説明

生ごみ処理装置

【課題】 異なる型式の生ごみ処理装置の外枠を、共通性を有する金型で成形することにより生ごみ処理装置を安価に提供する。
【解決手段】 本発明は、合成樹脂成形品からなる外枠を、用途に応じて胴部の所定位置に撹拌手段の駆動軸を突出させる軸孔を有するものと、この軸孔を有しないものとを基本的に同一金型で成形可能としたものである。各外枠の成形用金型は、軸孔及びその周辺と対応する範囲の各キャビティを入れ子金型によって任意に区画形成可能としてある。入れ子金型は、軸孔設置用の突起部19bを有する第1入れ子金型19aと、上記突起部を有しない第2入れ子金型19cを任意に選択可能としてあり、成形用金型は軸孔を有する第1外枠を成形する際には第1入れ子金型を選択し、軸孔を有しない第2外枠を成形する際には第2入れ子金型を選択してキャビティを区画形成することによりいずれかの外枠を任意に製造可能としてある。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、家庭等から排出される生ごみを処理して園芸用肥料等を得る生ごみ処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近家庭等から排出される生ごみを処理して園芸用肥料を得るようにした生ごみ処理装置が普及している。このような生ごみ処理装置は、図3,4に示すように、一般的にプラスチック製の外枠31(41)、生ごみ等を収納・処理する処理槽32(42)、上蓋33(43)及び撹拌手段(図示せず)とを備えたものにより構成されている。
【0003】また、上記の撹拌手段は主として回転軸に撹拌羽根を固着したものにより構成されているが、回転軸の駆動方式には手動式と電動式とがある。図3に示すように、手動式は外枠を構成する胴部31aの前面側に駆動軸35の先端部を突出させ、この突出した部分にハンドル36を取り付けたものからなるもので、この胴部に軸受を取り付けるための軸孔31bが設けてある。これに対し、電動式は図4に示すように、外枠41内のスペースにモータや伝動装置45を設けてあるため、回転軸が外枠の前面に突出することがなく、したがって外枠に軸孔が設けられていないものとなっている。外枠はいずれもプラスチック成形品からなるが、このように手動式と電動式とでは、軸孔の部分が異なる構成となっているため、これを成形するための金型は別個のものが使われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、従来技術においては、外枠の成形には高価な金型を別個のものとして準備しなければならないために、外枠の製造コストの増加すなわち、生ごみ処理装置の価格を高くする原因となっている。
【0005】そこで本発明の目的は、手動式の外枠も電動式の外枠も基本的に同じ金型で成形可能とし、外枠の製造コストを引き下げることにより生ごみ処理装置を安価に提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明の生ごみ処理装置は、以下の手段を採用することにより外枠の製造コストの引き下げを実現した。
【0007】(請求項1に記載した発明の構成)本発明の生ごみ処理装置は、ほぼ同一外形に形成されている合成樹脂成形品からなり、用途に応じて胴部の所定位置に撹拌手段の駆動軸を突出させる軸孔を有する第1外枠と、この軸孔を有しない第2外枠とを選択可能としてあるところに第1の特徴がある。具体的には、第1外枠及び第2外枠はそれぞれの軸孔及びその周辺(以下「孔周辺部」という)の所定範囲を除いた範囲は、それぞれ共通の成形用金型によって成形可能としてある。すなわち、手動式の生ごみ処理装置の外枠は撹拌手段の駆動軸を突出させるための軸孔を有する第1外枠とし、電動式のそれは軸孔を有しない第2外枠とすると、上記の第1外枠を成形するための成形金型と第2外枠のそれとを基本的に共通のもので成形可能としてある。
【0008】(請求項1に記載した発明の作用・効果)上述したように、生ごみ処理装置には手動式の撹拌手段を備えた低価格のものと、電動式の撹拌手段を備えた比較的高価格なものに区分できるが、手動式のものは外枠に軸孔を必要とするが、電動式のものは軸孔を必要としないものとなっている。各外枠は、従来は別個の成形金型で成形されていたが、本発明では両者の外枠を共通化することにより高価な成形用金型を共用可能とし、製造コストの低減を実現してある。
【0009】(請求項2に記載した発明の構成)各外枠の成形用金型は、上記下第1外枠の孔周辺部又は上記した第2外枠の上記孔周辺部と対応する範囲の各キャビティを入れ子金型によって区画形成可能としたものからなる。これらの入れ子金型は、軸孔設置用の突起部を有する第1入れ子金型と、突起部を有しない第2入れ子金型とを任意に選択可能としてある。第1外枠は第1入れ子金型を選択することにより成形し、第2外枠は第2入れ子金型を選択することにより成形して得られるようにしてあるところに第2の特徴がある。
【0010】(請求項2に記載した発明の作用・効果)上記したように、第1外枠も第2外枠も上記の第1入れ子金型と第2入れ子金型とを交換するだけで共通の金型によって成形可能となるため、外枠の製造コストを引き下げることが可能となる。なお、上述の通り、第1外枠は安価な手動式の撹拌手段を備えた生ごみ処理装置を構成し、第2外枠は手動式よりも高価な電動式の撹拌手段を備えた生ごみ処理装置を構成するが、両者の製造数などの比率に関係なく、所望の数の外枠をそれぞれ安価に製造可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】(生ごみ処理装置の構成の概要)図3は、手動式の撹拌手段を備えた生ごみ処理装置D1の外観を示したものである。図示してあるように、外枠31内に処理槽32が出し入れ自在に取り付けられており、外枠の上部にはヒンジを介して上蓋33が取り付けてある。処理槽32内には撹拌手段が設けてあり(図示せず)、この撹拌手段を構成する駆動軸35が、軸孔31bから前面側に突出している。この駆動軸34にはハンドル36が取り付けられており、処理槽32内の撹拌手段を回転可能としてある。
【0012】また、図4は電動式撹拌手段を備えた生ごみ処理装置D2の外観を示したものである。図示してあるように、外枠41内に処理槽42が出し入れ自在に取り付けられており、外枠の上部にはヒンジを介して上蓋43が取り付けてある。処理槽42内には手動式と同様に撹拌手段が設けられている(図示せず)が、これを構成する撹拌軸44の前端は処理槽42の前面側に突出しているため、外枠41の前面側には達しないようになっている。
【0013】撹拌軸が突出している処理槽42の前面側と外枠41の前面の裏面側との間に設けられたスペース内には、撹拌手段の駆動手段を構成するチェーン伝動機構45が設けてある。このチェーン伝動機構45の小スプロケット45aは図示されていないモータのモータ軸に固着してあり、大スプロケット45bは上述の撹拌軸44の処理槽42から突出した先端部に固着してある。両スプロケット45a,45b間には、チェーン45cが巻き回してあり、モータにより撹拌手段を回転可能としてある。
【0014】上述の通り、手動式の生ごみ処理装置D1の外枠(以下「第1外枠」という)31には、駆動軸を突出させるための軸孔31bが設けられている(図3参照)のに対し、電動式の生ごみ処理装置D2の外枠(以下「第2外枠」という)にはこの軸孔が設けられていない(図4参照)。しかし、両者の差異はこの軸孔の有無以外は共通化を阻害する原因が存在しないので、本発明は第1外枠31及び第2外枠41を共通の金型で射出成形可能としたところに特徴がある。
【0015】(金型の構成例)図1は、第1外枠31及び第2外枠41を射出成形するための射出成形金型装置の構成例を示すものである。実際には多数のガイド軸や冷却手段等が存在するのであるが、ここでは各金型の配置状態のみをモデル的に示してある。図1において、最上部に位置する板は、固定側取付板11であり、その中央部には射出成形機の射出ノズルを受けるスプルー11aが設けてある。この固定側取付板11は、射出成形機の固定板に固定されて常に不動の位置にある。
【0016】固定側取付板11の下側にはランナープレート12が設けてある。これはスプルー11aから供給された液状の樹脂を分配させるためのランナーを設けた型板であり、成形後におけるランナー除去動作の際には、固定側取付板11から離反するようになっている。ランナープレート12の下側には、固定側型板13が設けてある。これはランナーから供給された樹脂を後述のキャビティへ分配するとともに、キャビティの一部を構成している。
【0017】これに対し、可動側金型は、図1の下部から順に可動側取付板14、スペーサブロック15、コア取付板16、コア当て板17及び可動側型板18の順に金型が設けてある。可動側取付板14は、射出成形機のシリンダヘッドに固定されており、シリンダによって移動可能としてある。可動側の中央部には、別のシリンダによって進退する突き出しロッドが設けてある(図示せず)。
【0018】スペーサブロック15は、内部に空胴部(スペース)が設けられており、その中に突き出しピンを取り付ける突き出し板が進退可能に設けてある(いずれも図示せず)。スペーサブロック15の上部にはコア取付板16が、さらにその上部にはコア当板17が設けてある。コア取付板16及びコア当板17の両者は、外枠31(41)の内部スペースを形成するためのコア(図示略)を固定してある。この両板には、上記の突き出し板に取り付けられた突き出しピンが挿通してあり、型離れの際に成形品を突き出し可能としてある(いずれも図示略)。
【0019】コア当板17の上部には可動側型板18が設けてある。この可動側型板18は、外枠31(41)の胴部を成形するために設けられたもので、前後分割してなる割り型により構成されており、型離れの際にはこの割り方が同時にそれぞれ前後に開いて、外枠の離型を容易化してある。可動側型板の前部型板18aの中央部には入れ子金型19が装着されている。この入れ子金型19は、前部型板18aの前面から内部に向けて設けられた入れ子用孔部18cに密着状態に挿着されており、ボルト及びアームからなる固定手段(図示略)により型板に固定されている。
【0020】(入れ子金型の構成)入れ子金型19は、前部型板18aと同一材質で、上記の入れ子用孔18cに嵌合可能な形状に形成したものからなる。入れ子金型19は、手動式の生ごみ処理装置D1の外枠(第1外枠)を成形するために用いる第1入れ子金型と、電動式の生ごみ処理装置D2の外枠(第2外枠)を成形するために用いる第2入れ子金型とがある。
【0021】図2は、入れ子金型の例を示すもので、同図(a)は、第1入れ子金型19aを示している。第1入れ子金型には、キャビティ面となる内側に軸孔形成用の突起部19bが設けてある。この突起部19bは外枠の前面側の厚と同じ高さに形成してあり、型閉じ状態においては、その先端部が記述したコアに当接状態となる。同図(b)は、第2入れ子金型19cを示している。第2入れ子金型19cは、キャビティ面となる内面側19dは平滑になっており、これを用いて成形された外枠(第2外枠)の前面は全面が平坦面となっている。
【0022】そこで、突起部付きの入れ子金型19aを、可動側型板18の入れ子用孔部18cに挿着してスプルー11aから樹脂を供給すると、胴部31a(図3参照)に軸孔31bを有する第1外枠D1が成形される。この例では、胴部31aの正面中央部に2点鎖線31dで示された範囲が第1入れ子19aによって形成されたキャビティ部により成形された部分である。
【0023】これに対し第2入れ子金型19cを入れ子用孔部18cに挿着して同様に成形すると、胴部41aに軸孔のない平坦面からなる第2外枠41が成形される。この場合には第1外枠31の2点鎖線41dで囲まれた範囲が第2入れ子金型19cによって形成されたキャビティによって成形された範囲となる。なお、これらの2点鎖線31d,41dは、金型の製作精度によっては線状に表れることもあるが、現在の製作技術の水準からすれば、問題を生じるようなことはない。
【0024】以上説明したように、手動式の撹拌手段を備えた生ごみ処理装置D1を構成する外枠(第1外枠)31と、電動式の生ごみ処理装置D2を構成する外枠(第2外枠)41とは、上記した入れ子金型19を交換するだけで他の金型の構成要素はすべて共通のまま成形可能となる。したがって射出成形用の金型費用を大幅に節減可能となるために、生ごみ処理装置のコスト低減に寄与するものとなる。
【0025】なお、上記した外枠の形状や金型の構成は例示であり、実際には種々の外枠の成形に適用可能である。また、本発明に係る入れ子金型は外枠の軸孔形成のみに限定する趣旨ではなく、射出成形全般に適用可能である。
【0026】
【発明の効果】本発明によれば、異なる型式の生ごみ処理装置の外枠を、入れ子金型の採用により共通性を有する成形金型で成形可能となるので、外枠(生ごみ処理装置)の製造コストの低減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る金型の構成を示すモデル図である。
【図2】入れ子金型の構成例を示すものであり、(a)は第1入れ子金型の斜視図、(b)は第2入れ子金型の斜視図である。
【図3】手動式の撹拌手段を備えた生ごみ処理装置の外観を示す斜視図である。
【図4】電動式の撹拌手段を備えた生ごみ処理装置の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
D1,D2 生ごみ処理装置
M 成形用金型
19(19a,19c) 入れ子金型
19b 突起部
31,41 外枠
31a,41a 胴部
31b 軸孔
32,42 処理槽
33,43 上蓋
35 駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】 合成樹脂成形品からなる外枠と、この外枠の上部に被せられる上蓋と、上記外枠内に収納されている処理槽と、この処理槽内に供給された生ごみ等を撹拌する撹拌手段とを備えた生ごみ処理装置において、上記外枠は、ほぼ同一外形に形成されている合成樹脂成形品からなり、用途に応じて胴部の所定位置に上記撹拌手段の駆動軸を突出させる軸孔を有する第1外枠と、この軸孔を有しない第2外枠とを選択可能としてあり、上記第1外枠及び上記第2外枠は当該第1外枠の上記軸孔及びその周辺(以下「孔周辺部」という)又は当該第2外枠における上記孔周辺部と対応する範囲を除く範囲はそれぞれ共通の成形用金型によって成形可能となっていることを特徴とする生ごみ処理装置。
【請求項2】 請求項1において、上記各外枠の成形用金型は、上記第1外枠の孔周辺部又は上記第2外枠の上記孔周辺部と対応する範囲の各キャビティを入れ子金型によって区画形成可能としたものからなり、上記入れ子金型は、上記軸孔設置用の突起部を有する第1入れ子金型と、上記突起部を有しない第2入れ子金型とを任意に選択可能としてあり、上記第1外枠は上記第1入れ子金型を選択することにより成形し、上記第2外枠は上記第2入れ子金型を選択することにより成形して得られることを特徴とする生ごみ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2002−11437(P2002−11437A)
【公開日】平成14年1月15日(2002.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−194344(P2000−194344)
【出願日】平成12年6月28日(2000.6.28)
【出願人】(391001457)アイリスオーヤマ株式会社 (146)
【Fターム(参考)】