説明

生体情報の評価システム及び評価方法

【課題】本発明の目的は、人体の健康状態や生活習慣病のリスク等を、生体情報を総合的に加味した、客観的かつ正確な評価指標及びそれを利用したシステムを提供することである。
【解決手段】本発明の一態様にかかる評価システム100は、生体情報の複数の項目について、被験者の測定データを取得する測定データ取得部112と、測定データを複数の項目のそれぞれについての平均及び標準偏差に基づいて標準化することにより、複数の項目について標準化データを生成する標準化データ生成部114と、標準化データを複数の項目間において正規化することにより、複数の項目について正規化データを生成する正規化データ生成部116と、正規化データを、複数の項目間の関係性を示す相関係数データに基づいて演算することにより、被験者の生体情報の評価指数データを生成する評価指数データ生成部118とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体情報の評価システム及び評価方法に関する。特に、新しい評価指標を利用した生体情報の評価システム及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の健康状態を測定及び管理するシステムとして、特開2005−250583号公報や特開2008−547078号公報に示されるような装置又はサービスが知られているが、近年の生活習慣病の問題や健康状態の高い注目があるにもかかわらず、未だに、健康状態を総合的に評価できるような指標及びそれを用いたシステムは普及していない。生体情報に基づく指標としては、BMIやメタボリックシンドロームの指標が知られているが、いずれも健康状態を総合的に評価できるような指標としては信憑性が低いものであることは明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−250583号公報
【特許文献2】特開2008−547078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、人体の健康状態や生活習慣病のリスク等を、生体情報を総合的に加味した、客観的かつ正確な評価指標及びそれを利用したシステムを提供することが求められている。
【0005】
よって、本発明の目的は、上記の課題を解決することができる生体情報の評価システム及び評価方法を提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる評価システムは、生体情報の複数の項目について、被験者の測定データを取得する測定データ取得部と、前記測定データを複数の項目のそれぞれについての平均及び標準偏差に基づいて標準化することにより、前記複数の項目について標準化データを生成する標準化データ生成部と、前記標準化データを前記複数の項目間において正規化することにより、前記複数の項目について正規化データを生成する正規化データ生成部と、前記正規化データを、前記複数の項目間の関係性を示す相関係数データに基づいて演算することにより、前記被験者の生体情報の評価指数データを生成する評価指数データ生成部とを含む。
【0007】
かかる構成によれば、被験者の生体情報に関する複数の項目についての測定データから、ある基準に基づく総合的な評価指標を生成することができる。これにより従来、健康であるか否か、又は、何らかのリスクがあるか否かでしか判定できなかったものを、複数の項目の測定データを総合的に判断して、かつ、どの程度の水準にあるかについて評価することができる。したがって、被験者の生体情報をより客観的かつ正確に評価できるシステムを提供することができる。
【0008】
上記評価システムにおいて、前記生体情報の前記複数の項目は、前記測定データの値が大きいほうが良好である第1の項目群と、前記測定データの値が平均に近いほうが良好である第2の項目群と、前記測定データの値が小さいほうが良好である第3の項目群とに分類され、前記正規化データ生成部は、前記標準化データを、当該標準化データの項目が属する前記第1から第3の項目群の分類に基づいて正規化することを含んでもよい。
【0009】
上記評価システムにおいて、前記評価指数データ生成部は、前記複数の項目のそれぞれにおいて、前記相関係数データから前記項目ごとに重み付けされた重み付けデータを算出し、前記重み付けデータを前記複数の項目間において正規化し、前記複数の項目のそれぞれにおいて前記正規化された重み付けデータと前記正規化データとを乗算した値を、前記複数の項目において総和することにより、前記評価指数データを生成してもよい。
【0010】
上記評価システムにおいて、前記標準化データ、前記正規化データ及び前記評価指数データのうち少なくとも一部の処理結果に基づく情報を提供する、処理結果提供部をさらに含んでもよい。
【0011】
本発明の一態様にかかる生体情報の評価方法によれば、生体情報の複数の項目について、被験者の測定データを取得するステップと、前記測定データを、前記複数の項目のそれぞれについての平均及び標準偏差に基づいて標準化することにより、前記複数の項目について標準化データを生成するステップと、前記標準化データを所定の関数に基づいて、前記複数の項目間において正規化することにより、前記複数の項目について正規化データを生成するステップと、前記正規化データを、前記複数の項目間の関係性を示す相関係数データに基づいて演算することにより、前記被験者の生体情報の評価指数データを生成するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る生体情報の評価システムを含む図である。
【図2】本発明の一実施形態において使用される生体情報の項目例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る正規化データを生成するための関数を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る生体情報の評価方法に関するフローチャートを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る評価結果の一例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る評価結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
1.生体情報の評価システムについて
図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態に係る生体情報の評価システムの構成について説明する。ここで、図1は生体情報の評価システムを含むシステム全体の構成を示す図であり、図2は生体情報の項目例を示す図である。また、図3は後述する正規化データを生成するための関数を説明する図である。
【0015】
本実施形態に係る評価システム100は、生体情報を評価するシステムであり、具体的には、被験者を測定して得られた生体情報をある基準に基づいてどれだけの水準にあるかを見定めるシステムである。ここで、上記した「ある基準」としては、例えば健康度、疾病リスク又は生活習慣病リスク等が挙げられる。
【0016】
評価システム100には、本実施形態に係る生体情報の評価を行うための所定のプログラムが予めインストールされている。この評価システム100は、本実施形態に係る生体情報の評価を行うために必要な処理を行う処理部110、及び、かかる処理に必要な情報を記憶するための記憶部(図1では参照データ記憶部130及び情報記憶部140を含む)を含む。
【0017】
評価システム100のハードウェアの構成としては、CPU、ROM、RAM、外部記憶装置、ユーザインタフェース、ディスプレイ、プリンタ及び通信インタフェース等を備える、汎用又は専用のコンピュータシステムを適用することができる。評価システム100は、例えばCPUが、上記したROM、RAM、外部記憶装置などに記憶された又は通信ネットワークを介してダウンロードされた所定のプログラム(本実施形態に係る生体情報の評価を行う方法を規定したプログラム)を実行することにより、評価システム100を後述の各種機能ブロック又は各種ステップとして機能させることができる。
【0018】
図1においては、評価システム100(例えば処理部110)は、データ送受信可能なように、通信ネットワーク150を介して端末160に接続されている。通信ネットワーク150は、インターネットのような通信網のみならず、ローカルエリアネットワーク(LAN)やその他通信回線などを介した通信網を含むことができる。
【0019】
端末160は、被験者が生体情報を測定及び/又は入力することができ、また測定及び/又は入力されたデータを通信ネットワーク150上に送信可能である装置である。図1に示すように、複数の端末160−1〜nが通信ネットワークに接続され、評価システム100が複数の端末160−1〜nとデータ送受信可能なように接続されていてもよい。
【0020】
端末160は、例えば病院やフィットネスジム等に設けられた既知のコンピュータを適用することができ、具体的には端末160は、年齢や性別等を含む被験者に関わる情報を入力するためのデータ入力部162、被験者の生体情報を測定するための生体情報測定部164、各種情報を表示するための表示部166等を含むことができる。あるいは端末160は、データ入力部162及び表示部166を含む汎用のコンピュータ又は携帯電話のような携帯端末であってもよい。この場合、端末160は、当該端末とは別個の生体情報測定装置(図示しない)から得られた生体情報の測定データを入力するようにしてもよい。
【0021】
次に、評価システム100の構成について具体的に説明する。
【0022】
評価システム100の処理部110は、主な構成として、被験者の測定データを取得する測定データ取得部112、測定データを標準化して標準化データを生成する標準化データ生成部114、標準化データを正規化して正規化データを生成する正規化データ生成部116、正規化データを演算して評価指数データを生成する評価指数データ生成部118、及び、上記いずれかの処理により得られた結果を提供する処理結果提供部120を含む。また、評価システム100には、処理部110の処理において参照される参照データを記憶する参照データ記憶部130、及び、運動の形態及び/又はアドバイスの形態に関する情報が記憶された情報記憶部140が設けられている。処理部110内の上記各構成は、参照データ記憶部130及び情報記憶部140にデータ送受信可能なように接続されており、これにより処理部110によって処理される必要なデータを上記記憶部に記憶又は上記記憶部から読み出し可能としている。
【0023】
測定データ取得部112は、被験者に対する生体情報の複数の項目についての測定データを取得する。この場合、一人の被験者に対する項目ごとの複数の測定データを1セットとして取得する。
【0024】
ここで、図2に示すように生体情報の項目としては、身体寸法の分類に属する「胸囲/腹囲」、「ヒップ/腹囲」及び「大腿囲/腹囲」、身体活性の分類に属する「体温」、「心拍数」、「最高血圧」及び「最低血圧」、身体組成の分類に属する「BMI(Body Mass Index)」、「体脂肪率」及び「基礎代謝/体表面積」、並びに、運動能力の分類に属する「イス座り立ち」(イスに座る及びイスから立つ動作を所定回数繰り返すこと)、「反応時間」(対象が表示されてからそれを認識してアクションするまでの時間)、「閉眼片足立ち」、「握力」及び「上体起こし」等が挙げられる。しかしながら、生体情報の項目内容及び項目数は上記例に限定されるものではなく、広く被験者に対する生体情報であればどのような項目内容及び項目数であっても構わない。また、生体情報の項目は、他の被験者との比較を容易にするため、生体情報の要素を他の要素に関連付けて変換したもの(例えば身長を体重に関連付けて変換した「BMI」)であってもよいし、あるいは生体情報の要素そのもの(例えば「身長」「体重」)であってもよい。後者の場合、測定データ取得部112が取得した生体情報の要素ついての測定データを他の要素についての測定データと関連付けしてその後の処理を行ってもよい。
【0025】
図2に示すように、生体情報の各項目は、性質上、3つの項目群に分類することができる。すなわち、測定データの値が大きいほうが良好である第1の項目群、測定データの値が平均に近いほうが良好である第2の項目群、及び、測定データの値が小さいほうが良好である第3の項目群である。図2に示す例では、第1の項目群は「胸囲/腹囲」、「ヒップ/腹囲」、「大腿囲/腹囲」、「基礎代謝/体表面積」、「閉眼片足立ち」、「握力」及び「上体起こし」を含み、第2の項目群は「体温」、「心拍数」、「最高血圧」及び「最低血圧」を含み、第3の項目群は「BMI」、「体脂肪率」「イス座り立ち」及び「反応時間」を含む。生体情報の項目と上記した項目群との対応に関する情報は、参照データ記憶部130に予め格納されていてもよいし、所定の取り決めに従って処理部110(標準化データ生成部114)が決定してもよい。
【0026】
参照データ記憶部130は、処理部110が参照するための参照データを記憶している。参照データ記憶部130は、複数の被験者の生体情報に基づいてデータベース化された、複数の項目についての平均及び標準偏差データベース132を含む。このデータベース132は、年齢や性別等に基づく分類ごとに、複数の項目についての平均及び標準偏差を有しており、測定データ取得部112が取得した測定データの被験者の分類に対応して、必要なデータを処理部110に提供する。また、参照データ記憶部130は、生体情報の複数の項目間の関係性の大きさを示す相関関係がデータベース化された、相関関係データベース134を含む。かかるデータベース134において格納される相関係数データは、1つの項目において他の全ての項目に対する関係性を示すものであってもよい。
【0027】
なお、参照データ記憶部130は、処理部110としてのサーバの外部に設けられた記憶媒体であってもよいし、処理部110としてのサーバ内部に設けてもよい。また、参照データ記憶部130は、上記したデータベースのほか、処理部110が処理するために必要な各種データベース(下記に示す式、関数等)を記憶していてもよい。
【0028】
標準化データ生成部114は、測定データ取得部112によって取得された測定データを参照データに基づいて標準化することにより、生体情報の複数の項目について標準化データを生成する。具体的には、標準化データ生成部114は、測定データ取得部112が取得した測定データに対応する参照データ、すなわち平均及び標準偏差に関するデータを参照データ記憶部130から読み出し、以下の式に基づいて標準化データを生成する。
【数1】

【0029】
ここで、上記式のうち、は第i項目(図2の場合、i=1,2,・・・,15)についての測定データであり、は第i項目についての平均データであり、は第i項目についての標準偏差データであり、は第i項目についての標準化データである。このようにして、測定データから標準化データを生成することにより、被験者全体の分布の中で対象となる被験者の位置がどの程度の位置にあるのかというのを、各項目につき、複数の被験者のそれぞれにおいて同一基準で比較することができるよう、標準化することができる。
【0030】
正規化データ生成部116は、標準化データ生成部114によって生成された標準化データを複数の項目間において正規化することにより、生体情報の複数の項目について正規化データを生成する。すなわち、生体情報の複数の項目のそれぞれにおいて同一基準で比較することができるよう、標準化データを所定の関数に従って変換する。具体的には、正規化データ生成部116は、標準化データを当該標準化データの項目が第1から第3の項目群のいずれに対応するかを決定し、第1の項目群に対応する関数(1)、第2の項目群に対応する関数(2)及び第3の項目群に対応する関数(3)のいずれによって正規化データを生成するかを決定し、正規化データを生成する。関数(1)〜(3)の例は以下のとおりである。
【数2】

【0031】
ここで、上記関数のうちkiは第i項目についての係数であり、qiは第i項目についての正規化データである。係数kiについては生体情報の複数の項目において同一の値(例えばki=1)を適用してもよく、その値は被験者の健康状態等に基づいて決定することができる。また、係数kiは生体情報の項目に応じて値を変更してもよく、例えば最終的に見定める基準との関係度の大きさ等に基づいて項目ごとに異なる値を適用してもよい。
【0032】
図3は、ki=1の場合の関数(1)〜(3)のグラフを示す図であり、具体的には図3(a)が関数(1)のグラフ、図3(b)が関数(2)のグラフ、及び、図3(c)が関数(3)のグラフを示す。図3からわかるとおり、第1の項目群においては測定データ(標準化データでも同じ)の値が大きいほどより良好(すなわち健康的)であるようにqiが大きくなる一方で、第3の項目群において測定データ(標準化データでも同じ)の値が小さいほどより良好であるようにqiが大きくなる。また、第2の項目群については測定データ(標準化データでも同じ)の値が平均に近いほどより良好であるようにqiが大きくなる。また、上記関数(1)〜(3)の構成によれば、測定データ(標準化データでも同じ)の値が標準の値よりもあまりにも大きく離れる場合には、正規化データqiの値が漸近的に飽和するようになっている。これにより、いずれか1つの項目において測定データが標準の値よりもあまりにも大きく離れたとしても、正規化データqiの値が大きく変動しない、すなわち健康度に大きく影響しないようにすることができ、より正確な結果を得ることができる。
【0033】
評価指数データ生成部118は、正規化データ生成部116によって生成された正規化データから、被験者の生体情報の複数の項目の総合的な指数である、評価指数データを生成する。すなわち、評価指数データ生成部118は、下記式に示すように、生体情報の複数の項目間の関係性を示す相関係数データRijから、生体情報の項目ごとに重み付けされた重み付けデータRiを算出し、当該重み付けデータRiを複数の項目のそれぞれにおいて同一基準で比較することができるよう複数の項目間において正規化して、正規化された重み付けデータri(0≦ri≦1)を算出し、生体情報の複数の項目のそれぞれにおいて正規化された重み付けデータriと正規化データqiとを乗算した値を、複数の項目において総和することにより、評価指数データα(0≦α≦1)を算出する。
【数3】

【数4】

【数5】

【0034】
ここで、相関係数データRijは第i項目と第j項目との相関係数であり、各々の項目間でどの程度関係性が強いかを示す係数である。このような相関係数データは、複数の被験者の生体情報に基づいて予め作成することができ、例えば参照データ記憶部130に予め記憶させておくことができる。
【0035】
また、重み付けデータRiは、生体情報の複数の項目においてより総合的に評価指数データを算出するため、例えば最終的に見定める基準との関係度の大きさに応じて重み付けしたものである。
【0036】
このようにして得られた評価指数データαにおいては、理論上、全ての項目において測定値=平均値であった場合にα=0.5となり、いずれかの項目の測定値が良好である場合にはα>0.5となる一方、良好ではない場合にはα<0.5となる。
【0037】
処理結果提供部120は、上記した処理部110の各構成により得られた、標準化データ、正規化データ及び評価指数データのうち少なくとも一部の処理結果を提供する。処理結果提供部120は、評価システム100のディスプレイやプリンタに処理結果を提供してもよいし、通信ネットワーク150を介して端末160、すなわち被験者に処理結果を提供するように構成されていてもよい。
【0038】
また、処理結果提供部120は、上記した処理部110の処理結果に基づいて、情報記憶部140に記憶されている所定の情報を提供する。すなわち、情報記憶部140は、被験者に提供するための情報として、運動データベース142及びアドバイスデータベース144を記憶しており、処理結果提供部120は、標準化データ、正規化データ及び評価指数データのうち少なくとも一部の結果に基づいて、各データベース142,144に記憶された所定の情報を提供する。運動データベース142には、被験者の健康状態等を維持又は改善するための運動の内容、運動の仕方、運動量(運動回数や頻度)等の各種情報が格納され、他方、アドバイスデータベース144には、同様の目的で、アドバイスの内容等の各種情報が格納されている。なお、処理結果提供部120による結果の表示については、後述する図5及び図6並びにそれに関する説明を参照することができる。
【0039】
本実施形態に係る生体情報の評価システムによれば、被験者の生体情報に関する複数の項目についての測定データから、ある基準に基づく総合的な評価指標を生成することができる。これにより従来、健康であるか否か、又は、何らかのリスクがあるか否かでしか判定できなかったものを、複数の項目の測定データを総合的に判断して、かつ、どの程度の水準にあるかについて評価することができる。したがって、被験者の生体情報をより客観的かつ正確に評価できるシステムを提供することができる。
【0040】
なお、上記実施形態においては、評価システム100が通信ネットワーク150を介して端末160と接続される構成を説明したが、これとは別に通信ネットワーク150を使用することなく、評価システム100と端末160との間でデータ送受信させることもできる。この場合、端末160は、評価システム100と別個のコンピュータ又は測定装置であってもよいし、評価システム100に組み込まれて構成されていてもよい。
【0041】
2.生体情報の評価方法について
次に、図1〜4を参照して、本発明の一実施形態に係る生体情報の評価方法について説明する。ここで、図4は、本実施形態に係る生体情報の評価方法に関するフローチャートを示す図である。本実施形態に係る生体情報の評価方法は、上記した「生体情報の評価システムについて」の項において説明した評価システム100を用いて行うことができる。なお、以下に説明する各ステップ(図4に示される符号が付されたステップのみならず、当該ステップの部分的なステップを含む)は処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更して又は並列に実行することができる。
【0042】
まず、評価システム100は、通信ネットワーク150を介して端末160(すなわち表示部166)に、名前、性別、年齢等の個人情報の入力や、生体情報の複数の項目についての測定データを測定及び/又は入力するよう促す。これに対して、被験者は、端末160の表示に基づいて、かかる個人情報の入力や測定データの測定及び/又は入力を行う。端末160に入力されたデータは、通信ネットワーク150を介して評価システム100に送信される。こうして、例えば評価システム100の処理部110(具体的には測定データ取得部112)において、被験者の生体情報の複数の項目についての測定データを取得する(S101)。取得された測定データは、その後の処理で使用されるまで、一時的に参照データ記憶部130に格納しておいてもよい。
【0043】
ここで、取得された測定データは、図4に示すフローによる処理とは別に、参照データとして、すなわち平均及び標準偏差データベース132や相関係数データベース134において活用できるようなデータとして、評価システム100の記憶部(例えば参照データ記憶部)に格納してもよい。これにより参照データとしての生体情報のサンプルを蓄積させることができるので、より客観的かつ正確な評価指数データを生成することが可能となる。
【0044】
次に、測定データを生体情報の複数の項目のそれぞれについての平均及び標準偏差に基づいて標準化することにより、複数の項目について標準化データを生成する(S103)。かかる標準化処理は、標準化データ生成部114により行うことができる。標準化データ生成部114は、取得された測定データを測定データ取得部112又は参照データ記憶部130から読み出し、上記標準化データ生成部114の構成で説明した処理により、標準化データを生成する。生成された標準化データは、その後の処理で使用されるまで、一時的に参照データ記憶部130に格納しておいてもよい。
【0045】
次に、標準化データを所定の関数に基づいて、生体情報の複数の項目間において正規化することにより、生体情報の複数の項目について正規化データを生成する(S105)。具体的には、予め決定しておいた項目の分類に基づいて、生体情報の複数の項目のそれぞれが第1から第3の項目群(図2参照)のいずれに該当するかを特定し、特定された項目群に対応する関数(図3参照)を使用して正規化データを生成する。かかる正規化処理は、正規化データ生成部116により行うことができ、またその処理の具体的内容は、正規化データ生成部116の構成において既に説明したとおりである。
【0046】
次に、正規化データを複数の項目間の関係性を示す相関係数データに基づいて演算することにより、被験者の生体情報の評価指数データを生成する(S107)。かかる演算処理は、評価指数データ生成部118により行うことができる。評価指数データ生成部118は、正規化データを正規化データ生成部116又は参照データ記憶部130から読み出し、その一方、相関係数データを参照データ記憶部130の相関係数データベース134より読み出し、これらのデータに基づいて演算する。具体的には評価指数データ生成部118の構成で説明した処理を適用することができる。こうして、生成された評価指数データは参照データ記憶部130に格納してもよい。
【0047】
その後、必要に応じて、標準化データ、正規化データ及び評価指数データのうち、少なくとも一部の処理結果に基づいて情報を提供する(S109)。かかる処理は、処理結果提供部120により行うことができる。処理結果提供部120は、上記した各ステップで生成された標準化データ、正規化データ及び評価指数データを、当該各データを生成した処理部110又は一時的に格納された参照データ記憶部130から読み出し、当該読み出しデータに関する情報又はそれに関連する情報を、通信ネットワーク150を介して端末160に送信することができる。
【0048】
このように、本実施形態にかかる生体情報の評価方法によれば、上記評価システムの構成において説明したように、被験者の生体情報をより客観的かつ正確に示すことができる。
【0049】
3.評価結果について
次に、図5及び6を参照して、上記評価システム又は評価方法を適用した評価結果について説明する。図5及び6はそれぞれ評価結果の一例であり、評価結果の表示態様はこれらの例に限定されるものではない。
【0050】
評価システム100は、標準化データ、正規化データ及び評価指数データのうち、少なくとも一部の処理結果に基づく情報を、例えば図5に示す評価結果200として被験者に提供してもよい。評価結果200は、評価システム100又は端末160のディスプレイに表示してもよいし、あるいはプリンタにより印刷して表示してもよい。
【0051】
かかる評価結果200は、被験者に関する個人情報の表示210、測定データに関する表示220、標準化データに関する表示230、正規化データに関する表示240、及び、評価指数データに関する表示250を含む。
【0052】
個人情報の表示210には、名前、性別、年齢、及び測定年月日等の基礎情報が示され、また、測定データに関する表示220には、被験者に関する生体情報の複数の項目についての測定データがレーダーチャート形式で示されており、今回の測定において得られた各項目についての測定値222を例えば各項目の平均値224とともに示されている。また、標準化データに関する表示230には、生体情報の分類及び項目ごとに、平均から見てどの程度高い又は低い値であるのかが示され、また、正規化データに関する表示240には、例えば生体情報の分類ごとに健康度等の所定の基準に対する良し悪し及びその度合いがどの程度であるのかが示されている。評価指数データに関する表示250においては、例えば評価指数データαの値がスコア(図5の例では、82点/100点)形式で示されており、被験者の今回の測定が、健康度、疾病リスク又は生活習慣病リスクの観点から総合的にどの水準にあるかが非常にわかりやすく判定できるようになっている。
【0053】
また、評価システム100は、標準化データ、正規化データ及び評価指数データのうち、少なくとも一部の処理結果に基づいて、今後の生活態様の改善又は維持を促すよう、例えば図6に示す評価結果300を被験者に提供してもよい。評価結果300は、評価結果200と同様、ディスプレイに表示してもよいし、プリンタにより印刷して表示してもよい。
【0054】
かかる評価結果300は、例えば、運動情報に関する表示310及びアドバイス情報に関する表示320を含む。これにより、今回の測定結果を総合的又は部分的に加味して、被験者に最適な運動情報やアドバイス情報を提供することができる。
【0055】
上記発明の実施形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施形態の記載に限定されるものではない。そのような組み合わせ又は変更若しくは改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0056】
100・・・評価システム
110・・・処理部
112・・・測定データ取得部
114・・・標準化データ生成部
116・・・正規化データ生成部
118・・・評価指数データ生成部
120・・・処理結果提供部
130・・・参照データ記憶部
140・・・情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報の複数の項目について、被験者の測定データを取得する測定データ取得部と、
前記測定データを複数の項目のそれぞれについての平均及び標準偏差に基づいて標準化することにより、前記複数の項目について標準化データを生成する標準化データ生成部と、
前記標準化データを前記複数の項目間において正規化することにより、前記複数の項目について正規化データを生成する正規化データ生成部と、
前記正規化データを、前記複数の項目間の関係性を示す相関係数データに基づいて演算することにより、前記被験者の生体情報の評価指数データを生成する評価指数データ生成部と
を含む、生体情報の評価システム。
【請求項2】
前記生体情報の前記複数の項目は、前記測定データの値が大きいほうが良好である第1の項目群と、前記測定データの値が平均に近いほうが良好である第2の項目群と、前記測定データの値が小さいほうが良好である第3の項目群とに分類され、
前記正規化データ生成部は、前記標準化データを、当該標準化データの項目が属する前記第1から第3の項目群の分類に基づいて正規化することを含む、請求項1記載の評価システム。
【請求項3】
前記評価指数データ生成部は、
前記複数の項目のそれぞれにおいて、前記相関係数データから前記項目ごとに重み付けされた重み付けデータを算出し、
前記重み付けデータを前記複数の項目間において正規化し、
前記複数の項目のそれぞれにおいて前記正規化された重み付けデータと前記正規化データとを乗算した値を、前記複数の項目において総和することにより、前記評価指数データを生成する、請求項1又は2記載の評価システム。
【請求項4】
前記標準化データ、前記正規化データ及び前記評価指数データのうち少なくとも一部の処理結果に基づく情報を提供する、処理結果提供部をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の評価システム。
【請求項5】
生体情報の複数の項目について、被験者の測定データを取得するステップと、
前記測定データを、前記複数の項目のそれぞれについての平均及び標準偏差に基づいて標準化することにより、前記複数の項目について標準化データを生成するステップと、
前記標準化データを所定の関数に基づいて、前記複数の項目間において正規化することにより、前記複数の項目について正規化データを生成するステップと、
前記正規化データを、前記複数の項目間の関係性を示す相関係数データに基づいて演算することにより、前記被験者の生体情報の評価指数データを生成するステップと
を含む、生体情報の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−207272(P2010−207272A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53756(P2009−53756)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(503421254)フィールファイン株式会社 (4)
【Fターム(参考)】