説明

生体データ測定用のストリップ及び生体データ測定方法

本発明は、生体データの測定に用いられる測定用のストリップを提供する。このストリップは、少なくとも1つ以上の血液注入部を有する上部カバーと、少なくとも1つ以上の被判読領域を有する下部支持台と、注入された血液から赤血球分離及び低密度リポ蛋白(LDL)コレステロール分離のうち少なくとも1つを行う血液濾過層と、赤血球及びLDLコレステロールのうち少なくとも1つが除去された血液と化学的反応を行う反応層と、血液濾過層によって濾過された血液の拡散性を均一にするために、濾過層と反応層との間に挿入される親水化層と、を含み、血液濾過層、親水化層、及び反応層が、下部支持台と上部カバーとの間に垂直に配列される。これは、反応層に赤血球浸透防止及び血液の拡散性を向上させて、測定値の誤差を減らすことで再現性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様による技術分野は、生体データ測定に係り、より詳細には、血液を用いて生体データを測定するための生体データ測定用のストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
血液、血しょうまたは血液内の総コレステロール量は、冠状動脈硬化症の危険性を表わす指標の1つと知られている。しかし、最近、臨床研究によって、低密度リポ蛋白(LDL)コレステロールの濃度と冠状動脈硬化症との間の正の相関関係があるということが知られており、総コレステロール量よりは、低密度リポ蛋白(LDL)コレステロールの濃度を測定することが、さらに有用であると評価されている。
【0003】
低密度リポ蛋白(LDL)コレステロールを測定するために、反応試薬が含まれた測定用のストリップを利用する方法がある。ほとんどの測定用のストリップは、試薬が含まれた複数個のパッドが、上部カバーと下部支持台との間にスタック構造からなっており、垂直流れ構造を有し、血液濾過層及び発色メンブレンを含む。この場合、上下層間の接触面の均一さに偏差があり、血液がパッドに到逹して広がる程度にも偏差があるので、測定誤差が発生する可能性が高くなる。したがって、同じ血液で測定を行うとしても、再現性を確保することができない問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、血液の拡散性を向上させるために、ストリップの中間部に親水化層を挟持させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による測定用のストリップは、少なくとも1つ以上の血液注入部を有する上部カバーと、少なくとも1つ以上の被判読領域を有する下部支持台と、注入された血液から赤血球分離及び低密度リポ蛋白(LDL)コレステロール分離のうち少なくとも1つを行う血液濾過層と、赤血球及びLDLコレステロールのうち少なくとも1つが除去された血液と化学的反応を行う反応層と、前記血液濾過層によって濾過された血液の拡散性を均一にするために、前記濾過層と反応層との間に挿入される親水化層と、を含む。ここで、前記血液濾過層、前記親水化層、及び前記反応層が、前記下部支持台と上部カバーとの間に垂直に配列されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明による親水化層が導入された測定用のストリップは、反応層に赤血球浸透防止及び血液の拡散性を向上させて測定値の誤差を減らすことで再現性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】生体データ測定装置及び測定用のストリップの概観図である。
【図2】本発明の一実施例による測定用のストリップの分解斜視図である。
【図3】既存のストリップの同じ条件下の反射度測定グラフである。
【図4】本発明の一実施例に測定用のストリップの同じ条件下の反射度測定グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付された図面を参照して記述される望ましい実施例を通じて、本発明を当業者が容易に理解し、再現できるように詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施例による生体データ測定装置及び測定用のストリップの概観図である。図1を参照すると、示された測定用のストリップ300は、血液の中性脂肪やコレステロールの量などの生体データを測定しうる複数個の反応部を含む領域331−1、331−2、331−3を含んでいる。反応部を含む領域331−1、331−2、331−3は、位置によって測定するデータが異なる。測定用のストリップ300の上部には、ストリップ挿入領域130の溝と噛み合い、挿入後に固定を容易にするために、突起を含んでいる。生体データ測定装置100は、電源ボタン、ストリップ挿入領域130、表示部180を含む。ストリップ挿入領域130の縁部は、内側に溝が形成されている構造からなっていて、測定用のストリップの挿入及び固定が容易である。また、ストリップ挿入領域130は、中央部に互いに離隔して配されている複数個の感知部を含む。複数個の感知部110は、測定用のストリップ300上の反応部を含む領域331−1、331−2、331−3と一対一に対応し、測定の類型によって、全部または一部が活性化されて、測定用のストリップの反応部を含む領域331−1、331−2、331−3を感知する。ここで、測定用のストリップ300上の反応部を含む領域331−1、331−2、331−3は、いずれも反応部を含み、何れか1つの領域のみが反応部を含み、何れか2つの領域のみが反応部を含みうる。このように、生体データ測定の類型によって反応部を含む領域が異なりうる。また、前記反応部は、生体データを測定するために、当該分析物(analyte)と生化学的反応または化学的反応を起こす反応試薬(reagent)を含む。前記のように、生体データ測定の類型をストリップの被判読または被感知領域内に化学的反応部の含み如何によって決定することによって、測定の類型を決定するために、別途のバーコードのような識別コードが不要となる。
【0010】
図2は、本発明の一実施例による測定用のストリップの分解斜視図である。図2を参照すると、本発明の一実施例による測定用のストリップ200は、複数個の血液注入部211を有する上部カバー210、下部支持台220と中間部とに分けられ、中間部は、複数個の層で構成され、これらは、上部カバー210、及び下部支持台220の間に垂直に配列される。
【0011】
上部カバー210は、ユーザが血液を注入できるように1つ以上の血液注入部211を含み、これは、測定の類型によって異なる位置に配列される。一実施例によって、低密度リポ蛋白(LDL)コレステロールの測定のために、上部カバー210は、3つの血液注入部211を有する。例えば、中性脂肪を測定するためには、1つの血液注入部のみを有する。
【0012】
下部支持台220は、測定装置100の挿入領域130上の感知部110の位置に対応して、被判読領域221を有する。測定装置100は、被判読領域221を通じて生体データの測定を行う。前記被判読領域221は、反応部260での反応結果を測定するための開放口になっている。前記被判読領域は、生体データ測定の類型によって、いずれも開放されているか、何れか2個のみ開放されているか、あるいは1つのみ開放されている。前記開放されている被判読領域を通じて、反応部260での反応結果を測定することができる。
【0013】
中間部は、複数個の層で構成され、血液拡散層230、血液濾過層、親水化層250、及び反応層260を含む。ここで、血液濾過層は、赤血球及び低密度リポ蛋白(LDL)コレステロールを同時に濾過する赤血球及びLDLコレステロール濾過層240または赤血球のみを濾過する赤血球濾過層245に区分される。例えば、高密度リポ蛋白コレステロール(HDL)を測定する二番目の血液注入部の下には、赤血球及び低密度リポ蛋白(LDL)コレステロール濾過層240が存在し、中性脂肪を測定するための血液注入部の下では、赤血球濾過層245が存在する。また、総コレステロール(total cholesterol)を測定するための血液注入部の下でも、同様に赤血球濾過層245が存在する。
【0014】
血液拡散層230は、ポリエステルで作られた多孔質性膜(Mesh)、綿織物のような織造物またはガーゼなどで構成される。血液拡散層230は、注入された血液を迅速かつ均一に拡散させる役割を果たす。
【0015】
赤血球及び低密度リポ蛋白(LDL)コレステロール濾過層240は、ガラス繊維で構成されたパッドに赤血球を凝集させる凝集剤及び低密度リポ蛋白(LDL)コレステロールを沈澱させる沈澱剤を含む。ガラス繊維で構成されたパッドは、0.5ないし2ミクロンの口径を有し、厚さは、約0.37mm、望ましくは、0.25〜0.40mmである。凝集剤及び沈澱剤は、パッド全体にわたって均一に分布され、含浸または固定された形で存在する。凝集剤は、レクチン(Lectin)、陽イオン高分子またはサッカライド(saccharide)で構成されており、レクチンの一例として代表的なのは、PHA(phytohemagglutinin)、コンカナバリンA、PWM(pokeweed mitogen)、及び麦芽中の凝集素などがある。陽イオン高分子の場合、poly(diallyldimethylammonium chloride)があり、サッカライドの場合、単糖類、二糖類または多糖類のうち1つ以上を含む。一例として、ソルビトール、砂糖、オリゴ糖などがある。沈澱剤は、その濃度によって、血液内の低密度リポ蛋白(LDL)コレステロールを選択的に沈殿する機能を行い、スルホン化された多糖類、ヘパリン、リンタングステン酸(PTA)、及び硫酸デキストランのうち1つを含むか、これらのうち1つに2属陽イオンを含む。
【0016】
赤血球濾過層245は、ガラス繊維で構成されたパッドに赤血球を凝集させる凝集剤を含む。前述したように、凝集剤は、レクチン、陽イオン高分子またはサッカライドで構成されている。レクチンの一例として代表的なのでは、PHA、コンカナバリンA、PWM、及び麦芽中の凝集素などがある。陽イオン高分子の場合、一例として、poly( diallyldimethylammonium chloride)があり、サッカライドの場合、単糖類、二糖類または多糖類のうち1つ以上を含む。血液拡散層230を通過した血液がパッドに注入されれば、凝集剤によって血液内の赤血球は凝集反応が起こり、凝集された赤血球は、反応層に透過され得ない。
【0017】
親水化層250は、具体的に、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、またはポリエチレングリコール(PEG)のようなポリマーがコーティング処理されるか、末端基(terminal group)または官能基(functional group)として酸素または水酸化基(OH)が導入されて処理される多孔性の層であり得る。この親水化層250は、血液濾過層と反応層260との間に存在し、血液濾過層で濾過されていない赤血球の反応層260への侵透を塞ぎ、濾過層によって分離された血液の拡散性を向上させる役割を果たす。
【0018】
本発明の一実施例によって、親水化層250は、親水化処理された多孔質性の膜(mesh)であり得る。多孔質性の膜は、口径はlum〜500umであり、厚さはlum以下であり、ポリエステル材で構成することができる。多孔質性の膜(mesh)は、前述したポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、またはポリエチレングリコール(PEG)のうち何れか1つをコーティングすることで親水化処理されるか、末端基または官能基として酸素または水酸化基(OH)が導入されて親水化処理となる。
【0019】
本発明のまた他の実施例によって、親水化層250は、反応層260または血液濾過層上にゲル、パウダーまたはフィルム状に塗布されうる。ゲル状に塗布する場合には、反応層260または血液濾過層のうち1つ以上に物理的な力で塗布するか、パッドにプリントする方式で挟持させることができる。パウダー状に塗布する場合、マイクロサイズの親水化層の粒子を反応層260または血液濾過層に振り掛けて人為的に表面を荒くする方式である。これは、濾過層によって分離された血液が均一に吸収されるように助ける。フィルム形態は、多孔質性の膜のような方式で2つの膜の間に親水化処理されたフィルムを挿入する方式である。
【0020】
反応層260は、生体データを得るために、前記赤血球及び低密度リポ蛋白(LDL)コレステロールが分離された血液と反応を行う。反応層は、反応を起こすことができる試薬を含み、この試薬は、パッドに含浸または固定された状態で存在する。一実施例によれば、高密度リポ蛋白コレステロール(HDL)を測定する場合、コレステロールがコレステロールエステラーゼと反応して遊離コレステロールと脂肪酸とに分解された後、コレステロールオキシダーゼ、遊離コレステロール、酸素反応で生じた過酸化水素にペルオキシダーゼと発色試薬とが反応して青色が表われる反応を用いてコレステロールを定量する。
【0021】
図3は、既存のストリップの同じ条件下の反射度測定グラフであり、図4は、本発明の一実施例による測定用のストリップの同じ条件下の反射度測定グラフである。
【0022】
図3及び図4は、5回にわたって同じ血液をストリップに注入し、経時的な反射度(k/s)を説明したものである。図3と対照して時、図4のグラフのパターンは、安定的に収斂する態様を帯びる。90秒を測定時点にした時、図3は、平均反応値が29.7、変異係数は4.3%であり、図4は、平均反応値が27.2、変異係数は2.6%である。変異係数が少ないほど同じ試料に対して再現性が良いということを意味するので、本発明は、既存のストリップに比べて再現性が向上したということが分かる。
【0023】
本発明は、添付された図面を参照して望ましい実施例を中心に記述されたが、当業者ならば、このような記載から本発明の範ちゅうを外れずに、多様で自明な変形が可能であるということは明白である。したがって、このような多くの変形例を含むように記述された特許請求の範囲によって解析しなければならない。
【0024】
一方、前述されていないが、親水化処理過程を含んで血液の拡散性を良好にさせて、生体データを優れているように測定する生体データ測定方法も、同様に前述した説明から導出されうることが自明である。この方法は、血液注入領域に血液を注入する段階と、前記注入された血液から赤血球分離及び低密度リポ蛋白(LDL)コレステロール分離のうち少なくとも1つを行う段階と、前記血液濾過段階によって濾過された血液の拡散性を均一にするために、前記濾過された血液を親水化処理された層を通じて広げる段階と、生体データを得るために、赤血球及びLDLコレステロールのうち少なくとも1つが除去された血液と化学的反応を行う段階と、を含む。
【0025】
例えば、測定しようとする生体データが高密度リポ蛋白(HDL)コレステロールである場合には、前記注入された血液から赤血球分離及び低密度リポ蛋白(LDL)コレステロール分離のうち少なくとも1つを行う段階は、赤血球分離及びLDLコレステロール分離を同時に行う段階になる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、生体データを測定する分野で使われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体データの測定に用いられる生体データ測定用のストリップであって、
少なくとも1つ以上の血液注入部を有する上部カバーと、
少なくとも1つ以上の被判読領域を有する下部支持台と、
注入された血液から赤血球分離及び低密度リポ蛋白(LDL)コレステロール分離のうち少なくとも1つを行う血液濾過層と、
生体データを得るために、赤血球及びLDLコレステロールのうち少なくとも1つが除去された血液と化学的反応を行う反応層と、
前記血液濾過層によって濾過された血液の拡散性を均一にするために、前記濾過層と反応層との間に挿入される親水化層と、を含み、
前記血液濾過層、前記親水化層、及び前記反応層が、前記上部カバーと下部支持台との間に垂直に配列される生体データ測定用のストリップ。
【請求項2】
前記親水化層は、親水化処理された多孔質性の膜(mesh)である請求項1に記載の生体データ測定用のストリップ。
【請求項3】
前記多孔質性の膜は、口径が1um〜500umである請求項2に記載の生体データ測定用のストリップ。
【請求項4】
前記親水化層は、前記反応層と血液濾過層とのうち少なくとも1つに塗布される請求項1に記載の生体データ測定用のストリップ。
【請求項5】
前記親水化層は、ゲル、パウダーまたはフィルム状に反応層上に塗布される請求項4に記載の生体データ測定用のストリップ。
【請求項6】
前記親水化層は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、またはポリエチレングリコール(PEG)のうち何れか1つによってコーティング処理された多孔質性の膜である請求項1に記載の生体データ測定用のストリップ。
【請求項7】
前記親水化層は、官能基または末端基として酸素または水酸化基が導入されて親水化処理された多孔質性の膜である請求項1に記載の生体データ測定用のストリップ。
【請求項8】
前記被判読領域は、開放領域(opening region)である請求項1に記載の生体データ測定用のストリップ。
【請求項9】
測定しようとする生体データは、高密度リポ蛋白(HDL)コレステロールであり、
前記血液濾過層は、赤血球分離及びLDLコレステロール分離を同時に行う層である請求項1に記載の生体データ測定用のストリップ。
【請求項10】
生体データを測定する生体データ測定方法であって、
(a)血液注入領域に血液を注入する段階と、
(b)前記注入された血液から赤血球分離及び低密度リポ蛋白(LDL)コレステロール分離のうち少なくとも1つを行う段階と、
(c)前記血液濾過段階によって濾過された血液の拡散性を均一にするために、前記濾過された血液を親水化処理された層を通じて広げる段階と、
(d)生体データを得るために、前記親水化処理された層を通過した血液と化学的反応を行わせる段階と、を含む生体データ測定方法。
【請求項11】
測定しようとする生体データは、高密度リポ蛋白(HDL)コレステロールであり、
前記(c)段階は、赤血球分離及びLDLコレステロール分離を同時に行う段階である請求項10に記載の生体データ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−529039(P2012−529039A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513856(P2012−513856)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002598
【国際公開番号】WO2010/140771
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(509328113)インフォピア カンパニー,リミテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】INFOPIA CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】891,Hogye−dong,Dongan−gu,Anyang−si,Gyeonggi−do,431−080 Republic of Korea
【Fターム(参考)】