説明

生体情報測定方法および生体情報測定装置

【課題】被測定者の苦痛を軽減して精度よい生体情報を連続して測定できる生体情報測定方法を提供する。
【解決手段】被測定者の皮下体液に接触して所定の特性情報を電気的に検出する皮下体液センサによって特性情報を検出する第1検出工程と、血液に接触して前記特性情報と同じ特性に関する固有情報を検出する血液センサによって、前記第1検出工程と同時期に前記被測定者から採取した血液から固有情報を検出する第2検出工程と、前記第1検出工程で得られる特性情報と前記第2検出工程で得られる固有情報とに基づいて、前記皮下体液センサによって連続して検出する特性情報を較正して処理し、所定の生体情報を得る較正処理工程とを備える生体情報測定方法を提供する。1回の血液採取とより痛みの少ない皮下体液センサとによって使用時点での皮下体液センサの特性に対応した較正処理をして複数の生体情報を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖値などの生体情報を測定するための生体情報測定方法および生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血糖値を測定するには、静脈、指先、耳たぶなどから血液を採取して、この血液からグルコースセンサなど各種検出器によって糖の濃度を検出、測定している。これらの方法では、痛みを伴うと共に、血液を採取すること自体が精神的苦痛を伴うことが多い。このため、被測定者の苦痛をより軽減して血糖値を測定する方法が模索されており、例えば、本発明者らは、体液を採取することなく、皮下体液から直接血糖値などの生体情報を測定する装置を提案している(例えば、特許文献1,2参照)。この装置では、センサが針状に形成されており、皮膚の痛点に到達しにくい深さにセンサを刺して、そのまま血糖値などの生体情報を測定することができる。このため、実際の痛みが軽減されるとともに、血液を採取する必要が無いことによっても被測定者の精神的苦痛を軽減することができる。さらに、このセンサは、皮膚に刺したままにしておくことで、長時間連続して血糖値の変化を測定できる。
【0003】
【特許文献1】特開2003-190122号公報
【特許文献2】特開2004−208727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなセンサは、採取した血液を用いる場合と比較してより微小な体液から値を検出するため、精度の良い結果を得るためには、センサ特性に合わせた処理が重要である。しかしながら、特に、センサの製造直後から測定開始までの間に出力が低下するなど、特性の経時変化があるため、予め処理方法を決定しておくと、測定誤差が大きくなるおそれがある。
また、インシュリン投与や服薬を必要とする患者や、一部の手術などでは、血糖値の極端な増減を防ぐために血糖値を監視する、すなわち、連続的な血糖値測定が望まれている。この場合、測定ごとに皮膚への穿刺をくり返すと、精神的苦痛が大きかったり、操作が煩雑で手術の妨げとなったり、測定用の人員の確保が必要となったりする。
【0005】
そこで、本発明では、被測定者の苦痛を軽減して精度よい生体情報を連続して測定できる生体情報測定方法を提供することを課題とする。
また、併せて、本発明では、被測定者の苦痛を軽減して精度よい生体情報を連続して測定できる生体情報測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、本発明の第1発明は、被測定者の皮下体液に接触して所定の特性情報を電気的に検出する皮下体液センサによって特性情報を検出する第1検出工程と、血液に接触して前記特性情報と同じ特性に関する固有情報を検出する血液センサによって、前記第1検出工程と同時期に前記被測定者から採取した血液から固有情報を検出する第2検出工程と、前記第1検出工程で得られる特性情報と前記第2検出工程で得られる固有情報とに基づいて、前記皮下体液センサによって連続して検出する特性情報を較正して処理し、所定の生体情報を得る較正処理工程とを備える生体情報測定方法を提供する。
この測定方法では、皮下体液センサを皮下体液に接触させて検出する特性情報と、特性情報の検出と同じ時期に採取した血液に、精度および安定性が高い血液センサを接触させて検出する固有情報とにより、測定時の皮下体液センサの特性に対応する較正をする。この較正は、同一の皮下体液センサによって連続して検出する特性情報に適用することができる。したがって、1回の血液採取とより痛みの少ない皮下体液センサとによって使用時点での皮下体液センサの特性に対応した較正処理をして連続した生体情報を得ることができる。
なお、本明細書において、「皮下体液センサによって連続して検出する」とは、第1検出工程において皮膚へ穿刺した皮下体液センサを穿刺状態に維持するとともに、第1検出工程における通電状態を維持して、第1検出工程後にアナログ的に経時的に生体情報を検出することだけでなく、デジタル的に所定時間間隔ごとに複数の生体情報を検出することをも意味する。
【0007】
また、本発明の第2発明は、被測定者の皮下に穿刺される皮下体液センサにより、皮下体液から所定の特性情報を電気的に検出する特性情報検出部と、被測定者の採取血液に接触される血液センサにより、採取された血液から前記特性情報と同じ特性の固有情報を電気的に検出する固有情報検出部と、前記特性情報を、前記固有情報に基づいて較正して処理する処理手段と、前記処理手段の処理結果を生体情報として出力する出力手段とを備え、前記処理手段は、同一の皮下体液センサにより連続して検出される特性情報を、単一の固有情報に基づいて較正して処理する、生体情報測定装置である。
この装置は、特性情報受信部により皮下体液センサを皮下体液に接触させて得られる特性情報を得ることができ、固有情報受信部により血液センサを採取した血液に接触させて得られる固有情報を得ることができる。また、処理手段は、単一の固有情報に基づいて同一の皮下体液センサにより連続して検出される特性情報を較正することができる。したがって、この装置によれば、第1発明に係る測定方法によって、1回の血液採取とより痛みの少ない皮下体液センサとによって使用時点での皮下体液センサの特性に対応した較正処理をして連続した生体情報を測定できる。
【0008】
さらに、本発明の第3発明は、第2発明において、前記処理結果が所定の数値範囲を超えたときに数値異常を報知可能な報知手段を備える生体情報測定装置である。
この装置によれば、継続して、例えば連続して生体情報を測定するときに、測定者が生体情報の値を監視し続けなくても生体情報の数値異常を容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被測定者の苦痛を軽減して精度よい生体情報を連続して測定できる生体情報測定方法、および、被測定者の苦痛を軽減して精度よい生体情報を連続して測定できる生体情報測定装置を提供することにより、より高精度の生体情報をより気軽に所望の量だけ収集することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1,2に、本発明に係る生体情報測定装置の一実施形態を示す。測定装置1は、生体情報として血糖値を測定できる装置である。測定装置1は、本体部3と、本体部3に長さ調節可能な輪状に付与されたベルト5とを備えており、腕、腹、肢などにベルト5を巻き付けて、固定することで人体に固定可能とされている。
【0011】
本体部3は、全体が直方体状のケースによって覆われている。本体部3には、公知のCPU、および、適宜RAM、ROMなどによって構成される処理手段71(図7参照)が内蔵されている。また、本体部3の測定装置1がベルト5によって人体に固定されたときに人体と反対の方向を向く面(図1の紙面手前面)に、表示部7と操作部9とが設けられている。操作部9は、図1に示すように複数の押しボタンを備えており、被測定者情報や、測定開始、表示切替などの指示を入力可能とされている。
なお、表示部7は、図7に示す出力手段79に対応する。また、図7に示すように、出力手段79としては、表示部7のような視覚情報を出力する表示手段に限定されず、スピーカーのような聴覚情報として生体情報を出力する音発生手段、無線または有線で電気的、磁気的、あるいは光学的情報として生体情報を出力する通信手段を設けることができる。
【0012】
図2に示すように、本体部3には、特性情報受信部11と、固有情報受信部23とが設けられている。特性情報受信部11は、皮下体液センサ31が装着されて特性情報を検出可能とされる部分で、図7に示す第1入力インターフェース73に対応する。また、固有情報受信部23は、血液センサ61が装着されて固有情報を検出可能とされる部分で、図7に示す第2入力インターフェース75に対応する。
【0013】
特性情報受信部11は、測定装置1がベルト5によって人体に固定されたときに、本体部3の人体の皮膚に当接する面に設けられている。本実施形態では、図2に示すように、本体部3の内部に配置されており、皮下体液センサ31の針状の検出部37が人体当接面に対してほぼ垂直に延びるように保持可能に形成されている。特性情報受信部11は、皮下体液センサ31を着脱自在に装着でき、且つ装着される皮下体液センサ31に電気的に接続される公知の構成とすることができる。例えば、特性情報受信部11は、複数の端子(図示せず)を備え、公知のコネクタと同様に構成される。
【0014】
特性情報受信部11に装着された皮下体液センサ31を外部から保護された待機状態と、皮下に穿刺可能に露出した使用状態とに位置切り替えするために、可動部材13が設けられている。可動部材13は、図2に示すように、厚みの小さい箱状に形成されており、連結部材18によって本体部3に移動可能に連結されている。可動部材13は、人体当接面の中心に皮下体液センサ31の検出部37が挿通可能な貫通孔16を備える。連結部材18は、本実施形態では、コイルばねを含んでおり、常時は、図2に示すように、可動部材13が本体部3を構成するケースよりも外側に突出する待機位置に保持している。可動部材13が本体部3の中心に向かう所定以上の力を受けることにより、連結部材18のコイルばねが収縮し、図6に示すように、可動部材13が特性情報受信部11に取り付けられた皮下体液センサ31の検出部37の先端よりも本体部3内に位置する検出位置に移動可能とされている。
【0015】
さらに、測定装置1では、連結部材18を伸縮させるための手段として、荷重付加部材が設けられている。荷重付加部材は、本実施形態では、図2,6に示すように、ベルト5の輪の内側に設けられているエアバッグ20を備える。このエアバッグ20は、図示しないエアポンプ、エアバルブなどを介して内部に所定量のエアが供給されることで、図2に示す状態から、例えば図6に示すように膨らんだ状態に変形する。この変形により、巻き付けられたベルト5内のエアバッグ20の断面積が増大し、ベルト5および可動部材13に、人体を介してより強い圧力が加わる。したがって、この圧力が所定以上の大きさになることで連結部材18のコイルばねが圧縮され、可動部材13が待機位置から検出位置まで移動するようになっている。エアバッグ20を用いる荷重付加部材は、測定装置1が人体に固定された状態で、可動部材13に本体部3の中心に向かう所定以上の力を安定して加えることができる。
【0016】
固有情報受信部23は、測定装置1のどの部分に設けられても良い。本実施形態では、図1,2に示すように、本体部3の側面であって、ベルト5が取り付けられている面に設けられている。固有情報受信部23は、血液センサ61を着脱自在に装着可能な装着部(図示せず)を備えている。装着部は、装着された血液センサ61に電気的に接続可能な複数の端子を備えており、公知のコネクタと同様に構成される。
【0017】
次に、測定装置1に装着される皮下体液センサ31および血液センサ61の一実施形態について説明する。
皮下体液センサ31は、図3に示すように板状のベース材33を備え、このベース材33上に、針状に突出する2つの電極部41,42を備える検出部37と、ロット情報を有する識別部39とを備える。また、血液センサ61は、図5に示すように、板状のベース材63を備え、このベース材63上に、互いに隣接して配置され、それぞれ平坦に形成された2つの電極部65,66を備える検出部67と、ロット情報を有する識別部69とを備える。皮下体液センサ31と血液センサ61とは、ほぼ同じ構成を有するため、以下、皮下体液センサ31について説明し、血液センサ61については、皮下体液センサ31と異なる点について補足するにとどめる。
【0018】
ベース材33は、絶縁性を有する材料で形成される。例えば、セラミック、樹脂、紙(パルプ)、木質材料の集成材などで形成することができる。
検出部37は、皮下体液に接触可能な電極部41,42と、この電極部41,42を、それぞれ独立して特性情報受信部11に電気的に接続する配線部44とを備える。各電極部41,42の基部46(図4参照)および配線部44は、導電性部材で構成される。例えば、銅により形成することができ、配線部44は、ベース材33に対して公知の方法でプリントして形成することができる。
【0019】
電極部41,42の基部46は、貴金属材料により構成することが好ましく、例えば、白金、金などが好ましい。皮下体液センサ31の基部46は、予め円錐状に成形されて、ベース材33に配線部44と電気的に接続された状態に取り付けられる。図4に示す形態では、ベース材33に予め貫通穴35を設けるとともに、貫通穴35の内周面および貫通穴35周辺のベース材33を被覆するように配線部44が設けられている。また、基部46は、円錐形でその底面に突出する円柱状の取り付け部47を備えており、取り付け部47が貫通穴35に挿入されて配線部44に接触した状態ではんだ付けされてベース材33に固定されている。なお、皮下体液センサ31の大きさは特に限定されないが、穿刺方向の長さが1mm以下で、最大直径が0.5mm以下であることが、痛みの軽減および感度保持の点で好ましい。
【0020】
図4に示すように、電極部41,42には、所定の生体特性に関する情報、すなわち特性情報を得るための選択部48が設けられている。選択部48は、種々の成分が混在する皮下体液から所定の成分の濃度や有無など皮下体液の特性に関する特性情報を選択的に取り出すための部分である。選択部48は、特定の物質と反応する酵素や特定の物質のみを透過または透過しない制限透過膜など種々の構成とすることができる。血糖値を測定する本実施形態の皮下体液センサ31では、選択部48は、糖と選択的に電子移動反応をするグルコースオキシダーゼを含有する部位とすることができる。選択部48は、電極部41,42の基部46を被覆する膜状に形成することができる。
【0021】
ここで、酵素反応を利用する選択部48における電子移動反応と、電極部41,42に印加される電位とでは、その強度が著しく異なる場合がある。この場合、電位差を補償する電子メディエータを付与することが好ましい。例えば、グルコースオキシダーゼを含有する選択部48に対しては、種々のフェロセン類を用いることができ、例えば、フェロセンカルボキシアルデヒド−アルブミン共有結合体が好ましい。図4に示す電極部41,42には、選択部48の外側を被覆して電子メディエータ部50が設けられている。
なお、電子メディエータは、選択部48中に混合状態で付与しても良い。
【0022】
また、皮下体液センサ31の表面には、保護部52が設けられることが好ましい。保護部52は、特性情報に係る成分を透過可能とされ、種々の保護機能を備える。保護機能としては、皮下体液センサ31からの成分溶出の抑制や、皮下体液中のタンパク、脂肪などの付着の抑制、あるいは、選択部48の機能を阻害する成分の選択部48への接触の抑制などである。これにより、電極部41,42を皮下に穿刺することによって生体へのアレルギー反応などの悪影響の発生を抑制し、特性情報の検出感度を維持する。このような保護部52としては、例えば、電極部41,42を含む検出部37の外面全体を被覆する膜であって、2−メタクリロイルオキシエチル・ホスホリルコリン(MPC)を用いたものを挙げることができる。MPCは、生体適合性が高く、且つタンパク質など皮下体液内の成分が付着しにくい。
【0023】
血液センサ61についても、皮下体液センサ31と同様であるが、電極部65,66は、採取した血液に良好に接触できる形状であれば良いため、針状など穿刺しやすい形状に形成されなくて良い。図5に示す血液センサ61では、電極部65,66は、配線部64と同様の箔で形成されており、配線部64に比して表面積が大きい長方形状部分と、この長方形状部分の三辺の外周を包囲するコの字状部分とに形成されている。この部分は、皮下体液センサ31の電極部41,42と同様、貴金属材料で形成しても良いし、銅箔やカーボンにより形成しても良い。電極部65,66周辺は、血液がなじみやすいことが好ましく、たとえば、ベース材63が紙など吸水性の材料で形成されていることも好ましい。
また、電極部65,66の表面には、少なくとも選択部および電子メディエータを付与する。また、保護部としては、生体適合性を考慮しなくて良く、しかしながら、血液中のタンパク等の不純物が所定の特性に関する固有情報の検出を阻害したり、影響したりする場合は、所定の生体情報を選択する上での悪影響を除去できる材料を付与することが好ましい。
【0024】
識別部39は、ロット情報を、特性情報受信部11によって読み取り可能に保持する部分である。図3に示す形態では、銅箔がプリントされて形成された複数の配線によって形成されており、配線が特性情報受信部11の端子に電気的に接続可能とされている。血液センサ61の識別部69も、同様の構成とすることができる。
ここで、ロット情報は、ロットを示す信号でも良いし、処理手段71において皮下体液センサ31あるいは血液センサ61により検出される特性情報あるいは固有情報を処理するときに使用される係数、あるいは演算式そのものであっても良い。また、特に、皮下体液センサ31のロット情報としては、原料供給先や製造時に限定されず、流通経路や納品先を示す情報など、皮下体液センサ31の曝露条件を示す情報なども含まれる。
【0025】
ここで、図7を参照して測定装置1の処理手段71について説明する。本実施形態の処理手段71は、第1入力インターフェース73(特性情報受信部11)より受信する特性情報を処理して生体情報、すなわち血糖値を得る処理と、第2入力インターフェース75(固有情報受信部23)より受信する固有情報を処理して血糖値を得る処理とを備える。さらに、処理手段71は、第2入力インターフェース75から得られる固有情報に基づいて、すなわち固有情報を処理して得られる生体情報を用いて特性情報の処理を較正し、特性情報からより正確な血糖値を求めることができる。さらに、第1入力インターフェース73(特性情報受信部11)より連続して2以上の特性情報を受信し、較正した処理によってこの特性情報を処理して血糖値を求めることができる。また、得られた血糖値情報を出力インターフェース77に送信することができ、出力手段79によって測定者が生体情報を取得可能とする。
【0026】
また、図7に示すように、測定装置1には、適宜、記憶手段81を設けることができる。記憶手段81は、特性情報受信部11に装着された皮下体液センサ31の識別部39に保有されるロット情報を書き換え可能に記憶する。
【0027】
次に、測定装置1を用いて生体情報である血糖値を測定する方法について説明する。
まず、測定装置1の特性情報受信部11に皮下体液センサ31を、固有情報受信部23に血液センサ61を、それぞれ装着する。装着により、あるいは、測定装置1の電源を入れるなどの操作によって、皮下体液センサ31および血液センサ61の識別部69に保有されるロット情報が特性情報受信部11および固有情報受信部23において読み取り可能となる。適宜、この時点で処理手段71(図7参照)がロット情報を検出し、ロット情報に対応する処理を可能とする。
【0028】
測定装置1による血糖値の測定方法は、第1検出工程と、第2検出工程と、較正処理工程とを備える。第1検出工程と第2検出工程とは、同時期、すなわち生体における特性の変化が無視できる範囲の時間に行う。また、第1検出工程と第2検出工程とは、この順で行っても良いし、第2検出工程を第1検出工程より先に行っても良い。また、同時進行させても良く、正しい情報の検出に所定時間を要する場合などは、時間の短縮が可能である。
【0029】
(第1検出工程)
第1検出工程では、皮下体液センサ31を皮下に穿刺して、検出部37に皮下体液を接触させる。測定装置1では、まず、ベルト5を生体の腕100などに巻き付けて本体部3を皮膚に対して固定する。次に、エアバッグ20にエアを送り込んで所定の圧力となるようにエアバッグ20を膨らませる。所定の圧力に達すると、可動部材13が本体部3の中心側に向かって検出位置まで移動する。これにより、図6に示すように測定装置1に装着された皮下体液センサ31の検出部37の先端が本体部3から露出し、腕100の皮下に穿刺される。皮下体液センサ31の検出部37が皮下体液に接触することで、特性情報受信部11(第1入力インターフェース73)での特性情報の検出が可能となり、処理手段71は特性情報を受信することができる。
【0030】
(第2検出工程)
第2検出工程では、被測定者から任意の方法で採取した血液を血液センサ61の検出部67に接触させる。血液センサ61が血液に接触することで、固有情報受信部23(第2入力インターフェース75)での固有情報の検出が可能となり、処理手段71は固有情報を受信することができる。処理手段71は、固有情報を受信したとき、あるいは、後述する較正処理工程において固有情報を血液センサ61のロット情報に対応した方法で処理し、生体情報、すなわち血糖値を求める。
【0031】
固有情報から血糖値を求めた時点で、処理手段71は、出力インターフェース77を介して出力手段79に処理結果(血糖値)を送信する。出力手段79がこれを外部に出力する。測定装置1では、例えば表示部7に生体情報である血糖値が表示され、測定者が処理結果を認知可能となる。
【0032】
(較正処理工程)
較正処理工程では、皮下体液センサ31によって特性情報を連続して検出する。連続した特性情報の検出は、第1検出工程後、皮下体液センサ31を図6に示す穿刺した状態すなわち検出状態に維持し、さらに、通電状態を維持して行う。特性情報の連続した検出は、所定時間間隔ごとに、または所定期間中継続して行う。
【0033】
次に、得られた特性情報を、処理手段71で、第1検出工程で得られる特性情報と前記第2検出工程で得られる固有情報とに基づく較正を用いて処理する。ここで、較正が必要となる理由を説明する。皮下体液センサ31は、曝露条件や時間経過によるセンサ特性の変化が大きいため、運搬、保管などを経た測定時点の皮下体液センサ31は、製造直後とは異なるセンサ特性を有するおそれがある。このため、処理手段71に保持されている処理、すなわち特性情報の血糖値への変換式(ロット情報によって補正した式を含む)が、必ずしも皮下体液センサ31のセンサ特性に対応しないため、誤差の大きい生体情報(血糖値)が得られる可能性がある。これを回避するために、測定装置1では、較正を行う。
【0034】
較正は、曝露条件や時間経過によってもより安定した精度を保持する血液センサ61から得られる測定開始時の血糖値に基づいて公知の方法によって行うことができる。例えば、処理手段71が皮下体液センサ31から得られる測定開始時の特性情報を処理して血液センサ61と同じ血糖値が得られるように変換式中のセンサ特性に関連する部分を補正する。センサ特性に関連する部分を補正することにより、連続して検出する特性情報を同一の較正処理によって処理して、誤差の少ない高精度の生体情報を得ることができる。なお、処理手段71による特性情報の処理においても、皮下体液センサ31の識別部39から得た識別情報に対応した処理ができることは、もちろんである。
【0035】
処理手段71は、連続して特性情報を受信すると、これを較正処理し、処理結果を出力インターフェース77を介して出力手段79に送信する。出力手段79は、処理結果である生体情報等を出力する。なお、処理結果は、血糖値のみに限定されない。例えば、操作部9で予め入力した被測定者情報に基づいて算出した投与すべきインシュリンや血液降下剤の量等とすることができる。また、処理手段71で血糖値が数値範囲であるかどうかを判定し、その判定結果であっても良い。この判定結果は、例えば、数値範囲外であるときのみ出力手段79まで送信され、測定者に認知される構成であっても良い。この場合、出力手段79としては、スピーカーなどの音発生手段であると、測定者が測定装置1より離れていても容易に認知でき、好ましい。
【0036】
測定を終了するときは、エアバッグ20の内部のエアを排出して可動部材13に加えられる力を減少させる。この力が減少して連結部材18のコイルばねの弾発力が勝ると、可動部材13が検出位置から待機位置まで移動し、皮下体液センサ31の検出部37が皮下より抜ける。この後、ベルト5を腕100より外す。
【0037】
この測定装置1によれば、測定開始時に血液を採取する以外は、皮下体液センサ31を皮下に穿刺した状態及び通電状態を維持することで、連続して高精度で血糖値を測定することができる。このため、被測定者の肉体的苦痛および精神的苦痛を軽減して、被測定者の血糖値の経時変化を測定することができる。また、測定者の手間が少なくなる。また、処理手段71で数値範囲の判定をし、出力手段79で数値範囲外であることを報知する構成とすれば、血糖値を測定している間の測定者の拘束が大幅に低減され、多量の血糖値情報を手軽に入手することができる。したがって、この測定装置1では、患者の負担を軽減して連続して血糖値を測定することができ、血糖値の過度の上昇や低下を素早く察知して対処することができる。例えば、食事や服薬、インシュリン投与の前後、あるいは1日の糖尿病患者の血糖値の変動の測定や、手術中の患者の血糖値の監視などが容易に行える。
【0038】
本発明は、上記実施形態に限定されない。
皮下体液センサおよび血液センサの電極は2つに限定されず、3つでもよい。2つの場合は、対電極および作用電極であり、3つの場合は、さらに参照電極が付加される。
皮下体液センサおよび血液センサの構造、形状は、板状に限定されず、種々の形状を取り得る。また、センサの構造、形状に対応して特性情報受信部や固有情報受信部の構造、形状も変更し得る。
また、血液センサおよび皮下体液センサのいずれも、識別部を備えなくても良い。また、識別部は電気的な情報に限定されず、光学的、磁気的な情報等公知の情報形態を取り得る。すなわち、測定装置の特性情報受信部および固有情報受信部は、ロット情報を受信する部位としてコネクタに限定されず、光学的、磁気的など公知の情報受信器とすることができる。
【0039】
生体情報は、血糖値に限定されない。所定の被膜などを用いて電気的に情報を検出し得る種々の生体情報とすることができる。
生体情報測定装置は、本実施形態の形状に限定されず、処理手段や出力手段を備える部分に対して、特性情報受信部および/または固有情報受信部が配線などによって連結され、より自由に移動可能に設けられても良い。あるいは、これらの受信部は、実質的に別体とされ、公知の無線接続法によって処理手段に特性情報または固有情報を送信可能に接続されていても良い。特に、単一の皮下体液センサによって継続して生体情報を測定可能な測定装置では、特性情報受信部が人体に固定可能な形態であることが好ましく、処理手段や固有情報受信部は、生体に固定されない形態であっても良い。あるいは、出力手段79が処理手段71とは別体で設けられ、遠隔地において生体情報を認識可能とされても良い。
また、測定装置1において、特性情報受信部11が移動可能に設けられて、皮下体液センサの待機状態と使用状態(穿刺状態)とに切り替え可能に設けられても良い。皮下体液センサの待機位置と検出位置との切り替えに係る移動構造は、コイルばねやエアシリンダなどの弾性部材を利用した構成に限定されず、例えば、ラックアンドピニオンを利用した構成など、公知の移動可能な構成とすることができる。
また、測定装置1とは異なる構造を有する公知の血糖値計や生体情報測定装置に、本発明にかかる構成を適用し、本発明に係る方法によって生体情報を測定しても良いことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る生体情報測定装置の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1の生体情報測定装置の一部を破断した側面図である。
【図3】図1の生体情報測定装置に装着される皮下体液センサの一例を示す斜視図である。
【図4】図3の皮下体液センサの部分側断面図である。
【図5】図1の生体情報測定装置に装着される血液センサの一例を示す斜視図である。
【図6】図1の生体情報測定装置を用いて生体情報を測定するときの使用状態を示す模式図である。
【図7】図1に係る生体情報測定装置に皮下体液センサと血液センサとが装着されたときの情報の流れを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
1 測定装置
3 本体部
5 ベルト
7 表示部
9 操作部
11 特性情報受信部
13 可動部材
16 貫通孔
18 連結部材
20 エアバッグ
23 固有情報受信部
31 皮下体液センサ
33,63 ベース材
35 貫通穴
37,67 検出部
39,69 識別部
41,42,65,66 電極部
44,64 配線部
46 基部
47 取り付け部
48 選択部
50 電子メディエータ部
52 保護部
61 血液センサ
71 処理手段
73 第1入力インターフェース
75 第2入力インターフェース
77 出力インターフェース
79 出力手段
81 記憶手段
100 腕


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の皮下体液に接触して所定の特性情報を電気的に検出する皮下体液センサによって特性情報を検出する第1検出工程と、
血液に接触して前記特性情報と同じ特性に関する固有情報を検出する血液センサによって、前記第1検出工程と同時期に前記被測定者から採取した血液から固有情報を検出する第2検出工程と、
前記第1検出工程で得られる特性情報と前記第2検出工程で得られる固有情報とに基づく較正により、前記皮下体液センサによって連続して検出する特性情報から所定の生体情報を得る較正処理工程と
を備える、生体情報測定方法。
【請求項2】
被測定者の皮下に穿刺される皮下体液センサにより、皮下体液から所定の特性情報を電気的に検出する特性情報検出部と、
被測定者の採取血液に接触される血液センサにより、採取された血液から前記特性情報と同じ特性の固有情報を電気的に検出する固有情報検出部と、
前記特性情報を、前記固有情報に基づいて較正して処理する処理手段と、
前記処理手段の処理結果を生体情報として出力する出力手段と
を備え、
前記処理手段は、同一の皮下体液センサにより連続して検出される特性情報を、単一の固有情報に基づいて較正して処理する、生体情報測定装置。
【請求項3】
前記処理結果が所定の数値範囲を超えたときに数値異常を報知可能な報知手段を備える、請求項2に記載の生体情報測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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