説明

球状蛍光体粒子、その製造方法並びにそれが含有された樹脂組成物及びガラス組成物

【課題】透明な樹脂又はガラスによって封止した際に透明な蛍光層を形成するに足る透明性と、耐久性が低い封止剤の使用を最小限に留め得る高充填性を併せ持つ球形状が良好な球状蛍光体粒子、その製造方法並びにそれが含有された樹脂組成物及びガラス組成物を提供する。
【解決手段】A(AはAl、Ga、Ge、W、P、V、Zn、Si、B、Mg、Ca、Ba、Sr及びScのいずれか一以上の元素)、Ln(LnはY、Gd、La、Sm、Dy、Ho、Er、Yb及びLuのいずれか一以上の元素)、O及び付活剤としてのR(RはEu、Tb、Ce、Sm、Tm、Pr、Nd、Dy、Ho、Er、Yb、Mn、Ti、Fe、Cr及びPbのいずれか一以上の元素であって、Lnとして選択される元素以外の元素)を主成分とし、又は前記Ln、O及び付活剤としてのRを主成分とする非晶質相を主相とし、長辺と短辺の比が平均で1.0〜1.1である球状蛍光体粒子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性及び充填性が良好な球状蛍光体粒子、その製造方法並びにそれが含有された樹脂組成物及びガラス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線管やプラズマディスプレイ等のディスプレイ、或いは蛍光ランプ等で用いられる蛍光体は、電子線や紫外線で励起することにより発光し、特に粒径が数μm程度の場合に高い発光効率が得られるとされている。この種の蛍光体は、透光性を有する樹脂によって数μm〜十数μmの寸法の粒子状のものが封止されて使用される。蛍光体粒子は、フラックスを用いた固相反応により合成されることが多いため、その粒子形状は、不定形の多面体で多結晶体である。このため、蛍光体粒子は、均一に充填されずに蛍光層にムラが生じ、均一な発光を得ることが困難な場合があり、それに加えて、蛍光体粒子の充填率を大きくすることができず、励起光により劣化して透光性が悪化しやすい樹脂の含有率が高くなり、蛍光層の耐久性が悪くなりやすい。このため、良好な球形状の蛍光体粒子が開発されている(特許文献1乃至3)。
【特許文献1】特公平7−45655号公報
【特許文献2】特開平11−43672号公報
【特許文献3】特開平8−109375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の蛍光体粒子は、例えばYAl12:Tbとの記述があるように多結晶質であり、特許文献2に記載の蛍光体粒子は、複数の単結晶から構成されており、特許文献3に記載の蛍光体粒子は、その実施例に記載されているように結晶質のものであり、いずれも透明性が良いとはいえない。
【0004】
そこで、本発明は、透明な樹脂又はガラスによって封止した際に透明な蛍光層を形成するに足る透明性と、耐久性が低い封止剤の使用を最小限に留め得る高充填性を併せ持つ球形状が良好な球状蛍光体粒子、その製造方法並びにそれが含有された樹脂組成物及びガラス組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の元素を主成分とする非晶質相を主相とすることによって、透明な樹脂又はガラスによって封止した際に透明な蛍光層を形成するに足る透明性と、耐久性が低い封止剤の使用を最小限に留め得る高充填性を併せ持つ球形状が良好な球状蛍光体粒子を得ることができることを見出した。すなわち、本発明は、A(AはAl、Ga、Ge、W、P、V、Zn、Si、B、Mg、Ca、Ba、Sr及びScのいずれか一以上の元素)、Ln(LnはY、Gd、La、Sm、Dy、Ho、Er、Yb及びLuのいずれか一以上の元素)、O及び付活剤としてのR(RはEu、Tb、Ce、Sm、Tm、Pr、Nd、Dy、Ho、Er、Yb、Mn、Ti、Fe、Cr及びPbのいずれか一以上の元素であって、Lnとして選択される元素以外の元素)を主成分とする非晶質相を主相とし、長辺と短辺の比が平均で1.0〜1.1である球状蛍光体粒子である。
【0006】
また、本発明は、前記前記主成分を含有する溶融粒子を冷却凝固して前記非晶質相を形成せることによって球状蛍光体粒子を得る工程を有する球状蛍光体粒子の製造方法である。さらに、本発明は、上記球状蛍光体粒子が含有された樹脂組成物及びガラス組成物である。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、透明な樹脂又はガラスによって封止した際に透明な蛍光層を形成するに足る透明性と、耐久性が低い封止剤の使用を最小限に留め得る高充填性を併せ持つ球形状が良好な球状蛍光体粒子、その製造方法並びにそれが含有された樹脂組成物及びガラス組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る球状蛍光体粒子は、前記A、Ln、O及びRを主成分とする非晶質相を主相としているが、これらを主成分とする結晶相が前記非晶質相中に存在して良く、この結晶質相の長径は、200nm以下であることが好ましい。非晶質相中に存在する結晶質相の長径が200nm以下であれば、光の後方散乱が抑制されるため、透明性が損なわれることがない。ここで、結晶質相の長径とは、結晶質相が真球でない場合、最も長い直径を意味する。
【0009】
このように結晶相が非晶質相中に存在する球状蛍光体粒子は、溶融粒子の溶融や凝固の条件を調整することにより、前記主成分を含有する溶融粒子を冷却凝固して前記非晶質相を形成せることによって得ることができ、また前記主成分を含有する溶融粒子を冷却凝固して前記A、Ln、O及びRを主成分とする非晶質相を主相とする球状粒子を得た後、該非晶質相を主相とする球状粒子を条件を調整しながら加熱することにより前記非晶質相の少なくとも一部を結晶化させることによって得ることができる。結晶相が非晶質相中に存在するものを得る場合の溶融粒子の溶融及び凝固の条件の調整は、例えば、溶融温度を低くすることや、溶融粒子が冷媒に投入される際の溶融粒子の温度を低くすることによって、非晶質相中に前記結晶質相が存在するものが得られやすくなる。一方、融点が高い組成、共晶組成から大きくずれる組成等の場合に、溶融時の温度や、溶融粒子が冷媒に投入される際の溶融粒子の温度を高くすることによって、前記非晶質相のみから構成されたものが得られやすくなる。
【0010】
本発明に係る球状蛍光体粒子において、A、Ln、O及びRを主成分とするとは、A、Ln、O及びRの非結晶化を妨げない範囲でA、Ln、O及びR以外の他の成分を微量に含ませても良いという趣旨であり、例えばA、Ln、O及びRが95重量%以上であることを意味する。さらに、非晶質相を主相とするとは、結晶質相を微量に含ませても良いという趣旨であり、例えば、非晶質相が70重量体積%以上であることを意味し、非晶質相のみから構成される場合、及び非晶質相中に結晶質相が存在する場合が含まれる。
【0011】
本発明に係る球状蛍光体粒子において、Aとしては、Al、Ga、Ge、W、P、V、Zn、Si、B、Mg、Ca、Ba、Sr及びScのいずれか一以上の元素であれば良いが、Al、P、Si、Ga及びSrのいずれか一以上の元素であることが好ましい。Lnとしては、Y、Gd、La、Sm、Dy、Ho、Er、Yb及びLuのいずれか一以上の元素であれば良いが、Y、Gd、La及びLuのいずれか一以上の元素であることが好ましい。Rとしては、Eu、Tb、Ce、Sm、Tm、Pr、Nd、Dy、Ho、Er、Yb、Mn、Ti、Fe、Cr及びPbのいずれか一以上の元素であれば良いが、Eu、Tb、Ce、Sm、Tm及びPrであることが好ましい。以上の好ましい元素が選択された場合、良好な球形度を有し、かつ可視領域に高輝度な発光を呈する球状蛍光体粒子が得られやすい。AとしてAlが選択された場合に、更に、良好な球形度を有し、かつ可視領域に高輝度な発光を呈する球状蛍光体粒子が得られやすい。
【0012】
また、本発明に係る球状蛍光体粒子において、長辺とは、球状粒子の最も長い直径をいい、短辺とは、球状粒子の最も短い直径をいう。長辺と短辺の比の測定は、例えばレーザ顕微鏡を用いて行うことができる。本発明に係る球状粒子においては、レーザ顕微鏡を用いて、50個の球状粒子の測定を行い、その平均値を算出したものである。本発明に係る球状蛍光体粒子は、長辺と短辺の比が平均で1.0〜1.1である。長辺と短辺の比が1.1より大きくなると、透光性を有する樹脂及びガラスへの充填性が悪くなり、良好な蛍光が得られなくなる。また、本発明に係る球状蛍光体粒子の平均粒径は、500μm以下であることが好ましい。500μmより大きくなると、透光性を有する樹脂及びガラスへの充填性が悪くなり、良好な蛍光が得られなくなる。
【0013】
本発明に係る球状蛍光体粒子の製造方法は、上述のように前記主成分を含有する溶融粒子を冷却凝固して前記非晶質相を形成させて球状蛍光体粒子を得る工程を有するが、前記主成分を含有する溶融粒子とは、その構成成分が溶融状態を保った状態で球状化されたものである。このような溶融粒子は、例えば、フレーム法、アトマイズ法及びスピンディスク法によって得ることができ、特にフレーム法によることが好ましい。フレーム法は、一粒一粒が構成成分からなる粒子を融点以上の温度の高温域を通過させる方法であり、例えば、組成調製された粒子を化学炎又は熱プラズマ中に投入し溶融させ溶融状態の球状粒子を得る方法である。アトマイズ法は、坩堝等の中で構成成分からなる原料を溶融させて坩堝に開けられた吐出口より融液を噴出させる方法であり、スピンディスク法は、高速で回転するディスク上に融液を溶融状態を保った状態で衝突させる方法である。
【0014】
フレーム法は、スプレードライヤー等により粉末状の原料を造粒した粒子、及び原料を焼結又は溶融凝固させたバルク材料を粉砕し、所望の粒度分布になるように、調整した粒子等を用いることができ、その粒子をその凝集を抑制しながら化学炎又は熱プラズマ中に投入し、化学炎又は熱プラズマ中で溶融させることによって行われる。
【0015】
また、フレーム法は、原料のコロイド液や有機金属重合体等の所望の組成比の元素を含む液状の前駆物質などを用いることができ、その液状原料を、ノズル等を用いて化学炎又は熱プラズマ中に噴霧し、化学炎又は熱プラズマ中で溶剤又は分散媒を蒸発させた上で溶融させることによって行われる。ノズルと化学炎又は熱プラズマの間に低温の加熱域を設け、液状原料中の溶剤又は分散媒を蒸発させた上で、化学炎又は熱プラズマ中に投入することもできる。
【0016】
フレーム法において、化学炎の発生源としては、2400℃以上の高温が得られれば良く、例えば、酸素−アセチレンの混合ガスや、それに水素を加えた混合ガス等が高温を得やすいことから好適に用いられる。また、熱プラズマの発生源としては、酸素、窒素、アルゴン、炭酸ガス及びこれらの混合ガス、並びに水が用いられ、ガスが用いられる場合、誘導結合方式のプラズマ装置が用いられるが、水が用いられることが好ましい。
【0017】
アトマイズ法又はスピンディスク法の場合、原料としては、粉体、成形体、焼結体及び凝固体のいずれでも良く、また、これらの二つ以上が組み合わせたものでも良い。これら原料をその融点より高い融点を有する坩堝、例えば、Mo、W、Ta、Ir、Pt製等の坩堝、又は水などによって冷却が施されたCu製の坩堝等に収容した後、溶融させる。溶融方法は、原料をその融点以上の温度に加熱することが可能な方法であれば、いかなる方法でも良く、例えば、高周波、プラズマ、レーザ、電子ビーム、光又は赤外線等を用いることができる。原料の溶融は、原料が蒸発又は分解せず、且つ坩堝が著しく消耗しない雰囲気で行われることが好ましい。大気中、不活性ガス中、真空中等、原料と用いられる坩堝の材質に応じて、最適な雰囲気が選択される。
【0018】
アトマイズ法は、ガス圧等を用いて坩堝底部等にあけられた細孔より融液を噴出させることによって球状の溶融粒子を形成することができる。スピンディスク法は、坩堝を傾転させる、アトマイズ法の場合と同様にガス圧等を用いて坩堝底部等にあけられた細孔より融液を噴出させるなどによって、回転するディスクに融液を衝突させて、球状の溶融粒子を形成することができる。
【0019】
前記主成分を含有する溶融粒子は、これらの酸化物が原料として用いられるが、溶融した際に酸化物になるものであれば良く、水酸化物、炭酸塩等を用いても良い。これら原料の組成割合は、共晶組成を形成する割合、及びその割合の±10重量%の範囲であることが好ましい。例えば、Al、Y、O及び付活剤としてのEuから構成される球状蛍光体粒子の組成がこのような範囲である場合には、比較的低融点であることなどにより、非晶質化しやすく、球形状が良好な球状蛍光体粒子が得られやすくなるからである。
【0020】
次に、球状の溶融粒子を冷却して非晶質相を形成させるが、この冷却工程は、例えば、球状の溶融粒子を冷媒に投入して急冷凝固することによって行うことができる。前記主成分を含有する溶融粒子であれば、液体冷媒による急冷によって非平衡状態での凝固が可能になり、この球状粒子は、溶融時の原子構造がほぼ維持された状態で凝固されるために、凝固収縮が極めて小さく、球形状が良好な球状粒子が得られやすい。また、冷媒による急冷を用いることによって、凝固前の粒子同士の接触を抑制し、良好な球形状を作ることができる。冷媒としては、非可燃性の媒体が好ましく、例えば、ヘリウムガス、水、液体窒素、液体アルゴン等を用いることができる。得られた非晶質相からなる球状粒子の長辺と短辺の比を平均で1.0〜1.1に調整しても良い。当該非晶質球状粒子は、液体冷媒による急冷によって溶融時の原子構造がほぼ維持された状態で凝固されたものであり、凝固収縮が極めて小さく、球形状が良好な球状粒子が得られる。
【0021】
次に、本発明に係る球状蛍光体粒子の製造方法において、前記非晶質相中に前記結晶質相が存在するものを得る場合、非晶質相を含む球状粒子を加熱して結晶質相を析出させたり、結晶性を向上させることにより、その一部を結晶化させるが、この際の加熱温度は、800℃以上であることが好ましく、1000〜1700℃であることがさらに好ましい。加熱処理の温度、時間、昇温速度等を適宜選択することにより、構造を制御することができ、目的に応じた構造の球状粒子を製造することができる。例えば、融点に近い温度での加熱による結晶質相の析出や結晶性の向上を図る場合には、結晶相が粗大化して良好な球形状を維持できなくなることを抑制するために、大きな昇温速度及び短い加熱時間が選択される。
【0022】
球状粒子の加熱方法は、球状粒子を800℃以上融点以下の温度で加熱することが可能な方法であれば特に限定されず、抵抗加熱、サセプターを用いた高周波誘導加熱、レーザ加熱、電子ビーム加熱、光加熱、赤外線加熱等いかなる方式を用いても良い。
【0023】
一般的に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等のセラミックス製、又は、モリブデン、タンタル、白金、イリジウム等の高融点金属製の坩堝等に微小球を収容して坩堝ごと加熱を行う方法、微小球を所定の温度勾配と均熱領域が設けられた前記坩堝と同様の素材からなる管状炉中を移動させながら加熱を行う方法、又は、微小球を、所定の温度勾配と均熱領域が設けられた前記坩堝と同様の素材からなる縦型管状炉中を落下させながら加熱を行う方法等が採用される。
【0024】
球状粒子の加熱処理は、大気中、不活性ガス中、還元性ガス中、炭化水素ガス中、真空中などいかなる雰囲気で行われても良いが、用いられる坩堝及び加熱方式等により制限を受ける場合がある。
【0025】
この後、必要に応じて、球状蛍光体粒子の洗浄や熱処理が行われ、所望の球状蛍光体粒子が製造される。洗浄は、アセトン、イソプロピルアルコール等の有機溶剤、又は各種の酸によって、目的に応じてその処理がなされる。また、還元されやすい組成の球状蛍光体粒子の場合、酸素共存下で加熱されることにより、より良好な蛍光を示すことがあるため、空気中、酸素中での熱処理が400℃以上の温度で施されて所望の球状蛍光体粒子が製造される。
【0026】
次に、本発明に係る球状蛍光体粒子が含有された少なくとも可視領域において透光性を有する樹脂組成物及びガラス組成物、並びにこれらの製造方法について説明する。
【0027】
本発明に係る球状蛍光体粒子は、極めて流動性が良いため、樹脂又はガラスに充填する際に極めて良好な成形性を示す。得られた球状蛍光体粒子は、所望の充填率が得られるよう篩等によって分級された後、必要に応じて表面処理が施されて更に充填率を向上させることができる。表面処理剤としては、一般にシラン系カップリング剤が用いられるが、他にチタネート系及びアルミネート系カップリング剤を用いることもできる。
【0028】
本発明に係る樹脂組成物としては、シリコーン樹脂及びエポキシ樹脂を用いることができるが、成形時に必要な流動性を有するとともに、光によって短時間の間に著しく失透しないものであれば特に限定されない。また成形時、必要に応じて硬化剤、硬化促進剤等が添加される。
【0029】
本発明に係るガラス組成物としては、融点が1000℃以下で、成形時の温度で本発明の球状蛍光体粒子と著しく反応しない組成物を用いることができる。
【0030】
本発明に係る球状蛍光体粒子、樹脂組成物及びガラス組成物は、少なくとも可視領域において透光性を有する。
【実施例】
【0031】
実施例1
次に、本発明に係る球状蛍光体粒子の実施例1について説明する。原料にはα−Al粉末、Y粉末及びTb粉末を用いた。α−Al粉末、Y粉末及びTb粉末を重量比で前者から65.3:29.3:5.4の割合で水を用いた湿式ボールミルによって混合し、スプレードライヤーを用いて得られたスラリーを造粒乾燥して平均粒径11μmの顆粒状の粒子を得た。
【0032】
酸素及びアセチレンの混合ガスの燃焼により形成された火炎中に、混合ガスの噴出方向と平行に得られた顆粒状の粒子を供給し、火炎中で溶融球状化した後、火炎先端を流水中へ入射させることで溶融粒子を流水中へ投入し凝固させることによって実施例1に係る球状蛍光体粒子を得た。
【0033】
得られた実施例1に係る球状蛍光体粒子は、平均粒径8μmであり、その長辺と短辺の比は平均で1.02であった。実施例1に係る球状蛍光体粒子は、Cu−Kα線を用いたX線回折、透過電子顕微鏡観察及び透過電子顕微鏡に設置された半導体X線検出器による特性X線の分析により、Al、Y、O及びTbからなる非晶質相から構成されていることがわかった。
【0034】
実施例1に係る球状蛍光体粒子をアセトンによって洗浄し乾燥した後、透明なシリコーン樹脂により封止して厚さ0.4mmの透明な成形物を作製し、蛍光スペクトルを測定した。380nmの励起波長で励起した際のこの成形物の蛍光スペクトルを図1に示す。
【0035】
また、実施例1に係る球状蛍光体粒子をアセトンによって洗浄し乾燥した後、透明なビスマス系ガラスにより封止して上記と同様の透明な成形物を作製し、蛍光スペクトルを測定したところ、図1と同様な蛍光スペクトル図を得た。
【0036】
実施例2
次に、本発明に係る球状蛍光体粒子の実施例2について説明する。原料組成を、α−Al粉末、Y粉末及びEu粉末を重量比で前者から63.9:22.3:13.8の割合に変更した以外は実施例1と同様の方法によって、実施例2に係る球状蛍光体粒子を得た。
【0037】
実施例2に係る球状蛍光体粒子は、平均粒径8μmであり、その長辺と短辺の比は平均で1.02であった。実施例2に係る球状蛍光体粒子は、Cu−Kα線を用いたX線回折、透過電子顕微鏡観察及び透過電子顕微鏡に設置された半導体X線検出器による特性X線の分析により、Al、Y、O及びEuからなる非晶質相から構成されていることがわかった。
【0038】
実施例2に係る球状蛍光体粒子をアセトンによって洗浄し乾燥して空気中800℃で加熱した後、透明なシリコーン樹脂により封止して、厚さ0.4mmの透明な成形物を作製した。380nmの励起波長で励起した際の蛍光スペクトルを測定し、図2に示す蛍光スペクトル図を得た。
【0039】
実施例3
次に、本発明に係る球状蛍光体粒子の実施例3について説明する。実施例1及び2で得られたAl、Y、O及びTbからなる非晶質相から構成される球状粒子及びAl、Y、O及びEuからなる非晶質相から構成される球状粒子を混合した後、透明なシリコーン樹脂により封止して、厚さ0.4mmの透明な成形物を作製した。この成形物が380nmの励起波長の励起によって白色発光を呈することが確認された。
【0040】
比較例1
比較例1として、溶融粒子を空気中で凝固させた以外は実施例1と同様の方法で球状粒子を得た。比較例1に係る球状粒子は、平均粒径8μmであり、Cu−Kα線を用いたX線回折、透過電子顕微鏡観察及び透過電子顕微鏡に設置された半導体X線検出器による特性X線の分析により、α−Al及びTbを含有するYAl12から構成されていることがわかった。
【0041】
この比較例1に係る球状粒子をアセトンによって洗浄し乾燥した後、透明なシリコーン樹脂及びビスマス系ガラスにより封止して厚さ0.2mm及び0.4mmの透明な成形物を作製したところ、いずれも成形物を得ることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1で得られた球状蛍光体粒子の380nmの励起波長による蛍光スペクトルを示す図である。
【図2】実施例2で得られた球状蛍光体粒子の380nmの励起波長による蛍光スペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A(AはAl、Ga、Ge、W、P、V、Zn、Si、B、Mg、Ca、Ba、Sr及びScのいずれか一以上の元素)、Ln(LnはY、Gd、La、Sm、Dy、Ho、Er、Yb及びLuのいずれか一以上の元素)、O及び付活剤としてのR(RはEu、Tb、Ce、Sm、Tm、Pr、Nd、Dy、Ho、Er、Yb、Mn、Ti、Fe、Cr及びPbのいずれか一以上の元素であって、Lnとして選択される元素以外の元素)を主成分とする非晶質相を主相とし、長辺と短辺の比が平均で1.0〜1.1である球状蛍光体粒子。
【請求項2】
前記主成分を含有する溶融粒子を冷却凝固して前記非晶質相を形成させたことを特徴とする請求項1記載の球状蛍光体粒子。
【請求項3】
前記非晶質相中に結晶質相が存在することを特徴とする請求項1又は2記載の球状蛍光体粒子。
【請求項4】
前記結晶質相の長径は、200nm以下であることを特徴とする請求項3記載の球状蛍光体粒子。
【請求項5】
前記主成分を含有する溶融粒子を冷却凝固して前記非晶質相を形成せることによって請求項1記載の球状蛍光体粒子を得る工程を有する球状蛍光体粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至4いずれか記載の球状蛍光体粒子が含有された樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至4いずれか記載の球状蛍光体粒子が含有されたガラス組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−215486(P2009−215486A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62527(P2008−62527)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】