環状オレフィンコポリマーを組み入れた光学フィルム
その上に硬化性層を配された、ノルボルネン系環状オレフィン層が記載されている。その硬化性層にはさらに、表面模様がつけられていてもよい。硬化性層を有するノルボルネン系環状オレフィンフィルムは、光学フィルム、たとえば配向させた多層光学フィルムを含む光学物体の中に取り入れることができる。さらに、本発明には、プライマー層を必要とすることなく、硬化性層をノルボルネン系ポリマー層またはフィルムの上にコーティングする方法も含まれる。フィルムを含むノルボルネン系環状オレフィン層の製造方法もまた開示されている。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多層ポリマー光学フィルムは、ミラーおよび偏光子を含め、各種の用途に広く使用されている。そのようなフィルムは、コンパクトな電子ディスプレイ、たとえば携帯電話、携帯情報端末、ノートパソコン、モニターおよびテレビに取り付けられた液晶ディスプレイ(LCD)における、反射板および偏光子としての使用に特に適している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
ポリマー光学フィルムは好適な光学的性質および物理的性質を有することができるものの、いくつかのそのようなフィルムに伴う一つの限界は、温度の変動に暴露されたとき、それがたとえ通常の使用において経験するような温度の変動であったとしても、寸法不安定性を示す可能性がある、という点にある。この寸法不安定性によって、フィルムの中に「しわ」が形成され、それが、LCDにおける影として見える可能性がある。そのような寸法不安定性は、温度が約85℃に近づくかそれを超えると、いくつかのタイプのフィルムで、時折観察されることがあり得る。いくつかのタイプのフィルムでは、高温および高湿条件、たとえば温度60℃、相対湿度70パーセントのような条件でサイクル試験をすると、寸法不安定性が観察される。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムの上にコーティングされた追加の硬化性層を含む多層フィルム、光学フィルムの上に配された少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層を含む光学物体、およびノルボルネン系環状オレフィン層またはフィルムと他の物体との間の接着性を改良するための方法、に関する。
【0004】
本発明の開示の一実施態様は、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムと、そのノルボルネン系環状オレフィンフィルムに貼り付けた硬化性層とを含む多層フィルムである。その硬化性層には、硬化性物質が含まれる。
【0005】
本発明の開示のまた別な実施態様は、光学フィルム、その光学フィルムの上に配された少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層、およびそのノルボルネン系環状オレフィン層に貼り付けられた、硬化性物質を含む少なくとも1層の硬化性層を含む光学物体である。一つの例示的な態様においては、その硬化性物質を含む少なくとも1層の硬化性層は、少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層の主面に貼り付けられ、ここでその主面は一般に、その光学フィルムの反対側に配されている。また別な例示的な態様においては、その硬化性物質を含む少なくとも1層の硬化性層は、光学フィルムと、少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層との間に配されている。
【0006】
本発明の開示のまた別な例示的な態様は、硬化性層をノルボルネン系環状オレフィンフィルムに貼り付ける方法であるが、その方法には、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムをコロナ処理する工程、そのコロナ処理したノルボルネン系環状オレフィンフィルムに硬化性物質を適用し、それにより硬化性層を形成させる工程が含まれる。
【0007】
本発明の開示のさらに別な例示的な態様は、光学物体を製造するための方法であって、ここでその光学物体には光学フィルムが含まれる。その方法には、少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン外側層を含む光学フィルムを備える工程、そのノルボルネン系環状オレフィン層をコロナ処理する工程、およびそのノルボルネン系環状オレフィン層の上に硬化性層をコーティングする工程、が含まれる。
【0008】
図面を参照することにより、本発明をさらに説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーフィルムは、光学フィルムにおいて使用するのに好適な性質を示す。それらのフィルムは、光学的に透明、明澄であり、耐光安定性を有し、複屈折性が極めて低い。さらに、それらが高い剛性、耐熱性および極めて低い吸湿性を有しているために、光学的用途において寸法安定性の層としての使用が期待される。しかしながら、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーは、場合によっては、他の物質へ接着させることが困難である。特に、それらは、フィルムの積層に有用な硬化性接着剤を含む硬化性ポリマー材料や、硬化性コーティング材料に対する接着が比較的困難である。典型的には、硬化性物質と接着させようとすると、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーフィルムの上に、たとえば化学的接着促進層または接着促進タイ層のようなコーティングされたプライマー層が必要となる。しかしながら、コーティングされたプライマー層を使用すると、製造コストが加わる可能性があり、また好ましくないコーティング欠陥が発生する可能性もある。
【0010】
多層ポリマー光学フィルムも含めて、ノルボルネン系環状オレフィン層およびフィルムを含む構造における接着性を改良するための方法が必要とされている。コーティングされたプライマー層を使用することなく、硬化性接着剤を用いて、フィルム積層によって追加の層をノルボルネン系環状オレフィン層およびフィルムに直接接着させるのが好ましい。さらに、コーティングされたプライマー層を使用することなく、硬化性物質からなる追加の層を直接接着させることも望ましい。プライマー層の使用を必要としない、インライン表面改質技術を使用することによって多層光学フィルムを製造する方法は、製造コストを削減すると共に、プライマー層が原因の欠陥を排除することになるであろう。
【0011】
上述のように、本発明は、少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層を組み入れた多層フィルムを提供する。その多層フィルムは、光学フィルムおよび1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を含む光学物体であってよい。硬化性接着剤層も含めて、接着剤層を、光学フィルムとノルボルネン系環状オレフィン層との間に存在させることができる。硬化性層は、表面コーティング層としてノルボルネン系環状オレフィン層に適用することができる。また別な実施態様においては、本発明は、その上にコーティングした硬化性層を有するノルボルネン系環状オレフィンフィルムを提供する。
【0012】
ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーは、ユニークな材料であって、多くの電子用、光学用、およびディスプレイ用途において将来性を有している。それらは、光学的に透明、明澄であり、耐光安定性を有し、複屈折性が極めて低い。それらはさらに、寸法安定性を有している(すなわち、たとえば、約100〜160℃の範囲のガラス転移温度、高剛性、および極めて低吸湿性である)。しかしながら、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーにおける制約は、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーと他の材料との間に接着性を発生させるのが困難なことであった。
【0013】
光学フィルムに適用したノルボルネン系環状オレフィン層は、光学フィルムに寸法安定性と反り抵抗性を与える。ノルボルネン系環状オレフィン層は可撓性があるが、それでもなお、充分な安定性を与える。形成される光学物体は典型的には可撓性であって、その光学物体を典型的な取扱い設備を用いて可能することができ、脆さがない。この点に関しては、光学物体の中に1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を加えることによって、その光学物体の中で「しわ」や起伏が起きにくくなるが、その一方で、その光学物体の取扱いや貯蔵(たとえばロールの上に保存することによって)は依然として容易である。光学物体の中に1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を加えることによってさらに、極端な温度範囲、特に高温や高湿度条件下においても、その光学物体の劣化に対する抵抗性が加わる。光学物体の中に1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を加えることによって、典型的には、−35℃から85℃までの温度に2時間ずつ、合計192時間の繰り返しサイクル試験を行っても、光学物体に顕著な劣化が認められなくなる。それらのサイクル試験は、LCDディスプレイまたはその他のデバイスにおける、予想される使用条件下での長期間安定性の指標となるように設計されている。
【0014】
寸法安定性および反り抵抗性を改良するために、1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を光学フィルムに適用することができる。ノルボルネン系環状オレフィン層は、光拡散体として、吸収型偏光子のための保護フィルムとして、および補償フィルムとしての、液晶ディスプレイにおける光学フィルムにおいて有用である。ノルボルネン系環状オレフィン層は、光学フィルムのそれぞれの主面(すなわち、両方の面または側)に加えることができるだけではなく、片側の主面だけ(すなわち、一方の側)に置いてもよい。
【0015】
さらに、ノルボルネン系環状オレフィン層は、その上に硬化性表面コーティングを適用する、ベース基材としても役立つ。その硬化性表面コーティングはさらに、硬化プロセスに関連して、表面模様をつけたり、構造化されていたりしてもよい。構造化表面を有するある種の光学的製品が、米国特許第5,175,030号明細書および米国特許第5,183,597号明細書に記載されている(それらの特許の開示を、参照により本明細書に援用する)。表面模様をつけたり表面を構造化させたりしたフィルムは、バックライト付きフラットパネルディスプレイの輝度を上げるために、多くの電子製品に使用されているが、そのようなものとしてはたとえば、エレクトロルミネセントパネル、ラップトップコンピュータディスプレイ、ワードプロセッサー、デスクトップモニター、テレビ、ビデオカメラ、さらには自動車用および航空用ディスプレイなどに使用される液晶ディスプレイ(LCD)が挙げられる。
【0016】
表面模様をつけたり表面を構造化させたりしたフィルムは、輝度増強フィルムの屈折率(これは、得られる輝度ゲイン(すなわち、「ゲイン」)に関係する)も含めて、特有の光学的および物理的性質を示すのが望ましい。輝度が改良されることによって、その電子製品が、ディスプレイを照明するのにより小さな電力でより効率的に操作できるようになり、それによって電力消費が抑制され、その部品にかかる熱負荷が小さくなり、その製品の寿命を延ばすことが可能となる。
【0017】
本発明の開示はさらに、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーと他の材料との間の接着性が改良された、1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を含む多層フィルムを形成させるための方法も提供する。ノルボルネン系環状オレフィンを共押出しすることなく、硬化性層をノルボルネン系環状オレフィンフィルムおよび/または少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層を有する多層フィルムに適用するための方法もまた記載される。
【0018】
本発明の開示の方法においては、ノルボルネン系環状オレフィン層は、硬化性物質をコーティングおよび硬化させる前に、またいくつかの例示的実施態様においては、硬化性物質をコーティングおよび硬化させる直前または少し前に、コロナ処理する。コロナ処理は、硬化性物質のコーティングおよび、場合によってはさらに硬化と共に、インラインで実施してもよく、たとえば、コロナ処理を硬化性物質をコーティングする直前に実施する。別な実施態様においては、コロナ処理の後、いくらかの時間をおいて、硬化性物質のコーティングを実施する。これらの方法は、典型的な硬化プロセス、表面の模様付けプロセスまたは表面構造化プロセスと共にインラインで組み合わせることもできる。いくつかの例示的実施態様においては、本発明の開示に従う光学フィルムのコロナ処理を、各種適切な接着剤のコーティングおよび他の光学フィルムへの積層と共にインラインで実施してもよい。それらの方法は、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーと硬化性物質、あるいはその他各種好適な接着剤または物質との間の接着性を改良する。
【0019】
本発明の開示のフィルムの表面処理には、空気または窒素のコロナ放電が含まれる。コロナ放電処理の深さは比較的浅く、典型的には処理した表面から内側の10nm未満に作用し、そのため、処理した基材の光学的性質には悪影響が出ない。
【0020】
本発明の開示には、空気または窒素を使用してコロナ処理をするための方法が記載されている。ガスの選択によって通常は、得られる表面の化学構造に影響があるので、用途に応じて選択する。さらに、その表面の化学構造は、動的であり、時間依存性がある。硬化性物質がインラインで適用され、それに続けてフィルム加工工程(たとえば、コロナ処理の直後または少し後に硬化性物質がコーティングされるような工程)があるならば、空気または窒素を用いたコロナ処理によって、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムと硬化性物質との接着性が改良される。
【0021】
寸法安定性および反り抵抗性を改良するために、1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を光学フィルムに適用することができる。ノルボルネン系環状オレフィン層は、LCDディスプレイのための好適な光学フィルムで有用であって、そのようなものとしては、たとえば多層反射板、反射型偏光子、ディフューザー/プレート・アプリケーション(diffusers/plate applications)、吸収型偏光子のための保護フィルム、および補償フィルムなどが挙げられる。
【0022】
ここで図1〜図6を参照するが、これらは、本発明の開示の多層フィルムおよび光学物体の各種一般的な実施態様を示している。光学物体とは、光学フィルムを含む多層フィルムである。図1においては、多層フィルム10には、ノルボルネン系環状オレフィン層14、および硬化性表面層18が含まれている。硬化性表面層18には、場合によっては表面模様がつけられる。
【0023】
図2においては、光学物体20には、光学フィルム12、ノルボルネン系環状オレフィン層14、および接着剤層16が含まれている。図2に示された例における3層は、最も厚い層がノルボルネン系環状オレフィン層14であり、その次の厚みのものが光学フィルム12、そして接着剤層16である。しかしながら、それらの層は、図2に示したものとは相対的に異なった厚みを有するように構成されていてもよい。したがって場合によっては、光学フィルム12の方がノルボルネン系環状オレフィン層14よりも厚いこともあり得る。
【0024】
図3には、本発明の開示のさらなる態様の、1層の光学フィルム12と2層のノルボルネン系環状オレフィン層14とを有する光学物体22を示している。光学物体2は、2層の接着剤層16をさらに含む。
【0025】
図4においては、光学物体24には、光学フィルム12、接着剤層16、ノルボルネン系環状オレフィンフィルム14および硬化性層18が含まれる。図5には、1層の光学フィルム12、2層の接着剤層16、2層のノルボルネン系環状オレフィン層14、および硬化性層18を有する光学物体26が示されている。図6には、光学フィルム12がその二つの主面それぞれの上に、接着剤層16、ノルボルネン系環状オレフィンフィルム14および硬化性層18を有する光学物体28が示されている。
【0026】
図7には、光学フィルム12、接着剤層16、ノルボルネン系環状オレフィンフィルム14、および2層の硬化性層18を含む、光学物体84が示されている。光学物体84においては、光学フィルム12の一つの面の上に、接着剤層16を用いてノルボルネン系環状オレフィンフィルム14が配されている。1層の硬化性層18が、ノルボルネン系環状オレフィンフィルム14の外側表面の上に配されている。第二の硬化性層18が、ノルボルネン系環状オレフィンフィルム14の反対側の面の上の光学フィルム12の上に配されている。ある実施態様においては、接着剤層16は硬化性物質から形成される。
【0027】
図8には、光学フィルム12、接着剤層16、ノルボルネン系環状オレフィン層14、および2層の硬化性層18を有する、光学物体86が示されている。光学物体86においては、接着剤層16を有するノルボルネン系環状オレフィン層14が、光学フィルム14の一方の面の上に配され、その一方で、第一の硬化性層18が光学フィルム14の他の面の上に配されている。第二の硬化性層が、ノルボルネン系環状オレフィン層14の外側表面の上に配されている。ある実施態様においては、接着剤層16は硬化性物質から形成される。
【0028】
これら各種の成分、ならびに1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を含む多層フィルム、たとえば本発明に開示の光学物体を製造するための方法を以下に記す。
【0029】
「ポリマー」という用語には、ホモポリマーおよびコポリマー、さらにはたとえば共押出し法によるか、あるいはたとえばエステル交換反応を含む反応による混和性ブレンドに成形することが可能な、ポリマーまたはコポリマーが含まれると理解されたい。「ポリマー」、「コポリマー」および「コポリエステル」という用語には、ランダムおよびブロックコポリマーも含まれる。
【0030】
「フィルム」という用語は一般に、単一層および多層のポリマー固形物または仕上げた成形物を指すのに使用される。しかしながら、「フィルム」という用語を使用したからといって、追加の層や追加のプロセスを適用することを禁じている訳ではない。「層」という用語は、多層フィルムの構成部分、所望の最終形態に達する前の物質、さらには本発明の開示の範囲内の構造物の固形で仕上げた形態、を指している。単一層または多層構造は、フィルムとしての構造を指していてもよい。本発明の開示に記載される物質および方法は、フィルムおよび層に均等に適用される。
【0031】
ノルボルネン系環状オレフィンフィルムおよび層
ノルボルネン系環状オレフィン層には、1種または複数のポリマーがノルボルネンまたはノルボルネン誘導体を含む、ノルボルネン系ポリマー、たとえばポリマー、コポリマーおよびポリマーブレンドが含まれる。層(一般的に、多層フィルムの中または上の1層または複数の層)について記載される性質は、フィルム(追加の物質の存否にかかわらず、独立したノルボルネン系環状オレフィン層)に対しても適用される。一般的には、ノルボルネン系環状オレフィン層は、ノルボルネン系コポリマーを含むコ−ポリマーである。本明細書の文脈においては、「コポリマー」という用語には、2種以上の異なったモノマー単位を有するポリマーが含まれる。ノルボルネン系コポリマーのためのモノマーの例としては次のようなものが挙げられる:ノルボルネン、2−ノルボルネン(たとえば、エチレンとジシクロペンタジエンを反応させて得られるもの)、およびそれらの誘導体で、それらがオレフィンたとえばエチレンと共に重合される。ジシクロペンタジエンまたは関連の化合物をベースとする開環ポリマーもまた使用することができる。ノルボルネン誘導体としては、アルキル、アルキリデン、芳香族置換誘導体、さらにはハロゲン、ヒドロキシ、エステル、アルコキシ、シアノ、アミド、イミド、およびシリル置換誘導体などが挙げられる。
【0032】
ノルボルネン系コポリマーを形成させるのに使用可能なモノマーの例としては、以下のようなものが挙げられる:2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、および5−フェニル−2−ノルボルネン。シクロペンタジエン、その誘導体たとえば、ジシクロペンタジエン、および2,3,−ジヒドロシクロペンタジエンのポリマーもまたそれらの例である。
【0033】
市販されているノルボルネン系コポリマーブレンドとしては以下のものが挙げられる:トパス(Topas,登録商標)、ランダムエチレンノルボルネンコポリマー、ニュージャージー州サミット(Summit,NJ)のチコナ(Ticona)から入手可能;ゼオノア(Zeonor,登録商標)、アリサイクリックシクロオレフィンコポリマー、ケンタッキー州ルイビル(Louisville,KY)のゼオン・ケミカルズ(Zeon Chemicals)から入手可能;アペル(Apel,登録商標)、ランダムエチレンノルボルネンコポリマー、日本国東京(Tokyo,Japan)の三井化学(株)(Mitsui Chemicals,Inc.)から入手可能;およびアートン(Arton,登録商標)、日本(Japan)のJSR(株)(JSR Corporation)から入手可能。コ−ポリマーのノルボルネン成分を増やしていくと、ガラス転移温度、Tgが上昇する。高いTgと低いTgを有する異なったグレードのノルボルネン系コポリマーをブレンドして複合Tgを調節すると、特に有用であることが見出された。
【0034】
ノルボルネン系環状オレフィン層のポリマー組成を選択して、少なくとも約−35℃〜85℃の温度において実質的に安定であるようにするのが好ましい。ノルボルネン系環状オレフィン層は一般に可撓性ではあるが、−35℃〜85℃の温度範囲では、その長さまたは幅が顕著に膨張することはない。
【0035】
ノルボルネン系環状オレフィン層には典型的には、主成分として、80〜200℃、より典型的には100〜160℃のTgを示すノルボルネン系環状オレフィンコポリマー物質が含まれる。いくつかの実施態様においては、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーを選択して、押出し成形が可能で、高温で加工した後でも透明性を維持するようにする。ノルボルネン系環状オレフィンフィルムまたは層は通常、透明または実質的に透明である。
【0036】
トパス(Topas,登録商標)ポリマーの各種のブレンドを調製し、動的機械分析によって評価した。それらを表1に示す。それぞれのサンプルについて、0.1ヘルツの変調周波数で0℃から180℃までスキャンして、温度の関数としてのモジュラスとTgを求めた。それらのノルボルネン系コポリマーブレンドの組成と物理的性質を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
製造時に表面模様を付与するようにして、ノルボルネン系環状オレフィン層を成形することも可能である。付与された表面模様は、艶消し表面または粗表面を形成することによって、ノルボルネン系環状オレフィン層に光拡散性を与えることができる。付与された表面模様はさらに、ノルボルネン系環状オレフィン層の表面に粗さを与えてそのフィルムの摩擦係数を低下させ、それによって、そのフィルムがガラスまたは他の硬質フィルムのような隣接する表面に粘着したりカップリングしたりする傾向を抑制することができる。
【0039】
ノルボルネン系環状オレフィン層の厚みは、用途に応じて変化させることができる。しかしながら、ノルボルネン系環状オレフィン層の厚みは典型的には、0.1〜10ミル(約2〜250マイクロメートル)である。
【0040】
追加の硬化性層
いくつかの例示的実施態様においては、追加の硬化性層を、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムに適用するか、または多層フィルムまたは光学物体の1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層に適用する。その硬化性層には、硬化性物質が含まれていて、それらには通常、前駆体ポリマーのサブユニットが含まれる。硬化性物質を選択して、その硬化性層が接触するノルボルネン系環状オレフィン層および/または各種他の層たとえば光学フィルムに適合するようにする。前駆体ポリマーのサブユニットを含む硬化性物質は、充分な流動性を有しているために、表面をコーティングすることが可能である。前駆体ポリマーのサブユニットを含む硬化性物質の固化は、硬化(たとえば、重合および/または架橋)により達成される。硬化に関連するさらなるプロセス、たとえば乾燥(たとえば、液状物の乾燥除去)および/または冷却もまた適用することができる。
【0041】
前駆体ポリマーのサブユニット
前駆体ポリマーのサブユニットは、放射線エネルギー硬化が可能なポリマーサブユニット(たとえば、モノマー)であるか、またはポリマー(たとえば、樹脂)であるのが好ましい。前駆体ポリマーのサブユニットも含めて、放射線エネルギー硬化性物質は、熱および/またはその他のエネルギー源、たとえば電子ビーム、紫外光線、可視光線などに暴露されると重合および/または架橋することが可能である。化学的な触媒、湿分、またはその他の反応剤を、エネルギー源への暴露と組み合わせて、モノマーを重合させたりおよび/またはポリマーを架橋させたりしてもよい。
【0042】
前駆体ポリマーのサブユニットは、有機溶媒系であっても、水系であっても、あるいは100%固形分(すなわち、実質的に溶媒を含まない)組成物であってもよい。硬化性層は、モノマー、オリゴマー、ポリマー、またはそれらの組合せを含んでいてもよい、溶液としてコーティングする。熱可塑性ポリマーおよび/または熱硬化性ポリマーのいずれも、さらにはそれらの組合せを、前駆体ポリマーのサブユニットとして使用することができる。前駆体ポリマーのサブユニットを硬化させると、その硬化性サブユニットが転換されて硬化ポリマー層となる。好適な前駆体ポリマーのサブユニットは、縮合硬化性、フリーラジカル硬化性、あるいは付加重合性のいずれであってもよい。付加重合性物質は、エチレン性不飽和モノマーおよび/またはオリゴマーであってよい。使用可能な架橋性物質の例としては、以下のようなものが挙げられる:フェノール樹脂、ビスマレイミドバインダー、ビニルエーテル樹脂、ペンダントしたアルファ、ベータ不飽和カルボニル基を有するアミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、アクリレート化イソシアヌレート樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、イソシアヌレート樹脂、アクリレート化ウレタン樹脂、アクリレート化エポキシ樹脂、またはそれらの混合物。
【0043】
前駆体ポリマーのサブユニットの例としては以下のようなものが挙げられる:アミノポリマーまたはアミノプラストポリマーたとえば、アルキル化尿素−ホルムアルデヒドポリマー、メラミン−ホルムアルデヒドポリマー、およびアルキル化ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒドポリマー、アクリレートポリマーたとえば、アクリレートおよび(メタ)アクリレート、アルキルアクリレート、アクリレート化エポキシ、アクリレート化ウレタン、アクリレート化ポリエステル、アクリレート化ポリエーテル、ビニルエーテル、アクリレート化オイル、およびアクリレート化シリコーン、アルキドポリマーたとえば、ウレタンアルキドポリマー、ポリエステルポリマー、反応性ウレタンポリマー、フェノール性ポリマーたとえばレゾールおよびノボラックポリマー、フェノール性ラテックスポリマー、エポキシポリマーたとえばビスフェノールエポキシポリマー、イソシアネート、イソシアヌレート、ポリシロキサンポリマーたとえばアルキルアルコキシシランポリマー、または反応性ビニルポリマー。
【0044】
好適な硬化性物質は、フリーラジカル硬化が可能な前駆体ポリマーのサブユニットから得られるものである。それらの前駆体ポリマーのサブユニットは、熱エネルギーおよび/または放射線エネルギーに暴露させると迅速に重合することができる(たとえば、光重合性)。フリーラジカル硬化が可能な前駆体ポリマーのサブユニットの一つの好適なサブセットとしては、エチレン性不飽和前駆体ポリマーのサブユニットが挙げられる。そのようなエチレン性不飽和前駆体ポリマーのサブユニットの例を挙げれば以下のようなものがある:ペンダントしたアルファ、ベータ不飽和カルボニル基を有するアミノプラストモノマーまたはオリゴマー、エチレン性不飽和モノマーまたはオリゴマー、アクリレート化イソシアヌレートモノマー、アクリレート化ウレタンオリゴマー、アクリレート化エポキシモノマーまたはオリゴマー、エチレン性不飽和モノマーまたは希釈剤、アクリレート分散体、およびそれらの混合物。「(メタ)アクリレート」という用語には、アクリレートとメタクリレートの両方が含まれる。
【0045】
エチレン性不飽和前駆体ポリマーのサブユニットには、炭素、水素および酸素、さらに場合によっては窒素およびハロゲンの原子を含む、モノマー性およびポリマー性の両方の化合物が含まれる。一般的には酸素もしくは窒素原子、またはその両方がエーテル、エステル、ウレタン、アミド、および尿素基として存在している。それらのエチレン性不飽和モノマーは、単官能、2官能、3官能、4官能またはそれ以上の官能性であってよく、(メタ)アクリレート系のモノマーも含まれる。好適なエチレン性不飽和化合物は、脂肪族モノヒドロキシ基または脂肪族ポリドロキシ基を含む化合物と、不飽和カルボン酸、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、またはマレイン酸との反応で得られるエステルであるのが好ましい。
【0046】
エチレン性不飽和モノマーの代表例を以下に挙げる:(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、スチレン、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸カプロラクトン、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルトルエン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート。その他のエチレン性不飽和物質としては、カルボン酸のモノアリル、ポリアリル、またはポリメタアリルエステル、およびアミド、たとえばフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、またはN,N−ジアリルアジパミドが挙げられる。さらなる例としては、ビニルカプロラクタムのホモポリマーおよびコポリマー、エチルオキサゾリンホモポリマー、ビニルピロリドンコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、(たとえば、ペンダントした)窒素含有残基を含む(メタ)アクリレートポリマー、ならびにおよびそれらの混合物などが挙げられる。さらにその他の窒素含有エチレン性不飽和モノマーとしては、トリス(2−アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリ(2−メタクリルオキシエチル)−s−トリアジン、アクリルアミド、メチルアクリルアミド、N−メチル−アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、またはN−ビニル−ピペリドンなどが挙げられる。
【0047】
その他の好適な前駆体ポリマーのサブユニットは、エチレン性不飽和オリゴマーおよびモノマーのブレンドである。たとえば、前駆体ポリマーのサブユニットには、アクリレート官能性ウレタン、1種または複数の単官能アクリレートモノマー、およびテトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸との反応生成物から形成されるオリゴマーのブレンドが含まれていてもよい。その他の有用なブレンドには、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸との反応生成物から形成されるオリゴマー、多官能アクリレート、および反応性希釈剤が含まれていてもよい。その他有用なブレンドには、多官能アクリレート、反応性希釈剤、および単官能臭素化モノマーが含まれていてもよい。一般に、高屈折率樹脂からは、高いゲインのフィルムが得られる。上述のブレンドの許容される範囲としては、1.50を超える、未硬化での屈折率が得られるようにすべきである。
【0048】
バルクオリゴマー
適切なゲインを有する硬化性層を得るためには、その硬化性層がそれらの前駆体ポリマーのサブユニット、特にテトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸との反応混合物の一つだけからなっているのが好ましい。たとえば、適切な前駆体ポリマー性サブユニットは、ジョージア州スマーナ(Smyrna,GA)のUCB・コーポレーション(UCB Corporation)から商品名RDX−51027として得ることができる。その物質には、主成分として2−プロペン酸、(1−メチルエチリデン)ビス[(2,6−ジブロモ−4,1−フェニレン)オキシ(2−ヒドロキシ−3,1−プロパンジイル)]エステルを含んでいる。
【0049】
第一のモノマーは、重合性組成物の中に、少なくとも約15重量%(たとえば、20重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、および50重量%、およびそれらの間の任意の量)の量で存在させるのが好ましい。典型的には、第一のモノマーの量は約65重量%を超えない。
【0050】
架橋剤
本発明の開示の硬化性物質にはさらに、少なくとも1種、好ましくは1種だけの架橋剤が含まれる。多官能モノマーを架橋剤として使用して、硬化性物質を重合させて得られる硬化されたポリマー層のTgを上昇させることができる。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)、変調DSC、または動的機械分析のような、当業者公知の方法により測定することができる。ポリマー組成物を充分に架橋させて、45℃より高いガラス転移温度とするのが好ましい。その架橋剤には、少なくとも3個の(メタ)アクリレート官能基が含まれる。メタクリレート基の方がアクリレート基よりも反応性が低い傾向を有するので、架橋剤には3個以上のアクリレート基を含んでいるのが好ましい。好適な架橋剤としてはたとえば以下のようなものが挙げられる:ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタクリレート)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、およびジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート。これらの架橋剤のいずれか1種または組合せを使用することができる。
【0051】
架橋剤は、重合性組成物中に、少なくとも約2重量%の量で存在させるのが好ましい。典型的には、架橋剤の量は約50重量%以下である。架橋剤は、約5重量%〜約25重量%の範囲の量で存在させるのがよい。
【0052】
好適な架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物などが挙げられる。より好ましい(1種または複数の)架橋剤は、メタクリレート官能基を含まない。ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)およびジペンタエリスリトールペンタアクリレートは市販されていて、たとえば、ペンシルバニア州エクストン(Exton,PA)のサルトマー・カンパニー(Sartomer Company)からの商品名、それぞれSR444およびSR399LV;日本国大阪(Osaka,Japan)の大阪有機化学工業(株)(Osaka Organic Chemical Industry,Ltd.)からの商品名ビスコート(Viscoat)#300;日本国東京(Tokyo,Japan)の東亞合成(株)(Toagosei Co.,Ltd.)からの商品名アロニックス(Aronix)M−305;および台湾の高雄(Kaohsiung,Taiwan)の長興化学工業(Eternal Chemical Co.,Ltd.)からの商品名エターマー(Etermer)235などが挙げられる。トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)およびジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(di−TMPTA)は、サルトマー・カンパニー(Sartomer Company)から商品名SR351およびSR355として市販されている。TMPTAはさらに、東亞合成(株)(Toagosei Co.,Ltd.)から商品名アロニックス(Aronix)M−309として入手可能である。さらに、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートおよびエトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリレートが、サルトマー(Sartomer)からそれぞれ商品名SR454およびSR494として市販されている。
【0053】
反応性希釈剤
硬化性物質には、場合によっては、約35重量%まで(たとえば、1〜35までの範囲の整数の)反応性希釈剤をさらに含んでいて、その硬化性物質の粘度を低下させて、その加工性を改良している。反応性希釈剤は、典型的には1.50より高い屈折率を有する、モノ−またはジ−官能性の(メタ)アクリレート官能性モノマーである。そのような反応性希釈剤は典型的には、ハロゲン化されていない(たとえば、非臭素化)。好適な反応性希釈剤としては、たとえば、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシ−2−メチルエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸4−(1−メチル−1−フェネチル)フェノキシエチル、および(メタ)アクリル酸フェニルチオエチルなどが挙げられる。
【0054】
製造を容易にするためには、1種だけの希釈剤を加えるのが好ましい。好適な希釈剤は、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、特にアクリル酸フェノキシエチル(PEA)である。アクリル酸フェノキシエチルは、2カ所以上のメーカーから市販されているが、たとえば、サルトマー(Sartomer)からは商品名SR339として;長興化学工業(Eternal Chemical Co.,Ltd.)からは商品名エターマー(Etermer)210として;そして、東亞合成(株)(Toagosei Co.,Ltd.)からは商品名TO−1166として販売されている。アクリル酸ベンジルは、マサチューセッツ州ワード・ヒル(Ward Hill,MA)のアルファアエサル・コーポレーション(AlfaAesar Corp.)から市販されている。場合によっては、ハロゲン化モノマーまたはウレタンアクリレートモノマーを加えるのが好ましいこともある。
【0055】
重合開始剤
エチレン性不飽和モノマーおよびオリゴマーを含む前駆体ポリマーのサブユニットを含む硬化性物質にさらに、重合開始剤を加えるのがよい。それらの例としては、有機過酸化物、アゾ化合物、キノン、ニトロソ化合物、アシルハライド、ヒドラゾン、メルカプト化合物、ピリリウム化合物、イミダゾール、クロロトリアジン、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ジケトン、フェノンまたはそれらの混合物などが挙げられる。市販されている好適な紫外線活性化および可視光線活性化光重合開始剤の例としては以下のようなものが挙げられる:ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から市販されている商品名、イルガキュア(IRGACURE)651(登録商標)、イルガキュア(IRGACURE)184(登録商標)、イルガキュア(IRGACURE)369(登録商標)、イルガキュア(IRGACURE)819(登録商標)、ダロキュア(DAROCUR)4265(登録商標)およびダロキュア(DAROCUR)1173(登録商標)、ならびにビー・エー・エス・エフ(BASF)(ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte,NC))から市販されている、ルシリン(LUCIRIN)TPO(登録商標)およびルシリン(LUCIRIN)TPO−L(登録商標)。好適な可視光線活性化重合開始剤の例は、米国特許第4,735,632号明細書(オックスマン(Oxman)ら)および米国特許第5,674,122号明細書(キウン(Kiun)ら)に記載がある。
【0056】
好適な重合開始剤系には、光増感剤が含まれていてもよい。代表的な光増感剤は、カルボニル基または三級アミノ基またはそれらの混合物を有していてよい。カルボニル基を有する好適な光増感剤は、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンジル、ベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、キサントン、チオキサントン、9,10−アントラキノン、またはその他の芳香族ケトンである。三級アミンを有する好適な光増感剤は、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、フェニルメチル−エタノールアミン、またはジメチルアミノエチルベンゾエートである。市販されている光増感剤には、ビッドル・ソーヤー・コーポレーション(Biddle Sawyer Corp.)からの、クオンティキュア(QUANTICURE)ITX(登録商標)、クオンティキュア(QUANTICURE)QTX(登録商標)、クオンティキュア(QUANTICURE)PTX(登録商標)、クオンティキュア(QUANTICURE)EPD(登録商標)などがある。
【0057】
一般的に、光増感剤または光重合開始剤系の量は、約0.01〜10重量%の間で変化させてよい。
【0058】
硬化性物質がエポキシまたはビニルエーテルベースの場合には、カチオン性重合開始剤を使用して重合を開始させてもよい。カチオン性重合開始剤の例としては、オニウムカチオンの塩、たとえばアリールスルホニウム塩、さらには有機金属塩たとえばイオンアレーン系などが挙げられる。その他の例が、米国特許第4,751,138号明細書(チューメイ(Tumey)ら);米国特許第5,256,170号明細書(ハーマー(Harmer)ら);米国特許第4,985,340号明細書(パラゾット(Palazotto));および米国特許第4,950,696号明細書に報告されている(これらの特許すべてを、参照により本明細書に援用する)。
【0059】
デュアルキュアおよびハイブリッドキュア光重合開始剤系もまた使用することができる。デュアルキュア光開始剤系においては、硬化または重合は、同一または別の反応メカニズムのいずれかで、2段の別のステップで起きる。ハイブリッドキュア光重合開始剤系においては、紫外線/可視光線、もしくは電子ビームの照射に暴露させることによって、同時に2種の硬化メカニズムが起きる。
【0060】
追加成分
光学フィルムにおいて使用するために、以下に記すコモノマーなど、さらなる各種の化合物を硬化性層の組成物に添加することが可能である。追加成分としては、濡れ剤、光重合開始剤、熱重合開始剤、触媒、活性化剤、架橋剤などが挙げられ、加工性、層形成、および他の層への接着性の改良のために添加することができる。硬化性層に加えるその他の添加剤としては、光安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、UV安定剤、近赤外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、染料、着色剤、および顔料が挙げられる。
【0061】
例示的実施態様においては、硬化性層へのさらなる添加剤としては、充填剤および無機粒子、たとえば無機酸化物粒子たとえば、シリカ、セリア、チタニア、アルミナ、およびジルコニアなどが挙げられる。たとえば、硬化性層を、ジルコニアまたはシリカを充填した硬化性樹脂から形成させることができる。充填剤粒子は各種の大きさと形状であってよく、たとえば1nm〜20ミクロンである。特に、充填剤粒子がナノ粒子であればよい。充填剤粒子は、非晶質であっても、結晶質であっても、あるいは半晶質であってもよい。それらの充填剤粒子はさらに、硬化性樹脂との混和性を改質するための、有機または無機表面処理を用いた表面改質をされていてもよい。充填剤粒子を、上述のような樹脂、特に高屈折率樹脂のブレンドと組み合わせて使用する場合には、得られるフィルムまたは硬化性層の屈折率さらにはゲインを改質することができる。たとえば、高屈折率樹脂と組み合わせるシリカナノ粒子は、1.50の未硬化屈折率を与えるべきであり、その一方で、ジルコニアナノ粒子充填樹脂は1.63以上の未硬化屈折率を与えるべきである。
【0062】
表面コーティング層としての硬化性層
硬化性層は、表面(たとえば、コーティング)層として機能させることができる。硬化性層は、ハードコート、ぎらつき防止コーティング、艶消し表面、拡散層、他の隣接するフィルムとのカップリングやウェットアウトを防止するためのアンチフィルムカップリング層、微細構造化光学層、接着剤層、またはそれらの組合せとして機能することができる。別な硬化性層には、たとえば、耐摩耗性またはハードコート材料;光学的コーティングなどが含まれる。さらなる機能層またはコーティングが、たとえば米国特許第6,352,761号明細書、ならびに国際公開第97/01440号パンフレット、国際公開第99/36262号パンフレット、および国際公開第99/36248号パンフレットに記載されている(これらの特許を、参照により本明細書に援用する)。これらの官能性成分は、1層または複数の硬化性層の中に組み入れてもよいし、あるいはそれらを、別のフィルムまたはコーティングの中に硬化性層として適用してもよい。
【0063】
表面模様または構造
硬化性層はさらに、艶消し表面のような表面模様を有していてもよいし、あるいは表面構造を含んでいてもよい。表面構造には、スリー・エム・カンパニー(3M Company)の輝度増強フィルムに見られるような、各種のプリズム状の微細構造が含まれていてもよい。上述の前駆体ポリマーユニットを硬化性物質において使用して、表面模様または微細構造を有する硬化性層を形成させることが可能である。ある実施態様においては、ノルボルネン系環状オレフィン層の上にコーティングされた硬化性物質が光硬化性物質である。
【0064】
ある実施態様においては、硬化性層が、表面構造、たとえば輝度増強フィルムのそれに類似した直線的なプリズム状の構造を有する層である。表面構造化させた層のための硬化性物質は、高屈折率オリゴマー、多官能架橋剤、および反応性希釈剤を含むことができる。一実施態様においては、その硬化性物質には、エチレン性不飽和モノマー、エチレン性不飽和オリゴマー、またはそれらのブレンドが含まれ、ここでその未硬化物質は1.50よりも高い屈折率を有している。一実施態様においては、表面構造化層のための硬化性物質には、高屈折率オリゴマー、ウレタンアクリレート、反応性希釈剤、および高屈折率モノマーを含むことができる。
【0065】
「屈折率(index of refractionまたはrefractive index)」は、物質(たとえば、モノマー)の絶対屈折率を指していて、これは、自由空間中の電磁放射線の速度の、その物質中における電磁放射線の速度に対する比率と理解されたい。屈折率は、公知の方法を用いて測定することが可能で、一般的には、可視光線領域においてアッベ屈折計(たとえば、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburg,PA)のフィッシャー・インスツルメンツ(Fisher Instruments)から市販されている)を用いて測定する。一般に認められていることであるが、測定される屈折率の値は、装置に依存してある程度変化する可能性がある。
【0066】
また別な実施態様においては、硬化性物質にはさらに、テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物が含まれる。さらなる実施態様においては、エチレン性不飽和モノマーが多官能アクリレートである。その物質が、実質的にメタクリレート官能性を有していないのが好ましい。その多官能アクリレートは、トリメチロールプロパントリアクリレートとすることができる。さらなる実施態様においては、その硬化性物質にはさらに、アクリル酸2−フェノキシエチルまたはアクリル酸トリブロモフェノキシエチルが含まれる。
【0067】
上述の前駆体ポリマーのサブユニットの混合物を、硬化性物質の中に使用してもよいが、製造を容易にするためには、可能な限り別なモノマーを使用しないのが好ましい。適切なゲインを有する硬化性層を得るためには、その硬化性層がそれらの前駆体ポリマーのサブユニット、特にテトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸との反応混合物の一つだけからなっているのが好ましい。たとえば、適切な前駆体ポリマー性サブユニットは、ジョージア州スマーナ(Smyrna,GA)のUCB・コーポレーション(UCB Corporation)から商品名RDX−51027として得ることができる。その物質は、主成分として2−プロペン酸、(1−メチルエチリデン)ビス[(2,6−ジブロモ−4,1−フェニレン)オキシ(2−ヒドロキシ−3,1−プロパンジイル)]エステルを含んでいる。
【0068】
硬化性接着剤物質
いくつかの実施態様においては、その硬化性層が接着剤層である。それらの実施態様においては、その硬化性物質は硬化性接着剤である。上述の前駆体ポリマーのサブユニットは、硬化性接着剤として使用することが可能である。さらなる実施態様においては、その硬化性接着剤は2種以上のエチレン性不飽和モノマーを含むが、ここで、少なくとも1種のモノマーは窒素を含む。さらなる実施態様においては、その硬化性接着剤に、窒素含有エチレン性不飽和(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和(メタ)アクリレートとを含む。さらに別な実施態様においては、その硬化性接着剤に、窒素含有エチレン性不飽和アクリレートモノマーと窒素を含まないエチレン性不飽和アクリレートモノマーとを含む。たとえば、前駆体ポリマーのサブユニットは、アクリレート官能性ウレタンオリゴマーと1種または複数の単官能アクリレートモノマーとを含む。そのアクリレートモノマーは、5官能アクリレート、4官能アクリレート、3官能アクリレート、2官能アクリレート、単官能アクリレートポリマー、またはそれらの組合せであってよい。
【0069】
具体的には、その硬化性層が接着剤層として機能して、光学フィルムをノルボルネン系環状オレフィン層に接着させることができる。硬化性層が接着剤層として機能する場合、その硬化性物質は、放射線エネルギー硬化性接着剤と呼ばれる。いくつかの実施態様においては、その硬化性層に、接着剤的な性質を有する光硬化性物質が含まれる。
【0070】
ノルボルネン系環状オレフィン層またはフィルムには、上述の1種または複数の硬化性層を用いてコーティングすることができる。
【0071】
光学フィルム
各種の光学フィルムが、本発明の開示に合わせて使用するのに適している。具体的には、配向ポリマー光学フィルムも含めたポリマー光学フィルムが本発明の開示に合わせて使用するのに適しているが、その理由は、それらが時として、温度の変動に暴露させたときに寸法不安定性の問題を起こす可能性があるからである。
【0072】
具体的には、ノルボルネン系環状オレフィン層は、寸法安定性のメリットが得られるポリマーフィルムと共に使用するのに適している。たとえば、いくつかのポリマー光学フィルムは、温度または湿度の変動に暴露されると寸法不安定性を示す可能性がある。その光学フィルムは、典型的には薄い。好適なフィルムとしては、各種の厚みのフィルムが挙げられるが、特に厚み15ミル(約380マイクロメートル)未満の、より典型的には厚み10ミル(約250マイクロメートル)未満の、特には厚み7ミル(約180マイクロメートル)未満のフィルムが挙げられる。
【0073】
その光学フィルムにはポリマー多層光学フィルムが含まれるが、そのようなものとしては、広い帯域幅において高い反射率を有する多層フィルム(全部が複屈折光学層、部分的に複屈折光学層、あるいは全部が等方性光学層のいずれで構成されていてもよい)および連続相/分散相光学フィルムなどが挙げられる。光学フィルムには、偏光子およびミラーも含まれる。一般的に、多層光学フィルムは鏡面反射板であり、連続相/分散相光学フィルムは散乱反射板であるが、それらの特性は普遍的なものではない(たとえば、米国特許第5,867,316号明細書に記載の散乱多層反射型偏光子を参照されたい)。これらの光学フィルムは単に説明のためのものであって、本発明の開示に合わせて有用な好適なポリマー光学フィルムのすべてを網羅していることを意味している訳ではない。
【0074】
多層反射光学フィルムと連続相/分散相反射光学フィルムのいずれもが、少なくとも1種の偏光配向の選択的な反射光に対する、少なくとも2種の異なった物質(好ましくはポリマー)の間の屈折率の違いに依存している。好適な散乱反射型偏光子には、米国特許第5,825,543号明細書(参照により本明細書に援用する)に記載の連続相/分散相光学フィルム、さらには米国特許第5,867,316号明細書(参照により本明細書に援用する)に記載の散乱的反射光学フィルムが含まれる。
【0075】
本発明の開示において使用するのに特に好適な光学フィルムは、たとえば下記の特許に記載されているような多層反射フィルムである:米国特許第5,882,774号明細書および米国特許第6,352,761号明細書、ならびに国際公開第95/17303号パンフレット;国際公開第95/17691号パンフレット;国際公開第95/17692号パンフレット;国際公開第95/17699号パンフレット;国際公開第96/19347号パンフレット;および国際公開第99/36262号パンフレット(これらの特許のすべてを、参照により本明細書に援用する)。そのフィルムは、ブルースター角(Brewster angle)(p偏光の反射率がゼロとなるような角度)が極めて大または存在しない、ポリマー層の多層スタックであるのが好ましい。そのフィルムから、そのp偏光の反射率が、入射角とともに徐々に低下するか、入射角とは独立しているか、あるいは、入射角が法線から離れると同時に増大するような、多層ミラーまたは偏光子が作られる。そのような多層反射型偏光子の形態で市販されているものは、ミネソタ州セント・ポール(St.Paul,Minnesota)のスリー・エム(3M)により、デュアル・ブライトネス・エンハンスト・フィルム(Dual Brightness Inhanced Film、DBEF)として販売されている。本明細書においては、多層反射光学フィルムは、本発明の開示の光学フィルム構造、光学フィルムの製造方法および使用方法を説明するための一例として用いられている。本明細書に記載された、構造、方法および技術は、他のタイプの好適な光学フィルムにも適合させ、応用することが可能である。好適な光学フィルムについてのさらなる説明を以下において提供する。
【0076】
好適な多層反射光学フィルムは、一軸または二軸配向させた複屈折の第一の光学層を第二の光学層と交互に配置する(たとえば、交互にはさみこむ)ことにより作ることができる。いくつかの実施態様においては、その第二の光学層が等方性屈折率(配向層の面内屈折率の一つにほぼ等しい)を有する。二つの異なった光学層の界面は、光反射面を形成する。二つの層の屈折率がほぼ等しい方向に平行な面における偏光は、実質的に透過されるであろう。二つの層が異なった屈折率を有している方向に平行な面における偏光は、少なくとも部分的には反射されるであろう。層の数を増やしたり、第一の層と第二の層との間の屈折率の差を大きくしたりすることにより、反射率を上げることができる。多層光学フィルムは、一般的には約2層〜5000層の光学層、典型的には約25層〜2000層の光学層、多くの場合約50層〜1500層の光学層または約75層〜1000層の光学層を有している。複数の層を有するフィルムに異なった光学的厚さを有する層を持たせることにより、ある範囲の波長におけるフィルムの反射率を高くすることができる。たとえば、フィルムに、(たとえば、通常の入射光に対して)個々にチューニングした対になった層を持たせて、特定の波長を有する光を最適に反射させるようにすることができる。単一の多層スタックについてのみ説明をしているが、次々と組み合わせてフィルムを形成する複数のスタックから多層光学フィルムを製造することも可能である、ということは認識しておかれたい。上述の多層光学フィルムは、米国特許出願第09/229724号明細書、および米国特許出願公開第2001/0013668号明細書に従って製造することができる(これら両方の特許を、参照により本明細書に援用する)。
【0077】
偏光子は、一軸配向させた第一の光学層と、等方性屈折率(その配向層の面内屈折率の一つとほぼ等しい)を有する第二の光学層とを組み合わせることによって、作ることができる。別な方法として、両方の光学層を複屈折ポリマーから形成させ、複数回の延伸プロセスにより配向させて、単一の面内方向における屈折率がほぼ等しくなるようにする。2層の光学層の界面が、光の一つの偏光のための光反射面を形成する。二つの層の屈折率がほぼ等しい方向に平行な面における偏光は、実質的に透過されるであろう。二つの層が異なった屈折率を有している方向に平行な面における偏光は、少なくとも部分的には反射されるであろう。等方性屈折率を有するかまたは低い(たとえば、約0.07以下の)面内複屈折を有する偏光子の場合には、その第二の光学層の面内屈折率(nxおよびny)は、第一の光学層の一つの面内屈折率(たとえば、ny)にほぼ等しい。したがって、第一の光学層の面内複屈折は、その多層光学フィルムの反射率の指標である。典型的には、面内複屈折が高い程、多層光学フィルムの反射率が向上することが判っている。第一および第二の光学層の屈折の面外屈折率(nz)が等しいかあるいはほぼ等しい(たとえば、差が0.1以下、好ましくは0.05以下)である場合、その多層光学フィルムはさらに、より良好な角外(off−angle)反射率を有する。少なくとも一つの一軸複屈折材料を用いてミラーを作ることができるが、この場合、二つの屈折率(典型的にはx軸とy軸方向、あるいは、nxおよびny)はほぼ等しく、第三の屈折率(典型的にはz軸方向、またはnz)が異なっている。x軸とy軸は面内の軸と定義され、この場合、それらは多層フィルムの中の所定の層の面を表しており、それぞれの屈折率nxとnyは面内屈折率と呼ばれる。一軸複屈折系を作る一つの方法は、多層ポリマーフィルムを二軸配向させる(二つの軸方向に延伸させる)ものである。隣接している層が、異なった応力誘導複屈折を有している場合には、多層フィルムの二軸配向によって、両方の軸に平行な面における隣接層の屈折率の間に差が生じ、その結果、両方の偏光面の光の反射が起きる。一軸複屈折材料は、正または負いずれかの一軸複屈折を有する。正の一軸複屈折は、z方向における屈折率(nz)が面内屈折率(nxおよびny)よりも大きいときに起きる。負の一軸複屈折は、z方向における屈折率(nz)が面内屈折率(nxおよびny)よりも小さいときに起きる。n2x=n2y=n2zとなるようにn1zを選択し、その多層フィルムが二軸配向されている場合には、p−偏光のブルースター角は存在せず、そのため、すべての入射角で一定の反射率となる。相互に直交する二つの面内角で配向させた多層フィルムは、層の数、f比、屈折率などに応じて尋常ならぬ高パーセントの入射光を反射させることが可能で、極めて効率の高いミラーである。ミラーは、顕著に異なる面内屈折率を有する一軸配向させた層を組み合わせることによっても作ることができる。
【0078】
第一の光学層が一軸または二軸配向させた複屈折ポリマー層であるのが好ましい。第一の光学層の複屈折ポリマーは、典型的には、延伸させたときに大きな複屈折を与えることが可能であるように選択する。用途に応じて、フィルムの面の二つの直交方向の間、一つまたは複数の面内方向の間およびフィルム面に垂直な方向、あるいはそれらの組合せで、複屈折を起こさせてもよい。第一のポリマーは、延伸の後で複屈折を維持していなければならず、それによって、仕上がりフィルムに所要の光学的性質を付与することができる。第二の光学層が、複屈折性で一軸または二軸配向させたポリマー層であってもよいし、あるいは、第二の光学層が、配向させた後に第一の光学層の少なくとも一つの屈折率とは異なる等方性屈折率を有していてもよい。第二のポリマーが、延伸させたときに複屈折をほとんどまたは全く示さないか、あるいは、逆側の複屈折(正−負、または負−正)を示して、仕上がりフィルムにおいて、そのフィルム面屈折率が第一のポリマーのそれとは可能な限り異なるようになるのが有利である。ほとんどの用途においては、第一のポリマー、第二のポリマーのいずれもが、対象となるフィルムの関心のある帯域幅の中のどの吸光帯をも有していないのが有利である。したがって、その帯域幅の中のすべての入射光は反射されるか、または透過される。しかしながら、いくつかの用途においては、第一および第二のポリマーの一方または両方が、特定の波長を、全部または部分的に吸収することが有用であることもありうる。
【0079】
多層光学フィルムの第一および第二の光学層ならびに任意の非光学層は、たとえば、ポリエステルのようなポリマーからなっている。本発明に開示の多層光学フィルムにおいて使用するポリエステルには一般に、カルボキシレートおよびグリコールサブユニットを含み、カルボキシレートモノマー分子をグリコールモノマー分子と反応させることにより生成させる。それぞれのカルボキシレートモノマー分子は2個以上のカルボン酸または官能基を有しており、それぞれのグリコールモノマー分子は2個以上のヒドロキシ官能基を有している。カルボキシレートモノマー分子はすべて同一であってもよいし、あるいは、2種以上の異なったタイプの分子であってもよい。グリコールモノマー分子についても同様である。「ポリエステル」という用語にはさらに、グリコールモノマー分子を炭酸エステルと反応させて誘導されるポリカーボネートも含まれる。
【0080】
ポリエステル層のカルボキシレートサブユニットを形成するために使用するのに適したカルボキシレートモノマー分子としては、たとえば以下のようなものを挙げることができる:2,6−ナフタレンジカルボン酸およびその異性体;テレフタル酸;イソフタル酸;フタル酸;アゼライン酸;アジピン酸;セバシン酸;ノルボルネンジカルボン酸;ビシクロオクタンジカルボン酸;1,6−シクロヘキサンジカルボン酸およびその異性体;t−ブチルイソフタル酸、トリメリット酸、スルホン化イソフタル酸ナトリウム;2,2'−ビフェニルジカルボン酸およびその異性体;ならびに、それらの酸のアルキルエステルたとえば、メチルまたはエチルエステル。本明細書の文脈においては、「低級アルキル」という用語は、C1〜C10直鎖状または分岐状のアルキル基を指す。
【0081】
ポリエステル層のグリコールサブユニットを形成するために使用するのに適したグリコールモノマー分子としては、以下のようなものを挙げることができる:エチレングリコール;プロピレングリコール;1,4−ブタンジオールおよびその異性体;1,6−ヘキサンジオール;ネオペンチルグリコール;ポリエチレングリコール;ジエチレングリコール;トリシクロデカンジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびその異性体;ノルボルナンジオール;ビシクロオクタンジオール;トリメチロールプロパン;ペンタエリスリトール;1,4−ベンゼンジメタノールおよびその異性体;ビスフェノールA;1,8−ジヒドロキシビフェニルおよびその異性体;ならびに1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン。
【0082】
本発明の開示の光学フィルムにおいて有用な一つのポリエステルはポリエチレンナフタレート(PEN)であって、これはたとえば、ナフタレンジカルボン酸をエチレングリコールと反応させることによって製造することができる。ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)が多くの場合、第一のポリマーとして選択される。PENは、高い正の応力光学係数を有し、延伸後でも効果的に複屈折を維持し、可視領域においてほとんどまたは全く吸光度を持たない。さらにPENは、等方的状態において高い屈折率を有している。波長550nmの偏光させた入射光に対するその屈折率は、偏光面が延伸方向に平行である場合には、約1.64から最高約1.9まで増大する。分子配向を上げると、PENの複屈折も高くなる。分子配向は、その材料をより大きな延伸比で延伸させ、その延伸させた状態に固定維持することにより、上げることができる。第一のポリマーとして好適なその他の半晶質ポリエステルとしては、たとえば、ポリブチレン2,6−ナフタレート(PBN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびそれらのコポリマーなどが挙げられる。
【0083】
第一のポリマーとして有用なさらなる物質は、たとえば以下の特許に記載されている:米国特許第6,352,762号明細書および米国特許第6,498,683明細書、ならびに米国特許出願第09/229724号明細書、米国特許出願第09/232332号明細書、米国特許出願第09/399531号明細書、および米国特許出願第09/444756号明細書(これらの特許を、参照により本明細書に援用する)。第一のポリマーとして有用な一つのポリエステルは、coPENであって、これは、90モル%のナフタレンジカルボン酸ジメチルおよび10モル%のテレフタル酸ジメチルとから誘導されるカルボキシレートサブユニットと、100モル%のエチレングリコールサブユニットから誘導されるグリコールサブユニットを有し、その固有粘度(IV)が0.48dL/gのものである。その屈折率は約1.63である。本明細書においてはこのポリマーを、低融点PEN(90/10)と呼ぶことにする。また別の有用な第一のポリマーは、0.74dL/gの固有粘度を有するPETで、イーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Company)(テネシー州キングスポート(Kingsport,TN))から入手可能なものである。偏光子フィルムを製造するのに、非ポリエステルポリマーもまた有用である。たとえば、ポリエーテルイミドを、ポリエステルたとえばPENおよびcoPENと共に使用して、多層反射ミラーを製造することができる。その他のポリエステル/非ポリエステルの組合せ、たとえばポリエチレンテレフタレートとポリエチレンとを組み合わせたもの(たとえば、ミシガン州ミッドランド(Midland,MI)のダウ・ケミカル・コーポレーション(Dow Chemical Corp.)から商品名エンゲージ(Engage)8200として入手可能なもの)も使用することが可能である。
【0084】
第二のポリマーを選択して、仕上がりフィルムの中で、少なくとも一つの方向でのその屈折率が、第一のポリマーの同じ方向での屈折率とは顕著に異なるようにしなければならない。ポリマー材料は典型的には散乱性、すなわち波長によって屈折率が変動するので、それらの条件は、対象とする特定のスペクトル帯域幅を条件に入れて考えなければならない。上述の説明から、第二のポリマーの選択は、問題としている多層光学フィルムの意図する用途だけではなく、第一のポリマーのために行った選択、さらには加工条件にも依存するということを理解されたい。
【0085】
第二の光学層は、各種の第二のポリマーから製造することができるが、その第二のポリマーは、第一のポリマーと適合するガラス転移温度を有し、第一のポリマーの等方性屈折率と類似の屈折率を有するものである。上述のCoPENポリマー以外の好適なポリマーの例としては、ビニルナフタレン、スチレン、無水マレイン酸、アクリレート、およびメタクリレートのようなモノマーから製造したビニルポリマーおよびコポリマーが挙げられる。そのようなポリマーの例としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレートたとえばポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、およびイソタクチックまたはシンジオタクチックポリスチレンなどが挙げられる。別なポリマーとしては、ポリスルホン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアミド酸(polyamic acid)、およびポリイミドなどのような縮合ポリマーが挙げられる。さらに、第二の光学層は、ポリエステルおよびポリカーボネートのようなポリマーおよびコポリマーから形成させることも可能である。
【0086】
第二のポリマーの例を挙げれば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のホモポリマー、たとえば、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のイネオス・アクリリックス・インコーポレーテッド(Ineos Acrylics Inc.)から商品名CP71およびCP80として入手可能なもの、またはPMMAよりも低いガラス転移温度の、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)などがある。さらなる第二のポリマーとしては、PMMAのコポリマー(coPMMA)たとえば、75重量%のメタクリル酸メチルエステル(MMA)モノマーと25重量%のアクリル酸エチル(EA)モノマーから製造されたcoPMMA(イネオス・アクリリックス・インコーポレーテッド(Ineos Acrylics Inc.)から商品名パースペックス(Perspex)CP63として入手可能)、MMAコモノマー単位とメタクリル酸n−ブチル(nBMA)コモノマー単位とから形成されたcoPMMA、または、PMMAとポリフッ化ビニリデン(PVDF)とのブレンドたとえば、テキサス州ヒューストン(Houston,TX)のソルベイ・ポリマーズ・インコーポレーテッド(Solvay Polymers,Inc.)から商品名ソーレフ(Solef)1008として入手可能なものなどが挙げられる。
【0087】
さらにその他の第二のポリマーを挙げれば次のようなものがある:ポリオレフィンコポリマーたとえば、ポリ(エチレン−コ−オクテン)(PE−PO)で、ダウ・デュポン・エラストマーズ(Dow−Dupont Elastomers)から商品名エンゲージ(Engage)8200として入手可能なもの;ポリ(プロピレン−コ−エチレン)(PPPE)で、テキサス州ダラス(Dallas,TX)のフィナ・オイル・アンド・ケミカル・カンパニー(Fina Oil and chemical Co.)から商品名Z9470として入手可能なもの、およびアタクチックポリプロピレン(aPP)とイソタクチックポリプロピレン(iPP)とのコポリマーであって、ユタ州ソルト・レーク・シティ(Salt Lake City,UT)のハンツマン・ケミカル・コーポレーション(Huntsman Chemical Corp.)から商品名レックスフレックス(Rexflex)W111として入手可能なもの。第二の光学層は、官能化ポリオレフィン、たとえば線状低密度ポリエチレン−g−無水マレイン酸(LLDPE−g−MA)、たとえばデラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー・インコーポレーテッド(E.I.DuPont de Nemours and Co.,Inc.)から商品名バイネル(Bynel)4105として入手可能なものから作ることもできる。
【0088】
偏光子の場合の層の特に好適な組合せとしては、PEN/co−PEN、ポリエチレンテレフタレート(PET)/co−PEN、PEN/sPS、PET/sPS、PEN/イースター(Eastar)、およびPET/イースター(Eastar)が挙げられるが、ここで「co−PEN」はナフタレンジカルボン酸をベースとするコポリマーまたはブレンド(上述)を指し、イースター(Eastar)はイーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Co.)から市販されているポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートである。
【0089】
ミラーの場合の層の特に好適な組合せとしては、PET/PMMAもしくはPET/coPMMA、PEN/PMMAもしくはPEN/coPMMA、PET/エクデル(ECDEL)、PEN/エクデル(ECDEL)、PEN/sPS、PEN/THV、PEN/co−PET、およびPET/sPSが挙げられるが、ここで「co−PET」は、テレフタル酸をベースとするコポリマーまたはブレンド(上述)を指し、エクデル(ECDEL)はイーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Co.)から市販されている熱可塑性ポリエステルであり、そしてTHVはスリー・エム・カンパニー(3M Co.)から市販されているフルオロポリマーである。PMMAはポリメタクリル酸メチルを指し、PETGは、第二のグリコール(通常はシクロヘキサンジメタノール)を採用したPETのコポリマーを指している。sPSはシンジオタクチックポリスチレンのことを指す。
【0090】
いくつかの実施態様においては、光学フィルムの外側表面(主面)の一方または両方が、ポリエステルコポリマー、たとえば上述のCo−PENであるのが好ましい。
【0091】
方法A
ノルボルネン系環状オレフィンの上にコーティングされた追加の表面層
本発明の開示の一つの態様は、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムの上、または多層フィルムのノルボルネン系環状オレフィン層の上に、硬化性層を形成させるための方法である。この方法では、硬化性層とノルボルネン系環状オレフィン層またはフィルムとを共押出しする必要がない。この方法を使用すれば、1層または複数の硬化性層を、ノルボルネン系環状オレフィンフィルム/層の主面の上にコーティングすることができる。ノルボルネン系環状オレフィン層の上にコーティングするための硬化性層(1層または複数)には、1種または複数の硬化性物質を含んでいるのが好ましい。好適な硬化性物質、硬化方法、および硬化性物質の追加成分については、先に述べた。
【0092】
硬化性層のノルボルネン系環状オレフィンフィルムへの接着性は、硬化性層のコーティングとともにインラインでノルボルネン系環状オレフィンフィルム表面をコロナ処理することにより改良される。コロナ処理とは、ポリマー表面の上に向けた、誘電バリヤー放電(dielectric barrier discharge)を指している。本明細書で使用するとき、コロナ処理とは一般に、中性のガス分子に電子衝撃を与えることによって、気相活性種(たとえば、フリーラジカル、イオン、または電気的もしくは振動的に励起された状態)が作られる各種のプロセスを指している。たとえば、空気または窒素を使用することができる。本明細書で使用するとき、コロナ処理としては多くの他の用語が知られている。それらの用語を挙げれば以下のようなものがある(これらに限定される訳ではない):誘電−バリヤー放電、コロナ、コロナ放電、バリヤー放電、常圧プラズマ、常圧グロー放電、常圧非平衡プラズマ、無声放電、常圧部分イオン化ガス、フィラメント放電、直接もしくは遠隔常圧放電、外部持続もしくは自己持続常圧放電など。
【0093】
空気コロナ(空気誘電−バリヤー放電)は、実質的に空気からなる雰囲気中で維持される。窒素コロナは、実質的に窒素からなる雰囲気中で維持される。好適な窒素コロナ処理プロセスは、同一出願人による、米国特許出願第10/883,263号明細書(2004年7月1日出願)に記載されている(その開示を、参照により本明細書に援用する)。窒素を用いるコロナ処理では通常、コロナ要素を必要とし、処理される表面は、コロナ処理の間隔離して、所望のガス環境を保つ。
【0094】
表面処理のためのガスを選択する際に、先と同程度の配慮を必要とする重要な点は、得られる表面の化学構造に対する、動的または時間依存的な性質である。空気または窒素コロナ処理は、インラインで実施するのが好ましい。硬化性層の接着性は、コロナ処理から硬化性物質の適用までの時間が短い程改良される。一実施態様においては、窒素コロナ処理から約1時間以内に、硬化性物質をノルボルネン系環状オレフィン層の上にコーティングする。さらなる実施態様においては、窒素コロナ処理から硬化性物質のコーティングまでの時間が、1時間未満、30分未満、10分未満、5分未満、あるいは2分未満である。好ましい実施態様においては、ノルボルネン系環状オレフィン層の空気または窒素コロナ処理から、硬化性物質のコーティングまでの時間が、約75秒以下または約60秒以下または約30秒以下である。コロナ処理に代えて他の同様な処理、たとえば火炎処理を使用してもよい。本明細書で使用するとき、「火炎」という用語には、予備混合炎と拡散炎の両方、ならびに層流炎と乱流炎の両方が含まれる。火炎処理は、スリー・エム・カンパニー(3M Co.)に譲渡された米国特許第5,753,754号明細書;米国特許第5,891,967号明細書;米国特許第5,900,317号明細書;および米国特許第6,780,519号明細書に記載がある(参照により本明細書に援用する)。また別な方法は、オゾン処理、オゾン化、またはオゾン暴露と紫外光(特に200〜300nmの波長での)暴露の組合せである。それらの表面処理は、表面処理の後の他のフィルム加工工程(1工程または複数の工程)たとえば他の光学フィルムへの接着剤コーティングおよび積層を含めた、インラインシステムまたは方法を用いて適用することも可能である。
【0095】
硬化性層は、1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層と光学フィルムとの間に位置させることができる。別な方法、あるいは追加の方法として、硬化性層を1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層の上に位置させるが、ここでその硬化性層がその光学フィルムには隣接しないようにすることもできる。一実施態様においては、硬化性層をノルボルネン系フィルムに適用する。この「調製された」ノルボルネン系フィルムを、後ほど光学フィルムに適用してもよい。
【0096】
硬化性層は通常、透明であるかまたは実質的に透明であって、それにより、そのフィルムまたは光学物体の光学的性質の低下を防ぐ。硬化性層の厚みはその用途次第で決まるであろう。硬化性接着剤層の厚みは、典型的には、2ミル(約50マイクロメートル)未満、より典型的には約1ミル(約25マイクロメートル)であるが、ただし約0.5ミル(約12マイクロメートル)以上である。いくつかの実施態様においては、たとえば図1および図4〜図8のような、表面層としての硬化性層は、その厚みが典型的には2ミル未満;典型的には約1.5ミル未満、最も典型的には1ミル未満である。他の実施態様においては、硬化性層の厚みが最も典型的には約1ミルである。他の実施態様においては、硬化性層の厚みを約0.5ミル未満とすることができる。
【0097】
硬化性層の厚みは、光学物体を薄く保つには最小限とするのが好ましい。それにもかかわらず、特定の用途で必要であれば、もっと厚い硬化性層とすることもできる。
【0098】
硬化性層をノルボルネン系環状オレフィン層と組み合わせることに関するさらなる説明は、後述の実施例Iを参照されたい。
【0099】
方法B
本発明の開示の複合光学物体を形成させるためには、各種の方法を使用してよい。上述のように、光学物体は各種の構成をとることが可能であり、そのため、最終的な光学物体の構成に応じて、それらの方法も変化する。一つの方法は、ノルボルネン系環状オレフィンポリマーを溶融状態で他の光学物体に適用するものである。この工程は、接着剤層を有するノルボルネン系環状オレフィン層を光学フィルムの上に共押出しコーティングすることにより実施することができる。
【0100】
押出し加工可能な接着剤層(たとえばタイ層)を、ノルボルネン系環状オレフィン層と、光学層と、またはその両方と共に一体的に成形してもよい。接着剤層は、同時に共押出しするか、または光学フィルムの上に順次に押出し加工することによって、ノルボルネン系環状オレフィン層または光学層と共に一体的に成形することができる。接着剤層は、1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層と光学フィルムとの間に位置させる。たとえば多層構造については図2〜図8を参照されたい。そこでは、ノルボルネン系環状オレフィン層14と接着剤層16をこの方法で形成させることができる。
【0101】
押出し加工可能な接着剤層は通常、透明であるかまたは実質的に透明であって、それにより、そのフィルムの光学的性質の低下を防ぐ。中間の接着剤層は、典型的には、2ミル(約50マイクロメートル)〜0.5ミル(約12マイクロメートル)の間の厚みである。より典型的には、接着剤層は2ミル〜1ミルの間である。接着剤層の厚みは、光学物体を薄く保つには最小限とするのが好ましい。
【0102】
接着剤層の組成は、典型的には、それらが接触する、光学フィルムおよび/またはノルボルネン系環状オレフィン層と適合性が得られるように選択する。接着剤層は、光学フィルムとノルボルネン系環状オレフィン層との両方に充分に結合しなければならない。したがって、接着剤層に使用する物質の選択は多くの場合、その光学物体の他の構成成分の組成に応じて変化させる。(1層または複数の)接着剤層は、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーと共に共押出しするためには、250℃を超える温度での溶融相において熱的に安定であるのが好ましい。したがって、接着剤層は、250℃を超える温度での押出しの間に、実質的に分解することはない。
【0103】
具体的な実施においては、接着剤層は、押出し加工可能で透明なホットメルト接着剤である。接着剤層に有用な物質としては、以下のようなものが挙げられる:酢酸ビニルを用いて変性したポリオレフィン、たとえばデュポン(Dupont)からのエルバックス(Elvax,登録商標)ポリマー、および無水マレイン酸を用いて変性したポリオレフィン、たとえばデュポン(Dupont)からのバイネル(Bynel,登録商標)ポリマー、および無水マレイン酸を用いて変性したエチレンベースのポリマー、たとえば三井化学(Mitsui Chemicals)からのアドマー(Admer,登録商標)ポリマー、およびエチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジルターポリマー、たとえばアトフィナ・ケミカルズ(Atofina Chemicals)(現在は、トータル・ペトロケミカルズ・インコーポレーテッド(Total Petrochemicals,Inc.))からのロテイダー(Lotader,登録商標)ポリマー。その他の接着剤層としては、エチレンと各種のコモノマーとのコポリマーおよびターポリマーが挙げられる。使用可能なコモノマーとしては以下のようなものが挙げられる:アクリレート化合物、たとえばアクリル酸メチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸ブチル、酢酸ビニル、無水マレイン酸、メタクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ならびにメタクリル酸を含めたアクリル酸化合物。それらのコポリマーおよびターポリマーは、そのコポリマーまたはターポリマーのポリマー骨格の上にグラフトさせた反応性基をさらに含んでいてもよい。グラフト反応性基には無水マレイン酸が含まれていてもよい。接着剤層のための他の材料としては、無水マレイン酸をグラフトしたポリエチレンまたは他のポリオレフィンが挙げられる。
【0104】
先に光学フィルムのところで挙げたコモノマーなど、各種の追加の化合物を加えることができる。押出し加工助剤、たとえば可塑剤および滑剤などを添加して、加工性および他の層への接着性を改良することもできる。さらに、無機粒子またはポリマービーズのような粒子を使用することもできる。
【0105】
図9では、本発明の開示の実施に従って、多層フィルム、たとえば光学物体を形成するためのシステムの平面図を示す。光学フィルム32を含むスプール30から巻き戻し、場合によっては赤外線加熱ステーション34で加熱する。光学フィルム32は、場合によっては50℃を超える温度にまで、より一般的には約65℃の温度にまで加熱する。ノルボルネン系環状オレフィン層を形成させるための組成物36と、接着剤層を形成させるための組成物38を、フィードブロック40を通して供給し、予備加熱した光学フィルム32の上に共押出しコーティングする。次いで、その光学フィルムをロール42と44の間で加圧する。場合によっては、ロール42もしくはロール44、またその両方が、艶消し仕上げ面を有していて、ノルボルネン系環状オレフィン層の上にわずかに散乱を有する表面を与える。冷却してから、そのコーティングした光学フィルム46を巻取り機48の上に巻き上げることができ、次いでさらなる加工、たとえばシートへの切断などを行って、仕上がり多層フィルム、たとえば光学物体を形成することができる。場合によっては、実施例IIに記載するようにして、その多層フィルムに硬化性層を加えてもよい。フラットな多層フィルム、たとえば光学物体が望ましいようないくつかの実施態様においては、コアの上に巻き上げる前に多層フィルムを冷却するのが好ましい。さらに、巻き上げの際に多層フィルムの張力を調節、たとえば低下させて、コアの上への巻き上げによって起きるカールを抑制してもよい。
【0106】
本発明の開示の一実施態様においては、方法Bと類似の方法で、共押出ししたノルボルネン系環状オレフィンフィルムと同時に多層フィルムを形成させる。少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層を含むその多層フィルムを、たとえば、光学物体の材料の個々のシートを加熱空気中で延伸させることによって、配向させることも可能である。たとえば、国際公開第99/36812号パンフレット(発明の名称「アン・オプティカル・フィルム・アンド・プロセス・フォア・マニュファクチャー・ゼアオブ(An Optical Film and Process for Manufacture Thereof)」)の教示にある具体的な方法と材料の記載に従って、光学フィルムを配向させることができる(そのすべてを、参照により本明細書に援用する)。
【0107】
ノルボルネン系環状オレフィンフィルム(すなわち、共押出しを加えていないもの)は、ポストテンターで多層光学フィルムの上に貼り付けるのが好ましい。
【0108】
実施例I
UV硬化性物質をノルボルネン系環状オレフィン基材に付着させた。ノルボルネン系環状オレフィン基材には、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムと、光学物体の表面の上のノルボルネン系環状オレフィン層とが含まれている。そのノルボルネン系環状オレフィン基材を空気コロナを用いて処理し、直後に硬化性物質を用いてコーティングする。このインライン表面処理を実施するには、図10の代表的な配置で示したように、コロナ処理システム52が、セラミック管コロナ電極54を、ナイフコーター56のベッド上、コーティングナイフ58よりは上流側に配置することにより、構成されている。コロナ処理システム52の中、矢印66の方向に未処理フィルム60を連続的に供給する。未処理フィルム60を、コロナ電極54のところでコロナ処理する。コロナ処理されたフィルム62が、続けてコーティング領域に流れ、そこで硬化性物質64を塗布される。コーティングナイフ58で硬化性物質64を均してから、硬化させる。好ましい実施態様においては、硬化性物質64をコーティングしたコロナ処理フィルム62を、続けてこのコロナ処理システムに隣接する硬化ステーション(図示せず)に通す。この配置にすることにより、フィルム60を空気コロナ処理させた直後に、そのフィルムをコーティング物質に接触させ、硬化させることが可能となる。
【0109】
75%トパス(Topas,登録商標)6013樹脂(Tg=140℃)/25%トパス(Topas,登録商標)8007樹脂(Tg=80℃)の組成を有するノルボルネン系環状オレフィンブレンドを用いて製造された、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムが得られた。100%トパス(Topas,登録商標)6013からなるフィルムも製造した。トパス(Topas,登録商標)樹脂は、統計的にはランダムで、完全に非晶質なノルボルネンとエチレンとからのコポリマーである。Tgが高いグレードは、Tgが低いグレードに比較すると、ノルボルネンモノマーのモルパーセントが高い。75%トパス(Topas,登録商標)6013樹脂/25%トパス(Topas,登録商標)8007樹脂ブレンドは、適合性および混和性がある。
【0110】
入力されるコロナ電極54の有効長(ウェブ横断方向)は約11cmであり、コーティングナイフ58の上流側約4〜12cmのところに位置させた。コロナ電極54からナイフコーター56のベッドまでのギャップは1.5mm(60ミル)であった。200Wのコロナ出力を使用した。
【0111】
コーティングされた材料を、コーティングの直ぐ後にUV硬化源に暴露させた。コーティングされた硬化性物質を、窒素雰囲気下、50フィート/分(ウェブ速度)、ヒュージョン(Fusion)D電球(F−600)を100%出力で使用して、UV硬化させた。
【0112】
使用した硬化性物質の一つを、「硬化性物質A]と呼ぶこととする。硬化性物質Aの配合は以下のとおりであった:30.0%(w/w)の臭素化エポキシジアクリレート(ジョージア州スマーナ(Smyrna,GA)のユー・シー・ビー・ラドキュア・インコーポレーテッド(UCB Radcure Inc.)により商品名RDX51027として製造されているもの)、20.0%(w/w)の6官能芳香族ウレタンアクリレートオリゴマー(これまた、ユー・シー・ビー・ラドキュア・インコーポレーテッド(UCB Radcure Inc.)から商品名EB220として入手可能)、37.5%(w/w)の2−(2,4,6−トリブロモフェノール)−1−エタノールアクリル酸エステル(日本国(Japan)の第一工業製薬(株)(Daiichi Kogyo Seiyaku Co.)からBR−31(CAS番号:7347−19−5)として販売)、12.5%のアクリル酸2−フェノキシエチル(ペンシルバニア州アンブラー(Ambler,Pa)のヘンケル・コーポレーション(Henkel Corp.)により、フォトマー(Photomer)4035として販売)、0.3pphのフルオロ界面活性剤(ミネソタ州セントポール(St.Paul,MN)のスリー・エム・カンパニー(3M Company)によりFC−430の商品名として販売)、1.0pphの光重合開始剤(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,N.Y.)のチバ・ガイギー(Ciba Geigy)からの商品名ダロキュア(Darocure)1173)、および1.0pphの光重合開始剤((ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte,N.C.))のビー・エー・エス・エフ(BASF)からの商品名ルシリン(Lucirin,登録商標)TPO)。未硬化の、硬化性物質A配合は、1.56の屈折率を有している。
【0113】
使用されるその他の硬化性物質を「硬化性物質B」と呼ぶこととする。硬化性物質Bの配合は、硬化性物質Aの配合と同じであるが、ただし、ルシリン(Lucirin,登録商標)TPOをその配合に加えていない。未硬化の、硬化性物質B配合は、1.56の屈折率を有している。
【0114】
使用した硬化性接着剤組成物を「硬化性物質C」と呼ぶこととする。硬化性物質Cの配合は、重合性窒素含有アクリレートモノマーと、窒素非含有重合性アクリレートモノマーとを含んでいると考えられる。
【0115】
硬化性物質AおよびCを、トパス(Topas,登録商標)6013のフィルムの上に、約1.5ミルの厚みでコーティングした。コーティングされた材料を、コーティングの直ぐ後にUV硬化源に暴露させた。コーティングされた材料を、窒素雰囲気下、ウェブ速度50フィート/分、ヒュージョン(Fusion)D電球(F−600)を出力100%の条件のUV硬化源に、コーティングを向けて、UV硬化させた。
【0116】
接着力は、ASTM D3359−02「スタンダード・テスト・メソッズ・フォア・メジャリング・アドヒージョン・バイ・テープ・テスト・メソッド・B(Standard Test Methods for Measuring Adhesion by Tape Test,Method B)により試験した。接着性の測定は次のようにして実施した:鋭利なカミソリ刃を取り付けた碁盤目接着「カー(car)」を用いて硬化させたコーティングに刻み目を入れ、スリー・エム(3M)#610テープ(高タック性、ゴム樹脂接着剤を用いたセロファンテープ)をその刻み目を入れた領域に碁盤目パターンに対して45度の角度で貼り付け、プラスチックの刃でテープをこすりつけ、次いで、テープを表面から引き剥がした。試験性能を評価するために使用した尺度を表2に示す。5Bの評価は、優れた接着性に相当する。0Bの評価は、接着性が無いことに相当する。
【0117】
【表2】
【0118】
少なくとも一つのノルボルネン系環状オレフィンフィルムまたは層と、少なくとも1層の硬化性層とを有するいくつかの実施例材料を、上述の一般的な方法により調製した。材料と条件は表3に示し、以下で説明する。UV硬化性物質の接着性は、ASTM D3359−02「スタンダード・テスト・メソッズ・フォア・メジャリング・アドヒージョン・バイ・テープ・テスト・メソッド・B(Standard Test Methods for Measuring Adhesion by Tape Test,Method B)を用いて試験した。多層フィルムを調製するための条件および接着力試験に関する詳細は、表3に示されている。
【0119】
【表3】
【0120】
ノルボルネン系環状オレフィンフィルムのコロナ処理された部分は、未処理の領域では接着性が示されないために、接着性試験によって容易に検出できた。処理された領域では、処理したフィルムの幅11cm全体で、明らかに接着性の改良が認められた。それとは対照的に、処理されていないノルボルネン系環状オレフィンフィルムに対しては、硬化性物質が接着性を与えなかった。さらに、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムをコロナ処理してから、数時間ないしは数日放置してからコーティングした場合には、硬化性物質の接着性が認められなかった。
【0121】
硬化された硬化性物質Aの層は、コロナ処理と硬化性物質Aのコーティングとの間の経過時間が約65秒未満であれば、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムに満足のいくレベルで接着した。コロナ処理とコーティングとの間の経過時間を約1秒未満とするのが好ましかった。硬化された硬化性物質Aは、未処理のノルボルネン系環状オレフィンフィルムに対しては接着性が無かった。コロナ処理とコーティングとの間の経過時間が4分を超えた場合も、硬化性物質のコロナ処理したノルボルネン系環状オレフィンフィルムに対する接着性が無かった。
【0122】
硬化性物質Cの硬化性接着剤のノルボルネン系環状オレフィンフィルムに対する接着性もまた、インライン空気コロナ処理により、処理と接着剤のコーティングとの間の経過時間が約70秒未満であれば、改良された。硬化性接着剤は、未処理のノルボルネン系環状オレフィンフィルムに対する接着性は無かった。
【0123】
上述の方法を使用して、さらなる実施例を作成した。それらの「プロトタイプ」について以下に説明する。
【0124】
光学フィルムプロトタイプa
光学フィルムプロトタイプaには、ノルボルネン系環状オレフィン(75%トパス(Topas,登録商標)6013樹脂/25%トパス(Topas,登録商標)8007樹脂)フィルムが含まれる。上述のプロセスを使用して、コーター56のコーティングナイフ58の上流側約5cmのコロナ電極を用い、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムをそのシステム52に、高速たとえば約20フィート/分で通過させた。インライン空気コロナ処理の後、硬化性物質Bを0.003〜0.004インチの厚みで塗布した。硬化性物質をコーティングしたノルボルネン系環状オレフィンフィルムを、面を下に向けてネガティブマスターの上に置くと、硬化させた後では、直線的なプリズム状の構造を有する、プリズム面角度90度で、ピーク間の間隔65ミクロンを有する硬化層が生成する。そのネガティブマスターは、表面ミクロ構造を与えるためのツールの一例である。そのフィルムをホットプレート上で130゜Fで保持されたネガティブマスターに対して、ローラーとして滑らかな金属棒を用いて積層させ、そのフィルムをUV硬化源に向けて、上述の条件でUV硬化させた。硬化させた後、その構成物のコロナ処理した部分はそのツールからきれいに剥がされたが、このことは、微細構造化された硬化層が、処理されたノルボルネン系環状オレフィンフィルムに対して強い接着性を有していることを示している。ノルボルネン系環状オレフィンフィルムの未処理領域にコーティングされた硬化性物質の場合には、その硬化性物質は、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムよりもツールの方に付着した。
【0125】
光学フィルムプロトタイプb
同様の方法を用いて、微細構造化硬化層を、図3に見られる構造を有する光学フィルムの上にコーティングして、図5に見られるような構造を有する光学物体を形成させた。こうして仕上がった光学物体を光学フィルムプロトタイプbと名付けた。
【0126】
図3に見られる構造を有する最初の光学フィルムは、多層ポリマー反射型偏光子フィルムのそれぞれの側にトパス(Topas,登録商標)6013の厚さ5ミルのスキン層を共押出しコーティングすることにより形成させた。その押出し加工可能な接着剤層は、アドマー(Admer,登録商標)SE810(日本国、三井化学(Mitsui Chemicals)製)の厚み1.5ミルの層であった。投入した多層ポリマー反射型偏光子フィルムを「反射型偏光子フィルムA」と呼ぶことにする。反射型偏光子フィルムAは、PEN(ポリエチレンナフタレート)を含む第一の光学層と、coPEN(コポリエチレンナフタレート)を含む第二の光学層とから構成されていた。そのPENとcoPENは、多層溶融マニフォルドとマルチプライヤーを通して共押出ししたもので、第一の光学層と第二の光学層が交互に825層を形成していた。この多層光学フィルムはさらに、第二の光学層として同じcoPENからなる2層の内側層と2層の外側スキン層とを含み、全部で829層となっていた。反射型偏光子Aの合計したフィルムの厚みは3.7ミルであった。
【0127】
微細構造化硬化層をコーティングして、直線的なプリズム状微細構造が、反射型偏光子Aの偏光透過軸を持つように配列させた。この光学フィルム構成のために、硬化性物質Aを使用した。
【0128】
光学フィルムプロトタイプc
光学フィルムプロトタイプcは構造的には、図3に示したものと類似している。光学フィルムプロトタイプcにおいては、光学フィルムを、2枚のノルボルネン系環状オレフィンフィルム、特にトパス(Topas,登録商標)6013の間に積層させる。ノルボルネン系環状オレフィンフィルムの二つの小片は、ヘイズが極端に少なく、最初に個々にコロナ処理された。次いで、反射型偏光子Aの小片を、コロナ処理されたノルボルネン系環状オレフィンフィルムの2枚の小片の間に挿入した。次いで、硬化性接着剤組成物、樹脂Cをフィルムの層の間(すなわち、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムのそれぞれの小片の主面と光学フィルムの主面との間)に置いた。その5層「サンドイッチ」を、ギャップコーター/ラミネーターを通して、フィルムの層の間に接着剤を均質に適用した。ノルボルネン系環状オレフィンフィルムのコロナ処理と、コーティング(フィルムサンドイッチをギャップコーターを通しての引き出し)との間の時間差は78秒であった。積層する接着剤の目標厚みは、積層サンプルの側面あたり1.5ミルであった。次いでその5層「サンドイッチ」を、二つの通過(pass)プロセスで硬化させた。第一の通過では、コーティングと硬化との間の時間は、27秒であった。硬化性接着剤を確実に完全硬化させるために、その5層「サンドイッチ」を、サンドイッチの反対側を通して、第二の時間で硬化させた。
【0129】
ゲインの測定
所定の光学フィルムの輝度ゲイン(すなわち「ゲイン」)とは、所定のバックライトまたは光キャビティ(light cavity)たとえば照明されたテフロン(登録商標)(Teflon)ライトキューブ(light cube)の上に置いた光学フィルムにおける透過光強度を、その光学フィルム無しの場合と比較した比率である。さらに詳しくは、光学フィルムの透過光強度は、カリフォルニア州チャッツワース(Chatsworth,CA)のフォト・リサーチ・インコーポレーテッド(Photo Research,Inc.)から入手可能な、スペクトラスキャン(SpectraScan,登録商標)PR−650スペクトラカロリメーター(SpectraColorimeter)を用いて測定する。吸収型偏光子はさらに、スペクトラスキャン(SpectraScan,登録商標)PR−650スペクトラカロリメーター(SpectraColorimeter)の前にも置く。次いで、所定の光学フィルムをテフロン(登録商標)(Teflon)ライトキューブの上に置く。そのライトキューブを、フォステック(Fostec)DCRII光源を用いて、ライトパイプを介して照明する。この構成を用いた場合、ゲインは、光学フィルムありで測定した透過光強度の、光学フィルム無しの場合に対する比である。反射型偏光子を組み入れた光学フィルムでは、反射型偏光子の偏光通過軸を、その吸収型偏光子の偏光通過軸に平行に配列させる。構成が光学フィルムプロトタイプaと類似の光学フィルムの場合、直線的なプリズム状微細構造を、吸収型偏光子の偏光通過軸に平行に配列させる。
【0130】
光学フィルムプロトタイプのゲインを表4に示す。
【0131】
【表4】
【0132】
このゲイン測定から、これらの光学プロトタイプすべてが、ゲインを与えていることが判る。これらのサンプルが最適からはほど遠いという訳ではないが、最適化した場合には、特に光学プロトタイプaおよびbでは、ゲインが改良されるであろうと期待できる。光学プロトタイプcのゲインが、投入した反射型偏光子Aに近いということは、積層されたプロトタイプが、投入した反射型偏光子Aからほとんど変化していないということを示している。
【0133】
実施例II
UV硬化性物質をノルボルネン系環状オレフィン基材に付着させた。ノルボルネン系環状オレフィン基材には、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムと、光学物体の表面の上のノルボルネン系環状オレフィン層とが含まれている。そのノルボルネン系環状オレフィン基材を窒素コロナを用いて処理してから、硬化性物質を用いてコーティングする。この表面処理を達成するためには、図11の代表的な配置に示したように、調節した雰囲気を封じ込めるためのハウジング72の中に、シリコーンスリーブコロナ電極70を搭載することにより、コロナ処理システム68を構成した。ハウジング72は、ベッド76に操作可能に取り付けてある。未処理フィルム78を、ハウジング72の中へ矢印80の方向に連続的にフィードする。未処理フィルム78を、コロナ電極70のところでコロナ処理する。コロナ処理したフィルム82は連続的に処理システム68を通過する。一実施態様においては、コロナ処理したフィルム82は、コロナ処理システムに隣接したコーティングおよび硬化ステーション(図示せず)へ続く。この方法についてのさらなる説明は、同一出願人による、米国特許出願第10/883263号明細書(出願日:2004年7月1日)に記載されている(この出願を、参照により本明細書に援用する)。
【0134】
ノルボルネン系環状オレフィンフィルムを実施例Iの記載に従って製造した。入力されるコロナ電極は、約30cmの有効長(ウェブ横断方向)を有していた。コロナ電極から装置のベッドまでのギャップは1.5mm(60ミル)であった。1.8J/cm2のコロナエネルギーを使用した。窒素コロナ処理されたノルボルネン系環状オレフィンフィルムを、処理の約12秒後にコーティングした。コーティングされた材料を、コーティングの直ぐ後にUV硬化源に暴露させた。コーティングされた硬化性物質を、窒素雰囲気下、50フィート/分(ウェブ速度)、ヒュージョン(Fusion)D電球(F−600)を100%出力で使用して、UV硬化させた。
【0135】
上述の方法において使用するのに適した一つの硬化性物質が、硬化性物質Dである。硬化性物質Dの相対的なモノマー比は、TMPTA/テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテルおよび(メタ)アクリル酸/PEAが48/35/17である。硬化性物質Dは、下記の手順で作るのがよい。硬化性物質Dに類似の物質および関連の方法についてのさらなる説明は、米国特許出願公開第2005/0202278A1号明細書(「ポリメライザブル・コンポジションズ・コンプライジング・ナノパーティクルズ(POLYMERIZABLE COMPOSITIONS COMPRISING NANOPARTICLES)」)(出願日:2005年9月15日)にある(この開示を、参照により本明細書に援用する)。
【0136】
ナルコ(Nalco)2327のコロイダルシリカ(400g)を、1クオートのジャーに仕込む。1−メトキシ−2−プロパノール(450g)、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI)のシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から商品名「シランA174(Silane A174)」として市販)(18.95g)、シルクエスト(Silquest)A1230(12.74g)、およびヒンダードアミンニトロキシド禁止剤の水中5%溶液(0.2g)(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY)のチバ・スペシャルティ・ケミカル・インコーポレーテッド(Ciba Specialty Chemical Inc.)から商品名「プロスタブ(Prostab)5198」として販売)を調製し、撹拌しながらコロイダルシリカ分散体(イリノイ州ネイパービル(Naperville,IL)のオンデオ・ナルコ・カンパニー(Ondeo−Nalco Co.)から商品名「ナルコ(Nalco)2327」として市販)に添加する。ジャーを密閉し、80℃で16.5時間加熱する。この結果、変性シリカの明澄な低粘度分散体が得られる。
【0137】
1Lの(太首)丸底フラスコに、上述の変性ゾルと、48/35/17のTMPTA/テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテルおよび(メタ)アクリル酸/PEAと、プロスタブ(Prostab)5198の水中5%溶液とを仕込む。ロータリーエバポレーターを用いて水とアルコールを除去する。その配合物には、熱重量分析(TGA)で測定して約46重量%のSiO2が含まれる。屈折率は1.50である。1重量%のTPO−Lを添加する。
【0138】
上述のSiO2含有樹脂を、48/35/17のTMPTA/テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテルおよび(メタ)アクリル酸/PEAと混合すると、38重量%のSiO2を含む樹脂が得られる。1重量%のTPO−Lを添加する。
【0139】
上述のような窒素コロナ処理に続けて、フィルムに硬化性樹脂Dをコーティングした。次いで、硬化性物質をコーティングしたノルボルネン系環状オレフィンフィルムを、ネガティブマスターに押し込むと、硬化させた後では、直線的なプリズム状の構造を有する、プリズム面角度90度で、ピーク間の間隔が65ミクロンを有する硬化層が生成する。そのネガティブマスターは、表面ミクロ構造を与えるためのツールの一例である。そのコーティングされた硬化性物質をUV硬化させた。硬化させた後、その構成物のコロナ処理した部分はそのツールからきれいに剥がされたが、このことは、微細構造化された硬化層が、処理されたノルボルネン系環状オレフィンフィルムに対して強い接着性を有していることを示している。微細構造化硬化層の接着性は、実施例Iに記載したようなASTM D3359−02を使用して、5Bであった。
【0140】
また別の好適な硬化性樹脂は、硬化性物質Eである。硬化性物質Eの配合は、下記と類似である。硬化性物質Eに類似の物質については、下記の特許にさらなる説明がある:米国特許出願第11/077,598号明細書「ポリメライザブル・コンポジション・コンプライジング・ロウ・モレキュラー・ウェイト・オーガニック・コンポーネント(POLYMERIZABLE COMPOSITION COMPRISING LOW MOLECULAR WEIGHT ORGANIC COMPONENT)」(出願日:2005年3月11日)(その開示を参照により本明細書に援用する)。ZrO2ゾル(200g)、MEEAA(8.81g)、BCEA(4.22g)、1−メトキシ−2−プロパノール(230g)、BR31/PEA/TMPTAの38/50/12混合物(59.1g)、およびプロスタブ(Prostab)5198の水中5%溶液(0.24g)を丸底フラスコに仕込み、ロータリーエバポレーターを用いてアルコールと水を除去した。そのZrO2含有樹脂は、ZrO2含量52.31%で、1.638の屈折率を有していた。そのZrO2充填樹脂(116g)とTPO−L(0.55g)とを混ぜ合わせた。そのZrO2ゾルは、強度平均(intensity−average)粒径が42.1、容積平均粒径が17.5nmであり、強度平均対容積平均の比が2.41である。
【0141】
窒素コロナ処理されたノルボルネン系環状オレフィン基材の上の、硬化性樹脂Eの硬化させた微細構造化コーティングは、硬化性樹脂Dについて上述したのと同様の方法で製造した。硬化性微細構造化層の接着力は強いものであった。
【0142】
実施例III
この実施例の方法を用いることにより、本発明の開示の方法において使用するのに適した、フィルム、光学物体または、光学物体の部分を形成させることができる。
【0143】
多層反射型偏光子(たとえば、光学フィルム)を、PEN(ポリエチレンナフタレート)を含む第一の光学層と、coPEN(コポリエチレンナフタレート)を含む第二の光学層とを用いて構成した。そのPENとcoPENは、多層溶融マニフォルドとマルチプライヤーを通して共押出ししたもので、第一の光学層と第二の光学層が交互に825層を形成していた。この多層光学フィルムにさらに、追加の2層の内側層と、第二の光学層として同じcoPENを含む2層の外側保護境界層が含まれ、全体で829層で、その厚みが3.7ミルであった。この多層反射型偏光子フィルムを、「反射型偏光子A」と呼ぶことにする。類似の反射型偏光子は、スリー・エム・カンパニー(3M Company)から商品名DBEFとして入手可能である。
【0144】
トパス(Topas,登録商標)6013のノルボルネン系環状オレフィン層を、接着剤層のアドマー(Admer,登録商標)SE810と共に、多層光学フィルム、たとえば、反射型偏光子Aのそれぞれの側の上に共押出しコーティングして、光学物体を形成させた。代表的な構造を図2に示している。共押出しされた層と光学フィルムを、ダイの出口のところで、ゴムロールとパターン化ロールとの間ではさみつけた。代表的な押出しコーティング装置については、図9を参照されたい。パターン化ロールを使用して、その光学物体のノルボルネン系環状オレフィン層の上に表面模様をつけた。そのパターン化ロールは、90ミクロンの粗さRaと、4.5%の光沢とを有していた。面の幅14インチの、そのパターン化ロールは、ウィスコンシン(Wisconsin)のウルトラプレーティング(UltraPlating)で仕上げたものである。パターン化ロールは210゜Fに加熱した。ニップ圧力は90psiであった。
【0145】
上述の方法により製造することが可能な多層反射型偏光子の構成の一例を、図2に模式的に示している。図3における光学物体22、図4〜8に示した光学物体の部分は、上述の方法によって製造することも可能である。各種の厚みのトパス(Topas,登録商標)6013環状オレフィンコポリマーのノルボルネン系環状オレフィン層と、各種の接着剤層とを、多層光学フィルム、反射型偏光子Aの上に形成させた。ノルボルネン系環状オレフィン層を用いた多層光学フィルムの例示的構成の層の厚みを、表5に示す。共押出しされた接着剤ポリマーには以下のものが含まれる:アドマー(Admer,登録商標)SE810およびアドマー(Admer,登録商標)SE800接着剤ポリマー(三井化学);ロテイダー(Lotader,登録商標)、オレバック(Orevac,登録商標)、およびロトリル(Lotryl,登録商標)(アトフィナ(Atofina)から);およびバイネル(Bynel,登録商標)およびフサボンド(Fusabond,登録商標)(デュポン(Dupont)から)。表5に示した光学物体は、良好な接着性を示し、容易には剥がれなかった。
【0146】
【表5】
【0147】
本発明の開示のノルボルネン系環状オレフィン層を含む各種の多層光学フィルムのシート、たとえば光学物体を、ノートパソコン、モニター、テレビなどの、各種のバックライト付きLCDディスプレイに組み入れた。それらは、改良された輝度を示した。そのLCDディスプレイは、少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層を含む光学フィルム、光源、LCDパネルを含んでおり、さらに、光ガイドおよび追加の光学フィルムを含んでいてもよい。
【0148】
6.0ミルのノルボルネン系環状オレフィン層の多層光学フィルムのサンプルの色を、フォト・リサーチ(Photo Research)からのスペクトラスキャン(SpectraScan,登録商標)PR650カラーメーターを用いて、0度(軸上)および60度(軸外)の角度で評価した。6.0ミルのノルボルネン系環状オレフィン層を有する多層光学フィルムのサンプルを、乾燥環境下、85℃で1,000時間エージングさせた。サンプルと対照のフィルムもまた、軸上ゲインを求めることにより評価した。それらのサンプルについて、初期と、250、500、および1,000時間暴露後に評価した。いずれのサンプルにおいても、色の変化は認められなかった。すべてのサンプルで、ゲインは実質的に一定を保った。6.0ミルのノルボルネン系環状オレフィン層を用いて多層光学フィルムについて、UVエージング試験も実施した。UVエージングの後で試験サンプルを肉眼で観察したところ、6.0ミルのノルボルネン系環状オレフィン層を有する多層光学フィルムには黄変は認められなかった。
【0149】
環状オレフィン層系のノルボルネンを含む各種多層光学フィルムのシートを、ノートパソコン、モニター、テレビなどの、各種のバックライト付きLCDディスプレイに組み入れた。それらは、改良された輝度を示した。
【0150】
好ましい実施態様を参照しながら本発明の開示を説明してきたが、当業者ならば、本発明の開示の精神と範囲から外れることなく、形態および詳細に変化を加えることが可能であることは認識することであろう。
【0151】
上述の詳細な説明、実施例、およびデータは、本発明の開示の組成物の製造および使用を完全に説明している。本発明の開示の精神と範囲から外れることなく、本発明の開示の多くの実施態様を作ることが可能であるので、本発明は、先に添付された特許請求の範囲に属するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明の開示の第一の実施に従って構築および配置された多層フィルムの側面図であって、ノルボルネン系環状オレフィン層および硬化性層が示されている。
【図2】本発明の開示の第二の実施に従って構築および配置された光学物体の側面図であって、光学フィルム、ノルボルネン系環状オレフィン層、および接着剤層を有する光学物体が示されている。
【図3】本発明の開示の第三の実施に従って構築および配置された光学物体の側面図であって、2層の接着剤層および2層のノルボルネン系環状オレフィン層を有する光学物体が示されている。
【図4】本発明の開示の第四の実施に従って構築および配置された光学物体の側面図であって、光学フィルム、ノルボルネン系環状オレフィン層、接着剤層、および前記ノルボルネン系環状オレフィン層の上の硬化性層を有する光学物体が示されている。
【図5】本発明の開示の第五の実施に従って構築および配置された光学物体の側面図であって、光学フィルム、2層の接着剤層、2層のノルボルネン系環状オレフィン層、および硬化性表面層を有する光学物体が示されている。
【図6】本発明の開示の第六の実施に従って構築および配置された光学物体の側面図であって、光学フィルム、2層の接着剤層、2層のノルボルネン系環状オレフィン層、および前記ノルボルネン系環状オレフィン層の上の2層の硬化性層を有する光学物体が示されている。
【図7】本発明の開示の第七の実施に従って構築および配置された光学物体の側面図であって、光学フィルム、ノルボルネン系環状オレフィン層、接着剤層、前記ノルボルネン系環状オレフィン層の上の第一の硬化性層、および光学フィルムを有する光学物体の上の第二の硬化性層を有する光学物体が示されている。
【図8】本発明の開示の第八の実施に従って構築および配置された光学物体の側面図であって、光学フィルム、接着剤層、ノルボルネン系環状オレフィン層、および2層の硬化性表面層(その1層は、光学フィルムと組み合わされ、第二のものはノルボルネン系環状オレフィン層と組み合わされている)を有する光学物体が示されている。
【図9】本発明の開示の実施に従って光学物体を形成させるためのシステムの平面図である。
【図10】ナイフコーターのベッドの上、「ナイフ」エッジより上流側における、インライン空気コロナ電極の代表的な配置を示す、模式的平面図である。
【図11】フィルムを表面処理するための窒素コロナ電極の代表的な配置を示す、模式的平面図である。
【背景技術】
【0001】
多層ポリマー光学フィルムは、ミラーおよび偏光子を含め、各種の用途に広く使用されている。そのようなフィルムは、コンパクトな電子ディスプレイ、たとえば携帯電話、携帯情報端末、ノートパソコン、モニターおよびテレビに取り付けられた液晶ディスプレイ(LCD)における、反射板および偏光子としての使用に特に適している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
ポリマー光学フィルムは好適な光学的性質および物理的性質を有することができるものの、いくつかのそのようなフィルムに伴う一つの限界は、温度の変動に暴露されたとき、それがたとえ通常の使用において経験するような温度の変動であったとしても、寸法不安定性を示す可能性がある、という点にある。この寸法不安定性によって、フィルムの中に「しわ」が形成され、それが、LCDにおける影として見える可能性がある。そのような寸法不安定性は、温度が約85℃に近づくかそれを超えると、いくつかのタイプのフィルムで、時折観察されることがあり得る。いくつかのタイプのフィルムでは、高温および高湿条件、たとえば温度60℃、相対湿度70パーセントのような条件でサイクル試験をすると、寸法不安定性が観察される。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムの上にコーティングされた追加の硬化性層を含む多層フィルム、光学フィルムの上に配された少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層を含む光学物体、およびノルボルネン系環状オレフィン層またはフィルムと他の物体との間の接着性を改良するための方法、に関する。
【0004】
本発明の開示の一実施態様は、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムと、そのノルボルネン系環状オレフィンフィルムに貼り付けた硬化性層とを含む多層フィルムである。その硬化性層には、硬化性物質が含まれる。
【0005】
本発明の開示のまた別な実施態様は、光学フィルム、その光学フィルムの上に配された少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層、およびそのノルボルネン系環状オレフィン層に貼り付けられた、硬化性物質を含む少なくとも1層の硬化性層を含む光学物体である。一つの例示的な態様においては、その硬化性物質を含む少なくとも1層の硬化性層は、少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層の主面に貼り付けられ、ここでその主面は一般に、その光学フィルムの反対側に配されている。また別な例示的な態様においては、その硬化性物質を含む少なくとも1層の硬化性層は、光学フィルムと、少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層との間に配されている。
【0006】
本発明の開示のまた別な例示的な態様は、硬化性層をノルボルネン系環状オレフィンフィルムに貼り付ける方法であるが、その方法には、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムをコロナ処理する工程、そのコロナ処理したノルボルネン系環状オレフィンフィルムに硬化性物質を適用し、それにより硬化性層を形成させる工程が含まれる。
【0007】
本発明の開示のさらに別な例示的な態様は、光学物体を製造するための方法であって、ここでその光学物体には光学フィルムが含まれる。その方法には、少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン外側層を含む光学フィルムを備える工程、そのノルボルネン系環状オレフィン層をコロナ処理する工程、およびそのノルボルネン系環状オレフィン層の上に硬化性層をコーティングする工程、が含まれる。
【0008】
図面を参照することにより、本発明をさらに説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーフィルムは、光学フィルムにおいて使用するのに好適な性質を示す。それらのフィルムは、光学的に透明、明澄であり、耐光安定性を有し、複屈折性が極めて低い。さらに、それらが高い剛性、耐熱性および極めて低い吸湿性を有しているために、光学的用途において寸法安定性の層としての使用が期待される。しかしながら、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーは、場合によっては、他の物質へ接着させることが困難である。特に、それらは、フィルムの積層に有用な硬化性接着剤を含む硬化性ポリマー材料や、硬化性コーティング材料に対する接着が比較的困難である。典型的には、硬化性物質と接着させようとすると、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーフィルムの上に、たとえば化学的接着促進層または接着促進タイ層のようなコーティングされたプライマー層が必要となる。しかしながら、コーティングされたプライマー層を使用すると、製造コストが加わる可能性があり、また好ましくないコーティング欠陥が発生する可能性もある。
【0010】
多層ポリマー光学フィルムも含めて、ノルボルネン系環状オレフィン層およびフィルムを含む構造における接着性を改良するための方法が必要とされている。コーティングされたプライマー層を使用することなく、硬化性接着剤を用いて、フィルム積層によって追加の層をノルボルネン系環状オレフィン層およびフィルムに直接接着させるのが好ましい。さらに、コーティングされたプライマー層を使用することなく、硬化性物質からなる追加の層を直接接着させることも望ましい。プライマー層の使用を必要としない、インライン表面改質技術を使用することによって多層光学フィルムを製造する方法は、製造コストを削減すると共に、プライマー層が原因の欠陥を排除することになるであろう。
【0011】
上述のように、本発明は、少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層を組み入れた多層フィルムを提供する。その多層フィルムは、光学フィルムおよび1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を含む光学物体であってよい。硬化性接着剤層も含めて、接着剤層を、光学フィルムとノルボルネン系環状オレフィン層との間に存在させることができる。硬化性層は、表面コーティング層としてノルボルネン系環状オレフィン層に適用することができる。また別な実施態様においては、本発明は、その上にコーティングした硬化性層を有するノルボルネン系環状オレフィンフィルムを提供する。
【0012】
ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーは、ユニークな材料であって、多くの電子用、光学用、およびディスプレイ用途において将来性を有している。それらは、光学的に透明、明澄であり、耐光安定性を有し、複屈折性が極めて低い。それらはさらに、寸法安定性を有している(すなわち、たとえば、約100〜160℃の範囲のガラス転移温度、高剛性、および極めて低吸湿性である)。しかしながら、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーにおける制約は、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーと他の材料との間に接着性を発生させるのが困難なことであった。
【0013】
光学フィルムに適用したノルボルネン系環状オレフィン層は、光学フィルムに寸法安定性と反り抵抗性を与える。ノルボルネン系環状オレフィン層は可撓性があるが、それでもなお、充分な安定性を与える。形成される光学物体は典型的には可撓性であって、その光学物体を典型的な取扱い設備を用いて可能することができ、脆さがない。この点に関しては、光学物体の中に1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を加えることによって、その光学物体の中で「しわ」や起伏が起きにくくなるが、その一方で、その光学物体の取扱いや貯蔵(たとえばロールの上に保存することによって)は依然として容易である。光学物体の中に1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を加えることによってさらに、極端な温度範囲、特に高温や高湿度条件下においても、その光学物体の劣化に対する抵抗性が加わる。光学物体の中に1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を加えることによって、典型的には、−35℃から85℃までの温度に2時間ずつ、合計192時間の繰り返しサイクル試験を行っても、光学物体に顕著な劣化が認められなくなる。それらのサイクル試験は、LCDディスプレイまたはその他のデバイスにおける、予想される使用条件下での長期間安定性の指標となるように設計されている。
【0014】
寸法安定性および反り抵抗性を改良するために、1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を光学フィルムに適用することができる。ノルボルネン系環状オレフィン層は、光拡散体として、吸収型偏光子のための保護フィルムとして、および補償フィルムとしての、液晶ディスプレイにおける光学フィルムにおいて有用である。ノルボルネン系環状オレフィン層は、光学フィルムのそれぞれの主面(すなわち、両方の面または側)に加えることができるだけではなく、片側の主面だけ(すなわち、一方の側)に置いてもよい。
【0015】
さらに、ノルボルネン系環状オレフィン層は、その上に硬化性表面コーティングを適用する、ベース基材としても役立つ。その硬化性表面コーティングはさらに、硬化プロセスに関連して、表面模様をつけたり、構造化されていたりしてもよい。構造化表面を有するある種の光学的製品が、米国特許第5,175,030号明細書および米国特許第5,183,597号明細書に記載されている(それらの特許の開示を、参照により本明細書に援用する)。表面模様をつけたり表面を構造化させたりしたフィルムは、バックライト付きフラットパネルディスプレイの輝度を上げるために、多くの電子製品に使用されているが、そのようなものとしてはたとえば、エレクトロルミネセントパネル、ラップトップコンピュータディスプレイ、ワードプロセッサー、デスクトップモニター、テレビ、ビデオカメラ、さらには自動車用および航空用ディスプレイなどに使用される液晶ディスプレイ(LCD)が挙げられる。
【0016】
表面模様をつけたり表面を構造化させたりしたフィルムは、輝度増強フィルムの屈折率(これは、得られる輝度ゲイン(すなわち、「ゲイン」)に関係する)も含めて、特有の光学的および物理的性質を示すのが望ましい。輝度が改良されることによって、その電子製品が、ディスプレイを照明するのにより小さな電力でより効率的に操作できるようになり、それによって電力消費が抑制され、その部品にかかる熱負荷が小さくなり、その製品の寿命を延ばすことが可能となる。
【0017】
本発明の開示はさらに、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーと他の材料との間の接着性が改良された、1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を含む多層フィルムを形成させるための方法も提供する。ノルボルネン系環状オレフィンを共押出しすることなく、硬化性層をノルボルネン系環状オレフィンフィルムおよび/または少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層を有する多層フィルムに適用するための方法もまた記載される。
【0018】
本発明の開示の方法においては、ノルボルネン系環状オレフィン層は、硬化性物質をコーティングおよび硬化させる前に、またいくつかの例示的実施態様においては、硬化性物質をコーティングおよび硬化させる直前または少し前に、コロナ処理する。コロナ処理は、硬化性物質のコーティングおよび、場合によってはさらに硬化と共に、インラインで実施してもよく、たとえば、コロナ処理を硬化性物質をコーティングする直前に実施する。別な実施態様においては、コロナ処理の後、いくらかの時間をおいて、硬化性物質のコーティングを実施する。これらの方法は、典型的な硬化プロセス、表面の模様付けプロセスまたは表面構造化プロセスと共にインラインで組み合わせることもできる。いくつかの例示的実施態様においては、本発明の開示に従う光学フィルムのコロナ処理を、各種適切な接着剤のコーティングおよび他の光学フィルムへの積層と共にインラインで実施してもよい。それらの方法は、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーと硬化性物質、あるいはその他各種好適な接着剤または物質との間の接着性を改良する。
【0019】
本発明の開示のフィルムの表面処理には、空気または窒素のコロナ放電が含まれる。コロナ放電処理の深さは比較的浅く、典型的には処理した表面から内側の10nm未満に作用し、そのため、処理した基材の光学的性質には悪影響が出ない。
【0020】
本発明の開示には、空気または窒素を使用してコロナ処理をするための方法が記載されている。ガスの選択によって通常は、得られる表面の化学構造に影響があるので、用途に応じて選択する。さらに、その表面の化学構造は、動的であり、時間依存性がある。硬化性物質がインラインで適用され、それに続けてフィルム加工工程(たとえば、コロナ処理の直後または少し後に硬化性物質がコーティングされるような工程)があるならば、空気または窒素を用いたコロナ処理によって、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムと硬化性物質との接着性が改良される。
【0021】
寸法安定性および反り抵抗性を改良するために、1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を光学フィルムに適用することができる。ノルボルネン系環状オレフィン層は、LCDディスプレイのための好適な光学フィルムで有用であって、そのようなものとしては、たとえば多層反射板、反射型偏光子、ディフューザー/プレート・アプリケーション(diffusers/plate applications)、吸収型偏光子のための保護フィルム、および補償フィルムなどが挙げられる。
【0022】
ここで図1〜図6を参照するが、これらは、本発明の開示の多層フィルムおよび光学物体の各種一般的な実施態様を示している。光学物体とは、光学フィルムを含む多層フィルムである。図1においては、多層フィルム10には、ノルボルネン系環状オレフィン層14、および硬化性表面層18が含まれている。硬化性表面層18には、場合によっては表面模様がつけられる。
【0023】
図2においては、光学物体20には、光学フィルム12、ノルボルネン系環状オレフィン層14、および接着剤層16が含まれている。図2に示された例における3層は、最も厚い層がノルボルネン系環状オレフィン層14であり、その次の厚みのものが光学フィルム12、そして接着剤層16である。しかしながら、それらの層は、図2に示したものとは相対的に異なった厚みを有するように構成されていてもよい。したがって場合によっては、光学フィルム12の方がノルボルネン系環状オレフィン層14よりも厚いこともあり得る。
【0024】
図3には、本発明の開示のさらなる態様の、1層の光学フィルム12と2層のノルボルネン系環状オレフィン層14とを有する光学物体22を示している。光学物体2は、2層の接着剤層16をさらに含む。
【0025】
図4においては、光学物体24には、光学フィルム12、接着剤層16、ノルボルネン系環状オレフィンフィルム14および硬化性層18が含まれる。図5には、1層の光学フィルム12、2層の接着剤層16、2層のノルボルネン系環状オレフィン層14、および硬化性層18を有する光学物体26が示されている。図6には、光学フィルム12がその二つの主面それぞれの上に、接着剤層16、ノルボルネン系環状オレフィンフィルム14および硬化性層18を有する光学物体28が示されている。
【0026】
図7には、光学フィルム12、接着剤層16、ノルボルネン系環状オレフィンフィルム14、および2層の硬化性層18を含む、光学物体84が示されている。光学物体84においては、光学フィルム12の一つの面の上に、接着剤層16を用いてノルボルネン系環状オレフィンフィルム14が配されている。1層の硬化性層18が、ノルボルネン系環状オレフィンフィルム14の外側表面の上に配されている。第二の硬化性層18が、ノルボルネン系環状オレフィンフィルム14の反対側の面の上の光学フィルム12の上に配されている。ある実施態様においては、接着剤層16は硬化性物質から形成される。
【0027】
図8には、光学フィルム12、接着剤層16、ノルボルネン系環状オレフィン層14、および2層の硬化性層18を有する、光学物体86が示されている。光学物体86においては、接着剤層16を有するノルボルネン系環状オレフィン層14が、光学フィルム14の一方の面の上に配され、その一方で、第一の硬化性層18が光学フィルム14の他の面の上に配されている。第二の硬化性層が、ノルボルネン系環状オレフィン層14の外側表面の上に配されている。ある実施態様においては、接着剤層16は硬化性物質から形成される。
【0028】
これら各種の成分、ならびに1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層を含む多層フィルム、たとえば本発明に開示の光学物体を製造するための方法を以下に記す。
【0029】
「ポリマー」という用語には、ホモポリマーおよびコポリマー、さらにはたとえば共押出し法によるか、あるいはたとえばエステル交換反応を含む反応による混和性ブレンドに成形することが可能な、ポリマーまたはコポリマーが含まれると理解されたい。「ポリマー」、「コポリマー」および「コポリエステル」という用語には、ランダムおよびブロックコポリマーも含まれる。
【0030】
「フィルム」という用語は一般に、単一層および多層のポリマー固形物または仕上げた成形物を指すのに使用される。しかしながら、「フィルム」という用語を使用したからといって、追加の層や追加のプロセスを適用することを禁じている訳ではない。「層」という用語は、多層フィルムの構成部分、所望の最終形態に達する前の物質、さらには本発明の開示の範囲内の構造物の固形で仕上げた形態、を指している。単一層または多層構造は、フィルムとしての構造を指していてもよい。本発明の開示に記載される物質および方法は、フィルムおよび層に均等に適用される。
【0031】
ノルボルネン系環状オレフィンフィルムおよび層
ノルボルネン系環状オレフィン層には、1種または複数のポリマーがノルボルネンまたはノルボルネン誘導体を含む、ノルボルネン系ポリマー、たとえばポリマー、コポリマーおよびポリマーブレンドが含まれる。層(一般的に、多層フィルムの中または上の1層または複数の層)について記載される性質は、フィルム(追加の物質の存否にかかわらず、独立したノルボルネン系環状オレフィン層)に対しても適用される。一般的には、ノルボルネン系環状オレフィン層は、ノルボルネン系コポリマーを含むコ−ポリマーである。本明細書の文脈においては、「コポリマー」という用語には、2種以上の異なったモノマー単位を有するポリマーが含まれる。ノルボルネン系コポリマーのためのモノマーの例としては次のようなものが挙げられる:ノルボルネン、2−ノルボルネン(たとえば、エチレンとジシクロペンタジエンを反応させて得られるもの)、およびそれらの誘導体で、それらがオレフィンたとえばエチレンと共に重合される。ジシクロペンタジエンまたは関連の化合物をベースとする開環ポリマーもまた使用することができる。ノルボルネン誘導体としては、アルキル、アルキリデン、芳香族置換誘導体、さらにはハロゲン、ヒドロキシ、エステル、アルコキシ、シアノ、アミド、イミド、およびシリル置換誘導体などが挙げられる。
【0032】
ノルボルネン系コポリマーを形成させるのに使用可能なモノマーの例としては、以下のようなものが挙げられる:2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、および5−フェニル−2−ノルボルネン。シクロペンタジエン、その誘導体たとえば、ジシクロペンタジエン、および2,3,−ジヒドロシクロペンタジエンのポリマーもまたそれらの例である。
【0033】
市販されているノルボルネン系コポリマーブレンドとしては以下のものが挙げられる:トパス(Topas,登録商標)、ランダムエチレンノルボルネンコポリマー、ニュージャージー州サミット(Summit,NJ)のチコナ(Ticona)から入手可能;ゼオノア(Zeonor,登録商標)、アリサイクリックシクロオレフィンコポリマー、ケンタッキー州ルイビル(Louisville,KY)のゼオン・ケミカルズ(Zeon Chemicals)から入手可能;アペル(Apel,登録商標)、ランダムエチレンノルボルネンコポリマー、日本国東京(Tokyo,Japan)の三井化学(株)(Mitsui Chemicals,Inc.)から入手可能;およびアートン(Arton,登録商標)、日本(Japan)のJSR(株)(JSR Corporation)から入手可能。コ−ポリマーのノルボルネン成分を増やしていくと、ガラス転移温度、Tgが上昇する。高いTgと低いTgを有する異なったグレードのノルボルネン系コポリマーをブレンドして複合Tgを調節すると、特に有用であることが見出された。
【0034】
ノルボルネン系環状オレフィン層のポリマー組成を選択して、少なくとも約−35℃〜85℃の温度において実質的に安定であるようにするのが好ましい。ノルボルネン系環状オレフィン層は一般に可撓性ではあるが、−35℃〜85℃の温度範囲では、その長さまたは幅が顕著に膨張することはない。
【0035】
ノルボルネン系環状オレフィン層には典型的には、主成分として、80〜200℃、より典型的には100〜160℃のTgを示すノルボルネン系環状オレフィンコポリマー物質が含まれる。いくつかの実施態様においては、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーを選択して、押出し成形が可能で、高温で加工した後でも透明性を維持するようにする。ノルボルネン系環状オレフィンフィルムまたは層は通常、透明または実質的に透明である。
【0036】
トパス(Topas,登録商標)ポリマーの各種のブレンドを調製し、動的機械分析によって評価した。それらを表1に示す。それぞれのサンプルについて、0.1ヘルツの変調周波数で0℃から180℃までスキャンして、温度の関数としてのモジュラスとTgを求めた。それらのノルボルネン系コポリマーブレンドの組成と物理的性質を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
製造時に表面模様を付与するようにして、ノルボルネン系環状オレフィン層を成形することも可能である。付与された表面模様は、艶消し表面または粗表面を形成することによって、ノルボルネン系環状オレフィン層に光拡散性を与えることができる。付与された表面模様はさらに、ノルボルネン系環状オレフィン層の表面に粗さを与えてそのフィルムの摩擦係数を低下させ、それによって、そのフィルムがガラスまたは他の硬質フィルムのような隣接する表面に粘着したりカップリングしたりする傾向を抑制することができる。
【0039】
ノルボルネン系環状オレフィン層の厚みは、用途に応じて変化させることができる。しかしながら、ノルボルネン系環状オレフィン層の厚みは典型的には、0.1〜10ミル(約2〜250マイクロメートル)である。
【0040】
追加の硬化性層
いくつかの例示的実施態様においては、追加の硬化性層を、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムに適用するか、または多層フィルムまたは光学物体の1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層に適用する。その硬化性層には、硬化性物質が含まれていて、それらには通常、前駆体ポリマーのサブユニットが含まれる。硬化性物質を選択して、その硬化性層が接触するノルボルネン系環状オレフィン層および/または各種他の層たとえば光学フィルムに適合するようにする。前駆体ポリマーのサブユニットを含む硬化性物質は、充分な流動性を有しているために、表面をコーティングすることが可能である。前駆体ポリマーのサブユニットを含む硬化性物質の固化は、硬化(たとえば、重合および/または架橋)により達成される。硬化に関連するさらなるプロセス、たとえば乾燥(たとえば、液状物の乾燥除去)および/または冷却もまた適用することができる。
【0041】
前駆体ポリマーのサブユニット
前駆体ポリマーのサブユニットは、放射線エネルギー硬化が可能なポリマーサブユニット(たとえば、モノマー)であるか、またはポリマー(たとえば、樹脂)であるのが好ましい。前駆体ポリマーのサブユニットも含めて、放射線エネルギー硬化性物質は、熱および/またはその他のエネルギー源、たとえば電子ビーム、紫外光線、可視光線などに暴露されると重合および/または架橋することが可能である。化学的な触媒、湿分、またはその他の反応剤を、エネルギー源への暴露と組み合わせて、モノマーを重合させたりおよび/またはポリマーを架橋させたりしてもよい。
【0042】
前駆体ポリマーのサブユニットは、有機溶媒系であっても、水系であっても、あるいは100%固形分(すなわち、実質的に溶媒を含まない)組成物であってもよい。硬化性層は、モノマー、オリゴマー、ポリマー、またはそれらの組合せを含んでいてもよい、溶液としてコーティングする。熱可塑性ポリマーおよび/または熱硬化性ポリマーのいずれも、さらにはそれらの組合せを、前駆体ポリマーのサブユニットとして使用することができる。前駆体ポリマーのサブユニットを硬化させると、その硬化性サブユニットが転換されて硬化ポリマー層となる。好適な前駆体ポリマーのサブユニットは、縮合硬化性、フリーラジカル硬化性、あるいは付加重合性のいずれであってもよい。付加重合性物質は、エチレン性不飽和モノマーおよび/またはオリゴマーであってよい。使用可能な架橋性物質の例としては、以下のようなものが挙げられる:フェノール樹脂、ビスマレイミドバインダー、ビニルエーテル樹脂、ペンダントしたアルファ、ベータ不飽和カルボニル基を有するアミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、アクリレート化イソシアヌレート樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、イソシアヌレート樹脂、アクリレート化ウレタン樹脂、アクリレート化エポキシ樹脂、またはそれらの混合物。
【0043】
前駆体ポリマーのサブユニットの例としては以下のようなものが挙げられる:アミノポリマーまたはアミノプラストポリマーたとえば、アルキル化尿素−ホルムアルデヒドポリマー、メラミン−ホルムアルデヒドポリマー、およびアルキル化ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒドポリマー、アクリレートポリマーたとえば、アクリレートおよび(メタ)アクリレート、アルキルアクリレート、アクリレート化エポキシ、アクリレート化ウレタン、アクリレート化ポリエステル、アクリレート化ポリエーテル、ビニルエーテル、アクリレート化オイル、およびアクリレート化シリコーン、アルキドポリマーたとえば、ウレタンアルキドポリマー、ポリエステルポリマー、反応性ウレタンポリマー、フェノール性ポリマーたとえばレゾールおよびノボラックポリマー、フェノール性ラテックスポリマー、エポキシポリマーたとえばビスフェノールエポキシポリマー、イソシアネート、イソシアヌレート、ポリシロキサンポリマーたとえばアルキルアルコキシシランポリマー、または反応性ビニルポリマー。
【0044】
好適な硬化性物質は、フリーラジカル硬化が可能な前駆体ポリマーのサブユニットから得られるものである。それらの前駆体ポリマーのサブユニットは、熱エネルギーおよび/または放射線エネルギーに暴露させると迅速に重合することができる(たとえば、光重合性)。フリーラジカル硬化が可能な前駆体ポリマーのサブユニットの一つの好適なサブセットとしては、エチレン性不飽和前駆体ポリマーのサブユニットが挙げられる。そのようなエチレン性不飽和前駆体ポリマーのサブユニットの例を挙げれば以下のようなものがある:ペンダントしたアルファ、ベータ不飽和カルボニル基を有するアミノプラストモノマーまたはオリゴマー、エチレン性不飽和モノマーまたはオリゴマー、アクリレート化イソシアヌレートモノマー、アクリレート化ウレタンオリゴマー、アクリレート化エポキシモノマーまたはオリゴマー、エチレン性不飽和モノマーまたは希釈剤、アクリレート分散体、およびそれらの混合物。「(メタ)アクリレート」という用語には、アクリレートとメタクリレートの両方が含まれる。
【0045】
エチレン性不飽和前駆体ポリマーのサブユニットには、炭素、水素および酸素、さらに場合によっては窒素およびハロゲンの原子を含む、モノマー性およびポリマー性の両方の化合物が含まれる。一般的には酸素もしくは窒素原子、またはその両方がエーテル、エステル、ウレタン、アミド、および尿素基として存在している。それらのエチレン性不飽和モノマーは、単官能、2官能、3官能、4官能またはそれ以上の官能性であってよく、(メタ)アクリレート系のモノマーも含まれる。好適なエチレン性不飽和化合物は、脂肪族モノヒドロキシ基または脂肪族ポリドロキシ基を含む化合物と、不飽和カルボン酸、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、またはマレイン酸との反応で得られるエステルであるのが好ましい。
【0046】
エチレン性不飽和モノマーの代表例を以下に挙げる:(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、スチレン、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸カプロラクトン、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルトルエン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート。その他のエチレン性不飽和物質としては、カルボン酸のモノアリル、ポリアリル、またはポリメタアリルエステル、およびアミド、たとえばフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、またはN,N−ジアリルアジパミドが挙げられる。さらなる例としては、ビニルカプロラクタムのホモポリマーおよびコポリマー、エチルオキサゾリンホモポリマー、ビニルピロリドンコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、(たとえば、ペンダントした)窒素含有残基を含む(メタ)アクリレートポリマー、ならびにおよびそれらの混合物などが挙げられる。さらにその他の窒素含有エチレン性不飽和モノマーとしては、トリス(2−アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリ(2−メタクリルオキシエチル)−s−トリアジン、アクリルアミド、メチルアクリルアミド、N−メチル−アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、またはN−ビニル−ピペリドンなどが挙げられる。
【0047】
その他の好適な前駆体ポリマーのサブユニットは、エチレン性不飽和オリゴマーおよびモノマーのブレンドである。たとえば、前駆体ポリマーのサブユニットには、アクリレート官能性ウレタン、1種または複数の単官能アクリレートモノマー、およびテトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸との反応生成物から形成されるオリゴマーのブレンドが含まれていてもよい。その他の有用なブレンドには、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸との反応生成物から形成されるオリゴマー、多官能アクリレート、および反応性希釈剤が含まれていてもよい。その他有用なブレンドには、多官能アクリレート、反応性希釈剤、および単官能臭素化モノマーが含まれていてもよい。一般に、高屈折率樹脂からは、高いゲインのフィルムが得られる。上述のブレンドの許容される範囲としては、1.50を超える、未硬化での屈折率が得られるようにすべきである。
【0048】
バルクオリゴマー
適切なゲインを有する硬化性層を得るためには、その硬化性層がそれらの前駆体ポリマーのサブユニット、特にテトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸との反応混合物の一つだけからなっているのが好ましい。たとえば、適切な前駆体ポリマー性サブユニットは、ジョージア州スマーナ(Smyrna,GA)のUCB・コーポレーション(UCB Corporation)から商品名RDX−51027として得ることができる。その物質には、主成分として2−プロペン酸、(1−メチルエチリデン)ビス[(2,6−ジブロモ−4,1−フェニレン)オキシ(2−ヒドロキシ−3,1−プロパンジイル)]エステルを含んでいる。
【0049】
第一のモノマーは、重合性組成物の中に、少なくとも約15重量%(たとえば、20重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、および50重量%、およびそれらの間の任意の量)の量で存在させるのが好ましい。典型的には、第一のモノマーの量は約65重量%を超えない。
【0050】
架橋剤
本発明の開示の硬化性物質にはさらに、少なくとも1種、好ましくは1種だけの架橋剤が含まれる。多官能モノマーを架橋剤として使用して、硬化性物質を重合させて得られる硬化されたポリマー層のTgを上昇させることができる。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)、変調DSC、または動的機械分析のような、当業者公知の方法により測定することができる。ポリマー組成物を充分に架橋させて、45℃より高いガラス転移温度とするのが好ましい。その架橋剤には、少なくとも3個の(メタ)アクリレート官能基が含まれる。メタクリレート基の方がアクリレート基よりも反応性が低い傾向を有するので、架橋剤には3個以上のアクリレート基を含んでいるのが好ましい。好適な架橋剤としてはたとえば以下のようなものが挙げられる:ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタクリレート)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、およびジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート。これらの架橋剤のいずれか1種または組合せを使用することができる。
【0051】
架橋剤は、重合性組成物中に、少なくとも約2重量%の量で存在させるのが好ましい。典型的には、架橋剤の量は約50重量%以下である。架橋剤は、約5重量%〜約25重量%の範囲の量で存在させるのがよい。
【0052】
好適な架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物などが挙げられる。より好ましい(1種または複数の)架橋剤は、メタクリレート官能基を含まない。ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)およびジペンタエリスリトールペンタアクリレートは市販されていて、たとえば、ペンシルバニア州エクストン(Exton,PA)のサルトマー・カンパニー(Sartomer Company)からの商品名、それぞれSR444およびSR399LV;日本国大阪(Osaka,Japan)の大阪有機化学工業(株)(Osaka Organic Chemical Industry,Ltd.)からの商品名ビスコート(Viscoat)#300;日本国東京(Tokyo,Japan)の東亞合成(株)(Toagosei Co.,Ltd.)からの商品名アロニックス(Aronix)M−305;および台湾の高雄(Kaohsiung,Taiwan)の長興化学工業(Eternal Chemical Co.,Ltd.)からの商品名エターマー(Etermer)235などが挙げられる。トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)およびジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(di−TMPTA)は、サルトマー・カンパニー(Sartomer Company)から商品名SR351およびSR355として市販されている。TMPTAはさらに、東亞合成(株)(Toagosei Co.,Ltd.)から商品名アロニックス(Aronix)M−309として入手可能である。さらに、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートおよびエトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリレートが、サルトマー(Sartomer)からそれぞれ商品名SR454およびSR494として市販されている。
【0053】
反応性希釈剤
硬化性物質には、場合によっては、約35重量%まで(たとえば、1〜35までの範囲の整数の)反応性希釈剤をさらに含んでいて、その硬化性物質の粘度を低下させて、その加工性を改良している。反応性希釈剤は、典型的には1.50より高い屈折率を有する、モノ−またはジ−官能性の(メタ)アクリレート官能性モノマーである。そのような反応性希釈剤は典型的には、ハロゲン化されていない(たとえば、非臭素化)。好適な反応性希釈剤としては、たとえば、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシ−2−メチルエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸4−(1−メチル−1−フェネチル)フェノキシエチル、および(メタ)アクリル酸フェニルチオエチルなどが挙げられる。
【0054】
製造を容易にするためには、1種だけの希釈剤を加えるのが好ましい。好適な希釈剤は、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、特にアクリル酸フェノキシエチル(PEA)である。アクリル酸フェノキシエチルは、2カ所以上のメーカーから市販されているが、たとえば、サルトマー(Sartomer)からは商品名SR339として;長興化学工業(Eternal Chemical Co.,Ltd.)からは商品名エターマー(Etermer)210として;そして、東亞合成(株)(Toagosei Co.,Ltd.)からは商品名TO−1166として販売されている。アクリル酸ベンジルは、マサチューセッツ州ワード・ヒル(Ward Hill,MA)のアルファアエサル・コーポレーション(AlfaAesar Corp.)から市販されている。場合によっては、ハロゲン化モノマーまたはウレタンアクリレートモノマーを加えるのが好ましいこともある。
【0055】
重合開始剤
エチレン性不飽和モノマーおよびオリゴマーを含む前駆体ポリマーのサブユニットを含む硬化性物質にさらに、重合開始剤を加えるのがよい。それらの例としては、有機過酸化物、アゾ化合物、キノン、ニトロソ化合物、アシルハライド、ヒドラゾン、メルカプト化合物、ピリリウム化合物、イミダゾール、クロロトリアジン、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ジケトン、フェノンまたはそれらの混合物などが挙げられる。市販されている好適な紫外線活性化および可視光線活性化光重合開始剤の例としては以下のようなものが挙げられる:ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から市販されている商品名、イルガキュア(IRGACURE)651(登録商標)、イルガキュア(IRGACURE)184(登録商標)、イルガキュア(IRGACURE)369(登録商標)、イルガキュア(IRGACURE)819(登録商標)、ダロキュア(DAROCUR)4265(登録商標)およびダロキュア(DAROCUR)1173(登録商標)、ならびにビー・エー・エス・エフ(BASF)(ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte,NC))から市販されている、ルシリン(LUCIRIN)TPO(登録商標)およびルシリン(LUCIRIN)TPO−L(登録商標)。好適な可視光線活性化重合開始剤の例は、米国特許第4,735,632号明細書(オックスマン(Oxman)ら)および米国特許第5,674,122号明細書(キウン(Kiun)ら)に記載がある。
【0056】
好適な重合開始剤系には、光増感剤が含まれていてもよい。代表的な光増感剤は、カルボニル基または三級アミノ基またはそれらの混合物を有していてよい。カルボニル基を有する好適な光増感剤は、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンジル、ベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、キサントン、チオキサントン、9,10−アントラキノン、またはその他の芳香族ケトンである。三級アミンを有する好適な光増感剤は、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、フェニルメチル−エタノールアミン、またはジメチルアミノエチルベンゾエートである。市販されている光増感剤には、ビッドル・ソーヤー・コーポレーション(Biddle Sawyer Corp.)からの、クオンティキュア(QUANTICURE)ITX(登録商標)、クオンティキュア(QUANTICURE)QTX(登録商標)、クオンティキュア(QUANTICURE)PTX(登録商標)、クオンティキュア(QUANTICURE)EPD(登録商標)などがある。
【0057】
一般的に、光増感剤または光重合開始剤系の量は、約0.01〜10重量%の間で変化させてよい。
【0058】
硬化性物質がエポキシまたはビニルエーテルベースの場合には、カチオン性重合開始剤を使用して重合を開始させてもよい。カチオン性重合開始剤の例としては、オニウムカチオンの塩、たとえばアリールスルホニウム塩、さらには有機金属塩たとえばイオンアレーン系などが挙げられる。その他の例が、米国特許第4,751,138号明細書(チューメイ(Tumey)ら);米国特許第5,256,170号明細書(ハーマー(Harmer)ら);米国特許第4,985,340号明細書(パラゾット(Palazotto));および米国特許第4,950,696号明細書に報告されている(これらの特許すべてを、参照により本明細書に援用する)。
【0059】
デュアルキュアおよびハイブリッドキュア光重合開始剤系もまた使用することができる。デュアルキュア光開始剤系においては、硬化または重合は、同一または別の反応メカニズムのいずれかで、2段の別のステップで起きる。ハイブリッドキュア光重合開始剤系においては、紫外線/可視光線、もしくは電子ビームの照射に暴露させることによって、同時に2種の硬化メカニズムが起きる。
【0060】
追加成分
光学フィルムにおいて使用するために、以下に記すコモノマーなど、さらなる各種の化合物を硬化性層の組成物に添加することが可能である。追加成分としては、濡れ剤、光重合開始剤、熱重合開始剤、触媒、活性化剤、架橋剤などが挙げられ、加工性、層形成、および他の層への接着性の改良のために添加することができる。硬化性層に加えるその他の添加剤としては、光安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、UV安定剤、近赤外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、染料、着色剤、および顔料が挙げられる。
【0061】
例示的実施態様においては、硬化性層へのさらなる添加剤としては、充填剤および無機粒子、たとえば無機酸化物粒子たとえば、シリカ、セリア、チタニア、アルミナ、およびジルコニアなどが挙げられる。たとえば、硬化性層を、ジルコニアまたはシリカを充填した硬化性樹脂から形成させることができる。充填剤粒子は各種の大きさと形状であってよく、たとえば1nm〜20ミクロンである。特に、充填剤粒子がナノ粒子であればよい。充填剤粒子は、非晶質であっても、結晶質であっても、あるいは半晶質であってもよい。それらの充填剤粒子はさらに、硬化性樹脂との混和性を改質するための、有機または無機表面処理を用いた表面改質をされていてもよい。充填剤粒子を、上述のような樹脂、特に高屈折率樹脂のブレンドと組み合わせて使用する場合には、得られるフィルムまたは硬化性層の屈折率さらにはゲインを改質することができる。たとえば、高屈折率樹脂と組み合わせるシリカナノ粒子は、1.50の未硬化屈折率を与えるべきであり、その一方で、ジルコニアナノ粒子充填樹脂は1.63以上の未硬化屈折率を与えるべきである。
【0062】
表面コーティング層としての硬化性層
硬化性層は、表面(たとえば、コーティング)層として機能させることができる。硬化性層は、ハードコート、ぎらつき防止コーティング、艶消し表面、拡散層、他の隣接するフィルムとのカップリングやウェットアウトを防止するためのアンチフィルムカップリング層、微細構造化光学層、接着剤層、またはそれらの組合せとして機能することができる。別な硬化性層には、たとえば、耐摩耗性またはハードコート材料;光学的コーティングなどが含まれる。さらなる機能層またはコーティングが、たとえば米国特許第6,352,761号明細書、ならびに国際公開第97/01440号パンフレット、国際公開第99/36262号パンフレット、および国際公開第99/36248号パンフレットに記載されている(これらの特許を、参照により本明細書に援用する)。これらの官能性成分は、1層または複数の硬化性層の中に組み入れてもよいし、あるいはそれらを、別のフィルムまたはコーティングの中に硬化性層として適用してもよい。
【0063】
表面模様または構造
硬化性層はさらに、艶消し表面のような表面模様を有していてもよいし、あるいは表面構造を含んでいてもよい。表面構造には、スリー・エム・カンパニー(3M Company)の輝度増強フィルムに見られるような、各種のプリズム状の微細構造が含まれていてもよい。上述の前駆体ポリマーユニットを硬化性物質において使用して、表面模様または微細構造を有する硬化性層を形成させることが可能である。ある実施態様においては、ノルボルネン系環状オレフィン層の上にコーティングされた硬化性物質が光硬化性物質である。
【0064】
ある実施態様においては、硬化性層が、表面構造、たとえば輝度増強フィルムのそれに類似した直線的なプリズム状の構造を有する層である。表面構造化させた層のための硬化性物質は、高屈折率オリゴマー、多官能架橋剤、および反応性希釈剤を含むことができる。一実施態様においては、その硬化性物質には、エチレン性不飽和モノマー、エチレン性不飽和オリゴマー、またはそれらのブレンドが含まれ、ここでその未硬化物質は1.50よりも高い屈折率を有している。一実施態様においては、表面構造化層のための硬化性物質には、高屈折率オリゴマー、ウレタンアクリレート、反応性希釈剤、および高屈折率モノマーを含むことができる。
【0065】
「屈折率(index of refractionまたはrefractive index)」は、物質(たとえば、モノマー)の絶対屈折率を指していて、これは、自由空間中の電磁放射線の速度の、その物質中における電磁放射線の速度に対する比率と理解されたい。屈折率は、公知の方法を用いて測定することが可能で、一般的には、可視光線領域においてアッベ屈折計(たとえば、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburg,PA)のフィッシャー・インスツルメンツ(Fisher Instruments)から市販されている)を用いて測定する。一般に認められていることであるが、測定される屈折率の値は、装置に依存してある程度変化する可能性がある。
【0066】
また別な実施態様においては、硬化性物質にはさらに、テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物が含まれる。さらなる実施態様においては、エチレン性不飽和モノマーが多官能アクリレートである。その物質が、実質的にメタクリレート官能性を有していないのが好ましい。その多官能アクリレートは、トリメチロールプロパントリアクリレートとすることができる。さらなる実施態様においては、その硬化性物質にはさらに、アクリル酸2−フェノキシエチルまたはアクリル酸トリブロモフェノキシエチルが含まれる。
【0067】
上述の前駆体ポリマーのサブユニットの混合物を、硬化性物質の中に使用してもよいが、製造を容易にするためには、可能な限り別なモノマーを使用しないのが好ましい。適切なゲインを有する硬化性層を得るためには、その硬化性層がそれらの前駆体ポリマーのサブユニット、特にテトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸との反応混合物の一つだけからなっているのが好ましい。たとえば、適切な前駆体ポリマー性サブユニットは、ジョージア州スマーナ(Smyrna,GA)のUCB・コーポレーション(UCB Corporation)から商品名RDX−51027として得ることができる。その物質は、主成分として2−プロペン酸、(1−メチルエチリデン)ビス[(2,6−ジブロモ−4,1−フェニレン)オキシ(2−ヒドロキシ−3,1−プロパンジイル)]エステルを含んでいる。
【0068】
硬化性接着剤物質
いくつかの実施態様においては、その硬化性層が接着剤層である。それらの実施態様においては、その硬化性物質は硬化性接着剤である。上述の前駆体ポリマーのサブユニットは、硬化性接着剤として使用することが可能である。さらなる実施態様においては、その硬化性接着剤は2種以上のエチレン性不飽和モノマーを含むが、ここで、少なくとも1種のモノマーは窒素を含む。さらなる実施態様においては、その硬化性接着剤に、窒素含有エチレン性不飽和(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和(メタ)アクリレートとを含む。さらに別な実施態様においては、その硬化性接着剤に、窒素含有エチレン性不飽和アクリレートモノマーと窒素を含まないエチレン性不飽和アクリレートモノマーとを含む。たとえば、前駆体ポリマーのサブユニットは、アクリレート官能性ウレタンオリゴマーと1種または複数の単官能アクリレートモノマーとを含む。そのアクリレートモノマーは、5官能アクリレート、4官能アクリレート、3官能アクリレート、2官能アクリレート、単官能アクリレートポリマー、またはそれらの組合せであってよい。
【0069】
具体的には、その硬化性層が接着剤層として機能して、光学フィルムをノルボルネン系環状オレフィン層に接着させることができる。硬化性層が接着剤層として機能する場合、その硬化性物質は、放射線エネルギー硬化性接着剤と呼ばれる。いくつかの実施態様においては、その硬化性層に、接着剤的な性質を有する光硬化性物質が含まれる。
【0070】
ノルボルネン系環状オレフィン層またはフィルムには、上述の1種または複数の硬化性層を用いてコーティングすることができる。
【0071】
光学フィルム
各種の光学フィルムが、本発明の開示に合わせて使用するのに適している。具体的には、配向ポリマー光学フィルムも含めたポリマー光学フィルムが本発明の開示に合わせて使用するのに適しているが、その理由は、それらが時として、温度の変動に暴露させたときに寸法不安定性の問題を起こす可能性があるからである。
【0072】
具体的には、ノルボルネン系環状オレフィン層は、寸法安定性のメリットが得られるポリマーフィルムと共に使用するのに適している。たとえば、いくつかのポリマー光学フィルムは、温度または湿度の変動に暴露されると寸法不安定性を示す可能性がある。その光学フィルムは、典型的には薄い。好適なフィルムとしては、各種の厚みのフィルムが挙げられるが、特に厚み15ミル(約380マイクロメートル)未満の、より典型的には厚み10ミル(約250マイクロメートル)未満の、特には厚み7ミル(約180マイクロメートル)未満のフィルムが挙げられる。
【0073】
その光学フィルムにはポリマー多層光学フィルムが含まれるが、そのようなものとしては、広い帯域幅において高い反射率を有する多層フィルム(全部が複屈折光学層、部分的に複屈折光学層、あるいは全部が等方性光学層のいずれで構成されていてもよい)および連続相/分散相光学フィルムなどが挙げられる。光学フィルムには、偏光子およびミラーも含まれる。一般的に、多層光学フィルムは鏡面反射板であり、連続相/分散相光学フィルムは散乱反射板であるが、それらの特性は普遍的なものではない(たとえば、米国特許第5,867,316号明細書に記載の散乱多層反射型偏光子を参照されたい)。これらの光学フィルムは単に説明のためのものであって、本発明の開示に合わせて有用な好適なポリマー光学フィルムのすべてを網羅していることを意味している訳ではない。
【0074】
多層反射光学フィルムと連続相/分散相反射光学フィルムのいずれもが、少なくとも1種の偏光配向の選択的な反射光に対する、少なくとも2種の異なった物質(好ましくはポリマー)の間の屈折率の違いに依存している。好適な散乱反射型偏光子には、米国特許第5,825,543号明細書(参照により本明細書に援用する)に記載の連続相/分散相光学フィルム、さらには米国特許第5,867,316号明細書(参照により本明細書に援用する)に記載の散乱的反射光学フィルムが含まれる。
【0075】
本発明の開示において使用するのに特に好適な光学フィルムは、たとえば下記の特許に記載されているような多層反射フィルムである:米国特許第5,882,774号明細書および米国特許第6,352,761号明細書、ならびに国際公開第95/17303号パンフレット;国際公開第95/17691号パンフレット;国際公開第95/17692号パンフレット;国際公開第95/17699号パンフレット;国際公開第96/19347号パンフレット;および国際公開第99/36262号パンフレット(これらの特許のすべてを、参照により本明細書に援用する)。そのフィルムは、ブルースター角(Brewster angle)(p偏光の反射率がゼロとなるような角度)が極めて大または存在しない、ポリマー層の多層スタックであるのが好ましい。そのフィルムから、そのp偏光の反射率が、入射角とともに徐々に低下するか、入射角とは独立しているか、あるいは、入射角が法線から離れると同時に増大するような、多層ミラーまたは偏光子が作られる。そのような多層反射型偏光子の形態で市販されているものは、ミネソタ州セント・ポール(St.Paul,Minnesota)のスリー・エム(3M)により、デュアル・ブライトネス・エンハンスト・フィルム(Dual Brightness Inhanced Film、DBEF)として販売されている。本明細書においては、多層反射光学フィルムは、本発明の開示の光学フィルム構造、光学フィルムの製造方法および使用方法を説明するための一例として用いられている。本明細書に記載された、構造、方法および技術は、他のタイプの好適な光学フィルムにも適合させ、応用することが可能である。好適な光学フィルムについてのさらなる説明を以下において提供する。
【0076】
好適な多層反射光学フィルムは、一軸または二軸配向させた複屈折の第一の光学層を第二の光学層と交互に配置する(たとえば、交互にはさみこむ)ことにより作ることができる。いくつかの実施態様においては、その第二の光学層が等方性屈折率(配向層の面内屈折率の一つにほぼ等しい)を有する。二つの異なった光学層の界面は、光反射面を形成する。二つの層の屈折率がほぼ等しい方向に平行な面における偏光は、実質的に透過されるであろう。二つの層が異なった屈折率を有している方向に平行な面における偏光は、少なくとも部分的には反射されるであろう。層の数を増やしたり、第一の層と第二の層との間の屈折率の差を大きくしたりすることにより、反射率を上げることができる。多層光学フィルムは、一般的には約2層〜5000層の光学層、典型的には約25層〜2000層の光学層、多くの場合約50層〜1500層の光学層または約75層〜1000層の光学層を有している。複数の層を有するフィルムに異なった光学的厚さを有する層を持たせることにより、ある範囲の波長におけるフィルムの反射率を高くすることができる。たとえば、フィルムに、(たとえば、通常の入射光に対して)個々にチューニングした対になった層を持たせて、特定の波長を有する光を最適に反射させるようにすることができる。単一の多層スタックについてのみ説明をしているが、次々と組み合わせてフィルムを形成する複数のスタックから多層光学フィルムを製造することも可能である、ということは認識しておかれたい。上述の多層光学フィルムは、米国特許出願第09/229724号明細書、および米国特許出願公開第2001/0013668号明細書に従って製造することができる(これら両方の特許を、参照により本明細書に援用する)。
【0077】
偏光子は、一軸配向させた第一の光学層と、等方性屈折率(その配向層の面内屈折率の一つとほぼ等しい)を有する第二の光学層とを組み合わせることによって、作ることができる。別な方法として、両方の光学層を複屈折ポリマーから形成させ、複数回の延伸プロセスにより配向させて、単一の面内方向における屈折率がほぼ等しくなるようにする。2層の光学層の界面が、光の一つの偏光のための光反射面を形成する。二つの層の屈折率がほぼ等しい方向に平行な面における偏光は、実質的に透過されるであろう。二つの層が異なった屈折率を有している方向に平行な面における偏光は、少なくとも部分的には反射されるであろう。等方性屈折率を有するかまたは低い(たとえば、約0.07以下の)面内複屈折を有する偏光子の場合には、その第二の光学層の面内屈折率(nxおよびny)は、第一の光学層の一つの面内屈折率(たとえば、ny)にほぼ等しい。したがって、第一の光学層の面内複屈折は、その多層光学フィルムの反射率の指標である。典型的には、面内複屈折が高い程、多層光学フィルムの反射率が向上することが判っている。第一および第二の光学層の屈折の面外屈折率(nz)が等しいかあるいはほぼ等しい(たとえば、差が0.1以下、好ましくは0.05以下)である場合、その多層光学フィルムはさらに、より良好な角外(off−angle)反射率を有する。少なくとも一つの一軸複屈折材料を用いてミラーを作ることができるが、この場合、二つの屈折率(典型的にはx軸とy軸方向、あるいは、nxおよびny)はほぼ等しく、第三の屈折率(典型的にはz軸方向、またはnz)が異なっている。x軸とy軸は面内の軸と定義され、この場合、それらは多層フィルムの中の所定の層の面を表しており、それぞれの屈折率nxとnyは面内屈折率と呼ばれる。一軸複屈折系を作る一つの方法は、多層ポリマーフィルムを二軸配向させる(二つの軸方向に延伸させる)ものである。隣接している層が、異なった応力誘導複屈折を有している場合には、多層フィルムの二軸配向によって、両方の軸に平行な面における隣接層の屈折率の間に差が生じ、その結果、両方の偏光面の光の反射が起きる。一軸複屈折材料は、正または負いずれかの一軸複屈折を有する。正の一軸複屈折は、z方向における屈折率(nz)が面内屈折率(nxおよびny)よりも大きいときに起きる。負の一軸複屈折は、z方向における屈折率(nz)が面内屈折率(nxおよびny)よりも小さいときに起きる。n2x=n2y=n2zとなるようにn1zを選択し、その多層フィルムが二軸配向されている場合には、p−偏光のブルースター角は存在せず、そのため、すべての入射角で一定の反射率となる。相互に直交する二つの面内角で配向させた多層フィルムは、層の数、f比、屈折率などに応じて尋常ならぬ高パーセントの入射光を反射させることが可能で、極めて効率の高いミラーである。ミラーは、顕著に異なる面内屈折率を有する一軸配向させた層を組み合わせることによっても作ることができる。
【0078】
第一の光学層が一軸または二軸配向させた複屈折ポリマー層であるのが好ましい。第一の光学層の複屈折ポリマーは、典型的には、延伸させたときに大きな複屈折を与えることが可能であるように選択する。用途に応じて、フィルムの面の二つの直交方向の間、一つまたは複数の面内方向の間およびフィルム面に垂直な方向、あるいはそれらの組合せで、複屈折を起こさせてもよい。第一のポリマーは、延伸の後で複屈折を維持していなければならず、それによって、仕上がりフィルムに所要の光学的性質を付与することができる。第二の光学層が、複屈折性で一軸または二軸配向させたポリマー層であってもよいし、あるいは、第二の光学層が、配向させた後に第一の光学層の少なくとも一つの屈折率とは異なる等方性屈折率を有していてもよい。第二のポリマーが、延伸させたときに複屈折をほとんどまたは全く示さないか、あるいは、逆側の複屈折(正−負、または負−正)を示して、仕上がりフィルムにおいて、そのフィルム面屈折率が第一のポリマーのそれとは可能な限り異なるようになるのが有利である。ほとんどの用途においては、第一のポリマー、第二のポリマーのいずれもが、対象となるフィルムの関心のある帯域幅の中のどの吸光帯をも有していないのが有利である。したがって、その帯域幅の中のすべての入射光は反射されるか、または透過される。しかしながら、いくつかの用途においては、第一および第二のポリマーの一方または両方が、特定の波長を、全部または部分的に吸収することが有用であることもありうる。
【0079】
多層光学フィルムの第一および第二の光学層ならびに任意の非光学層は、たとえば、ポリエステルのようなポリマーからなっている。本発明に開示の多層光学フィルムにおいて使用するポリエステルには一般に、カルボキシレートおよびグリコールサブユニットを含み、カルボキシレートモノマー分子をグリコールモノマー分子と反応させることにより生成させる。それぞれのカルボキシレートモノマー分子は2個以上のカルボン酸または官能基を有しており、それぞれのグリコールモノマー分子は2個以上のヒドロキシ官能基を有している。カルボキシレートモノマー分子はすべて同一であってもよいし、あるいは、2種以上の異なったタイプの分子であってもよい。グリコールモノマー分子についても同様である。「ポリエステル」という用語にはさらに、グリコールモノマー分子を炭酸エステルと反応させて誘導されるポリカーボネートも含まれる。
【0080】
ポリエステル層のカルボキシレートサブユニットを形成するために使用するのに適したカルボキシレートモノマー分子としては、たとえば以下のようなものを挙げることができる:2,6−ナフタレンジカルボン酸およびその異性体;テレフタル酸;イソフタル酸;フタル酸;アゼライン酸;アジピン酸;セバシン酸;ノルボルネンジカルボン酸;ビシクロオクタンジカルボン酸;1,6−シクロヘキサンジカルボン酸およびその異性体;t−ブチルイソフタル酸、トリメリット酸、スルホン化イソフタル酸ナトリウム;2,2'−ビフェニルジカルボン酸およびその異性体;ならびに、それらの酸のアルキルエステルたとえば、メチルまたはエチルエステル。本明細書の文脈においては、「低級アルキル」という用語は、C1〜C10直鎖状または分岐状のアルキル基を指す。
【0081】
ポリエステル層のグリコールサブユニットを形成するために使用するのに適したグリコールモノマー分子としては、以下のようなものを挙げることができる:エチレングリコール;プロピレングリコール;1,4−ブタンジオールおよびその異性体;1,6−ヘキサンジオール;ネオペンチルグリコール;ポリエチレングリコール;ジエチレングリコール;トリシクロデカンジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびその異性体;ノルボルナンジオール;ビシクロオクタンジオール;トリメチロールプロパン;ペンタエリスリトール;1,4−ベンゼンジメタノールおよびその異性体;ビスフェノールA;1,8−ジヒドロキシビフェニルおよびその異性体;ならびに1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン。
【0082】
本発明の開示の光学フィルムにおいて有用な一つのポリエステルはポリエチレンナフタレート(PEN)であって、これはたとえば、ナフタレンジカルボン酸をエチレングリコールと反応させることによって製造することができる。ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)が多くの場合、第一のポリマーとして選択される。PENは、高い正の応力光学係数を有し、延伸後でも効果的に複屈折を維持し、可視領域においてほとんどまたは全く吸光度を持たない。さらにPENは、等方的状態において高い屈折率を有している。波長550nmの偏光させた入射光に対するその屈折率は、偏光面が延伸方向に平行である場合には、約1.64から最高約1.9まで増大する。分子配向を上げると、PENの複屈折も高くなる。分子配向は、その材料をより大きな延伸比で延伸させ、その延伸させた状態に固定維持することにより、上げることができる。第一のポリマーとして好適なその他の半晶質ポリエステルとしては、たとえば、ポリブチレン2,6−ナフタレート(PBN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびそれらのコポリマーなどが挙げられる。
【0083】
第一のポリマーとして有用なさらなる物質は、たとえば以下の特許に記載されている:米国特許第6,352,762号明細書および米国特許第6,498,683明細書、ならびに米国特許出願第09/229724号明細書、米国特許出願第09/232332号明細書、米国特許出願第09/399531号明細書、および米国特許出願第09/444756号明細書(これらの特許を、参照により本明細書に援用する)。第一のポリマーとして有用な一つのポリエステルは、coPENであって、これは、90モル%のナフタレンジカルボン酸ジメチルおよび10モル%のテレフタル酸ジメチルとから誘導されるカルボキシレートサブユニットと、100モル%のエチレングリコールサブユニットから誘導されるグリコールサブユニットを有し、その固有粘度(IV)が0.48dL/gのものである。その屈折率は約1.63である。本明細書においてはこのポリマーを、低融点PEN(90/10)と呼ぶことにする。また別の有用な第一のポリマーは、0.74dL/gの固有粘度を有するPETで、イーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Company)(テネシー州キングスポート(Kingsport,TN))から入手可能なものである。偏光子フィルムを製造するのに、非ポリエステルポリマーもまた有用である。たとえば、ポリエーテルイミドを、ポリエステルたとえばPENおよびcoPENと共に使用して、多層反射ミラーを製造することができる。その他のポリエステル/非ポリエステルの組合せ、たとえばポリエチレンテレフタレートとポリエチレンとを組み合わせたもの(たとえば、ミシガン州ミッドランド(Midland,MI)のダウ・ケミカル・コーポレーション(Dow Chemical Corp.)から商品名エンゲージ(Engage)8200として入手可能なもの)も使用することが可能である。
【0084】
第二のポリマーを選択して、仕上がりフィルムの中で、少なくとも一つの方向でのその屈折率が、第一のポリマーの同じ方向での屈折率とは顕著に異なるようにしなければならない。ポリマー材料は典型的には散乱性、すなわち波長によって屈折率が変動するので、それらの条件は、対象とする特定のスペクトル帯域幅を条件に入れて考えなければならない。上述の説明から、第二のポリマーの選択は、問題としている多層光学フィルムの意図する用途だけではなく、第一のポリマーのために行った選択、さらには加工条件にも依存するということを理解されたい。
【0085】
第二の光学層は、各種の第二のポリマーから製造することができるが、その第二のポリマーは、第一のポリマーと適合するガラス転移温度を有し、第一のポリマーの等方性屈折率と類似の屈折率を有するものである。上述のCoPENポリマー以外の好適なポリマーの例としては、ビニルナフタレン、スチレン、無水マレイン酸、アクリレート、およびメタクリレートのようなモノマーから製造したビニルポリマーおよびコポリマーが挙げられる。そのようなポリマーの例としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレートたとえばポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、およびイソタクチックまたはシンジオタクチックポリスチレンなどが挙げられる。別なポリマーとしては、ポリスルホン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアミド酸(polyamic acid)、およびポリイミドなどのような縮合ポリマーが挙げられる。さらに、第二の光学層は、ポリエステルおよびポリカーボネートのようなポリマーおよびコポリマーから形成させることも可能である。
【0086】
第二のポリマーの例を挙げれば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のホモポリマー、たとえば、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のイネオス・アクリリックス・インコーポレーテッド(Ineos Acrylics Inc.)から商品名CP71およびCP80として入手可能なもの、またはPMMAよりも低いガラス転移温度の、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)などがある。さらなる第二のポリマーとしては、PMMAのコポリマー(coPMMA)たとえば、75重量%のメタクリル酸メチルエステル(MMA)モノマーと25重量%のアクリル酸エチル(EA)モノマーから製造されたcoPMMA(イネオス・アクリリックス・インコーポレーテッド(Ineos Acrylics Inc.)から商品名パースペックス(Perspex)CP63として入手可能)、MMAコモノマー単位とメタクリル酸n−ブチル(nBMA)コモノマー単位とから形成されたcoPMMA、または、PMMAとポリフッ化ビニリデン(PVDF)とのブレンドたとえば、テキサス州ヒューストン(Houston,TX)のソルベイ・ポリマーズ・インコーポレーテッド(Solvay Polymers,Inc.)から商品名ソーレフ(Solef)1008として入手可能なものなどが挙げられる。
【0087】
さらにその他の第二のポリマーを挙げれば次のようなものがある:ポリオレフィンコポリマーたとえば、ポリ(エチレン−コ−オクテン)(PE−PO)で、ダウ・デュポン・エラストマーズ(Dow−Dupont Elastomers)から商品名エンゲージ(Engage)8200として入手可能なもの;ポリ(プロピレン−コ−エチレン)(PPPE)で、テキサス州ダラス(Dallas,TX)のフィナ・オイル・アンド・ケミカル・カンパニー(Fina Oil and chemical Co.)から商品名Z9470として入手可能なもの、およびアタクチックポリプロピレン(aPP)とイソタクチックポリプロピレン(iPP)とのコポリマーであって、ユタ州ソルト・レーク・シティ(Salt Lake City,UT)のハンツマン・ケミカル・コーポレーション(Huntsman Chemical Corp.)から商品名レックスフレックス(Rexflex)W111として入手可能なもの。第二の光学層は、官能化ポリオレフィン、たとえば線状低密度ポリエチレン−g−無水マレイン酸(LLDPE−g−MA)、たとえばデラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)のイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー・インコーポレーテッド(E.I.DuPont de Nemours and Co.,Inc.)から商品名バイネル(Bynel)4105として入手可能なものから作ることもできる。
【0088】
偏光子の場合の層の特に好適な組合せとしては、PEN/co−PEN、ポリエチレンテレフタレート(PET)/co−PEN、PEN/sPS、PET/sPS、PEN/イースター(Eastar)、およびPET/イースター(Eastar)が挙げられるが、ここで「co−PEN」はナフタレンジカルボン酸をベースとするコポリマーまたはブレンド(上述)を指し、イースター(Eastar)はイーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Co.)から市販されているポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートである。
【0089】
ミラーの場合の層の特に好適な組合せとしては、PET/PMMAもしくはPET/coPMMA、PEN/PMMAもしくはPEN/coPMMA、PET/エクデル(ECDEL)、PEN/エクデル(ECDEL)、PEN/sPS、PEN/THV、PEN/co−PET、およびPET/sPSが挙げられるが、ここで「co−PET」は、テレフタル酸をベースとするコポリマーまたはブレンド(上述)を指し、エクデル(ECDEL)はイーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Co.)から市販されている熱可塑性ポリエステルであり、そしてTHVはスリー・エム・カンパニー(3M Co.)から市販されているフルオロポリマーである。PMMAはポリメタクリル酸メチルを指し、PETGは、第二のグリコール(通常はシクロヘキサンジメタノール)を採用したPETのコポリマーを指している。sPSはシンジオタクチックポリスチレンのことを指す。
【0090】
いくつかの実施態様においては、光学フィルムの外側表面(主面)の一方または両方が、ポリエステルコポリマー、たとえば上述のCo−PENであるのが好ましい。
【0091】
方法A
ノルボルネン系環状オレフィンの上にコーティングされた追加の表面層
本発明の開示の一つの態様は、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムの上、または多層フィルムのノルボルネン系環状オレフィン層の上に、硬化性層を形成させるための方法である。この方法では、硬化性層とノルボルネン系環状オレフィン層またはフィルムとを共押出しする必要がない。この方法を使用すれば、1層または複数の硬化性層を、ノルボルネン系環状オレフィンフィルム/層の主面の上にコーティングすることができる。ノルボルネン系環状オレフィン層の上にコーティングするための硬化性層(1層または複数)には、1種または複数の硬化性物質を含んでいるのが好ましい。好適な硬化性物質、硬化方法、および硬化性物質の追加成分については、先に述べた。
【0092】
硬化性層のノルボルネン系環状オレフィンフィルムへの接着性は、硬化性層のコーティングとともにインラインでノルボルネン系環状オレフィンフィルム表面をコロナ処理することにより改良される。コロナ処理とは、ポリマー表面の上に向けた、誘電バリヤー放電(dielectric barrier discharge)を指している。本明細書で使用するとき、コロナ処理とは一般に、中性のガス分子に電子衝撃を与えることによって、気相活性種(たとえば、フリーラジカル、イオン、または電気的もしくは振動的に励起された状態)が作られる各種のプロセスを指している。たとえば、空気または窒素を使用することができる。本明細書で使用するとき、コロナ処理としては多くの他の用語が知られている。それらの用語を挙げれば以下のようなものがある(これらに限定される訳ではない):誘電−バリヤー放電、コロナ、コロナ放電、バリヤー放電、常圧プラズマ、常圧グロー放電、常圧非平衡プラズマ、無声放電、常圧部分イオン化ガス、フィラメント放電、直接もしくは遠隔常圧放電、外部持続もしくは自己持続常圧放電など。
【0093】
空気コロナ(空気誘電−バリヤー放電)は、実質的に空気からなる雰囲気中で維持される。窒素コロナは、実質的に窒素からなる雰囲気中で維持される。好適な窒素コロナ処理プロセスは、同一出願人による、米国特許出願第10/883,263号明細書(2004年7月1日出願)に記載されている(その開示を、参照により本明細書に援用する)。窒素を用いるコロナ処理では通常、コロナ要素を必要とし、処理される表面は、コロナ処理の間隔離して、所望のガス環境を保つ。
【0094】
表面処理のためのガスを選択する際に、先と同程度の配慮を必要とする重要な点は、得られる表面の化学構造に対する、動的または時間依存的な性質である。空気または窒素コロナ処理は、インラインで実施するのが好ましい。硬化性層の接着性は、コロナ処理から硬化性物質の適用までの時間が短い程改良される。一実施態様においては、窒素コロナ処理から約1時間以内に、硬化性物質をノルボルネン系環状オレフィン層の上にコーティングする。さらなる実施態様においては、窒素コロナ処理から硬化性物質のコーティングまでの時間が、1時間未満、30分未満、10分未満、5分未満、あるいは2分未満である。好ましい実施態様においては、ノルボルネン系環状オレフィン層の空気または窒素コロナ処理から、硬化性物質のコーティングまでの時間が、約75秒以下または約60秒以下または約30秒以下である。コロナ処理に代えて他の同様な処理、たとえば火炎処理を使用してもよい。本明細書で使用するとき、「火炎」という用語には、予備混合炎と拡散炎の両方、ならびに層流炎と乱流炎の両方が含まれる。火炎処理は、スリー・エム・カンパニー(3M Co.)に譲渡された米国特許第5,753,754号明細書;米国特許第5,891,967号明細書;米国特許第5,900,317号明細書;および米国特許第6,780,519号明細書に記載がある(参照により本明細書に援用する)。また別な方法は、オゾン処理、オゾン化、またはオゾン暴露と紫外光(特に200〜300nmの波長での)暴露の組合せである。それらの表面処理は、表面処理の後の他のフィルム加工工程(1工程または複数の工程)たとえば他の光学フィルムへの接着剤コーティングおよび積層を含めた、インラインシステムまたは方法を用いて適用することも可能である。
【0095】
硬化性層は、1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層と光学フィルムとの間に位置させることができる。別な方法、あるいは追加の方法として、硬化性層を1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層の上に位置させるが、ここでその硬化性層がその光学フィルムには隣接しないようにすることもできる。一実施態様においては、硬化性層をノルボルネン系フィルムに適用する。この「調製された」ノルボルネン系フィルムを、後ほど光学フィルムに適用してもよい。
【0096】
硬化性層は通常、透明であるかまたは実質的に透明であって、それにより、そのフィルムまたは光学物体の光学的性質の低下を防ぐ。硬化性層の厚みはその用途次第で決まるであろう。硬化性接着剤層の厚みは、典型的には、2ミル(約50マイクロメートル)未満、より典型的には約1ミル(約25マイクロメートル)であるが、ただし約0.5ミル(約12マイクロメートル)以上である。いくつかの実施態様においては、たとえば図1および図4〜図8のような、表面層としての硬化性層は、その厚みが典型的には2ミル未満;典型的には約1.5ミル未満、最も典型的には1ミル未満である。他の実施態様においては、硬化性層の厚みが最も典型的には約1ミルである。他の実施態様においては、硬化性層の厚みを約0.5ミル未満とすることができる。
【0097】
硬化性層の厚みは、光学物体を薄く保つには最小限とするのが好ましい。それにもかかわらず、特定の用途で必要であれば、もっと厚い硬化性層とすることもできる。
【0098】
硬化性層をノルボルネン系環状オレフィン層と組み合わせることに関するさらなる説明は、後述の実施例Iを参照されたい。
【0099】
方法B
本発明の開示の複合光学物体を形成させるためには、各種の方法を使用してよい。上述のように、光学物体は各種の構成をとることが可能であり、そのため、最終的な光学物体の構成に応じて、それらの方法も変化する。一つの方法は、ノルボルネン系環状オレフィンポリマーを溶融状態で他の光学物体に適用するものである。この工程は、接着剤層を有するノルボルネン系環状オレフィン層を光学フィルムの上に共押出しコーティングすることにより実施することができる。
【0100】
押出し加工可能な接着剤層(たとえばタイ層)を、ノルボルネン系環状オレフィン層と、光学層と、またはその両方と共に一体的に成形してもよい。接着剤層は、同時に共押出しするか、または光学フィルムの上に順次に押出し加工することによって、ノルボルネン系環状オレフィン層または光学層と共に一体的に成形することができる。接着剤層は、1層または複数層のノルボルネン系環状オレフィン層と光学フィルムとの間に位置させる。たとえば多層構造については図2〜図8を参照されたい。そこでは、ノルボルネン系環状オレフィン層14と接着剤層16をこの方法で形成させることができる。
【0101】
押出し加工可能な接着剤層は通常、透明であるかまたは実質的に透明であって、それにより、そのフィルムの光学的性質の低下を防ぐ。中間の接着剤層は、典型的には、2ミル(約50マイクロメートル)〜0.5ミル(約12マイクロメートル)の間の厚みである。より典型的には、接着剤層は2ミル〜1ミルの間である。接着剤層の厚みは、光学物体を薄く保つには最小限とするのが好ましい。
【0102】
接着剤層の組成は、典型的には、それらが接触する、光学フィルムおよび/またはノルボルネン系環状オレフィン層と適合性が得られるように選択する。接着剤層は、光学フィルムとノルボルネン系環状オレフィン層との両方に充分に結合しなければならない。したがって、接着剤層に使用する物質の選択は多くの場合、その光学物体の他の構成成分の組成に応じて変化させる。(1層または複数の)接着剤層は、ノルボルネン系環状オレフィンコポリマーと共に共押出しするためには、250℃を超える温度での溶融相において熱的に安定であるのが好ましい。したがって、接着剤層は、250℃を超える温度での押出しの間に、実質的に分解することはない。
【0103】
具体的な実施においては、接着剤層は、押出し加工可能で透明なホットメルト接着剤である。接着剤層に有用な物質としては、以下のようなものが挙げられる:酢酸ビニルを用いて変性したポリオレフィン、たとえばデュポン(Dupont)からのエルバックス(Elvax,登録商標)ポリマー、および無水マレイン酸を用いて変性したポリオレフィン、たとえばデュポン(Dupont)からのバイネル(Bynel,登録商標)ポリマー、および無水マレイン酸を用いて変性したエチレンベースのポリマー、たとえば三井化学(Mitsui Chemicals)からのアドマー(Admer,登録商標)ポリマー、およびエチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジルターポリマー、たとえばアトフィナ・ケミカルズ(Atofina Chemicals)(現在は、トータル・ペトロケミカルズ・インコーポレーテッド(Total Petrochemicals,Inc.))からのロテイダー(Lotader,登録商標)ポリマー。その他の接着剤層としては、エチレンと各種のコモノマーとのコポリマーおよびターポリマーが挙げられる。使用可能なコモノマーとしては以下のようなものが挙げられる:アクリレート化合物、たとえばアクリル酸メチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸ブチル、酢酸ビニル、無水マレイン酸、メタクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ならびにメタクリル酸を含めたアクリル酸化合物。それらのコポリマーおよびターポリマーは、そのコポリマーまたはターポリマーのポリマー骨格の上にグラフトさせた反応性基をさらに含んでいてもよい。グラフト反応性基には無水マレイン酸が含まれていてもよい。接着剤層のための他の材料としては、無水マレイン酸をグラフトしたポリエチレンまたは他のポリオレフィンが挙げられる。
【0104】
先に光学フィルムのところで挙げたコモノマーなど、各種の追加の化合物を加えることができる。押出し加工助剤、たとえば可塑剤および滑剤などを添加して、加工性および他の層への接着性を改良することもできる。さらに、無機粒子またはポリマービーズのような粒子を使用することもできる。
【0105】
図9では、本発明の開示の実施に従って、多層フィルム、たとえば光学物体を形成するためのシステムの平面図を示す。光学フィルム32を含むスプール30から巻き戻し、場合によっては赤外線加熱ステーション34で加熱する。光学フィルム32は、場合によっては50℃を超える温度にまで、より一般的には約65℃の温度にまで加熱する。ノルボルネン系環状オレフィン層を形成させるための組成物36と、接着剤層を形成させるための組成物38を、フィードブロック40を通して供給し、予備加熱した光学フィルム32の上に共押出しコーティングする。次いで、その光学フィルムをロール42と44の間で加圧する。場合によっては、ロール42もしくはロール44、またその両方が、艶消し仕上げ面を有していて、ノルボルネン系環状オレフィン層の上にわずかに散乱を有する表面を与える。冷却してから、そのコーティングした光学フィルム46を巻取り機48の上に巻き上げることができ、次いでさらなる加工、たとえばシートへの切断などを行って、仕上がり多層フィルム、たとえば光学物体を形成することができる。場合によっては、実施例IIに記載するようにして、その多層フィルムに硬化性層を加えてもよい。フラットな多層フィルム、たとえば光学物体が望ましいようないくつかの実施態様においては、コアの上に巻き上げる前に多層フィルムを冷却するのが好ましい。さらに、巻き上げの際に多層フィルムの張力を調節、たとえば低下させて、コアの上への巻き上げによって起きるカールを抑制してもよい。
【0106】
本発明の開示の一実施態様においては、方法Bと類似の方法で、共押出ししたノルボルネン系環状オレフィンフィルムと同時に多層フィルムを形成させる。少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層を含むその多層フィルムを、たとえば、光学物体の材料の個々のシートを加熱空気中で延伸させることによって、配向させることも可能である。たとえば、国際公開第99/36812号パンフレット(発明の名称「アン・オプティカル・フィルム・アンド・プロセス・フォア・マニュファクチャー・ゼアオブ(An Optical Film and Process for Manufacture Thereof)」)の教示にある具体的な方法と材料の記載に従って、光学フィルムを配向させることができる(そのすべてを、参照により本明細書に援用する)。
【0107】
ノルボルネン系環状オレフィンフィルム(すなわち、共押出しを加えていないもの)は、ポストテンターで多層光学フィルムの上に貼り付けるのが好ましい。
【0108】
実施例I
UV硬化性物質をノルボルネン系環状オレフィン基材に付着させた。ノルボルネン系環状オレフィン基材には、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムと、光学物体の表面の上のノルボルネン系環状オレフィン層とが含まれている。そのノルボルネン系環状オレフィン基材を空気コロナを用いて処理し、直後に硬化性物質を用いてコーティングする。このインライン表面処理を実施するには、図10の代表的な配置で示したように、コロナ処理システム52が、セラミック管コロナ電極54を、ナイフコーター56のベッド上、コーティングナイフ58よりは上流側に配置することにより、構成されている。コロナ処理システム52の中、矢印66の方向に未処理フィルム60を連続的に供給する。未処理フィルム60を、コロナ電極54のところでコロナ処理する。コロナ処理されたフィルム62が、続けてコーティング領域に流れ、そこで硬化性物質64を塗布される。コーティングナイフ58で硬化性物質64を均してから、硬化させる。好ましい実施態様においては、硬化性物質64をコーティングしたコロナ処理フィルム62を、続けてこのコロナ処理システムに隣接する硬化ステーション(図示せず)に通す。この配置にすることにより、フィルム60を空気コロナ処理させた直後に、そのフィルムをコーティング物質に接触させ、硬化させることが可能となる。
【0109】
75%トパス(Topas,登録商標)6013樹脂(Tg=140℃)/25%トパス(Topas,登録商標)8007樹脂(Tg=80℃)の組成を有するノルボルネン系環状オレフィンブレンドを用いて製造された、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムが得られた。100%トパス(Topas,登録商標)6013からなるフィルムも製造した。トパス(Topas,登録商標)樹脂は、統計的にはランダムで、完全に非晶質なノルボルネンとエチレンとからのコポリマーである。Tgが高いグレードは、Tgが低いグレードに比較すると、ノルボルネンモノマーのモルパーセントが高い。75%トパス(Topas,登録商標)6013樹脂/25%トパス(Topas,登録商標)8007樹脂ブレンドは、適合性および混和性がある。
【0110】
入力されるコロナ電極54の有効長(ウェブ横断方向)は約11cmであり、コーティングナイフ58の上流側約4〜12cmのところに位置させた。コロナ電極54からナイフコーター56のベッドまでのギャップは1.5mm(60ミル)であった。200Wのコロナ出力を使用した。
【0111】
コーティングされた材料を、コーティングの直ぐ後にUV硬化源に暴露させた。コーティングされた硬化性物質を、窒素雰囲気下、50フィート/分(ウェブ速度)、ヒュージョン(Fusion)D電球(F−600)を100%出力で使用して、UV硬化させた。
【0112】
使用した硬化性物質の一つを、「硬化性物質A]と呼ぶこととする。硬化性物質Aの配合は以下のとおりであった:30.0%(w/w)の臭素化エポキシジアクリレート(ジョージア州スマーナ(Smyrna,GA)のユー・シー・ビー・ラドキュア・インコーポレーテッド(UCB Radcure Inc.)により商品名RDX51027として製造されているもの)、20.0%(w/w)の6官能芳香族ウレタンアクリレートオリゴマー(これまた、ユー・シー・ビー・ラドキュア・インコーポレーテッド(UCB Radcure Inc.)から商品名EB220として入手可能)、37.5%(w/w)の2−(2,4,6−トリブロモフェノール)−1−エタノールアクリル酸エステル(日本国(Japan)の第一工業製薬(株)(Daiichi Kogyo Seiyaku Co.)からBR−31(CAS番号:7347−19−5)として販売)、12.5%のアクリル酸2−フェノキシエチル(ペンシルバニア州アンブラー(Ambler,Pa)のヘンケル・コーポレーション(Henkel Corp.)により、フォトマー(Photomer)4035として販売)、0.3pphのフルオロ界面活性剤(ミネソタ州セントポール(St.Paul,MN)のスリー・エム・カンパニー(3M Company)によりFC−430の商品名として販売)、1.0pphの光重合開始剤(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,N.Y.)のチバ・ガイギー(Ciba Geigy)からの商品名ダロキュア(Darocure)1173)、および1.0pphの光重合開始剤((ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte,N.C.))のビー・エー・エス・エフ(BASF)からの商品名ルシリン(Lucirin,登録商標)TPO)。未硬化の、硬化性物質A配合は、1.56の屈折率を有している。
【0113】
使用されるその他の硬化性物質を「硬化性物質B」と呼ぶこととする。硬化性物質Bの配合は、硬化性物質Aの配合と同じであるが、ただし、ルシリン(Lucirin,登録商標)TPOをその配合に加えていない。未硬化の、硬化性物質B配合は、1.56の屈折率を有している。
【0114】
使用した硬化性接着剤組成物を「硬化性物質C」と呼ぶこととする。硬化性物質Cの配合は、重合性窒素含有アクリレートモノマーと、窒素非含有重合性アクリレートモノマーとを含んでいると考えられる。
【0115】
硬化性物質AおよびCを、トパス(Topas,登録商標)6013のフィルムの上に、約1.5ミルの厚みでコーティングした。コーティングされた材料を、コーティングの直ぐ後にUV硬化源に暴露させた。コーティングされた材料を、窒素雰囲気下、ウェブ速度50フィート/分、ヒュージョン(Fusion)D電球(F−600)を出力100%の条件のUV硬化源に、コーティングを向けて、UV硬化させた。
【0116】
接着力は、ASTM D3359−02「スタンダード・テスト・メソッズ・フォア・メジャリング・アドヒージョン・バイ・テープ・テスト・メソッド・B(Standard Test Methods for Measuring Adhesion by Tape Test,Method B)により試験した。接着性の測定は次のようにして実施した:鋭利なカミソリ刃を取り付けた碁盤目接着「カー(car)」を用いて硬化させたコーティングに刻み目を入れ、スリー・エム(3M)#610テープ(高タック性、ゴム樹脂接着剤を用いたセロファンテープ)をその刻み目を入れた領域に碁盤目パターンに対して45度の角度で貼り付け、プラスチックの刃でテープをこすりつけ、次いで、テープを表面から引き剥がした。試験性能を評価するために使用した尺度を表2に示す。5Bの評価は、優れた接着性に相当する。0Bの評価は、接着性が無いことに相当する。
【0117】
【表2】
【0118】
少なくとも一つのノルボルネン系環状オレフィンフィルムまたは層と、少なくとも1層の硬化性層とを有するいくつかの実施例材料を、上述の一般的な方法により調製した。材料と条件は表3に示し、以下で説明する。UV硬化性物質の接着性は、ASTM D3359−02「スタンダード・テスト・メソッズ・フォア・メジャリング・アドヒージョン・バイ・テープ・テスト・メソッド・B(Standard Test Methods for Measuring Adhesion by Tape Test,Method B)を用いて試験した。多層フィルムを調製するための条件および接着力試験に関する詳細は、表3に示されている。
【0119】
【表3】
【0120】
ノルボルネン系環状オレフィンフィルムのコロナ処理された部分は、未処理の領域では接着性が示されないために、接着性試験によって容易に検出できた。処理された領域では、処理したフィルムの幅11cm全体で、明らかに接着性の改良が認められた。それとは対照的に、処理されていないノルボルネン系環状オレフィンフィルムに対しては、硬化性物質が接着性を与えなかった。さらに、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムをコロナ処理してから、数時間ないしは数日放置してからコーティングした場合には、硬化性物質の接着性が認められなかった。
【0121】
硬化された硬化性物質Aの層は、コロナ処理と硬化性物質Aのコーティングとの間の経過時間が約65秒未満であれば、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムに満足のいくレベルで接着した。コロナ処理とコーティングとの間の経過時間を約1秒未満とするのが好ましかった。硬化された硬化性物質Aは、未処理のノルボルネン系環状オレフィンフィルムに対しては接着性が無かった。コロナ処理とコーティングとの間の経過時間が4分を超えた場合も、硬化性物質のコロナ処理したノルボルネン系環状オレフィンフィルムに対する接着性が無かった。
【0122】
硬化性物質Cの硬化性接着剤のノルボルネン系環状オレフィンフィルムに対する接着性もまた、インライン空気コロナ処理により、処理と接着剤のコーティングとの間の経過時間が約70秒未満であれば、改良された。硬化性接着剤は、未処理のノルボルネン系環状オレフィンフィルムに対する接着性は無かった。
【0123】
上述の方法を使用して、さらなる実施例を作成した。それらの「プロトタイプ」について以下に説明する。
【0124】
光学フィルムプロトタイプa
光学フィルムプロトタイプaには、ノルボルネン系環状オレフィン(75%トパス(Topas,登録商標)6013樹脂/25%トパス(Topas,登録商標)8007樹脂)フィルムが含まれる。上述のプロセスを使用して、コーター56のコーティングナイフ58の上流側約5cmのコロナ電極を用い、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムをそのシステム52に、高速たとえば約20フィート/分で通過させた。インライン空気コロナ処理の後、硬化性物質Bを0.003〜0.004インチの厚みで塗布した。硬化性物質をコーティングしたノルボルネン系環状オレフィンフィルムを、面を下に向けてネガティブマスターの上に置くと、硬化させた後では、直線的なプリズム状の構造を有する、プリズム面角度90度で、ピーク間の間隔65ミクロンを有する硬化層が生成する。そのネガティブマスターは、表面ミクロ構造を与えるためのツールの一例である。そのフィルムをホットプレート上で130゜Fで保持されたネガティブマスターに対して、ローラーとして滑らかな金属棒を用いて積層させ、そのフィルムをUV硬化源に向けて、上述の条件でUV硬化させた。硬化させた後、その構成物のコロナ処理した部分はそのツールからきれいに剥がされたが、このことは、微細構造化された硬化層が、処理されたノルボルネン系環状オレフィンフィルムに対して強い接着性を有していることを示している。ノルボルネン系環状オレフィンフィルムの未処理領域にコーティングされた硬化性物質の場合には、その硬化性物質は、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムよりもツールの方に付着した。
【0125】
光学フィルムプロトタイプb
同様の方法を用いて、微細構造化硬化層を、図3に見られる構造を有する光学フィルムの上にコーティングして、図5に見られるような構造を有する光学物体を形成させた。こうして仕上がった光学物体を光学フィルムプロトタイプbと名付けた。
【0126】
図3に見られる構造を有する最初の光学フィルムは、多層ポリマー反射型偏光子フィルムのそれぞれの側にトパス(Topas,登録商標)6013の厚さ5ミルのスキン層を共押出しコーティングすることにより形成させた。その押出し加工可能な接着剤層は、アドマー(Admer,登録商標)SE810(日本国、三井化学(Mitsui Chemicals)製)の厚み1.5ミルの層であった。投入した多層ポリマー反射型偏光子フィルムを「反射型偏光子フィルムA」と呼ぶことにする。反射型偏光子フィルムAは、PEN(ポリエチレンナフタレート)を含む第一の光学層と、coPEN(コポリエチレンナフタレート)を含む第二の光学層とから構成されていた。そのPENとcoPENは、多層溶融マニフォルドとマルチプライヤーを通して共押出ししたもので、第一の光学層と第二の光学層が交互に825層を形成していた。この多層光学フィルムはさらに、第二の光学層として同じcoPENからなる2層の内側層と2層の外側スキン層とを含み、全部で829層となっていた。反射型偏光子Aの合計したフィルムの厚みは3.7ミルであった。
【0127】
微細構造化硬化層をコーティングして、直線的なプリズム状微細構造が、反射型偏光子Aの偏光透過軸を持つように配列させた。この光学フィルム構成のために、硬化性物質Aを使用した。
【0128】
光学フィルムプロトタイプc
光学フィルムプロトタイプcは構造的には、図3に示したものと類似している。光学フィルムプロトタイプcにおいては、光学フィルムを、2枚のノルボルネン系環状オレフィンフィルム、特にトパス(Topas,登録商標)6013の間に積層させる。ノルボルネン系環状オレフィンフィルムの二つの小片は、ヘイズが極端に少なく、最初に個々にコロナ処理された。次いで、反射型偏光子Aの小片を、コロナ処理されたノルボルネン系環状オレフィンフィルムの2枚の小片の間に挿入した。次いで、硬化性接着剤組成物、樹脂Cをフィルムの層の間(すなわち、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムのそれぞれの小片の主面と光学フィルムの主面との間)に置いた。その5層「サンドイッチ」を、ギャップコーター/ラミネーターを通して、フィルムの層の間に接着剤を均質に適用した。ノルボルネン系環状オレフィンフィルムのコロナ処理と、コーティング(フィルムサンドイッチをギャップコーターを通しての引き出し)との間の時間差は78秒であった。積層する接着剤の目標厚みは、積層サンプルの側面あたり1.5ミルであった。次いでその5層「サンドイッチ」を、二つの通過(pass)プロセスで硬化させた。第一の通過では、コーティングと硬化との間の時間は、27秒であった。硬化性接着剤を確実に完全硬化させるために、その5層「サンドイッチ」を、サンドイッチの反対側を通して、第二の時間で硬化させた。
【0129】
ゲインの測定
所定の光学フィルムの輝度ゲイン(すなわち「ゲイン」)とは、所定のバックライトまたは光キャビティ(light cavity)たとえば照明されたテフロン(登録商標)(Teflon)ライトキューブ(light cube)の上に置いた光学フィルムにおける透過光強度を、その光学フィルム無しの場合と比較した比率である。さらに詳しくは、光学フィルムの透過光強度は、カリフォルニア州チャッツワース(Chatsworth,CA)のフォト・リサーチ・インコーポレーテッド(Photo Research,Inc.)から入手可能な、スペクトラスキャン(SpectraScan,登録商標)PR−650スペクトラカロリメーター(SpectraColorimeter)を用いて測定する。吸収型偏光子はさらに、スペクトラスキャン(SpectraScan,登録商標)PR−650スペクトラカロリメーター(SpectraColorimeter)の前にも置く。次いで、所定の光学フィルムをテフロン(登録商標)(Teflon)ライトキューブの上に置く。そのライトキューブを、フォステック(Fostec)DCRII光源を用いて、ライトパイプを介して照明する。この構成を用いた場合、ゲインは、光学フィルムありで測定した透過光強度の、光学フィルム無しの場合に対する比である。反射型偏光子を組み入れた光学フィルムでは、反射型偏光子の偏光通過軸を、その吸収型偏光子の偏光通過軸に平行に配列させる。構成が光学フィルムプロトタイプaと類似の光学フィルムの場合、直線的なプリズム状微細構造を、吸収型偏光子の偏光通過軸に平行に配列させる。
【0130】
光学フィルムプロトタイプのゲインを表4に示す。
【0131】
【表4】
【0132】
このゲイン測定から、これらの光学プロトタイプすべてが、ゲインを与えていることが判る。これらのサンプルが最適からはほど遠いという訳ではないが、最適化した場合には、特に光学プロトタイプaおよびbでは、ゲインが改良されるであろうと期待できる。光学プロトタイプcのゲインが、投入した反射型偏光子Aに近いということは、積層されたプロトタイプが、投入した反射型偏光子Aからほとんど変化していないということを示している。
【0133】
実施例II
UV硬化性物質をノルボルネン系環状オレフィン基材に付着させた。ノルボルネン系環状オレフィン基材には、ノルボルネン系環状オレフィンフィルムと、光学物体の表面の上のノルボルネン系環状オレフィン層とが含まれている。そのノルボルネン系環状オレフィン基材を窒素コロナを用いて処理してから、硬化性物質を用いてコーティングする。この表面処理を達成するためには、図11の代表的な配置に示したように、調節した雰囲気を封じ込めるためのハウジング72の中に、シリコーンスリーブコロナ電極70を搭載することにより、コロナ処理システム68を構成した。ハウジング72は、ベッド76に操作可能に取り付けてある。未処理フィルム78を、ハウジング72の中へ矢印80の方向に連続的にフィードする。未処理フィルム78を、コロナ電極70のところでコロナ処理する。コロナ処理したフィルム82は連続的に処理システム68を通過する。一実施態様においては、コロナ処理したフィルム82は、コロナ処理システムに隣接したコーティングおよび硬化ステーション(図示せず)へ続く。この方法についてのさらなる説明は、同一出願人による、米国特許出願第10/883263号明細書(出願日:2004年7月1日)に記載されている(この出願を、参照により本明細書に援用する)。
【0134】
ノルボルネン系環状オレフィンフィルムを実施例Iの記載に従って製造した。入力されるコロナ電極は、約30cmの有効長(ウェブ横断方向)を有していた。コロナ電極から装置のベッドまでのギャップは1.5mm(60ミル)であった。1.8J/cm2のコロナエネルギーを使用した。窒素コロナ処理されたノルボルネン系環状オレフィンフィルムを、処理の約12秒後にコーティングした。コーティングされた材料を、コーティングの直ぐ後にUV硬化源に暴露させた。コーティングされた硬化性物質を、窒素雰囲気下、50フィート/分(ウェブ速度)、ヒュージョン(Fusion)D電球(F−600)を100%出力で使用して、UV硬化させた。
【0135】
上述の方法において使用するのに適した一つの硬化性物質が、硬化性物質Dである。硬化性物質Dの相対的なモノマー比は、TMPTA/テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテルおよび(メタ)アクリル酸/PEAが48/35/17である。硬化性物質Dは、下記の手順で作るのがよい。硬化性物質Dに類似の物質および関連の方法についてのさらなる説明は、米国特許出願公開第2005/0202278A1号明細書(「ポリメライザブル・コンポジションズ・コンプライジング・ナノパーティクルズ(POLYMERIZABLE COMPOSITIONS COMPRISING NANOPARTICLES)」)(出願日:2005年9月15日)にある(この開示を、参照により本明細書に援用する)。
【0136】
ナルコ(Nalco)2327のコロイダルシリカ(400g)を、1クオートのジャーに仕込む。1−メトキシ−2−プロパノール(450g)、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI)のシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から商品名「シランA174(Silane A174)」として市販)(18.95g)、シルクエスト(Silquest)A1230(12.74g)、およびヒンダードアミンニトロキシド禁止剤の水中5%溶液(0.2g)(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY)のチバ・スペシャルティ・ケミカル・インコーポレーテッド(Ciba Specialty Chemical Inc.)から商品名「プロスタブ(Prostab)5198」として販売)を調製し、撹拌しながらコロイダルシリカ分散体(イリノイ州ネイパービル(Naperville,IL)のオンデオ・ナルコ・カンパニー(Ondeo−Nalco Co.)から商品名「ナルコ(Nalco)2327」として市販)に添加する。ジャーを密閉し、80℃で16.5時間加熱する。この結果、変性シリカの明澄な低粘度分散体が得られる。
【0137】
1Lの(太首)丸底フラスコに、上述の変性ゾルと、48/35/17のTMPTA/テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテルおよび(メタ)アクリル酸/PEAと、プロスタブ(Prostab)5198の水中5%溶液とを仕込む。ロータリーエバポレーターを用いて水とアルコールを除去する。その配合物には、熱重量分析(TGA)で測定して約46重量%のSiO2が含まれる。屈折率は1.50である。1重量%のTPO−Lを添加する。
【0138】
上述のSiO2含有樹脂を、48/35/17のTMPTA/テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテルおよび(メタ)アクリル酸/PEAと混合すると、38重量%のSiO2を含む樹脂が得られる。1重量%のTPO−Lを添加する。
【0139】
上述のような窒素コロナ処理に続けて、フィルムに硬化性樹脂Dをコーティングした。次いで、硬化性物質をコーティングしたノルボルネン系環状オレフィンフィルムを、ネガティブマスターに押し込むと、硬化させた後では、直線的なプリズム状の構造を有する、プリズム面角度90度で、ピーク間の間隔が65ミクロンを有する硬化層が生成する。そのネガティブマスターは、表面ミクロ構造を与えるためのツールの一例である。そのコーティングされた硬化性物質をUV硬化させた。硬化させた後、その構成物のコロナ処理した部分はそのツールからきれいに剥がされたが、このことは、微細構造化された硬化層が、処理されたノルボルネン系環状オレフィンフィルムに対して強い接着性を有していることを示している。微細構造化硬化層の接着性は、実施例Iに記載したようなASTM D3359−02を使用して、5Bであった。
【0140】
また別の好適な硬化性樹脂は、硬化性物質Eである。硬化性物質Eの配合は、下記と類似である。硬化性物質Eに類似の物質については、下記の特許にさらなる説明がある:米国特許出願第11/077,598号明細書「ポリメライザブル・コンポジション・コンプライジング・ロウ・モレキュラー・ウェイト・オーガニック・コンポーネント(POLYMERIZABLE COMPOSITION COMPRISING LOW MOLECULAR WEIGHT ORGANIC COMPONENT)」(出願日:2005年3月11日)(その開示を参照により本明細書に援用する)。ZrO2ゾル(200g)、MEEAA(8.81g)、BCEA(4.22g)、1−メトキシ−2−プロパノール(230g)、BR31/PEA/TMPTAの38/50/12混合物(59.1g)、およびプロスタブ(Prostab)5198の水中5%溶液(0.24g)を丸底フラスコに仕込み、ロータリーエバポレーターを用いてアルコールと水を除去した。そのZrO2含有樹脂は、ZrO2含量52.31%で、1.638の屈折率を有していた。そのZrO2充填樹脂(116g)とTPO−L(0.55g)とを混ぜ合わせた。そのZrO2ゾルは、強度平均(intensity−average)粒径が42.1、容積平均粒径が17.5nmであり、強度平均対容積平均の比が2.41である。
【0141】
窒素コロナ処理されたノルボルネン系環状オレフィン基材の上の、硬化性樹脂Eの硬化させた微細構造化コーティングは、硬化性樹脂Dについて上述したのと同様の方法で製造した。硬化性微細構造化層の接着力は強いものであった。
【0142】
実施例III
この実施例の方法を用いることにより、本発明の開示の方法において使用するのに適した、フィルム、光学物体または、光学物体の部分を形成させることができる。
【0143】
多層反射型偏光子(たとえば、光学フィルム)を、PEN(ポリエチレンナフタレート)を含む第一の光学層と、coPEN(コポリエチレンナフタレート)を含む第二の光学層とを用いて構成した。そのPENとcoPENは、多層溶融マニフォルドとマルチプライヤーを通して共押出ししたもので、第一の光学層と第二の光学層が交互に825層を形成していた。この多層光学フィルムにさらに、追加の2層の内側層と、第二の光学層として同じcoPENを含む2層の外側保護境界層が含まれ、全体で829層で、その厚みが3.7ミルであった。この多層反射型偏光子フィルムを、「反射型偏光子A」と呼ぶことにする。類似の反射型偏光子は、スリー・エム・カンパニー(3M Company)から商品名DBEFとして入手可能である。
【0144】
トパス(Topas,登録商標)6013のノルボルネン系環状オレフィン層を、接着剤層のアドマー(Admer,登録商標)SE810と共に、多層光学フィルム、たとえば、反射型偏光子Aのそれぞれの側の上に共押出しコーティングして、光学物体を形成させた。代表的な構造を図2に示している。共押出しされた層と光学フィルムを、ダイの出口のところで、ゴムロールとパターン化ロールとの間ではさみつけた。代表的な押出しコーティング装置については、図9を参照されたい。パターン化ロールを使用して、その光学物体のノルボルネン系環状オレフィン層の上に表面模様をつけた。そのパターン化ロールは、90ミクロンの粗さRaと、4.5%の光沢とを有していた。面の幅14インチの、そのパターン化ロールは、ウィスコンシン(Wisconsin)のウルトラプレーティング(UltraPlating)で仕上げたものである。パターン化ロールは210゜Fに加熱した。ニップ圧力は90psiであった。
【0145】
上述の方法により製造することが可能な多層反射型偏光子の構成の一例を、図2に模式的に示している。図3における光学物体22、図4〜8に示した光学物体の部分は、上述の方法によって製造することも可能である。各種の厚みのトパス(Topas,登録商標)6013環状オレフィンコポリマーのノルボルネン系環状オレフィン層と、各種の接着剤層とを、多層光学フィルム、反射型偏光子Aの上に形成させた。ノルボルネン系環状オレフィン層を用いた多層光学フィルムの例示的構成の層の厚みを、表5に示す。共押出しされた接着剤ポリマーには以下のものが含まれる:アドマー(Admer,登録商標)SE810およびアドマー(Admer,登録商標)SE800接着剤ポリマー(三井化学);ロテイダー(Lotader,登録商標)、オレバック(Orevac,登録商標)、およびロトリル(Lotryl,登録商標)(アトフィナ(Atofina)から);およびバイネル(Bynel,登録商標)およびフサボンド(Fusabond,登録商標)(デュポン(Dupont)から)。表5に示した光学物体は、良好な接着性を示し、容易には剥がれなかった。
【0146】
【表5】
【0147】
本発明の開示のノルボルネン系環状オレフィン層を含む各種の多層光学フィルムのシート、たとえば光学物体を、ノートパソコン、モニター、テレビなどの、各種のバックライト付きLCDディスプレイに組み入れた。それらは、改良された輝度を示した。そのLCDディスプレイは、少なくとも1層のノルボルネン系環状オレフィン層を含む光学フィルム、光源、LCDパネルを含んでおり、さらに、光ガイドおよび追加の光学フィルムを含んでいてもよい。
【0148】
6.0ミルのノルボルネン系環状オレフィン層の多層光学フィルムのサンプルの色を、フォト・リサーチ(Photo Research)からのスペクトラスキャン(SpectraScan,登録商標)PR650カラーメーターを用いて、0度(軸上)および60度(軸外)の角度で評価した。6.0ミルのノルボルネン系環状オレフィン層を有する多層光学フィルムのサンプルを、乾燥環境下、85℃で1,000時間エージングさせた。サンプルと対照のフィルムもまた、軸上ゲインを求めることにより評価した。それらのサンプルについて、初期と、250、500、および1,000時間暴露後に評価した。いずれのサンプルにおいても、色の変化は認められなかった。すべてのサンプルで、ゲインは実質的に一定を保った。6.0ミルのノルボルネン系環状オレフィン層を用いて多層光学フィルムについて、UVエージング試験も実施した。UVエージングの後で試験サンプルを肉眼で観察したところ、6.0ミルのノルボルネン系環状オレフィン層を有する多層光学フィルムには黄変は認められなかった。
【0149】
環状オレフィン層系のノルボルネンを含む各種多層光学フィルムのシートを、ノートパソコン、モニター、テレビなどの、各種のバックライト付きLCDディスプレイに組み入れた。それらは、改良された輝度を示した。
【0150】
好ましい実施態様を参照しながら本発明の開示を説明してきたが、当業者ならば、本発明の開示の精神と範囲から外れることなく、形態および詳細に変化を加えることが可能であることは認識することであろう。
【0151】
上述の詳細な説明、実施例、およびデータは、本発明の開示の組成物の製造および使用を完全に説明している。本発明の開示の精神と範囲から外れることなく、本発明の開示の多くの実施態様を作ることが可能であるので、本発明は、先に添付された特許請求の範囲に属するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明の開示の第一の実施に従って構築および配置された多層フィルムの側面図であって、ノルボルネン系環状オレフィン層および硬化性層が示されている。
【図2】本発明の開示の第二の実施に従って構築および配置された光学物体の側面図であって、光学フィルム、ノルボルネン系環状オレフィン層、および接着剤層を有する光学物体が示されている。
【図3】本発明の開示の第三の実施に従って構築および配置された光学物体の側面図であって、2層の接着剤層および2層のノルボルネン系環状オレフィン層を有する光学物体が示されている。
【図4】本発明の開示の第四の実施に従って構築および配置された光学物体の側面図であって、光学フィルム、ノルボルネン系環状オレフィン層、接着剤層、および前記ノルボルネン系環状オレフィン層の上の硬化性層を有する光学物体が示されている。
【図5】本発明の開示の第五の実施に従って構築および配置された光学物体の側面図であって、光学フィルム、2層の接着剤層、2層のノルボルネン系環状オレフィン層、および硬化性表面層を有する光学物体が示されている。
【図6】本発明の開示の第六の実施に従って構築および配置された光学物体の側面図であって、光学フィルム、2層の接着剤層、2層のノルボルネン系環状オレフィン層、および前記ノルボルネン系環状オレフィン層の上の2層の硬化性層を有する光学物体が示されている。
【図7】本発明の開示の第七の実施に従って構築および配置された光学物体の側面図であって、光学フィルム、ノルボルネン系環状オレフィン層、接着剤層、前記ノルボルネン系環状オレフィン層の上の第一の硬化性層、および光学フィルムを有する光学物体の上の第二の硬化性層を有する光学物体が示されている。
【図8】本発明の開示の第八の実施に従って構築および配置された光学物体の側面図であって、光学フィルム、接着剤層、ノルボルネン系環状オレフィン層、および2層の硬化性表面層(その1層は、光学フィルムと組み合わされ、第二のものはノルボルネン系環状オレフィン層と組み合わされている)を有する光学物体が示されている。
【図9】本発明の開示の実施に従って光学物体を形成させるためのシステムの平面図である。
【図10】ナイフコーターのベッドの上、「ナイフ」エッジより上流側における、インライン空気コロナ電極の代表的な配置を示す、模式的平面図である。
【図11】フィルムを表面処理するための窒素コロナ電極の代表的な配置を示す、模式的平面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学物体であって、
ノルボルネン系環状オレフィン層、および
前記ノルボルネン系環状オレフィン層に貼り付けられた硬化性層であって、前記硬化性層が前記ノルボルネン系環状オレフィン層に対して、ASTM D3359−02によって測定したときに、1B以上の接着性レベルを示す硬化性物質を含む硬化性層、を含む光学物体。
【請求項2】
前記硬化性物質が、光重合可能な物質である、請求項1に記載の光学物体。
【請求項3】
前記硬化性層が、UV安定剤として機能する硬化性物質、耐摩耗性物質、ハードコート物質、反射防止コーティング、またはディフューザーを含む、請求項1に記載の光学物体。
【請求項4】
前記硬化性層が、エチレン系不飽和モノマー、エチレン系不飽和オリゴマー、またはそれらのブレンドを含み、ここで、前記未硬化の硬化性物質の屈折率が1.55より大である、請求項1に記載の光学物体。
【請求項5】
前記硬化性物質が、テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物を含む、請求項4に記載の光学物体。
【請求項6】
前記硬化性層が、エチレン系不飽和モノマー、エチレン系不飽和オリゴマー、またはそれらのブレンドを含み、前記硬化性層が無機ナノ粒子をさらに含む、請求項1に記載の光学物体。
【請求項7】
前記硬化性物質が、テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物を含む、請求項6に記載の光学物体。
【請求項8】
前記硬化性物質が多官能(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の光学物体。
【請求項9】
前記硬化性物質が、屈折率が1.50より大の単官能(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の光学物体。
【請求項10】
前記ノルボルネン系環状オレフィンフィルムが、ノルボルネンまたはその誘導体、およびエチレンを含むコポリマーから実質的になる、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項11】
前記硬化性層が構造化表面を有する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項12】
前記構造化表面が、複数の直線的なプリズム状の構造を含む、請求項11に記載の多層フィルム。
【請求項13】
光学フィルムをさらに含む、請求項1に記載の光学物体。
【請求項14】
硬化性物質を含む少なくとも1層の硬化性層が、ノルボルネン系環状オレフィン層の主面に付着され、ここで前記主面が一般的に、光学フィルムの反対側に配される、請求項13に記載の光学物体。
【請求項15】
硬化性物質を含む前記硬化性層が、前記光学フィルムと前記ノルボルネン系環状オレフィン層との間に配される、請求項13に記載の光学物体。
【請求項16】
前記硬化性物質が接着剤である、請求項15に記載の光学物体。
【請求項17】
前記光学フィルムが、多層ポリマー反射光学フィルムであるか、または連続相/分散相反射光学フィルムである、請求項15に記載の光学物体。
【請求項18】
請求項1に記載の光学物体、光源およびディスプレイパネルを含む、ディスプレイデバイス。
【請求項19】
硬化性層をノルボルネン系環状オレフィン層に適用する方法であって、
前記ノルボルネン系環状オレフィン層をコロナ処理する工程、および
硬化性物質を前記コロナ処理したノルボルネン系環状オレフィン層に適用し、それによって硬化性層を形成する工程、を含み、
ここで、前記ノルボルネン系環状オレフィン層をコロナ処理する工程と、硬化性層を適用する工程との間の経過時間が75秒未満である、方法。
【請求項20】
前記経過時間が30秒未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記経過時間が2秒未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記経過時間が1秒未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記コロナ処理を、周囲空気雰囲気中で実施する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記コロナ処理を窒素雰囲気中で実施する、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
ノルボルネン系環状オレフィン層をコロナ処理する工程が、周囲空気環境中のソース電極に近接させて前記ノルボルネン系環状オレフィン層をフィードする工程を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
硬化性層を適用する工程が、
コロナ処理された固体のノルボルネン系コ−ポリマー層の上に硬化性物質をコーティングする工程、および
前記硬化性物質を硬化させる工程、を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記硬化性物質をコーティングする工程と、前記硬化性物質を硬化させる工程との間の経過時間が4分未満である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記硬化性物質をコーティングする工程と、前記硬化性物質を硬化させる工程との間の経過時間が30秒未満である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
硬化させる前に、前記硬化性層に表面構造を付与する工程をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記ノルボルネン系環状オレフィンフィルムを光学フィルムの上に配し、それによって、前記硬化性層が光学物体の外側層となるようにする、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記硬化性層が硬化性接着剤物質を含む請求項19に記載の方法であって、
前記ノルボルネン系環状オレフィン層と、硬化性接着剤物質とを光学フィルムに積層させる工程、および
前記硬化性接着剤層を硬化させ、それによって光学物体を形成させる工程をさらに含む、方法。
【請求項32】
硬化性層をノルボルネン系環状オレフィン層に適用する方法であって、前記方法が、
前記ノルボルネン系環状オレフィン層を窒素コロナ処理する工程、および
硬化性物質を前記コロナ処理したノルボルネン系環状オレフィン層に適用し、それによって硬化性層を形成する工程、を含み、
ここで、前記ノルボルネン系環状オレフィン層をコロナ処理する工程と、硬化性層を適用する工程との間の経過時間が1時間未満である、方法。
【請求項33】
前記経過時間が30分未満である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記経過時間が10分未満である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記経過時間が2分未満である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記経過時間が1分未満である、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記硬化性物質を硬化させる工程をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項1】
光学物体であって、
ノルボルネン系環状オレフィン層、および
前記ノルボルネン系環状オレフィン層に貼り付けられた硬化性層であって、前記硬化性層が前記ノルボルネン系環状オレフィン層に対して、ASTM D3359−02によって測定したときに、1B以上の接着性レベルを示す硬化性物質を含む硬化性層、を含む光学物体。
【請求項2】
前記硬化性物質が、光重合可能な物質である、請求項1に記載の光学物体。
【請求項3】
前記硬化性層が、UV安定剤として機能する硬化性物質、耐摩耗性物質、ハードコート物質、反射防止コーティング、またはディフューザーを含む、請求項1に記載の光学物体。
【請求項4】
前記硬化性層が、エチレン系不飽和モノマー、エチレン系不飽和オリゴマー、またはそれらのブレンドを含み、ここで、前記未硬化の硬化性物質の屈折率が1.55より大である、請求項1に記載の光学物体。
【請求項5】
前記硬化性物質が、テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物を含む、請求項4に記載の光学物体。
【請求項6】
前記硬化性層が、エチレン系不飽和モノマー、エチレン系不飽和オリゴマー、またはそれらのブレンドを含み、前記硬化性層が無機ナノ粒子をさらに含む、請求項1に記載の光学物体。
【請求項7】
前記硬化性物質が、テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物を含む、請求項6に記載の光学物体。
【請求項8】
前記硬化性物質が多官能(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の光学物体。
【請求項9】
前記硬化性物質が、屈折率が1.50より大の単官能(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の光学物体。
【請求項10】
前記ノルボルネン系環状オレフィンフィルムが、ノルボルネンまたはその誘導体、およびエチレンを含むコポリマーから実質的になる、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項11】
前記硬化性層が構造化表面を有する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項12】
前記構造化表面が、複数の直線的なプリズム状の構造を含む、請求項11に記載の多層フィルム。
【請求項13】
光学フィルムをさらに含む、請求項1に記載の光学物体。
【請求項14】
硬化性物質を含む少なくとも1層の硬化性層が、ノルボルネン系環状オレフィン層の主面に付着され、ここで前記主面が一般的に、光学フィルムの反対側に配される、請求項13に記載の光学物体。
【請求項15】
硬化性物質を含む前記硬化性層が、前記光学フィルムと前記ノルボルネン系環状オレフィン層との間に配される、請求項13に記載の光学物体。
【請求項16】
前記硬化性物質が接着剤である、請求項15に記載の光学物体。
【請求項17】
前記光学フィルムが、多層ポリマー反射光学フィルムであるか、または連続相/分散相反射光学フィルムである、請求項15に記載の光学物体。
【請求項18】
請求項1に記載の光学物体、光源およびディスプレイパネルを含む、ディスプレイデバイス。
【請求項19】
硬化性層をノルボルネン系環状オレフィン層に適用する方法であって、
前記ノルボルネン系環状オレフィン層をコロナ処理する工程、および
硬化性物質を前記コロナ処理したノルボルネン系環状オレフィン層に適用し、それによって硬化性層を形成する工程、を含み、
ここで、前記ノルボルネン系環状オレフィン層をコロナ処理する工程と、硬化性層を適用する工程との間の経過時間が75秒未満である、方法。
【請求項20】
前記経過時間が30秒未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記経過時間が2秒未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記経過時間が1秒未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記コロナ処理を、周囲空気雰囲気中で実施する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記コロナ処理を窒素雰囲気中で実施する、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
ノルボルネン系環状オレフィン層をコロナ処理する工程が、周囲空気環境中のソース電極に近接させて前記ノルボルネン系環状オレフィン層をフィードする工程を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
硬化性層を適用する工程が、
コロナ処理された固体のノルボルネン系コ−ポリマー層の上に硬化性物質をコーティングする工程、および
前記硬化性物質を硬化させる工程、を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記硬化性物質をコーティングする工程と、前記硬化性物質を硬化させる工程との間の経過時間が4分未満である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記硬化性物質をコーティングする工程と、前記硬化性物質を硬化させる工程との間の経過時間が30秒未満である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
硬化させる前に、前記硬化性層に表面構造を付与する工程をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記ノルボルネン系環状オレフィンフィルムを光学フィルムの上に配し、それによって、前記硬化性層が光学物体の外側層となるようにする、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記硬化性層が硬化性接着剤物質を含む請求項19に記載の方法であって、
前記ノルボルネン系環状オレフィン層と、硬化性接着剤物質とを光学フィルムに積層させる工程、および
前記硬化性接着剤層を硬化させ、それによって光学物体を形成させる工程をさらに含む、方法。
【請求項32】
硬化性層をノルボルネン系環状オレフィン層に適用する方法であって、前記方法が、
前記ノルボルネン系環状オレフィン層を窒素コロナ処理する工程、および
硬化性物質を前記コロナ処理したノルボルネン系環状オレフィン層に適用し、それによって硬化性層を形成する工程、を含み、
ここで、前記ノルボルネン系環状オレフィン層をコロナ処理する工程と、硬化性層を適用する工程との間の経過時間が1時間未満である、方法。
【請求項33】
前記経過時間が30分未満である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記経過時間が10分未満である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記経過時間が2分未満である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記経過時間が1分未満である、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記硬化性物質を硬化させる工程をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−518280(P2008−518280A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539042(P2007−539042)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/038367
【国際公開番号】WO2006/049951
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/038367
【国際公開番号】WO2006/049951
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】
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