生体情報検出方法、生体情報検出装置および人体装着機器
【課題】 肌の色の濃さによって個人差が生じることなく、脈波などの生体信号を正確に測定することができる生体情報検出方法、生体情報検出装置および人体装着機器を提供する。
【解決手段】 発光素子6aによって観測光を予め定められている発光量の光で皮膚Hに照射し、この皮膚H内で散乱された観測光を受光感度が制御可能な受光素子9aで受光することにより、観測者の皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を測定する。また、この測定したメラニン色素の密度に応じて発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度との少なくとも一方をCPU37で制御し、この制御された制御結果に基づいて、メラニン色素の密度に対応する生体情報を検出する。従って、脈波などの皮膚組織を観測者の肌の色の濃さに応じて測定することができるので、肌の色の濃さによって個人差が生じることなく、脈波などの生体情報を正確に確保することができる。
【解決手段】 発光素子6aによって観測光を予め定められている発光量の光で皮膚Hに照射し、この皮膚H内で散乱された観測光を受光感度が制御可能な受光素子9aで受光することにより、観測者の皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を測定する。また、この測定したメラニン色素の密度に応じて発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度との少なくとも一方をCPU37で制御し、この制御された制御結果に基づいて、メラニン色素の密度に対応する生体情報を検出する。従って、脈波などの皮膚組織を観測者の肌の色の濃さに応じて測定することができるので、肌の色の濃さによって個人差が生じることなく、脈波などの生体情報を正確に確保することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人体の脈波などの生体を光学的に測定する生体情報検出方法、生体情報検出装置および人体装着機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の腕時計型の生体情報検出装置は、特許文献1に記載されているように、腕時計の裏蓋に所定波長の観測光を発光する発光素子と、この発光素子で発光されて生体で散乱された観測光を受光する受光素子とを備え、発光素子を間欠的に一定周期で一定時間発光させ、この発光素子のパルス発光に応じた生体からの散乱光を受光素子で受光して光電変換し、所定時間連続的に観測して得られた信号を周波数解析して脈波などの生体情報を測定するようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−353133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の生体情報検出装置では、発光素子を間欠的に一定周期で一定時間発光させ、この発光素子のパルス発光に応じた生体からの散乱光を受光素子で受光して光電変換し、この光電変換された信号を周波数解析して脈波などの生体情報を測定する構成であるから、皮膚の色の濃さによって測定値に差が生じるという問題がある。
【0005】
すなわち、人体の皮膚は、表面側のメラニン色素を含む表皮と、その内側で脈波の観測対象である毛細血管を含む真皮と、この真皮の内側に位置する皮下組織とからなり、表皮に含まれているメラニン色素の密度は肌の色の濃さによって個人差があり、肌の色の濃い人ほど表皮にメラニン色素が多く含まれているため、肌の色の濃い人ほどメラニン色素によって観測光が吸収されてしまう。
【0006】
このため、従来の生体情報検出装置では、発光素子によって観測光を皮膚に間欠的に一定周期で一定時間照射しても、肌の色の濃い人は毛細血管を含む真皮まで届いて真皮の組織中で散乱・吸収を繰り返し、再び表皮を透過して受光素子に到達する観測光が微弱であり、十分に観測光を受光素子によって受光することができず、肌の色の濃さによって測定値に差が生じ、脈波などの生体情報を肌の色の濃さに応じて正確に測定することができない。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、肌の色の濃さによって個人差が生じることなく、脈波などの生体を正確に測定することができる生体情報検出方法、生体情報検出装置および人体装着機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、発光素子によって人体の皮膚組織を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて前記皮膚に照射し、この照射されて前記皮膚内で散乱した前記観測光を受光感度が制御可能な受光素子で受光することにより、前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定する第1のステップと、この第1のステップで測定された測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する第2のステップと、この第2のステップにより制御された制御結果に基づいて、前記メラニン色素の密度に対応する生体情報を検出する生体情報検出ステップと、を備えていることを特徴とする生体情報検出方法である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、発光素子によって生体を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて前記生体に照射し、この照射されて前記生体内で散乱した前記観測光の散乱光を受光感度が制御可能な受光素子で受光し、前記生体の状態を測定する第1のステップと、この第1のステップにより測定された測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する第2のステップと、この第2のステップにより制御された制御結果に基づいて、前記生体の状態を示す生体情報を検出する生体情報検出ステップと、を備えていることを特徴とする生体情報検出方法である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記第1のステップが、前記発光素子によって前記観測光を異なる発光量で予め定められている回数発光させて前記皮膚に照射する照射ステップと、この照射ステップによりそれぞれ照射されて皮膚内で散乱した前記観測光を前記受光素子でそれぞれ受光する受光ステップと、この受光ステップにより受光された散乱光に基づいて前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定する密度測定ステップと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の生体情報検出方法である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記第2のステップが、前記第1のステップによる前記測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度とを前記複数段階の皮膚タイプのいずれかに対応するようにそれぞれ設定して、前記皮膚組織を観測する観察ステップを備えていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の生体情報検出方法である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、人体の皮膚組織を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を発光素子によって発光させて前記皮膚に照射させる観測光照射手段と、この観測光照射手段によって照射されて前記皮膚内で散乱した前記観測光を受光素子で受光して電気信号に変換して出力する散乱光検出手段と、前記発光素子を予め定められている発光量で発光させ、この発光した観測光を前記受光素子で受光し、その受光量に応じて前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定し、且つこの測定結果に基づいて前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する制御手段と、この制御手段により制御された制御結果に基づいて、前記メラニン色素の密度に対応する生体情報を検出する生体情報検出手段と、を備えていることを特徴とする生体情報検出装置である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、発光素子によって生体を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて前記生体に照射し、この照射されて前記生体内で散乱した前記観測光の散乱光を受光感度が制御可能な受光素子で受光し、前記生体の状態を測定する測定手段と、この測定手段により測定された測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する制御手段と、この制御手段により制御された制御結果に基づいて、前記生体の状態を示す生体情報を検出する生体情報検出手段と、を備えていることを特徴とする生体情報検出方法である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記測定手段が、前記発光素子を異なる発光量で予め定められている回数発光させて前記皮膚に照射させ、この照射されて前記皮膚内で散乱した前記観測光を前記受光素子でそれぞれ受光し、この受光量に応じて前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定する密度測定手段を備え、前記制御手段は、前記測定手段による測定結果に応じて前記皮膚のタイプが複数段階のいずれであるかを判断する判断手段と、この判断手段による判断結果に基づいて前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を前記複数段階の皮膚タイプのいずれかに対応するようにそれぞれ設定して前記皮膚組織を観測する観測手段と、を備えていることを特徴とする請求項5に記載の生体情報検出装置である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載された生体情報検出装置を人体に装着する機器本体に設けたことを特徴とする人体装着機器である。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、発光素子によって観測光を予め定められている発光量の光で皮膚に照射し、この皮膚内で散乱された観測光を受光感度が制御可能な受光素子で受光することにより、観測者の皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定し、この測定したメラニン色素の密度に応じて発光素子の発光量と受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御することができる。このために、脈波などの皮膚組織を観測者の肌の色の濃さに応じて測定することができる。このため、肌の色の濃さによって個人差が生じることなく、脈波などの生体信号を正確に測定することができる。
【0017】
また、この発明によれば、発光素子によって生体を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて前記生体に照射し、この照射されて前記生体内で散乱した前記観測光の散乱光を受光感度が制御可能な受光素子で受光し、前記生体の状態を測定し、この測定された測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御した上で、この制御された制御結果に基づいて、前記生体の状態を示す生体情報を検出することができる。このため、精度の高い生体情報を確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明を適用した腕時計の一実施形態を示した拡大断面図である。
【図2】図1の腕時計の裏蓋を示した拡大平面図である。
【図3】図2のA−A矢視における拡大断面図である。
【図4】図3の生体情報検出装置を腕の皮膚に接触させて、脈波などの生体を光学的に測定する状態を示した拡大断面図である。
【図5】図4の皮膚を拡大して概略的に示した要部の拡大断面図である。
【図6】図3の生体情報検出装置の回路構成を示したブロック図である。
【図7】図5の皮膚における生体成分の主な吸収スペクトルを示した図である。
【図8】図5の皮膚に含まれているメラニン色素の密度に応じて皮膚タイプを6段階に分類して表で示した図である。
【図9】図8において発光素子の駆動電流に対する受光素子の受光量を皮膚タイプごとに示した図である。
【図10】図9において受光素子の受光電流とA/Dコンバータの入力信号(入力電圧)との関係を示した図である。
【図11】図8の皮膚タイプを確認するために第1D/Aコンバータの電圧(Vout1)と第2D/Aコンバータの電圧(Vout2)とに与える各電圧値を示したテーブル1の図である。
【図12】図11の皮膚タイプにおいて脈波を観測するために第1D/Aコンバータの電圧(Vout1)と第2D/Aコンバータの電圧(Vout2)とに与える各電圧値を示したテーブル2の図である。
【図13】図5において皮膚に含まれているメラニン色素の密度が少ない場合で、発光素子を所定の発光量で発光させた場合における観測光の照射状態を拡大断面図である。
【図14】図13において皮膚に含まれているメラニン色素の密度が多い場合で、発光素子による発光量のみを増大させた場合における観測光の照射状態を拡大断面図である。
【図15】図14において皮膚に含まれているメラニン色素の密度が多い場合で、発光素子による発光量と受光素子の受光感度との両方を調整した場合における観測光の照射状態を拡大断面図である。
【図16】図6の生体情報検出装置における基本的な動作フローを示した図である。
【図17】図16の皮膚タイプを確認する皮膚タイプ確認処理の動作フローを示した図である。
【図18】図16の脈波を観測する脈波観測処理の動作フローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図18を参照して、この発明を腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、図1に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の上部開口部には、時計ガラス2がパッキン2aを介して取り付けられており、この腕時計ケース1の下部には、裏蓋3が防水リング3aを介して取り付けられている。この腕時計ケース1の内部には、時計機能に必要な各種の部品を有する時計モジュール4が配置されている。
【0020】
また、この腕時計ケース1の裏蓋3の中央部には、図1〜図3に示すように、生体情報検出装置5が設けられている。この場合、裏蓋3は、ステンレスなどの金属からなり、図3および図4に示すように、その下面が中央部に向けて緩やかに湾曲しながら下側に突出している。この突出した中央部には、生体情報検出装置5を取り付けるための取付孔3bが上下に貫通して設けられている。
【0021】
生体情報検出装置5は、図3および図4に示すように、人体の皮膚を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を発光する発光部6と、この発光部6が発光した観測光を導いて皮膚Hに環状に拡散照射する導光部材7と、この導光部材7によって照射された環状の照射領域E内の中央部に位置する皮膚Hに接触する観測光採込部8と、この観測光採込部8における皮膚Hと反対側に位置する箇所に配置されて観測光採込部8で採り込んだ観測光を受光する受光部9とを備えている。
【0022】
この場合、発光部6と受光部9とは、図1〜図4に示すように、測定用の回路基板10の下面に設けられている。この回路基板10は、導光部材7の上部に位置して腕時計ケース1内に配置されている。導光部材7は、その下部が裏蓋3の取付孔3b内に嵌め込まれ、その上部が腕時計ケース1内の回路基板10の下面に配置されている。
【0023】
ところで、発光部6は、側面発光タイプのものであり、発光ダイオード(LED)などの発光素子6aを素子基板6bの側面に設けた構成になっている。この発光素子6aは、皮膚H内に含まれているメラニン色素が光を吸収する吸光度の低いλp=940nmの赤外線光を観測光として発光するように構成されている。この発光部6は、図3および図4に示すように、導光部材7の外周に対応する回路基板10の下面における12時、3時、6時、および9時の4方向に対応する4箇所にそれぞれ設けられている。
【0024】
導光部材7は、図3および図4に示すように、導光リング部11、拡散反射リング部12、拡散リング部13、および拡散照射リング部14を備えている。導光リング部11は、光透過性の高い透明な樹脂または透明なガラスなどの材料からなり、全体がほぼ正方形の平板状に形成されている。この導光リング部11は、その中央部に円形孔11aが形成されていると共に、各角部にそれぞれ発光部6が対応して配置される入射面11bが形成された構成になっている。
【0025】
この場合、導光リング部11は、各角部の入射面11bが12時、3時、6時、および9時の4方向に対応するように回路基板10の下面に配置されている。すなわち、導光リング部11の入射面11bは、図2に示すように、導光リング部11の各角部に半円形状に食い込んで形成された切欠凹部であり、この半円形状の切欠凹部内に発光部6の発光素子6aが挿入された状態で配置されている。これにより、導光リング部11は、発光素子6aで発光した観測光が導光リング部11の4つの角部から中央部の円形孔11aに向けて4方向から放射状に入射するように構成されている。
【0026】
また、この導光リング部11は、中央部の円形孔11aの内周面が出射面11cに形成されている。これにより、導光リング部11は、図4に示すように、発光部6で発光した観測光を4方向の各角部の入射面11bから内部に採り込み、この採り込んだ観測光を4方向から中央部の円形孔11aに向けて導き、この導いた観測光を円形孔11aの内周面である出射面11cから放出するように構成されている。
【0027】
この場合、導光リング部11の外表面には、図3および図4に示すように、各角部の入射面11bおよび円形孔11aの内周面である出射面11cを除いて、導光リング部11の内部に入射した観測光が導光リング部11の外部に漏れるのを防ぐための第1反射層15がアルミなどの金属蒸着やめっきによって設けられている。
【0028】
また、拡散反射リング部12は、図3および図4に示すように、光拡散性を有する白濁または乳白色のアクリル樹脂などの合成樹脂からなり、全体がほぼ円形のリング形状に形成されている。この拡散反射リング部12は、その厚みが導入リング部11とほぼ同じ厚みに形成され、導光リング部11の円形孔11a内に配置されている。この場合、拡散反射リング部12は、その外周面が入射面12aに形成され、この入射面12aが導光リング部11の円形孔11aの内周面である出射面11cに密着して配置されるように構成されている。
【0029】
また、この拡散反射リング部12の下面は、図3および図4に示すように、その外周面の入射面12aから採り込んだ観測光を皮膚Hに向けて放出する出射面12bに形成されている。さらに、この拡散反射リング部12の内周部には、その外周面の入射面12aから採り込んだ観測光を下面の出射面12bに向けて反射する反射面12cが環状に連続して形成されている。この反射面12cは、逆円錐面の一部つまり下側に向けて先細になる逆円錐面の一部に形成されている。
【0030】
さらに、この拡散反射リング部12の外表面には、図3および図4に示すように、外周面の入射面12aおよび下面の出射面12bを除いて、拡散反射リング部12の内部に入射した観測光が拡散反射リング部12の外部に漏れるのを防ぐと共に、後述する受光部9とを光学的に分離するための第2反射層16がアルミなどの金属蒸着やめっきによって設けられている。
【0031】
これにより、拡散反射リング部12は、導光リング部11の内周面である出射面11cから放出された観測光を外周面の入射面12aから内部に採り込み、この採り込んだ観測光を拡散反射リング部12の環状に沿って導きながら拡散すると共に、内周部に設けられた反射面12cによって下面の出射面12bに向けて反射し、この拡散反射された観測光を下面の出射面12bから下側に放出するように構成されている。
【0032】
拡散リング部13は、図3および図4に示すように、光拡散性を有する合成樹脂からなり、全体がほぼ円形のリング状に形成されている。この拡散リング部13は、その厚みが薄いシート状に形成され、拡散反射リング部12の下面の出射面12bに密着して配置されている。この拡散リング部13の外周面および内周面の各周面にも、拡散反射リング部12と同様、入射した観測光が拡散リング部13の外部に漏れるのを防ぐと共に、後述する受光部9とを光学的に分離するための第2反射層16がアルミなどの金属蒸着やめっきによって設けられている。
【0033】
これにより、拡散リング部13は、図3および図4に示すように、拡散反射リング部12の出射面12bから放出された観測光を上面から内部に採り込み、この採り込んだ観測光を拡散リング部13の環状に沿って導きながら均一になるように十分に拡散し、この拡散された観測光を下面から皮膚Hに向けて斑なく均等に放出するように構成されている。
【0034】
拡散照射リング部14は、図3および図4に示すように、拡散性を有するアクリル樹脂などの合成樹脂からなり、全体がほぼ円形のリング形状に形成されている。この拡散照射リング部14は、拡散反射リング部12の下側に拡散リング部13を介して配置され、裏蓋3の取付孔3b内に第1防水パッキン17を介して嵌め込まれている。この場合、拡散照射リング部14は、その外周が拡散反射リング部12の外周よりも少し大きく、内周が拡散反射リング部12の内周よりも少し小さく形成されている。
【0035】
これにより、拡散照射リング部14は、拡散反射リング部12から放出されて拡散リング部13で斑なく環状に拡散された観測光を上面から採り込み、この採り込んだ観測光を更に拡散し、この拡散された観測光を下面から環状に放出させることにより、観測光を皮膚Hにリング状の広い面積に均一に拡散照射するように構成されている。
【0036】
この場合にも、拡散照射リング部14の外周面および内周面には、図3および図4に示すように、その上面および下面を除いて、拡散照射リング部14の内部に入射した観測光が拡散照射リング部14の外部に漏れるのを防ぐと共に、後述する受光部9とを光学的に分離するための第3反射層18がアルミなどの金属蒸着やめっきによって設けられている。
【0037】
また、この拡散照射リング部14は、裏蓋3の取付孔3bに設けられた突起部3cに当接して腕時計ケース1内に押し込まれないように位置規制されている。この場合、拡散照射リング部14は、図3および図4に示すように、その下面が裏蓋3の下面における最下部と同じ高さで配置され、これにより拡散照射リング部14の下面と裏蓋3の下面とが段差を生じることなく、裏蓋3の下面と共に皮膚Hに接触するように構成されている。
【0038】
この拡散照射リング部14の内側には、図3および図4に示すように、皮膚H内に照射された観測光を採り込むための観測光採込部8が設けられている。この観測光採込部8は、高屈折率の透明な樹脂または透明なガラスなどの材料からなり、全体が円形の平板状に形成されている。この場合、観測光採込部8は、その厚みが拡散照射リング部14とほぼ同じ厚みに形成されている。これにより、観測光採込部8と拡散照射リング部14とは、その各上面および各下面がそれぞれほぼ同一平面上に配置されている。
【0039】
また、この観測光採込部8は、図3および図4に示すように、その外周面と拡散照射リング部14の内周面との間に第2防水パッキン19を介して拡散照射リング部14内に取り付けられている。この観測光採込部8は、その下面が拡散照射リング部14によって照射されたリング状の照射領域E内の中央部に位置する皮膚Hに接触するように構成されている。これにより、観測光採込部8は、皮膚H内に照射された観測光を下面から採り込み、この採り込んだ散乱光を上面から受光部9に向けて照射させるように構成されている。
【0040】
受光部9は、観測光採込部8で採り込んだ観測光を受光して光電変換するものであり、シリコンフォトダイオードなどの受光素子9aを素子基板9bの下面に下向きに設けた構成になっている。この受光部9は、図3および図4に示すように、受光素子9aがホルダ部21内に収納された状態で、観測光採込部8における皮膚Hと反対側(図3では上方)に位置する箇所、つまり観測光採込部8の光軸上における焦点位置付近に位置する箇所の回路基板10の下面に設けられている。
【0041】
この受光部9の受光素子9aは、波長(λ)が940nm程度の特定波長帯域の光に最も強く反応する分光感度特性を有している。すなわち、この受光素子9aは、波長が940nm以下の波長帯域の光に対してはその波長が短くなるに伴って徐々に受光感度が低下し、逆に波長が940nm程度以上の波長帯域の光に対しては急激に受光感度が低下し、波長が940nmの波長の光に対して最も受光感度が高くなるように構成されている。
【0042】
この受光素子9aの下側、つまり受光素子9aと観測光採込部8との間には、図3および図4に示すように、光学フィルタ20が、受光素子9aの下側に位置するホルダ部21内に配置されている。この光学フィルタ20は、波長が900nm以上の特定波長帯域の光を透過し、波長が900nm以下の波長帯域の光を遮断することにより、受光素子9aが太陽光などの外来光による測定変動の影響を軽減するように構成されている。
【0043】
この場合、受光部9のホルダ部21は、アルミなどの遮光性を有する金属からなり、その表面に反射機能を有するアルマイト処理が施され、これにより受光素子9aを光学的に保護するように構成されている。このホルダ部21は、図3および図4に示すように、発光部6の厚み(上下方向の長さ)と同じ厚みで形成され、拡散反射リング部12の中央部内に配置されている。
【0044】
これにより、発光部6、導光リング部11、拡散反射リング部12、および受光部9は、これらの厚みが発光部6の厚み(上下方向の長さ)内に形成され、これら各上下面がほぼ同一平面上に配置され、この状態で全体が約1mmの厚みで平面的に配置されている。また、光学フィルタ20は、その厚みが拡散リング部13とほぼ同じ厚みで形成され、拡散リング部13と共に裏蓋3の内面(図3では上面)とほぼ同一平面上に配置されるように構成されている。
【0045】
次に、図6に示されたブロック図を参照して、この生体情報検出装置5の回路構成について説明する。
この生体情報検出装置5の回路構成は、制御装置25と、発光素子6aおよび受光素子9aを有する光電信号検出部26と、この光電信号検出部26の発光素子6aを駆動する発光部駆動回路27と、この発光部駆動回路27によって駆動される発光素子6aの発光量を制御する発光制御回路28とを備えている。
【0046】
また、この生体情報検出装置5の回路構成は、図6に示すように、光電信号検出部26の受光素子9aから出力された電流信号(受光電流Ipd)を電圧信号(受光電圧Vin)に変換するI/V変換回路29と、このI/V変換回路29に基準電圧(Vref1)を与えるための基準電圧発生回路30と、I/V変換回路29からの出力信号(受光電圧Vin)を取り込んで制御装置25に与えると共に受光素子9aの受光感度を制御する受光制御回路31とを備えている。
【0047】
さらに、この生体情報検出装置5の回路構成は、脈波などの生体の測定結果を生体情報として表示する表示部32、各部に電源電圧を供給する電源部33と、ユーザによって入力操作されるスイッチ部34とを備えている。電源部33は、発光部駆動回路27に電源を供給するほか、制御装置25に電源を供給する制御電源回路35と、発光制御回路28、基準電圧発生回路30、受光制御回路31などのアナログ回路に電源を供給するアナログ電源回路36とを備えている。
【0048】
ところで、制御装置25は、回路の全体的な制御を行うCPU(中央演算処理装置)37と、予め定められたプログラムが格納されたROM(リードオンリーメモリ)38と、随時書き込み読み出し可能なRAM(ランダムアクセスメモリ)39と、時間を計測する計時回路40と、スイッチ部34の操作に応じてスイッチ信号を出力するスイッチ回路41と、表示部32を駆動する表示駆動回路42と、各部に動作信号を出力すると共に受光制御回路31からの出力信号を取り込むIOポート43とを備え、これらがCPU37とバスライン44によって接続されている。
【0049】
CPU37は、LSI(大規模集積回路)などの集積回路である。光電信号検出部26は、特定波長帯域の観測光を発光する発光素子6a、および、この発光素子6aで発光された観測光が皮膚Hに照射されて皮膚H内で散乱・吸収された際に、その観測光を受光し、その受光量に応じて電流信号(受光電流Ipd)を出力する受光素子9aなどを有している。この場合、発光素子6aは、12時、3時、6時、および9時の4方向に対応する4箇所に配置されており、この4つの発光素子6aは、直列に接続されている。
【0050】
発光部駆動回路27は、電源部33からの電源電圧を発光素子6aの駆動に必要な電圧まで昇圧するステップアップ電源回路であり、その入力端子ENが制御装置25の出力端子(OUT1)に接続されている。発光制御回路28は第1D/Aコンバータ45と定電流回路46とを備えている。定電流回路46はオペアンプ46aとトランジスタTrと抵抗Raとで構成されている。
【0051】
第1D/Aコンバータ45は、その制御端子(SYNCB、SCLK、DIN)が制御装置25の出力端子(OUT2〜OUT4)にそれぞれ接続され、制御装置25との間でシリアル方式によるデータ通信が可能になっている。また、この第1D/Aコンバータ45は、その出力端子(Vout1)が定電流回路46のオペアンプ46aに接続され、アナログ電源回路36から与えられた電源電圧とグランドとの間で10ビットの分解能で分割され、この分割されたいずれかの電圧(Vout1)をオペアンプ46aに与える。
【0052】
これにより、光電信号検出部26の発光素子6aに流れる発光電流(If)は、第1D/Aコンバータ45から出力された電圧値(Vout1)を定電流回路46の抵抗値(Ra)で割った値(If=Vout1/Ra)である。このため、発光素子6aに流れる発光電流(If)は、定電流回路46の抵抗Raが一定あることにより、第1D/Aコンバータ45の出力端子からの電圧値(Vout1)によって変化し、この変化に応じて光電信号検出部26の発光素子6aによる発光量を調整する。
【0053】
一方、光電信号検出部26の受光素子9aから出力された受光電流(Ipd)を受光電圧(Vin)に変換するI/V変換回路29は、オペアンプ29aと抵抗Rfとで構成されている。このオペアンプ29aには、光電信号検出部26の受光素子9aと基準電圧発生回路30の出力端子(Vout)とが接続されている。また、受光制御回路31は、第2D/Aコンバータ47とA/Dコンバータ48とで構成されている。
【0054】
第2D/Aコンバータ47は、その制御端子(SYNCB、SCLK、DIN)が制御装置25の出力端子(OUT5〜OUT7)にそれぞれ接続され、制御装置25との間でシリアル方式によるデータ通信が可能になっている。A/Dコンバータ48は、その制御端子(CSB、DCLK)が制御装置25の出力端子(OUT8〜OUT9)にそれぞれ接続され、制御装置25との間でシリアル方式によるデータ通信が可能になっている。
【0055】
このA/Dコンバータ48は、その入力端子(Vref2)に第2D/Aコンバータ47の出力端子(Vout2)が接続され、基準電圧(Vout2)が与えられている。また、このA/Dコンバータ48は、その入力端子(Vin)にI/V変換回路29の出力端子が接続されていると共に、出力端子(DOUT)が制御装置25の入力端子(IN)に接続されている。
【0056】
これにより、A/Dコンバータ48は、光電信号検出部26の受光素子9aに発生してI/V変換回路29で変換された受光電圧(Vin)が入力端子(Vin)に与えられる。このA/Dコンバータ48に与えられる受光電圧(Vin)は、光電信号検出部26の受光素子9aに発生した受光電流(Ipd)とI/V変換回路29の抵抗値(Rf)との積に基準電圧発生回路30からの基準電圧(Vref1)を加えた値(Vin=Ipd×Rf+Vref1)である。
【0057】
また、このA/Dコンバータ48は、I/V変換回路29から与えられた受光電圧(Vin)を第2D/Aコンバータ47から与えられた電圧(Vref2)とグランドとの端子間電圧に基づいて16ビットでA/D変換し、この16ビットでA/D変換されたA/D変換データとして出力端子(DOUT)から制御装置25の入力端子(IN)に与える。
【0058】
これにより、CPU37は、A/Dコンバータ48から出力された受光素子9aからの受光信号レベルをサンプルホールドしてA/D変換データを確定する。この場合、CPU37は、発光部駆動回路27が電源部33からの電源電圧を発光素子6aの駆動に必要な電圧まで昇圧する昇圧動作を停止させる。
【0059】
また、発光素子6aの発光量は、駆動電流(If)と比例関係にあり、定電流回路46の抵抗(Ra)が一定(例えばRa=100Ω)である。これにより、第1D/Aコンバータ45の出力端子(Vout1)から出力される発光素子6aの駆動信号(Vout1)は、CPU37によって制御されて第1D/Aコンバータ45に与えられる電源電圧(VDDA)とグランドとの間で10ビットに分割され、この分割された電圧信号が与えられ、発光素子6aの発光量を制御する。
【0060】
受光素子9aは、発光素子6aで発光されて観測光が皮膚Hに照射され、この照射された観測光が皮膚H内で散乱・吸収され、その散乱光を受光して受光電流(Ipd)を発生する。この場合、皮膚Hの散乱条件および血液の状態が一定である場合には、皮膚Hのタイプに応じて受光素子9aに発生する受光電流(Ipd)が異なる。この皮膚Hのタイプとは、皮膚Hの表皮H2に含まれているメラニン色素の密度によって分類されている。
【0061】
すなわち、生体組織成分の吸光スペクトルは、図7に示すように、600nm以下の波長でヘモグロビンHEおよびメラニン色素MEの吸光度が高い。皮膚Hの表皮H2には、真皮H1以下の組織を有害な紫外線から保護するため、メラニン色素MEが含まれている。このメラニン色素MEの含有密度は、肌の色の濃さによって大きく異なり、図8に示すように、6段階の皮膚タイプ1〜6に分類されている。
【0062】
この図8は、6段階に皮膚タイプを分類した場合における各皮膚タイプ1〜6と、これに対応するメラニン色素の含有指数と、各皮膚タイプ1〜6ごとに観測光が表皮H2を透過する透過率との関係を示している。皮膚タイプ1〜6のうち、皮膚タイプ2は白色肌、皮膚タイプ3は黄色肌、皮膚タイプ5は黒色肌である。この場合、観測光としては、例えば波長(λ)が520nmの緑色光と、波長が940nmの近赤外光とである。波長が520nmの緑色光では、皮膚タイプ5の黒色肌の場合、ほとんど透過しないので、観測光としての使用は不適当であることが判る。
【0063】
また、波長が940nmの近赤外光では、表皮H2に含まれているメラニン色素の密度が少ない皮膚タイプ1の白色肌の場合、表皮H2を透過して皮膚Hの内部で散乱された観測光は、再び表皮H2を透過して受光素子9aで受光されるが、観測光の透過率が99.3%程度と高いので、発光部6および受光部9の両方の部分において、表皮H2での吸収は無視できるので、図13に示すように、発光部6から照射され皮膚Hの内部で散乱されて受光素子9aに入射する観測光は主に真皮H1の深さの範囲内で散乱された観測光に限定できる。
【0064】
一方、表皮H2に含まれているメラニン色素の密度が多い皮膚タイプ5の黒色肌の場合には、表皮H2の透過率が46%程度であり、表皮H2を透過して皮膚組織の内部で散乱された観測光も、再び表皮H2を透過して受光素子9aで受光されるので、皮膚タイプ1の白色肌の場合における透過率を100%とすると、皮膚タイプ5の黒色肌の場合には、約20%(1/5程度)になる。
【0065】
この皮膚タイプ5の黒色肌の場合で、受光素子9aによる受光量を確保するために、受光感度を皮膚タイプ1に保った条件で、発光素子6aのみを調整して発光量を増加させた場合には、図14に示すように、発光素子6aからの観測光が真皮H1の下側の皮下組織まで深く照射され、真皮H1における血液の脈動信号(つまり心臓の拍動に伴う脈動信号)以外のノイズ(例えば体動に伴う脈動)の影響を受けやすくなる。
【0066】
そこで、この生体情報検出装置5では、波長が940nmの近赤外光を用いて皮膚タイプ5の黒色肌において、受光素子9aで受光する受光量を皮膚タイプ1の白色肌と同程度にするため、発光素子6aの発光量を5倍程度増加させると共に、受光素子9aの受光感度を同程度に高めることにより、図15に示すように、観測光を真皮H1に限定して照射させ、且つ受光素子9aで観測光を十分に受光するように構成している。
【0067】
これにより、受光素子9aで受光されて発生する受光電流(Ipd)は、皮膚Hの散乱条件および血液の状態が一定である場合に、図9に示すように、各皮膚タイプ1〜5ごとに受光量に比例して増加する。すなわち、受光素子9aで発生した受光電流(Ipd)は、I/V変換回路29のオペアンプ29aからA/Dコンバータ48に出力電圧(Vin)として与えられる。
【0068】
このA/Dコンバータ48に与えられる出力電圧(Vin)は、光電信号検出部26の受光素子9aに発生した受光電流(Ipd)とI/V変換回路29の抵抗値(Rf)との積に基準電圧発生回路30の基準電圧(Vref1)を加えた値(Vin=Ipd×Rf+Vref1)であることから、図10に示すように、基準電圧(Vref1)を接点として、傾きがI/V変換回路29の抵抗値(Rf)の直線で表される。
【0069】
この場合、A/Dコンバータ48に供給される基準電位(Vref2)は、CPU37によって制御されて第2D/Aコンバータ47の出力端子(Vout2)から出力されており、この第2D/Aコンバータ47の入力電圧(VDDA)とグランドとの間で8ビットの分解能で分割され、この分割された電圧信号(Vout2)が出力される。A/Dコンバータ48は、第2D/Aコンバータ47からの出力電圧(Vout2)に基づく基準電位(Vref2)とグランドとの間を16ビットの分解能で、I/V変換回路29からの出力電圧(Vin)をA/D変換する。
【0070】
これにより、測定者の皮膚タイプ1〜6に応じて発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光量とを制御することにより、測定者の皮膚タイプ1〜6およびその皮膚タイプ1〜6に応じた生体組織の観測が可能になる。従って、発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光量とを制御するための各電圧、つまり第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)と第2D/Aコンバータ47の出力電圧(Vout2)とを、図11および図12に示すように、測定者の皮膚タイプ1〜6に応じた基準データとして設定して、RAM39に予め登録しておく。
【0071】
すなわち、図11に示されたテーブル1の基準データは、測定者の皮膚タイプ1〜6を測定するための第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)と第2D/Aコンバータ47の出力電圧(Vout2)との基準データであり、RAM39のテーブル1に登録されている。また、図12に示されたテーブル2の基準データは、皮膚タイプ1〜6に応じた生体組織を観測するための第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)と第2D/Aコンバータ47の出力電圧(Vout2)との基準データであり、RAM39のテーブル2に登録されている。
【0072】
次に、図16を参照して、この生体情報検出装置5によって生体組織を観測する生体組織観測処理の基本的な動作フローについて説明する。
この生体組織観測処理の動作がスタートすると、CPU37は、発光素子6aによって人体の皮膚組織を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて皮膚Hに照射し、この照射されて皮膚H内で散乱した観測光を受光感度が制御可能な受光素子9aで受光することにより、皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を測定し、観測者の皮膚タイプを確認する(ステップS1)。この後、ステップS1で測定された測定結果に基づいて、発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度とを制御して脈波を観測し(ステップS2)、この動作を終了する。
【0073】
次に、図17を参照して、図16のステップS1にて示した観測者の皮膚タイプを確認する皮膚タイプ確認処理の動作フローについて説明する。
この皮膚タイプ確認処理の動作がスタートすると、CPU37は、RAM39に登録されているテーブル1の内容を読み出し、このテーブル1の内容に基づいて第2D/Aコンバータ47の出力端子(Vout2)から出力される電圧を制御し、A/Dコンバータ48に皮膚タイプ2に対応する電圧(Vref2=2.048mV)を与えて、受光素子9aの受光感度を皮膚タイプ2の受光感度に設定する(ステップS11)。
【0074】
この後、CPU37は、テーブル1の内容に基づいて第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)を皮膚タイプ2に更新し(ステップS12)、第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)を皮膚タイプ2の電圧(Vout1=104.6mV)に近い電圧(Vout1=105.0mV)にして発光素子6aを皮膚タイプ2に対応する発光量で点灯させる(ステップS13)。
【0075】
すると、発光素子6aで発光した観測光は、観測者の皮膚Hに照射され、この照射された観測光は皮膚H内で散乱・吸収され、この皮膚H内で散乱された観測光は受光素子9aに受光される。これにより、受光素子9aには、その受光量に応じて受光素子9aに受光電流(Ipd)が発生する。この発生した受光電流(Ipd)はI/V変換回路29によって電圧信号としてA/Dコンバータ48の入力端子(Vin)に与えられる。
【0076】
この入力端子(Vin)に入力された電圧信号は、A/Dコンバータ48により、対応するデジタルの受光電圧値(AD0)に変換される(ステップS14)。CPU37は、この変換された受光電圧値(AD0)が予め定められている基準値(AD基準値)よりも大きいか否かを判断する(ステップS15)。このとき、受光電圧値(AD0)が基準値よりも大きい場合には、測定者の皮膚Hに含まれているメラニン色素の密度が皮膚タイプ2よりも少ないと判断し、測定者が皮膚タイプ1であると確定し(ステップS16)、メインフローに戻る。
【0077】
また、ステップS15で、受光電圧値(AD0)が基準値よりも小さい場合には、測定者の皮膚Hに含まれているメラニン色素の密度が皮膚タイプ2よりも多いと判断し、皮膚タイプを1段階繰り上げ(ステップS17)、この繰り上げられた皮膚タイプが6段階目の皮膚タイプ6であるか否かを判断し(ステップS18)、6段階目の皮膚タイプ6でなければ、ステップS12に戻り、ステップS12〜ステップS18の動作を皮膚タイプ3から皮膚タイプ6まで繰り返す。
【0078】
すなわち、ステップS17で皮膚タイプが1段階繰り上げられてステップS12に戻ると、このステップS12で皮膚タイプ3に更新し、ステップS13で第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)を皮膚タイプ3の電圧(Vout1=115.7mV)に誓い電圧(Vout1=116.0mV)にして発光素子6aを点灯させる。
【0079】
そして、受光素子9aに受光電流(Ipd)が発生し、この発生した受光電流(Ipd)がI/V変換回路29によって電圧信号としてA/Dコンバータ48の入力端子(Vin)に与えられると、ステップS14でCPU37がA/Dコンバータ48からの受光電圧値(AD0)を取り込み、ステップS15で取り込んだ受光電圧値(AD0)が基準値よりも大きいか否かを判断し、ステップS16で受光電圧値(AD0)が基準値よりも大きい場合には、測定者が皮膚タイプ2であると確定し、メインフローに戻る。
【0080】
また、ステップS15で、受光電圧値(AD0)が基準値よりも小さい場合には、ステップS17で皮膚タイプをさらに1段階繰り上げ、ステップS18で繰り上げられた皮膚タイプが6段階目の皮膚タイプ6であるか否かを判断し、6段階目の皮膚タイプ6でなければ、ステップS12に戻り、ステップS12〜ステップS18の動作を皮膚タイプ4から皮膚タイプ6まで繰り返す。これにより、測定者が皮膚タイプ1〜5のいずれであるかを確定する。
【0081】
次に、図18を参照して、図16のステップS2にて示した観測者の脈波を観測する脈波観測処理の動作フローについて説明する。
この脈波観測処理の動作がスタートすると、CPU37は、まず、皮膚タイプ確認処理に基づいて皮膚タイプ1〜5のいずれであるかを判断する(ステップS21)。
【0082】
そして、皮膚タイプ1〜5のいずれか(例えば皮膚タイプ3)であれば、RAM39に登録されているテーブル2の内容を読み出し、このテーブル2の内容に基づいて第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)と第2D/Aコンバータ47の出力電圧(Vout2)とを、皮膚タイプ1〜5のいずれか(例えば皮膚タイプ3)に対応する各電圧値(例えば皮膚タイプ3のV1=108mV、V2=1.91mV)に更新する(ステップS22)。
【0083】
この後、皮膚タイプ1〜5のいずれか(例えば皮膚タイプ3)に対応する電圧値に更新された第2D/Aコンバータ47の出力電圧(Vout2=1.91mV)をA/Dコンバータ48に入力電圧(Vref2)として与えて、受光素子9aの受光感度を調整する(ステップS23)。この後、皮膚タイプ1〜5のいずれか(例えば皮膚タイプ3)に対応する電圧値に更新された第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1=108mV)で発光素子6aを点灯させる(ステップS24)。
【0084】
すると、発光素子6aで発光した観測光は、測定者の皮膚タイプ(例えば皮膚タイプ3)に応じて発光量が制御され、また、受光素子9aからA/Dコンバータ48で構成される受光回路の受光感度が制御され、皮膚H内で散乱された観測光のうち、再び表皮H2を透過して受光素子9aで受光される観測光は皮膚Hの真皮H1における深さの範囲内で散乱された観測光に限定される。
【0085】
このとき、皮下組織以下の生体組織の光学特性の変動(体動に伴う光学特性の変動)によるノイズの影響を受けない条件で受光素子9aに到達する。これにより、受光素子9aは真皮H1中の吸光物質であるヘモグロビンHEの量的変動が、変動の主要因である観測光を受光する。受光素子9aには、その受光量に応じて受光電流(Ipd)が発生し、この発生した受光電流(Ipd)はI/V変換回路29によって電圧信号としてA/Dコンバータ48の入力端子(Vin)に入力される。
【0086】
この入力端子(Vin)に入力された電圧信号は、A/Dコンバータ48により、対応するデジタルの受光電圧値(AD1)に変換される(ステップS25)。CPU37は、この変換された受光電圧値(AD1)が、予め定められた電圧値の最小値から最大値までの基準範囲(AD1minからAD1maxまでの基準範囲)内であるか否かを判断する(ステップS26)。
【0087】
このとき、受光電圧値(AD1)が予め定められた電圧値の基準範囲内でなければ、測定エラーとなり、エラー処理を行う(ステップS27)。また、受光電圧値(AD1)が予め定められた電圧値の基準範囲内であれば、A/D変換データの時系列データである受光電圧値(AD1の値)を脈波データとしてRAM39に格納する(ステップS28)。この格納された脈波データに基づいて、脈拍数などの生体情報を検出するための検出処理を行う(ステップS29)。
【0088】
この後、脈波観測を終了するか否かを判断し(ステップS30)、スイッチ部34の操作によって終了信号が与えられると、脈波観測処理を終了して、メインフローに戻る。このとき、脈波観測処理の終了信号が与えられていない場合には、ステップS22に戻り、再びステップS22からステップS30の動作を繰り返して、再度、脈波測定を行う。
【0089】
ところで、ステップS21で、皮膚タイプ確認処理に基づいて皮膚タイプ1〜5のいずれでもなく、皮膚タイプが6段階目の皮膚タイプ6であると判断された場合には、RAM39に登録されているテーブル2を読み出し、このテーブル2に基づいて第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)を更新し(ステップS31)、第2D/Aコンバータ47の出力電圧(Vout2)を皮膚タイプ6に対応する電圧値(Vref2=0.28mV)に設定する(ステップS32)。
【0090】
そして、皮膚タイプ6に対応する電圧値に設定された第2D/Aコンバータ47の出力電圧(Vout2)をA/Dコンバータ48に入力電圧(Vref2)として与えて、受光素子9aの受光感度を調整する(ステップS33)。この後、ステップS24に戻って再び発光素子6aを発光させ、ステップS25で受光素子9aが受光した受光電圧(Vin)をデジタルの受光電圧値(AD1)に変換する。
【0091】
そして、ステップS26で受光電圧値(AD1)が予め定められた電圧値の最小から最大までの基準範囲内であるか否かを判断し、基準範囲内であると判断されると、ステップS28で皮膚タイプ6におけるA/D変換データの時系列データである脈波データを波形データとしてRAM39に格納し、ステップS29で格納された脈波データに基づいて、脈拍数などの生体情報を検出するための検出処理を行い、ステップS30で脈波観測が終了すれば、メインフローに戻る。
【0092】
このように、この生体情報検出方法によれば、発光素子6aによって人体の皮膚組織を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて皮膚Hに照射し、この照射されて皮膚H内で散乱した観測光を受光感度が制御可能な受光素子9aで受光し、皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を測定するので、測定者の皮膚Hに含まれているメラニン素子の密度を知ることができる。
【0093】
そして、この測定結果に基づいて、発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度とを制御するので、測定者の皮膚Hに含まれているメラニン色素の密度に応じて脈波を正確に測定することができ、このため、肌の色の濃さによって個人差が生じることなく、脈波などの生体信号を正確に測定することができ、このために、この測定された生体信号に対応する脈波データに基づいて、脈拍などの生体情報の検出を精度良く且つ確実に行うことができる。
【0094】
この場合、発光素子6aによって観測光を異なる発光量で予め定められている回数発光させて皮膚Hに照射し、この皮膚H内で散乱した観測光を受光素子9aでそれぞれ受光することにより、測定者の皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を知ることができる。これにより、皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度に応じて、測定者の皮膚タイプが6段階のいずれであるかを判断することができる。また、測定者の皮膚タイプの判断結果に基づいて、発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度とを測定者の皮膚タイプに応じて設定することにより、測定者の皮膚タイプに応じて脈波を正確に観測することができる。
【0095】
すなわち、発光素子6aは、測定者の皮膚タイプに応じて発光量が制御され、また受光素子9aからA/Dコンバータ48で構成される受光回路の受光感度が制御されるので、皮膚Hの表皮H2内にメラニン色素が多く含まれている場合でも、皮膚H内で散乱されて受光素子9aに至る観測光は、真皮H1の深さの範囲内で散乱された観測光に限定することができる。
【0096】
このため、図14に示したように、皮膚H内で散乱されて受光素子9aに入射する観測光は、これに含まれる真皮H1の下側の皮下組織に到達した観測光の量を少なく抑えることができる。このときに、皮下組織以下の生体組織の光学特性の変動(体動に伴う光学特性の変動)によるノイズの影響を受けずに、真皮H1中の吸光物質であるヘモグロビンHEの量的変動を受光することができる。このため、肌の色の濃さによって個人差が生じることなく、脈波を正確に観測することができる。
【0097】
また、この生体情報検出装置5によれば、人体の皮膚組織を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を発光素子6aによって発光させて皮膚Hに照射させる観測光照射手段(光電信号検出部26、発光部駆動回路27)と、この観測光照射手段によって照射されて皮膚H内で散乱した観測光を受光素子9aで受光して電気信号に変換して出力する散乱光検出手段(光電信号検出部26、I/V変換回路29、基準電圧発生回路30、)と、発光素子6aを予め定められている発光量の光で発光させ、受光素子9aで受光した受光量に応じて皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を測定し、この測定結果に基づいて発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度を制御して皮膚を観測する制御手段(制御装置25、CPU37、発光制御回路28、受光制御回路31)と、を備えているので、上述したように肌の色の濃さによって個人差が生じることなく、脈波などの生体信号を正確に測定することができ、このために、この測定された生体信号に対応する脈波データに基づいて、脈拍などの生体情報の検出を精度良く且つ確実に行うことができる。
【0098】
この場合、制御手段は、発光素子6aを皮膚タイプ1〜6ごとに異なる発光量で予め定められている回数発光させて皮膚Hに照射させ、この照射されて皮膚H内で散乱した観測光を受光素子9aでそれぞれ受光し、その受光量に応じて皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を測定する測定手段(制御装置25、CPU37、発光制御回路28、受光制御回路31)を備えているので、測定者の皮膚Hに含まれているメラニン色素の密度を測定することができる。
【0099】
また、この制御手段は、測定手段による測定結果に応じて皮膚Hのタイプが6段階のいずれであるかを判断する判断手段(制御装置25、CPU37、発光制御回路28、受光制御回路31)を備えているので、測定者の皮膚に含まれているメラニン色素の密度に応じて、測定者の皮膚タイプを6段階のいずれであるかを確定することができる。
【0100】
さらに、この制御手段は、判断手段による判断結果に基づいて発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度とを6段階の皮膚タイプのいずれかに設定して脈波を観測する観測手段(制御装置25、CPU37、発光制御回路28、受光制御回路31)を備えているので、測定者の皮膚タイプに応じて発光素子6aによる発光量を正確に設定することができると共に、測定者の皮膚タイプに応じた受光素子9aの受光感度で観測光を受光することができ、これにより極めて正確に脈波を観測することができる。
【0101】
ところで、この生体情報検出装置5では、発光素子6aによって特定波長帯域の観測光を発光させると、その観測光を導光部材7によって皮膚Hに環状に拡散させて照射させることができるので、観測光を皮膚Hの広い範囲に均一に照射させることができ、この照射された環状の照射領域E内の中央部に対応して配置された受光素子9aによって皮膚H内で散乱された観測光を受光することができるので、観測光を効率良く安定して受光素子9aで受光することができる。
【0102】
このため、発光素子6aからの観測光を皮膚Hの広い範囲に均一に照射させることができると共に、発光素子6aからの観測光を皮膚Hに照射する照射光路と、皮膚Hで散乱された観測光を受光する受光光路とを、完全に分離させることができるので、皮膚Hに拡散照射された観測光を受光素子9aで効率良く安定して受光することができ、これにより脈波などの生体信号を正確に測定することができる。
【0103】
このように、真皮H1内に入射した観測光は、スポット的に一部分に照射される場合に比べて、リング状の広い面積に均一に照射されるので、観測光が照射される真皮H1中の吸光物質であるヘモグロビンの量を多くすることができ、これにより真皮H1中の生体組織におけるヘモグロビンの量的な変動の検出感度を改善することができる。
【0104】
また、受光部9の入射面である下面には、特定波長帯域の光を透過する光学フィルタ20が設けられていることにより、この光学フィルタ20によって外来光などの不要な光が受光部9に照射されるのを軽減することができる。これにより、発光部6で発光されて皮膚H内で散乱された観測光のみを確実に受光部9で受光させることができるので、これによっても正確に生体組織を測定することができ、人体の脈波の測定精度を高めることができる。
【0105】
この場合、受光部9は、光学フィルタ20が透過する900nm程度の特定波長帯域の光に反応する分光感度特性を有しているので、光学フィルタ20を透過した特定波長帯域の光のみを正確に受光して光電変換することができる。このときには、太陽光などの外来光に含まれている不要な光が光学フィルタ20によって遮断され、外来光によって受光部9が変動するのを軽減することができるので、これによっても正確に生体組織を測定することができ、人体の脈波の測定精度を高めることができる。
【0106】
また、この腕時計では、腕時計ケース1内における裏蓋3に生体情報検出装置5を設けた構成であるから、腕時計ケース1を腕に取り付けて使用することができる。すなわち、腕時計ケース1を腕に取り付けると、裏蓋3が腕の皮膚Hに接触するので、この接触した裏蓋3の取付孔3bから露出した生体情報検出装置5の一部を皮膚Hに接触させることができる。このため、腕時計ケース1を腕に取り付けた状態で、何時でも何処でも容易に且つ簡単に生体信号を測定することができる。
【0107】
なお、前述した実施形態では、発光素子6aによって観測光を所定の発光量で発光させて皮膚Hに照射し、この皮膚H内で散乱した観測光を受光素子9aで受光して、測定者の皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を測定し、この測定結果に基づいて、発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度とを制御して、皮膚組織を観測する場合について述べたが、これに限らず、測定結果に基づいて発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度とのいずれか一方のみを制御して皮膚組織を観測しても良い。
【0108】
また、前述した実施形態では、皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を測定しているが、皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度のほかに、メラニン色素の濃度または量などの生体の状態を表す他の生体特性を測定するようにしても良い。また、皮膚H内含まれているメラニン色素の密度を測定するほかに、血液中のヘモグロビンの濃度、ヘモグロビンの酸素飽和度、皮膚組織中のグルコースの濃度などの他の生体の状態を測定するようにしても良い。
【0109】
さらに、前述した実施形態では、腕時計に適用した場合について述べたが、必ずしも腕時計である必要はなく、腕に装着して使用する腕装着型のものであれば良く、また必ずしも腕に装着して使用するものに限らず、指や足などの人体に装着して使用するものなどにも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 腕時計ケース
3 裏蓋
4 時計モジュール
5 生体情報検出装置
6 発光部
6a 発光素子
7 導光部材
8 観測光採込部
9 受光部
9a 受光素子
10 回路基板
25 制御装置
26 光電信号検出部
27 発光部駆動回路
28 発光制御回路
29 I/V変換回路
30 基準電圧発生回路
31 受光制御回路
37 CPU
38 ROM
39 RAM
45 第1D/Aコンバータ
46 定電流回路
47 第2D/Aコンバータ
48 A/Dコンバータ
If 発光電流
Ipd 受光電流
Vin 受光電圧
AD0、AD1 受光電圧値
H 皮膚
H1 真皮
H2 表皮
ME メラニン色素
HE ヘモグロビン
【技術分野】
【0001】
この発明は、人体の脈波などの生体を光学的に測定する生体情報検出方法、生体情報検出装置および人体装着機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の腕時計型の生体情報検出装置は、特許文献1に記載されているように、腕時計の裏蓋に所定波長の観測光を発光する発光素子と、この発光素子で発光されて生体で散乱された観測光を受光する受光素子とを備え、発光素子を間欠的に一定周期で一定時間発光させ、この発光素子のパルス発光に応じた生体からの散乱光を受光素子で受光して光電変換し、所定時間連続的に観測して得られた信号を周波数解析して脈波などの生体情報を測定するようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−353133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の生体情報検出装置では、発光素子を間欠的に一定周期で一定時間発光させ、この発光素子のパルス発光に応じた生体からの散乱光を受光素子で受光して光電変換し、この光電変換された信号を周波数解析して脈波などの生体情報を測定する構成であるから、皮膚の色の濃さによって測定値に差が生じるという問題がある。
【0005】
すなわち、人体の皮膚は、表面側のメラニン色素を含む表皮と、その内側で脈波の観測対象である毛細血管を含む真皮と、この真皮の内側に位置する皮下組織とからなり、表皮に含まれているメラニン色素の密度は肌の色の濃さによって個人差があり、肌の色の濃い人ほど表皮にメラニン色素が多く含まれているため、肌の色の濃い人ほどメラニン色素によって観測光が吸収されてしまう。
【0006】
このため、従来の生体情報検出装置では、発光素子によって観測光を皮膚に間欠的に一定周期で一定時間照射しても、肌の色の濃い人は毛細血管を含む真皮まで届いて真皮の組織中で散乱・吸収を繰り返し、再び表皮を透過して受光素子に到達する観測光が微弱であり、十分に観測光を受光素子によって受光することができず、肌の色の濃さによって測定値に差が生じ、脈波などの生体情報を肌の色の濃さに応じて正確に測定することができない。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、肌の色の濃さによって個人差が生じることなく、脈波などの生体を正確に測定することができる生体情報検出方法、生体情報検出装置および人体装着機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、発光素子によって人体の皮膚組織を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて前記皮膚に照射し、この照射されて前記皮膚内で散乱した前記観測光を受光感度が制御可能な受光素子で受光することにより、前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定する第1のステップと、この第1のステップで測定された測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する第2のステップと、この第2のステップにより制御された制御結果に基づいて、前記メラニン色素の密度に対応する生体情報を検出する生体情報検出ステップと、を備えていることを特徴とする生体情報検出方法である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、発光素子によって生体を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて前記生体に照射し、この照射されて前記生体内で散乱した前記観測光の散乱光を受光感度が制御可能な受光素子で受光し、前記生体の状態を測定する第1のステップと、この第1のステップにより測定された測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する第2のステップと、この第2のステップにより制御された制御結果に基づいて、前記生体の状態を示す生体情報を検出する生体情報検出ステップと、を備えていることを特徴とする生体情報検出方法である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記第1のステップが、前記発光素子によって前記観測光を異なる発光量で予め定められている回数発光させて前記皮膚に照射する照射ステップと、この照射ステップによりそれぞれ照射されて皮膚内で散乱した前記観測光を前記受光素子でそれぞれ受光する受光ステップと、この受光ステップにより受光された散乱光に基づいて前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定する密度測定ステップと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の生体情報検出方法である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記第2のステップが、前記第1のステップによる前記測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度とを前記複数段階の皮膚タイプのいずれかに対応するようにそれぞれ設定して、前記皮膚組織を観測する観察ステップを備えていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の生体情報検出方法である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、人体の皮膚組織を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を発光素子によって発光させて前記皮膚に照射させる観測光照射手段と、この観測光照射手段によって照射されて前記皮膚内で散乱した前記観測光を受光素子で受光して電気信号に変換して出力する散乱光検出手段と、前記発光素子を予め定められている発光量で発光させ、この発光した観測光を前記受光素子で受光し、その受光量に応じて前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定し、且つこの測定結果に基づいて前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する制御手段と、この制御手段により制御された制御結果に基づいて、前記メラニン色素の密度に対応する生体情報を検出する生体情報検出手段と、を備えていることを特徴とする生体情報検出装置である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、発光素子によって生体を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて前記生体に照射し、この照射されて前記生体内で散乱した前記観測光の散乱光を受光感度が制御可能な受光素子で受光し、前記生体の状態を測定する測定手段と、この測定手段により測定された測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する制御手段と、この制御手段により制御された制御結果に基づいて、前記生体の状態を示す生体情報を検出する生体情報検出手段と、を備えていることを特徴とする生体情報検出方法である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記測定手段が、前記発光素子を異なる発光量で予め定められている回数発光させて前記皮膚に照射させ、この照射されて前記皮膚内で散乱した前記観測光を前記受光素子でそれぞれ受光し、この受光量に応じて前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定する密度測定手段を備え、前記制御手段は、前記測定手段による測定結果に応じて前記皮膚のタイプが複数段階のいずれであるかを判断する判断手段と、この判断手段による判断結果に基づいて前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を前記複数段階の皮膚タイプのいずれかに対応するようにそれぞれ設定して前記皮膚組織を観測する観測手段と、を備えていることを特徴とする請求項5に記載の生体情報検出装置である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載された生体情報検出装置を人体に装着する機器本体に設けたことを特徴とする人体装着機器である。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、発光素子によって観測光を予め定められている発光量の光で皮膚に照射し、この皮膚内で散乱された観測光を受光感度が制御可能な受光素子で受光することにより、観測者の皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定し、この測定したメラニン色素の密度に応じて発光素子の発光量と受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御することができる。このために、脈波などの皮膚組織を観測者の肌の色の濃さに応じて測定することができる。このため、肌の色の濃さによって個人差が生じることなく、脈波などの生体信号を正確に測定することができる。
【0017】
また、この発明によれば、発光素子によって生体を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて前記生体に照射し、この照射されて前記生体内で散乱した前記観測光の散乱光を受光感度が制御可能な受光素子で受光し、前記生体の状態を測定し、この測定された測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御した上で、この制御された制御結果に基づいて、前記生体の状態を示す生体情報を検出することができる。このため、精度の高い生体情報を確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明を適用した腕時計の一実施形態を示した拡大断面図である。
【図2】図1の腕時計の裏蓋を示した拡大平面図である。
【図3】図2のA−A矢視における拡大断面図である。
【図4】図3の生体情報検出装置を腕の皮膚に接触させて、脈波などの生体を光学的に測定する状態を示した拡大断面図である。
【図5】図4の皮膚を拡大して概略的に示した要部の拡大断面図である。
【図6】図3の生体情報検出装置の回路構成を示したブロック図である。
【図7】図5の皮膚における生体成分の主な吸収スペクトルを示した図である。
【図8】図5の皮膚に含まれているメラニン色素の密度に応じて皮膚タイプを6段階に分類して表で示した図である。
【図9】図8において発光素子の駆動電流に対する受光素子の受光量を皮膚タイプごとに示した図である。
【図10】図9において受光素子の受光電流とA/Dコンバータの入力信号(入力電圧)との関係を示した図である。
【図11】図8の皮膚タイプを確認するために第1D/Aコンバータの電圧(Vout1)と第2D/Aコンバータの電圧(Vout2)とに与える各電圧値を示したテーブル1の図である。
【図12】図11の皮膚タイプにおいて脈波を観測するために第1D/Aコンバータの電圧(Vout1)と第2D/Aコンバータの電圧(Vout2)とに与える各電圧値を示したテーブル2の図である。
【図13】図5において皮膚に含まれているメラニン色素の密度が少ない場合で、発光素子を所定の発光量で発光させた場合における観測光の照射状態を拡大断面図である。
【図14】図13において皮膚に含まれているメラニン色素の密度が多い場合で、発光素子による発光量のみを増大させた場合における観測光の照射状態を拡大断面図である。
【図15】図14において皮膚に含まれているメラニン色素の密度が多い場合で、発光素子による発光量と受光素子の受光感度との両方を調整した場合における観測光の照射状態を拡大断面図である。
【図16】図6の生体情報検出装置における基本的な動作フローを示した図である。
【図17】図16の皮膚タイプを確認する皮膚タイプ確認処理の動作フローを示した図である。
【図18】図16の脈波を観測する脈波観測処理の動作フローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図18を参照して、この発明を腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、図1に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の上部開口部には、時計ガラス2がパッキン2aを介して取り付けられており、この腕時計ケース1の下部には、裏蓋3が防水リング3aを介して取り付けられている。この腕時計ケース1の内部には、時計機能に必要な各種の部品を有する時計モジュール4が配置されている。
【0020】
また、この腕時計ケース1の裏蓋3の中央部には、図1〜図3に示すように、生体情報検出装置5が設けられている。この場合、裏蓋3は、ステンレスなどの金属からなり、図3および図4に示すように、その下面が中央部に向けて緩やかに湾曲しながら下側に突出している。この突出した中央部には、生体情報検出装置5を取り付けるための取付孔3bが上下に貫通して設けられている。
【0021】
生体情報検出装置5は、図3および図4に示すように、人体の皮膚を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を発光する発光部6と、この発光部6が発光した観測光を導いて皮膚Hに環状に拡散照射する導光部材7と、この導光部材7によって照射された環状の照射領域E内の中央部に位置する皮膚Hに接触する観測光採込部8と、この観測光採込部8における皮膚Hと反対側に位置する箇所に配置されて観測光採込部8で採り込んだ観測光を受光する受光部9とを備えている。
【0022】
この場合、発光部6と受光部9とは、図1〜図4に示すように、測定用の回路基板10の下面に設けられている。この回路基板10は、導光部材7の上部に位置して腕時計ケース1内に配置されている。導光部材7は、その下部が裏蓋3の取付孔3b内に嵌め込まれ、その上部が腕時計ケース1内の回路基板10の下面に配置されている。
【0023】
ところで、発光部6は、側面発光タイプのものであり、発光ダイオード(LED)などの発光素子6aを素子基板6bの側面に設けた構成になっている。この発光素子6aは、皮膚H内に含まれているメラニン色素が光を吸収する吸光度の低いλp=940nmの赤外線光を観測光として発光するように構成されている。この発光部6は、図3および図4に示すように、導光部材7の外周に対応する回路基板10の下面における12時、3時、6時、および9時の4方向に対応する4箇所にそれぞれ設けられている。
【0024】
導光部材7は、図3および図4に示すように、導光リング部11、拡散反射リング部12、拡散リング部13、および拡散照射リング部14を備えている。導光リング部11は、光透過性の高い透明な樹脂または透明なガラスなどの材料からなり、全体がほぼ正方形の平板状に形成されている。この導光リング部11は、その中央部に円形孔11aが形成されていると共に、各角部にそれぞれ発光部6が対応して配置される入射面11bが形成された構成になっている。
【0025】
この場合、導光リング部11は、各角部の入射面11bが12時、3時、6時、および9時の4方向に対応するように回路基板10の下面に配置されている。すなわち、導光リング部11の入射面11bは、図2に示すように、導光リング部11の各角部に半円形状に食い込んで形成された切欠凹部であり、この半円形状の切欠凹部内に発光部6の発光素子6aが挿入された状態で配置されている。これにより、導光リング部11は、発光素子6aで発光した観測光が導光リング部11の4つの角部から中央部の円形孔11aに向けて4方向から放射状に入射するように構成されている。
【0026】
また、この導光リング部11は、中央部の円形孔11aの内周面が出射面11cに形成されている。これにより、導光リング部11は、図4に示すように、発光部6で発光した観測光を4方向の各角部の入射面11bから内部に採り込み、この採り込んだ観測光を4方向から中央部の円形孔11aに向けて導き、この導いた観測光を円形孔11aの内周面である出射面11cから放出するように構成されている。
【0027】
この場合、導光リング部11の外表面には、図3および図4に示すように、各角部の入射面11bおよび円形孔11aの内周面である出射面11cを除いて、導光リング部11の内部に入射した観測光が導光リング部11の外部に漏れるのを防ぐための第1反射層15がアルミなどの金属蒸着やめっきによって設けられている。
【0028】
また、拡散反射リング部12は、図3および図4に示すように、光拡散性を有する白濁または乳白色のアクリル樹脂などの合成樹脂からなり、全体がほぼ円形のリング形状に形成されている。この拡散反射リング部12は、その厚みが導入リング部11とほぼ同じ厚みに形成され、導光リング部11の円形孔11a内に配置されている。この場合、拡散反射リング部12は、その外周面が入射面12aに形成され、この入射面12aが導光リング部11の円形孔11aの内周面である出射面11cに密着して配置されるように構成されている。
【0029】
また、この拡散反射リング部12の下面は、図3および図4に示すように、その外周面の入射面12aから採り込んだ観測光を皮膚Hに向けて放出する出射面12bに形成されている。さらに、この拡散反射リング部12の内周部には、その外周面の入射面12aから採り込んだ観測光を下面の出射面12bに向けて反射する反射面12cが環状に連続して形成されている。この反射面12cは、逆円錐面の一部つまり下側に向けて先細になる逆円錐面の一部に形成されている。
【0030】
さらに、この拡散反射リング部12の外表面には、図3および図4に示すように、外周面の入射面12aおよび下面の出射面12bを除いて、拡散反射リング部12の内部に入射した観測光が拡散反射リング部12の外部に漏れるのを防ぐと共に、後述する受光部9とを光学的に分離するための第2反射層16がアルミなどの金属蒸着やめっきによって設けられている。
【0031】
これにより、拡散反射リング部12は、導光リング部11の内周面である出射面11cから放出された観測光を外周面の入射面12aから内部に採り込み、この採り込んだ観測光を拡散反射リング部12の環状に沿って導きながら拡散すると共に、内周部に設けられた反射面12cによって下面の出射面12bに向けて反射し、この拡散反射された観測光を下面の出射面12bから下側に放出するように構成されている。
【0032】
拡散リング部13は、図3および図4に示すように、光拡散性を有する合成樹脂からなり、全体がほぼ円形のリング状に形成されている。この拡散リング部13は、その厚みが薄いシート状に形成され、拡散反射リング部12の下面の出射面12bに密着して配置されている。この拡散リング部13の外周面および内周面の各周面にも、拡散反射リング部12と同様、入射した観測光が拡散リング部13の外部に漏れるのを防ぐと共に、後述する受光部9とを光学的に分離するための第2反射層16がアルミなどの金属蒸着やめっきによって設けられている。
【0033】
これにより、拡散リング部13は、図3および図4に示すように、拡散反射リング部12の出射面12bから放出された観測光を上面から内部に採り込み、この採り込んだ観測光を拡散リング部13の環状に沿って導きながら均一になるように十分に拡散し、この拡散された観測光を下面から皮膚Hに向けて斑なく均等に放出するように構成されている。
【0034】
拡散照射リング部14は、図3および図4に示すように、拡散性を有するアクリル樹脂などの合成樹脂からなり、全体がほぼ円形のリング形状に形成されている。この拡散照射リング部14は、拡散反射リング部12の下側に拡散リング部13を介して配置され、裏蓋3の取付孔3b内に第1防水パッキン17を介して嵌め込まれている。この場合、拡散照射リング部14は、その外周が拡散反射リング部12の外周よりも少し大きく、内周が拡散反射リング部12の内周よりも少し小さく形成されている。
【0035】
これにより、拡散照射リング部14は、拡散反射リング部12から放出されて拡散リング部13で斑なく環状に拡散された観測光を上面から採り込み、この採り込んだ観測光を更に拡散し、この拡散された観測光を下面から環状に放出させることにより、観測光を皮膚Hにリング状の広い面積に均一に拡散照射するように構成されている。
【0036】
この場合にも、拡散照射リング部14の外周面および内周面には、図3および図4に示すように、その上面および下面を除いて、拡散照射リング部14の内部に入射した観測光が拡散照射リング部14の外部に漏れるのを防ぐと共に、後述する受光部9とを光学的に分離するための第3反射層18がアルミなどの金属蒸着やめっきによって設けられている。
【0037】
また、この拡散照射リング部14は、裏蓋3の取付孔3bに設けられた突起部3cに当接して腕時計ケース1内に押し込まれないように位置規制されている。この場合、拡散照射リング部14は、図3および図4に示すように、その下面が裏蓋3の下面における最下部と同じ高さで配置され、これにより拡散照射リング部14の下面と裏蓋3の下面とが段差を生じることなく、裏蓋3の下面と共に皮膚Hに接触するように構成されている。
【0038】
この拡散照射リング部14の内側には、図3および図4に示すように、皮膚H内に照射された観測光を採り込むための観測光採込部8が設けられている。この観測光採込部8は、高屈折率の透明な樹脂または透明なガラスなどの材料からなり、全体が円形の平板状に形成されている。この場合、観測光採込部8は、その厚みが拡散照射リング部14とほぼ同じ厚みに形成されている。これにより、観測光採込部8と拡散照射リング部14とは、その各上面および各下面がそれぞれほぼ同一平面上に配置されている。
【0039】
また、この観測光採込部8は、図3および図4に示すように、その外周面と拡散照射リング部14の内周面との間に第2防水パッキン19を介して拡散照射リング部14内に取り付けられている。この観測光採込部8は、その下面が拡散照射リング部14によって照射されたリング状の照射領域E内の中央部に位置する皮膚Hに接触するように構成されている。これにより、観測光採込部8は、皮膚H内に照射された観測光を下面から採り込み、この採り込んだ散乱光を上面から受光部9に向けて照射させるように構成されている。
【0040】
受光部9は、観測光採込部8で採り込んだ観測光を受光して光電変換するものであり、シリコンフォトダイオードなどの受光素子9aを素子基板9bの下面に下向きに設けた構成になっている。この受光部9は、図3および図4に示すように、受光素子9aがホルダ部21内に収納された状態で、観測光採込部8における皮膚Hと反対側(図3では上方)に位置する箇所、つまり観測光採込部8の光軸上における焦点位置付近に位置する箇所の回路基板10の下面に設けられている。
【0041】
この受光部9の受光素子9aは、波長(λ)が940nm程度の特定波長帯域の光に最も強く反応する分光感度特性を有している。すなわち、この受光素子9aは、波長が940nm以下の波長帯域の光に対してはその波長が短くなるに伴って徐々に受光感度が低下し、逆に波長が940nm程度以上の波長帯域の光に対しては急激に受光感度が低下し、波長が940nmの波長の光に対して最も受光感度が高くなるように構成されている。
【0042】
この受光素子9aの下側、つまり受光素子9aと観測光採込部8との間には、図3および図4に示すように、光学フィルタ20が、受光素子9aの下側に位置するホルダ部21内に配置されている。この光学フィルタ20は、波長が900nm以上の特定波長帯域の光を透過し、波長が900nm以下の波長帯域の光を遮断することにより、受光素子9aが太陽光などの外来光による測定変動の影響を軽減するように構成されている。
【0043】
この場合、受光部9のホルダ部21は、アルミなどの遮光性を有する金属からなり、その表面に反射機能を有するアルマイト処理が施され、これにより受光素子9aを光学的に保護するように構成されている。このホルダ部21は、図3および図4に示すように、発光部6の厚み(上下方向の長さ)と同じ厚みで形成され、拡散反射リング部12の中央部内に配置されている。
【0044】
これにより、発光部6、導光リング部11、拡散反射リング部12、および受光部9は、これらの厚みが発光部6の厚み(上下方向の長さ)内に形成され、これら各上下面がほぼ同一平面上に配置され、この状態で全体が約1mmの厚みで平面的に配置されている。また、光学フィルタ20は、その厚みが拡散リング部13とほぼ同じ厚みで形成され、拡散リング部13と共に裏蓋3の内面(図3では上面)とほぼ同一平面上に配置されるように構成されている。
【0045】
次に、図6に示されたブロック図を参照して、この生体情報検出装置5の回路構成について説明する。
この生体情報検出装置5の回路構成は、制御装置25と、発光素子6aおよび受光素子9aを有する光電信号検出部26と、この光電信号検出部26の発光素子6aを駆動する発光部駆動回路27と、この発光部駆動回路27によって駆動される発光素子6aの発光量を制御する発光制御回路28とを備えている。
【0046】
また、この生体情報検出装置5の回路構成は、図6に示すように、光電信号検出部26の受光素子9aから出力された電流信号(受光電流Ipd)を電圧信号(受光電圧Vin)に変換するI/V変換回路29と、このI/V変換回路29に基準電圧(Vref1)を与えるための基準電圧発生回路30と、I/V変換回路29からの出力信号(受光電圧Vin)を取り込んで制御装置25に与えると共に受光素子9aの受光感度を制御する受光制御回路31とを備えている。
【0047】
さらに、この生体情報検出装置5の回路構成は、脈波などの生体の測定結果を生体情報として表示する表示部32、各部に電源電圧を供給する電源部33と、ユーザによって入力操作されるスイッチ部34とを備えている。電源部33は、発光部駆動回路27に電源を供給するほか、制御装置25に電源を供給する制御電源回路35と、発光制御回路28、基準電圧発生回路30、受光制御回路31などのアナログ回路に電源を供給するアナログ電源回路36とを備えている。
【0048】
ところで、制御装置25は、回路の全体的な制御を行うCPU(中央演算処理装置)37と、予め定められたプログラムが格納されたROM(リードオンリーメモリ)38と、随時書き込み読み出し可能なRAM(ランダムアクセスメモリ)39と、時間を計測する計時回路40と、スイッチ部34の操作に応じてスイッチ信号を出力するスイッチ回路41と、表示部32を駆動する表示駆動回路42と、各部に動作信号を出力すると共に受光制御回路31からの出力信号を取り込むIOポート43とを備え、これらがCPU37とバスライン44によって接続されている。
【0049】
CPU37は、LSI(大規模集積回路)などの集積回路である。光電信号検出部26は、特定波長帯域の観測光を発光する発光素子6a、および、この発光素子6aで発光された観測光が皮膚Hに照射されて皮膚H内で散乱・吸収された際に、その観測光を受光し、その受光量に応じて電流信号(受光電流Ipd)を出力する受光素子9aなどを有している。この場合、発光素子6aは、12時、3時、6時、および9時の4方向に対応する4箇所に配置されており、この4つの発光素子6aは、直列に接続されている。
【0050】
発光部駆動回路27は、電源部33からの電源電圧を発光素子6aの駆動に必要な電圧まで昇圧するステップアップ電源回路であり、その入力端子ENが制御装置25の出力端子(OUT1)に接続されている。発光制御回路28は第1D/Aコンバータ45と定電流回路46とを備えている。定電流回路46はオペアンプ46aとトランジスタTrと抵抗Raとで構成されている。
【0051】
第1D/Aコンバータ45は、その制御端子(SYNCB、SCLK、DIN)が制御装置25の出力端子(OUT2〜OUT4)にそれぞれ接続され、制御装置25との間でシリアル方式によるデータ通信が可能になっている。また、この第1D/Aコンバータ45は、その出力端子(Vout1)が定電流回路46のオペアンプ46aに接続され、アナログ電源回路36から与えられた電源電圧とグランドとの間で10ビットの分解能で分割され、この分割されたいずれかの電圧(Vout1)をオペアンプ46aに与える。
【0052】
これにより、光電信号検出部26の発光素子6aに流れる発光電流(If)は、第1D/Aコンバータ45から出力された電圧値(Vout1)を定電流回路46の抵抗値(Ra)で割った値(If=Vout1/Ra)である。このため、発光素子6aに流れる発光電流(If)は、定電流回路46の抵抗Raが一定あることにより、第1D/Aコンバータ45の出力端子からの電圧値(Vout1)によって変化し、この変化に応じて光電信号検出部26の発光素子6aによる発光量を調整する。
【0053】
一方、光電信号検出部26の受光素子9aから出力された受光電流(Ipd)を受光電圧(Vin)に変換するI/V変換回路29は、オペアンプ29aと抵抗Rfとで構成されている。このオペアンプ29aには、光電信号検出部26の受光素子9aと基準電圧発生回路30の出力端子(Vout)とが接続されている。また、受光制御回路31は、第2D/Aコンバータ47とA/Dコンバータ48とで構成されている。
【0054】
第2D/Aコンバータ47は、その制御端子(SYNCB、SCLK、DIN)が制御装置25の出力端子(OUT5〜OUT7)にそれぞれ接続され、制御装置25との間でシリアル方式によるデータ通信が可能になっている。A/Dコンバータ48は、その制御端子(CSB、DCLK)が制御装置25の出力端子(OUT8〜OUT9)にそれぞれ接続され、制御装置25との間でシリアル方式によるデータ通信が可能になっている。
【0055】
このA/Dコンバータ48は、その入力端子(Vref2)に第2D/Aコンバータ47の出力端子(Vout2)が接続され、基準電圧(Vout2)が与えられている。また、このA/Dコンバータ48は、その入力端子(Vin)にI/V変換回路29の出力端子が接続されていると共に、出力端子(DOUT)が制御装置25の入力端子(IN)に接続されている。
【0056】
これにより、A/Dコンバータ48は、光電信号検出部26の受光素子9aに発生してI/V変換回路29で変換された受光電圧(Vin)が入力端子(Vin)に与えられる。このA/Dコンバータ48に与えられる受光電圧(Vin)は、光電信号検出部26の受光素子9aに発生した受光電流(Ipd)とI/V変換回路29の抵抗値(Rf)との積に基準電圧発生回路30からの基準電圧(Vref1)を加えた値(Vin=Ipd×Rf+Vref1)である。
【0057】
また、このA/Dコンバータ48は、I/V変換回路29から与えられた受光電圧(Vin)を第2D/Aコンバータ47から与えられた電圧(Vref2)とグランドとの端子間電圧に基づいて16ビットでA/D変換し、この16ビットでA/D変換されたA/D変換データとして出力端子(DOUT)から制御装置25の入力端子(IN)に与える。
【0058】
これにより、CPU37は、A/Dコンバータ48から出力された受光素子9aからの受光信号レベルをサンプルホールドしてA/D変換データを確定する。この場合、CPU37は、発光部駆動回路27が電源部33からの電源電圧を発光素子6aの駆動に必要な電圧まで昇圧する昇圧動作を停止させる。
【0059】
また、発光素子6aの発光量は、駆動電流(If)と比例関係にあり、定電流回路46の抵抗(Ra)が一定(例えばRa=100Ω)である。これにより、第1D/Aコンバータ45の出力端子(Vout1)から出力される発光素子6aの駆動信号(Vout1)は、CPU37によって制御されて第1D/Aコンバータ45に与えられる電源電圧(VDDA)とグランドとの間で10ビットに分割され、この分割された電圧信号が与えられ、発光素子6aの発光量を制御する。
【0060】
受光素子9aは、発光素子6aで発光されて観測光が皮膚Hに照射され、この照射された観測光が皮膚H内で散乱・吸収され、その散乱光を受光して受光電流(Ipd)を発生する。この場合、皮膚Hの散乱条件および血液の状態が一定である場合には、皮膚Hのタイプに応じて受光素子9aに発生する受光電流(Ipd)が異なる。この皮膚Hのタイプとは、皮膚Hの表皮H2に含まれているメラニン色素の密度によって分類されている。
【0061】
すなわち、生体組織成分の吸光スペクトルは、図7に示すように、600nm以下の波長でヘモグロビンHEおよびメラニン色素MEの吸光度が高い。皮膚Hの表皮H2には、真皮H1以下の組織を有害な紫外線から保護するため、メラニン色素MEが含まれている。このメラニン色素MEの含有密度は、肌の色の濃さによって大きく異なり、図8に示すように、6段階の皮膚タイプ1〜6に分類されている。
【0062】
この図8は、6段階に皮膚タイプを分類した場合における各皮膚タイプ1〜6と、これに対応するメラニン色素の含有指数と、各皮膚タイプ1〜6ごとに観測光が表皮H2を透過する透過率との関係を示している。皮膚タイプ1〜6のうち、皮膚タイプ2は白色肌、皮膚タイプ3は黄色肌、皮膚タイプ5は黒色肌である。この場合、観測光としては、例えば波長(λ)が520nmの緑色光と、波長が940nmの近赤外光とである。波長が520nmの緑色光では、皮膚タイプ5の黒色肌の場合、ほとんど透過しないので、観測光としての使用は不適当であることが判る。
【0063】
また、波長が940nmの近赤外光では、表皮H2に含まれているメラニン色素の密度が少ない皮膚タイプ1の白色肌の場合、表皮H2を透過して皮膚Hの内部で散乱された観測光は、再び表皮H2を透過して受光素子9aで受光されるが、観測光の透過率が99.3%程度と高いので、発光部6および受光部9の両方の部分において、表皮H2での吸収は無視できるので、図13に示すように、発光部6から照射され皮膚Hの内部で散乱されて受光素子9aに入射する観測光は主に真皮H1の深さの範囲内で散乱された観測光に限定できる。
【0064】
一方、表皮H2に含まれているメラニン色素の密度が多い皮膚タイプ5の黒色肌の場合には、表皮H2の透過率が46%程度であり、表皮H2を透過して皮膚組織の内部で散乱された観測光も、再び表皮H2を透過して受光素子9aで受光されるので、皮膚タイプ1の白色肌の場合における透過率を100%とすると、皮膚タイプ5の黒色肌の場合には、約20%(1/5程度)になる。
【0065】
この皮膚タイプ5の黒色肌の場合で、受光素子9aによる受光量を確保するために、受光感度を皮膚タイプ1に保った条件で、発光素子6aのみを調整して発光量を増加させた場合には、図14に示すように、発光素子6aからの観測光が真皮H1の下側の皮下組織まで深く照射され、真皮H1における血液の脈動信号(つまり心臓の拍動に伴う脈動信号)以外のノイズ(例えば体動に伴う脈動)の影響を受けやすくなる。
【0066】
そこで、この生体情報検出装置5では、波長が940nmの近赤外光を用いて皮膚タイプ5の黒色肌において、受光素子9aで受光する受光量を皮膚タイプ1の白色肌と同程度にするため、発光素子6aの発光量を5倍程度増加させると共に、受光素子9aの受光感度を同程度に高めることにより、図15に示すように、観測光を真皮H1に限定して照射させ、且つ受光素子9aで観測光を十分に受光するように構成している。
【0067】
これにより、受光素子9aで受光されて発生する受光電流(Ipd)は、皮膚Hの散乱条件および血液の状態が一定である場合に、図9に示すように、各皮膚タイプ1〜5ごとに受光量に比例して増加する。すなわち、受光素子9aで発生した受光電流(Ipd)は、I/V変換回路29のオペアンプ29aからA/Dコンバータ48に出力電圧(Vin)として与えられる。
【0068】
このA/Dコンバータ48に与えられる出力電圧(Vin)は、光電信号検出部26の受光素子9aに発生した受光電流(Ipd)とI/V変換回路29の抵抗値(Rf)との積に基準電圧発生回路30の基準電圧(Vref1)を加えた値(Vin=Ipd×Rf+Vref1)であることから、図10に示すように、基準電圧(Vref1)を接点として、傾きがI/V変換回路29の抵抗値(Rf)の直線で表される。
【0069】
この場合、A/Dコンバータ48に供給される基準電位(Vref2)は、CPU37によって制御されて第2D/Aコンバータ47の出力端子(Vout2)から出力されており、この第2D/Aコンバータ47の入力電圧(VDDA)とグランドとの間で8ビットの分解能で分割され、この分割された電圧信号(Vout2)が出力される。A/Dコンバータ48は、第2D/Aコンバータ47からの出力電圧(Vout2)に基づく基準電位(Vref2)とグランドとの間を16ビットの分解能で、I/V変換回路29からの出力電圧(Vin)をA/D変換する。
【0070】
これにより、測定者の皮膚タイプ1〜6に応じて発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光量とを制御することにより、測定者の皮膚タイプ1〜6およびその皮膚タイプ1〜6に応じた生体組織の観測が可能になる。従って、発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光量とを制御するための各電圧、つまり第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)と第2D/Aコンバータ47の出力電圧(Vout2)とを、図11および図12に示すように、測定者の皮膚タイプ1〜6に応じた基準データとして設定して、RAM39に予め登録しておく。
【0071】
すなわち、図11に示されたテーブル1の基準データは、測定者の皮膚タイプ1〜6を測定するための第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)と第2D/Aコンバータ47の出力電圧(Vout2)との基準データであり、RAM39のテーブル1に登録されている。また、図12に示されたテーブル2の基準データは、皮膚タイプ1〜6に応じた生体組織を観測するための第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)と第2D/Aコンバータ47の出力電圧(Vout2)との基準データであり、RAM39のテーブル2に登録されている。
【0072】
次に、図16を参照して、この生体情報検出装置5によって生体組織を観測する生体組織観測処理の基本的な動作フローについて説明する。
この生体組織観測処理の動作がスタートすると、CPU37は、発光素子6aによって人体の皮膚組織を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて皮膚Hに照射し、この照射されて皮膚H内で散乱した観測光を受光感度が制御可能な受光素子9aで受光することにより、皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を測定し、観測者の皮膚タイプを確認する(ステップS1)。この後、ステップS1で測定された測定結果に基づいて、発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度とを制御して脈波を観測し(ステップS2)、この動作を終了する。
【0073】
次に、図17を参照して、図16のステップS1にて示した観測者の皮膚タイプを確認する皮膚タイプ確認処理の動作フローについて説明する。
この皮膚タイプ確認処理の動作がスタートすると、CPU37は、RAM39に登録されているテーブル1の内容を読み出し、このテーブル1の内容に基づいて第2D/Aコンバータ47の出力端子(Vout2)から出力される電圧を制御し、A/Dコンバータ48に皮膚タイプ2に対応する電圧(Vref2=2.048mV)を与えて、受光素子9aの受光感度を皮膚タイプ2の受光感度に設定する(ステップS11)。
【0074】
この後、CPU37は、テーブル1の内容に基づいて第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)を皮膚タイプ2に更新し(ステップS12)、第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)を皮膚タイプ2の電圧(Vout1=104.6mV)に近い電圧(Vout1=105.0mV)にして発光素子6aを皮膚タイプ2に対応する発光量で点灯させる(ステップS13)。
【0075】
すると、発光素子6aで発光した観測光は、観測者の皮膚Hに照射され、この照射された観測光は皮膚H内で散乱・吸収され、この皮膚H内で散乱された観測光は受光素子9aに受光される。これにより、受光素子9aには、その受光量に応じて受光素子9aに受光電流(Ipd)が発生する。この発生した受光電流(Ipd)はI/V変換回路29によって電圧信号としてA/Dコンバータ48の入力端子(Vin)に与えられる。
【0076】
この入力端子(Vin)に入力された電圧信号は、A/Dコンバータ48により、対応するデジタルの受光電圧値(AD0)に変換される(ステップS14)。CPU37は、この変換された受光電圧値(AD0)が予め定められている基準値(AD基準値)よりも大きいか否かを判断する(ステップS15)。このとき、受光電圧値(AD0)が基準値よりも大きい場合には、測定者の皮膚Hに含まれているメラニン色素の密度が皮膚タイプ2よりも少ないと判断し、測定者が皮膚タイプ1であると確定し(ステップS16)、メインフローに戻る。
【0077】
また、ステップS15で、受光電圧値(AD0)が基準値よりも小さい場合には、測定者の皮膚Hに含まれているメラニン色素の密度が皮膚タイプ2よりも多いと判断し、皮膚タイプを1段階繰り上げ(ステップS17)、この繰り上げられた皮膚タイプが6段階目の皮膚タイプ6であるか否かを判断し(ステップS18)、6段階目の皮膚タイプ6でなければ、ステップS12に戻り、ステップS12〜ステップS18の動作を皮膚タイプ3から皮膚タイプ6まで繰り返す。
【0078】
すなわち、ステップS17で皮膚タイプが1段階繰り上げられてステップS12に戻ると、このステップS12で皮膚タイプ3に更新し、ステップS13で第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)を皮膚タイプ3の電圧(Vout1=115.7mV)に誓い電圧(Vout1=116.0mV)にして発光素子6aを点灯させる。
【0079】
そして、受光素子9aに受光電流(Ipd)が発生し、この発生した受光電流(Ipd)がI/V変換回路29によって電圧信号としてA/Dコンバータ48の入力端子(Vin)に与えられると、ステップS14でCPU37がA/Dコンバータ48からの受光電圧値(AD0)を取り込み、ステップS15で取り込んだ受光電圧値(AD0)が基準値よりも大きいか否かを判断し、ステップS16で受光電圧値(AD0)が基準値よりも大きい場合には、測定者が皮膚タイプ2であると確定し、メインフローに戻る。
【0080】
また、ステップS15で、受光電圧値(AD0)が基準値よりも小さい場合には、ステップS17で皮膚タイプをさらに1段階繰り上げ、ステップS18で繰り上げられた皮膚タイプが6段階目の皮膚タイプ6であるか否かを判断し、6段階目の皮膚タイプ6でなければ、ステップS12に戻り、ステップS12〜ステップS18の動作を皮膚タイプ4から皮膚タイプ6まで繰り返す。これにより、測定者が皮膚タイプ1〜5のいずれであるかを確定する。
【0081】
次に、図18を参照して、図16のステップS2にて示した観測者の脈波を観測する脈波観測処理の動作フローについて説明する。
この脈波観測処理の動作がスタートすると、CPU37は、まず、皮膚タイプ確認処理に基づいて皮膚タイプ1〜5のいずれであるかを判断する(ステップS21)。
【0082】
そして、皮膚タイプ1〜5のいずれか(例えば皮膚タイプ3)であれば、RAM39に登録されているテーブル2の内容を読み出し、このテーブル2の内容に基づいて第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)と第2D/Aコンバータ47の出力電圧(Vout2)とを、皮膚タイプ1〜5のいずれか(例えば皮膚タイプ3)に対応する各電圧値(例えば皮膚タイプ3のV1=108mV、V2=1.91mV)に更新する(ステップS22)。
【0083】
この後、皮膚タイプ1〜5のいずれか(例えば皮膚タイプ3)に対応する電圧値に更新された第2D/Aコンバータ47の出力電圧(Vout2=1.91mV)をA/Dコンバータ48に入力電圧(Vref2)として与えて、受光素子9aの受光感度を調整する(ステップS23)。この後、皮膚タイプ1〜5のいずれか(例えば皮膚タイプ3)に対応する電圧値に更新された第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1=108mV)で発光素子6aを点灯させる(ステップS24)。
【0084】
すると、発光素子6aで発光した観測光は、測定者の皮膚タイプ(例えば皮膚タイプ3)に応じて発光量が制御され、また、受光素子9aからA/Dコンバータ48で構成される受光回路の受光感度が制御され、皮膚H内で散乱された観測光のうち、再び表皮H2を透過して受光素子9aで受光される観測光は皮膚Hの真皮H1における深さの範囲内で散乱された観測光に限定される。
【0085】
このとき、皮下組織以下の生体組織の光学特性の変動(体動に伴う光学特性の変動)によるノイズの影響を受けない条件で受光素子9aに到達する。これにより、受光素子9aは真皮H1中の吸光物質であるヘモグロビンHEの量的変動が、変動の主要因である観測光を受光する。受光素子9aには、その受光量に応じて受光電流(Ipd)が発生し、この発生した受光電流(Ipd)はI/V変換回路29によって電圧信号としてA/Dコンバータ48の入力端子(Vin)に入力される。
【0086】
この入力端子(Vin)に入力された電圧信号は、A/Dコンバータ48により、対応するデジタルの受光電圧値(AD1)に変換される(ステップS25)。CPU37は、この変換された受光電圧値(AD1)が、予め定められた電圧値の最小値から最大値までの基準範囲(AD1minからAD1maxまでの基準範囲)内であるか否かを判断する(ステップS26)。
【0087】
このとき、受光電圧値(AD1)が予め定められた電圧値の基準範囲内でなければ、測定エラーとなり、エラー処理を行う(ステップS27)。また、受光電圧値(AD1)が予め定められた電圧値の基準範囲内であれば、A/D変換データの時系列データである受光電圧値(AD1の値)を脈波データとしてRAM39に格納する(ステップS28)。この格納された脈波データに基づいて、脈拍数などの生体情報を検出するための検出処理を行う(ステップS29)。
【0088】
この後、脈波観測を終了するか否かを判断し(ステップS30)、スイッチ部34の操作によって終了信号が与えられると、脈波観測処理を終了して、メインフローに戻る。このとき、脈波観測処理の終了信号が与えられていない場合には、ステップS22に戻り、再びステップS22からステップS30の動作を繰り返して、再度、脈波測定を行う。
【0089】
ところで、ステップS21で、皮膚タイプ確認処理に基づいて皮膚タイプ1〜5のいずれでもなく、皮膚タイプが6段階目の皮膚タイプ6であると判断された場合には、RAM39に登録されているテーブル2を読み出し、このテーブル2に基づいて第1D/Aコンバータ45の出力電圧(Vout1)を更新し(ステップS31)、第2D/Aコンバータ47の出力電圧(Vout2)を皮膚タイプ6に対応する電圧値(Vref2=0.28mV)に設定する(ステップS32)。
【0090】
そして、皮膚タイプ6に対応する電圧値に設定された第2D/Aコンバータ47の出力電圧(Vout2)をA/Dコンバータ48に入力電圧(Vref2)として与えて、受光素子9aの受光感度を調整する(ステップS33)。この後、ステップS24に戻って再び発光素子6aを発光させ、ステップS25で受光素子9aが受光した受光電圧(Vin)をデジタルの受光電圧値(AD1)に変換する。
【0091】
そして、ステップS26で受光電圧値(AD1)が予め定められた電圧値の最小から最大までの基準範囲内であるか否かを判断し、基準範囲内であると判断されると、ステップS28で皮膚タイプ6におけるA/D変換データの時系列データである脈波データを波形データとしてRAM39に格納し、ステップS29で格納された脈波データに基づいて、脈拍数などの生体情報を検出するための検出処理を行い、ステップS30で脈波観測が終了すれば、メインフローに戻る。
【0092】
このように、この生体情報検出方法によれば、発光素子6aによって人体の皮膚組織を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて皮膚Hに照射し、この照射されて皮膚H内で散乱した観測光を受光感度が制御可能な受光素子9aで受光し、皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を測定するので、測定者の皮膚Hに含まれているメラニン素子の密度を知ることができる。
【0093】
そして、この測定結果に基づいて、発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度とを制御するので、測定者の皮膚Hに含まれているメラニン色素の密度に応じて脈波を正確に測定することができ、このため、肌の色の濃さによって個人差が生じることなく、脈波などの生体信号を正確に測定することができ、このために、この測定された生体信号に対応する脈波データに基づいて、脈拍などの生体情報の検出を精度良く且つ確実に行うことができる。
【0094】
この場合、発光素子6aによって観測光を異なる発光量で予め定められている回数発光させて皮膚Hに照射し、この皮膚H内で散乱した観測光を受光素子9aでそれぞれ受光することにより、測定者の皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を知ることができる。これにより、皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度に応じて、測定者の皮膚タイプが6段階のいずれであるかを判断することができる。また、測定者の皮膚タイプの判断結果に基づいて、発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度とを測定者の皮膚タイプに応じて設定することにより、測定者の皮膚タイプに応じて脈波を正確に観測することができる。
【0095】
すなわち、発光素子6aは、測定者の皮膚タイプに応じて発光量が制御され、また受光素子9aからA/Dコンバータ48で構成される受光回路の受光感度が制御されるので、皮膚Hの表皮H2内にメラニン色素が多く含まれている場合でも、皮膚H内で散乱されて受光素子9aに至る観測光は、真皮H1の深さの範囲内で散乱された観測光に限定することができる。
【0096】
このため、図14に示したように、皮膚H内で散乱されて受光素子9aに入射する観測光は、これに含まれる真皮H1の下側の皮下組織に到達した観測光の量を少なく抑えることができる。このときに、皮下組織以下の生体組織の光学特性の変動(体動に伴う光学特性の変動)によるノイズの影響を受けずに、真皮H1中の吸光物質であるヘモグロビンHEの量的変動を受光することができる。このため、肌の色の濃さによって個人差が生じることなく、脈波を正確に観測することができる。
【0097】
また、この生体情報検出装置5によれば、人体の皮膚組織を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を発光素子6aによって発光させて皮膚Hに照射させる観測光照射手段(光電信号検出部26、発光部駆動回路27)と、この観測光照射手段によって照射されて皮膚H内で散乱した観測光を受光素子9aで受光して電気信号に変換して出力する散乱光検出手段(光電信号検出部26、I/V変換回路29、基準電圧発生回路30、)と、発光素子6aを予め定められている発光量の光で発光させ、受光素子9aで受光した受光量に応じて皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を測定し、この測定結果に基づいて発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度を制御して皮膚を観測する制御手段(制御装置25、CPU37、発光制御回路28、受光制御回路31)と、を備えているので、上述したように肌の色の濃さによって個人差が生じることなく、脈波などの生体信号を正確に測定することができ、このために、この測定された生体信号に対応する脈波データに基づいて、脈拍などの生体情報の検出を精度良く且つ確実に行うことができる。
【0098】
この場合、制御手段は、発光素子6aを皮膚タイプ1〜6ごとに異なる発光量で予め定められている回数発光させて皮膚Hに照射させ、この照射されて皮膚H内で散乱した観測光を受光素子9aでそれぞれ受光し、その受光量に応じて皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を測定する測定手段(制御装置25、CPU37、発光制御回路28、受光制御回路31)を備えているので、測定者の皮膚Hに含まれているメラニン色素の密度を測定することができる。
【0099】
また、この制御手段は、測定手段による測定結果に応じて皮膚Hのタイプが6段階のいずれであるかを判断する判断手段(制御装置25、CPU37、発光制御回路28、受光制御回路31)を備えているので、測定者の皮膚に含まれているメラニン色素の密度に応じて、測定者の皮膚タイプを6段階のいずれであるかを確定することができる。
【0100】
さらに、この制御手段は、判断手段による判断結果に基づいて発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度とを6段階の皮膚タイプのいずれかに設定して脈波を観測する観測手段(制御装置25、CPU37、発光制御回路28、受光制御回路31)を備えているので、測定者の皮膚タイプに応じて発光素子6aによる発光量を正確に設定することができると共に、測定者の皮膚タイプに応じた受光素子9aの受光感度で観測光を受光することができ、これにより極めて正確に脈波を観測することができる。
【0101】
ところで、この生体情報検出装置5では、発光素子6aによって特定波長帯域の観測光を発光させると、その観測光を導光部材7によって皮膚Hに環状に拡散させて照射させることができるので、観測光を皮膚Hの広い範囲に均一に照射させることができ、この照射された環状の照射領域E内の中央部に対応して配置された受光素子9aによって皮膚H内で散乱された観測光を受光することができるので、観測光を効率良く安定して受光素子9aで受光することができる。
【0102】
このため、発光素子6aからの観測光を皮膚Hの広い範囲に均一に照射させることができると共に、発光素子6aからの観測光を皮膚Hに照射する照射光路と、皮膚Hで散乱された観測光を受光する受光光路とを、完全に分離させることができるので、皮膚Hに拡散照射された観測光を受光素子9aで効率良く安定して受光することができ、これにより脈波などの生体信号を正確に測定することができる。
【0103】
このように、真皮H1内に入射した観測光は、スポット的に一部分に照射される場合に比べて、リング状の広い面積に均一に照射されるので、観測光が照射される真皮H1中の吸光物質であるヘモグロビンの量を多くすることができ、これにより真皮H1中の生体組織におけるヘモグロビンの量的な変動の検出感度を改善することができる。
【0104】
また、受光部9の入射面である下面には、特定波長帯域の光を透過する光学フィルタ20が設けられていることにより、この光学フィルタ20によって外来光などの不要な光が受光部9に照射されるのを軽減することができる。これにより、発光部6で発光されて皮膚H内で散乱された観測光のみを確実に受光部9で受光させることができるので、これによっても正確に生体組織を測定することができ、人体の脈波の測定精度を高めることができる。
【0105】
この場合、受光部9は、光学フィルタ20が透過する900nm程度の特定波長帯域の光に反応する分光感度特性を有しているので、光学フィルタ20を透過した特定波長帯域の光のみを正確に受光して光電変換することができる。このときには、太陽光などの外来光に含まれている不要な光が光学フィルタ20によって遮断され、外来光によって受光部9が変動するのを軽減することができるので、これによっても正確に生体組織を測定することができ、人体の脈波の測定精度を高めることができる。
【0106】
また、この腕時計では、腕時計ケース1内における裏蓋3に生体情報検出装置5を設けた構成であるから、腕時計ケース1を腕に取り付けて使用することができる。すなわち、腕時計ケース1を腕に取り付けると、裏蓋3が腕の皮膚Hに接触するので、この接触した裏蓋3の取付孔3bから露出した生体情報検出装置5の一部を皮膚Hに接触させることができる。このため、腕時計ケース1を腕に取り付けた状態で、何時でも何処でも容易に且つ簡単に生体信号を測定することができる。
【0107】
なお、前述した実施形態では、発光素子6aによって観測光を所定の発光量で発光させて皮膚Hに照射し、この皮膚H内で散乱した観測光を受光素子9aで受光して、測定者の皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を測定し、この測定結果に基づいて、発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度とを制御して、皮膚組織を観測する場合について述べたが、これに限らず、測定結果に基づいて発光素子6aの発光量と受光素子9aの受光感度とのいずれか一方のみを制御して皮膚組織を観測しても良い。
【0108】
また、前述した実施形態では、皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度を測定しているが、皮膚H内に含まれているメラニン色素の密度のほかに、メラニン色素の濃度または量などの生体の状態を表す他の生体特性を測定するようにしても良い。また、皮膚H内含まれているメラニン色素の密度を測定するほかに、血液中のヘモグロビンの濃度、ヘモグロビンの酸素飽和度、皮膚組織中のグルコースの濃度などの他の生体の状態を測定するようにしても良い。
【0109】
さらに、前述した実施形態では、腕時計に適用した場合について述べたが、必ずしも腕時計である必要はなく、腕に装着して使用する腕装着型のものであれば良く、また必ずしも腕に装着して使用するものに限らず、指や足などの人体に装着して使用するものなどにも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 腕時計ケース
3 裏蓋
4 時計モジュール
5 生体情報検出装置
6 発光部
6a 発光素子
7 導光部材
8 観測光採込部
9 受光部
9a 受光素子
10 回路基板
25 制御装置
26 光電信号検出部
27 発光部駆動回路
28 発光制御回路
29 I/V変換回路
30 基準電圧発生回路
31 受光制御回路
37 CPU
38 ROM
39 RAM
45 第1D/Aコンバータ
46 定電流回路
47 第2D/Aコンバータ
48 A/Dコンバータ
If 発光電流
Ipd 受光電流
Vin 受光電圧
AD0、AD1 受光電圧値
H 皮膚
H1 真皮
H2 表皮
ME メラニン色素
HE ヘモグロビン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子によって人体の皮膚組織を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて前記皮膚に照射し、この照射されて前記皮膚内で散乱した前記観測光を受光感度が制御可能な受光素子で受光することにより、前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定する第1のステップと、
この第1のステップで測定された測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する第2のステップと、
この第2のステップにより制御された制御結果に基づいて、前記メラニン色素の密度に対応する生体情報を検出する生体情報検出ステップと、
を備えていることを特徴とする生体情報検出方法。
【請求項2】
発光素子によって生体を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて前記生体に照射し、この照射されて前記生体内で散乱した前記観測光の散乱光を受光感度が制御可能な受光素子で受光し、前記生体の状態を測定する第1のステップと、
この第1のステップにより測定された測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する第2のステップと、
この第2のステップにより制御された制御結果に基づいて、前記生体の状態を示す生体情報を検出する生体情報検出ステップと、
を備えていることを特徴とする生体情報検出方法。
【請求項3】
前記第1のステップは、前記発光素子によって前記観測光を異なる発光量で予め定められている回数発光させて前記皮膚に照射する照射ステップと、この照射ステップによりそれぞれ照射されて皮膚内で散乱した前記観測光を前記受光素子でそれぞれ受光する受光ステップと、この受光ステップにより受光された散乱光に基づいて前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定する密度測定ステップと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の生体情報検出方法。
【請求項4】
前記第2のステップは、前記第1のステップによる前記測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度とを前記複数段階の皮膚タイプのいずれかに対応するようにそれぞれ設定して、前記皮膚組織を観測する観察ステップを備えていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の生体情報検出方法。
【請求項5】
人体の皮膚組織を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を発光素子によって発光させて前記皮膚に照射させる観測光照射手段と、
この観測光照射手段によって照射されて前記皮膚内で散乱した前記観測光を受光素子で受光して電気信号に変換して出力する散乱光検出手段と、
前記発光素子を予め定められている発光量で発光させ、この発光した観測光を前記受光素子で受光し、その受光量に応じて前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定し、且つこの測定結果に基づいて前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する制御手段と、
この制御手段により制御された制御結果に基づいて、前記メラニン色素の密度に対応する生体情報を検出する生体情報検出手段と、
を備えていることを特徴とする生体情報検出装置。
【請求項6】
発光素子によって生体を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて前記生体に照射し、この照射されて前記生体内で散乱した前記観測光の散乱光を受光感度が制御可能な受光素子で受光し、前記生体の状態を測定する測定手段と、
この測定手段により測定された測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する制御手段と、
この制御手段により制御された制御結果に基づいて、前記生体の状態を示す生体情報を検出する生体情報検出手段と、
を備えていることを特徴とする生体情報検出方法。
【請求項7】
前記測定手段は、前記発光素子を異なる発光量で予め定められている回数発光させて前記皮膚に照射させ、この照射されて前記皮膚内で散乱した前記観測光を前記受光素子でそれぞれ受光し、この受光量に応じて前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定する密度測定手段を備え、
前記制御手段は、前記測定手段による測定結果に応じて前記皮膚のタイプが複数段階のいずれであるかを判断する判断手段と、この判断手段による判断結果に基づいて前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を前記複数段階の皮膚タイプのいずれかに対応するようにそれぞれ設定して前記皮膚組織を観測する観測手段と、を備えていることを特徴とする請求項5に記載の生体情報検出装置。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載された生体情報検出装置を人体に装着する機器本体に設けたことを特徴とする人体装着機器。
【請求項1】
発光素子によって人体の皮膚組織を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて前記皮膚に照射し、この照射されて前記皮膚内で散乱した前記観測光を受光感度が制御可能な受光素子で受光することにより、前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定する第1のステップと、
この第1のステップで測定された測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する第2のステップと、
この第2のステップにより制御された制御結果に基づいて、前記メラニン色素の密度に対応する生体情報を検出する生体情報検出ステップと、
を備えていることを特徴とする生体情報検出方法。
【請求項2】
発光素子によって生体を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて前記生体に照射し、この照射されて前記生体内で散乱した前記観測光の散乱光を受光感度が制御可能な受光素子で受光し、前記生体の状態を測定する第1のステップと、
この第1のステップにより測定された測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する第2のステップと、
この第2のステップにより制御された制御結果に基づいて、前記生体の状態を示す生体情報を検出する生体情報検出ステップと、
を備えていることを特徴とする生体情報検出方法。
【請求項3】
前記第1のステップは、前記発光素子によって前記観測光を異なる発光量で予め定められている回数発光させて前記皮膚に照射する照射ステップと、この照射ステップによりそれぞれ照射されて皮膚内で散乱した前記観測光を前記受光素子でそれぞれ受光する受光ステップと、この受光ステップにより受光された散乱光に基づいて前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定する密度測定ステップと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の生体情報検出方法。
【請求項4】
前記第2のステップは、前記第1のステップによる前記測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度とを前記複数段階の皮膚タイプのいずれかに対応するようにそれぞれ設定して、前記皮膚組織を観測する観察ステップを備えていることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の生体情報検出方法。
【請求項5】
人体の皮膚組織を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を発光素子によって発光させて前記皮膚に照射させる観測光照射手段と、
この観測光照射手段によって照射されて前記皮膚内で散乱した前記観測光を受光素子で受光して電気信号に変換して出力する散乱光検出手段と、
前記発光素子を予め定められている発光量で発光させ、この発光した観測光を前記受光素子で受光し、その受光量に応じて前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定し、且つこの測定結果に基づいて前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する制御手段と、
この制御手段により制御された制御結果に基づいて、前記メラニン色素の密度に対応する生体情報を検出する生体情報検出手段と、
を備えていることを特徴とする生体情報検出装置。
【請求項6】
発光素子によって生体を光学的に観測するために特定波長帯域の観測光を予め定められている発光量の光で発光させて前記生体に照射し、この照射されて前記生体内で散乱した前記観測光の散乱光を受光感度が制御可能な受光素子で受光し、前記生体の状態を測定する測定手段と、
この測定手段により測定された測定結果に基づいて、前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を制御する制御手段と、
この制御手段により制御された制御結果に基づいて、前記生体の状態を示す生体情報を検出する生体情報検出手段と、
を備えていることを特徴とする生体情報検出方法。
【請求項7】
前記測定手段は、前記発光素子を異なる発光量で予め定められている回数発光させて前記皮膚に照射させ、この照射されて前記皮膚内で散乱した前記観測光を前記受光素子でそれぞれ受光し、この受光量に応じて前記皮膚内に含まれているメラニン色素の密度を測定する密度測定手段を備え、
前記制御手段は、前記測定手段による測定結果に応じて前記皮膚のタイプが複数段階のいずれであるかを判断する判断手段と、この判断手段による判断結果に基づいて前記発光素子の発光量と前記受光素子の受光感度との少なくとも一方を前記複数段階の皮膚タイプのいずれかに対応するようにそれぞれ設定して前記皮膚組織を観測する観測手段と、を備えていることを特徴とする請求項5に記載の生体情報検出装置。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載された生体情報検出装置を人体に装着する機器本体に設けたことを特徴とする人体装着機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−45458(P2011−45458A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195028(P2009−195028)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]