説明

生タイヤ製造装置のモニタリングシステム

【課題】製造工程中において人手によらずに高精度に製造を監視することにより、低コストでタイヤの品質を向上させることができる生タイヤ製造装置のモニタリングシステムを提供する。
【解決手段】トランスファ4の環状フレーム4aに取付けられ、シェーピングフォーマ2の回転軸2aの軸ずれを検出する非接触式の第1センサーを有し、第1センサーの出力情報と判定基準値とを比較して製造可能範囲であるか否かを判定する第1監視手段と、トランスファ4の動きによって変動しない位置に取付けられ、トランスファ4の傾きを検出する非接触式の第2センサーを有し、第2センサーの出力情報と判定基準値とを比較して製造可能範囲であるか否かを判定する第2監視手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスファおよびシェーピングフォーマを備えた生タイヤ製造装置のモニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
生タイヤ製造装置は、トレッドリングをトランスファにより搬送してシェーピングフォーマの半径方向外側に待機させる一方、円環状の生タイヤ本体をシェーピングフォーマによりトロイド状に膨出(シェーピング)させることにより、生タイヤ本体をトレッドリングの内周面に圧着させて両者を一体化させて生タイヤを形成するようにしている。
【0003】
このようにして製造される空気入りタイヤにおいて、生タイヤ本体とトレッドリングが位置ずれしたまま一体化されるとユニフォミティーが悪化し、車両の振動、騒音、操縦安定性等に悪影響を及ぼす。このため、RFV、RRO等のユニフォミティー要素を所定のレベルに抑える工夫が種々行われていた(特許文献1)。
【0004】
そして、生タイヤ製造装置においては、シェーピングフォーマの軸ずれおよびトランスファの傾きをなくして生タイヤ本体とトレッドリングの位置ずれを防止することが、重要なポイントになっており、これらを早期に点検してアライメント時期を知らせる必要がある。なお、前記「軸ずれ」には、軸ぶれも含まれる。
【0005】
しかし、従来は、製造工程を停止させて人手によって点検を行っていたため、製造の停止による生産性の低下や、点検前に大量の不良タイヤが発生するおそれがあり、さらに人手によるため、コストが上昇すると共に点検者のスキルによる精度の不安定さがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−71653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題の解決に鑑み、製造工程中において人手によらずに高精度に製造を監視することにより、低コストでタイヤの品質を向上させることができる生タイヤ製造装置のモニタリングシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る生タイヤ製造装置のモニタリングシステムは、
拡縮可能な複数のセグメントが設けられた環状フレームを有するトランスファと、移動ホイールが取付けられた回転軸を有するシェーピングフォーマを備えた生タイヤ製造装置であって、
前記トランスファの前記環状フレームに取付けられ、前記シェーピングフォーマの前記回転軸の軸ずれを検出する非接触式の第1センサーを有し、前記第1センサーの出力情報と判定基準値とを比較して製造可能範囲であるか否かを判定する第1監視手段と、
前記トランスファの動きによって変動しない位置に取付けられ、前記トランスファの傾きを検出する非接触式の第2センサーを有し、前記第2センサーの出力情報と判定基準値とを比較して製造可能範囲であるか否かを判定する第2監視手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
前記の生タイヤ製造装置のモニタリングシステムは、
前記第1センサーが、鉛直方向から前記軸ずれを検出するセンサーと、水平方向から前記軸ずれを検出するセンサーとからなることを特徴とする。
【0010】
前記の生タイヤ製造装置のモニタリングシステムは、
前記第1監視手段が、前記トランスファの動きによって変動しない位置に取付けられ、、前記シェーピングフォーマの前記回転軸の軸ずれを検出する非接触式の第3センサーを有することを特徴とする。
【0011】
さらに前記の生タイヤ製造装置のモニタリングシステムは、
前記トランスファの前記環状フレームに取付けられ、前記第1および第2の監視手段により製造可能と判定されて製造された生タイヤを直接測定するセンサーを有し、前記センサーの出力情報と判定基準値とを比較して前記生タイヤのユニフォミティー要素を判定する第3監視手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造工程中において人手によらずに高精度に製造を監視することにより、低コストでタイヤの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る生タイヤ製造装置のモニタリングシステムの実施の形態1の斜視図である。
【図2】本発明に係る生タイヤ製造装置のモニタリングシステムの実施の形態1の正面図である。
【図3】本発明に係る生タイヤ製造装置のモニタリングシステムの実施の形態1の動作を説明する概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0015】
〈実施の形態1〉
1.生タイヤ製造装置
図1は本発明に係る生タイヤ製造装置の実施の形態1の斜視図、図2は本発明に係る生タイヤ製造装置の一実施の形態の正面図、図3は本発明に係る生タイヤ製造装置の動作を説明する概要図である。
【0016】
図1〜図3に示すように生タイヤ製造装置は、トレッドリング1の成形機1aと、シェーピングフォーマ2と、成形機1aとシェーピングフォーマ2との間をレール3に沿って往復動するトランスファ4と、製造工程を制御する制御手段(図示略)とを備えている。
【0017】
成形機1aにより成形されたトレッドリング1はトランスファ4によりシェーピングフォーマ2に移送されてシェーピングフォーマ2に取付けられた円筒状の生タイヤ本体(図示略)と一体化されるようになっている。
【0018】
(1)トランスファ
トランスファ4は、環状フレーム4aを有しており、環状フレーム4aにトレッドリング1を把持する拡縮可能な複数のセグメント4bが設けられ、複数のセグメント4bは環状フレーム4aの内周側において環状フレーム4aの周方向に等ピッチで装備されている。トランスファ4は各セグメント4bを拡縮させるための拡縮機構を備えており、各セグメント4bには上記トレッドリングを把持する一乃至複数の把持部(図示略)が設けられている。
【0019】
環状フレーム4aはベースプレート4cから立設され、ベースプレート4cにはレール3に沿って走行する走行体4dが取付けられている。
【0020】
前記拡縮機構は、図示を省略しているが、シリンダのロッドを伸縮させることにより、リンク機構を介して各セグメント4bを環状フレーム4aの径方向に沿って往復動させるものである。
【0021】
(2)シェーピングフォーマ
シェーピングフォーマ2は、回転軸2aと回転軸2aに沿って近接および離反可能な一対の移動ホイール2bと、前記生タイヤ本体のビード部をロックするビードロック手段(図示略)とを備えており、一対の移動ホイール2bを近接させることにより前記生タイヤ本体を圧縮すると共に拡径してトロイダル形状に変形させるように構成されている。
【0022】
シェーピングフォーマ2はマグネットリングパス5により回転駆動する。なお、マグネットリングパス5はリング状のマグネットの磁力を利用した非接触式の動力伝達手段であって、前記マグネットの吸引と反発の原理を利用して動力を伝達するものである。
【0023】
2.生タイヤ製造装置のモニタリングシステム
次に、本発明の生タイヤ製造装置のモニタリングシステムについて、生タイヤ製造装置と同様に、図1〜図3を用いて説明する。
【0024】
生タイヤ製造装置のモニタリングシステムは、生タイヤ製造装置に第1および第2の監視手段が備わることにより構成されている。
【0025】
(1)第1監視手段
第1監視手段は、鉛直方向からシェーピングフォーマ2の回転軸2aの外周面までの距離を検出する非接触式のレーザー変位センサーS1と、水平方向からシェーピングフォーマ2の回転軸2aの外周面までの距離を検出する非接触式のレーザー変位センサーS2とを備えており、これらのレーザー変位センサーS1、S2の出力情報と判定基準値とを比較して製造可能範囲であるか否かを判定するものである。また、これらのレーザー変位センサーS1、S2は、トレッドリング1やトランスファリング(トランスファ4の環状フレーム4a)を基準にしたときのシェーピングフォーマ2の回転軸2aの変化を測定するため、環状フレーム4aに取り付けられている。なお、レーザー変位センサーS1、S2は共に第1センサーである。
【0026】
すなわち、第1監視手段は、シェーピングフォーマ2の回転軸2aの軸芯と直交する同一平面内において、レーザー変位センサーS1、S2から回転軸2aの外周面までの鉛直線上および水平線上の距離を測定し、軸ずれしていないときの回転軸2aの外周面までのまでの距離(判定基準値)との比較においてシェーピングフォーマ2の回転軸2aの軸ずれの度合いを測定して調整の要否を判定する。
【0027】
本実施の形態の場合には、シェーピングフォーマ2の回転軸2aを回転させて、回転軸2aの軸表面の周方向の120点でデータを収集する。また、レーザー変位センサーS1、S2からの検出距離は400mm、測定精度は0.05mmに設定されている。また、測定頻度は10回/日、測定所要時間2min/回で行われる。
【0028】
(2)第2監視手段
第2監視手段はトランスファ4の傾きを検出するレーザー変位センサーS3(第2センサー)を有し、レーザー変位センサーS3の出力情報と、トランスファ4が傾いていないときのトランスファ4の環状フレーム4aまでの距離(判定基準値)とを比較して製造可能範囲であるか否かを判定するものである。
【0029】
すなわち、レーザー変位センサーS3からトランスファ4の環状フレーム4aまでの距離を測定し、判断基準値との比較においてトランスファ4の傾きの度合いを測定して調整の要否を判定する。
【0030】
(3)モニタリングのフロー
(a)まず、生タイヤ成形装置の動作を、図3を用いて説明した後に、モニタリングのフローについて説明する。トランスファ4は、成形機1aとシェーピングフォーマ2の間に位置した状態から成形機1aに向けて移動して成形機1aからトレッドリング1を受け取ってシェーピングフォーマ2に向けて移動する。図3中の二点鎖線で示されるトランスファ4はこれらの一連の動きを示している。そして、トレッドリング1を把持したトランスファ4がシェーピングフォーマ2の位置で停止した状態で、シェーピングフォーマ2による前記生タイヤ本体のシェーピングが行われ、前記生タイヤ本体とトランスファ4とを接合させる。
【0031】
(b)第1および第2の監視手段によるモニタリングは、まず始業前に行われ、トランスファ4の傾きを測定し、NGの場合には生産に移らずトランスファ4の傾きの修正作業に移る。正常な場合にはシェーピングフォーマ2の回転軸2aの軸ずれ測定に移り、判定がNGの場合には、生産に移らず回転軸2aの修正作業に移る。
【0032】
(c)生産中の点検においては、トランスファ4が所定の停止位置で停止する度に第2監視手段によるトランスファ4の傾きの監視が行われ(全数測定)、NGの場合、生産は直ちに停止されてトランスファ4の傾きの修正作業に移る。また、トレッドリング1および前記生タイヤ本体が接合位置にない場合に、第1監視手段によるシェーピングフォーマ2の軸ずれの監視が適宜行われる。
【0033】
(d)以上の作業は、生産ラインにおける直編成システムの1直ごとに行われる。
【0034】
なお、NGではないが、点検要レベルの装置精度の場合には、状況を知らせるための表示手段、例えば、アラーム灯を点滅させる手段を設けても良い。
【0035】
3.本実施の形態の効果
(1)タイヤの製造工程中において、製造ラインを停止させることなく、トランスファ4の傾きおよびシェーピングフォーマ2の回転軸2aの軸ずれを検査できるため、生タイヤの生産性を低下させることなく、トレッドリング1(1stカバー)と前記生タイヤ本体(2ndカバー)との位置ずれを解消することができ、生タイヤ製造装置の精度の低下によるRFV、RIHの悪化を防止することができ、精度の低下の発見の遅れによる不良タイヤの大量発生を防止することができる。また、人件費の低減、作業者のスキルによることなく、高精度のモニタリングが可能になる。
【0036】
(2)生タイヤ製造装置の精度管理の頻度を上げることができるため、品質面(RFV)での重要な管理ポイントを確実に抑えることができる。
【0037】
(3)レーザー変位センサーS1〜S3(非接触センサー)を用いるため、短時間での測定が可能になり、測定頻度も上げることができる。
【0038】
〈実施の形態2〉
第1監視手段には、前記トランスファの動きによって変動しない位置、例えば、床面から立設される固定フレームに取付けられるレーザー変位センサー(第3センサー)が備わり、このレーザー変位センサーによっても前記軸ずれを検出する。
【0039】
これにより、前記トランスファが前記シェーピングフォーマから離れた位置にあるときでも、前記軸ずれの検出が可能になり、測定頻度を高めることができる。
【0040】
〈実施の形態3〉
本実施の形態は、前記第1および第2の監視手段により製造可能と判定されて製造された生タイヤのユニフォミティー要素を判定する第3監視手段を備えている。
【0041】
第3監視手段は、製造された生タイヤを直接測定するセンサーを有し、このセンサーの出力情報と判定基準値とを比較して判定する。前記センサーをトランスファの環状フレームに沿って多数個設けられている。
【0042】
製造された生タイヤを直接測定して生タイヤのユニフォミティー要素を判定するため、生タイヤの信頼性がさらに向上する。さらにタイヤ周上のラジアスが安定するため、タイヤ操案性能の信頼性が向上する効果もある。
【符号の説明】
【0043】
1 トレッドリング
1a 成形機
2 シェーピングフォーマ
2a 回転軸
2b 移動ホイール
3 レール
4 トランスファ
4a 環状フレーム
4b セグメント
4c ベースプレート
4d 走行体
5 マグネットリングパス
S1〜S3 レーザー変位センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡縮可能な複数のセグメントが設けられた環状フレームを有するトランスファと、移動ホイールが取付けられた回転軸を有するシェーピングフォーマを備えた生タイヤ製造装置であって、
前記トランスファの前記環状フレームに取付けられ、前記シェーピングフォーマの前記回転軸の軸ずれを検出する非接触式の第1センサーを有し、前記第1センサーの出力情報と判定基準値とを比較して製造可能範囲であるか否かを判定する第1監視手段と、
前記トランスファの動きによって変動しない位置に取付けられ、前記トランスファの傾きを検出する非接触式の第2センサーを有し、前記第2センサーの出力情報と判定基準値とを比較して製造可能範囲であるか否かを判定する第2監視手段とを備えていることを特徴とする生タイヤ製造装置のモニタリングシステム。
【請求項2】
前記第1センサーが、鉛直方向から前記軸ずれを検出するセンサーと、水平方向から前記軸ずれを検出するセンサーとからなることを特徴とする請求項1に記載の生タイヤ製造装置のモニタリングシステム。
【請求項3】
前記第1監視手段が、前記トランスファの動きによって変動しない位置に取付けられ、、前記シェーピングフォーマの前記回転軸の軸ずれを検出する非接触式の第3センサーを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生タイヤ製造装置のモニタリングシステム。
【請求項4】
前記トランスファの前記環状フレームに取付けられ、前記第1および第2の監視手段により製造可能と判定されて製造された生タイヤを直接測定するセンサーを有し、前記センサーの出力情報と判定基準値とを比較して前記生タイヤのユニフォミティー要素を判定する第3監視手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の生タイヤ製造装置のモニタリングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−140162(P2011−140162A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1959(P2010−1959)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】