生体内留置用ステントおよび生体器官拡張器具
【課題】良好な圧縮性、十分な拡張維持力を備えるとともに血管等の生体内の管腔の変形に対する追従性を有するステントを提供するものである。
【解決手段】ステント1は、波線状環状体2が複数配列され、連結部により連結されている。連結部として、隣り合う環状体の他端側屈曲部2bの頂点と一端側屈曲部2aの頂点間を連結する頂点間屈曲連結部31と、隣り合う環状体の屈曲部間中央部2cと屈曲部間中央部間を連結する中央部間屈曲連結部32と、隣り合う環状体の屈曲部間中央部と一端側屈曲部の頂点間を連結する中央部頂点間屈曲連結部33と、隣り合う環状体の他端側屈曲部の頂点と屈曲部間中央部間を連結する頂点中央部間屈曲連結部34の4種類のうち、頂点間屈曲連結部と中央部間屈曲連結部を含む少なくとも3種類の連結部を備え、環状体間は、少なくとも2つの異なる種類の連結部により連結されている。
【解決手段】ステント1は、波線状環状体2が複数配列され、連結部により連結されている。連結部として、隣り合う環状体の他端側屈曲部2bの頂点と一端側屈曲部2aの頂点間を連結する頂点間屈曲連結部31と、隣り合う環状体の屈曲部間中央部2cと屈曲部間中央部間を連結する中央部間屈曲連結部32と、隣り合う環状体の屈曲部間中央部と一端側屈曲部の頂点間を連結する中央部頂点間屈曲連結部33と、隣り合う環状体の他端側屈曲部の頂点と屈曲部間中央部間を連結する頂点中央部間屈曲連結部34の4種類のうち、頂点間屈曲連結部と中央部間屈曲連結部を含む少なくとも3種類の連結部を備え、環状体間は、少なくとも2つの異なる種類の連結部により連結されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器などの生体内の管腔に生じた狭窄部もしくは閉塞部の治療に使用する生体内留置用ステントおよび生体器官拡張器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、血管あるいは他の生体内の管腔が狭窄若しくは閉塞する事によって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄若しくは閉塞部位を拡張し、その内腔を確保するために留置される管状の医療用具である。ステントは、体外から生体内に挿入するため、挿入時には直径が小さく、目的の狭窄若しくは閉塞部位で拡張もしくは復元させて直径を大きくし、大きくなった状態にて管腔を保持するものである。ステントは、機能及び拡張様式によって、セルフエクスパンダブルステントとバルーンエクスパンダブルステントに区別される。バルーンエクスパンダブルステントはステント自体に拡張機能はなく、バルーンにマウントしたステントを目的部位に挿入した後、バルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的管腔の内面に密着させて固定する。
【0003】
このタイプのステントでは、上記のようなステントの拡張作業が必要になる。一方、セルフエクスパンダブルステントは基本的に形状記憶性のある素材で作られており、大きさは拡張された最終形状で作られる。セルフエクスパンダブルステントは、ステントを生体内に導入するためには、小さく折りたたんで、その形状を拘束する部材(ほとんどの場合はプラスチック製チューブ)の中に入れられ、その部材即ちチューブごと生体内に導入し、目的部位でチューブから放出することで、ステントがその形状記憶性により自分自身で拡張する。
【0004】
セルフエクスパンダブルステントとしては、複数の支柱部を複数のループ部で接続してなる概ジグザグ状のパターンで形成された環状体を互いに接続部で連結して略円筒状に形成した形状のものが主流となっている。
特表平11−505441号公報(特許文献1)のものでは、波状環状体が、斜めに形成されたコネクターによって連結された構造となっている。
また、隣り合う蛇行要素若しくはジグザグ要素の頂点が隣り合う蛇行要素若しくはジグザグ要素の中に侵入しているタイプのステントもある。このタイプのものとして、例えば、特表2000−506753号公報(特許文献2)のものがある。また、特表2002−518087号公報(特許文献3)のものでは、上記の蛇行要素の頂点同士が軸に平行なコネクターにより接続されている。
また、蛇行要素若しくはジグザグ要素が平ループではなく螺旋状となっているタイプのステントもある。このタイプのステントとしては、先端から後端まで1本若しくは複数本で構成されているものがある。例えば、特表2001−509702号公報(特許文献4)では、ステントの形状を保つためにジグザグ要素間を軸に平行なコネクターにより接続している。また、共有線状部により隣り合う環状体が部分的に一体化した自己拡張型ステントとして、 特開2008−161475公報(特許文献5)、特開2008−86464公報(特許文献6)、特開2007−144108公報(特許文献7)を本件出願人が、提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平11−505441号公報
【特許文献2】特表2000−506753号公報
【特許文献3】特表2002−518087号公報
【特許文献4】特表2001−509702号公報
【特許文献5】特開2008−161475号公報
【特許文献6】特開2008−86464号公報
【特許文献7】特開2007−144108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステントとしては、より小さい外径に圧縮可能な良好な圧縮性と、拡張時における十分な拡張維持力と、血管等の生体内の管腔の変形に対する良好な追従性を有することが望まれる。
上記の特許文献1ないし4のタイプのステントは、血管拡張力としては十分であるが、血管の変形に対する追従性が十分なものではなかった。また、特許文献5ないし7のものでは、十分な効果を有するが、より、良好な圧縮性を有し、かつ、拡張力と変形追従性を有するものが求められている。
本発明の目的は、良好な圧縮性、十分な拡張維持力を備えるとともに血管等の生体内の管腔の変形に対する追従性を有する生体内留置用ステントおよびそれを備える生体器官拡張器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 生体内への留置操作時に変形することにより生体内組織に密着する生体内留置用ステントであって、
前記ステントは、線状構成要素により環状に形成され、複数の一端側屈曲部および複数の他端側屈曲部を有する環状体が、軸方向に複数配列するとともに、隣り合う環状体が連結部により連結されており、さらに、
前記ステントは、前記連結部として、隣り合う一端側の前記環状体の他端側屈曲部の頂点と他端側の前記環状体の一端側屈曲部の頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する頂点間屈曲連結部と、隣り合う一端側の前記環状体の前記一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端側の前記環状体の前記一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する中央部間屈曲連結部と、隣り合う一端側の前記環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端側の前記環状体の一端側屈曲部の頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する中央部頂点間屈曲連結部と、隣り合う一端側の前記環状体の他端側屈曲部の頂点と他端側の前記環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部とを連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する頂点中央部間屈曲連結部とからなる4種類の連結部のうち、前記頂点間屈曲連結部と前記中央部間屈曲連結部を含む少なくとも3種類の連結部を備え、かつ、前記隣り合う環状体間は、少なくとも2つの異なる種類の前記連結部により連結されている生体内留置用ステント。
【0008】
(2) すべての隣り合う環状体間は、前記頂点間屈曲連結部と、前記中央部間屈曲連結部と、前記中央部頂点間屈曲連結部または前記頂点中央部間屈曲連結部の3種類の連結部により連結されている上記(1)に記載の生体内留置用ステント。
(3) すべての隣り合う環状体間は、前記頂点間屈曲連結部と、前記中央部間屈曲連結部と、前記中央部頂点間屈曲連結部と、前記頂点中央部間屈曲連結部の4種類の連結部により連結されている上記(1)に記載の生体内留置用ステント。
(4) 前記頂点間屈曲連結部は、前記ステントの軸方向に対して螺旋的となるように配置されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(5) 前記中央部間屈曲連結部は、前記ステントの軸方向に対して螺旋的となるように配置されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(6) 前記ステントは、隣り合う環状体間が、少なくとも前記頂点間屈曲連結部と前記中央部間屈曲連結部により連結された第1の連結形態と、隣り合う環状体間が、少なくとも前記中央部頂点間屈曲連結部と前記頂点中央部間屈曲連結部により連結された第2の連結形態とを軸方向に交互に有するものである上記(1)に記載の生体内留置用ステント。
(7) 前記頂点間屈曲連結部は、2つの一端側屈曲部と2つの他端側屈曲部を有している上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(8) 前記中央部間屈曲連結部は、1つのみの一端側屈曲部と1つのみの他端側屈曲部を有している上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(9) 前記中央部頂点間屈曲連結部および前記頂点中央部間屈曲連結部は、1つのみの一端側屈曲部と1つのみの他端側屈曲部を有している上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(10) 前記連結部の一端側屈曲部および他端側屈曲部は、前記環状体の屈曲部間に進入している上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(11) 前記ステントは、前記ステントの軸方向に同じ種類の連結部が直線上に連続しないように配置されている上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(12) 前記ステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものである上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0009】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(13) ステント収納用筒状部材と、該ステント収納用筒状部材の先端部内に収納された上記(12)のステントと、前記ステントを前記ステント収納用筒状部材の先端より放出するための放出機構とを備える生体器官拡張器具。
【発明の効果】
【0010】
本発明のステントは、線状構成要素により環状に形成され、複数の一端側屈曲部および複数の他端側屈曲部を有する環状体が、軸方向に複数配列するとともに、隣り合う環状体が連結部により連結されている。さらに、本発明のステントは、連結部として、隣り合う一端側の環状体の他端側屈曲部の頂点と他端側の環状体の一端側屈曲部の頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する頂点間屈曲連結部と、隣り合う一端側の環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端側の環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する中央部間屈曲連結部と、隣り合う一端側の環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端側の環状体の一端側屈曲部の頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する中央部頂点間屈曲連結部と、隣り合う一端側の環状体の他端側屈曲部の頂点と他端側の環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部とを連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する頂点中央部間屈曲連結部とからなる4種類の連結部のうち、頂点間屈曲連結部と中央部間屈曲連結部を含む少なくとも3種類の連結部を備え、かつ、隣り合う環状体間は、少なくとも2つの異なる種類の連結部により連結されている。
特に、頂点間屈曲連結部を有することにより、ステントは、柔軟性と圧縮容易性を有するものとなり、中央部間屈曲連結部を有することにより、ステントに十分な拡張維持力を付与し、中央部頂点間屈曲連結部または頂点中央部間屈曲連結部を有することにより、頂点間屈曲連結部と中央部間屈曲連結部の中間的な性質を付与する。これにより、ステント全体として、良好な圧縮性、十分な拡張維持力および血管等の生体内の管腔の変形に対する追従性を有するものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施例の生体内留置用ステントの正面図である。
【図2】図2は、図1の生体内留置用ステントの展開図である。
【図3】図3は、図1の生体内留置用ステントの拡張時の展開図である。
【図4】図4は、図3の部分拡大図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの拡張時の展開図である。
【図6】図6は、図5の部分拡大図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの拡張時の展開図である。
【図8】図8は、図7の部分拡大図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの拡張時の展開図である。
【図10】図10は、図9の部分拡大図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの拡張時の展開図である。
【図12】図12は、図11の部分拡大図である。
【図13】図13は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の部分省略外観図である。
【図14】図14は、図13の生体器官拡張器具の先端部の拡大外観図である。
【図15】図15は、図13の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図16】図16は、図14のA−A線断面図である。
【図17】図17は、図14のB−B線断面拡大図である。
【図18】図18は、図14のC−C線断面拡大図である。
【図19】図19は、図14のD−D線断面拡大図である。
【図20】図20は、図13の生体器官拡張器具のステント収納用筒状部材の基端部およびスライドチューブの先端部付近の拡大断面図である。
【図21】図21は、図13の生体器官拡張器具の固定チューブの基端側部分付近の拡大断面図である。
【図22】図22は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の作用を説明するための説明図である。
【図23】図23は、本発明の生体器官拡張器具の操作部付近の拡大正面図である。
【図24】図24は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部付近の拡大背面図である。
【図25】図25は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
【図26】図26は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部分のみの右側面図である。
【図27】図27は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の生体内留置用ステントについて以下の好適実施例を用いて説明する。
本発明のステント1は、生体内への留置操作時に変形することにより生体内組織に密着する生体内留置用ステントである。
そして、ステント1は、線状構成要素により環状に形成され、複数の一端側屈曲部2aおよび複数の他端側屈曲部2bを有する環状体2が、軸方向に複数配列するとともに、隣り合う環状体が連結部により連結されている。
ステント1は、連結部として、隣り合う一端側の環状体2の他端側屈曲部2bの頂点と他端側の環状体2の一端側屈曲部2aの頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部3aおよび他端側屈曲部3bを有する頂点間屈曲連結部31と、隣り合う一端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2cと他端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2c間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部3aおよび他端側屈曲部3bを有する中央部間屈曲連結部32と、隣り合う一端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2cと他端側の環状体2の一端側屈曲部2aの頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部3aおよび他端側屈曲部3bを有する中央部頂点間屈曲連結部33と、隣り合う一端側の環状体の他端側屈曲部2bの頂点と他端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2cとを連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部3aおよび他端側屈曲部3bを有する頂点中央部間屈曲連結部34とからなる4種類の連結部のうち、頂点間屈曲連結部31と中央部間屈曲連結部32を含む少なくとも3種類の連結部を備え、かつ、隣り合う環状体間は、少なくとも2つの異なる種類の連結部により連結されている。
【0013】
本発明のステント1は、生体内への留置操作時に変形することにより生体内組織に密着する生体内留置用ステントである。
この実施例のステント1は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には縮径前の形状に復元可能なステント、いわゆる自己拡張型ステントである。図1は、ステント1の圧縮時(生体内挿入時)の外観形状を示している。なお、本発明のステントは、自己拡張型ステントに限定されるものではない。例えば、略管状体に形成され、生体内の管腔への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能なバルーン拡張型ステントであってもよい。
ステント1は、線状構成要素により環状に形成され、複数の一端側屈曲部2aおよび複数の他端側屈曲部2bを有する環状体(以下「波線状環状体」とも言う)2が、軸方向に複数配列するとともに、隣り合う環状体が連結部により連結されている。
ステント1を形成する波線状環状体2の数としては、図1に示すものでは、9となっている。波線状環状体2の数としては、ステントの長さによって相違するが、3〜90が好ましく、特に、5〜80が好ましい。
【0014】
そして、各波線状環状体2は、ステント1の軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部2aおよびステント1の軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部2bを有するとともに、環状に連続した無端の波線状体により構成されている。環状体2における一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bは、交互に形成されており、かつそれぞれの数は同じとなっている。1つの波線状環状体2における一端側屈曲部(他端側屈曲部)の数としては、図1ないし図4に示すものでは、それぞれ7個(合計14個)となっている。一端側屈曲部および他端側屈曲部のそれぞれの数としては、4〜15個が好ましく、特に、5〜12個が好ましい。
【0015】
そして、この実施例のステントでは、図2および図3に示すように、ステント1の一端に位置する環状体には、さらに一端側に突出する一端部屈曲線状部21,22,23,24が設けられており、ステント1の一端部は、これら一端部屈曲線状部により形成されている。そして、一端部屈曲線状部21は、環状体2の一端側屈曲部の頂点と環状体2の他の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部とを連結するとともに、2つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部を有している。そして、一端部屈曲線状部21の1つの一端側屈曲部には、開口部7が設けられ、また、開口部7には造影用マーカー8が装着されている。また、一端部屈曲線状部22は、環状体2の一端側屈曲部の頂点と他の一端側屈曲部の頂点とを連結するとともに、2つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部を有している。そして、一端部屈曲線状部22の1つの一端側屈曲部には、開口部7が設けられ、また、開口部7には造影用マーカー8が装着されている。一端部屈曲線状部23は、環状体2の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他の一端側屈曲部の頂点とを連結するとともに、2つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部を有している。そして、一端部屈曲線状部23の1つの一端側屈曲部には、開口部7が設けられ、また、開口部7には造影用マーカー8が装着されている。そして、一端部屈曲線状部24は、環状体2の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部とを連結するとともに、1つの一端側屈曲部を有している。
【0016】
そして、この実施例のステント1では、図2、図3および図4に示すように、すべての隣り合う環状体間は、頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、中央部頂点間屈曲連結部33と、頂点中央部間屈曲連結部34の4種類の連結部により連結されている。
頂点間屈曲連結部31は、図4に示すように、隣り合う一端側の環状体2の他端側屈曲部2bの頂点と他端側の環状体2の一端側屈曲部2aの頂点間を連結するとともに2つの一端側屈曲部3aと2つの他端側屈曲部3bを有している。なお、頂点間屈曲連結部31は、このようにそれぞれ2つの一端側屈曲部3aと他端側屈曲部3bを有することにより、柔軟性と圧縮容易性を確実にステントに付与することができる。また、この頂点間屈曲連結部31は、後述する他の連結部より有する屈曲部の数も多く、長さも長いものとなっている。なお、頂点間屈曲連結部は、それぞれ1つの一端側屈曲部3aと他端側屈曲部3bを有するものであってもよい。そして、屈曲連結部31と連結する環状体2の屈曲部の頂点は、分岐部を構成する。そして、頂点間屈曲連結部31の一端側屈曲部3aは、この連結部31が連結する一端側の環状体2の屈曲部間(他端側屈曲部間)に進入しており、他端側屈曲部3bは、この連結部31が連結する他端側環状体2の屈曲部間(一端側屈曲部間)に進入している。このため、ステントに高い拡張維持力を付与している。
【0017】
中央部間屈曲連結部32は、図4に示すように、隣り合う一端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2cと他端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2c間を連結するとともに1つの一端側屈曲部3aおよび1つの他端側屈曲部3bを有している。また、この中央部間屈曲連結部32は、隣り合う環状体の線状部の中間部同士を連結するため、ある程度の剛性を持ち、ステントの拡張維持力の向上に寄与する。また、中央部2cは、一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部のほぼ中間点であることが好ましい。そして、屈曲連結部32と連結する環状体2の中央部2cは、分岐部を構成する。また、中央部間屈曲連結部32は、上述した頂点間屈曲連結部31とステントの周方向に連続しないように配置されている。また、この実施例のステントでは、中央部間屈曲連結部32は、上述した頂点間屈曲連結部31とステントの中心軸に対してほぼ向かい合うものとなっている。この中央部間屈曲連結部32は、それぞれ1つのみの一端側屈曲部3aおよび他端側屈曲部3bを有するものであることが好ましい。そして、中央部間屈曲連結部32の一端側屈曲部3aも、この連結部32が連結する一端側の環状体2の屈曲部間に進入しており、他端側屈曲部3bも、この連結部32が連結する他端側環状体2の屈曲部間に進入している。このため、ステントに高い拡張維持力を付与している。
【0018】
中央部頂点間屈曲連結部33は、図4に示すように、隣り合う一端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2cと他端側の環状体2の一端側屈曲部2aの頂点間を連結するとともに1つの一端側屈曲部3aおよび1つの他端側屈曲部3bを有している。また、この中央部頂点間屈曲連結部33は、隣り合う環状体の線状部の中間部と頂点を連結するため、上述した頂点間屈曲連結部31と中央部間屈曲連結部32の中間的な物性を示すものとなっている。そして、この中央部頂点間屈曲連結部33は、ステントの周方向において、頂点間屈曲連結部31と中央部間屈曲連結部32の間となるように配置されている。そして、屈曲連結部33と連結する環状体2の中央部2c、屈曲部2aの頂点は、分岐部を構成する。この中央部頂点間屈曲連結部33は、それぞれ1つのみの一端側屈曲部3aおよび他端側屈曲部3bを有するものであることが好ましい。そして、中央部頂点間屈曲連結部33の一端側屈曲部3aも、この連結部33が連結する一端側の環状体2の屈曲部間に進入しており、他端側屈曲部3bも、この連結部33が連結する他端側環状体2の屈曲部間に進入している。このため、ステントに高い拡張維持力を付与している。
【0019】
頂点中央部間屈曲連結部34は、図4に示すように、隣り合う一端側の環状体の他端側屈曲部2bの頂点と他端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2cとを連結するとともに1つの一端側屈曲部3aおよび1つの他端側屈曲部3bを有している。また、この頂点中央部間屈曲連結部34は、隣り合う環状体の線状部の中間部と頂点を連結するため、上述した頂点間屈曲連結部31と中央部間屈曲連結部32の中間的な物性を示すものとなっている。そして、この頂点中央部間屈曲連結部34は、ステントの周方向において、頂点間屈曲連結部31と中央部間屈曲連結部32の間となるように配置されている。また、この実施例のステントでは、頂点中央部間屈曲連結部34は、上述した中央部頂点間屈曲連結部33とステントの中心軸に対してほぼ向かい合うものとなっている。そして、屈曲連結部34と連結する環状体2の中央部2c、屈曲部2bの頂点は、分岐部を構成する。この頂点中央部間屈曲連結部34は、それぞれ1つのみの一端側屈曲部3aおよび他端側屈曲部3bを有するものであることが好ましい。そして、頂点中央部間屈曲連結部34の一端側屈曲部3aも、この連結部34が連結する一端側の環状体2の屈曲部間に進入しており、他端側屈曲部3bも、この連結部34が連結する他端側環状体2の屈曲部間に進入している。このため、ステントに高い拡張維持力を付与している。
そして、隣り合う環状体間の連結部は、頂点間屈曲連結部31の周方向左に中央部頂点間屈曲連結部33が位置し、その左に、中央部間屈曲連結部32が位置し、その左に、頂点中央部間屈曲連結部34が位置し、その左に、上記頂点間屈曲連結部31が位置するものとなっており、頂点間屈曲連結部31、中央部頂点間屈曲連結部33、中央部間屈曲連結部32、頂点中央部間屈曲連結部34が周方向左回りにその順番にて環状となるように配置されている。
【0020】
そして、この実施例のステント1では、図2および図3に示すように、ステント1の他端部20には、他端環状部20aが配置されている。この環状部20aは、上述した環状部2と同様に、それぞれ7個の一端側屈曲部と他端側屈曲部を有する波線状環状体となっている。また、他端環状部20aの7つの他端側屈曲部の一部(具体的には、3つの屈曲部)には、開口部7および開口部7に設けられた造影用マーカー8を備えている。
そして、他端環状部20aと隣り合う環状体2は、複数の他端部連結部により連結されている。この実施例のステント1では、他端環状部20aと隣り合う環状体2との間には、他端部連結部25,26,27,28が設けられている。他端部連結部25は、環状体2の他端側屈曲部2bの頂点と他端環状部20aの一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部とを連結するとともに1つの一端側屈曲部および1つの他端側屈曲部を有している。他端部連結部26は、環状体2の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端環状部20aの一端側屈曲部の頂点とを連結するとともに屈曲部を持たない直線状のものとなっている。他端部連結部27は、環状体2の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端環状部20aの一端端側屈曲部の頂点とを連結するとともに1つの一端側屈曲部および1つの他端側屈曲部を有している。他端部連結部28は、環状体2の他端側屈曲部の頂点と他端環状部20aの一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部とを連結するとともに屈曲部を持たない直線状のものとなっている。
【0021】
さらに、他端環状部20aは、図3に示すように、始端および終端がともに他端環状部20aと連結する補強屈曲線状部20b、20cを備えている。補強屈曲線状部20bは、他端環状部20aの一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部間を連結するとともに1つの一端側屈曲部を有している。補強屈曲線状部20cは、他端環状部20aの隣り合う一端側屈曲部の頂点間を連結するとともに2つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部を有している。ステントの他端部は、上述したような構成を有することにより、高い形状保持性を有する。
そして、この実施例のステントでは、上述した頂点間屈曲連結部31が、ステント1の軸方向に対して螺旋的となるように配置されている。同様に、中央部間屈曲連結部32も、ステントの軸方向に対して螺旋的となるように配置されている。このため、頂点間屈曲連結部31、中央部間屈曲連結部32は、ステントの軸方向に直線上に連続しないものとなっている。同様に、中央部頂点間屈曲連結部33,頂点中央部間屈曲連結部34もステントの軸方向に対して螺旋的となるように配置されている。この実施例のステント1では、ステントの軸方向に同じ種類の連結部が直線上に連続しないものとなっている。
【0022】
また、上述した造影用マーカー8は、開口部7を閉塞するように固定されている。造影用マーカー8としては、例えば、ステントに形成された開口部7に、この開口部7より若干小さい部分と大きい部分を有する造影性物質の円盤状部材を配置し両面より押圧して、リベット状に、かしめることにより取り付けられることが好ましい。
なお、造影用マーカーとしては、X線造影用、超音波造影用などどのようなものであってもよい。マーカーとしては、X線造影性物質、超音波造影性物質などの造影性物質により形成される。マーカーの形成材料としては、例えば、金、白金、タングステン、タンタル、イリジウム、パラジウムあるいはそれらの合金、あるいは金−パラジウム合金、白金−イリジウム、NiTiPd、NiTiAu等が好適である。
【0023】
そして、本発明のステントとしては、図5および図6に示すようなステント1aであってもよい。
この実施例のステント1aは、図5および図6に示すように、すべての隣り合う環状体間が、頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、中央部頂点間屈曲連結部33または頂点中央部間屈曲連結部34の3種類の連結部により連結されているタイプのものであり、具体的には、すべての隣り合う環状体間は、少なくとも頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、中央部頂点間屈曲連結部33とにより連結されている。上述したステント1とこのステント1aとの相違は、この実施例のステント1aでは、頂点中央部間屈曲連結部34(頂点間屈曲連結部31の右隣)を備えていない点のみであり、その他の点については、上述したステント1と同じである。そして、ステント1aは、隣り合う環状体間に連結部のない空隙部を有し、空隙部を有するために、拡張維持力は低下するものの高い柔軟性を有するものとなる。そして、空隙部(連結部欠損)は、ステント1aの軸方向に対して螺旋的となるように配置されており、空隙部が、ステントの軸方向に直線上に連続しないものとなっている。
【0024】
また、本発明のステントとしては、図7および図8に示すようなステント1bであってもよい。
この実施例のステント1bは、図7および図8に示すように、すべての隣り合う環状体間が、頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、中央部頂点間屈曲連結部33または頂点中央部間屈曲連結部34の3種類の連結部により連結されているタイプのものであり、具体的には、すべての隣り合う環状体間は、少なくとも頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、頂点中央部間屈曲連結部34とにより連結されている。上述したステント1とこのステント1bとの相違は、この実施例のステント1bでは、中央部頂点間屈曲連結部33(頂点間屈曲連結部31の左隣)を備えていない点のみであり、その他の点については、上述したステント1と同じである。そして、ステント1bは、隣り合う環状体間に連結部のない空隙部を有し、空隙部を有するために、拡張維持力は低下するものの高い柔軟性を有するものとなる。そして、空隙部(連結部欠損)は、ステント1bの軸方向に対して螺旋的となるように配置されており、空隙部が、ステントの軸方向に直線上に連続しないものとなっている。
【0025】
また、本発明のステントとしては、図9および図10に示すようなステント1cであってもよい。
この実施例のステント1cは、図9および図10に示すように、すべての隣り合う環状体間が、頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、中央部頂点間屈曲連結部33または頂点中央部間屈曲連結部34の3種類の連結部により連結されているタイプのものである。具体的には、隣り合う環状体間が、頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、中央部頂点間屈曲連結部33とにより連結された形態と、頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、頂点中央部間屈曲連結部34とにより連結された形態とが軸方向に交互となるように配置されている。上述したステント1とこのステント1cとの相違は、この実施例のステント1cでは、ステントの一端側から軸方向に他端側に向かって、頂点中央部間屈曲連結部34(頂点間屈曲連結部31の右隣)と中央部頂点間屈曲連結部33(頂点間屈曲連結部31の左隣)とを交互に備えていなものとなっている点のみであり、その他の点については、上述したステント1と同じである。そして、ステント1cにおいても、隣り合う環状体間に連結部のない空隙部を有し、空隙部を有するために、拡張維持力は低下するものの高い柔軟性を有するものとなる。そして、空隙部(連結部欠損)は、ステント1cの軸方向に対して斜めとなるように配置されており、空隙部が、ステントの軸方向に直線上に連続しないものとなっている。
【0026】
また、本発明のステントとしては、図11および図12に示すようなステント1dであってもよい。
この実施例のステント1dは、図11および図12に示すように、隣り合う環状体間が、頂点間屈曲連結部31と中央部間屈曲連結部32により連結された第1の連結形態と、隣り合う環状体間が、中央部頂点間屈曲連結部33と頂点中央部間屈曲連結部34により連結された第2の連結形態とを軸方向に交互に有するものとなっている。すべての隣り合う環状体間は、2種類の連結部により連結されており、かつ、2種類の連結部のタイプが、軸方向に隣り合う連結部において、異なるものとなっている。上述したステント1とこのステント1dとの相違は、この実施例のステント1dでは、ステントの一端側から軸方向に他端側に向かって、中央部頂点間屈曲連結部33および頂点中央部間屈曲連結部34を備えない隣り合う環状体間と、頂点間屈曲連結部31および中央部間屈曲連結部32を備えない隣り合う環状体間とを交互に備えているものとなっている点のみであり、その他の点については、上述したステント1と同じである。そして、ステント1dにおいても、隣り合う環状体間に連結部のない空隙部を有し、空隙部を有するために、拡張維持力は低下するものの高い柔軟性を有するものとなる。そして、空隙部(連結部欠損)は、ステント1dの軸方向に対して分散的となるように配置されている。
【0027】
そして、上述したすべての実施例のステントにおいて、ステントは、非拡張時(または圧縮時)の直径が、0.8〜1.8mmが好適であり、特に、0.9〜1.4mmが好ましい。また、ステントの非拡張時(または非圧縮時)の長さは、9〜200mmが好適である。また、1つの環状体の長さは、0.7〜2.0mmが好適である。また、ステントの成形時(圧縮前)の直径は、1.5〜5.5mmが好適であり、特に、2.0〜5.0mmが好ましい。さらに、ステントの肉厚としては、0.05〜0.15mmが好適であり、特に、0.08〜0.12mmが好適であり、線状構成要素の幅は、0.07〜0.15mmが好適であり、特に、0.08〜0.13mmが好適である。
【0028】
また、本発明のステントを自己拡張型ステントに適用する場合の構成材料としては、超弾性金属が好適である。超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性合金が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi−Ni合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0重量%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0原子%で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kg/mm2(22℃)、より好ましくは、8〜150kg/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm2(22℃)、より好ましくは、5〜130kg/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
【0029】
また、本発明のステントをバルーン拡張型ステントに適用する場合の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、タンタルもしくはタンタル合金、プラチナもしくはプラチナ合金、金もしくは金合金、コバルト−クロム合金等のコバルトベース合金等が挙げられる。またステント形状を作製した後に貴金属メッキ(金、プラチナ)をしてもよい。ステンレス鋼としては、最も耐腐食性のあるSUS316Lが好適である。
【0030】
また、ステントは、面取りされていることが好ましい。ステントの面取り方法としては、ステントを最終形状に形成した後、化学研磨、電解研磨もしくは機械研磨することにより行うことができる。
さらに、ステントの最終形状を作製した後、焼きなましすることが好ましい。焼きなましを行うことにより、ステント全体の柔軟性および可撓性が向上し、屈曲した血管内での留置性が良好となる。焼きなましを行わない場合に比べて、ステントを拡張した後の拡張前形状に復元しようとする力、特に、屈曲した血管部位で拡張した時に発現する直線状に復帰しようとする力が減少し、屈曲した血管内壁に与える物理的な刺激が減少し、再狭窄の要因を減少させることができる。焼きなましは、ステント表面に酸化被膜が形成されないように、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素と水素の混合ガス)にて、900〜1200℃に加熱した後、ゆっくりと冷却することにより行うことが好ましい。
【0031】
次に、本発明の生体器官拡張器具を図面に示す実施例を用いて説明する。
本発明の生体器官拡張器具10は、ステント収納用筒状部材5と、ステント収納用筒状部材5の先端部内に収納された上述のステント1と、ステント収納用筒状部材5内を摺動可能に挿通し、ステント1をステント収納用筒状部材5の先端より放出するための放出機構とを備えている。
図13は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の部分省略外観図である。図14は、図13の生体器官拡張器具の先端部の拡大外観図である。図15は、図13の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。図16は、図14のA−A線断面図である。図17は、図14のB−B線断面拡大図である。図18は、図14のC−C線断面拡大図である。図19は、図14のD−D線断面拡大図である。図20は、図13の生体器官拡張器具のステント収納用筒状部材の基端部およびスライドチューブの先端部付近の拡大断面図である。図21は、図13の生体器官拡張器具の固定チューブの基端側部分付近の拡大断面図である。図22は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の作用を説明するための説明図である。
【0032】
本発明の生体器官拡張器具10は、ガイドワイヤルーメン21を有する先端側チューブ12と、基端側チューブ14と、先端側チューブ12の基端部および基端側チューブ14の先端部が固定されるとともにガイドワイヤルーメン21と連通する開口23を備える固定チューブ18と、先端側チューブ12の先端側を被包しかつ先端側チューブ12の基端方向に摺動可能であるステント収納用筒状部材5と、ステント収納用筒状部材5内に収納されたステント1と、ステント収納用筒状部材5に一端部が固定され、基端側チューブ14内を延びるとともに基端側チューブの基端側に牽引することにより、ステント収納用筒状部材5を基端側に移動させるための移動手段を構成する牽引ワイヤ6(6a,6b)とを備える。
そして、先端側チューブ12は、先端側に位置し、ステント収納用筒状部材5内に収納されたステント1の基端と当接し、ステント1の基端側への移動を規制するステント基端部係止部22を備える。
【0033】
ステント1は、略円筒形状に形成され、中心軸方向に圧縮された状態にてステント収納用筒状部材5内に収納され、ステント収納用筒状部材5からの放出時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものである。
そして、生体器官拡張器具10は、ステント収納用筒状部材5の基端に近接するように配置されたスライドチューブ17を備え、固定チューブ18は、スライドチューブ17を基端側より収納可能もしくはスライドチューブ17が基端側より被嵌可能であり、スライドチューブ17は、牽引ワイヤ6の牽引によりステント収納用筒状部材5とともに基端側に移動可能であり、かつ、ステント収納用筒状部材5に固定されていないものとなっている。
【0034】
また、この実施例の生体器官拡張器具10では、基端側チューブ14の外径が、生体器官拡張器具10の基端側チューブ14より先端側における最大径部分の外径よりも小さいものとなっている。このため、開口23より基端側に延びるガイドワイヤを基端側チューブの側面に沿わせた状態においても生体器官拡張器具の基端側チューブより先端側における最大径部分の外径と同等程度のものとすることができ、細径の血管への挿入が可能である。
そして、この実施例の生体器官拡張器具10は、基端側チューブ14の基端部には、牽引ワイヤ6を巻き取り、ステント収納用筒状部材5を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備えている。
この実施例の生体器官拡張器具10は、先端側チューブ12、ステント1、基端側チューブ14、ステント収納用筒状部材5、牽引ワイヤ6、スライドチューブ17,固定チューブ18および牽引ワイヤ6の巻取機構を有する操作部30を備えている。そして、固定チューブ18は、先端側チューブ12と基端側チューブ14を接続するとともに、先端側チューブ12の基端部と連通する開口23を備えている。
【0035】
先端側チューブ12は、図13ないし図22に示すように、先端から基端まで貫通するガイドワイヤルーメン21を有するチューブ体であり、先端に固定された先端部材25により、先端部が形成されており、その先端に、先端開口25aを備えている。なお、先端部は、先端側チューブと一体に形成してもよい。そして、先端側チューブ12は、基端部において、固定チューブ18に固定されている。また、先端側チューブ12の基端は、固定チューブ18に形成された開口23と連通している。また、先端側チューブ12の基端部は、図16に示すように、湾曲している。また、開口23は、図13および図16に示すように、基端側に向かって傾斜するように斜めに形成されている。これにより、ガイドワイヤの誘導を容易にしている。
先端側チューブ12は、図に示すように、先端から基端まで貫通したガイドワイヤルーメン21を有するチューブ体である。先端側チューブ12としては、外径が0.3〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.5mmであり、内径が0.2〜1.5mm、好ましくは0.3〜1.2mm、長さが、20〜600mm、好ましくは30〜450mmである。
【0036】
そして、先端部材25は、ステント収納用筒状部材5の先端より先端側に位置し、かつ、図13ないし図16に示すように、先端に向かって徐々に縮径するテーパー状に形成されていることが好ましい。このように形成することにより、狭窄部への挿入を容易なものとする。また、先端側チューブ12は、ステント1よりも先端側に設けられ、ステント収納用筒状部材の先端方向への移動を阻止するストッパーを備えることが好ましい。この実施例では、先端部材25の基端は、ステント収納用筒状部材5の先端と当接可能なものとなっており、上記のストッパーとして機能している。
なお、先端部材(先端部)25の最先端部の外径は、0.5mm〜1.8mmであることが好ましい。また、先端部材(先端部)25の最大径部の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。さらに、先端側テーパー部の長さは、2.0〜20.0mmであることが好ましい。
【0037】
また、先端側チューブ12は、図15および図16に示すように、ステント1の基端側への移動を規制するために、チューブ12の先端より所定距離基端側となる位置に設けられたステント基端部係止部22を備えている。係止部22は、環状突出部であることが好ましい。そして、このステント基端部係止部22より先端側が、ステント収納部位となっている。この係止部22の外径は、圧縮されたステント1の基端と当接可能な大きさとなっている。そして、ステント収納用筒状部材5が、基端側に移動しても、係止部22によりステント1はその位置を維持するため、ステント収納用筒状部材5より、結果的に放出される。
【0038】
そして、この実施例の生体器官拡張器具10では、先端側チューブ12は、図15および図16に示すように、ステント基端部係止部22より所定長(ほぼステントの軸方向長)先端側となる位置に設けられたステント先端部係止部26を備えている。ステント先端部係止部26は、図15および図16に示すように、ステント収納用筒状部材5の先端より、若干基端側に位置している。係止部26は、環状突出部であることが好ましい。そして、このステント先端部係止部26とステント基端部係止部22間が、ステント収納部位となっている。この係止部26の外径は、圧縮されたステント1の先端と当接可能な大きさとなっている。また、ステント先端部係止部26は、基端面が基端方向に向かって縮径するテーパ面となっている。このため、ステント放出時において、ステント先端部係止部26が障害となることがなく、また、ステント1の放出後の生体器官拡張器具10の回収(具体的には、ガイディングカテーテルあるいはシース内への収納)が容易となる。
【0039】
ステント基端部係止部22およびステント先端部係止部26の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。なお、ステント基端部係止部22およびステント先端部係止部26は、図示するような環状突出部が好ましいが、ステント1の移動を規制し、かつ、放出可能であればよく、例えば、先端側チューブ12に一体にあるいは別部材で設けられた1つまたは複数の突起であってもよい。また、ステント基端部係止部22およびステント先端部係止部26は、X線造影性材料により別部材により形成されていてもよい。これにより、X線造影下でステントの位置を的確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、白金、あるいはそれらの合金等が好適である。そして、突出部は、X線造影性材料によりワイヤを形成し先端側チューブの外面に巻きつけること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成しかしめる又は接着することにより取り付けられる。
【0040】
先端側チューブの形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材料であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。なお、先端側チューブの外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する樹脂をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用できる。
【0041】
また、先端部を先端側チューブと別部材により構成する場合には、先端部(先端部材25)としては、柔軟性を有する材料を用いることが好ましい。例えば、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ポリウレタン、ウレタン系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマーなどの合成樹脂エラストマー、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどのゴム類が使用される。
【0042】
特に、この実施例の生体器官拡張器具10では、先端側チューブ12と先端部材25は、別部材にて形成されているとともに、先端側チューブ12は、先端部に、ストッパー部材27が固定されている。ストッパー部材27は、先端側チューブ12に固定された筒状部とこの筒状部より、テーパー状に広がるスカート部を備えている。そして、ストッパー部材27は、先端部材25内に埋設された状態となっており、先端部材25の離脱および先端側への移動を防止している。ストッパー部材27は、金属(例えば、ステンレス鋼)により形成されていることが好ましい。
基端側チューブ14は、図13、図14および図16に示すように、先端から基端まで貫通したチューブ体であり、基端に固定された操作部30を備えている。基端側チューブ14の先端部は、固定チューブ18に、固定部材84により、接合されている。基端側チューブ14は、内部に牽引ワイヤ6を挿通可能な牽引ワイヤ用ルーメンを備えている。
基端側チューブ14としては、長さが300mm〜1500mm、より好ましくは、1000〜1300mmであり、外径が0.5〜1.5mm、好ましくは0.6〜1.3mmであり、内径が0.3〜1.4mm、好ましくは0.5〜1.2mmである。
基端側チューブ14の中心軸と先端側チューブ12の中心軸とのずれの距離としては、0.1〜2.0mmが好ましく、特に、0.5〜1.5mmが好ましい。
【0043】
基端側チューブの形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。なお、基端側チューブの外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する樹脂をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが使用できる。また、基端側チューブ14の形成材料としては、比較的剛性の高い材質を用いることもできる。例えばNi−Ti、真鍮、ステンレス鋼、アルミ等の金属、さらには、比較的剛性の高い樹脂、例えば、ポリイミド、塩化ビニル、ポリカーボネート等を用いることもできる。
ステント収納用筒状部材5は、図13ないし図17および図20に示すように所定長を備える管状体である。先端および基端は開口している。先端開口は、ステント1を生体内の管腔の狭窄部に留置する際、ステント1の放出口として機能する。ステント1は、図22に示すように、この先端開口より押し出されることにより応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。
ステント収納用筒状部材5の長さとしては、20mm〜400mmが好ましく、特に、30mm〜300mmが好ましい。また、外径としては、1.0〜4.0mmが好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、ステント収納用筒状部材5の内径としては、1.0〜2.5mmが好ましい。
【0044】
そして、このステント収納用筒状部材5は、基端部に設けられた小径部51aを備える筒状部材本体部51と、この小径部51aを被包するように設けられた筒状部52を備えている。なお、小径部51aの基端部は、筒状部52より突出している。そして、牽引ワイヤ6(6a、6b)の先端部69(69a,69b)は、小径部51aと筒状部52間に形成された空隙内に侵入し、空隙に充填された固定剤53により、ステント収納用筒状部材5に固定されている。小径部51aは、外径が基端側に向かって縮径するテーパー部とこのテーパー部より基端側に延びる短い円筒部を備えている。そして、筒状部材本体部51の縮径部51aを被包するように筒状部52は、筒状部材本体部51の基端部に固定されている。このため、筒状部材本体部51の小径部51aは、筒状部材5の内方かつ基端方向に突出する環状突出部を構成している。そして、この環状突出部とステント収納用筒状部材5(具体的には、基端側筒状部の先端部)内面間により、環状空隙部が形成されている。そして、この実施例では、牽引ワイヤ6(6a、6b)の先端部69(69a,69b)は、小径部51aの外面にて固定されている。そして、この空隙部には、固定剤(接着剤)53が充填されており、筒状部材本体部51と基端側筒状部52を一体化している。また、環状空隙部に充填された固定剤等により、後述する牽引ワイヤ6(6a,6b)の先端部(固定点)69(69a,69b)は、筒状部材5に固定されている。固定剤としては、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、シアノアクリレート系樹脂などの接着剤を用いることが好ましいが、熱融着であってもよい。
【0045】
そして、この実施例において用いられているステント収納用筒状部材5では、筒状部材本体部51および筒状部52は、ほぼ同じ外径を有するものとなっている。ステント収納用筒状部材5のステント収納部位の外径としては、1.0〜4.0mmが好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、ステント収納用筒状部材5の長さとしては、20〜400mmが好ましく、特に、30mm〜300mmが好ましい。また、筒状部材本体部51の長さとしては、10〜200mmが好ましく、特に、15mm〜150mmが好ましく、基端側筒状部52の長さとしては、10〜200mmが好ましく、特に、15mm〜150mmが好ましい。
なお、ステント収納用筒状部材5としては、上述したような筒状部材本体部51と基端側筒状部52からなるものに限定されるものではなく、一体物であってもよい。
スライドチューブ17は、その先端が、ステント収納用筒状部材5の基端に近接するように配置されている。また、スライドチューブ17は、その基端側より固定チューブ内に収納可能なものとなっている。なお、スライドチューブ17は、基端側より固定チューブ18に被嵌可能なものであってもよい。スライドチューブ17は、牽引ワイヤ6の牽引によりステント収納用筒状部材5とともに基端側に移動可能であり、かつ、ステント収納用筒状部材5に固定されていないものとなっている。
そして、この実施例における生体器官拡張器具10では、スライドチューブ17内に非固定状態にて収納されかつスライドチューブ17とともに移動するリング状部材75を備え、牽引ワイヤ6a,6bは、リング状部材75の内面に固定されている。そして、スライドチューブ17は、リング状部材75の回動を許容し、かつ軸方向への移動を実質的に阻止するリング状部材保持部を備えている。このように、リング状部材75が、スライドチューブ17に対して、回動可能であることにより、スライドチューブ17の回動に対して、リング状部材75、牽引ワイヤの固定部および牽引ワイヤ自体が追従しにくいものとなる。
【0046】
スライドチューブ17は、具体的には、図14ないし図18および図19に示すように、スライドチューブ本体71と、その先端に固定され、スライドチューブ本体71より外径および内径が大きい先端側部材を備えている。そして、この実施例では、スライドチューブ17の先端側部材は、図20に示すように、第1の筒状部材72とこの第1の筒状部材72とほぼ同じ外径および内径を備える第2の筒状部材73とから構成される外側チューブ部と、第1の筒状部材72の基端部および第2の筒状部材73の先端部内に配置された第3の筒状部材74により構成される内側チューブ部と、外側チューブと内側チューブを固定する、言い換えれば、第1の筒状部材72と第2の筒状部材73と第3の筒状部材74を固着する固着部76とを備えている。そして、外側チューブである第2の筒状部材73の基端部は、固着部77により、スライドチューブ本体71の先端部に固定されている。また、スライドチューブ本体71の先端部は、外側チューブである第2の筒状部材73の基端部内に侵入するとともに、内側チューブ部を構成する第3の筒状部材74の基端部と所定距離離間している。これにより、スライドチューブ本体71の先端部と、外側チューブである第2の筒状部材73の内面と、内側チューブ部を構成する第3の筒状部材74の基端部により、リング状部材保持部を構成する環状凹部が形成されている。そして、リング状部材保持部であるこの環状凹部内に、リング状部材75が、収納されている。リング状部材75は、スライドチューブ本体71、第2の筒状部材73および第3の筒状部材74のいずれにも固定されていないため、回動可能である。しかし、スライドチューブ17内における軸方向への移動は、クリアランスを除き不能となっている。リング状部材75としては、金属リングが好適である。そして、牽引ワイヤ6a,6bは、図20に示すように、リング状部材75の内面に固定部75aにより固定されている。固定部としては、溶接、接着剤などが好ましい。そして、このリング状部材75に牽引ワイヤ6a,6bが固定されているため、牽引ワイヤ6a,6bを牽引することにより、リング状部材75も牽引され、そして、リング状部材75により先端側より押されることにより、スライドチューブ本体71も生体器官拡張器具10の基端側に移動する。
【0047】
また、スライドチューブ17は、その先端部が、ステント収納用筒状部材5の小径部51aの基端部を被包していることが好ましい。また、スライドチューブ17とステント収納用筒状部材5は、接合されていないことが好ましい。この実施例では、図16および図20に示すように、接合されることなく、さらには、実質的に接触することなく、スライドチューブ17の先端部は、ステント収納用筒状部材5の小径部51aの基端部を被包している。具体的には、外側チューブ部を構成する第1の筒状部材72の先端部が、ステント収納用筒状部材5の小径部51aの基端部を実質的に接触することなく被包している。
【0048】
固定チューブ18は、この実施例の生体器官拡張器具10では、図14ないし図16、図19および図21に示すように、外径の大きい先端側固定チューブ81と、この先端側固定チューブ81の基端部に固定された基端側固定チューブ82を備えている。そして、先端側固定チューブ81は、先端縮径部81aを備えており、先端縮径部81aの内面は、スライドチューブ17の基端部の外面に接触している。そして、スライドチューブ17は、先端側固定チューブ81に固定されておらず、基端側にスライドすることにより、先端側固定チューブ81内に侵入し、収納される。
この実施例のように、スライドチューブ17が、固定チューブ18内にスライドして収納されるタイプのものであることが好ましいが、これに限定されるものではなく、スライドチューブを基端側にスライドすることにより、固定チューブがスライドチューブにより被嵌されるタイプのものであってもよい。
基端側固定チューブ82の先端部は、先端側固定チューブ81の基端内に侵入し、固定部81bにより固定されている。また、先端側チューブ12の外面には、固定チューブ18内、具体的には、図21に示すように、先端側固定チューブ81の基端部となる位置に、スライドチューブ係止部24が設けられている。スライドチューブ17は、このスライドチューブ係止部24に当接するまで、基端側にスライド可能となっている。言い換えれば、スライドチューブ17は、このスライドチューブ係止部24に当接することにより、それ以上の基端側への移動が規制されている。
【0049】
さらに、この実施例では、先端側チューブ12の基端部には、その基端部を収納した筒状固着部材83が設けられており、また、基端チューブ14の先端には、筒状固定部材84が設けられている。そして、図19および図21に示すように、基端側固定チューブ82に、筒状固着部材83および筒状固定部材84が固着されている。
また、図14および図15に示すように、この生体器官拡張器具10では、複数(具体的には、2本)の牽引ワイヤ6a,6bを備えており、牽引ワイヤ6a、6bは、上述した筒状部材5が備える空隙部にて、固定点69a、69b部分が、固定剤53により、ステント収納用筒状部材5の小径部の外側に固定されている。また、牽引ワイヤ6a,6bおよびこの固定点69a、69bは、所定長離間している。
【0050】
ステント収納用筒状部材5(筒状部材本体部51、基端側筒状部52)、スライドチューブ17(スライドチューブ本体71)、固定チューブ8(先端側固定チューブ81、基端側固定チューブ82)の形成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、さらには、熱可塑性エラストマーが挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)の中から適宜選択される。
さらに、ステント収納用筒状部材5の外面には、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。このような処理としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド−グリシジルメタクリレート共重合体等の親水性ポリマーをコーティング、または固定する方法などが挙げられる。また、ステント収納用筒状部材5の内面に、ステント1の摺動性を良好なものにするため、上述のものをコーティング、または固定してもよい。
また、ステント収納用筒状部材5は、上記のようなポリマーの2層構造(例えば、外面はナイロン、内面はPTFE)の組み合わせで形成しても良い。
【0051】
そして、生体器官拡張器具10は、ステント収納用筒状部材5の基端部に一端部が固定され、ステント収納用筒状部材5の基端を越え、スライドチューブ17,固定チューブ18を貫通し、基端側チューブ14内を延びる牽引ワイヤ6を備えている。そして、この牽引ワイヤ6を基端側チューブの基端側に牽引することにより、ステント収納用筒状部材5およびスライドチューブ17は、基端側に移動する。
そして、図13、図14、図17ないし図20および図22に示すように、この生体器官拡張器具10では、複数(具体的には、2本)の牽引ワイヤ6a,6bを備えており、牽引ワイヤ6a、6bは、固定点69a、69bにより、ステント収納用筒状部材5の基端部に固定されている。また、牽引ワイヤ6a,6bおよびこの固定点69a、69bは、所定距離離間するように配置されている。
さらに、この実施例では、牽引ワイヤ6a,6bは、牽引により移動する部材にも固定されている。具体的には、図20に示し、また、上述したように、牽引ワイヤ6a,6bは、スライドチューブ17が備えるリング状部材75(具体的には、その内面)にも固定されている。このため、この実施例の生体器官拡張器具10では、牽引ワイヤ6a,6bが、基端側に牽引されることにより、リング状部材75も基端側に牽引され、このリング状部材75にスライドチューブ17(スライドチューブ本体71)が当接することにより、スライドチューブも基端側に牽引される。よって、この実施例では、ステント収納用筒状部材5とスライドチューブ17とは、両者それぞれが別個に牽引されるものとなっており、牽引時に、ステント収納用筒状部材5とスライドチューブ17が当接しないものとなっている。また、牽引ワイヤ6a,6bの牽引時の力は、固定点69a、69bと牽引により移動する部材であるリング状部材75の固定点75a,75bとに分散されるため、固定点69a、69bにおける牽引ワイヤ6a,6bとステント収納用筒状部材5間の固定が解除されることが確実に防止される。
【0052】
この実施例の生体器官拡張器具10では、牽引ワイヤ6は、図13に示すように、基端側チューブ14を貫通し、基端側チューブの基端より延出するものとなっている。
牽引ワイヤの構成材料としては、線材もしくは複数本の線材を撚ったものが好適に使用できる。また、牽引ワイヤの線径は、特に限定されないが、通常、0.01〜0.55mmが好ましく、特に、0.1〜0.3mmがより好ましい。
また、牽引ワイヤ6の形成材料としては、例えば、ステンレス鋼線(好ましくは、バネ用高張力ステンレス鋼)、ピアノ線(好ましくは、ニッケルメッキあるいはクロムメッキが施されたピアノ線)、または超弾性合金線、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、コバルト合金、タンタル等の各種金属により形成された線材や、ポリアミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂等の比較的高剛性の高分子材料により形成された線材、あるいは、これらを適宜組み合わせたものが挙げられる。
また、牽引ワイヤの側面に滑性を増加させる低摩擦性樹脂を被覆してもよい。低摩擦性樹脂としては、例えば、フッ素系樹脂、ナイロン66、ポリエーテルエーテルケトン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。この中でも、フッ素系樹脂がより好ましい。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、パーフロロアルコキシ樹脂等が挙げられる。またシリコンや各種親水性樹脂によるコーティングであってもよい。
なお、ステント収納用筒状部材5内には、ステント1が収納されている。
ステント1としては、上述したいずれの実施例の自己拡張型ステントを用いることができる、
【0053】
そして、本発明の生体器官拡張器具10は、図13,図23ないし図27に示すように、基端側チューブ14の基端に固定された操作部30を備えている。
図23は、本発明の生体器官拡張器具の操作部付近の拡大正面図である。図24は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部付近の拡大背面図である。図25は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。図26は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部分のみの右側面図である。図27は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
この実施例の生体器官拡張器具10における操作部30は、牽引ワイヤ巻取機構に加えて、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構および牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている。
【0054】
操作部30は、図23ないし図27に示すように、操作部ハウジング50を備える。操作部ハウジング50は、第1ハウジング50aと第2ハウジング50bにより構成されている。操作部ハウジング50は、基端側および中央部が屈曲しかつ丸みを帯びた形状となっており、把持しやすく、かつ、把持した状態におけるローラの操作を容易なものとしている。
そして、図25に示すように、基端側チューブ14の基端には、筒状コネクタ45の先端部が固定されている。また、操作部ハウジング50内には、コネクタ45の基端部に接続されたシール機構が収納されている。このシール機構は、図25に示すように、コネクタ45の基端部に固定される先端部を備えるシール機構筒状本体部材70と、筒状本体部材70の基端に固定されたキャップ部材70aと、筒状本体部材70とキャップ部材70a間に配置されたシール部材70bを備えている。本体部材70およびキャップ部材70aは、貫通する開口部を備えている。シール部材70bは、牽引ワイヤ6(6a,6b)を液密状態かつ摺動可能に貫通させるための孔部もしくはスリットを備えている。
【0055】
ハウジング50は、図23ないし図26に示すように、操作用回転ローラ61を部分的に突出させるための開口部58、ローラ61に設けられた歯車部62の突出部と係合するロック用リブ(図示せず)、ローラ61の回転軸の一端64bを収納する軸受部94b、ローラ61の回転軸の他端64aを収納する軸受部94aを備えている。ロック用リブは、ローラ61の歯車部62に形成された突起部間に侵入可能な形状となっている。また、軸受部94a、94bは、図23および図24に示すように、ローラ61の回転軸の一端64bおよび他端64aを収納するとともに、上述の開口部と離間する方向に延びる瓢箪状のものとなっている。なお、軸受部94a、94bは、瓢箪状に限定されるものではなく、ロック用リブとの係合が解除できる距離移動できるものであればよい。例えば、軸受部94a、94bの形状は、長円、矩形、楕円状などであってもよい。特に、この実施例の操作部30では、上記の軸受部94a、94bは、図23および図24に示すように、瓢箪状のものとなっている。このため、操作用回転ローラ61を押し、軸受部94a,94bの一端側空間に収納されているローラ61の回転軸の端部64a,64bを、軸受部94a,94bの中央部内側面に形成された向かい合うリブ部分を乗り越えさせることにより、ローラ61の回転軸の端部64a,64bは、軸受部94a,94bの他端側空間に収納された状態となる。図25に示す状態が、ローラ61が押圧された状態である。そして、この状態において、ローラ61は、付勢部材により押圧されるが、ローラ61の回転軸の端部64a,64bは、軸受部94a,94bの中央部内側面に形成された向かい合うリブ部分に当接するため、軸受部94a,94bの一端側空間に移動しない。このため、ローラ61は、回転可能な状態を維持するものとなっている。
【0056】
そして、この実施例では、図24および図27に示すように、操作部30は、カラー部材112を備えている。カラー部材112は、巻取シャフト部63を収納するとともに、巻取シャフト部63との間に環状空間を形成するカラー部114を有する。このカラー部114により、巻取シャフト部63に巻き取られた牽引ワイヤのゆるみが防止される。また、カラー部材112は、回転ローラの押圧時の移動の誘導および回転ローラのガタツキを抑制する機能も有する。カラー部材112のピン113が、第1ハウジング50aの突出部(軸受部)59および第2ハウジング50bの凹部(軸受部)158によって軸支されている。そして、軸受部94a、94bは、図23および図24に示すように、ピン113(軸受部59、158)を中心とする緩やかな円弧状に形成されており、かつ、ローラ61が、ロック用リブの高さ以上の距離を移動可能な長さを有するものとなっている。また、カラー部材112は、図27に示すように、側面よりカラー部114内の空間に到達する向かい合う2つの切欠部115を備えている。牽引ワイヤ6は、一方の切欠部115を貫通し、巻取シャフト部63に固定されている。
そして、牽引ワイヤ巻取機構は、ローラ61と、このローラ61の回転により回転する巻取シャフト部63とにより構成されている。巻取シャフト部63は、牽引ワイヤ6の基端部を把持もしくは固定している。具体的には、図24に示すように、牽引ワイヤ6の基端部には、ワイヤ6より大きく形成されたアンカー部65を備えており、巻取シャフト部63には、牽引ワイヤ6の収納可能なスリット63aが設けられている。そして、アンカー部65がスリット63aの基端外方に位置するように、巻取シャフト部63のスリット63aに、牽引ワイヤ6の基端部が収納されている。これにより、巻取シャフト部63が回転することにより、ワイヤ6は、巻取シャフト部63外面に巻き取られる。なお、牽引ワイヤ6の巻取シャフト部63への把持もしくは固定は、上述のものに限定されるものではなく、どのような方式のものであってもよい。例えば、牽引ワイヤ6の基端もしくは基端部を直接、巻取シャフトに固定してもよい。
【0057】
また、牽引ワイヤ6の巻き取られる基端部は、巻取を容易なものとするために、柔軟なものとなっていることが好ましい。このような柔軟なものとする方法としては、牽引ワイヤ6の基端部を柔軟な材料により形成する方法、牽引ワイヤ6の基端部を細径とする方法などにより行うことができる。
そして、この実施例では、巻取シャフト部63は、回転ローラ61と同軸となるように一体化されている。さらに、図27に示すように、巻取シャフト部63は、回転ローラ61の一方の側面側に設けられている。そして、回転ローラ61を回転させることにより、巻取シャフト部63も同時に回転する。そして、回転ローラの回転操作量に比べて、牽引ワイヤの巻取量が少ないことが好ましい。このようにすることにより、ゆっくりとした巻取を行うことができ、ステント収納用筒状部材の基端側への移動もゆっくりかつ良好なものとなる。この実施例では、巻取シャフト部の外径は、回転操作用ローラより小径となっているため、回転ローラの回転操作量に比べて、牽引ワイヤの巻取量が少ないものとなっている。
また、巻取シャフト部63の外径としては、1〜60mmが好適であり、特に、3〜30mmが好ましく、回転ローラの外径としては、巻取シャフト部の外径の1〜20倍が好適であり、特に、1〜10倍が好ましい。また、回転ローラの外径としては、10〜60mmが好適であり、特に、15〜50mmが好ましい。
なお、回転ローラと巻取シャフト部は、このような一体的なものに限定されるものではなく、回転ローラが回転することにより、追従して回転する別部材により構成したものであってもよい。回転ローラの回転の伝達方式としては、ギア形式のもの、ベルト形式のものなどであってもよい。また、ローラ61を操作する際に接触する可能性のある表面部位は、滑りにくい表面となっていることが好ましい。例えば、ローラ61の操作する際に接触する可能性のある表面部位には、ローレット処理、エンボス処理、高摩擦材料被覆などを行うことが好ましい。
【0058】
そして、この実施例の操作部30は、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている。
操作用回転ローラ61は、図25および図27に示すように、同軸にかつ一体的に回動するように設けられた歯車部62を備えている。さらに、図27に示すように、歯車部62は、回転ローラ61の他方の側面側(言い換えれば、巻取シャフト部63が設けられた面と反対側の面)に設けられている。よって、歯車部62と巻取シャフト部63は、操作用ローラ部が構成する壁により仕切られた状態となっている。
また、操作用回転ローラ61は、部分的に開口部より露出しており、この部分が操作部となる。そして、回転ローラは、一方の側面(具体的には、歯車部の側面)に設けられた回転軸の他端64aおよび他方の側面(具体的には、巻取シャフトの側面)に設けられた回転軸の一端64bを備えている。
さらに、ハウジング50内には、回転ローラ61をハウジングの開口部方向に付勢する付勢手段(付勢部材)80を備えている。具体的には、付勢手段80により、ローラ61は、付勢されている。さらに、ハウジング50には、付勢部材80により付勢された回転ローラ61の歯車部62の突起部間に侵入可能なロック用リブ(図示せず)が設けられている。このため、回転ローラ61は、付勢部材80により付勢された状態では、図24に示す状態となり、ロック用リブが歯車部62の突起部と係合するため、回転不能となっている。そして、回転ローラ61をロック用リブと離間する方向に押すと、回転ローラの回転軸の一端64bおよび他端64aは、ハウジング50に設けられた軸受部94aおよび94b内を移動し回転可能となる。よって、この実施例の操作部30は、回転ローラ61を押圧しない状態での回転を規制しており、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構を有するものとなっている。
【0059】
さらに、この実施例の操作部では、上記の付勢手段80と上述した歯車部62により、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構が構成されている。
操作部30内には、図23ないし図25に示すように、逆回転規制機構を備えている。この操作部30では、付勢部材80に逆回転規制機構が設けられており、付勢部材80は、逆回転規制部材でもある。逆回転規制機構は、逆回転規制部材(付勢部材でもある)80の先端部の上記操作用回転ローラ61の歯車部62と向かい合う部分に設けられ、歯車部と噛合可能な噛合部88と、弾性変形可能部86と、ハウジングへの装着部87を備えている。また、第1ハウジング50aは、内面に形成された第1の突出部(軸受部)59および第2の突出部79を備えている。第1の突出部59は、逆回転規制部材(付勢部材)80の弾性変形可能部86内に侵入するとともに、弾性変形可能部86の内面形状に対応した外面形状を有するものとなっている。具体的には、弾性変形可能部86の内面形状は、円弧状となっており、第1の突出部59は、その円弧形状に対応した円筒状となっている。そして、逆回転規制部材(付勢部材)80の装着部87は、第1ハウジング50aに形成された第1の突出部59と第2の突出部79間に装着可能な形状となっている。そして、逆回転規制部材(付勢部材)80は、その装着部87が、第1ハウジング50aの第1の突出部59と第2の突出部79間に装着されることにより、回動不能に装着されるとともに、弾性変形可能部86の弾性力により、操作用回転ローラ61を開口部58方向に付勢するものとなっている。また、逆回転規制部材(付勢部材)80の装着部87は、カラー部材112に設けられた円盤状の突出部113aにより、側面方向への移動が規制されている。
【0060】
そして、上述したように、ローラ61を押圧することにより、ローラは回転可能となる。しかし、図25の矢印方向(牽引ワイヤを巻き取る方向)への回転は可能であるが、逆方向にローラ61を回転させようとすると、歯車部62の1つの歯部と逆回転規制部材(付勢部材)80の噛合部88とが係合し、その回転を阻止する。これにより、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向へのローラの回転を規制する。また、この操作部30では、図26に示すように、逆回転規制部材(付勢部材)80は、第1ハウジング50aの内面と回転ローラ61の側面間に配置されている。このため、逆回転規制部材(付勢部材)80の横方向(水平方向)への動きが、第1ハウジング50aの内面と回転ローラ61の側面により規制されるものとなっている。
歯車部62は、回転ローラより小径のものとなっており、歯車部62の外径としては、10〜60mmが好適であり、特に、15〜50mmが好ましく、歯数としては、4〜200が好適であり、特に、4〜70が好ましい。
そして、操作部30が備えるカラー部材112は、一端部がピン113により軸支されているとともに、他端側のカラー部114は、巻取シャフト部63を収納するとともに、巻取シャフト部63との間に環状空間を形成する。この環状空間はあまり大きな空間ではなく、巻き取ったワイヤの外面間により狭小な環状空間を形成するものである。
【0061】
次に、本発明の生体器官拡張器具10の使用方法について図面を用いて説明する。
まず、図13および図14に示す生体器官拡張器具の先端部材の開口部25aに、ガイドワイヤの基端を挿入し、開口23よりガイドワイヤ(図示せず)を出す。次に、生体内に挿入されているガイディングカテーテル(図示せず)内に生体器官拡張器具10を挿入し、ガイドワイヤに沿わせて生体器官拡張器具10を押し進め、目的とする血管等の狭窄部内にステント収納用筒状部材5のステント収納部位を位置させる。
次に、操作部30の操作用回転ローラ61を押圧した後、ローラを図25の矢印方向に回転させる。これにより、牽引ワイヤ6は、巻取シャフト63の外周面に巻き取られるとともに、ステント収納用筒状部材5およびスライドチューブ17は、軸方向基端側に移動する。この時、ステント1はその基端面が先端側チューブ12のステント基端部係止部22の先端面に当接し係止されるので、ステント収納用筒状部材5の移動に伴って、ステント収納用筒状部材5の先端開口より放出される。この放出により、ステント1は、図22に示すように、自己拡張し狭窄部を拡張するとともに狭窄部内に留置される。
【符号の説明】
【0062】
1 ステント
2 波線状環状体
2a 一端側屈曲部
2b 他端側屈曲部
2c 中央部
31 頂点間屈曲連結部
32 中央間屈曲連結部
33 中央部頂点間屈曲連結部
34 頂点中央部間屈曲連結部
10 生体器官拡張器具
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器などの生体内の管腔に生じた狭窄部もしくは閉塞部の治療に使用する生体内留置用ステントおよび生体器官拡張器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、血管あるいは他の生体内の管腔が狭窄若しくは閉塞する事によって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄若しくは閉塞部位を拡張し、その内腔を確保するために留置される管状の医療用具である。ステントは、体外から生体内に挿入するため、挿入時には直径が小さく、目的の狭窄若しくは閉塞部位で拡張もしくは復元させて直径を大きくし、大きくなった状態にて管腔を保持するものである。ステントは、機能及び拡張様式によって、セルフエクスパンダブルステントとバルーンエクスパンダブルステントに区別される。バルーンエクスパンダブルステントはステント自体に拡張機能はなく、バルーンにマウントしたステントを目的部位に挿入した後、バルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的管腔の内面に密着させて固定する。
【0003】
このタイプのステントでは、上記のようなステントの拡張作業が必要になる。一方、セルフエクスパンダブルステントは基本的に形状記憶性のある素材で作られており、大きさは拡張された最終形状で作られる。セルフエクスパンダブルステントは、ステントを生体内に導入するためには、小さく折りたたんで、その形状を拘束する部材(ほとんどの場合はプラスチック製チューブ)の中に入れられ、その部材即ちチューブごと生体内に導入し、目的部位でチューブから放出することで、ステントがその形状記憶性により自分自身で拡張する。
【0004】
セルフエクスパンダブルステントとしては、複数の支柱部を複数のループ部で接続してなる概ジグザグ状のパターンで形成された環状体を互いに接続部で連結して略円筒状に形成した形状のものが主流となっている。
特表平11−505441号公報(特許文献1)のものでは、波状環状体が、斜めに形成されたコネクターによって連結された構造となっている。
また、隣り合う蛇行要素若しくはジグザグ要素の頂点が隣り合う蛇行要素若しくはジグザグ要素の中に侵入しているタイプのステントもある。このタイプのものとして、例えば、特表2000−506753号公報(特許文献2)のものがある。また、特表2002−518087号公報(特許文献3)のものでは、上記の蛇行要素の頂点同士が軸に平行なコネクターにより接続されている。
また、蛇行要素若しくはジグザグ要素が平ループではなく螺旋状となっているタイプのステントもある。このタイプのステントとしては、先端から後端まで1本若しくは複数本で構成されているものがある。例えば、特表2001−509702号公報(特許文献4)では、ステントの形状を保つためにジグザグ要素間を軸に平行なコネクターにより接続している。また、共有線状部により隣り合う環状体が部分的に一体化した自己拡張型ステントとして、 特開2008−161475公報(特許文献5)、特開2008−86464公報(特許文献6)、特開2007−144108公報(特許文献7)を本件出願人が、提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平11−505441号公報
【特許文献2】特表2000−506753号公報
【特許文献3】特表2002−518087号公報
【特許文献4】特表2001−509702号公報
【特許文献5】特開2008−161475号公報
【特許文献6】特開2008−86464号公報
【特許文献7】特開2007−144108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステントとしては、より小さい外径に圧縮可能な良好な圧縮性と、拡張時における十分な拡張維持力と、血管等の生体内の管腔の変形に対する良好な追従性を有することが望まれる。
上記の特許文献1ないし4のタイプのステントは、血管拡張力としては十分であるが、血管の変形に対する追従性が十分なものではなかった。また、特許文献5ないし7のものでは、十分な効果を有するが、より、良好な圧縮性を有し、かつ、拡張力と変形追従性を有するものが求められている。
本発明の目的は、良好な圧縮性、十分な拡張維持力を備えるとともに血管等の生体内の管腔の変形に対する追従性を有する生体内留置用ステントおよびそれを備える生体器官拡張器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 生体内への留置操作時に変形することにより生体内組織に密着する生体内留置用ステントであって、
前記ステントは、線状構成要素により環状に形成され、複数の一端側屈曲部および複数の他端側屈曲部を有する環状体が、軸方向に複数配列するとともに、隣り合う環状体が連結部により連結されており、さらに、
前記ステントは、前記連結部として、隣り合う一端側の前記環状体の他端側屈曲部の頂点と他端側の前記環状体の一端側屈曲部の頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する頂点間屈曲連結部と、隣り合う一端側の前記環状体の前記一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端側の前記環状体の前記一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する中央部間屈曲連結部と、隣り合う一端側の前記環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端側の前記環状体の一端側屈曲部の頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する中央部頂点間屈曲連結部と、隣り合う一端側の前記環状体の他端側屈曲部の頂点と他端側の前記環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部とを連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する頂点中央部間屈曲連結部とからなる4種類の連結部のうち、前記頂点間屈曲連結部と前記中央部間屈曲連結部を含む少なくとも3種類の連結部を備え、かつ、前記隣り合う環状体間は、少なくとも2つの異なる種類の前記連結部により連結されている生体内留置用ステント。
【0008】
(2) すべての隣り合う環状体間は、前記頂点間屈曲連結部と、前記中央部間屈曲連結部と、前記中央部頂点間屈曲連結部または前記頂点中央部間屈曲連結部の3種類の連結部により連結されている上記(1)に記載の生体内留置用ステント。
(3) すべての隣り合う環状体間は、前記頂点間屈曲連結部と、前記中央部間屈曲連結部と、前記中央部頂点間屈曲連結部と、前記頂点中央部間屈曲連結部の4種類の連結部により連結されている上記(1)に記載の生体内留置用ステント。
(4) 前記頂点間屈曲連結部は、前記ステントの軸方向に対して螺旋的となるように配置されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(5) 前記中央部間屈曲連結部は、前記ステントの軸方向に対して螺旋的となるように配置されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(6) 前記ステントは、隣り合う環状体間が、少なくとも前記頂点間屈曲連結部と前記中央部間屈曲連結部により連結された第1の連結形態と、隣り合う環状体間が、少なくとも前記中央部頂点間屈曲連結部と前記頂点中央部間屈曲連結部により連結された第2の連結形態とを軸方向に交互に有するものである上記(1)に記載の生体内留置用ステント。
(7) 前記頂点間屈曲連結部は、2つの一端側屈曲部と2つの他端側屈曲部を有している上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(8) 前記中央部間屈曲連結部は、1つのみの一端側屈曲部と1つのみの他端側屈曲部を有している上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(9) 前記中央部頂点間屈曲連結部および前記頂点中央部間屈曲連結部は、1つのみの一端側屈曲部と1つのみの他端側屈曲部を有している上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(10) 前記連結部の一端側屈曲部および他端側屈曲部は、前記環状体の屈曲部間に進入している上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(11) 前記ステントは、前記ステントの軸方向に同じ種類の連結部が直線上に連続しないように配置されている上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(12) 前記ステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものである上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0009】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(13) ステント収納用筒状部材と、該ステント収納用筒状部材の先端部内に収納された上記(12)のステントと、前記ステントを前記ステント収納用筒状部材の先端より放出するための放出機構とを備える生体器官拡張器具。
【発明の効果】
【0010】
本発明のステントは、線状構成要素により環状に形成され、複数の一端側屈曲部および複数の他端側屈曲部を有する環状体が、軸方向に複数配列するとともに、隣り合う環状体が連結部により連結されている。さらに、本発明のステントは、連結部として、隣り合う一端側の環状体の他端側屈曲部の頂点と他端側の環状体の一端側屈曲部の頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する頂点間屈曲連結部と、隣り合う一端側の環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端側の環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する中央部間屈曲連結部と、隣り合う一端側の環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端側の環状体の一端側屈曲部の頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する中央部頂点間屈曲連結部と、隣り合う一端側の環状体の他端側屈曲部の頂点と他端側の環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部とを連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する頂点中央部間屈曲連結部とからなる4種類の連結部のうち、頂点間屈曲連結部と中央部間屈曲連結部を含む少なくとも3種類の連結部を備え、かつ、隣り合う環状体間は、少なくとも2つの異なる種類の連結部により連結されている。
特に、頂点間屈曲連結部を有することにより、ステントは、柔軟性と圧縮容易性を有するものとなり、中央部間屈曲連結部を有することにより、ステントに十分な拡張維持力を付与し、中央部頂点間屈曲連結部または頂点中央部間屈曲連結部を有することにより、頂点間屈曲連結部と中央部間屈曲連結部の中間的な性質を付与する。これにより、ステント全体として、良好な圧縮性、十分な拡張維持力および血管等の生体内の管腔の変形に対する追従性を有するものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施例の生体内留置用ステントの正面図である。
【図2】図2は、図1の生体内留置用ステントの展開図である。
【図3】図3は、図1の生体内留置用ステントの拡張時の展開図である。
【図4】図4は、図3の部分拡大図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの拡張時の展開図である。
【図6】図6は、図5の部分拡大図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの拡張時の展開図である。
【図8】図8は、図7の部分拡大図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの拡張時の展開図である。
【図10】図10は、図9の部分拡大図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの拡張時の展開図である。
【図12】図12は、図11の部分拡大図である。
【図13】図13は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の部分省略外観図である。
【図14】図14は、図13の生体器官拡張器具の先端部の拡大外観図である。
【図15】図15は、図13の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。
【図16】図16は、図14のA−A線断面図である。
【図17】図17は、図14のB−B線断面拡大図である。
【図18】図18は、図14のC−C線断面拡大図である。
【図19】図19は、図14のD−D線断面拡大図である。
【図20】図20は、図13の生体器官拡張器具のステント収納用筒状部材の基端部およびスライドチューブの先端部付近の拡大断面図である。
【図21】図21は、図13の生体器官拡張器具の固定チューブの基端側部分付近の拡大断面図である。
【図22】図22は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の作用を説明するための説明図である。
【図23】図23は、本発明の生体器官拡張器具の操作部付近の拡大正面図である。
【図24】図24は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部付近の拡大背面図である。
【図25】図25は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
【図26】図26は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部分のみの右側面図である。
【図27】図27は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の生体内留置用ステントについて以下の好適実施例を用いて説明する。
本発明のステント1は、生体内への留置操作時に変形することにより生体内組織に密着する生体内留置用ステントである。
そして、ステント1は、線状構成要素により環状に形成され、複数の一端側屈曲部2aおよび複数の他端側屈曲部2bを有する環状体2が、軸方向に複数配列するとともに、隣り合う環状体が連結部により連結されている。
ステント1は、連結部として、隣り合う一端側の環状体2の他端側屈曲部2bの頂点と他端側の環状体2の一端側屈曲部2aの頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部3aおよび他端側屈曲部3bを有する頂点間屈曲連結部31と、隣り合う一端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2cと他端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2c間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部3aおよび他端側屈曲部3bを有する中央部間屈曲連結部32と、隣り合う一端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2cと他端側の環状体2の一端側屈曲部2aの頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部3aおよび他端側屈曲部3bを有する中央部頂点間屈曲連結部33と、隣り合う一端側の環状体の他端側屈曲部2bの頂点と他端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2cとを連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部3aおよび他端側屈曲部3bを有する頂点中央部間屈曲連結部34とからなる4種類の連結部のうち、頂点間屈曲連結部31と中央部間屈曲連結部32を含む少なくとも3種類の連結部を備え、かつ、隣り合う環状体間は、少なくとも2つの異なる種類の連結部により連結されている。
【0013】
本発明のステント1は、生体内への留置操作時に変形することにより生体内組織に密着する生体内留置用ステントである。
この実施例のステント1は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には縮径前の形状に復元可能なステント、いわゆる自己拡張型ステントである。図1は、ステント1の圧縮時(生体内挿入時)の外観形状を示している。なお、本発明のステントは、自己拡張型ステントに限定されるものではない。例えば、略管状体に形成され、生体内の管腔への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能なバルーン拡張型ステントであってもよい。
ステント1は、線状構成要素により環状に形成され、複数の一端側屈曲部2aおよび複数の他端側屈曲部2bを有する環状体(以下「波線状環状体」とも言う)2が、軸方向に複数配列するとともに、隣り合う環状体が連結部により連結されている。
ステント1を形成する波線状環状体2の数としては、図1に示すものでは、9となっている。波線状環状体2の数としては、ステントの長さによって相違するが、3〜90が好ましく、特に、5〜80が好ましい。
【0014】
そして、各波線状環状体2は、ステント1の軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部2aおよびステント1の軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部2bを有するとともに、環状に連続した無端の波線状体により構成されている。環状体2における一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bは、交互に形成されており、かつそれぞれの数は同じとなっている。1つの波線状環状体2における一端側屈曲部(他端側屈曲部)の数としては、図1ないし図4に示すものでは、それぞれ7個(合計14個)となっている。一端側屈曲部および他端側屈曲部のそれぞれの数としては、4〜15個が好ましく、特に、5〜12個が好ましい。
【0015】
そして、この実施例のステントでは、図2および図3に示すように、ステント1の一端に位置する環状体には、さらに一端側に突出する一端部屈曲線状部21,22,23,24が設けられており、ステント1の一端部は、これら一端部屈曲線状部により形成されている。そして、一端部屈曲線状部21は、環状体2の一端側屈曲部の頂点と環状体2の他の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部とを連結するとともに、2つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部を有している。そして、一端部屈曲線状部21の1つの一端側屈曲部には、開口部7が設けられ、また、開口部7には造影用マーカー8が装着されている。また、一端部屈曲線状部22は、環状体2の一端側屈曲部の頂点と他の一端側屈曲部の頂点とを連結するとともに、2つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部を有している。そして、一端部屈曲線状部22の1つの一端側屈曲部には、開口部7が設けられ、また、開口部7には造影用マーカー8が装着されている。一端部屈曲線状部23は、環状体2の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他の一端側屈曲部の頂点とを連結するとともに、2つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部を有している。そして、一端部屈曲線状部23の1つの一端側屈曲部には、開口部7が設けられ、また、開口部7には造影用マーカー8が装着されている。そして、一端部屈曲線状部24は、環状体2の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部とを連結するとともに、1つの一端側屈曲部を有している。
【0016】
そして、この実施例のステント1では、図2、図3および図4に示すように、すべての隣り合う環状体間は、頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、中央部頂点間屈曲連結部33と、頂点中央部間屈曲連結部34の4種類の連結部により連結されている。
頂点間屈曲連結部31は、図4に示すように、隣り合う一端側の環状体2の他端側屈曲部2bの頂点と他端側の環状体2の一端側屈曲部2aの頂点間を連結するとともに2つの一端側屈曲部3aと2つの他端側屈曲部3bを有している。なお、頂点間屈曲連結部31は、このようにそれぞれ2つの一端側屈曲部3aと他端側屈曲部3bを有することにより、柔軟性と圧縮容易性を確実にステントに付与することができる。また、この頂点間屈曲連結部31は、後述する他の連結部より有する屈曲部の数も多く、長さも長いものとなっている。なお、頂点間屈曲連結部は、それぞれ1つの一端側屈曲部3aと他端側屈曲部3bを有するものであってもよい。そして、屈曲連結部31と連結する環状体2の屈曲部の頂点は、分岐部を構成する。そして、頂点間屈曲連結部31の一端側屈曲部3aは、この連結部31が連結する一端側の環状体2の屈曲部間(他端側屈曲部間)に進入しており、他端側屈曲部3bは、この連結部31が連結する他端側環状体2の屈曲部間(一端側屈曲部間)に進入している。このため、ステントに高い拡張維持力を付与している。
【0017】
中央部間屈曲連結部32は、図4に示すように、隣り合う一端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2cと他端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2c間を連結するとともに1つの一端側屈曲部3aおよび1つの他端側屈曲部3bを有している。また、この中央部間屈曲連結部32は、隣り合う環状体の線状部の中間部同士を連結するため、ある程度の剛性を持ち、ステントの拡張維持力の向上に寄与する。また、中央部2cは、一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部のほぼ中間点であることが好ましい。そして、屈曲連結部32と連結する環状体2の中央部2cは、分岐部を構成する。また、中央部間屈曲連結部32は、上述した頂点間屈曲連結部31とステントの周方向に連続しないように配置されている。また、この実施例のステントでは、中央部間屈曲連結部32は、上述した頂点間屈曲連結部31とステントの中心軸に対してほぼ向かい合うものとなっている。この中央部間屈曲連結部32は、それぞれ1つのみの一端側屈曲部3aおよび他端側屈曲部3bを有するものであることが好ましい。そして、中央部間屈曲連結部32の一端側屈曲部3aも、この連結部32が連結する一端側の環状体2の屈曲部間に進入しており、他端側屈曲部3bも、この連結部32が連結する他端側環状体2の屈曲部間に進入している。このため、ステントに高い拡張維持力を付与している。
【0018】
中央部頂点間屈曲連結部33は、図4に示すように、隣り合う一端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2cと他端側の環状体2の一端側屈曲部2aの頂点間を連結するとともに1つの一端側屈曲部3aおよび1つの他端側屈曲部3bを有している。また、この中央部頂点間屈曲連結部33は、隣り合う環状体の線状部の中間部と頂点を連結するため、上述した頂点間屈曲連結部31と中央部間屈曲連結部32の中間的な物性を示すものとなっている。そして、この中央部頂点間屈曲連結部33は、ステントの周方向において、頂点間屈曲連結部31と中央部間屈曲連結部32の間となるように配置されている。そして、屈曲連結部33と連結する環状体2の中央部2c、屈曲部2aの頂点は、分岐部を構成する。この中央部頂点間屈曲連結部33は、それぞれ1つのみの一端側屈曲部3aおよび他端側屈曲部3bを有するものであることが好ましい。そして、中央部頂点間屈曲連結部33の一端側屈曲部3aも、この連結部33が連結する一端側の環状体2の屈曲部間に進入しており、他端側屈曲部3bも、この連結部33が連結する他端側環状体2の屈曲部間に進入している。このため、ステントに高い拡張維持力を付与している。
【0019】
頂点中央部間屈曲連結部34は、図4に示すように、隣り合う一端側の環状体の他端側屈曲部2bの頂点と他端側の環状体2の一端側屈曲部2aと他端側屈曲部2bを結ぶ線状部の中央部2cとを連結するとともに1つの一端側屈曲部3aおよび1つの他端側屈曲部3bを有している。また、この頂点中央部間屈曲連結部34は、隣り合う環状体の線状部の中間部と頂点を連結するため、上述した頂点間屈曲連結部31と中央部間屈曲連結部32の中間的な物性を示すものとなっている。そして、この頂点中央部間屈曲連結部34は、ステントの周方向において、頂点間屈曲連結部31と中央部間屈曲連結部32の間となるように配置されている。また、この実施例のステントでは、頂点中央部間屈曲連結部34は、上述した中央部頂点間屈曲連結部33とステントの中心軸に対してほぼ向かい合うものとなっている。そして、屈曲連結部34と連結する環状体2の中央部2c、屈曲部2bの頂点は、分岐部を構成する。この頂点中央部間屈曲連結部34は、それぞれ1つのみの一端側屈曲部3aおよび他端側屈曲部3bを有するものであることが好ましい。そして、頂点中央部間屈曲連結部34の一端側屈曲部3aも、この連結部34が連結する一端側の環状体2の屈曲部間に進入しており、他端側屈曲部3bも、この連結部34が連結する他端側環状体2の屈曲部間に進入している。このため、ステントに高い拡張維持力を付与している。
そして、隣り合う環状体間の連結部は、頂点間屈曲連結部31の周方向左に中央部頂点間屈曲連結部33が位置し、その左に、中央部間屈曲連結部32が位置し、その左に、頂点中央部間屈曲連結部34が位置し、その左に、上記頂点間屈曲連結部31が位置するものとなっており、頂点間屈曲連結部31、中央部頂点間屈曲連結部33、中央部間屈曲連結部32、頂点中央部間屈曲連結部34が周方向左回りにその順番にて環状となるように配置されている。
【0020】
そして、この実施例のステント1では、図2および図3に示すように、ステント1の他端部20には、他端環状部20aが配置されている。この環状部20aは、上述した環状部2と同様に、それぞれ7個の一端側屈曲部と他端側屈曲部を有する波線状環状体となっている。また、他端環状部20aの7つの他端側屈曲部の一部(具体的には、3つの屈曲部)には、開口部7および開口部7に設けられた造影用マーカー8を備えている。
そして、他端環状部20aと隣り合う環状体2は、複数の他端部連結部により連結されている。この実施例のステント1では、他端環状部20aと隣り合う環状体2との間には、他端部連結部25,26,27,28が設けられている。他端部連結部25は、環状体2の他端側屈曲部2bの頂点と他端環状部20aの一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部とを連結するとともに1つの一端側屈曲部および1つの他端側屈曲部を有している。他端部連結部26は、環状体2の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端環状部20aの一端側屈曲部の頂点とを連結するとともに屈曲部を持たない直線状のものとなっている。他端部連結部27は、環状体2の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端環状部20aの一端端側屈曲部の頂点とを連結するとともに1つの一端側屈曲部および1つの他端側屈曲部を有している。他端部連結部28は、環状体2の他端側屈曲部の頂点と他端環状部20aの一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部とを連結するとともに屈曲部を持たない直線状のものとなっている。
【0021】
さらに、他端環状部20aは、図3に示すように、始端および終端がともに他端環状部20aと連結する補強屈曲線状部20b、20cを備えている。補強屈曲線状部20bは、他端環状部20aの一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部間を連結するとともに1つの一端側屈曲部を有している。補強屈曲線状部20cは、他端環状部20aの隣り合う一端側屈曲部の頂点間を連結するとともに2つの一端側屈曲部と1つの他端側屈曲部を有している。ステントの他端部は、上述したような構成を有することにより、高い形状保持性を有する。
そして、この実施例のステントでは、上述した頂点間屈曲連結部31が、ステント1の軸方向に対して螺旋的となるように配置されている。同様に、中央部間屈曲連結部32も、ステントの軸方向に対して螺旋的となるように配置されている。このため、頂点間屈曲連結部31、中央部間屈曲連結部32は、ステントの軸方向に直線上に連続しないものとなっている。同様に、中央部頂点間屈曲連結部33,頂点中央部間屈曲連結部34もステントの軸方向に対して螺旋的となるように配置されている。この実施例のステント1では、ステントの軸方向に同じ種類の連結部が直線上に連続しないものとなっている。
【0022】
また、上述した造影用マーカー8は、開口部7を閉塞するように固定されている。造影用マーカー8としては、例えば、ステントに形成された開口部7に、この開口部7より若干小さい部分と大きい部分を有する造影性物質の円盤状部材を配置し両面より押圧して、リベット状に、かしめることにより取り付けられることが好ましい。
なお、造影用マーカーとしては、X線造影用、超音波造影用などどのようなものであってもよい。マーカーとしては、X線造影性物質、超音波造影性物質などの造影性物質により形成される。マーカーの形成材料としては、例えば、金、白金、タングステン、タンタル、イリジウム、パラジウムあるいはそれらの合金、あるいは金−パラジウム合金、白金−イリジウム、NiTiPd、NiTiAu等が好適である。
【0023】
そして、本発明のステントとしては、図5および図6に示すようなステント1aであってもよい。
この実施例のステント1aは、図5および図6に示すように、すべての隣り合う環状体間が、頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、中央部頂点間屈曲連結部33または頂点中央部間屈曲連結部34の3種類の連結部により連結されているタイプのものであり、具体的には、すべての隣り合う環状体間は、少なくとも頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、中央部頂点間屈曲連結部33とにより連結されている。上述したステント1とこのステント1aとの相違は、この実施例のステント1aでは、頂点中央部間屈曲連結部34(頂点間屈曲連結部31の右隣)を備えていない点のみであり、その他の点については、上述したステント1と同じである。そして、ステント1aは、隣り合う環状体間に連結部のない空隙部を有し、空隙部を有するために、拡張維持力は低下するものの高い柔軟性を有するものとなる。そして、空隙部(連結部欠損)は、ステント1aの軸方向に対して螺旋的となるように配置されており、空隙部が、ステントの軸方向に直線上に連続しないものとなっている。
【0024】
また、本発明のステントとしては、図7および図8に示すようなステント1bであってもよい。
この実施例のステント1bは、図7および図8に示すように、すべての隣り合う環状体間が、頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、中央部頂点間屈曲連結部33または頂点中央部間屈曲連結部34の3種類の連結部により連結されているタイプのものであり、具体的には、すべての隣り合う環状体間は、少なくとも頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、頂点中央部間屈曲連結部34とにより連結されている。上述したステント1とこのステント1bとの相違は、この実施例のステント1bでは、中央部頂点間屈曲連結部33(頂点間屈曲連結部31の左隣)を備えていない点のみであり、その他の点については、上述したステント1と同じである。そして、ステント1bは、隣り合う環状体間に連結部のない空隙部を有し、空隙部を有するために、拡張維持力は低下するものの高い柔軟性を有するものとなる。そして、空隙部(連結部欠損)は、ステント1bの軸方向に対して螺旋的となるように配置されており、空隙部が、ステントの軸方向に直線上に連続しないものとなっている。
【0025】
また、本発明のステントとしては、図9および図10に示すようなステント1cであってもよい。
この実施例のステント1cは、図9および図10に示すように、すべての隣り合う環状体間が、頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、中央部頂点間屈曲連結部33または頂点中央部間屈曲連結部34の3種類の連結部により連結されているタイプのものである。具体的には、隣り合う環状体間が、頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、中央部頂点間屈曲連結部33とにより連結された形態と、頂点間屈曲連結部31と、中央部間屈曲連結部32と、頂点中央部間屈曲連結部34とにより連結された形態とが軸方向に交互となるように配置されている。上述したステント1とこのステント1cとの相違は、この実施例のステント1cでは、ステントの一端側から軸方向に他端側に向かって、頂点中央部間屈曲連結部34(頂点間屈曲連結部31の右隣)と中央部頂点間屈曲連結部33(頂点間屈曲連結部31の左隣)とを交互に備えていなものとなっている点のみであり、その他の点については、上述したステント1と同じである。そして、ステント1cにおいても、隣り合う環状体間に連結部のない空隙部を有し、空隙部を有するために、拡張維持力は低下するものの高い柔軟性を有するものとなる。そして、空隙部(連結部欠損)は、ステント1cの軸方向に対して斜めとなるように配置されており、空隙部が、ステントの軸方向に直線上に連続しないものとなっている。
【0026】
また、本発明のステントとしては、図11および図12に示すようなステント1dであってもよい。
この実施例のステント1dは、図11および図12に示すように、隣り合う環状体間が、頂点間屈曲連結部31と中央部間屈曲連結部32により連結された第1の連結形態と、隣り合う環状体間が、中央部頂点間屈曲連結部33と頂点中央部間屈曲連結部34により連結された第2の連結形態とを軸方向に交互に有するものとなっている。すべての隣り合う環状体間は、2種類の連結部により連結されており、かつ、2種類の連結部のタイプが、軸方向に隣り合う連結部において、異なるものとなっている。上述したステント1とこのステント1dとの相違は、この実施例のステント1dでは、ステントの一端側から軸方向に他端側に向かって、中央部頂点間屈曲連結部33および頂点中央部間屈曲連結部34を備えない隣り合う環状体間と、頂点間屈曲連結部31および中央部間屈曲連結部32を備えない隣り合う環状体間とを交互に備えているものとなっている点のみであり、その他の点については、上述したステント1と同じである。そして、ステント1dにおいても、隣り合う環状体間に連結部のない空隙部を有し、空隙部を有するために、拡張維持力は低下するものの高い柔軟性を有するものとなる。そして、空隙部(連結部欠損)は、ステント1dの軸方向に対して分散的となるように配置されている。
【0027】
そして、上述したすべての実施例のステントにおいて、ステントは、非拡張時(または圧縮時)の直径が、0.8〜1.8mmが好適であり、特に、0.9〜1.4mmが好ましい。また、ステントの非拡張時(または非圧縮時)の長さは、9〜200mmが好適である。また、1つの環状体の長さは、0.7〜2.0mmが好適である。また、ステントの成形時(圧縮前)の直径は、1.5〜5.5mmが好適であり、特に、2.0〜5.0mmが好ましい。さらに、ステントの肉厚としては、0.05〜0.15mmが好適であり、特に、0.08〜0.12mmが好適であり、線状構成要素の幅は、0.07〜0.15mmが好適であり、特に、0.08〜0.13mmが好適である。
【0028】
また、本発明のステントを自己拡張型ステントに適用する場合の構成材料としては、超弾性金属が好適である。超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性合金が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi−Ni合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0重量%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0原子%で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kg/mm2(22℃)、より好ましくは、8〜150kg/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm2(22℃)、より好ましくは、5〜130kg/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
【0029】
また、本発明のステントをバルーン拡張型ステントに適用する場合の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、タンタルもしくはタンタル合金、プラチナもしくはプラチナ合金、金もしくは金合金、コバルト−クロム合金等のコバルトベース合金等が挙げられる。またステント形状を作製した後に貴金属メッキ(金、プラチナ)をしてもよい。ステンレス鋼としては、最も耐腐食性のあるSUS316Lが好適である。
【0030】
また、ステントは、面取りされていることが好ましい。ステントの面取り方法としては、ステントを最終形状に形成した後、化学研磨、電解研磨もしくは機械研磨することにより行うことができる。
さらに、ステントの最終形状を作製した後、焼きなましすることが好ましい。焼きなましを行うことにより、ステント全体の柔軟性および可撓性が向上し、屈曲した血管内での留置性が良好となる。焼きなましを行わない場合に比べて、ステントを拡張した後の拡張前形状に復元しようとする力、特に、屈曲した血管部位で拡張した時に発現する直線状に復帰しようとする力が減少し、屈曲した血管内壁に与える物理的な刺激が減少し、再狭窄の要因を減少させることができる。焼きなましは、ステント表面に酸化被膜が形成されないように、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素と水素の混合ガス)にて、900〜1200℃に加熱した後、ゆっくりと冷却することにより行うことが好ましい。
【0031】
次に、本発明の生体器官拡張器具を図面に示す実施例を用いて説明する。
本発明の生体器官拡張器具10は、ステント収納用筒状部材5と、ステント収納用筒状部材5の先端部内に収納された上述のステント1と、ステント収納用筒状部材5内を摺動可能に挿通し、ステント1をステント収納用筒状部材5の先端より放出するための放出機構とを備えている。
図13は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の部分省略外観図である。図14は、図13の生体器官拡張器具の先端部の拡大外観図である。図15は、図13の生体器官拡張器具の先端部の拡大断面図である。図16は、図14のA−A線断面図である。図17は、図14のB−B線断面拡大図である。図18は、図14のC−C線断面拡大図である。図19は、図14のD−D線断面拡大図である。図20は、図13の生体器官拡張器具のステント収納用筒状部材の基端部およびスライドチューブの先端部付近の拡大断面図である。図21は、図13の生体器官拡張器具の固定チューブの基端側部分付近の拡大断面図である。図22は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の作用を説明するための説明図である。
【0032】
本発明の生体器官拡張器具10は、ガイドワイヤルーメン21を有する先端側チューブ12と、基端側チューブ14と、先端側チューブ12の基端部および基端側チューブ14の先端部が固定されるとともにガイドワイヤルーメン21と連通する開口23を備える固定チューブ18と、先端側チューブ12の先端側を被包しかつ先端側チューブ12の基端方向に摺動可能であるステント収納用筒状部材5と、ステント収納用筒状部材5内に収納されたステント1と、ステント収納用筒状部材5に一端部が固定され、基端側チューブ14内を延びるとともに基端側チューブの基端側に牽引することにより、ステント収納用筒状部材5を基端側に移動させるための移動手段を構成する牽引ワイヤ6(6a,6b)とを備える。
そして、先端側チューブ12は、先端側に位置し、ステント収納用筒状部材5内に収納されたステント1の基端と当接し、ステント1の基端側への移動を規制するステント基端部係止部22を備える。
【0033】
ステント1は、略円筒形状に形成され、中心軸方向に圧縮された状態にてステント収納用筒状部材5内に収納され、ステント収納用筒状部材5からの放出時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものである。
そして、生体器官拡張器具10は、ステント収納用筒状部材5の基端に近接するように配置されたスライドチューブ17を備え、固定チューブ18は、スライドチューブ17を基端側より収納可能もしくはスライドチューブ17が基端側より被嵌可能であり、スライドチューブ17は、牽引ワイヤ6の牽引によりステント収納用筒状部材5とともに基端側に移動可能であり、かつ、ステント収納用筒状部材5に固定されていないものとなっている。
【0034】
また、この実施例の生体器官拡張器具10では、基端側チューブ14の外径が、生体器官拡張器具10の基端側チューブ14より先端側における最大径部分の外径よりも小さいものとなっている。このため、開口23より基端側に延びるガイドワイヤを基端側チューブの側面に沿わせた状態においても生体器官拡張器具の基端側チューブより先端側における最大径部分の外径と同等程度のものとすることができ、細径の血管への挿入が可能である。
そして、この実施例の生体器官拡張器具10は、基端側チューブ14の基端部には、牽引ワイヤ6を巻き取り、ステント収納用筒状部材5を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備えている。
この実施例の生体器官拡張器具10は、先端側チューブ12、ステント1、基端側チューブ14、ステント収納用筒状部材5、牽引ワイヤ6、スライドチューブ17,固定チューブ18および牽引ワイヤ6の巻取機構を有する操作部30を備えている。そして、固定チューブ18は、先端側チューブ12と基端側チューブ14を接続するとともに、先端側チューブ12の基端部と連通する開口23を備えている。
【0035】
先端側チューブ12は、図13ないし図22に示すように、先端から基端まで貫通するガイドワイヤルーメン21を有するチューブ体であり、先端に固定された先端部材25により、先端部が形成されており、その先端に、先端開口25aを備えている。なお、先端部は、先端側チューブと一体に形成してもよい。そして、先端側チューブ12は、基端部において、固定チューブ18に固定されている。また、先端側チューブ12の基端は、固定チューブ18に形成された開口23と連通している。また、先端側チューブ12の基端部は、図16に示すように、湾曲している。また、開口23は、図13および図16に示すように、基端側に向かって傾斜するように斜めに形成されている。これにより、ガイドワイヤの誘導を容易にしている。
先端側チューブ12は、図に示すように、先端から基端まで貫通したガイドワイヤルーメン21を有するチューブ体である。先端側チューブ12としては、外径が0.3〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.5mmであり、内径が0.2〜1.5mm、好ましくは0.3〜1.2mm、長さが、20〜600mm、好ましくは30〜450mmである。
【0036】
そして、先端部材25は、ステント収納用筒状部材5の先端より先端側に位置し、かつ、図13ないし図16に示すように、先端に向かって徐々に縮径するテーパー状に形成されていることが好ましい。このように形成することにより、狭窄部への挿入を容易なものとする。また、先端側チューブ12は、ステント1よりも先端側に設けられ、ステント収納用筒状部材の先端方向への移動を阻止するストッパーを備えることが好ましい。この実施例では、先端部材25の基端は、ステント収納用筒状部材5の先端と当接可能なものとなっており、上記のストッパーとして機能している。
なお、先端部材(先端部)25の最先端部の外径は、0.5mm〜1.8mmであることが好ましい。また、先端部材(先端部)25の最大径部の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。さらに、先端側テーパー部の長さは、2.0〜20.0mmであることが好ましい。
【0037】
また、先端側チューブ12は、図15および図16に示すように、ステント1の基端側への移動を規制するために、チューブ12の先端より所定距離基端側となる位置に設けられたステント基端部係止部22を備えている。係止部22は、環状突出部であることが好ましい。そして、このステント基端部係止部22より先端側が、ステント収納部位となっている。この係止部22の外径は、圧縮されたステント1の基端と当接可能な大きさとなっている。そして、ステント収納用筒状部材5が、基端側に移動しても、係止部22によりステント1はその位置を維持するため、ステント収納用筒状部材5より、結果的に放出される。
【0038】
そして、この実施例の生体器官拡張器具10では、先端側チューブ12は、図15および図16に示すように、ステント基端部係止部22より所定長(ほぼステントの軸方向長)先端側となる位置に設けられたステント先端部係止部26を備えている。ステント先端部係止部26は、図15および図16に示すように、ステント収納用筒状部材5の先端より、若干基端側に位置している。係止部26は、環状突出部であることが好ましい。そして、このステント先端部係止部26とステント基端部係止部22間が、ステント収納部位となっている。この係止部26の外径は、圧縮されたステント1の先端と当接可能な大きさとなっている。また、ステント先端部係止部26は、基端面が基端方向に向かって縮径するテーパ面となっている。このため、ステント放出時において、ステント先端部係止部26が障害となることがなく、また、ステント1の放出後の生体器官拡張器具10の回収(具体的には、ガイディングカテーテルあるいはシース内への収納)が容易となる。
【0039】
ステント基端部係止部22およびステント先端部係止部26の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。なお、ステント基端部係止部22およびステント先端部係止部26は、図示するような環状突出部が好ましいが、ステント1の移動を規制し、かつ、放出可能であればよく、例えば、先端側チューブ12に一体にあるいは別部材で設けられた1つまたは複数の突起であってもよい。また、ステント基端部係止部22およびステント先端部係止部26は、X線造影性材料により別部材により形成されていてもよい。これにより、X線造影下でステントの位置を的確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、白金、あるいはそれらの合金等が好適である。そして、突出部は、X線造影性材料によりワイヤを形成し先端側チューブの外面に巻きつけること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成しかしめる又は接着することにより取り付けられる。
【0040】
先端側チューブの形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材料であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。なお、先端側チューブの外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する樹脂をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用できる。
【0041】
また、先端部を先端側チューブと別部材により構成する場合には、先端部(先端部材25)としては、柔軟性を有する材料を用いることが好ましい。例えば、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ポリウレタン、ウレタン系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマーなどの合成樹脂エラストマー、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどのゴム類が使用される。
【0042】
特に、この実施例の生体器官拡張器具10では、先端側チューブ12と先端部材25は、別部材にて形成されているとともに、先端側チューブ12は、先端部に、ストッパー部材27が固定されている。ストッパー部材27は、先端側チューブ12に固定された筒状部とこの筒状部より、テーパー状に広がるスカート部を備えている。そして、ストッパー部材27は、先端部材25内に埋設された状態となっており、先端部材25の離脱および先端側への移動を防止している。ストッパー部材27は、金属(例えば、ステンレス鋼)により形成されていることが好ましい。
基端側チューブ14は、図13、図14および図16に示すように、先端から基端まで貫通したチューブ体であり、基端に固定された操作部30を備えている。基端側チューブ14の先端部は、固定チューブ18に、固定部材84により、接合されている。基端側チューブ14は、内部に牽引ワイヤ6を挿通可能な牽引ワイヤ用ルーメンを備えている。
基端側チューブ14としては、長さが300mm〜1500mm、より好ましくは、1000〜1300mmであり、外径が0.5〜1.5mm、好ましくは0.6〜1.3mmであり、内径が0.3〜1.4mm、好ましくは0.5〜1.2mmである。
基端側チューブ14の中心軸と先端側チューブ12の中心軸とのずれの距離としては、0.1〜2.0mmが好ましく、特に、0.5〜1.5mmが好ましい。
【0043】
基端側チューブの形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。なお、基端側チューブの外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する樹脂をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが使用できる。また、基端側チューブ14の形成材料としては、比較的剛性の高い材質を用いることもできる。例えばNi−Ti、真鍮、ステンレス鋼、アルミ等の金属、さらには、比較的剛性の高い樹脂、例えば、ポリイミド、塩化ビニル、ポリカーボネート等を用いることもできる。
ステント収納用筒状部材5は、図13ないし図17および図20に示すように所定長を備える管状体である。先端および基端は開口している。先端開口は、ステント1を生体内の管腔の狭窄部に留置する際、ステント1の放出口として機能する。ステント1は、図22に示すように、この先端開口より押し出されることにより応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。
ステント収納用筒状部材5の長さとしては、20mm〜400mmが好ましく、特に、30mm〜300mmが好ましい。また、外径としては、1.0〜4.0mmが好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、ステント収納用筒状部材5の内径としては、1.0〜2.5mmが好ましい。
【0044】
そして、このステント収納用筒状部材5は、基端部に設けられた小径部51aを備える筒状部材本体部51と、この小径部51aを被包するように設けられた筒状部52を備えている。なお、小径部51aの基端部は、筒状部52より突出している。そして、牽引ワイヤ6(6a、6b)の先端部69(69a,69b)は、小径部51aと筒状部52間に形成された空隙内に侵入し、空隙に充填された固定剤53により、ステント収納用筒状部材5に固定されている。小径部51aは、外径が基端側に向かって縮径するテーパー部とこのテーパー部より基端側に延びる短い円筒部を備えている。そして、筒状部材本体部51の縮径部51aを被包するように筒状部52は、筒状部材本体部51の基端部に固定されている。このため、筒状部材本体部51の小径部51aは、筒状部材5の内方かつ基端方向に突出する環状突出部を構成している。そして、この環状突出部とステント収納用筒状部材5(具体的には、基端側筒状部の先端部)内面間により、環状空隙部が形成されている。そして、この実施例では、牽引ワイヤ6(6a、6b)の先端部69(69a,69b)は、小径部51aの外面にて固定されている。そして、この空隙部には、固定剤(接着剤)53が充填されており、筒状部材本体部51と基端側筒状部52を一体化している。また、環状空隙部に充填された固定剤等により、後述する牽引ワイヤ6(6a,6b)の先端部(固定点)69(69a,69b)は、筒状部材5に固定されている。固定剤としては、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、シアノアクリレート系樹脂などの接着剤を用いることが好ましいが、熱融着であってもよい。
【0045】
そして、この実施例において用いられているステント収納用筒状部材5では、筒状部材本体部51および筒状部52は、ほぼ同じ外径を有するものとなっている。ステント収納用筒状部材5のステント収納部位の外径としては、1.0〜4.0mmが好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、ステント収納用筒状部材5の長さとしては、20〜400mmが好ましく、特に、30mm〜300mmが好ましい。また、筒状部材本体部51の長さとしては、10〜200mmが好ましく、特に、15mm〜150mmが好ましく、基端側筒状部52の長さとしては、10〜200mmが好ましく、特に、15mm〜150mmが好ましい。
なお、ステント収納用筒状部材5としては、上述したような筒状部材本体部51と基端側筒状部52からなるものに限定されるものではなく、一体物であってもよい。
スライドチューブ17は、その先端が、ステント収納用筒状部材5の基端に近接するように配置されている。また、スライドチューブ17は、その基端側より固定チューブ内に収納可能なものとなっている。なお、スライドチューブ17は、基端側より固定チューブ18に被嵌可能なものであってもよい。スライドチューブ17は、牽引ワイヤ6の牽引によりステント収納用筒状部材5とともに基端側に移動可能であり、かつ、ステント収納用筒状部材5に固定されていないものとなっている。
そして、この実施例における生体器官拡張器具10では、スライドチューブ17内に非固定状態にて収納されかつスライドチューブ17とともに移動するリング状部材75を備え、牽引ワイヤ6a,6bは、リング状部材75の内面に固定されている。そして、スライドチューブ17は、リング状部材75の回動を許容し、かつ軸方向への移動を実質的に阻止するリング状部材保持部を備えている。このように、リング状部材75が、スライドチューブ17に対して、回動可能であることにより、スライドチューブ17の回動に対して、リング状部材75、牽引ワイヤの固定部および牽引ワイヤ自体が追従しにくいものとなる。
【0046】
スライドチューブ17は、具体的には、図14ないし図18および図19に示すように、スライドチューブ本体71と、その先端に固定され、スライドチューブ本体71より外径および内径が大きい先端側部材を備えている。そして、この実施例では、スライドチューブ17の先端側部材は、図20に示すように、第1の筒状部材72とこの第1の筒状部材72とほぼ同じ外径および内径を備える第2の筒状部材73とから構成される外側チューブ部と、第1の筒状部材72の基端部および第2の筒状部材73の先端部内に配置された第3の筒状部材74により構成される内側チューブ部と、外側チューブと内側チューブを固定する、言い換えれば、第1の筒状部材72と第2の筒状部材73と第3の筒状部材74を固着する固着部76とを備えている。そして、外側チューブである第2の筒状部材73の基端部は、固着部77により、スライドチューブ本体71の先端部に固定されている。また、スライドチューブ本体71の先端部は、外側チューブである第2の筒状部材73の基端部内に侵入するとともに、内側チューブ部を構成する第3の筒状部材74の基端部と所定距離離間している。これにより、スライドチューブ本体71の先端部と、外側チューブである第2の筒状部材73の内面と、内側チューブ部を構成する第3の筒状部材74の基端部により、リング状部材保持部を構成する環状凹部が形成されている。そして、リング状部材保持部であるこの環状凹部内に、リング状部材75が、収納されている。リング状部材75は、スライドチューブ本体71、第2の筒状部材73および第3の筒状部材74のいずれにも固定されていないため、回動可能である。しかし、スライドチューブ17内における軸方向への移動は、クリアランスを除き不能となっている。リング状部材75としては、金属リングが好適である。そして、牽引ワイヤ6a,6bは、図20に示すように、リング状部材75の内面に固定部75aにより固定されている。固定部としては、溶接、接着剤などが好ましい。そして、このリング状部材75に牽引ワイヤ6a,6bが固定されているため、牽引ワイヤ6a,6bを牽引することにより、リング状部材75も牽引され、そして、リング状部材75により先端側より押されることにより、スライドチューブ本体71も生体器官拡張器具10の基端側に移動する。
【0047】
また、スライドチューブ17は、その先端部が、ステント収納用筒状部材5の小径部51aの基端部を被包していることが好ましい。また、スライドチューブ17とステント収納用筒状部材5は、接合されていないことが好ましい。この実施例では、図16および図20に示すように、接合されることなく、さらには、実質的に接触することなく、スライドチューブ17の先端部は、ステント収納用筒状部材5の小径部51aの基端部を被包している。具体的には、外側チューブ部を構成する第1の筒状部材72の先端部が、ステント収納用筒状部材5の小径部51aの基端部を実質的に接触することなく被包している。
【0048】
固定チューブ18は、この実施例の生体器官拡張器具10では、図14ないし図16、図19および図21に示すように、外径の大きい先端側固定チューブ81と、この先端側固定チューブ81の基端部に固定された基端側固定チューブ82を備えている。そして、先端側固定チューブ81は、先端縮径部81aを備えており、先端縮径部81aの内面は、スライドチューブ17の基端部の外面に接触している。そして、スライドチューブ17は、先端側固定チューブ81に固定されておらず、基端側にスライドすることにより、先端側固定チューブ81内に侵入し、収納される。
この実施例のように、スライドチューブ17が、固定チューブ18内にスライドして収納されるタイプのものであることが好ましいが、これに限定されるものではなく、スライドチューブを基端側にスライドすることにより、固定チューブがスライドチューブにより被嵌されるタイプのものであってもよい。
基端側固定チューブ82の先端部は、先端側固定チューブ81の基端内に侵入し、固定部81bにより固定されている。また、先端側チューブ12の外面には、固定チューブ18内、具体的には、図21に示すように、先端側固定チューブ81の基端部となる位置に、スライドチューブ係止部24が設けられている。スライドチューブ17は、このスライドチューブ係止部24に当接するまで、基端側にスライド可能となっている。言い換えれば、スライドチューブ17は、このスライドチューブ係止部24に当接することにより、それ以上の基端側への移動が規制されている。
【0049】
さらに、この実施例では、先端側チューブ12の基端部には、その基端部を収納した筒状固着部材83が設けられており、また、基端チューブ14の先端には、筒状固定部材84が設けられている。そして、図19および図21に示すように、基端側固定チューブ82に、筒状固着部材83および筒状固定部材84が固着されている。
また、図14および図15に示すように、この生体器官拡張器具10では、複数(具体的には、2本)の牽引ワイヤ6a,6bを備えており、牽引ワイヤ6a、6bは、上述した筒状部材5が備える空隙部にて、固定点69a、69b部分が、固定剤53により、ステント収納用筒状部材5の小径部の外側に固定されている。また、牽引ワイヤ6a,6bおよびこの固定点69a、69bは、所定長離間している。
【0050】
ステント収納用筒状部材5(筒状部材本体部51、基端側筒状部52)、スライドチューブ17(スライドチューブ本体71)、固定チューブ8(先端側固定チューブ81、基端側固定チューブ82)の形成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、さらには、熱可塑性エラストマーが挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)の中から適宜選択される。
さらに、ステント収納用筒状部材5の外面には、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。このような処理としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド−グリシジルメタクリレート共重合体等の親水性ポリマーをコーティング、または固定する方法などが挙げられる。また、ステント収納用筒状部材5の内面に、ステント1の摺動性を良好なものにするため、上述のものをコーティング、または固定してもよい。
また、ステント収納用筒状部材5は、上記のようなポリマーの2層構造(例えば、外面はナイロン、内面はPTFE)の組み合わせで形成しても良い。
【0051】
そして、生体器官拡張器具10は、ステント収納用筒状部材5の基端部に一端部が固定され、ステント収納用筒状部材5の基端を越え、スライドチューブ17,固定チューブ18を貫通し、基端側チューブ14内を延びる牽引ワイヤ6を備えている。そして、この牽引ワイヤ6を基端側チューブの基端側に牽引することにより、ステント収納用筒状部材5およびスライドチューブ17は、基端側に移動する。
そして、図13、図14、図17ないし図20および図22に示すように、この生体器官拡張器具10では、複数(具体的には、2本)の牽引ワイヤ6a,6bを備えており、牽引ワイヤ6a、6bは、固定点69a、69bにより、ステント収納用筒状部材5の基端部に固定されている。また、牽引ワイヤ6a,6bおよびこの固定点69a、69bは、所定距離離間するように配置されている。
さらに、この実施例では、牽引ワイヤ6a,6bは、牽引により移動する部材にも固定されている。具体的には、図20に示し、また、上述したように、牽引ワイヤ6a,6bは、スライドチューブ17が備えるリング状部材75(具体的には、その内面)にも固定されている。このため、この実施例の生体器官拡張器具10では、牽引ワイヤ6a,6bが、基端側に牽引されることにより、リング状部材75も基端側に牽引され、このリング状部材75にスライドチューブ17(スライドチューブ本体71)が当接することにより、スライドチューブも基端側に牽引される。よって、この実施例では、ステント収納用筒状部材5とスライドチューブ17とは、両者それぞれが別個に牽引されるものとなっており、牽引時に、ステント収納用筒状部材5とスライドチューブ17が当接しないものとなっている。また、牽引ワイヤ6a,6bの牽引時の力は、固定点69a、69bと牽引により移動する部材であるリング状部材75の固定点75a,75bとに分散されるため、固定点69a、69bにおける牽引ワイヤ6a,6bとステント収納用筒状部材5間の固定が解除されることが確実に防止される。
【0052】
この実施例の生体器官拡張器具10では、牽引ワイヤ6は、図13に示すように、基端側チューブ14を貫通し、基端側チューブの基端より延出するものとなっている。
牽引ワイヤの構成材料としては、線材もしくは複数本の線材を撚ったものが好適に使用できる。また、牽引ワイヤの線径は、特に限定されないが、通常、0.01〜0.55mmが好ましく、特に、0.1〜0.3mmがより好ましい。
また、牽引ワイヤ6の形成材料としては、例えば、ステンレス鋼線(好ましくは、バネ用高張力ステンレス鋼)、ピアノ線(好ましくは、ニッケルメッキあるいはクロムメッキが施されたピアノ線)、または超弾性合金線、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、コバルト合金、タンタル等の各種金属により形成された線材や、ポリアミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂等の比較的高剛性の高分子材料により形成された線材、あるいは、これらを適宜組み合わせたものが挙げられる。
また、牽引ワイヤの側面に滑性を増加させる低摩擦性樹脂を被覆してもよい。低摩擦性樹脂としては、例えば、フッ素系樹脂、ナイロン66、ポリエーテルエーテルケトン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。この中でも、フッ素系樹脂がより好ましい。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、パーフロロアルコキシ樹脂等が挙げられる。またシリコンや各種親水性樹脂によるコーティングであってもよい。
なお、ステント収納用筒状部材5内には、ステント1が収納されている。
ステント1としては、上述したいずれの実施例の自己拡張型ステントを用いることができる、
【0053】
そして、本発明の生体器官拡張器具10は、図13,図23ないし図27に示すように、基端側チューブ14の基端に固定された操作部30を備えている。
図23は、本発明の生体器官拡張器具の操作部付近の拡大正面図である。図24は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部付近の拡大背面図である。図25は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。図26は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部分のみの右側面図である。図27は、図23に示した生体器官拡張器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
この実施例の生体器官拡張器具10における操作部30は、牽引ワイヤ巻取機構に加えて、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構および牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている。
【0054】
操作部30は、図23ないし図27に示すように、操作部ハウジング50を備える。操作部ハウジング50は、第1ハウジング50aと第2ハウジング50bにより構成されている。操作部ハウジング50は、基端側および中央部が屈曲しかつ丸みを帯びた形状となっており、把持しやすく、かつ、把持した状態におけるローラの操作を容易なものとしている。
そして、図25に示すように、基端側チューブ14の基端には、筒状コネクタ45の先端部が固定されている。また、操作部ハウジング50内には、コネクタ45の基端部に接続されたシール機構が収納されている。このシール機構は、図25に示すように、コネクタ45の基端部に固定される先端部を備えるシール機構筒状本体部材70と、筒状本体部材70の基端に固定されたキャップ部材70aと、筒状本体部材70とキャップ部材70a間に配置されたシール部材70bを備えている。本体部材70およびキャップ部材70aは、貫通する開口部を備えている。シール部材70bは、牽引ワイヤ6(6a,6b)を液密状態かつ摺動可能に貫通させるための孔部もしくはスリットを備えている。
【0055】
ハウジング50は、図23ないし図26に示すように、操作用回転ローラ61を部分的に突出させるための開口部58、ローラ61に設けられた歯車部62の突出部と係合するロック用リブ(図示せず)、ローラ61の回転軸の一端64bを収納する軸受部94b、ローラ61の回転軸の他端64aを収納する軸受部94aを備えている。ロック用リブは、ローラ61の歯車部62に形成された突起部間に侵入可能な形状となっている。また、軸受部94a、94bは、図23および図24に示すように、ローラ61の回転軸の一端64bおよび他端64aを収納するとともに、上述の開口部と離間する方向に延びる瓢箪状のものとなっている。なお、軸受部94a、94bは、瓢箪状に限定されるものではなく、ロック用リブとの係合が解除できる距離移動できるものであればよい。例えば、軸受部94a、94bの形状は、長円、矩形、楕円状などであってもよい。特に、この実施例の操作部30では、上記の軸受部94a、94bは、図23および図24に示すように、瓢箪状のものとなっている。このため、操作用回転ローラ61を押し、軸受部94a,94bの一端側空間に収納されているローラ61の回転軸の端部64a,64bを、軸受部94a,94bの中央部内側面に形成された向かい合うリブ部分を乗り越えさせることにより、ローラ61の回転軸の端部64a,64bは、軸受部94a,94bの他端側空間に収納された状態となる。図25に示す状態が、ローラ61が押圧された状態である。そして、この状態において、ローラ61は、付勢部材により押圧されるが、ローラ61の回転軸の端部64a,64bは、軸受部94a,94bの中央部内側面に形成された向かい合うリブ部分に当接するため、軸受部94a,94bの一端側空間に移動しない。このため、ローラ61は、回転可能な状態を維持するものとなっている。
【0056】
そして、この実施例では、図24および図27に示すように、操作部30は、カラー部材112を備えている。カラー部材112は、巻取シャフト部63を収納するとともに、巻取シャフト部63との間に環状空間を形成するカラー部114を有する。このカラー部114により、巻取シャフト部63に巻き取られた牽引ワイヤのゆるみが防止される。また、カラー部材112は、回転ローラの押圧時の移動の誘導および回転ローラのガタツキを抑制する機能も有する。カラー部材112のピン113が、第1ハウジング50aの突出部(軸受部)59および第2ハウジング50bの凹部(軸受部)158によって軸支されている。そして、軸受部94a、94bは、図23および図24に示すように、ピン113(軸受部59、158)を中心とする緩やかな円弧状に形成されており、かつ、ローラ61が、ロック用リブの高さ以上の距離を移動可能な長さを有するものとなっている。また、カラー部材112は、図27に示すように、側面よりカラー部114内の空間に到達する向かい合う2つの切欠部115を備えている。牽引ワイヤ6は、一方の切欠部115を貫通し、巻取シャフト部63に固定されている。
そして、牽引ワイヤ巻取機構は、ローラ61と、このローラ61の回転により回転する巻取シャフト部63とにより構成されている。巻取シャフト部63は、牽引ワイヤ6の基端部を把持もしくは固定している。具体的には、図24に示すように、牽引ワイヤ6の基端部には、ワイヤ6より大きく形成されたアンカー部65を備えており、巻取シャフト部63には、牽引ワイヤ6の収納可能なスリット63aが設けられている。そして、アンカー部65がスリット63aの基端外方に位置するように、巻取シャフト部63のスリット63aに、牽引ワイヤ6の基端部が収納されている。これにより、巻取シャフト部63が回転することにより、ワイヤ6は、巻取シャフト部63外面に巻き取られる。なお、牽引ワイヤ6の巻取シャフト部63への把持もしくは固定は、上述のものに限定されるものではなく、どのような方式のものであってもよい。例えば、牽引ワイヤ6の基端もしくは基端部を直接、巻取シャフトに固定してもよい。
【0057】
また、牽引ワイヤ6の巻き取られる基端部は、巻取を容易なものとするために、柔軟なものとなっていることが好ましい。このような柔軟なものとする方法としては、牽引ワイヤ6の基端部を柔軟な材料により形成する方法、牽引ワイヤ6の基端部を細径とする方法などにより行うことができる。
そして、この実施例では、巻取シャフト部63は、回転ローラ61と同軸となるように一体化されている。さらに、図27に示すように、巻取シャフト部63は、回転ローラ61の一方の側面側に設けられている。そして、回転ローラ61を回転させることにより、巻取シャフト部63も同時に回転する。そして、回転ローラの回転操作量に比べて、牽引ワイヤの巻取量が少ないことが好ましい。このようにすることにより、ゆっくりとした巻取を行うことができ、ステント収納用筒状部材の基端側への移動もゆっくりかつ良好なものとなる。この実施例では、巻取シャフト部の外径は、回転操作用ローラより小径となっているため、回転ローラの回転操作量に比べて、牽引ワイヤの巻取量が少ないものとなっている。
また、巻取シャフト部63の外径としては、1〜60mmが好適であり、特に、3〜30mmが好ましく、回転ローラの外径としては、巻取シャフト部の外径の1〜20倍が好適であり、特に、1〜10倍が好ましい。また、回転ローラの外径としては、10〜60mmが好適であり、特に、15〜50mmが好ましい。
なお、回転ローラと巻取シャフト部は、このような一体的なものに限定されるものではなく、回転ローラが回転することにより、追従して回転する別部材により構成したものであってもよい。回転ローラの回転の伝達方式としては、ギア形式のもの、ベルト形式のものなどであってもよい。また、ローラ61を操作する際に接触する可能性のある表面部位は、滑りにくい表面となっていることが好ましい。例えば、ローラ61の操作する際に接触する可能性のある表面部位には、ローレット処理、エンボス処理、高摩擦材料被覆などを行うことが好ましい。
【0058】
そして、この実施例の操作部30は、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている。
操作用回転ローラ61は、図25および図27に示すように、同軸にかつ一体的に回動するように設けられた歯車部62を備えている。さらに、図27に示すように、歯車部62は、回転ローラ61の他方の側面側(言い換えれば、巻取シャフト部63が設けられた面と反対側の面)に設けられている。よって、歯車部62と巻取シャフト部63は、操作用ローラ部が構成する壁により仕切られた状態となっている。
また、操作用回転ローラ61は、部分的に開口部より露出しており、この部分が操作部となる。そして、回転ローラは、一方の側面(具体的には、歯車部の側面)に設けられた回転軸の他端64aおよび他方の側面(具体的には、巻取シャフトの側面)に設けられた回転軸の一端64bを備えている。
さらに、ハウジング50内には、回転ローラ61をハウジングの開口部方向に付勢する付勢手段(付勢部材)80を備えている。具体的には、付勢手段80により、ローラ61は、付勢されている。さらに、ハウジング50には、付勢部材80により付勢された回転ローラ61の歯車部62の突起部間に侵入可能なロック用リブ(図示せず)が設けられている。このため、回転ローラ61は、付勢部材80により付勢された状態では、図24に示す状態となり、ロック用リブが歯車部62の突起部と係合するため、回転不能となっている。そして、回転ローラ61をロック用リブと離間する方向に押すと、回転ローラの回転軸の一端64bおよび他端64aは、ハウジング50に設けられた軸受部94aおよび94b内を移動し回転可能となる。よって、この実施例の操作部30は、回転ローラ61を押圧しない状態での回転を規制しており、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構を有するものとなっている。
【0059】
さらに、この実施例の操作部では、上記の付勢手段80と上述した歯車部62により、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構が構成されている。
操作部30内には、図23ないし図25に示すように、逆回転規制機構を備えている。この操作部30では、付勢部材80に逆回転規制機構が設けられており、付勢部材80は、逆回転規制部材でもある。逆回転規制機構は、逆回転規制部材(付勢部材でもある)80の先端部の上記操作用回転ローラ61の歯車部62と向かい合う部分に設けられ、歯車部と噛合可能な噛合部88と、弾性変形可能部86と、ハウジングへの装着部87を備えている。また、第1ハウジング50aは、内面に形成された第1の突出部(軸受部)59および第2の突出部79を備えている。第1の突出部59は、逆回転規制部材(付勢部材)80の弾性変形可能部86内に侵入するとともに、弾性変形可能部86の内面形状に対応した外面形状を有するものとなっている。具体的には、弾性変形可能部86の内面形状は、円弧状となっており、第1の突出部59は、その円弧形状に対応した円筒状となっている。そして、逆回転規制部材(付勢部材)80の装着部87は、第1ハウジング50aに形成された第1の突出部59と第2の突出部79間に装着可能な形状となっている。そして、逆回転規制部材(付勢部材)80は、その装着部87が、第1ハウジング50aの第1の突出部59と第2の突出部79間に装着されることにより、回動不能に装着されるとともに、弾性変形可能部86の弾性力により、操作用回転ローラ61を開口部58方向に付勢するものとなっている。また、逆回転規制部材(付勢部材)80の装着部87は、カラー部材112に設けられた円盤状の突出部113aにより、側面方向への移動が規制されている。
【0060】
そして、上述したように、ローラ61を押圧することにより、ローラは回転可能となる。しかし、図25の矢印方向(牽引ワイヤを巻き取る方向)への回転は可能であるが、逆方向にローラ61を回転させようとすると、歯車部62の1つの歯部と逆回転規制部材(付勢部材)80の噛合部88とが係合し、その回転を阻止する。これにより、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向へのローラの回転を規制する。また、この操作部30では、図26に示すように、逆回転規制部材(付勢部材)80は、第1ハウジング50aの内面と回転ローラ61の側面間に配置されている。このため、逆回転規制部材(付勢部材)80の横方向(水平方向)への動きが、第1ハウジング50aの内面と回転ローラ61の側面により規制されるものとなっている。
歯車部62は、回転ローラより小径のものとなっており、歯車部62の外径としては、10〜60mmが好適であり、特に、15〜50mmが好ましく、歯数としては、4〜200が好適であり、特に、4〜70が好ましい。
そして、操作部30が備えるカラー部材112は、一端部がピン113により軸支されているとともに、他端側のカラー部114は、巻取シャフト部63を収納するとともに、巻取シャフト部63との間に環状空間を形成する。この環状空間はあまり大きな空間ではなく、巻き取ったワイヤの外面間により狭小な環状空間を形成するものである。
【0061】
次に、本発明の生体器官拡張器具10の使用方法について図面を用いて説明する。
まず、図13および図14に示す生体器官拡張器具の先端部材の開口部25aに、ガイドワイヤの基端を挿入し、開口23よりガイドワイヤ(図示せず)を出す。次に、生体内に挿入されているガイディングカテーテル(図示せず)内に生体器官拡張器具10を挿入し、ガイドワイヤに沿わせて生体器官拡張器具10を押し進め、目的とする血管等の狭窄部内にステント収納用筒状部材5のステント収納部位を位置させる。
次に、操作部30の操作用回転ローラ61を押圧した後、ローラを図25の矢印方向に回転させる。これにより、牽引ワイヤ6は、巻取シャフト63の外周面に巻き取られるとともに、ステント収納用筒状部材5およびスライドチューブ17は、軸方向基端側に移動する。この時、ステント1はその基端面が先端側チューブ12のステント基端部係止部22の先端面に当接し係止されるので、ステント収納用筒状部材5の移動に伴って、ステント収納用筒状部材5の先端開口より放出される。この放出により、ステント1は、図22に示すように、自己拡張し狭窄部を拡張するとともに狭窄部内に留置される。
【符号の説明】
【0062】
1 ステント
2 波線状環状体
2a 一端側屈曲部
2b 他端側屈曲部
2c 中央部
31 頂点間屈曲連結部
32 中央間屈曲連結部
33 中央部頂点間屈曲連結部
34 頂点中央部間屈曲連結部
10 生体器官拡張器具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内への留置操作時に変形することにより生体内組織に密着する生体内留置用ステントであって、
前記ステントは、線状構成要素により環状に形成され、複数の一端側屈曲部および複数の他端側屈曲部を有する環状体が、軸方向に複数配列するとともに、隣り合う環状体が連結部により連結されており、さらに、
前記ステントは、前記連結部として、隣り合う一端側の前記環状体の他端側屈曲部の頂点と他端側の前記環状体の一端側屈曲部の頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する頂点間屈曲連結部と、隣り合う一端側の前記環状体の前記一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端側の前記環状体の前記一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する中央部間屈曲連結部と、隣り合う一端側の前記環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端側の前記環状体の一端側屈曲部の頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する中央部頂点間屈曲連結部と、隣り合う一端側の前記環状体の他端側屈曲部の頂点と他端側の前記環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部とを連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する頂点中央部間屈曲連結部とからなる4種類の連結部のうち、前記頂点間屈曲連結部と前記中央部間屈曲連結部を含む少なくとも3種類の連結部を備え、かつ、前記隣り合う環状体間は、少なくとも2つの異なる種類の前記連結部により連結されていることを特徴とする生体内留置用ステント。
【請求項2】
すべての隣り合う環状体間は、前記頂点間屈曲連結部と、前記中央部間屈曲連結部と、前記中央部頂点間屈曲連結部または前記頂点中央部間屈曲連結部の3種類の連結部により連結されている請求項1に記載の生体内留置用ステント。
【請求項3】
すべての隣り合う環状体間は、前記頂点間屈曲連結部と、前記中央部間屈曲連結部と、前記中央部頂点間屈曲連結部と、前記頂点中央部間屈曲連結部の4種類の連結部により連結されている請求項1に記載の生体内留置用ステント。
【請求項4】
前記頂点間屈曲連結部は、前記ステントの軸方向に対して螺旋的となるように配置されている請求項1ないし3のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項5】
前記中央部間屈曲連結部は、前記ステントの軸方向に対して螺旋的となるように配置されている請求項1ないし4のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項6】
前記ステントは、隣り合う環状体間が、少なくとも前記頂点間屈曲連結部と前記中央部間屈曲連結部により連結された第1の連結形態と、隣り合う環状体間が、少なくとも前記中央部頂点間屈曲連結部と前記頂点中央部間屈曲連結部により連結された第2の連結形態とを軸方向に交互に有するものである請求項1に記載の生体内留置用ステント。
【請求項7】
前記頂点間屈曲連結部は、2つの一端側屈曲部と2つの他端側屈曲部を有している請求項1ないし6のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項8】
前記中央部間屈曲連結部は、1つのみの一端側屈曲部と1つのみの他端側屈曲部を有している請求項1ないし7のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項9】
前記中央部頂点間屈曲連結部および前記頂点中央部間屈曲連結部は、1つのみの一端側屈曲部と1つのみの他端側屈曲部を有している請求項1ないし8のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項10】
前記連結部の一端側屈曲部および他端側屈曲部は、前記環状体の屈曲部間に進入している請求項1ないし9のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項11】
前記ステントは、前記ステントの軸方向に同じ種類の連結部が直線上に連続しないように配置されている請求項1ないし10のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項12】
前記ステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものである請求項1ないし11のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項13】
ステント収納用筒状部材と、該ステント収納用筒状部材の先端部内に収納された請求項12のステントと、前記ステントを前記ステント収納用筒状部材の先端より放出するための放出機構とを備えることを特徴とする生体器官拡張器具。
【請求項1】
生体内への留置操作時に変形することにより生体内組織に密着する生体内留置用ステントであって、
前記ステントは、線状構成要素により環状に形成され、複数の一端側屈曲部および複数の他端側屈曲部を有する環状体が、軸方向に複数配列するとともに、隣り合う環状体が連結部により連結されており、さらに、
前記ステントは、前記連結部として、隣り合う一端側の前記環状体の他端側屈曲部の頂点と他端側の前記環状体の一端側屈曲部の頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する頂点間屈曲連結部と、隣り合う一端側の前記環状体の前記一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端側の前記環状体の前記一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する中央部間屈曲連結部と、隣り合う一端側の前記環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部と他端側の前記環状体の一端側屈曲部の頂点間を連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する中央部頂点間屈曲連結部と、隣り合う一端側の前記環状体の他端側屈曲部の頂点と他端側の前記環状体の一端側屈曲部と他端側屈曲部を結ぶ線状部の中央部とを連結するとともに少なくとも1つの一端側屈曲部および他端側屈曲部を有する頂点中央部間屈曲連結部とからなる4種類の連結部のうち、前記頂点間屈曲連結部と前記中央部間屈曲連結部を含む少なくとも3種類の連結部を備え、かつ、前記隣り合う環状体間は、少なくとも2つの異なる種類の前記連結部により連結されていることを特徴とする生体内留置用ステント。
【請求項2】
すべての隣り合う環状体間は、前記頂点間屈曲連結部と、前記中央部間屈曲連結部と、前記中央部頂点間屈曲連結部または前記頂点中央部間屈曲連結部の3種類の連結部により連結されている請求項1に記載の生体内留置用ステント。
【請求項3】
すべての隣り合う環状体間は、前記頂点間屈曲連結部と、前記中央部間屈曲連結部と、前記中央部頂点間屈曲連結部と、前記頂点中央部間屈曲連結部の4種類の連結部により連結されている請求項1に記載の生体内留置用ステント。
【請求項4】
前記頂点間屈曲連結部は、前記ステントの軸方向に対して螺旋的となるように配置されている請求項1ないし3のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項5】
前記中央部間屈曲連結部は、前記ステントの軸方向に対して螺旋的となるように配置されている請求項1ないし4のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項6】
前記ステントは、隣り合う環状体間が、少なくとも前記頂点間屈曲連結部と前記中央部間屈曲連結部により連結された第1の連結形態と、隣り合う環状体間が、少なくとも前記中央部頂点間屈曲連結部と前記頂点中央部間屈曲連結部により連結された第2の連結形態とを軸方向に交互に有するものである請求項1に記載の生体内留置用ステント。
【請求項7】
前記頂点間屈曲連結部は、2つの一端側屈曲部と2つの他端側屈曲部を有している請求項1ないし6のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項8】
前記中央部間屈曲連結部は、1つのみの一端側屈曲部と1つのみの他端側屈曲部を有している請求項1ないし7のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項9】
前記中央部頂点間屈曲連結部および前記頂点中央部間屈曲連結部は、1つのみの一端側屈曲部と1つのみの他端側屈曲部を有している請求項1ないし8のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項10】
前記連結部の一端側屈曲部および他端側屈曲部は、前記環状体の屈曲部間に進入している請求項1ないし9のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項11】
前記ステントは、前記ステントの軸方向に同じ種類の連結部が直線上に連続しないように配置されている請求項1ないし10のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項12】
前記ステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものである請求項1ないし11のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項13】
ステント収納用筒状部材と、該ステント収納用筒状部材の先端部内に収納された請求項12のステントと、前記ステントを前記ステント収納用筒状部材の先端より放出するための放出機構とを備えることを特徴とする生体器官拡張器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−165926(P2012−165926A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30243(P2011−30243)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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