説明

生体内組織閉鎖具

【課題】生体内組織膜に形成された傷孔を容易かつ確実に閉じることができる生体内組織閉鎖具を提供すること。
【解決手段】クリップ4は、クリップ本体40と、糸46とを有している。クリップ本体40は、シール部41と、変形可能な変形部42と、シール部41と変形部42とを接続し、傷孔を挿通する接続部44とで構成されている。シール部41の変形部42側の面および側面と、変形部42が第2の形状になったときの変形部42のシール部41に対する対向面およびその対向面に対応する部位の側面には、それぞれ、その外表面を覆うように膨潤部47が設けられている。各膨潤部47は、それぞれ、液体と接触し、その液体を吸収して膨潤する膨潤性材料で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内組織閉鎖装具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血管や他の生体内組織中にカテーテル等の診断或いは治療用装置を挿入してなされる低侵襲手術が広く行なわれている。例えば、心臓の冠状動脈の狭窄の治療においては、その治療処置を行なうために血管内へカテーテル等の器具を挿入することが必要になる。
【0003】
このようなカテーテルの血管内への挿入は、通常、大腿部に形成した穿刺孔を介して行なわれる。従って、治療処置が終了した後に、穿刺孔の止血を行なう必要があるが、大腿動脈からの出血時の血圧(出血血圧)は高いため、医療従事者が長時間の間、手指で押さえ続ける(用手圧迫)等の過酷な作業が必要となる。
【0004】
近年、このような止血作業を容易かつ確実に行なうために、傷穴から挿入して血管に形成された孔(血管壁を貫通する傷孔)を閉じる種々の装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載されている生体内組織閉鎖具は、生体内組織膜の一方の面側から傷孔および傷孔の周辺部を覆う板状のシール部と、シール部に対して略垂直な方向に伸び、シール部に対して略平行な方向に縮小した第1の形態と、シール部に対して略垂直な方向に縮み、シール部に対して略平行な方向に拡張した第2の形態との間において変形可能である枠状をなす変形部と、変形部が第1の形態と第2の形態との間の所定の形態になった状態で、その状態を保持する糸状体とを有している。この生体内組織閉鎖具は、変形部が血管壁の外側から傷孔および傷孔の周辺部を覆い、シール部が血管壁の内側から傷孔および傷孔の周辺部を覆い、これらシール部と変形部とで血管壁を挟み込み、傷穴を閉じるようになっている。
【0006】
この特許文献1の生体内組織閉鎖具では、止血性を向上させるという観点からは、シール部および変形部が大きいことが好ましく、また、円滑に止血作業を行うという観点からは、シール部および変形部が小さいことが好ましく、これらは、相反するものである。
【0007】
すなわち、特許文献1の生体内組織閉鎖具では、シール部や変形部を大きくすると、止血作業の際、シール部や変形部が血管内において好ましくない箇所で血管壁に引っ掛かり易くなるという欠点がある。また、シール部や変形部を小さくすると、止血性が低下し、また、シール部が傷孔から血管の外側に抜けてしまう虞がある。
【0008】
さらに、患者の血管の肉厚(厚み)や状態、血管の周辺組織の状態等によって、止血効果が左右されてしまう虞もある。
【0009】
【特許文献1】特開2006−167311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、生体内組織膜に形成された傷孔を容易かつ確実に閉じることができる生体内組織閉鎖具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)〜(20)の本発明により達成される。
(1) 生体内組織膜を貫通する傷孔を閉じる生体内組織閉鎖具であって、
前記生体内組織膜の一方の面側から前記傷孔および前記傷孔の周辺部を覆う板状のシール部と、
前記生体内組織膜の他方の面側から前記シール部とで前記傷孔を挟むような形状に変形し得る変形部と、
前記変形部を前記形状に保持する保持手段とを有し、
当該生体内組織閉鎖具の外表面の少なくとも一部に、液体と接触して膨潤する材料で構成された膨潤部が設けられていることを特徴とする生体内組織閉鎖具。
【0012】
(2) 前記膨潤部は、前記シール部および前記変形部の少なくとも一方に設けられている上記(1)に記載の生体内組織閉鎖具。
【0013】
(3) 前記膨潤部は、前記シール部の前記変形部側の面および側面に設けられている上記(1)または(2)に記載の生体内組織閉鎖具。
【0014】
(4) 前記変形部は、前記シール部に対して略垂直な方向に伸び、前記シール部に対して略平行な方向に縮小した第1の形状と、前記シール部に対して略垂直な方向に縮み、前記シール部に対して略平行な方向に拡張した第2の形状との間において変形可能である枠状をなしている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【0015】
(5) 前記膨潤部は、前記変形部が前記第2の形状になったときの該変形部の前記シール部に対する対向面および該対向面に対応する部位の側面に設けられている上記(4)に記載の生体内組織閉鎖具。
【0016】
(6) 前記変形部は、パンタグラフ様形状をなしている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【0017】
(7) 前記シール部と前記変形部とを接続し、前記傷孔を挿通する接続部を有し、該接続部の外表面には前記膨潤部が設けられていない上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【0018】
(8) 前記膨潤部は、該膨潤部を構成する材料を含有する溶液を塗布し、乾燥させたものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【0019】
(9) 当該生体内組織閉鎖具の前記膨潤部を形成する部位の表面は、前記膨潤部を形成しない部位の表面に比べて、親水性が高い上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【0020】
(10) 当該生体内組織閉鎖具の少なくとも前記膨潤部を形成する部位の表面は、親水化処理が施されている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【0021】
(11) 当該生体内組織閉鎖具の少なくとも前記膨潤部を形成する部位の表面は、粗面化処理が施されている上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【0022】
(12) 前記膨潤部は、ゲルポリマーで構成されている上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【0023】
(13) 前記ゲルポリマーは、その分子構造の一部にアニオン性基を有し、該アニオン性基を脱プロトン化する液体との接触により膨潤するものである上記(12)に記載の生体内組織閉鎖具。
【0024】
(14) 前記ゲルポリマーは、その分子構造の一部にカチオン性基を有し、該カチオン性基をプロトン化する液体との接触により膨潤するものである上記(12)に記載の生体内組織閉鎖具。
【0025】
(15) 前記ゲルポリマーは、モノマー成分として、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種を含むものである上記(12)ないし(14)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【0026】
(16) 前記ゲルポリマーは、架橋剤として、エチレン性不飽和化合物を含むものである上記(12)ないし(15)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【0027】
(17) 前記ゲルポリマーは、pHが7.1〜7.8の液体との接触により膨潤するものである上記(12)ないし(16)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【0028】
(18) 前記ゲルポリマーは、血液および前記傷孔の周辺の体液との接触により、それぞれ膨潤するものである上記(12)ないし(16)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【0029】
(19) 前記ゲルポリマーは、その体積が3〜5倍になるように膨潤するものである上記(12)ないし(18)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【0030】
(20) 前記シール部および前記変形部は、それぞれ、生体吸収性材料で構成されている上記(1)ないし(19)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、膨潤部が膨潤することにより、生体内組織閉鎖具が大きくなるので、血管壁等の生体内組織膜に形成された傷孔の閉鎖性が向上し、傷孔を確実に閉じる(閉鎖する)ことができ、完全に止血することができる。また、シール部が傷孔から外側に抜けてしまうのを防止することもできる。
【0032】
また、膨潤部が膨潤する前の生体内組織閉鎖具が小さい状態で、傷孔を閉じる作業を行うことにより、その作業を容易かつ円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の生体内組織閉鎖具を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0034】
図1は、生体内組織閉鎖装置の実施形態を示す斜視図、図2は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の配置装置の分解斜視図(各部材(部品)を示す図)、図3は、図1に示す生体内組織閉鎖装置が備える本発明の生体内組織閉鎖具の実施形態を示す斜視図、図4は、図3に示す生体内組織閉鎖具の結び目の一例を示した説明図、図5は、図3に示す生体内組織閉鎖具の結び目の他例を示した説明図、図6は、図3に示す生体内組織閉鎖具のクリップ本体の図3中のA−A線での断面図、図7は、図3に示す生体内組織閉鎖具のクリップ本体の図3中のB−B線での断面図、図8は、図3に示す生体内組織閉鎖具のクリップ本体の図3中のC−C線での断面図である。また、図9は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の糸支持部、ピンおよび糸を示す図であり、図9(a)は、斜視図、図9(b)は、模式的に示した平面図である。また、図10は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の第1チャージ部材の基部を示す断面図、図11は、図1に示す生体内組織閉鎖装置の保持部材を示す斜視図、図12は、図11に示す保持部材の基端側部材および先端側部材を示す斜視図、図13は、図11に示す保持部材を示す断面図である。また、図14〜図21は、それぞれ、図1に示す生体内組織閉鎖装置の作用(動作)を説明するための斜視図であり、図15〜図21の(a)は、手元部側を示し、(b)は、先端部側を示す。
【0035】
なお、図1、図15〜図21では、ケーシングの上カバーの図示を省略し、また、一方(矢印F側)のレールについては、その内部が示されている。
【0036】
また、図1では、破線で丸く囲った部分のカバーチューブの内部および固定チューブの内部を拡大して示す。
【0037】
また、図13では、カバーチューブおよび固定チューブをそれぞれ破線で示し、図14では、固定チューブを破線で示す。
【0038】
また、図15〜図21では、図面が煩雑になるのを避けるため、一部を除き、糸の図示を省略する。
【0039】
また、説明の都合上、図1、図2、図10〜図13、図15〜図21において、図中の矢印Aの方向を「先端」、矢印Bの方向(手元側)を「基端」、矢印Cの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」、図3〜図8および図14において、図中の上側を「基端」、下側を「先端」として説明する。
【0040】
これらの図に示す生体内組織閉鎖装置1は、例えば、血管等の生体管腔、生体内部器官、生体内部組織等の生体内組織膜に形成され、経皮的に貫通した望ましくない孔(生体内組織膜を貫通する傷孔)を閉じる(閉鎖する)装置である。
【0041】
図1、図2および図3に示すように、生体内組織閉鎖装置1は、先端部が生体内組織膜を貫通する傷孔を貫通可能であり、基端側に手元部9を有する長尺状の配置装置(移送・変形手段)3と、配置装置3の先端部において着脱自在に保持(連結)され、生体内組織膜を貫通する傷孔を閉じる生体内組織閉鎖具(閉鎖具)であるクリップ4とを備えている。
【0042】
クリップ4は、クリップ本体(閉鎖具本体)40と、保持手段(固定部)である糸(第1の糸状体)46とを有し、クリップ本体40は、シール部41と、変形可能な変形部42と、シール部41と変形部42とを接続し、傷孔を挿通(貫通)する接続部44とで構成されている。また、糸46は、結び目461および輪462を有している。なお、クリップ4については、後に詳述する。
【0043】
配置装置3は、先端部が傷孔を貫通し、中心部に軸線方向に貫通する貫通孔(内腔)51を有するシース(長尺状の管体)5内に挿入、すなわち、シース5に着脱自在に装着して用いられる(シース5を配置装置3に着脱自在に装着して用いられる)。これらシース5および配置装置3により、長尺状の本体部2が構成される。また、止血作業(傷孔を閉じる作業)の際は、これらシース5および配置装置3の先端部と、クリップ4とが、それぞれ、傷孔を貫通する。すなわち、傷孔から血管等の生体の管腔(生体管腔)内に挿入される。
【0044】
シース5は、略円筒状をなし、その基端部にハブ(コネクタ)52を有している。また、ハブ52の内周側には、図示しないスリットが形成された止血弁(弁体)が設置されている。
【0045】
また、ハブ52の側部には、貫通孔51に連通する管腔(流路)を有するポート部(突起)53が形成されている。
【0046】
また、ハブ52の基端部の外周部には、溝54が周方向に沿って1周に亘って形成されている。
【0047】
このシース5としては、例えば、カテーテルを用いた治療(PCI)や診断(CAG)の処置後に留置されているシース(イントロデューサシース)を用いてもよく、また、この生体内組織閉鎖装置1専用のものであってもよい。
【0048】
なお、本実施形態では、本体部2の構成要素にシース5が含まれているが、本体部2の構成要素にシース5が含まれていなくてもよい。
【0049】
配置装置3は、クリップ4(クリップ4の糸46)に対して着脱自在に連結し、クリップ4(クリップ4の糸46)を保持する糸(第2の糸状体)8と、先端部が傷孔を貫通可能な長尺状の第1の管状部材(長尺部)であるカバーチューブ(カバー部材)(カバー手段)6と、先端部が傷孔を貫通可能な長尺状の第2の管状部材である固定チューブ(係止部材)(係止手段)7と、初期状態(組み立て直後の状態)においてカバーチューブ6の先端部に位置し、クリップ4を収納(保持)し、カバーチューブ6に沿って基端側(基端方向)に移動可能な保持部材(インサータ)18と、固定チューブ7およびカバーチューブ6の基端側に設けられた手元部9とを有している。保持部材18は、基端側に移動する際、クリップ4が保持部材18に保持された状態から、変形部42をカバーチューブ6の後述する開口部61に押し込み、クリップ4の変形部42がカバーチューブ6の開口部61(先端部)に保持された状態にする機能を有する部材であるが、この保持部材18は後に詳述する。
【0050】
クリップ4(クリップ4の糸46)は、この配置装置3の先端部において、糸8により着脱自在に保持されており、これとともに、さらに、初期状態から保持部材18を基端側に移動させるまでは、保持部材18に収納され、保持されている。なお、糸8は、クリップ4における変形部42のシール部41と反対側(先端側)の部分が変形部42のシール部41側(根本部側)(基端側)の部分に対して相対的に移動(変位)し得るようにクリップ4を保持している。
【0051】
また、固定チューブ7は、カバーチューブ6の管腔内(内側)に、同心的に設置(挿入)されており、カバーチューブ6は、固定チューブ7に対して、それらの長手方向に移動(摺動)し得るようになっている。これらカバーチューブ6および固定チューブ7は、シース5を装着する際、そのシース5の貫通孔51に挿入される。また、手元部9は、これら固定チューブ7およびカバーチューブ6の基端側に設けられている。
【0052】
固定チューブ7は、比較的硬い構成材料で形成されている。この固定チューブ7の横断面での形状は、先端部71では、略楕円形(円を潰したような形状)をなし、それよりも基端側の部位では、略円形をなしている。
【0053】
また、カバーチューブ6の先端部には、クリップ4の変形部42が挿入され、その変形部42を着脱自在に保持(装着)し得る開口部61が形成されている。この開口部61は、固定チューブ7の先端よりも先端側に位置している。また、カバーチューブ6の横断面での形状は、先端部、すなわち開口部61では、略楕円形(円を潰したような形状)をなし、また、その直近の基端側の部位(固定チューブ7の先端部71に対応する部位)では、固定チューブ7の先端部71に対応した形状、すなわち、略楕円形に変形し、また、それよりも基端側の部位では、略円形をなしている。
【0054】
また、糸8は、固定チューブ7の管腔内(内側)に設置(挿入)されており、その固定チューブ7に対して、固定チューブ7の長手方向に移動し得るようになっている。
【0055】
また、配置装置3のカバーチューブ6および固定チューブ7をシース5の基端側から貫通孔51に挿入し、そのシース5を最も基端側に位置させたとき、シース5の先端からカバーチューブ6の開口部61が露出し(シース5の先端がカバーチューブ6の先端より基端側に位置し)、シース5の先端が固定チューブ7の先端より基端側に位置するようになっている。
【0056】
なお、カバーチューブ6により、固定チューブ7の外表面が覆われ、その開口部61によりクリップ4の変形部42の少なくとも一部が覆われる。
【0057】
一方、固定チューブ7は、糸8によりクリップ4の糸46が基端方向へ牽引される際、固定チューブ7の先端部71にクリップ4の糸46の結び目461が係止され、さらに、この結び目461を介して変形部42が係止され(間接的に係止され)、これにより結び目461を相対的に先端方向へ移動させることにより、糸46を締め付けて変形部42を変形させる機能を有する。
【0058】
図1および図2に示すように、手元部9は、ケーシング(本体)11と、カバーチューブ6を支持するカバーチューブ支持部(カバー部材支持部)14と、糸8を支持する糸支持部(保持部材支持部)15と、糸支持部15に回動可能に設置され、糸8を糸支持部15に着脱自在に連結するピン(連結手段)170と、第1チャージ部材32と、第2チャージ部材33と、糸支持部15と第2チャージ部材33とを着脱自在に連結するスライド連結部材(連結手段)34と、弾性部材(発動部材)である1対のコイルバネ(バネ)22と、1対のガイドバー37と、レバー(摘み)28と、レバー28の下側に接合されているロック部29と、ストッパー35とを有している。なお、第1チャージ部材32および第2チャージ部材33により、チャージ手段が構成される。
【0059】
ケーシング11は、上方に位置する上カバー11aと、下方に位置し、上カバー11aに接合された下カバー11bとを有している。このケーシング11は、外観形状が略直方体形状をなす筒状(角筒状)をなし、その基端側は、丸みを帯びている。
【0060】
ケーシング11の先端部には、シース5を手元部9(ケーシング11)に装着する機構、すなわち、保持部材18および後述する第1チャージ部材32の基部321を介してシース5をケーシング11に固定する機構として、第1チャージ部材32の基部321が固定されるコネクタ31が設けられている。このコネクタ31は、その基部321が挿入される内管部311と、内管部311の外周に、周方向に回動(回転)可能に設置された外管部312とで構成されている。
【0061】
内管部311の周壁には、先端に開放する直線状の長穴313が形成されており、また、外管部312の周壁には、先端に開放する螺旋状の長穴314が形成されている。そして、外管部312は、内管部311に対して、その外管部312の長穴314の先端部と内管部311の長穴313の先端部とが一致するまで、所定方向に回転し、長穴314の基端部と長穴313の基端部とが一致するまで、前記と逆方向に回転し得るようになっている。
【0062】
また、外管部312の外周面には、操作の際に指掛け部として作用する複数(図示例では、4つ)のリブ(凸条)315が、等間隔(等角度間隔)で形成されている。
【0063】
また、ケーシング11の中央部であって、上カバー11aの内側および下カバー11bの内側には、それぞれ、後述する第1チャージ部材32の対応する棒状体322の基端部325が挿入される溝91が、互いに対向するように、配置装置3(ケーシング11)の長手方向に沿って形成されている。
【0064】
また、ケーシング11の基端部であって、下カバー11bの内側には、リブ(凸条)92が、配置装置3(ケーシング11)の長手方向に沿って形成されており、このリブ92の先端部の先端側に、段差部921が形成されている。
【0065】
また、ケーシング11の先端部であって、下カバー11bの内側には、1対の突起93が形成されている。後述する第1チャージ部材32は、その基部321の基端部が、この1対の突起93に当接することにより、突起93より基端方向への移動が阻止される。
【0066】
また、ケーシング11内の中央部には、ガイドバー支持部38が設けられ(固定され)、基端部には、ガイドバー支持部39が設けられている(固定されている)。
【0067】
1対のガイドバー37は、それぞれ、ガイドバー支持部38とガイドバー支持部39との間に配置され、各ガイドバー37の先端部は、それぞれ、ガイドバー支持部38に保持(支持)され、基端部は、それぞれ、ガイドバー支持部39に保持(支持)されている。また、各ガイドバー37は、それぞれ、配置装置3(ケーシング11)の長手方向に沿って、互いに平行になるように配置されている。
【0068】
なお、各ガイドバー37は、それぞれ、図示例では、パイプ(管)で構成されているが、これに限らず、例えば、中実であってもよい。
【0069】
また、ケーシング11内の側部には、ガイドバー支持部38からガイドバー支持部39に渡って、1対のレール36が設けられている(固定されている)。各レール36は、それぞれ、配置装置3(ケーシング11)の長手方向に沿って、互いに平行になるように配置されている。
【0070】
各レール36には、それぞれ、その長手方向(軸方向)に沿って延在する溝361が形成されている。各溝361は、互いに対向するように、レール36の内側に形成されている。
【0071】
また、各レール36の溝361の底部(側壁)には、それぞれ、後述する1対のコイルバネ22が発動(復元)する際、後述するスライド連結部材34の対応する棒状体342の基端部347が挿入される孔部362が形成されている。各孔部362は、それぞれ、レール36の中央部付近に位置している。
【0072】
また、ケーシング11の内部には、第1チャージ部材32と、第2チャージ部材33と、ガイドバー支持部38と、スライド連結部材34と、糸支持部15とが、それぞれ、ケーシング11に対して、その配置装置3(ケーシング11)の長手方向に移動可能に設置されている。
【0073】
この場合、先端側から基端側に向って、第1チャージ部材32、第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15の順番に配置されている。そして、第2チャージ部材33は、その先端部と基端部との間にガイドバー支持部38が位置するように配置されている。
【0074】
また、カバーチューブ支持部14は、ガイドバー支持部38と第2チャージ部材33の基端部との間に位置するように配置されている。
【0075】
また、第1チャージ部材32の基部321は、コネクタ31より先端側に位置している。
【0076】
スライド連結部材34は、基部341と、基部341の両側部から基端方向に向って突出する1対の棒状体342とで構成されている。
【0077】
各棒状体342の基端部347には、それぞれ、互いに対向し、内側に向って突出する爪343が立設されている。
【0078】
また、基部341には、1対のガイドバー37が挿通する1対の孔部344が形成されている。
また、基部341の中央部には、糸8が挿通する孔部345が形成されている。
【0079】
また、基部341には、上方に向って突出し、ロック部29の突出部291に係止される突起346が形成されている。
【0080】
図1、図2および図9に示すように、糸支持部15の先端部の両側部には、それぞれ、スライド連結部材34の対応する爪343と係合する突起155が形成されている。
【0081】
また、糸支持部15の先端部より基端側には、上方および基端に開放した凹部150が形成されている。
【0082】
また、糸支持部15の先端部には、糸8が挿通する1対の孔部156が形成されている。さらに、糸支持部15の先端部の1対の孔部156の間には、糸8が挿通する孔部157が形成されている。
【0083】
また、糸支持部15の先端部には、1対のガイドバー37が挿通する1対の孔部158が形成されている。
【0084】
ピン170は、基部171と、基部171の中央部に立設された突起172とで構成されている。
【0085】
このピン170は、その基部171において、糸支持部15に対し、回動自在に設置されており、突起172(ピン170)が起立した起立状態と、突起172(ピン170)が伏倒した伏倒状態とを採り得るようになっている。そして、ピン170は、基部171の下面(裏面)がケーシング11のリブ92の上面に当接することにより、起立状態に保持されている。なお、ピン170は、糸支持部15の凹部150に配置されている。
【0086】
ストッパー35は、先端側に隙間が形成された(先端側が開放している)C字状のストッパー本体351と、ストッパー本体351を支持する支持部352とで構成されており、支持部352は、ガイドバー支持部39に設置(固定)されている。このストッパー35のストッパー本体351には、ピン170の突起172が挿入されている。これにより、ストッパー35によって、ピン170を介して糸支持部15が保持(ロック)され、糸支持部15の移動が阻止される。すなわち、ストッパー35により、ピン170および糸支持部15が、ケーシング11に対して先端方向へ移動するのが阻止されている。
【0087】
また、ストッパー35のうちの少なくともストッパー本体351は、適度な硬さを有し、かつ、弾性変形し得るように構成されている。また、ストッパー本体351の先端側の隙間の長さ(間隙距離)は、ピン170の突起172の外径(直径)より小さく設定されている。
【0088】
これにより、糸8を介して糸支持部15(ピン170)に加わる力、すなわち、糸8を介して糸支持部15が先端方向に引っ張られる力(引っ張り力)が、所定のしきい値(予め定めた値)を超えるまでは、糸支持部15の移動は阻止されるが、前記しきい値を超えると、ピン170の突起172が、ストッパー本体351の隙間から抜けて、糸支持部15が、ケーシング11に対して先端方向に移動し得るようになっている。この場合、後述するように、糸支持部15(糸支持部15、スライド連結部材34および第2チャージ部材33)が先端方向に移動し得るようになることで、コイルバネ22を収縮状態(変形状態、活性状態)に保持する規制の解除が可能になる。換言すれば、コイルバネ22を収縮状態に保持する規制の解除は、糸支持部15に加わる力が所定のしきい値を超えたことを条件に可能となる。
【0089】
前記しきい値は、150〜1500gf程度であるのが好ましく、200〜1000gf程度であるのがより好ましい。
【0090】
これにより、クリップ4のシール部41が傷孔およびその周辺組織に確実に当接する前に、血管内等でクリップ4が多少引っ掛かったとしても、ピン170がストッパー35から抜ける(ロックが解除される)前にクリップ4が外れることが期待でき、そのクリップ4を傷孔まで移動させ、シール部41を傷孔およびその周辺組織に当接させることができる。また、クリップ4によって傷孔およびその周辺組織が基端方向に過度に引っ張られてしまう前に、ピン170がストッパー35から抜ける(ロックが解除される)ことが期待でき、安全かつ確実に、シール部41を傷孔およびその周辺組織に当接させることができる。
【0091】
糸8は、1本の糸(糸状体)を折り返してなり、一方の端部が折り返し部81となる二重糸(二重糸状体)で構成されている。また、糸8は、1本の糸の状態で糸支持部15の各孔部156を挿通して、糸支持部15の先端部に1回巻き付けられた後、その両端部が結び付けられ、糸支持部15に取り付けられている。
【0092】
この糸8は、クリップ4(クリップ4の糸46の輪462)を挿通して配置装置3の先端部で折り返されてクリップ4を保持した状態で、糸支持部15の孔部157を挿通し、さらに、その折り返し部81がピン170の突起172に引っ掛けられ、そのピン170により折り返し部81が糸支持部15に着脱自在に連結されている。そして、前述したように、他方の端部(折り返し部81と反対側の端部)は、糸支持部15に取り付けられている。
【0093】
第2チャージ部材33は、外形の全体形状が略四角柱(直方体)の籠状(枠状)をなしている。
【0094】
この第2チャージ部材33の先端部には、カバーチューブ6が挿通する孔部331が形成されている。
【0095】
また、第2チャージ部材33の基端部には、1対のガイドバー37が挿通する1対の孔部333が形成されている。さらに、第2チャージ部材33の基端部の1対の孔部333の間には、固定チューブ7が挿通する孔部332が形成されている。
【0096】
また、第2チャージ部材33の基端部には、その上部および下部から基端方向に向って突出する1対の突出部334が立設されている。各突出部334の基端部には、それぞれ、互いに対向し、内側に向って突出する爪335が立設されている。この1対の爪335は、スライド連結部材34の基部341に係合する。
【0097】
また、第2チャージ部材33の先端部の上部および下部には、1対の凹部336が形成されている。
【0098】
第1チャージ部材32は、基部321と、基部321の基端部の上部および下部から基端方向に向って突出する1対の棒状体322とで構成されている。
【0099】
各棒状体322の基端部325には、それぞれ、互いに対向し、内側に向って突出する凸部323が立設されている。この1対の凸部323は、第2チャージ部材33の先端部の1対の凹部336に係合する。
【0100】
また、図10に示すように、第1チャージ部材32の基部321の中央部には、カバーチューブ6が挿通するとともに、保持部材18が挿入される孔部324が形成されている。そして、この孔部324内には、1対の爪326が設けられている。
【0101】
また、基部321の外側面(外周面)には、側方に向かって突出する突起327が形成されている。この突起327は、内管部311の長穴313に対応する位置に配置されている。ここで、前記コネクタ31の内管部311の長穴313の先端部の位置と、外管部312の長穴314の先端部の位置とが一致している状態で、基部321の突起327が内管部311の長穴313の先端部および外管部312の長穴314の先端部に位置するように、第1チャージ部材32を基端方向に移動させて基部321を内管部311内に挿入し、外管部312を所定方向(図示例では、先端方向から見て反時計回り)に回転させると、外管部312の長穴314に臨む縁部により、突起327が、基端方向に押され、内管部311の長穴313に沿って基端方向に徐々に移動し、基部321がケーシング11に固定される。
【0102】
カバーチューブ支持部14には、1対のガイドバー37が挿通する1対の孔部143が形成されており、カバーチューブ6の基端部は、カバーチューブ支持部14の1対の孔部143の間に固定(支持)されている。
【0103】
また、カバーチューブ6内に挿入されている固定チューブ7の基端部は、スライド連結部材34の基部341に嵌合(固定)されている。
【0104】
この固定チューブ7の本体の外径(直径)は、第2チャージ部材33の基端部の孔部332の内径(直径)より小さく設定されている。
【0105】
前記第2チャージ部材33の1対の孔部333、カバーチューブ支持部14の1対の孔部143、スライド連結部材34の1対の孔部344および糸支持部15の1対の孔部158には、それぞれ、1対のガイドバー37が挿通している。さらに、カバーチューブ支持部14の両側部およびスライド連結部材34の1対の棒状体342は、それぞれ、1対のレール36の溝361に挿入されている。
【0106】
これにより、第2チャージ部材33および糸支持部15は、それぞれ、各ガイドバー37によって、そのガイドバー37の長手方向(軸方向)に沿って案内される。
【0107】
また、カバーチューブ支持部14およびスライド連結部材34は、それぞれ、各ガイドバー37および各レール36によって、そのガイドバー37およびレール36の長手方向(軸方向)に沿って案内される。
【0108】
ここで、図1に示す初期状態(組み立て直後の状態)において、第2チャージ部材33の先端部の1対の凹部336には、第1チャージ部材32の1対の凸部323が係合している。これにより、第1チャージ部材32と、第2チャージ部材33とは、一体的に移動する。
【0109】
また、初期状態において、糸支持部15の先端部の1対の突起155には、スライド連結部材34の1対の爪343が係合している。これにより、スライド連結部材34と、糸支持部15とは、一体的に移動する。但し、厳密には、ストッパー35やロック部29により、スライド連結部材34および糸支持部15の移動は、阻止されている。
【0110】
また、初期状態において、第2チャージ部材33と、スライド連結部材34とは、所定距離離間している。これにより、第1チャージ部材32および第2チャージ部材33と、スライド連結部材34および糸支持部15とは、別々に移動する。
【0111】
そして、後述するように、図15や図16に示す使用の際のチャージ状態(各コイルバネ22が活性状態である収縮状態に保持された状態)においては、第2チャージ部材33の1対の爪335が、スライド連結部材34の基部341に係合するとともに、第2チャージ部材33の先端部の1対の凹部336と、第1チャージ部材32の1対の凸部323との係合が外れる。これにより、第2チャージ部材33と、スライド連結部材34と、糸支持部15と、固定チューブ7とが、一体的に移動するようになり、糸支持部15が固定チューブ7に対して移動(基端方向に移動)するのが阻止される。
【0112】
また、クリップ4と、糸支持部15と、ケーシング11とを、配置装置3の長手方向に沿って連結する部材のうちに、バネのような配置装置3の長手方向に伸張する部材が含まれていないので、チャージ状態において、糸8を介して糸支持部15に加わる力が前記所定のしきい値を超えるまでは、クリップ4と、ケーシング11との間の距離は略一定に保持されている。
【0113】
また、1対のコイルバネ22は、それぞれ、1対のガイドバー37の外周に配置されている。各コイルバネ22は、それぞれ、スライド連結部材34の孔部344を挿通し、第2チャージ部材33の基端部と、糸支持部15の先端部との間に位置しており、その先端は、第2チャージ部材33の基端部に当接し、基端は、糸支持部15の先端部に当接している。なお、初期状態において、各コイルバネ22は、それぞれ、自然状態または若干、収縮した状態にある。
【0114】
レバー28は、初期状態においては、スライド連結部材34および糸支持部15と、ケーシング11との相対的な移動が阻止された状態(ロック状態)と、これらの相対的な移動が可能な状態(ロック解除状態)とを切り換え、また、チャージ状態においては、第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15、固定チューブ7および1対のコイルバネ22と、ケーシング11との相対的な移動が阻止された状態(ロック状態)と、これらの相対的な移動が可能な状態(ロック解除状態)とを切り換える操作を行なうための操作部(操作部材)である。
【0115】
このレバー28は、ケーシング11の上カバー11aの外側の上面に、図1および図2に示す矢印aおよびbの方向に移動(スライド)可能に設置されている。
【0116】
そして、レバー28の下側には、ロック部29が接合されており、レバー28とロック部29とが一体的に移動するようになっている。このロック部29は、ケーシング11の上カバー11aの内側に位置している。また、ロック部29には、下方に向って突出する突出部291が立設されている。
【0117】
レバー28が、図1および図2に示すロック位置に位置しているときは、ロック部29の突出部291がスライド連結部材34の突起346の先端側に当接して、突起346が突出部291に係止され、これにより、スライド連結部材34の先端方向への移動が阻止される。すなわち、ロック部29によりスライド連結部材34がロックされ、初期状態においては、スライド連結部材34および糸支持部15の先端方向への移動が阻止され、また、チャージ状態においては、第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15、固定チューブ7および各コイルバネ22の先端方向への移動が阻止され、これにより各コイルバネ22を発動させる動作が禁止される。
【0118】
また、レバー28を矢印bの方向に移動させると(ロック解除位置に位置させると)、ロック部29の突出部291がスライド連結部材34の突起346より側方(突起346のない位置)に移動(退避)し、突出部291への突起346の係止が解除される。これにより、前記ストッパー35による糸支持部15の移動阻止状態の解除(ロックの解除)を条件に、スライド連結部材34は、先端方向へ移動可能になる。すなわち、ロック部29によるスライド連結部材34のロックが解除され、チャージ状態においては、ストッパー35による糸支持部15の移動阻止状態の解除を条件に、第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15、固定チューブ7および各コイルバネ22は、先端方向へ移動可能になり、これにより各コイルバネ22を発動させる動作が可能になる。
【0119】
なお、これらレバー28およびロック部29により、トリガ手段が1対のコイルバネ(発動部材)22を発動させる動作を禁止するロック状態と、前記動作を可能にするロック解除状態とを切り換える切換手段が構成される。
【0120】
次に、クリップ4について説明する。
図3に示すように、クリップ(生体内組織閉鎖具)4は、クリップ本体(閉鎖具本体)40と、保持手段である糸(第1の糸状体)46とを有している。
【0121】
クリップ本体40は、シール部41と、変形可能な変形部42と、シール部41と変形部42とを接続し、傷孔を挿通する接続部44とで構成されている。これらシール部41、変形部42および接続部44、すなわち、クリップ本体40は、同一の材料で一体的に形成されているのが好ましい。
【0122】
シール部41は、生体内組織膜の一方の面(内面)側から傷孔の周辺部(生体内組織膜の傷孔を含む部分)に密着して傷孔および傷孔の周辺部を覆う平面部(平面)412を有する部材であり、板状をなしている。
【0123】
このシール部41における後述する変形部42が接続された面(図3中上側の面)は、略平面をなしている。また、シール部41は、接続部44が設けられている部位を中心にして遥動し得る(変形部42に対する角度を変更し得る)ようになっている。
【0124】
また、シール部41は、接続部44から図3中右側の部位と、図3中左側の部位とで、その長さが異なっている。すなわち、接続部44から左側の部位の長さは、右側の部位の長さよりも長い。これにより、血管壁に形成された傷孔を閉じる際、シール部41の長い方の部位を血流の上流側に位置させることにより、クリップ4が傷孔を閉じて目的部位に留置されたとき、シール部41が血管壁に対して傾斜してシール部41の図3中左側の端部が血管壁に埋もれてしまうのを防止することができる(シール部41と血管壁とを確実に略平行にすることができる)。
【0125】
変形部42は、略菱形の枠状体からなるパンタグラフ様形状をなしており、接続部44を介してシール部41の平面部412の略中央に連結(接続)されている。
【0126】
すなわち、変形部42は、シール部41に対して略垂直な方向に伸び、シール部41に対して略平行な方向に縮小した第1の形状(第1の形態)と、シール部41に対して略垂直な方向に縮み、シール部41に対して略平行な方向に拡張した第2の形状(第2の形態)との間において変形可能である枠状をなしている。従って、この変形部42は、図3に示す基本形状(基本形態)(自然状態)から、傷孔を通過可能な形状(形態)や、生体内組織膜の他方の面(外面)側からシール部41とで生体内組織膜(傷孔)を挟み、傷孔を閉じることが可能な形状(形態)等、前記第1の形状と前記第2の形状との間の任意の形状(形態)に変形することができる。
【0127】
生体内組織膜が、血管壁(生体管腔壁)である場合は、前記一方の面は、血管壁(生体管腔壁)の体表から遠位の面、すなわち、内面であり、前記他方の面は、血管壁(生体管腔壁)の体表から近位の面、すなわち、外面である。
【0128】
ここで、本実施形態では、変形部42は、帯状体を4回屈曲させて四角形の環状をなす形状(帯状体を複数回屈曲させて多角形の環状をなす形状)としたものである。すなわち、変形部42は、4つのリンクを一体的に形成してなり、ヒンジ状に屈曲可能な4つの角部を有する四角形(四角形の枠状)をなしている。そして、図3中上下方向の対角位置にある2つの角部421、422のうちの図3中下側(シール部41側)の角部422が、接続部44を介してシール部41の平面部412略中央に連結され、接続部44の図3中上側の端部に対して移動不可能な不動部となっている。
【0129】
これにより、変形部42は、角部421と角部422とが接近、離間するように変形する、すなわち直行する2方向へ伸縮変形することができ、かつ、シール部41に対し、揺動することもできる。
【0130】
また、2つの角部421、422のうちの図3中上側(シール部41と反対側)の角部421の上面(シール部41と反対側の表面)423は、湾曲凸面をなしている。この変形部42の角部421(変形部42のシール部41と反対側の端部)の近傍には、2つの孔(貫通孔)425および428が形成され、角部422の近傍には、2つの孔(貫通孔)426および427が形成されている。
【0131】
また、変形部42における図3中左右方向の対角位置にある2つの角部よりも上側の部分は、その両側部がそれぞれ細長く切り欠かれており、これにより4つの段差部429が形成されている。各段差部429には、カバーチューブ6の開口部61に変形部42が押し込まれる際、カバーチューブ6の先端が当接する。これにより、変形部42のカバーチューブ6の開口部61への挿入量が規制される。これによって、クリップ4を折り畳んだとき、シール部41をより大きく傾斜させる(寝かせる)ことができ、クリップ4をよりコンパクトにすることができる。
【0132】
また、接続部44は、板状をなしており、その中央付近には、孔(貫通孔)441が形成されている。この接続部44により、シール部41と変形部42の角部422とを所定距離離間させることができる。
【0133】
糸46は、変形部42のシール部41と反対側の端部側と、変形部42のシール部41側の端部側とに掛けられ、クリップ本体40に取り付けられている。本実施形態では、糸46は、変形部42の角部421(変形部42のシール部41と反対側の端部)の近傍および接続部44を貫通した状態で、変形部42の角部421またはその近傍と接続部44とに掛けられている。すなわち、この糸46は、図3中上側から、順次、変形部42の角部421の孔425を挿通(貫通)し、角部422の孔426を挿入し、接続部44の孔441を挿通し、角部422の孔427を挿通し、角部421の孔428を挿通し、その角部421側(変形部42の外側)で、図4または図5に示すような形状の結び目461を形成している。このような結び目は、クリンチ・ノット(Clinch Knot)と呼ばれる。また、結び目461の図3中上側には、糸8が挿通する輪462が形成されている。
【0134】
結び目461は、先端方向、すなわち、図3中下方に移動可能な結び方になっており、この結び目461を、糸46上を先端方向に移動させて糸46を締め付けることにより、変形部42が前記第1の形状と前記第2の形状との間の所定の形状に変形し、その状態を保持(固定)することができる。糸46が、変形部42が前記所定の形状になった状態を保持しているとき、その結び目461は、変形部42のシール部41と反対側の端部、すなわち、角部421に位置する。結び目461は、糸46上を強く締め付けているため、強い力が加えられない限り自然に基端方向に移動することはない。
【0135】
前記結び目461は、固定チューブ7の内径よりも大きく形成され、また、前記輪462は、固定チューブ7の内径よりも小さく形成されている。これにより、固定チューブ7によって、クリップ4の糸46の結び目461を移動させ、糸46を締め付けて変形部42を変形させる際、輪462は、固定チューブ7の管腔内に入ることができ、また、結び目461が固定チューブ7の管腔内に入ってしまうことを防止することができ、確実に、結び目461を移動させることができる。このようにして、糸46は変形部42を所定形状(生体内組織膜の他方の面側からシール部41とで傷孔を挟むような形状)に保持する保持手段として機能する。
【0136】
前述したように、糸8は、糸46の輪462を挿通した状態で、固定チューブ7の管腔内を挿通する。
【0137】
なお、前記糸46がこの糸8を兼用していてもよい。この場合、糸46で変形部42を固定した後、その糸46を結び目461より基端側で、はさみ等で切断すればよい。
【0138】
また、前記糸46は、1本の糸(糸状体)を折り返してなり、一方の端部が折り返し部となる二重糸(二重糸状体)で構成され、その折り返し部により、輪462が形成されていてもよい。
【0139】
前記クリップ4のクリップ本体40の少なくとも一部は、生体吸収性材料で構成されるのが好ましく、クリップ本体40の主要部分が生体吸収性材料で構成されるのがより好ましく、特に、クリップ本体40全体、すなわち、シール部41、変形部42および接続部44は、生体吸収性材料でその全体を一体的に構成されるのが好ましい。これにより、クリップ本体40が所定期間後に生体に吸収され、最終的に生体内に残らないので、人体への影響をなくすことができる。また、糸46も生体吸収性材料で構成されるのが好ましい。
【0140】
用いられる生体吸収性材料としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン等の単体、あるいはこれらの複合体が挙げられる。
【0141】
なお、クリップ4のクリップ本体40の構成材料としては、生体吸収性材料に限らず、例えば、各種の樹脂材料(ポリマー)や金属材料等の生体適合性材料を用いることができる。また、糸46の構成材料も生体吸収性材料には限定されない。
【0142】
また、前記クリップ4のクリップ本体40として、特に、変形部42の変形機能に求められる材料物性としては、ヒンジ特性に優れたものであることが望ましい。具体的には、引張り強さ250〜500(Kg/cm)、伸び150〜800%、引張弾性率8〜20(×10Kg/cm)、曲げ強さ300〜700(Kg/cm)のものが好ましい。これらの物性値を満たすことによって、クリップ本体40は、ヒンジ特性に優れ、変形部42が所望の変形能を有することができる。
【0143】
図14に示すように、クリップ4の変形部42がカバーチューブ6の先端部から離脱し、その変形部42が変形可能な状態で、糸8によりクリップ4の糸46が基端方向へ牽引されると、固定チューブ7の先端部71にクリップ4の糸46の結び目461が係止され、さらに、この結び目461を介して変形部42が係止され(間接的に係止され)、これにより結び目461が先端方向に移動して、糸46が締め付けられ、変形部42が変形する。
【0144】
この場合、クリップ4がカバーチューブ6の開口部61に保持されているときは、クリップ4の変形部42は、図14(a)に示すように、シール部41に対して略垂直な方向(カバーチューブ6の長手方向(軸方向))に伸び、シール部41に対して略平行な方向(カバーチューブ6の径方向)に縮小した形状をなしている。そして、結び目461が先端方向に移動して糸46が締め付けられるにつれて、変形部42の角部421が図14中下側に移動してゆき、その変形部42は、図14(a)に示す形状から、図14(b)に示す形状、図14(c)および(d)に示す、シール部41と変形部42で生体内組織膜を挟み、傷孔を閉じることが可能な形状へと、連続的に変形する。すなわち、変形部42は、シール部41に対して略垂直な方向(カバーチューブ6の長手方向)に縮み、シール部41に対して略平行な方向(カバーチューブ6の径方向)に拡張してゆく。
【0145】
また、前述したように、結び目461は、強い力が加えられた場合にのみ先端方向へ移動可能な結び方になっているので、糸46により、変形部42が所定の形状になった状態が保持される。
【0146】
このように、このクリップ4によれば、変形部42の変形の度合いを連続的に規制(調整)することができる(2つの角部421、422の間の距離を連続的に規制(調整)することができる)。すなわち、変形部42が所望の形状になった状態で、その状態を保持することができる。これにより、例えば、血管壁のような生体内組織膜が厚い人、薄い人、硬い人、軟らかい人等、種々の場合に対応することができる(様々な生体内組織膜の状態(状況)に対応することができる。
【0147】
なお、本発明では、クリップ(生体内組織閉鎖具)の構成は、シール部、変形部および保持手段を有しているものであれば、前記のものに限定されないことは言うまでもない。
【0148】
例えば、本発明では、クリップの変形部の形状は、四角形に限らず、他の多角形でもよく、また、円環状、楕円環等の角のない枠状であってもよい。
【0149】
また、クリップの変形部は、例えば、コラーゲン等の生分解性樹脂材料(合成樹脂材料)を主材料とするスポンジ状の多孔質体(多孔質材料)や繊維の集合体等で構成することができる。
【0150】
また、クリップの保持手段は、糸状体には限定されず、例えば、クリップ本体(閉鎖具本体)に設けられたもの(一体的に形成されたもの)、例えば、板状体や棒状体等でもよい。
【0151】
さて、前記クリップ4は、その外表面(表面)の少なくとも一部に、膨潤部(膨潤層)47を有している。本実施形態では、図3、図6〜図8に示すように、膨潤部47は、シール部41の変形部42側の面(図6および図7中上側の面)および側面(図7中左側の面および右側の面)と、変形部42が第2の形状になったときの変形部42のシール部41に対する対向面(図6中左下側の面および右下側の面)、その対向面に対応する部位の側面(図8中左側の面および右側の面)およびその対向面とその対向面に対応する部位の側面との間の傾斜面424とに、それぞれ、その外表面を覆うように設けられている。
【0152】
各膨潤部47は、それぞれ、液体と接触し、その液体を吸収して膨潤(膨張)する(体積が増大する)膨潤性材料(材料)で構成されている。
【0153】
シール部41の変形部42側の面に膨潤部47を設けることにより、その膨潤部47が膨潤すると、シール部41と変形部42とで傷孔および傷孔の周辺部を挟んだときのシール部41(平面部412)と変形部42との間の距離が減少し、これにより、シール部41と変形部42とで傷孔および傷孔の周辺部をより強く締め付ける(挟み付ける)ことができ、より確実に、傷孔を閉じることができる。
【0154】
また、シール部41の側面に膨潤部47を設けることにより、その膨潤部47が膨潤すると、シール部41(平面部412)の変形部42側の面の面積(図3に示す幅W1)が増大し、これにより、シール部41の傷孔および傷孔の周辺部を覆う部位が大きくなり、より確実に、生体内組織膜の内面側から傷孔および傷孔の周辺部を覆うことができ、より確実に、傷孔を閉じることができる。また、シール部41が傷孔から外側に抜けてしまうのを防止することができる。
【0155】
また、変形部42が第2の形状になったときの変形部42のシール部41に対する対向面に膨潤部47を設けることにより、その膨潤部47が膨潤すると、シール部41と変形部42とで傷孔および傷孔の周辺部を挟んだときのシール部41(平面部412)と変形部42との間の距離が減少し、これにより、シール部41と変形部42とで傷孔および傷孔の周辺部をより強く締め付ける(挟み付ける)ことができ、より確実に、傷孔を閉じることができる。
【0156】
また、変形部42が第2の形状になったときの変形部42のシール部41に対する対向面に対応する部位の側面に膨潤部47を設けることにより、その膨潤部47が膨潤すると、変形部42のシール部41に対する対向面の面積(図3に示す幅W2)が増大し、これにより、変形部42の傷孔および傷孔の周辺部を覆う部位が大きくなり、より確実に、生体内組織膜の外面側から傷孔および傷孔の周辺部を覆うことができ、より確実に、傷孔を閉じることができる。また、変形部42が傷孔から内側に抜けてしまうのを防止することができる。
【0157】
また、変形部42が第2の形状になったときの変形部42のシール部41に対する対向面とその対向面に対応する部位の側面との間の傾斜面424に膨潤部47を設けることにより、前記対向面に膨潤部47を設けた場合の効果と、前記対向面に対応する部位の側面に膨潤部47を設けた場合の効果とが、それぞれ得られる。
【0158】
また、膨潤部47は、接続部44の外表面には設けられていないのが好ましい。本実施形態では、膨潤部47は、シール部41の変形部42側の面および側面、変形部42が第2の形状になったときの変形部42のシール部41に対する対向面、その対向面に対応する部位の側面および傾斜面424以外の部位の外表面には設けられていない。
【0159】
接続部44は、傷孔を挿通するので、その接続部44の外表面に膨潤部47を設けないことにより、膨潤部47の膨潤によって傷孔が拡がってしまうのを防止することができ、より確実に、傷孔を閉じることができる。
【0160】
なお、各膨潤部47の構成は同様であるので、以下では、代表的に、そのうちの所定の1つの膨潤部47について説明する。
【0161】
膨潤部47を構成する膨潤性材料としては、液体と接触して膨潤するものであれば、特に限定されないが、ゲルポリマーが好ましい。なお、本実施形態では、膨潤性材料として、ゲルポリマーを用いた場合について説明する。
【0162】
膨潤部47を構成するゲルポリマーは、液体との接触により体積が変化する性質を有するものである。
【0163】
すなわち、ゲルポリマーは、ゲル化する前の乾燥状態(収縮状態)では、ゲル状態をなしていないが、内部に液体を取り込むことによって膨潤(膨張)し、ゲル化する(ゼリー状になる)性質を有するものである。また、このようにして膨潤したゲルポリマーは、所定の性質の液体と接触することにより、取り込んだ液体を放出して収縮する性質をも有するものである。
【0164】
すなわち、このゲルポリマーは、接触する液体の性質により、膨潤(膨張)・収縮を選択可能なものである。このようなゲルポリマーは、一般に「環境感受性ゲルポリマー」と称される。
【0165】
環境感受性ゲルポリマーは、主に、環境感受性のモノマー成分またはプレポリマー成分を重合・架橋してなる架橋体であり、三次元網目構造を有するポリマーで構成される。
【0166】
このような環境感受性ゲルポリマーは、分子鎖の隙間に空孔を有している。この空孔は、分子鎖間の結合力に応じて拡大・縮小するが、この分子鎖間の結合力は、ゲルポリマーが存在する環境に応じて変化する。このような性質により、環境感受性ゲルポリマーは、環境の変化に応じて、空孔内に液体を取り込んだり、取り込んだ液体を排出したりすることができる。
【0167】
環境感受性ゲルポリマーのモノマー成分またはプレポリマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの誘導体、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルリン酸、ビニルピリジン、塩酸トリメチルビニルピリジニム、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩酸、ジメチルメタクリロイロキシエチルアンモニウムプロパンスルホン酸等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0168】
このうち、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの誘導体が特に好ましく用いられる。アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの誘導体は、環境感受性のモノマー成分(プレポリマー成分)であり、これらを含むゲルポリマーは、後述するイオン性官能基を有するものとなるため、より環境感受性の高いものとなる。
【0169】
また、環境感受性ゲルポリマーのモノマー成分またはプレポリマー成分は、上記のほかに、2−ヒドロキシエチルアクリラート、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、アクリルアミドやメタクリルアミド、またはこれらの誘導体のようなエチレン性不飽和モノマーを含むのが好ましい。
【0170】
このうち、アクリルアミドが特に好ましく用いられる。アクリルアミドを含むことにより、ゲルポリマーの機械的特性を高めることができる。
【0171】
また、モノマー成分またはプレポリマー成分は、その分子構造の一部にイオン性官能基を有するものであるのが好ましい。これにより、環境感受性ゲルポリマーは、接触する液体の組成や含まれるイオンの濃度等に応じて、選択的に膨潤率(膨張率)・収縮率が高くなる。また、環境感受性ゲルポリマーの親水性が高くなるため、より多くの液体を積極的に吸収し、膨潤し得るものとなる。
【0172】
ここで、前記イオン性官能基がアニオン性基の場合、すなわち、環境感受性ゲルポリマーが分子構造の一部にアニオン性基を有するものである場合、環境感受性ゲルポリマーは脱プロトン化することにより膨潤する。また、膨潤した環境感受性ゲルポリマーは、プロトン化することによって収縮する。したがって、環境感受性ゲルポリマーは、脱プロトン化作用を有する液体に接触することにより膨潤し、その後、プロトン化作用を有する液体に接触することにより収縮する。
【0173】
アニオン性基としては、例えば、カルボン酸基、メルカプト基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
【0174】
一方、前記イオン性官能基がカチオン性基の場合、すなわち、環境感受性ゲルポリマーが分子構造の一部にカチオン性基を有するものである場合、環境感受性ゲルポリマーはプロトン化することにより膨潤する。また、膨潤した環境感受性ゲルポリマーは、脱プロトン化することによって収縮する。したがって、環境感受性ゲルポリマーは、プロトン化作用を有する液体に接触することにより膨潤し、その後、脱プロトン化作用を有する液体に接触することにより収縮する。
【0175】
カチオン性基としては、例えば、アミノ基、アンモニウム塩基等が挙げられる。
また、環境感受性ゲルポリマーとしては、pH応答性を有しているものが好ましく、具体的には、血液および傷孔の周辺の体液(組織液)との接触により、それぞれ膨潤するものが好ましい。すなわち、pHが7.1〜7.8程度の液体との接触により膨潤し、pHが7.1未満の液体およびpHが7.8を超える液体との接触によってはそれぞれ膨潤しないものが好ましく、pHが7.2〜7.6程度の液体との接触により膨潤し、pHが7.2未満の液体およびpHが7.6を超える液体との接触によってはそれぞれ膨潤しないものがより好ましく、pHが7.4の液体との接触により膨潤し、pHが7.4未満の液体およびpHが7.4を超える液体との接触によってはそれぞれ膨潤しないものがさらに好ましい。
【0176】
これにより、膨潤部47は、例えば、生理食塩水(生理食塩水のpHは、7)等との接触では、膨潤せず、血液や傷孔の周辺の体液と接触したときから、すなわち、クリップ4が傷孔を閉じて目的部位に留置されたときから、膨潤を開始するようになる。これによって、円滑かつ確実に、クリップ4を目的部位に留置することができる。
【0177】
また、環境感受性ゲルポリマーとしては、その体積が3〜5倍程度になるように膨潤するものが好ましく、3.5〜4倍程度になるように膨潤するものがより好ましい。
【0178】
また、膨潤部47の厚さは、特に限定されず、諸条件等に応じて適宜決定されるが、膨潤前(非膨潤時)(乾燥状態)の厚さは、0.025〜0.375mm程度であるのが好ましく、0.0375〜0.25mm程度であるのがより好ましい。
【0179】
膨潤部47の膨潤前の厚さが前記下限値より小さいと、膨潤部47の膨潤後の厚さが小さくなり、他の条件によっては、十分な効果が得られない場合があり、また、前記上限値より大きいと、他の条件によっては、生体内組織閉鎖装置1の本体部2(例えば、配置装置3やシース5等)に入らない場合がある。
【0180】
また、膨潤部47の膨潤後の厚さは、0.1〜1.5mm程度であるのが好ましく、0.15〜1.0mm程度であるのがより好ましい。
【0181】
膨潤部47の膨潤後の厚さが前記下限値より小さいと、他の条件によっては、十分な効果が得られない場合があり、また、前記上限値より大きいと、他の条件によっては、傷孔が形成されている生体内組織膜(例えば、血管等)を変形させてしまう場合がある。
【0182】
また、クリップ本体40の膨潤部47を形成する部位の表面は、膨潤部47を形成しない部位の表面に比べて、親水性が高くなっているのが好ましい。
【0183】
これにより、クリップ本体40と膨潤部47との密着性が向上し、クリップ本体40から膨潤部47が剥離してしまうのを防止することができる。また、より確実に、クリップ本体40の膨潤部47を形成する部位の表面のみに膨潤部47を形成することができる。
【0184】
クリップ本体40の膨潤部47を形成する部位の表面の親水性を高くするには、例えば、その表面に対し、親水化処理を施す。これにより、クリップ本体40の膨潤部47を形成する部位の表面の親水性は、親水化処理前より高くなり、これによって、他の部位より高くなる。
【0185】
親水化処理としては、例えば、プラズマ処理、オゾン酸化処理や、サンドブラスト、ショットブラスト等の粗面化処理(粗面加工)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0186】
なお、クリップ本体40の外表面全体に対し、親水化処理を行ってもよいが、接続部44の外表面には親水化処理を行わないのが好ましい。接続部44の外表面に親水化処理を行わないことにより、接続部44の外表面に膨潤部47が形成され難くなる。
【0187】
ここで、クリップ本体40に、例えば、浸漬法等を用いて膨潤部47を構成する材料を含有する溶液を塗布し、膨潤部47を形成する場合、クリップ本体40の膨潤部47を形成する部位の表面の親水性の大きさ(高さ)と、膨潤部47を形成しない部位の表面の親水性の大きさとの中間で、溶液がクリップ本体40に付着する(塗布される)ように、その溶液や、クリップ本体40の各部位の表面の親水性の大きさを調整するのが好ましい。
【0188】
これにより、容易かつ確実に、クリップ本体40の膨潤部47を形成する部位の表面のみに、溶液を塗布し、膨潤部47を形成することができる。
【0189】
次に、クリップ4のクリップ本体40への膨潤部47の形成方法(クリップ本体40の作製方法)について説明する。
【0190】
[1]まず、膨潤部47を形成するための原材料、すなわち、膨潤部47を構成する材料を含有する溶液を準備する。
【0191】
すなわち、まずは、ゲルポリマーの原料となるモノマー成分(プレポリマー成分)、架橋剤、重合開始剤および溶媒を用意する。そして、これらを混合し、溶液を調製する。これにより、モノマー成分が重合するとともに立体的に架橋し、三次元網目構造を形成してなるゲルポリマーが得られる。
【0192】
なお、全モノマー成分中の環境感受性モノマー成分の含有率は、10〜50質量%程度であるのが好ましく、10〜30質量%程度であるのがより好ましい。
【0193】
また、溶液中のモノマー成分の含有率は、特に限定されないが、好ましくは20〜30質量%程度とされる。
【0194】
架橋剤としては、例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテルのようなエチレン性不飽和化合物等が挙げられる。エチレン性不飽和化合物は、モノマー成分とともに三次元網目構造を確実に形成し得る架橋剤として機能するため、膨潤部47を形成するための架橋剤として特に好適なものである。
【0195】
このうち、N,N’−メチレンビスアクリルアミドがより好ましく用いられる。
溶液中の架橋剤の含有率は、特に限定されないが、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満とされる。
【0196】
また、重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
また、溶媒には、例えば、水、エタノール等を用いることができる。
【0197】
さらに、必要に応じて、溶液中に造孔剤を含んでいてもよい。これにより、膨潤部47として、多孔質状のものが得られる。このような多孔質状の膨潤部47は、表面積が大きいため、液体の吸収速度が高くなり、膨潤速度(膨張速度)の高いものとなる。
【0198】
造孔剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、氷、スクロース、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。
【0199】
また、造孔剤の平均粒径は、好ましくは1〜25μm程度、より好ましくは3〜10μm程度とされる。
【0200】
さらに、溶液中の造孔剤の含有率は、5〜50質量%程度であるのが好ましく、10〜20質量%程度であるのがより好ましい。
【0201】
また、必要に応じて、溶液中にX線不透過材料で構成された粒子を含んでいてもよい。これにより、膨潤部47にX線造影性が得られ、X線透視下でクリップ4(膨潤部47)の位置を容易に確認することができる。
【0202】
[2]次いで、クリップ本体40の膨潤部47を形成する部位の表面、すなわち、本実施形態では、シール部41の変形部42側の面および側面と、変形部42が第2の形状になったときの変形部42のシール部41に対する対向面、その対向面に対応する部位の側面および傾斜面424に、それぞれ、親水化処理を施す。
【0203】
[3]次いで、シール部41の変形部42側の面および側面と、変形部42が第2の形状になったときの変形部42のシール部41に対する対向面、その対向面に対応する部位の側面および傾斜面424に、それぞれ、得られた溶液を塗布し、ゲルポリマーの層、すなわち膨潤部47(膨潤した状態の膨潤部47)を形成する。
【0204】
溶液の塗布方法としては、例えば、浸漬法、刷毛塗り法、ディスペンサ法等が挙げられる。この場合、前述したように、浸漬法を用いることにより、容易かつ確実に、クリップ本体40の膨潤部47を形成する部位の表面のみに溶液を塗布することができる。
【0205】
[4]次いで、膨潤部47を洗浄液で洗浄する。これにより、未反応の残留モノマー成分、造孔剤等が除去される。
【0206】
[5]次いで、洗浄後の膨潤部47の膨潤速度(膨張速度)を制御するための事前処理を行う。
【0207】
この事前処理は、ゲルポリマー中のイオン性官能基の特性によって異なるため、各々について説明する。
【0208】
[5−a]ゲルポリマーがアニオン性基を有している場合、この事前処理は、洗浄後のゲルポリマーに対し、アニオン性基をプロトン化する液体(処理液)を接触させることにより行われる。この処理液との接触より、アニオン性基がプロトン化され、分子鎖間に水素結合に基づく凝集力が発生する。このため、分子鎖間が狭くなり、ゲルポリマーは収縮する。
【0209】
このとき、ゲルポリマーを処理液に浸漬する時間、および、この処理液の温度は、それぞれ、ゲルポリマーの膨潤速度に正比例する。一方、処理液のpHは、ゲルポリマーの膨潤速度に反比例する。
【0210】
このような事前処理を施されたゲルポリマーは、処理液の条件が適宜設定されることにより、膨潤する際、より早く膨潤することができる。
【0211】
[5−b]ゲルポリマーがカチオン性基を有している場合、この事前処理は、洗浄後のゲルポリマーに対し、カチオン性基を脱プロトン化する液体(処理液)を接触させることにより行われる。この処理液との接触により、カチオン性基が脱プロトン化され、分子鎖間に凝集力が発生する。このため、分子鎖間が狭くなり、ゲルポリマーは収縮する。
【0212】
このとき、ゲルポリマーを処理液に浸漬する時間、処理液の温度、および処理液のpHは、それぞれ、ゲルポリマーの膨潤速度に正比例する。
【0213】
このような事前処理を施されたゲルポリマーは、処理液の条件が適宜設定されることにより、膨潤する際、より早く膨潤することができる。
【0214】
[6]次いで、膨潤した状態の膨潤部47を乾燥させる。これにより、乾燥状態(収縮状態)の膨潤部47が形成され、クリップ本体40が得られる。
【0215】
ここで、本発明では、変形部42が第2の形状になったときの変形部42のシール部41に対する対向面に形成されている孔426および427の内面(表面)に、膨潤部47が設けられているのが好ましい。これにより、その膨潤部47が膨潤すると、孔426および427が小さくなるか、または閉塞し、変形部42のシール部41に対する対向面の面積が増大し、これにより、変形部42の傷孔および傷孔の周辺部を覆う部位が大きくなり、より確実に、生体内組織膜の外面側から傷孔および傷孔の周辺部を覆うことができ、より確実に、傷孔を閉じることができる。
【0216】
また、本発明では、変形部42の図3中上側の表面(特に、角部421の上面423)に、膨潤部47が設けられているのが好ましい。これにより、その膨潤部47が膨潤すると、糸46の締め付け力が増大し、より確実に、傷孔を閉じることができる。
【0217】
また、本実施形態では、膨潤部47は、シール部41および変形部42のそれぞれに設けられているが、本発明では、これに限らず、膨潤部47は、シール部41と変形部42とのいずれか一方に設けられていてもよい。
【0218】
また、膨潤部47の構成材料としては、液体と接触して膨潤する膨潤性材料であれば、前述した材料には限定されず、その他、例えば、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0219】
次に、保持部材18について説明する。
図11〜図13に示すように、保持部材18は、全体として略筒状をなしており、基端側に配置される基端側部材18aおよび先端側に配置される先端側部材18bで構成されている。
【0220】
基端側部材18aと先端側部材18bとは、先端側部材18bが基端側部材18aの内側(内周側)に嵌合し、一体化している。また、先端側部材18bの外周部には、1対の凸部181が形成され、基端側部材18aの各凸部181に対応する部位には、それぞれ、側孔182が形成されている。これにより、基端側部材18aと先端側部材18bとを嵌合すると、先端側部材18bの各凸部181がそれぞれ基端側部材18aの対応する側孔182に臨む縁部に係合し、基端側部材18aと先端側部材18bとが互いに固定される。なお、図11および図13では、各凸部181および各側孔182は、それぞれ、一方のみが見えている。以下、基端側部材18aと先端側部材18bとを個別にではなく、それらを一体化した状態の保持部材18を説明する。
【0221】
保持部材18の先端側の内周部には、シース5のハブ(コネクタ)52の溝54に挿入し、その溝54内の面に係合し得る1対のリブ(凸条)183が形成されている。各リブ183は、それぞれ、周方向に沿って形成されている。これら各リブ183および溝54により、保持部材18とシース5のハブ52とが接続され、その状態が保持される。従って、各リブ183および溝54により、保持部材18とシース5のハブ52とを接続する第1の接続部が構成される。
【0222】
また、保持部材18の基端側の外周部には、第1チャージ部材32の基部321の1対の爪326が挿入される溝184が形成されており、その溝184内の面に各爪326が係合し得るようになっている。この溝184は、周方向に沿って1周に亘って形成されている。これら溝184および各爪326により、保持部材18と手元部9とが接続され、その状態が保持される。従って、溝184および各爪326により、保持部材18と手元部9とを接続する第2の接続部が構成される。
【0223】
この保持部材18は、比較的広い空間(内腔)(広空間)が形成されている広空間部191と、広空間部191よりも先端側に設けられ、広空間部191よりも狭い空間(狭空間)が形成されている狭空間部192と、広空間部191と狭空間部192との間に設けられ、前記広空間と前記狭空間とに連通する空間が形成されている移行部193とを有する収納部190備えている。なお、空間の横断面(軸線に対して垂直な断面)における面積の大小を、空間の広狭(大小)としている。
【0224】
広空間部191は、最も広い空間を有し、先端側に設けられた最広空間部1911と、それよりも基端側に設けられた基端側空間部1912とで構成されている。
【0225】
初期状態(組み立て直後の状態)において、クリップ4は、収納部190(本実施形態では、広空間部191および移行部193)に収納(保持)されている。この場合、クリップ4の変形部42は、その大部分が、広空間部191の基端側空間部1912に収納され、残部が、最広空間部1911に収納されている。そして、シール部41は、移行部193および広空間部191の最広空間部1911に収納されている。
【0226】
基端側空間部1912の横断面での内形形状(空間の形状)は、略四角形をなし、その各頂点は、丸みを帯びている。また、その四角形の所定の1対の辺は、図13の紙面に対して垂直な方向を向き、他の1対の辺は、図13中上下方向を向いている。これにより、クリップ4は、シール部41の図3に示す幅W1の方向が図13の紙面に対して垂直な方向となるような姿勢で収納されている。
【0227】
また、初期状態において、図示の構成では、クリップ4は、問題がない程度に、基端側空間部1912からその変形部42に僅かな負荷がかかっていてもよく、この場合、変形部42が自然状態に対しカバーチューブ6の径方向に潰す負荷が僅かにかかった状態(カバーチューブ6の長手方向に伸ばすように僅かに折り畳まれた状態)で、収納されている。
【0228】
生体内組織閉鎖装置1を組み立てる際は、クリップ4を収納部190の所定の位置に収納した後、基端側部材18aと先端側部材18bとを嵌合し、一体化する。これにより、クリップ4の変形部42に問題となるような大きさの負荷をかけることなく、クリップ4を収納部190に収納することができる。
【0229】
なお、クリップ4は、その変形部42に全く負荷がかからず、変形部42が全く変形しないように収納されていてもよい。また、クリップ4は、広空間部191のみに収納されていてもよい。
【0230】
また、初期状態において、カバーチューブ6および固定チューブ7は、保持部材18の内腔に、保持部材18の基端から挿入されている。この場合、カバーチューブ6の開口部61は、広空間部191に位置し、固定チューブ7の先端部71は、保持部材18の広空間部191よりも基端側の部位に位置している。比較的硬い固定チューブ7が保持部材18の内腔に位置しているので、これにより、カバーチューブ6の折れ曲がり(キンク)を防止することができる。
【0231】
また、保持部材18の広空間部191より基端側の部位(基端部186)の横断面での内形形状(内腔の形状)は、略楕円状をなしている。一方、前述したように、固定チューブ7の先端部71の横断面での形状と、カバーチューブ6の固定チューブ7の先端部71に対応する部位の横断面での形状は、それぞれ、略楕円形をなしているので、保持部材18に対するカバーチューブ6および固定チューブ7の回転を防止することができる。なお、前記楕円の向きは、保持部材18が基端側に移動する際、カバーチューブ6の開口部61にクリップ4の変形部42が挿入されるように設定されている。
【0232】
また、横断面における寸法は、保持部材18の基端部186の内腔よりも、カバーチューブ6の開口部61の方が大きく設定されている。これにより、保持部材18がカバーチューブ6の先端部から離脱してしまうのを防止することができる。
【0233】
また、保持部材18の最基端部187の内径は、先端側から基端側に向かって漸増している。また、その部位の表面は、丸みを帯びている。これにより、保持部材18を基端側に移動させる際、カバーチューブ6が座屈してしまうのを防止することができる。
【0234】
また、保持部材18の基端部186と最基端部187との境界部の内径は、その保持部材18とカバーチューブ6との間の隙間から血液が漏れないか、または、その漏れ量が非常に少なくなるように設定するのが好ましい。すなわち、保持部材18の基端部186と最基端部187との境界部の内径は、カバーチューブ6の外径よりも若干小さく設定するのが好ましい。
【0235】
また、保持部材18は、その保持部材18が基端側に移動する際、クリップ4が、移行部193を経て、狭空間部192に挿入されるよう構成されている。
【0236】
移行部193は、図13中下側に傾斜面194を有している。この傾斜面194は、先端側よりも基端側が図13中下側に位置するように傾斜している(先端側から基端側に向かって傾斜している)。
【0237】
保持部材18が基端側に移動する際は、クリップ4は、この傾斜面194に沿って徐々に折り畳まれる。すなわち、クリップ4のシール部41は、傾斜面194に沿って徐々に傾斜する。
【0238】
一方、移行部193の図13中上側の面は、傾斜してない。これにより、クリップ4を、円滑に折り畳むことができる。
【0239】
また、クリップ4が狭空間部192に挿入されると、その変形部42にかかる負荷が増大し、変形部42は、初期状態のときよりも圧縮され、図3に示す基本形状のときのクリップ4のシール部41に対して略垂直な方向(カバーチューブ6の長手方向)に伸び、そのシール部41に対して略平行な方向(カバーチューブ6の径方向)に縮小した形状(図14(a)参照)となる。これにより、クリップ4は、完全に折り畳まれ、この折り畳まれた状態(変形部42が圧縮された状態)で、変形部42が、カバーチューブ6の開口部61に押し込まれ、保持される(開口部61および変形部42について図16(b)参照)。
【0240】
また、保持部材18は、内腔が狭空間部192の空間に連通する管状部185を有している。管状部185は、保持部材18の先端部の中央部に、先端側に向かって突出形成されている。シース5のハブ52と保持部材18とを接続する際は、この管状部185がハブ52の止血弁からそのハブ52内に挿入され、管状部185の内腔を介して、狭空間部192の空間とシース5の貫通孔51とが連通する。
【0241】
また、管状部185の狭空間部192よりも先端側の部位の横断面での内形形状(内腔の形状)は、略四角形をなしており、保持部材18を基端側に移動させたとき、クリップ4のシール部41(図3に示す幅W1の方向)が、その四角形の一方の対角線と略一致するようになっている。これにより、クリップ4が管状部185の内腔を通過する際、シール部41の回転を防止することができる。
【0242】
また、管状部185は、クリップ4が管状部185の内腔を通過するときの抵抗(摩擦抵抗)が、クリップ4が狭空間部192を通過するときの抵抗よりも大きくなるよう構成されている。具体的には、管状部185(先端側部材18b)は、前記四角形の対角線の長さが、シール部41の幅W1よりも小さく設定され、かつ、柔軟性を有し、変形し得るようになっている。これにより、シール部41が管状部185の内腔を通過する際、適度な抵抗(摩擦抵抗)が発現し、これによって、確実に、クリップ4の変形部42が、カバーチューブ6の開口部61に押し込まれ、保持される。また、適度な抵抗であるので、シール部41が管状部185の内腔を通過するのを阻害することもない。
【0243】
そして、保持部材18が基端側に移動する際、カバーチューブ6の開口部61に変形部42が保持されたクリップ4は、管状部185の内腔を通過し、保持部材18から排出され、シース5の貫通孔51に挿入される。この場合、クリップ4は、ハブ52の止血弁に接触することなく、シース5の貫通孔51に挿入されるので、確実に、正常な状態で、シース5の貫通孔51に挿入される。このようにして、クリップ4が保持部材18の収納部190に収納された状態から、クリップ4の変形部42がカバーチューブ6の開口部61に保持された状態になる。
【0244】
なお、保持部材18の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、樹脂や金属等を用いることができる。また、内部の視認性を確保するために、光透過性を有する(実質的に透明または半透明である)ものが好ましい。また、管状部185は、変形し得るように、比較的柔軟な樹脂材料等を用いるのが好ましい。
【0245】
次に、生体内組織閉鎖装置1を用いて行なう止血作業の手順および生体内組織閉鎖装置1の作用について説明する。
【0246】
図15(b)に示すように、カテーテルを用いた治療(PCI)や診断(CAG)の処置後、シース5が留置されており、このシース5を用いる。シース5の先端部は、傷孔を貫通し、血管内に挿入されている。
【0247】
図1および図2に示すように、初期状態においては、レバー28は、ロック位置に位置し、ロック部29の突出部291がスライド連結部材34の突起346の先端側に当接して、突起346が突出部291に係止され、これにより、スライド連結部材34の先端方向への移動が阻止されている。
【0248】
まず、術者(使用者)は、シース5のハブ52に、配置装置3の保持部材18を接続する。この場合、保持部材18の管状部185をハブ52の止血弁からそのハブ52内に挿入し、ハブ52を保持部材18の先端部の内側に押し込む。これにより、保持部材18の各リブ183がハブ52の溝54に挿入され、その溝54内の面に係合する。これによって、保持部材18とシース5のハブ52とが接続され、その状態が保持される。
【0249】
次に、シース5および保持部材18をカバーチューブ6に沿って基端側に移動させる。
これにより、クリップ4は、カバーチューブ6の開口部61の先端に当接し、その開口部61により、係止される(先端側に押される)。これによって、クリップ4のシール部41は、傾斜面194に沿って徐々に傾斜する(図13参照)。
【0250】
そして、クリップ4が狭空間部192に挿入されると、変形部42にかかるカバーチューブ6の径方向の負荷が増大し、変形部42は、初期状態のときよりもカバーチューブ6の径方向に圧縮され、図3に示す基本形状のときのクリップ4のシール部41に対して略垂直な方向に伸び、そのシール部41に対して略平行な方向に縮小した形状となる。これにより、クリップ4は、完全に折り畳まれる。
【0251】
また、シール部41が管状部185の内腔を通過する際、適度な抵抗が発現し、これによって、クリップ4の変形部42が、カバーチューブ6の開口部61に押し込まれ、保持される。
【0252】
そして、カバーチューブ6の開口部61に変形部42が保持されたクリップ4は、管状部185の内腔を通過し、保持部材18から排出され、シース5の貫通孔51に挿入される。このようにして、クリップ4が保持部材18の収納部190に収納された状態から、クリップ4の変形部42がカバーチューブ6の開口部61に保持された状態になる。
【0253】
さらに、シース5および保持部材18をカバーチューブ6に沿って基端側に移動させ、第1チャージ部材32の基部321に、保持部材18を接続する。この場合、保持部材18の基端部を基部321の内側に押し込む。これにより、基部321の各爪326が保持部材18の溝184に挿入され、その溝184内の面に係合する。これによって、基部321と保持部材18(手元部9)とが接続され、その状態が保持される。すなわち、基部321とハブ52とが保持部材18を介して接続される(基部321と保持部材18とハブ52とが一体化する)。
【0254】
次に、図15に示すように、コネクタ31の内管部311の長穴313の先端部の位置と、外管部312の長穴314の先端部の位置とが一致している状態で、シース5、保持部材18および第1チャージ部材32を基端方向に押し込み(移動させ)、第1チャージ部材32の基部321を内管部311内に挿入し、その基部321の突起327を内管部311の長穴313の先端部および外管部312の長穴314の先端部に位置させる。
【0255】
この際、第1チャージ部材32とともに第2チャージ部材33が基端方向に移動し、これにより、コイルバネ22が、この第2チャージ部材33と糸支持部15とで挟まれて収縮(変形、活性化、チャージ)されてゆく。そして、第2チャージ部材33の1対の爪335が、スライド連結部材34の基部341に係合し、この後、第1チャージ部材32の1対の棒状体322の基端部325が、ケーシング11の1対の溝91に挿入され(図2参照)、この両棒状体322の基端部325の間隔が広がり(図2参照)、第2チャージ部材33の先端部の1対の凹部336と、第1チャージ部材32の1対の凸部323との係合が外れる(図2参照)。
【0256】
これにより、第2チャージ部材33は、スライド連結部材34および糸支持部15に対して移動不能となり、コイルバネ22が、収縮状態(変形状態、活性状態)に保持されるとともに、固定チューブ7は、第2チャージ部材33とスライド連結部材34とで保持(略固定)される(糸支持部15が固定チューブ7に対して基端方向に移動するのが阻止される)。すなわち、第2チャージ部材33とスライド連結部材34と糸支持部15と固定チューブ7とコイルバネ22との位置関係が固定され、これらが一体的に移動し得るようになる。この状態をチャージ状態という。
【0257】
この状態では、クリップ4(クリップ4のシール部41)は、シース5の貫通孔(ルーメン)51内に収納されている。このため、前記第1チャージ部材32の基部321を内管部311内に挿入してチャージ状態にする際に、クリップ4により、血管壁を傷付けてしまうことはなく、非常に安全である。
【0258】
次に、図16に示すように、外管部312を所定方向(図示例では、先端方向から見て反時計回り)に回転させる。これによって、外管部312の長穴314に臨む縁部により、突起327が、基端方向に押され、内管部311の長穴313に沿って基端方向に徐々に移動し、シース5の先端部からクリップ4のシール部41およびカバーチューブ6が徐々に突出する。このようにして、シース5の先端部からカバーチューブ6の開口部61が突出するとともに、クリップ4のシール部41が突出し、血管内に挿入されるとともに、第1チャージ部材32の基部321は、基端方向に移動し、さらに内管部311内に挿入され、固定される。なお、第1チャージ部材32は、その基部321が、ケーシング11の1対の突起93に当接することにより、突起93より基端方向への移動が阻止される。また、第1チャージ部材32と第2チャージ部材33との係合は既に外れているので、第2チャージ部材33は、移動しない。
【0259】
このように、第1チャージ部材32の基部321の突起327を内管部311の長穴313の先端部および外管部312の長穴314の先端部に位置させた状態では、クリップ4は、シース5の貫通孔51内に収納されており、また、この状態から外管部312を回転操作することで、第1チャージ部材32の基部321が、基端方向に徐々に移動するので、クリップ4のシール部41が、シース5の先端から血管壁に向って急激に突出してしまうのを確実に防止することができる。
【0260】
また、膨潤部47は、血液と接触し、膨潤を開始するが、その膨潤速度は、比較的遅いので、クリップ4の留置が完了するまでは、膨潤部47の体積はほどんど変化しない。このため、止血作業の障害にはならず、容易かつ円滑に、クリップ4を目的部位に留置することができる。
【0261】
次に、手元部9のケーシング11を手指で把持し、その手元部9、すなわち、本体部2(配置装置3)をゆっくりと、一方向、すなわち、傷孔から引き抜く方向(基端方向)に移動させ、クリップ4のシール部41で血管壁の内側から傷孔および傷孔の周辺部を覆う(シール部41の位置決めを行なう)(図17(b)参照)。クリップ4の変形部42は、血管の外側に移動する。
【0262】
術者は、前記シール部41で傷孔および傷孔の周辺部を覆う際の作業(操作)においては、本体部2を傷孔から引き抜く方向に移動させた際、シール部41が傷孔およびその周辺組織に当接したときの抵抗(面当て抵抗)を感知すると、シール部41が傷孔およびその周辺組織に当接し(面当てされ)、シール部41の位置決めが完了したものと判断する。
【0263】
この場合、クリップ4と、糸支持部15と、ケーシング11とを、配置装置3の長手方向に沿って連結する部材のうちに、バネのような配置装置3の長手方向に伸張する部材が含まれておらず、クリップ4と、ケーシング11との間の距離は略一定に保持されているので、術者は、クリップ4のシール部41にかかる力を直接的に手指で感知することでき、これにより、クリップ4のシール部41が傷孔およびその周辺組織に当接したときの抵抗を正確に感知することができる。
【0264】
また、ロック部29により、第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15、固定チューブ7および各コイルバネ22の先端方向への移動が阻止されているので、前記シール部41の位置決めが完了する前に各コイルバネ22が発動してしまうのを確実に防止することができる。
【0265】
これにより、容易かつ確実に、クリップ4のシール部41の位置決めを行なうことができる。
【0266】
次に、図17に示すように、レバー28を矢印bの方向に移動させ、ロック解除位置に位置させる。これにより、ロック部29が矢印bの方向に移動し、その突出部291が、スライド連結部材34の突起346より側方(突起346のない位置)に移動(退避)し、突出部291への突起346の係止が解除される。これによって、ストッパー35による糸支持部15の移動阻止状態の解除を条件に、第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15、固定チューブ7および各コイルバネ22は、先端方向へ移動可能になる。
【0267】
次に、本体部2(配置装置3)をゆっくりと、傷孔から引き抜く方向(基端方向)に移動させて、本体部2を傷孔から引き抜く。これにより、すべての各操作(動作)が順次、連続して行われ、クリップ4により傷孔が閉じられて、そのクリップ4が生体内に配置(留置)される。以下、この際の手順や作用を詳細に説明する。
【0268】
まず、図18に示すように、手元部9(ケーシング11)を基端方向に移動させると、クリップ4のシール部41が血管壁の内面(体表から遠位の面)に当接しているので、糸支持部15は、糸8を介して先端方向に引っ張られる。そして、この糸8を介して糸支持部15に加わる力(引っ張り力)が、所定のしきい値を超えると、ピン170の突起172が、ストッパー35のストッパー本体351の隙間から抜け、第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15、固定チューブ7および各コイルバネ22が、一体的に、ケーシング11に対して先端方向に移動する。
【0269】
ここで、仮に、前記ロック部29によりスライド連結部材34の先端方向への移動が阻止された状態でのシール部41の位置決めにおいて、例えば、血管内でクリップ4が引っ掛かったりして、その位置決めが不完全だったとしても、ピン170がストッパー35から抜ける(ロックが解除される)前にクリップ4が外れることが期待でき、そのクリップ4を傷孔まで移動させ、シール部41を傷孔およびその周辺組織に当接させることができる。このように、クリップ4のシール部41の位置決め操作が2重に行なわれるので、シール部41を傷孔およびその周辺組織に確実に当接させることができる。
【0270】
前記第2チャージ部材33、スライド連結部材34、糸支持部15、固定チューブ7および各コイルバネ22が、ケーシング11に対して先端方向に移動すると、固定チューブ7と共に、クリップの変形部42がカバーチューブ6に対して先端方向へ移動し、カバーチューブ6の先端部から変形部42が離脱し、変形部42が変形可能になる。
【0271】
そして、図19に示すように、スライド連結部材34の1対の棒状体342の基端部347が、1対のレール36の孔部362に位置するまで移動すると、各棒状体342の基端部347は、それぞれ、側方(矢印E、Fの方向)に移動(変位)することが可能になる。一方、スライド連結部材34は、各コイルバネ22の復元力により、糸支持部15に対して先端方向に付勢されているので、各棒状体342の基端部347は、その付勢力により、各突起155に沿って略側方に移動して各孔部362に挿入され(退避し)、各棒状体342の爪343が、糸支持部15の各突起155から外れる。
【0272】
これにより、スライド連結部材34による糸支持部15と第2チャージ部材33との連結が解除され、糸支持部15が、第2チャージ部材33、スライド連結部材34および固定チューブ7に対して基端方向に移動するのが可能となる。また、前記スライド連結部材34による糸支持部15と第2チャージ部材33との連結を解除することにより、糸支持部15と、第2チャージ部材33、スライド連結部材34および固定チューブ7との相対的な移動を可能とすることで、各コイルバネ22を変形状態(活性状態)に保持する規制が解除される。
【0273】
これにより、糸支持部15は、各コイルバネ22の復元力によって、第2チャージ部材33、スライド連結部材34および固定チューブ7に対して、基端方向に移動する。このように、スライド連結部材34、糸支持部15の1対の突起155、第2チャージ部材33の1対の突出部334および1対のレール36の孔部362は、各コイルバネ22を活性状態に保持する規制を解除することによって各コイルバネ22を発動させるトリガ手段として機能する。また、スライド連結部材34、糸支持部15の1対の突起155および第2チャージ部材33の1対の突出部334は、各コイルバネ22を活性状態に保持する規制手段として機能する。また、糸支持部15と第2チャージ部材33とを連結しているスライド連結部材34の各棒状体342の基端部347を側方(各棒状体342の爪343が糸支持部15の各突起155から外れる方向)へ移動させる動作(トリガ動作)は、術者が手元部9を基端側に引き抜く(移動させる)動作および各コイルバネ22の付勢力によって自動的に行なわれる。
【0274】
前記糸支持部15が固定チューブ7に対して基端方向に移動すると、図19(b)に示すように、糸8が基端方向へ移動し、その糸8によりクリップ4の糸46が基端方向へ牽引され、固定チューブ7の先端部71にクリップ4の糸46の結び目461が係止され、さらに、この結び目461を介して変形部42が係止され(間接的に係止され)、これにより結び目461が先端方向に移動して、糸46が締め付けられ、変形部42が変形する。
【0275】
これにより、変形部42が血管壁の外側から傷孔および傷孔の周辺部を覆い、シール部41が血管壁の内側から傷孔および傷孔の周辺部を覆い、これらシール部41と変形部42とで血管壁(傷孔)が挟み込まれ、傷孔が閉じる。そして、糸46により、変形部42が前記の形状になった状態が保持(固定)される。
【0276】
また、前記スライド連結部材34による糸支持部15と第2チャージ部材33との連結が(各コイルバネ22を変形状態に保持する規制が解除)された後、すなわち、クリップ4の変形部42の変形が完了した後、図20に示すように、クリップ4のシール部41が血管壁の内面に当接した状態で、手元部9(ケーシング11)を基端方向にさらに移動させると、ケーシング11が糸支持部15に対して基端方向にさらに移動する。すなわち、糸支持部15がケーシング11に対して先端方向にさらに移動する。
【0277】
そして、糸支持部15に設けられているピン170が、ケーシング11のリブ92の先端部より先端側に位置するまで移動すると、段差部921でピン170が回動してその突起172が伏倒する。
【0278】
これにより、ピン170による糸8と糸支持部15との連結が解除され、これによって糸8とクリップ4の糸46との連結が解除される(糸8によるクリップ4の保持状態が解除される)。すなわち、糸8の折り返し部81がピン170の突起172から外れ、その糸8をクリップ4の糸46の輪462から抜き取ることができるようになる。従って、前記段差部921により、連結解除手段および保持状態解除手段が構成される。
【0279】
そして、引き続き、手元部9(ケーシング11)を基端方向に移動させると、まずは、本体部2のみ(シース5、カバーチューブ6および固定チューブ7の先端部まで)が患者から抜去される。この段階では、図20(b)に示すように、糸8の折り返し部81は、クリップ4の糸46の輪462から抜けずに、患者の体外に位置し、糸8によりクリップ4が保持されている。
【0280】
すなわち、この生体内組織閉鎖装置1では、構造および機構上、糸8の長さが比較的長く設定されるので、本体部2が患者から抜去された直後の段階では、糸8の折り返し部81がクリップ4の糸46の輪462から抜けておらず、糸8によりクリップ4が保持されているとともに、糸8の折り返し部81は、患者の体外に位置している。このため、術者は、本体部2と、糸8の折り返し部81とを掴んでいることで、糸8を介してクリップ4を保持(確保)していることができ、これにより、種々の事態に対応することができ、安全性が非常に高い。この場合、例えば、術者は、血管内のクリップ4を、糸8を介して保持しつつ、手術で取り出すこともできる。
【0281】
問題がなければ、図21に示すように、手元部9(ケーシング11)を基端方向にさらに移動させ、患者から糸8を抜去する。これにより、クリップ4が生体内に配置(留置)される。
【0282】
クリップ4のシール部41に設けられた膨潤部47は、血液に接触し、変形部42に設けられた膨潤部47は、傷孔の周辺の体液に接触しているので、それぞれ、徐々に膨潤し、所定時間経過すると、完全に膨張する。これにより、確実に、傷孔を閉じることができる。また、シール部41が傷孔から外側に抜けてしまうことや、変形部42が傷孔から内側に抜けてしまうことを防止することができる。
【0283】
以上説明したように、このクリップ4によれば、クリップ4を目的部位に留置する際に、血管内の好ましくない箇所で引っ掛かることがなく、容易かつ円滑に、クリップ4を目的部位に留置することができる。
【0284】
また、膨潤部47が膨潤することにより、シール部41および変形部42の血管壁への接触面積が増大し、また、シール部41と変形部42とによる血管壁の締め付け力が増大し、これにより、確実に、傷孔を閉じることができるとともに、確実に、シール部41を目的部位に固定することができる。
【0285】
また、膨潤部47が膨潤することにより、様々な血管(生体内組織膜)の状態(状況)に対応することができる。
【0286】
以上、本発明の生体内組織閉鎖具を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0287】
【図1】生体内組織閉鎖装置の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す生体内組織閉鎖装置の配置装置の分解斜視図(各部材(部品)を示す図)である。
【図3】図1に示す生体内組織閉鎖装置が備える本発明の生体内組織閉鎖具の実施形態を示す斜視図である。
【図4】図3に示す生体内組織閉鎖具の結び目の一例を示した説明図である。
【図5】図3に示す生体内組織閉鎖具の結び目の他例を示した説明図である。
【図6】図3に示す生体内組織閉鎖具のクリップ本体の図3中のA−A線での断面図である。
【図7】図3に示す生体内組織閉鎖具のクリップ本体の図3中のB−B線での断面図である。
【図8】図3に示す生体内組織閉鎖具のクリップ本体の図3中のC−C線での断面図である。
【図9】図1に示す生体内組織閉鎖装置の糸支持部、ピンおよび糸を示す図である。
【図10】図1に示す生体内組織閉鎖装置の第1チャージ部材の基部を示す断面図である。
【図11】図1に示す生体内組織閉鎖装置の保持部材を示す斜視図である。
【図12】図11に示す保持部材の基端側部材および先端側部材を示す斜視図である。
【図13】図11に示す保持部材を示す断面図である。
【図14】図1に示す生体内組織閉鎖装置の作用(動作)を説明するための斜視図である。
【図15】図1に示す生体内組織閉鎖装置の作用(動作)を説明するための斜視図である。
【図16】図1に示す生体内組織閉鎖装置の作用(動作)を説明するための斜視図である。
【図17】図1に示す生体内組織閉鎖装置の作用(動作)を説明するための斜視図である。
【図18】図1に示す生体内組織閉鎖装置の作用(動作)を説明するための斜視図である。
【図19】図1に示す生体内組織閉鎖装置の作用(動作)を説明するための斜視図である。
【図20】図1に示す生体内組織閉鎖装置の作用(動作)を説明するための斜視図である。
【図21】図1に示す生体内組織閉鎖装置の作用(動作)を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0288】
1 生体内組織閉鎖装置
2 本体部
3 配置装置
4 クリップ
40 クリップ本体
41 シール部
412 平面部
42 変形部
421、422 角部
423 上面
424 傾斜面
425〜428 孔
429 段差部
44 接続部
441 孔
46 糸
461 結び目
462 輪
47 膨潤部
5 シース
51 貫通孔
52 ハブ
53 ポート部
54 溝
6 カバーチューブ
61 開口部
7 固定チューブ
71 先端部
8 糸
81 折り返し部
9 手元部
11 ケーシング
11a 上カバー
11b 下カバー
14 カバーチューブ支持部
143 孔部
15 糸支持部
150 凹部
155 突起
156〜158 孔部
170 ピン
171 基部
172 突起
18 保持部材
18a 基端側部材
18b 先端側部材
181 凸部
182 側孔
183 リブ
184 溝
185 管状部
186 基端部
187 最基端部
190 収納部
191 広空間部
1911 最広空間部
1912 基端側空間部
192 狭空間部
193 移行部
194 傾斜面
22 コイルバネ
28 レバー
29 ロック部
291 突出部
31 コネクタ
311 内管部
312 外管部
313、314 長穴
315 リブ
32 第1チャージ部材
321 基部
322 棒状体
323 凸部
324 孔部
325 基端部
326 爪
327 突起
33 第2チャージ部材
331〜333 孔部
334 突出部
335 爪
336 凹部
34 スライド連結部材
341 基部
342 棒状体
343 爪
344、345 孔部
346 突起
347 基端部
35 ストッパー
351 ストッパー本体
352 支持部
36 レール
361 溝
362 孔部
37 ガイドバー
38、39 ガイドバー支持部
91 溝
92 リブ
921 段差部
93 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内組織膜を貫通する傷孔を閉じる生体内組織閉鎖具であって、
前記生体内組織膜の一方の面側から前記傷孔および前記傷孔の周辺部を覆う板状のシール部と、
前記生体内組織膜の他方の面側から前記シール部とで前記傷孔を挟むような形状に変形し得る変形部と、
前記変形部を前記形状に保持する保持手段とを有し、
当該生体内組織閉鎖具の外表面の少なくとも一部に、液体と接触して膨潤する材料で構成された膨潤部が設けられていることを特徴とする生体内組織閉鎖具。
【請求項2】
前記膨潤部は、前記シール部および前記変形部の少なくとも一方に設けられている請求項1に記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項3】
前記膨潤部は、前記シール部の前記変形部側の面および側面に設けられている請求項1または2に記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項4】
前記変形部は、前記シール部に対して略垂直な方向に伸び、前記シール部に対して略平行な方向に縮小した第1の形状と、前記シール部に対して略垂直な方向に縮み、前記シール部に対して略平行な方向に拡張した第2の形状との間において変形可能である枠状をなしている請求項1ないし3のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項5】
前記膨潤部は、前記変形部が前記第2の形状になったときの該変形部の前記シール部に対する対向面および該対向面に対応する部位の側面に設けられている請求項4に記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項6】
前記変形部は、パンタグラフ様形状をなしている請求項1ないし5のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項7】
前記シール部と前記変形部とを接続し、前記傷孔を挿通する接続部を有し、該接続部の外表面には前記膨潤部が設けられていない請求項1ないし6のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項8】
前記膨潤部は、該膨潤部を構成する材料を含有する溶液を塗布し、乾燥させたものである請求項1ないし7のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項9】
当該生体内組織閉鎖具の前記膨潤部を形成する部位の表面は、前記膨潤部を形成しない部位の表面に比べて、親水性が高い請求項1ないし8のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項10】
当該生体内組織閉鎖具の少なくとも前記膨潤部を形成する部位の表面は、親水化処理が施されている請求項1ないし9のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項11】
当該生体内組織閉鎖具の少なくとも前記膨潤部を形成する部位の表面は、粗面化処理が施されている請求項1ないし10のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項12】
前記膨潤部は、ゲルポリマーで構成されている請求項1ないし11のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項13】
前記ゲルポリマーは、その分子構造の一部にアニオン性基を有し、該アニオン性基を脱プロトン化する液体との接触により膨潤するものである請求項12に記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項14】
前記ゲルポリマーは、その分子構造の一部にカチオン性基を有し、該カチオン性基をプロトン化する液体との接触により膨潤するものである請求項12に記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項15】
前記ゲルポリマーは、モノマー成分として、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種を含むものである請求項12ないし14のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項16】
前記ゲルポリマーは、架橋剤として、エチレン性不飽和化合物を含むものである請求項12ないし15のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項17】
前記ゲルポリマーは、pHが7.1〜7.8の液体との接触により膨潤するものである請求項12ないし16のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項18】
前記ゲルポリマーは、血液および前記傷孔の周辺の体液との接触により、それぞれ膨潤するものである請求項12ないし16のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項19】
前記ゲルポリマーは、その体積が3〜5倍になるように膨潤するものである請求項12ないし18のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。
【請求項20】
前記シール部および前記変形部は、それぞれ、生体吸収性材料で構成されている請求項1ないし19のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−11981(P2010−11981A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173883(P2008−173883)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】