説明

生体光計測装置、及び生体光計測装置用プローブ

【課題】人間の脳の活動状態を計測する近赤外線脳機能イメージング装置等において、計測用プローブを被験者に装着したときに、被験者の苦痛又は違和感を軽減させる。
【解決手段】被験者の頭部に対して近赤外線を照射し、当該近赤外線の戻り光を検出することで、被験者の生体活動状態を計測する近赤外線脳機能イメージング装置100において、被験者の頭部に接触する端部が近赤外線を透過する弾性体で形成されたプローブ104、106、を備えるものであり、プローブの形状が被験者の頭部に合わせて変形を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて被検査体の状態を計測する生体光計測装置、及び生体光計測装置用プローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人間の生体活動を計測するための様々な装置が提案されている。そのような装置のうちの一つに、近赤外線を利用して人間の脳の活動状態を計測する近赤外線脳機能イメージング装置(以下、NIRS脳計測装置とする)がある。
【0003】
このNIRS脳計測装置が照射する近赤外線光は、波長が700mm〜900mm程度の光とし、頭皮や頭蓋を容易に透過して、頭蓋内部を伝播するという性質を有する。
【0004】
当該性質により、NIRS脳計測装置は、脳機能イメージング分野における脳機能測定、学習、リハビリテーションの効果測定に関する脳機能モニタリングなどに用いることができる。
【0005】
従来のNIRS脳計測装置では、光源および光検出器と光ファイバを介して接続されたプローブの先端を、ファイバ光軸方向に圧力をかけて頭部に密着させる必要がある。
【0006】
プローブを頭部に密着させる技術としては、特許文献1に記載された技術がある。この特許文献1に記載された技術では、各プローブ内に支持機構としてコイルバネを内蔵している。これにより、各プローブが脳に密着した状態となり、計測精度を向上させている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−247253号公報
【0008】
しかしながら、特許文献1を含む従来技術では、各プローブの可動先端部が頭部に食い込み、被験者に苦痛を与える原因となる。
【0009】
例えば、オフィス環境で、被験者の脳の活動状態を計測して、当該オフィス環境の快適度を計測しようとした場合、プローブを被験者に固定した状態で長時間する必要があるが、この苦痛のために長時間計測することが困難となる。また、短時間計測の場合でも、プローブが圧力によって密着されることで生じる不快感のため、被験者の脳機能活動が影響を受け、計測精度が低下する可能性もある。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、被験者の装着時の違和感や不快感を低減させる生体光計測装置、及び生体光計測装置用プローブを提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる生体光計測装置は、被検査体に対して所定の波長の光を照射し、当該所定の波長の光の戻り光を検出することで、当該被検査体の生体活動状態を計測する生体光計測装置において、被検査体に接触する端部が前記所定の波長の光を透過する弾性体で形成された、前記所定の波長の光を伝送する導光部、を備える。
【0012】
また、本発明にかかる生体光計測装置用プローブは、被検査体に対して所定の波長の光を照射し、当該所定の波長の光の戻り光を検出することで、当該被検査体の生体活動状態を計測する生体光計測装置で使用されるプローブにおいて、被検査体に接触する端部が前記所定の波長の光を透過する弾性体で形成された、前記所定の波長の光を伝送する導光部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、導光部を弾性体としたことで、被検査体に接触している端部による違和感や不快感を低減させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる生体計測装置、及び生体光計測装置用プローブを適用した近赤外線脳機能イメージング装置(以下、NIRS(Near infrared spectroscopy)脳計測装置とする)の最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
以下に示す実施の形態は、近赤外線脳機能イメージング装置に適用した例について説明するが、後述する実施の形態は、生体光計測装置を、NIRS脳計測装置に制限するものではなく、密着した被検査体に対して照射した光で、被検査体の状態を計測する装置であれば適用できるものとする。また、後述する実施の形態では、被検査体を、被験者の頭部とするが、被検査体を制限するものではない。
【0016】
また、後述する実施の形態では、照射する光として近赤外線(波長:700〜900μm)を用いる。近赤外線は、皮膚や骨などの生体組織を透過して、血液中の酸素化したヘモグロビンや還元ヘモグロビンに吸収される性質を有している。そこで、NIRS脳計測装置が、この近赤外線を被験者の頭部に照射することで、被験者の脳機能の活動状態を計測することができる。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかるNIRS脳計測装置100の構成を示すブロック図である。本図に示すようにNIRS脳計測装置100は、光源装置101と、受光装置102と、光ファイバ103A及び103Bと、プローブ104及び106と、プローブ保持部材105と、で構成され、被験者の脳機能の活動状態を計測する。
【0018】
光源装置101は、LD(Laser Diode)111を備える。LD111は、近赤外線を発振する。
【0019】
光ファイバ103Aは、光源装置101からの近赤外線を、プローブ104に伝送する。光ファイバ103Bは、後述するプローブ106からの近赤外線を、受光装置102に伝送する。
【0020】
受光装置102は、PD(Photo Diode)121と、アンプ122と、演算表示部123とを備える。
【0021】
PD(Photo Diode)121は、光ファイバ103Bから伝送されてきた近赤外線を受光し、電気信号に変換する。アンプ122は、電気信号の復調処理を行う。演算表示部123は、復調処理された電気信号から、どの照射点から照射された光か特定した後、各照射点に対応した検出光の強度に基づいて、ヘモグロビン濃度変化を算出し、脳機能の活動状態を示すとトポグラフィ画像の生成、表示を行う。
【0022】
プローブ保持部材105は、後述するプローブ104及び106を、頭皮上の予め定められた位置に固定する。なお、プローブ保持部材105の材質として、どのような材質を用いても良い。
【0023】
プローブ104及び106は、照射検出装置を意味する。プローブ104は、光ファイバ103Aから伝送された近赤外線を被検査体に照射する。プローブ106は、被験者の頭部から反射してきた近赤外線の戻り光を検出し、検出した近赤外線を光ファイバ103Bに伝送する。
【0024】
図2は、プローブ104の全体形状を示した図である。図2に示すように、プローブ104は、コア部201と、クラッド部202と、固定部203とを備えている。このコア部201と、クラッド部202とをあわせて、近赤外線を伝送する導光部とする。
【0025】
コア部201及びクラッド部202ともに近赤外線を透過する。そして、クラッド部202は、コア部201の近赤外線を伝送する部位を除く周部を包囲している。このように、本実施の形態における導光部は、(コア部201及びクラッド部202の)複数の層からなる導波構造とした。
【0026】
また、固定部203は、プローブ保持部材105にプローブ104を固定するための部材とする。なお、プローブ106は、プローブ104と同様の構成を備えているので、説明を省略する。
【0027】
コア部201及びクラッド部202は、近赤外線光を透過する弾性体とする。近赤外線を透過する弾性体の例としては、透明な弾性体などが考えられる。そして、コア部201には、クラッド部202より屈折率が高い弾性体を用いる。これにより、全反射の場合、近赤外線を、コア部201だけで伝送させることが可能となる。
【0028】
図3は、必要な受光角θmaxと、コア部201及びクラッド部202の屈折率との関係を示した図である。受光角θmaxは、必要な近赤外線光を集めるために、設計により定められた最大受光角とする。図3に示す角度をθcmaxは、受光角θmaxでコア部201に入射した後の角度とする。つまり、入射した近赤外線光301における角度θ2がθcmaxより大きい場合、クラッド部202で反射できずに損失となり、入射した近赤外線光302における角度θ1がθcmaxより小さい場合、クラッド部202で反射し、伝搬光として受信装置102に伝送される。
【0029】
そして、受光角θmax以内の角度で適切に伝送させるためには、以下の式(1)を満たせばよい。なお、コア部201の屈折率をn1と、クラッド部202の屈折率をn2とする。
2θmax=2sin-1(n1・sinθcmax)≦2sin(n1√(2Δ))……(1)
また、Δは、(n12―n22)/2n12)とする。式(1)を満たすように、コア部201の屈折率をn1と、クラッド部202の屈折率をn2とを設定することで、必要な近赤外線を集めることが可能となる。
【0030】
また、図3では近赤外線の受光角について説明したが、近赤外線の発散角(進行方向に対し、発散により変化した角度)についても同様のことが言えるものとして、説明を省略する。
【0031】
そして、式(1)を満たすように発散角又は受光角と、コア部201及びクラッド部202の屈折率を設定する。例えば、近赤外線の発散角又は受光角を±20度とした場合、コア部201の屈折率が1.5であれば、クラッド部202の屈折率を1.45とし、コア部201の屈折率が1.55であれば、クラッド部202の屈折率を1.5とすればよい。
【0032】
また、コア部201及びクラッド部202の透過率は、高い方が望ましいが、これらコア部201及びクラッド部202の長さを考慮した上で適切な値であればよい。例えば、コア部201及びクラッド部202で伝送される近赤外線が、50パーセント以上透過するように、コア部201及びクラッド部202の透過率、及びコア部201及びクラッド部202の長さを設定する。
【0033】
また、本実施の形態にかかるプローブ104及びプローブ106にかかる、コア部201を形成する弾性体には、クラッド部202を形成する弾性体より硬い部材を用いる。仮に、コア部201を形成する弾性体の部材を、クラッド部202を形成する弾性体より柔らかい部材を用いた場合、被験者の頭髪などでコア部201にへこみ等が生じ、検査対象の部位にコア部201が接触を図れない可能性がある。この場合、検査対象の表面部位に伝送される近赤外線が減少し、計測精度が低下する。これに対し、コア部201を形成する弾性体に、クラッド部202を形成する弾性体より弾性力が高い(硬い)部材を用いた場合、被験者の頭髪等が有った場合でも、確実に被験者の頭皮(検査対象の表面部位)に接触することが可能となる。
【0034】
このように、近赤外線を伝送するコア部201が、被験者の検査対象の表面部位に対して確実に接触することで、当該表面部位に近赤外線を確実に伝送することが可能となり、計測精度を向上させることができる。
【0035】
本実施の形態にかかるコア部201及びクラッド部202の二種類の弾性部材として、屈折率及び硬さが異なるフッ素系ポリマーゲルを用いている。また、弾性部材は、透明なゲルであれば良く、ゲルとしてはアクリルポリマーゲル、その他の柔軟性を供えたゲルを用いても良い。
【0036】
各ゲルで構成された弾性体(コア部201と及びクラッド部202)は屈折率差により光を伝送する機能を有する導光部として機能する。これにより、光源装置101から照射された近赤外線を被験者の頭部に導き、頭部からの散乱反射光を受光装置102へ伝送する機能を果たすことができる。
【0037】
このような本実施の形態にかかるコア部201及びクラッド部202(導光部)の変形性により、各プローブ(104及び106)に対して圧力をほとんどかけることなく、被験者の頭部表面とプローブの(104及び106)光学的結合を図ることができる。これにより、計測精度を向上させることが可能となる。
【0038】
図1に戻り、プローブの導光部の突き出し長さLは、例えば、プローブの直径をφとした場合、1/3〜2φ程度とする。また、突き出し長さLは、この長さに制限するものではなく、被験者の頭部形状に合わせて変形するために適切な長さを確保されていればよい。
【0039】
図4は、被験者に対して、プローブ104及び106を固定した状態を示した概要図である。図4に示すように、プローブ104及び106の導光部は、弾性体で形成されているため、被験者の計測対象の部位(例えば、頭部)の形状に合わせて変形する。これにより、プローブ装着時における被験者の違和感や痛みを軽減させることができる。
【0040】
プローブ104及び106のクラッド部202の表面は、プローブ保持部材105に対して滑るように構成されている。例えば、プローブ保持部材105に穿孔されたプローブ104及び106用の穴が、プローブ104及び106の直径に対し、若干間隙のある穴とする。これにより、プローブ104及び106の導光部(コア部201及びクラッド部202)がプローブ保持部材105と関係なく変形することができるので、計測時における、プローブ104及び106による、被験者の違和感及び苦痛をさらに軽減させることができる。
【0041】
上述したように、本実施の形態にかかるNIRS脳計測装置100は、プローブ104及びプローブ106のコア部201及びクラッド部202が弾性体で形成されているため、プローブ104及びプローブ106の先端部分が、被験者の頭部に食い込むことなどが無くなり、被験者の違和感や痛みを減少させることが可能となる。被験者の違和感や痛みなどによる影響で、脳機能測定結果にノイズが入ることを防ぐことができる。これにより、長時間の測定が問題なく行えるとともに、プローブ104及び106の装着による、被験者の脳機能に対する影響が減少し、計測精度が向上する。
【0042】
また、NIRS脳計測装置100では、プローブ104及び106の導光部において、コア部201とクラッド部202との2層構造で形成した。そして、コア部201の硬さH(core)と、クラッド部202の硬さH(clad)との間で、H(core)>H(clad)の関係が成り立つ。このように、クラッド部202の弾性体がより柔軟に変形することでコア部201の弾性体が頭部に確実に密着する効果が得られ、近赤外光の照射、受光がより確実に行われることになり、測定の信号雑音比を向上させることができる。
【0043】
コア部201の硬さH(core)、及びクラッド部202の硬さH(clad)は、それぞれ一に不快感を与えない程度の硬さとする。この不快感を与えない程度の硬さとしては、弾性係数の値として0.05MPa〜0.5MPaの範囲とする。この弾性係数としてより好ましい値としては、0.2MPa〜0.45MPaの範囲である。本実施の形態では、コア部201の硬さH(core)を0.4MPaとし、クラッド部202の硬さH(clad)を0.2Mpaとする。これにより、被験者に与える不快感を低減させることができる。
【0044】
本実施の形態にかかるプローブ104及びプローブ106では、被験者の計測対象部位に接する面を平面とした。しかしながら、当該面を、平面に制限するものではなく、さまざまな形状が考えられる。
【0045】
図5は、第1の実施の形態の変形例1におけるプローブの導光部の先端形状を示した図である。図5に示す例では、導光部401の、計測対象部位に接する面が、当該計測対象部位側に凸面形状で形成されている。なお、図5に示す導光部401を有するプローブは、光源装置101及び受光装置102のいずれに接続されていても良い。
【0046】
図6は、本変形例におけるプローブを、被験者の計測対象の部位に装着した状況を示した説明図である。図6(A)が通常のプローブの先端形状であり、当該プローブが計測対象の部位に接触した場合に図6(B)に示す状態となる。図6(B)に示すようにプローブのコア部501が、被験者の計測対象の部位に押し当てられることで、コア部501と計測対象の部位とが密着するようにコア部501の形状が変化する。これにより、計測精度を向上させることができる。
【0047】
図7は、第1の実施の形態の変形例2にかかるプローブ601の導光部の先端形状を示した図である。図7に示す例では、導光部601の先端の、計測対象部位に接する面が、当該計測対象部位側に波面形状で形成されている。これにより、被験者の頭髪等を避けた上で、コア部602が確実に、計測対象の部位に接触することができる。
【0048】
第2の変形例にかかるNIRS脳計測装置の導光部601においては、弾性体先端に多数の突起を設けたことで、頭髪があった場合に、突起のいくつかは確率的に頭髪を挟まずに頭部と接触するので、頭髪によって近赤外光の照射、受光が妨げられる影響を低減し、より信号雑音比の高い測定を可能とする。
【0049】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態にかかるNIRS脳計測装置100では、プローブと各装置とを光ファイバを介して近赤外線を伝送した。しかしながら、NIRS脳計測装置をこのような構成に制限するものではなく、例えば、光源(LD)や受光素子(PD)をプローブに内蔵しても良い。そこで第2の実施の形態では、プローブに光源や受光素子を備えた例について説明する。
【0050】
図8は、第2の実施の形態にかかるNIRS脳計測装置700の構成を示すブロック図である。NIRS脳計測装置700は、上述した第1の実施の形態にかかるNIRS脳計測装置100とは、LD及びPDがプローブに内蔵された点で異なる。以下の説明では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略している。
【0051】
図8に示すように、NIRS脳計測装置700は、演算装置701と、信号線702と、プローブ703及び704と、プローブ保持部材105と、で構成され、被験者の脳機能の活動状態を計測する。
【0052】
プローブ703は、LD111と、コア部201と、クラッド部202と、固定部711とを備え、被験者の計測対象の部位に対して、近赤外線を照射する。
【0053】
固定部711は、LD111を内蔵する。そして、固定部711は、プローブ保持部材105にプローブ703を固定するための部材とする。また、固定部711は、必要に応じてLD111による近赤外線の照射のオン・オフを制御する。これにより、プローブ703から、近赤外線を照射できる。
【0054】
プローブ704は、PD121と、コア部201と、クラッド部202と、固定部712とを備え、被験者の計測対象の部位からの近赤外線を受光し、電気信号に変換する。
【0055】
固定部712は、PD121を内蔵する。そして、固定部712は、プローブ保持部材105にプローブ704を固定するための部材とする。
【0056】
信号線702は、プローブ704のPD121から演算装置701まで、電気信号を伝送する。
【0057】
演算装置701は、アンプ122と、演算表示部123とを備え、プローブ704から受信した電気信号に基づいて、脳機能の活動状態を示すとトポグラフィ画像の生成、表示を行う。
【0058】
本実施の形態にかかるNIRS脳計測装置700は、第1の実施の形態のNIRS脳計測装置100と同様の効果を得られる他に、コードの数が減少することで、煩雑性を減少させることができる。
【0059】
(第3の実施の形態)
次に、プローブ及びプローブ保持部材が、装置側と、被験者の計測対象の部位に接触する側と、で分離可能とした形態について説明する。
【0060】
図9は、第3の実施の形態にかかるNIRS脳計測装置800の構成を示すブロック図である。NIRS脳計測装置800は、上述した第1の実施の形態にかかるNIRS脳計測装置100とは、プローブ及びプローブ保持部材が分割可能な構成を有している点で異なる。以下の説明では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略している。
【0061】
プローブ保持部材803A及び803Bは、後述するプローブ802、及びプローブ801を、頭皮上の予め定められた位置に固定する。また、プローブ保持部材803Bは、プローブ保持部材803Aに対して着脱可能な構成とする。そして、プローブ保持部材803A及び803Bが、位置決め機構811を備えることで、後述するプローブ801を構成する部分的な導光部811A及び811B、並びにプローブ802の部分的な導光部812A及び812Bを予め定められた位置で接合することができる。これにより、部分的な導光部811A及び811Bの間、並びに部分的な導光部812A及び812Bの間で確実に近赤外線を伝送することが可能となる。
【0062】
プローブ802は、導光部812A及び812Bを備え、光ファイバ103Aから伝送された近赤外線を、被検査体に照射する。また、導光部812Bは、プローブ保持部材803Bに従って、プローブ802から着脱可能な構成とする。
【0063】
プローブ801は、導光部811A及び811Bを備え、近赤外線の検出し、検出した近赤外線を光ファイバ103Bに伝送する。また、導光部811Bは、プローブ保持部材803Bに従って、プローブ801から着脱可能な構成とする。
【0064】
図10は、プローブ保持部材803Aから、プローブ保持部材803Bを取り外した状態を示した説明図である。図10に示すように、プローブ保持部材803Bを取り外した場合、プローブ保持部材803Bと共に、導光部811B及び導光部812Bも取り外される。これにより、検査対象の部位に接触する構成全てを交換することができる。これにより、導光部811B及び導光部812Bの弾性体が摩耗したり、弾性力が低下した場合に、新しい導光部811B及び導光部812Bに交換することが可能となる。これにより、交換が容易になると共に、交換経費を削減することができる。
【0065】
さらに、プローブ保持部材803B、導光部811B及び導光部812Bという検査対象の部位に接触する構成全てを交換できるので、被験者又は検査毎に構成を交換することで、衛生保持及び衛生管理が容易になる。
【0066】
また、導光部811A及び導光部812Aは、弾性体でなく、通常の導光部と同様の硬い材料(例えば石英ガラスやプラスチック)を用いても良い。これにより、導光部811A及び導光部812Aが硬い材料のため、長期使用による劣化を低減させると共に、導光部811B及び導光部812Bという被験者の検査対象部位に接触する部分だけ弾性体にすることで、被験者の痛み又は違和感を低減させることが可能になる。
【0067】
本実施の形態にかかるNIRS脳計測装置800においては、プローブ保持部材及びプローブが分離可能な構造としたことで、被験者と接触する透明弾性体部分をディスポーザブルタイプすることで、被験者が交代した場合の衛生管理が容易となる。
【0068】
また、第2の実施の形態に示したようなプローブ内にLDやPDを内蔵した構成に対して、本実施の形態で示したような導光部を着脱可能とすることで、摩耗等により導光部の弾性体が劣化した場合に、プローブ全体を交換する必要がなくなり、各部材の効率的な利用が可能となる。
【0069】
(変形例)
また、上述した各実施の形態に限定されるものではなく、以下に例示するような種々の変形が可能である。
【0070】
(変形例1)
上述した各実施の形態において、プローブの導光部は、コア部及びクラッド部で構成されているものとした。しかしながら、導光部を2つの構成に制限するものではない。そこで、本変形例にかかるNIRS脳計測装置1000においては、プローブの導光部が1つの構成で形成されている例について説明する。
【0071】
図11は、本変形例にかかるNIRS脳計測装置1000の構成を示すブロック図である。NIRS脳計測装置1000は、上述した第1の実施の形態にかかるNIRS脳計測装置100とは、プローブ1001及び1002の導光部1011及び1012が1種類の弾性体で形成されている点で異なる。以下の説明では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略している。
【0072】
プローブ1001は、光ファイバ103Aから伝送されてきた近赤外線を、導光部1011から、被験者の検査対象となる部位に対して照射する。導光部1011は、近赤外線を透過する1種類の弾性体で形成されている。
【0073】
プローブ1002は、導光部1012において検出された近赤外線を、光ファイバ103Bに伝送する。また、導光部1012も同様に、近赤外線を透過する1種類の弾性体で形成されている。
【0074】
本変形例のように、プローブの導光部は1種類の弾性体でも良い。さらに、プローブの導光部には、被腹膜などを含んだ三種類以上の部品で構成されてもよい。
【0075】
(変形例2)
変形例2にかかるNIRS脳計測装置1100においては、被験者の計測対象部位に接触する端部だけ弾性体で形成された導光部を有するプローブを備えた例について説明する。
【0076】
図12は、変形例2にかかるNIRS脳計測装置1100の構成を示すブロック図である。NIRS脳計測装置1100は、上述した第1の実施の形態にかかるNIRS脳計測装置100とは、プローブ104及び106とは構成が異なるプローブ1101及び1102に変更された構成を有している点で異なる。以下の説明では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略している。
【0077】
図12に示す、プローブ1101の先端部1111と、プローブ1102の先端部1112とが、弾性体で形成され、他の部分については通常のプローブと同様の材質(例えば、石英ガラスやプラスチック)で形成されている。
【0078】
このように、被験者の検査対象となる部位に接触する部分が弾性体で形成されているために、被験者の苦痛及び違和感の軽減を図ることができる。
【0079】
以上、本発明について実施の形態を示して説明したが、上述した実施の形態の構成を組み合わせたり、上述した実施の形態に多様な変更または改良を加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】第1の実施の形態にかかるNIRS脳計測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態にかかるNIRS脳計測装置のプローブの全体形状を示した図である。
【図3】受光角θmaxと、コア部201及びクラッド部202の屈折率との関係を示した図である。
【図4】被験者に対してプローブ及びプローブを固定した状態を示した概要図である。
【図5】第1の実施の形態の変形例1におけるプローブの導光部の先端形状を示した図である。
【図6】第1の実施の形態の変形例1におけるプローブを、被験者の計測対象の部位に装着した状況を示した説明図である。
【図7】第1の実施の形態の変形例2にかかるプローブの導光部の先端形状を示した図である。
【図8】第2の実施の形態にかかるNIRS脳計測装置の構成を示すブロック図である。
【図9】第3の実施の形態にかかるNIRS脳計測装置の構成を示すブロック図である。
【図10】第3の実施の形態にかかるNIRS脳計測装置において、装置に接続されているプローブ保持部材から、被験者に接触するプローブ保持部材を取り外した状態を示した説明図である。
【図11】変形例1にかかるNIRS脳計測装置の構成を示すブロック図である。
【図12】変形例2にかかるNIRS脳計測装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0081】
100、700、800、1000、1100 NIRS脳計測装置
101 光源装置
102 受光装置
103A、103B 光ファイバ
104、106、703、704、801、802、1001、1002、1101、1102 プローブ
105、803A、803B プローブ保持部材
111 LD
122 PD
122 アンプ
123 演算表示部
201、501、602 コア部
202 クラッド部
203、711、712 固定部
401、601、811A、811B、812A、812B、1011、1012 導光部
701 演算装置
702 信号線
1111、1112 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体に対して所定の波長の光を照射し、当該所定の波長の光の戻り光を検出することで、当該被検査体の生体活動状態を計測する生体光計測装置において、
被検査体に接触する端部が前記所定の波長の光を透過する弾性体で形成された、前記所定の波長の光を伝送する導光部、
を備える生体光計測装置。
【請求項2】
前記導光部は、前記被検査体に対して照射する前記所定の波長の光を、前記端部に対して伝送する照射光導光部と、被検査体内部からの前記所定の波長の光の戻り光を、前記端部から伝送する伝播光導光部と、のいずれか一つ以上を備えること、
を特徴とする請求項1に記載の生体光計測装置。
【請求項3】
前記導光部の弾性体が、前記所定の波長の光を透過可能な第1の弾性部材と、当該第1の弾性部材に対して前記所定の波長の光を伝送する部位を除く周部を包囲し、当該第1の弾性部材より低い屈折率の第2の弾性部材と、で構成されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の生体光計測装置。
【請求項4】
前記導光部の前記第1の弾性部材、及び前記第2の弾性部材として、屈折率の異なるフッ素系ポリマーゲルを用いていること、を特徴とする請求項3に記載の生体光計測装置。
【請求項5】
前記導光部の弾性体を構成する前記第2の弾性部材は、前記第1の弾性部材より硬度が低いこと、
を特徴とする請求項3又は4に記載の生体光計測装置。
【請求項6】
前記導光部において、被検査体に接触する端部において被検査体に接触する面が、当該被検査体側に凸面形状で形成されていること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の生体光計測装置。
【請求項7】
前記導光部は、被検査体に接触する端部が弾性体となる第1部分導光部と、当該第1部分導光部との間で所定の波長の光を伝送可能な第2部分導光部と、を備え、
前記第1部分導光部は、前記第2部分導光部に対して着脱可能なこと、
を特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の生体光計測装置。
【請求項8】
前記第2部分導光部が、前記第1部分導光部より硬い部材を用いていること、
を特徴とする請求項7に記載の生体光計測装置。
【請求項9】
被検査体に対して所定の波長の光を照射し、当該所定の波長の光の戻り光を検出することで、当該被検査体の生体活動状態を計測する生体光計測装置で使用されるプローブにおいて、
被検査体に接触する端部が前記所定の波長の光を透過する弾性体で形成された、前記所定の波長の光を伝送する導光部を備えることを特徴とする生体光計測装置用プローブ。
【請求項10】
前記導光部の弾性体が、前記所定の波長の光を透過可能な第1の弾性部材と、当該第1の弾性部材に対して前記所定の波長の光を伝送する部位を除く周部を包囲し、当該第1の弾性部材より低い屈折率の第2の弾性部材と、で構成されていることを特徴とする請求項9に記載の生体光計測装置用プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−29496(P2010−29496A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195737(P2008−195737)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】