説明

理美容用シャンプー椅子

【課題】 従来の理美容椅子にあっては、前記したように2つのシリンダを使用して座部の前後動と背凭れの起伏を行なっているので、部品点数が多くなり製造コストが高くなり、また、2つのシリンダによって座部の移動量と背凭れの起伏度が別々であるので、被施術者の身長の違いによる位置合わせをするための操作が複雑になるといった問題があった。
【解決手段】 油圧シリンダ等の1つの駆動源7によって平行リンク1b,2,3を変位させることにより、該平行リンクに取付けられた座部4をシャンプーボールB側に向かって上昇すると共に前記平行リンクに起伏可能に支持された背凭れ11も伏倒され、かつ、該背凭れは所定の位置まで伏倒させると伏倒が停止されて前記座部と共に前記シャンプーボールのネック受けB1側に所定位置まで近接して停止される理美容用シャンプー椅子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は理美容用椅子、特に、理美容院において施術者が洗髪サービスを行う際に、被施術者を着座させた後にバックシャンプーの姿勢を取らせる洗髪用椅子として好適な理美容用シャンプー椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来におけるバックシャンプー用の椅子としては、本出願人会社が出願した特開2004−228456の理美容用椅子がある。この発明は、着座している被施術者をシャンプーボール側に移動させながら背凭れを徐々に伏倒させることで被施術者の首後ろをシャンプーボールのネック受けに支持させるものである。そして、この発明にあっては、座部の移動用シリンダと背凭れの起伏用シリンダの2つを用いて行なっているものである。
【特許文献1】特開2004−65507
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところて、前記した理美容椅子にあっては、前記したように2つのシリンダを使用して座部の前後動と背凭れの起伏を行なっているので、部品点数が多くなり製造コストが高くなり、また、座部の移動量と背凭れの起伏度の調整を個別の油圧シリンダによって行なっているので、被施術者の身長の違いによる位置合わせをするための操作が複雑になるといった問題があった。
【0004】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、1本のシリンダで座部の移動および昇降と背凭れの起伏動作を行なうようにしたので、シャンプー椅子としての構造が簡易となり、また、組み立て時の工数の削減によってコストの低減を図ることができ、また、背凭れの寝角度を微調整することができるので、被施術者の首後ろ部分をシャンプーボールのネック受けにフィットさせることができる理美容用シャンプー椅子を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の理美容用椅子シャンプー椅子は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、油圧シリンダ等の1つの駆動源によって平行リンクを変位させることにより、該平行リンクに取付けられた座部をシャンプーボール側に向かって上昇すると共に前記平行リンクに起伏可能に支持された背凭れも伏倒され、かつ、該背凭れは所定の位置まで伏倒させると伏倒が停止されて前記座部と共に前記シャンプーボールのネック受け側に所定位置まで近接して停止されることを特徴とする。
【0006】
請求項2の手段は、前記した請求項1において、前記背凭れの先端が前記シャンプーボールのネック受けに対して所定位置まで近接して停止した状態において、背凭れのみをさらに起伏可能としたことを特徴とする。
【0007】
請求項3の手段は、前油圧シリンダ等の1つの駆動源と、該駆動源によって平行移動する平行リンクと、該平行リンクに取付けられた座部と、前記平行リンクに対して回動自在に取付けられた背凭れと、該背凭れの伏倒初期状態において移動が阻止され伏倒の停止状態において移動可能な摺動板と、前記背凭れが所望量だけ伏倒すると先端がストッパ部材に当接して停止する調節杆とから構成し、該調節杆が駒に当接することにより前記摺動板が伸長されて前記背凭れの先端がさらにシャンプーボールのネック受け側に向かって移動することを特徴とする。
【0008】
請求項4の手段は、前記した請求項3において、前記調整杆は前記背凭れが伏倒を開始すると変位し、該伏倒が所望量行なわれると先端が偏心した前記ストッパ部材である駒に当接し、該駒をハンドル操作によって回転することで前記偏心した量に応じて背凭れをさらに起伏可能とすることで微調整が可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は前記したように、1つの駆動源によって平行リンクを変位させ座部の上昇とシャンプーボール側への移動を行なわせると共に背凭れを所望量伏倒させることで、着座している被施術者の首後ろ部分をシャンプーボールのネック受けに支持させることができるので操作性が良く、構造が簡易となり組み立て時の工数の削減によってコストの低減を図ることができる。
【0010】
また、ハンドルを回転することで背凭れをさらに伏倒させる微調整が可能なので、首後ろ部分をシャンプーボールのネック受けにフィットさせることができる等の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、油圧シリンダ等の1つの駆動源によって平行リンクを変位させて、該平行リンクに取付けられた座部をシャンプーボール側に向かって上昇させながら移動させると共に同じく平行リンクに取付けられた背凭れを所望量伏倒させるようにしたものである。
【実施例】
【0012】
以下、本発明に係る理美容用シャンプー椅子の一実施例を図面と共に説明する。
Aは本発明に係る理美容用シャンプー椅子、Bは該シャンプー椅子の背面側に設置されたシャンプーボールにして、シャンプー椅子Aに着座した被施術者が伏倒した位置において、該被施術者の首後ろ部分を支持するネック受けB1が形成されている。
【0013】
次に、理美容用シャンプー椅子の詳細について説明するに、1は四角形状に形成された左右一対の基台にして、四隅には水平状態を維持するための高さ調整脚1aが取付けられている。2は基台1の上桟1bに回動自在に軸支された一対の垂下アームにして、該垂下アーム2の下端には水平アーム3が同じく回動自在に軸支されている。そして、基台1の上桟1bと水平アーム3および垂下アーム2とによって平行リンクが形成されている。なお、前記一対の基台1には図示していないが外側が体裁を良くするために革や合成皮革を被せた枠体で覆われている。
【0014】
4は前記水平アーム3の上面にネジ止め固定された座部にして、上面には図示していないがクッション材が取付けられる。また、水平アーム3には足載せ台5を取付けるためのクランク状の固定部材6が取付けられている。7はシリンダ側が前記基台1に取付けられた取付金具1cに軸支された油圧シリンダにして、ラム側は前記垂直アーム2から突出した固定ピン2aに一端が固定された連結板8の他端に軸支されている。なお、駆動源としては油圧シリンダに限定されるものではなく、モータとネジ棒からなるもの、あるいは、エアシリンダであってもよい。
【0015】
9は一端が前記取付金具1cに軸支された鞘にして、該鞘9には摺動板10が摺動自在に嵌挿されている。11は背凭れにして、該背凭れ11の背凭れ基板11aには逆への字状の固定板11bが固定され、該固定板11bの折曲部には固定軸11cが突設され、該固定軸11cには一端が前記固定ピン2aに固定された支持板12の他端が回転自在に軸支されている。従って、背凭れ基板11aは支持板12に対して回転可能となっている。また、前記固定板11bの折曲片部11b1の先端には前記摺動板10の先端が軸支されている。
【0016】
13は前記固定軸11cに固定された固定板14に一端が接続された調整杆にして、先端側は前記背凭れ基板11aの裏面側に固定されたパイプ15内に挿通されている。16は前記背凭れ基板11aの裏面側に回転自在に軸支された回転パーにして、一端は背凭れ11の側面から突出され、該突出された部分にハンドル16aが取付けられている。そして、前記回転バー16の前記挑戦杆13の上端と対向する位置には図7に示す偏心した多角形状の駒17が取付けられている。
【0017】
この駒17は図7aに示すような四角形の場合には2つの面で調整杆13の先端が当接し、また、図7bの場合には3つの面で調整杆13の先端が当接し、さらに、図示していないが楕円形状とすることで無段階的に調整杆13の先端が当接することになる。これにより、後に詳述するように背凭れ11が伏倒角度を微調整することが可能となる。
【0018】
18は前記回転バー16に固定されたスプリングを引っ掛けるための引掛部材、19は一端が前記固定板14に引っ掛けられ、他端が前記スプリング引掛部材に引っ掛けられたスプリングである。そして、前記引掛部材18はハンドルを初期位置(図1〜図5に示す位置)に戻した時に、前記調整杆13の先端と対向する位置が偏心軸より最も間隔が長くなる駒17の面となるように回転パー16に固定されている。なお、20は背凭れ基板11aに開口されたクッションの空気抜き孔である。
【0019】
次に、前記した構成に基づいて動作を説明するに、図1、図2に示す被施術者の導入状態にあっては、油圧シリンダ7のラムはシリンダ内に収納された状態であるため、座部4は前方に位置し、また、背凭れ11は起立状態となっている。
【0020】
この状態において、被施術者を座部4に着座させシャンプーを行なう場合には、図示しないシャンプーを行なうための操作スイッチを操作すると、油圧シリンダ7内に油が供給されてロッドが伸び始める。ロッドが伸びると連結板8を介して平行リンクの一方の垂下アーム2が図において左方向に押されるので、座部4と背凭れ11は水平に保たれた状態で左方向(シャンプーボールB側)に移動しながら上昇する。
【0021】
この移動時において、背凭れ11は、背凭れ11の自重と被施術者の背凭れに対する寄り掛かり重量によって反時計方向の荷重が加わるので、摺動板10は鞘9内に収納された状態を維持しながら伏倒される。また、背凭れ11が伏倒を開始すると一端が固定板14に軸支されている調節杆13が背凭れ基板11aの回転軸である固定軸11cとパイプ15との偏差によって背凭れ基板11aが所定の角度まで伏倒すると、調節杆13がパイプ15内を移動して先端が駒17に当接する。従って、この状態において背凭れ11の伏倒は停止する(図3参照)。
【0022】
しかし、背凭れ11の伏倒が停止しても油圧シリンダ7によるラムの突出は行なわれ、平行リンクの上昇と右方向への移動を続けられる。この状態において、摺動板10は鞘9に対して引き抜かれる方向に移動するので、さらなる座部4と背凭れ11の斜め上方への移動は行なわれる。そして、施術者が被施術者のシャンプーボールBに対する位置が良いと判断してスイッチをオフにすると、全ての動作は終了し、被施術者の首後ろ部がシャンプーボールBのネック受けB1に一致した状態となる(図4参照)。
【0023】
この状態において、ネック受け部B1に対して被施術者の首後ろ部分が高い場合には、ハンドル16aをスプリング19のバネ力に抗して回転して、回転バー16の中心線から距離が短い面が調節杆13の先端と対向するように駒17を回転させることで、背凭れ11はさらに伏倒するので被施術者の首後ろ部分とネック受けB1とはフィットすることとなる。なお、駒17の形状を図7に示すように変えることで、背凭れ11の微調整を複数段階あるいは無段階に変更することが可能である(図5、図6参照)。
【0024】
また、被施術者の座高が高く前記ハンドル16aによって背凭れ11の寝角度が高い場合には、復帰用のスイッチを操作してシリンダ7内の油を抜きながら平行リンクを前記したとは反対方向に変位させることで、背凭れ11は座部4と共にシャンプーボールBから離れる方向に移動するので、この調整を行なうことで被施術者の首後ろ部をネック受けB1に一致させることができる。
【0025】
次に、被施術者のシャンプーが終了した場合の動作について説明するに、復帰用のスイッチを操作することで、油圧シリンダ7のラムがシリンダ内に収納されるので平行リンクは前記したとは反対の方向に変位して座部4は右方向に下降しながら移動すると共に背凭れ11は起立して初期の状態となる。
【0026】
また、初期の位置に復帰した状態においては、調節杆13は下降して駒17から離れているので、被施術者が座部4から離れるとスプリング19のバネ力によってハンドル16aは初期位置に戻り、従って、駒17も初期位置に戻るものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る理美容用シャンプー椅子の初期状態を示す背凭れ側から見た背面図である。
【図2】同上の側面図である。
【図3】座部の上昇移動と背凭れの伏倒途中の側面図である。
【図4】座部と背凭れが停止した状態の側面図である。
【図5】背凭れを微調整した状態の側面図である。
【図6】同上の背凭れ側から見た背面図である。
【図7】駒と調整杆との関係を示し、(a)は駒が四角形の場合の側面図、(b)駒が六角形の場合の側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 基台
1b,2,3 平行リンク構成部材
4 座部
7 油圧シリンダ
10 摺動板
11 背凭れ
13 調整杆
16a ハンドル
17 駒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧シリンダ等の1つの駆動源によって平行リンクを変位させることにより、該平行リンクに取付けられた座部をシャンプーボール側に向かって上昇すると共に前記平行リンクに起伏可能に支持された背凭れも伏倒され、かつ、該背凭れは所定の位置まで伏倒させると伏倒が停止されて前記座部と共に前記シャンプーボールのネック受け側に所定位置まで近接して停止されることを特徴とする理美容用シャンプー椅子。
【請求項2】
前記背凭れの先端が前記シャンプーボールのネック受けに対して所定位置まで近接して停止した状態において、背凭れのみをさらに起伏可能としたことを特徴とする請求項1記載の理美容用シャンプー椅子。
【請求項3】
油圧シリンダ等の1つの駆動源と、該駆動源によって平行移動する平行リンクと、該平行リンクに取付けられた座部と、前記平行リンクに対して回動自在に取付けられた背凭れと、該背凭れの伏倒初期状態において移動が阻止され伏倒の停止状態において移動可能な摺動板と、前記背凭れが所望量だけ伏倒すると先端が駒に当接して停止する調節杆とから構成し、該調節杆がストッパ部材に当接することにより前記摺動板が伸長されて前記背凭れの先端がさらにシャンプーボールのネック受け側に向かって移動することを特徴とする理美容用シャンプー椅子。
【請求項4】
前記調整杆は前記背凭れが伏倒を開始すると変位し、該伏倒が所望量行なわれると先端が偏心した前記ストッパ部材である駒に当接し、該駒をハンドル操作によって回転することで前記偏心した量に応じて背凭れをさらに起伏可能とすることで微調整が可能としたことを特徴とする請求項3記載の理美容用シャンプー椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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