説明

環境調整システム

【課題】従来のように快適な居住環境を形成できるとともに、脱衣場所でのヒートショックを確実に抑制することが可能な環境調整システムを提供することを目的とする。
【解決手段】身体に対して生理的に作用する香りを供給する芳香手段10と、音を供給する音響手段11と、光を供給する照明手段12とのうち、少なくとも一つの手段を備えており、脱衣場所1の温度に基づいて、芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給している。これにより、例えば人の血圧上昇を抑制したり、体感温度を上昇させたり、体感温度を低下させたりすることができる。また、居住者の嗜好や状況に合わせて前記脱衣場所の香りや音や光に係る環境を調整することによって、例えばリラックス効果や、冷涼感、入眠効果、覚醒効果等を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱衣所および浴室周辺やトイレ等の脱衣が行われる脱衣場所の香り・音・光等の環境を調整する環境調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調機の給気経路中または給気口付近にて、体感温度に影響を与える芳香剤の供給を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
空調機の制御における制御応答遅れのために設定温度と室温センサーによる検出温度との間に温度偏差が生じる場合がある。この特許文献1に記載の技術では、このように温度偏差が生じた場合に応じて、冷房時には該検出温度が上記設定温度を上回った時に体感温度を下げる影響を持つ芳香剤を供給し、暖房時には該検出温度が上記設定温度を下回った時に体感温度を上げる影響を持つ芳香剤を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−161733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、温度差のある部屋間を移動すると、その温度変化が身体に影響し、体調に異変が生じる場合がある(いわゆるヒートショック)。特許文献1に記載の技術では、空調機が設置された部屋の体感温度を変化させ、快適な居住環境を形成しているが、上述のヒートショックについては考慮されていない。特に、脱衣所および浴室周辺やトイレ等の脱衣行為が行われる場所でのヒートショックを確実に抑制したいという要望があった。
【0005】
本発明の課題は、従来のように快適な居住環境を形成できるとともに、脱衣場所でのヒートショックを確実に抑制することが可能な環境調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、環境調整システムであって、例えば図1〜図4に示すように、身体に対して生理的に作用する香りを供給する芳香手段10と、
身体に対して生理的に作用する音を供給する音響手段11と、
身体に対して生理的に作用する光を供給する照明手段12とのうち、少なくとも一つの手段を備えており、
脱衣所および浴室周辺やトイレ等の脱衣が行われる脱衣場所1の温度に基づいて、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、前記脱衣場所1の温度に基づいて、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給しているので、これら香りや音や光が身体に対して生理的に作用することになり、例えば人の血圧上昇を抑制したり、体感温度を上昇させたり、体感温度を低下させたりすることができる。これによって、前記脱衣場所1の香りや音や光に係る環境を調整することによって、ヒートショックを引き起こす身体的要因を取り除くことができるので、前記脱衣場所1でのヒートショックを確実に抑制することができる。
また、ヒートショックの抑制だけでなく、居住者の嗜好や状況に合わせて前記脱衣場所1の香りや音や光に係る環境を調整することによって、例えばリラックス効果や、冷涼感、入眠効果、覚醒効果等を得ることができるので、快適な居住環境を形成することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の環境調整システムにおいて、例えば図1〜図4に示すように、冬季において、前記脱衣場所1の温度が所定値以下の場合に、前記芳香手段10によって血圧上昇を抑制する香り、音響手段11によって血圧上昇を抑制する音、照明手段12によって体感温度を上昇させる光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、冬季において、前記脱衣場所1の温度が所定値以下の場合に、前記芳香手段10によって血圧上昇を抑制する香り、音響手段11によって血圧上昇を抑制する音、照明手段12によって体感温度を上昇させる光のうち、少なくとも一方を供給しているので、冬季の脱衣場所1における急激な血圧上昇を抑制したり、体感温度の低下を防いだりすることによって、前記脱衣場所1でのヒートショックをより確実に抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の環境調整システムにおいて、例えば図1〜図4に示すように、前記脱衣場所1と、この脱衣場所1に隣接する部屋との温度差が所定値以上の場合に、前記芳香手段10によって血圧上昇を抑制する香り、音響手段11によって血圧上昇を抑制する音、照明手段12によって体感温度を上昇させる光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記脱衣場所1と、この脱衣場所1に隣接する部屋との温度差が所定値以上の場合に、前記芳香手段10によって血圧上昇を抑制する香り、音響手段11によって血圧上昇を抑制する音、照明手段12によって体感温度を上昇させる光のうち、少なくとも一方を供給しているので、冬季や夏季に関わらず、脱衣場所1における急激な血圧上昇を抑制したり、体感温度の低下を防いだりすることによって、前記脱衣場所1でのヒートショックをさらに確実に抑制することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の環境調整システムにおいて、例えば図1〜図4に示すように、夏季において、前記脱衣場所1の温度が所定値以上の場合に、前記芳香手段10によって冷涼感のある香りを供給していることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、夏季において、前記脱衣場所1の温度が所定値以上の場合に、前記芳香手段10によって冷涼感のある香りを供給しているので、夏季の脱衣場所1における体感温度の上昇を防ぐことができ、より快適な居住環境を形成することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の環境調整システムにおいて、例えば図1〜図4に示すように、冬季において、前記脱衣場所1の温度が所定値以下の場合に、前記照明手段12によって暖色系の光を供給しており、
夏季において、前記脱衣場所1の温度が所定値以上の場合に、前記照明手段12によって寒色系の光を供給していることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、冬季において、前記脱衣場所1の温度が所定値以下の場合に、前記照明手段12によって暖色系の光を供給しているので、冬季の脱衣場所1における体感温度の上昇を促進することができ、前記脱衣場所1でのヒートショックを一層確実に抑制することができる。
また、夏季において、前記脱衣場所1の温度が所定値以上の場合に、前記照明手段12によって寒色系の光を供給しているので、夏季の脱衣場所1における体感温度の上昇を防ぐことができ、さらに快適な居住環境を形成することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の環境調整システムにおいて、例えば図1〜図4に示すように、前記脱衣場所1内にいる人を検知する人検知手段13を備えており、
この人検知手段13によって人を検知した場合に、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、前記人検知手段13によって人を検知した場合に、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給しているので、人の入退場に応じて前記脱衣場所1の香りや音や光に係る環境を調整することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の環境調整システムにおいて、例えば図1〜図4に示すように、個人を識別する識別手段14を備えており、
この識別手段14によって前記人検知手段13で検知された人を識別し、識別結果に基づいて、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、前記識別手段14によって前記人検知手段13で検知された人を識別し、識別結果に基づいて、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給しているので、例えば高齢者や循環器疾患等の医療を受けている人であれば常にヒートショックの抑制を実施し、高齢者や循環器疾患等の医療を受けている人ではない居住者であればその他の効果を得られるようにするなどして、前記脱衣場所1の香りや音や光に係る環境を、居住者毎に異なる設定で調整することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の環境調整システムにおいて、例えば図1〜図4に示すように、前記識別手段14と、予め設定された個人の嗜好とに基づいて、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、前記識別手段14と、予め設定された個人の嗜好とに基づいて、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給しているので、居住者毎に、居住者の嗜好に合わせて前記脱衣場所1の香りや音や光に係る環境を調整することができ、特にリラックス効果を得やすい。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の環境調整システムにおいて、例えば図1〜図4に示すように、前記脱衣場所1での人の行動パターンを記憶する記憶手段15と、この記憶手段15に記憶された行動パターンデータと人の事前の行動とに基づいて脱衣行為の有無を予測する行動予測手段16とを備えており、
前記行動予測手段16による予測結果に基づいて、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載の発明によれば、前記行動予測手段16による予測結果に基づいて、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給しているので、前記脱衣場所1の環境調整と脱衣行為との間にタイムラグが発生することを防ぐことができ、香りや音や光に係る環境をタイミング良く調整することができる。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の環境調整システムにおいて、例えば図1〜図5に示すように、身体を洗浄するシャンプーやリンス、石鹸等の洗浄剤の使用状況を検知する使用状況検知手段17を備えており、
前記芳香手段10は、前記使用状況検知手段17によって洗浄剤の使用を検知した場合に、香りの供給を停止するように設定されていることを特徴とする。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、前記芳香手段10は、前記使用状況検知手段17によって洗浄剤の使用を検知した場合に、香りの供給を停止するように設定されているので、前記芳香手段10による香りと、洗浄剤の香りとが混濁することを防ぐことができ、前記芳香手段10の香りによる効果の低減を防ぐことができる。
【0026】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の環境調整システムにおいて、例えば図1〜図6に示すように、前記脱衣場所1にいる人が睡眠前である場合に、前記芳香手段10によってリラックス効果のある香り、前記音響手段11によってリラックス効果のある音、前記照明手段12によって入眠効果のある光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする。
【0027】
請求項11に記載の発明によれば、前記脱衣場所1にいる人が睡眠前である場合に、前記芳香手段10によってリラックス効果のある香り、前記音響手段11によってリラックス効果のある音、前記照明手段12によって入眠効果のある光のうち、少なくとも一方を供給しているので、前記脱衣場所1の香りや音や光に係る環境を調整して、前記脱衣場所1にいる人の入眠効果を促進することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、脱衣所および浴室周辺やトイレ等の脱衣場所の温度に基づいて、芳香手段による香り、音響手段による音、照明手段による光のうち、少なくとも一方を供給しているので、これら香りや音や光が身体に対して生理的に作用することになり、例えば人の血圧上昇を抑制したり、体感温度を上昇させたり、体感温度を低下させたりすることができる。これによって、脱衣場所の香りや音や光に係る環境を調整することによって、ヒートショックを引き起こす身体的要因を取り除くことができるので、脱衣場所でのヒートショックを確実に抑制することができる。
また、ヒートショックの抑制だけでなく、居住者の嗜好や状況に合わせて脱衣場所の香りや音や光に係る環境を調整することによって、例えばリラックス効果や、冷涼感、入眠効果、覚醒効果等を得ることができるので、快適な居住環境を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る環境調整システムの構成を示す概略図である。
【図2】本発明に係る環境調整システムの環境調整の処理の流れを説明するフローチャートである。
【図3】同、脱衣前準備動作の処理の流れを説明するフローチャートである。
【図4】同、行動予測の処理の流れを説明するフローチャートである。
【図5】同、使用状況検知の処理の流れを説明するフローチャートである。
【図6】同、睡眠前環境調整の処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係る環境調整システムの一例を示す概略図である。
図1において符号1は、住宅等の建物における脱衣場所を示す。この脱衣場所1は、脱衣所および浴室周辺やトイレ等を始め、居住者Aによる脱衣行為が行われる可能性のある場所を指している。
このような脱衣場所1に対し、該脱衣場所1における香り・音・光等に係る環境を調整するための環境調整システムが設けられている。また、この脱衣場所1には空調機18が設置されており、この空調機18による空気調整も併せて行われるようになっている。
【0031】
本実施の形態の環境調整システムは、身体に対して生理的に作用する香りを供給する芳香手段10と、身体に対して生理的に作用する音を供給する音響手段11と、身体に対して生理的に作用する光を供給する照明手段12とを備えている。
これら芳香手段10と音響手段11と照明手段12とは、前記脱衣場所1内に配置されている。また、前記脱衣場所1を、例えば脱衣所と浴室とトイレの3ヶ所とすると、これら芳香手段10と音響手段11と照明手段12も、脱衣所と浴室とトイレの3ヶ所それぞれに配置される。
【0032】
前記芳香手段10は、図示はしないが、複数の芳香物質をそれぞれ貯留する複数の容器と、後述する制御装置20からの信号によって該複数の容器から芳香物質を外部に放出する放出機構とを有している。なお、この芳香手段10自体は、既存の技術を用いたものであってもよく、適宜変更可能である。また、この芳香手段10の放出機構は、空調機18の給気経路中または給気口付近に配置してもよい。
前記芳香物質としては、芳香剤や精油、これら芳香剤と精油とを混合したもの等が採用されている。香りの種類としては、例えば、レモン、ローズマリー、カモミール、セージ、バラ、ジャスミン、ペパーミント、バニラ、イランイラン、ラベンダー、サンダルウッド、ベルガモット、緑茶、竹、木炭等が挙げられる。例えば、バニラの香りは、緊張をほぐす効果があったり、ハーブ系の香りはリラックス効果があったり、ペパーミントの香りは冷涼感が得られる等、香りごとによってそれぞれ身体に生理的に作用する様々な効果がある。
本実施の形態では、特に、緊張をほぐすバニラの香りや、鎮静作用のある成分でリラックス効果のあるラベンダー等のハーブ系の香り等によって血圧上昇を抑制したり、リラックス効果を得たりすることができる。また、ペパーミント等の香りによって冷涼感を得ることができる。
また、様々な種類の香りをブレンドすることによって、身体に生理的に作用する様々な効果を得ることができるので、居住者Aが独自に調合したり、一般に知られる調合方法を採用するなどして様々な効果のある香りを適用してもよいものとする。
【0033】
前記音響手段11は、図示はしないが、後述する制御装置20からの信号によって、予め記憶された複数の音楽・音響データを再生するものである。なお、この音響手段11自体は、既存の技術を用いたものであってもよく、適宜変更可能である。また、後述する出力手段23とは異なるスピーカー等の出力手段によって音を発するように設定されており、このスピーカー等の出力手段は前記脱衣場所1内に配置されている。
音楽・音響データとしては、テンポの遅いものや、テンポの速いもの、周波を調節したもの等が採用されている。
ところで、人は精神・身体活動において独自の時間構造を持ち、固有のテンポを好むとされている。これは精神テンポ(mental tempo)と呼ばれている。また、この精神テンポとは別に、人が好むテンポとして、自身の心拍も挙げられる。
本実施の形態では、特に居住者Aの精神テンポや心拍を考慮し、リラックス効果が得られるとされる心拍数に合わせたテンポ、精神テンポよりもやや遅いテンポの音楽・音響データを再生することによって血圧上昇を抑制したり、リラックス効果を得たりすることができる。また、心拍数や精神テンポよりも速いテンポの音楽・音響データを再生して覚醒を促すことができる。
【0034】
前記照明手段12は、前記脱衣場所1内を証明する照明機器であり、図示はしないが、調色や調光機能を有するLED照明が用いられている。なお、照明手段12自体は、既存の技術を用いたものであってもよく、適宜変更可能である。
このような照明手段12から発せられる光は、昼白色などの青色系のものや、電球色などの赤・オレンジ系のもの、明暗を調節したものが挙げられる。
本実施の形態では、電球色の光によって体感温度を上昇させたり、昼白色の光によって体感温度を低下させたり、また、明暗を調節することによって入眠効果を得たり、覚醒を促したりすることができる。
【0035】
また、以上の環境調整システムは、図1に示すように、前記脱衣場所1内にいる人を検知する人検知手段13と、個人を識別する識別手段14と、前記脱衣場所1での人の行動パターンを記憶する記憶手段15と、この記憶手段15に記憶された行動パターンデータと人の事前行動とに基づいて脱衣行為の有無を予測する行動予測手段16と、身体を洗浄するシャンプーやリンス、石鹸等の洗浄剤の使用状況を検知する使用状況検知手段17と、脱衣場所1内の温度と、この脱衣場所1に隣接する部屋の温度とを測定する温度測定手段19と、予め記憶されたプログラムやデータ等に基づいて、これら各種手段を制御する制御装置20とを備えている。
【0036】
前記人検知手段13は人感センサーであり、例えば、前記脱衣場所1内のうち、この脱衣場所1に隣接する部屋との間の出入口付近など、人の入退場を検知できる場所に少なくとも1つ配置されている。また、前記脱衣場所1を、例えば脱衣所と浴室とトイレの3ヶ所とすると、この人検知手段13も、脱衣所と浴室とトイレの3ヶ所それぞれに配置される。
そして、この人検知手段13によって人が検知された時に、前記芳香手段10と音響手段11と照明手段12とが動作するように設定されている。なお、この人検知手段13は、その他の手段と連動するように設定されていてもよく、適宜変更可能である。
また、この人検知手段13は、脱衣場所1だけでなく、住戸内の複数箇所に配置して、居住者の行動パターンを逐一記憶、蓄積するようにしてもよい。
【0037】
前記識別手段14は、識別プログラムに基づき、制御装置20と居住者が持つ個人ID14a側との間で通信を行い、個人ID14aの認証を行うものであり、前記人検知手段13と連動している。
すなわち、前記人検知手段13によって人が検知された場合に、制御装置20側との間で通信が行われ、その際に個人ID14aを認証するように設定されている。そして、個人ID14aの認証して人を識別し、識別結果に基づいて、前記芳香手段10と音響手段11と照明手段12とが動作するように設定されている。なお、この識別手段14は、前記人検知手段13以外の他の手段と連動するように設定されていてもよく、適宜変更可能である。
【0038】
前記個人ID14aは、性別・年齢等の個人を識別するためのものであり、データとして携帯機に記憶されている。性別・年齢等がわかれば、それに応じた環境調整を行うことができる。
例えば、高齢者や循環器疾患等の医療を受けている人であれば常にヒートショックの抑制を実施し、高齢者や循環器疾患等の医療を受けている人ではない居住者であればその他の効果を得られるようにすることができる。
【0039】
前記携帯機は、前記識別手段14との間で行われる通信に係る機能を有するものであり、例えば住戸の鍵や、自動車の鍵、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、後述する生体センサー14bのハウジング等が挙げられる。
なお、携帯機を別室等に忘れた時のために、脱衣場所1内に、指紋認証や声紋認証等、その他の認証装置を設けるようにしてもよい。
【0040】
生体センサー14bは、居住者Aの血圧や体温等の検出するための検出手段や、この検出手段による検出結果や居住者Aの個人ID14aのデータを始め、各種データおよびプログラムを記憶するための記憶手段や、これら各種データやプログラムを実行するための制御手段、前記検出結果を生体情報データとして、前記制御装置20側に送信するための送信手段等を備えている。
【0041】
前記記憶手段15は、各種プログラムが格納されるプログラム記憶部および各種データが格納されるデータ記憶部からなる。
プログラム記憶部には、図示はしないが、例えば芳香手段10から所定の香りを供給するための香り供給プログラムや、音響手段11から所定の音を供給するための音供給プログラム、照明手段12から所定の光を供給するための光供給プログラム、その他、各手段を正常に動作させる各種プログラムが格納されている。
【0042】
また、データ記憶部には、前記脱衣場所1での人の行動パターンのデータや、環境調整を行った履歴データ、住戸内に居住する複数の居住者Aの個人ID14aとの照合を行うためのIDデータ、環境調整に係る個人の嗜好が予め設定された個人嗜好データ、季節を確認するためのカレンダーデータを始め、その他、各種プログラムを正常に動作させるために必要な様々なデータが格納・蓄積されている。
前記行動パターンデータは、入浴する際の行動パターンや、入浴しない場合等の行動パターンを記憶したものである。すなわち、一般に、入浴する際には、まず、脱衣場所1内に入場し、浴室の照明を電源をオンする行動パターンをとることが多い。また、浴室に隣接する脱衣所内では、このような脱衣行為のほかに、洗面台の前に立つ、洗濯機を作動させる等、限られた行動をとる場合が多いため、これら行動パターンを記憶しておき、データとして蓄積する。
前記個人嗜好データは、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光を、個人の嗜好に合わせて予め設定したものであり、前記識別手段14と連動し、識別プログラムに用いられるデータとして扱われている。
そして、前記芳香手段10と音響手段11と照明手段12とは、前記識別手段14と、この予め設定された個人嗜好データとに基づいて動作するように設定されている。
なお、個人嗜好データを用いるか否かは居住者Aが予め選択するものであり、個人嗜好データの使用が選択されない場合には、個人嗜好データに基づく環境調整は行わないように設定されている。
【0043】
前記行動予測手段16は、行動予測プログラムに基づいて動作するものであり、前記制御装置20と、人検知手段13と連動している。
すなわち、前記記憶手段15に記憶された行動パターンデータと、脱衣場所1内または住戸内にいる人の動きを前記人検知手段13によって検知して得られるリアルタイムの検知結果とを照合し、その人が脱衣行動を起こすか否かを、記憶された行動パターンから予測するものである。
脱衣行動を起こすことが予測される場合には、前記芳香手段10、音響手段11、照明手段12が作動して、それぞれ香りと音と光とが供給され、脱衣行動を起こさないことが予想される場合には、人検知手段13による検知を継続して行動パターンデータとの照合を制御装置20によって行う。つまり、予測結果に基づいて、前記香り、音、光が供給されるようになっている。
【0044】
前記使用状況検知手段17は、洗浄剤を載置した場所付近を局所的に検知するセンサーであり、洗浄剤付近における人の手の動き等が検知されている。なお、洗浄剤は、浴室や洗面台等に配置されている。
前記芳香手段10は、この使用状況検知手段17によって洗浄剤の使用が検知された場合に、香りの供給を停止するように設定されている。
【0045】
前記空調機18は、本実施の形態の環境調整システムと連動しており、併用することによって、より効果的なヒートショックの抑制を行うことができるので望ましい。
なお、この空調機18は、冬季においては、脱衣場所1の温度が所定値(例えば、18℃)以下となった場合に作動し、夏季においては脱衣場所1の温度が所定値(例えば、25℃)以上となった場合に作動するようになっている。
また、この空調機18は、前記生体センサー14bによる居住者Aの生体情報が安定しない場合や、血圧等の変動が激しい場合などには必ず作動するように設定しておくことが望ましい。
【0046】
前記温度測定手段19は温度計であり、前記脱衣場所1内に少なくとも1つ配置されている。さらに、脱衣場所1に隣接する部屋にも少なくとも1つ配置されており、これら温度測定手段19は、前記制御装置20に温度測定結果を送信し、前記制御装置20は、この温度測定結果に基づいてプログラムを実行している。
【0047】
前記制御装置20は、記憶手段15に記憶された全てのプログラムを実行し、環境調整システム全体を制御するものであり、前記脱衣場所1内に設けられたコントロールボックス21に備えられている。
このコントロールボックス21には、前記識別手段14と、記憶手段15と、行動予測手段16との他に、例えば前記個人嗜好データを入力したり、その他の各種情報を入力するための入力手段22と、データや各種情報を出力するための出力手段23と、以上の各種手段と通信を行うための通信手段24、時計(図示せず)などが搭載されている。
【0048】
また、本実施の形態の入力手段22としては、複数種類のボタンやテンキー等を備えたものが採用されているが、これに限るものではなく、適宜変更可能である。さらに、本実施の形態の出力手段23としては、表示モニタが採用されている。
なお、本実施の形態においては、これら入力手段22および出力手段23をコントロールボックス21の外側に露出させ、居住者Aが直接入力できる状態にコントロールボックス21が構成されている。
【0049】
次に、図2のフローチャートを参照して本実施の形態の環境調整システムによる脱衣前環境調整の処理の流れについて説明する。なお、本実施の形態において、居住者Aは、脱衣場所1(脱衣所)に隣接する部屋から該脱衣所に入場して脱衣し、入浴する設定となっている。
まず、夏季であるか冬季であるかの判断を行う(ステップS1)。なお、夏季であるか冬季であるかの判断は、前記カレンダーデータや、温度測定手段19による測定結果に基づいて行われている。
【0050】
冬季である場合には、前記温度測定手段19によって脱衣所の温度を測定し、測定された脱衣所の温度が所定値以下であるか否かを判別する(ステップS2)。
測定された温度が所定値(例えば、20℃)を超える場合には、脱衣所と隣接する部屋との温度差が所定値以上であるか否かを判別する(ステップS3)。
さらに、脱衣所と隣接する部屋との温度差が所定値以上ではない場合(温度差が小さい)には、この冬季における脱衣前環境調整の処理を終了する。
【0051】
ステップS2で、測定された脱衣所の温度が所定値以下(寒い)の場合、または、脱衣所と隣接する部屋との温度差が所定値以上である場合(温度差が大きい)には、ヒートショックを抑制する環境調整を行うようにする。
具体的には、前記芳香手段10によって、例えばバニラ系等の血圧上昇を抑制する香りを供給し(ステップS4)、前記音響手段11によって、血圧上昇を抑制するテンポの遅い音楽を供給し(ステップS5)、前記照明手段12によって、電球色等の赤・オレンジ系の体感温度を上昇させる光を供給する(ステップS6)。
ステップS4〜S6は、少なくとも一方だけ行うようにすればよいが、本実施の形態においてはすべて行うようにしている。以上で、冬季における脱衣前環境調整の処理を終了する。
【0052】
続いて、ステップS1で、夏季である場合には、前記温度測定手段19によって脱衣所の温度を測定し、測定された脱衣所の温度が所定値以上であるか否かを判別する(ステップS7)。
測定された温度が所定値(例えば、25℃)未満の場合には、脱衣所と隣接する部屋との温度差が所定値以上であるか否かを判別する(ステップS8)。
さらに、脱衣所と隣接する部屋との温度差が所定値以上ではない場合(温度差が小さい)には、この夏季における脱衣前環境調整の処理を終了する。
【0053】
ステップS7で、測定された脱衣所の温度が所定値以上(暑い)の場合、または、脱衣所と隣接する部屋との温度差が所定値以上である場合(温度差が大きい)には、ヒートショックを抑制する環境調整を行うようにする。
具体的には、前記芳香手段10によって、例えばミント系等の冷涼感のある香りを供給し(ステップS9)、前記音響手段11によって、覚醒を促すテンポの速い音楽を供給し(ステップS10)、前記照明手段12によって、昼白色等の青白系の体感温度を低下させる光を供給する(ステップS11)。
ステップS9〜S11は、少なくとも一方だけ行うようにすればよいが、本実施の形態においてはすべて行うようにしている。以上で、夏季における脱衣前環境調整の処理を終了する。
【0054】
次に、図3のフローチャートを参照して、前記人検知手段13等を利用した脱衣前準備動作の処理の流れについて説明する。この脱衣前準備動作の処理は、上述の脱衣前環境調整よりも前の段階で行われるものである。
まず、前記人検知手段13によって、前記脱衣所内への人の入場を検知する(ステップS12)。検知されない場合は、この脱衣前準備動作の処理は終了となるが、連続的または断続的にステップS2を行い、人の検知作業を行うようにしてもよい。
人が検知された場合には、前記識別手段14によって個人ID14aの認証を行う(ステップS13)。ここで、個人ID14aの認証ができない場合には、図2のフローチャートで説明した脱衣前環境調整の処理へと移行し(ステップS14)、この脱衣前環境調整の処理が終了すれば、脱衣前準備動作の処理も終了する。
【0055】
ステップS13で、個人ID14aを認証できた場合は、予め設定された嗜好、すなわち前記個人嗜好データが記憶手段15に記憶されているか否かを確認する(ステップS15)。個人嗜好データが記憶されていれば、このデータに基づいて環境調整を行うようにする(ステップS16)。
個人嗜好データが記憶されていない場合は、個人ID14aのデータから、前記人検知手段13によって検知された人(居住者A)が高齢者・循環器疾患等の医療を受けている人であるか否かを確認する(ステップS17)。
【0056】
高齢者・循環器疾患等の医療を受けている人ではない場合は、ステップS14へと移行して、脱衣前環境調整の処理を行う。
高齢者・循環器疾患等の医療をうけている人である場合は、ヒートショックを確実に抑制するために、前記芳香手段10によって血圧上昇を抑制する香りを供給し、前記音響手段11によって血圧上昇を抑制するテンポの遅い音楽を供給し、前記照明手段12によって電球色等の赤・オレンジ系の体感温度を上昇させる光を供給する(ステップS18)。さらに、このステップS18では、空調機18によって脱衣所の温度を調節したり、脱衣所と隣接する部屋との温度差を小さくしたりしてもよい。以上で、脱衣前準備動作の処理の流れが終了する。
【0057】
次に、図4のフローチャートを参照して、前記行動予測手段16等を利用した行動予測の処理の流れについて説明する。
まず、前記記憶手段15に蓄積された過去の行動パターンデータをロードし(ステップS19)、続いて、記憶手段15に記憶された本日の行動パターンデータ(リアルタイムの検知結果)をロードする(ステップS20)。
【0058】
続いて、これら過去の行動パターンデータと、本日の行動パターンデータとを照合し、居住者Aの行動パターンから脱衣を予測できるか否かを判断する(ステップS21)。
脱衣を予測できるか否かの判断は、行動パターンデータから読み取れる行動パターンのうち、複数の行動パターンを満たすか否かによって行われる。すなわち、例えば、居住者Aが、夕食を取り、夕食後にいったん寝室に戻って寝巻を手にしてから脱衣所へと向かい、脱衣所に入った後は必ず脱衣所のドアを閉め、その後脱衣をして入浴する行動パターンを日常的に行っていた場合に、夕食を取り、寝室に行き、脱衣所に入り、脱衣所のドアを閉めることが確認できれば脱衣を予測することができる。単に、脱衣所内で寝間着に着換えただけの日もあるとするならば、浴室の照明をつける等の行動パターンを脱衣予測の一条件としてもよく、過去の行動パターンデータから学習できるように設定してもよいものとする。
【0059】
その後は、図2のフローチャートで説明した脱衣前環境調整の処理へと移行し(ステップS22)、この脱衣前環境調整の処理が終了すれば、行動予測の処理も終了する。
なお、このような行動予測の処理は、図3のフローチャートで説明した脱衣前準備動作の処理のうち、ステップS13とステップS15との間等に組み込んでもよい。組み込んだ場合は、ステップS22で脱衣前環境調整の処理を行う代わりに、ステップS16の個人嗜好データに基づく環境調整を行うようにしてもよい。また、前記識別手段14と連動するように設定されていてもよい。
【0060】
以上のような行動予測の処理の流れにおいて、例えば子供や高齢者などが、記憶された過去の行動パターンから極端に逸脱した行動または危険な行動を取った際には、これを報知するようにしてもよい。報知は、前記出力手段23を用いてもよいし、図示しない報知手段を採用してもよい。
【0061】
次に、図5のフローチャートを参照して、身体を洗浄するシャンプーやリンス、石鹸等の洗浄剤の使用状況を検知する使用状況検知の処理の流れについて説明する。
まず、使用状況検知手段17であるセンサーによって、洗浄剤の使用・不使用を確認する(ステップS23)。
洗浄剤の使用が確認されない場合には、この使用状況検知の処理は終了となるが、居住者Aの入浴中は連続的または断続的にステップS23を行い、洗浄剤の使用を検知する作業を行うようにしてもよい。
【0062】
洗浄剤の使用が確認された場合は、前記芳香手段10が動作中であるか否かの確認を行う(ステップS24)。
芳香手段10が動作中ではない場合は、この使用状況検知の処理は終了となるが、居住者Aの入浴中は連続的または断続的にステップS23を行い、洗浄剤の使用を検知する作業を行うようにしてもよい。
芳香手段10が動作中である場合は、この芳香手段10による香りの供給を停止する(ステップS25)。以上で、使用状況検知の処理の流れが終了する。
【0063】
次に、図6のフローチャートを参照して、睡眠前環境調整の処理の流れについて説明する。なお、この処理は、睡眠前に脱衣場所1を使用した場合に入眠効果を促進しようとするものである。
まず、睡眠前であるか否かの判断をする(ステップS26)。この判断は、図4のフローチャートで説明した行動予測の処理を適用することで行うようにしてもよいし、居住者A自身が判断し、コントロールボックス21で適宜操作できるようにしてもよい。
【0064】
睡眠前でない場合には、この睡眠前環境調整の処理は終了となるが、連続的または断続的にステップS26を行い、睡眠前であるか否かの判断を行うようにしてもよい。
睡眠前である場合には、前記芳香手段10によって、例えばハーブ系等のリラックス効果のある香りを供給し(ステップS27)、前記音響手段11によって、リラックス効果のあるテンポの遅い音楽を供給し(ステップS28)、前記照明手段12によって、暗めの入眠効果のある光を供給する(ステップS29)。以上で、睡眠前環境調整の処理の流れが終了する。
【0065】
以上においては、居住者Aが、脱衣所に隣接する部屋から該脱衣所に入場して脱衣し、入浴する設定としたが、これに限られるものではない。すなわち、脱衣場所1は、脱衣所だけでなく、浴室である場合もあるし、トイレである場合もあるし、寝室である場合もある。特に、トイレにおいては、脱衣所と同じく大きな血圧の変動がある場合がある。
なお、例えば脱衣場所1をトイレとすると、前記人検知手段13や、図示しない着座センサー等によって、居住者Aのトイレ入室を検知し、入室後・着座後は、リラックス効果や血圧上昇を抑制する効果のある香りや、同じくリラックス効果や血圧上昇を抑制する効果のある音を供給する設定としてもよい。
また、排泄後は、例えば排泄物を流したり、着座状態を終えることによって排泄終了を検知し、検知後、爽やかな香りを供給するような設定としてもよい。
また、脱衣場所1をトイレとした場合も、環境調整システムと前記空調機18とを効果的に連動させ、特に冬季におけるヒートショックの確実に抑制できるようにすることが望ましい。
【0066】
また、以上のような環境調整システムを、居住者Aの起床を補助するもの(起床行動を喚起するもの)として採用してもよいものとする。すなわち、前記音響手段1によって覚醒を促すテンポの速い音楽を供給し、前記照明手段12によって覚醒促す明るい光を供給する。そして、冬季である場合には前記芳香手段10によって温かみのある香りを供給し、夏季である場合には前記芳香手段10によって涼しげな香りを供給するなどして、居住者Aの起床を補助することができるので、好ましい。
【0067】
本実施の形態によれば、前記脱衣場所1の温度に基づいて、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給しているので、これら香りや音や光が身体に対して生理的に作用することになり、例えば人の血圧上昇を抑制したり、体感温度を上昇させたり、体感温度を低下させたりすることができる。これによって、前記脱衣場所1の香りや音や光に係る環境を調整することによって、ヒートショックを引き起こす身体的要因を取り除くことができるので、前記脱衣場所1でのヒートショックを確実に抑制することができる。
また、ヒートショックの抑制だけでなく、居住者の嗜好や状況に合わせて前記脱衣場所1の香りや音や光に係る環境を調整することによって、例えばリラックス効果や、冷涼感、入眠効果、覚醒効果等を得ることができるので、快適な居住環境を形成することができる。
【0068】
また、冬季において、前記脱衣場所1の温度が所定値以下の場合に、前記芳香手段10によって血圧上昇を抑制する香り、音響手段11によって血圧上昇を抑制する音、照明手段12によって体感温度を上昇させる光のうち、少なくとも一方を供給しているので、冬季の脱衣場所1における急激な血圧上昇を抑制したり、体感温度の低下を防いだりすることによって、前記脱衣場所1でのヒートショックをより確実に抑制することができる。
【0069】
また、前記脱衣場所1と、この脱衣場所1に隣接する部屋との温度差が所定値以上の場合に、前記芳香手段10によって血圧上昇を抑制する香り、音響手段11によって血圧上昇を抑制する音、照明手段12によって体感温度を上昇させる光のうち、少なくとも一方を供給しているので、冬季や夏季に関わらず、脱衣場所1における急激な血圧上昇を抑制したり、体感温度の低下を防いだりすることによって、前記脱衣場所1でのヒートショックをさらに確実に抑制することができる。
【0070】
また、夏季において、前記脱衣場所1の温度が所定値以上の場合に、前記芳香手段10によって冷涼感のある香りを供給しているので、夏季の脱衣場所1における体感温度の上昇を防ぐことができ、より快適な居住環境を形成することができる。
【0071】
また、冬季において、前記脱衣場所1の温度が所定値以下の場合に、前記照明手段12によって暖色系の光を供給しているので、冬季の脱衣場所1における体感温度の上昇を促進することができ、前記脱衣場所1でのヒートショックを一層確実に抑制することができる。
また、夏季において、前記脱衣場所1の温度が所定値以上の場合に、前記照明手段12によって寒色系の光を供給しているので、夏季の脱衣場所1における体感温度の上昇を防ぐことができ、さらに快適な居住環境を形成することができる。
【0072】
また、前記人検知手段13によって人を検知した場合に、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給しているので、人の入退場に応じて前記脱衣場所1の香りや音や光に係る環境を調整することができる。
【0073】
また、前記識別手段14によって前記人検知手段13で検知された人を識別し、識別結果に基づいて、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給しているので、例えば高齢者や循環器疾患等の医療を受けている人であれば常にヒートショックの抑制を実施し、高齢者や循環器疾患等の医療を受けている人ではない居住者であればその他の効果を得られるようにするなどして、前記脱衣場所1の香りや音や光に係る環境を、居住者毎に異なる設定で調整することができる。
【0074】
また、前記識別手段14と、予め設定された個人の嗜好とに基づいて、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給しているので、居住者毎に、居住者の嗜好に合わせて前記脱衣場所1の香りや音や光に係る環境を調整することができ、特にリラックス効果を得やすい。
【0075】
また、前記行動予測手段16による予測結果に基づいて、前記芳香手段10による香り、音響手段11による音、照明手段12による光のうち、少なくとも一方を供給しているので、前記脱衣場所1の環境調整と脱衣行為との間にタイムラグが発生することを防ぐことができ、香りや音や光に係る環境をタイミング良く調整することができる。
【0076】
また、前記芳香手段10は、前記使用状況検知手段17によって洗浄剤の使用を検知した場合に、香りの供給を停止するように設定されているので、前記芳香手段10による香りと、洗浄剤の香りとが混濁することを防ぐことができ、前記芳香手段10の香りによる効果の低減を防ぐことができる。
【0077】
また、前記脱衣場所1にいる人が睡眠前である場合に、前記芳香手段10によってリラックス効果のある香り、前記音響手段11によってリラックス効果のある音、前記照明手段12によって入眠効果のある光のうち、少なくとも一方を供給しているので、前記脱衣場所1の香りや音や光に係る環境を調整して、前記脱衣場所1にいる人の入眠効果を促進することができる。
【符号の説明】
【0078】
A 居住者
1 脱衣場所
10 芳香手段
11 音響手段
12 照明手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体に対して生理的に作用する香りを供給する芳香手段と、
身体に対して生理的に作用する音を供給する音響手段と、
身体に対して生理的に作用する光を供給する照明手段とのうち、少なくとも一つの手段を備えており、
脱衣所および浴室周辺やトイレ等の脱衣が行われる脱衣場所の温度に基づいて、前記芳香手段による香り、音響手段による音、照明手段による光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする環境調整システム。
【請求項2】
冬季において、前記脱衣場所の温度が所定値以下の場合に、前記芳香手段によって血圧上昇を抑制する香り、音響手段によって血圧上昇を抑制する音、照明手段によって体感温度を上昇させる光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする請求項1に記載の環境調整システム。
【請求項3】
前記脱衣場所と、この脱衣場所に隣接する部屋との温度差が所定値以上の場合に、前記芳香手段によって血圧上昇を抑制する香り、音響手段によって血圧上昇を抑制する音、照明手段によって体感温度を上昇させる光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする請求項1または2に記載の環境調整システム。
【請求項4】
夏季において、前記脱衣場所の温度が所定値以上の場合に、前記芳香手段によって冷涼感のある香りを供給していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の環境調整システム。
【請求項5】
冬季において、前記脱衣場所の温度が所定値以下の場合に、前記照明手段によって暖色系の光を供給しており、
夏季において、前記脱衣場所の温度が所定値以上の場合に、前記照明手段によって寒色系の光を供給していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の環境調整システム。
【請求項6】
前記脱衣場所内にいる人を検知する人検知手段を備えており、
この人検知手段によって人を検知した場合に、前記芳香手段による香り、音響手段による音、照明手段による光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の環境調整システム。
【請求項7】
個人を識別する識別手段を備えており、
この識別手段によって前記人検知手段で検知された人を識別し、識別結果に基づいて、前記芳香手段による香り、音響手段による音、照明手段による光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする請求項6に記載の環境調整システム。
【請求項8】
前記識別手段と、予め設定された個人の嗜好とに基づいて、前記芳香手段による香り、音響手段による音、照明手段による光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする請求項7に記載の環境調整システム。
【請求項9】
前記脱衣場所での人の行動パターンを記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された行動パターンデータと人の事前の行動とに基づいて脱衣行為の有無を予測する行動予測手段とを備えており、
前記行動予測手段による予測結果に基づいて、前記芳香手段による香り、音響手段による音、照明手段による光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の環境調整システム。
【請求項10】
身体を洗浄するシャンプーやリンス、石鹸等の洗浄剤の使用状況を検知する使用状況検知手段を備えており、
前記芳香手段は、前記使用状況検知手段によって洗浄剤の使用を検知した場合に、香りの供給を停止するように設定されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の環境調整システム。
【請求項11】
前記脱衣場所にいる人が睡眠前である場合に、前記芳香手段によってリラックス効果のある香り、前記音響手段によってリラックス効果のある音、前記照明手段によって入眠効果のある光のうち、少なくとも一方を供給していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の環境調整システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−32066(P2012−32066A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171240(P2010−171240)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】