説明

生体インプラント用洗浄処理装置

【課題】生体インプラントに対する紫外線照射が終了した後、当該紫外線照射によって発生したオゾンを迅速に除去することができる生体インプラント用洗浄処理装置を提供する。
【解決手段】生体インプラントの表面に紫外線を照射すると共にオゾンを接触させることによって、当該生体インプラントを洗浄処理する生体インプラント用洗浄処理装置であって、筐体と、この筐体内に配置された、生体インプラントに紫外線を照射する紫外線放射ランプと、 前記筐体内に配置されたオゾン除去フィルタと、前記筐体内の雰囲気ガスを前記オゾン除去フィルタに導入するファンとを備えてなり、前記ファンは、前記生体インプラントの洗浄処理の終了に応じて駆動されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体インプラントに紫外線を照射すると共にオゾンを接触させることによって、当該生体インプラントを洗浄処理する生体インプラント用洗浄処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デンタルインプラントは、失われた歯の機能を代用させることを目的として顎骨に埋め込れるものである。そして、デンタルインプラント手術においては、デンタルインプラントが十分に骨と結合(オッセオインテグレーション)することが肝要であり、そのため、デンタルインプラントに紫外線を照射することによって、当該デンタルインプラントに付着した有機物を除去することが提案されている(特許文献1参照。)。
一方、光洗浄などに用いられる洗浄処理装置においては、被処理物が配置される処理室内の雰囲気ガス中に酸素が存在する場合には、当該酸素に紫外線が照射されることによってオゾンが生成されることにより、被処理物に対して紫外線の照射処理およびオゾンによる処理の両方が行われるため、それらの相乗作用によって、被処理物に付着した有機物を高い効率で除去することができる。
そして、紫外線およびオゾンによる洗浄処理は、デンタルインプラント以外の生体インプラント、例えば大腿骨インプラントなどに対しても、それらに付着した有機物を高い効率で除去することができる手段として期待されている。
【0003】
而して、デンタルインプラント手術などの生体インプラント手術においては、生体インプラントに対する有機物等の再付着を防止するため、生体インプラントに対する紫外線照射処理が終了した後、当該生体インプラントが速やかに手術に供されることが肝要である。
しかしながら、生体インプラントの洗浄処理が終了した直後においては、当該生体インプラントが配置された処理室内の雰囲気ガスには、人体に有害なオゾンが含まれているため、生体インプラントを速やかに処理室内から取り出して手術に供することは実際上困難である。
また、オゾンの生成を防止するために、生体インプラントが配置される処理室内を例えば窒素ガスなどの不活性ガスによってパージする手段が考えられるが、このような手段では、被処理物に対してオゾンによる処理が行われないため、生体インプラントに付着した有機物を高い効率で除去することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3072373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、生体インプラントに対する洗浄処理が終了した後、当該洗浄処理に用いられたオゾンを迅速に除去することができる生体インプラント用洗浄処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の生体インプラント用洗浄処理装置は、生体インプラントの表面に紫外線を照射すると共にオゾンを接触させることによって、当該生体インプラントを洗浄処理する生体インプラント用洗浄処理装置であって、
筐体と、
この筐体内に配置された、生体インプラントに紫外線を照射する紫外線放射ランプと、 前記筐体内に配置されたオゾン除去フィルタと、
前記筐体内の雰囲気ガスを前記オゾン除去フィルタに導入するファンと
を備えてなり、
前記ファンは、前記生体インプラントの洗浄処理の終了に応じて駆動されることを特徴とする。
【0007】
本発明の生体インプラント用洗浄処理装置においては、前記筐体は、生体インプラントを洗浄処理する処理室およびこの処理室内のオゾンを除去するためのオゾン除去室を有し、
前記紫外線放射ランプは、前記処理室内に配置され、
前記ファンは、前記オゾン除去室内に配置され、
前記オゾン除去フィルタは、前記オゾン処理室内において前記ファンによって形成される風路上に配置されており、
前記ファンが駆動されることによって、前記処理室内の雰囲気ガスが前記オゾン処理室を介して循環されることが好ましい。
このような生体インプラント用洗浄処理装置においては、前記処理室および前記オゾン除去室を区画する隔壁を有し、前記筐体および前記隔壁の少なくとも一つが金属よりなり、前記紫外線放射ランプからの光による熱が、前記金属よりなる筐体または隔壁を介して前記オゾン除去フィルタに伝達されることが好ましい。
また、前記処理室内に、前記紫外線放射ランプからの光を反射する金属よりなる反射鏡が配置されており、当該紫外線放射ランプからの光による熱が、当該反射鏡を介して前記オゾン除去フィルタに伝達されてもよい。
また、前記ファンによって形成される風路上において、当該ファンに対してその上流側および下流側の両方に前記オゾン除去フィルタが配置されており、これらのオゾン除去フィルタの間に閉鎖空間が形成されていることが好ましい。
本発明の生体インプラント用洗浄処理装置においては、前記筐体は、当該筐体内の雰囲気ガスを外部に排出する排出口を有し、
この排出口に前記ファンが配置されており、このファンに対向するよう前記オゾン除去フィルタが配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の生体インプラント用洗浄処理装置によれば、洗浄処理の終了に応じてファンが駆動されることにより、生体インプラントが配置された筐体内の雰囲気ガスが、オゾン除去フィルタに導入され、これにより、当該雰囲気ガス中のオゾンが除去されるので、生体インプラントに対する洗浄処理が終了した後、筐体内の雰囲気ガス中に含まれるオゾンを迅速に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の生体インプラント用洗浄処理装置の一例における筐体内部の構成を示す説明用正面図である。
【図2】本発明の生体インプラント用洗浄処理装置の一例における筐体内部の構成を示す説明用側面図である。
【図3】本発明の生体インプラント用洗浄処理装置の一例におけるオゾン除去室の平面図である。
【図4】本発明の生体インプラント用洗浄処理装置の他の例における筐体内部の構成を示す説明用正面図である。
【図5】本発明の生体インプラント用洗浄処理装置の他の例における筐体内部の構成を示す説明用側面図である。
【図6】本発明の生体インプラント用洗浄処理装置の更に他の例における筐体内部の構成を示す説明用側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の生体インプラント用洗浄処理装置の一例における筐体内部の構成を示す説明用正面図、図2は、本発明の生体インプラント用洗浄処理装置の一例における筐体内部の構成を示す説明用側面図、図3は、本発明の生体インプラント用洗浄処理装置の一例におけるオゾン除去室の平面図である。
この生体インプラント用洗浄処理装置(以下、単に「洗浄処理装置」ともいう。)は、ピン状のデンタルインプラント(以下、単に「インプラント」ともいう。)1に紫外線を照射すると共にオゾンを接触させることによって当該インプラント1を洗浄処理するためのものである。図示の例では、インプラント1の各々は、その一端部に螺旋状に形成された突条3よりなる螺子部2を有するスクリュータイプのものである。
この洗浄処理装置においては、正面に開閉扉(図示省略)を有する全体の輪郭が直方体状の筐体10が設けられ、この筐体10の内部には、複数のインプラント1が配置される処理室11が形成されていると共に、この処理室11の上方に、当該処理室11内の雰囲気ガス中に含まれるオゾンを除去するオゾン除去室12が形成されており、処理室11およびオゾン除去室12は、互いに隔壁15によって区画されている。この隔壁15は、筐体10における正面側壁部10aおよび背面側壁部10bの各々に離間して配置されており、これにより、筐体10における正面側壁部10aと隔壁15との間には、処理室11からオゾン除去室12にガスが流入する流入口F1が形成され、筐体10における背面側壁部10bと隔壁15との間には、オゾン除去室12から処理室11にガスが流出する流出口F2が形成されている。
【0011】
筐体10の処理室11内には、複数のインプラント1が一方向(図1において紙面に垂直な方向、図2において左右方向)に沿って並ぶよう配置されて保持されるステージ20が設けられている。具体的には、ステージ20の表面21には、それぞれインプラント1の他端部の外径に適合する内径の凹所よりなる複数の保持部22が一方向に沿って並ぶよう形成されており、これらの保持部22の各々に、インプラント1がその螺子部2の先端が上方を向くよう垂立した姿勢で当該インプラント1の他端部が挿入されて保持されることにより、複数のインプラント1が一方向に沿って並ぶよう配置されている。
また、図示の例では、ステージ20の表面は例えば鏡面加工が施されることによって後述する紫外線放射ランプ30からの紫外線を反射する光反射面とされている。
また、ステージ20は、筐体10に対して着脱自在に設けられていてもよい。このような構成によれば、ステージ20を筐体10の外部に取り出すことが可能となるため、ステージ20に対するインプラント1の取り付け作業、取り外し作業または交換作業を容易に行うことができる。
【0012】
このステージ20に保持された複数のインプラント1からなるインプラント群1Gにおける当該インプラント1が並ぶ一方向に平行な両側には、2つの紫外線放射ランプ30が設けられている。具体的に説明すると、紫外線放射ランプ30の各々は、それぞれインプライト1が並ぶ一方向に伸びる2つの直線状部分32が湾曲部分33によって連結されてなるU字管状の発光管31を有し、2つの紫外線照射ランプ30は、それぞれ発光管31の2つの直線状部分32の各々が互いに上下に位置する姿勢で、インプラント1における螺子部2およびその周辺の空間領域を介して、互いに対向するよう配置されている。また、紫外線放電ランプ30の各々と筐体10の側壁部10c,10dとの間には、紫外線放射ランプ30からの紫外線を反射する、断面がコ字形の樋状の2つの反射鏡40が、その背面が筐体10の側壁部10c,10dに接した状態で当該紫外線放射ランプ30と対向するよう配置されている。
【0013】
図示の例では、筐体10、隔壁15およびステージ20の各々は、例えばステンレス等の金属によって構成されており、また、反射鏡40は例えばアルミニウム等の金属により構成されている。
【0014】
紫外線放射ランプ30としては、波長254nmおよび波長185nmの紫外線を放射する低圧水銀ランプを用いることができる。また、紫外線放射ランプ30からの紫外線の照度は、例えば発光管31の管壁から10mm離間した位置において約6mW/cm2 以上である。
紫外線放射ランプ30として用いられる低圧水銀ランプの一例の仕様を挙げると、発光管が合成石英ガラス製で、発光長が200mm、ランプ入力が25Wである。
【0015】
筐体10のオゾン除去室12内には、処理室11内の雰囲気ガスを当該オゾン除去室12を介して循環させるファン16が配置されていると共に、このファン16によって形成される循環風路上において、当該ファン16に対してその上流側および下流側の各々に、矩形の板状のオゾン除去フィルタ17が配置されている。オゾン除去フィルタ17の各々は、その4つの側面が筐体10の側壁部10c,10dおよび上壁部10e並びに隔壁15に接する状態でオゾン除去室12に圧入されることによって固定されており、これにより、2つのオゾン除去フィルタ17の間には閉鎖空間Sが形成されている。
このオゾン除去フィルタ17は、例えば無機繊維ペーパーにより形成されたハニカム構造体からなる基体に、例えばマンガン化合物よりなるオゾン除去用触媒が担持されてなるものである。
【0016】
このような洗浄処理装置においては、ステージ20の保持部22の各々に、インプラント1をその螺子部2の先端が上方を向くよう垂立した姿勢で保持させ、この状態で、紫外線放射ランプ30の各々を点灯させることにより、インプラント1における螺子部2を形成する突条3に対して、当該紫外線放射ランプ30からの紫外線が直接照射されると共に反射鏡40およびステージ20の表面の各々に反射されて照射される結果、当該突条3の表面全面に紫外線が照射され、更に、処理室11内の雰囲気ガス中の酸素に紫外線放射ランプ30からの紫外線が照射されることによって、当該処理室11内にはオゾンが生成されてインプラント1の螺子部2に接触する。このように、インプラント1の螺子部2を形成する突条3の表面全面すなわち突条3の上面3aおよび下面3bの両方にに紫外線が照射されると共に、当該螺子部2にオゾンが接触することにより、当該インプラント1の螺子部2に付着した有機物が分解除去され、これにより、インプラント1の洗浄処理が達成される。
一方、隔壁15および反射鏡40の各々は、紫外線放射ランプ30からの光が照射されることによって加熱されるが、隔壁15が金属よりなるために当該隔壁15に生じた熱がオゾン除去フィルタ17に伝達されると共に、反射鏡40および筐体10の各々が金属よりなるために当該反射鏡40に生じた熱が当該筐体10を介してオゾン除去フィルタ17に伝達され、これにより、当該オゾン除去フィルタ17が加熱される。
【0017】
そして、紫外線放射ランプ30が消灯することによってインプラント1の洗浄処理が終了し、当該洗浄処理の終了に応じてファン16が駆動されることにより、処理室11内の雰囲気ガスがオゾン除去室12内に配置されたオゾン除去フィルタ17を介して循環される結果、処理室11内に発生したオゾンが除去され、その後、処理室11内からインプラント1が取り出される。
【0018】
以上において、紫外線放射ランプ30からの紫外線の照射時間は、例えば5〜30分間である。
また、処理室11内における紫外線が照射されることによって生成されるオゾンの濃度は、100ppm以上であることが好ましく、より好ましくは200〜400ppmである。
また、ファン16は、インプラント1の洗浄処理の終了(図示の例では紫外線照射ランプ30の消灯)に応じて駆動されるが、ファン16が駆動されるタイミングは、インプラント1の洗浄処理の終了と同時であっても、インプラント1の洗浄処理が終了する前若しくは終了した後であってもよい。
また、ファン16の作動時間すなわちオゾンの除去処理時間は、オゾン除去フィルタ17のオゾン除去処理能を考慮して適宜設定されるが、例えば10〜300秒間である。
また、処理室11内におけるオゾンの除去処理が終了したときのオゾンの濃度は、0.1ppm以下であることが好ましい。
また、オゾン除去フィルタ17は、紫外線放射ランプ30からの光による熱が隔壁15並びに反射鏡40および筐体10を介して伝達されることによって加熱されるが、当該オゾン除去フィルタ17の温度は、例えば紫外線放射ランプ30の消灯時において50〜60℃である。
【0019】
上記の洗浄処理装置によれば、洗浄処理の終了に応じてファン16が駆動されることにより、インプラント1が配置された処理室11内の雰囲気ガスが、オゾン除去室12内におけるオゾン除去フィルタ17を介して循環され、これにより、当該雰囲気ガス中のオゾンが除去されるので、生体インプラント1に対する洗浄処理が終了した後、処理室11内の雰囲気ガス中に含まれるオゾンを迅速に除去することができる。
また、オゾン除去フィルタ17は、紫外線放射ランプ30からの光による熱が隔壁15並びに反射鏡40および筐体10を介して伝達されることによって加熱されるため、当該オゾン除去フィルタ17におけるオゾン除去用触媒の活性が高められる結果、高い効率でオゾンの除去処理を行うことができる。
また、ファン16によって形成される循環風路上において、当該ファン16に対してその上流側および下流側の両方に、オゾン除去フィルタ17が配置されており、これらの2つのオゾン除去フィルタ17に閉鎖空間Sが形成されているため、ファン16に高濃度のオゾンを含むガスが接触することを防止することができ、従って、ファン16の一部の部品がオゾンによって腐食しやすい材料例えば樹脂材料により構成されていても、当該部品のオゾンによる腐食を防止することができる。
【0020】
図4は、本発明の生体インプラント用洗浄処理装置の他の例における筐体内部の構成を示す説明用正面図であり、図5は、本発明の生体インプラント用洗浄処理装置の他の例における筐体内部の構成を示す説明用側面図である。
この洗浄処理装置においては、一面にステージ20が収容される開口が形成された、紫外線放射ランプ30からの紫外線を反射する矩形の筒状の反射鏡40が、その側面が筐体10の側壁部10c,10dに接し、その上面が隔壁15から離間した状態で、ステージ20、当該ステージ20に保持された複数のインプラント1からなるインプラント群G1、および紫外線放射ランプ30を取り囲むよう配置されている。その他の構成は、図1乃至図3に示す洗浄処理装置と同様である。
【0021】
このような洗浄処理装置においては、ステージ20の保持部22の各々に、インプラント1をその螺子部2の先端が上方を向くよう垂立した姿勢で保持させ、この状態で、紫外線放射ランプ30の各々を点灯させることにより、インプラント1における螺子部2を形成する突条3に対して、当該紫外線放射ランプ30からの紫外線が照射されると共に反射鏡40およびステージ20の表面の各々に反射されて照射される結果、当該突条3の表面全面に紫外線が照射され、更に、処理室11内の雰囲気ガス中の酸素に紫外線放射ランプ30からの紫外線が照射されることによって、当該処理室11内にはオゾンが生成されてインプラント1の螺子部2に接触する。このように、インプラント1の螺子部2を形成する突条3の表面全面すなわち突条3の上面3aおよび下面3bの両方に紫外線が照射されると共に、当該螺子部2にオゾンが接触することにより、当該インプラント1の螺子部2に付着した有機物が分解除去され、これにより、インプラント1の洗浄処理が達成される。
一方、反射鏡40は、紫外線放射ランプ30からの光が照射されることによって加熱されるが、反射鏡40および筐体10の各々が金属よりなるために当該反射鏡40に生じた熱が当該筐体10を介してオゾン除去フィルタ17に伝達され、これにより、当該オゾン除去フィルタ17が加熱される。
【0022】
そして、紫外線放射ランプ30が消灯することによってインプラント1の洗浄処理が終了し、当該洗浄処理の終了に応じてファン16が駆動されることにより、処理室11内の雰囲気ガスがオゾン除去室12内に配置されたオゾン除去フィルタ17を介して循環される結果、処理室11内に発生したオゾンが除去され、その後、処理室11内からインプラント1が取り出される。
【0023】
以上において、紫外線放射ランプ30からの紫外線の照射時間、処理室11内におけるオゾンの濃度、ファン16が駆動されるタイミング、ファン16の作動時間、処理室11内におけるオゾンの除去処理が終了したときのオゾンの濃度、オゾン除去フィルタ17の温度は、図1乃至図3に示す洗浄処理装置と同様である。
【0024】
上記の洗浄処理装置によれば、洗浄処理の終了に応じてファン16が駆動されることにより、インプラント1が配置された処理室11内の雰囲気ガスが、オゾン除去室12内におけるオゾン除去フィルタ17を介して循環され、これにより、当該雰囲気ガス中のオゾンが除去されるので、生体インプラント1に対する洗浄処理が終了した後、処理室11内の雰囲気ガス中に含まれるオゾンを迅速に除去することができる。
また、オゾン除去フィルタ17は、紫外線放射ランプ30からの光による熱が反射鏡40および筐体10を介して伝達されることによって加熱されるため、当該オゾン除去フィルタ17におけるオゾン除去用触媒の活性が高められる結果、高い効率でオゾンの除去処理を行うことができる。
また、ファン16によって形成される循環風路上において、当該ファン16に対してその上流側および下流側の両方に、オゾン除去フィルタ17が配置されており、これらの2つのオゾン除去フィルタ17に閉鎖空間Sが形成されているため、ファン16に高濃度のオゾンを含むガスが接触することを防止することができ、従って、ファン16の一部の部品がオゾンによって腐食しやすい材料例えば樹脂材料により構成されていても、当該部品のオゾンによる腐食を防止することができる。
【0025】
図6は、本発明の生体インプラント用洗浄処理装置の更に他の例における筐体内部の構成を示す説明用側面図である。
この洗浄処理装置においては、正面側壁部10aが開閉扉により構成された全体の輪郭が直方体状の金属よりなる筐体10が設けられ、この筐体10の内部には、図1に示す洗浄処理装置と同様の構成のステージ20が設けられている。
このステージ20に保持された複数のインプラント1からなるインプラント群1Gにおける当該インプラント1が並ぶ一方向に平行な両側には、図1に示す洗浄処理装置と同様の構成の2つの紫外線放射ランプ30が、それぞれ発光管31の2つの直線状部分32の各々が互いに上下に位置する姿勢で、インプラント1における螺子部2およびその周辺の空間領域を介して、互いに対向するよう配置されている。
【0026】
筐体10における背面側壁部10bには、筐体10内の雰囲気ガスを外部に排出する排出口Eが形成され、この排出口Eにファン16が配置されており、このファン16に対向するよう、図1に示す洗浄処理装置と同様の構成のオゾン除去フィルタ17が配置されている。具体的には、オゾン除去フィルタ17は、その4つの側面が筐体10の上壁部10e、下壁部10fおよび2つの側壁部の各々に接する状態で当該筐体10内に圧入されることによって固定されており、これにより、筐体10の正面側壁部10bとオゾン除去フィルタ17との間には閉鎖空間Sが形成されている。
【0027】
このような洗浄処理装置においては、ステージ20の保持部22の各々に、インプラント1をその螺子部2の先端が上方を向くよう垂立した姿勢で保持させ、この状態で、紫外線放射ランプ30の各々を点灯させることにより、インプラント1における螺子部2を形成する突条3に対して、当該紫外線放射ランプ30からの紫外線が照射され、更に、筐体10内の雰囲気ガス中の酸素に紫外線放射ランプ30からの紫外線が照射されることによって、当該筐体10内にはオゾンが生成されてインプラント1の螺子部2に接触する。このように、インプラント1の螺子部2を形成する突条3に紫外線が照射されると共に、当該螺子部2にオゾンが接触することにより、当該インプラント1の螺子部2に付着した有機物が分解除去され、これにより、インプラント1の洗浄処理が達成される。
一方、筐体10は、紫外線放射ランプ30からの光が照射されることによって加熱されるが、筐体10が金属よりなるために当該筐体10に生じた熱がオゾン除去フィルタ17に伝達されると共に、紫外線放射ランプ30からの光がオゾン除去フィルタ17に照射されることにより、当該オゾン除去フィルタ17が加熱される。
【0028】
そして、紫外線放射ランプ30が消灯することによってインプラント1の洗浄処理が終了し、当該洗浄処理の終了に応じてファン16が駆動されることにより、筐体10内の雰囲気ガスがオゾン除去フィルタ17に導入される結果、筐体10内に発生したオゾンが除去され、その後、筐体10内からインプラント1が取り出される。
【0029】
上記の洗浄処理装置によれば、洗浄処理の終了に応じてファン16が駆動されることにより、インプラント1が配置された筐体10内の雰囲気ガスが、オゾン除去フィルタ17に導入されることにより、当該雰囲気ガス中のオゾンが除去されるので、生体インプラント1に対する洗浄処理が終了した後、筐体10内の雰囲気ガス中に含まれるオゾンを迅速に除去することができる。
また、オゾン除去フィルタ17は、紫外線放射ランプ30からの光による熱が筐体10を介して伝達されると共に紫外線放射ランプ30からの光が照射されることによって加熱されるため、当該オゾン除去フィルタ17におけるオゾン除去用触媒の活性が高められる結果、高い効率でオゾンの除去処理を行うことができる。
また、ファン16が設けられた筐体10の背面側壁部10bとオゾン除去フィルタ17との間には閉鎖空間Sが形成されているため、ファン16に高濃度のオゾンを含むガスが接触することを防止することができ、従って、ファン16の一部の部品がオゾンによって腐食しやすい材料例えば樹脂材料により構成されていても、当該部品のオゾンによる腐食を防止することができる。
【0030】
以上、本発明の洗浄処理装置の実施の形態について説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、紫外線放射ランプ30としては、空気中の酸素からオゾンを生成し得る紫外線を放射するものであれば、低圧水銀ランプに限られず、例えばキセノンガス等が封入されたエキシマランプなどを用いることができる。
また、紫外線放射ランプ30および反射鏡40の形態および配置位置は、図1乃至図5に示すものに限られず、適宜設計することができ、例えば紫外線放射ランプ30の発光管31の形状は、直管状のものであっても全体が直方体状のものであってもよい。
また、上記の実施の形態に係る洗浄処理装置においては、筐体10、隔壁15および反射鏡40の各々が金属よりなるものであり、紫外線放射ランプ30からの光による熱は、図1乃至図3に示す洗浄処理装置においては筐体10、隔壁15および反射鏡40を介してオゾン除去フィルタ17に伝達され、図4および図5に示す洗浄処理装置においては筐体10および反射鏡40を介してオゾン除去フィルタ17に伝達されるが、筐体10、隔壁15および反射鏡40のいずれか一つによって伝達されてもよく、この場合には、筐体10、隔壁15および反射鏡40のうち、オゾン除去フィルタ17に対する熱伝達に寄与するもののみが金属により構成されていればよく、その他のものは、金属以外の適宜の材料によって構成されていてもよい。
また、ステージ20が、紫外線放射ランプ30からの光が照射されることによって加熱され、当該ステージ20に生じた熱が筐体10を介してオゾン除去フィルタ17に伝達される構成であってもよい。
また、紫外線放射ランプ30からの直接光のみによって、インプラント1に対する所要の紫外線照射が達成されれば、反射鏡40は不要である。
また、上記の実施の形態に係る洗浄処理装置はいずれも、処理対象物であるインプラント1を洗浄処理するためオゾンが、紫外線放射ランプ30からの紫外線によって生成されるものであるが、紫外線放射ランプ30とは別個に例えば高周波や高電圧による放電を利用したオゾン発生機が設けられ、当該オゾン発生機から発生したオゾンを、インプラント1に接触させる構成であってもよい。
また、本発明の洗浄処理装置の処理対象物はデンタルインプラントに限られず、大腿骨インプラントなどの他の生体インプラントであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 インプラント
1G インプラント群
2 螺子部
3 突条
3a 上面
3b 下面
10 筐体
10a 正面側壁部
10b 背面側壁部
10c,10d 側壁部
10e 上壁部
10f 下壁部
11 処理室
12 オゾン除去室
15 隔壁
16 ファン
17 オゾン除去フィルタ
20 ステージ
21 表面
22 保持部
30 紫外線放射ランプ
31 発光管
32 直線状部分
33 湾曲部分
40 反射鏡
41 平面ミラー
E 排出口
F1 流入口
F2 流出口
S 閉鎖空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体インプラントの表面に紫外線を照射すると共にオゾンを接触させることによって、当該生体インプラントを洗浄処理する生体インプラント用洗浄処理装置であって、
筐体と、
この筐体内に配置された、生体インプラントに紫外線を照射する紫外線放射ランプと、 前記筐体内に配置されたオゾン除去フィルタと、
前記筐体内の雰囲気ガスを前記オゾン除去フィルタに導入するファンと
を備えてなり、
前記ファンは、前記生体インプラントの洗浄処理の終了に応じて駆動されることを特徴とする生体インプラント用洗浄処理装置。
【請求項2】
前記筐体は、生体インプラントを洗浄処理する処理室およびこの処理室内のオゾンを除去するためのオゾン除去室を有し、
前記紫外線放射ランプは、前記処理室内に配置され、
前記ファンは、前記オゾン除去室内に配置され、
前記オゾン除去フィルタは、前記オゾン処理室内において前記ファンによって形成される風路上に配置されており、
前記ファンが駆動されることによって、前記処理室内の雰囲気ガスが前記オゾン処理室を介して循環されることを特徴とする請求項1に記載の生体インプラント用洗浄処理装置。
【請求項3】
前記処理室および前記オゾン除去室を区画する隔壁を有し、前記筐体および前記隔壁の少なくとも一つが金属よりなり、前記紫外線放射ランプからの光による熱が、前記金属よりなる筐体または隔壁を介して前記オゾン除去フィルタに伝達されることを特徴とする請求項2に記載の生体インプラント用洗浄処理装置。
【請求項4】
前記処理室内に、前記紫外線放射ランプからの光を反射する金属よりなる反射鏡が配置されており、当該紫外線放射ランプからの光による熱が、当該反射鏡を介して前記オゾン除去フィルタに伝達されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の生体インプラント用洗浄処理装置。
【請求項5】
前記ファンによって形成される風路上において、当該ファンに対してその上流側および下流側の両方に前記オゾン除去フィルタが配置されており、これらのオゾン除去フィルタの間に閉鎖空間が形成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載のデンタルインプラント用光照射装置。
【請求項6】
前記筐体は、当該筐体内の雰囲気ガスを外部に排出する排出口を有し、
この排出口に前記ファンが配置されており、このファンに対向するよう前記オゾン除去フィルタが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の生体インプラント用洗浄処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−75549(P2012−75549A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221828(P2010−221828)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】