環境配慮型海洋構造物
【課題】護岸、岸壁、桟橋などの海洋構造物の周辺に多くの魚が集まり、海藻類が繁茂するような場を創出できるようにした環境配慮型海洋構造物を提供する。
【解決手段】鋼管矢板1からなる海洋構造物本体と当該海洋構造物本体に取り付けられた複数の漁礁材3とから構成する。漁礁材3は円形の筒状に形成された漁礁材本体3aと漁礁材本体3a内に充填された餌料培養基材3bとから構成する。漁礁材3は鋼管矢板1の側面部に漁礁材取付け具4によって取り外しできるように取り付ける。漁礁材本体3aはポリエチレン樹脂などの樹脂材から形成し、その側部および底部の全体を格子状または網状に形成する。漁礁材本体3aはポ餌料培養基材3bにはホタテやアコヤ等の貝殻を利用する。
【解決手段】鋼管矢板1からなる海洋構造物本体と当該海洋構造物本体に取り付けられた複数の漁礁材3とから構成する。漁礁材3は円形の筒状に形成された漁礁材本体3aと漁礁材本体3a内に充填された餌料培養基材3bとから構成する。漁礁材3は鋼管矢板1の側面部に漁礁材取付け具4によって取り外しできるように取り付ける。漁礁材本体3aはポリエチレン樹脂などの樹脂材から形成し、その側部および底部の全体を格子状または網状に形成する。漁礁材本体3aはポ餌料培養基材3bにはホタテやアコヤ等の貝殻を利用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境改善、生物共生の手段(藻場造成、海藻類による二酸化炭素削減等)に配慮した環境配慮型海洋構造物に関し、例えば鋼管矢板やコンクリートケーソン等からなる既設または新設の護岸、岸壁または桟橋などの海洋構造物に適用される。
【背景技術】
【0002】
一般に、でこぼこした地形の海底やサンゴの密集したサンゴ礁には、微生物や小型生物が住みつき、海草類が繁茂しやすい。このため、これらの周辺は魚にとって格好の餌場であり、また良好な魚の隠れ場でもあるため、自然に魚が多く住みつき、結果的に海を育て、海を育み環境改善に大いに寄与する。
【0003】
逆にそういった場に乏しい平坦な海底、護岸や岸壁などの海洋構造物の周辺には、微生物や小型生物が住みにくく、また海草類も生育しにくいため、漁礁周辺にみられるような魚が集まることはほとんどなく、環境改善、生物共生の手段を講ずることが望まれる。
【0004】
従来、こういった場にも魚が住みつき、海藻類が繁茂するようにコンクリートブロック等を人為的に沈めて人工漁礁とする試みが広く行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−339858号公報
【特許文献2】特開2006−055163号公報
【特許文献3】特開2006−241754号公報
【特許文献4】特開2009−41194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
護岸、岸壁、桟橋などの海洋構造物は、その多くが鋼管矢板やコンクリートケーソン等によって構築されているため、微生物や小型生物が付着しにくく、漁礁周辺にみられるような魚が住みつくことはきわめて少ない。
【0007】
その一方で、既設および新設の護岸、岸壁、桟橋などの海洋構造物についても、環境改善、生物共生の手段に配慮した構造とすることが求められている。
【0008】
本発明は、以上のような現状に鑑みてなされたもので、護岸、岸壁、桟橋などの海洋構造物の周辺に多くの魚が集まり、海藻類が繁茂するような場を創出できるようにした環境配慮型海洋構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の環境配慮型海洋構造物は、鋼管矢板、鋼矢板またはコンクリートケーソンからなる海洋構造物本体と当該海洋構造物本体に取り付けられた複数の漁礁材とからなる環境配慮型海洋構造物において、漁礁材は筒状に形成された漁礁材本体と漁礁材本体内に充填された餌料培養基材とから構成され、前記鋼管矢板、鋼矢板またはコンクリートケーソンに漁礁材取付け具によって脱着自在に取り付けられてなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明は、これまで、ほとんど小型魚類が住みつくことも、海藻類が繁茂しそうにもない護岸などの海洋構造物の周辺に小型魚類が集まり、多種の海藻類が繁茂するような場を作り出して海洋構造物周辺の環境改善と二酸化炭素の削減などに大いに寄与できるようにしたものである。
【0011】
餌料培養基材としては、エビやカニ類の餌漁生物が付着し、これらの生物が生育する環境を作りだせるものであればよく、例えばカキ、ホタテ、アコヤなどの貝殻、ポーラスコンクリートの塊、さらには砕石などを利用することができる。
【0012】
特に、カキ、ホタテ、アコヤなどの貝殻は、漁礁材本体内に充填されることにより微生物や小型生物、さらには海藻類が付着しやすい餌料培養床を形成し、特に貝殻にはエビやカニ類の餌漁生物が付着しやすく、また貝殻や砕石などの重ね合わせにより漁礁本体内に複雑な空間が多数形成されるため、多くの微生物や小型生物の増殖に好適な環境を作りだすことができる。
【0013】
さらに、多種の海草類が付着し生育して繁茂することにより小型魚類の格好の隠れ家にもなるので、自然に魚介類が増え、結果として環境改善、二酸化炭素の削減に大いに寄与することができる。
【0014】
漁礁材本体は、貝殻などの餌料培養基材を充填することができる形状であればよく、筒状が形状も単純で製作しやすい。また、ステンレス等の耐腐蝕性の金属やポリエチレン樹脂などの樹脂材から形成するのが望ましい。
【0015】
漁礁材取付け具は、腐食しにくく、漁礁材を護岸などの海洋構造物に確実に固定することができ、かつ自由に取り外しできるような構成であれば、形状や構造等は特に限定されるものではない。
【0016】
請求項2記載の環境配慮型海洋構造物は、請求項1記載の環境配慮型海洋構造物において、漁礁材本体は格子状または網状に形成されてなることを特徴とするものである。
【0017】
漁礁材本体の側部と底部の全体を格子状または網状に形成して、中の餌料培養基材が常に浸水状態におくことにより餌料培養基材に付着したエビやカニ類の餌漁生物の生育を促すことができる。なお、漁礁材本体は、例えばポリエチレン樹脂などの樹脂から形成することができる。
【0018】
請求項3記載の環境配慮型海洋構造物は、請求項1または2記載の環境配慮型海洋構造物において、餌料培養基材は貝殻からなることを特徴とするものである。
【0019】
特に、カキ、ホタテ、アコヤなどの貝殻は、エビやカニ類の餌漁生物が付着しやすく、また貝殻や砕石などの重ね合わせにより漁礁本体内に複雑な空間が多数形成されるため、多くの微生物や小型生物の増殖に好適な環境を作りだすことができ、また、貝殻の利用は廃棄物の減量化とリサイクルの推進にもなり好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、護岸、岸壁、桟橋杭などの海洋構造の本体に筒状の漁礁材本体と当該漁礁材本体内に充填された貝殻などの餌料培養基材とからなる漁礁材を取り付けることにより、これまで、ほとんど小型魚類が住みつくことも、海藻類が繁茂しそうにもなかった海洋構造物の周辺に小型魚類が集まり、多種の海藻類が繁茂するような場を作り出すことができ、これにより海洋構造物周辺の環境改善と二酸化炭素の削減、などに寄与することができる。
【0021】
この場合、貝殻などの餌料培養基材に付着した二枚貝やホヤ類などの生物が海水中の窒素やリンを取り込んでいる植物プランクトンを捕食することによる富栄養化防止機能が期待できる。
【0022】
また、餌料培養基材に付着した海藻類の栄養塩類の取り込みによる富栄養化防止機能、光合成が期待でき、さらに地域によっては、ナマコの増加による微生物の糞や死骸の分解が期待でき、これらにより二酸化炭素の削減や水質浄化効果などが期待できる。さらに、餌料培養基材として、カキ、ホタテ、アコヤなどの貝殻類を利用することにより、廃棄物の減量化とリサイクルの推進に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】護岸、岸壁を構成する鋼管矢板の側部に漁礁材が設置され、鋼管矢板に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【図2】護岸、岸壁を構成する鋼管矢板の側部に漁礁材が設置され、鋼管矢板に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【図3】護岸、岸壁を構成する鋼管矢板の側部に漁礁材が設置され、鋼管矢板に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【図4】護岸、岸壁を構成する鋼管矢板の側部に漁礁材が設置され、鋼管矢板に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【図5】護岸、岸壁を構成するU字型鋼矢板の側部に漁礁材が設置され、U字型鋼矢板に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【図6】護岸、岸壁を構成するコンクリートケーソンの側部に漁礁材が設置され、コンクリートケーソンの側部に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は側面図、(b)は縦断面図である。
【図7】護岸、岸壁を構成するコンクリートケーソンの側部に漁礁材が設置され、コンクリートケーソンの側部に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は側面図、(b)は縦断面図である。
【図8】護岸、岸壁を構成するコンクリートケーソンの側部に漁礁材が設置され、コンクリートケーソンの側部に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図9】桟橋杭を構成する鋼管矢板の側部に漁礁材が設置され、鋼管矢板の側部に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【図10】桟橋杭を構成する鋼管矢板の側部に漁礁材が設置され、鋼管矢板の側部に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【図11】桟橋杭を構成する鋼管矢板の側部に漁礁材が設置され、鋼管矢板の側部に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1(a),(b)は、本発明の一実施形態を示し、図において、符号1は、護岸、岸壁、桟橋などの海洋構造物本体を構成する鋼管矢板であり、鋼管矢板1はその直径方向に互いに隣接して配置され、かつ継手2を介して互いに結合されている。
【0025】
また、隣接する鋼管矢板1,1間に複数の漁礁材3,3が鋼管矢板1の軸直角方向に並列にかつ鋼管矢板1の軸方向に鉛直に配置され、各漁礁材3,3は鋼管矢板1,1に漁礁材取付け具4を介してそれぞれ固定されている。
【0026】
漁礁材3は漁礁材本体3aと餌料培養基材3bとから構成され、漁礁材本体3aはステンレス等の耐腐蝕性の金属またはポリエチレン樹脂などの樹脂材から円筒形に形成され、かつその側部および底部の全体が格子状または網目状に形成されている。
【0027】
餌料培養基材3bはホタテやアコヤ等の貝殻であり、漁礁材本体3a内に充填されている。ホタテやアコヤなどの貝殻にはエビやカニ類の餌漁生物が付着しやすく、また貝殻の重ね合わせにより漁礁材本体3a内に複雑な空間が多数形成されることで、多くの微生物や小型生物の増殖に好適な環境を作りだしている。
【0028】
さらに、多種の海草類が付着し生育して繁茂することにより小型魚類の格好の隠れ家をも構成し、自然に魚介類が増え結果として環境改善、二酸化炭素の削減に寄与するようになっている。
【0029】
漁礁材取付け具4は、隣接する鋼管矢板1,1間に跨る横寸法を有する矩形枠状に形成され、その上枠4aと下枠4bのほぼ中央に漁礁材3,3を横ずけにして収納可能な収納凹部5,5が鋼管矢板1側に凹んだ状態で形成されている。
【0030】
また、漁礁材取付け具4の上枠4aと下枠4bが鋼管矢板1,1の側面部に複数の取付けボルト6によってボルト止めされている。そして、上下収納凹部5,5内に漁礁材3,3が横付けされ、かつ上枠4aと下枠4bにステンレスまたは合成樹脂などからなる固定バンド7,7によって固定されている。
【0031】
なお、漁礁材取付け具4を既設の鋼管矢板1に突設する場合、取付けボルト6は鋼管矢板の側面部にスタッド溶接し、一方、漁礁材取付け具4を新設の鋼管矢板1に突設する場合、取付けボルト6は鋼管矢板1の側面部に形成したボルト孔に固定ナットで固定すればよい。
【0032】
図2(a),(b)は、図1(a),(b)に図示する実施形態において、下枠4bの収納凹部5に漁礁材3を受ける底板4dを設けて漁礁材3の抜け落ちを防止するようにしたものである。
【0033】
図1および図2の実施形態によれば、特に漁礁材3,3が隣接する鋼管矢板1,1間の凹部内に入り込む形で設置されていることにより、隣接する鋼管矢板1,1間に陰、よどみを作り、小型魚類の良好な生息環境を作りだすことができる。
【0034】
図3(a),(b)は、本発明の他の実施形態を示し、隣接する鋼管矢板1,1間に複数の漁礁材3,3が鋼管矢板1の軸直角方向に並列に、かつ鋼管矢板1の軸方向に鉛直に配置されている。そして、各漁礁材3,3は鋼管矢板1,1に複数の漁礁材取付け具8によって固定されている。
【0035】
漁礁材取付け具8は、円形のリング状に形成された漁礁材把持部8aと漁礁材把持部8aの一側部に突設されたアンカー部8bとから構成されている。漁礁材把持部8aは漁礁材3を挿通可能な内径に形成され、かつ複数の漁礁材取付け孔8cが円周方向に所定間隔おきに形成されている。
【0036】
また、アンカー部8bを鋼管矢板1の側面部にスタッド溶接するか、あるいは鋼管矢板1の側部に形成した取付け孔に固定ナットによって固定する等の方法により鋼管矢板1の側部に水平に突設されている。
【0037】
漁礁材3は漁礁材把持部8a内に設置され、かつ漁礁材取付け孔8cを貫通する取付け金物または結束線によって固定されている。こうして、各漁礁材3は上下両端部と中間部の複数ヶ所が複数の漁礁材取付け具8によって固定されている。
【0038】
図4(a),(b)は、図3(a),(b)に図示する実施形態において、漁礁材3の下端部を固定する漁礁材取付け具8を漁礁材把持部8bに漁礁材3を受ける底部を設けてカップ状とすることにより、漁礁材3の抜け落ちを防止するようにしたものである。
【0039】
図3および図4の実施形態によれば、各漁礁材3が鋼管矢板1に漁礁材取付け具8によって個別に固定されているので、各漁礁材3を固定する位置を自由に設定することができる。また、漁礁材取付け具8は簡単な形状をしていることにより製作が容易であり、漁礁材を少ない取付け具により低コストで設置することができる。
【0040】
図5(a),(b)は、本発明の他の実施形態を示し、図において、符号9は、護岸、岸壁などの海洋構造物本体を構成するU字型鋼矢板であり、U字型鋼矢板9はその幅方向に互いに隣接して配置され、かつ継手2を介して互いに結合されている。
【0041】
また、隣接するU字型鋼矢板9,9間の凹部9a内に複数の漁礁材3,3がU字型鋼管矢板9の軸直角方向に並列に、かつU字型鋼管矢板9の軸方向に鉛直に配置されている。そして、各漁礁材3,3はU字型鋼管矢板9,9に漁礁材取付け具4と固定バンド7によって固定されている。
【0042】
なお、下枠4bの収納凹部5に漁礁材3を受ける底板を設けて漁礁材3の抜け落ちを防止するようにすることは、図2(a),(b)に図示する実施形態と同じである。
【0043】
この実施形態によれば、図1および図2の実施形態と同様に、漁礁材3,3が隣接する鋼管矢板1,1間の凹部内に入り込む形で設置されていることにより、隣接する鋼管矢板1,1間に陰、よどみを作り、小型魚類の良好な生息環境を作りだすことができる。
【0044】
図6(a),(b)は、本発明の他の一実施形態を示し、図において、符号10は、護岸、岸壁などの海洋構造物本体を構成するコンクリートケーソンであり、コンクリートケーソン10の側壁部に漁礁材取付け具11が取り付けられ、漁礁材取付け具11の上に複数の漁礁材3,3が水平にした状態で上下方向に複数段に固定されている。
【0045】
漁礁材取付け具11は、漁礁材3の長さとほぼ同等の横寸法を有する矩形枠状に形成され、その上枠11aと下枠11bおよび左右縦枠11cがコンクリートケーソン10の側部に複数のアンカーボルト12によって固定されている。
【0046】
そして、各漁礁材3の両端部と中間部が左右縦枠11cと中間縦枠11dに固定バンド7によってそれぞれ固定されている。
【0047】
なお、コンクリートケーソン10が新設の場合、コンクリートケーソン10の壁面部にインサート(雌ねじ)を埋め込み、これにアンカーボルト12を締め付け、一方、コンクリートケーソン10が既設の場合は、コンクリートケーソン10の壁面部にケミカルアンカーを打ち込み、これにアンカーボルト12を締め付けるようにすれば、アンカーボルト12を締め付けるための削孔、打ち込み等の作業を省略することができる。
【0048】
図7(a),(b)は、図6(a),(b)に図示する実施形態において、漁礁材3が取り付けられた漁礁材取付け具11がコンクリートケーソン10の側壁部に形成された凹部10a内に取り付けられている場合を示したものであり、この実施形態によれば、複数の漁礁材3をコンクリートケーソン10の壁面より突出しないように取り付けることができる。
【0049】
図6および図7の実施形態によれば、必要な数の漁礁材3をコンクリートケーソンの側壁部に一個の漁礁材取付け具8によって強固に取り付けることができる。また特に、図7の実施形態によれば、漁礁材3,3が隣接する鋼管矢板1,1間の凹部内に入り込む形で設置されていることにより、隣接する鋼管矢板1,1間に陰、よどみを作り、小型魚類の良好な生息環境を作りだすことができる。
【0050】
図8(a),(b)は、本発明の他の実施形態を示し、複数の漁礁材3,3がコンクリートケーソン10の壁面部に水平にして複数段に配置され、かつ各漁礁材3,3はコンクリートケーソン10の壁面部に複数の漁礁材取付け具8によって固定されている。
【0051】
この場合、コンクリートケーソン10が新設の場合、コンクリートケーソン10の壁面部にインサート(雌ねじ)を埋め込み、これに漁礁材取付け具8を結合し、一方、コンクリートケーソン10が既設の場合は、コンクリートケーソン10の壁面部にケミカルアンカーを打ち込み、これに漁礁材取付け具8を結合するようにすれば、漁礁材取付け具8を突設するための削孔、打ち込み等の作業を省略することができる。
【0052】
また、漁礁材3はコンクリートケーソン10の側壁部に漁礁材取付け具8によって個別に固定されているので、各漁礁材3を固定する位置を自由に設定することができる。また、漁礁材取付け具8は簡単な形状をしていることにより製作が容易であり、漁礁材を少ない取付け具により低コストで設置することができる。
【0053】
図9(a),(b)は、本発明の他の実施形態を示し、図において、符号13は、桟橋杭を構成する鋼管矢板であり、鋼管矢板13の外周部に複数の漁礁材3が鋼管矢板13の円周方向に並列に、かつ鋼管矢板13の軸方向に鉛直に配置されている。そして、各漁礁材3は鋼管矢板13に複数の漁礁材取付け具8によって固定されている。
【0054】
この場合、各漁礁材3の上下両端部と中間部を鋼管矢板13に固定すること、および漁礁材3の下端部を固定する漁礁材取付け具8を漁礁材把持部8bに漁礁材3を受ける底部を設けてカップ状にすることにより、漁礁材3の抜け落ちを防止するようにしたことは、図3(a),(b)に図示する実施形態と同じである。
【0055】
また、漁礁材3は鋼管矢板13の側壁部に漁礁材取付け具8によって個別に固定されているので、各漁礁材3を固定する位置を自由に設定することができる。また、漁礁材取付け具8は簡単な形状をしていることにより製作が容易であり、漁礁材を少ない取付け具により低コストで設置することができる。
【0056】
図10(a),(b)は、本発明の他の実施形態を示し、図において、桟橋杭を構成する鋼管矢板13の外周部に複数の漁礁材3がその円周方向に並列に、かつ鋼管矢板13の軸方向に鉛直に配置されている。そして、各漁礁材3は鋼管矢板13に漁礁材取付け具14によって固定されている。
【0057】
漁礁材取付け具14は、円形のリング状に形成された漁礁材把持部14aと漁礁材把持部14aが所定間隔おきに取り付けられたベルトスリング14bとから構成されている。
【0058】
漁礁材把持部14aは漁礁材3を挿通可能な内径に形成され、かつ複数の漁礁材取付け孔14cが円周方向に所定間隔おきに形成されている。また、ベルトスリング14bには締付金具14cが取り付けられている。
【0059】
そして、ベルトスリング14bを鋼管矢板13に巻き付け、かつ締付金具14cを締め付けることにより落下しないように固定されている。また、各漁礁材3は漁礁材把持部14a内に設置され、かつ漁礁材取付け孔14cを貫通する取付け金物または結束材によって漁礁材把持部14aに固定されている。
【0060】
なお、漁礁材把持部14aとベルトスリング14bはステンレス等の金属または合成樹脂などから一体に形成されている。
【0061】
また、漁礁材3の上下両端部と中間部の複数ヶ所を鋼管矢板13に固定すること、および漁礁材3の下端部を固定する漁礁材取付け具14の漁礁材把持部14bに漁礁材3を受ける底部を設けてカップ状にすることにより、漁礁材3の抜け落ちを防止するようにしたことは、図3(a),(b)に図示する実施形態と同じである。
【0062】
この実施形態によれば、ベルトスリング14bを利用して多数の漁礁材3を設置することができ、また径の異なる鋼管矢板13が複数混在するような場合でも、締付金具14cによってベルトスリング14bを締め付けることにより対処することができる。
【0063】
図11(a),(b)は、図10(a),(b)に図示する実施形態において、ベルトスリング14bの代わりに取付けプレート14cを備えた漁礁材取付け具14によって複数の漁礁材3が鋼管矢板13の外周に固定されている場合を示したものである。
【0064】
この場合の取付けプレート14cは、漁礁材3の長さとほぼ同等の高さを有し、鋼管矢板13に外接する円弧状に形成され、かつ両端部に継手14d,14dが形成されている。また、漁礁材把持部14aは取付けプレート14cに溶接または接着剤などによって固着されている。
【0065】
そして、漁礁材取付け具14は、鋼管矢板13の側部に鋼管矢板13を抱き込むように添え付けられ、継手14dどうしを複数の連結ボルトによってボルト止めすることにより固定されている。
【0066】
なお、漁礁材3の上下両端部と中間部の複数ヶ所を固定すること、および漁礁材3の下端部を固定する漁礁材把持部14bに漁礁材3を受ける底部を設けてカップ状とすることにより、漁礁材3の抜け落ちを防止するようにしたことは、図3(a),(b)に図示する実施形態と同じである。
【0067】
この実施形態によれば、取付けプレート14cを利用して多数の漁礁材3を設置することができ、また鋼管矢板の外径に応じて漁礁材把持部14aの数量を調整することにより、鋼管矢板13の外径に応じた適切な数の漁礁材3を設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、ほとんど小型魚類が住みつくことも、海藻類が繁茂しそうにもない護岸、岸壁、桟橋などの海洋構造物の周辺に小型魚類が集まり、多種の海藻類が繁茂するような場を作り出して海洋構造物周辺の環境改善と二酸化炭素の削減に寄与することができる。
ることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 鋼管矢板
2 継手
3 漁礁材
3a 漁礁材本体
3b 餌料培養基材
4 漁礁材取付け具
4a 上枠
4b 下枠
4c 縦枠
4d 底板
5 収納凹部
5a 底部
6 取付けボルト
7 固定バンド
8 漁礁材取付け具
8a 漁礁材把持部
8b アンカー部
8c 漁礁材取付け孔
9 U字型鋼矢板
10 コンクリートケーソン
11 漁礁材取付け具
12 アンカーボルト
13 鋼管矢板
14 漁礁材取付け具
14a 漁礁材把持部
14b ベルトスリング
14c 漁礁材取付け孔
14d 継手
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境改善、生物共生の手段(藻場造成、海藻類による二酸化炭素削減等)に配慮した環境配慮型海洋構造物に関し、例えば鋼管矢板やコンクリートケーソン等からなる既設または新設の護岸、岸壁または桟橋などの海洋構造物に適用される。
【背景技術】
【0002】
一般に、でこぼこした地形の海底やサンゴの密集したサンゴ礁には、微生物や小型生物が住みつき、海草類が繁茂しやすい。このため、これらの周辺は魚にとって格好の餌場であり、また良好な魚の隠れ場でもあるため、自然に魚が多く住みつき、結果的に海を育て、海を育み環境改善に大いに寄与する。
【0003】
逆にそういった場に乏しい平坦な海底、護岸や岸壁などの海洋構造物の周辺には、微生物や小型生物が住みにくく、また海草類も生育しにくいため、漁礁周辺にみられるような魚が集まることはほとんどなく、環境改善、生物共生の手段を講ずることが望まれる。
【0004】
従来、こういった場にも魚が住みつき、海藻類が繁茂するようにコンクリートブロック等を人為的に沈めて人工漁礁とする試みが広く行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−339858号公報
【特許文献2】特開2006−055163号公報
【特許文献3】特開2006−241754号公報
【特許文献4】特開2009−41194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
護岸、岸壁、桟橋などの海洋構造物は、その多くが鋼管矢板やコンクリートケーソン等によって構築されているため、微生物や小型生物が付着しにくく、漁礁周辺にみられるような魚が住みつくことはきわめて少ない。
【0007】
その一方で、既設および新設の護岸、岸壁、桟橋などの海洋構造物についても、環境改善、生物共生の手段に配慮した構造とすることが求められている。
【0008】
本発明は、以上のような現状に鑑みてなされたもので、護岸、岸壁、桟橋などの海洋構造物の周辺に多くの魚が集まり、海藻類が繁茂するような場を創出できるようにした環境配慮型海洋構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の環境配慮型海洋構造物は、鋼管矢板、鋼矢板またはコンクリートケーソンからなる海洋構造物本体と当該海洋構造物本体に取り付けられた複数の漁礁材とからなる環境配慮型海洋構造物において、漁礁材は筒状に形成された漁礁材本体と漁礁材本体内に充填された餌料培養基材とから構成され、前記鋼管矢板、鋼矢板またはコンクリートケーソンに漁礁材取付け具によって脱着自在に取り付けられてなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明は、これまで、ほとんど小型魚類が住みつくことも、海藻類が繁茂しそうにもない護岸などの海洋構造物の周辺に小型魚類が集まり、多種の海藻類が繁茂するような場を作り出して海洋構造物周辺の環境改善と二酸化炭素の削減などに大いに寄与できるようにしたものである。
【0011】
餌料培養基材としては、エビやカニ類の餌漁生物が付着し、これらの生物が生育する環境を作りだせるものであればよく、例えばカキ、ホタテ、アコヤなどの貝殻、ポーラスコンクリートの塊、さらには砕石などを利用することができる。
【0012】
特に、カキ、ホタテ、アコヤなどの貝殻は、漁礁材本体内に充填されることにより微生物や小型生物、さらには海藻類が付着しやすい餌料培養床を形成し、特に貝殻にはエビやカニ類の餌漁生物が付着しやすく、また貝殻や砕石などの重ね合わせにより漁礁本体内に複雑な空間が多数形成されるため、多くの微生物や小型生物の増殖に好適な環境を作りだすことができる。
【0013】
さらに、多種の海草類が付着し生育して繁茂することにより小型魚類の格好の隠れ家にもなるので、自然に魚介類が増え、結果として環境改善、二酸化炭素の削減に大いに寄与することができる。
【0014】
漁礁材本体は、貝殻などの餌料培養基材を充填することができる形状であればよく、筒状が形状も単純で製作しやすい。また、ステンレス等の耐腐蝕性の金属やポリエチレン樹脂などの樹脂材から形成するのが望ましい。
【0015】
漁礁材取付け具は、腐食しにくく、漁礁材を護岸などの海洋構造物に確実に固定することができ、かつ自由に取り外しできるような構成であれば、形状や構造等は特に限定されるものではない。
【0016】
請求項2記載の環境配慮型海洋構造物は、請求項1記載の環境配慮型海洋構造物において、漁礁材本体は格子状または網状に形成されてなることを特徴とするものである。
【0017】
漁礁材本体の側部と底部の全体を格子状または網状に形成して、中の餌料培養基材が常に浸水状態におくことにより餌料培養基材に付着したエビやカニ類の餌漁生物の生育を促すことができる。なお、漁礁材本体は、例えばポリエチレン樹脂などの樹脂から形成することができる。
【0018】
請求項3記載の環境配慮型海洋構造物は、請求項1または2記載の環境配慮型海洋構造物において、餌料培養基材は貝殻からなることを特徴とするものである。
【0019】
特に、カキ、ホタテ、アコヤなどの貝殻は、エビやカニ類の餌漁生物が付着しやすく、また貝殻や砕石などの重ね合わせにより漁礁本体内に複雑な空間が多数形成されるため、多くの微生物や小型生物の増殖に好適な環境を作りだすことができ、また、貝殻の利用は廃棄物の減量化とリサイクルの推進にもなり好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、護岸、岸壁、桟橋杭などの海洋構造の本体に筒状の漁礁材本体と当該漁礁材本体内に充填された貝殻などの餌料培養基材とからなる漁礁材を取り付けることにより、これまで、ほとんど小型魚類が住みつくことも、海藻類が繁茂しそうにもなかった海洋構造物の周辺に小型魚類が集まり、多種の海藻類が繁茂するような場を作り出すことができ、これにより海洋構造物周辺の環境改善と二酸化炭素の削減、などに寄与することができる。
【0021】
この場合、貝殻などの餌料培養基材に付着した二枚貝やホヤ類などの生物が海水中の窒素やリンを取り込んでいる植物プランクトンを捕食することによる富栄養化防止機能が期待できる。
【0022】
また、餌料培養基材に付着した海藻類の栄養塩類の取り込みによる富栄養化防止機能、光合成が期待でき、さらに地域によっては、ナマコの増加による微生物の糞や死骸の分解が期待でき、これらにより二酸化炭素の削減や水質浄化効果などが期待できる。さらに、餌料培養基材として、カキ、ホタテ、アコヤなどの貝殻類を利用することにより、廃棄物の減量化とリサイクルの推進に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】護岸、岸壁を構成する鋼管矢板の側部に漁礁材が設置され、鋼管矢板に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【図2】護岸、岸壁を構成する鋼管矢板の側部に漁礁材が設置され、鋼管矢板に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【図3】護岸、岸壁を構成する鋼管矢板の側部に漁礁材が設置され、鋼管矢板に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【図4】護岸、岸壁を構成する鋼管矢板の側部に漁礁材が設置され、鋼管矢板に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【図5】護岸、岸壁を構成するU字型鋼矢板の側部に漁礁材が設置され、U字型鋼矢板に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【図6】護岸、岸壁を構成するコンクリートケーソンの側部に漁礁材が設置され、コンクリートケーソンの側部に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は側面図、(b)は縦断面図である。
【図7】護岸、岸壁を構成するコンクリートケーソンの側部に漁礁材が設置され、コンクリートケーソンの側部に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は側面図、(b)は縦断面図である。
【図8】護岸、岸壁を構成するコンクリートケーソンの側部に漁礁材が設置され、コンクリートケーソンの側部に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図9】桟橋杭を構成する鋼管矢板の側部に漁礁材が設置され、鋼管矢板の側部に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【図10】桟橋杭を構成する鋼管矢板の側部に漁礁材が設置され、鋼管矢板の側部に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【図11】桟橋杭を構成する鋼管矢板の側部に漁礁材が設置され、鋼管矢板の側部に漁礁材取付け具によって固定されている状態を示し、(a)は横断面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1(a),(b)は、本発明の一実施形態を示し、図において、符号1は、護岸、岸壁、桟橋などの海洋構造物本体を構成する鋼管矢板であり、鋼管矢板1はその直径方向に互いに隣接して配置され、かつ継手2を介して互いに結合されている。
【0025】
また、隣接する鋼管矢板1,1間に複数の漁礁材3,3が鋼管矢板1の軸直角方向に並列にかつ鋼管矢板1の軸方向に鉛直に配置され、各漁礁材3,3は鋼管矢板1,1に漁礁材取付け具4を介してそれぞれ固定されている。
【0026】
漁礁材3は漁礁材本体3aと餌料培養基材3bとから構成され、漁礁材本体3aはステンレス等の耐腐蝕性の金属またはポリエチレン樹脂などの樹脂材から円筒形に形成され、かつその側部および底部の全体が格子状または網目状に形成されている。
【0027】
餌料培養基材3bはホタテやアコヤ等の貝殻であり、漁礁材本体3a内に充填されている。ホタテやアコヤなどの貝殻にはエビやカニ類の餌漁生物が付着しやすく、また貝殻の重ね合わせにより漁礁材本体3a内に複雑な空間が多数形成されることで、多くの微生物や小型生物の増殖に好適な環境を作りだしている。
【0028】
さらに、多種の海草類が付着し生育して繁茂することにより小型魚類の格好の隠れ家をも構成し、自然に魚介類が増え結果として環境改善、二酸化炭素の削減に寄与するようになっている。
【0029】
漁礁材取付け具4は、隣接する鋼管矢板1,1間に跨る横寸法を有する矩形枠状に形成され、その上枠4aと下枠4bのほぼ中央に漁礁材3,3を横ずけにして収納可能な収納凹部5,5が鋼管矢板1側に凹んだ状態で形成されている。
【0030】
また、漁礁材取付け具4の上枠4aと下枠4bが鋼管矢板1,1の側面部に複数の取付けボルト6によってボルト止めされている。そして、上下収納凹部5,5内に漁礁材3,3が横付けされ、かつ上枠4aと下枠4bにステンレスまたは合成樹脂などからなる固定バンド7,7によって固定されている。
【0031】
なお、漁礁材取付け具4を既設の鋼管矢板1に突設する場合、取付けボルト6は鋼管矢板の側面部にスタッド溶接し、一方、漁礁材取付け具4を新設の鋼管矢板1に突設する場合、取付けボルト6は鋼管矢板1の側面部に形成したボルト孔に固定ナットで固定すればよい。
【0032】
図2(a),(b)は、図1(a),(b)に図示する実施形態において、下枠4bの収納凹部5に漁礁材3を受ける底板4dを設けて漁礁材3の抜け落ちを防止するようにしたものである。
【0033】
図1および図2の実施形態によれば、特に漁礁材3,3が隣接する鋼管矢板1,1間の凹部内に入り込む形で設置されていることにより、隣接する鋼管矢板1,1間に陰、よどみを作り、小型魚類の良好な生息環境を作りだすことができる。
【0034】
図3(a),(b)は、本発明の他の実施形態を示し、隣接する鋼管矢板1,1間に複数の漁礁材3,3が鋼管矢板1の軸直角方向に並列に、かつ鋼管矢板1の軸方向に鉛直に配置されている。そして、各漁礁材3,3は鋼管矢板1,1に複数の漁礁材取付け具8によって固定されている。
【0035】
漁礁材取付け具8は、円形のリング状に形成された漁礁材把持部8aと漁礁材把持部8aの一側部に突設されたアンカー部8bとから構成されている。漁礁材把持部8aは漁礁材3を挿通可能な内径に形成され、かつ複数の漁礁材取付け孔8cが円周方向に所定間隔おきに形成されている。
【0036】
また、アンカー部8bを鋼管矢板1の側面部にスタッド溶接するか、あるいは鋼管矢板1の側部に形成した取付け孔に固定ナットによって固定する等の方法により鋼管矢板1の側部に水平に突設されている。
【0037】
漁礁材3は漁礁材把持部8a内に設置され、かつ漁礁材取付け孔8cを貫通する取付け金物または結束線によって固定されている。こうして、各漁礁材3は上下両端部と中間部の複数ヶ所が複数の漁礁材取付け具8によって固定されている。
【0038】
図4(a),(b)は、図3(a),(b)に図示する実施形態において、漁礁材3の下端部を固定する漁礁材取付け具8を漁礁材把持部8bに漁礁材3を受ける底部を設けてカップ状とすることにより、漁礁材3の抜け落ちを防止するようにしたものである。
【0039】
図3および図4の実施形態によれば、各漁礁材3が鋼管矢板1に漁礁材取付け具8によって個別に固定されているので、各漁礁材3を固定する位置を自由に設定することができる。また、漁礁材取付け具8は簡単な形状をしていることにより製作が容易であり、漁礁材を少ない取付け具により低コストで設置することができる。
【0040】
図5(a),(b)は、本発明の他の実施形態を示し、図において、符号9は、護岸、岸壁などの海洋構造物本体を構成するU字型鋼矢板であり、U字型鋼矢板9はその幅方向に互いに隣接して配置され、かつ継手2を介して互いに結合されている。
【0041】
また、隣接するU字型鋼矢板9,9間の凹部9a内に複数の漁礁材3,3がU字型鋼管矢板9の軸直角方向に並列に、かつU字型鋼管矢板9の軸方向に鉛直に配置されている。そして、各漁礁材3,3はU字型鋼管矢板9,9に漁礁材取付け具4と固定バンド7によって固定されている。
【0042】
なお、下枠4bの収納凹部5に漁礁材3を受ける底板を設けて漁礁材3の抜け落ちを防止するようにすることは、図2(a),(b)に図示する実施形態と同じである。
【0043】
この実施形態によれば、図1および図2の実施形態と同様に、漁礁材3,3が隣接する鋼管矢板1,1間の凹部内に入り込む形で設置されていることにより、隣接する鋼管矢板1,1間に陰、よどみを作り、小型魚類の良好な生息環境を作りだすことができる。
【0044】
図6(a),(b)は、本発明の他の一実施形態を示し、図において、符号10は、護岸、岸壁などの海洋構造物本体を構成するコンクリートケーソンであり、コンクリートケーソン10の側壁部に漁礁材取付け具11が取り付けられ、漁礁材取付け具11の上に複数の漁礁材3,3が水平にした状態で上下方向に複数段に固定されている。
【0045】
漁礁材取付け具11は、漁礁材3の長さとほぼ同等の横寸法を有する矩形枠状に形成され、その上枠11aと下枠11bおよび左右縦枠11cがコンクリートケーソン10の側部に複数のアンカーボルト12によって固定されている。
【0046】
そして、各漁礁材3の両端部と中間部が左右縦枠11cと中間縦枠11dに固定バンド7によってそれぞれ固定されている。
【0047】
なお、コンクリートケーソン10が新設の場合、コンクリートケーソン10の壁面部にインサート(雌ねじ)を埋め込み、これにアンカーボルト12を締め付け、一方、コンクリートケーソン10が既設の場合は、コンクリートケーソン10の壁面部にケミカルアンカーを打ち込み、これにアンカーボルト12を締め付けるようにすれば、アンカーボルト12を締め付けるための削孔、打ち込み等の作業を省略することができる。
【0048】
図7(a),(b)は、図6(a),(b)に図示する実施形態において、漁礁材3が取り付けられた漁礁材取付け具11がコンクリートケーソン10の側壁部に形成された凹部10a内に取り付けられている場合を示したものであり、この実施形態によれば、複数の漁礁材3をコンクリートケーソン10の壁面より突出しないように取り付けることができる。
【0049】
図6および図7の実施形態によれば、必要な数の漁礁材3をコンクリートケーソンの側壁部に一個の漁礁材取付け具8によって強固に取り付けることができる。また特に、図7の実施形態によれば、漁礁材3,3が隣接する鋼管矢板1,1間の凹部内に入り込む形で設置されていることにより、隣接する鋼管矢板1,1間に陰、よどみを作り、小型魚類の良好な生息環境を作りだすことができる。
【0050】
図8(a),(b)は、本発明の他の実施形態を示し、複数の漁礁材3,3がコンクリートケーソン10の壁面部に水平にして複数段に配置され、かつ各漁礁材3,3はコンクリートケーソン10の壁面部に複数の漁礁材取付け具8によって固定されている。
【0051】
この場合、コンクリートケーソン10が新設の場合、コンクリートケーソン10の壁面部にインサート(雌ねじ)を埋め込み、これに漁礁材取付け具8を結合し、一方、コンクリートケーソン10が既設の場合は、コンクリートケーソン10の壁面部にケミカルアンカーを打ち込み、これに漁礁材取付け具8を結合するようにすれば、漁礁材取付け具8を突設するための削孔、打ち込み等の作業を省略することができる。
【0052】
また、漁礁材3はコンクリートケーソン10の側壁部に漁礁材取付け具8によって個別に固定されているので、各漁礁材3を固定する位置を自由に設定することができる。また、漁礁材取付け具8は簡単な形状をしていることにより製作が容易であり、漁礁材を少ない取付け具により低コストで設置することができる。
【0053】
図9(a),(b)は、本発明の他の実施形態を示し、図において、符号13は、桟橋杭を構成する鋼管矢板であり、鋼管矢板13の外周部に複数の漁礁材3が鋼管矢板13の円周方向に並列に、かつ鋼管矢板13の軸方向に鉛直に配置されている。そして、各漁礁材3は鋼管矢板13に複数の漁礁材取付け具8によって固定されている。
【0054】
この場合、各漁礁材3の上下両端部と中間部を鋼管矢板13に固定すること、および漁礁材3の下端部を固定する漁礁材取付け具8を漁礁材把持部8bに漁礁材3を受ける底部を設けてカップ状にすることにより、漁礁材3の抜け落ちを防止するようにしたことは、図3(a),(b)に図示する実施形態と同じである。
【0055】
また、漁礁材3は鋼管矢板13の側壁部に漁礁材取付け具8によって個別に固定されているので、各漁礁材3を固定する位置を自由に設定することができる。また、漁礁材取付け具8は簡単な形状をしていることにより製作が容易であり、漁礁材を少ない取付け具により低コストで設置することができる。
【0056】
図10(a),(b)は、本発明の他の実施形態を示し、図において、桟橋杭を構成する鋼管矢板13の外周部に複数の漁礁材3がその円周方向に並列に、かつ鋼管矢板13の軸方向に鉛直に配置されている。そして、各漁礁材3は鋼管矢板13に漁礁材取付け具14によって固定されている。
【0057】
漁礁材取付け具14は、円形のリング状に形成された漁礁材把持部14aと漁礁材把持部14aが所定間隔おきに取り付けられたベルトスリング14bとから構成されている。
【0058】
漁礁材把持部14aは漁礁材3を挿通可能な内径に形成され、かつ複数の漁礁材取付け孔14cが円周方向に所定間隔おきに形成されている。また、ベルトスリング14bには締付金具14cが取り付けられている。
【0059】
そして、ベルトスリング14bを鋼管矢板13に巻き付け、かつ締付金具14cを締め付けることにより落下しないように固定されている。また、各漁礁材3は漁礁材把持部14a内に設置され、かつ漁礁材取付け孔14cを貫通する取付け金物または結束材によって漁礁材把持部14aに固定されている。
【0060】
なお、漁礁材把持部14aとベルトスリング14bはステンレス等の金属または合成樹脂などから一体に形成されている。
【0061】
また、漁礁材3の上下両端部と中間部の複数ヶ所を鋼管矢板13に固定すること、および漁礁材3の下端部を固定する漁礁材取付け具14の漁礁材把持部14bに漁礁材3を受ける底部を設けてカップ状にすることにより、漁礁材3の抜け落ちを防止するようにしたことは、図3(a),(b)に図示する実施形態と同じである。
【0062】
この実施形態によれば、ベルトスリング14bを利用して多数の漁礁材3を設置することができ、また径の異なる鋼管矢板13が複数混在するような場合でも、締付金具14cによってベルトスリング14bを締め付けることにより対処することができる。
【0063】
図11(a),(b)は、図10(a),(b)に図示する実施形態において、ベルトスリング14bの代わりに取付けプレート14cを備えた漁礁材取付け具14によって複数の漁礁材3が鋼管矢板13の外周に固定されている場合を示したものである。
【0064】
この場合の取付けプレート14cは、漁礁材3の長さとほぼ同等の高さを有し、鋼管矢板13に外接する円弧状に形成され、かつ両端部に継手14d,14dが形成されている。また、漁礁材把持部14aは取付けプレート14cに溶接または接着剤などによって固着されている。
【0065】
そして、漁礁材取付け具14は、鋼管矢板13の側部に鋼管矢板13を抱き込むように添え付けられ、継手14dどうしを複数の連結ボルトによってボルト止めすることにより固定されている。
【0066】
なお、漁礁材3の上下両端部と中間部の複数ヶ所を固定すること、および漁礁材3の下端部を固定する漁礁材把持部14bに漁礁材3を受ける底部を設けてカップ状とすることにより、漁礁材3の抜け落ちを防止するようにしたことは、図3(a),(b)に図示する実施形態と同じである。
【0067】
この実施形態によれば、取付けプレート14cを利用して多数の漁礁材3を設置することができ、また鋼管矢板の外径に応じて漁礁材把持部14aの数量を調整することにより、鋼管矢板13の外径に応じた適切な数の漁礁材3を設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、ほとんど小型魚類が住みつくことも、海藻類が繁茂しそうにもない護岸、岸壁、桟橋などの海洋構造物の周辺に小型魚類が集まり、多種の海藻類が繁茂するような場を作り出して海洋構造物周辺の環境改善と二酸化炭素の削減に寄与することができる。
ることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 鋼管矢板
2 継手
3 漁礁材
3a 漁礁材本体
3b 餌料培養基材
4 漁礁材取付け具
4a 上枠
4b 下枠
4c 縦枠
4d 底板
5 収納凹部
5a 底部
6 取付けボルト
7 固定バンド
8 漁礁材取付け具
8a 漁礁材把持部
8b アンカー部
8c 漁礁材取付け孔
9 U字型鋼矢板
10 コンクリートケーソン
11 漁礁材取付け具
12 アンカーボルト
13 鋼管矢板
14 漁礁材取付け具
14a 漁礁材把持部
14b ベルトスリング
14c 漁礁材取付け孔
14d 継手
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管矢板、鋼矢板またはコンクリートケーソンからなる海洋構造物本体と当該海洋構造物本体に取り付けられた複数の漁礁材とからなる環境配慮型海洋構造物において、漁礁材は筒状に形成された漁礁材本体と漁礁材本体内に充填された餌料培養基材とから構成され、前記鋼管矢板、鋼矢板またはコンクリートケーソンに漁礁材取付け具によって脱着自在に取り付けられてなることを特徴とする環境配慮型海洋構造物。
【請求項2】
漁礁材は格子状または網状に構成されてなることを特徴とする請求項1記載の環境配慮型海洋構造物。
【請求項3】
餌料培養基材は、貝殻であることを特徴とする請求項1または2記載の環境配慮型海洋構造物。
【請求項1】
鋼管矢板、鋼矢板またはコンクリートケーソンからなる海洋構造物本体と当該海洋構造物本体に取り付けられた複数の漁礁材とからなる環境配慮型海洋構造物において、漁礁材は筒状に形成された漁礁材本体と漁礁材本体内に充填された餌料培養基材とから構成され、前記鋼管矢板、鋼矢板またはコンクリートケーソンに漁礁材取付け具によって脱着自在に取り付けられてなることを特徴とする環境配慮型海洋構造物。
【請求項2】
漁礁材は格子状または網状に構成されてなることを特徴とする請求項1記載の環境配慮型海洋構造物。
【請求項3】
餌料培養基材は、貝殻であることを特徴とする請求項1または2記載の環境配慮型海洋構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−1714(P2011−1714A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144135(P2009−144135)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000149594)株式会社大本組 (40)
【出願人】(592060307)海洋建設株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000149594)株式会社大本組 (40)
【出願人】(592060307)海洋建設株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]