説明

生体情報検出器

【課題】 装着しながら運動しても装着ベルトの位置ずれや落下の恐れがなく、同時に、胸部への圧迫感のない装着ベルトを備えた生体情報検出器を提供すること。
【解決手段】 生体情報検出器は、左ショルダーベルト部10と右ショルダーベルト部20の一対のショルダーベルト部を有する装着ベルト1と、装着ベルト1に取り付けられた一対の電極部2A,2Bと、一対の電極部2A,2Bに接続ケーブル8A,8Bを夫々介して接続され且つ装着ベルト1に取り付けられた生体信号検出部3で構成されている。左ショルダーベルト部10と右ショルダーベルト部20は利用者の背側に交差結合部30を形成している。交差結合部30には、生体信号検出部3が取り付けられている。左ショルダーベルト部10には伸縮部13と分離可能な結合手段14が、右ショルダーベルト部20には伸縮部23と分離可能な結合手段24が夫々設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着ベルトに取り付けられた一対の電極の間に発生した信号を処理して生体信号を検出する検出回路と前記生体信号データを送信する送信回路とを備えた生体情報検出器に関する。前記生体情報検出器は、前記生体信号データを受信して生体情報を表示する生体情報表示器とで生体情報計測装置を構成するものである。
【背景技術】
【0002】
心拍数計測装置は生体情報計測装置の代表的なものであり、一般に、チェストベルトに取り付けられた一対の胸電極の間に発生した心電位を処理して心拍信号を検出する検出回路と前記心拍信号を送信する無線送信回路とを備えた心拍数検出器と、前記心拍信号を受信する無線受信部と前記心拍信号を処理して心拍数を算出する心拍数演算回路と前記心拍数を表示する表示回路を備えた腕時計型電子時計とで構成されている。
【0003】
チェストベルトを備えた心拍数計測器は、特開平6−245913号公報(特許文献1)、特開2002−143110号公報(特許文献2)、特開平10−155753号公報(特許文献3)、米国特許第5491474号公報(特許文献4)などに開示されている。
【0004】
これら従来の心拍数計測器において、チェストベルト自体はズボンのベルトよりは幅が広いが基本的には同じ構造である。ところが、チェストベルトに装着されている心拍数計測器は、小型化・軽量化しても一般的な腕時計本体程度の重量を有する。心拍数計測器は、各種の電子部品、機構部品、電池及びこれらを収納するケースを備えて構成されているからである。このため、従来のチェストベルトを備えた心拍数計測器を人体に装着すると、前記心拍数計測器の重量のために、位置ずれするという問題があった。
【0005】
位置ずれを防止しようとすれば、長さ調節手段を操作してチェストベルトを強く締め付けて人体に装着することになる。しかしながら、チェストベルトを強く締め付けて装着すると、利用者の胸部を圧迫することになり、ベルト装着による不快な圧迫感や息苦しさを生じさせるという問題である。もう一つは、心電位を検出する電極部は人体に直接接触させる必要があるが、チェストベルトを用いる心拍数計測器などの生体情報検出器においては、服を着る前に装着しなければならないという問題である。
【特許文献1】特開平6−245913号公報
【特許文献2】特開2002−143110号公報
【特許文献3】特開平10−155753号公報
【特許文献4】米国特許第5491474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする第1の課題は、装着しながら運動しても装着ベルトの位置ずれや落下の恐れがない生体情報検出器を提供することである。本発明が解決しようとする第2の課題は、装着しながら運動しても装着ベルトの位置ずれや落下の恐れがなく、同時に、胸部への圧迫感のない装着ベルトを備えた生体情報検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の課題を解決する生体情報検出器を、左ショルダーベルト部と右ショルダーベルト部を有する装着ベルトと、前記左ショルダーベルト部と前記右ショルダーベルト部に夫々取り付けられた一対の電極部と、前記一対の電極部に電気的に接続されて前記装着ベルトに取り付けられた生体信号検出部とで構成した。上記第2の課題を解決する生体情報検出器を、左ショルダーベルト部と右ショルダーベルト部を有する伸縮性の装着ベルトと、前記左ショルダーベルト部と前記右ショルダーベルト部に夫々取り付けられた一対の電極部と、前記一対の電極部に電気的に接続されて前記装着ベルトに取り付けられた生体信号検出部とで構成した。
【発明の効果】
【0008】
本発明は左右一対のショルダーベルト部に腕を通して装着する装着ベルトを有する生体情報検出器であるから、装着しながら運動しても装着ベルトの位置ずれや落下の恐れがない。また、本発明に係る生態情報検出装置は、左右一対のショルダーベルト部に腕を通して装着する装着ベルトであって、装着時には背面に交差部が形成される装着ベルトを有するものであるから、電極部と人体との密着性がよい。また、本発明においては装着ベルトを伸縮性のベルトで構成できるため、装着時の胸部への圧迫感はなくなり、利用者はベルト装着による息苦しさを感じることがなくなった。更に、袖のないランニングシャツを着用している利用者は、ランニングシャツを脱がなくても本発明に係る生体情報検出器を装着できるようになった。更にまた、背筋を伸ばす方向へ装着ベルトが姿勢矯正するため、本発明に係る生体情報検出器を装着した利用者は姿勢よくランニング等の運動を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る生体情報検出器は、左ショルダーベルト部と右ショルダーベルト部を有する伸縮性の装着ベルトと、前記左ショルダーベルト部と前記右ショルダーベルト部に夫々取り付けられた一対の電極部と、前記一対の電極部に電気的に接続されて前記装着ベルトに取り付けられた生体信号検出部とで構成されている。
【実施例1】
【0010】
本発明の実施例1の生体情報検出器は、図1の斜視図、図2の裏面図、図3の装着状態を示した正面図(a)と背面図(b)に示す如く、左ショルダーベルト部10と右ショルダーベルト部20の一対のショルダーベルト部を有する装着ベルト1と、装着ベルト1に取り付けられた一対の電極部2A,2Bと、一対の電極部2A,2Bに接続ケーブル8A,8Bを夫々介して接続され且つ装着ベルト1に取り付けられた生体信号検出部3で構成された心拍計測装置である。
【0011】
電極部2Aの取付け位置は、装着ベルト1を装着したときに、電極部2Aが利用者の左側の腋と肩の間の左胸の一部分、換言すれば左腕の付け根付近の左胸の一部分に当接するベルト部分である。同様に、電極部2Bの取付け位置は、装着ベルト1を装着したときに、電極部2Bが利用者の右側の腋と肩の間の右胸の一部分、換言すれば右腕の付け根付近の右胸の一部分に当接するベルト部分である。
【0012】
左ショルダーベルト部10は、利用者の胸側で夫々の一端が分離可能な結合手段14によって結合された肩当てベルト部11と腋当てベルト部12を有する。右ショルダーベルト部20は、利用者の胸側で夫々の一端が分離可能な結合手段24で結合された肩当てベルト部21と腋当てベルト部22を有する。そして、左ショルダーベルト部10の肩当てベルト部11と腋当てベルト部12の夫々の他端と右ショルダーベルト部20の肩当てベルト部21と腋当てベルト部22の夫々の他端は利用者の背側で結合されて交差結合部30を形成している。
【0013】
装着ベルト1には、適度の伸縮性を持たせて最適の装着状態を維持するためのせるために、ゴムベルト又はゴム糸を縫い込んだ布ベルトなどで構成された伸縮部13,23が設けられている。伸縮部13は左ショルダーベルト部10の腋当てベルト部12に、伸縮部23は右ショルダーベルト部20の腋当てベルト部22に夫々設けられている。
【0014】
分離可能な結合手段14は、ソケット14Aとプラグ14Bで構成されたバックルの如き一般的な部品である。ソケット14Aとプラグ14Bは、左ショルダーベルト部10の肩当てベルト部11と腋当てベルト部12の夫々の一端に固着されている。同様に、分離可能な結合手段24は、ソケット24Aとプラグ24Bで構成されたバックルの如き一般的な部品である。ソケット24Aとプラグ24Bは、右ショルダーベルト部20の肩当てベルト部21と腋当てベルト部22の夫々の一端に固着されている。
【0015】
左ショルダーベルト部10の長さ調整手段15は、肩当てベルト部11のソケット14Aの近くに夫々設けられている。また、右ショルダーベルト部20の長さ調整手段25は、肩当てベルト部21のソケット24Aの近くに設けられている。長さ調整手段15も長さ調整手段25も、ベルト長さの調整に使用されている一般的な部品である。
【0016】
生体信号検出部2は交差結合部30の表側に取り付けられている。交差結合部30は、ベルト幅の長さの正方形として示されているが、円形や楕円形の交差結合部とすることも可能である。要するに、交差結合部30は生体信号検出部2を取り付けるのに十分な面積を有するものであればよいのである。
【実施例2】
【0017】
本発明の実施例2の生体情報検出器は、図4の斜視図と図5の裏面図に示す如く、 左ショルダーベルト部10と右ショルダーベルト部20が1個の分離可能な結合手段4により結合され、結合状態では1個の輪を形成し且つ背側に十字型交差部7を形成するようにして人体に装着される装着ベルト1と、装着ベルト1に取り付けられた一対の電極部2A,2Bと、装着ベルト1に取り付けられた生体信号検出部3で構成された心拍計測装置である。
【0018】
生体信号検出部3の装着ベルト1への取付け位置は、電極部2Aの取付け位置と同じである。即ち、電極部2Aは装着ベルト1の左ショルダーベルト部10の電極部取付け位置の裏側に取り付けられており、生体信号検出部3は装着ベルト1の左ショルダーベルト部10の前記電極部取付け位置の表側に取り付けられている。電極部2Aの取付け位置は、装着ベルト1を装着したときに、電極部2Aが利用者の左側の腋と肩の間の左胸の一部分、換言すれば左腕の付け根付近の左胸の一部分に当接するベルト部分である。同様に、電極部2Bの取付け位置は、装着ベルト1を装着したときに、電極部2Bが利用者の右側の腋と肩の間の右胸の一部分、換言すれば右腕の付け根付近の右胸の一部分に当接するベルト部分である。
【0019】
装着ベルト1の装着は、両端を分離可能な結合手段4で固定して1個のループを形成し、更に図4に示す如く8の字の形状にし、十字交差部7が背中に位置するようにしながら左右の2つの輪に腕を通して装着ベルト1を装着する。いわゆるタスキ掛けにより、実施例2における装着ベルト1は装着されるのである。
【0020】
生体信号検出部3は、接続ケーブル8Aを介して一方の電極部2Aに接続され、且つ図示しない接続ケーブル8Bなどを介して他方の電極2Bに夫々接続されている。右ショルダーベルト部20の腋当てベルト部22と右ショルダーベルト部20の肩当て部21には接続ケーブル8Aが埋め込まれている。
【0021】
装着ベルト1には、適度の伸縮性を持たせて最適の装着状態を維持するためのせるために、ゴムベルト又はゴム糸を縫い込んだ布ベルトなどで構成された伸縮部6が設けられている。伸縮部6は、左ショルダーベルト部10の腋当てベルト部12又は右ショルダーベルト部20の肩当て部21に設けられている。
【0022】
分離可能な結合手段14は、ソケット4Aとプラグ4Bで構成されたバックルの如き一般的用着脱可能な結合部品である。ソケット4Aとプラグ4Bは、装着ベルト1の両端に夫々固着されている。装着ベルト1の長さ調整手段5は、電極部2Aと差込み具4Bの間に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1の生体情報検出器の斜視図である。
【図2】本発明の実施例1の生体情報検出器の裏面図である。
【図3】本発明の実施例1の生体情報検出器の装着状態を示した正面図(A)と背面図(B)である。
【図4】本発明の実施例2の生体情報検出器の斜視図である。
【図5】本発明の実施例2の生体情報検出器の裏面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 装着ベルト
2A,2B 電極部
3 生体信号検出部
4 分離可能な結合手段
4A ソケット
4B プラグ
6 伸縮部
7 十字型交差部
8A,8B ケーブル
10 右ショルダーベルト部
11 肩当て部
12 腋当て部
13 伸縮部
14 分離可能な結合手段
14A ソケット
14B プラグ
15 長さ調整手段
20 右ショルダーベルト部
21 肩当て部
22 腋当て部
23 伸縮部
24 分離可能な結合手段
24A ソケット
24B プラグ
25 長さ調整手段
30 交差結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左ショルダーベルト部と右ショルダーベルト部を有する装着ベルトと、前記左ショルダーベルト部と前記右ショルダーベルト部に夫々取り付けられた一対の電極部と、前記一対の電極部に電気的に接続されて前記装着ベルトに取り付けられた生体信号検出部とから構成された生体情報検出器。
【請求項2】
前記装着ベルトには伸縮部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の生体情報検出器。
【請求項3】
前記装着ベルトには長さ調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の生体情報検出器。
【請求項4】
前記左ショルダーベルト部は胸側で夫々の一端が分離可能な結合手段により結合された肩当てベルト部と腋当てベルト部を有すること、
前記右ショルダーベルト部は胸側で夫々の一端が分離可能な結合手段により結合された肩当てベルト部と腋当てベルト部を有すること、
前記左ショルダーベルト部の肩当てベルト部と腋当てベルト部の夫々の他端と前記右ショルダーベルト部の肩当てベルト部と腋当てベルト部の夫々の他端は背側で結合されてベルト結合部を形成すること、
前記一対の電極部は前記左ショルダーベルト部と前記右ショルダーベルト部の夫々の肩当てベルト部の胸側に取り付けられていること、及び、
前記生体信号検出部は前記ベルト結合部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の生体情報検出器。
【請求項5】
伸縮部は、前記左ショルダーベルト部と前記右ショルダーベルト部の夫々の腋当てベルト部に取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の生体情報検出器。
【請求項6】
長さ調整手段は、前記左ショルダーベルト部と前記右ショルダーベルト部の夫々の肩当てベルト部に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の生体情報検出器。
【請求項7】
前記装着ベルトは前記左ショルダーベルト部と前記右ショルダーベルト部が1個の分離可能な結合手段により結合され、結合状態では1個の輪を形成し且つ背側に十字型ベルト交差部を形成するようにして人体に装着されるものであること、
前記一対の電極部は前記左ショルダーベルト部と前記右ショルダー部の夫々の肩当てベルト部の胸側に取り付けられていること、及び、
前記生体信号検出部は前記一対の電極部のいずれか一方の表側に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の生体情報検出器。
【請求項8】
前記分離可能な結合手段は、前記左ショルダーベルト部と前記右ショルダーベルト部のいずれか一方の肩当てベルト部に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の生体情報検出器。
【請求項9】
伸縮部は、前記左ショルダーベルト部と前記右ショルダーベルト部のいずれか一方の背当てベルト部に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の生体情報検出器。
【請求項10】
長さ調整手段は、前記分離可能な結合手段の近傍に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の生体情報検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−54745(P2008−54745A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232187(P2006−232187)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】