説明

環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物の製造方法および環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物

【課題】分子内にオレフィン性不飽和結合を複数有する環状オレフィン系化合物の(共)重合体を水素化により、色相が透明に極めて近く、光学用途等の使用に適した環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物を生産性よく製造する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される環状オレフィン系化合物に由来する構造単位を有する環状オレフィン系開環(共)重合体(A)および金属化合物(B)を含む溶液を、10〜40℃に制御して水素と接触を開始する工程と、前記溶液の温度を100〜200℃にして水素化反応をする工程とを、有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の製造方法に関する。詳しくは、本発明は、環状オレフィン系開環(共)重合体を、特定の金属ヒドリド錯体の存在下、比較的低温に温度調整した後に水素化することにより、透明性に優れた環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物を製造する方法に関する。また、該製造方法により得られた水素化物に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン系樹脂は、主鎖構造の剛直性に起因してガラス転移温度が高く、主鎖構造に嵩高い基が存在するために非晶性で光線透過率が高く、しかも、屈折率の異方性が小さいことによる低複屈折性を示すなどの特長を有することから、耐熱性、透明性、光学特性に優れた熱可塑性透明樹脂として注目されている。
【0003】
このような環状オレフィン系樹脂の1つとして、工業的に入手が容易であり安価なジシクロペンタジエン(以下、「DCP」と略記する。)もしくはその誘導体を含む単量体組成物を開環重合して得られた重合体をさらに水素添加した樹脂が挙げられ、例えば、光ディスク、光学レンズ、光ファイバーなどの光学材料、光半導体封止などの封止材料、光学用フィルム・シートあるいは医薬品等の容器などへの応用が提案されている。(特許文献1、2参照)
【0004】
一般に、DCPもしくはその誘導体を含むノルボルネン系の単量体(以下、「ノルボルネン系単量体」ともいう)の開環重合体は、適当な溶媒中で、ノルボルネン系単量体組成物をメタセシス触媒系などの開環重合触媒の存在下に開環重合することにより得ることができる。さらにその水素添加物は、前記開環重合体の溶液に、適当な水素添加触媒を添加して水素と反応させることにより得ることができる。(特許文献3〜6参照)
【0005】
しかしながら、ノルボルネン系単量体の開環重合体は、その分子内にオレフィン性不飽和結合を有するため、水素添加反応中に所望しない架橋反応が進行して、有機溶剤に不溶なゲルが生成する問題がある。また、ノルボルネン系単量体の開環重合体は、オレフィン性不飽和結合が多いので水添反応での発熱量が大きく、最高到達温度が高くなるため反応釜の設計温度の点から仕込み量を上げる事ができず生産性が悪いという問題があった。また、触媒等に由来する金属化合物が製品に含まれると、例えば、光学フィルムの着色の問題が生じるなどの重大な問題が発生するため、金属化合物の残存量は可能な限り低減することが求められている。
【0006】
ノルボルネン系単量体を用いた開環重合体およびその水添体を製造するための方法としては、従来種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1には、DCP系単量体をタングステン系開環重合触媒存在下に開環重合する際、反応調整剤として、ニトリル、ケトン、エーテル、及びエステルなどの化合物を共存させることで、実質的にゲルの含まない開環重合体が得られ、また、係る開環重合体を、ケイソウ土担持ニッケル触媒などを用いて水素添加することで、実質的にゲルの含まない開環重合体水素添加物が得られることが開示されている。
【0007】
しかしながら、従来提案されている方法では、金属触媒とポリマー鎖中の二重結合と微量酸素が共存する状態で加温されるため、二重結合が酸化される可能性があり、色相低下の原因の一つであった。また、触媒由来の金属化合物残存量を十分に除去することが困難であった。
【0008】
本出願人は、ゲル分を実質的に含まず、濾過工程における負荷などの少ない、簡便な工程による製造方法をすでに提案している(特許文献7参照)。しかし、該製造方法は、130℃以上の高温下で水素添加をスタートすることで水添反応を開始するため、最高到達温度が高くなり、仕込み量を上げるには反応機の設計温度を高くする等の設備投資が必要であったり、最高到達温度を抑制するため、仕込み量の低減、溶媒量の増加、水素供給速度をゆっくりと行うなどの条件を採用する必要があり、生産性の向上、さらに触媒由来の金属化合物残存量の低減が望まれていた。
【0009】
そこで、本出願人は、水素化反応の開始時の温度を比較的低温にして、ゲル分の発生を抑制した製造方法を提案している(特許文献8参照)。しかし、より着色のない透明な水素化物が得られることが望まれた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−124429号公報
【特許文献2】特開平11−130846号公報
【特許文献3】特開昭63−264626号公報
【特許文献4】特開平1−158029号公報
【特許文献5】特開平1−168724号公報
【特許文献6】特開平1−168725号公報
【特許文献7】特開2005−213370号公報
【特許文献8】特開2007−106932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、分子内にオレフィン性不飽和結合を複数有する環状オレフィン系化合物の(共)重合体の水素化において、色相が透明に極めて近く、光学用途等の使用に適した環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物を生産性よく製造するための環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、このような状況において鋭意研究した結果、分子内にオレフィン性不飽和結合を複数有する環状オレフィン系化合物の開環(共)重合体を水素化するに当たり、特定の金属ヒドリド錯体存在下、環状オレフィン系開環(共)重合体溶液を予め低温に調整後、水素と接触させると、環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物の着色を抑制することができ、しかも、水添反応の最高到達温度を低下させることで反応釜の設計温度を変える事無く仕込み量を上げることができ生産性を顕著に向上できること、さらには簡便な精製工程で、触媒由来の金属化合物の残存量を減少させ、水素化物の透明性を向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の製造方法は、
下記一般式(1)で表される環状オレフィン系化合物に由来する構造単位を有する環状オレフィン系開環(共)重合体(A)の水素化物の製造方法であって、
前記環状オレフィン系開環(共)重合体(A)および金属化合物(B)を含む溶液を、10〜40℃に制御して水素と接触を開始する工程と、
前記水素との接触開始後、前記溶液の温度を100〜200℃にして水素化反応をする工程とを、
有することを特徴としている。
【0014】
【化1】

(式(1)中、A1およびA2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基、もしくはアルコキシ基、水酸基、エステル基、シアノ基、アミド基、アミノ基およびチオール基の群から選ばれた極性基、またはハロゲン原子および/または上記の極性基により置換された基よりなる群より選ばれた原子もしくは基を示し、それぞれ同一でもよく、また異なっていても良い。mは0または1〜3の整数、nは0または正の整数である。)。
【0015】
本発明の環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の製造方法では、前記金属化合物(B)が、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
MQnkpq …(2)
(式(2)中、Mは、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、鉄、コバルトおよびイリジウムからなる群より選ばれる金属を示し、
Qは、独立に下記式(i)で表される基を示し、
Hは、水素原子を示し、
Tは、独立にCOまたはNOを示し、
Zは、独立にPR678(Pはリン原子を示し、R6、R7およびR8は、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を示す。)を示し、
kは1または2を示し、nは1または2を示し、pは0〜4の整数を示し、qは0〜4の整数を示し、かつ、k、n、p、qの合計は4、5または6である。)
【0016】
【化2】

(式(i)中、R1〜R5は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基またはヒドロキシル基を示す。)。
【0017】
本発明の環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の製造方法では、前記金属化合物(B)が、下記一般式(5)で表される化合物であることも好ましい。
MXnkpq …(5)
(式(5)中、Mは、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、鉄、コバルトおよびイリジウムからなる群より選ばれる金属を示し、
Xは、ハロゲン原子を示し、
Hは、水素原子を示し、
Tは、独立にCOまたはNOを示し、
Zは、独立にPR678(Pはリン原子を示し、R6、R7およびR8は、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を示す。)を示し、
kは1または2を示し、nは1または2を示し、pは0〜4の整数を示し、qは0〜4の整数を示し、かつ、k、n、p、qの合計は4、5または6である。)
本発明の環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の製造方法では、前記式(2)または式(5)中のMがルテニウムであることがさらに好ましい。
【0018】
本発明の環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の製造方法では、前記環状オレフィン系開環(共)重合体(A)が、さらに下記一般式(3)で表される環状オレフィン系化合物に由来する構造単位を有することが好ましい。
【0019】
【化3】

(式(3)中、mは0または1〜3の整数であり、nは0または正の整数である。
3〜A6は、それぞれ独立に下記(a)〜(e)で表されるものを表すか、(f)または(g)を表す。
(a)水素原子、
(b)ハロゲン原子、
(c)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(d)置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(e)アルコキシ基、水産基、エステル基、シアノ基、アミド基、アミノ基およびチオール基から選ばれる基、
(f)A3とA4、またはA5とA6が、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、前記結合に関与しないA3〜A6は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す、
(g)A3とA4、A5とA6、またはA4とA5が、相互に結合して形成された芳香環もしくは非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、前記結合に関与しないA3〜A6は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す。)。
【0020】
本発明の環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の製造方法は、さらに、前記水素化反応の工程を経た溶液を、脱触助剤(C)とメタノールを用いて精製をする工程とを、有することが好ましい。
【0021】
本発明の環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物は、前記製造方法により得られる。
本発明の環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物は、イエローインデックスが0.20〜0.37であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、分子内にオレフィン性不飽和結合を複数有する環状オレフィン系化合物の重合体あるいは共重合体の水素化を簡便な工程で行い、着色のない環状オレフィン系重合体水素化物を製造することができる。さらに簡便な精製工程により、得られた環状オレフィン系重合体水素化物中の触媒由来の金属化合物残存量を減量することにより、環状オレフィン系重合体水素化物の透明性を向上させることができる。本発明により得られた環状オレフィン系重合体水素化物は、適宜所望の形状に成形して用いることができ、透明性に優れるため、各種光学部品用途や電気電子材料などの成形品の用途などに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明において、環状オレフィン系重合体は、少なくとも1種の環状オレフィン系化合物からなる単量体の単独重合体または共重合体のみならず、環状オレフィン系化合物と共重合可能なほかの化合物からなる単量体を共重合してなる共重合体をも含む。本発明において、開環(共)重合とは、開環重合および開環共重合の両方を、開環(共)重合体とは、開環重合体および開環共重合体の両方を表す。また、本発明における水素化(水素添加)は、特段の断りがない限り、メタセシス開環重合により生じた環状オレフィン系重合体主鎖中のオレフィン性不飽和結合や、DCPの5員環側の不飽和結合の様に、開環(共)重合しない脂肪族オレフィン性不飽和結合に対するものであり、芳香族性不飽和結合等他の不飽和結合に対するものではない。
本発明の環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の製造方法では、環状オレフィン系開環(共)重合体を水素化する。
【0024】
<環状オレフィン系開環(共)重合体>
本発明に用いられる環状オレフィン系開環(共)重合体は、下記一般式(1)で表される環状オレフィン系化合物に由来する構造単位を有する。製造方法は特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で表される環状オレフィン系化合物を含む単量体を開環重合して得ることができる。
【0025】
【化4】

(式(1)中、A1およびA2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基、もしくはアルコキシ基、水酸基、エステル基、シアノ基、アミド基、アミノ基およびチオール基の群から選ばれた極性基、またはハロゲン原子および/または上記の極性基により置換された基よりなる群より選ばれた原子もしくは基を示し、それぞれ同一でもよく、また異なっていても良い。mは0または1〜3の整数であり、nは0または正の整数である。)。
【0026】
本発明においては、上記式(1)において、mはm=1、nはn=0である化合物が好ましく用いられる。
このような環状オレフィン系化合物の例としては、たとえば、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(DCP)、
8−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
8−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
8−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
8−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
8−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
8−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
8−フェノキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
8−メトキシカルボニルエチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
8−メトキシカルボニルエチルオキシ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7−メチル−8−メトキシカルボニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
8−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
8−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
8−ブロモ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、
7,8−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン
等が挙げられる。
【0027】
これらのうち、工業的に入手しやすく安価なトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(DCP)が特に好適に用いられる。なお、これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
また、本発明において用いられる環状オレフィン系開環(共)重合体は、さらに上記式(1)で表される環状オレフィン化合物に由来する構造単位を有するとともに、下記一般式(3)で表される環状オレフィン化合物に由来する構造単位を有することが好ましい。製造方法としては、例えば、上記式(1)で表される化合物と、下記一般式(3)で表わされる単量体を開環共重合する製造方法が挙げられる。
【0029】
共重合比は、用いられる単量体の重量比で通常一般式(1)で表わされる化合物:一般式(3)で表わされる化合物=5〜50:50〜95、好ましくは10〜40:60〜90、更に好ましくは20〜35:65〜80である。
【0030】
【化5】

(式(3)中、mは0または1〜3の整数、nは0または正の整数である。
3〜A6は、それぞれ独立に下記(a)〜(e)で表されるものを表すか、(f)または(g)を表す。
(a)水素原子、
(b)ハロゲン原子、
(c)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(d)置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(e)アルコキシ基、水酸基、エステル基、シアノ基、アミド基、アミノ基およびチオール基から選ばれる基、
(f)A3とA4、またはA5とA6が、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、前記結合に関与しないA3〜A6は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す、
(g)A3とA4、A5とA6、またはA4とA5が、相互に結合して形成された芳香環もしくは非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、前記結合に関与しないA3〜A6は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す。)。
【0031】
このような一般式(3)で表される環状オレフィン系化合物としては、例えば、以下に示す化合物が例示できるが、これらの例示に限定されるものではない。
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(2−ノルボルネン)、
5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−(4−ビフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フェニルカルボニルオキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジフルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジクロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ヒドロキシエチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−メチル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
8−フェニル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
7−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−ブロモ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−クロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−ジクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−トリクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−ヒドロキシ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−シアノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−アミノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
ペンタシクロ[7.4.0.13,7.110,13.02,7]ペンタデカ−4−エン、
ヘキサシクロ[8.4.0.12,9.14,7.111,14.03,8]ヘプタデカ−3−エン、
【0032】
8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−(4−ビフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェニルカルボニルオキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,8−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,9−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フルオロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−クロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ブロモ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,8−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,9−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,8,9,9−テトラクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ヒドロキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−シアノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−アミノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン。
【0033】
上記のうち、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンが得られるポリマーの耐熱性の点で好ましい。
【0034】
本発明においては、一般式(1)で表される環状オレフィン系化合物を1種単独で、あるいは2種以上併用して単量体として用いることができる。また、本発明においては、一般式(1)で表される1種以上の環状オレフィン系化合物と、一般式(3)で表される1種以上の環状オレフィン系化合物とを併用して、単量体として用いることができる。さらに、本発明においては、これらに加えて、上記一般式(1)あるいは(3)以外の共重合性化合物を含む単量体を用いることもできる。
【0035】
本発明において、開環重合に供する単量体の種類や配合割合は、得られる樹脂に求められる特性に応じて適宜選択されるものであり、一義的に決定されるものではないが、通常は、得られる樹脂を用いた成形品などの接着・密着性、印刷性あるいは顔料など他素材の分散性が向上するので、その分子内に酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくはケイ素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を少なくとも1個含む構造(以下、「極性構造」という。)を有している環状オレフィン系化合物を含む単量体を選択することが好ましい。もちろん、係る極性構造を有する単量体のみを用いてもよいし、極性構造を有さない単量
体と併用してもよい。
【0036】
本発明においては、極性構造を有する環状オレフィン系化合物を含む単量体を用いることが好ましいが、このうち、上記一般式(3)において、A3〜A6の少なくとも一つが下記一般式(4)で表される基である化合物を用いると、得られる環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の耐熱性と吸水(湿)性とのバランスがとりやすく、さらに好ましい。
−(CH2zCOOR …(4)
(式(4)中、Rは置換または非置換の炭素原子数1〜15の炭化水素基を表し、zは0または1〜10の整数を表す。)
【0037】
上記式(4)で表される極性基を有する環状オレフィン化合物(3)としては、具体的には、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12, 5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
などを挙げることができる。なお、これらの化合物に限定されるものではない。
【0038】
上記一般式(4)において、zの値が小さいものほど得られる水素化物のガラス転移温度が高くなり耐熱性の点で好ましく、更に、zが0である単量体はその合成が容易である点で好ましい。また、Rは、炭素数が多いほど得られる環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の吸水(湿)性が低下する傾向にあるが、ガラス転移温度が低下する傾向もあるので、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、特にメチル基であることが好ましい。
【0039】
なお、上記一般式(3)において、上記一般式(4)で表される基が1つのみである単量体は合成が容易であり工業的に入手しやすいので好適に用いられる。また、上記一般式(3)において、上記一般式(4)で表される基が結合した炭素原子に炭素数1〜5のアルキル基、特にメチル基が結合していると、耐熱性と吸水(湿)性のバランスの点で好ましい。さらに、上記一般式(3)において、mが0でありnが1である単量体は、耐熱性が高い環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物が得られ、かつ、工業的に入手しやすいので好適に用いられる。
【0040】
開環(共)重合
・重合温度
本発明においては、上記式(1)で表される環状オレフィン系化合物を少なくとも1種含む単量体を重合触媒の存在下に開環重合あるいは開環共重合するが、係る重合においては、重合触媒を添加するタイミングが重要な技術的要件となる。すなわち、単量体および溶媒を含む単量体溶液の温度が50〜120℃、好ましくは80〜110℃となった時点で重合触媒を添加することが望ましい。係る温度範囲において重合触媒を添加することで、ゲルの元となる多分岐状の重合体やミクロゲルの発生を抑制できると考えられる。このような効果は、分子内にオレフィン性不飽和結合を2つ以上有する環状オレフィン系単量体、例えばDCP系単量体を用いた場合に特に顕著である。
【0041】
重合触媒を添加した後の重合反応温度は、通常、70〜170℃であり、重合開始1時間後の単量体の転化率が85%以上、好ましくは90%以上となるように調整することが好ましい。この転化率が85%未満の場合、重合時間が長くなり生産性が低下するので工業的には好ましくない。
【0042】
・重合触媒
本発明において、環状オレフィン系化合物を含む単量体を開環(共)重合する際には、重合触媒を用いる。本発明において、開環(共)重合に用いられる触媒としては、公知のものが適用可能であり、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金などの白金族化合物を用いることができる。また、(a)W、MoおよびReの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)デミングの周期律表IA族元素、IIA族元素、IIB族元素、IIIA族元素、IVA族元素またはIVB族元素の化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなる触媒も、好ましく用いられる。このような(a)成分と(b)成分とからなる触媒は、さらに、触媒の活性を高めるために、後述の添加剤(c)が添加されたものであってもよい。
【0043】
上記(a)成分として適当なW、MoあるいはReの化合物の代表例としては、WCl6、MoCl5、ReOCl3など特願平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。また、上記(b)成分の具体例としては、n−C49Li、(C253Al、(C252AlCl、LiHなど特願平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
【0044】
添加剤である(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができるが、更に特開平1−240517号公報に示された化合物を使用することができる。
【0045】
本発明に係る金属重合触媒量は、モル比でモノマー/金属量の仕込み量が1000〜100000、好ましくは5000〜50000である。モノマー/金属量の仕込み量が100000を超えると十分な重合反応が進行しないことがある。また1000未満になると触媒除去が困難となる。
【0046】
・重合反応溶媒
開環(共)重合反応において用いられる溶媒(即ち、単量体、開環重合触媒、分子量調節剤等を溶解する溶媒)としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレン等のハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリール等の化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられ、これらの中では芳香族炭化水素が好ましい。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0047】
上記の溶媒を用いて行われる重合反応において、全単量体と溶媒との比は、重量比で、通常、単量体:溶媒=5:1〜1:15、好ましくは2:1〜1:8、更に好ましくは1:1〜1:6の範囲であるのが望ましい。
【0048】
・環状オレフィン系開環(共)重合体の分子量
本発明における環状オレフィン系開環(共)重合体の分子量は、所望の特性により決定されるものであり一義的に規定されるものではないが、通常、固有粘度(ηinh)は0.2〜5.0、好ましくは0.4〜1.5である。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の分子量としては、重量平均分子量(Mw)が通常1.0×103〜1.0×106、好ましくは5.0×103〜5.0×105であり、分子量分布が(Mw/Mn)が通常1〜10、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4である。本発明では、このような分子量の環状オレフィン系開環(共)重合体が得られるような条件を選択して、環状オレフィン系単量体を含む単量体の開環(共)重合反応を行うことが好ましい。
【0049】
環状オレフィン系開環(共)重合体の分子量が高くなりすぎると水素化反応の効率が低下することがあり、得られる環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の水素添加率が所望の値に達しなかったり、反応時間が長くなったりするなどの問題が生じることもある。
【0050】
分子量の調節は、開環(共)重合反応における重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、一般的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類等の分量調節剤を反応系に添加する方法が、添加量を調整するだけで所望の分子量にできるので容易であり好適に用いられる。
このようにして得られた環状オレフィン系開環(共)重合体は、開環(共)重合に伴って主鎖中に生じたオレフィン性不飽和結合を有している。
【0051】
<開環(共)重合体の水素化>
本発明では、上述のようにして得た環状オレフィン系開環(共)重合体の、オレフィン性不飽和結合を水素化する水素化反応を行う。
【0052】
水素添加触媒
本発明における開環(共)重合体の水素化反応には、水素添加触媒として金属化合物(B)を用いる。
【0053】
好ましい金属化合物(B)としては、通常のオレフィン性不飽和結合を水素添加する際に用いられる公知の化合物を使用することができる。例えば、チタン、コバルト、ニッケルなどの有機酸塩またはアセチルアセトン塩と、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、スズなどの有機金属化合物とを組み合わせたいわゆるチグラータイプの均一系触媒、 パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウムなどの貴金属を、カーボン、アルミナ、シリカアルミナ、シリカマグネシア、ケイソウ土などの担体に担持した担持型貴金属系触媒、ロジウム、レニウム、ルテニウムなどの貴金属錯体触媒などを挙げることができる。中でも下記式(2)または式(5)で表される金属ヒドリド錯体化合物を用いることが好ましく、特に、下記式(2)または式(5)において、Mがルテニウムであるルテニウム化合物を用いることが好ましい。
【0054】
MQnkpq …(2)
(式(2)中、Mは、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、鉄、コバルトおよびイリジウムからなる群より選ばれる金属を示し、
Qは、独立に下記式(i)で表される基を示し、
Hは、水素原子を示し、
Tは、独立にCOまたはNOを示し、
Zは、独立にPR678(Pはリン原子を示し、R6、R7およびR8は、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を示す。)を示し、
kは1または2を示し、nは1または2を示し、pは0〜4の整数を示し、qは0〜4の整数を示し、かつ、k、n、p、qの合計は4、5または6である。)
【0055】
【化6】

(式(i)中、R1〜R5は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基またはヒドロキシル基を示す。)
【0056】
上記R1〜R5におけるアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。
【0057】
上記R1〜R5におけるシクロアルキル基としては、たとえば、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、2,3−ジメチルシクロヘキシル基、2,4−ジメチルシクロヘキシル基、2,5−ジメチルシクロヘキシル基、2,6−ジメチルシクロヘキシル基、3,4−ジメチルシクロヘキシル基、3,5−ジメチルシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0058】
上記R1〜R5におけるアリール基としては、たとえば、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。
なお、上記式(2)中のQ、TおよびZは、複数である場合、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0059】
このような本発明に係る金属ヒドリド錯体の具体例としては、たとえば、
RuH(OCOPh)(CO)(PPh3)2
RuH(OCOPh-CH3)(CO)(PPh3)2
RuH(OCOPh-C25)(CO)(PPh3)2
RuH(OCOPh-C511)(CO)(PPh3)2
RuH(OCOPh-C817)(CO)(PPh3)2
RuH(OCOPh-OCH3)(CO)(PPh3)2
RuH(OCOPh-OC25)(CO)(PPh3)2
RuH(OCOPh)(CO)(P(cyclohexyl)3)2
RuH(OCOPh-NH2)(CO)(PPh3)2
などが挙げられる。(式中Phはフェニル基またはフェニレン基を示す。)
【0060】
これらの化合物のうち、特に好ましく用いられるのは、
RuH(OCOPh-C511)(CO)(PPh3)2
で表される化合物である。
【0061】
式(5)で表される金属ヒドリド錯体化合物は、以下の通りである。
MXnkpq …(5)
(式(5)中、Mは、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、鉄、コバルトおよびイリジウムからなる群より選ばれる金属を示し、
Xは、ハロゲン原子を示し、
Hは、水素原子を示し、
Tは、独立にCOまたはNOを示し、
Zは、独立にPR678(Pはリン原子を示し、R6、R7およびR8は、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を示す。)を示し、
kは1または2を示し、nは1または2を示し、pは0〜4の整数を示し、qは0〜4の整数を示し、かつ、k、n、p、qの合計は4、5または6である。)
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子をあげることができる。
【0062】
なお、上記式(5)中のX、TおよびZは、複数である場合、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
このような本発明に係る金属ヒドリド錯体の具体例としては、たとえば、
RuHF(CO)(PPh3)3
RuHCl(CO)(PPh3)3
RuHBr(CO)(PPh3)3
RuHI(CO)(PPh3)3
などが挙げられる。(式中Phはフェニル基を示す。)
【0063】
これらの化合物のうち、特に好ましく用いられるのは、RuHCl(CO)[P(C6533で表される化合物である。
本発明に係る金属ヒドリド錯体の添加量は、金属量/モノマー仕込み量が通常5〜200ppm、好ましくは10〜100ppmである。金属量/モノマー仕込み量が5ppm未満では十分な水添反応が進行しないことがある。200ppmを超えると触媒除去が困難となる。
【0064】
本発明で用いられる水素化触媒の20℃でのトルエン溶解度は、通常0.2重量%以上10重量%以下、好ましくは1.0重量%以上10重量%以下である。0.2重量%未満では溶解性が低く、触媒の添加量を増やすなどの必要がある。また、10重量%を超えると触媒の除去が困難になる。
なお、水素添加触媒を加えるタイミングについては温度調整前の開環(共)重合体溶液に予め添加されていてもよく、温度調整中に添加してもよい。
【0065】
水素化反応の溶媒
水素化反応に用いられる溶媒としては、水素添加される環状オレフィン系開環(共)重合体の良溶媒であって、しかもそれ自体が水素添加されないものであれば特に限定されない。具体的には、前記重合反応溶媒と同様のものを挙げることができる。このため、単量体の重合で得られた環状オレフィン系開環(共)重合体溶液を、そのまま水素化反応に供することも好ましい。水素添加反応に供される溶液中の環状オレフィン系開環(共)重合体と溶媒との重量比は、通常、5:1〜1:20、好ましくは2:1〜1:15、更に好ましくは、1:1〜1:10であるのが望ましい。溶媒の量がこの範囲より多いと溶媒の回収にコストが高くなる。溶媒の量がこの範囲より少ないと溶液の粘度が高くなり移液に時間がかかるため生産効率が悪くなる。
【0066】
水素化反応
本発明においては、水素化反応における環状オレフィン系開環(共)重合体を含む溶液の温度を水素接触開始段階とその後の反応段階の反応過程に応じて制御する。一般に、環状オレフィン系開環(共)重合体の水素添加では、開環(共)重合体を適当な溶媒に溶解した溶液に、水素添加触媒と水素とを加えて水素化反応を行うが、本発明では、開環(共)重合体と水素とが接触する開始時の重合体溶液温度が重要な技術的要件となる。
【0067】
環状オレフィン系開環(共)重合体を含む溶液と水素の接触開始時においては、環状オレフィン系開環(共)重合体を含む溶液の温度は、10℃〜40℃、好ましくは15℃〜40℃、より好ましくは15℃〜35℃に制御する。水素接触開始時の環状オレフィン系開環(共)重合体を含む溶液の温度をこの範囲にすると、環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物の色相がより透明になる。その理由としては、環状オレフィン系開環(共)重合体と水素の接触開始前に、環状オレフィン系開環(共)重合体を含む溶液の温度を上昇させないことにより、環状オレフィン系開環(共)重合体中の二重結合の金属触媒を介した酸化が抑制されるためと考えられる。
【0068】
水素接触開始後、環状オレフィン系開環(共)重合体の溶液を必要に応じて加熱して温度調整し、開環(共)重合体を含む溶液の温度を100℃〜200℃、好ましくは120〜200℃、より好ましくは140〜180℃に昇温し、溶液をその温度に保ち水素化反応を行なう。水素接触開始後の環状オレフィン系開環(共)重合体を含む溶液の温度をこの範囲にすると、高いオレフィンの水素化率を得ることができる。
【0069】
ここで、水素接触開始時とは、環状オレフィン系開環(共)重合体を含む溶液が入れられている反応器に水素の導入を開始した時間をいい、水素接触開始後とは、それ以降から水素供給終了時までの時間をいう。
【0070】
水素は0.0001MPa/s〜0.01MPa/s、好ましくは0.001MPa/s〜0.005MPa/sで供給する。この範囲で供給すると、反応熱による系内温度上昇速度を抑制することができる。水素化反応における反応系の圧力は、通常、50〜220kg/cm2、好ましくは70〜150kg/cm2、さらに好ましくは90〜120kg/cm2であるのが望ましい。圧力が低すぎると水素化反応に長時間を要し生産性に問題が生じることがあり、一方、圧力を高くすると大きい反応速度が得られるが、装置として高価な耐圧装置が必要になるので経済的でない。系内温度を目的の反応温度に保ち、水素の圧力が目的の圧力に達してから反応が終了するまでの時間は通常1〜9時間、好ましくは2〜5時間である。上記範囲の時間であれば、十分な水素化を行うことが可能であるとともに、時間が長すぎることにより生じる副反応も抑制できる。
【0071】
このようにして得られた環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物の水添率は、通常99.5〜100%、好ましくは99.7〜100%である。水添率が上記範囲内であると、酸素による樹脂の劣化が起こりにくい。
【0072】
なお、本発明でいう水素化反応とは、環状オレフィン系開環(共)重合体分子中のオレフィン性不飽和結合に対する水素添加であって、それ以外の不飽和結合は水素化されなくてもよい。
【0073】
たとえば、該重合体が芳香族基を有する場合、係る芳香族基は必ずしも水素化される必要はない。芳香族基が分子内に存在することにより、得られる環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の耐熱性や屈折率などの光学特性に対して有利な場合もあるので、所望の特性によっては、芳香族基が実質的に水素化されない条件を選択することが好ましい場合もある。また、溶媒としてトルエンなどの芳香族系溶媒を用いる場合、係る溶媒が水素化されない条件が好ましいことは言うまでもないことである。
【0074】
酸化防止剤
本発明においては、水素化反応時のゲルの発生をさらに抑制するために、公知の酸化防止剤の存在下に、環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化を行うことができる。
【0075】
本発明において、好ましく用いることのできる酸化防止剤としては、フェノール系化合物、チオール系化合物、スルフィド系化合物、ジスルフィド系化合物およびリン系化合物よりなる群から選ばれる酸化防止剤が挙げられ、これらの酸化防止剤を1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0076】
本発明では、環状オレフィン系開環(共)重合体100重量部に対して、上記酸化防止剤0.01〜10重量部の存在下で、環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化反応を行うことが好ましい。
【0077】
このような本発明の環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の製造方法によれば、従来公知の方法により環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物を製造する場合と比較して、実質的に透明な環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物を好適に製造することができる。
【0078】
このようにして得られた環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物は、必要に応じて公知の方法で濃縮、脱溶媒して用いることができる。また、得られた環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物には、適宜公知の添加剤を添加して使用することもできる。
【0079】
<精製工程>
本発明の環状オレフィン系開環(共)重合体の製造方法は、さらに、前記水素化反応の工程を経た溶液を、脱触助剤(C)とメタノールを用いて精製する工程を含んでいてもよい。この精製工程では、水素添加触媒を除去することを目的とし、また水素化前に環状オレフィン化合物の重合過程を含む場合は、さらに重合用触媒も除去する。
【0080】
脱触助剤(C)としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、絡酸、吉草酸などのカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸などのジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸などのヒドロキシ酸が挙げられる。
【0081】
脱触助剤(C)は、環状オレフィン系開環(共)重合体100重量部に対して、好ましくは0.1〜5.0質量部、より好ましくは0.1〜2.0質量部用い、メタノールは、環状オレフィン系開環(共)重合体100重量部に対して、好ましくは50〜500質量部、より好ましくは100〜400質量部用いる。
【0082】
精製方法としては、前記水素化反応の工程を経た溶液に、脱触助剤(C)とメタノールを混合し加温撹拌する。混合溶液は2層に分離し、メタノール層を除去することで触媒金属を除去する。
【0083】
上記精製工程により、環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物中の触媒に起因する金属化合物の含有量を減少させることができ、環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の透明性をより向上させることができる。
【0084】
<環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物>
本発明の製造方法で得られる環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物は、また、ゲル分を実質的に含まず、さらに、ろ過などでの除去が困難なミクロゲルをも実質的に含まない。
【0085】
本発明の製造方法で得られた環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物は、イエローインデックス(YI)が、0.20〜0.37、好ましくは0.20〜0.35、より好ましくは0.20〜0.30である。このような環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物の物性は、上記製造方法において、水素接触開始時の温度を低温に制御することにより、環状オレフィン系開環(共)重合体中の二重結合の水素接触開始前の酸化を抑制することができることと、上述の精製工程において、触媒由来の金属化合物の残存量を減少させることができることにより得られると考えられる。
【0086】
本発明の製造方法で得られた環状オレフィン系開環(共)重合体水素化物は、公知の方法により適宜所望の形状に成形して用いることができ、得られた成形体は、イエローインデックスが上記範囲内にあるため、極めて透明に近く、その結果光学特性に優れ、強度の偏在などが少ない。このため本発明に係る環状オレフィン系重合体水素化物は、光学部品や電気・電子材料などをはじめ、フィルムもしくはシートなどの各種成形品の用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0087】
次に実施例によって本発明の方法を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例で得られた共重合体および成形体の評価は下記の方法によって行った。
【0088】
<溶液イエローインデックス>
タッチパネル式SMカラーコンピューター(スガ試験機株式会社製、型式SM−T45)を用いて、10重量%にトルエンで調整したポリマー溶液を20g試料セルに入れて溶液イエローインデックス(YI)を測定した。
【0089】
<重量平均分子量および分子量分布>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー株式会社製、商品名:HLC-8020)を用い、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。
【0090】
<実施例1>
単量体として8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン75.5重量部、ジシクロペンタジエン(DCP)23.5重量部、2−ノルボルネンを1重量部、分子量調節剤として1−ヘキセン11.7重量部、および溶媒としてトルエン150重量部を窒素置換した反応容器に加え、107℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l)0.22重量部、およびメタノール変性WCl6のトルエン溶液(0.025mol/l)0.89重量部を加え、107℃で1時間反応させることにより開環(共)重合体を得た。
【0091】
得られた開環(共)重合体の溶液を、水添反応容器に移液し、トルエン110重量部を加え撹拌して均一溶液とし、溶液温度を30℃まで下げ、水素添加反応触媒であるRu[4−CH3(CH2464CO2]H(CO)[P(C6532を0.04重量部添加し、水素を7MPaまで導入した。水素を7MPaまで導入後、160〜165℃まで溶液温度を上げ、その温度に保ち、最終的に導入水素ガス圧を9〜10MPaとした時から3時間反応させた。反応終了後、トルエン100重量部加えて希釈し、脱触助剤として乳酸0.12重量部、メタノール144重量部加えて脱触媒操作を実施し、触媒を除去したポリマーを溶液として得た。トルエンを加えてポリマー濃度10重量%に溶液を調整後、溶液イエローインデックスを測定したところ、0.34であった。
【0092】
得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることによりさらに精製した水素化物を得た。この水素化物を、真空乾燥して環状オレフィン系重合体(1)を得た。GPCを測定したところ、重量平均分子量(Mw)=48300、分子量分布(Mw/Mn)=3.6であった。また、水添率は99.9%であった。
【0093】
<実施例2>
単量体として8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン75.5重量部、ジシクロペンタジエン(DCP)23.5重量部、2−ノルボルネンを1重量部、分子量調節剤として1−ヘキセン17.7重量部、および溶媒としてトルエン150重量部を窒素置換した反応容器に加え、80℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l)0.22重量部、およびメタノール変性WCl6のトルエン溶液(0.025mol/l)0.89重量部を加え、80℃で1時間反応させることにより開環(共)重合体を得た。
【0094】
得られた開環(共)重合体の溶液を水添反応容器に移液し、トルエン110重量部を加え撹拌して均一溶液とし、溶液温度を30℃まで下げ、水素添加反応触媒であるRu[4−CH3(CH2464CO2]H(CO)[P(C6532を0.04重量部添加し、水素を7MPaまで導入した。水素を7MPaまで導入後、160〜165℃まで溶液温度を上げ、その温度に保ち、最終的に導入水素ガス圧を9〜10MPaとした時から3時間反応させた。反応終了後、トルエン100重量部加えて希釈し、脱触助剤として乳酸0.12重量部、メタノール144重量部を加えて脱触媒操作を実施し、触媒を除去したポリマーを溶液として得た。トルエンを加えてポリマー濃度10重量%に溶液を調整後、溶液イエローインデックスを測定したところ、0.31であった。
【0095】
得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることによりさらに精製した水素化物を得た。この水素化物を、真空乾燥して環状オレフィン系重合体(2)を得た。GPCを測定したところ、重量平均分子量(Mw)=44100、分子量分布(Mw/Mn)=3.5であった。また、水添率は99.8%であった。
【0096】
<実施例3>
単量体として8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン75.5重量部、ジシクロペンタジエン(DCP)23.5重量部、2−ノルボルネンを1重量部、分子量調節剤として1−ヘキセン21.6重量部、および溶媒としてトルエン150重量部を窒素置換した反応容器に加え、50℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l)0.22重量部、およびメタノール変性WCl6のトルエン溶液(0.025mol/l)0.89重量部を加え、50℃で1時間反応させることにより開環(共)重合体を得た。
【0097】
得られた開環(共)重合体の溶液を水添反応容器に移液し、トルエン110重量部を加え撹拌して均一溶液とし、溶液温度を30℃まで下げ、水素添加反応触媒であるRu[4−CH3(CH2464CO2]H(CO)[P(C6532を0.04重量部添加し、水素を7MPaまで導入した。水素を7MPaまで導入後、160〜165℃まで溶液温度を上げ、その温度に保ち、最終的に導入水素ガス圧を9〜10MPaとした時から3時間反応させた。反応終了後、トルエン100重量部加えて希釈し、脱触助剤として乳酸0.12重量部、メタノール144重量部加えて脱触媒操作を実施し、触媒を除去したポリマーを溶液として得た。トルエンを加えてポリマー濃度10重量%に溶液を調整後、溶液イエローインデックスを測定したところ、0.32であった。
【0098】
得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることによりさらに精製した水素化物を得た。この水素化物を、真空乾燥して環状オレフィン系重合体(3)を得た。GPCを測定したところ、重量平均分子量(Mw)=54000、分子量分布(Mw/Mn)=4.1であった。また、水添率は99.8%であった。
【0099】
<実施例4>
水素添加反応触媒をRuHCl(CO)[P(C6533に変更した以外は、実施例2と同じ方法で触媒を除去したポリマーを溶液として得た。トルエンを加えてポリマー濃度10重量%に溶液を調整後、溶液イエローインデックスを測定したところ、0.26であった。
【0100】
得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素化物を得た。この水素化物を、真空乾燥して環状オレフィン系重合体(4)を得た。GPCを測定したところ、重量平均分子量(Mw)=47500、分子量分布(Mw/Mn)=3.2であった。また、水添率は99.8%であった。
【0101】
<実施例5>
得られた開環(共)重合体の溶液を、溶液温度を20℃まで下げてから水素の導入を開始したこと以外は、実施例2と同じ方法で触媒を除去したポリマーを溶液として得た。トルエンを加えてポリマー濃度10重量%に溶液を調整後、溶液イエローインデックスを測定したところ、0.31であった。
【0102】
得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素化物を得た。この水素化物を、真空乾燥して環状オレフィン系重合体(5)を得た。GPCを測定したところ、重量平均分子量(Mw)=49000、分子量分布(Mw/Mn)=3.4であった。また、水添率は99.9%であった。
【0103】
<比較例1>
単量体として8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン75.5重量部、ジシクロペンタジエン(DCP)23.5重量部、2−ノルボルネンを1重量部、分子量調節剤として1−ヘキセン14.3重量部、および溶媒としてトルエン150重量部を窒素置換した反応容器に加え、107℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l)0.22重量部、およびメタノール変性WCl6のトルエン溶液(0.025mol/l)0.89重量部を加え、107℃で1時間反応させることにより開環(共)重合体を得た。
【0104】
得られた開環(共)重合体の溶液を水添反応容器に移液し、トルエン110重量部を加え撹拌して均一溶液とし、水素添加反応触媒であるRu[4−CH3(CH2464CO2]H(CO)[P(C6532を0.04重量部添加した。溶液温度を90℃まで上げてから、水素を7MPaまで導入した。最終的に160〜165℃まで溶液温度を上げ、その温度に保ち、導入水素ガス圧を9〜10MPaとし3時間反応させた。反応終了後、トルエン100重量部加えて希釈し、脱触助剤として乳酸0.12重量部、メタノール144重量部加えて脱触媒操作を実施し、触媒を除去したポリマーを溶液として得た。トルエンを加えてポリマー濃度10重量%に溶液を調整後、溶液イエローインデックスを測定したところ、0.56であった。
【0105】
得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることによりさらに精製した水素化物を得た。この水素化物を、真空乾燥して環状オレフィン系重合体(6)を得た。GPCを測定したところ、重量平均分子量(Mw)=42200、分子量分布(Mw/Mn)=3.0であった。また、水添率は99.8%であった。
【0106】
<比較例2>
単量体として8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン75.5重量部、ジシクロペンタジエン(DCP)23.5重量部、2−ノルボルネンを1重量部、分子量調節剤として1−ヘキセン13.4重量部、および溶媒としてトルエン150重量部を窒素置換した反応容器に加え、80℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l)0.22重量部、およびメタノール変性WCl6のトルエン溶液(0.025mol/l)0.89重量部を加え、107℃で1時間反応させることにより開環(共)重合体を得た。
【0107】
得られた開環(共)重合体の溶液を水添反応容器に移液し、トルエン110重量部を加え撹拌して均一溶液とし、水素添加反応触媒であるRu[4−CH3(CH2464CO2]H(CO)[P(C6532を0.04重量部添加した。溶液温度を90℃まで上げてから、水素を7MPaまで導入した。最終的に160〜165℃まで溶液温度を上げ、その温度に保ち、導入水素ガス圧を9〜10MPaとし3時間反応させた。反応終了後、トルエン100重量部加えて希釈し、脱触助剤として乳酸0.12重量部、メタノール144重量部加えて脱触媒操作を実施し、触媒を除去したポリマーを溶液として得た。トルエンを加えてポリマー濃度10重量%に溶液を調整後、溶液イエローインデックスを測定したところ、0.49であった。
【0108】
得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることによりさらに精製した水素化物を得た。この水素化物を、真空乾燥して環状オレフィン系重合体(7)を得た。GPCを測定したところ、重量平均分子量(Mw)=53700、分子量分布(Mw/Mn)=3.2であった。また、水添率は99.9%であった。
【0109】
<比較例3>
水素添加反応触媒をRuHCl(CO)[P(C6533に変更した以外は、比較例1と同じ方法で触媒を除去したポリマーを溶液として得た。トルエンを加えてポリマー濃度10重量%に溶液を調整後、溶液イエローインデックスを測定したところ、0.38であった。
【0110】
得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることによりさらに精製した水素化物を得た。この水素化物を、真空乾燥して環状オレフィン系重合体(8)を得た。GPCを測定したところ、重量平均分子量(Mw)=44200、分子量分布(Mw/Mn)=3.2であった。また、水添率は99.8%であった。
【0111】
【表1】

水素添加触媒A:Ru[4−CH3(CH2464CO2]H(CO)[P(C6532
水素添加触媒B:RuHCl(CO)[P(C6533

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される環状オレフィン系化合物に由来する構造単位を有する環状オレフィン系開環(共)重合体(A)の水素化物の製造方法であって、
前記環状オレフィン系開環(共)重合体(A)および金属化合物(B)を含む溶液を、10〜40℃に制御して水素と接触を開始する工程と、
前記水素との接触開始後、前記溶液の温度を100〜200℃にして水素化反応をする工程とを、
有する環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物の製造方法。
【化1】

(式(1)中、A1およびA2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基、もしくはアルコキシ基、水酸基、エステル基、シアノ基、アミド基、アミノ基およびチオール基の群から選ばれた極性基、またはハロゲン原子および/または上記の極性基により置換された基よりなる群より選ばれた原子もしくは基を示し、それぞれ同一でもよく、また異なっていても良い。mは0または1〜3の整数であり、nは0または正の整数である。)。
【請求項2】
前記金属化合物(B)が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする、請求項1に記載の環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物の製造方法;
MQnkpq …(2)
(式(2)中、Mは、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、鉄、コバルトおよびイリジウムからなる群より選ばれる金属を示し、
Qは、独立に下記式(i)で表される基を示し、
Hは、水素原子を示し、
Tは、独立にCOまたはNOを示し、
Zは、独立にPR678(Pはリン原子を示し、R6、R7およびR8は、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を示す。)を示し、
kは1または2を示し、nは1または2を示し、pは0〜4の整数を示し、qは0〜4の整数を示し、かつ、k、n、p、qの合計は4、5または6である。)
【化2】

(式(i)中、R1〜R5は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基またはヒドロキシル基を示す。)。
【請求項3】
前記金属化合物(B)が、下記一般式(5)で表されることを特徴とする、請求項1に記載の環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物の製造方法;
MXnkpq …(5)
(式(5)中、Mは、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、鉄、コバルトおよびイリジウムからなる群より選ばれる金属を示し、
Xは、ハロゲン原子を示し、
Hは、水素原子を示し、
Tは、独立にCOまたはNOを示し、
Zは、独立にPR678(Pはリン原子を示し、R6、R7およびR8は、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を示す。)を示し、
kは1または2を示し、nは1または2を示し、pは0〜4の整数を示し、qは0〜4の整数を示し、かつ、k、n、p、qの合計は4、5または6である。)
【請求項4】
前記式(2)または式(5)中のMがルテニウムであることを特徴とする請求項2または3に記載の環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物の製造方法。
【請求項5】
前記環状オレフィン系開環(共)重合体(A)が、さらに下記一般式(3)で表される環状オレフィン系化合物に由来する構造単位を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物の製造方法;
【化3】

(式(3)中、mは0または1〜3の整数であり、nは0または正の整数である。
3〜A6は、それぞれ独立に下記(a)〜(e)で表されるものを表すか、(f)または(g)を表す。
(a)水素原子、
(b)ハロゲン原子、
(c)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(d)置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(e)アルコキシ基、水酸基、エステル基、シアノ基、アミド基、アミノ基およびチオール基から選ばれる基、
(f)A3とA4、またはA5とA6が、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、前記結合に関与しないA3〜A6は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す、
(g)A3とA4、A5とA6、またはA4とA5が、相互に結合して形成された芳香環もしくは非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、前記結合に関与しないA3〜A6は相互に独立に前記(a)〜(e)より選ばれるものを表す。)
【請求項6】
さらに、前記水素化反応の工程を経た溶液を、脱触助剤(C)とメタノールを用いて精製をする工程とを、
有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られる環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物。
【請求項8】
溶液イエローインデックスが0.20〜0.37である請求項7に記載の環状オレフィン系開環(共)重合体の水素化物。

【公開番号】特開2010−159404(P2010−159404A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276425(P2009−276425)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】