説明

環境モニタリング用の装置および方法

【課題】β減衰法に基づき空中散在粒状物質の質量濃度測定の内在精度を最適化し、体系的バイアスを量的に除去することを可能とする。
【解決手段】稼働またはスパイフィルタ(F1〜F6)により空中散在粒状物質の質量濃度の特定を可能とする、環境モニタリング用の装置(1)であって、β線放出体(16)と、前記稼働またはスパイフィルタ(F1〜F6)上に付着した粒状物質の質量を検出する検出器(18)とを備え、前記稼働フィルタ(F1〜F6)と同一の環境条件に曝されたスパイフィルタ(S12〜S16)の測定と、2つの測定の補正による、空中の粒状物質の濃度特定と、をさらに提供する、装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境モニタリング用の装置および関連する方法に関する。特に、本発明は、空中浮遊粒状物質の質量濃度を特定する装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
一定の粒度分析上の特徴を有する空中散在粒状物質、つまり、いわゆるPMx(「粒状物質(Particulate Matter)x」、<xμmの空気力学径を有する大気浮遊エアロゾル粒状物質を示す)の質量濃度の特定は、大気質状態の客観的評価を目的とした基本的な必要性を象徴する。さらに、このような特定は、国際的なレベルで施行されている法令により義務付けられている。
【0003】
例えば、粒状物質PM10の質量濃度の特定に関するリファレンス法は、標本となる粒状物質サンプルの抽出、それらのフィルタ手段上への収集、および、後に続く「二重秤量法」と呼ばれる較差重量法(differential gravimetric technique)による質量特定(サンプリング前後のフィルタ手段の質量特定)に基づく。
【0004】
しかし、このようなリファレンス法を広く大気質管理の目的に適用する場合、以下のような2つの根本的な制限が伴う。
・ 運用上の複雑性、つまり、比較的長期間にわたって熟練した人材の雇用、および、高額なロジスティックスや、例えば空調管理された部屋のような特定の設備の使用を要する。
・ 大気質状態について大衆に知らせるタイミングが遅れる(国際的な法令で重視される主要な要求事項)。
【0005】
これらの重量リファレンス法に関連する制限を考慮すると、自動計測が使用される大気質管理を行うネットワーク上では、検討される時間における粒状物質の平均質量濃度(通常、24時間毎の平均濃度)の推定値を、現実的にリアルタイムで提供することが可能となる。しかし、現状の技術では、バイアスのかかった質量濃度データ、つまり、往々にして定量的に関連する誤差の影響を受けたデータを提供するため、大抵の自動計測の性能は満足のゆくものとは考えられない。
【0006】
自動計測の中で、特に関連があるのは、フィルタ手段上に堆積した粒状物質サンプルの質量濃度を特定するためのものであり、均一物質フィルムを通過する(例えば14Cソースから放射された)β線フローの減衰の測定に基づく、いわゆるβ減衰法を使用する。
【0007】
図1の図表は、粒状物質のサンプリングおよび測定プロセスの分析構成を示す。ここで、全体的なサンプリングおよび測定プロセスは、いくつかの後続の段階に基づいていることが強調される。一般的に、厳密な分析には、各段階において期待値からの偏差の原因を特定すること、また、このような偏差を量的に推定することが必要である。

ここで、
<Y>は、測定における期待値を示し、
<XPMx>は、期待されるPMx値を表し、
δTは、理論上の粒度分析カット効率(granulometric cut efficiency)からの偏差を表し、
δLaは、粒状物質堆積段階における、アーチファクト(artifact)の存在を表し、
δLcは、測定前のサンプル調整段階におけるバイアスの存在を表し、
δMは、質量測定精度を表し、
εは、残りのランダムな誤差を表す。
【0008】
知られているように、β減衰原理に基づく質量測定法には、測定精度および再現性を低下させる下記3つの基本的な誤差源がある。
・この方法の内在的なバイアス(内在精度)
・この測定法の実施による体系的なバイアス(測定再現性)
・ランダムな偏差の全体的な影響に関連するランダムなバイアス(ランダムな不確実性)であって、その中には、β放射を支配するポワソンの統計的分布と本質的に関連するものや、ソースと検出器に対するフィルタマトリックスの幾何学的な再配置におけるばらつきに関連するものなどがある。
【0009】
β測定法の内在精度(この方法の内在的なバイアス)に関して、これは、通過される物質を構成する電荷とβ線との相互作用を支配する法則に基づくということを言及する必要がある。したがって、ソースと検出器との間に介在させられる一定の膜の質量特定では、測定される物質の膜の原子数および質量数、入射電子のエネルギの最大値、さらにはソース−検出器システムの形状、フィルタ基板の均一性欠如、沈着している粒状物質の均一性欠如、較正の手順や技術(較正フォイルを作る材料の適切な選択、正確な較正手順)などに比例した、通過される物質の膜の質量厚さに対する、入射するβ電子のエネルギスペクトルの機能的依存、を慎重に評価することが必要となる。
【0010】
測定の再現性を低下させる体系的なバイアスの要因として最も関連があるもののうち、以下は言及すべきものである。
・ 入射する電子エネルギ、電源電圧の値、応答不感時間、信号処理およびコントロールチェーンの効率等の一連のパラメータに依存する、実際の検出器(例えば、ガイガー・ミュラー(Geiger−Muller))のカウント効率
・ 環境条件(気圧、温度、相対湿度等)に依存して変動し得るソースと検出器との間に存在する空気の密度の変動
・ 測定チャンバ内に存在する空気またはサンプリング段階で吸入される外気と水蒸気分子との交換による、吸湿性フィルタ媒体の質量の変動、つまり、これに関連する質量厚さ(mass thickness)Xfの変動
・ ソースと検出器との間のフィルタ媒体(サンプルフォイル)の機械的再配置
・ フィルタ媒体上に堆積した粒状物質内の放射性核種の存在
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明において提示し、解決する技術的課題は、β減衰法に基づき空中散在粒状物質の質量濃度を特定する装置および方法であって、測定の内在精度を最適化し、この測定法の実施による体系的バイアスを量的に除去することを可能とする、装置および方法を提供することである。
【0012】
このような課題は、請求項1に記載する装置および請求項32に記載する方法によって解決される。また、本発明の好ましい特徴は、これらの請求項の従属項に記載する。
【0013】
本発明は、いくつかの関連した効果を提供する。主要な効果は、空気中の粒状物質の質量を測定する技術、特に、β線減衰に基づくものが、測定学的にトレース可能なものとなるという点にある。実際に、あらゆる作業条件または環境的な状況において、本発明は、そのような技術の実施に本質的に関連するバイアスの評価と除去を可能とする(測定再現性)。したがって、この測定法の背景において、現状の技術が有する制限は克服され、したがって、PMx質量濃度測定用の自動計測の標準対象として本技術を提案し得るほどに高い性能制限が達成される。つまり、本発明により達成し得る結果は、重量リファレンス法を用いて達成し得るものと同等の厳密さに達する。
【0014】
本発明の他の効果、特徴および動作工程は、以下に記す、本発明のいくつかの(例示として挙げられ、限定することを意図していない)実施形態の詳細な説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下、添付する図面を参照する。
【図1】図1は、既に説明したが、PMX質量濃度測定の動作原理およびサンプリングの概略図を示す。
【図2】図2は、重量法およびβ法による、フィルタ上の一連の測定値の時間的パターンに関する実験データ、および、各々の回帰解析を示す。
【図3】図3は、重量法およびβ法による、フィルタ上の一連の測定値の時間的パターンに関する実験データ、および、各々の回帰解析を示す。
【図4】図4は、測定誤差の異なる要因(contribution)の概略図を示す。
【図5】図5は、各フィルタ上の一連の測定値の時間的パターンに関する実験データを示す。
【図6】図6は、各フィルタ上の一連の測定値の時間的パターンに関する実験データを示す。
【図7】図7は、後述する実験データに関する各回帰分析を示す。
【図8】図8は、後述する実験データに関する各回帰分析を示す。
【図9】図9は、本発明の根底をなす質量測定の異なる要因の図表による描写を示す。
【図10】図10は、フィルタ媒体上に存在する自然放射能の測定原理の概略図を示す。
【図11】図11は、本発明に係る装置の第1実施形態の概略図を示す。
【図12】図12は、図11の装置における有効なフィルタ表面の概略側面図を示す。
【図13】図13は、図11の装置における有効なフィルタ表面の平面図を示す。
【図14】図14は、図11の装置におけるフィルタシステムの斜視図を示す。
【図15】図15は、図11の装置における測定ユニットの一部を示す斜視図である。
【図16】図16は、図11の装置における測定ユニットの一部を示す概略平面図である。
【図17】図17は、図11の装置における測定ユニットの一部を示す概略平面図である。
【図18】図18は、図11の装置における測定ユニットの一部を示す側面図である。
【図19】図19は、図11の装置の動作に関するフローチャートを示す。
【図20】図20は、図11の装置の動作に関するタイムチャートを示す。
【図21】A〜Hは、それぞれ、予備質量測定段階において、各動作位置における図16に示すユニットの一部の平面図を示す。
【図22】A〜Mは、それぞれ、質量測定中の、各動作位置における図16に示すユニットの一部の平面図を示す。
【図23】図23は、質量測定計算の動作手順の概略的なチャートを示す。
【図24】A〜Cは、それぞれ、較正制御段階において、各動作位置における図16に示すユニットの一部の平面図を示す。
【図25】図25は、本発明に係る装置の各動作モードの概略図を示す。
【図26】図26は、本発明に係る装置の各動作モードの概略図を示す。
【図27】図27は、本発明に係る装置の各動作モードの概略図を示す。
【図28】図28は、本発明に係る装置の各動作モードの概略図を示す。
【図29】図29は、本発明に係る装置の各変形例の概略図を示す。
【図30】図30は、本発明に係る装置の各変形例の概略図を示す。
【図31】図31は、本発明に係る装置の各変形例の概略図を示す。
【図32】図32は、本発明に係る装置の各変形例の概略図を示す。
【図33】図33は、本発明に係る装置の各変形例の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の装置および方法の好ましい実施形態の詳細な説明に進む前に、本発明により提示され、かつ解決される技術的な課題の提示背景において、本発明の発明者により開発されたそれらの分析的な根拠を以下に記す。
【0017】
質量厚さXfを有するフィルタ媒体上に付着した粒状物質の膜の質量厚さXpの、β減衰法による推定は、当該膜の存在下および非存在下において、適切な検出器に到達するβ電子フローに引き起こされる相対変動の正確な定量化に基づいている。純粋に形式的に説明すると、これは、下記の関数式により表され得る。
【数1】

ここで、βijは、β減衰法の根底にある物理数学的な関係の複素数(complex)を表す演算子を示し、ФiおよびФjは、それぞれ、i番目、j番目の測定セッションにより測定されたβフローを示す。電子フローの相対変動を定量化する必要性により、1次元(adimensional)の変数の選択が生じる。
【数2】

ここで、Ф0は、ソースと検出器との間に介在する質量厚さXfがゼロ(nil)のときのβ電子フローである。
【0018】
問題となっている技術の正確な実施には、関係(1)の可逆条件、つまり、変数zi(xf)およびzj(xf+xp)の情報を使用して、フィルタ膜上に付着した材料の質量厚さを推定する可能性を研究する必要があり、下記のように表される。
【数3】

【0019】
理想的な場合、つまり、xfi=xfjの場合、測定チャンバ内の熱力学的条件が、二つの測定セッション間で変動しない場合、検出器効率が一定である場合、質量圧さxpが、xfに対して量的にわずかである場合等では、演算子βijは単一の変数zの関数により概算し得る。その形状を特定するためには、下記の微分関係(differential relationship)により表されるβ減衰プロセスの数学的記述から始めることが有用である。
【数4】

この関係は、積分されると、下記の形を仮定する。
【数5】

ここで、μ(x)は、ソースとレシーバとの間に介在するフォイルの質量厚さxの値の関数である、質量吸収係数を表す。
【0020】
μ(x)関数の主な特徴は、正(μ(x)>∀x)であること、および、xについて単調増加することである。これらの特徴は、β線と物質との相互作用を支配する物理的な規定の直接的な帰結であり、事実、

(ここでα>0)であり、質量厚さxが増加するとき電子の最大エネルギEmaxは減少する傾向にあるということに言及するだけで十分である。したがって、(4)は不可避であり、下記のように表すことが可能である。
【数6】

【0021】
これにより、下記関係を介して、質量厚さのあらゆる有限の変数Δxをトレースすることが可能となる。
【数7】

【0022】
したがって、関係(3)と関係(7)とを比較することにより、理想的な設計では、関数

は、g(z)に対応することが推察される。
【数8】

【0023】
上記表現は、関数g(z)の実験的特定への最善のアプローチ、つまり、β法に基づく質量測定システムの較正に対する最善のアプローチを示す。事実、β測定システムの動作範囲における質量厚さxiのn値を選択するにあたって、ziの対応する値、原則的に、非常に高精度で特定され得る。したがって、最尤法(maximum likelihood technique)を通して、実験データの最良適合を達成することが可能である。行われた研究から、zにおける3次の同次多項関係は、実験データの最適な概算であることを示す。g(z)が既知の場合、単なる微分により、関数

および吸収係数μ(x)の対応する値を得ることが可能である。このアプローチにより、較正関数g(z)の係数の特定における不確実性を最小限に抑えられる。
【0024】
本発明の主題としての装置を使用することにより、定期的な再較正を行う必要は一切無くなり、精密度の観点における応答安定性の制御は、機能性試験によって行われることに留意されたい。実際、作用質量厚さ範囲全体における関数k(z)は、測定再現性に関連する不確実性の要因が、その評価において量的にわずかになるように、機械試験段階で行われる精密な構成手順を通して求められる。いずれの場合においても、装置は、自動的にまたはオペレータの要求に従って、適度な質量厚さを有する2枚のアルミニウムフォイルを仲介標準として用いて、長期間較正安定性の試験を行う。
【0025】
さらに留意すべきは、例えば、フィルタ媒体の均一性の欠如、付着する粒状物質の均一性の欠如、測定フォイル(gauging foils)を構成する材料の不適切な選定、不正確な測定手順など、内在的な精度を損なわせる考え得るすべてのバイアスを最小限に抑えることを要するβ法の正確な実施は、(7)によって表される関数形式の有効性に必要な条件である。正確に実施された計器応答の内在的精度の観点から、達成可能な品質の例として、図2および図3には、重量リファレンス法を利用して特定された(多分散NaClのエアロゾルにより構成された)粒状物質の質量厚さデータと、本発明の主題である装置により実施されたβ法により得られた対応するデータとの比較結果を示す。関数k(z)は、異なる質量厚さ値を有するアルミニウムを使用した多点較正により、経験的に特定された。最適な内在精度条件の達成は、計器応答における適切な定量レベルを確保するのに十分な条件では決してないということを強調しておく必要がある。実際に、この目的で、決定的な役目が測定の再現性レベルにより果たされている。
【0026】
ここで行われた観察は、実際のケースに拡張することができ、その場合、実際のシステムでは、ソースと検出器との間に密度ρを有する空気が介在すること、および、検出器の効率は、例えば、電源電圧や寿命、入射する電子のエネルギ(xに依存)などの他の変動に依存し、かつ時間的に変化する(応答のタイムドリフト)こと、を考慮に入れて、関係(5)を一般化することが必要となる。この理由から、検出器に到達する電子のエネルギが、入射電子エネルギの依然として関連する部分(fraction)である、質量厚さxの数値範囲において、(5)は、下記の形式に書き換えられなくてはならない。
【数9】

ここで、Gは、システム形状に対するβ演算子依存を示す。したがって、2つの測定セッションiとjとの間の変数zの相対的変動は、ソースと検出器との間に介在するフィルムの質量厚さxの増加δxがある場合、下記のように表される。
【数10】

【0027】
質量厚さδxの変動は、フィルタ手段δxfの質量厚さの変動と、付着する粒状物質のフィルムの影響xpとの合計として表し得る。
【数11】

【0028】
したがって、(10)は下記のように書き換えられることになる。
【数12】

関係(12)は、βフローの値(変数z)における相対変動を特定するのに寄与するすべての項を明確に強調している。特に、

の項は、フィルタ手段上に付着した粒状物質の膜の存在に関連する機能的な影響を表し、一方、

の項は、測定されたβフローにおける体系的な変動であって、フィルタ上に付着した粒状物質の質量の存在に依存しない変動(体系的バイアス)を表す。これらの影響は(記載順に)下記によるものである。
・ フィルタ媒体の質量厚さにおける変動、
・ 空気密度の変動、
・ 検出器の応答効率の変動、
・ ソースと検出器との間の、相対的な幾何学的再配置における変動。
【0029】
関係(12)の分析から、

の項が量的にわずかであれば、または、わずかでさえあれば、もしくは、δzの評価において、この項が定量化でき、その後除去できる場合は、β法による正確な質量測定が実行され得ることが推察される。
【0030】
これまでのところで、本特許出願の主題である計測が直面し、かつ、これにより解決される測定再現性の課題の概要が理解されたが、その全ての分析的意味(analytical implication)を調査し開発することが必要である。
【0031】
関係(3)に戻り、理想的なケースにおいて、演算子

は、単一の変数zの関数k(z)により概算され得るため、以下のように表すことができる。

または、差異(z−zi)を変数zijで示すと、以下のように表すことができる。
【数13】

ここで、演算子「・」は、変数に適用される期待値である。
【0032】
2つのセッションiとjとの間のβフローの測定の差異を表すZij項を、以下の形式で再度表す。

ここで、j番目のセッションにおける仮想変数z(xf)により推察される値、または、j番目のセッションにおいて測定対象となるフィルタ手段上に粒状物質の膜が存在しない場合はz(xf)に対して測定可能な値を表すzj(xf)を減算し、Zij項に加算した。
【0033】
ここで、これらの項を下記のように第2メンバに再構成する。
【数14】

【0034】
この形式において、2つの項の物理的意味は明らかである。
・ (14)の第1の項は、単に粒状物質の堆積によってのみフィルタ手段上に特定されたZijの部分(fraction)を表し、したがって、以降においては、これをZij(zp)(フィルタ手段上の粒状物質のサンプルの存在に機能的に関連する変数zの変動)で示す
・ 一方で、第2項は、単一のフィルタ手段に関連するβフロー測定において、Zijに対する、全ての考え得る変動により特定された影響を表す。実際のケースにおける測定の体系的な変動の存在は、例えば、空気密度、相対湿度、検出器効率における変動や、周辺環境との水蒸気交換に関連したフィルタ手段の質量における変動などの、考え得る一連の原因に起因することになり、このため、以降においては、これを

と示す。この影響は、測定セッション間に、上述した変動を証明するのに十分な時間が経過しているという事実に本質的に関連している。
【0035】
図4では、(14)の各項の影響を図表によって強調している。特に、実線曲線は、問題となる、i番目、j番目のセッションにおける測定に対するzi(xf)およびzj(xf+xf)の想定される分布を表し、一方で、点線曲線は、粒状物質の膜が無い状態で考察される稼働フィルタ(operating filter)手段に関して、j番目のセッションにおいて測定可能なβフローに関するデータzi(xf)の仮想上の分布を表す。
【0036】
β法の適用において現状行われているように(理想モデルを実際のケースに利用)、xp,misの推定値xpをトレースするために(13)を実験データに適用し、(14)を想起すると、下記が得られる。
【数15】

ここで、εは、ランダムな偏差の全体的な影響を表し、(測定の有限持続に本質的に関連する)β放射を支配するポワソン統計分布から導き出したもの、ソースおよび検出器に対するフィルタマトリックスの幾何学的再配置におけるばらつきによるもの等に起因する。
【0037】
(15)から、現状のアプローチにより得られたxmisの測定値は、第2項で表された体系的なバイアスの存在により著しく調節(conditioned)されていることが推測される。
【0038】
つまり、再現性および反復性に関して、β法の応答の品質は、(15)の第2および第3項を最小限に抑える可能性と本質的に関連している。測定のランダムな偏差に関連する第3項による影響は、一方においては、測定セッションの長さに影響を与え(ポワソン統計からわかるように、測定されたβフローの標準偏差は、観察時間の平方根に反比例する)、放射ソースの強度を適切に選択することにより、また他方においては、サンプルと、ソースと、検出器との間の相対的な配置の再現性に関連する偏差を最小化する設計および機械的な製造を通して、最小化することができる。
【0039】
第2項は、それよりも、データの再現性レベルを特定するのに不可欠な役割を担う。実際に、「ブランク」と呼ばれる初期測定の瞬間(粒状物質の膜の非存在下)と、「コレクト」とよばれる最終測定(粒状物質の薄膜の存在下)との間で、測定に影響する(siding)全ての条件(検出器効率、ソースと検出器との間に介在する空気の密度、ソース‐検出器システムの形状等)が決して変わらないであろうという想定においてのみ、この項は、完全に無関係となる。
【0040】
この想定は、常に実験により強制的に確認されるが、初期測定と最終測定とが非常に短い時系列内で行われる適用の場(例えば、工業生産において金属板の質量厚さの試験)においては妥当であるが、PMxサンプルの質量測定を使用する特定の場においては、完全に不適当である。これは、「ブランク」測定とコレクト測定との間で、非常に長いタイムインターバルがあると(実際、最短のインターバルはPMxサンプリング時間、通常24時間程度である)、この間に測定安定性および再現性の根底をなす量(例えば、空気密度、検出器応答効率、等)が変動し得るという事実のためである。さらに、フィルタ手段の質量厚さは、吸湿性の場合、「ブランク」測定セッションと「コレクト」測定セッションとの間で、測定チャンバ内の異なる微気候条件に比例して、または、サンプリング段階における外気の相対湿度の変動に比例して、変動し得ることも考慮に加えると、高い量的標準を達成するには、測定法は相当精巧化されるべきであるという結論を導くことができる。
【0041】
(15)の項

の要素を特定することにより、測定再現性に実質的な影響を及ぼす上述した誤差源は、容易にも直接的にも制御可能ではなく、いずれにしても、これらの誤差源のそれぞれに関連する影響は、ほとんど定量化できないものである。現状の技術におけるβ法の実施では、一方ではこの技術自体の実施に関連する基本的な変動についての能動制御(例えば、ガイガー・ミュラー検出器の場合、高電圧の能動制御を考慮されたい)が、また他方では経験的な是正措置が、行使されてきたが、後者は、(例えば、測定チャンバ内の気圧と温度の測定値による空気密度の推定値により、または、既知の「デュアルビーム」技法により)体系的な誤差のいくつかの特定の誤差源による影響を少なくとも部分的に推定することを目的としてきた。これらのアプローチは、概して、満足の行くものではなく、いずれにせよ、トレース不可能かつ不完全な結果をもたらす。
【0042】
以降でさらに明確に理解されるであろうが、本発明では、上述した全てのバイアスについて、動作トレーサビリティを特定する直接的な測定を通して、選定、量的評価、および、結果的に生じる補正を可能とするため、上述したような制限が克服される。形式的に表現するならば、本発明は以下のことを可能とする。
・ 関係(15)の第2項である、

の主要要素を選定すること
・ 当該項の量的評価を提供し、それに関連する不確実性を提供すること。
【0043】
体系的バイアスの推定値

がわかると、関係(15)の両辺から

を減算することができ、以下が得られる。
【数16】

ここで、関係(1.6a)(15)の

を再考すると、以下が導かれる。

したがって、以下が得られる。
【数17】

ここで、

により、

の差を示し、δxpにより、ゼロ推定値(nil expected value)での、通常の分布を有するランダムな変数を示し、この分散には、補正の残分、サンプル、ソース、検出器間の相対的位置決めにおける再現性に関する偏差の残分、さらには、β線統計に本質的に関係する変動が考慮される。
【0044】
したがって、進歩的な方法は、粒状物質の質量厚さxpの推定値xp,measを可能な限り正確に求めるために関係(17)を使用する。
【数18】

【数19】

そして、形式的な表現をするならば、補正自体によりもたらされた残分に関するものを含む、上述した全ての影響を組み込むランダム変数δxp(ゼロ平均値を有するガウス分布(gaussian with nil average value))の値上の明確かつ略量的な差異により、作業中の測定を理想的なものへと戻す。
【0045】
作業上の観点から、zi(xf)およびzj(xf+xp)の項(図4の実線曲線)から特定された単独のブランクおよびコレクト測定によりzj(xf)(図4の点線曲線)を推定する方法が無いため、明らかに、単一のフィルタ媒体を対象としたβフローの測定の使用では、

の影響を直接評価することができない。
【0046】
本発明は、直接的かつ計量的にトレース可能な点から、この課題を解決する。実際に、変数Zijは、類型学上、形態、個体群(population)、質量値、時間的発達等の点において実際に稼働中のものと確実に同等のフィルタ手段に関するβフローの補助的な測定から、概算される。稼働中の測定と補助的な測定とは、相互関連的に(contextually)かつ特有の一体型「ソース+検出器」システムを通して得られるため、実行される測定は実質的に共変である。
【0047】
事実、β法の実際の実施においては、いわゆる「スパイフィルタ」(稼働中フィルタの「対」)の使用に基づく手順が実施され、これにより、体系的バイアスの定量化とそれらの量的な除去が可能となる。これは、稼働中のフィルタに対するβフロー測定段階中に正確に実行される、Fsで示される(上述したように、Frで示される稼働中のフィルタと類型学的に「同一」の)スパイフィルタに対するβフローの大きさにより求められる。(12)を再度取り上げ、スパイフィルタ用に書き換えると、以下が得られる。
【数20】

【0048】
明らかに、スパイフィルタと稼働中のフィルタとが同等の質量厚さ

を有する場合、(12)の第2項は、δzFsと量的に同等である。(12)と(13)を比較することにより、以下が推定される。
【数21】

以下の関係を想起すると、
【数22】

SWAMデュアルチャンネルで実施される質量測定を表す関係の微分形式を表す、以下の関係が得られる。
【数23】

【0049】
上述した内容を裏づけるために、ここで、時間の経過とともに連続する一連の測定セッションにおける、質量厚さxfを有するフィルタ媒体Frの変数

に関する実験データを提示する(図5)。上記を踏まえ、観察される変動は、このケース(セッション間に付着する粒状物質の膜の非存在下)では、体系的偏差および確率的残分(stochastic residue)に起因することになる。
【0050】
図6において、変数

に関するデータは、Frと同等のフィルタFsに関連する変数

のデータと比較される。FrおよびFsの大きさは、代替順序の連続した測定を通して得られる。
【0051】
図7において、2つの変数間の直線回帰分析が、報告されている。変動が本質的にどのように共変項に起因するかを観察することができ、これは、2つのフィルタが同じ個体群に属し、変動が同一の誤差源によるものであり(ソース−検出器システムの同一性)、かつ、測定が同一順序の連続したセッションによって前後的に実行されている、という事実と実質的に一致している。
【0052】
次に、フィルタFrおよびFsに関連する変数ZrijおよびZsijについて検討すると、想定されるように、類似の共変挙動が得られる。実際に、図8には、iセッションとjセッションとの間のタイムインターバルを24時間程度に選択した場合の、変数ZrijおよびZsijに関する回帰分析を報告する。r2と、1になる傾向があるr2および角度係数値と、0になる傾向がある切片値(intercept value)とによって特徴付けられる、回帰分析の数値データは、これらの条件において、同一の個体群に属するフィルタ媒体のいずれかの対(r,s)に対する期待値<Zij>が量的に同等であることを証明する。
【数24】

【0053】
したがって、稼働中のフィルタFrの同一個体群に属する1つ以上のフィルタに関連し、同一のiおよびjセッションにおいてそれに対して前後的に実行されるβ減衰の補助的な測定により、稼働中のフィルタに関する期待値

は、非常に高い信頼性で推定され得る。
【数25】

【0054】
したがって、図9では、本発明の概念的な実現を図示している。
【0055】
より詳細には、本発明の実施は、好ましくは次のことが要求される。
・ 幾何学的に変化しない、単一で一体型の「ソース+検出器」システムを使用し、これにより稼働中のフィルタおよびスパイフィルタの両方に関連するβフローデータΦ(xr)およびΦ(xs)を得ること、
・ 各i番目のブランクまたはコレクト測定セッションに対し、一連のβフロー測定Φi(x)をnサイクル行い、その各々は、以下の構造で、2つのチャンネル1および2の稼働中フィルタ手段Fr1およびFr2と、問題となるケースにおいては、単一のスパイフィルタとに対して交互に実行されること。
【数26】

・ 個々の段階のβ測定時間Tmは、それぞれ、稼働中のフィルタFrに対しては10分、スパイフィルタFsに対しては5分とすること、
・ 測定サイクルnの数は、8時間のサンプリングの場合は4サイクル程度、12時間以上のサンプリングの場合は6サイクル程度とすること、
・ 測定されたβフローの全ての値は、計器の使用において実施される適切な手順により経験的に決定されるガイガー・ミュラー検出器の不感時間τに比例して補正されること。
【0056】
この緻密な順序により、稼働中のフィルタに対する各βフロー測定に対して、(稼働中のフィルタに対する測定前後の)スパイフィルタに関する一対の測定値が関連付けられる。したがって、各稼働中のフィルタに関するβフロー測定値の平均値は、スパイフィルタの測定値の隣接する個体群に関連する平均値と、時間的に前後関係があると考えることができる。
【0057】
測定サイクルは、グランドノイズΦdarkの推定値、および、ソースと検出器との間にフィルタ手段が介在されない場合、つまり空中βフローの場合のβフロー測定Φ0で補完されるということを言及しておく必要がある。これらの補助的な測定値には、関連する品質管理機能がある。つまり、ブランク段階で実行されるダーク(dark)(Φdark)の推定は、グランドノイズの定量化および除去を可能とし、一方、空中βフロー(Φ)の測定は、ガイガー・ミラー検出器の径時安定性の評価を可能とする。さらに、ブランクセッションにおいて特定されたΦ値は、ブランク測定値とコレクト測定値について、1次元の変数z(xFr)およびz(xFs)の値、ならびに、各不確実性の値を推定することを可能とする。
【0058】
さらに、コレクト段階の間、稼働中のフィルタに関連するフローの測定値は、サンプル内の自然放射性核種の存在により、βフローΦnatを含むことを考慮すべきである(ラドン崩壊生成物の自然放射能)。この影響は、サンプルの質量推定における負の人為的影響の原因となり、したがって、コレクト測定サイクルに先行する、および、コレクト測定サイクル後の補助測定に関連するデータを使用することにより、その量的分析および除去を進める必要がある。これらの測定は、ソースとフィルタ手段Fとの間に介在し、その上に堆積したサンプルからのβフローを排他的に検出することを可能とする、可動シールドの存在により実行することができる(図10)。
【0059】
つまり、ブランク段階で測定されたフローのデータを考慮し、以下の方法により、それらは(ダークな)グランドノイズを考慮して補正される。
【数27】

【0060】
一方、コレクト測定の場合、βフローの補正された数値は、測定値から、自然放射能の影響を差し引くことにより、以下の方法で特定される。
【数28】

【0061】
稼働中またはスパイフィルタ手段(Fr,Fs)に対するi番目の測定セッションのnデータの個体群Φi(x)のアベイラビリティは、各セッションiおよび各対(r,s)に対して、関連する不確実性

を有する対応する個体群の算術平均により、期待値

を推定することを可能とする。i番目のセッションの初めに、想定される空気中のフローΦ0を特定することにより、変数zの期待値と不確実性を求めること、つまり、関連する不確実性

を有する

を特定することが可能となる。ここで言及されるように、アディメンジョナルな変数zの使用を可能とするために利用される同一の空気中フロー値Φ0は、j番目に実行される測定において利用される。
【0062】
稼働中のフィルタFrに関する変数zの期待値は、nデータの個体群の算術平均を通して実験的に推定され、例えばi番目のセッションに対し、以下によって求められる。
【数29】

【0063】
スパイフィルタFsに関する変数zの対応する期待値は、2nメンバから成る個体群(隣接個体群)に対して計算された算術平均を通して推定され、したがって、i番目のセッションに対し、稼働中のフィルタFr1およびFr2に関する変数zの平均値にそれぞれ関連する、以下によって表される。
【数30】

【0064】
動作的には、i番目のセッションを稼働中のフィルタのブランク測定として、j番目のセッションを、粒状物質が稼働中のフィルタ上に付着しているコレクタ測定として考えることにより、後述するように、質量厚さxpの推定値が求められる。
【0065】
スパイフィルタに対応付けられ、例えば稼働中のフィルタFr1に関するデータ

から、変数の値は計算される。
【数31】

【0066】
この値は、前述したように、ブランクセッションとコレクトセッションとの間の稼働中のフィルタFr1に関する変数zの体系的変動の最良の推定値を表す。
【数32】

【0067】
そして、

の推定値が求められる。
【数33】

【0068】
したがって、質量厚さの推定値は以下のようになる。
【数34】

ここで、

は、質量測定システムの較正関数g(z)の一次導関数である、関数k(z)を利用する稼働中のフィルタFr1に関するブランクおよびコレクト(iおよびj)セッションにおいて特定された値

の幾何平均を表す。
【0069】
このアプローチに従うと、ブランクおよびコレクトセッションで実行される測定の個体群から得られる変数

等の分散がわかる、xpの分散と、計器較正段階で推定されるk<z>の分散との両方を計算すること可能となる。
【0070】
最後に、ブランクセッションとコレクトセッションとの間のフィルタ手段Fr1上に堆積した粒状物質サンプルの質量値が求められ、以下の関係により、粒状物質の膜が均一に付着している有効なろ過面に関する面積Sの値がわかる。
【数35】

【0071】
関係(35)は、稼働中のフィルタ手段およびスパイフィルタの質量厚さが、条件

を満たす場合に使用される。この条件が証明されない場合は、mpの最適な推定値は、以下の関係を使用して求めることができる。
【数36】

【0072】
本発明が直面し、解決する他の技術的課題は、2つの対立する動作上の要求、つまり、一方では、取得したサンプルの粒度分析上の厳密な代表性を得るために、一定した粒度分析上のカット(cut)を扱い、他方では一定した体積流量を扱うこと、を調和させることであり、施行中の法令に準拠し、サンプルの平均濃度の信頼できる推定を可能とするためのものである。
【0073】
この課題について、以下、分析的に詳述する。
PMxサンプルの厳密な粒度分析上の代表性を得るために、一定の粒度分析上のカットを得るように作業する必要がある。現状の技術では、ヨーロッパの法令では、サンプリングラインの入口での体積流量が規定されている。この動作条件では、厳密には、粒度分析上のカットの経時変化を防ぐことはできない。実際には、カットの値は、以下の関係で定義される。
【数37】

ここで、d50[m]は、50%の衝突効率でのカット径を示し、Cは、カニンガム(Cunningham)補正係数を示し、d[m]はノズル径を示し、ρρ[kgm-3]は粒度密度を示し、Q[m-1]流量値であり、Stk50は50%衝突効率に対応するストローク数であり、η[kgs-1-1]は空気密度値である。この関係では、一定のd50値を得るために、サンプリングラインQvolの入口における体積流量と空気粘性ηの周囲値との間の比率が、径時変化しないことが必要であることが強調されている。
【数38】

【0074】
実際に、下記サザランド(Sutherland)式で定義される温度と空気粘性との関係から明らかなように、一定の入口体積流量下で動作しているシステムは、空気粘性の値、ひいては温度の値の関数である粒度分析上のカット値を示す。
【数39】

【0075】
さらに、フィルタ膜上の粒状物質の堆積に基づく方法では、測定されるべきサイズは、観察時間Tに対するサンプルの粒状物質質量の平均濃度

である。
【数40】

この方法は、下記式により得られる、平均濃度の推定値としての、値

を使用する。
【数41】

サンプリングされた粒状物質の質量Mは、下記式により得られる。
【数42】

ここで、Q(t)は時間の関数としての体積流量であり、Vは下記式によって得られるサンプリングされた体積である。
【数43】

ここから、下記式が得られる。
【数44】

【0076】
測定される観察可能なものが

である一方で、堆積法で測定される濃度が

であることを考慮すると、2つの値が一致するように動作条件を定義することが不可欠である。関係(40)および(44)は、サンプリングの体積流量が一定である場合、または、そのような場合にのみ、一致し、この場合、下記式が得られる。
【数45】

【0077】
したがって、この方法を使用して毎日の平均濃度を特定するには、サンプルは一定の入口体積流量で堆積されるべきである。
【0078】
本発明により提示され、解決されるさらに他の技術的課題は、粒状物質の揮発性部分に関係している。実際に、堆積サンプリング法は、揮発性化合物の蒸発に関係するバイアスを本質的に生成する。時刻tと時刻t+Δtとの間にフィルタ手段上に抽出されるPMxサンプル部分は、後続のサンプリング段階では、残りのサンプリングの長さ、熱力学条件、および、気相化合物の分圧に比例して揮発性部分を失う傾向にある。
【0079】
時間tにおいてフィルタ上に収集された全質量は、2つの要素(contribution)から構成されており、そのうち、第1の要素は安定性の部分から形成され、第2の要素は揮発性の部分から形成される。数学的な観点から、揮発性部分の質量バランスは、下記の関係により説明され得る。
【数46】

ここで、Mvは、時刻tにおいて堆積したサンプルの揮発性質量を示し、M0vは、時刻t0において堆積したサンプルの揮発性質量を示し、η(t)は、気温、相対湿度、分圧などに依存する揮発性化合物の損失率を示し、Cvは、堆積濃度であり、Qvolは、体積流量である。堆積ゾーンにおいて気温を変更することにより、蒸発プロセスを量的に変更することが可能である。原則的に、これは、当該プロセスの効果を劇的に減少させることを可能とし、フィルタ媒体を通過する空気の温度をゼロに近い値にすることができる、つまり、η(t)→0を導き出す。
【0080】
以下、本発明の装置および方法を、好適な実施形態を参照して説明する。
【0081】
まず、図11を参照すると、空中散在粒状物質の質量濃度を特定するための装置が、全体として符号1で示される。
簡潔に説明すると、装置1は、粒状物質をフィルタ膜上に自動的かつ連続的にサンプリングするとともに、β減衰法により実行される質量測定に関連付けられたシステムを表す。以下で詳述するように、このようなシステムは2つの独立した吸入ラインで動作し、固有の「検出器+βソース」測定モジュールを使用し、両方のフィルタ膜に対して質量測定が実行される。
【0082】
より具体的には、装置1は主に、
・ それぞれ独立した一対の吸入ライン4および5であって、各吸入ラインが、それぞれ、空気、ひいては、粒状物質を装置1に導入するのに適したサンプリングヘッド2および3を含む、吸入ライン4および5と、
・ 全体として符号6で示されるサンプリング・測定ユニットであって、後述するフィルタ膜と、この上に付着する粒状物質の質量を測定する手段とを収容する、サンプリング・測定ユニットと、
・ 制御ユニット7であって、本例においてはサンプリング・測定ユニット6内に収容される、制御ユニット7と、
・ ライン4および5の流量を調節する手段8であって、主に(本例においては常に)サンプリング・測定ユニット6内に収容され、かつ、それぞれ各吸入ライン4および5に関連する一対のポンプユニット9および10を含む、手段8と、
を備える。
【0083】
上述の構成要素のそれぞれについて、以下でより具体的に説明する
【0084】
サンプリングヘッド2および3は、それぞれ、従来のタイプのもので、空中散在粒状物質をサンプリングするのに適している。これらの各々は、空気力学径が所望のサイズ(例えば、最も一般的な用途においては、10、2.5、または、1.0μm)以下の粒子のみを装置1に導入する粒度(粒度分析の)分級器(fractionator)に嵌合されている。
【0085】
吸入ライン4および5は、流入空気、つまり、概してその粒状物質を、各収集手段に移送する。この収集手段は、通常は、サンプリング・測定ユニット6に収容されているフィルタ媒体などであって、これらのフィルタ媒体の1つは、図12、13、14に詳細に図示され、全体として符号Fで示される。このようなフィルタ媒体Fは、以降では単にフィルタと称するが、フィルタ膜またはフィルタホルダ13に挿入されるフィルタ膜12により構成される。フィルタホルダは、2つの部分、特に、上部131と下部132から成り、その内部に、フィルタ膜12をしっかりと嵌合保持している。図13は、適切な有効ろ過面S上に、βフロー測定が可能な異なる領域(β等価スポット領域(β equivalent spot area))を有するフィルタホルダの構成を示す。最適なβ同等スポット領域の選択は、サンプリング場所における予想される濃度レベル、考慮される季節、インピーダンス、および使用されるフィルタ手段の荷重に比例した、質量濃度測定における性能の最適化と関連している。
【0086】
図14は、フィルタ膜12の、いわゆる「高濃度化(enrichment)」段階またはサンプリング段階、つまり流入空気が当該膜自体を通過し、後者(latter)によりいずれの粒状物質が捕捉されるプロセス、を概略的に示す。
【0087】
上述したように、本実施形態では、複数のフィルタの使用が提供されている。より具体的には、以降の記載にて明らかになるが、本実施形態では、複数の稼働フィルタの使用、つまり符号Frで示され、粒状物質の付着に対する高濃度化の対象となる複数のフィルタと、複数のスパイフィルタ、つまり符号Fsで示され、稼働中のフィルタと同一の環境条件(つまり、変動)に置かれるものの、粒状物質には実質的に影響されない複数のフィルタとが使用されることが示される。
【0088】
図15に詳細に示されるように、稼働中のフィルタおよびスパイフィルタの両方のフィルタは、これらのフィルタを、サンプリング・測定ユニット6内で移動させるのに適した手段の中に収容されており、それぞれ、ブランクフィルタをローディング(loading)する手段14および使用後のフィルタをアンローディング(unloading)する手段15により、収容手段内にローディングされたり、収容手段からアンローディングされたりする。
【0089】
後者の図面を参照すると、この移動手段は、その垂直な対称軸Zを中心に回転する回転ディスク16を含む。このディスク16は、図15にそれぞれ符号F1〜F6で示される6つのフィルタ手段用の収容部を有する。本実施形態では、このようなフィルタ手段用の収容部はディスク16自体の中間円形王冠状部(intermediate circular crown)に一致して、均等に配置されている。後に詳述するように、ディスク16の回転により、ローディング、高濃度化、測定、およびアンローディングのサイクルで必要となる、複数の後続の位置へとフィルタF1〜F6が搬送される。例えば、図15では、フィルタF5およびF6は各ライン4および5における高濃度化段階にあり、フィルタF3およびF4は、高濃度化段階が終了し、測定段階にあり、フィルタF1は、ディスク16へのローディング段階にあり、そしてフィルタF2は、ディスク16自体からのアンローディング段階にある。
【0090】
本実施形態において、ディスク16は、さらに3つのフィルタ、つまり、頂部上の位置によってそれぞれ符号S12、S34およびS56で示されるいわゆる「スパイフィルタ」を収容することも可能である。スパイフィルタS12、S34およびS56は、それぞれ、2つの隣接する収集フィルタF1−F2、F3−F4およびF5−F6の間に挿入される。さらに、図16に概略的に示すように、ディスク16には、A、R1およびR2で規定される、さらに3つの位置が設けられ、ここで位置Aは空気中のβフロー特定を可能とし(つまり、ソースと検出器との間に介在させられるフィルタの非存在下)、一方、R1とR2には、厚さのわかっているアルミニウムフォイルが2枚配置され、それに関するβフローを特定することが可能であり、これらの位置を通して、β較正条件の自動テストが可能である。
【0091】
ディスク16は、制御ユニット7を管理する電子機器により制御されるステッピングモータなどの既知の手段により回転するように設置されている。
【0092】
さらに、ディスク16に対し、特に、後者に実質的に直交する方向へフィルタF1〜F6を移動する手段も設けられ、これらフィルタのディスクに対する着脱と、フィルタ膜12のサンプリングライン4および5上への緊密な位置付けを可能とする。本実施形態では、このような手段は、図15において符号17で示される空気圧作動のピストンに基づく。それらは、一自由度を有するという特有の特徴を示し、したがって、全移動段階中、フィルタ手段の回転を許容しない。これにより、測定再現性を損なうものとして考え得る原因、つまりブランク測定とコレクト測定との間の幾何的再配置に関連する原因が除去される。本例において、このピストンは、それぞれ、サンプリングライン4および5と、ローディングおよびアンローディング手段14および15とに対応付けられるため、4つ設けられている。
【0093】
常にサンプリング・測定ユニット6の内部において、図17および図18に詳細に示される、稼働中のフィルタ上に収集された粒状物質の質量を測定する手段がディスク16に関連付けられる。この測定手段は、放射法に基づき、特に、β線放射体またはソース18と、測定対象のフィルタに対して反対側に配置されている関連する検出器19とに基づいているため、ソース18から放射された光線はフィルタを通過し、検出器19により検出される前に、収集された粒状物質により減衰される。
【0094】
冒頭で言及したように、β線に基づく測定法自体は既知であり、したがってその詳細な説明は省略する。
【0095】
ソース−検出器ブロック18−19は、単にソースと検出器との間の機械的な拘束および一体化を保つために可動アーム20上に収容されている。アーム20は、ディスク16の軸Zを中心として回転し、後に詳述するように、想定される測定を実行するために、ディスク16自体に対して3つの異なる位置に、ソース18および検出器19を位置付けるのに適している。アーム20は、制御ユニット7により管理されるDCモータなどの従来手段によって回転するよう設置される。
【0096】
アーム20上には、測定手順により必要とされる場合、ソース18と検出器19との間に介在させられる可動シールド21を適用し、後者に対して前者をシールドし、ソースから放射された光線がソース自体と検出器との間に介在されるいずれのフィルタを通過するのを防ぐ。
【0097】
図11に戻り、常にサンプリング・測定ユニット6の内部において、全体として符号8で示される、流量を調整するための上述した手段が設けられる。この手段は、それぞれが各吸入ライン4および5に対して設けられた、上述した一対のポンプ9および10を含み、動作時の流量を、好ましくは約0.5÷2.8 m/hの範囲内に収まるようにする。リアルタイムでの流量調整は、例えばステッピングモータに関連付けられた一対の調整バルブ22および23を介して行われ、それぞれ、調整バルブ22は吸入ライン4用、23はサンプリングライン4用、23は吸入ライン5用である。
【0098】
さらに、調整手段8は、ライン4および5のそれぞれに対して、一対の電磁弁24,25および26,27を備える。このうち、第1電磁弁24および26は送気孔30および31に源を発する送気分岐に対応して配置され、臨界オリフィス28および29を提供し、一方第2電磁弁25および27は、吸入ライン4、5上で、前記分岐の合流点のすぐ上流側に配置される。
【0099】
弁の各対24,25および26,27は、異なる構成間、特に、稼働中のフィルタF〜Fのうちの2つが高濃度化段階にある稼働サンプリング構成と、装置1の性能がテストされる1つ以上のテスト構成との間の空気圧回路の切り替えを可能とする。
【0100】
より具体的には、いわゆる「スパンテスト」構成、つまり、各ライン4および5の臨界オリフィス28および29において生成された流れの値に対する、測定された流量の値の開差率をテストするものも設けられる。サンプリングの流量の測定は、臨界オリフィスを通る空気流の通過を支配する法則に基づくため、この構成が関連する。オリフィスの上流および下流の圧力値がわかると、標準流量の値をトレースすることが可能となるが、ここで、「標準流量」とは、気圧(Pstd)および温度(Tstd)の所定の条件を参照する流量を意味する(例えば、Tstd=273.1K、および、Pstd=103.3kPa)。
【0101】
さらに、「リークテスト構成」、つまりフィルタ膜の下流にある空気圧回路の緊密性をテストするものも設けられる。稼働サンプリング構成では、電磁弁の対のうち、第2弁25および27が開かれ、一方で第1弁24および26が閉じられている。スパンテスト構成では、電磁弁の対のうち、第2弁25および27が閉じられ、第1弁24および26が開かれている。最後に、リークテスト構成では、全ての弁24〜27が閉じられている。
【0102】
本明細書に記載されるシステムの様々な構成要素に対して、関連する温度、気圧、相対湿度、流量の適切なセンサが設けられていることが好ましく、それらの位置および機能は、以降に記載する装置1の機能的な記載に照らして明らかになるであろう。
【0103】
制御ユニット7について、本明細書に記載される全ての構成要素を管理するのに適しており、当然、マイクロプロセッサ、システムが必要とするほぼ全ての管理・制御電子機器、例えばディスプレイ、キーボード、状態指示LEDなどの1つ以上のユーザインターフェース、例えばRS232シリアルポートやモデムなどの関連する通信ポート73、前記温度、気圧、流量、相対湿度船センサ用のカード74、さらには必要なモジュールおよび給電接続75を備える。このような制御ユニットは、従来のハードウェアおよび/またはソフトウェア手段により実現可能なため、それらの詳細な説明は省略する。
【0104】
以下、装置1の動作モードを、図19の図表における各対の稼働フィルタに関して概略的に、かつ、図20のチャートにおけるタイムフローに従って詳細に説明する。
【0105】
動作セッションの開始に先駆けて、較正に使用される2つの参照アルミニウムフォイルR1およびR2に加えて、スパイフィルタS12−S34−S56が回転ディスク16に挿入される。そうすると、マシンプログラミングが実行可能となる(動作パラメータ、サンプリングサイクルTcの長さ、第1動作サイクルの開始日および開始時間の設定)。マシンの動作開始後、3対のフィルタF1−F2、F3−F4およびF5−F6をローディングする。
【0106】
まず、計測器は、βスパンテストを自動で行い、空気中のβフローおよび参照アルミニウム膜を通過するβフローを交互に測定する。テスト段階で計算された2つの膜の質量厚さの値は、それらに関連する公称の厚さと比較される。この段階の終了時における回転ディスク16の構成は、図16に示されている。そして、各対の稼働フィルタF1−F2およびF3‐F4に対して、ブランク測定セッションを実質的に開始する。これにより、M12bおよびM34bのマトリックスを構築することが可能となる(変数

の有効性、関係(29)を参照)。ブランク測定シーケンスは、図21A〜21Hを参照して、詳細に説明する。
【0107】
予備的に、好ましくは約2分30秒の長さで、空気中測定、つまり、ソースと検出器との間に介在するフィルタの非存在下での測定、を行う(これにより、フローΦ0を計算する;関係(2)および品質テストを参照)。この測定を実行するために、図21に示すように、ディスク16は、図16に図示される位置に対して、反時計回りに60°回転される。
【0108】
その後、ディスクは、図16のように再位置付けされ、ブランク測定シーケンスが実行され、この間ディスク16は動かされない。マトリックスM12bおよびM34bの行を形成するn個の測定群は、それぞれ8時間または少なくとも12時間のサンプリングサイクルTの長さに比例して、4または6程度である。
【0109】
図21Bに示すように、ソースと検出器自体との間に可動シールド21を挿入することにより、検出器19固有のグランドノイズの第1テストが実行される。このような測定は、「ダーク(dark)」と呼ばれ、好ましくは、約1分間継続される。ダークの値は、稼働フィルタおよびスパイフィルタに関するβフローの値から減算され、後に粒状物質の質量を計算するのに使用されるβフロー値のアベイラビリティが得られることになる(関係(27))参照)。
【0110】
本例では、対のフィルタF1−F2に対して実行された測定を参照し、4つの測定群が実行される。各測定群は、
・ スパイフィルタS12を通過するβフローの3回の測定と、
・ 稼働フィルタF1を通過するβフローの1回の測定と、
・ 稼働フィルタF2を通過するβフローの1回の測定と、
から成る。
【0111】
特に、図21Cに示すように、可動シールド21が開かれ、好ましくは約5分程度の長さで、スパイフィルタS12に関する第1実測定が実行される。
【0112】
そして、ブランクM12b測定値マトリックスの第1項が挿入される。

【0113】
その後、図21Dに示すように、好ましくは約10分程度の長さで、F1に対する測定(可動アーム20の位置「A」)が実行され、対応する項がマトリックスに挿入される。

【0114】
図21Eに示すように、検出器19は、再び位置「0」に戻り、「スパイ」フィルタS12に対して第2測定(好ましい長さ:約5分)を実行し、マトリックス内の対応する項を求める。

【0115】
図21Fに示すように、検出器19は位置「B」に移動し、フィルタF2に対する第1実測定(好ましい長さ:約10分)に進み、これによりマトリックス内の対応する項を求める。

【0116】
図21Gに示すように、検出器19は再び位置「0」に戻り、S12に対して第3実測定(好ましい長さ:約5分)を実行し、これによりマトリックス内の対応する項を求める。

【0117】
その後、上記のブランクマトリックスの構築に関連する測定サイクルを、マトリックスM12bが埋まるまで4回繰り返す。

【0118】
最後に、図21Hに示すように、上記ブランク測定段階の終わりに、検出器18のグランドノイズの第2測定を行い、可動シールド21を閉じ、ダークカウントを繰り返す。
【0119】
ディスク16は、対のフィルタF3およびF4がβ測定セッションに入るよう、反時計回りに120°回転し、この対に対してブランク測定が行われる(マトリックスM34bの構築)。
【0120】
対のフィルタF1−F2、F3−F4に対するブランク測定段階が終わると、ディスク16は、第1サンプリングサイクルの段階を実行するのに適した位置(F1はラインA上、F2はラインB上)にフィルタF1およびF2が入るように、反時計回りに回転する。このような構成において、フィルタF5およびF6は、すでにブランク測定に適した位置にある。
【0121】
ここで、システムは、サンプリングサイクルの開始としてプログラムされた瞬間を待つ。
【0122】
第1サンプリングサイクルが始まると(フィルタF1−F2上の粒状物質の高濃度化段階)、対のフィルタF−Fに対してブランク測定が行われる(F1−F2およびF3−F4の対について説明した手順の繰り返し;マトリックスM56bの構築)。このサンプリングサイクルの終わりに、ディスク16は反時計回りに120°回転し、フィルタF3−F4に対する第2サンプリングサイクルの開始に適した位置に到達する。この構成において、サンプリングされた粒状物質の膜により高濃度化されたフィルタF1−F2は、当該フィルタ上でコレクト測定を実行させるのに適した位置にある。測定段階は、フィルタ膜の熱力学的平衡を可能とするのに十分な待機時間だけ、遅らされる。フィルタF1−F2のコレクト測定手順は、すべて先行するブランク測定の手順と類似であり、図22A〜22Mを参照して以下に説明する。
【0123】
まず、図22Aに示すように、検出器19のグランドノイズのテストが、上述したブランク段階と同様に実行される。ソース18をシールドすると、「自然な」測定(フィルタ膜上に収集された粒状物質上の放射性核種の存在によるフローの測定)が、本例では、まずフィルタF1(図22Bに示す位置A)に対し、その後フィルタF2(図22Cに示す位置B)に対し、実行される。
【0124】
その後、ブランク用マトリックスを参照して説明したものと類似の測定サイクルで、コレクトM12c用マトリックスの構築が始まる。
【0125】
特に、アーム20は、位置0へ再度移動し、可動シールドは開き、サンプリングされた第1対のフィルタに対して測定段階を始める。図22Dに示すように、スパイフィルタS12に対して第1測定を実行し(好ましい測定の長さ:約5分)、その後、図22Eに示すフィルタF1に対して第1コレクト測定を実行し(好ましい測定の長さ:約10分)、図22Fに示すS12に対し第2測定を実行し(好ましい長さ:約5分)、図22Gに示すフィルタF2に対し第1コレクト測定を実行し(好ましい長さ:約10分)、さらに、図22Hに示すスパイフィルタS12に対し第3測定を実行する(好ましい長さ:約5分)。このサイクルは、下記「コレクト」マトリックスの全ての項が得られるまで、4回繰り返される。

【0126】
その後、フィルタFおよびFに対して、それぞれ図22Iおよび22Lに示すように、(ソース18をシールドした状態で)一連の第2「自然」カウントを実行する。2回の自然測定(個々の測定の好ましい長さ:約5分)により、サンプリングされた稼働フィルタについてフローの値を補正することが可能となり、自然放射能の存在による影響が取り除かれる(関係28参照)。
【0127】
そして、検出器19のグランドノイズの第2テストが実行され、図22Mに示すように、「ダーク」測定が繰り返される。
【0128】
コレクト測定段階が終わると、対のフィルタF1およびF2は手段15によりディスク16からアンローディングされ、新しい対のフィルタF7−F8がディスクにローディングされ、対のフィルタF3およびF4に対するサンプリング段階を厳密に必要な時間だけ停止する。さらに、この停止期間中、空気中測定が行われる((フローΦに対し、計算および品質検査;関係(2)参照)。
【0129】
そして、上述したマトリックスMbおよびMcに関するデータは、式(26)〜(34)および図23のチャートに示されるように、PMx濃度の推定値を得るために処理される。
【0130】
したがって、動作サイクルは、その自然コースを再開する(F−Fに対するサンプリング)。新たにローディングされたフィルタF7−F8は、β測定ゾーンに置かれ、したがって、そこでブランク測定のシーケンスが実行され得る。F7−F8に対するブランクβ測定が終わると、フィルタF3−F4に対するサンプリングサイクルへと続く。
【0131】
第2サイクルについて上述した動作シーケンスは、関連するサンプリングシーケンスおよび測定シーケンスにおいて、後続の対に対しても繰り返される。
【0132】
ユニット6内に同時に収容することができ、異なる有効な位置に配置され得る複数対のフィルタを設けることにより、一対のフィルタが測定段階にある間、別の対のフィルタがサンプリング段階に置かれ得る等、連続したサンプリングと測定が可能となる。
【0133】
上述したように、装置1およびこれにより実施される方法は、サンプリングシステムおよび測定システムに対し、上述したセンサおよび制御ユニット7により実行される何らかの品質チェックを提供することが好ましい。
【0134】
サンプリングシステムに関し、下記のチェックが提供される。
・ 大気温度と各フィルタの温度の測定‐揮発性物質の損失は、大気温度と堆積手段上の気温との差異に依存するため、装置は気温(T)とフィルタ上温度(T)を監視し、関連する情報を記憶する
・ フィルタ上の気圧下降の測定−フィルタ上の気圧下降の値から、サンプリングプロセスの正しい進行に関する貴重な情報が求められ得る。このため、フィルタ手段上の初期、終期、および、最大の気圧下降に関するデータが記憶される。
・ サンプリングライン4および5上の流量RSD(Relative Standard Deviation;相対標準偏差)計算−サンプリングヘッドおよび関連する粒度分析カットサイズ分級器の動作をチェックするために、入口体積流量の実測値を知ることが必要である。これは、大気圧と外気温度の値を読むことにより達成される。動作中の流量に対する統計的な代表情報を得るために、各サンプリングサイクルに対し、変数Qi−Qj, operatingに対する相対標準偏差の計算が提供され、ここで、Qiは期待される流量であり、Qj, operatingは測定される流量である。
・ 「スパンテスト」チェック−既知の形状および作用を有するオリフィスを臨界圧力条件下で利用するアプローチを活用することで、計測器は既知の値

を有する流量を発生させ、ここでPおよびTはオリフィス上流側の気圧と温度である。この値は、計測器により測定された値と比較され、期待値からの測定値の偏差を評価することを可能とする。
・ 「リークテスト」チェック−各サンプリングサイクルの始めに、計測器は空気圧自動リークテスト手順を実行し、フィルタ膜下流側の空気圧回路の緊密性をテストすることを可能とする。
・ 気圧センサチェック−装置は、自動的に気圧センサの応答チェックを実行する。
【0135】
β測定システムに関し、「ブランク」および「コレクト」測定段階の両方に対して、下記のテストが提供される。
・ 「ダーク」グランドノイズチェック−各サイクルの始めにグランド放射能カウントが検出され、これらが所定の範囲に含まれない場合、計測器は関連するメッセージ(警告および警報)によりそれを知らせる。
・ 検出器の短期間安定性チェック−フィルタを通過するβ線フローの測定の間、カウントレート(count rate)とポワソン統計(放射性崩壊)との間の適合性がテストされる。このような比較の結果が崩壊を表す統計と一致していない場合、計測器は関連するメッセージ(警告および警報)によりそれを知らせる。
・ 検出器の長期間安定性チェック−(質量測定の品質には関係ないが)検出器の計測応答において起こり得るスロードリフトを監視するために、連続する測定サイクル間のエアカウント(ソースと検出器との間に存在する空気質量を通したβ線の強度)を比較する。測定されたエアカウントと参照値との間のパーセント差が、設定された限界値よりも大きい場合、計測器は関連するメッセージ(警告および警報)によりそれを知らせる。
・ ガイガーカウンタ検出器の電源電圧チェック−ガイガー検出器の計測応答の品質は、その高電源電圧の安定性と厳密に関連している。計測の間、実行されている電力供給は、平均値の±1‰の間に安定させられた電圧を供給することができる。標準偏差が2‰よりも大きい場合、計測器は関連するメッセージ(警告および警報)によりそれを知らせる。
【0136】
最後に、各動作サイクルの始めでは、空中βフロー測定値(Φ)を使用し、かつ、既知の質量厚さを有する2つの参照アルミニウムフォイル(図24のR、R)を介して、自動「較正」手順が開始される。このテストの結果が設定された限界値に当てはまらない場合、計測器はアラーム信号によりそれを知らせる。
【0137】
装置は、オペレータや選択可能な2つの動作使用モードを提供するが、これらは、それぞれ「監視モード」と「参照モード」と呼ばれる。
【0138】
第1のモードは、2つの独立したラインを利用し、一対のフィルタ手段に対するサンプリングと質量測定を可能とするか、もしくは、最適な単一のラインを利用し、単一のフィルタ手段に対するサンプリングと質量測定を可能とする。
【0139】
第2のモードは、粒状物質堆積に対して一方のラインを利用する一方で、他方のラインを補助ラインとして利用することで、空中散在粒状物質の濃度値を非常に高い品質標準で特定することができるか、または、特定の測定学的な目標を達成することができる。
【0140】
両モードにおいて、図16のスパイフィルタS12/S34/S56と、様々な構成に比例して、稼働中フィルタの全ての役割または稼働中フィルタ(F1/F3/F5)の役割のいずれかを対応付けられるスパイフィルタ(F2S/F4S/F6S)と共に担い得る、フィルタF〜Fと、が使用され、これは、最高の品質標準を達成するために、かつ、特定の測定学研究のために、この計測を利用する場合において有用である。そして、第1ケースでは、稼働中フィルタFに関する各フロー測定に対し、関連するスパイフィルタSの一度のフロー測定が対応付けられ、第2のケースでは、稼働フィルタFに関連するフロー測定に対し、各スパイフィルタSおよびFsに関連する2つのフロー値が対応付けられる。
【0141】
「監視」モード(図25)は、3つの可能な構成を提供する。
・ AおよびBライン:共に稼働状態のラインAおよびBにより、サンプリングと、それぞれサンプリングされた2つの独立した膜(例えばPM10およびPM2.5)上の、質量測定と、を可能にする。
・ Aライン:Aライン上のみの粒状物質のサンプリングと質量測定を可能とし、Bラインは非稼働状態を維持する。
・ Bライン:Bライン上のみの粒状物質のサンプリングと質量測定を可能とし、Aラインは非稼働状態を維持する。
【0142】
「参照」モードは2つの可能な構成を提供する。
・ ノーマル:吸入ラインは、同一の一定体積流量で動作する(図26)。
・ 「スプリット」:吸入ラインは、一定の流量(図27)または一定のストローク数(図28)で動作することができる。一定のストローク数で抽出を行うには、(一定の)堆積ラインの体積流量の値を設定することが必要である一方、他方のラインの流量値は計測器により自動調整される。
【0143】
「参照」モードでは、一方のサンプリングライン(AまたはB)がサンプリングおよびフィルタ膜上への体積に使用され、他方のライン(BまたはA)が「スパイフィルタ」用に使用される。オペレータは、どちらのラインをサンプリング用に使用するかを選択することができ、したがって、どちらのラインに除去システム(abatement system)を挿入するかを選択することができる。
・ Aライン:粒状物質のサンプルは、Aラインフィルタ膜上に堆積され、(除去システムのある)Bライン膜は「スパイフィルタ」として機能する。
・ Bライン:粒状物質のサンプルは、Bラインフィルタ膜上に堆積され、(除去システムのある)Aライン膜は「スパイフィルタ」として機能する。
【0144】
「監視」モードによると、「AおよびBライン」構成では、β測定の標準化方法は、サイクル開始時のディッシュ上であって、稼働フィルタの各対間の中間位置に位置付けられるスパイフィルタS12/S34/S56の使用に基づく。
【0145】
「監視」モードによると、「Aライン」または「Bライン」構成では、AまたはBのサンプリングラインのみ使用される。したがって、ディッシュ上には、S12/S34/S56に追加するさらに3つのスパイフィルタ(F2S/F4S/F6SまたはF1S/F3S/F5S)を保持する3つのシートが利用可能とされる。したがって、各β測定セッションでは、稼働フィルタに関連する各フローに対して、スパイフィルタに関する2つのフロー値が対応付けられる。これにより、体系的バイアスの量的評価における不確実性をさらに減少させることが可能となる。
【0146】
「参照ノーマル」モードによると、サンプリングは、上述した動作中の吸入ライン4および5の両方で起こるが、粒状物質の堆積は2つのラインのうち一方のみで起こる(例えばライン4)。もう一方のライン、上述した例で言うところのライン5は、特定の測定学的な目標を達成するための補助ラインとして使用される。したがって、このモードでは、補助ライン上に、粒状物質の通過を防ぐ除去システムが設けられる。このモードは、2つのラインに同等の流量を提供することが好ましい。このモードでは、ライン5上に存在するフィルタ手段は、(空気流が通過するものの、粒状物質の堆積は無い)「ダイナミック」スパイフィルタとして機能し、したがって動作中のサンプリング状態のトレーサとして機能する。
【0147】
「参照スプリット」モードによれば、図27を参照すると、装置は、一定の粒度分析上のカットまたは一定の体積流量で動作する単一のサンプリングヘッド21を提供する。この下流には、鎮めチャンバ22と、その後にサンプリングライン(それぞれ23および24)が設けられる。
【0148】
「一定の体積流量」構成の場合、ライン23および24の両方が一定の堆積流量で動作する。さらに、第2ラインには、粒状物質の通過を防ぐのに適した除去システム25が設けられる。したがって、サンプリングは、両方のライン23および24が稼働状態で行われるが、粒状物質はライン23上のみに堆積し、他方のライン24は流量平衡化ラインとして利用され、これによりシステムのサンプリングヘッド上に一定の体積流量が確保される。測定モードは、図15を参照して上述した測定モードに類似している。
【0149】
上述したように、厳密なサンプリング技術は、2つの明らかに矛盾した要求を満たさなくてはならない:一方で、環境条件に対する粒度分析カットの値の不変動性を確保するために一定のストローク数で動作することが必要であり、他方では、測定学的に正確な態様で、毎日の平均濃度が提供されることが保証されるように一定の体積流量で動作することが必要である。「一定のストローク数」構成の場合、第2ライン24が可変の平衡化流量を吸入もしくは提供することにより、第1ライン23は一定の体積流量で動作する。さらに、第2ラインには除去システム25が設けられ、粒状物質の通過を防ぐのに適している。したがって、サンプリングは両方のライン23および24が稼働状態で起こるが、粒状物質の堆積はライン23上のみで、ライン24は流量平衡化ラインとして利用され、これにより、システムのサンプリングヘッド上における粒度分析カットの経時不変動性が確保される。この測定モードは、図16を参照して上述した測定モードに類似している。
【0150】
装置1は、変形のサンプリング構成も提供する。これらの変形例については、本明細書に記載する第1実施形態とは異なる態様についてのみ、以下に説明し、上述した構成と類似のまたは同等の構成要素には、同一の参照番号を付す。
【0151】
特に、常に図面25を参照して説明するが、装置1は、関連する入口流量同様、2つのサンプリングヘッド11および12が一様な第1サンプリング変形例を提供する。2つの吸入ライン13および14で異なるフィルタが使用される場合、異なるタイプのフィルタの挙動をテストすることが可能である。一方、使用されるフィルタが同様の場合、2つの(同様のまたは異なる)ヘッドの同等性をテストするか、または、質量濃度および/または化合物濃度の値に関する不確実性の推定を向上させることが可能である。
【0152】
図29に概略的に示す他の変形例によれば、装置は、標準は異なるが類似の粒度分析カットを有し、かつ2つの吸入ライン33および23上の独立したフィルタ膜に対応付けられた、2つのサンプリングヘッド31および32を備えてもよい。この装置は、2つのヘッドの同等性テストのために、並行したサンプリング(例えばPM10またはPM2.5)を可能とする。例えば、ヘッド31は、流量が約2.3 m3/h程度の欧州連合の標準PM10用に考案されてもよく、ヘッド32は、流量が約1 m3/h程度のアメリカ環境保護庁の標準PM10ように考案されてもよい。
【0153】
図30に概略的に示されるさらに他の変形例に拠れば、装置は、さらに、2つの異なる粒度分析カットを有し、同時サンプリング(例えばPM10またはPM2.5)のために独立したフィルタ膜へと対応付けられた2つのサンプリングヘッド(それぞれ、41および42)を備える。本例では、各ヘッドの入口流量は、約2.3 m3/h程度である。
【0154】
図31に概略的に示す変形例によれば、本発明の装置は、2つの独立したフィルタ膜を有する2つのサンプリングライン53および54に対応付けられた単一のサンプリングヘッド51によるサンプリングを提供する。この場合、装置は、ヘッド51の下流側に配置される鎮めチャンバ52も備える。この変形例では、本発明の装置は、化学種同定による、異なるフィルタ上のサンプリングに適用可能である。例えば、テフロン(登録商標)フィルタF1は、イオン、金属等に使用可能であり、水晶フィルタF2は、有機材料、PAH、炭素(Carbon)等に使用可能である。さらに、装置は、質量濃度および/または化合物濃度の値に関する不確実性の推定を向上させるための並行したサンプリングに適用可能である。そのような場合、2つのライン上のフィルタおよび流量は一様であってよい。
【0155】
図32に概略的に示された他の変形例に拠れば、2つの異なる粒度(例えばPM10およびPM2.5)を、より大きい粒度(例えばPM10)を有する単一のサンプリングヘッド61およびより小さい粒度(例えばPM2.5)を有するインパクタ62で、連続してサンプリングすることを可能とする。したがって、ヘッド61に対し、それぞれ符号63および64である2つのサンプリングラインが対応付けられ、そのうちの1つにインパクタ62が配置される。第1ラインの流量は、約1.3 m3/h程度であり、インパクタの下流である他方のラインは、約1 m3/h程度の流量を有する。
【0156】
図33に概略的に示された他の変形例によれば、装置は、蒸発プロセスに関連するバイアスを最小限に抑え、その損失を同時に評価することを可能とし得る。この変形例は、高濃度化ライン73上の温度制御を提供し、それにより、関連する稼働フィルタ上の空気温度が約1〜2度を上回ることが決して無くなり、一方で、高濃度化ライン74上にヒータが設けられる。温度制御は、適切なセンサと、例えばコイルなどの対応付けられた温度制御手段75および76とにより行われる。さらに、適切な凝縮液回収手段(condensate collector)77および78が設けられている。ライン73および74の堆積ゾーン内の空気温度を変化させることにより、蒸発プロセスは、量的に変更され得る。実際、ライン73に対応するフィルタ媒体を通過する空気の温度を0度近くにすると、そのような現象の効果が劇的に減少し得る。したがって、ライン74に対応するフィルタ媒体上で実行される対称的な乾燥プロセスは、質量測定上の蒸発プロセスの効果を高精度で示し得る。
【0157】
本発明は、さらに、稼働中のフィルタ手段による空中散在粒状物質の質量濃度を特定する方法にも言及し、この方法は主に以下の段階を含む:
(a)所定のサンプリング期間に、稼働中のフィルタ手段上に付着した粒状物質の質量測定を実行することと、
(b)前記サンプリング期間に、粒状物質の影響下または非影響下で前記稼働中のフィルタ手段と同一の環境条件に曝されたスパイフィルタに対し、同様の測定を実行することと、
(c)段階(a)で実行された測定を、段階(b)で実行された測定に対して補正することにより、粒状物質の質量濃度を特定すること。
【0158】
問題となる方法の好ましい特徴は、上述した本発明の装置の異なる構成および変形実施例の動作ステップを参照して既に説明したため、ここでは繰り返さない。
【0159】
本明細書において、本発明はその好ましい実施形態を参照して説明したが、他の実施形態も存在し得ること、またこれらは全て同様の発明の概念に含まれ、これらの全てが以下の請求項の保護範囲に含まれることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境モニタリング用の装置(1)であって、空中散在粒状物質を収集する手段(フィルタ媒体)(稼働中の手段と、前記稼働中の手段と同一の環境条件に曝され、かつ前記粒状物質の影響を受けるスパイ手段(F1〜F6)との両方)と、前記稼働中の手段(F1〜F6)と同一の環境条件に曝されるが前記粒状物質の影響は受けないスパイフィルタ手段(S12〜S16)と、による前記空中散在粒状物質の質量濃度の特定に適した、環境モニタリング用の装置であって、
前記稼働またはスパイフィルタ(F1〜F6)に対して測定を行い、所定のサンプリング期間に付着した粒状物質の質量を特定するのに適した、測定手段(18、19)と、
稼働中またはスパイ(F1〜F6)およびスパイ(S12〜S16)フィルタ手段に対して測定を行う移動手段(16、20)と、
を備えた装置。
【請求項2】
前記測定手段は、放射線放出体(ソース)(18)と、関連する検出器(19)とを備え、その配置は、前記ソースから放出された放射線が、前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6、S12〜S16)を通過し、その後前記検出器(19)により検出されるようになされる、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記測定手段は、前記稼働またはスパイ手段(F1〜F6)上に付着した前記粒状物質の自然放射能の測定を行う手段(21)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記測定手段は、前記検出器(19)に対して前記放出体(18)をシールドするのに適した可動シールド(21)を備える、請求項2および3に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記測定手段(18、19)は、β減衰法に基づく、請求項2〜4のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項6】
複数の前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)用のハウジングを有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項7】
稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)用に同数の6つのハウジングを有する、先行する請求項6に記載の装置(1)。
【請求項8】
複数の前記スパイフィルタ手段(S12〜S16)用のハウジングを有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記スパイフィルタ手段(S12〜S16)用に同数の6つのハウジングを有する、請求項8に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)、および/または、前記スパイフィルタ手段(S12〜S16)は、1つ以上のフィルタ膜(12)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)、および/または、前記スパイフィルタ手段(S12〜S16)用の可動台(16)であって、1つ以上のローディング位置、1つ以上のサンプリング位置、1つ以上の測定位置、および1つ以上のアンローディング位置を含むグループから選択される複数の位置に前記フィルタ手段の1つ以上を選択的に配置するのに適した可動台(16)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記可動台は、回転台(16)である、請求項11に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記可動台は、自身の軸(Z)を中心に回転するディスク(16)である、請求項12に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記フィルタまたはスパイ手段(F1〜F6、S12〜S16)の1つに対応して前記測定手段(18、19)を選択的に位置付けるのに適した可動アーム(20)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項15】
前記フィルタまたはスパイ手段(F1〜F6、S12〜S16)をローディングする手段(14)および/またはアンローディングする手段(15)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項16】
前記フィルタまたはスパイ手段(F1〜F6、S12〜S16)に対応して、外気を導入するために同時に動作するのに適した複数の独立した吸入ライン(4、5)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項17】
複数のサンプリングヘッド(2、3)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項18】
異なる粒度分析カットを実行するのに適した複数のサンプリングヘッド(51、52)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項19】
共通の外気導入口(30)と、前記導入口の下流側に配置された鎮めチャンバ(31)と、前記鎮めチャンバ(31)の下流側に配置された、前記フィルタまたはスパイ手段(F1〜F6、S12〜S16)上の複数の空気導入ライン(32、33)と、を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項20】
前記外気導入口(61)の下流側に配置された、前記フィルタまたはスパイ手段(F1〜F6、S12〜S16)に衝突する前記粒状物質の粒度を制御する手段(62)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項21】
前記フィルタまたはスパイ手段(F2S〜F6S、S12〜S16)の1つ以上への粒状物質の付着を実質的に防ぐのに適した除去手段(75)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項22】
流入空気の流量を調節する手段(8)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項23】
前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)に影響する空気の体積流量を制御する手段(8;74)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項24】
一定の粒度分析カットで動作する、外気を吸入する手段(71)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項25】
(24の2)一定の体積流量で動作する、外気を吸入する手段(71)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項26】
前記体積流量を制御する手段は、前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)上に一定の体積流量の空気を送気するのに適している、請求項23、24および25に記載の装置(1)。
【請求項27】
一定の粒度分析カットで動作する共通の空気吸入手段(71)に対応付けられた、主要吸入ライン(73)および副吸入ライン(74)を備え、全体の配置としては、前記副吸入ライン(74)が、前記主要吸入ライン(73)に関する体積流量が一定になるように可変平衡化体積流量を吸引するのに適している、請求項26に記載の装置(1)。
【請求項28】
(26の2)一定の体積流量で動作する共通の空気吸入手段(71)に対応付けられた、主要吸入ライン(73)および副吸入ライン(74)を備え、全体の配置としては、前記副吸入ライン(74)が、前記主要吸入ライン(73)に関する体積流量が一定になるように可変平衡化体積流量を吸引するのに適している、請求項26に記載の装置(1)。
【請求項29】
前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)に影響する空気の温度を制御する手段(76)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項30】
温度、気圧、相対湿度、および、流量を監視する手段を含むグループから選択される監視手段を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項31】
外気の温度、および/または、前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)の温度を監視する手段を備える、請求項30に記載の装置(1)。
【請求項32】
前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)に対応した気圧降下を監視する手段を備える、請求項30または31に記載の装置(1)。
【請求項33】
サンプリング構成から、1つ以上のテスト構成へと切り替える手段(7)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項34】
空中散在粒状物質の質量濃度を、前記粒状物質の稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)により特定する方法であって、
(a)所定のサンプリング期間に、前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)上に付着した粒子の質量測定を実行する段階と、
(b)前記サンプリング期間において、前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)と同一の環境条件に曝されるが、前記粒状物質の影響は受けないスパイフィルタ手段(S12〜S16)に対して同一の測定を実行する段階と、
(c)段階(a)で実行された測定を、段階(b)で実行された測定により補正することにより、前記粒状物質の質量濃度を特定する段階と、
を含む方法。
【請求項35】
前記測定は、放射線減衰法により実行される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記測定は、β放射線減衰法により実行される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
シールドされているか非活性化されている放射線放出体(19)により測定を実行する段階を含む、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)上に付着した粒状物質の自然放射能の測定を実行する段階を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
放射線検出器(19)のグランド放射能をテストする段階を提供する、請求項35〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記フィルタまたはスパイ手段(F1〜F6、S12〜S16)に対し、複数の測定の連続した実行を提供する、請求項34〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
3対の稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)、および/または、3対のスパイフィルタ手段(S12〜S16)の使用を提供する、請求項34〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)、および/または、スパイフィルタ手段(S12〜S16)は、1つ以上のフィルタ膜(12)を備える、請求項34〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)、および/または、スパイフィルタ手段(S12〜S16)の、1つ以上の高濃度化位置、1つ以上の測定位置、および、1つ以上のローディングおよび/またはアンローディングする位置を含むグループから選択される複数の位置への、選択的な移動を提供する、請求項34〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記フィルタまたはスパイ手段(F1〜F6、S12〜S16)の回転を提供する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記フィルタまたはスパイ手段(F1〜F6、S12〜S16)に対応して測定手段(18、19)の選択的な位置付けを提供する、請求項34〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記フィルタまたはスパイ手段(F1〜F6、S12〜S16)に対応して空気を導入するために同時に動作するのに適した複数の独立した吸入ライン(4、5)により外気のサンプリングを提供する、請求項34〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
共通の導入口(30)に対応した外気のサンプリングと、前記導入口の下流側の鎮め段階と、前記鎮め段階の下流側において、複数の導入ライン(32、33)により前記フィルタまたはスパイ手段(F1〜F6、S12〜S16)上に空気を導入することと、を提供する、請求項34〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記フィルタまたはスパイ手段(F1〜F6、S12〜S16)上への粒状物質の付着を実質的に防ぐのに適した粒状物質除去の段階を提供する、請求項34〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
外気吸入の下流側で、前記フィルタまたはスパイ手段(F1〜F6、S12〜S16)に影響する前記粒子の粒度の制御を提供する、請求項34〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
導入された空気の流量の調節を提供する、請求項34〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)に影響する空気の体積流量の制御を提供する、請求項34〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
一定の粒度分析カットまたは一定の体積流量での外気吸入を提供する、請求項34〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
一定の体積流量での前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)上への空気の導入を提供する、請求項51および52に記載の方法。
【請求項54】
前記稼働フィルタ手段(F1〜F6)上への前記一定の体積流量を確保するために、可変平衡化流量を有する補助ライン(74)の使用を提供する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記稼働またはスパイフィルタ手段(F1〜F6)に影響する空気の温度制御を提供する、請求項34〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
温度、気圧、相対湿度および流量を含む群から選択される変動の監視を提供する、請求項34〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
外気の温度および/または前記フィルタまたはスパイ手段(F1〜F6)の温度の監視を提供する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記フィルタまたはスパイ手段(F1〜F6)に対応した気圧降下の監視を提供する、請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
粒度の異なる粒状物質の並行したサンプリングを提供する、請求項34〜58
のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
各測定サイクルにおいて、稼働手段に対する測定およびスパイ手段に対する測定の交互の実行を提供する、請求項34〜59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記フィルタ手段の緊密性制御を提供する、請求項34〜60のいずれか1項に記載の方法。

【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公表番号】特表2010−501847(P2010−501847A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525155(P2009−525155)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053316
【国際公開番号】WO2008/023325
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(509050281)ファイ インスツルメンツ エス.アール.エル (1)
【Fターム(参考)】