説明

環状凹部を備える合成樹脂製ブロー成形容器

【課題】内容物充填後の口部シール工程でのグリッパフォーク挿入による把持が安定かつ確実である合成樹脂製ブロー成形容器を提供すること。
【解決手段】口部、環状凹部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形容器であって、口部は、周面から外方に雄螺条が膨出する雄螺条域を有し、環状凹部は、該口部の下端に連接し、胴部は、上端に、前記の環状凹部に連接する環状台座部を有し、かつ、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面は、合成樹脂と、該合成樹脂に対し100〜4000ppmの不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)とを含有する樹脂組成物から形成されている該成形容器、特に好ましくは、雄螺条の鍔先端部と鍔終端部とが容器のパーティングラインの中間線±60度以内の範囲にある該成形容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形によって製造される合成樹脂製容器、すなわち、合成樹脂製ブロー成形容器に関し、特に、胴部と口部とを備える合成樹脂製ブロー成形容器に関する。
【背景技術】
【0002】
マヨネーズ、ケチャップ、ソースなどの粘稠な内容物が充填される合成樹脂製容器は、主に、筒状の合成樹脂製のパリソンが押し出され、続いて、冷却金型内で容器の形状にブロー成形されるダイレクトブロー成形によって製造されることが多い。該合成樹脂製容器の層構成としては、単層の容器または多層の容器があり、合成樹脂材料としては、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミドなどが用いられている。多層の合成樹脂製容器としては、表層(外層及び/または内層)として、ポリオレフィン、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどを使用し、中間層に、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのバリア層を備えた多層構造のものが広く使用されている。
【0003】
例えば、特開平6−72422号公報(特許文献1)、特開平6−72424号公報(特許文献2)には、ポリプロピレン等のポリオレフィンを用いてブロー成形された単層ボトルまたは多層ボトルが開示され、更にポリオレフィンの最外層、エチレン・ビニルアルコール共重合体等ガスバリヤー性樹脂の芯層を含む多層材により構成され、ダイレクトブロー成形などにより作成される多層ボトルが開示されている。
【0004】
合成樹脂製容器の滑り性を改善するために、例えば、先の特許文献1や特開2005−307122号公報(特許文献3)などに示されるように、従来、原料樹脂に、滑剤(スリップ剤)を添加することが行われている。滑剤は、通常、原料樹脂に、マスターバッチ方式で添加されたり、練り込まれたりする。合成樹脂製容器が多層容器である場合は、表面層(最外層または最内層)に滑剤を添加することが多い。滑剤としては、例えば、脂肪酸アミドが汎用され、具体的には、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド(ベヘニン酸アミド)などが使用される。これらの滑剤は、2種以上を混合して使用することも行われてきた。例えば、先の特許文献3には、天然物由来の油脂を原料とするスリップ剤(滑剤)として、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミドなどが開示されている。
【0005】
合成樹脂製容器は、容器成形工程、容器の移送工程、ユーザーによる食品等の内容物充填工程、内容物充填後の口部シール工程、キャップ装着工程、更に容器包装工程などを経て、最終製品が製造される。
【0006】
食品等の内容物充填工程からキャップ装着工程までについて、図1を参照しながら説明する。内容物充填工程においては、食品等の内容物を、例えば、口部、肩部、胴部及び底部を有する成形された容器に充填し、必要に応じて加熱、殺菌及び冷却を行い、充填量等の検査を行った後に、口部シール装置まで容器を移送して、口部シール工程において、該容器の口部をシール材で密封して密封容器とする。次いで、該密封容器を整列させながら、キャップ装着装置(以下、「キャッパー」ということがある。)まで移送して、キャップ装着工程において、キャップ装着装置が、該密封容器の口部にキャップを巻き締める。
【0007】
容器の移送は、図1に示すように、通常、回転する搬送ホイール間で、容器をを受け渡しながら行われる。容器への内容物の充填工程の後は、充填量や充填重量等を検査して、規格範囲を満たしていないものを排出するので、図示しない複数の搬送ホイールを間欠回転しながら経由させることによって、容器の不連続な並びを、連続な並び、すなわち、等間隔の並びに整え、規格範囲を満たす充填容器を整列させて、受渡ホイールを介して、口部シール工程に充填済みの容器を引き渡す。
【0008】
口部シール工程においては、連続的に、すなわち、等間隔に並んだ充填容器を、充填容器の底部を把持して案内する底部グリッパ(「袴グリッパ」ということもある。)による把持と、充填容器の胴部を把持して案内する胴部グリッパによる把持とを切り替えることによって、充填容器を正立状態に維持しながら、口部シール装置(以下、単に「シール装置」ということがある。)の位置まで移送する。充填容器の正立状態の維持を助けるために、各移送ホイールには、図示しない案内板や案内溝を備えることができる。
【0009】
口部シール工程では、充填容器は、グリッパで把持されながら、ステンレス製等の回転ホイール上を回転移動して、シール装置の直下に来たとき、該充填容器の上部を把持して、該充填容器を正立状態に固定した後、通常、下面に低密度ポリエチレン等の熱接着剤層を設けてある蓋材(シール材)を供給し、充填容器の開口部に載置して、上方から加熱加圧することによって、該充填容器の開口部に蓋材を溶着させて密封容器を形成する。
【0010】
近年、生産性向上のために、合成樹脂製容器製造装置の高速化が進んでいる。回転の角速度が大きくなると、遠心力が大きくなるほか、回転に伴う機械的振動を受けたり、隣接するホイール間で容器が受ける慣性力に差が生じたりすることがある。この結果、充填容器が種々の方向に揺動したり、傾いたりして、シール装置による口部シールが正確にされないことがある。場合によっては、倒れたりすることもある。そのため充填容器の上部の把持が重要となってくる。
【0011】
充填容器の上部を把持する手段は種々知られているが、フォーク状のグリッパ(グリッパフォーク)を充填容器のネック部の左右両側に挿入することによって、把持を行う方法がある。この把持方法は、変形しにくい容器のネック部を把持するとともに、充填容器の上方と下方とを把持するものであるので、充填容器の正立状態を維持しやすい。具体的には、例えば、特開2008−207962号公報(特許文献4)には、樹脂製ボトルのネック部を両側から挟んで保持するグリッパにおいて、ボトルのネック部の両側に位置する一対の支持部と、これら各支持部にそれぞれ設けられ、ネック部の外周面に当接する当接部とを備え、この当接部が、上下に離隔した支持体からなることを特徴とするグリッパが開示されている。なお、特許文献4に開示されるグリッパは、具体的には、搬送装置によって搬送している容器に電子線を照射して殺菌を行う電子線殺菌装置等に用いられるグリッパに関するものであり、グリッパフォーク自体、及び、グリッパフォークによる容器の把持は格別のものではない。
【0012】
グリッパフォークによる容器の把持は、該グリッパフォークを容器のネック部等の所定箇所(以下、「グリッパ受け部」ということがある。)に挿入、離脱する操作が伴うので、該グリッパフォークの上面、下面、更には先端部が、容器のグリッパ受け部に当接したり、摺動したりする。合成樹脂製容器製造装置の高速化が進むもとで、該グリッパフォークが容器のグリッパ受け部に当接したり、摺動したりしても、円滑な挿入、離脱が妨げられないことが求められている。該グリッパフォークの挿入、離脱が円滑に行われないと、口部シールが正確にされないばかりか、容器の転倒が発生するおそれが一層高くなっている。
【0013】
加えて、グリッパフォークの挿入、離脱を円滑に遂行するためには、該グリッパフォークの上面、下面、更には先端部が当接したり、摺動したりする容器のグリッパ受け部の形状の正確さが求められるようになってきた。しかし、合成樹脂製容器、例えば、合成樹脂製ブロー成形容器などの製造に当たっては、溶融状態に近い合成樹脂が成形金型により冷却されて固化するとき、その合成樹脂が体積収縮することは周知である。したがって、成形金型の内壁面の形状がそのまま合成樹脂製容器成形品の形状となるものではないので、成形金型の形状等に種々の工夫が試みられたり、合成樹脂及び金型の温度や合成樹脂の溶融性状(MFR等)を適宜変更する手法も試みられたりしているが、普遍的な設計手法の提案は依然としてされていない。
【0014】
特に、合成樹脂製容器、例えば、合成樹脂製ブロー成形容器においては、口部に蓋を取り付けるための螺条が形成されている。螺条は、容器の口部から外方に膨出する肉厚部であり、かつ、容器軸及び該容器軸の法線方向に対して傾斜して形成されるものであるので、成形後の収縮を含めた体積収縮の挙動を推測することが困難であり、グリッパフォークによる把持を安定かつ確実に行うことができるようにするための設計手法の提案は依然としてされていない。
【0015】
したがって、合成樹脂製ブロー成形容器の製造装置の高速化が進むもとで、内容物充填後の口部シール工程でのグリッパフォーク挿入による把持が安定かつ確実である合成樹脂製ブロー成形容器が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平6−72422号公報
【特許文献2】特開平6−72424号公報
【特許文献3】特開2005−307122号公報
【特許文献4】特開2008−207962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、合成樹脂製ブロー成形容器の製造装置の高速化が進むもとで、内容物充填後の口部シール工程でのグリッパフォーク挿入による把持が安定かつ確実である合成樹脂製ブロー成形容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記の課題を解決することについて鋭意研究した結果、周面から外方に雄螺条が膨出する雄螺条域を有する口部、該口部の下端に連接する環状凹部、該環状凹部に連接する環状台座部を上端に有する胴部、及び底部を、容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形容器において、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面を特有の組成の樹脂組成物により形成することにより、課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。ここで、「外表面」とは、容器の外方にある表面をいう。
【0019】
さらに、本発明者らは、前記の口部の雄螺条域に形成される雄螺条の形状及び配置を特有のものとすることにより、課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。
【0020】
すなわち、本発明によれば、口部、環状凹部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形容器であって、口部は、周面から外方に雄螺条が膨出する雄螺条域を有し、環状凹部は、該口部の下端に連接し、胴部は、その上端に、前記の環状凹部に連接する環状台座部を有し、かつ、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面は、合成樹脂と、該合成樹脂に対して100〜4000ppmの不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)とを含有する樹脂組成物から形成されていることを特徴とする前記の合成樹脂製ブロー成形容器が提供される。
【0021】
また、本発明によれば、実施の態様として、以下(1)〜(16)の合成樹脂製ブロー成形容器が提供される。
【0022】
(1)前記の合成樹脂製ブロー成形容器が、ブロー成形金型の容器軸方向に沿う金型合せ面跡であるパーティングラインを該成形容器の表面に有し、
前記雄螺条域が、複数の雄螺条を有し、かつ、各雄螺条の上端部である鍔先端部、及び、各雄螺条の下端部である鍔終端部が、前記雄螺条域を周方向に展開したときに隣接するパーティングラインの中間の区域である非パーティングライン区域に存在する前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
【0023】
(2)前記鍔先端部及び鍔終端部が、前記非パーティングライン区域の中間線±60度以内の範囲に存在する前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
(3)前記鍔先端部の位置に対応する前記環状凹部の容器軸方向の長さと、鍔終端部の位置に対応する前記環状凹部の容器軸方向の長さとが、同一である前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
【0024】
(4)前記の口部、環状凹部及び環状台座部の外表面が、合成樹脂製ブロー成形容器の表層の一部であり、該表層が、合成樹脂と、該合成樹脂に対して100〜4000ppmの不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)とを含有する樹脂組成物から形成されている前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
(5)前記の合成樹脂製ブロー成形容器の表層が、該合成樹脂製ブロー成形容器の最外層及び最内層である前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
【0025】
(6)前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、以下の(A)、(A)及び(A):
(A)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数);
(A)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数);及び
(A)HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数);
からなる群より選ばれる一つの式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドを含有する前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
【0026】
(7)前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドと、前記の(A)または(A)の式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドとの混合物である前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
(8)前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドにおけるmが、m=n+1またはm=n−1である前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
(9)前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドにおけるkが、k=nである前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
(10)前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドと、以下の(A11):
(A11)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、jは、6≦j≦10の範囲の整数であり、j≠nである。);
の式で表される脂肪酸アミドとの混合物である前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
【0027】
(11)前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を2結合〜4結合有する化合物を含有する前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
【0028】
(12)前記の合成樹脂と、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)とを含有する樹脂組成物が、更に飽和脂肪酸アミドを含有する前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
【0029】
(13)更にバリア層を備える前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
(14)更に回収層を備える前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
(15)表層、バリア層、接着層及び回収層を備える前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
(16)最外層/接着層/バリア層/接着層/回収層/最内層の層構成を有する前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、口部、環状凹部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形容器であって、口部は、周面から外方に雄螺条が膨出する雄螺条域を有し、環状凹部は、該口部の下端に連接し、胴部は、その上端に、前記の環状凹部に連接する環状台座部を有し、かつ、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面は、合成樹脂と、該合成樹脂に対して100〜4000ppmの不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)とを含有する樹脂組成物から形成されていることを特徴とする前記の合成樹脂製ブロー成形容器であることによって、合成樹脂製ブロー成形容器の製造装置の高速化が進むもとで、内容物充填後の口部シール工程でのグリッパフォーク挿入による把持が安定かつ確実である合成樹脂製ブロー成形容器を提供することができるという効果を奏する。
【0031】
また、本発明によれば、合成樹脂製ブロー成形容器が、ブロー成形金型の容器軸方向に沿う金型合せ面跡であるパーティングラインを該成形容器の表面に有し、前記雄螺条域が、複数の雄螺条を有し、かつ、各雄螺条の上端部である鍔先端部、及び、各雄螺条の下端部である鍔終端部が、前記雄螺条域を周方向に展開したときに隣接するパーティングラインの中間の区域である非パーティングライン区域に存在する合成樹脂製ブロー成形容器であることによって、前記の環状凹部の形状を一層安定なものとすることができるので、合成樹脂製ブロー成形容器の製造装置の高速化が進むもとで、内容物充填後の口部シール工程でのグリッパフォーク挿入による把持がより安定かつ確実である合成樹脂製ブロー成形容器を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】内容物充填後の合成樹脂製ブロー成形容器の口部シール工程の概念図である。
【図2】本発明の合成樹脂製ブロー成形容器の口部〜胴部の概略図である。
【図3】本発明の合成樹脂製ブロー成形容器の口部の雄螺条域の周方向への展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
I.口部、環状凹部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える、合成樹脂製ブロー成形容器
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、口部、環状凹部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える、合成樹脂製ブロー成形容器である。
【0034】
1.口部、環状凹部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える容器
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器(以下、単に「合成樹脂製容器」、または「容器」ということがある。)は、口部、環状凹部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える容器であり、容器を正立姿勢とするときには、上方から下方に向かって、口部、環状凹部、胴部及び底部を順次備えることによって、該底部が接地面に当接し、正立することができる容器である。本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、後に詳述するように、口部と胴部とが、環状凹部を介してなるものである点に特徴を有する。環状凹部は、口部及び胴部より小径であることにより、口部及び胴部に対して凹部を形成している。したがって、例えば、胴部が、次第に縮径されて口部に至る、いわゆる肩部を有するような容器は、環状凹部を備えない容器であるので、本発明の合成樹脂製ブロー成形容器には含まれない。
【0035】
2.合成樹脂
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、合成樹脂を主たる材料とする合成樹脂製ブロー成形容器である。該合成樹脂としては、合成樹脂製ブロー成形容器において通常使用される合成樹脂を採用することができる。具体的には、エチレン系(共)重合体やプロピレン系(共)重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリグリコール酸やポリ乳酸等のポリエステル;ナイロン66やナイロン612等のポリアミド;ポリカーボネート;などを採用することができる。本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、これらの合成樹脂のほかに、種々の添加剤や配合剤を併せて使用して形成される。後述する多層の合成樹脂製ブロー成形容器(以下、「合成樹脂製多層容器」ということがある。)においては、合成樹脂を主たる材料としない層を備えてもよい。
【0036】
マヨネーズ、ケチャップなどの粘稠な内容物を充填する合成樹脂製ブロー成形容器としては、合成樹脂として、好ましくはポリオレフィンを採用することができる。ポリオレフィンとして、より好ましくは、(1)低密度ポリエチレン、(2)チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、(1)と(2)との混合物、または、(1)及び/または(2)と、(3)他のポリオレフィンとの組成物などを採用することができる。(1)及び(2)のポリオレフィンについて更に説明する。
【0037】
(1)低密度ポリエチレン
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器を形成する合成樹脂として、特に好ましく採用される低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」ということがある。)は、通常使用される低密度ポリエチレンを意味し、一般に、密度が0.910〜0.930g/cmのポリエチレンであり、好ましくは0.912〜0.928g/cmである。なお、ポリエチレンの密度は、JIS K6922−2に従って測定したものである。
【0038】
該低密度ポリエチレンは、MFR(温度190℃、荷重21.18N)が、好ましくは0.1〜10g/10分、より好ましくは0.3〜5g/10分、更に好ましくは0.5〜2g/10分の範囲内のものを使用することができる。また、低密度ポリエチレンは、分子量分布の指標である多分散度(Mw/Mn)が、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.7以上の範囲にあるものが成形性の改善の点で有効である。該多分散度(Mw/Mn)の上限は、3.0程度である。なお、ポリエチレンのMFRは、JIS K6922−2に従って測定したものであり、前記の多分散度(Mw/Mn)は、JIS K7252に従って測定したものである。
【0039】
低密度ポリエチレンとしては、いわゆる、チーグラー・ナッタ触媒(後に詳述する。)を用いて得られた高圧法低密度ポリエチレンのほか、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などエチレンと他のオレフィン単量体との共重合体も使用することができる。低密度ポリエチレンとしては、合成品を使用することもできるが、市販品を使用してもよい。市販品としては、住友化学株式会社製のスミカセン(登録商標)、日本ポリエチレン株式会社製のノバテックLD(登録商標)、三井・デュポンポリケミカル株式会社製の低密度ポリエチレンなどがある。
【0040】
(2)チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器を形成する合成樹脂として、特に好ましく採用されるチーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(以下、「チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体」ということがある。)は、α−オレフィンの立体規則性重合用触媒として周知のチーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体である。
【0041】
チーグラー・ナッタ(Ziegler−Natta)触媒は、α−オレフィンの立体規則性重合用触媒として周知のものであって、元素周期律表第IV〜VIII族の遷移金属化合物と、周期律表第I〜II族の典型金属の有機化合物と、好ましくは電子供与性化合物の第3成分とからなるものを使用する触媒であり、溶剤重合法または気相重合法など、いずれの重合方法によるα−オレフィンの重合にも用いることができる。チーグラー・ナッタ触媒としては、例えば、四塩化チタンを有機アルミニウム等で還元して得られた三塩化チタンを電子供与性化合物で処理し更に活性化したもの、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と、有機アルミニウム化合物及び芳香族カルボン酸エステルとからなる触媒、及び、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体からなる担持型触媒等が挙げられる。チーグラー・ナッタ触媒の配位金属としては、元素周期律表の第4周期の遷移金属である第IV族のTiのほか、第4周期の遷移金属である第Va族のV、第4周期の遷移金属である第VIa族のCrなど周知の元素を選ぶことができる。
【0042】
本発明におけるチーグラー触媒プロピレンランダム共重合体は、共重合体中におけるプロピレンから得られるモノマー単位の含有率(以下、「プロピレン含有率」ということがある。)が、100〜94質量%(ただし100質量%を除く。)、好ましくは99.7〜95質量%、より好ましくは99.5〜95.5質量%であり、共重合体中のα−オレフィンから得られるモノマー単位の含有率(以下、「α−オレフィン含有率」ということがある。)が、0〜6質量%(ただし0質量%を除く)、好ましくは0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜4.5質量%の割合であるものである。プロピレンと共重合されるコモノマーであるα−オレフィンとしては、エチレン及び/または炭素数4〜20のα−オレフィンなどが挙げられ、具体的には、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等を挙げることができる。該α−オレフィンは、2種以上を併用することもできる。α−オレフィン含有率が上記範囲内にあると、合成樹脂製ブロー成形容器が、実用上良好な剛性を保つことができる。特に好ましい共重合体は、エチレン含有率0.3〜5質量%、特に0.5〜4.5質量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体である。α−オレフィン含有率が多すぎると、結晶融点の温度が低くなり、所望の強度が得られなかったり、重合体の流動性が低下したりすることがある。なお、プロピレン含有率及びα−オレフィン含有率は、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定できる。具体的には、日本電子株式会社製FT−NMRの270MHzの装置により測定することができる。
【0043】
前記のチーグラー触媒プロピレンランダム共重合体は、密度が、通常0.880〜0.930g/cm、好ましくは0.885〜0.925g/cmの範囲であり、MFR(温度190℃、荷重21.18N)が、通常0.5〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分の範囲である。MFRが上記範囲を上回ると合成樹脂製ブロー成形容器の衝撃強度が不足する傾向があり、MFRが上記範囲を下回ると成形性が不良となることがある。また、分子量分布の指標である多分散度(Mw/Mn)は、通常1.2〜5、好ましくは1.5〜4.5、より好ましくは2〜4の範囲にあるものが成形性の改善の点で有効である。なお、密度及びMFRは、先に述べたJIS K6922−2に従って測定したものであり、前記の多分散度(Mw/Mn)は、JIS K7252に従って測定したものである(以下、測定方法は同様である。)。
【0044】
前記のチーグラー触媒プロピレンランダム共重合体としては、合成品を使用することもできるが、市販品を使用してもよい。市販品としては、日本ポリエチレン株式会社製の商品名ノーブレン(登録商標)などがある。
【0045】
先に述べたように、本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、合成樹脂として、(1)低密度ポリエチレンまたは(2)チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体は、それぞれ単独で使用することができ、また、(1)及び(2)の混合物を使用することもできる。(1)及び(2)の混合物としては、(1)及び(2)の合計量を100質量%としたときに、(1)が、通常99.9〜0.1質量%、好ましくは95〜5質量%、より好ましくは90〜10質量%の範囲であり、(2)が、通常0.1〜99.9質量%、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%の範囲で、目的に応じて調製すればよい。
【0046】
(3)他のポリオレフィン
さらに、本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、合成樹脂として、(1)及び/または(2)と、(3)他のポリオレフィンとの組成物を使用することもできる。(3)他のポリオレフィンとしては、例えば、メタロセン触媒を用いて得られた、ポリプロピレンからなる重合体のブロックと、エチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロックと、からなるブロック共重合体(以下、単に「メタロセン触媒ブロック共重合体」ということがある。)や、メタロセン触媒を用いて得られたエチレン系ポリオレフィン(以下、単に「メタロセン触媒エチレン系ポリオレフィン」ということがある。)などが好ましく挙げられる。また、(3)他のポリオレフィンとして、いわゆる高密度または中密度ポリエチレンを更に併用してもよい。これら(3)他のポリオレフィンの含有量は、(1)及び/または(2)と(3)との合計量を100質量%としたときに、通常0.5〜40質量%、好ましくは1〜35質量%、より好ましくは2〜30質量%の範囲で、目的に応じて調製すればよい。特に好ましい組み合わせとしては、チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体とメタロセン触媒ブロック共重合体との組成物や、低密度ポリエチレン、メタロセン触媒エチレン系ポリオレフィン及び高密度ポリエチレンの組成物が挙げられる。
【0047】
〔メタロセン触媒ブロック共重合体〕
前記の好ましく挙げられるメタロセン触媒ブロック共重合体は、ポリプロピレンからなる重合体のブロック(以下「PPブロック」ということがある。)と、エチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロック(以下「EPブロック」ということがある。)とが、それぞれ1ブロック以上結合してなる、メタロセン触媒を用いて得られたブロック共重合体であって、ポリプロピレンの剛性を保持しつつ、エチレン・プロピレン共重合体により耐衝撃性を改良した高剛性、耐衝撃性をバランスよく発揮する、それ自体公知のブロック共重合体である。
【0048】
メタロセン触媒は、一般に、メタロセン(Metallocene)、すなわち、置換または未置換のシクロペンタジエニル環2個と各種の遷移金属で構成されている錯体からなる遷移金属成分と、有機アルミニウム成分、特にアルミノキサンとからなる触媒の総称である。遷移金属成分としては、周期律表第IVb族、第Vb族または第VIb族の金属、特にジルコニウムまたはハフニウムが挙げられる。触媒中の遷移金属成分としては、一般に下記式
(Cp) MR
(式中、Cpは置換または未置換のシクロペンタジエニル環であり、Mは遷移金属であり、Rはハロゲン原子またはアルキル基である。)で表されるものが一般的に使用されている。アルミノキサンとしては、有機アルミニウム化合物を水と反応させることにより得られたものであり、線状アルミノキサン及び環状アルミノキサンがある。これらのアルミノキサンは、単独でも、他の有機アルミニウムとの組み合わせでも使用できる。
【0049】
メタロセン触媒としては、好ましくは、前記のCpが置換シクロペンタジエニル環であって、該シクロペンタジエニル環に対して縮合するアズレン骨格を2個架橋縮合してなる架橋アズレン型メタロセン触媒を使用することができる。該架橋アズレン型メタロセン触媒においては、粘土鉱物を助触媒として使用することもできる。前記のメタロセン触媒ブロック共重合体は、前記メタロセン触媒の存在下、有機溶剤中、液状単量体中または気相法での重合により合成されるが、これら公知のいずれの重合方法によるものでも、前記条件を満足するものは本発明の目的に使用できる。重合温度は通常0〜100℃、好ましくは20〜90℃である。分子量調節剤としては水素が好ましい。これら第一段階及び第二段階の重合の後、更に第三段階以降の重合として、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合、エチレンの単独重合またはエチレンと他のα−オレフィンとの共重合を行うこともできる。
【0050】
メタロセン触媒ブロック共重合体は、通常、密度が0.880〜0.930g/cm、好ましくは0.885〜0.925g/cm程度であり、MFR(温度190℃、荷重21.18N)が0.5〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分程度である。MFRが上記範囲を上回ると衝撃強度が不足する傾向があり、MFRが上記範囲を下回ると成形性が不良となることがある。前記のメタロセン触媒ブロック共重合体の結晶融点(Tm)は、80〜120℃の範囲であり、好ましくは85〜115℃、より好ましくは90〜110℃の範囲である。結晶融点は、DSCを使用して、測定したものである。なお、結晶融点は、共重合モノマーの含有量の増減などにより調節可能である。前記のメタロセン触媒ブロック共重合体の結晶融点が低すぎる場合は、得られる合成樹脂製ブロー成形容器の所望の強度が得られなかったり、溶融成形性が低下したり、合成樹脂製ブロー成形容器の表面光沢や滑り性が悪化したりすることがある。結晶融点が高すぎる場合は、成形性が悪化する。
【0051】
メタロセン触媒ブロック共重合体は、合成品を使用することができるが、市販品の中から選択して使用することもできる。市販品としては、例えば、日本ポリエチレン株式会社製のカーネル(登録商標)などがある。
【0052】
メタロセン触媒ブロック共重合体を、前記のチーグラー触媒プロピレンランダム共重合体との組成物として使用する場合は、メタロセン触媒ブロック共重合体及び前記のチーグラー触媒プロピレンランダム共重合体の合計量を100質量%としたときに、通常40〜0.5質量%、好ましくは38〜1質量%、より好ましくは35〜2質量%の範囲である。メタロセン触媒ブロック共重合体の含有量が少なすぎると、合成樹脂製ブロー成形容器の滑り性が低下することがある。メタロセン触媒ブロック共重合体の含有量が多すぎると、合成樹脂製ブロー成形容器の表面光沢が不良となることがある。
【0053】
〔メタロセン触媒エチレン系ポリオレフィン〕
前記の好ましく挙げられるメタロセン触媒エチレン系ポリオレフィンは、エチレン、または、エチレンを主成分としα−オレフィンを副成分とする混合単量体を、前記のメタロセン触媒の存在下に重合させることにより得られるエチレン系ポリオレフィンである。したがって、(C)メタロセン触媒を用いて得られたエチレン系ポリオレフィンは、メタロセン触媒の存在下で重合反応を行って得られるポリエチレンまたはエチレン・α−オレフィン共重合体を含むものである。
【0054】
メタロセン触媒を用いるエチレンまたはエチレンとα−オレフィンとの重合法は、多数の公報で公知であり、前記メタロセン触媒の存在下、有機溶剤中、液状単量体中または気相法での重合により合成されるが、これら公知のいずれの方法によるものでも、前記条件を満足するものは本発明の目的に使用できる。
【0055】
エチレンとα−オレフィンとの共重合体の場合、α−オレフィンとしては、炭素数が3〜10の範囲にあるものが好ましく、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等を挙げることができる。これらのα−オレフィンは共重合体中に3〜15モル%の量で存在するのが好ましい。
【0056】
メタロセン触媒エチレン系ポリオレフィンは、分子量分布が狭いことが特徴であり、本発明においては、分子量分布の指標である多分散度(Mw/Mn)が好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.2以下であるものが使用される。なお、成形性を改善する目的で、重合時またはその後の工程にて比較的長鎖の分岐を導入したものも好適に使用される。また、メタロセン触媒エチレン系ポリオレフィンは、通常、密度が0.890〜0.920g/cm、好ましくは0.892〜0.918g/cm程度であり、MFRが0.1〜10g/10分、好ましくは0.3〜5g/10分程度である。
【0057】
メタロセン触媒エチレン系ポリオレフィンは、合成品を使用することができるが、市販品の中から選択して使用することもできる。市販品としては、住友化学株式会社製のエクセレン(登録商標)、日本ポリエチレン株式会社製のハーモレックス(登録商標)やカーネル(登録商標)などがある。
【0058】
〔高密度ポリエチレン〕
前記の好ましく挙げられる高密度ポリエチレンは、一般に、密度が0.942g/cm以上のポリエチレンである。通常は、密度が0.980g/cm以下のポリエチレンであり、好ましくは、0.945〜0.970g/cm、より好ましくは0.948〜0.965g/cmである。(B)高密度ポリエチレンは、MFR(温度190℃、荷重21.18N)が、好ましくは0.1〜10g/10分、より好ましくは0.3〜5g/10分、更に好ましくは0.5〜2g/10分の範囲内のものを使用することができる。また、分子量分布の指標である多分散度(Mw/Mn)が、好ましくは2.5以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは3.5以上の範囲にあるものが成形性の改善の点で有効である。該多分散度(Mw/Mn)の上限は、5.5程度である。
【0059】
高密度ポリエチレンは、合成品を使用することができるが、市販品の中から選択して使用することもできる。市販品としては、いわゆる、チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた低圧法高密度ポリエチレンである、日本ポリエチレン株式会社製のノバテックHD(登録商標)、株式会社プライムポリマー製のハイゼックス(登録商標)などがある。
【0060】
(4)添加剤
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器を形成する合成樹脂には、必要に応じて、補強材、充填剤、抗酸化剤、光劣化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、または核剤などの添加剤を配合することができる。補強材または充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、マイカ等を使用することができる。これら添加剤の配合量は、合成樹脂100質量部に対して、通常0.01〜100質量部の範囲で添加剤の目的に応じて最適な範囲の量を選定すればよい。例えば、補強材または充填剤は、通常10〜100質量部、好ましくは15〜80質量部、より好ましくは20〜60質量部配合することができる。合成樹脂として、前記のメタロセン触媒ブロック共重合体を使用する場合には、補強材または充填剤の使用が好ましい。添加剤の種類によっては、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部の配合でよいことがある。
【0061】
(5)エラストマー
さらに、本発明の合成樹脂製ブロー成形容器を形成する合成樹脂には、低温耐衝撃性、伸度特性及び成形性を改良するために、エラストマーを配合することもできる。該エラストマーとしては、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴム、スチレン含有熱可塑性エラストマー等が挙げられ、他のエラストマーは、合成樹脂100質量部に対して、通常0.5〜50質量部、好ましくは1〜40質量部配合することができる。
【0062】
該エチレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴムは、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとのランダム共重合体であり、α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等を挙げることができ、なかでも、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンが好ましい。α−オレフィン単位の含有率は、15〜70質量%、好ましくは20〜55質量%である。α−オレフィン単位の含有率が上記範囲よりも少なすぎると低温衝撃強度が劣り、一方、多すぎると伸度特性や成形性が低下するばかりでなく、このエラストマーの形状をペレット状に保持しにくくなって生産する際のハンドリングが著しく低下することがある。
【0063】
スチレン含有熱可塑性エラストマーは、ポリスチレン部を5〜60質量%、好ましくは10〜30質量%含有するエラストマーである。スチレン含有熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)を挙げることができる。本発明で用いられるSEBSは、ポリスチレン単位を10〜40質量%の量で含有していることが望ましい。SEBSとともに、SBR、SBS、SIS及びSIS水添物などを使用することもできる。
【0064】
エラストマー成分としては、上述したエチレン・α−オレフィンランダム共重合体ゴムまたはスチレン含有熱可塑性エラストマーを、各々単独で用いてもよいし、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。
【0065】
3.合成樹脂製ブロー成形容器
本発明の、口部、環状凹部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形容器は、ブロー成形(延伸ブロー成形を含む。)によって、少なくとも口部、環状凹部、胴部及び底部が一体に成形されてなる合成樹脂製ブロー成形容器である。該合成樹脂製ブロー成形容器は、単層の合成樹脂製ブロー成形容器でもよいし、多層の合成樹脂製ブロー成形容器でもよい。合成樹脂製ブロー成形容器の厚みは、特に限定されないが、胴部の厚みは、通常20μm〜5mm、好ましくは100μm〜3mm、より好ましくは200μm〜1mmの範囲である。合成樹脂製ブロー成形容器の容積は、特に限定されないが、好ましくは100〜3000cm、より好ましくは200〜2000cm、更に好ましくは300〜1000cmの範囲である。
【0066】
具体的には、単層または多層のパリソンを、所望の容器形状のキャビティ壁を備える割金型内でブロー成形することによって、ブロー成形品である単層または多層の合成樹脂製ブロー成形容器を得ることができる。ブロー成形は、該単層または多層のパリソンを製造した後、常温または室温に冷却しておき、ブロー成形を行うときに所定温度まで加熱するコールドパリソン方式によってもよいし、該単層または多層のパリソンを製造し、続いてブロー成形を行うホットパリソン方式によってもよい。該単層または多層パリソンは、射出成形により製造することもできるが、溶融押出成形によって筒状(以下、「管状」または「パイプ状」ということがある。)の単層または多層パリソンを製造する方法が好ましく、押出した単層のパリソンまたは共押出した多層のパリソンを、続けて容器形状にブロー成形するダイレクトブロー成形によって製造して得られる合成樹脂製ブロー成形容器が好ましい。
【0067】
合成樹脂製ブロー成形容器は、割金型を使用して容器の成形を行うので、割金型(ブロー成形金型)の容器軸方向に沿う金型合わせ面跡であるパーティングライン(以下、「PL」ということがある。)を該成形容器の表面に有する。該パーティングラインは、通常、やや膨出した線として形成される。ブロー成形の割金型は、通常、略面対称の2分割のものが使用されるので、合成樹脂製ブロー成形容器に形成されるパーティングラインは、容器軸を含む同一面上にあり、該容器の周方向において180度離れた位置に形成されることが多い。割金型の分割様式が異なると、形成されるパーティングラインの位置や形状が変わる。
【0068】
成形容器のパーティングラインの箇所は、合成樹脂の組成や容器の厚みが、他の箇所、すなわちパーティングライン以外の箇所と、異なっていることが多いので、機械的強度その他の性質が異なることが多い。また、ブロー成形などの合成樹脂製容器の成形においては、通常、加熱と冷却が行われるため、冷却に伴うヒケや変形の発生を完全に避けることは困難である。成形容器のパーティングラインの箇所は、熱容量や収縮特性が他の箇所と異なるので、パーティングラインの位置や組成等によって、成形容器におけるヒケや変形の発生位置や程度が影響されることがある。
【0069】
(1)多層の合成樹脂製ブロー成形容器
前記の合成樹脂製ブロー成形容器が、多層の合成樹脂製ブロー成形容器、すなわち、ブロー成形によって製造された合成樹脂製多層容器である場合、該多層の合成樹脂製ブロー成形容器は、少なくとも、容器の最外面または最内面に現れる表層を備える合成樹脂製ブロー成形容器である。該合成樹脂製多層容器は、表層のほか、更にバリア層または回収層の一方または両方を備えることが好ましく、更に加えて、これらの層の間の所望の箇所に接着層を備えることが好ましい。
【0070】
(2)表層
合成樹脂製多層容器における表層としては、該容器の外方にあり外表面を形成する最外層と、容器の内方にあり内表面を形成する最内層とがある。合成樹脂製多層容器の表層である最外層と最内層は、同一の組成のものでもよいし、異なる組成のものでもよい。例えば、合成樹脂製多層容器の最外層を滑り性が良い組成のものとすると、容器の製造中、搬送中または内容物の充填中に、隣接する容器同士または装置類との接触等によって、不良品の発生、製造ラインの停止、装置の故障等が生じることを防止できる効果があるとともに、表面光沢も優れたものとなることがある。他方、合成樹脂製多層容器の最内層を滑り性が良い組成のものとすると、容器の内表面の滑り性が向上するので、内容物の充填がスムーズに行われ、消費者の使用時に内容物の液切れ性が優れるなどの効果が得られることがある。本発明の合成樹脂製多層容器は、該表層が、合成樹脂製多層容器の最外層及び最内層であるものとすることができる。
【0071】
(3)バリア層
バリア層は、合成樹脂製多層容器の内容物の保存性を高めるために、これを備えることが好ましく、酸素バリア性、炭酸ガスバリア性等のガスバリア性や、水または水蒸気に対するバリア性を有するものを使用することができる。バリア層は、特に限定されず、容器の種類により、金属または無機酸化物を蒸着した樹脂フィルムの層、金属箔やバリア性樹脂の層などを使用することもできる。
【0072】
バリア層を形成するバリア性樹脂の好ましい例として、エチレン・ビニルアルコール共重合体またはエチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物(以下、これらを総称して「EVOH」ということがある。)を挙げることができる。さらに、酸素ガスバリア性のみならず、炭酸ガスバリア性にも優れていることから、ガスバリア性樹脂として、ポリグリコール酸を使用することができる。また、メタキシリレンジアミンとアジピン酸から形成される芳香族ポリアミド(MXD6)や、塩化ビニリデン系共重合体などを使用することができる。
【0073】
EVOHとしては、エチレン含有率が20〜60モル%、好ましくは25〜55モル%、より好ましくは30〜50モル%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは97モル%以上、特に好ましくは99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。このEVOHは、フィルムを形成し得るに足りる分子量を有するものであり、一般に、MFR(190℃、荷重21.18N)が6g/10分以下、好ましくは5g/10分以下、より好ましくは4g/10分以下である。
【0074】
(4)回収層
回収層は、合成樹脂製多層容器の強度を高め、また、資源のリサイクル性を高めるために、これを備えることが好ましい。該回収層は、本発明の合成樹脂製ブロー成形容器、特に、合成樹脂製多層容器それ自体から回収される材料(バリや製品容器の不要部分、製品規格外の容器の回収品など)、または、本発明の合成樹脂製ブロー成形容器を製造する工程において回収される材料を、主成分として含有する層である。特に、本発明の合成樹脂製多層容器が、ブロー成形によって製造される多層ブロー成形容器である場合には、予備成形品であるパリソンにブローエアーを導入した後に成形容器の頭部(以下、「袋部」ということがある。)を切除する必要があるが、該切除された袋部を、破砕機にて粉末化した回収樹脂を原料として、回収層とすることができる。また、ブロー成形容器の前記の袋部以外の部分を切除して回収した樹脂や、成形前のパリソン、更には、樹脂製多層容器の各層を形成する材料や原料などを、主成分として含有するものでもよい。
【0075】
回収層には、更に本発明の合成樹脂製多層容器の各層を形成するための原材料、例えば、種々の樹脂原料や配合剤、接着剤等を含有させてもよい。
【0076】
(5)接着層
接着層は、合成樹脂製多層容器を構成する各層の層間剥離強度を高める目的で、各層間に介在させることができる。接着層としては、押出加工が可能で、かつ、各樹脂層に良好な接着性を示すものであることが好ましい。多層の合成樹脂製ブロー成形容器においては、耐熱性や成形加工性の観点から、接着層を介在させなくてもよい場合もあるが、機械的特性や耐衝撃性などが要望される用途には、接着層を介在させることが好ましい。
【0077】
接着層に用いる樹脂としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィン;グリシジル基含有エチレンコポリマー、熱可塑性ポリウレタン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアミド・アイオノマー、ポリアクリルイミドなどを挙げることができる。接着層に用いる樹脂には、所望により、無機フィラー、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、染料などの各種添加剤を含有させることができる。
【0078】
(6)合成樹脂製多層容器の構成
本発明の多層の合成樹脂製ブロー成形容器(合成樹脂製多層容器)は、少なくとも1層の表層を備える2層、3層、4層、5層またはそれ以上の数の層からなる層構成を備える合成樹脂製多層容器である。好ましくは、層構成として、表層、バリア層、接着層、及び、回収層を備える樹脂製多層容器である。更に好ましくは、最外層/接着層/バリア層/接着層/回収層/最内層からなる層構成を備える合成樹脂製多層容器である。
【0079】
本発明の合成樹脂製多層容器の厚みは、特に限定されないが、胴部の全層厚みは、通常20μm〜5mm、好ましくは100μm〜3mm、より好ましくは200μm〜1mmの範囲内である。
【0080】
全層厚みに対する表層の厚み(最外層及び/または最内層の合計厚みを意味する。)は、全層厚みに対して通常50〜90%(厚み比率、以下同様である。)好ましくは55〜85%、より好ましくは60〜80%である。回収層は、通常5〜30%、好ましくは10〜25%、より好ましくは15〜25%である。バリア層は、通常1〜10%、好ましくは2〜8%、より好ましくは3〜6%(厚み比率)である。接着層は、合計で、通常0.005〜2%、好ましくは0.007〜1.5%、より好ましくは0.008〜1.2%である。
【0081】
本発明の多層の合成樹脂製ブロー成形容器における表層(最外層及び最内層)のうち最外層の表層全体に占める比率は、特に限定されないが、通常10〜80%、好ましくは15〜75%、より好ましくは20〜70%、特に好ましくは25〜65%である。
【0082】
本発明の合成樹脂製多層容器は、容器全体の厚みが、均一でもよいが、部分により厚みを変化させてもよい。多層容器の底部は、一般に、厚みを大きくすることが好ましい。
【0083】
以下、本発明の合成樹脂製ブロー成形容器について、図を参照しながら、更に説明する。
【0084】
II.口部、及び雄螺条域
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、口部が、周面から外方に雄螺条が膨出する雄螺条域を有するものである。すなわち、図2に示すように、本発明の合成樹脂製ブロー成形容器の口部1は、容器軸pに沿う上端、すなわち口部1の最上端に開口部bを有し、該開口部bの下方にある雄螺条域aには、その周面から外方に雄螺条が膨出している。該雄螺条は、合成樹脂製ブロー成形容器に内容物を充填し、開口部をシールした後に、内周面に雌螺条を有するキャップ(蓋)を取り付けるために設けられるものである。
【0085】
合成樹脂製ブロー成形容器の口部に設けられる雄螺条としては、キャップ(蓋)の脱着に要する回動操作量を少なくするとともに、合成樹脂製ブロー成形容器の口部を成形するのに必要な合成樹脂材料の量を少なくするために、多条ねじ構造が採用されることがある。図2及び図3においては、雄螺条域aに、2つの雄螺条a及びaが設けられている。2つの雄螺条a及びaは、開口部側に位置する雄螺条の上端部である鍔先端部a11、a21から、胴部側に位置する雄螺条の下端部である鍔終端部a12、a22に向けてそれぞれ延在し、180度の位相差をもって配置されている。
【0086】
雄螺条域aの容器軸方向の長さ、すなわち上下方向の長さは、口部1の容器軸方向の長さに対して、通常50〜90%、好ましくは55〜80%、より好ましくは60〜75%の範囲とすればよい。雄螺条域aは、キャップ(蓋)を円滑に装着することができるようにするため、通常、開口部bから下方に設けられる蓋装着誘導域cを介して設けられ、口部の略下端までに亘って形成されている。したがって、蓋装着誘導域cは、口部1の容器軸方向の長さに対して、通常10〜50%、好ましくは20〜45%、より好ましくは25〜40%の範囲の長さで設けられる。なお、一般に、合成樹脂製ブロー成形容器の口部の下方に、サポートリングとして機能するネックリングを設けることがあるが、本発明の合成樹脂製ブロー成形容器においては、ネックリングを設ける必要はない。
【0087】
III.環状凹部
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、口部1と胴部3との間に、環状凹部2を備える。すなわち、環状凹部2は、該口部の下端に連接する。環状凹部2は、合成樹脂製ブロー成形容器に内容物を充填した後に実施する口部シール工程において、グリッパフォークを挿入して該容器を把持し、該容器の姿勢を正立状態に保持するために設けられるものである。環状凹部2は、通常、口部1及び胴部3より小径であるので、「凹部」を形成する。また、環状凹部2は、グリッパフォークの挿入を容易とするために、略円形の断面形状を有するものであるので、「環状」である。したがって、該環状凹部2の断面形状は、口部1または胴部3と同一または相似の形状である必要はない。なお、該環状凹部2の容器軸方向に沿う断面形状が均一でなくてもよい。例えば、下方(胴部3側)に向かって、断面積が漸増する形状でもよい。該環状凹部2は、口部1より小径であるので、口部シール工程において、該環状凹部2の容器軸の法線方向で外方に位置する口部1の下面(外表面である。)と、挿入されるグリッパフォークとは、常時または頻繁に接触または摺接する。また、該環状凹部2の外表面は、挿入されるグリッパフォークと、当接または摺接することがある。
【0088】
該環状凹部2の径及び容器軸方向の長さ(上下方向の長さ、すなわち上下間隔距離)は、グリッパフォークの大きさ及び形状を勘案して、グリッパフォークが環状凹部2に当接、接触または干渉することがないように、定めることができる。環状凹部2の径は、口部1の径に対して、通常60〜95%、好ましくは65〜92%、より好ましくは70〜87%の範囲とすればよい。また、環状凹部2の容器軸方向の長さは、口部1の雄螺条域aの容器軸方向の長さに対して、通常45〜70%、好ましくは50〜65%、より好ましくは53〜60%の範囲とすればよい。環状凹部2の径及び容器軸方向の長さを上記の範囲内とすることにより、口部シール工程において挿入されるグリッパフォークを安定かつ確実に保持することができ、グリッパフォーク挿入による容器の把持を安定かつ確実とすることができる。例えば、環状凹部2の径が大きすぎたり、容器軸方向の長さが短すぎると、グリッパフォークの挿入が不十分または不可能となり、容器を安定かつ確実に把持することができないおそれがある。また、環状凹部2の径が小さすぎたり、容器軸方向の長さが長すぎると、容器を安定かつ確実に把持することができないおそれがあるとともに、小径部が存在することにより容器の強度が不足するおそれがある。
【0089】
IV.胴部、及び環状台座部
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、胴部が、上端に、環状台座部を有するものである。本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、口部、環状凹部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備えるから、胴部は、環状凹部に連接する。具体的には、図2に示すように、環状凹部2は、胴部3の上端に設けられる環状台座部31に連接することによって、胴部3と連接する。
【0090】
環状台座部31は、容器軸の法線方向に広がる略環状(帯状)の略平面である。環状台座部31の外径は、通常、容器の胴部3の頂点の径であり、その内径は、通常、環状凹部2の容器軸方向に沿う最下部の径である。容器の口部シール工程において、環状台座部31(外表面である。)と、グリッパフォークの下面とは、常時または頻繁に接触または摺接する。
【0091】
V.合成樹脂と、該合成樹脂に対して100〜4000ppmの不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)とを含有する樹脂組成物
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面が、合成樹脂と、該合成樹脂に対して100〜4000ppmの不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)とを含有する樹脂組成物から形成されていることを特徴とする。先に述べたように、合成樹脂製ブロー成形容器は、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面が、口部シール工程において挿入されるグリッパフォークと当接、接触または摺接する。本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面が、上記の樹脂組成物から形成されたものであることによって、口部シール工程において挿入されるグリッパフォークを、安定かつ確実に保持することができる。
【0092】
1.合成樹脂
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器の口部、環状凹部及び環状台座部の外表面を形成する樹脂組成物に含有される合成樹脂は、先に「I.口部、環状凹部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える、合成樹脂製ブロー成形容器」の「2.合成樹脂」において述べたと同一の合成樹脂を用いることが好ましい。すなわち、本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、口部、該口部に連接する環状凹部、胴部(上端に、環状台座部を有する。)及び底部を、ブロー成形により一体の成形品として成形、形成することが好ましく、その場合は、容器の口部、環状凹部及び環状台座部の外表面を形成する樹脂組成物は、容器のその他の部分を形成する樹脂組成物と、実質的に同一である。しかしながら、パリソンの成形工程において、樹脂組成物の組成を箇所毎に変化させることによって、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面が所望の樹脂組成物から形成されるよう調製することもできる。さらに、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面を、塗布や肉盛りによって、またはインモールドラベル成形法によって、所望の樹脂組成物から形成されたものとすることもできる。
【0093】
2.不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器の口部、環状凹部及び環状台座部の外表面は、前記の合成樹脂中に、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を100〜4000ppm含有する。不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)(以下、「(A)の不飽和脂肪酸アミド」ということがある。)は、脂肪酸アミドの分子構造中に少なくとも1結合の炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸アミドであって、該炭素二重結合のすべてが不飽和cis構造の炭素二重結合である不飽和脂肪族アミドである。不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)は、滑剤として機能する。不飽和脂肪酸アミドが、trans構造の炭素二重結合を有するものであると、樹脂材料の均一配合が不十分となったり、該trans構造を有する不飽和脂肪酸アミドが前記の口部、環状凹部及び環状台座部の外表面に析出したりすることがあり、その結果、内容物の充填後の口部シール工程において、挿入されるグリッパフォークのフォーク挿入不良を十分防止できない。また、前記の口部、環状凹部及び環状台座部の外表面が、合成樹脂製ブロー成形容器の表層の一部である場合には、合成樹脂製ブロー成形容器の滑り性が悪化したり、表面光沢が悪くなる場合がある。
【0094】
3.不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)の含有量
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器の口部、環状凹部及び環状台座部の外表面における(A)の不飽和脂肪酸アミドの含有量は、該口部、環状凹部及び環状台座部の外表面を形成する合成樹脂の質量部に対して、100〜4000ppmである。(A)の不飽和脂肪酸アミドの含有量は、好ましくは110〜3900ppm、より好ましくは115〜3800ppm、更に好ましくは120〜3700ppm、特に好ましくは125〜3600ppmである。なお、前記(A)の不飽和脂肪酸アミドが、後述するように2種類以上の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドの混合物である場合は、脂肪酸アミドの合計含有量が上記の範囲に含まれる必要がある。
【0095】
(A)の不飽和脂肪酸アミドの含有量が上記の範囲であることにより、内容物の充填後に容器口部をシール材で密封する合成樹脂製ブロー成形容器の口部シール工程において、挿入されるグリッパフォークを、安定かつ確実に保持することができる。(A)の不飽和脂肪酸アミドの含有量が上記の範囲を外れると、前記の合成樹脂製ブロー成形容器の口部シール工程において、挿入されるグリッパフォークのフォーク挿入不良を十分防止できず、該口部シール工程や合成樹脂製ブロー成形容器の移送工程等において、合成樹脂製ブロー成形容器が転倒することがあるばかりでなく、得られる合成樹脂製ブロー成形容器表面の滑り性が不足して、容器の製造中、搬送中または内容物の充填中に、隣接する容器同士または装置類との接触等によって、不良品の発生、製造ラインの停止、装置の故障等が生じるおそれもある。
【0096】
4.その他の配合剤
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器の口部、環状凹部及び環状台座部の外表面には、必要に応じて、その他の配合剤として、更に熱安定剤、光安定剤、着色用顔料、無機フィラーなどの各種添加剤を含有させることができる。また、本発明の樹脂組成物は、その他の配合剤として、本発明の目的を損なわない範囲内において、所望により、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどの他のポリマーを含有することができる。これら各種添加剤や他のポリマーの含有量は、樹脂組成物中に、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。なお、前記したように、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面が、合成樹脂製ブロー成形容器の表層の一部であるように一体成形される場合は、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面は、合成樹脂製ブロー成形容器の表層と同一の組成を有することとなる。
【0097】
各種添加剤としては、他の滑剤を使用することもできる。該他の滑剤としては、飽和脂肪酸アミドが好ましく、該飽和脂肪酸アミドを併用することにより、滑り性や表面光沢を更に改善できるなどの効果が奏される。飽和脂肪酸アミドとしては、通常、滑剤として使用されている化合物を使用することができ、例えば、ブチルアミド、吉草酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド、ベヘン酸アミドなどが挙げられ、好ましくは、ステアリン酸アミド(stearic acid amide)、ベヘン酸アミド(behenic acid amide)である。飽和脂肪酸アミドを含有する場合の含有量は、(A)の不飽和脂肪酸アミドと該飽和脂肪酸アミドの合計量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下であり、その含有量の下限値は、0.5質量%程度であり、1質量%であれば十分な効果が実現できる。
【0098】
VI.不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器の口部、環状凹部及び環状台座部の外表面に含有される不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)について、更に詳述する。
【0099】
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)〔(A)の不飽和脂肪酸アミド〕は、先に述べたように、脂肪酸アミドの分子構造中に少なくとも1結合の炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸アミドであって、該炭素二重結合のすべてが不飽和cis構造の炭素二重結合である不飽和脂肪族アミドである。
【0100】
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)は、好ましくは、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を1結合有する不飽和脂肪酸アミドである。また、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)は、分子構造中に複数の不飽和cis構造の炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸アミドでもよく、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を、好ましくは6結合以下、より好ましくは5結合以下、更に好ましくは4結合以下有する化合物である。したがって、本発明において最も好ましく使用される不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)は、分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を1結合〜4結合有する不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドである。
【0101】
1.分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を1結合有する不飽和脂肪酸アミド
不飽和cis構造炭素二重結合を1結合有する不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、以下の式(A)〜(A):
(A)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数);
(A)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数);及び
(A)HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数);
からなる群より選ばれる一つの式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミド化合物が挙げられる。(以下、(A)の式で表される脂肪酸アミドを、「式(A)の脂肪酸アミド」ということがあり、更に単に「式(A)」ということがある。(A)または(A)の式で表される脂肪酸アミドについても同様である。)
【0102】
好ましい不飽和cis構造炭素二重結合を1結合有する(A)の不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、以下の式(A)〜(A)で表される化合物が挙げられる。
【0103】
式(A):HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)
cis−8,9−hexadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=6に相当)
cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)
cis−10, 11−eicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=8に相当)
cis−11, 12− ethaeicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=9に相当)
cis−12, 13− tetraeicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)10−CH=CH−(−CH−)10−CH〕(n=10に相当)
【0104】
式(A):HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)
cis−6,7−tetradecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=6に相当)
cis−7,8−hexadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=7に相当)
cis−8,9−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=8に相当)
cis−9,10−eicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=9に相当)
cis−10, 11− ethaeicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)10−CH〕(m=10に相当)
【0105】
式(A):HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数)
cis−12,13− eicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)10−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=6に相当)
cis−13,14−docosenoamide〔HN−CO−(−CH−)11−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=7に相当)
cis−14,15− tetracosenoamide〔HN−CO−(−CH−)12−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=8に相当)
cis−15,16−hexacosenoamide〔HN−CO−(−CH−)13−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=9に相当)
cis−16,17− octacosenoamide〔HN−CO−(−CH−)14−CH=CH−(−CH−)10−CH〕(k=10に相当)
【0106】
2.分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を2結合〜4結合有する不飽和脂肪酸アミド
また、分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を2結合〜4結合有する化合物である(A)の不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、分子構造中に不飽和cis構造の炭素二重結合を4結合有する以下の化合物が挙げられる。
【0107】
cis−5,6−8,9−11,12−14,15−arachidonic acid amide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−(−CH−)−CH
【0108】
分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を2結合〜4結合有する化合物である(A)の不飽和脂肪酸アミドは、単独で、または、他の(A)の不飽和脂肪酸アミドとの混合物として使用することもできる。
【0109】
3.(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物
(A)の不飽和脂肪酸アミドとしては、前記式(A)〜(A)の脂肪酸アミド、または、前記の分子構造中に2結合〜4結合の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド等から選ばれる1種類の不飽和脂肪酸アミドを使用すれば、十分所期の効果を奏することができるが、2種以上の(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物を使用してもよい。該(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物としては、前記の式(A)の脂肪酸アミドを含有するものであることが好ましい。
【0110】
したがって、好ましい(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物は、前記の式(A)の脂肪酸アミドと、前記の(A)または(A)の式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドとの混合物である。該混合物中の式(A)の脂肪酸アミドの割合は、0.05〜99.95質量%、好ましくは0.1〜99.9質量%、より好ましくは0.15〜99.85質量%である。したがって、前記の式(A)の脂肪酸アミド、または、式(A)の脂肪酸アミドの割合は、99.95〜0.05質量%、好ましくは99.9〜0.1質量%、より好ましくは99.85〜0.15質量%である。
【0111】
特に、(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物が、前記の式(A)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)と、前記の式(A)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)であって、m=n+1またはm=n−1である該脂肪酸アミドとの混合物であることが好ましい。
【0112】
具体的には、
式(A)が、cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)であり、
式(A)が、cis−6,7−tetradecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=6=n−1に相当)、または、cis−8,9−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(m=8=n+1に相当)である組み合わせの混合物などが好ましく使用できる。
【0113】
また、(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物が、前記の式(A)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)と、前記の式(A)の脂肪酸アミド、すなわち、HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数)であって、k=nである該脂肪酸アミドとの混合物であることが好ましい。
【0114】
具体的には、
式(A)が、cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)であり、式(A)が、cis−13,14−docosenoamide〔HN−CO−(−CH−)11−CH=CH−(−CH−)−CH〕(k=7=nに相当)である組み合わせの混合物などが好ましく使用できる。
【0115】
さらに、(A)の不飽和脂肪酸アミドの混合物としては、前記の式(A)の脂肪酸アミドに属し、nの値が異なる2種以上の化合物の混合物を使用することができる。すなわち、(A)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数)と(A11)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、jは、6≦j≦10の範囲の整数であり、j≠nである。)との混合物を使用することができる。
【0116】
具体的には、例えば、cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(n=7に相当)と、cis−10, 11−eicosenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH〕(j=8に相当)との混合物などが好ましく使用できる。
【0117】
さらにまた、分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を2結合〜4結合有する化合物である(A)の不飽和脂肪酸アミドを、他の(A)の不飽和脂肪酸アミドとの混合物として使用することもできる。該他の(A)の不飽和脂肪酸アミドとしては、前記の式(A)〜(A)の脂肪酸アミドが好ましく用いられ、特に、式(A)の脂肪酸アミドが好ましい。具体的には、cis−5,6−8,9−11,12−14,15−arachidonic acid amide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−(−CH−)−CH〕と、式(A)で表されるcis−9,10−octadecenoamideとの混合物などが好ましく使用できる。
【0118】
4.(A)の不飽和脂肪酸アミドの製造方法
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器の口部、環状凹部及び環状台座部の外表面に含有される(A)の不飽和脂肪酸アミドは、市販品を使用してもよいし、市販品が混合物であったり、不純物を含有する場合は、抽出等の操作により、所望の不飽和脂肪酸アミドを分離して得てもよい。また、例えば、前記の式(A)の脂肪酸アミド、すなわち、(A)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)は、以下の方法により製造することができるので、合成品として得てもよい。
【0119】
α,ω位にCHO−CO−末端基と水酸基末端またはカルボン酸末端とを有し、(m−1)連鎖のメチレン基(−CH−)m−1を有する以下の(式a)で表される化合物を出発原料とする。((式a)では、水酸基末端を有する化合物を例示している。)
【0120】
(式a)CHO−CO−(−CH−)m−1−OH
【0121】
(式a)で表される化合物の水酸基末端を、四臭化炭素(CBr)を用いて臭素置換し、次いで、トリフェニルフォスフィン(PPh,triphenylphosphine)を用いてシアン化メチル(CHCN)溶媒中で、臭素をPPhと反応させ、(式b)で表されるイオン性中間体を得る。
【0122】
(式b)[CHO−CO−(−CH−)m−1−PPh]+Br
【0123】
イオン性中間体(式b)に、デシルアルデヒド(decyl aldehyde)を反応させて、PPh基を不飽和cis構造の炭素二重結合を有するアルキル基末端とした(式c)で表されるα,ω構造化合物とする。
【0124】
(式c)CHO−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH
【0125】
次いで、(式c)のα,ω構造化合物のCHO−CO−末端基に水酸化リチウムを反応させて水酸基末端とし、これを塩化オキサリル(oxalyl chrolide)と塩化メチレンの溶媒中で飽和アンモニウムと反応させることでアミド基末端に変更し、以下の(式d)で表される不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド、すなわち、(A)の脂肪酸アミドを合成する。
【0126】
(式d)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH
【0127】
m(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数)を変更することにより、この合成経路を用いて所望の炭素数を有する不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを得ることができる。
【0128】
なお、不飽和炭素二重結合を有する脂肪酸アミドの合成においては、周知のように、不飽和cis構造炭素二重結合を有する化合物と不飽和trans構造炭素二重結合を有する化合物とが同時に得られるので、酢酸エチルとヘキサンとを100質量%(初展開)〜40質量%の濃度勾配を付けた混合溶媒を用いて、クロマトグラフィー展開を行い、不飽和cis構造と不飽和trans構造の異性体を分離する。その際、あらかじめ、クロマトグラフィー展開時間毎の分画液に対して、プロトンH−NMR核磁気共鳴装置を使用して、化学シフト値に応じた同定をAldorich製標準物質を基に行い、分画液を特定する。その分画液を減圧乾燥して、所望する不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを回収する。
【0129】
VII.合成樹脂製ブロー成形容器の製造方法
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、口部、環状凹部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える、合成樹脂製ブロー成形容器が得られる限り、ブロー成形(延伸ブロー成形を含む。)の方法は特に限定されない。また、単層の合成樹脂製ブロー成形容器でも、多層の合成樹脂製ブロー成形容器でも製造することができるが、多層の合成樹脂製ブロー成形容器を製造することが好ましい。
【0130】
多層の合成樹脂製ブロー成形容器を製造する方法としては、多層のパリソン(以下、「多層パリソン」ということがある。)を、容器形状のキャビティ壁を備える割型内でブロー成形することによって、ブロー成形品である合成樹脂製多層容器、すなわち、多層の合成樹脂製ブロー成形容器を製造する。ブロー成形は、多層パリソンを製造した後に、常温または室温に冷却しておき、ブロー成形を行うときに多層パリソンを所定温度まで加熱するコールドパリソン方式によってもよいし、多層パリソンを製造し、続いてブロー成形を行うホットパリソン方式によってもよい。多層パリソンは、多層射出成形により製造することもできる。しかし、溶融共押出によって筒状(以下、「管状」または「パイプ状」ということがある。)の多層パリソンを製造する方法が好ましく、共押出した多層のパリソンを続けてブロー成形するダイレクトブロー成形によって製造することが好ましい。以下、ダイレクトブロー成形によって製造される多層の合成樹脂製ブロー成形容器を得る方法について説明する。
【0131】
1.多層パリソンの製造
所望の多層構成を有する多層パリソンを共押出によって製造する方法としては、管状ダイを用いた共押出法、Tダイを用いた共押出法、インフレーション成形による共押出法などの方法が挙げられるが、いわゆるボトル形状の容器をブロー成形によって製造する場合は、管状ダイを用いた共押出法により筒状(パイプ状)の多層パリソンを製造することが好ましい。管状ダイを用いた共押出法で多層パリソンを製造する場合は、樹脂の種類に対応する数の押出機を使用し、各層に対応する樹脂をそれぞれ管状に展開しながら、ダイ通路内で溶融樹脂を積層体の順序となるように合流させる。表層である最内層と最外層が同種の樹脂からなる場合には、更に分岐チャンネルを経て、他の層を形成する樹脂原料等を挟み込むように分岐させ、その後、押出ダイ内で合流させ、管状形状のダイヘッドから所望の層構成に整列積層した状態で樹脂を押し出す。ダイヘッドの温度は通常120〜240℃であり、好ましくは130〜230℃、より好ましくは140〜220℃の範囲の温度を採用することができる。ダイオリフィスの形状としては、円形のほか偏平形状のものも使用可能である。管状ダイを用いた共押出法によれば、多層パリソンの肉厚の変更制御を比較的容易に行うことができる。
【0132】
なお、先に述べたように、多層パリソンを共射出成形によって製造することもできる。複数台の射出シリンダを備えた成形機を用いて、単一のパリソン用射出成形金型のキャビティ内に、一回の型締め動作で、1つのゲートから、溶融した表層(最外層及び/または最内層)を形成する樹脂組成物及び他の層を形成する樹脂材料を共射出して有底の多層パリソンを形成する。多層パリソンの底部の一部若しくは全部には、バリア層が存在していなくてもよい。一般に、底部の厚みは胴部の厚みに比べて大きいため、底部が実質的に熱可塑性樹脂組成物層だけでもバリア性を発揮することができる。胴部のみにバリア層を配置することにより、多層容器の機械的強度の低下を防ぐとともに、バリア層の厚みを均一に制御することが容易になる。
【0133】
2.ブロー成形
ブロー成形によってパリソンを成形する場合には、前記の方法で共押出した筒状のパリソンを、割金型で挟んで、下端を必要に応じて融着して塞ぐとともに、上端を切断した後、開口した上端から加圧流体を吹き込んで容器形状に成形した後、不要となる容器口部の上部(頭部または袋部)を切除して、ブロー成形によって製造される合成樹脂製ブロー成形容器を得る。該ブロー成形によって一体成形した容器の底部には、筒状のパリソンを、割金型で挟んで下端を融着して塞いだ痕跡として、ピンチオフ部がパーティングラインの一部として形成される。なお、射出成形によってパリソンを成形する場合には、成形容器の底部にゲート痕が形成される。
【0134】
ブロー成形用の割金型としては、鏡面仕上げのものでも、サンドブラスト加工したものでも使用でき、割金型の表面温度は一般に10〜50℃の範囲にあることが好ましい。また、ブロー成形用の流体としては、滅菌処理した空気を用いることが好ましく、その圧力は1.0〜15kg/cmの範囲にあるのが適当である。
【0135】
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、ダイレクトブロー成形または延伸ブロー成形して製造することもできる。延伸ブロー成形工程では、多層パリソンを延伸可能な温度に調整した後、ブロー成形用金型のキャビティ内に挿入し、空気などの陽圧流体または加圧流体を吹き込んで延伸ブロー成形を行う。長さ方向の延伸を行うためには、延伸ロッドを使用してもよい。延伸ブロー成形は、ホットパリソン方式またはコールドパリソン方式のいずれかの方式により行うことができる。全延伸倍率は、通常6〜9倍、耐圧ボトルでは8〜9.5倍、耐熱ボトルでは6〜7.5倍、大型ボトルでは7〜8倍程度である。ダイレクトブロー成形工程では、多層パリソンを膨張可能な温度に調整した後、ブロー成形用金型のキャビティ内に挿入し、空気などの陽圧流体または加圧流体を吹き込んでダイレクトブロー成形を行う。ダイレクトブロー成形によって製造される合成樹脂製ブロー成形容器における全膨張倍率は、通常6〜9倍、耐熱容器または耐熱ボトルでは6〜7.5倍、大型容器または大型ボトルでは7〜8倍程度である。
【0136】
内容物の熱充填に適した耐熱性の合成樹脂製多層容器を製造する場合には、熱充填時の容器の熱収縮・変形を防止するために、ブロー成形用金型の温度を100℃以上に昇温し、金型内で熱処理(熱固定)してもよい。金型温度は、100〜165℃であり、一般耐熱容器の場合は145〜155℃、高耐熱容器の場合には、160〜165℃の範囲とすることが好ましい。熱処理時間は、多層容器の厚みや熱処理温度により変動するが、通常1〜30秒間、好ましくは2〜20秒間である。
【0137】
VIII.雄螺条域における雄螺条の配置
本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、口部シール工程において、前記の環状凹部にグリッパフォークが挿入されることによって、容器の姿勢を安定かつ確実に正立状態に保持し続ける必要がある。したがって、該環状凹部の容器軸方向の長さが、周方向においてできるだけ変動せず、可能な限り均一であることが好ましい。本発明の合成樹脂製ブロー成形容器は、口部の雄螺条域において、周面から膨出する雄螺条を特有の位置関係にあるように配置することによって、環状凹部の容器軸方向の長さを、前記の好ましい態様のものとすることができる。
【0138】
すなわち、合成樹脂製ブロー成形容器が、ブロー成形金型の容器軸方向に沿う金型合せ面跡であるパーティングラインを該成形容器の表面に有し、前記雄螺条域が、複数の雄螺条を有し、かつ、各雄螺条の上端部である鍔先端部、及び、各雄螺条の下端部である鍔終端部が、前記雄螺条域を周方向に展開したときに隣接するパーティングラインの中間の区域である非パーティングライン区域に存在する該合成樹脂製ブロー成形容器とすることによって、環状凹部の容器軸方向の長さを、前記の好ましい態様のものとすることができる。合成樹脂製ブロー成形容器の口部の雄螺条域に設けられる複数の雄螺条の鍔先端部の位置または鍔終端部の位置のいずれかが、パーティングラインの位置にあると、口部シール工程において、グリッパフォークが挿入される環状凹部の容器軸方向の長さが、周方向において変動したり、不均一となることがある。
【0139】
前記鍔先端部及び鍔終端部が、前記非パーティングライン区域の中間線±60度以内の範囲に存在する該合成樹脂製ブロー成形容器とすることによって、環状凹部の容器軸方向の長さを、前記の好ましい態様のものとすることができる。前記鍔先端部及び鍔終端部の位置は、前記隣接するパーティングラインの中心線に対して、より好ましくは±40度以内、更に好ましくは±30度以内の範囲に存在するようにするとよい。前記鍔先端部及び鍔終端部の位置が、前記隣接するパーティングラインの中心線±60度を超えると、前記鍔先端部及び鍔終端部の位置が、パーティングラインの位置に近接することが多く、その結果、口部シール工程において、グリッパフォークが挿入される環状凹部の容器軸方向の長さが、周方向において変動したり、不均一となることがある。
【0140】
上記のように雄螺条の前記鍔先端部及び鍔終端部の位置を選定することによって、前記鍔先端部の位置に対応する前記環状凹部の容器軸方向の長さと、鍔終端部の位置に対応する前記環状凹部の容器軸方向の長さとが、同一である該合成樹脂製ブロー成形容器とすることができ、これらの長さを同一であるように、金型形状や加熱冷却条件等を調整することによって、環状凹部の容器軸方向の長さが、容器の周方向においてほとんど変動せず、略均一である該合成樹脂製ブロー成形容器が得られる。
【0141】
雄螺条域における雄螺条の配置によって、環状凹部の容器軸方向の長さを、前記の好ましい態様のものとすることができる理由は以下のように推察される。すなわち、割金型を使用しブロー成形によって所望の容器形状を有する合成樹脂製ブロー成形容器成形品を形成した後、該成形品を金型から脱型するために冷却を行い、または、成形品の脱型後の常温まで冷却を行うと、その間に成形品の収縮が発生する。合成樹脂製ブロー成形容器の口部に設けられる雄螺条は、鍔先端部または鍔終端部に向かって、周面からの膨出量、すなわち厚みが減少している。したがって、雄螺条の鍔先端部または鍔終端部の箇所と、該雄螺条の他の箇所とは、保有する熱容量が異なるので、先に述べた収縮量が異なり、環状凹部の上面が、周方向における位置により異なる収縮量を示す結果、環状凹部の容器軸方向の長さが、周方向において変動したり、不均一となったりする。
【0142】
さらに、前記鍔先端部及び鍔終端部を、前記雄螺条域を周方向に展開したときの隣接するパーティングライン間の周方向の距離に対する、該雄螺条域を周方向に展開したときの該鍔先端部と鍔終端部との間の周方向の距離の比率X(%表示。以下、「鍔先端・終端距離比率」という。)が、好ましくは18〜66.6%、より好ましくは20〜55%、更に好ましくは22〜50%の範囲内とすることにより、グリッパフォークの挿入性が一層向上する。詳細な理由は不明であるが、先に述べたように、鍔先端部及び鍔終端部が、いずれも非パーティングライン区域、好ましくは、隣接するパーティングラインの中心線±60度以内の範囲に存在すれば、環状凹部の容器軸方向の長さが、容器の周方向においてほとんど変動せず、略均一である該合成樹脂製ブロー成形容器が得られる。しかし、前記の鍔先端・終端距離比率が小さすぎると、雄螺条(a及びa等)の鍔先端部及び鍔終端部による収縮量の変動が干渉または増幅し合うことにより、環状凹部の容器軸方向の長さが微少量変動するものと推察される。この微少量変動の許容値は100μmであり、ベテラン作業者なら感知することができるものであり、グリッパフォークの挿入性の不具合の発生に関係する。
【0143】
IX.合成樹脂製ブロー成形容器の口部シール工程
図1に示すように、内容物充填工程において、食品等の内容物を、ダイレクトブロー成形等によって製造された合成樹脂製ブロー成形容器に充填し、必要に応じて加熱、殺菌及び冷却を行い、充填量等の検査を行った後に、口部シール装置まで容器を移送して、口部シール工程において、該容器の口部をシール材で密封して密封容器とする。次いで、該密封容器を整列させながら、キャップ装着装置(以下、「キャッパー」ということがある。)まで移送して、キャップ装着工程において、キャップ装着装置が、該密封容器の口部にキャップを巻き締める。
【0144】
容器の移送は、図1に示すように、通常、回転する搬送ホイール間で、容器をを受け渡しながら行われる。容器への内容物の充填工程の後は、充填量や充填重量等を検査して、規格範囲を満たしていないものを排出するので、図示しない複数の搬送ホイールを間欠回転しながら経由させることによって、容器の不連続な並びを、連続な並び、すなわち、等間隔の並びに整え、規格範囲を満たす充填容器を整列させて、受渡ホイールを介して、口部シール工程に充填済みの容器を引き渡す。
【0145】
口部シール工程においては、連続的に、すなわち、等間隔に並んだ充填容器を、充填容器の底部を把持して案内する底部グリッパによる把持と、充填容器の胴部を把持して案内する胴部グリッパによる把持とを切り替えることによって、充填容器を正立状態に維持しながら、口部シール装置の位置まで移送する。充填容器の正立状態の維持を助けるために、各移送ホイールには、図示しない案内板や案内溝を備えることができる。
【0146】
口部シール工程では、充填容器は、前記のグリッパで把持されながら、ステンレス製等の回転ホイール上を回転移動して、シール装置の直下に来たとき、該充填容器の上部を更に把持して、該充填容器を正立状態に固定した後、通常、下面に低密度ポリエチレン等の熱接着剤層を設けてある蓋材(シール材)を供給し、充填容器の開口部に載置して、上方から加熱加圧することによって、該充填容器の開口部に蓋材を溶着させて密封容器を形成する。
【0147】
充填容器の上部を把持する手段としては、フォーク状のグリッパ(グリッパフォーク)を、本発明の合成樹脂製ブロー成形容器の環状凹部の左右両側に挿入することによって、把持を行う。この把持方法によれば、変形しにくい容器の環状凹部を把持するとともに、充填容器の上方と下方とを把持するものであるので、充填容器の正立状態を維持しやすい。
【0148】
X.合成樹脂製ブロー成形容器の特性
本発明の、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面が(A)の不飽和脂肪酸アミドを含有する合成樹脂からなることを特徴とする合成樹脂製ブロー成形容器が備える諸特性は以下のものである。
【0149】
〔グリッパフォークの挿入性〕
合成樹脂製ブロー成形容器の、口部シール工程におけるグリッパフォークの挿入性の良否の評価は、内容物が充填された合成樹脂製ブロー成形容器を、口部シール工程に連続して5000本流し、該容器の口部の開口部に、LDPEを熱融着層に備えるシール材をシール装置によって溶着することによって行う。具体的には、口部シール用ホイール上で、合成樹脂製ブロー成形容器を把持するためのグリッパフォークが、容器の前記環状凹部に挿入されずに、容器が転倒する不良が生じた容器の数を光学センサーにより検出して計数する。該不良が生じた容器の数が、百分率表示で0.1%未満(容器の数としては、4本以下)であるとき、グリッパフォークの挿入性に関する評価を「○」とし、該不良が生じた容器の数が、百分率表示で0.1%以上(容器の数としては、5本以上)であるとき、グリッパフォークの挿入性に関する評価を「×」とする。
【0150】
〔胴部滑り性〕
合成樹脂製ブロー成形容器の胴部滑り性は、JIS K7125に準じる方法で測定することができる。具体的には、容器に温度23℃の水を略満充填した後、LDPEを熱融着層に備えるシール材を、容器の口部に加熱溶着させて密封する。容器を引っ張るためのワイヤを蓋に固着し、次いで、蓋を容器の口部に螺着する。該容器を、ステンレス鋼(SUS404)の平板上に水平に横置きして、引張圧縮試験機を使用して、蓋に固着したワイヤを、速度50mm/分で約2cm水平に引っ張ったときの最大引張荷重値を容器の胴部摩擦抵抗値(荷重値)とし、該胴部摩擦抵抗値を容器の総質量(容器、シール材及び水の合計質量)で割り算して、容器の胴部滑り摩擦係数とする。試験を10回繰り返して、平均値を求める。胴部滑り摩擦係数が、0.40以下であれば、胴部滑り性が良好であるといえ、好ましくは0.38以下、より好ましくは0.36以下、特に好ましく0.30以下である。胴部滑り性が良好であることにより、合成樹脂製ブロー成形容器の移送や充填、口部シール、キャップ装着などの諸工程において、該合成樹脂製ブロー成形容器同士、または、該合成樹脂製ブロー成形容器と装置との接触等により、該合成樹脂製容器が転倒したり、その移送が滞ることがなくなるので、好ましい。
【実施例】
【0151】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を更に説明するが、本発明は、本実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における樹脂原料及び容器の特性または物性の測定方法は、以下のとおりである。
【0152】
〔密度及びMFR〕
合成樹脂の密度及びMFR(温度190℃、荷重21.18N)は、JIS K6922−2に従って測定した。
【0153】
〔グリッパフォークの挿入性〕
合成樹脂製ブロー成形容器の、口部シール工程におけるグリッパフォークの挿入性の良否の評価は、内容物が充填された合成樹脂製ブロー成形容器を、口部シール工程に連続して5000本流し、該容器の口部の開口部に、LDPEを熱融着層に備えるシール材をシール装置によって溶着することによって行った。具体的には、口部シール用ホイール上で、合成樹脂製ブロー成形容器を把持するためのグリッパフォークが、容器の前記環状凹部に挿入されずに、容器が転倒する不良が生じた容器の数を光学センサーにより検出して計数した。該不良が生じた容器の数が、百分率表示で0.1%未満(容器の数としては、4本以下)であるとき、グリッパフォークの挿入性に関する評価を「○」とし、該不良が生じた容器の数が、百分率表示で0.1%以上(容器の数としては、5本以上)であるとき、グリッパフォークの挿入性に関する評価を「×」とした。
【0154】
〔胴部滑り性〕
合成樹脂製ブロー成形容器の胴部滑り性は、JIS K7125に準じる方法で測定した。具体的には、容器に温度23℃の水を満充填した後、LDPEを熱融着層に備えるシール材を、容器の口部に加熱溶着させて密封した。容器の総質量(容器、シール材及び水の合計質量)は、480gとなるようにした。容器を引っ張るためのワイヤを蓋に固着し、次いで、蓋を容器の口部に螺着した。該容器を、ステンレス鋼(SUS404)の平板上に水平に横置きした。株式会社今田製作所製引張圧縮試験機(製品名SV50)を使用し、蓋に固着したワイヤを、速度50mm/分で約2cm水平に引っ張ったときの最大引張荷重値を求め、容器の総質量で割り算して、容器の胴部滑り摩擦係数とした。試験を10回繰り返して、平均値を求めた。
【0155】
[実施例1]
複数の押出機と多層ダイを用いて、層構成が、それぞれ以下の組成からなる最外層/接着層/バリア層/接着層/回収層/最内層である筒状パリソンを押し出し、ロータリー式のダイレクトブロー成形機により、口部、環状凹部、胴部及び底部を一体成形した内容積が500cmである多層構成のダイレクトブロー成形によって製造される合成樹脂製多層容器(以下、「多層容器」ということがある。)を成形した。該多層容器には、ブロー成形金型の容器軸方向に沿う金型合せ面跡であるパーティングラインが、容器の周方向に180度隔てて2本形成されていた。多層容器の口部は、容器軸方向の長さ12mm、外径22mmで、容器軸に沿う長さ8mmの雄螺条域を有していた。雄螺条域の周面には2本の雄螺条が径方向に2.5mm膨出していた。2本の雄螺条の鍔先端部と鍔終端部は、容器の2本のパーティングラインの中間の区域、すなわち非パーティングライン区域に存在し、該非パーティングライン区域の中間線±60度以内の範囲にあった。また、該雄螺条域を周方向に展開したときの隣接するパーティングライン間の周方向の距離に対する、該雄螺条域を周方向に展開したときの該鍔先端部と鍔終端部との間の周方向の距離の比率X(鍔先端・終端距離比率)は、35%であった。環状凹部は、外径18mmで、容器軸方向の長さは4.5mmだった。多層容器の質量は、20gであった。
【0156】
(1)表層(最外層及び最内層)〔口部、環状凹部及び環状台座部の外表面の組成と同じである。〕:
合成樹脂として、低密度ポリエチレン〔住友化学株式会社製のスミカセン(登録商標);密度0.920g/cm、MFR(温度190℃、荷重21.18N)1.4g/10分〕を、また、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)として、cis−9,10−octadecenoamide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH;式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕(99.0質量%)及びcis−8,9−octadecenoamide 〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH;式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕(1.0質量%)の混合物を,低密度ポリエチレンに対して、1500ppmとなるように配合した。
【0157】
(2)バリア層:株式会社クラレ製の商品名エバール(登録商標)〔エチレン含有率が44モル%であるエチレン・ビニルアルコール共重合体。密度1.140g/cm、MFR(温度190℃、荷重21.18N)1.7g/10分、結晶融点165℃〕
【0158】
(3)回収層:本実施例により製造した多層容器をダイレクトブロー成形する際に生じる容器の頭部(=袋部)を切除して、破砕機にてそれを粉末化した樹脂(回収樹脂)を原料とした。
【0159】
(4)接着層:三菱化学株式会社製の無水マレイン酸変性ポリオレフィン、商品名モディック(登録商標)
【0160】
(1)〜(4)の層の厚み比率は、75:4:20:1とした。成形された容器のグリッパフォークの挿入性の評価の結果(以下、「グリッパフォーク挿入性評価」という。)及び胴部表面滑り摩擦係数(以下、「胴部滑り摩擦係数」という。)を表1に示す。
【0161】
[実施例2〕
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、cis−9,10−octadecenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕 (85.0質量%)及びcis−10,11−eicosenoamide 〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH;式(A11)の不飽和脂肪酸アミド〕(15.0質量%)の混合物に変更し、低密度ポリエチレンに対して、350ppmとなるように配合した表層の変更(並びに、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面の変更)を除いて、実施例1と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器のグリッパフォーク挿入性評価及び胴部滑り摩擦係数を表1に示す。
【0162】
[実施例3〕
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、cis−9,10−octadecenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕 (98.0質量%)及びcis−13,14−docosenoamide 〔HN−CO−(−CH−)11−CH=CH−(−CH−)−CH;式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕(2.0質量%) の混合物に変更し、低密度ポリエチレンに対して、3500ppmとなるように配合した表層の変更(並びに、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面の変更)を除いて、実施例1と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器のグリッパフォーク挿入性評価及び胴部滑り摩擦係数を表1に示す。
【0163】
[実施例4〕
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、cis−13,14−docosenoamide 〔HN−CO−(−CH−)11−CH=CH−(−CH−)−CH;式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕(98.0質量%)及び cis−9,10−octadecenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミド〕(2.0質量%) の混合物に変更した表層の変更(並びに、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面の変更)を除いて、実施例3と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器のグリッパフォーク挿入性評価及び胴部滑り摩擦係数を表1に示す。
【0164】
[実施例5〕
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、cis−9,10−octadecenoamide〔式(A)〕(99.8質量%)及びcis−5,6−8,9−11,12−14,15−arachidonic acid amide〔HN−CO−(−CH−)−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−(−CH−)−CH〕;不飽和cis構造炭素二重結合を4結合有する脂肪酸アミド〕(0.2質量%)の混合物に変更し、低密度ポリエチレンに対して、130ppmとなるように配合した表層の変更(並びに、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面の変更)を除いて、実施例1と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器のグリッパフォーク挿入性評価及び胴部滑り摩擦係数を表1に示す。
【0165】
[実施例6〕
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、cis−9,10−octadecenoamide〔式(A)〕 (95.0質量%)及びcis−13,14−docosenoamide〔式(A)〕(3.0質量%)の割合の混合物に変更し、更に飽和脂肪酸アミドであるbehenic acid amideを2.0質量%の割合で含有させ、これら不飽和脂肪酸アミドと飽和脂肪酸アミドとの合計含有量を、低密度ポリエチレンに対して、1000ppmとなるように配合した表層の変更(並びに、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面の変更)を除いて、実施例5と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器のグリッパフォーク挿入性評価及び胴部滑り摩擦係数を表1に示す。
【0166】
[比較例1]
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を、trans−9,10−octadecenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミドのtrans構造に相当する。〕 (単独使用)に変更した表層の変更(並びに、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面の変更)を除いて、実施例3と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器のグリッパフォーク挿入性評価及び胴部滑り摩擦係数を表1に示す。
【0167】
[比較例2]
trans−9,10−octadecenoamide〔式(A)の不飽和脂肪酸アミドのtrans構造に相当する。〕 (単独使用)を、trans−9,10−octadecenoamide(98.0質量%)と飽和脂肪酸アミドであるstearic acid amide(2.0質量%)との混合物に変更し、これら不飽和脂肪酸アミドと飽和脂肪酸アミドとの合計含有量が3000ppmとなるように配合した表層の変更(並びに、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面の変更)を除いて、比較例1と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器のグリッパフォーク挿入性評価及び胴部滑り摩擦係数を表1に示す。
【0168】
[比較例3]
不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)の混合物を、低密度ポリエチレンに対して、5000ppmとなるように配合した表層の変更(並びに、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面の変更)を除いて、実施例3と同様にして、多層容器を成形した。成形された容器のグリッパフォーク挿入性評価及び胴部滑り摩擦係数を表1に示す。
【0169】
【表1】

【0170】
表1の結果から、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を130〜3500ppm含有する合成樹脂からなる表層、並びに、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面を備える実施例1〜6の合成樹脂製多層容器は、いずれもグリッパフォーク挿入性評価が「○」であるので、口部シール工程における容器の正立状態が維持されることが分かった。さらに、胴部滑り摩擦係数が0.22〜0.38で、胴部表面の滑り性が良好であるので、合成樹脂製多層容器の移送や充填などの工程において、該合成樹脂製多層容器同士、または、該合成樹脂製多層容器と装置との接触等により、該合成樹脂製多層容器が転倒したり、その移送が滞ったりする懸念もなかった。
【0171】
これに対し、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面、並びに表層(最外層及び最内層)に、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)に代えて、不飽和trans構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドを含有させた比較例1の合成樹脂製多層容器、及び、不飽和trans構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミドとともに従来滑剤として知られる飽和脂肪酸アミドを含有する比較例2の合成樹脂製多層容器は、いずれも口部シール工程におけるグリッパフォークの挿入不良となる発生頻度が高く、また、胴部滑り摩擦係数が0.44または0.43と大きく、ベタ付き感があり、滑り性が不足するものであった。
【0172】
また、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面、並びに表層(最外層及び最内層)が、本発明において使用する不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)を含有するものの、合成樹脂に対する含有量が100〜4000ppmの範囲より多い比較例3の合成樹脂製多層容器は、胴部表面の滑り性が良好であるものの、口部シール工程におけるグリッパフォークの挿入不良の発生頻度が高かった。
【0173】
[実施例7]
実施例1において得られたダイレクトブロー成形によって製造される合成樹脂製多層容器(鍔先端・終端距離比率35%)の環状凹部の容器軸方向の長さを、周方向に沿って詳細に測定したところ、2本の雄螺条の鍔先端部の位置(2箇所)及び鍔終端部の位置(2箇所)における長さは、すべて同一であったが、パーティングライン位置において該長さが最小となっており、65μmの変形が確認された。なお、3人の被験者が、高さ4.5mmのグリッパフォークを手動で各10回挿入したところ、3人の被験者ともに違和感の指摘はなかった。
【0174】
[実施例8]
割金型の口部成形領域の形状を変更して、2本の雄螺条の鍔先端・終端距離比率が23%となるように刻設された割金型を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、多層容器を得た。得られた容器の2本の雄螺条の鍔先端部と鍔終端部は、容器の2本のパーティングラインの中間線±60度以内の範囲にあった。得られた合成樹脂製多層容器の環状凹部の容器軸方向の長さを、周方向に沿って詳細に測定したところ、2本の雄螺条の鍔先端部の位置(2箇所)及び鍔終端部の位置(2箇所)における長さは、すべて同一であったが、パーティングライン位置において該長さが最小となっており、97μmの変形が確認された。なお、得られた容器のグリッパフォーク挿入性評価は「○」であり、3人の被験者が、高さ4.5mmのグリッパフォークを手動で各10回挿入したところ、3人の被験者ともに違和感の指摘はなかった。
【0175】
[比較例4]
割金型の口部成形領域の形状を変更して、2本の雄螺条の鍔先端・終端距離比率が17%となるように刻設された割金型を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、多層容器を得た。得られた容器の2本の雄螺条の鍔先端部と鍔終端部は、容器の2本のパーティングラインの中間線±60度以内の範囲にあった。2本の雄螺条の、鍔先端部に続く螺条の形状が変化する箇所と、鍔終端部に続く螺条の形状が変化する箇所とは、雄螺条を周方向に展開したときの周方向において略隣接していた。得られた合成樹脂製多層容器の環状凹部の容器軸方向の長さを、周方向に沿って詳細に測定したところ、2本の雄螺条の鍔先端部の位置(2箇所)及び鍔終端部の位置(2箇所)における長さは、すべて同一であったが、パーティングライン位置において該長さが最小となっており、130μmの変形が確認された。なお、得られた容器のグリッパフォーク挿入性評価は「○」であったが、3人の被験者が、高さ4.5mmのグリッパフォークを手動で各10回挿入したところ、3人が違和感を指摘した。
【0176】
[比較例5]
割金型の口部成形領域の形状を変更して、2本の雄螺条の鍔先端・終端距離比率が8.5%となるように刻設された割金型を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、多層容器を得た。得られた容器の2本の雄螺条の鍔先端部と鍔終端部は、容器の2本のパーティングラインの中間線±60度以内の範囲にあった。2本の雄螺条の、鍔先端部に続く螺条の形状が変化する箇所と、鍔終端部に続く螺条の形状が変化する箇所とは、雄螺条を周方向に展開したときの周方向において略重複していた。得られた合成樹脂製多層容器の環状凹部の容器軸方向の長さを、周方向に沿って詳細に測定したところ、2本の雄螺条の鍔先端部の位置(2箇所)及び鍔終端部の位置(2箇所)における長さは、すべて同一であったが、パーティングライン位置において該長さが最小となっており、210μmの変形が確認された。なお、得られた容器のグリッパフォーク挿入性評価は「○」であったが、3人の被験者が、高さ4.5mmのグリッパフォークを手動で各10回挿入したところ、3人が違和感を指摘した。
【0177】
実施例7及び8、並びに比較例4及び5から、雄螺条の鍔先端部と鍔終端部は、隣接する2本のパーティングラインの中心線±60度以内の範囲にあるとともに、雄螺条域を周方向に展開したときの該鍔先端部と鍔終端部の周方向の距離の該雄螺条域全周の距離に対する比率(鍔先端・終端距離比率)を18%以上とすると、グリッパフォーク挿入性が極めて優れた合成樹脂製ブロー成形容器が得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明は、口部、環状凹部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形容器であって、口部は、周面から外方に雄螺条が膨出する雄螺条域を有し、胴部は、上端に、前記の環状凹部に連接する環状台座部を有し、かつ、口部、環状凹部及び環状台座部の外表面は、合成樹脂と、該合成樹脂に対して100〜4000ppmの不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)とを含有する樹脂組成物から形成されていることを特徴とする前記の合成樹脂製ブロー成形容器であることによって、合成樹脂製ブロー成形容器の製造装置の高速化が進むもとで、内容物充填後の口部シール工程でのグリッパフォーク挿入による把持が安定かつ確実である合成樹脂製ブロー成形容器を提供することができるので、産業上の利用可能性が高い。
【0179】
また、本発明によれば、前記雄螺条域が、複数の雄螺条を有し、かつ、各雄螺条の上端部である鍔先端部の位置、及び、各雄螺条の下端部である鍔終端部の位置が、いずれも前記雄螺条域を周方向に展開したときに隣接するパーティングラインの位置の中間の区域である非パーティングライン区域に存在する合成樹脂製ブロー成形容器であることによって、前記の環状凹部の形状を安定なものとすることができるので、合成樹脂製ブロー成形容器の製造装置の高速化が進むもとで、内容物充填後の口部シール工程でのグリッパフォーク挿入による把持が安定かつ確実である合成樹脂製ブロー成形容器を提供することができるため、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0180】
1 口部
2 環状凹部
3 胴部
31 環状台座部
a 雄螺条域
、a 雄螺条
11、a21 鍔先端部
12、a22 鍔終端部
b 開口部
c 蓋装着誘導域
p 容器軸
PL パーティングライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、環状凹部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形容器であって、
口部は、周面から外方に雄螺条が膨出する雄螺条域を有し、
環状凹部は、該口部の下端に連接し、
胴部は、その上端に、前記の環状凹部に連接する環状台座部を有し、かつ、
口部、環状凹部及び環状台座部の外表面は、合成樹脂と、該合成樹脂に対して100〜4000ppmの不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)とを含有する樹脂組成物から形成されていることを特徴とする
前記の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項2】
前記の合成樹脂製ブロー成形容器が、ブロー成形金型の容器軸方向に沿う金型合せ面跡であるパーティングラインを該成形容器の表面に有し、
前記雄螺条域が、複数の雄螺条を有し、かつ、
各雄螺条の上端部である鍔先端部、及び、各雄螺条の下端部である鍔終端部が、前記雄螺条域を周方向に展開したときに隣接するパーティングラインの中間の区域である非パーティングライン区域に存在する
請求項1記載の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項3】
前記鍔先端部及び鍔終端部が、前記非パーティングライン区域の中間線±60度以内の範囲に存在する
請求項1または2記載の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項4】
前記鍔先端部の位置に対応する前記環状凹部の容器軸方向の長さと、鍔終端部の位置に対応する前記環状凹部の容器軸方向の長さとが、同一である
請求項2または3記載の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項5】
前記の口部、環状凹部及び環状台座部の外表面が、合成樹脂製ブロー成形容器の表層の一部であり、該表層が、合成樹脂と、該合成樹脂に対して100〜4000ppmの不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)とを含有する樹脂組成物から形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項6】
前記の合成樹脂製ブロー成形容器の表層が、該合成樹脂製ブロー成形容器の最外層及び最内層である請求項5記載の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項7】
前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、以下の(A)、(A)及び(A):
(A)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、nは、6≦n≦10の範囲の整数);
(A)HN−CO−(−CH−)m−2−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、mは、6≦m≦10の範囲の整数);及び
(A)HN−CO−(−CH−)k+4−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、kは、6≦k≦10の範囲の整数);
からなる群より選ばれる一つの式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドを含有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項8】
前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドと、前記の(A)または(A)の式で表される少なくとも1種の脂肪酸アミドとの混合物である請求項7記載の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項9】
前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドにおけるmが、m=n+1またはm=n−1である請求項8記載の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項10】
前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドにおけるkが、k=nである請求項8記載の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項11】
前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、前記の(A)の式で表される脂肪酸アミドと、以下の(A11):
(A11)HN−CO−(−CH−)−CH=CH−(−CH−)−CH(ただし、jは、6≦j≦10の範囲の整数であり、j≠nである。);
の式で表される脂肪酸アミドとの混合物である請求項8記載の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項12】
前記の不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)が、分子構造中に不飽和cis構造炭素結合を2結合〜4結合有する化合物を含有する請求項1乃至11のいずれか1項に記載の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項13】
前記の合成樹脂と、不飽和cis構造炭素二重結合を有する脂肪酸アミド(A)とを含有する樹脂組成物が、更に飽和脂肪酸アミドを含有する請求項1乃至12のいずれか1項に記載の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項14】
更にバリア層を備える請求項1乃至13のいずれか1項に記載の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項15】
更に回収層を備える請求項1乃至14のいずれか1項に記載の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項16】
表層、バリア層、接着層及び回収層を備える請求項1乃至15のいずれか1項に記載の合成樹脂製ブロー成形容器。
【請求項17】
最外層/接着層/バリア層/接着層/回収層/最内層の層構成を有する請求項1乃至16のいずれか1項に記載の合成樹脂製ブロー成形容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−43649(P2013−43649A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180371(P2011−180371)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】