説明

生体に関する情報へのアクセス制御を行うシステム、顕微鏡および方法

【課題】 顕微鏡による試料の観察において電子カルテシステムを利用する際に、異なる生体に関する試料とカルテ情報を同じ生体に関する試料とカルテ情報であると誤認する事故を容易かつ確実に防止する手段を提供する。
【解決手段】 顕微鏡11はプレパラートがステージにセットされると、プレパラート上の二次元バーコードを読み取って端末装置12に送信する。端末装置12は顕微鏡11から受信した二次元バーコードを変換して得られる識別情報をサーバ装置13に送信する。サーバ装置13は端末装置12から受信した識別情報に対応する生体に関するカルテ情報をデータベースから検索して端末装置12に送信する。端末装置12はサーバ装置13から受信したカルテ情報を表示する。ステージからプレパラートが除去されると、端末装置12はそれまで表示していたカルテ情報の表示を中止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に関する情報へのアクセス制御を行うシステム、顕微鏡および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療従事者が生体から採取された試料を顕微鏡にて観察し、得られた所見をカルテに記載することは古くから行われている。近年では、従来は紙媒体に記録していた情報を電子的に記録する電子カルテシステムが実用化されている。
【0003】
電子カルテシステムにおいて、試料を観察して得られた所見をカルテに追加記載するために、その試料の採取元の生体に関するカルテ情報をカルテ情報のデータベースから読み出す必要がある。カルテ情報の読み出しのための操作を簡便化するために、試料の載せられたスライドガラス上にその試料の採取元である生体の識別情報を示すバーコードを印刷もしくは貼付しておく方法が実用化されている。
【0004】
上記のバーコードを用いる方法による場合、医療従事者は顕微鏡のステージにスライドガラスを載せる前に、スライドガラス上のバーコードを、自分が使用している端末装置に接続されたバーコードリーダにより読み取らせる。バーコードリーダにより読み取られたバーコードは端末装置により識別情報に変換され、カルテ情報のデータベースを管理するサーバ装置に送信される。
【0005】
サーバ装置は端末装置から送信されてきた識別情報に対応するカルテ情報をデータベースから読み出し、読み出した情報を端末装置に送信する。その結果、端末装置の表示部には医療従事者が今から観察しようとしている試料の採取元である生体のカルテ情報が表示される。また、医療従事者が端末装置に対し所定の操作を行うと、医療従事者は観察の結果得られた所見等を示す情報を表示中のカルテ情報に追加することができる。
【0006】
上記のバーコードを用いる方法に関連する技術として、例えば特許文献1には、生体の識別情報を示す二次元バーコードの印刷されたスライドガラスに含まれる試料の画像を撮影するシステムが開示されている。また、例えば特許文献2には、患者により携帯されるIDカード上に印刷されたバーコードにより示される識別情報に基づき当該患者のカルテ情報を抽出し、抽出したカルテ情報を医療従事者に閲覧可能とするシステムが開示されている。
【特許文献1】特開2007−178251号公報
【特許文献2】特開2002−041656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
医療機関においては、異なる生体から各々採取された試料が医療従事者により順次、顕微鏡にて観察されることは珍しくない。その場合、異なる生体に関する試料とカルテ情報を同じ生体に関する試料とカルテ情報であると誤認する事故(取り違え事故)が起こり得る。
【0008】
上述したスライドガラス上に印刷等されたバーコードによりカルテ情報を特定する方法によれば、例えば氏名等の入力によりカルテ情報を特定する方法と比較し、取り違え事故の発生頻度を低減することができる。しかしながら、バーコードを用いた方法によっても、例えば以下のような状況において取り違え事故は起こり得る。
(1)バーコードの読み取りをうっかりスキップしてしまう。
(2)バーコードを読み取ったスライドガラスを顕微鏡のステージ以外の場所に置き、何か他の動作を行った後に誤って他のスライドガラスを顕微鏡のステージに載せてしまう。
【0009】
本発明は、上記の状況に鑑み、顕微鏡による試料の観察において電子カルテシステムを利用する際に、異なる生体に関する試料とカルテ情報を同じ生体に関する試料とカルテ情報であると誤認する事故を容易かつ確実に防止する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明は、顕微鏡の観察対象である試料を含むプレパラートに設けられた識別情報を示す画像を読み取る読み取りステップと、複数の生体の各々に関し当該生体を識別する識別情報と当該生体に関する情報とを対応付けて記憶している記憶手段から、前記読み取りステップにおいて読み取られた画像により示される識別情報に対応付けて記憶されている情報を検索する検索ステップと、前記検索ステップにおいて検索された情報へのアクセスを可能とするステップと、前記プレパラートの移動により前記試料が前記顕微鏡により観察不可能となったことを検出する検出ステップと、前記検出ステップにおいて前記試料が観察不可能となったことが検出された場合、前記検索ステップにおいて検索された情報へのアクセスを不可能とするステップとを備える方法を提供する。また、本発明は、上記方法を実行するためのシステムおよび顕微鏡を提供する。
【0011】
上記方法、システムもしくは顕微鏡によれば、現在観察可能な状態である試料の採取元である生体に関するカルテ情報以外へのアクセスが阻止されるため、異なる生体に関する試料とカルテ情報を同じ生体に関する試料とカルテ情報であると誤認する事故が確実に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[1.実施形態]
[1.1.構成]
図1は、本発明にかかる一実施形態である電子カルテシステム1の全体構成を示した図である。電子カルテシステム1は、生体から採取された試料を観察するための顕微鏡11と、顕微鏡11に接続された端末装置12と、通信ネットワークを介して端末装置12との間でデータ通信可能なサーバ装置13とを備えている。
【0013】
図2は、顕微鏡11の構成部のうち、本願発明に関する部分を模式的に示した図である。電子カルテシステム1において、顕微鏡11により観察される試料はいずれかの生体から採取された試料であり、プレパラート14に含まれた形でユーザに提供される。プレパラート14は、試料141と、試料141を載せるスライドガラス142と、試料141を上方から覆いスライドガラス142と共に試料141を封入するカバーガラス143と、スライドガラス142上の試料141が置かれる領域とは異なる領域に貼付された二次元バーコードラベル144を備えている。二次元バーコードラベル144には、試料141の採取元である生体の識別情報を示す二次元バーコードが印刷されている。
【0014】
顕微鏡11は、プレパラート14をセットするステージ111と、ステージ111上にセットされたプレパラート14の試料141を撮影する試料撮影部112と、ステージ111上にセットされたプレパラート14の二次元バーコードラベル144に印刷された二次元バーコードを撮影するバーコード撮影部113とを備えている。
【0015】
試料撮影部112は、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラであり、試料141を継続的に撮影し、試料141の画像を示す試料画像情報を順次生成する。また、バーコード撮影部113は、例えばCCDカメラであり、二次元バーコードを継続的に撮影し、二次元バーコードの画像を示すバーコード画像情報を順次生成する。
【0016】
顕微鏡11は、さらに、試料撮影部112およびバーコード撮影部113により生成された試料画像情報およびバーコード画像情報を順次、端末装置12に送信する送信部114(図示略)を備えている。
【0017】
端末装置12は、試料141の画像およびカルテ情報を表示する表示部121と、ユーザが端末装置12を操作するために用いるキーボード122を備えている。端末装置12の表示部121は、試料の画像を表示する領域である試料画像領域と、カルテ情報を表示する領域であるカルテ情報領域に区分されている。
【0018】
また、端末装置12は顕微鏡11から送信されてくる試料画像情報およびバーコード画像情報を受信する受信部123(図示略)と、サーバ装置13との間でデータ通信を行う通信部124(図示略)を備えている。さらに、端末装置12は、二次元バーコードと識別情報との対応関係を示すコード表を記憶する記憶部125(図示略)を備えている。
【0019】
なお、端末装置12は、その機能構成として、顕微鏡11から順次送信されてくるバーコード画像情報に基づきカルテ情報の表示およびユーザによる編集の可否を制御するアクセス制御部126(図示略)を備える。アクセス制御部126の機能については、動作説明において後述する。
【0020】
サーバ装置13は、複数の生体の各々に関するカルテ情報をレコードデータとして含むデータベース(以下、「カルテデータベース」と呼ぶ)を記憶する記憶部131を備えている。カルテデータベースに含まれる個々のカルテ情報は、生体を識別する識別情報に対応付けて、生体の氏名、生年月日等の基本情報と、生体に関する医師等の所見、投薬の履歴、既往症等の情報が記憶されたものである。
【0021】
サーバ装置13は、さらに、端末装置12との間でデータ通信を行う通信部132(図示略)を備えている。なお、サーバ装置13は、その機能構成として、端末装置12から送信されてくる識別情報を検索キーとしてカルテデータベースから特定の生体に関するカルテ情報を検索する検索部133(図示略)を備える。検索部133により検索されたカルテ情報は通信部132により端末装置12に送信される。
【0022】
[1.2.動作]
顕微鏡11の電源が入っている間、顕微鏡11は試料撮影部112により生成した試料画像情報を順次、端末装置12に送信し続ける。端末装置12は顕微鏡11から送信されてくる試料画像情報に従い、試料画像領域に画像を表示する。その結果、ステージ111上の正しい位置にプレパラート14がセットされている間、試料画像領域には試料141の画像が表示され、ステージ111上からプレパラート14が取り除かれると、試料画像領域には有意義な画像は表示されない。
【0023】
端末装置12は上記のように試料画像領域への画像表示を行うと同時に、端末装置12から送信されてくるバーコード画像情報に従い、カルテ情報へのアクセス制御を行う。図3および図4は、カルテ情報へのアクセス制御に関する電子カルテシステム1の動作の概要を示したフロー図である。
【0024】
顕微鏡11の電源が入っている間、試料画像情報の送信と並行して、顕微鏡11はバーコード撮影部113により生成したバーコード画像情報を順次、端末装置12に送信し続ける(ステップS100)。端末装置12は顕微鏡11からバーコード画像情報を受信すると、受信したバーコード画像情報により示される二次元バーコードの認識処理を行う。ここで二次元バーコードの認識処理とは、記憶部125に記憶されているコード表に従い、二次元バーコードを生体の識別番号に変換する処理である。
【0025】
ステージ111上の正しい位置にプレパラート14がセットされている間、バーコード撮影部113により生成されるバーコード画像情報は二次元バーコードラベル144に印刷されている二次元バーコードを示す。その場合、通常、端末装置12は二次元バーコードの認識処理に成功する。一方、ステージ111からプレパラート14が取り除かれると、バーコード撮影部113により生成されるバーコード画像情報は有意義な画像を示さない。その場合、端末装置12は二次元バーコードの認識処理に失敗する。
【0026】
ユーザによりプレパラート14がステージ111上の正しい位置にセットされるまでの間、二次元バーコードの認識処理は失敗し続ける(ステップS101;No)。その間、端末装置12は二次元バーコードの認識処理を繰り返す以外、特段の処理を行わない。
【0027】
ユーザによりプレパラート14がステージ111上の正しい位置にセットされると、二次元バーコードの認識処理は失敗から成功に転じる(ステップS101;Yes)。その場合、端末装置12は二次元バーコードの認識処理により得られた識別番号をサーバ装置13に送信する(ステップS102)。
【0028】
サーバ装置13は端末装置12から識別情報を受信すると、受信した識別番号を検索キーとしてカルテデータベースからカルテ情報を検索する(ステップS103)。サーバ装置13はステップS103において検索したカルテ情報を端末装置12に送信する(ステップS104)。
【0029】
端末装置12はサーバ装置13からカルテ情報を受信すると、受信したカルテ情報をカルテ情報領域に表示する(ステップS105)。ユーザは、カルテ情報領域に表示されているカルテ情報を参照しつつ、試料画像領域に表示されている試料141の画像を観察し、端末装置12に自分の所見を示す所見情報を入力する(ステップS106)。ユーザは、所見情報の入力を終えると端末装置12に対し送信指示を行う。その送信指示に応じて、端末装置12は所見情報をサーバ装置13に送信する(ステップS107)。
【0030】
サーバ装置13は端末装置12から所見情報を受信すると、受信した所見情報をステップS103で検索したカルテ情報に追加することにより、カルテ情報を更新する(ステップS108)。
【0031】
ユーザは通常、所見情報の送信指示を行った後にステージ111からプレパラート14を取り除く。しかしながら、状況によってユーザは上述したステップS101からステップS108までの一連の処理が完了する前に、ステージ111からプレパラート14を取り除く場合もある。いずれのタイミングにおいてステージ111からプレパラート14が取り除かれた場合であっても、端末装置12はカルテ情報領域に表示していたカルテ情報の表示を中止する。図4はステージ111からプレパラート14が取り除かれた場合における電子カルテシステム1の動作の概要を示している。
【0032】
ユーザによりステージ111の正しい位置にプレパラート14がセットされた後、すなわち図3のステップS101の判定においてYesとなった後も、顕微鏡11は試料画像情報の送信と並行して、バーコード画像情報を順次、端末装置12に送信し続ける(ステップS100)。
【0033】
ユーザによりプレパラート14がステージ111から取り除かれるまでの間、二次元バーコードの認識処理は成功し続ける(ステップS201;No)。その間、端末装置12は二次元バーコードの認識処理を繰り返す以外、特段の処理を行わない。
【0034】
ユーザによりプレパラート14がステージ111から取り除かれると、二次元バーコードの認識処理は成功から失敗に転じる(ステップS201;Yes)。その場合、端末装置12はカルテ情報領域へのカルテ情報の表示を中止する(ステップS202)。すなわち、ユーザはそれまで表示されていたカルテ情報を見ることができなくなる。そのため、ユーザはプレパラート14をステージ111から取り除いた後は、そのプレパラート14に含まれる試料141の採取元の生体に関するカルテ情報に所見情報を追加することもできなくなる。
【0035】
以上説明したように、電子カルテシステム1によれば、ステージ111からプレパラート14が取り除かれると、そのプレパラート14に含まれる試料141の採取元の生体に関するカルテ情報のユーザによる閲覧および変更は不可能となる。その結果、異なる生体に関する試料とカルテ情報を同じ生体に関する試料とカルテ情報であると誤認する事故が容易かつ確実に防止される。
【0036】
[2.変形例]
上述した実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で様々に変形することができる。以下に変形例を示す。
【0037】
[2.1.第1変形例]
第1変形例において、顕微鏡11のバーコード撮影部113はバーコード画像情報を常時生成するわけではない。従って、端末装置12はバーコード画像情報により示される二次元バーコードの認識処理を常時行うわけではない。具体的には顕微鏡11および端末装置12は以下の動作を行う。
【0038】
プレパラート14がステージ111にセットされていない間、バーコード撮影部113は複数備えるCCD素子のうち、一部のCCD素子のみを動作させ、他のCCD素子は省電力のために動作を停止させる。以下、バーコード撮影部113の一部のCCD素子のみが動作している状態を顕微鏡11の「待機モード」と呼ぶ。これに対し、バーコード撮影部113の全てのCCD素子が動作している状態を顕微鏡11の「動作モード」と呼ぶ。待機モードにおいては、顕微鏡11はバーコード画像情報を端末装置12に送信しない。
【0039】
第1変形例における顕微鏡11は、待機モードにおいて動作しているCCD素子により撮影された画像がステージ111の表面の画像を示すか否かを判定することにより、プレパラート14がステージ111にセットされたことと、プレパラート14がステージ111から取り除かれたことを検出する検出部を備えている。また、第1変形例における顕微鏡11は、端末装置12から送信される情報を受信する受信部を備えている。
【0040】
今、ステージ111にプレパラート14がセットされておらず、顕微鏡11が待機モードであるとする。その状態においてプレパラート14がステージ111にセットされると、顕微鏡11は検出部によりプレパラート14のセットを検出する。プレパラート14のセットを検出した顕微鏡11は動作モードに移行する。動作モードに移行した顕微鏡11は、上述した実施形態と同様に、バーコード撮影部113の全てのCCD素子を用いて生成したバーコード画像情報を順次、端末装置12に送信する。
【0041】
端末装置12は顕微鏡11から順次送信されてくるバーコード画像情報により示される二次元バーコードの認識処理を行い、認識処理に成功して生体の識別情報を取得すると、顕微鏡11に対し待機モードへの移行指示を送信する。顕微鏡11は端末装置12から移行指示を受信すると、受信した移行指示に従い待機モードへ移行する。
【0042】
端末装置12は顕微鏡11に対し待機モードへの移行指示を送信する一方で、サーバ装置13に識別情報を送信する。その後、端末装置12およびサーバ装置13は上述したステップS103からステップS108までの一連の動作を行う。
【0043】
顕微鏡11が端末装置12から送信された移行指示に従い待機モードへ移行した後、ステージ111からプレパラート14が取り除かれると、顕微鏡11は検出部によりプレパラート14の除去を検出する。プレパラート14の除去を検出した顕微鏡11は端末装置12にカルテ情報へのアクセス解除指示を送信する。なお、顕微鏡11はプレパラート14の除去を検出した後も待機モードを維持する。
【0044】
端末装置12は顕微鏡11からアクセス解除指示を受信すると、受信したアクセス解除指示に従い、それまでカルテ情報領域に表示していたカルテ情報の表示を停止する。その結果、ユーザはそのカルテ情報にアクセスできなくなる。
【0045】
以上説明したように、本願発明において、バーコードの認識処理による識別情報の取得はプレパラートのセットが検出された後、プレパラートが除去されるまでの間に少なくとも一度行われればよい。従って、識別情報の取得のために必要なバーコードの読み取り処理は、プレパラートのセットが検出された後、バーコードの認識処理による識別情報の取得に成功するまでの間のみ行われればよい。
【0046】
上述した実施形態および第1変形例においては、バーコード撮影部113により生成される画像情報に基づきプレパラートのセットの検出およびプレパラートの除去の検出が行われるものとしたが、プレパラートのセットの検出およびプレパラートの除去の検出を独立した検出部により行わせてもよい。
【0047】
例えば、ステージ111上のプレパラート14がセットされる領域の一部に、プレパラート14の重さがかかるとONされ、プレパラート14の重さがかからなければOFFされるスイッチを設け、プレパラートのセットをスイッチのOFFからONへの変化により検出し、プレパラートの除去をスイッチのONからOFFへの変化により検出するようにしてもよい。
【0048】
[2.2.第2変形例]
第2変形例における顕微鏡11は、試料撮影部112とバーコード撮影部113とを兼ねる撮影部を1つのみ備える。従って、ステージ111にプレパラート14がセットされている間、顕微鏡11から端末装置12へは試料141と二次元バーコードの両方を1つの画像として示す画像情報が送信される。
【0049】
第2変形例における端末装置12は、顕微鏡11から送信されてくる画像情報により示される画像から試料141の画像部分のみを切り出して試料画像領域に表示する。また、第2変形例における端末装置12は、顕微鏡11から送信されてくる画像情報により示される画像から二次元バーコードの画像部分のみを切り出して認識処理に用いる。
【0050】
端末装置12が試料と二次元バーコードの両方を含む画像から、試料を示す画像部分と二次元バーコードを示す画像部分とを各々切り出す方法としては、例えば画像情報により示される画像の所定の領域部分を、それぞれ試料を示す画像部分および二次元バーコードを示す画像部分として扱う方法を採用してもよいし、例えば画像認識技術により、試料を示す画像部分と二次元バーコードを示す画像部分とを各々認識する方法を採用してもよい。
【0051】
[2.3.第3変形例]
第3変形例における顕微鏡11は、試料141のデジタル画像を生成する試料撮影部112に代えて、ユーザが試料141を直接観察することを可能とするアナログ光学顕微鏡の構造を備えている。従って、顕微鏡11から端末装置12に対し試料画像情報が送信されることはなく、端末装置12の表示部121に試料141の画像が表示されることもない。
【0052】
第3変形例において、ユーザは顕微鏡11の光学筒を接眼レンズ側から覗き込むことにより試料141の観察を行う。第3変形例においても、ユーザにより観察される試料の採取元の生体と、端末装置12に表示されるカルテ情報の生体とがずれることはない。
【0053】
[2.4.その他の変形例]
上述した顕微鏡の種類は例示であって、例えば本発明において蛍光顕微鏡や電子顕微鏡などが採用されてもよい。
【0054】
上述したプレパラートは例示であって、例えば本発明においてカバーガラスを用いないプレパラートなどが採用されてもよい。
【0055】
上述した二次元バーコードは生体の識別情報を示す画像の例示であって、例えば本発明において識別情報を一次元バーコードで示す画像が採用されてもよいし、識別情報を文字や記号で示す画像が採用されてもよい。
【0056】
上述した顕微鏡、端末装置およびサーバ装置からなるシステムの構成は例示であって、例えば本発明において、端末装置とサーバ装置に代えて、それらの両方の機能を有する1つの装置が電子カルテシステムを構成するようにしてもよい。また、顕微鏡、端末装置およびサーバ装置の各々が備える構成部(機能構成部を含む)の一部を他の装置に配置してもよい。例えば、二次元バーコードの認識処理を端末装置ではなく顕微鏡において行わせる構成としてもよい。その場合、顕微鏡は端末装置にバーコード画像情報に代えて、認識処理により得られた識別情報を端末装置に送信する。
【0057】
また、例えば試料およびカルテ情報の表示を端末装置に接続された外部の表示装置に行わせる構成としてもよい。また、サーバ装置の機能を互いに連携処理を行うサーバ装置群により実現させるようにしてもよい。また、顕微鏡にバーコード撮影部を内蔵させる代わりに、プレパラートがセットされた状態でバーコードを撮影可能な位置に取り付け可能なバーコード撮影装置を顕微鏡もしくは端末装置に接続する構成としてもよい。
【0058】
上述した端末装置は、それが備える機能をハードウェアにより実現する構成としてもよいし、汎用的なコンピュータにプログラムに従った処理を行わせることにより、それらの機能を実現させる構成としてもよい。本発明は、汎用的なコンピュータを上述した端末装置として機能させるプログラムおよび当該プログラムをコンピュータに読み取り可能に記録した記録媒体も提供する。
【0059】
[3.補足説明]
本願において、情報への「アクセス」とは、ユーザによる情報の閲覧もしくは変更(既存の情報への追加や既存の情報の削除を含む)を示す。従って、情報へのアクセスが可能な状態とは、(1)ユーザにより情報の閲覧は可能だが変更は不可能な状態、もしくは(2)ユーザにより情報の閲覧および変更のいずれも可能な状態、のいずれかである。また、情報へのアクセスが不可能な状態とは、(1)ユーザにより情報の変更および閲覧のいずれも不可能な状態、もしくは(2)ユーザにより情報の閲覧は可能だが変更は不可能な状態、のいずれかである。
また、本願において、画像情報の生成および送信が継続的に行われる場合、それらの処理が連続的に行われても断続的に行われてもよい。例えばCCDカメラにより生成されるデジタル画像情報は、厳密には連続的に生成および送信されることはないが、極めて短い時間間隔で生成および送信が行われれば、ユーザにとっては連続的と認識される。また、ユーザがプレパラートのセットもしくは除去に要する時間と比べ十分に短い時間間隔で画像情報の生成および送信が行われるのであれば、ユーザにとって断続的と認識される場合であっても、本発明における不都合は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電子カルテシステムの全体構成を示した図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる顕微鏡の構成を模式的に示した図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる電子カルテシステムの動作概要を示したフロー図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる電子カルテシステムの動作概要を示したフロー図である。
【符号の説明】
【0061】
1…電子カルテシステム、11…顕微鏡、12…端末装置、13…サーバ装置、14…プレパラート、111…ステージ、112…試料撮影部、113…バーコード撮影部、121…表示部、122…キーボード、141…試料、142…スライドガラス、143…カバーガラス、144…二次元バーコードラベル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡の観察対象である試料を含むプレパラートに設けられた識別情報を示す画像を読み取る読み取りステップと、
複数の生体の各々に関し当該生体を識別する識別情報と当該生体に関する情報とを対応付けて記憶している記憶手段から、前記読み取りステップにおいて読み取られた画像により示される識別情報に対応付けて記憶されている情報を検索する検索ステップと、
前記検索ステップにおいて検索された情報へのアクセスを可能とするステップと、
前記プレパラートの移動により前記試料が前記顕微鏡により観察不可能となったことを検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて前記試料が観察不可能となったことが検出された場合、前記検索ステップにおいて検索された情報へのアクセスを不可能とするステップと
を備える方法。
【請求項2】
複数の生体の各々に関し、当該生体を識別する識別情報と当該生体に関する情報とを対応付けて記憶する記憶手段と、
プレパラートに含まれる試料が顕微鏡により観察可能な位置に当該プレパラートが配置された時に当該プレパラートに設けられた識別情報を示す画像を読み取り可能な読み取り手段と、
プレパラートに含まれる試料が前記顕微鏡により観察可能な位置に当該プレパラートが配置されている間に限り、前記読み取り手段により読み取られた画像により示される識別情報に対応付けて前記記憶手段に記憶されている情報へのアクセスを可能とするアクセス制御手段と
を備えるシステム。
【請求項3】
プレパラートに含まれる試料が観察可能な位置に当該プレパラートが配置された時に当該プレパラートに設けられた識別情報を示す画像を読み取り可能な読み取り手段と、
前記読み取り手段により読み取られた画像を示す画像情報もしくは当該画像により示される識別情報を外部装置に送信する送信手段と
を備え、
前記送信手段は、プレパラートの移動により当該プレパラートに含まれる試料が観察不可能となったタイミングに、前記外部装置に所定の信号を送信する
顕微鏡。
【請求項4】
プレパラートに含まれる試料が観察可能な位置に当該プレパラートが配置された時に当該プレパラートに設けられた識別情報を示す画像を読み取り可能な読み取り手段と、
前記読み取り手段により読み取られた画像を示す画像情報もしくは当該画像により示される識別情報を外部装置に送信する送信手段と
を備え、
前記送信手段は、プレパラートに含まれる試料が観察可能な位置に当該プレパラートが配置されている間に限り、継続的に前記外部装置に所定の信号を送信する
顕微鏡。
【請求項5】
前記読み取り手段は、プレパラートに設けられた識別情報を示す画像と当該プレパラートに含まれる試料とを同時に光学的に読み取り、読み取った画像を示す画像情報を生成し、
前記送信手段は、前記読み取り手段により生成された画像情報のうち識別情報の画像を示す部分のみを前記外部装置に送信する
請求項3もしくは4に記載の顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−97509(P2010−97509A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269130(P2008−269130)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(508133709)ラディオ・パソロジカル・バーチャル・カンファレンス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】