説明

環境有害微生物殺菌機能誘致製剤

【課題】外気由来の浮遊菌ならびに落下菌に犯される二次汚染を防止して、出荷品から食中毒菌が発生することのないよう、清潔な製造環境を構築して生産性を向上し、消費者が志向する食品安全に寄与する製剤を提供する。
【解決手段】食品製造環境の空中浮遊菌及び落下菌に対して、食品添加物高分子、糖類、香料を組成とした低濃度エタノール製剤を超微粒子にして噴霧する装置を用いることにより、無菌的で清浄な気相環境を維持できる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】
【0001】
本発明は、特許第3491007号「袋詰め味噌の膨れ防止及び味噌中の芽胞菌増殖抑制製剤」を、噴霧剤として用いる際にこれと同時に噴霧して、気相に存在する浮遊菌や落下菌に向け素早く到達するよう誘致して、食品汚染を阻止し消臭能を広範に行き渡らせる低濃度エタノール製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品製造環境における食品への一次汚染、二次汚染の防止対策に関しては、既にHACCP(危害分析・重要管理点システム)方式によって成果がもたらされていることは周知の事実といえるが、この方式を採用し活用し得る食品製造企業は全体のごく一部に過ぎない。多くは設備費用の負担増に耐えられないとする考えと、何よりHACCPの基本である危害分析や管理システムに対する考え方が浸透しないままの環境で、食品が製造されているのが実態である。
【0003】
他方、空気中の微生物は、大腸菌群などのグラム陰性菌は、乾燥に弱く生きたまま長く空気中を浮遊することはできないが、Bacillus、カビの胞子、ミクロコッカス、連鎖球菌などは乾燥に強く長く空気中を浮遊する。大きいカビの胞子はそのまま空気中を浮遊するが、病原菌や酵母は衣服のゴミや水滴の中に含まれて空気中を浮遊する。また細菌では球菌、桿菌、有芽胞細菌と放線菌などの通常細菌が多く球菌の比率は高い。カビには、Penicillium、Cladosporium、Aspergillus、Fusarium、Trichodermaなどと産膜酵母、Rhodotorulaが少数ある。これらが食品製造中に外気に混入してくるので、製造工程中の空中浮遊菌や落下菌の侵入を防ぐために、無菌冷却やバイオクリーンルームが採用され特に食品の無菌化包装が進むにつれ、空気中の微生物の挙動とそれら微生物の殺菌、除菌について関心が払われ、超高温短時間殺菌や、高性能フィルターによる除菌が行なわれている。
【0004】
1)チルドビーフ工場作業台付近の空中浮遊菌は、Corynebacteriumが最多で40%近くを占め、その他Enterobacteriaceae、Bacillus、Stapylococcus、Lactobacillus、酵母、カビが見られる。2)水産ねり製品工場の空中落下微生物について、カニ足風かまぼこ、焼きちくわ、焼きかまぼこなどの落下菌が問題で、特にカニ足風かまぼこの擂潰と製造工程で多数の細菌やカビなどが見られる。3)菓子工場における空中落下真菌の測定結果では、和菓子工場ではCladosporium、Penicillium、Aureobasidiumの順に多く検出されたのに対して、製パン工場ではPenicillium、Cladosporium、Rhizopus、調理パン工場ではPenicillium、Cladosporium、Aspergillusの順に多いと報告され、4)乳処理工場の大腸菌群を調べたところ空中浮遊菌からKlebsiella aerogenes I II、Eschrichia coliが検出されたという報告があり、食品工場において浮遊菌の侵入を阻止するのは困難な状況にある。
【0005】
対策として空中微生物を除去するため、空気濾過による除菌や紫外線やオゾンによる殺菌、化学薬剤による殺菌が行なわれる。1)食品工場への外気の取入れ、食品の冷却、食品の製造と包装工程では、各種のフィルターが使われており、HEPAフィルターは清浄空気を得るための主役フィルターで、食品工場ではこれを数個〜数10個取り付けられて空気中の微粒子や微生物を濾過し、食品の無菌包装を行なうバイオクリーンルームへ空気を送り込む重要な役割を果たす。2)紫外線による殺菌は、食品工場の冷蔵庫、製造工程と包装工程の上層空間は紫外線によって殺菌されている場合が多い。その場合殺菌に必要な灯数は室内容積と灯具と天井との距離、器具係数などが正規に設定されることが要件といえる。短波長の紫外線は、細菌芽胞を含むすべての微生物に効果を示すが、その殺菌力は、殺菌灯から照射物までの距離の2乗に反比例して減弱するため、遠くのものへの効果は期待できない。また光線であるために直接照射されない影の部分には効果がないし、プラスチックやガラスなどを通過できないため、そのような容器内部の殺菌にも用いることができない。一般には、特定の容器内に常時点灯させておき、そのなかに消毒済器具を保持して無菌状態を維持させることや、無菌実験室、手術室の無菌化などに用いられる。3)オゾンによる殺菌では、オゾン濃度0.05ppmで大腸菌は3日、黄色ブドウ球菌は15日間で完全に死滅し、Saccharomyces cerevisiaeとRhodotorula属の酵母はオゾン濃度0.6ppm、15分間で完全に死滅するが臭気が強く、また人体への影響を考えれば無人的に行なう必要がある。4)化学薬剤による殺菌では、最近、一般食品の包装室で空中浮遊微生物を薬剤で殺菌する方式が多く採用され、それに用いる薬剤として▲1▼短時間に殺菌でき、▲2▼化学的に安定で持続性があり、▲3▼タンパク質などの有機物で効力が低下しない、▲4▼無臭で、汚水処理の妨げにならない、▲5▼安全性が高く、器具機械などにサビや損傷を与えないなどの諸点に留意され、それに比較的合致するものが選ばれる。
【0006】
エタノールの作用機作は、微生物のタンパク質の変性や脂質の溶解に基づいた溶菌や代謝の阻害である。芽胞をもたない細菌に対しては、きわめて殺菌的に作用し、多くの場合、数秒〜数10秒で活性を示す。しかし、芽胞に対しては濃度の如何にかかわらず殺菌作用は示さない。殺菌時間が著しく短いこと、蒸発して残留物を残さないなどの利点もあって、皮膚やガラス器具などの迅速な消毒に多用されている。アルデヒド系消毒剤は、細菌芽胞やHBウイルスを含むすべての微生物に殺菌的に作用するが、宿主細胞にも同様の作用を示すことから通常人体には用いられない。エポキシ系の反応は、適切な条件下ではすべての微生物に対して作用し、滅菌状態にすることが可能である。一方、生体に対する毒性も強く、低濃度の吸入でも悪心や嘔吐をひきおこしたり、高濃度では皮膚に発疹や水泡を生じさせる。次亜塩素酸は、細菌、ウイルスのほか芽胞に対しても殺菌効果を示すが、その作用は種々の因子によって著しく影響される。水中での次亜塩素酸の生成には水素イオン濃度(pH)や温度が著しく影響するが、そこに有機物などが共存すると、それらに対しても次亜塩素酸は酸化作用を示して消費されるため効果が著しく低下する。また金属製品を酸化するなどの欠点がある。過酸化水素水は、分子中の酸素を放出し、より化学的に安定な状態になろうとするがその際に生ずる酸素によって、菌体表層成分の酸化が生じ、細胞内容物の漏出がおこる。食品製造工業では一部に使用が認められているが、この作用機作を利用して近年、養殖魚に寄生するハダムシの駆除用薬浴剤に使われている。ピグアナイド系の抗菌特性は、細胞質膜の障害や酵素の失活をひきおこし高濃度では細胞内の種々の高分子を凝縮させるため、きわめて殺菌的に作用する。無芽胞細菌には有効であるが、緑脳菌など一部の菌種では耐性を示す株もあり、結核菌、ウイルス、芽胞には無効。このほかにもクレゾール、塩化ベンザルコニウムがある。
【0007】
このように食品製造環境を無菌化し、環境の清浄度を維持してゆくために様々な努力が払われているが、経営者にとって懸念が払拭されたとは到底言い難い。これまで開発者が各業種の食品製造工場施設の現場環境を検証してきたが、例えばHACCP仕様の無窓工場であっても、空中浮遊菌の測定値から無菌環境とはいえない状態を認知している。その原因の大半は外気の侵入であり、侵入経路は食品原料の搬入路が疑われ、原料倉庫の空中浮遊菌が、原料が頻繁に移される度に食品製造環境へ外気由来の浮遊菌が侵入する様子が観察される。このように浮遊菌に対する危機意識はHACCP施設といえど高いとはいえない。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、大多数の食品製造工場で関係者らが等しく危惧し、等しく望んでいる製造食品の安全性について、過大な投資をしなくても、外気由来の浮遊菌ならびに落下菌に対する二次汚染を防止して、出荷品から食中毒菌が発生することのないよう、清潔な製造環境を構築して生産性を向上し、消費者が志向する食品安全に寄与する製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による食品製造環境の清浄化方法は、さきに特許査定をうけた特許第3491007号「袋詰め味噌の膨れ防止及び味噌中の芽胞菌増殖抑制製剤」が、Bacillus anthracis、Clostridium botulinum に抑制効果があると帯広畜産大が認めた(資料No.5)ことから、芽胞細菌に対する効果が確認され、腸管出血性大腸菌O−157およびサルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌などに殺菌力を示し、さらに酵母型真菌にもその効果が及ぶことが確認され、この製剤を食品製造環境における空中浮遊菌および落下菌の殺菌対策に適当なものと判断して、その噴霧の方法論を検討してきた。
【0010】
これまでに食品製造環境における空中浮遊菌および落下菌について述べ、次いで食品製造環境を浄化する様々な手段と化学薬剤による殺菌のうち、最も手軽で安全性の高いアルコール製剤の殺菌作用について述べてきた。もとよりエタノールの殺菌力については、19世紀の終りにブドウ球菌に対する殺菌力が70%の濃度において最も強いと報告されて以来、この濃度が至当であると考えられてきた。しかし実際には60〜95%の範囲で大差は認められない。一方、ウイルスに対しては、80〜95%の濃度が必要であることが、ポリオウイルス、エコーウイルス、コクザッキーウイルスなどについて明らかにされている。日本薬局方では、消毒用エタノールを76.9〜81.4%と規定しており、この濃度範囲のものが多用されている。こうした背景から市販のエタノール製剤は75%濃度付近のものが流通し、有機酸を少量添加して安全性を強調したものが出回っている。こうした高濃度のエタノール製剤は殺菌力はともかく蒸発が早いので殺菌効果は持続性に欠ける。こうした持続性の乏しいエタノール製剤を食品製造業者が、何故、何時までも使い続けるのだろうか、ひとつには75%濃度に対するアルコール神話が根強くあるという考えと、ほとんどがアルコールだから蒸発して何も残らない。万一何か起ってもアルコール使用には免罪符的な考えが一般にあるのではないか。
【0011】
開発者は、かって食鳥処理工場において、女子作業員が鶏を処理する作業中、頻繁にアルコール製剤を噴霧し、作業刀やまな板を殺菌している場面に出会った。その製剤は中濃度アルコール製剤であったが、従業員らは喉の痛みや皮膚の黒ずみを訴えており、管理者も目や手指に優しい製剤の提供を求めて、水濡れ現場で水分によってアルコール製剤が薄められても、殺菌効果が低下しない製剤の提供を要求された。高濃度アルコール製剤の殺菌力は、アルコールそのものの殺菌力に依存する製剤であり、アルコールが水分によって薄められ濃度が低下すれば当然殺菌力は低下する。アルコール濃度が高いために目や喉が痛むのであるから、低濃度エタノール製剤なら皮膚に与える影響も少なくてすむ筈だ。アルコール濃度が低くなって殺菌力が失われる分を他の成分でカバーできれば、低濃度エタノール製剤でも殺菌力があれば要求に応えられる。そうした発想の転換が従来のアルコール製剤とは異なる低濃度エタノール製剤を生んだのである。
【0012】
以来、開発者は低濃度エタノール製剤の開発に傾注してきた。その理由の第一は、エタノールの殺菌力は本質的にpHの影響を受けるため、各種食品添加物との併用効果を調べ、特異的にエタノールの殺菌力を増強させる添加物の挙動を検索し、エタノールの殺菌力に及ぼす食品添加物の効果と、各種食品添加物とエタノール混合系の殺菌濃度とpHの関係を、エタノールのpHー殺菌濃度曲線と比較してみて、数種の食品添加物と有機酸とエタノールを組み合わせることにより、水に薄まっても殺菌力が低下しないエタノール製剤を研究開発してきた。
【0013】
この度、食品製造環境における空中浮遊菌および落下菌の殺菌対策に適当なものと判断して、その噴霧の方法論を検討してきた製剤は先に特許査定を受けた、特許第3491007号「袋詰め味噌の膨れ防止及び味噌中の芽胞菌増殖抑制製剤」が、低濃度エタノール製剤に属し、ヒトへの影響が少ないわりに多くの細菌に殺菌的に働き、カビや酵母型真菌にも効果を示すことが分かったのと、食品製造環境において有人的に噴霧しても問題がないものと判断し、実際に噴霧する方法について検討し、噴霧機械を含め思考錯誤を繰返し行なってきた。
【0014】
細菌や真菌を含む3ミクロン以下の粒子は静止した空気中では落下しにくい。それが空気の動きに伴って流動し食品に接触することがある。バリヤー性のプラスチック包材で真空パックされた牛肉の品質は、作業環境の空中微生物の数量に影響されるという報告がある。3ミクロンの粒子が落下しにくいのであれば、当該殺菌機能誘致製剤を5ミクロン程度の微粒子にして付着させれば重くなって落下する。落下の際に食品に直接付着したとしても殺菌されているから問題はない。問題は、どのようにして微粒子に付着させるか、製剤を5ミクロン程度の微粒子にする噴霧装置の開発と、同時に確実に付着させる方法を考案しなくてはならない。
【0015】
特許査定低濃度エタノール製剤に、殺菌機能誘致製剤を加えて噴霧すると製剤中の粘着性物質がノズルを詰まらせてしまう。そこで、殺菌機能誘致製剤と特許査定低濃度エタノール製剤を別なルートを通して、ノズルから噴射した後に2液が1つになるよう2流体方式噴霧に変更したところ、これら2種の混合製剤が細菌やカビに付着する(資料No.1)ことが分かって本発明を完成した。
【0016】
のちに判明したが、医療の分野では薬物治療が必要な部位に選択的に薬物を送って働かせることを薬物ターゲッティングといい、方法はキャリヤーによって薬物を特定の細胞、組織、臓器に選択的に運搬することによって達成される。それが目的とする薬理作用が増強される一方、他の部位への送達量を少なくすることで副作用を著しく軽減することが可能となる。この方法はP,Ehrlichの「魔法の弾丸」のアイディアによる。その方法論にキャリヤー材に高分子を用いた引例があり、キャリヤーは標的への運搬役、薬物は薬理作用として機能分化が計られている。開発者の発想も粘着性組成に高分子を用いて微粒子をキャッチし、製剤による殺菌効力と不活化作用を促進することなどに思考性が一致する。
【0017】
2種の製剤は別の容器に入れられ、それぞれチューブを通ってノズルに運ばれ、向かい合った2つのノズルから圧搾空気によって噴射される。噴射された2種の製剤はノズルの外で衝突し、条件にもよるが約8〜9mを飛んで、気相に拡散し、空中浮遊菌と空気中に含まれる水分や臭い成分などに付着して微粒子をキャッチするため、瞬時に消臭能を発揮する。現在、この機能を立証する実験が大学の研究機関で行なわれその成果が待たれるところであるが、ここでは2種の製剤をA液とB液と呼び、A液はキャリヤーとして働き、B液は殺菌効果を示す製剤として、それを30分間噴霧してAB両液の消費量を1分間に換算した噴霧数値は、液性の相違からA液はmax15.2g、B液はmax18.2gであった。A液とB液を別々に噴霧して殺菌力などそれぞれの特性を知る(資料No.2)検査も行なったが、想定通り2液同時噴霧によって効果を発揮することが確認できた。また240mの施設で3分間噴霧した場合、浮遊菌をほぼ死滅させた例(資料No.3〜4)は、食品製造環境でなく普通の施設での参考例であり、噴霧前の菌数も少ない。46.8mの空間で行なった検査でも全く同様の結果が出てたことから、この霧は消えたのではなく、天井、壁、床、作業台、機械などに張り付く。そして天井や壁に張り付いた製剤は、カビや細菌を待ち伏せしてキャッチすることも分かった。
【0018】
食品製造環境では、このようにして噴霧するが、それは長時間噴霧し続けるのではなく、食品品種によって例えば、5分間噴霧して25分間休むといったように間欠的に噴霧すればよい。一般に噴霧した製剤は約480秒間は滞留すると考えられており、噴霧を長時間持続すると密度が高まり飽和(濃霧)状態を呈する。飽和状態をつくる噴霧時間は、室内の広さと密閉精度に比例するが、飽和状態になる手前で噴霧を止めても殺菌環境は十分実現できる。但し殺菌環境の構築には、製造食品の違いによる菌種や菌量、工場施設の密閉度に影響され、また噴霧前の浮遊菌量に左右されるので、初発菌数に考慮しなければならない。噴霧合間時間は、目安を噴霧時間の5倍くらいとして差し支えないようである。
【0019】
本発明による空中浮遊菌を包接する殺菌機能誘致製剤は、多くの食品製造環境の気相に混入する外気由来の微生物が、食品の製造中や包装中の食品に付着し、食品の栄養源を取込みながら増殖する作用によって食品の成分が変化し、形、色沢、硬さ、香り、味などが本来の性質を失い、毒物を生成したり食用として不適当な状態になる。それを避けるには食品製造環境に存在する空中浮遊菌・落下菌などを殺菌・失活させ、製造食品を微生物汚染から守ることにある。
【0020】
エタノールは、日本薬局方無水エタノール(アルコール分99.5V%以上)または変性エタノール(アルコール分89.0V%)のいずれも使用できる。
【0021】
有機酸は、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸何れも使用できる。
【0022】
食品添加物高分子は、ポリアクリル酸ナトリウム塩が使用できる。
【0023】
糖類は、糖タンパク質糖鎖、糖脂質糖鎖などの何れも使用できる。
【0024】
香料は、食品添加物公定書に収載された全ての香料が使用できる。
【0025】
本発明を実施するにあたり、環境微生物殺菌機能誘致製剤はエタノール/水系に乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸の何れかを溶解させ、ポリアクリル酸ナトリウムを溶解し、次いで糖タンパク質糖鎖もしくは糖脂質糖鎖を溶解させたのち、香料を選択的に添加して製剤とするが、アルコール濃度は非危険物扱いとなる上限濃度65%以内とし、好ましくは20%以下の製剤とする。
【作用】
【0026】
本発明においては、本剤を食品製造環境微生物殺菌機能誘致製剤とし、さきに特許査定をうけた特許第3491007号「袋詰め味噌の膨れ防止及び味噌中の芽胞菌増殖抑制製剤」と同時に、株式会社霧のいけうち製のサニカートを用いて超微粒子にして噴霧し、気相中の微生物はもとより製造工程中の食品や、包装作業中の食品および包装材までも殺菌し、工場内の機械・器具ならびに作業員の皮膚・毛髪・衣服なども殺菌的に処理して、出荷製品の安全精度を高める。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により発明実施の態様を説明するが、例示は単に説明用のもので、発明構想の制限または限定を意味するものではない。
実施例1は、A液とB液を同時に噴霧した場合の空中浮遊菌殺菌効果を測定し、実施例2は、A液を単独で噴霧した場合の殺菌効果を測定し、実施例3は、B液を単独で噴霧した場合の殺菌効果を測定して、それぞれの測定結果を比較する。
実施例1、 (実施者 美峰酒類(株) 殺菌効果試験室)
試験方法
48時間かけて培養した空中浮遊菌。(参照:空中浮遊菌測定結果f)つぎに5分間(75g)噴霧後に室内空気を採取し培養した空中浮遊菌。(参照:空中浮遊菌測定結果g)さらに30分間噴霧した後に空気を採取し培養した空中浮遊菌。(参照:空中浮遊菌測定結果h)を行なった。
4)試験結果、a、噴霧前の空中浮遊菌数、98個。
b、製剤を1分間噴霧後の空中浮遊菌数、44個。
c、試験開始約21分後製剤5分間噴霧後の空中浮遊菌数41個。
d、試験開始約36分後製剤30分間噴霧後の空中浮遊菌数41個。
実施例3、 (実施者 美峰酒類(株) 殺菌効果試験室)
試験方法
1)供試菌、外気を取り入れた室内空間(46,8m)において、メルク社製エアサンプラーMAS−100を用い、10分間、1000lの空気を培地に採取したものを35℃、48時間かけて培養した空中浮遊菌。(参照:空中浮遊菌測定結果e)
2)使用培地、標準寒天培地
3)噴霧による殺菌効果試験、1)の室内空気を、1000l採取した培地をコントロールiとし、先に特許査定をうけた特許第3491007号「袋詰め味噌の膨れ防止及び味噌中の芽胞菌増殖抑制製剤」のみを、株式会社霧のいけうち製のサニカートを使用して、1分間(max18.2g)噴霧した直後に、エアサンプラーで10分間、1000lの空気を培地に採取し、35℃、48時間かけて培養した空中浮遊菌。(参照:空中浮遊菌測定結果j)次に5分間(91g)噴霧後に室内空気を採取し培養した空中浮遊菌。(参照:空中浮遊菌測定結果k)さらに30分間噴霧した後に空気を採取し培養した空中浮遊菌。(参照:空中浮遊菌測定結果1)を行なった。
4)試験結果、a、噴霧前の空中浮遊菌数、115個。
b、製剤を1分間噴霧後の空中浮遊菌数、4個。
c、試験開始約21分後製剤5分間噴霧後の空中浮遊菌数、1個。
d、試験開始約36分後製剤30分間噴霧後の空中浮遊菌数、0個。
【0028】
実施例1は、A液とB液を同時に噴霧した場合の空中浮遊菌殺菌効果を測定し、実施例2は、A液を単独で噴霧した場合の殺菌効果を測定し、実施例3は、B液を単独で噴霧した場合の殺菌効果を測定し、夫々の結果を示した。以上3っの実施例の結果を比較した場合、A液単独は1分間の噴霧で菌数を半数以下に減じることが分かったがその後の噴霧では効果が見られなかった。これに反してB液単独では1分間の噴霧で、噴霧前の菌数を1/29にすることが分かり、5分後、30分後はAB液を同時噴霧した場合と同様の成績を示したことが分かったが、噴霧前の菌数を1/150にしたAB両液同時噴霧には及ばなかった。A液は殺菌力のないキャリヤー剤にも拘らず、1分間の噴霧で菌数を半数以下に減じたことはキャッチ効果が認められ、B液の殺菌力を高める効果作用が評価できる。
【0029】
A液には殺菌力はないがキャリヤーとして機能することは推論できたので、このA液に付加価値を与えてさらに高度な機能を持たせることができないか、先ず考えられるのはDDS(Drug delivery system)分野への展開である。今日では末端に糖鎖を有するブロック共重合体からなる高分子ミセルの研究が進み、特定の細胞に薬物を送達する「標的指向性ミセルへの展開」が可能となり、「薬物リザーバー機能」「生体組織浸透性」といった特質は、癌をはじめさまざまな標的への薬物ターゲッティングに用いるキャリヤーとして大変に望ましい。といわれたことから、A液は高分子主体の製剤であって糖類を加えることは容易であり、細菌がつくる外毒素も宿主細胞の糖鎖を特異的に認識して結合するという課題に対して、寄与することが可能ではないかと思うが、ここは食品製造環境における微生物制御が主題なので、今後のテーマとして残しておきたいと考える。
【0030】
A液に香料を添加する案は、本剤はきわめて強力な消臭能を有しており、香料で消臭することは必要としないが、強い臭いが充満した空間を消臭したあとで、さわやかな香りを付加することは十分考えられる。この件ではすでに結婚式場、葬祭場、大宴会場、ホテル客室などで消臭実験を行なってきている。以上、A液、B液による2流体噴霧が、ノズルを飛び出した二液が1つに衝突して噴霧が拡散され、気相空間に充満してゆく形式が評価されているものと思う。そして殺菌、洗浄、消臭機能が同時に発揮する製剤は少ないのではないかと考えており、将来、研究を進めて細菌やウイルスに特異的に効果を示す製剤に特科できるよう、開発に邁進し食品の安全を通して社会貢献に尽くしたい考えである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール/水系に有機酸、食品添加物高分子、糖類、香料を溶解させ、二液式噴霧装置で噴霧することで微生物を包接する殺菌機能誘致製剤。

【公開番号】特開2007−77127(P2007−77127A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296870(P2005−296870)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(305048680)株式会社大気倶楽部 (1)
【Fターム(参考)】