説明

環状カルボン酸および/または芳香族アルコールを含む過酸化水素殺菌剤

【課題】親水性ウイルス、抗酸菌および細菌内生胞子に対して有効である低揮発性、低毒性、非腐食性、非刺激性で安定した水性殺菌剤を提供する。
【解決手段】0.6〜7のpHを有し、(a)溶液の全質量ベースで0.01〜6質量%の濃度の過酸化水素と、(b)溶液の全質量ベースで0.01〜8質量%の濃度のベンジルアルコールを含む殺菌用水溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性の過酸化水素をベースとした殺菌用または消毒用水溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
感染予防の実施の際には、一般にミコバクテリウム種(mycobacterial species)が殺菌剤の能力評価のための基準として使用される。化学殺菌剤がミコバクテリウムを破壊させるのに有効であれば、それは、可能性のあるすべての細菌種ならびに親油性および親水性のウイルス粒子に対する硬質(hard)表面殺菌剤としての使用に有効であると判断されることになる。例えば、歯科業務では、抗結核剤としてEPAに登録されている殺菌剤が、汎用硬質表面殺菌用に推奨されている(CDC、1993年)。
【0003】
有効な殺胞子剤である液体の化学殺菌剤はほとんどない(特に、化学的攻撃に敏感である低温浸漬(cold soaking)機器において)。最も広く使用されている殺胞子化学品溶液はアルデヒド、短鎖アルコール、フェノール系化合物およびある種の過酸素物をベースとしたものである。アルデヒド(例えばホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒド)は、非常に有効ではあるが、作業上の安全性と環境への廃棄の危険性の問題が深刻である。過酸素物のうち、過酸が液体の形態では最も広く使用されている。過酢酸および過ギ酸が準重要機器および重要機器の殺菌用に市販されてきたが、長期に使用すると、その攻撃的な化学的性質によって表面と機器が損傷を受けがちである。
【0004】
ミコバクテリウム種に対して良好な効力を示すアルコールもしくはフェノール系化合物は一般に細菌内生胞子を破壊するのには有効でない。短鎖アルコールをベースとする殺ミコバクテリウム製品はこれらの構成要素(ingredient)を高濃度で(通常20質量%を超える)含有する。これによって製品は高度に可燃性でかつ毒性のものとなる。さらに、これらは強いアルコール臭の特徴を有することが多く、したがって、化学的に敏感な個体が狭い閉鎖空間で大量に使用することは困難である。フェノール系化合物は、広範囲の効能を実現するために、それ自体で、または他の殺菌活性物(第4級アンモニウム化合物および溶媒など)との組合せで使用することができる。これらの化合物も非常に揮発性が高く、かつ不快な強い臭気を示す。
【発明の概要】
【0005】
次亜塩素酸塩溶液および他の塩素ベースの化合物はミコバクテリウムと細菌内生胞子の両方に対して有効であるが、有機物質の存在によって容易に不活性化され、希釈されると不安定であり、強く不快な塩素臭を有し、非常に腐食性がありしたがってほとんどの機器および表面を損傷させる。
【0006】
水性化学殺菌剤は作業上、環境または毒性の関係のため溶媒をベースとした溶液を使用できない用途で使用される。多くの殺菌用および消毒用溶液が市販されているが、親水性ウイルス、抗酸菌および細菌内生胞子に対して有効である低揮発性、低毒性、非腐食性、非刺激性で安定した水性殺菌剤が依然として必要である。本発明は、少なくとも部分的にこの必要性に対処しようとするものである。
【0007】
第1の態様によれば、本発明は、酸性の過酸化水素ベースの水溶液を提供し、驚くべきことに、その実施形態はミコバクテリウムおよび細菌内生胞子に対して非常に効果的である。本発明の溶液は0.6〜7または0.6〜5のpHを有する。本発明の溶液のいくつかの実施形態は1.9〜2.1のpHを有するが、他の実施形態では2〜4または4〜5のpHを有する。本発明の溶液は、(a)0.01〜6または0.25〜4質量%の濃度の過酸化水素と、(b)溶液の全質量ベースで0.01〜4質量%の濃度の環状カルボン酸および芳香族アルコールから選択される少なくとも1つの成分とを含む。その少なくとも1つの成分は溶液の全質量ベースで、0.1〜2.5質量%、0.25〜1.0質量%、または0.4〜0.6質量%の濃度で存在することができる。環状カルボン酸は好ましくは2−フランカルボン酸(本明細書では2−フロ酸とも称する)、安息香酸およびサルチル酸である。芳香族アルコールは好ましくはベンジルアルコールである。
【0008】
所望のpH値を実現するために、溶液はリン酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよびエタノールアミンなどの酸性またはアルカリ性の緩衝剤を含むことができる。
【0009】
一実施形態では、その溶液は、溶液の全質量ベースで0.005〜3質量%、好ましくは0.01〜3質量%、より好ましくは0.01〜1質量%、さらにより好ましくは0.04〜0.06質量%の濃度の少なくとも1種のノニオン性界面活性剤をさらに含むことができる。さらに、少なくとも1種のノニオン性界面活性剤は、(a)5〜15の親水性―親油性バランスを有するエトキシ化アルコールおよびアルキルグリコシド(C6〜C10アルキル、3.5モル酸化エチレン(EO)アルコールエトキシレートであってよい)、(b)酸化エチレンまたは酸化プロピレンの十分水溶性のブロックコポリマーから選択されることが好ましい。
【0010】
別の実施形態では、溶液は溶液の全質量ベースで0.01〜6質量%、好ましくは0.05〜2質量%、より好ましくは0.1〜2質量%、さらにより好ましくは0.5〜1質量%の濃度の少なくとも1種のカチオン性の金属イオン封鎖剤をさらに含むことができる。カチオン性金属イオン封鎖剤は1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸でよい。
【0011】
さらに本発明の別の実施形態では、溶液は、(a)C8〜C16アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはアルキルアミンの塩、(b)C8〜C18アルキルスルホン酸、(c)C8〜C16アルキルサルフェートおよび(d)C6−C12アルキルジフェニルスルホネート界面活性剤から選択される少なくとも1種のアニオン性界面活性剤を、溶液の全質量ベースで0.01〜10質量%、0.01〜6質量%、0.01〜5質量%、0.01〜3質量%、または0.05〜1質量%の濃度で含むことができる。少なくとも1種のアニオン性界面活性剤はアルキルベンゼンスルホン酸、好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸であってよい。
【0012】
耐性親水性ウイルスを不活性化するのに適した実施形態では、溶液は、溶液の全質量ベースで0.01〜5質量%、0.05〜3質量%、0.05〜2質量%、または0.05〜1.5質量%の濃度のC6〜C12アルキルジフェニルスルホネート界面活性剤をさらに含むことができる。その界面活性剤はC10アルキル化スルホン化ジフェニルオキシドナトリウム塩であってよい。
【0013】
本発明による溶液は、溶液の全質量ベースで0.001〜15質量%、0.001〜5質量%、0.01〜1質量%、0.01〜0.5質量%または0.02〜0.22質量%の濃度の少なくとも1種の腐食防止剤を含むことができる。その少なくとも1種の腐食防止剤は、1,2,3−ベンゾトリアゾール、モリブデン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、クロム酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩、安息香酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムおよびグルコン酸ナトリウムから選択することができる。
【0014】
溶液は、溶液の全質量ベースで0.01〜15質量%の濃度でヒドロトロープをさらに含むことができる。そのヒドロトロープはナトリウムキシレンスルホネートであってよい。溶液はグリコールまたはグリコールエーテル(例えばプロピレングリコール)などの0.1〜20質量%の溶媒を含むことができる。
本発明による溶液で使用する水は水道水、脱イオン水またはその混合物でよい。
【0015】
第2の態様では本発明は、水で希釈して本発明の第1の態様による溶液を提供できる濃厚な酸性の殺菌用水溶液を提供する。そうした溶液は、溶液の全質量ベースで最大30質量%の合計濃度の環状カルボン酸と芳香族アルコールの合計濃度を有することができる。
【0016】
第3の態様では本発明は、水に溶解して本発明の第1または第2の態様の殺菌用水溶液を生成できる乾燥粒子組成物を提供する。そうした実施形態では、組成物は、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム一水和物および過ホウ酸ナトリウム四水和物から選択される少なくとも1種の過酸化水素放出成分を含む。
【0017】
第4の態様では、そのそれぞれが液体か乾燥形態のどちらかであってよい二成分もしくは多成分系は、混合された場合、第1、第2および第3の態様のいずれか1つの殺菌用溶液または組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本明細書で述べる実験で使用する定量的担体試験のための一般的工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は低レベルの活性構成要素を含有する過酸化水素をベースとした迅速作用性の液体殺菌剤を提供するものである。いくつかの実施形態は高レベルの殺菌用に適している。この文脈では、「高レベルの殺菌」は、標準的な担体試験法で測定して、準重要用途および重要用途で要求される程度のミコバクテリウム種ならびに細菌内生胞子の破壊を意味する。
【0020】
本発明による溶液は、効果的な殺菌剤であり、毒性が低く、生分解性の構成要素を用いている。最近の技術に付随する作業上の安全性または環境への廃棄の問題のない結果が得られる。過酸化水素と他の補助的構成要素のレベルが低いので、本発明による「使用時(in use)」溶液は材料の基板および組織に対して非常に低い反応性を示し、したがって、皮膚または金属に対して非腐食性である。通気性をもたせた包装を必要としないので、過酸化水素濃度が低いことにより、貯蔵寿命が向上し、かつ包装が容易にもなる。
【0021】
本発明は、既存の過酸化水素殺菌剤に対して劇的に向上した溶液を提供する。従来技術の溶液に比べて次数1のオーダーで少ない過酸化水素濃度を用いて、高レベル殺菌での接触時間を1/4〜1/5までに短縮することができる。
【0022】
本発明の溶液は、準重要および重要な表面および/または機器、ならびに抗結核殺菌剤の使用が推奨される非重要表面の殺菌に使用することができる。そうした殺菌剤は歯科業界および呼吸器装置を殺菌するためのヘルスケア設定において一般的である。主要な応用分野は、フレキシブル内視鏡を含む精巧な外科用機器およびデバイスの処理である。混合物中の成分のかなりマイルドで非反応性の性質と、調合されるレベルが低いことが、フレキシブルな医療用デバイスの処理に理想的なものとし、また同時に有機物質の存在下であっても、完全な殺菌を確実にもたらす。
【0023】
理論に拘泥するわけではないが、本発明の溶液中では、過酸化水素が殺菌の機序の中核をなすと考えられる。過酸化水素は、例えば、細胞の細胞質内のリボソーム単位のアセンブリを阻害することによって、微生物細胞に不可欠な機能を妨害すると考えられる。さらに、溶液中における過酸化水素の分解によって、タンパク質と核酸を攻撃すると考えられているヒドロキシル遊離基を生成する結果となる。
【0024】
本発明の溶液で使用する過酸化水素は通常10〜50質量%の濃度で一般に市販されている水溶液である。過酸化水素の市販の溶液は当技術分野で知られている他の安定剤および助剤を含むことがある。本発明の溶液では、過酸化水素の好ましい濃度は約0.01〜約6質量%、より好ましくは約0.25〜約4質量%の範囲である。より高い濃度の過酸化水素を有する溶液を有利に使用することができるが、これらは一般に非常に腐食性が強く、材料適合性の問題を有している。したがって、これらは精巧な機器の殺菌の実施には適用できない。これらの溶液は、有害であって、作業上の安全性および出荷の制約がからむ可能性もある。
【0025】
より高濃度のストック溶液を希釈することによって、先に指定した低レベルの過酸化水素を実現できることを認識されたい。さらに、末端ユーザーが水と混合して本発明による溶液を作製するために、乾燥粒子組成物を調合することができる。過酸化水素は過酸基塩化合物としての乾燥形態で市販されている。その中で好ましいものは、一水和物および四水和物の形態の過炭酸ナトリウムおよび過ホウ酸ナトリウムである。過炭酸ナトリウムは約20質量%の等価過酸化水素を含有し、過ホウ酸ナトリウムの一水和物および四水和物はそれぞれ約30質量%および20質量%の等価過酸化水素を含有するため、各成分の乾燥混合物をブレンドして水に溶解させたときに所望のレベルの過酸化水素を得る場合には、適当な余裕をもたせなければならない。
【0026】
本発明に係る溶液は、全溶液0.01〜8質量%または0.01〜4質量%の濃度で、好ましくは2−フランカルボン酸、安息香酸、サルチル酸およびベンジルアルコールから選択される少なくとも1つの成分も含む。フランカルボン酸は、リグニンおよびセルロースの天然に発生する分解生成物である。2−フランカルボン酸は、特に従来の殺ミコバクテリウム構成要素と組み合わせて調合した場合に、ある種の殺菌(bactericidal)活性、殺真菌活性および殺ミコバクテリウム活性を有するものとして記述されている。本発明で用いる2−フランカルボン酸は、強いアルカリ性の状態でのフルフラールのカニッツァロ反応によって一般に大量に製造されるので、結晶形態で市販されている。他の供給源からの2−フランカルボン酸も使用できることを認識されたい。例えば、それはセルロースの微生物分解によって得ることができる。
【0027】
ベンジルアルコールは植物由来の芳香油中に天然に存在する。工業的には、ベンジルアルコールは一般に塩化ベンジルと炭酸ナトリウムの反応によって製造される。ベンジルアルコールは、カラー映画フィルム用の現像液、ならびに香料、香味剤業界、静菌としての医薬品、化粧品、軟膏、エマルジョン、繊維製品、プラスチックスシートおよびインクとして使用される。ベンジルアルコールは0.1mmHg(20℃で)未満の蒸気圧を有しており、これは揮発性有機化合物のためのCARBすなわちカリフォルニア大気資源委員会(California Air Resources Board)の基準に適合している。
【0028】
親水性ウイルスの不活性化を望む場合、溶液は、少なくとも1種のC6〜C12アルキルジフェニルスルホネート界面活性剤(例えばアルキルジフェニルオキシドジスルホネート界面活性剤)を含むことができる。この構成要素は、混合物にヒドロトローピング特性および洗浄特性を付与するだけでなく、驚くべきことに、緩和させるのが困難な親水性ウイルスの不活性化において重要な役割を果たすことを見出した。この構成要素を含めることによって、殺結核菌製品の必要な広範囲の活性スペクトルが提供されると考えられる。この構成要素の例は、DowFaxの商標名でDow Companyから工業的に製造されているアルキルジフェニルオキシドジスルホネート界面活性剤である。この構成要素の好ましい濃度は溶液の0.05〜3.0質量%である。
【0029】
溶液は、5.0〜15.0の親水性−親油性バランスのエトキシ化アルコールおよびアルキルグリコシドのファミリー、または酸化エチレンまたは酸化プロピレンの十分水溶性のブロックコポリマーのグループから選択される0.005〜3.0質量%の少なくとも1種のノニオン性界面活性剤を含むことができる。これらの構成要素は溶液の表面張力を低下させ、その湿潤特性および洗浄力特性を改善する。これらの界面活性剤は酸性の過酸化水素媒体の存在下で安定であり、過剰な過酸化水素の分解に寄与することはない。これは多くの製造業者から入手することができる。例としては、(a)CondeaVistaからAlfonicの商標名、(b)Union CarbideからTergitolの商標名および(c)BASFからPluronicおよびTetronicの商標名で市販されている界面活性剤が含まれる。
【0030】
溶液は、混合物の0.01〜5.0質量%の濃度で、C8〜C16アルキルベンゼンスルホン酸、C8〜C18アルキルスルホン酸またはC8〜C16アルキルエトキシ化もしくは非エトキシ化サルフェートのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはアルキルアミンの塩から選択される少なくとも1種のアニオン性界面活性剤も含むことができる。これらの構成要素は、溶液に洗浄特性を付与するのを助け、溶液が正規の殺菌の前の洗浄段階で使用される場合に特に有用である。これらの構成要素は多くの業者から市販されている。例としては、StepanからのBiosoftおよびStepanol商標名ならびにHoechstからHostapurの商標名で販売されている製品が含まれる。
【0031】
本発明の溶液にキレート剤を含有させることで溶液の洗浄能力と安定性を向上させることができる。例としては、SolutiaからDequest2010の商標名で市販されている1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸および、Allbright and WilsonからDequest2010の商標名で市販されているアミノトリメチレンリン酸が含まれる。ポリカルボキシレートキレート剤も使用できる。例としては、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチル−エチレンジアミン三酢酸、2−ヒドロキシエチル−イミノジアセテート(HEIDA)およびニトリロ三酢酸が含まれる。キレート剤は、カチオンーアニオン結合でアニオン性界面活性剤の不活性化に関与するカチオン性種を金属封鎖すること、基板と汚れ粒子(soil particle)の間のゼータ電位を増加させること、ならびに、カチオン橋かけにより互いに保持されているより大きい汚れ凝集体を溶解させることによって洗浄過程を助ける働きをする。
【0032】
過酸化水素の存在下であり、かつ本発明の溶液の酸性条件で十分に安定である他の構成要素を加えて、望ましい特性を付与することができる。溶液の色と芳香を改変するために適切な染料および芳香剤を用いることができる。そのレオロジー特性を改変するために増粘剤を加えることができる。酸性媒体中で過酸化水素と相溶性であり、かつ溶液の殺菌特性に悪影響を及ぼさない条件下で、腐食防止剤を加えることもできる。そうした構成要素には、これらに限定されないが、ベンゾトリアゾール、トルトリアゾール、亜硝酸ナトリウムおよびモリブデン酸ナトリウムが含まれる。
【0033】
本発明の溶液は、上記構成要素を脱イオン水に逐次添加することによって容易に調製することができる。最適の製品安定性のためには、水は200μS未満の電気伝導度を有していなければならない。そのためには、イオン交換または逆浸透で精製した水が適している。必要な量の水に対して加える第1の構成要素は2−フランカルボン酸、安息香酸、サルチル酸およびベンジルアルコールから選択される少なくとも1つの成分である。これらの構成要素はそれほど溶解性が高くはなく、したがって、他の構成要素より溶解させるのに時間がかかる。高密度ポリプロピレンまたは不働化したオーステナイト系ステンレス鋼製の混合容器で、同じ材質のシャフトとブレードを有する攪拌機を備えた混合容器に、溶液の最終の水含量の約95%を加える。少なくとも1つの成分を加え、十分な時間(例えば0.5〜1時間)をかけてそれを完全に溶解させた後、構成要素の残りを、特に順序にこだわらず、各添加の間で30〜45分間攪拌して逐次加えることができる。最終の構成要素として過酸化水素を加えることが好ましい。
【0034】
上記したように、本発明の好ましい実施形態は乾燥形態である。この場合、粉末固形物用の回転式混合機またはリボン式混合機中で、妥当な量の結晶形態の各構成要素と、任意選択で硫酸ナトリウムなどの適切な結晶性充てん剤を加えることになる。過酸化水素水溶液の代わりに市販されている過酸基塩化合物を用いる。好ましい例には、一水和物および四水和物の形態の過炭酸ナトリウムおよび過ホウ酸ナトリウムが含まれる。
【0035】
あるいは、ベンジルアルコールおよび過酸化水素または乾燥過酸化水素の放出成分以外のすべての構成要素を含有する乾燥混合物を調合することができる。次いで、この混合物を使用時に水性形態または乾燥形態で加えることができる。この施用は、注加と混合の2パートシステムを備えた自動機械を使用する場合に有用である。
【0036】
上記のように、本発明の溶液は、作業上最少の安全性リスクで、精巧で化学的に敏感な材料を殺菌するのに適している。本発明のいくつかの実施形態は、ヘルスケア、獣医学的ケアおよびデンタルケア業界での準重要および重要表面および機器の殺菌に特に有用である。具体的な用途には、これらに限定されないが、侵襲的および非侵襲的外科用装置の洗浄および殺菌、剛性および柔軟性の侵襲的および非侵襲的診断用装置の洗浄および殺菌、人工器官およびインプラントの洗浄および殺菌、体液再循環装置の内部洗浄および殺菌、ならびに歯科用の椅子および呼吸器蘇生装置などの結核菌殺菌効力を有する製品の使用が推奨される非重要表面の洗浄および殺菌が含まれる。
【0037】
本発明の殺菌用溶液の施用の方法には、これらに限定されないが、処理すべき表面上に噴霧用トリガーもしくはノズルで溶液を噴霧すること、エリアまたは機器を溶液で単純に湿潤させること、閉鎖空間(例えば管)を溶液で満たして溶液を所要の接触時間静置させること、ならびに機器の内部導管および通路を通して所定の時間溶液を循環させることが含まれる。溶液は室温または他の温度(すなわち、4℃〜70℃)で施用することができる。
【0038】
本発明を乾燥混合物として調製する場合、ここでも上記施用法を用いることはできるが、乾燥混合物をまず水に溶解させて本発明の水溶液を生成させなければならない。本発明の水溶液の調製は、その場で、または使用直前に、粉末を取り扱うように装備された洗浄用殺菌設備中で手動によっても自動的にでも行うことができる。
【0039】
以下の実施例は、本発明による溶液の好ましい実施形態を示すだけのためであり、範囲を狭くするものと見なされるべきではない。当分野の技術者は、これらの実施例が本発明をそこで実行できる多くの他の方法を示唆していることを容易に認識されよう。
上記の一般的方法によって組成物IおよびIIを調製した。構成要素およびそれらの量を以下の表に一覧表で示す。
【0040】
【表1】

【0041】
この溶液は硬質表面クリーナーとして特に有用である。DowFax C10Lは、45%有効成分、C10アルキル化スルホン化ジフェニルオキシドジナトリウム塩を水に溶解したものである(Dow Chemical社製)。Alfonic L610−3.5は100%有効成分、C6〜C10アルキル、3.5モル酸化エチレン(EO)アルコールエトキシレート(AE)である。これはアルコールをベースとしたノニオン性界面活性剤で、アルコールモル当たり平均3.5モルの酸化エチレンとなるようにエトキシ化したものである(Condea Vista製)。Biosoft S−100は98%有効成分で、Stepan製のドデシルベンゼンスルホン酸。Briquest ADPA 60 AWは60%有効成分で、Allbright and Wilsonから販売されている1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジスルホン酸。溶液を所望のpH1.8に緩衝させるためにリン酸を加え、同時に過酸化水素の安定性を延長させるために1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジスルホン酸を加えた。
【0042】
【表2】

【0043】
過酸化水素を除く組成物IIのすべての成分を乾燥粉末で混合して乾燥粉末混合物を形成させた。次いで使用する前に、この粉末混合物と所要量の酸化水素水溶液を適当な量の水道水に加えた。組成物IIは金属基板での腐食を緩和させるのを助けるために任意選択の構成要素、すなわちCobratec99、モリブデン酸ナトリウムおよび亜硝酸ナトリウムを含む。Cobratec99はPMC Specialties Group製の99%有効成分の脱水した1,2,3ベンゾトリアゾールである。炭酸ナトリウムは、溶液を所望のpH4.0に緩衝させるためのアルカリ性緩衝剤である。
【実施例】
【0044】
<<実施例1>>
定量的担体試験法を用いて組成物Iの殺菌活性、殺ウイルス活性、殺真菌活性および殺ミコバクテリウム活性を試験した。懸濁試験法を用いて清浄薬としての有効性を試験した。これらの方法を以下で述べる。
【0045】
{材料および方法}
<担体>
ウイルスに対する場合以外のすべての試験で、ガラス製バイアル(Galaxy Co.、Newfield、New Jersey)の内部底面を担体として使用した。
【0046】
<ソイルロード(Soil Load)>
担体に接種するために、すべての試験生物体をまずウシ血清(Gibco BRL Life Technologies Cat.No.16000−044、NY、USA)中に、5質量%の最終濃度で懸濁させた。
【0047】
<中和剤、微生物希釈剤およびフィルターのリンス>
リージンブロス(0.1質量%チオ硫酸ナトリウム五水和物で)を中和剤として用い、またメンブランフィルターおよびフィルターホルダーユニットをリンスするために使用した。シュードモナス・アエルギノザ(Pseudomonas aeruginosa)(緑膿菌)での試験用の中和剤としてLB中の1質量%チオ硫酸ナトリウム五水和物を使用した。通常の生理食塩水を、細菌懸濁液の希釈を行うために、またリージンブロスによって生じた泡状物を洗浄除去するのを助けるための担体バイアルおよびフィルターホルダーユニットの最終洗浄液として使用した。
【0048】
<試験生物体>
シュードモナス・アエルギノザ(ATCC15442)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(黄色ブドウ球菌)(ATCC6538)、サルモネラ・コレラスイス(Salmonella choleraesuis)(ATCC10708)、ミコバクテリウム・テレエ(Mycobacterium terrae)(ATCC15755)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)(毛瘡白癬菌)(ATCC9533)の標準菌株、およびポリオウイルス1型(ATCC VR−192)のSabinワクチン菌株を使用した。アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)の種培養も使用した。バンコマイシン耐性エンテロコッカス(Vancomycin Resistant Enterococcus)(VRE)およびメチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Methicillin Resistant Staphylococcus aureus)(MRSA)は以下のようにして培養した。
【0049】
a)スタフィロコッカス・アウレウス(ATCC6538)、サルモネラ・コレラスイス(ATCC10708):アシネトバクター・バウマンニ、MRSAおよびVRE:トリップティックソイブロス(TSB)中で37℃、24時間培養することによって、6つの栄養細菌のストック懸濁液を5つ調製した。シュードモナス・アエルギノザ(ATCC15442)を1:1000TSB中で37℃、72時間増殖させた。
b)ミコバクテリウム・テレエ(ATCC15755):ミコバクテリウムを、通気性をもたせたプラグシールキャップ組織培養フラスコで、ADC増菌(enrichmen)およびグリセロールを用いてMiddlebrook 7H9ブロス中で増殖させた。21日間増殖させたストックから試験懸濁液を調製した。細胞懸濁液を、2,500rpm、15分間の遠心分離で3回洗浄して、滅菌蒸留水中に再懸濁させた。最終ストック懸濁液を、ガラスビーズを含む滅菌したビジュボトルに細菌ペレットを約108細胞/mLで再懸濁させて調製した。ストック懸濁液を4℃で保存した。
c)トリコフィトン・メンタグロフィテス(ATCC9533):Mycobiotic寒天プレートの中央に接種し、28℃で10日間インキュベートして分生子のストック懸濁液を得た。寒天表面から菌糸マットを収穫して、通常の生理食塩水中で滅菌したガラスビーズを用いてホモジナイズし、滅菌した綿のガーゼで濾過して菌糸を除去した。
d)ポリオウイルス1型(ATCC VR−192)のSabinワクチン菌株:75cm2フラスコのベロ細胞の単層に感染させてウイルスのストックを調製した。ウイルスを細胞に37℃で60分間吸着させて、感染した単層を、抗生物質や血清がまったくなしで、単層の約75%がウイルス細胞変性作用によって感染されるまで最少の必須培地中に保持した。次いで、培養物を凍結させ(−20℃)、3回解凍し、懸濁液を1,000−xgで10分間遠心分離して細胞の残骸を除去した。上澄みをウイルスプールとして用いた。
【0050】
{試験手順}
<定量的担体試験(QCT)>
本試験で用いた定量的担体試験を以下のように設計した。(a)各担体上にあるコロニー形成単位(CFU)またはプラーク形成単位(PFU)および接種材料(inoculum)の乾燥後に残留したCFU/PFUの正確な数を測定し、(b)試験生物体のいかなる洗浄除去をも回避し、(c)担体表面から接種材料を完全に回収し、(d)接触時間の最後に直ちに希釈することによって試験製品の活性を停止させ、(e)殺菌性試験の場合、試験製品への曝露の前後での、メンブランフィルター上の試験生物体のすべての細菌細胞を捕捉し、(f)メンブランフィルターを洗浄することによって残留殺菌活性をすべて除去し、(g)試験細菌接種材料の容積と、評価する製品の容積との比を1:100にし、(h)担体中でのミクロエアロゾルの生成に起因する偽陽性の結果を排除するためにガラス挿入物を組み込み、(i)試験での製品への曝露後の試験生物体のCFU/PFUでのlog10の減少の正確な測定値を提供する。図1およびフローチャート1に示すこの試験方法は、AOAC使用希釈試験(AOAC、1990年)に付随する欠陥を排除しており、同時に殺菌剤試験手順のためのCanadian General Standards Boardの要件(CGSB、1997年)を満たしている。上記のように、これは現在ASTM標準(E2111)として承認されている。
【0051】
【表3】

【0052】
{懸濁試験}
ソイルロードを有する100μLの細菌懸濁液を、2mL容量のクリオビアル(cryovial)中の900μLの試験製品に加え、渦巻を起こして混合し、室温で所要の接触時間保持して試験を実施した。接触時間の最後に、反応混合物に14.0mLの中和剤を加え、渦巻混合させた。この混合物をメンブランフィルターにかけ、バイアルを10.0mLの生理食塩水で2回洗浄した。メンブラン濾過技術は殺菌活性のための定量的担体試験の場合と同じである。
【0053】
<再生培地および生存生物体の検出>
S.アウレウス、P.アエルギノザ、コレラスイス、A.バウマンニを用いた殺菌性試験のために、VREおよびMRSA濾過物をTSAプレート上に置き、37℃でインキュベートし、モニターして、CFUを24時間間隔で合計5日間記録した。M.テレエを用いたミコバクテリウム試験のために、濾過物を7H11寒天上に置き、37℃でインキュベートし、モニターして、CFUを1週間間隔で合計4週間記録した。T.メンタグロフィテスでの殺真菌性試験のために、濾過物をサブローデキストロース寒天上に置き、28℃でインキュベートし、モニターして、4日間でCFUを記録し、その後24時間間隔ごとに合計10日間記録した。
【0054】
<対照>
殺菌活性の定量的担体試験のために、試験製品の代わりに通常の生理食塩水を乾燥した接種材料に施用したこと以外は、試験担体と同様の方法で対照担体を使用した。
懸濁試験−殺菌剤の代わりに100μLの細菌懸濁液を900μLのリージンブロスに加えて対照を試験した。
【0055】
{殺ウイルス試験}
ステンレス製のディスク(直径1cm)を担体として用い、各ディスクを12穴細胞培養プレートの各ウェルに配置した。各担体にソイルロードとして5%血清を含む10μLの試験ウイルスを受け入れた。接種材料を乾燥させた後、各ウェル中の各ディスクを、50μLの試験製品かEBSSのどちらかに室温で所要の接触時間曝露した。接触時間の最後に、試験ウェルと対照ウェルの両方に950μLのEBSSを溶離液/中和剤として加えた。ピペットを用いて溶離液を吸引し担体に注いで、担体から接種材料を除去した。溶出液を、滅菌したラベル付き希釈バイアルに移し、渦巻混合させた。対照および試験の溶出液を逐次希釈し、ウイルスプラークアッセイ用に細胞培養物単層に接種した。プラーク形成単位(PFU)を測定し、log10の減少を計算した。
【0056】
<ポリオウイルスのためのプラークアッセイ>
すべてのプラークアッセイについて、ベロ細胞の集密的(confluent)単層をトリプシン処理し、12穴細胞培養プレート(Corning cat#08−757−16B)に分注した。24〜48時間以内に集密的単層が生成するような密度(約1×106細胞/ウェル)で細胞を分注した。各アッセイは細胞対照として3つのウェルを含み、試験サンプルの各希釈物を少なくとも3つのウェルに接種した。
【0057】
各プレートからの増殖培地を吸引し、次いで、適切な希釈度の100μLの試験ウイルス懸濁液を各単層上に直接分注した。各希釈物を三通りで滴定した。プレートを5%CO2雰囲気下、37℃で60分間インキュベートしてウイルスを吸着させた。各単層を、HEPESで補充した2X MEM、L−グルタミン、非必須アミノ酸(NEAA)、ならびに2%FBS、26mM MgCl2およびNoble Difco寒天を含む2mLの重層培地で覆った。寒天と補充培地の比は1:1であった。重層が固化したら、プレートを5%CO2雰囲気下、37℃で40時間保持した。
【0058】
プラークアッセイのための所要のインキュベーション期間の最後で、生理食塩水中のホルムアルデヒドの3.7%溶液2mLを各ウェルに加え、プレートを3〜4時間保持して細胞を固定し、ウイルスを不活性化させた。次いで、各プレートから固定剤と寒天の重層を取り出し、各ウェルに2mLのクリタルバイオレットの0.1%水溶液を加えて細胞を着色させた。約5分間の接触時間の後、その着色物を吸引し、水道水でウェルを洗浄し、プレートを乾燥させてプラークカウントを測定した。
【0059】
[中和検証]
<殺菌性試験>
1部の製品の使用時希釈物を、14部の中和剤と混合した。中和した溶液に試験生物体を加え、推定20〜100CFUを得た。対照溶液として中和剤だけを使用した。20℃で5分間の接触時間の最後に、混合物をメンブランフィルターにかけて細菌を捕捉した。濾過物を再生培地上に置いた。プレートをインキュベートし、コロニーを数えた。
【0060】
これらの実験では時間は5分間を選択した。その理由は、それが担体バイアル中の製品の最初の希釈と、メンブランフィルターにかけて洗浄した最後のロットとの間の可能な最大の遅れであるからである。
【0061】
<殺ウイルス性試験>
接触時間の最後での製品の希釈が、試験ウイルスに対して無効であるようにするのに十分であるかどうかを決定するために、100μLの試験ウイルスを900μLの1/100希釈の試験製品に加えた。対照として働くように、同量のウイルスを900μLのEBSSにも加えた。ウイルスプラーク形成のために、チューブを5分間静置し、次いで細胞単層に接種した。
【0062】
[毒性およびプラーク形成の妨害:]
希釈した試験製品の、試験ウイルスの細胞単層とプラーク形成能力への効果を判断するために、100μLの1/100希釈試験製品を12穴プレートの6つのウェルに置き、同時に他の6つのウェルに対照としてEBSSを入れて30分間インキュベートさせた。試験製品の毒性の兆候がないか顕微鏡で細胞を観察した。次いで、細胞をEBSSで洗浄し、カウント可能なプラーク/ウェルをもたらすように希釈したウイルスを各ウェルに加えた。ウイルスを37℃で60〜90分間吸着させた。次いで各細胞単層を覆い、ウイルスプラークを発達させるために、プレートを妥当な温度でインキュベートした。
【0063】
{製品性能基準}
殺菌性および殺ウイルス性試験での試験担体の数は5〜10であった。各試験には3つの対照担体も含めた。結果を、対照担体を基準とした生存度のlog10の減少として報告した。
【0064】
有効な殺菌剤と考えられる製品としては、本試験の条件下で、各細菌試験生物体の生存度力価で少なくとも6log10(少なくとも百万倍)、真菌で≧5log10、ウイルスで≧3log10減少することが想定された。清浄薬試験では、目標は最小で5log10減少であった。製品が中間レベルの殺菌での非重要表面上のミコバクテリウムの破壊である場合その基準は最小で4log10の減少である(「治療学製品プログラム(Therapeutics Products Programme)」、1999年 Ed、「殺菌剤薬物ガイドライン(Disinfectant Drug Guidelines)」、Appendix II;Health Canada、Ottawa、Ontario)。
【0065】
{結果}
以下の表1にスタフィロコッカス・アウレウスに対する試験結果をまとめて示す。3つのトライアルすべてにおいて、室温で5分間の接触時間で、S.アウレウスの生存度力価で>7log10の減少をもたらすことができ、この生物体に対する殺菌活性を示している。
【0066】
【表4】

【0067】
以下の表2に懸濁試験の結果をまとめて示す。3つのトライアルすべてにおいて、室温で30秒間の接触時間で、S.アウレウスの生存度力価で6log10の減少をもたらすことができ、この生物体に対する殺菌活性を示している。
【0068】
【表5】

【0069】
以下の表3にシュードモナス・アエルギノザに対する試験結果をまとめて示す。3つのトライアルすべてにおいて、室温で5分間の接触時間で、P.アエルギノザの生存度力価で>6log10の減少をもたらすことができ、この生物体に対する殺菌活性を示している。
【0070】
【表6】

【0071】
以下の表4に懸濁試験の結果をまとめて示す。3つのトライアルすべてにおいて、室温で30秒間の接触時間で、P.アエルギノザの生存度力価で>7log10の減少をもたらすことができた。
【0072】
【表7】

【0073】
以下の表5にS.コレラスイス試験の結果をまとめて示す。3つのトライアルすべてにおいて、室温で5分間の接触時間で、サルモネラ・コレラスイスの生存度力価で>6log10の減少をもたらすことができ、この生物体に対する殺菌活性を示している。
【0074】
【表8】

【0075】
以下の表6に懸濁試験の結果をまとめて示す。3つのトライアルすべてにおいて、室温で30秒間の接触時間で、サルモネラ・コレラスイスの生存度力価で>6log10の減少をもたらすことができた。
【0076】
【表9】

【0077】
以下の表7に懸濁試験の結果をまとめて示す。3つのトライアルすべてにおいて、室温で30秒間の接触時間で、メチシリン耐性アウレウスの生存度力価で>6log10の減少をもたらすことができ、この生物体に対する殺菌活性を示している。
【0078】
【表10】

【0079】
以下の表8に懸濁試験の結果をまとめて示す。3つのトライアルすべてにおいて、室温で30秒間の接触時間で、バンコマイシン耐性エンテロコッカスの生存度力価で>6log10の減少をもたらすことができ、この生物体に対する殺菌活性を示している。
【0080】
【表11】

【0081】
以下の表9に懸濁試験の結果をまとめて示す。3つのトライアルすべてにおいて、室温で5分間の接触時間で、アシネトバクター・バウマンニの生存度力価で>6log10の減少をもたらすことができ、この生物体に対する殺菌活性を示している。
【0082】
【表12】

【0083】
以下の表10に担体試験の結果をまとめて示す。3つのトライアルすべてにおいて、室温で5分間の接触時間で、ミコバクテリウム・テレエの生存度力価で>5log10の減少をもたらすことができ、この生物体に対する殺菌活性を示している。
【0084】
【表13】

【0085】
以下の表11に担体試験の結果をまとめて示す。3つのトライアルすべてにおいて、室温で5分間の接触時間で、T.メンタグロフィテスの生存度力価で>5log10の減少をもたらすことができ、この生物体に対する殺菌活性を示している。
【0086】
【表14】

【0087】
以下の表12に示すように、組成物Iは20±1℃、5分間の接触時間で、ポリオウイルスの生存度力価で>4log10の減少をもたらすことができ、この生物体に対する殺菌活性を示している。
【0088】
【表15】

【0089】
<<実施例2>>
この実施例はさらに、組成物Iの殺ミコバクテリウム活性、ならびに混合物中での2−フランカルボン酸と過酸化水素の相乗効果を示す。殺ミコバクテリウムの効力の評価に用いた手法は、上記の定量的担体法である(ASTM標準E2111)。現在、非重要殺菌についてのカナダでの合格基準は微生物体の生存数の4log10を超える減少であり、一方、準重要用途および重要用途では6log10を超える減少である。
組成物Iならびに代替の組成物A、BおよびCの結果を以下の表で示す。
【0090】
【表16】

【0091】
単純な助剤効果で4.0log10未満のlog10の減少がもたらされることから、上記の結果は、2−フロ酸と組成物Iのうちの他の成分の1つもしくは複数との間に明らかな予想外の相乗効果があることが分かる。
【0092】
<<実施例3>>
この実施例では、組成物IIの殺胞子および殺ミコバクテリウム特性を示す。ここでも、定量的担体法を用いた。しかし、内視鏡処理機械での殺菌剤の使用をシミュレートするために、実験は54℃の温度で実施した。殺胞子効力を測定するための代理生物体はバシルス・サブチリス(Bacillus subtilis)(枯草菌)であった。殺ミコバクテリウム効力を測定するための代理生物体はミコバクテリウム・テレエであった。ここでも、対応する比較例(組成物A、BおよびC)を含めた。これは2−フロ酸と溶液の他の成分との間の相乗効果を示す。接触時間は15分間であった。
【0093】
【表17】

【0094】
上記の結果から、0.75%有効成分の過酸化水素溶液(組成物II)に少量の2−フロ酸を加えると、溶液の効力が、0.75%過酸化水素だけ(組成物B)に対して次数で1を超え、2−フロ酸ベースの溶液(組成物C)に対しては次数2を超えて増大することが分かる。
【0095】
<<実施例4>>
組成物Iの急性の皮膚および目への毒性、ならびに経口毒性を評価した。OECD(それぞれ、標準OECDの404章、405章、420章)によって確立されている化学品試験のための標準的方法を用い、結果を以下の表にまとめた。
【0096】
【表18】

【0097】
クロロキシレノールをベースにした市販の外科用ソープでの皮膚刺激性の並行試験では、皮膚刺激性を最小限にし、かつ保湿性を促進するために様々な構成要素を含んでいるにもかかわらず、ハンドソープは、ずっと高い刺激性指数2.25の数値であることが分かった。0.01〜1.99の急性皮膚刺激性指数の値は軽い刺激性の物質として分類され、一方、2.00〜5.00の値はその物質が中位の刺激性であることを意味する。さらに、2000mg/Kgを超える経口LD50の値は、摂取した場合その物質が非毒性のものとして分類されることを意味する。
【0098】
<<実施例5>>
溶液中での過酸化水素安定性を評価するために、組成物Iを加速高温安定性試験にかけ
た。サンプルを50℃の温度に1週間曝して、ヨウ素滴定で試験前後の過酸化水素含有量を測定した。観察された過酸化水素の損失は当初濃度の3.41%であった。これは、実際には溶液が室温で1年以上の保存寿命を有するはずであることを示している。
【0099】
以下の実施例では次の成分を使用した。
<リンをベースとした化合物および/またはカチオン性金属イオン封鎖剤>
・H3PO4=リン酸
・BRIQUEST ADPA−60AW(HEDP)=1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(Allbright and Wilsonの販売)
・BRIQUEST ADPA−60SH=1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸のナトリウム塩(Allbright and Wilsonの販売)
<アニオン性界面活性剤/ヒドロトロープ>
・Biosoft S−100(DDBSA)=ドデシルベンゼンスルホン酸(Stepanの製造)
・Dowfax C10L=C10アルキル化スルホン化ジフェニルオキシドジ
ナトリウム塩
(Dow Chemical社製造)
・C6 DOWFAXヒドロトロープ=C6アルキル化スルホン化ジフェニルオキシドジナトリウム塩(Dow Chemical社製造)
・ナトリウムキシレンスルホネート
<ノニオン性界面活性剤(乳化剤)>
・Alfonic L610−3.5=C6〜C10アルキル、3.5モル酸化エチレン(EO)アルコールエトキシレート(AE)(Condea Vistaの製造)
<腐食防止剤>
・Cobratec35G=1,2,3ベンゾトリアゾール(PMC Specialties Groupの製造)
・モリブデン酸ナトリウム
<緩衝剤>
・クエン酸
・NaOH=水酸化ナトリウム
・KOH=水酸化カリウム
・CaCO3=炭酸カルシウム
【0100】
<<実施例6>>
以下の表VIaにしたがって溶液A、B、C、DおよびEを調製した。様々な生物体に対するそれらの活性を以下の表VIb、VIcおよびVIdに示す。
【0101】
【表19】

【0102】
【表20】

【0103】
【表21】

【0104】
【表22】

【0105】
【表23】

【0106】
<<実施例7>>
以下の表VIIaにしたがって溶液Fを調製した。T.メンタグロフィテスに対するその活性を以下の表VIIbに示す。
【0107】
【表24】

【0108】
【表25】

【0109】
<<実施例8>>
以下の表VIIIaにしたがって溶液G、HおよびIを調製した。様々な生物体に対するそれらの活性を以下の表VIIIb、VIIIc、VIIIdおよびVIIIeに示す。
【0110】
【表26】

【0111】
【表27】

【0112】
【表28】

【0113】
【表29】

【0114】
【表30】

【0115】
<<実施例9>>
以下の表IXaにしたがって溶液J、K、LおよびMを調製した。M.テレエに対するそれらの活性を以下の表IXbに示す。
【0116】
【表31】

【0117】
【表32】

【0118】
<<実施例10>>
以下の表XaおよびXbにしたがって溶液PおよびQを調製した。B.サブチリス対するそれらの活性を以下の表Xcに示す。
【0119】
【表33】

【0120】
【表34】

【0121】
【表35】

【0122】
<<実施例11>>
以下の表XIaにしたがって溶液RおよびSを調製した。選択した生物体に対するその活性を以下の表XIbおよびXIcに示す。
【0123】
【表36】

【0124】
【表37】

【0125】
【表38】

【0126】
<<実施例12>>
以下の表XIIaにしたがって溶液Tを調製した。M.テレエに対するその活性を以下の表XIIbにまとめる。
【0127】
【表39】

【0128】
【表40】

【0129】
上記の実施例では、溶液A、B、C、D、E、FおよびTは硬質表面殺菌剤である。溶液G、H、I、J、K、L、Mは高レベルの殺菌剤および滅菌剤であり、硬質表面クリーナーとして使用することもできる。溶液N、O、P、Q、RおよびSは高レベルの殺菌剤および不妊化剤であり、医療および他のデバイスに使用することもできる。
【0130】
上記の実施例は単に例示の目的のためであり、上記特許請求の範囲で定義した本発明の範囲を制限するように解釈されるべきものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.6〜7のpHを有する殺菌用水溶液であって、
(a)溶液の全質量ベースで0.01〜6質量%の濃度の過酸化水素、及び
(b)溶液の全質量ベースで0.01〜8質量%の濃度の環状カルボン酸および芳香族アルコールから選択される少なくとも1つの成分、
を含んでいる、殺菌用水溶液。
【請求項2】
前記少なくとも1つの成分が溶液の全質量ベースで0.1〜4質量%の濃度で存在する請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
前記少なくとも1つの成分が溶液の全質量ベースで0.1〜2.5質量%の濃度で存在する請求項2に記載の溶液。
【請求項4】
前記芳香族アルコールはベンジルアルコールである請求項1又は2又は3に記載の溶液。
【請求項5】
前記環状カルボン酸は、2−フランカルボン酸、安息香酸及びサルチル酸から選択される請求項1乃至4の何れかに記載の溶液。
【請求項6】
前記少なくとも1種のノニオン性界面活性剤を、溶液の全質量ベースで0.005〜3質量%の濃度で含む請求項1乃至5のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項7】
前記少なくとも1種のノニオン性界面活性剤が溶液の全質量ベースで0.01〜3質量%の濃度で存在する請求項6に記載の溶液。
【請求項8】
前記少なくとも1種のノニオン性界面活性剤が溶液の全質量ベースで0.01〜1質量%の濃度で存在する請求項7に記載の溶液。
【請求項9】
前記少なくとも1種のノニオン性界面活性剤が、(a)5〜15の親水性−親油性バランスを有するエトキシ化アルコールおよびアルキルグリコシド、および(b)酸化エチレンまたは酸化プロピレンの十分に水溶性のブロックコポリマーから選択される請求項6乃至8のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項10】
前記少なくとも1種のノニオン性界面活性剤が、酸化エチレンもしくは酸化プロピレンの十分に水溶性のブロックコポリマー、C6〜C10アルキル、3.5モル酸化エチレン(EO)アルコールエトキシレートまたはそれらの組合せである請求項9に記載の溶液。
【請求項11】
少なくとも1種のカチオン性金属イオン封鎖剤を、溶液の全質量ベースで0.01〜6質量%の濃度で含む請求項1乃至10いずれか1項に記載の溶液。
【請求項12】
前記カチオン性金属イオン封鎖剤が溶液の全質量ベースで0.05〜2質量%の濃度で存在する請求項11に記載の溶液。
【請求項13】
前記カチオン性金属イオン封鎖剤が1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸である請求項11または12に記載の溶液。
【請求項14】
(a)C8〜C16アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはアルキルアミンの塩、
(b)C8〜C18アルキルスルホン酸、
(c)C8〜C16アルキルサルフェート、および
(d)C6〜C12アルキルジフェニルスルホネートから選択される少なくとも1種の前記アニオン性界面活性剤を、溶液の全質量ベースで0.01〜10質量%の濃度で含む請求項1乃至13のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項15】
前記少なくとも1種のアニオン性界面活性剤が溶液の全質量ベースで0.01〜6質量%の濃度で存在する請求項14に記載の溶液。
【請求項16】
前記少なくとも1種のアニオン性界面活性剤が溶液の全質量ベースで0.05〜3質量%の濃度で存在する請求項15に記載の溶液。
【請求項17】
前記少なくとも1種のアニオン性界面活性剤がアルキルベンゼンスルホン酸およびC6〜C10アルキルジフェニルスルホネートから選択される請求項14乃至16のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項18】
C6アルキル化スルホン化ジフェニルオキシドナトリウム塩、C10アルキル化されたスルホン化ジフェニルオキシドナトリウム塩およびドデシルベンゼンスルホン酸のうちの少なくとも1つを含む請求項17に記載の溶液。
【請求項19】
0.6〜5のpHを有する請求項1乃至18のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項20】
pHは2〜4である請求項19に記載の溶液。
【請求項21】
少なくとも1種の緩衝液を、溶液を前記pHに緩衝させるのに有効な量で含む請求項1乃至20のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項22】
前記少なくとも1種の緩衝液が、リン酸、クエン酸、グリコール酸、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、エタノールアミンおよび乳酸から選択される請求項21に記載の溶液。
【請求項23】
少なくとも1種の腐食防止剤を、溶液の全質量ベースで0.001〜15質量%の濃度で含む請求項1乃至22のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項24】
前記少なくとも1種の腐食防止剤が溶液の全質量ベースで0.01〜5質量%の濃度で存在する請求項23に記載の溶液。
【請求項25】
前記少なくとも1種の腐食防止剤が溶液の全質量ベースで0.01〜1質量%の濃度で存在する請求項21に記載の溶液。
【請求項26】
前記少なくとも1種の腐食防止剤が、1,2,3−ベンゾトリアゾール、モリブデン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、クロム酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩、安息香酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウムおよびケイ酸ナトリウムから選択される請求項23乃至25のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項27】
前記過酸化水素が溶液の全質量ベースで0.25〜4質量%の濃度で存在する請求項1乃至26のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項28】
ヒドロトロープを、溶液の全質量ベースで0.01〜15質量%の濃度で含む請求項1乃至27のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項29】
前記ヒドロトロープがナトリウムキシレンスルホネートである請求項25に記載の溶液。
【請求項30】
溶液の全質量ベースで0.01〜15質量%の濃度で溶媒を含む請求項1乃至29のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項31】
前記溶媒がグリコールまたはグリコールエーテルである請求項30に記載の溶液。
【請求項32】
水で希釈して請求項1乃至31のいずれか1項に記載の溶液を提供できる濃厚な酸性殺菌用水溶液。
【請求項33】
環状カルボン酸と芳香族アルコールの合計量が溶液の全質量ベースで最大30質量%である請求項32に記載の溶液。
【請求項34】
水に溶解して請求項1乃至33のいずれか1項に記載の殺菌用水溶液を生成することができる乾燥粒子組成物。
【請求項35】
過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム一水和物および過ホウ酸ナトリウム四水和物から選択される少なくとも1種の過酸化水素放出成分を含む請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
(a)請求項1乃至31のいずれか1項に記載の溶液を供給する工程、および
(b)20〜60℃の温度で前記装置を通して前記溶液をその場で循環させる工程からなる装置をその場で洗浄するための方法。
【請求項37】
菌類およびミコバクテリウムを不活性化させるための請求項1乃至31のいずれか1項に記載の溶液の使用。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−225584(P2011−225584A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−126015(P2011−126015)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【分割の表示】特願2004−552307(P2004−552307)の分割
【原出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【出願人】(501237338)ヴィロックス テクノロジーズ インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】