説明

生体情報取得装置、生体情報取得方法、および生体情報取得プログラム

【課題】 指紋情報取得精度および静脈情報取得精度の両方を向上させることができる、生体取得装置、生体取得方法、および生体取得プログラムを提供する。
【解決手段】 生体情報取得装置は、ユーザの手から指紋を読み取る指紋センサと、ユーザの手から静脈を読み取る静脈センサと、静脈センサの読み取り面に対する指紋センサの読み取り面の傾斜角度を評価する角度評価部、を備える。他の生体情報取得装置は、ユーザの手のから指紋を読み取る指紋センサと、ユーザの手から静脈を読み取る静脈センサと、を備え、静脈センサの読み取り面に対する指紋センサの読み取り面の傾斜角度は、0°よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報取得装置、生体情報取得方法、および生体情報取得プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報を用いて個人認証を行うバイオメトリック認証において、個人の認証に失敗する確率(本人拒否率)および他人を誤って本人と認証してしまう確率(他人受入率)を減少させるという課題がある。この課題を解決する手段の一つとして、複数の部位から取得される複数種類の生体情報を用いて認証を行う「マルチバイオメトリック認証」が挙げられる。たとえば、指紋認証と手のひら静脈認証とを組み合わせることによって、より高い認証精度を得ることができる。
【0003】
マルチバイオメトリック認証に関して、特許文献1および特許文献2は、指紋および静脈を用いたマルチバイオメトリック認証装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−263640号公報
【特許文献2】特開2003−303178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
指紋センサの指紋情報取得精度は、読み取り面に指が所定の力で押し付けられた状態で高くなる。したがって、手に所定の力が入っている方が好ましい。一方、手のひら静脈センサの静脈情報取得精度は、手のひらの血流が良好な状態で高くなる。したがって、手のひら静脈認証においては、手に力が入っていない方が好ましい。以上のことから、指紋情報取得精度と静脈情報取得精度との間には、トレードオフの関係が生じている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、指紋情報取得精度および静脈情報取得精度の両方を向上させることができる、生体取得装置、生体取得方法、および生体取得プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、明細書開示の生体情報取得装置は、ユーザの手から指紋を読み取る指紋センサと、ユーザの手から静脈を読み取る静脈センサと、静脈センサの読み取り面に対する指紋センサの読み取り面の傾斜角度を評価する角度評価部と、を備えるものである。
【0008】
上記課題を解決するために、明細書開示の他の生体情報取得装置は、ユーザの手のから指紋を読み取る指紋センサと、ユーザの手から静脈を読み取る静脈センサと、を備え、静脈センサの読み取り面に対する指紋センサの読み取り面の傾斜角度は、0°よりも大きいものである。
【0009】
上記課題を解決するために、明細書開示の生体取得方法は、指紋センサを用いてユーザの手から指紋を読み取り、静脈センサを用いてユーザの手から静脈を読み取る際に、静脈センサの読み取り面に対する指紋センサの読み取り面の傾斜角度を評価する評価ステップを含むものである。
【0010】
上記課題を解決するために、明細書開示の生体情報取得プログラムは、コンピュータに、指紋センサを用いてユーザの手から指紋を読み取り、静脈センサを用いてユーザの手から手のひら静脈を読み取る際に、静脈センサの読み取り面に対する指紋センサの読み取り面の傾斜角度を評価する評価ステップを実行させるものである。
【発明の効果】
【0011】
明細書開示の生体取得装置、生体取得方法、および生体取得プログラムによれば、指紋情報取得精度および静脈情報取得精度の両方を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1に係る生体情報取得装置100のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【図2】(a)および(b)は、指紋センサおよび静脈センサの詳細を説明するための図である。
【図3】(a)〜(c)はユーザの指を配置するためのガイドおよびユーザの手首を配置するためのガイドについて説明するための図である。
【図4】(a)〜(c)は静脈センサの読み取り面に対する指紋センサの読み取り面の傾斜角度を説明するための図である。
【図5】指紋センサが配置されるスロープを説明するための図である。
【図6】生体情報取得プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。
【図7】(a)は生体データ登録処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図であり、(b)は登録データベースに登録された指紋情報および静脈情報を説明するための図である
【図8】生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図9】実施例3に係る生体情報取得プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。
【図10】角度評価処理の際に実現される各機能のブロック図である。
【図11】角度評価処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図12】(a)〜(d)は指紋画像について説明するための図である。
【図13】コントラスト値Cの時間変化について説明するための図である。
【図14】角度θの総合評価を説明するための図である。
【図15】角度θの妥当性の評価を行うためのフローチャートの一例である。
【図16】角度θを可変とする構成について説明するための図である。
【図17】実施例3に係る生体情報取得プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。
【図18】角度調整処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。
【図19】実施例4に係るハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1に係る生体情報取得装置100のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。図1を参照して、生体情報取得装置100は、CPU101、RAM102、記憶装置103、指紋センサ104、静脈センサ105、表示装置106などを備える。これらの各機器は、バスなどによって接続されている。
【0015】
CPU(Central Processing Unit)101は、中央演算処理装置である。CPU101は、1以上のコアを含む。RAM(Random Access Memory)102は、CPU101が実行するプログラム、CPU101が処理するデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。
【0016】
記憶装置103は、不揮発性記憶装置である。記憶装置103として、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、ハードディスクドライブに駆動されるハードディスクなどを用いることができる。記憶装置103は、生体情報取得プログラムを記憶している。
【0017】
指紋センサ104は、読み取り面に接触して配置された1本以上の指の指紋を取得するセンサであり、光を利用して指紋を取得する光学式センサ、静電容量の差異を利用して指紋を取得する静電容量センサなどである。指紋センサ104は、たとえば、照明およびカメラを備える。静脈センサ105は、非接触で手のひら静脈を取得するセンサであり、たとえば、人体への透過性が高い近赤外線を用いて手のひらの皮下の静脈を撮影する。静脈センサ105には、たとえばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラなどが備わっている。また、近赤外線を含む光を照射する照明などが設けられていてもよい。また、静脈センサ105は、静脈センサ105と被写体との距離、該被写体の傾きを取得するための距離センサを備えていてもよい。表示装置106は、生体情報取得装置100による各処理の結果などを表示するための装置である。表示装置106は、例えば、液晶ディスプレイなどである。
【0018】
図2(a)および図2(b)は、指紋センサ104および静脈センサ105の詳細を説明するための図である。指紋センサ104および静脈センサ105は、互いに近い位置に配置されている。それにより、指紋センサ104は、ユーザの左右いずれかの手の1本以上の指の指紋情報を取得する。静脈センサ105は、同一手の手のひらから静脈情報を取得する。
【0019】
指紋情報および静脈情報の両方を用いることによって、より高い認証精度を得ることができる。ここで、例えば、顔と指紋といった距離の離れた部位を同時に認証しようとすると、必然的に装置が大型化してしまう。また、利用者は顔と指の両方を同時に装置に提示する必要があるため、非常に拘束されることになってしまう。これに対して、指紋情報および手のひらの静脈情報の組み合わせでは、物理的に近接した2つの特徴を認証に用いることができる。それにより、他の特徴の組合せよりも装置を小型化することができ、また、ユーザに対する拘束を低減する事ができる。また、手を装置にかざすだけでよいというメリットがある。
【0020】
また、不正のなりすましには、両者(指紋と静脈)を同時に不正に入手し、かつ、両者を正しくセンサに読み取らせる必要がある。しかしながら、一般に、2種類の特徴を組み合わせることは、単独の特徴を用いる場合よりも困難である。したがって、2種類の特徴を組み合わせて用いることにより、なりすまし等の不正に対する耐性が向上するメリットがある。以下、指紋センサ104および静脈センサ105の詳細について説明する。
【0021】
図2(a)を参照して、通常、指紋は接触で、静脈は非接触で読み取るため、指紋センサ104の読み取り面は、静脈センサ105の読み取り面よりも高い位置に配置される。それにより、ユーザは、指紋を指紋センサ104の読み取り面に接触させ、手のひらを静脈センサ105の読み取り面から離間させることができる。たとえば、静脈センサ105の読み取り面と手のひらとの好ましい距離としては、5cm±1cm程度であるが、この距離はレンズなどによって変わってくる値である。
【0022】
図2(b)を参照して、本実施例においては、指紋センサ104の読み取り面は、人差し指、中指、および薬指の指紋画像を取得可能な大きさを有する。また、親指および小指を配置するためのガイド107が設けられている。ガイド107は、指紋センサ104を挟むように設けられている。ユーザは、ガイド107に親指および小指を配置することによって、人差し指、中指、および薬指を指紋センサ104の読み取り面に配置しやすくなる。
【0023】
図3(a)〜図3(c)は、ユーザの指を配置するためのガイド108およびユーザの手首を配置するためのガイド109について説明するための図である。なお、図3(b)は、図3(a)のA−A線断面図である。図3(c)は、図3(a)のB−B線断面図である。図3(b)を参照して、ガイド108には、特定の指を配置するための凹部が設けられていてもよい。本実施例においては、ガイド108には、人差し指、中指、および薬指を配置するための凹部が設けられている。図3(c)を参照して、ガイド109には、手首を配置するための凹部が設けられていてもよい。なお、ガイド108およびガイド109のいずれか一方が設けられていてもよい。
【0024】
このように、ガイドを設けることによって、指紋センサ104で指紋情報を安定的に取得することができるとともに、静脈センサ105で手のひらの静脈情報を安定的に取得することができる。したがって、取得される指紋情報および手のひらの静脈情報の再現性が高くなる。
【0025】
ここで、指紋センサ104および静脈センサ105の特性について説明する。指紋センサ104は接触式の生体センサであるため、指紋センサ104の指紋情報取得精度は、読み取り面に指が所定の力で押し付けられた状態で高くなる。特に、複数の指の指紋情報を読み取るためには、指1本の場合よりも大きな力で各指を指紋センサ104の読み取り面に押し付けることが好ましい。したがって、指紋情報取得精度を向上させるためには、手に所定の力が入っている方が好ましい。一方、手のひらの静脈情報を精度よく取得するためには、手のひらの血流が良好であることが好ましい。したがって、手のひらの静脈情報を精度よく取得するためには、できるだけ手に力が入っていない方が力みによる変形が生じにくく好ましい。以上のことから、指紋情報取得精度と静脈情報取得精度との間には、トレードオフの関係が生じている。
【0026】
例えば、図4(a)を参照して、指紋センサ104の読み取り面と静脈センサ105の読み取り面とが平行である場合、指を指紋センサ104に押し付けようとすると、手に力が入ってしまう。それにより、静脈センサ105による静脈取得精度が低下するおそれがある。
【0027】
ここで、読み取り面とは、対象となる特徴が存在すべき面のことである。指紋センサ104の場合、接触式であるために、読み取り面は、ユーザが指を接触して指紋を読み取るセンサ面と一致する。一方、非接触で特徴を読み取る静脈センサ105の読み取り面とは、静脈センサ105に対してユーザの手のひらが位置すべき面のことである。具体的には、静脈センサ105の読み取り面は、静脈センサ105から垂直方向に所定の距離だけ離れた位置に存在する、カメラに正対する所定の大きさの面のことである。
【0028】
そこで、本実施例においては、図4(b)を参照して、静脈センサ105の読み取り面に対する指紋センサ104の読み取り面の傾斜角度(以下、角度θと称する。)を0°よりも大きくする。たとえば、静脈センサ105の読み取り面を水平に配置した場合に、指紋センサ104の読み取り面を水平方向から傾斜させる。この場合、指のしなる力を利用して指先が指紋センサ104の読み取り面に自然に押し付けられる。それにより、手に大きな力を加えることなく指紋を撮影することができる。その結果、指紋情報取得精度が向上する。また、手のひらの血流低下が抑制されることから、静脈情報取得精度が向上する。このように、角度θを0°よりも大きくすることによって、指紋情報取得精度および静脈情報取得精度の両方を向上させることができる。
【0029】
なお、図5(a)を参照して、静脈センサ105の周りを囲うガイドに指紋センサ104を斜めに設置する為のスロープを設けておくことによって、指紋センサ104を傾斜させることができる。スロープの水平からの傾斜角度は特に限定されるものではないが、一例として5°程度の角度に設定してもよい。
【0030】
たとえば、入退室管理では対象となるユーザが限定されている。例えば、会社のサーバルームの管理を考える場合、入室を許可される人物は事前に決まっている。一方で、例えば男性と女性とを比較すると、女性の指が柔らかい事が多く、図5(b)に示す角度φが大きい傾向がみられる。そこで、入室を許可する人物の大多数が男性(或いは女性)と分かっている場合、事前に角度θを設定しておくことで、使い勝手および認証精度を向上させることができる。なお、角度φは、指の反り角度である。
【0031】
続いて、生体情報取得装置100の各処理について説明する。図1を再度参照して、生体情報取得装置100の記憶装置103に記憶されている生体情報取得プログラムは、実行可能にRAM102に展開される。CPU101は、RAM102に展開された生体情報取得プログラムを実行する。それにより、生体情報取得装置100による各処理が実行される。
【0032】
図6は、生体情報取得プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。図6を参照して、生体情報取得プログラムの実行によって、全体制御部10、指紋取得部20、静脈取得部30、認証制御部40、指紋照合部50、および静脈照合部60が実現される。登録データベースは、記憶装置103に記憶されている。
【0033】
全体制御部10は、指紋取得部20、静脈取得部30、および認証制御部40を制御する。認証制御部40は、指紋照合部50および静脈照合部60を制御する。指紋取得部20は、認証制御部40の指示に従って、指紋センサ104から指紋情報を取得する。静脈取得部30は、認証制御部40の指示に従って、静脈センサ105から手のひらの静脈情報を取得する。
【0034】
(生体データ登録処理)
図7(a)は、新規ユーザの指紋情報および手のひらの静脈情報を登録データベースに登録するための生体データ登録処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。認証制御部40は、全体制御部10の指示に従って、生体データ登録処理を開始する。認証制御部40の指示に従って、指紋取得部20は指紋センサ104からユーザの手から指紋情報を取得し、静脈取得部30は静脈センサ105から同一手から手のひらの静脈情報を取得する(ステップS1)。次に、認証制御部40は、ユーザのIDなどと関連付けて、ステップS1で取得した指紋情報および静脈情報を登録データベースに登録する(ステップS2)。それにより、生体データ登録処理が完了する。
【0035】
図7(b)は、登録データベースに登録された指紋情報および静脈情報を説明するための図である。図7(b)を参照して、複数のユーザの指紋情報および静脈情報が登録されていてもよく、1人のユーザの指紋情報および静脈情報が登録されていてもよい。
【0036】
(生体認証処理)
生体情報処理装置100は、ユーザによる認証要求に応じて生体認証処理を実行する。図8は、生体認証処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。図7(a)のステップS1と同様に、指紋取得部20は、指紋センサ104からユーザの手の指紋情報を取得し、静脈取得部30は、静脈センサ105から同一手の手のひらの静脈情報を取得する(ステップS11)。
【0037】
次に、認証制御部40の指示に従って、指紋照合部50は指紋照合を行い、静脈照合部60は静脈照合を行う(ステップS12)。具体的には、指紋照合部50は、ステップS11で取得した指紋情報と登録データベースの各指紋情報との類似度を算出する。静脈照合部60は、ステップS11で取得した静脈情報と登録データベースの各静脈情報との類似度を算出する。指紋情報の類似度は、例えば、指紋画像のパターン、指紋のマニューシャの位置関係などに基づいて算出することができる。静脈情報の類似度は、手のひら静脈画像のパターンなどに基づいて算出することができる。
【0038】
次に、認証制御部40は、ステップS12の照合により得られる最も高い類似度が所定のしきい値以上であるか否かを判定する(ステップS13)。ステップS13で「Yes」と判定された場合、認証制御部40は、被認証ユーザがステップS12で得られる類似度の最も高いユーザであると特定し、当該特定結果を出力する(ステップS14)。ステップS13において「No」と判定された場合、認証制御部40は、認証失敗の結果を出力する(ステップS13)。ステップS13またはステップS14の実行後、フローチャートの実行が終了する。
【0039】
なお、図8のフローチャートでは、1:N認証を対象にしているが、1:1認証を対象にしてもよい。この場合、ステップS17で得られる照合スコアがしきい値以上であれば、被認証ユーザが登録データのユーザであると判定することができる。
【0040】
1:1認証は、事前にIDカードなどを使って自分が誰であるかを明示した上で認証を行う方式である。一方、1:N認証はIDカード等無しで登録済みの複数ユーザのデータと照合処理を行い、誰であるかを判定する方式である。一般に1:N認証では、登録データ数Nが大きくなるにつれ、確率的に他人受け入れ率が高くなる。その為、大規模な1:N認証を行う為には、より認証精度の高い方式が求められている。
【0041】
大規模な1:N認証を実現する事ができれば、数多くの場面で利用する事ができる。例えば、IDカード等なしでの入退室管理の実現や出入国管理における確実な個人認証といった応用が考えられる。また、国によっては個人ごとの“戸籍”というものが存在しないこともある。このような国では個人の名前や住所が不明確な場合もあり、社会保障や福祉を受ける際の個人認証が困難という問題が存在する。このような状況では、IDレスで個人を認証する事が可能となれば、よりきめ細やかなサービスを提供する事ができる。また、医療現場での確認に利用することで、投薬や治療のミスを防ぎ、より安全な医療サービスを実現できる。
【0042】
本実施例によれば、静脈センサ105の読み取り面に対する指紋センサ104の読み取り面の傾斜角度を0°よりも大きくすることによって、指紋取得精度および手のひらの静脈取得精度の両方を向上させることができる。それにより、1:1認証および1:N認証のいずれにおいても、高い認証精度が得られる。
【実施例2】
【0043】
実施例2においては、角度θが適切であるか評価する例について説明する。図9は、実施例3に係る生体情報取得プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。図9を参照して、生体情報取得プログラムの実行によって、全体制御部10、指紋取得部20、静脈取得部30、認証制御部40、指紋照合部50、静脈照合部60、および角度評価部70が実現される。登録データベースは、記憶装置103に記憶されている。
【0044】
(角度評価処理)
図10は、角度評価処理の際に実現される各機能のブロック図である。なお、角度評価処理は、上記の生体登録処理および生体認証処理の少なくともいずれか一方に組み込まれて実行される。角度評価処理の際には、角度評価部70は、指紋評価部71、静脈評価部72、および角度総合評価部73として機能する。図11は、角度評価処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。以下、図10および図11を参照しつつ、角度評価処理の一例について説明する。なお、角度評価処理は、角度θが適切であるか評価する処理である。
【0045】
まず、認証制御部40の指示に従って、指紋取得部20は指紋センサ104からユーザの手の指紋情報を取得し、静脈取得部30は静脈センサ105から同一手の手のひらの静脈情報を取得する(ステップS21)。次に、指紋評価部71は、指紋取得部20が取得した指紋情報を評価し、静脈評価部72は、静脈取得部30が取得した静脈情報を評価する(ステップS22)。次に、角度総合評価部73は、指紋評価部71および静脈評価部72の評価結果に基づいて、角度θの総合評価を行う(ステップS23)。次に、角度総合評価部73は、総合評価の結果を出力する(ステップS24)。表示装置106は、角度総合評価部73による総合評価結果を表示する(ステップS25)。その後、フローチャートの実行が終了する。
【0046】
(指紋情報の評価)
以下、指紋評価部71による指紋情報の評価の詳細について説明する。図12(a)は、指紋センサ104が取得した指紋画像の一例を表す図である。まず、指紋画像から得られる指紋領域の白黒比を用いた評価について説明する。指紋領域の白黒比は、指紋の山および谷の割合を表す量である。図12(b)を参照して、指紋センサ104の読み取り面に指を押す力が弱いと、指紋領域における白の比率が高くなる。一方、図12(c)を参照して、指紋センサ104の読み取り面に指を押す力が強いと、指紋領域における黒の比率が高くなる。したがって、指紋領域の白黒比を検出することによって、指の押し付け具合を判定することができる。具体的には、指紋領域の白黒比が所定範囲内であれば、角度θが適切であると判定することができる。
【0047】
次に、指紋中心を用いた評価について説明する。角度θが大きいと、指先のみが読み取り面に当たることになる。その場合には、指紋画像から得られる指紋領域の手のひら側が欠落することになる。したがって、得られた指紋領域における指紋中心(指紋の模様の中心)の位置に応じて、角度θが適切であるか評価することができる。たとえば、得られた指紋領域において、指紋中心が手のひら側にシフトするシフト量が所定値よりも大きいと、角度θが適切でないと判定することができる。なお、指紋中心は、特許番号第2790689号の技術内容を用いて検出することができる。なお、指紋中心に限らず、指紋領域における指紋の特定点の位置に応じて、角度θが適切であるか否かを評価してもよい。
【0048】
また、図12(a)を参照して、指紋センサ104の読み取り面に指を強く押し付け過ぎると、指先だけでなく、指の根元方向の領域αも指紋センサ104の読み取り面に接触する事になる。そのため、当該領域αの面積を測定することで、角度θが適切であるか否かを評価することができる。たとえば、第1関節より手のひら側で検出された指の面積を用いて、角度θが適切であるか評価してもよい。
【0049】
指紋領域の白黒比、指紋中心、および第1関節より手のひら側の面積の検出手順について説明する。まず、指紋画像をセグメント化する。ここでセグメントとは、ひと固まりの領域のことで例えば、「人差し指の指先の領域」などが1つのセグメントに該当する。検出した各セグメントに対して指紋中心の検出処理を行う。指紋中心が検出されたセグメントは指先であると判定することができる。また、単純にセグメントの中心座標をもとに判定してもよい。例えば、図12(a)の例では、セグメント中心のY座標が最も大きいものを指先セグメントと判定することができる。
【0050】
上記手法により抽出した指先領域を用いて指紋画像の判定処理を行う。まず、指先領域内に含まれる白ピクセルCwおよび黒ピクセルCbの数をカウントし、下記比率を計算する。
【数1】

【0051】
一例として、「R」がおおよそ0.5付近の場合には、角度θが適切であると判定することができる。一方で、「R」が大きい(黒の比率が高い)あるいは「R」が小さい(白の比率が高い)場合には、角度θが不適切であると判定することができる。また、検出された指紋中心座標と指先領域とを比較し、指紋中心が指先領域の手のひら方向にシフトしていた場合、指の先端のみが映っていると判断することができる。この場合、角度θが不適切であると判定することができる。また、指先領域よりもY座標値が小さい位置にセグメントが検出された場合には、当該セグメントの面積を検出する。検出された面積が所定値以上であれば、指紋画像に指先以外の領域が必要以上に映っていると判断し、角度θが不適切であると判定することができる。
【0052】
(静脈情報の評価)
続いて、静脈評価部72による静脈情報の評価の詳細について説明する。たとえば、静脈情報の評価に、静脈画像の鮮明度を用いることができる。静脈画像の鮮明度の判定には、画像の“コントラスト”を用いることができる。近赤外線は血液に吸収されるため、静脈画像において静脈は黒く映る。したがって、手に力が入り過ぎて静脈の血流が低下した場合には、画像のコントラストが低下する。以上のことから、静脈画像のコントラストを評価する事によって静脈画像の鮮明度を評価することができる。
【0053】
画像のコントラストを表す定義には様々な値が存在する。一般に、ディスプレイなどの評価に使用される“コントラスト比”と呼ばれる値は、白を表示した時の輝度をLmax、黒を表示した時の輝度をLminとすると、コントラスト比=Lmax/Lminと定義することができる。しかしながら、生体を対象とする場合、LmaxおよびLminとして安定した値を期待することが困難である。また、コントラスト比は単純な画像の輝度値の比較であることから、認証用画像の評価指標として適切であるとは限らない。
【0054】
そこで、本実施例においては下記に示す“コントラスト値C”を鮮明度の指標として使用する。まず、静脈評価部72は、静脈画像から静脈特徴の抽出処理を実行する。特徴抽出処理の具体的な方法として様々な方法をとることができる。例えば、静脈による輝度値の低下形状をフィルタg(x,y)で表し、下記式(2)のように、フィルタg(x,y)と入力画像f(x,y)とのコンボリューション演算(*で表現する)を実施する。
【数2】

【0055】
上記式(2)のh(x,y)の値が所定のしきい値を超えた領域を特徴領域Xとし、それ以外の領域を領域Yとして表す。ここで静脈のコントラスト値Cとして、下記式(3)のように定義する。
【数3】

【0056】
なお、<>Xおよび<>Yは、それぞれ領域Xおよび領域Yにおける平均値を表している。静脈が濃く表示されている場合、<f(x,y)>Xの値は小さくなる(輝度値が低下する)ため、コントラスト値Cは大きな値となる。逆に、血流が低下して静脈が薄くなった場合には、コントラスト値Cは小さい値となる。以上のことから、コントラスト値Cを測定することによって、静脈画像の鮮明度を測定することができる。なお、鮮明度の指標は上記のコントラスト値Cに限定されるわけではないが、以下の例では上記のコントラスト値Cを用いて鮮明度について説明する。
【0057】
静脈画像は照明を用いて撮影しているが、照明の当たり方が必ずしも均一でない場合がある。そのため、周辺部の輝度値が低くなってしまうことになる。また、一般、にレンズを用いて撮影すると周辺部の光量が低下する(周辺減光)。このような場合にも正しくコントラスト値Cを測定するために、事前に測定した補正パラメータを用いて輝度値を補正してもよい。
【0058】
手のひらの輝度値と静脈の輝度値との比は一定でない。たとえば、もともと静脈が太く濃いユーザおよび静脈が細く薄いユーザが存在することもある。したがって、単純なしきい値処理では正しく判定する事ができない。そこで、図13を参照して、コントラスト値Cの時間変化を測定することで静脈画像を判定してもよい。
【0059】
静脈評価部72は、静脈センサ105によって連続して取得される静脈画像のコントラスト値Cを算出することによって、手のひらが静止するまで待機する。手のひらの静止は、手のひらまでの距離と連続する2枚の画像を用いて判定することができる。具体的には、距離が所定の範囲内にあり、かつ、連続する2枚の静脈画像間の差分が所定のしきい値以下となった場合に静止と判定することができる。
【0060】
手のひらの静止を検出した時点のコントラスト値CをCとし、静止検出以前のコントラスト値Cのピーク値をCとする。ここで、ピーク値Cは、手のひらが静脈センサ105のガイドに触れる直前で、最も力が抜けている状態で撮影される。したがって、この時点での画像はブレや微小な傾きの影響がある。その結果、ピーク値Cが得られる際の静脈画像は認証に不向きであるが、ピーク値Cが得られる時点での画像のコントラスト値Cは最大になる。下記式(4)に従って、Cのピーク値Cからの低下量ΔCを算出し、ΔCを静脈画像の判定指標として用いることができる。
【数4】

【0061】
(角度θの総合評価)
角度総合評価部73は、指紋評価部71および静脈評価部72の評価に基づいて、角度θの総合評価を行う。図14は、角度θの総合評価を説明するための図である。図14を参照して、角度総合評価部73は、たとえば、指紋情報の評価において角度θが大きいと判定された場合、静脈情報の評価結果にかかわらず、総合評価として「角度θが大きい」という結果を出力する。また、角度総合評価部73は、指紋情報の評価において角度θが小さいと判定された場合、静脈情報の評価結果にかかわらず、総合評価として「角度θが小さい」という結果を出力する。
【0062】
また、角度総合評価部73は、指紋情報の評価において角度θが適切(良好)であると判定された場合に静脈情報の評価において「角度θが小さい」と判定された場合には、「角度θが小さい」という結果を出力する。これは、指紋が適切に撮影されている一方、手に力が入りすぎて血流が阻害されていると考えられるためである。また、角度総合評価部73は、指紋情報および静脈情報の両方の評価において「適切である」と評価された場合、「角度θが適切」であるという結果を出力する。
【0063】
(角度θの評価の他の例)
上記角度θの総合評価では、角度θが適切であるか否かを判定したが、角度θの定量的評価を行ってもよい。角度θを定量的に評価するため、角度θの妥当性の評価に用いた上記評価量を正規化した下記値を用いる。
【0064】
下記式(5)の値は、ΔCの正規化値であり、静脈のコントラスト値Cの低下量を正規化した値である。下記式(5)の値が所定の値よりも大きい場合には、コントラストが低下したと判定することができる。
【数5】

【0065】
下記式(6)の値は、指紋領域の白黒比の正規化値である。下記式(6)の値がプラスである場合(黒の比率が高い場合)は角度θが大きいと判定することができる。一方、下記式(6)の値がマイナスである場合(白の比率が高い場合)は角度θが小さいと判定することができる。
【数6】

【0066】
下記式(7)の値は、得られた指紋領域の中心からの指紋中心のシフト量を正規化した値である。具体的には、指紋中心と指先領域の中心間の距離Dを、指先領域を円近似した時の半径rで正規化する。つまり、指先領域の面積をSとすると、Sを円近似した時の半径rは、下記式(8)のように表すことができる。この半径rによって距離Dを正規化すると、下記式(7)が得られる。下記式(7)の値が所定値よりも大きい場合には、指紋中心がずれていると判断することができる。
【数7】

【数8】

【0067】
下記式(9)の値は、指先以外の指領域の面積を指先領域の面積で正規化した値である。なお、「A」は指先以外の領域の面積であり、「S」は指先領域の面積である。下記式(9)の値が所定値よりも大きい場合には、指先以外の指領域の面積が大きいと判断することができる。
【数9】

【0068】
上記式(5)、(6)、(7)、(9)の値を用いて、角度θの妥当性の評価を行うことができる。図15は、角度θの妥当性の評価を行うためのフローチャートの一例である。まず、角度総合評価部73は、下記式(10)、(11)、(12)のいずれかが成立するか否かを判定する(ステップS31)。なお、Th,Th,Thはしきい値である。
【数10】

【数11】

【数12】

【0069】
ステップS31において「No」と判定された場合、角度総合評価部73は、下記式(13)が成立するか否かを判定する(ステップS32)。なお、Thは、しきい値である。ステップS32において「No」と判定された場合、角度総合評価部73は、下記式(14)が成立するか否かを判定する(ステップS33)。なお、Thは、しきい値である。ステップS33において「No」と判定された場合、角度総合評価部73は、角度θが適切であると判定する。その後、フローチャートの実行が終了する。
【数13】

【数14】

【0070】
ステップS31において「Yes」と判定された場合、角度総合評価部73は、角度θが大きいと判定する(ステップS34)。ステップS32において「Yes」と判定された場合、角度総合評価部73は、角度θが小さいと判定する(ステップS35)。ステップS33において「Yes」と判定された場合、角度総合評価部73は、角度θが小さいと判定する。ステップS34〜ステップS36の実行後、フローチャートの実行が終了する。図15のフローチャートによれば、角度θが適切であるか否かを定量的に評価することができる。
【0071】
本実施例によれば、指紋センサ104が取得した指紋情報および静脈センサ105が取得した静脈情報に基づいて、角度θが適切であるか否かを判定することができる。それにより、角度θを、指紋情報および静脈情報の取得に適した値に調整することができる。
【0072】
図16は、角度θを可変とする構成について説明するための図である。図16を参照して、指紋センサ104の傾斜角度を調整するための角度調整部材110が設けられていてもよい。角度調整部材110は、手動で指紋センサ104の傾斜角度を調整するための部材である。
【0073】
角度調整部材110は、指紋センサ104が設置されるスロープ111を支持する支点112と、スロープ111をガイドするガイド部材113と、スロープ111をガイド部材113に固定するための固定部材114とを備える。ガイド部材113は、たとえば、スライドによりスロープ111をガイドする。固定部材114は、スロープ111をガイド部材113に固定するためのネジなどである。スロープ111を所望の角度に傾斜させて固定部材114によってスロープ111をガイド部材113に固定することによって、スロープ111の傾斜角度が固定される。指紋センサ104をスロープ111上に配置することによって、指紋センサ104を所望の角度に傾斜させることができる。
【0074】
図16の構成によれば、指紋センサ104の傾斜角度を容易に調整することができる。それにより、生体情報取得装置100の使用環境に応じて、静脈センサ105の読み取り面に対する指紋センサ104の読み取り面の傾斜角度を調整することができる。また、固定部材114を用いて角度θを0°よりも大きくすることによって、指紋情報取得精度および静脈情報取得精度の両方を向上させることができる。
【0075】
続いて、角度θの角度調整量について説明する。角度θが大きいと判定された場合、下記式(15)に従って、評価値Eを算出してもよい。角度θが小さいと判定された場合、下記式(16)に従って、評価値Eを算出してもよい。なお、「a」、「a」、「a」、「a」、「a´」、「a´」は、各評価値に対するウェイトを表すパラメータであり、本実施例においてはプラスの値である。
【数15】

【数16】

【0076】
角度θが大きい場合に、評価値Eは、角度θがどの程度大きいかを表す指標として用いることができる。一方、角度θが小さい場合に、評価値Eは、角度θがどの程度小さいかを表す指標となる。これら評価値E,Eを用いて、角度θの変更量を自動的に算出することができる。たとえば、評価値E,Eに対して望ましい角度θの変更量Δθのテーブルを事前に設定しておき、このテーブルに従ってΔθを決定してもよい。角度θの変更量Δθは、下記式(17)および下記式(18)に従って算出することができる。
【数17】

【数18】

【0077】
なお、ウェイトパラメータおよび角度θの変更量Δθのテーブルは、事前に実験等によって適切な値を設定しておいてもよい。このように算出したΔθを表示装置106等に表示して、ユーザ本人あるいはオペレータなどが角度θを調整してもよい。或いは、算出したΔθを用いて、角度θをアクチュエータなどによって自動的に調整してもよい。
【実施例3】
【0078】
実施例3においては、角度総合評価部73の評価結果に応じて、アクチュエータなどを用いて角度θを自動的に調整する例について説明する。図17(a)は、実施例3に係る生体情報取得プログラムの実行によって実現される各機能のブロック図である。図17(a)を参照して、生体情報取得プログラムの実行によって、全体制御部10、指紋取得部20、静脈取得部30、認証制御部40、指紋照合部50、静脈照合部60、角度評価部70、および角度調整部80が実現される。登録データベースは、記憶装置103に記憶されている。
【0079】
また、本実施例においては、図17(b)を参照して、指紋センサ104の傾斜角度を自動的に調整するための角度調整部材115が設けられていてもよい。角度調整部材110は、アクチュエータなどの動力を備え、角度調整部80の指示に従って指紋センサ104の傾斜角度を調整する。角度調整部材115が角度θを0°よりも大きくすることによって、指紋情報取得精度および静脈情報取得精度の両方を向上させることができる。
【0080】
(角度調整処理)
図18は、角度調整処理の際に実行されるフローチャートの一例を説明するための図である。角度調整処理は、角度評価処理の結果に応じて角度θを自動的に調整する処理である。まず、認証制御部40の指示に従って、指紋取得部20は指紋センサ104からユーザの指紋情報を取得し、静脈取得部30は静脈センサ105からユーザの静脈情報を取得する(ステップS41)。次に、角度評価部70は、ステップS41で取得された指紋情報および静脈情報に基づいて、角度θが適切であるか否かを判定する(ステップS42)。ステップS42の処理は、図11のステップS22〜S25と同様の処理である。
【0081】
ステップS42で「Yes」と判定された場合、フローチャートの実行が終了する。ステップS42で「No」と判定された場合、角度調整部80は、角度θを調整する(ステップS43)。具体的には、角度評価部70によって角度θが大きいと判定された場合、角度調整部80は、角度θを所定値小さくする。角度評価部70によって角度θが小さいと判定された場合、角度調整部80は、角度θを所定値大きくする。角度θを調整する際の角度調整量として、上記式(17)、(18)の値を用いることができる。
【0082】
本実施例によれば、角度θが自動的に適切な値に調整される。それにより、利便性の低下を抑制しつつ、指紋取得精度および手のひら静脈取得精度の両方を向上させることができる。
【0083】
なお、ユーザごとに最適な角度θが異なるため、調整された角度θを1:N認証の照合対象ユーザの絞り込みに利用してもよい。具体的には、まず、ユーザの登録時に設定した最適な角度θを登録データベースに保存しておく。認証処理の際には、認証制御部40は、最適に調整した角度θと登録データベースに保存されている全ユーザの最適な角度θとを比較し、近い角度で登録されているユーザを選択して1:N認証を行う。
【0084】
あるいは、認証結果である類似度と角度θとの総合判定を行ってもよい。具体的には、あるユーザnに対する類似度をS(n)、ユーザnの登録時の角度をθ(n)とし、調整された角度をθとした場合、下記式(19)に従って、総合スコアを算出してもよい。総合スコアは、類似度から最適角度の差分(の絶対値)を引いたものである。ここで、「w」はウェイトを表すパラメータである。上記T(n)を用いることで、認証結果の類似度に角度θの情報を付加的に追加する事ができるようになる。このような構成とすることにより、従来は利用していなかった付加的な特徴(手の反る角度)を認証処理に反映する事ができるため、より高精度な認証処理を行う事が出来るようになる。
【数19】

【実施例4】
【0085】
上記各実施例は、生体情報取得装置100はネットワークに接続されていないが、それに限られない。たとえば、図19を参照して、生体情報取得装置100は、ネットワークを介してサーバ200に接続されていてもよい。サーバ200は、CPU201、RAM202、記憶装置203、通信部204などを備える。本実施例においては、生体情報取得装置100には、ネットワークおよび通信部204を介してサーバ200と信号を送受信するための通信部116が設けられている。
【0086】
本実施例においては、生体情報取得装置100には、生体情報取得プログラムの実行によって、指紋取得部20、静脈取得部30、および角度評価部70が実現される。全体制御部10、認証制御部40、指紋照合部50、および静脈照合部60は、サーバ200において実現されてもよい。したがって、登録データベースは、サーバ200の記憶装置203に記憶されていてもよい。
【0087】
なお、上記各実施例において、生体情報取得プログラムの実行によって実現された各機能は、専用の回路などを用いて代用してもよい。また、上記各実施例においては、静脈センサ105は手のひらの静脈を取得しているが、手の他の部位の静脈を取得してもよい。例えば、指紋センサ104が指紋読み取りの対象としている指の静脈を取得してもよい。例えば、第1関節よりも手のひら側の指の静脈を取得してもよい。この場合においても、静脈センサ105の読み取り面に対する指紋センサ104の読み取り面の傾斜角度を0°よりも大きくすることによって、指紋取得精度および手のひらの静脈取得精度の両方を向上させることができる。また、指紋センサ104が取得した指紋情報および静脈センサ105が取得した静脈情報に基づいて、角度θが適切であるか否かを判定してもよい。
【0088】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 全体制御部
20 指紋取得部
30 静脈取得部
40 認証制御部
50 指紋照合部
60 静脈照合部
70 角度評価部
71 指紋評価部
72 静脈評価部
73 角度総合評価部
80 角度調整部
100 生体情報取得装置
101 CPU
102 RAM
103 記憶装置
104 指紋センサ
105 静脈センサ
106 表示装置
107〜109 ガイド
110 角度調整部材
111 スロープ
112 支点
113 ガイド部材
114 固定部材
115 角度調整部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの手から、指紋を読み取る指紋センサと、
前記ユーザの手から、静脈を読み取る静脈センサと、
前記静脈センサの読み取り面に対する前記指紋センサの読み取り面の傾斜角度を評価する角度評価部と、を備えることを特徴とする生体情報取得装置。
【請求項2】
前記静脈センサの読み取り面に対する前記指紋センサの読み取り面の傾斜角度を固定するための固定手段を備え、
前記固定手段によって固定される角度は、可変であることを特徴とする請求項1記載の生体情報取得装置。
【請求項3】
前記角度評価部の評価結果に応じて、前記静脈センサの読み取り面に対する前記指紋センサの読み取り面の傾斜角度を調整する角度調整部を備えることを特徴とする請求項2記載の生体情報取得装置。
【請求項4】
前記角度調整部は、前記静脈センサの読み取り面に対する前記指紋センサの読み取り面の傾斜角度を0°よりも大きく調整することを特徴とする請求項3記載の生体情報取得装置。
【請求項5】
前記角度評価部は、前記指紋センサが読み取った指紋に応じて、前記静脈センサの読み取り面に対する前記指紋センサの読み取り面の傾斜角度を評価することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体情報取得装置。
【請求項6】
前記角度評価部は、前記指紋センサが読み取る指紋画像の濃淡比に応じて、前記静脈センサの読み取り面に対する前記指紋センサの読み取り面の傾斜角度を評価することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体情報取得装置。
【請求項7】
前記角度評価部は、前記指紋センサが読み取る指紋の特定点の座標に応じて、前記静脈センサの読み取り面に対する前記指紋センサの読み取り面の傾斜角度を評価することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体情報取得装置。
【請求項8】
前記角度評価部は、前記指紋センサが読み取る第1関節よりも手のひら側の指の面積に応じて、前記静脈センサの読み取り面に対する前記指紋センサの読み取り面の傾斜角度を評価することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体情報取得装置。
【請求項9】
前記角度評価部は、前記静脈センサが読み取る静脈画像のコントラストの時間変化に応じて、前記静脈センサの読み取り面に対する前記指紋センサの読み取り面の傾斜角度を評価することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の生体情報取得装置。
【請求項10】
ユーザの手のから、指紋を読み取る指紋センサと、
前記ユーザの手から、静脈を読み取る静脈センサと、を備え、
前記静脈センサの読み取り面に対する前記指紋センサの読み取り面の傾斜角度は、0°よりも大きいことを特徴とする生体情報取得装置。
【請求項11】
前記指紋センサは、光学式センサであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の生体情報取得装置。
【請求項12】
特定の指を配置するための凹部を備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の生体情報取得装置。
【請求項13】
指紋センサを用いてユーザの手から指紋を読み取り、静脈センサを用いて前記ユーザの手から静脈を読み取る際に、前記静脈センサの読み取り面に対する前記指紋センサの読み取り面の傾斜角度を評価する評価ステップを含むことを特徴とする生体情報取得方法。
【請求項14】
コンピュータに、
指紋センサを用いてユーザの手から指紋を読み取り、静脈センサを用いて前記ユーザの手から静脈を読み取る際に、前記静脈センサの読み取り面に対する前記指紋センサの読み取り面の傾斜角度を評価する評価ステップを実行させることを特徴とする生体情報取得プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−208687(P2012−208687A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73219(P2011−73219)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】