説明

環状アルケン誘導体の分解を防止する添加剤

本開示は、(a)1つもしくは複数の置換もしくは非置換環状アルケン、及び(b)少なくとも1つの式(I)の化合物を含む酸化防止剤組成物を含む組成物に関する。式(I)におけるR〜Rは明細書に記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その内容が参照によって本明細書に援用される、2008年7月8日付で出願された米国特許仮出願第61/078,984号の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本開示は、概して、空気及び/又は熱に対して安定性を示す環状アルケン組成物に関する。さらに詳細には、本開示は、環状アルケン組成物が酸素、熱又はこの二者の組み合わせに暴露される際のポリマー形成を軽減もしくは排除するために1つもしくは複数の酸化防止剤化合物(たとえば、置換フェノール類)で安定化された環状アルケン誘導体、ならびに誘電体膜を形成するためのかかる組成物の使用法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体産業では、半導体装置を製造するために多くの種類の薄膜及び厚膜が必要とされ、これらの膜の多くはケイ素に基づく。これらの膜の元素組成は、典型的には、酸素、水素、及びフッ素の様々な組み合わせを伴うケイ素及び炭素の組み合わせである。特許文献1で、Andidehらは、層がどのように異なり得るか、そして様々な目的にどのように使用できるかを教唆し、特許文献2で、Vrtisrらは、半導体産業で好まれる誘電体膜のケイ素、酸素、炭素及び水素の範囲を教唆している。しばしば使用されるプロセスは化学蒸着であり、このプロセスの多くの変法が存在する。
【0004】
典型的な化学蒸着プロセスでは、コーティングされる基体を含む蒸着チャンバ中にケイ素含有化合物を導入する。ケイ素含有化合物を次いで化学的もしくは物理的に変化させ(すなわち、別の成分と反応させるか、又は放射線,熱(熱CVD)、もしくはプラズマ(PECVD)などエネルギー源に付し)、基体上に膜を蒸着させる。ケイ素及び酸素のみを含有する(すなわち、酸化ケイ素)蒸着膜は、孔の非存在下で約4の誘電率を有し、さらに炭素(すなわち、炭素をドープした酸化ケイ素)及び孔の少なくともいずれか一方を含有する膜は、多くの場合、4より低い誘電率を有する。約2.7より低い誘電率を有する膜は、最新の半導体装置に好ましい。特許文献3で、Vincentらは、化学蒸着技術の例、誘電率、及び半導体産業で望ましい膜の例を挙げている。
【0005】
基体上に蒸着した層の特性、たとえば誘電率、被膜硬度及び屈折率は、膜蒸着手段に供給される化学物質の組成及び用いられるプロセスを変えることによって影響を受ける。異なるフローガスを用いるか、1つもしくは複数の異なる反応性ガスを用いるか、又は蒸着後アニール技術を用いることによって、ケイ素含有化合物の特性を変えることにより、膜特性を調整することができる。層の特性に影響を及ぼす別の手段は、ケイ素含有化合物同士の組み合わせを使用するか、又は(1つもしくは複数の)ケイ素含有化合物を1つもしくは複数の添加剤化合物と組み合わせることである。これらの技術を用いて、膜の化学組成を変化させ、膜を所望の特性に適合させることができる。参照によって本明細書に援用される、特許文献4〜8は、蒸着パラメータ又は成分混合物を変えることによって、膜の特性がどのように影響を受けるかの例を提示している。
【0006】
添加剤化合物の別の使用法は、化合物のフラグメント又は原子が膜中に一時的にしか存在しない化合物を提供するためのものである。膜を後処理し、熱、放射線、又は熱もしくは放射線と酸素などの反応性ガスとの組み合わせを用いて、膜からフラグメントもしくは原子を排斥して、結果として得られる膜中に孔を形成することができる。この方法は、蒸着膜の特性(たとえば誘電率)に影響を及ぼす。この方法で用いられる化合物をポロゲンと記載する。
【0007】
この種類の方法で用いられる典型的なポロゲンは、主に炭素及び水素から構成される。ポロゲンに関連する環状アルケン化合物類のいくつかの例は、特許文献2及び特許文献8に記載されている。
【0008】
大容量半導体製造では、設備ならびに設備中を流れる化学物質の純度及び安定性に対して厳しい要求が課される。化学物質ライン及び蒸発手段を通って送られる化学物質は、きれいに輸送され蒸発し、長期間の使用中に残留物をほとんど又は全く残さないことが期待される。1つの装置が定期的もしくは不定期のメンテナンス期間(ポリマー又は他の残留物で詰まっているか又は塞がった化学物質ライン又は蒸発手段を清掃又は交換するための)で長く作動できるほど、手段の生産性は高くなり、費用効率が高くなる。清掃及びメンテナンスのためにしばしば停止しなければならないような蒸着手段は、半導体製造業の顧客にとっては魅力的でない。したがって、設備の連続した長期操業が望ましい。蒸発手段としては、限定されるものではないが、加熱蒸発器(たとえば、特許文献9〜11及びこれらの引用文献を参照)、バブラーアンプル(たとえば、特許文献12〜16及びこれらの引用文献を参照)、フラッシュエバポレーター(たとえば、特許文献17及びこれに記載される文献を参照)ならびに噴霧装置(たとえば、特許文献18〜20及びこれらの引用文献を参照)などの数種の蒸発装置が挙げられる。
【0009】
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)は、低k誘電率膜を製造するために用いることができる代表的なケイ素含有化合物であり、安定性を維持するのが困難な一例である。信頼性のある製造プロセスを確立するための最初の作業は、化学物質ライン、蒸気送達ライン及び蒸着チャンバ内をはじめとする蒸着プロセス中の様々な位置においてゲル化する生成物によって妨げられた。このことは、純粋なTMCTSの安定性が十分ではないことを示し、参照によって本明細書に援用される特許文献21及び22で、様々な添加剤がTeffらによって研究された。酸化防止剤は、TMCTSを、空気、特に酸素への長時間にわたる常温もしくは高温での暴露に対して安定化させるのに非常に有効であることが判明した。酸化防止剤で安定化されたTMCTSが現在、半導体製造において用いられる場合、プロセスはより安定で、蒸着手段におけるゲル形成は著しく低下する。
【0010】
ノルボルナジエン(NBDE)は、主にその構造における結合歪みと、加熱された場合に熱反応を受けて揮発性物質を形成する傾向とのために、ポロゲンとしての使用に関連する環状ジエンの一例である(たとえば、特許文献2,7,23及び24を参照)。NBDE及び類似の環状アルケン誘導体は、酸素と反応して、重合もしくは酸化して、環状アルケンモノマー中に可溶性であってもよいし、又は可溶性でなくてもよい高分子量低揮発性を形成することができる。この反応は、室温で短時間空気に暴露した後でも、時間とともに環状アルケンの著しい分解を引き起こし得る。
【0011】
NBDEは、偶発的な空気の存在下、熱の存在下、又は両者が組み合わされた場合に、非常に可溶性が高い低揮発性固体生成物を形成する。120℃で24時間加熱された試料で熱劣化の証拠が観察されたが、室温で保持された試料又は80℃以上に加熱された試料では酸化分解が観察された。これらは、考慮すべき非常に重要な因子である。その理由は、ごく微量の酸素(低ppbレベル)で半導体加工の際に問題となるに十分な残留物(低ppmレベル)が形成されるからである。生成物から酸素を完全に除去することと、半導体加工中に生成物を蒸発させるために熱の使用を必要とすることとの複合的な困難性のために、有効な安定剤なしで低揮発性残留物の形成を回避することはほぼ不可能になる。この結果、揮発性NBDEが蒸発するにつれ、蒸発手段中に固体生成物が蓄積し得る。蒸発手段の表面積が小さいならば、少量の残留物(たとえば、ミリグラムのレベル)がNBDEの蒸発を妨害し、最終的に蒸発手段が低揮発性固体で詰まる可能性がある。バブラーアンプルを蒸発手段として用いるならば、酸化生成物は重合プロセスを開始してバブラーの全内容物を重合させ、フローガスの入口ラインをブロックし得る。これは、蒸発プロセスを助けるために一定して加熱されるバブラーについて特に当てはまる。唯一の改善法は、影響を受けた蒸発手段を分解して清掃するか、又は取り替えることであり、これは非常にコスト及び時間がかかる。安全性の問題も、加圧化学物質ライン及びバルブが低揮発性固体でブロックされるようになる場合に懸案事項となる。
【0012】
NBDEが半導体製造において使用される間、設備は様々な理由(たとえば、電源変動、休日の一時休業など)で時折待機状態になり得る。この待機時間の間に、生成物の一部(通常<1mL)は最高85℃までの温度の加熱ゾーン中に数時間又は数日間保持される可能性がある。この期間中、生成物は可溶性不揮発性残留物を形成し得、これは設備が再開する時に蒸発器中に蓄積するであろう。したがって、有効なNBDE含有組成物は、数時間もしくは数日間、熱的に安定でなければならない。
【0013】
安定化NBDEなどの生成物の標準的製造プロセスは、著しい数の化学物質取り扱いステップを含む。各取り扱いステップ(及びその後の保存期間)では完全に空気が存在しないわけではなく、生成物はその寿命中にほとんど常に微量の酸素に暴露される。すでに記載したように、許容できないレベルの残留物をもたらす酸素の量はほんの微量である。したがって、有効なNBDE生成物は、許容できる貯蔵寿命を有するためには、ある期間(潜在的に1年以上)、酸素で誘発される劣化に対しても安定化されなければならない。
【0014】
半導体産業は、安定かつ予測可能であり信頼性のある生成物を必要とし、比較的低レベルの分解でも大容量半導体製造に関しては許容できない。したがって、NBDEを安定化させて、化学物質供給業者から最終用途プロセスへと輸送される間、様々な条件にさらされた後でも生成物が容易に分解しないことを保証する手段を見いだすことが必要である。しかし、環状アルケン化合物の化学的性質は、典型的に用いられるケイ素含有化合物の化学的性質とは相当異なり、したがってケイ素含有化合物を安定化させる同じ化合物が環状アルケン化合物を安定化させるかは明らかではない。
【0015】
TMCTSは、酸素の存在下で開環し、重合すると考えられている。さらに、TMCTSは、酸素分子と反応性であるSi−H結合を有する(たとえば、特許文献25及び26を参照)。反対に、NBDEは空気の存在下でゆっくりとオリゴマー化するが、ゲル化せず、オリゴマープロセスの間、環構造は変化しないままである。TMCTSが空気に暴露されて化学物質ライン内部でゲルとして完全に重合する場合でも、NBDEは、可溶性が高く、かつ中ないし高分子量の低揮発性オリゴマーを形成し、そのオリゴマーは目視検査では確認されず、又はガスクロマトグラフィー(GC)によっても容易に検出できない。その代わり、結果として得られるオリゴマーは、揮発性NBDEが蒸発して低揮発性オリゴマーが残る場合に検出される。
【0016】
NBDE及び類似の物質は、場合によって、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール(BHA)又は2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)などの酸化防止剤で安定化される(非特許文献1及び2を参照)。これらの物質の既知酸化防止剤は非常に高い沸点を有し(BHTの沸点は265℃である)、蒸着膜中に組み込まれるのに望ましくない原子(たとえば硫黄、窒素)を有し得る。これらの酸化防止剤は一般的に0.02〜0.25重量%(200〜2,500ppm)の濃度で添加されるが、製造業者らが貯蔵寿命の延長を望む場合には添加剤はこの量を超え得る。化学製造業者らは、低コストや利用可能性のためにBHTを使用することを好む。しかし、これらの添加剤の濃度は、半導体目的に望ましい濃度よりも高い。特許文献27及び28(どちらも参照によって本明細書に援用される)において、Teffらは酸化防止剤4−メトキシフェノールを低濃度で用いた結果を示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第6,914,335号明細書
【特許文献2】米国特許第6,846,515号明細書
【特許文献3】米国特許第6,583,048号明細書
【特許文献4】米国特許第6,633,076号明細書
【特許文献5】米国特許第6,217,658号明細書
【特許文献6】米国特許第6,159,871号明細書
【特許文献7】米国特許第6,479,110号明細書
【特許文献8】米国特許第6,756,323号明細書
【特許文献9】米国特許第6,604,492号明細書
【特許文献10】米国特許第5,882,416号明細書
【特許文献11】米国特許第5,835,678号明細書
【特許文献12】米国特許第4,979,545号明細書
【特許文献13】米国特許第5,279,338号明細書
【特許文献14】米国特許第5,551,309号明細書
【特許文献15】米国特許第5,607,002号明細書
【特許文献16】米国特許第5,992,830号明細書
【特許文献17】米国特許第5,536,323号明細書
【特許文献18】米国特許第5,451,260号明細書
【特許文献19】米国特許第5,372,754号明細書
【特許文献20】米国特許第6,383,555号明細書
【特許文献21】米国特許第7,129,311号明細書
【特許文献22】米国特許第7,531,590号明細書
【特許文献23】米国特許第6,437,443号明細書
【特許文献24】米国特許第6,312,793号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2004/0127070号明細書
【特許文献26】米国特許第6,858,697号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第2007/0057234号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第2007/0057235号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】クラリアント(Clariant)社,LSM 171779 ノルボルナジエン仕様書
【非特許文献2】アルドリッチ(Aldrich)社,カタログ番号B3,380−3
【発明の概要】
【0019】
一態様において、本開示は、(a)1つもしくは複数の置換もしくは非置換環状アルケン、及び(b)少なくとも1つの式(I):
【0020】
【化1】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立してH、C〜C直鎖アルキル、C〜C不飽和アルキル、C〜C分岐アルキル、C〜C環状アルキル、C〜C直鎖アルコキシ、C〜C不飽和アルコキシ、C〜C分岐アルコキシ、C〜C環状アルコキシ、又は置換もしくは非置換アリールである)の化合物を含む酸化防止剤組成物を含む組成物を提供する。
【0021】
別の態様において、本開示は、(a)1つもしくは複数の置換もしくは非置換環状アルケン、及び(b)少なくとも1つの式(I)(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、H、C〜C直鎖アルキル、C〜C不飽和アルキル、C〜C分岐アルキル、C〜C環状アルキル、C〜C直鎖アルコキシ、C〜C不飽和アルコキシ、C〜C分岐アルコキシ、C〜C環状アルコキシ又は置換もしくは非置換アリールであり、ここで、R〜Rのうちの少なくとも1つはHでなく、かつ/又はR〜Rのうちの1つがt−ブチルである場合、残りのR〜Rのうちの少なくとも1つはHでない)の化合物を含む酸化防止剤組成物を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン又は3−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼンであり得る。
【0022】
さらに別の態様において、本開示は、(a)ジペンテン、フェランドレン、ジシクロペンタジエン、アルファ−テルピネン、ガンマ−テルピネン、リモネン、アルファ−ピネン、3−カレン、テルピノレン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、及び5−エチリデン−2−ノルボルネンからなる群から選択される環状アルケン、ならびに(b)4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン又は3−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼンを含む酸化防止剤組成物を含む組成物を提供する。酸化防止剤組成物は、約50ppm〜約200ppm(たとえば、100ppm)の濃度で存在する。
【0023】
さらに別の態様において、本開示は、環状アルケン組成物を含有する密封容器を含む装置を提供する。環状アルケン組成物は、(a)少なくとも1つの置換もしくは非置換環状アルケン、及び(b)少なくとも1つの酸化防止剤組成物を含み、ここで前記環状アルケン組成物は、密封容器中、室温で1年間保存した後に、最高で約200ppm(たとえば、最高で約150ppm、最高で約100ppm、最高で約50ppm、又は最高で約10ppm)の残留物を生成する。
【0024】
さらに別の態様において、本開示は、約0ppm〜約150ppmの酸素及び環状アルケン組成物を含有する密封容器を含む装置を提供する。環状アルケン組成物は、(a)少なくとも1つの置換もしくは非置換環状アルケン、及び(b)少なくとも1つの酸化防止剤組成物を含み、ここで環状アルケン組成物は、密封容器中80℃で12時間加熱された後に、最高で約20ppmの残留物を生成する。たとえば、密封容器が約150ppmの酸素を含む場合、環状アルケン組成物は、密封容器中80℃で12時間加熱された後に、最高で約20ppmの残留物を生成し得る。別の例として、密封容器が約25ppmの酸素を含む場合、環状アルケン組成物は、密封容器中80℃で12時間加熱された後に、最高で約5ppm(たとえば、最高で約0.5ppm)の残留物を生成し得る。別の例として、密封容器が約0ppmの酸素を含む場合、環状アルケン組成物は、密封容器中80℃で12時間加熱された後に、最高で約5ppm(たとえば、最高で約0.5ppm)の残留物を生成し得る。
【0025】
さらに別の態様において、本開示は、約0ppm〜約150ppmの酸素及び環状アルケン組成物を含有する密封容器を含む装置を提供する。環状アルケン組成物は、(a)少なくとも1つの置換もしくは非置換環状アルケン、及び(b)少なくとも1つの酸化防止剤組成物を含み、ここで、環状アルケン組成物は、密封容器中120℃で24時間加熱された後、最高で約200ppmの残留物を生成する。たとえば、密封容器が約0ppmの酸素を含む場合、環状アルケン組成物は、密封容器中120℃で24時間加熱された後、最高で約200ppm(たとえば、最高で約160ppm)の残留物を生成する。
【0026】
さらに別の態様において、本開示は、炭素をドープした酸化ケイ素の層をウェハ上に形成するための環状アルケン組成物の使用方法を提供する。この方法は、膜蒸着チャンバ中の基体を、少なくとも1つの前記環状アルケン組成物及び少なくとも1つのケイ素含有化合物を含む組成物で処理して、基体上に炭素をドープした酸化ケイ素膜を形成する工程を含む。組成物は、さらに他の添加剤を含むことができる。この方法はさらに、処理ステップの前に、第1容器中の環状アルケン組成物、第2容器中のケイ素含有化合物、膜蒸着チャンバを含む膜蒸着手段、膜蒸着手段内の第1及び第2容器を膜蒸着チャンバに連結するためのガス送達ライン、ならびに環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物を、ガス送達ラインを通して膜蒸着チャンバ中に運ぶためのキャリアガスの流れを提供する工程、環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物の蒸気をキャリアガスの流れの中に導入する工程、及び環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物の蒸気をキャリアガスの流れによって膜蒸着チャンバ中に輸送する工程を含むことができる。
【0027】
さらに別の態様において、本開示は、少なくとも1つの前記環状アルケン組成物を密封容器中で少なくとも6ヶ月間(たとえば、少なくとも9ヶ月間もしくは少なくとも1年間)保存する工程、及び、その環状アルケン組成物を保存した後、環状アルケン組成物を少なくとも1つのケイ素含有化合物とともに化学蒸着プロセスにおいて使用して、基体上に炭素をドープした酸化ケイ素膜を形成する工程を含む方法を提供する。
【0028】
さらに別の態様において、本開示は、環状アルケンを安定化する方法を提供する。この方法は、前述の少なくとも1つの式(I)の化合物を環状アルケンに添加する工程を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの式(I)の化合物を添加する工程は、とりわけ、(a)少なくとも1つの式(I)の化合物を、環状アルケンを精製するための蒸留装置における受器中に添加する工程、及び(b)環状アルケンを、蒸留装置を通して受器中に蒸留する工程によって実施することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの式(I)の化合物を添加する工程は、とりわけ、(a)少なくとも1つの式(I)の化合物を、環状アルケンを精製するための蒸留装置中の凝縮器と受器との間の位置において添加する工程、及び(b)蒸留された環状アルケンが凝縮器を通って受器中に入るように、環状アルケンを蒸留装置を通して蒸留し、それによって少なくとも1つの式(I)の化合物を蒸留された環状アルケン中に可溶化させる工程によって実施することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの式(I)の化合物を添加する工程は、とりわけ、(a)環状アルケンを、蒸留装置を通して受器中に蒸留する工程、及び(b)少なくとも1つの式(I)の化合物を受器中に添加する工程によって実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本開示の組成物を用いて使用される、半導体産業において用いられる膜蒸着手段の図であり、ここでは2つの独立した蒸発手段が2つの別個の前駆体とともに使用されている。
【図2】本開示の組成物を用いて使用される、半導体産業において用いられる膜蒸着手段の図であり、ここでは1つの蒸発手段が2つの別個の前駆体とともに使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
半導体産業は、半導体装置を調製するために、多くの種類の薄膜及び厚膜を必要とする。これらの膜を調製するためにしばしば用いられる方法は化学蒸着であり、この方法の多くの変法が存在する。典型的な化学蒸着プロセスにおいて、ケイ素含有化合物を、コーティングされる基体を含む蒸着チャンバ中に導入する。ケイ素含有化合物を次いで化学的もしくは物理的に変化させ(別の成分と反応させるか、又は放射線、熱(熱CVD)、もしくはプラズマ(PECVD)などのエネルギー源の適用に付し)、基体上に膜を蒸着させる。
【0031】
これらの純度及び安定性の要件は、多くの場合、達成するのが困難である。多くの物質はある程度まで酸化、重合又は転位し得る。このような副生成物は少量(たとえば、200ppm超)でも多くの半導体用途には望ましくない場合がある。したがって、半導体産業で用いられる物質は、蒸着チャンバに達する前に、望ましくない副反応の形成を防止するために添加剤を必要とし得る。
【0032】
環状アルケンは半導体産業において低k誘電率膜を形成するための化学蒸着の試薬として興味深い物質であるが、製品の貯蔵期間中、高純度を維持するように安定化するために、添加剤を必要とする。
【0033】
半導体産業に有用な添加剤を含む化学物質は、典型的には300℃より低い沸点を有する種に限定される。さらに、半導体産業における特定の用途は、前駆体が有しなければならないさらなる特性を規定し得る。たとえば、層間誘電体(ILD)膜の形成では、チップ中の周囲層との適合性の問題のために、ケイ素、酸素、炭素及び水素のみを使用するように前駆体の選択が限定される。ラジカル阻害剤の選択も、この基準に従わなければならず、したがって、一般的なラジカル阻害剤及び酸化防止剤、たとえばレシチン及びリポ酸で見られる窒素、硫黄及びリンは回避されなければならない。
【0034】
いくつかの実施形態において、使用する環状アルケンと安定剤との沸点の差を最小にすることが有利である。たとえば、NBDEは89℃で沸騰し、一方、BHTは265℃で沸騰する。この差は、半導体蒸着手段の蒸発手段において重大な問題を引き起こすのに十分である。通常、これらの蒸発手段を最低の可能な温度に設定して、熱分解を回避しつつ液体生成物を完全に蒸発させる。蒸発手段の熱負荷のバランスをとって、蒸気流を飽和させずに生成物を適切に蒸発させることも必要である。これらを考慮して、過度の熱を加えることなく化学物質源を蒸発させることは微妙なバランスである。したがって、高分子量成分がほとんど蒸発しないか、全く蒸発しない場合が最も多く、これらは蒸発手段中に蓄積して、最終的にそれを詰まらせる傾向にある。したがって、環状アルケン誘導体とそれらの安定剤との沸点の差を減少させ、かつ安定剤の濃度を最低有効レベルまで減少させることが望ましい。
【0035】
本開示は、意外にも従来技術のモノヒドロキシベンゼン化合物よりも高い安定化能を有することが判明した、特定の非置換もしくは置換ジヒドロキシベンゼン化合物の添加によって安定化された環状アルケン組成物に関する。結果として得られる組成物は、向上した安定性を示し、環状アルケン生成物の貯蔵寿命を著しく延長し、半導体製造におけるこれらの生成物の取り扱いにおいてより優れた柔軟性をもたらす。より活性な安定剤を用いた環状アルケンの結果としての安定化は、最終生成物における可溶性ポリマーの形成を軽減する。さらに、このことは化学物質送達ライン、バルブ、又は蒸発手段における可溶性ポリマーの蓄積を大幅に減少させる。このことは、設備メンテナンスの必要性を軽減し、コストを減少させ、機械が製造に使用されない時間を減少させる。加えて、高分子量化合物の形成を減少させることによって、蒸気送達ライン中に高分子量化合物が徐々に蒸着する問題がなく生成物を均一に蒸発させることができ、より一貫した高品質の蒸着膜がウェハ上に得られる。いくつかの実施形態において、高揮発性酸化防止剤(たとえば、比較的低い融点又は沸点を有する酸化防止剤)の使用も有利である。その理由は、環状アルケン及び揮発性安定剤がきれいに蒸発し、化学物質送達ラインを通ってきれいに送達される可能性が高く、より汚染されにくい方法がもたらされるからである。たとえば、化学物質送達ラインを加熱して、環状アルケン組成物を液体もしくは蒸気として送達できるようにする場合、加熱は均一及び均質でない可能性があり、その結果、温度が送達ラインの残りの部分よりも低い、望ましくない冷点が生じる。このような冷点が存在していても、低い融点又は沸点を有する酸化防止剤は液化又は蒸発したままの状態であり得、これによって、送達プロセスの間の酸化防止剤による冷点での送達ラインの汚染が軽減される。
【0036】
本開示の一実施形態において、環状アルケン組成物は、(a)1つもしくは複数の置換もしくは非置換環状アルケン、及び(b)式(I)
【0037】
【化2】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立してH、C〜C直鎖アルキル、C〜C不飽和アルキル、C〜C分岐アルキル、C〜C環状アルキル、C〜C直鎖アルコキシ、C〜C不飽和アルコキシ、C〜C分岐アルコキシ、C〜C環状アルコキシ又は置換もしくは非置換アリールであり、ここで、R〜Rのうちの少なくとも1つはHでなく、かつ、R〜Rのうちの1つがt−ブチルである場合、残りのR〜Rのうちの少なくとも1つはHでない)で示される酸化防止剤化合物を含む。
【0038】
環状アルケンは、本明細書では非芳香族環中に非芳香族二重結合を有する任意の炭素環式化合物として定義される。環状アルケンの種類の例としては、限定されるものではないが、シクロアルケン、シクロアルカジエン、シクロアルカトリエン、シクロアルカテトラエン、芳香族含有シクロオレフィン、多環アルケン、多環アルカジエン、多環アルカトリエン、多環アルカテトラエン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
好ましい種類の環状アルケンは、一般式C2n−2x−y(式中、nは基本の環構造中の炭素の数であり、xは基本の環構造中の不飽和部位の数であり、yは基本の環構造上の置換基Rの数である)の一不飽和もしくは多不飽和環状アルケンである。この種類の環状アルケンにおいて、nは4〜18の範囲であり、xは整数であって、1≦x≦n/2であり、yは整数であって、0≦y≦2n−2xであり、各Rは独立してC〜C18直鎖アルキル、C〜C18分岐アルキル、C〜C18不飽和アルキル、C〜C18環状アルキル、C〜C18直鎖アルコキシ、C〜C18分岐アルコキシ、C〜C18不飽和アルコキシ、C〜C18環状アルコキシ、置換もしくは非置換アリール、又は置換ケイ素含有置換基である。この種類の例としては、限定されるものではないが、t−ブチルシクロヘキセン、アルファ−テルピネン、リモネン、ガンマ−テルピネン、1,5−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン、ビニルシクロヘキセン、シクロブテン、メチルシクロブテン、ジメチルシクロブテン、トリメチルシクロブテン、エチルシクロブテン、ジエチルシクロブテン、トリエチルシクロブテン、メトキシシクロブテン、メチルメトキシシクロブテン、シクロヘキシルシクロブテン、イソプロピルシクロブテン、イソプロペニルシクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、ジメチルシクロペンテン、トリメチルシクロペンテン、メトキシシクロペンテン、メチルメトキシシクロペンテン、シクロヘキシルシクロペンテン、イソプロピルシクロペンテン、イソプロペニルシクロペンテン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、トリメチルシクロペンタジエン、メトキシシクロペンタジエン、メチルメトキシシクロペンタジエン、シクロヘキシルシクロペンタジエン、イソプロピルシクロペンタジエン、イソプロペニルシクロペンタジエン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、トリメチルシクロヘキセン、メトキシシクロヘキセン、メトキシメチルシクロヘキセン、シクロヘキシルシクロヘキセン、イソプロピルシクロヘキセン、イソプロペニルシクロヘキセン、シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、ジメチルシクロヘキサジエン、トリメチルシクロヘキサジエン、メトキシシクロヘキサジエン、メトキシメチルシクロヘキサジエン、シクロヘキシルシクロヘキサジエン、イソプロピルシクロヘキサジエン、イソプロペニルシクロヘキサジエン、シクロヘプテン、メチルシクロヘプテン、ジメチルシクロヘプテン、トリメチルシクロヘプテン、メトキシシクロヘプテン、メトキシメチルシクロヘプテン、シクロヘキシルシクロヘプテン、イソプロピルシクロヘプテン、イソプロペニルシクロヘプテン、シクロヘプタジエン、メチルシクロヘプタジエン、ジメチルシクロヘプタジエン、トリメチルシクロヘプタジエン、メトキシシクロヘプタジエン、メトキシメチルシクロヘプタジエン、シクロヘキシルシクロヘプタジエン、イソプロピルシクロヘプタジエン、イソプロペニルシクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、メチルシクロヘプタトリエン、ジメチルシクロヘプタトリエン、トリメチルシクロヘプタトリエン、メトキシシクロヘプタトリエン、メトキシメチルシクロヘプタトリエン、シクロヘキシルシクロヘプタトリエン、イソプロピルシクロヘプタトリエン、イソプロペニルシクロヘプタトリエン、シクロオクテン、メチルシクロオクテン、ジメチルシクロオクテン、トリメチルシクロオクテン、メトキシシクロオクテン、メトキシメチルシクロオクテン、シクロヘキシルシクロオクテン、イソプロピルシクロオクテン、イソプロペニルシクロオクテン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエン、ジメチルシクロオクタジエン、トリメチルシクロオクタジエン、メトキシシクロオクタジエン、メトキシメチルシクロオクタジエン、シクロヘキシルシクロオクタジエン、イソプロピルシクロオクタジエン、イソプロペニルシクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、メチルシクロオクタトリエン、ジメチルシクロオクタトリエン、トリメチルシクロオクタトリエン、メトキシシクロオクタトリエン、メトキシメチルシクロオクタトリエン、シクロヘキシルシクロオクタトリエン、イソプロピルシクロオクタトリエン、イソプロペニルシクロオクタトリエン、シクロオクタテトラエン、メチルシクロオクタテトラエン、ジメチルシクロオクタテトラエン、トリメチルシクロオクタテトラエン、メトキシシクロオクタテトラエン、メトキシメチルシクロオクタテトラエン、シクロヘキシルシクロオクタテトラエン、イソプロピルシクロオクタテトラエン、イソプロペニルシクロオクタテトラエン、3−フェニル−1−シクロヘキセン、3−(2−メトキシフェニル)−1−シクロヘキセン、3−シクロヘキセニルトリメチルシラン、3−シクロヘキセニルトリメトキシシラン、[2−(3−シクロヘキセニル)エチル]トリメトキシシラン、[2−(3−シクロヘキセニル)エチル]トリエトキシシラン、tert−ブチルシクロヘキセン、p−メント−1−エン、フェランドレン、及びテルピノレンが挙げられる。
【0040】
好適な環状アルケンの別の好ましい種類は、一般式C2n−(2x+2)−y(式中、nは基本の二環構造中の炭素の数であり、xは基本の二環構造中の不飽和部位の数であり、yは基本の二環構造上の置換基Rの数である)の二環式アルケンである。この種類の環状アルケンにおいて、nは5〜18の範囲であり得、xは整数であって、x≦n/2であり、yは整数であって、0≦y≦2n−(2x+2)であり、各Rは独立してC〜C18直鎖アルキル、C〜C18分岐アルキル、C〜C18不飽和アルキル、C〜C18環状アルキル、C〜C18直鎖アルコキシ、C〜C18分岐アルコキシ、C〜C18不飽和アルコキシ、C〜C18環状アルコキシ、置換もしくは非置換アリール、又は置換ケイ素含有置換基である。この種類の例としては、限定されるものではないが、3−カレン、アルファ−ピネン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2,5,7−トリエン、[(ビシクロヘプテニル)エチル]トリメトキシシラン、ヘキサメチルデュワーベンゼン(hexamethyldewarbenzene)、ビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエン、1,4,5,8−テトラヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエン、ビシクロ[4.1.1]オクト−3−エン、ビシクロ[4.2.0]オクト−3−エン、ビシクロ[4.2.0]オクタ−2,4−ジエン、5−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エニル)トリエトキシシラン、ビシクロ[4.2.0]オクタ−2,7−ジエン、ビシクロ[4.3.0]ノナ−3,6−ジエン,5−ビニル−2−ノルボルネン、及び5−エチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。
【0041】
環状アルケンの別の好ましい種類は、一般式C2n−(2x+4)−y(式中、nは基本の三環構造中の炭素の数であり、xは基本の三環構造中の不飽和部位の数であり、yは基本の三環構造上の置換基Rの数である)の三環式アルケンである。この種類において、nは7〜18の範囲であり得、xは整数であって、x≦n/2であり、yは整数であって、0≦y≦2n−(2x+4)であり、各Rは独立して、C〜C18直鎖アルキル、C〜C18分岐アルキル、C〜C18不飽和アルキル、C〜C18環状アルキル、C〜C18直鎖アルコキシ、C〜C18分岐アルコキシ、C〜C18不飽和アルコキシ、C〜C18環状アルコキシ、置換もしくは非置換アリール、又は置換ケイ素含有置換基である。例としては、限定されるものではないが、ジシクロペンタジエン、1,2,3,4,4A,5,8,8A−オクタヒドロ−1,4−メタノナフタレン、オクタメチルトリシクロ[4.2.0.0(2,5)]オクタ−3,7−ジエン、1,4−ジヒドロ−1,4−メタノナフタレン、及び[4.2.2]プロペラ−2,4,7,9−テトラエンが挙げられる。
【0042】
前述の3種の好ましい環状アルケンのそれぞれにおけるRの例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソプロペニル、ブチル、フェニル、メチルフェニル、トリメチルシリル、シクロヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、イソプロペノキシ、ブトキシ、フェノキシ、メチルフェノキシ、トリメチルシロキシ、又はシクロヘキシルオキシが挙げられる。Rの好適な例としては、メチル、イソプロピル、及びイソプロペニルが挙げられる。メチル、イソプロピル及びイソプロペニルが、半導体用途における使用に関して最も好適なRである。
【0043】
好ましい環状アルケンとしては、ジペンテン、フェランドレン、ジシクロペンタジエン、アルファ−テルピネン、ガンマ−テルピネン、リモネン、アルファ−ピネン、3−カレン、テルピノレン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、及び5−エチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。最も好適な環状アルケンは、ジシクロペンタジエン、アルファ−テルピネン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、及び5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0044】
本開示の好適な酸化防止剤は、式(I)によって表され、式中、R〜Rは、それぞれ独立して、H、C〜C直鎖アルキル、C〜C不飽和アルキル、C〜C分岐アルキル、C〜C環状アルキル、C〜C直鎖アルコキシ、C〜C不飽和アルコキシ、C〜C分岐アルコキシ、C〜C環状アルコキシ又は置換もしくは非置換アリールである。ただし、R〜Rは全てHであるわけではなく、かつ、R〜Rのうちの1つがt−ブチルである場合、残りのR〜Rのうちの少なくとも1つはHでない。式(I)中のR〜Rの好ましい範囲には、前記条件を考慮して、H、C〜C直鎖アルキル、C〜C分岐アルキル、及びC〜C直鎖アルコキシが含まれる。式(I)中のR〜Rのさらに好ましい範囲には、前記条件を考慮して、H、C〜C直鎖アルキル、C分岐アルキル、及びC直鎖アルコキシが含まれる。式(I)中のR〜Rの最も好ましい範囲には、前記条件を考慮して、H、C直鎖アルキル、C分岐アルキル、及びC直鎖アルコキシが含まれる。好適なR〜Rの例としては、限定されるわけではないが、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ tert−ブトキシ、シクロヘキシルオキシ、フェニル又はメチルフェニルが挙げられる。式(I)中のR〜Rの好ましい例としては、H、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、プロピル、イソプロピル、イソブチル、及びtert−ブチルが挙げられる。式(I)中のR〜Rのさらに好ましい例としては、H、メチル、エチル、メトキシ、及びtert−ブチルが挙げられる。式(I)中のR〜Rの最も好ましい例としては、H、メチル、メトキシ及びtert−ブチルが挙げられる。
【0045】
式(I)の好適な例としては、限定されるものではないが、3−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン(4−MCAT、約251℃の沸点を有する)、3−エチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−エチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−プロピル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−プロピル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−イソプロピル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−イソプロピル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−ブチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−ブチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−イソブチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−イソブチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−シクロヘキシル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−シクロヘキシル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン(3−MOCAT)、4−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−エトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−エトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−プロポキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−プロポキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−イソプロポキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−イソプロポキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−ブトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−ブトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−イソブトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−イソブトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−tert−ブトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−tert−ブトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−シクロヘキシルオキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−シクロヘキシルオキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−フェニル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−フェニル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−(4−メチルフェニル)−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−(4−メチルフェニル)−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−tert−ブチル−4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−メチル−4−tert−ブチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−tert−ブチル−4−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−メトキシ−4−tert−ブチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−アリル−4−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−メトキシ−4−アリル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−アリル−4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−メチル−4−アリル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3,4−ジメチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3,6−ジメチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3,5−ジメチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3,6−ジメチル−4,5−ジメトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン及び4−メチル−3−メトキシ−ジヒドロキシベンゼンが挙げられる。好ましい式(I)の酸化防止剤としては、3−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−プロピル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−プロピル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−イソプロピル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−イソプロピル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−イソブチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−イソブチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−tert−ブチル−4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−tert−ブチル−3−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3,4−ジメチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3,6−ジメチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3,5−ジメチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−エチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−エチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−エトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、及び4−エトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼンが挙げられる。さらに好ましい式(I)の酸化防止剤は、3−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−エチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−エチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−tert−ブチル−4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−tert−ブチル−3−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3,4−ジメチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3、6−ジメチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、及び3,5−ジメチル−1,2−ジヒドロキシベンゼンである。最も好ましい式(I)の酸化防止剤は、3−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−tert−ブチル−4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−tert−ブチル−3−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3,4−ジメチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3、6−ジメチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、及び3,5−ジメチル−1,2−ジヒドロキシベンゼンである。
【0046】
式(I)の酸化防止剤の好適な濃度は、約1ppm〜約200ppmの範囲であり得る。好適な濃度範囲は、好適な濃度の下限及び好適な濃度の上限を規定することによって画定することができる。
【0047】
式(I)の酸化防止剤の好適な濃度範囲の下限は、約1ppm〜約50ppmの任意の値であり得る。たとえば、下限濃度範囲の好適な濃度としては、限定されるものではないが、1ppm、5ppm、10ppm、25ppm及び50ppmが挙げられる。酸化防止剤の量が少なすぎる場合、酸化防止剤は安定化される組成物に対して十分な安定化効果を提供し得ない。
【0048】
好適な濃度範囲の上限は、蒸着膜純度、式(I)の酸化防止剤中の不純物の量、式(I)の酸化防止剤の環状アルケン組成物中への溶解度などのいくつかの検討事項によって制限され得る。たとえば、酸化防止剤自体が不純物を含み得るため、多量の酸化防止剤を組成物中に包含させることで多量の不純物が導入される可能性があり、これによって組成物の安定性が低下する。式(I)の酸化防止剤の濃度の上限は、約100ppm〜約200ppmの任意の値であり得る。好適な上限濃度の例としては、限定されるものではないが、100ppm、125ppm、150ppm、175ppm及び200ppmが挙げられる。
【0049】
好適な濃度範囲は、採用される特定の酸化防止剤及び用いられる特定の方法によって変動し得る。好適な濃度範囲の例としては、約1ppm〜約200ppm、約1ppm〜約150ppm、約1ppm〜約100ppmが挙げられる。他の好適な濃度範囲としては、約10ppm〜約200ppm、約10ppm〜約175ppm、約10ppm〜約125ppm、及び約10ppm〜約100ppmが挙げられる。他の好適な濃度範囲としては、約25ppm〜約200ppm、約25ppm〜約175ppm、約25ppm〜約125ppm、及び約25ppm〜約100ppmが挙げられる。他の好適な濃度範囲としては、約50ppm〜約200ppm、約50ppm〜約175ppm、約50ppm〜約150ppm、約50ppm〜約125ppm、及び約50ppm〜約100ppmが挙げられる。
【0050】
安定化環状アルケン組成物は、単一の式(I)の酸化防止剤又はそのような酸化防止剤同士の混合物を含み得る。酸化防止剤の混合物は、任意の相対的割合であってよく、式(II):
【0051】
【化3】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、H、C〜C直鎖アルキル、C〜C不飽和アルキル、C〜C分岐アルキル、C〜C環状アルキル、C〜C直鎖アルコキシ、C〜C不飽和アルコキシ、C〜C分岐アルコキシ、C〜C環状アルコキシ又は置換もしくは非置換アリールである)により表されるフェノール系添加剤(たとえば、モノヒドロキシベンゼン)をさらに含むことができる。適切な置換基及び好ましい置換基の例は、式(I)について上述したものと同じである。
【0052】
環状アルケンは、商業的に得ることができるか、又は当業者に既知の合成技術によって得ることができる。市販材料において、環状アルケンを製造する化学物質製造業者らは、多くの場合、比較的高濃度のBHTで生成物を安定化するであろう。ほとんどの製造業者らは、高純度の生成物を製造するのに慣れていないため、彼らの製品取り扱い技術は比較的不十分であり、空気、水分及び他の汚染物質が、充填前、充填中又は充填後に容器中に入る可能性があり得る。これらの汚染物質は、一旦容器中に封入されると、生成物が任意の時間保存される場合、生成物を相当劣化させ得る。半導体目的のためには、通常、蒸留又は昇華によって市販材料を精製し、全ての副生成物、及び添加剤を除去しなければならない。
【0053】
しかし、精製、保存及び輸送の間、純度及び安定性を維持するために、本開示の環状アルケン及び組成物は厳密に制御された条件下で取り扱われなければならない。これらには、安定剤を蒸留前に生成物受器に添加して、生成物が生成物受器に入った時点で直ちに安定化されるようにすること、乾燥不活性雰囲気下で蒸留を実施すること、使用前に容器を徹底的に清掃し、乾燥させること、生成物が空気に暴露されることを防止する密封充填技術を使用すること、粉塵及び重合触媒として作用し得る微量金属汚染物を回避するためにクリーンルーム中で充填すること、そして空気又は他の非適合物質への暴露を防止するために容器を慎重に選択することが挙げられる。
【0054】
精製前の環状アルケンの安定化は、精製中及び精製後の生成物の安定化と同様に重要である。精製に関して選択される原料は、製造業者によって添加されたBHTなどの安定剤をすでに含み得るが、安定剤の品質及び濃度が保存中に劣化することはよくあることである。この場合、さらなる安定剤又は安定剤同士の混合物を原料に添加して、精製プロセス前及び精製プロセス中に不純物を消滅させることが有益であり得る。
【0055】
酸素は、原料中及び蒸留設備中にある程度の量で存在し得るので、蒸留の間に蒸気層中の安定化されていない環状アルケンと反応する傾向がある。この反応が起こり、結果として得られる不純物が還流プロセスにおいて凝縮する場合、凝縮物は蒸留フラスコに戻る可能性がある。そこで、それは安定剤と結合し、残留物形成の機会を得る前に不活性化され得る。これと同じ理屈で、精製プロセスから集められた生成物を直ちに安定化させて、任意の活性な不純物が残留物を形成し始める前に不活性化することも重要である。
【0056】
さらなる精製ステップには、水、アルコール、過酸化物、安定剤、安定剤分解産物、酸素化有機不純物及び粒状物質などの不純物を除去するためのシリカゲル又はアルミナなどの極性媒体を通した前処理濾過が含まれる。この工程は、蒸留フラスコに装填する際に原料を調節するために理想的に用いられる。新規な活性安定剤を原料に添加するか、又は原料をフラスコ中の安定剤上に装填して、濾過工程中に失われたものを置換する。
【0057】
環状アルケンの蒸留は、劣化を最小限に抑えながら大気圧で有効に実施することができるが、別の方法を用いることによってさらに感受性の高い環状アルケンについて精製プロセスを最適化することができる。減圧蒸留は環状アルケンの沸点を低下させるので、熱に対して特に感受性のものは、減圧蒸留の利益を享受し得る。別法として、ワイパー式薄膜型又は流下式薄膜型などの短路蒸留設備を依然として使用することにより加熱滞留時間を短縮することができ、それによって残留物をもたらし得る劣化を軽減することができる。なお、これらの方法は、標的環状アルケンと類似した沸点を有する不純物の分離の効果を減少させる。したがって、これらを常圧蒸留後に使用して、初期精製プロセスで形成され得る望ましくない残存不純物を除去することができる。
【0058】
環状アルケンを安定化するための別の方法には、安定剤を受器に添加し、精製された非安定化環状アルケンを安定剤上に注ぐこと、精製された非安定化環状アルケンを受器に移動する際にある量の安定剤上に流して安定剤を溶解させること、ならびに、受器に集められた、精製された非安定化環状アルケン中に安定剤を添加することが含まれる。
【0059】
ほとんどの適切な安定剤は固体であるので、これらは液体よりも操作や測定が困難であり得る。このような安定剤は、適切な液体溶媒中に溶解させることができるか、又は標的環状アルケン中に高濃度で溶解させることさえできる。環状アルケンを安定化するための別の方法には、固体安定剤を適切な液体溶媒中、又は環状アルケン中に高濃度で溶解させ、結果として得られる液体を次いで環状アルケンを安定化するために使用することも含まれる。別法として、前述の安定剤のうちのいくつかは、融解させて、環状アルケンを安定化するための液体として取り扱うこともできる。
【0060】
前述の環状アルケンを精製及び安定化する方法を組み合わせて、最終的に、残留物をもたらし得る不純物を形成する可能性を回避しつつ、最高純度を有する安定化生成物を提供することができる。
【0061】
半導体産業用の多くの化学前駆体及び前駆体組成物は、典型的には、最長時間、製品の品質を保持するためにステンレス鋼製容器中に包装し、輸送し、保存される。製品容器を次いで、精密に制御された手段によって化学物質を輸送する化学送達設備に連結して、製品及びプロセス純度並びに一貫性を保持する。このようなプロセス設備を本明細書では膜蒸着手段と称する。
【0062】
本開示の組成物は、環状アルケンを必要とする任意の好適な化学蒸着プロセスで用いることができる。好ましいプロセスは、低誘電率膜を蒸着させるためにケイ素含有化合物を用いる化学蒸着プロセスである。好適なプロセスの例としては、限定されるものではないが、参照によって本明細書に援用される米国特許第6,815,373号、第6,596,627号、第6,756,323号、第6,541,398号、第6,479,110号、第6,846,515号、第及び第6,583,048号に記載されているものが挙げられる。
【0063】
本開示は、炭素をドープした酸化ケイ素の層をウェハ上に形成するために環状アルケン組成物を使用する方法にも関する。この方法は、基体を含む膜蒸着チャンバ中で環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物を処理し、それによって炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に形成する工程を含む。この方法はさらに、処理ステップの前に、第1容器中の環状アルケン組成物、第2容器中のケイ素含有化合物、膜蒸着チャンバ中の膜蒸着手段、第1及び第2容器を膜蒸着手段内の膜蒸着チャンバに連結するためのガス送達ライン、ならびに環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物を、ガス送達ラインを通して膜蒸着チャンバ中に送るためのキャリアガスの流れを提供する工程、環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物の蒸気をキャリアガスの流れの中に導入する工程、及び、キャリアガスの流れを介して環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物の蒸気を膜蒸着チャンバ中に輸送する工程を含むことができる。
【0064】
前記プロセスに適した環状アルケンは、すでに記載したものと同じであってよい(上記参照)。
本開示に適したケイ素含有化合物としては、任意の種類のケイ素含有分子、たとえばシラン、アルキルシラン、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、カルボキシシラン、アルキルカルボキシシラン、アルコキシカルボキシシラン、アルキルアルコキシカルボキシシラン、直鎖シロキサン、環状シロキサン、フッ素化シラン、フッ素化アルキルシラン、フッ素化アルコキシシラン、フッ素化アルキルアルコキシシラン、フッ素化カルボキシシラン、フッ素化アルキルカルボキシシラン、フッ素化アルコキシカルボキシシラン、フッ素化アルキルアルコキシカルボキシシラン、フッ素化直鎖シロキサン、フッ素化環状シロキサン、及びこれらの混合物が挙げられる。前述の各種類の例には、限定されるものではないが、下記スキーム1に示すものが含まれる。これらのケイ素含有化合物は、Teffら(米国特許第7,129,311号及び第7,531,590号)により記載されている方法で、この文献に記載されている式(I)、式(II)の化合物又はこれらの混合物を用いて安定化することもできる。
【0065】
【化4】

本開示のケイ素含有化合物の好適な例は、式(III):
【0066】
【化5】

によって表されるものでもあり得る。式(III)中、R10〜R13は、それぞれ独立して、H、F、OH、C〜C直鎖アルキル、C〜C分岐アルキル、C〜C不飽和アルキル、C〜C直鎖アルコキシ、C〜C分岐アルコキシ、C〜C不飽和アルコキシ、C−C置換環状アルキル又はアルコキシ、C〜C非置換環状アルキル又はアルコキシ、置換又は非置換アリールもしくはアリールアルコキシ、置換ケイ素含有置換基、部分的に又は完全にフッ素化されたC〜C直鎖アルキル、C〜C分岐アルキル、C〜C不飽和アルキル、部分的に又は完全にフッ素化されたC〜C直鎖アルコキシ、C〜C分岐アルコキシ、C〜C不飽和アルコキシ、部分的に又は完全にフッ素化されたC〜C置換環状アルキル又はアルコキシ、C〜C非置換環状アルキル又はアルコキシ、部分的に又は完全にフッ素化された置換又は非置換アリール又はアリールアルコキシ、部分的に又は完全にフッ素化された置換ケイ素含有置換基、フッ素化されていないか又は部分的にもしくは完全にフッ素化されたカルボキシレートリガンド、又はこれらの混合物である。式(III)中のR10〜R13の例としては、限定されるものではないが、H、F、OH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソプロペニル、ブチル、フェニル、メチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、フェノキシ、メチルフェノキシ、シクロヘキシルオキシ、メチルシクロヘキシルオキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロプロピル、ペンタフルオロプロピル、ヘプタフルオロプロピル、イソプロピル、ヘキサフルオロイソプロピル、トリフルオロイソプロペニル、トリフルオロブチル、ペンタフルオロブチル、ノナフルオロブチル、トリフルオロフェニル、(トリフルオロメチル)テトラフルオロフェニル、ウンデカフルオロシクロヘキシル、(トリフルオロメチル)デカフルオロシクロヘキシル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ、トリフルオロプロポキシ、ペンタフルオロプロポキシ、ヘプタフルオロプロポキシ、ヘキサフルオロプロポキシ、ヘプタフルオロイソプロポキシ、トリフルオロブトキシ、ペンタフルオロブトキシ、ノナフルオロブトキシ、ペンタフルオロフェノキシ、(トリフルオロメチル)テトラフルオロフェノキシ、ウンデカフルオロシクロヘキシルオキシ、(トリフルオロメチル)デカフルオロシクロヘキシルオキシ、ジメチルシロキシ(直鎖シロキサンの場合)、トリメチルシロキシ、トリメチルジシロキシ、ペンタメチルジシロキシ、ジエチルシロキシ、トリエチルシロキシ、トリエチルジシロキシ、ペンタエチルジシロキシ、ジメトキシシロキシ、トリメトキシシロキシ、トリメトキシジシロキシ、ペンタメトキシジシロキシ、ジエトキシシロキシ、トリエトキシシロキシ、トリエトキシジシロキシ、ペンタエトキシジシロキシ、η−トリメチルトリシロキシ(テトラメチルシクロテトラシロキサンなどの環状シロキサンの場合)及びη−ヘキサメチルトリシロキシ(オクタメチルシクロテトラシロキサンなどの環状シロキサンの場合)が挙げられる。R10〜R13の好ましい例としては、H、F、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ及びシロキシが挙げられる。式(III)に関して、H、メチル、エトキシ及び置換シロキシが、半導体用途において用いられるR10〜R13として最も好ましい。
【0067】
本開示に適したケイ素含有化合物の例としては、限定されるものではないが、シラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、エチルシラン、ジエチルシラン、トリエチルシラン、テトラエチルシラン、プロピルシラン、ジプロピルシラン、トリプロピルシラン、テトラプロピルシラン、イソプロピルシラン、ジイソプロピルシラン、トリイソプロピルシラン、テトライソプロピルシラン、ブチルシラン、ジブチルシラン、トリブチルシラン、テトラブチルシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルプロポキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルジイソプロポキシシラン、メチルフェニルシラン、メチルジフェニルシラン、メチルトリフェニルシラン、ジメチルジフェニルシラン、トリメチルフェニルシラン、メチル(メチルフェニル)シラン、メチルジ(メチルフェニル)シラン、メチルトリ(メチルフェニル)シラン、メチルフェノキシシラン、メチルジフェノキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、メチル(メチルフェノキシ)シラン、メチルジ(メチルフェノキシ)シラン、ジメチルジ(メチルフェノキシ)シラン、メチル(シクロヘキシル)シラン、メチルジ(シクロヘキシル)シラン、メチルトリ(シクロヘキシル)シラン、ジメチルジ(シクロヘキシル)シラン、トリメチル(シクロヘキシル)シラン、メチル(メチルシクロヘキシル)シラン、メチルジ(メチルシクロヘキシル)シラン、メチルトリ(メチルシクロヘキシル)シラン、ジメチルジ(メチルシクロヘキシル)シラン、トリメチル(メチルシクロヘキシル)シラン、メチル(シクロヘキシルオキシ)シラン、メチルジ(シクロヘキシルオキシ)シラン、メチル(トリシクロヘキシルオキシ)シラン、ジメチルジ(シクロヘキシルオキシ)シラン、メチル(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、メチルジ(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、メチルトリ(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、ジメチルジ(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、四フッ化ケイ素、フルオロトリメチルシラン、メチルトリス(トリフルオロメトキシ)シラン、トリフルオロメチルトリス(トリフルオロメトキシ)シラン、フルオロトリエトキシシラン、トリアセトキシシラン、メトキシトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、トリメチルシリル(トリメチルシリル)プロピノエート、トリメチルシリル(トリメチルシロキシ)アセテート、トリメチルシリルトリフルオロアセテート、トリス(トリフルオロメチルシリル)トリフルオロアセテート、トリエチルアセトキシシラン、トリ(トリフルオロアセトキシ)シラン、メチルトリ(トリフルオロアセトキシ)シラン、メトキシトリ(トリフルオロアセトキシ)シラン、テトラ(トリフルオロアセトキシ)シラン、テトラアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルジメチルアセトキシシラン、フェニルジメトキシアセトキシシラン、フェニルアセトキシトリメチルシラン、1,1,1,3,3−ペンタメチル−3−アセトキシジシロキサン、メチルトリアセトキシシランエチルトリアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メタクリルオキシトリメチルシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジ−t−ブトキシジアセトキシシラン、ジベンジルオキシジアセトキシシラン、ビス(トリメチルシリル)マロネート、ビス(トリメチルシリル)アセチレンジカルボキシレート、アクリルオキシトリメチルシラン、アセトキシトリメチルシラン、アセトキシメチルジメチルアセトキシシラン、トリエチル(トリフルオロアセトキシ)シラン、フェニルトリ(トリフルオロアセトキシ)シラン、フェニルジ(トリフルオロメチル)アセトキシシラン、(ペンタフルオロフェニル)ジメチルアセトキシシラン、フェニルジメチル(トリフルオロアセトキシ)シラン、フェニル(トリフルオロアセトキシ)トリメチルシラン、(トリフルオロフェニル)アセトキシトリメチルシラン、フェニルアセトキシトリ(トリフルオロメチル)シラン 1,1,1,3,3−ペンタ(トリフルオロメチル)−3−アセトキシジシロキサン、(トリフルオロメチル)トリアセトキシシランエチルトリアセトキシシラン、(トリフルオロメチル)トリアセトキシシラン、(トリフルオロメチル)(トリフルオロメトキシ)ジアセトキシシラン、メタクリルオキシトリ(トリフルオロメチル)シラン、(トリフルオロエチル)トリアセトキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジアセトキシシラン、ジ−(ノナフルオロ−t−ブトキシ)ジアセトキシシラン、ジベンジルオキシジ(トリフルオロアセトキシ)シラン、アクリルオキシトリ(トリフルオロメチル)シラン、アセトキシトリ(トリフルオロメチル)シラン、アセトキシ(トリフルオロメチル)ジメチルアセトキシシラン、(トリフルオロメチル)シラン、ジ(トリフルオロメチル)シラン、トリ(トリフルオロメチル)シラン、テトラ(トリフルオロメチル)シラン、(トリフルオロエチル)シラン、ジ(トリフルオロエチル)シラン、トリ(トリフルオロエチル)シラン、テトラ(トリフルオロエチル)シラン、(トリフルオロプロピル)シラン、ジ(トリフルオロプロピル)シラン、トリ(トリフルオロプロピル)シラン、テトラ(トリフルオロプロピル)シラン、(ヘキサフルオロイソプロピル)シラン、ジ(ヘキサフルオロイソプロピル)シラン、トリ(ヘキサフルオロイソプロピル)シラン、テトラ(ヘキサフルオロイソプロピル)シラン、(トリフルオロブチル)シラン、ジ(トリフルオロブチル)シラン、トリ(トリフルオロブチル)シラン、テトラ(トリフルオロブチル)シラン、(トリフルオロメチル)トリメトキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジメトキシシラン、トリ(トリフルオロメチル)メトキシシラン、テトラ(トリフルオロメトキシ)シラン、(トリフルオロメチル)メトキシシラン、(トリフルオロメチル)ジメトキシシラン、(トリフルオロメチル)トリエトキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジエトキシシラン、トリ(トリフルオロメチル)メトキシシラン、テトラ(トリフルオロエトキシ)シラン、(トリフルオロメチル)エトキシシラン、(トリフルオロメチル)ジエトキシシラン、(トリフルオロメチル)プロポキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジプロポキシシラン、トリ(トリフルオロメチル)プロポキシシラン、テトラ(トリフルオロプロポキシ)シラン、(トリフルオロメチル)トリイソプロポキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジイソプロポキシシラン、トリ(トリフルオロメチル)イソプロポキシシラン、テトラ(トリフルオロイソプロポキシ)シラン、(トリフルオロメチル)ジイソプロポキシシラン、(トリフルオロメチル)フェニルシラン、(トリフルオロメチル)ジフェニルシラン、(トリフルオロメチル)トリフェニルシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジフェニルシラン、トリ(トリフルオロメチル)フェニルシラン、(トリフルオロメチル)(メチルフェニル)シラン、(トリフルオロメチル)ジ(メチルフェニル)シラン、(トリフルオロメチル)トリ(メチルフェニル)シラン、(トリフルオロメチル)フェノキシシラン、(トリフルオロメチル)ジフェノキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジフェノキシシラン、(トリフルオロメチル)(メチルフェノキシ)シラン、(トリフルオロメチル)ジ(メチルフェノキシ)シラン、ジ(トリフルオロメチル)ジ(メチルフェノキシ)シラン、(トリフルオロメチル)(シクロヘキシル)シラン、(トリフルオロメチル)ジ(シクロヘキシル)シラン、(トリフルオロメチル)トリ(シクロヘキシル)シラン、ジ(トリフルオロメチル)ジ(シクロヘキシル)シラン、トリ(トリフルオロメチル)(シクロヘキシル)シラン、(トリフルオロメチル)(メチルシクロヘキシル)シラン、(トリフルオロメチル)ジ(メチルシクロヘキシル)シラン、(トリフルオロメチル)トリ(メチルシクロヘキシル)シラン、ジ(トリフルオロメチル)ジ(メチルシクロヘキシル)シラン、トリ(トリフルオロメチル)(メチルシクロヘキシル)シラン、(トリフルオロメチル)(シクロヘキシルオキシ)シラン、(トリフルオロメチル)ジ(シクロヘキシルオキシ)シラン、(トリフルオロメチル)トリ(シクロヘキシルオキシ)シラン、ジ(トリフルオロメチル)ジ(シクロヘキシルオキシ)シラン、(トリフルオロメチル)(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、(トリフルオロメチル)ジ(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、(トリフルオロメチル)トリ(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、ジ(トリフルオロメチル)ジ(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、トリ(トリフルオロメトキシ)シラン、メチルトリ(トリフルオロメトキシ)シラン、ジメチルジ(トリフルオロメトキシ)シラン、トリメチル(トリフルオロメトキシ)シラン、メチル(トリフルオロメトキシ)シラン、メチルジ(トリフルオロメトキシ)シラン、メチルトリ(トリフルオロエトキシ)シラン、ジメチルジ(トリフルオロエトキシ)シラン、トリメチル(トリフルオロメトキシ)シラン、メチル(トリフルオロエトキシ)シラン、メチルジ(トリフルオロエトキシ)シラン、メチル(トリフルオロプロポキシ)シラン、ジメチルジ(トリフルオロプロポキシ)シラン、トリメチル(トリフルオロプロポキシ)シラン、メチルトリ(ヘキサフルオロプロポキシ)シラン、ジメチルジ(ヘキサフルオロプロポキシ)シラン、トリメチル(ヘキサフルオロプロポキシ)シラン、メチルジ(ヘキサフルオロプロポキシ)シラン、メチル(ペンタフルオロフェニル)シラン、メチルジ(ペンタフェニル)シラン、メチルトリ(ペンタフェニル)シラン、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シラン、トリメチル(ペンタフルオロフェニル)シラン、メチル[(トリフルオロメチル)フェニル]シラン、メチルジ[(トリフルオロメチル)フェニル]シラン、メチルトリ[(トリフルオロメチル)フェニル]シラン、メチル(ペンタフルオロフェノキシ)シラン、メチルジ(ペンタフルオロフェノキシ)シラン、ジメチルジ(ペンタフルオロフェノキシ)シラン、メチル[(トリフルオロメチル)フェノキシ]シラン、メチルジ[(トリフルオロメチル)フェノキシ]シラン、ジメチルジ[(トリフルオロメチル)フェノキシ]シラン、メチル(ウンデカフルオロシクロヘキシル)シラン、メチルジ(ウンデカフルオロシクロヘキシル)シラン、メチルトリ(ウンデカフルオロシクロヘキシル)シラン、ジメチルジ(ウンデカフルオロシクロヘキシル)シラン、トリメチル(ウンデカシクロヘキシル)シラン、メチル[(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]シラン、メチルジ[(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]シラン、メチルトリ[(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]シラン、ジメチルジ[(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]シラン、トリメチル[(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]シラン、メチル(ウンデカフルオロシクロヘキシルオキシ)シラン、メチルジ(ウンデカフルオロシクロヘキシルオキシ)シラン、メチルトリ(ウンデカフルオロシクロヘキシルオキシ)シラン、ジメチルジ(ウンデカフルオロシクロヘキシルオキシ)シラン、メチル[(トリフルオロメチル)シクロヘキシルオキシ]シラン、メチルジ[(トリフルオロメチル)シクロヘキシルオキシ]シラン、メチルトリ[(トリフルオロメチル)シクロヘキシルオキシ]シラン、ジメチルジ[(トリフルオロメチル)シクロヘキシルオキシ]シラン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタ(トリ
フルオロメチル)トリシロキサン、トリメチルトリシロキサン、ジエチルトリメチルトリシロキサン、トリメチルシクロトリシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、テトラエチルシクロテトラシロキサン、ペンタエチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ビニルメチルジエトキシシランビニルメチルジメトキシシラン、トリメチルシリルアセチレン、ジ(トリメチルシリル)アセチレン、ヘキサ(トリフルオロメチル)ジシロキサン、オクタ(トリフルオロメチル)トリシロキサン、トリス(トリフルオロメチル)トリシロキサン、トリス(トリフルオロメチル)シクロトリシロキサン、テトラ(トリフルオロメチル)シクロテトラシロキサン、オクタ(トリフルオロメチル)シクロテトラシロキサン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0068】
式(III)におけるケイ素含有化合物の好ましい例としては、トリメチルシクロトリシロキサン、トリエチルシクロトリシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラエチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、ペンタエチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、トリメチルシリルアセチレン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、メチルジメトキシシラン及びメチルジエトキシシランが挙げられる。テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン及びトリメチルシリルアセチレンが、半導体産業における使用に関して最も好ましい。
【0069】
少なくとも2つの前駆体を必要とする典型的な化学蒸着プロセスにおいて、成分を組み合わせることができるいくつかの方法が存在する。このようなプロセスを図1及び2に示す。たとえば、1つの前駆体(たとえば、環状アルケン)を容器(1)から、化学物質送達ライン(2)を通して、膜蒸着手段(11)中に収容された蒸発手段(3)に輸送する。限定されるものではないが、不活性ガスによる容器の加圧、機械的ポンプ機構の使用、重力送り、又はこれらの組み合わせを含む様々な手段によって、前駆体を容器(1)から送達ライン(2)を通して蒸発手段(3)に輸送することができる。第2の前駆体(たとえば、ケイ素含有化合物)を、別の容器(12)から、化学物質送達ライン(13)を通して、膜蒸着手段(11)中に収容された蒸発手段(14)に輸送する。限定されるものではないが、不活性ガスによる容器の加圧、機械的ポンプ機構の使用、重力送り、又はこれらの組み合わせを含む様々な手段によって、第2の前駆体を容器(12)から送達ライン(13)を通して蒸発手段(14)に輸送することができる。
【0070】
第2の前駆体(たとえば、ケイ素含有化合物)が室温において気体である場合、又はこれが化学蒸着プロセスライン(5)中に導入される際に、蒸発させるためのエネルギーを実質的にほとんど又は全く必要としない場合、第2の蒸発手段(14)を、バルブ、チェックバルブ、バッフル、拡散装置、又は蒸発を可能にする手段を用いずにガスを管もしくはチャンバ中に注入するように構成された類似の装置で置換することができる。
【0071】
少なくとも1つの蒸発手段(3)が化学蒸着プロセスライン(5)に取り付けられていることが望ましいが、少なくとも1つの蒸発手段(3)を蒸着チャンバ(4)に直接連結し、場合によって1つもしくは複数のさらなる蒸発手段(14)を化学蒸着プロセスライン(5)に連結するか、又は蒸着チャンバ(4)に直接連結することも可能であることに注意しなければならない。さらに、ガス送達ライン(8)を場合によって蒸着チャンバ(4)に直接連結することができる。蒸発手段(3、14)又はガス送達ライン(8)が化学蒸着プロセスライン(5)に連結されていない場合、化学蒸着プロセスラインは蒸着チャンバ(4)に任意に取り付けられる機構になる。
【0072】
理想的には、各前駆体について別個の化学物質送達ライン及び蒸発手段を使用する。しかし、2つの前駆体が化学的に適合性である場合、1つの蒸発手段を用いて2つの前駆体を蒸発させることが可能である。1つの蒸発手段(3)を用いる場合、両前駆体を組み合わせて、又は別々に、化学物質送達ライン(15)の一部を通して蒸発手段(3)に分配する。2つの前駆体を蒸発の前に組み合わせる場合、図2に示すように、この方法は単に、化学物質送達ライン(15)の中でこれらを組み合わせ、それに続いて蒸発手段(3)で2つの前駆体を蒸発させる。1つの蒸発手段(3)を通して2つの前駆体を別々に分配する場合、各前駆体を分配する順序は単に、1つの前駆体を、化学物質送達ライン(15)を通して蒸発手段(3)に流し、続いて第2の前駆体を、化学物質送達ライン(15)を通して蒸発手段(3)に流すというものである(繰り返さない)。別法として、1つの前駆体を流し、第2の前駆体を流し、所望の層が形成されるまでこれらのステップを繰り返すことが必要かもしれない。用いられる方法は、全体的に所望の膜特性に依存する。蒸発手段(3)を1つだけ用いる場合、第2の蒸発手段(14)は必要ない。
【0073】
2つの異なる前駆体を、別個の化学物質ライン及び蒸発手段を通して流すプロセスにおいて、各前駆体に適した前駆体流速は、約0.01〜約10mL/分の範囲であり得る。蒸発手段(3、14)は、液体前駆体を蒸気もしくはミストに変換するための手段として機能し、熱、高圧ガス、又はこの課題を達成するための他の手段などの様々な技術を用いることができる。別法として、蒸発手段(3、14)は、ある量の液体を含有する容器からなり、不活性ガスが、(a)前駆体を液体から蒸気に変換し、(b)前駆体蒸気を化学蒸着プロセスライン(5)中に輸送するための手段として、この容器を通して流される。蒸発手段(3、14)の設計に関係なく、前駆体の液体から気体状態への変換は、蒸発手段(3、14)中又は化学蒸着プロセスライン(5)中のいずれかで行うことができる。化学蒸着プロセスラインは、前駆体蒸気のライン(5)内部での凝縮を防止するために一般的に約30℃〜約120℃に加熱されており、前駆体が蒸気もしくはミストの形態でこの化学蒸着プロセスライン(5)中に注入される。前駆体成分の混合は、蒸発手段(3、14)が互いに配置されている位置に応じて、化学蒸着プロセスライン(5)中、又は蒸着チャンバ(4)内の様々な位置において行うことができる。化学蒸着プロセスライン(5)は膜蒸着手段(11)内部の蒸着チャンバ(4)に連結され、基体(6)は蒸着チャンバ(4)内に収容される。蒸着チャンバ(4)及び化学蒸着プロセスライン(5)は常圧(すなわち、1013hPa(760torr))で操作することができるが、前駆体の蒸発を向上させ、前駆体を蒸気相として維持されやすくするために、約0.0133hPa(約0.01torr)〜約933hPa(約700torr)の大気圧以下で操作することも一般的である。
【0074】
化学蒸着プロセスライン(5)と蒸着プロセスチャンバ(4)との間の連結が、プロセスの要件に応じて蒸着手段ごとに異なり得ることは、当業者には理解されるはずである。たとえば、設計としては、システム内でのガスの混合、加熱、冷却、又は分布に影響を及ぼす様々な装置が含まれ得る。これらは、気体を混合するためのバッフル、ガスを加熱するための加熱ゾーン、ガスを冷却するための冷却ゾーン、圧力平衡を可能にするチャンバ、又はウェハの表面上にガスを分布させるためのシャワーヘッドを有する装置を含むことができる。たとえば、化学物質の蒸気が蒸着チャンバ(4)中の基体(6)に移動する前に、それらのガスが化学蒸着プロセスライン(5)からバッフル付混合装置を通り、加熱ゾーンを通り、そしてシャワーヘッドを通って送られるような設計でもよい。市場で入手可能なデザインは複雑であり、また、方法によって決定される必要性に基づいて多様化するために、本明細書では選択肢を一般的用語で記載する。
【0075】
本発明者らの一般的な例では、前駆体蒸気は、蒸発手段(3、14)を通過した流れによって、化学蒸着プロセスライン(5)を通って蒸着チャンバ(4)中の基体(6)へと輸送される。ガスの流れは、ソースタンク(7)から供給され、ガス送達ライン(8)を通って化学蒸着プロセスライン(5)へと流れる。約5mL/分(sccm)〜約10,000mL/分(sccm)の流速を有するガスの流れを、多くの場合加熱して、前駆体の蒸発を向上させ、前駆体を蒸気相として維持されやすくする。用いられるガスは、たとえば窒素、ヘリウム又はアルゴンなど不活性であってよく、単に前駆体蒸気を基体に輸送する手段として機能するように選択されるか、又はたとえば酸素、オゾン、アンモニア、亜酸化窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、SiH、シラン、四フッ化ケイ素、ヒドラジンなどの反応性ガスであって、蒸着プロセスを向上させるものであってもよい。
【0076】
前駆体蒸気が基体(6)に輸送される際に、これらを輸送ガスに加えて、1つもしくは複数の反応物質と混合して、基体上への蒸着を向上させることができる。反応物質は前述のように反応性ガスであってもよいし、又はアミン、アミノアルコール、アルカン、アルケン、アルキン、アルコール、エステル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸などの他の化学前駆体であってもよい。反応物質を慎重に選択して、基体上への前駆体の蒸着を向上させ、基体上に蒸着された層の化学的同一性及び特性を変化させる。これらの反応物質を、膜蒸着手段(11)中に、所望の効果に応じて、様々な手段によって、プロセス中の様々な位置において導入することができる。反応物質を膜蒸着手段(11)中に気体形態で導入するのが最も好都合であり、したがって、液体反応物質を用いる場合は、さらなる蒸発手段が必要になる。さらなる蒸発手段、すなわち反応物質を導入するために用いられるガス送達ラインは、ガス送達ライン(8)が化学蒸着プロセスライン(5)と接触する位置付近、蒸発手段の上流もしくは下流、プラズマ(9)中に直接もしくはプラズマ(9)付近、及び/又は膜蒸着手段(11)の膜蒸着チャンバ(4)の側面、最上部、又は底部上のある位置に配置することができる。
【0077】
前駆体蒸気、潜在的な反応物質、及び不活性又は反応性ガスには、さらに熱又はプラズマ(9)などの蒸着を向上させるために用いられる他の条件を付すことができる。前駆体蒸気を約50℃〜約800℃に予熱した後、基体と接触させて、基体上の前駆体の蒸着を向上させることができる。前駆体蒸気にエネルギーを加え、蒸着を向上させるために、プラズマを用いることもできる。さらに、蒸着膜の特性を変えるためにプラズマをパルスオン及びパルスオフすることができる。プラズマ出力及びパルス持続時間を慎重に選択して、基体上の前駆体の蒸着を向上させ、基体上に蒸着させた層の化学的同一性及び性質を変化させる。プラズマは、ある範囲の周波数にわたって適用することができ、ここで、高周波数及び低周波数プラズマ出力は、約0〜数キロワットの範囲であり得る。基体は、基体への物質輸送を向上させるために、約0〜約−400VDCのバイアスを有していてもよい。基体は、基体上での前駆体の熱分解を引き起こすために約25℃〜約500℃に加熱することができるか、又は基体上の前駆体の蒸着を向上させるために用いることができる。未反応物質は、排出ライン(10)を通って排出される。
【0078】
膜の元素組成、したがって膜特性は、出発ケイ素含有化合物の選択、用いる環状アルケン、及び方法における様々な反応ガスの使用又は不使用によって調節することができる。
膜蒸着の後、初期膜を硬化工程に付すことができる。硬化工程は、たとえば、膜特性、たとえば膜強度、誘電率及び膜の様々な他の特性などを変えるために膜の密度もしくは元素組成を変化させるためにも用いることができる。これらの硬化工程は、ホットプレート、オーブン、赤外線ランプ、又はマイクロ波などの様々な加熱手段のうちの1つによって熱を加えることによる熱処理を含み得る。別法として、硬化は、プラズマ処理、又は膜の化学処理を含み得る。これらの硬化工程は、初期膜における所望の化学変化に応じて、不活性雰囲気(たとえば、希ガス)、還元雰囲気(たとえば、水素もしくは炭化水素)、又は酸化雰囲気(たとえば、酸素、空気、オゾン、亜酸化窒素、二酸化炭素)中で行うことができる。このようなプロセスは、当業者らに周知である。
【0079】
(実施例)
一連の試験は、安定化及び非安定化NBDE試料が可溶性不揮発性ポリマー残留物を様々なストレス条件下で形成する傾向を比較するために考案された。これらの試験では、試料は、窒素下で類似の条件を用いてNBDEを慎重に蒸留することによって調製した。安定化試料については、NBDEを窒素下で各安定剤上に直接蒸留した。試料を調製した後、コンテス(Kontes)バルブ及びシュレンク(Schlenk)・ライン・アダプタを取り付けた250mLのガラスバルブ試験容器中に移した。この容器は、再密封することができるので試験に理想的であり、シュレンク技術と適合性であり、濡れている部分はガラス又はテフロン(登録商標)のみであった。試料を窒素下で慎重に取り扱って、実験前の偶発的なガスへの暴露を防止した。いくつかの試料は、凍結−吸引−解凍サイクルを3回用いて脱気し、溶解したガスを除去した。いくつかの試料は酸素に暴露し、この場合、酸素の量は、計算した量の空気を用いて慎重に導入した。全ての加熱試料を、恒温油浴中で特定の時間加熱した。各実験が完了した後、揮発性部分(NBDE及び安定剤)を不揮発性部分(ポリマー残留物)から分離する蒸発技術を用いて、不揮発性ポリマー残留物の量を測定した。蒸発技術により、窒素入口及び蒸気出口を備えた容器内の、あらかじめ秤量した試料皿からNBDE及び安定剤を同時に蒸発させた。窒素流及び80℃での加熱は、蒸発プロセスを促進し、試験前後での試料皿の重量の差によって残留物を測定した。残留物の量を、不揮発性部分の質量を試料の総重量と比較した後の100万分の1重量分率(ppm)として報告し、検出限界は約0.5ppmであった。試験後の残留物値が低いほど、安定性が高いことを示す。
【0080】
(実施例1)
この試験は、熱に一定時間暴露された場合にNBDEがどのように機能するかを示すように選択した。すでに記載したように、NBDEは80℃までの高温に数時間又は数日間暴露され得るので、生成物はそのような条件下で熱劣化に対して耐性を示さなければならない。
【0081】
さらに、この試験は、生成物貯蔵寿命の初期指標となり得る。加速劣化試験は、一般的に、化学反応がアレニウス反応速度関数に従うと仮定している。一般的に、劣化速度は、温度が10℃増加するごとに2倍増加する。したがって、80℃で8.1日間の加熱試験は、25℃で365日間保存した試料とほぼ等しい。前記試験に関して、80℃で12時間は、25℃で3週間保存した試料とほぼ等しい。
【0082】
試験した安定剤はMHQ及び4−MCATであり、それぞれ2つの異なる濃度で試験して、高い濃度ほど有効であるかどうかを判断した。各試料の初期残留物濃度を測定して、加熱前のベースラインを決定した。ベースラインは非安定化NBDE(試料1)について31ppmであり、試料2〜3については2ppmよりも低く、試料4〜5については0.5ppmよりも低かった。全ての蒸留は同じ条件下で行ったので、これは、安定剤の非存在下で高純度NBDEを単離することの困難性の指標であり得る。ベースラインが確立されたら、試料バルブを空気の非存在下で慎重に充填し、続いて前述のように脱気した。試料を80℃で12時間加熱し、次いで残留物濃度について試験した。試験結果を下記表1にまとめる。
【0083】
【表1】

表1の結果は、非安定化試料が相当な量の残留物を形成したことを示す。モノヒドロキシベンゼン安定化試料を非安定化物質と比較すると、MHQは残留物の減少を示した。MHQの濃度が高いほど、残留物濃度は低かった。しかし意外にも、ジヒドロキシベンゼン安定化試料はどちらも、モノヒドロキシベンゼン安定化試料のそれぞれよりも改善された性能を示し、いずれの濃度でも優れた結果を示した。
【0084】
(実施例2)
この試験は、熱及び酸素の両方に、ある時間暴露された場合にNBDEがどのように機能するかを示すために選択された。この試験に使用した酸素濃度は25重量ppmであった。この濃度は、包装中に化学物質が空気に偶発的に暴露された場合に予想されるものと類似しているが、半導体グレードの製品を調製する場合に酸素汚染を回避するために化学製造業者らが通常かける時間の長さを考慮すると、比較的大規模な暴露である。
【0085】
試験した安定剤はMHQ及び4−MCATであり、それぞれ2つの異なる濃度で試験して、濃度が高いほど有効かどうかを確認した。各試料の初期残留物濃度を測定して加熱前のベースラインを決定した。ベースラインは非安定化NBDE(試料6)について31ppmであり、試料7〜8については2ppmよりも低く、試料9〜10については0.5ppmよりも低かった。ベースラインが確立されたら、試料バルブを既知量の空気の存在下で充填して、25重量ppm酸素の試料を得た。試料を80℃で12時間加熱し、次いで残留物濃度について試験した。結果を下記表2にまとめる。
【0086】
【表2】

表2の結果は、非安定化試料が相当な量の残留物を形成したことを示す。モノヒドロキシ安定化試料を非安定化物質と比較すると、MHQは残留物の減少を示した。MHQの濃度が高いほど、残留物濃度は低かった。しかし意外にも、ジヒドロキシベンゼン安定化試料はどちらも、モノヒドロキシベンゼン安定化試料のそれぞれよりも改善された性能を示した。いずれの濃度でも優れた結果であったが、安定剤濃度が高いほど良好な性能を示した。
【0087】
(実施例3)
この試験は、生成物にストレスを加え、様々な安定剤の有効性の選別に役立てるための極端な条件として選択された。生成物にストレスを加え、より有効な安定剤と有効でない安定剤との明らかな差を示す方法として、酸素を150重量ppmで添加した。
【0088】
試験した安定剤は次のとおりである:4−メトキシフェノール(MHQ)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール(BHA)、3−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼン(3−MOCAT)、4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン(4−MCAT)及び1,2−ジヒドロキシベンゼン(ピロカテコール)。始めの3つの安定剤は1個のOH置換基を有し(モノヒドロキシ)、一方、後の3つは2個のOH置換基を有する(ジヒドロキシ)。各試料の初期残留物濃度を測定して、加熱前のベースラインを決定した。ベースラインは非安定化NBDE(試料11)については31ppmであり、試料12〜17については2ppmより低かった。ベースラインが確立されたら、試料バルブを既知量の空気の存在下で充填して、150重量ppm酸素の試料を得た。試料を80℃で12時間加熱し、次いで残留物濃度について試験した。結果を表3にまとめる。
【0089】
【表3】

表3の結果は、安定化試料の全てと比較して、非安定化試料が著しい量の残留物を形成したことを示す。この結果は、より穏やかな条件を使用した実施例1及び2で実施した試験よりも特に高かった。試料13及び14を調製して、安定剤混合物の有効性を調べた。モノヒドロキシベンゼン安定化試料を非安定化物質と比較すると、MHQは残留物の著しい減少を示したが、MHQとBHT又はBHAとの混合物は、さらに良好に機能したことがわかった。しかし、ジヒドロキシベンゼン安定化試料は、モノヒドロキシベンゼン安定化試料のそれぞれよりも、同等又は低い濃度で改善された性能を示した。
【0090】
(実施例4)
この試験は、ある一定時間、さらに高い極度の熱に暴露された場合に生成物がどのように機能するかを示すために選択された。NBDEが120℃の温度に24時間付される見込みはないが、この試験は、このような極端な温度が生成物に悪影響を及ぼすかどうかを証明することができる。それは、120℃で24時間が25℃で2年間と等しい貯蔵寿命の初期指標にもなり得る。
【0091】
試験した安定剤はMHQ及び4−MCATであり、それぞれ2つの異なる濃度で試験して、濃度が高いほど有効かどうかを確認した。各試料の初期残留物濃度を測定して、加熱前のベースラインを決定した。ベースラインは、非安定化NBDE(試料18)について31ppmであり、試料19〜20について2ppmよりも低く、試料21〜22について0.5ppmよりも低かった。ベースラインが確立されたら、試料バルブを空気の非存在下で慎重に充填し、続いて前述のように脱気した。試料を120℃で24時間加熱し、次いで残留物濃度について試験した。結果を表4にまとめる。
【0092】
【表4】

表4の結果は、非安定化材料が著しい量の残留物を形成したことを示す。形成された残留物の量は、脱気した場合に80℃で見られる量よりも多かったが(表1を参照)、熱及び酸素の両方に非安定化材料が暴露された場合に形成される量と比較するとそれほど多くの残留物は形成されなかった(表3を参照)。モノヒドロキシベンゼン安定化試料を非安定化材料と比較すると、MHQは残留物の減少を示した。さらに、MHQの濃度が高いほど、残留物濃度が低かった。しかし意外にも、ジヒドロキシベンゼン安定化試料はどちらも、このような極端な温度でも、いずれの濃度でもモノヒドロキシベンゼン安定化試料のそれぞれよりも改善された性能を示した。
【0093】
重要な注意点は、この実施例の全ての試料がガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)によって検出されるような熱劣化の証拠を示し、結果として得られる残留物が異なる外観を有していたことである。酸素の存在下で形成された残留物は、無色又は黄白色固体を形成し(多くの場合「泡状」塊)、一方、120℃で形成された残留物は、融けたカラメル状の外観を有する黄褐色固体を形成した。フェノール系安定剤は必ずしも熱劣化に対して有効でないので(たとえば、ディールス・アルダーの2+2付加による)、この試験は、そのような安定剤の有効性を評価するための信頼性のある方法ではない可能性がある。120℃では劣化の2つの活性モードあるようなので、この温度での貯蔵寿命試験を予測するためにアレニウスモデルに依存することはできない。
【0094】
(実施例5)
100ppmの4−MCAT又は3−MOCATで安定化させた環状アルケン(NBDE)を、ヘリウム圧を用いてステンレス鋼製容器から化学物質送達ラインを通して加熱された蒸発器に1mL/分の流速で移送する。環状アルケンを80℃に加熱した化学蒸着プロセスライン中に蒸発させ、500mL/分(sccm)のヘリウムを輸送ガスとして用い、システム基底圧を800Pa(6torr)に保持して基体へと輸送する。基体へ輸送する間、環状アルケン蒸気及び輸送ガスをメチルジエトキシシラン(M−DEOS)の流れと、約60重量%のM−DEOS及び40重量%のNBDEの割合で混合する。このガス混合物を250Wのプラズマ出力に暴露する。基体を−15VDCの基体バイアスで150℃まで加熱する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を、これらの条件を用いて基体上に蒸着させる。
【0095】
(実施例6)
100ppmの4−MCAT又は3−MOCATで安定化させた環状アルケン(NBDE)を、ヘリウム圧を用いてステンレス鋼製容器から化学物質送達ラインを通して加熱された蒸発器に1mL/分の流速で移送する。環状アルケンを80℃に加熱された化学蒸着プロセスライン中に蒸発させ、500mL/分(sccm)のヘリウムを輸送ガスとして用い、システム基底圧を800Pa(6torr)に保持して、基体へと輸送する。基体へ輸送する間、環状アルケン蒸気及び輸送ガスをTMCTSの流れと、約60%TMCTS及び40%NBDEの割合で混合する。このガス混合物を250Wのプラズマ出力に暴露する。基体を−15VDCの基体バイアスで150℃まで加熱する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を、これらの条件を用いて基体上に蒸着させる。
【0096】
(実施例7)
この実施例は、実施例5の方法を用いるが、炭素をドープした酸化ケイ素膜を蒸着後に硬化工程によって処理する。膜を425℃、窒素下で4時間アニールして、膜中に残存する実質的に全てのNBDEポロゲンを除去する。この処理によって、典型的にはより低い誘電率を有する若干薄い膜が得られる。
【0097】
(実施例8)
この実施例は実施例6の方法を用いるが、炭素をドープした酸化ケイ素膜を蒸着後に硬化工程によって処理する。膜を425℃、窒素下で4時間アニールして、NBDE膜中に残留する実質的に全てのポロゲンを除去する。この処理によって、典型的にはより低い誘電率を有する若干薄い膜が得られる。
【0098】
(実施例9)
この実施例は、実施例5の方法を用いるが、環状アルケン(NBDE)を50ppmの4−MCAT及び50ppmの3−MOCATで安定化する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0099】
(実施例10)
この実施例は、実施例5の方法を用いるが、環状アルケン(NBDE)を50ppmの4−MCAT及び50ppmのBHTで安定化する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0100】
(実施例11)
この実施例は実施例7の方法を用いるが、環状アルケン(NBDE)を100ppmの3−イソプロピル−1,2−ジヒドロキシベンゼンで安定化する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0101】
(実施例12)
この実施例は、実施例5の方法を用いるが、環状アルケン(NBDE及びアルファ−テルピネンの75:25(重量比)混合物)を100ppmの3−イソプロピル−1,2−ジヒドロキシベンゼンで安定化する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0102】
(実施例13)
この実施例は、実施例5の方法を用いるが、環状アルケン(ジシクロペンタジエン:アルファ−テルピネンの25:75(重量比)混合物)を100ppmの3−イソプロピル−1,2−ジヒドロキシベンゼンで安定化する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0103】
(実施例14)
この実施例は実施例8の方法を用いるが、環状アルケン(NBDE)を200ppmの3−tert−ブチル−4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼンで安定化する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0104】
(実施例15)
この実施例は実施例6の方法を用いるが、環状アルケン(NBDE)を50ppmの4−MCATで安定化する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0105】
(実施例16)
この実施例は実施例7の方法を用いるが、環状アルケン(NBDE)を150ppmの4−MCATで安定化する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0106】
(実施例17)
この実施例は実施例8の方法を用いるが、環状アルケン(アルファ−テルピネン)を100ppmの4−MCATで安定化する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0107】
(実施例18)
この実施例は、実施例5の方法を用いるが、環状アルケン(リモネン)を100ppmの4−MCATで安定化する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0108】
(実施例19)
この実施例は、実施例5の方法を用いるが、環状アルケン(アルファ−ピネン)を200ppmの4−MOCATで安定化する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0109】
(実施例20)
この実施例は、実施例5の方法を用いるが、環状アルケン(ジシクロペンタジエン)を150ppmの4−MCATで安定化する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0110】
(実施例21)
この実施例は、実施例5の方法を用いるが、環状アルケン(1,4−ジヒドロ−1,4−メタノナフタレン)を100ppmの3,4−ジメチル−1,2−ジヒドロキシベンゼンで安定化する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0111】
(実施例22)
この実施例は、実施例5の方法を用いるが、環状アルケン蒸気及び輸送ガスをメチルジエトキシシラン(M−DEOS)の流れ及びテトラメチルジシロキサン(TMDSO)の流れと約40重量%のM−DEOS、20重量%のTMDSO及び40重量%のNBDEの割合で混合する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0112】
(実施例23)
この実施例は、実施例5の方法を用いるが、環状アルケン蒸気及び輸送ガスをメチルジエトキシシラン(M−DEOS)の流れ及びテトラメチルジシロキサン(TMDSO)の流れと約30重量%のM−DEOS、30重量%のTMDSO及び40重量%のNBDEの割合で混合する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0113】
(実施例24)
この実施例は、実施例5の方法を用いるが、環状アルケン蒸気及び輸送ガスをトリメチルシラン(TMS)の流れと約60重量%のTMS及び40重量%のNBDEの割合で混合する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0114】
(実施例25)
この実施例は、実施例5の方法を用いるが、環状アルケン蒸気及び輸送ガスをフルオロトリエトキシシラン(FTES)の流れと約60重量%のFTES及び40重量%のNBDEの割合で混合する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0115】
(実施例26)
この実施例は、実施例5の方法を用いるが、環状アルケン蒸気及び輸送ガスをアクリルオキシトリメチルシラン(AcroTMS)の流れと約60重量%のAcroTMS及び40重量%のNBDEの割合で混合する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0116】
(実施例27)
この実施例は、実施例5の方法を用いるが、環状アルケン蒸気及び輸送ガスをアセトキシトリメチルシラン(AceTMS)の流れと約60重量%のAceTMS及び40重量%のNBDEの割合で混合する。炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に蒸着させる。
【0117】
一連の試験は、通常の保存条件下で1年の時間枠にわたって生成物貯蔵寿命を調べるために考案された。これは長期安定剤性能の重要な尺度である。8個の高純度ステンレス鋼製容器を基本的に同じ方法で標準的大量生産ロットから充填した。残留物濃度に対する初期純度は、ほぼ同じであることが判明した。容器を密封し、約25℃(「室温」)、不活性雰囲気中、大気圧下で保存した。残留物濃度を充填時に試料のベースラインとして測定し、次いで残留物濃度の増加を測定するために、試料を約1年にわたって抜き取った。残留物濃度を前記実施例で記載したように測定した。結果をプロット1〜3に示す。
【0118】
(実施例28)
プロット1は、50ppmのMHQで安定化させたNBDEの4つの試料の残留物濃度を試料寿命の関数として示す。傾向線を用いて、4つの試料で確認された最高及び最低濃度傾向を強調した。これらの結果に基づくと、経時的な残留物形成はほぼ直線的であった。これらの試料間の残留物形成速度のバラツキは比較的大きく、はっきりとはわからなかったが、包装及びサンプリングによる酸素濃度の小さな差が関与していると考えられた。このデータを使用して、類似した保存条件下で1年にわたって試料において形成される残留物は約70〜約190ppmであると合理的に予想することができる。
【0119】
【表5】

(実施例29)
プロット2は、100ppmの4−MCATで安定化させたNBDEの4つの試料の残留物濃度を試料寿命の関数として示す。ここでも傾向線を、4つの試料において確認された最高及び最低濃度傾向を強調するために使用した。MHQ安定化生成物を用いた場合に見られるように、経時的な残留物形成はほぼ直線的であった。しかし、類似の条件下での4−MCAT安定化試料における残留物濃度は、少なくとも1桁低かった。この場合、1年後の予想される残留物は約4〜約6ppmまで様々である。全体的な残留物濃度が低かっただけでなく、より緊密に分布しており、したがってより容易に予測可能であった。
【0120】
【表6】

(実施例30)
MHQ安定化生成物と4−MCAT安定化生成物との長期挙動の大きな差は、プロット3で見られるように、両実験を同じグラフ上にプロットした場合に最も明らかである。このプロットは、同じ期間にわたって形成される残留物濃度の範囲と、全体的な残留物濃度においてとの両方における違いを明確に示す。
【0121】
【表7】

(一般的精製手順#1)
水、アルコール、過酸化物、安定剤、安定剤分解生成物、酸化有機不純物及び粒状物質などの不純物を除去するように、シリカゲル又はアルミナ媒体を装填した濾過装置に通すことによって、環状アルケンを精製する。
【0122】
(一般的精製手順#2)
蒸留塔、凝縮器及び2つの受器を備えた蒸留フラスコ中に環状アルケンを装填する。1つの受器は、前留分、すなわち高揮発性留分用に設定され、もう1つの受器は主留分、すなわち高純度環状アルケンを集めるために設定される。蒸留は、不活性雰囲気下、大気圧で行う。十分な前留分を集めて、高揮発性不純物を除去し、主留分を集めて、所望の純度の高純度環状アルケンを分離し、そして蒸留プロセスを終結させると、低揮発性不純物の容器内残液が残る。
【0123】
(一般的精製手順#3)
蒸留塔、凝縮器、2つの受器及び真空源を備えた蒸留フラスコ中に環状アルケンを装填する。1つの受器は前留分、すなわち高揮発性留分用に設定され、もう1つの受器は主留分、すなわち高純度環状アルケンを集めるために設定される。蒸留は不活性雰囲気下、大気圧未満で行って、環状アルケンの沸点を低下させて、蒸留ステップ中の熱劣化を軽減もしくは防止する。十分な前留留分を集めて、高揮発性不純物を除去し、主留分を集めて、所望の純度の高純度環状アルケンを分離し、そして蒸留プロセスを停止させると、低揮発性不純物の容器内残液が残る。
【0124】
(一般的精製手順#4)
加熱ゾーン、凝縮器及び2つの受器を備えた短路蒸留装置中に環状アルケンを装填する。1つの受器は主留分、すなわち高純度環状アルケンを集めるために設定され、もう1つの受器は低揮発性不純物を受けるために設定される。蒸留は不活性雰囲気下、大気圧で行い、低揮発性不純物から高純度環状アルケンを十分に分離できるように調整する。
【0125】
(一般的精製手順#5)
環状アルケンを、加熱ゾーン、凝縮器及び2つの受器を備えた短路蒸留装置中に装填する。1つの受器は主留分、すなわち高純度環状アルケンを集めるために設定され、1つの受器は低揮発性不純物を受容するために設定される。蒸留は、不活性雰囲気下、大気圧未満で行って、環状アルケンの沸点を低下させて、蒸留ステップ中の熱劣化を軽減もしくは防止する。さらに、低揮発性不純物から高純度環状アルケンが十分に分離されるようにプロセスを調整する。
【0126】
(一般的安定化手)
(一般的安定化手順#1)
有効量の安定剤を蒸留装置の生成物受器中に装填した後、高純度環状アルケンを受器中に蒸留する。次いで蒸留装置を作動させて、高純度環状アルケンを接触させ、安定剤を受器中に集める際に可溶化させる。
【0127】
(一般的安定化手順#2)
有効量の安定剤を、蒸留装置中に凝縮器と生成物受器との間の位置において装填する。次いで蒸留装置を作動させて、高純度環状アルケンを接触させ、凝縮器から受器に移動する際に安定剤を可溶化させる。
【0128】
(一般的安定化手順#3)
蒸留装置をまず作動させて、安定剤を含まない受器中に非安定化高純度環状アルケンを回収する。次いで、高純度環状アルケン中に安定剤を可溶化させるために、有効量の安定剤を受器中に装填する。
【0129】
(実施例31)
一般的精製手順#2を用いることによって環状アルケン(NBDE)を精製し、一般的安定化手順#1を用いることによって100ppmの4−MCATで安定化する。
【0130】
(実施例32)
一般的精製手順#3を用いることによって環状アルケン(NBDE)を精製し、一般的安定化手順#1を用いることによって100ppmの4−MCATで安定化する。
【0131】
(実施例33)
一般的精製手順#4を用いることによって環状アルケン(NBDE)を精製し、一般的安定化手順#1を用いることによって100ppmの4−MCATで安定化する。
【0132】
(実施例34)
一般的精製手順#5を用いることによって環状アルケン(NBDE)を精製し、一般的安定化手順#1を用いることによって100ppmの4−MCATで安定化する。
【0133】
(実施例35)
一般的精製手順#1、続いて一般的精製手順#2を用いることによって環状アルケン(NBDE)を精製し、一般的安定化手順#1を用いることによって100ppmの4−MCATで安定化する。
【0134】
(実施例36)
一般的精製手順#1、続いて一般的精製手順#3を用いることによって環状アルケン(NBDE)を精製し、一般的安定化手順#1を用いることによって100ppmの4−MCATで安定化する。
【0135】
(実施例37)
一般的精製手順#1、続いて一般的精製手順#4を用いることによって環状アルケン(NBDE)を精製し、一般的安定化手順#1を用いることによって100ppmの4−MCATで安定化する。
【0136】
(実施例38)
一般的精製手順#1、続いて一般的精製手順#5を用いることによって環状アルケン(NBDE)を精製し、一般的安定化手順#1を用いることによって100ppmの4−MCATで安定化する。
【0137】
(実施例38)
一般的精製手順#2、続いて一般的精製手順#4を用いることによって環状アルケン(NBDE)を精製し、一般的安定化手順#1を用いることによって100ppmの4−MCATで安定化する。
【0138】
(実施例38)
一般的精製手順#3、続いて一般的精製手順#5を用いることによって環状アルケン(NBDE)を精製し、一般的安定化手順#1を用いることによって100ppmの4−MCATで安定化する。
【0139】
(実施例39)
一般的精製手順#1、続いて一般的精製手順#2、続いて一般的精製手順#4を用いることによって環状アルケン(NBDE)を精製し、一般的安定化手順#1を用いることによって100ppmの4−MCATで安定化する。
【0140】
(実施例40)
一般的精製手順#2を用いることによって環状アルケン(NBDE)を精製し、一般的安定化手順#2を用いることによって100ppmの4−MCATで安定化する。
【0141】
(実施例41)
一般的精製手順#2を用いることによって環状アルケン(NBDE)を精製し、一般的安定化手順#3を用いることによって100ppmの4−MCATで安定化する。
【0142】
本開示のいくつかの実施形態を提示し、記載したが、当業者に明白な多数の変更を許容し得ることは、明らかに理解されるべきである。したがって、提示及び記載した詳細事項に限定することを望むものではなく、全ての変更及び修正は添付の特許請求の範囲に包含されるように意図されている。
【0143】
本明細書において引用される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、参照により援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1つもしくは複数の置換もしくは非置換環状アルケン、及び
(b)少なくとも1つの式(I)
【化1】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立して、H、C〜C直鎖アルキル、C〜C不飽和アルキル、C〜C分岐アルキル、C〜C環状アルキル、C〜C直鎖アルコキシ、C〜C不飽和アルコキシ、C〜C分岐アルコキシ、C〜C環状アルコキシ、又は置換もしくは非置換アリールであり、ここで、R〜Rのうちの少なくとも1つはHでなく、かつ、R〜Rのうちの1つがt−ブチルである場合、残りのR〜Rのうちの少なくとも1つはHでない)の化合物を含む酸化防止剤組成物
を含む、組成物。
【請求項2】
〜Rのうちの1つがメチル、エチル、メトキシ、又はエトキシである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
残りのR〜Rのうちの少なくとも1つがHである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
残りのR〜Rの全てがHである、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
〜Rのうちの1つがメチル又はメトキシである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
残りのR〜Rのうちの少なくとも1つがHである、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
又はRがメチル又はメトキシである、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
残りのR〜Rのうちの少なくとも1つがHである、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記酸化防止剤組成物が4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記酸化防止剤組成物が3−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記酸化防止剤組成物が約1ppm〜約200ppmの濃度で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記酸化防止剤組成物が約50ppm〜約150ppmの濃度で存在する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記環状アルケンが、一般式C2n−2x−y(式中、nは4〜18の整数であり、xは整数かつ1≦x≦n/2であり、yは整数かつ0≦y≦2n−2xであり、各Rは独立してC〜C18直鎖アルキル、C〜C18分岐アルキル、C〜C18不飽和アルキル、C〜C18環状アルキル、C〜C18直鎖アルコキシ、C〜C18分岐アルコキシ、C〜C18不飽和アルコキシ、C〜C18環状アルコキシ、置換もしくは非置換アリール、又は置換ケイ素含有置換基である)を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記環状アルケンが、一般式C2n−(2x+2)−y(式中、nは5〜18の整数であり、xは整数かつx≦n/2であり、yは整数かつ0≦y≦2n−(2x+2)であり、各Rは独立して、C〜C18直鎖アルキル、C〜C18分岐アルキル、C〜C18不飽和アルキル、C〜C18環状アルキル、C〜C18直鎖アルコキシ、C〜C18分岐アルコキシ、C〜C18不飽和アルコキシ、C〜C18環状アルコキシ、置換もしくは非置換アリール、又は置換ケイ素含有置換基である)を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記環状アルケンが、一般式C2n−(2x+4)−y(式中、nは7〜18の整数であり、xは整数かつx≦n/2であり、yは整数かつ0≦y≦2n−(2x+4)であり、各Rは独立して、C〜C18直鎖アルキル、C〜C18分岐アルキル、C〜C18不飽和アルキル、C〜C18環状アルキル、C〜C18直鎖アルコキシ、C〜C18分岐アルコキシ、C〜C18不飽和アルコキシ、C〜C18環状アルコキシ、置換もしくは非置換アリール、又は置換ケイ素含有置換基である)を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
前記環状アルケンが、ジペンテン、フェランドレン、ジシクロペンタジエン、アルファ−テルピネン、ガンマ−テルピネン、リモネン、アルファ−ピネン、3−カレン、テルピノレン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、及び5−エチリデン−2−ノルボルネンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
式(I)の前記化合物が265℃より低い沸点を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
膜蒸着チャンバ中の基体を、少なくとも1つの環状アルケン組成物及び少なくとも1つのケイ素含有化合物で処理して、炭素をドープした酸化ケイ素膜を前記基体上に形成する工程を含む方法であって、
前記環状アルケン組成物が、
(a)1つもしくは複数の置換もしくは非置換環状アルケン、及び
(b)少なくとも1つの式(I)
【化2】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立して、H、C〜C18直鎖アルキル、C〜C不飽和アルキル、C〜C分岐アルキル、C〜C環状アルキル、C〜C18直鎖アルコキシ、C〜C不飽和アルコキシ、C〜C分岐アルコキシ、C〜C環状アルコキシ、又は置換もしくは非置換アリールであり、ここで、R〜Rのうちの少なくとも1つはHでなく、かつ、R〜Rのうちの1つがt−ブチルである場合、残りのR〜Rのうちの少なくとも1つはHでない)の化合物を含む酸化防止剤組成物
を含む、方法。
【請求項19】
前記処理のステップの前に、第1容器中の前記環状アルケン組成物、第2容器中の前記ケイ素含有化合物、前記膜蒸着チャンバを含む膜蒸着手段、前記第1容器及び第2容器を前記膜蒸着手段内の前記膜蒸着チャンバに連結するように構成されたコネクタ、ならびに前記環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物を、前記コネクタを通して前記膜蒸着チャンバ中に送るためのキャリアガスの流れを提供する工程をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記処理のステップの前に、前記環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物の蒸気を前記キャリアガスの流れの中に導入する工程をさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記処理のステップの前に、前記環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物の蒸気を、前記キャリアガスの流れを介して前記膜蒸着チャンバ中に輸送する工程をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
〜Rのうちの1つが、メチル、エチル、メトキシ、又はエトキシである、請求項18記載の方法。
【請求項23】
残りのR〜Rのうち少なくとも1つがHである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
残りのR〜Rの全てがHである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
〜Rのうちの1つがメチル又はメトキシである、請求項18記載の方法。
【請求項26】
残りのR〜Rのうちの少なくとも1つがHである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
又はRがメチル又はメトキシである、請求項18記載の方法。
【請求項28】
残りのR〜Rのうちの少なくとも1つがHである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記酸化防止剤組成物が4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼンを含む、請求項18記載の方法。
【請求項30】
前記酸化防止剤組成物が3−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼンを含む、請求項18記載の方法。
【請求項31】
前記酸化防止剤組成物が約1ppm〜約200ppmの濃度で存在する、請求項18記載の方法。
【請求項32】
前記酸化防止剤組成物が約50ppm〜約150ppmの濃度で存在する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記環状アルケンが一般式C2n−2x−y(式中、nは4〜18の整数であり、xは整数かつ1≦x≦n/2であり、yは整数かつ0≦y≦2n−2xであり、各Rは独立して、C〜C18直鎖アルキル、C〜C18分岐アルキル、C〜C18不飽和アルキル、C〜C18環状アルキル、C〜C18直鎖アルコキシ、C〜C18分岐アルコキシ、C〜C18不飽和アルコキシ、C〜C18環状アルコキシ、置換もしくは非置換アリール、又は置換ケイ素含有置換基である)を有する、請求項18記載の方法。
【請求項34】
前記環状アルケンが一般式C2n−(2x+2)−y(式中、nは5〜18の整数であり、xは整数かつx≦n/2であり、yは整数かつ0≦y≦2n−(2x+2)であり、各Rは独立して、C〜C18直鎖アルキル、C〜C18分岐アルキル、C〜C18不飽和アルキル、C−Ci環状アルキル、C〜C18直鎖アルコキシ、C〜C18分岐アルコキシ、C〜C18不飽和アルコキシ、C〜C18環状アルコキシ、置換もしくは非置換アリール、又は置換ケイ素含有置換基である)を有する、請求項18記載の方法。
【請求項35】
前記環状アルケンが一般式C2n−(2x+4)−y(式中、nは7〜18の整数であり、xは整数かつx≦n/2であり、yは整数かつ0≦y≦2n−(2x+4)であり、各Rは独立して、C〜C18直鎖アルキル、C〜C18分岐アルキル、C〜C18不飽和アルキル、C〜C18環状アルキル、C〜C18直鎖アルコキシ、C〜C18分岐アルコキシ、C〜C18不飽和アルコキシ、C〜C18環状アルコキシ、置換もしくは非置換アリール、又は置換ケイ素含有置換基である)を有する、請求項18記載の方法。
【請求項36】
前記環状アルケンが、ジペンテン、フェランドレン、ジシクロペンタジエン、アルファ−テルピネン、ガンマ−テルピネン、リモネン、アルファ−ピネン、3−カレン、テルピノレン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、及び5−エチリデン−2−ノルボルネンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項18記載の方法。
【請求項37】
式(I)の前記化合物が265℃より低い沸点を有する、請求項18記載の方法。
【請求項38】
(a)ジペンテン、フェランドレン、ジシクロペンタジエン、アルファ−テルピネン、ガンマ−テルピネン、リモネン、アルファ−ピネン、3−カレン、テルピノレン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、及び5−エチリデン−2−ノルボルネンからなる群から選択される環状アルケン、及び
(b)4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン又は3−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼンを含む酸化防止剤組成物
を含む組成物であって、
前記酸化防止剤組成物が約50ppm〜約150ppmの濃度で存在する、組成物。
【請求項39】
前記酸化防止剤組成物が4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼンを含む、請求項38記載の組成物。
【請求項40】
前記酸化防止剤組成物が約100ppmの濃度で存在する、請求項38記載の組成物。
【請求項41】
膜蒸着チャンバ中の基体を少なくとも1つの環状アルケン組成物及び少なくとも1つのケイ素含有化合物で処理して、炭素をドープした酸化ケイ素膜を前記基体上に形成することを含む方法であって、
前記環状アルケン組成物が、
(a)ジペンテン、フェランドレン、ジシクロペンタジエン、アルファ−テルピネン、ガンマ−テルピネン、リモネン、アルファ−ピネン、3−カレン、テルピノレン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、及び5−エチリデン−2−ノルボルネンからなる群から選択される環状アルケン、及び
(b)4−メチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン又は3−メトキシ−1,2−ジヒドロキシベンゼンを含む酸化防止剤組成物
を含み、
前記酸化防止剤組成物が、約50ppm〜約150ppmの濃度で存在する、方法。
【請求項42】
環状アルケン組成物を含む密封容器を含む装置であって、前記環状アルケン組成物が
(a)少なくとも1つの置換もしくは非置換環状アルケン、及び
(b)少なくとも1つの酸化防止剤組成物
を含み、
前記環状アルケン組成物が、前記密封容器中において室温で1年間保存された後に、最高で約200ppmの残留物を生成する装置。
【請求項43】
前記環状アルケン組成物が、前記密封容器中において室温で1年間保存された後に、最高で約100ppmの残留物を生成する、請求項42記載の装置。
【請求項44】
前記環状アルケン組成物が、前記密封容器中において室温で1年間保存された後に、最高で約10ppmの残留物を生成する、請求項42記載の装置。
【請求項45】
約0ppm〜約150ppmの酸素及び環状アルケン組成物を含む密封容器を含む装置であって、前記組成物が、
(a)少なくとも1つの置換もしくは非置換環状アルケン、及び
(b)少なくとも1つの酸化防止剤組成物
を含み、
前記環状アルケン組成物が、前記密封容器中において80℃で12時間加熱された後に、最高で約20ppmの残留物を生成する装置。
【請求項46】
前記密封容器が約150ppmの酸素を含み、前記環状アルケン組成物が、前記密封容器中において80℃で12時間加熱された後に、最高で約20ppmの残留物を生成する、請求項45記載の装置。
【請求項47】
前記密封容器が約25ppmの酸素を含み、前記環状アルケン組成物が、前記密封容器中において80℃で12時間加熱された後に、最高で約5ppmの残留物を生成する、請求項45記載の装置。
【請求項48】
前記密封容器が約25ppmの酸素を含み、前記環状アルケン組成物が、前記密封容器中において80℃で12時間加熱された後に、最高で約0.5ppmの残留物を生成する、請求項45記載の装置。
【請求項49】
前記密封容器が約0ppmの酸素を含み、前記環状アルケン組成物が、前記密封容器中において80℃で12時間加熱された後に、最高で約5ppmの残留物を生成する、請求項45記載の装置。
【請求項50】
前記密封容器が約0ppmの酸素を含み、前記環状アルケン組成物が、前記密封容器中において80℃で12時間加熱された後に、最高で約0.5ppmの残留物を生成する、請求項45記載の装置。
【請求項51】
約0ppm〜約150ppmの酸素及び環状アルケン組成物を含む密封容器を含む装置であって、前記組成物が、
(a)少なくとも1つの置換もしくは非置換環状アルケン、及び
(b)少なくとも1つの酸化防止剤組成物
を含み、
前記組成物が、前記密封容器中において120℃で24時間加熱された後に、最高で約200ppmの残留物を生成する、装置。
【請求項52】
前記密封容器が約0ppmの酸素を含み、前記環状アルケン組成物が、前記密封容器中において120℃で24時間加熱された後に、最高で約200ppmの残留物を生成する、請求項51記載の装置。
【請求項53】
前記密封容器が約0ppmの酸素を含み、前記環状アルケン組成物が、前記密封容器中において120℃で24時間加熱された後に、最高で約160ppmの残留物を生成する、請求項51記載の装置。
【請求項54】
環状アルケン組成物を密封容器中で少なくとも6ヶ月間保存する工程、及び
前記環状アルケン組成物を保存した後、前記環状アルケン組成物を少なくとも1つのケイ素含有化合物とともに化学蒸着プロセスにおいて使用して、炭素をドープした酸化ケイ素膜を基体上に形成する工程を含む方法であって、
前記環状アルケン組成物が、
(a)1もしくは複数の置換もしくは非置換環状アルケン、及び
(b)少なくとも1つの式(I)
【化3】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立して、H、C〜C直鎖アルキル、C〜C不飽和アルキル、C〜C分岐アルキル、C〜C環状アルキル、C〜C直鎖アルコキシ、C〜C不飽和アルコキシ、C〜C分岐アルコキシ、C〜C環状アルコキシ、又は置換もしくは非置換アリールである)の化合物を含む酸化防止剤組成物
を含む方法。
【請求項55】
前記組成物が前記密封容器中で少なくとも9ヶ月間保存される、請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記組成物が前記密封容器中で少なくとも1年間保存される、請求項54記載の方法。
【請求項57】
〜Rのうちの少なくとも1つはHでなく、かつ、R〜Rのうちの1つがt−ブチルである場合、残りのR〜Rのうちの少なくとも1つはHでない、請求項54記載の方法。
【請求項58】
環状アルケンを安定化する方法であって、
少なくとも1つの式(I)
【化4】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立してH、C〜C直鎖アルキル、C〜C不飽和アルキル、C〜C分岐アルキル、C〜C環状アルキル、C〜C直鎖アルコキシ、C〜C不飽和アルコキシ、C〜C分岐アルコキシ、C〜C環状アルコキシ、又は置換もしくは非置換アリールであり、ここで、R〜Rのうちの少なくとも1つはHでなく、かつ、R〜Rのうちの1つがt−ブチルである場合、残りのR〜Rのうちの少なくとも1つはHでない)の化合物を前記環状アルケンに添加する工程を含む方法。
【請求項59】
式(I)の少なくとも1つの化合物を添加する工程が、(a)前記少なくとも1つの式(I)の化合物を、環状アルケンを精製するための蒸留装置中の受器中に添加する工程、及び(b)前記環状アルケンを、前記蒸留装置を通して前記受器中に蒸留する工程を含む、請求項58記載の方法。
【請求項60】
少なくとも1つの式(I)の化合物を添加する工程が、(a)前記少なくとも1つの式(I)の化合物を、前記環状アルケンを精製するための蒸留装置中、凝縮器と受器との間の位置において添加する工程、及び(b)蒸留された環状アルケンが前記凝縮器を通って前記受器中に入るように、前記蒸留装置を通して環状アルケンを蒸留することにより、前記少なくとも1つの式(I)の化合物を前記蒸留された環状アルケン中に可溶化させる工程を含む、請求項58記載の方法。
【請求項61】
少なくとも1つの式(I)の化合物を添加する工程が、(a)蒸留装置を通して受器中に前記環状アルケンを蒸留する工程、及び(b)前記少なくとも1つの式(I)の化合物を前記受器中に添加する工程を含む、請求項58記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−527685(P2011−527685A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517516(P2011−517516)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/049765
【国際公開番号】WO2010/005937
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(305037086)フジフィルム・エレクトロニック・マテリアルズ・ユーエスエイ・インコーポレイテッド (29)
【氏名又は名称原語表記】FujiFilm Electronic Materials USA, Inc.
【住所又は居所原語表記】80 Circuit Drive, North Kingstown, Rhode Island 02852, USA
【Fターム(参考)】