子の製造方法を示す概略工程図である。
【図4】すだれ状電極の一例を示す図である。
【図5】球状弾性表面波素子の一例を示す図である。
【図6】本発明の露光マスクを示す図である。
【図7】本発明の露光マスクの使用例を示す概略工程図である。
【符号の説明】
【0058】
1…球面基体
2…弾性表面波周回路
3…すだれ状電極
4…電極接続部
5…高周波信号送受信装置
6…導電膜
7…ポジ型レジスト膜
8…透明基板
9…すだれ状電極遮光パターン
10…露光マスク
11…低露光量領域
12…残存した導電膜
13…露光光
14…包括遮光パターン
15…本発明の露光マスク
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状弾性表面波素子の製造方法、および、該球状弾性表面波素子の製造方法の実施に適した露光マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波周回路を有する球面基体に導電膜からなるすだれ状電極が形成された球状弾性表面波素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
球状弾性表面波素子では、すだれ状電極から発生した弾性表面波が、球面基体表面の弾性表面波周回路を周回する。
【0003】
従来、弾性表面波周回路を有する球面基体にすだれ状電極を形成する場合、露光光を用いたフォトリソグラフィによりすだれ状電極パターンを転写していた。
【0004】
以下、図1を用いながら、従来の球状弾性表面波素子の製造方法について説明する。
まず、球面基体1に導電膜6を膜形成する(図1(a))。
次に、導電膜6を覆うようにポジ型レジスト膜7を膜形成する(図1(b))。
次に、透明基板8にすだれ状電極パターンである遮光パターン9が形成された露光マスク10を用意する(図1(c))。
次に、露光マスク10を介して、球面基体1上のポジ型レジスト膜7に露光光を照射する(図1(d))。
次に、ポジ型レジスト膜7を現像し、露光光があたらなかった低露光量領域11をポジ型レジスト膜7上にすだれ状電極パターンとして形成する(図1(e))。
次に、すだれ状電極パターンが形成されたポジ型レジスト膜7をマスクとしてエッチングを行い導電膜からなるすだれ状電極を形成する(図1(f))。
【特許文献1】特開2005−94609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の球状弾性表面波素子の製造方法では、すだれ状電極の形成に際して問題があった。
【0006】
図2を用いて、具体的に説明する。
図2は、露光マスク10を介して、球面基体1上のポジ型レジスト膜7に露光光を照射する(図1(d))工程における拡大断面図である。
【0007】
すだれ状電極パターンは微細な櫛形状端子部に対応するパターンを有するため、可能な限り露光マスク上の遮光パターンと被露光面である球面基体の表面とは、接近して露光することが望ましい。
また、露光光13は露光マスクの透明基板8に対し垂直に入射する。
このため、「すだれ状電極パターンが形成される遮光パターン9に対応する球面基体の領域」(図2(a))においては、球面基体表面に対しほぼ垂直に露光光が照射される。
【0008】
一方、図2(a)に示す領域から離れる従い、被露光面である球面基体の表面が傾斜しているため、露光光は球体基体表面に対し角度を持って入射する。よって、図2(b)、図2(c)となるに従い、球体基体表面の露光量は低下する。なお、図2(c)に示す領域は、ポジ型レジスト膜7が後工程の現像工程において除去されるに充分な露光量が得られていない領域(図1(e)における低露光量領域11に対応する領域)である。
このとき、「導電膜6が膜形成されている領域と、図2(c)に示す領域と、が重なる領域」(図2(d))は、現像工程を経ても、ポジ型レジスト膜7が残存する。よって、現像工程に続くエッチング工程において、弾性表面波周回路2上に残存した導電膜12が形成される(図1(f)参照)。
ここで、弾性表面波周回路2上の残存した導電膜12は、弾性表面波周回路2を周回する弾性表面波の障害になる。
【0009】
図2(c)の領域を充分に露光するために、照射する露光光をより長時間照射したり、露光の短時間当たりの照射エネルギー量を増やしたり、した場合、図2(a)に示す領域が露光過多となり、遮光パターン9により遮光された部位に相当する部分のレジストパターンが細ったり、除去されるべきではない領域(マスクの遮光領域に相当するパターン領域)のレジストも除去されたり、するため、結果的にすだれ状電極パターンを形成する事が出来ない。
【0010】
球面基体にすだれ状電極パターンをフォトリソグラフィを用いて形成する場合、球面に露光を行うため、すだれ状電極パターンを形成するために照射する露光光は、すだれ状電極部分から離れた領域では球表面に対し斜めに照射されることになる。よって、露光光が斜めに照射された部位は現像工程に必要なエネルギー量に達せず、すだれ状電極から離れた領域の除去されるべき弾性表面波周回路上に導電膜が残り、弾性表面波の周回の障害になる問題点があった。
【0011】
そこで、本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、好適に球面基体に対しすだれ状電極パターンを形成することのできる弾性表面波素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の本発明は、弾性表面波周回路を有する球面基体に導電膜からなるすだれ状電極が形成された球状弾性表面波素子の製造方法であって、球面基体の表面に導電膜を形成する工程と、前記導電膜の表面にポジ型レジストを塗布する工程と、前記ポジ型レジスト膜に露光によりすだれ状電極パターンをパターニングする工程と、前記導電膜にパターニングされた前記ポジ型レジストをマスクとしてエッチングを行うことによりすだれ状電極を形成する工程と、を備え、前記ポジ型レジスト膜を露光によりパターニングする工程は、すだれ状電極パターンを非露光部とする露光を行う第1の露光工程と、すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする露光を行う第2の露光工程と、前記第1の露光工程および前記第2の露光工程により感光した前記ポジ型レジストを除去する現像工程と、を備えた工程であることを特徴とする球状弾性表面波素子の製造方法である。
【0013】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の弾性表面波素子の製造方法であって、すだれ状電極パターンは、電極接続部を含むパターンであることを特徴とする弾性表面波素子の製造方法である。
【0014】
請求項3に記載の本発明は、透明基板に遮光パターンを形成した露光マスクであって、前記遮光パターンは、すだれ状電極パターンを形成したすだれ状電極遮光パターンと、前記すだれ状電極パターンを包括する領域内を遮光する包括遮光パターンと、を備えた遮光パターンであり、遮光パターンは導電膜よりなることを特徴とする露光マスクである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の球状弾性表面波素子の製造方法は、ポジ型レジスト膜に対し、すだれ状電極パターンを非露光部とする露光を行った後、すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする露光を行う。すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする二度目の露光を行うことにより、球面基体の表面に対し露光光が斜めに照射される領域を現像工程に必要なエネルギー量まで露光することが出来る。よって、弾性表面波周回路上に導電膜が残存することを抑制することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の球状弾性表面波素子の製造方法について、図3を用いながら、具体的に説明を行う。
【0017】
<球面基体の表面に導電膜を形成する工程>
まず、弾性表面波周回路を有する球面基体1に導電膜6を膜形成する(図3(a))。
【0018】
弾性表面波周回路を有する球面基体は、(1)弾性表面波を励起させることが出来ない材料からなる球面基体に弾性表面波が励起可能な材料を円環状に被覆した基体、(2)弾性表面波が励起可能な材料からなる球面基体、などを用いる。また、一般的に、弾性表面波が励起可能な材料として、圧電材料が挙げられる。
【0019】
また、弾性表面波周回路を有する球面基体は、圧電材料からなる球状基体である圧電性結晶球を用いることが好ましい。
圧電性結晶球としては、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)及びランガサイトファミリー、などの結晶球が挙げられる。上述した圧電性結晶球は、それぞれの材料の結晶面に応じて、外表面に弾性表面波周回路を備える。
具体的には、例えば、圧電性結晶球は製造コストや動作する際の周波数を考慮して、略10mm〜略1mmの径の球形状である。
【0020】
導電膜は、すだれ状電極パターンが形成されたときにすだれ状電極として機能するように、導電性を備えた材料であればよい。例えば、金属膜(例えば、クロム膜、金薄膜、それらの合金膜など)などで形成してよい。
具体的な一例を挙げると、球面基体として直径3.3mmの水晶からなる圧電性結晶球を用いた場合、導電膜は、クロム膜50nm及び金薄膜を100nmとした2層膜であってもよい。
【0021】
また、導電膜の形成方法を適宜公知の薄膜形成方法により行って良い。薄膜形成方法としては、例えば、具体的には、真空蒸着などが挙げられる。
【0022】
<導電膜の表面にポジ型レジストを塗布する工程>
次に、導電膜6が形成された球面基体1に、ポジ型レジスト膜7を形成する(図3(b))。
【0023】
ポジ型レジストは、露光光により感光した後、現像することにより除去される樹脂であり、形成するすだれ状電極パターンのラインパターン幅、用いる露光光などに応じて適宜公知の樹脂を選択してよい。
【0024】
ポジ型レジストの膜形成方法としては、適宜公知の薄膜形成方法を用いて良い。薄膜形成方法としては、例えば、具体的には、スピンコート法、ディップコート法、スプレー法、滴下法、などが挙げられる。
スピンコート法およびディップコート法を用いる場合、塗布時のポジ型レジストは液状であるため、ポジ型レジスト膜は球面基体の略全面に広がる。
【0025】
ポジ型レジスト膜の厚みは、形成するすだれ状電極パターンのラインパターン幅、用いる露光光およびポジ型レジスト、などに応じて適宜決定してよい。
【0026】
<ポジ型レジスト膜に露光を行う工程>
次に、すだれ状電極遮光パターン9が形成された露光マスク10を介して球面基体1に対し露光光を照射し(図3(c))、包括遮光パターン14が形成された露光マスク10を介して球面基体1に対し露光光を照射し、(図3(d))ポジ型レジスト膜7を現像し低露光量領域11をすだれ状電極パターンとして形成する(図3(e))。
なお、本発明の球状弾性表面波素子の製造方法において、すだれ状電極パターンを非露光部とする露光を行う第1の露光工程と、すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする露光を行う第2の露光工程と、は互いに相前後して行ってよく、第1の露光工程の後に第2の露光工程行っても良いし、第2の露光工程の後に第1の露光工程行っても良い。
【0027】
ポジ型レジストに対し、すだれ状電極パターンを非露光部とする露光を行った後、すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする露光を行うことにより、球面基体の表面に対し露光光が斜めに照射される領域を現像工程に必要なエネルギー量まで露光することが出来る。よって、弾性表面波周回路上に導電膜が残存することを抑制することが出来る。
このため、図3(e)に示すように、低露光量領域11はすだれ状電極に対応する部位にのみとなり、後工程であるエッチング工程において、弾性表面波周回路上に導電膜が残存することを抑制することが出来る。
【0028】
また、ポジ型レジスト膜に対する露光量は、ポジ型レジストの状態、露光マスクの状態、周囲の湿度、などによって適切な条件は変わることから、随時適切な露光量を求めて実施をすることが好ましい。
【0029】
<導電膜にエッチングを行う工程>
次に、すだれ状電極パターンが形成されたポジ型レジスト膜7をマスクとしてエッチングを行い、すだれ状電極を形成する(図3(f))。
【0030】
エッチング方法は、用いたポジ型レジスト膜および導電膜に適したエッチング方法を適宜選択してよい。エッチング方法として、例えば、具体的には、エッチング溶液に入れて化学的に溶解して除去する方法、真空中で電子線などの粒子を照射して削り取る方法、などが挙げられる。
【0031】
エッチング工程後に、ポジ型レジスト膜7が残存した場合、残存したポジ型レジスト膜7を剥離する工程を行っても良い。ポジ型レジスト膜を剥離する方法は、選択したポジ型レジストに応じて適宜公知の方法を用いて良い。例えば、具体的には、剥離液への浸漬、O2アッシングなどを用いても良い。
【0032】
すだれ状電極は、球面基体上の弾性表面波周回路を伝播する弾性表面波の励起/検知手段として設置される。
すだれ状電極は様々な形状のものが提案されているが、最も基本的なものは一対の櫛形状端子部を夫々の複数の櫛形状端子部を交互に配置して組み合わせた形状である。
【0033】
すだれ状電極は、一対の櫛歯状電極枝の間にインパルスもしくは所定の周波数の高周波信号をバースト状に適用することにより、相互に隣接した2つの櫛歯状電極枝の周期長に対応した波長の弾性表面波を励起させることが出来る(具体的には、櫛歯状電極枝を構成するラインアンドスペースパターンの幅が励起する弾性表面波の波長の4分の1に対応する)。
また、励起された弾性表面波のビーム幅は、相互に隣接した2つの櫛歯状電極枝において相互に対向している部分の長さに対応する。
また、すだれ状電極の一対の櫛形状端子部の複数の櫛歯状電極枝が交互に配列された方向が、励起された弾性表面波の波面が略進行する方向になる。
【0034】
図4に、すだれ状電極の一例を示す。図4において、対向する櫛歯状電極枝の重なり合う幅Wが、励起された弾性表面波のビーム幅に対応する。また、電極周期が、励起された弾性表面波の波長に対応する。
【0035】
図5に、一般的な球状弾性表面波素子の一例を示す。図5では、球面基体1の弾性表面波周回路2上にすだれ状電極3が形成されている。また、すだれ状電極3は、電極接続部4を介して高周波信号送受信装置5と接続されている。なお、図1において、球面基体は水晶の圧電性結晶球である。水晶の圧電性結晶球において、弾性表面波周回路2は、結晶軸であるZ軸を軸として外表面を周回するような位置にある。
【0036】
圧電性結晶球の外表面にすだれ状電極を形成し、該圧電性結晶球の弾性表面波周回路を周回する弾性表面波を該すだれ状電極により励起する場合、(1)すだれ状電極の複数の電極枝が相互に対向している部分の長さ、(2)すだれ状電極の複数の電極枝の配列周期、などを圧電性結晶球に応じて設定することが望ましい。
例えば、具体的には、球面基体として水晶の圧電性結晶球を用いた150MHzの周波数で動作させる球状弾性表面波素子において、すだれ状電極の櫛歯状電極枝部位におけるラインアンドスペース幅は約5.3μmである。
【0037】
また、すだれ状電極には、電極接続部を設けることが好ましい。電極接続部を設けることにより、弾性表面波の周回経路以外の球形表面上で外部と電気的に接続することが出来る。接続に際しては、超音波ボンダ、導電ペースト、などを用いても良い。
【0038】
また、球状弾性表面波素子は、弾性表面波周回路上に外部環境の変化に感応する感応膜を設けることにより、外部環境の変化を測定することに利用することが出来る。
これは、外部環境の変化に弾性表面波周回路上の感応膜が反応し、(1)弾性表面波周回路を1周する間におけるバースト状の弾性表面波の周回速度の変化、(2)弾性表面波周回路をバースト状の弾性表面波が1周するのに要する時間の変化、(3)1周する毎の弾性表面波の位相の遅延、(4)1周する毎の弾性表面波の強度の低下、などが起こり、周回した弾性表面波を検出することで弾性表面波が受けた感応膜の影響を把握することが出来るためである。
【0039】
球状弾性表面波素子は、弾性表面波が弾性表面波周回路を周回することから、周回回数が増加すればするほど感応膜からの変化は累積され大きくなり、微少な感応膜の変化であっても測定することが出来る。
ただし、感応膜以外の弾性表面波の変化要因がある場合、弾性表面波周回路を周回する弾性表面波の変化を検出するにあたり、感応膜以外の影響も累積されるため好ましくない。このため、特に、球状弾性表面波素子に感応膜を設けセンサとして用いる場合、弾性表面波周回路上に残存した導電膜が周回する弾性表面波に影響を与えるため好ましくない。
【0040】
以下、本発明の露光マスクについて、図6を用いて説明を行う。
本発明の露光マスク15は、透明基板上8に、すだれ状電極遮光パターン9と、包括遮光パターン14と、備える。
【0041】
透明基板は、用いる露光光を透過できる材料であれば良い。例えば、石英基板などを用いても良い。
【0042】
すだれ状電極遮光パターンは、仕様に応じたすだれ状電極の櫛歯状電極枝の電極周期および幅に対応するパターンとして形成する。
また、すだれ状電極遮光パターンは、用いる露光光を遮光し、導電性を有する材料であればよい。例えば、透明基板として石英基板を用いた場合、遮光パターンは金属膜(例えば、クロム膜、金薄膜、など)などで形成してよい。
【0043】
包括遮光パターンは、少なくともすだれ状電極パターンの櫛歯状電極枝(微細なパターン部位)の全域を覆う遮光パターンであればよい。
また、包括遮光パターンは、用いる露光光を遮光する材料であればよい。例えば、透明基板として石英基板を用いた場合、遮光パターンは金属膜(例えば、クロム膜、金薄膜、など)などで形成してよい。
【0044】
本発明の露光マスクでは、すだれ状電極遮光パターンを導電膜より形成することにより、露光マスクを弾性表面波周回路を有する球面基体に近接させ、すだれ状電極遮光パターンにインパルスもしくは所定の周波数の高周波信号をバースト状に適用することで、球面基体に弾性表面波を発生させることが出来る。
このため、すだれ状電極遮光パターンから弾性表面波を発生することにより、すだれ状電極遮光パターンから発生した弾性表面波を球面基体表面上の弾性表面波周回路に周回させることが出来る。
よって、球面基体表面上の弾性表面波周回路に周回する「すだれ状電極遮光パターンから発生した弾性表面波」を検出することにより、弾性表面波周回路を有する球面基体と、本発明の露光マスクと、との位置決め(アライメント)を好適に行うことが出来る。
【0045】
また、すだれ状電極遮光パターンと包括遮光パターンとを同一の透明基板上に形成した場合、透明基板上のすだれ状電極遮光パターンと包括遮光パターンとの相対位置は常に変わらない。このため、すだれ状電極遮光パターンを用いて露光した後、包括遮光パターンを露光するに際して、すだれ状電極遮光パターンおよび包括遮光パターンの設計時に把握した相対距離だけ移動することにより、包括遮光パターンの位置決め(アライメント)を好適に行うことが出来る。
すだれ状電極遮光パターンと包括遮光パターンとを個別の透明基板に形成した場合、包括遮光パターンの位置決め(アライメント)は、すだれ状電極遮光パターンの位置決め(アライメント)を利用できないため、困難である。
【0046】
図7に、本発明の露光マスクを用いた露光方法の一例について具体的に示す。
まず、本発明の露光マスク15上のすだれ状電極遮光パターン9を、導電膜6およびポジ型レジスト膜7が膜形成された球面基体1に近接させ、すだれ状電極遮光パターン9から弾性表面波を発生させ、位置決め(アライメント)を行う(図7(a))。
次に、本発明の露光マスク15のすだれ状電極遮光パターン9を介して、露光光13を照射する(図7(b))。
次に、設計時のパターン形成位置を元に、すだれ状電極遮光パターン9と包括遮光パターン14との相対距離の値だけ、露光マスク15を動かす(図7(c))。
次に、本発明の露光マスク15の包括遮光パターン14を介して、露光光13を照射する(図7(d))。
【実施例】
【0047】
以下、具体的に本発明の球状弾性表面波素子の製造方法について、図3を用いて説明を行う。
【0048】
まず、球面基体1として、直径3.3mmの水晶の圧電性結晶球を用意した。
上記水晶の圧電性結晶球は弾性表面波周回路(Z軸シリンダー)を備える。
【0049】
次に、球面基体1に真空蒸着により導電膜6を形成した(図3(a))。
このとき、真空蒸着はクロムと金との2元蒸着であり、形成された導電膜は、クロム50nm、金100nmの2層膜であった。
【0050】
次に、導電膜6が形成された球面基体1にポジ型レジスト膜7を形成した(図3(b))。
このとき、ポジ型レジスト(東京応化製、商品名:OFPR−800)をスピンコート法を用いて塗布した。また、ポジ型レジスト膜7の厚みは最も厚い中央付近で約1500nmであった。
【0051】
次に、櫛歯状電極枝を構成するラインアンドスペースパターンの幅が5.3μmであり、一対の櫛歯状電極枝が重なる幅Wが265μmである、すだれ状電極遮光パターン9を備えた露光マスク10を介して、球面基体1に対し紫外光を照射した(図3(c))。
このとき、露光量は120mJであった。
【0052】
次に、櫛歯状電極枝の部位を包括する領域を遮蔽する包括遮光パターン14を備えた露光マスク10を介して、球面基体1に対し紫外光を照射した(図3(d))。
このとき、露光量は400mJであった。
【0053】
次に、球面基体1を現像液(東京応化製、商品名:OFPR−NMD−3)に120秒浸漬し、現像を行い、ポジ型レジスト膜7に低露光量領域11に対応するすだれ状電極パターンを形成した(図3(e))。
【0054】
次に、すだれ状電極パターンが形成されたポジ型レジスト膜7をマスクとして導電膜6のエッチングを行った(図3(f))。
このとき、導電膜6の金薄膜に対するエッチング液の組成は、よう素:ヨウ化カリウム=100g:100g/純水1リットルとし、10秒間浸漬した。
また、導電膜6のクロム膜に対するエッチング液として、エッチング液(関東化学製、商品名:Cr−10N)を用い、90秒間浸漬した。
【0055】
次に、剥離液に浸漬し、残存したポジ型レジスト膜7の剥離を行った。
このとき、剥離液として、剥離液(東京応化製、商品名:104剥離液)を用いた。
【0056】
以上より、駆動周波数が150MHzの水晶の圧電結晶球を用いた弾性表面波素子を製造することが出来た。また、製造された球状弾性表面波素子は、弾性表面波周回路に導電膜が残存していなかった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】従来の球状弾性表面波素子の製造方法を示す概略工程図である。
【図2】球状弾性表面波素子の製造方法における露光工程を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の球状弾性表面波素子の製造方法を示す概略工程図である。
【図4】すだれ状電極の一例を示す図である。
【図5】球状弾性表面波素子の一例を示す図である。
【図6】本発明の露光マスクを示す図である。
【図7】本発明の露光マスクの使用例を示す概略工程図である。
【符号の説明】
【0058】
1…球面基体
2…弾性表面波周回路
3…すだれ状電極
4…電極接続部
5…高周波信号送受信装置
6…導電膜
7…ポジ型レジスト膜
8…透明基板
9…すだれ状電極遮光パターン
10…露光マスク
11…低露光量領域
12…残存した導電膜
13…露光光
14…包括遮光パターン
15…本発明の露光マスク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性表面波周回路を有する球面基体に導電膜からなるすだれ状電極が形成された球状弾性表面波素子の製造方法であって、
球面基体の表面に導電膜を形成する工程と、
前記導電膜の表面にポジ型レジストを塗布する工程と、
前記ポジ型レジスト膜に露光によりすだれ状電極パターンをパターニングする工程と、
前記導電膜にパターニングされた前記ポジ型レジストをマスクとしてエッチングを行うことによりすだれ状電極を形成する工程と、を備え、
前記ポジ型レジスト膜を露光によりパターニングする工程は、
すだれ状電極パターンを非露光部とする露光を行う第1の露光工程と、
すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする露光を行う第2の露光工程と、
前記第1の露光工程および前記第2の露光工程により感光した前記ポジ型レジストを除去する現像工程と、
を備えた工程であること
を特徴とする球状弾性表面波素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波素子の製造方法であって、
すだれ状電極パターンは、電極接続部を含むパターンであること
を特徴とする弾性表面波素子の製造方法。
【請求項3】
透明基板に遮光パターンを形成した露光マスクであって、
前記遮光パターンは、
すだれ状電極パターンを形成したすだれ状電極遮光パターンと、
前記すだれ状電極パターンを包括する領域内を遮光する包括遮光パターンと、
を備えた遮光パターンであり、
遮光パターンは導電膜よりなること
を特徴とする露光マスク。
【請求項1】
弾性表面波周回路を有する球面基体に導電膜からなるすだれ状電極が形成された球状弾性表面波素子の製造方法であって、
球面基体の表面に導電膜を形成する工程と、
前記導電膜の表面にポジ型レジストを塗布する工程と、
前記ポジ型レジスト膜に露光によりすだれ状電極パターンをパターニングする工程と、
前記導電膜にパターニングされた前記ポジ型レジストをマスクとしてエッチングを行うことによりすだれ状電極を形成する工程と、を備え、
前記ポジ型レジスト膜を露光によりパターニングする工程は、
すだれ状電極パターンを非露光部とする露光を行う第1の露光工程と、
すだれ状電極パターンを包括する領域を非露光部とする露光を行う第2の露光工程と、
前記第1の露光工程および前記第2の露光工程により感光した前記ポジ型レジストを除去する現像工程と、
を備えた工程であること
を特徴とする球状弾性表面波素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波素子の製造方法であって、
すだれ状電極パターンは、電極接続部を含むパターンであること
を特徴とする弾性表面波素子の製造方法。
【請求項3】
透明基板に遮光パターンを形成した露光マスクであって、
前記遮光パターンは、
すだれ状電極パターンを形成したすだれ状電極遮光パターンと、
前記すだれ状電極パターンを包括する領域内を遮光する包括遮光パターンと、
を備えた遮光パターンであり、
遮光パターンは導電膜よりなること
を特徴とする露光マスク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−98506(P2010−98506A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267353(P2008−267353)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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