説明

生体成分分析方法、生体成分分析装置および抽出カートリッジ

【課題】被験者から抽出される抽出物をより精度よく分析することが可能な生体成分分析方法、生体成分分析装置および抽出カートリッジを提供する。
【解決手段】この血糖値推定装置(生体成分分析装置)100では、所定量の抽出媒体を保持可能に構成された抽出媒体保持部53と、グルコースによって所定の反応を生じさせる反応部54と、反応部54で生じる所定の反応からグルコースを検出する検出部40と、抽出媒体保持部53によって保持可能な所定量と略等しい量のグルコースを収容した液体収容部52と、液体収容部52に収容された抽出媒体を抽出媒体保持部53に移送するとともに、抽出媒体保持部53に移送され、被験者から抽出されたグルコースを保持した抽出媒体の一部を抽出媒体保持部53から反応部54に移送するためのポンプ18と、グルコースを検出した結果を分析する制御部17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体成分分析方法、生体成分分析装置および抽出カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被験者からグルコースなどの分析物を抽出した後、グルコースオキシターゼなどの酵素を触媒として利用することによって、抽出したグルコースを反応させて分析を行う生体成分分析装置が知られている。
【0003】
しかしながら、従来の生体成分分析装置では、グルコースオキシターゼなどの酵素がグルコースに対する触媒として機能する前に、被験者から抽出したグルコースを保持するための抽出媒体に溶出されてしまい、その結果、グルコースの分析精度を低下させてしまう可能性があった。
【0004】
そこで、従来、グルコースの分析精度が低下するのを抑制することが可能な生体成分分析装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
上記特許文献1には、グルコースがグルコースオキシターゼを触媒として反応する反応部と、被験者から抽出したグルコースを保持するための抽出媒体を保持可能に構成された抽出部と、抽出媒体を収容し、当該抽出媒体を各部に提供(移送)するシリンジポンプとを備えた生体成分分析装置が開示されている。この生体成分分析装置では、シリンジポンプは、収容された抽出媒体を抽出部に提供するとともに、抽出部においてグルコースが抽出媒体に抽出された後、シリンジポンプからさらに抽出媒体を抽出部に提供することによって、グルコースを保持する抽出媒体を抽出部から反応部に移送する(押し出す)ように構成されている。これにより、グルコースを保持する抽出媒体が反応部に移送されるまで、反応部を乾燥状態に保持しておくことができるので、反応部のグルコースオキシターゼが抽出媒体に溶出されるのを抑制することが可能である。その結果、グルコースの分析精度が低下するのを抑制することが可能である。
【0006】
【特許文献1】特開2005−246054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の生体成分分析装置では、グルコースを保持する抽出媒体が反応部に移送されるまで、反応部を乾燥状態に保持しておくことによって、グルコースの分析精度が低下するのを抑制することが可能である一方、抽出部においてグルコースが抽出媒体に抽出された後、液体提供機構が、シリンジポンプからさらに抽出媒体を抽出部に提供することによって、グルコースを保持する抽出媒体を抽出部から反応部に移送する(押し出す)ように構成されているので、抽出部内のグルコースを保持する抽出媒体を反応部側に押し出すためのシリンジポンプからの抽出媒体に、抽出部内のグルコースを保持する抽出媒体が接触されて、グルコースがシリンジポンプからの抽出媒体に混和してしまう可能性がある。このようにグルコースが抽出部の外にある抽出媒体に混和してしまうと、抽出媒体中のグルコース濃度が不均一となり、分析精度が低下してしまうおそれがある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、被験者から抽出される抽出物をより精度よく分析することが可能な生体成分分析方法、生体成分分析装置および抽出カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による生体成分分析方法は、被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持可能に構成された抽出媒体保持部を被験者の皮膚に配置するステップと、抽出媒体保持部によって保持可能な所定量と略等しい量の抽出媒体を収容した液体収容部に収容された抽出媒体を抽出媒体保持部に移送するステップと、抽出媒体保持部に移送された抽出媒体に抽出物を抽出するステップと、抽出された抽出物を保持した抽出媒体の少なくとも一部を、抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部に移送するステップと、反応部で生じる所定の反応から抽出物を検出するステップと、抽出物を検出した結果を分析するステップとを備える。
【0010】
この第1の局面による生体成分分析方法では、上記のように、抽出媒体保持部に移送された抽出媒体に抽出物を抽出するステップと、抽出された抽出物を保持した抽出媒体の少なくとも一部を抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部に移送するステップとを設けることによって、抽出物を保持する抽出媒体が抽出媒体保持部から反応部に移送されるまで、反応部を乾燥状態に保持しておくことができるので、抽出物に対する触媒を反応部に設けた場合にも、触媒が抽出媒体に溶出されるのを抑制することができる。これにより、分析部による抽出物の分析精度が低下するのを抑制することができる。また、被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持可能に構成された抽出媒体保持部を被験者の皮膚に配置するステップと、抽出媒体保持部によって保持可能な所定量と略等しい量の抽出媒体を収容した液体収容部に収容された抽出媒体を抽出媒体保持部に移送するステップとを設けることによって、ほぼ抽出媒体保持部内にだけ抽出媒体が存在する状態で抽出物を抽出することができるので、抽出媒体に保持された抽出物が抽出媒体保持部の外にある抽出媒体に混和してしまうのを防止することができる。これにより、抽出物の濃度が不均一になるのを抑制することができるので、被験者から抽出される抽出物をより精度よく分析することができる。
【0011】
上記目的を達成するために、この発明の第2の局面による生体成分分析装置は、被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持可能な抽出媒体保持部と、抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部と、反応部で生じる所定の反応から抽出物を検出する検出部と、抽出媒体保持部によって保持可能な所定量と略等しい量の抽出媒体を収容した液体収容部と、液体収容部に収容された抽出媒体を抽出媒体保持部に移送するとともに、抽出媒体保持部に移送され、被験者から抽出された抽出物を保持した抽出媒体の少なくとも一部を抽出媒体保持部から反応部に移送する液体移送部と、抽出物を検出した結果を分析する分析部とを備え、抽出媒体保持部を被験者の皮膚に接触させて配置することで、抽出媒体保持部に抽出物を抽出することが可能となるように構成されている。
【0012】
この第2の局面による生体成分分析装置では、上記のように、被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持可能に構成された抽出媒体保持部と、抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部と、被験者から抽出された抽出物を保持した抽出媒体の少なくとも一部を抽出媒体保持部から反応部に移送する液体移送部とを設けることによって、抽出物を保持する抽出媒体が液体移送部により抽出媒体保持部から反応部に移送されるまで、反応部を乾燥状態に保持しておくことができるので、抽出物に対する触媒を反応部に設けた場合にも、触媒が抽出媒体に溶出されるのを抑制することができる。これにより、分析部による抽出物の分析精度が低下するのを抑制することができる。また、この生体成分分析装置では、抽出媒体保持部によって保持可能な所定量と略等しい量の抽出媒体を収容した液体収容部を設け、液体収容部に収容された抽出媒体を所定量の抽出媒体を保持可能な抽出媒体保持部に移送するように液体移送部を構成することによって、ほぼ抽出媒体保持部内にだけ抽出媒体が存在する状態で抽出物を抽出することができるので、抽出媒体に保持された抽出物が抽出媒体保持部の外にある抽出媒体に混和してしまうのを防止することができる。これにより、抽出物の濃度が不均一になるのを抑制することができるので、被験者から抽出される抽出物をより精度よく分析することができる。
【0013】
上記第2の局面による生体成分分析装置において、好ましくは、抽出媒体保持部が保持可能な抽出媒体の所定量は、反応部が保持可能な抽出媒体の量よりも大きい。このように構成すれば、抽出物を保持する抽出媒体で反応部を満たすことができるので、検出部により精度よく抽出物を検出することができ、その結果、分析部により抽出物をさらに精度よく分析することができる。
【0014】
上記第2の局面による生体成分分析装置において、好ましくは、気体で満たされており、液体収容部にそれぞれ接続される入口流路および出口流路をさらに備える。このように構成すれば、抽出媒体などの液体を介して、液体収容部に収容された抽出媒体を抽出媒体保持部に押し出す(移送する)のではなく、入口流路の気体を介して、液体収容部に収容された抽出媒体を抽出媒体保持部に押し出す(移送する)ことができるので、抽出媒体保持部に移送された抽出媒体が抽出媒体保持部の外の液体に接触されるのを防止することができる。
【0015】
上記第2の局面による生体成分分析装置において、好ましくは、抽出媒体保持部、反応部および液体収容部を含むカートリッジと、検出部、液体移送部および分析部を含み、カートリッジを着脱可能に構成された分析装置本体とをさらに備える。このように構成すれば、抽出媒体保持部、反応部および液体収容部を含むカートリッジだけを容易に交換することができる生体成分分析装置を得ることができる。
【0016】
上記第2の局面による生体成分分析装置において、好ましくは、抽出物の抽出を促進する抽出促進部をさらに備える。このように構成すれば、より短時間で抽出物の抽出を行うことができるので、より短時間で抽出物の分析結果を得ることができる。
【0017】
上記第2の局面による生体成分分析装置において、好ましくは、抽出媒体保持部は、被験者の皮膚が抽出媒体保持部に侵入するのを防止する侵入防止部をさらに備える。このように構成すれば、被験者の皮膚が抽出媒体保持部に侵入することにより抽出媒体保持部の容積が変動するのを防止することができるので、抽出媒体保持部内の抽出媒体の量を一定に保つことができる。その結果、抽出媒体の量の変動に起因する抽出物の濃度の変動を抑えることができ、分析部により抽出物をさらに精度よく分析することができる。
【0018】
上記第2の局面による生体成分分析装置において、好ましくは、抽出物はグルコースであり、分析部は、グルコースを検出した結果を分析することによって、血糖値を推定するように構成されている。このように構成すれば、グルコースを抽出することができるとともに、抽出したグルコースの検出結果に基づいて血糖値を推定することができる。
【0019】
上記目的を達成するために、この発明の第3の局面による生体成分分析装置は、被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持した抽出媒体保持部と、気体で満たされており、抽出媒体保持部に接続される入口流路および出口流路と、抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部と、反応部で生じる所定の反応から抽出物を検出する検出部と、被験者から抽出された抽出物を保持した抽出媒体の少なくとも一部を、抽出媒体保持部から出口流路を介して反応部に移送する液体移送部と、抽出物を検出した結果を分析する分析部とを備え、抽出媒体保持部を被験者の皮膚に接触させて配置することで、抽出媒体保持部に抽出物を抽出することが可能となるように構成されている。
【0020】
この第3の局面による生体成分分析装置では、上記のように、被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持する抽出媒体保持部と、抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部と、被験者から抽出された抽出物を保持した抽出媒体の少なくとも一部を抽出媒体保持部から反応部に移送する液体移送部とを設けることによって、抽出物を保持する抽出媒体が液体移送部により抽出媒体保持部から反応部に移送されるまで、反応部を乾燥状態に保持しておくことができるので、抽出物に対する触媒を反応部に設けた場合にも、触媒が抽出媒体に溶出されるのを抑制することができる。これにより、分析部による抽出物の分析精度が低下するのを抑制することができる。また、この生体成分分析装置では、気体で満たされており、抽出媒体保持部に接続される入口流路および出口流路を設けることによって、抽出媒体保持部の抽出媒体が抽出媒体保持部の外の液体に接触されないので、抽出媒体に保持された抽出物が抽出媒体保持部の外にある液体に混和してしまうのを防止することができる。これにより、抽出物の濃度が不均一になるのを抑制することができるので、被験者から抽出される抽出物をより精度よく分析することができる。
【0021】
上記目的を達成するために、この発明の第4の局面による抽出カートリッジは、被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持可能に構成された抽出媒体保持部と、抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部と、抽出媒体保持部によって保持可能な所定量と略等しい量の抽出媒体を収容した液体収容部とを備え、反応部で生じる所定の反応から抽出物を検出して分析する分析装置本体に着脱可能に構成されている。
【0022】
この第4の局面による抽出カートリッジでは、上記のように、被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持可能に構成された抽出媒体保持部と、抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部とを設けることによって、抽出物を保持する抽出媒体が抽出媒体保持部から反応部に移送されるまで、反応部を乾燥状態に保持しておくことができるので、抽出物に対する触媒を反応部に設けた場合にも、触媒が抽出媒体に溶出されるのを抑制することができる。これにより、抽出物の分析精度が低下するのを抑制することができる。また、この生体成分分析装置では、抽出媒体保持部によって保持可能な所定量と略等しい量の抽出媒体を収容した液体収容部を設けることによって、液体収容部に収容された抽出媒体を抽出媒体保持部に移送すれば、ほぼ抽出媒体保持部内にだけ抽出媒体が存在する状態で抽出物を抽出することができるので、抽出媒体に保持された抽出物が抽出媒体保持部の外にある抽出媒体に混和してしまうのを防止することができる。これにより、抽出物の濃度が不均一になるのを抑制することができるので、被験者から抽出される抽出物をより精度よく分析することができる。
【0023】
上記目的を達成するために、この発明の第5の局面による抽出カートリッジは、被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持した抽出媒体保持部と、気体で満たされており、抽出媒体保持部に接続される入口流路および出口流路と、抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部とを備え、反応部で生じる所定の反応から抽出物を検出して分析する分析装置本体に着脱可能に構成されている。
【0024】
この第5の局面による抽出カートリッジでは、上記のように、被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持する抽出媒体保持部と、抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部とを設けることによって、抽出物を保持する抽出媒体が抽出媒体保持部から反応部に移送されるまで、反応部を乾燥状態に保持しておくことができるので、抽出物に対する触媒を反応部に設けた場合にも、触媒が抽出媒体に溶出されるのを抑制することができる。これにより、抽出物の分析精度が低下するのを抑制することができる。また、この生体成分分析装置では、気体で満たされており、抽出媒体保持部に接続される入口流路および出口流路を設けることによって、抽出媒体保持部の抽出媒体が抽出媒体保持部の外の液体に接触されないので、抽出媒体に保持された抽出物が抽出媒体保持部の外にある液体に混和してしまうのを防止することができる。これにより、抽出物の濃度が不均一になるのを抑制することができるので、被験者から抽出される抽出物をより精度よく分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1および図2は、本発明の一実施形態による血糖値推定装置を示した斜視図である。図3〜図7は、図1に示した一実施形態による血糖値推定装置の構成を説明するための図である。まず、図1〜図7を参照して、本実施形態による血糖値推定装置100の構成について説明する。
【0027】
本実施形態による血糖値推定装置100は、生体から生化学成分の一つであるグルコースを抽出するとともに、抽出されたグルコースを分析することにより血糖値を推定する装置である。この血糖値推定装置100は、図1および図2に示すように、分析ユニット1と、抽出カートリッジ50(図2参照)とを備えている。分析ユニット1は、抽出カートリッジ50を着脱可能に保持する装置本体10と、装置本体10を矢印Aおよび矢印B方向に回動可能に保持する保持部材20と、保持部材20を被験者の腕110(図3参照)に装着するための装着部材30とを含んでいる。
【0028】
分析ユニット1の装置本体10は、図1〜図3に示すように、表面側に配置された表示部11(図1参照)および操作ボタン12(図1参照)と、使用時の状態(装置本体10が閉じられた状態)で矢印X1方向の端部側に配置される解除ボタン13と、裏面側に配置された抽出カートリッジ取付部14(図2および図3参照)および係合孔15(図2および図3参照)と、内部に配置された直流方式の定電圧電源として機能するとともに、交流方式の高周波電源としても機能する電源16(図4参照)と、後述する検出部40によるグルコースの検出結果に基づいてグルコース量および血糖値を推定する制御部17と、エアを送風するポンプ18とを含んでいる。
【0029】
装置本体10の表示部11は、制御部17により算出されたグルコース量、および/又は、推定された血糖値を表示するために設けられている。装置本体10の操作ボタン12は、測定の開始など、被験者が血糖値推定装置100を操作するために設けられている。装置本体10の解除ボタン13は、後述する保持部材20の係合部21eと、装置本体10の係合孔15(図2および図3参照)との係合を解除するために設けられている。
【0030】
装置本体10の抽出カートリッジ取付部14は、図2および図3に示すように、抽出カートリッジ50を取り付ける際のガイドとして機能する一対のリブ状の突出部14aと、抽出カートリッジ50(図2参照)を取り付けるための4つの係合部14bと、装置本体10の電源16(図4参照)と接続されている端子部14c(図3参照)と、検出部40(図4参照)を構成する光源部41および受光部42と、ポンプ18から送風されるエアを抽出カートリッジ取付部14の外側に噴出する噴出部14dとを含んでいる。また、抽出カートリッジ取付部14の4つの係合部14bは、弾性変形可能に設けられることによって、抽出カートリッジ50(図2参照)を着脱可能に構成されている。また、噴出部14dは、半球形状を有し、図示しないバネ部材により抽出カートリッジ取付部14の外側方向に突出するように付勢されている。
【0031】
装置本体10の係合孔15は、装置本体10が保持部材20に対して閉状態のとき(図1参照)に、保持部材20の係合部21eと係合するように設けられている。
【0032】
また、保持部材20は、図2および図3に示すように、装置本体10を回動可能に保持する保持部材本体部21と、ラチェット機構を構成する係合部材22と、保持部材本体部21の一方端部側(矢印Y1方向の端部側)を覆うカバー部材23とを含んでいる。
【0033】
また、保持部材20の保持部材本体部21は、平面的に見て中央部近傍に設けられた開口部21a、4つの逃げ部21b、段差部21cおよび21dと、矢印X1方向の端部側に設けられた係合部21eとを含んでいる。また、保持部材本体部21は、ABSなどの樹脂により形成されている。また、保持部材本体部21の下面部21fは、X2方向から見て円弧形状に形成されている。これにより、保持部材20が被験者の腕110に装着された際に、被験者の腕110との密着性を向上させることが可能となる。
【0034】
また、保持部材本体部21の開口部21aは、平面的に見て正方形状に形成されている。また、開口部21aは、図3に示すように、保持部材20が装着部材30により被験者の腕110に装着されることによって、被験者の腕110の測定対象領域110aを規定する機能を有している。このとき、被験者の腕110の測定対象領域110aは、開口部21aを介して矢印Z2方向に突出される。
【0035】
保持部材本体部21の4つの逃げ部21bは、装置本体10が保持部材20に対して閉状態のとき(図1参照)に、それぞれ、装置本体10の4つの係合部14b(図2および図3参照)を収容するために設けられている。保持部材本体部21の段差部21cは、装置本体10が保持部材20に対して閉状態のとき(図1参照)に、装置本体10の抽出カートリッジ取付部14(図2および図3参照)を収容するために設けられている。また、保持部材本体部21の段差部21dには、図2に示すように、一対の係合突起21gが形成されている。また、段差部21dおよび係合突起21gは、後述する微細孔形成装置120を使用する際の位置決めを行う機能を有している。
【0036】
保持部材本体部21の係合部21e(図2および図3参照)は、装置本体10が保持部材20に対して閉状態のとき(図1参照)に、装置本体10の係合孔15(図2および図3参照)と係合することにより、装置本体10が保持部材本体部21に対してA方向(開く方向)に回動するのを規制する機能を有している。このとき、装置本体10に抽出カートリッジ50(図2参照)が取り付けられている場合には、図4に示すように、抽出カートリッジ50は、保持部材本体部21の開口部21aから露出された被験者の腕110の表面に接触する。
【0037】
また、保持部材本体部21の下面部21fには、電源16と電気的に接続された導電性材料からなるシート(図示せず)が貼り付けられている。これにより、保持部材本体部21は、電極として機能するように構成されている。
【0038】
また、係合部材22は、ポリアセタール樹脂により形成されているとともに、押圧部22aを含んでいる。また、係合部材22は、保持部材20に対する装着部材30の移動方向を一方向(矢印Z2方向)に規制するラチェット機構を構成している。また、係合部材22は、ラチェット機構の規制を解除する解除機能を有しており、押圧部22aを押圧した際に、装着部材30に対して、ラチェット機構の規制が解除されるように構成されている。一方、押圧部22aの押圧を解除した際には、装着部材30に対して、ラチェット機構による規制が行われるように構成されている。
【0039】
また、保持部材20のカバー部材23は、装着部材30が通過する一対の通過孔23aと、係合部材22の押圧部22aが配置される穴部23bとを含んでいる。また、カバー部材23は、ABSなどの樹脂により形成されている。また、カバー部材23は、ねじ81により保持部材本体部21に取り付けられている。
【0040】
また、装着部材30は、図1および図2に示すように、連結部31と、連結部31の下端部(矢印Z1方向側の端部)から矢印Y2方向に延びる2つの挟み部32とを含んでいる。また、装着部材30は、ABSなどの樹脂(剛性体)により形成されている。また、装着部材30の内面には、保持部材本体部21の下面部21fに貼り付けられたシートと同様に、電源16と電気的に接続された導電性材料からなるシート(図示せず)が貼り付けられている。これにより、装着部材30は、電極として機能するように構成されている。
【0041】
また、装着部材30の連結部31は、複数の係合爪31aを有する一対の係合領域31bと、抜け止め用係合溝31cと、矢印Y2方向に突出する突起部31dとを含んでいる。また、連結部31は、挟み部32と保持部材20との間の距離を変更することが可能なように構成されている。また、複数の係合爪31aは、装着部材30が保持部材20に対して矢印Z2方向(上方向)に移動するのを許容するとともに、装着部材30が保持部材20に対して矢印Z1方向(下方向)に移動するのを規制するように構成されている。また、抜け止め用係合溝31cは、連結部31を矢印Z1方向にスライド移動させた場合に、装着部材30が保持部材20から抜け落ちるのを防止するために設けられている。また、矢印Y2方向に突出する突起部31dには、矢印X1方向および矢印X2方向に延びる貫通穴311dが設けられている。
【0042】
また、装着部材30の挟み部32は、矢印X2方向から見て湾曲板状に構成されているとともに、弾性変形可能に構成されている。また、挟み部32は、連結部31により挟み部32と保持部材20との間の距離が変更されることによって、保持部材20との間に被験者の腕110(図3参照)を上下方向から挟むことが可能なように構成されている。また、挟み部32には、矢印Y1方向側の端部に2つの突起部32aが設けられている。また、2つの突起部32aには、それぞれ、矢印X1方向および矢印X2方向に延びる貫通穴(図示せず)が形成されている。これら貫通穴は、連結部31の貫通穴311dと同軸になるように形成されており、連結部31の貫通穴311dおよび突起部32aの貫通穴には、ステンレス製の軸部材33が挿入されている。これにより、挟み部32を、連結部31に対して、軸部材33を中心に回動させることが可能となるとともに、挟み部32を連結部31側に折りたたむことが可能となる。
【0043】
ここで、本実施形態では、抽出カートリッジ50は、図4に示すように、アクリルなどの樹脂からなるカートリッジ本体51と、被験者の腕110から抽出されるグルコースを保持するための抽出媒体として機能する純水を収容する液体収容部52と、被験者の腕110からグルコースが抽出される抽出媒体保持部53と、グルコースに所定の反応を生じさせる反応部54と、噴出部14dから噴出されるエアが流入されるエア流入部55とを含んでいる。
【0044】
また、図4および図6に示すように、カートリッジ本体51の下面のほぼ中央部には、長方形状の開口部511aを有する第1凹部51aが形成されている。抽出媒体保持部53は、この第1凹部51aにより構成されている。また、長方形状の開口部511aは、矢印Y1および矢印Y2方向に延びるように形成されている。また、第1凹部51a内の第1底面512aには、外側方向(矢印Z1方向)に向かって延びる円柱形状の複数の侵入防止部513aが形成されている。また、侵入防止部513aは、その高さが第1凹部51aの深さとほぼ同じになるように形成されている。このため、侵入防止部513aの先端面は、カートリッジ本体51の下面とほぼ同一平面上に位置している。また、複数の侵入防止部513aは、開口部511aの全域にわたって、矢印Y1および矢印Y2方向に所定の間隔を隔てて1列に配置されている。これにより、被験者の腕110の表面が抽出媒体保持部53内に侵入するのを防止することが可能である。また、抽出媒体保持部53は、所定量(たとえば、約5μl〜約6μl)の液体を保持可能な容積を有している。
【0045】
また、図5に示すように、カートリッジ本体51の上面には、平面的に見て、抽出媒体保持部53(第1凹部51a)の矢印Y1方向側の端部と重なるように第2凹部51bが円形形状に形成されている。液体収容部52は、この第2凹部51bにより構成されている。また、第2凹部51bは、下方向(矢印Z1方向)に延びるように形成されている。また、図4に示すように、第2凹部51bの第2底面511bは、第1凹部51aの第1底面512aよりも上側(矢印Z2方向側)に配置されている。すなわち、液体収容部52および抽出媒体保持部53は、高さ方向(矢印Z1および矢印Z2方向)において重ならないように配置されている。また、第2底面511bの、平面的に見て液体収容部52および抽出媒体保持部53が重なる部分には、第1凹部51aの第1底面512aまで貫通する第1流路56が形成されている。これにより、液体収容部52および抽出媒体保持部53は、第1流路56を介して空間的に接続される。また、液体収容部52は、抽出媒体保持部53が保持可能な所定量とほぼ同量(たとえば、約5μl〜約6μl)の液体を収容することが可能な容積を有している。また、抽出カートリッジ50が未使用の状態では、液体収容部52には、抽出媒体保持部53が保持可能な所定量とほぼ同量(たとえば、約5μl〜約6μl)の純水が収容されている。
【0046】
また、図4および図5に示すように、カートリッジ本体51の上面には、第2凹部51bから矢印Y1方向に所定距離だけ延びる第2流路57が形成されている。第2流路57は、カートリッジ本体51の上面側が開放されるように水平方向に溝形状に形成されている。また、カートリッジ本体51には、第2流路57の矢印Y1方向側の端部から鉛直方向(矢印Z1および矢印Z2方向)にカートリッジ本体51を貫通するように第3流路58が設けられている。
【0047】
また、図4に示すように、抽出カートリッジ50が装置本体10の抽出カートリッジ取付部14に取り付けられている状態において、カートリッジ本体51の噴出部14dに対向する位置には、鉛直方向(矢印Z1および矢印Z2方向)に延びる貫通孔51cが形成されている。エア流入部55は、この貫通孔51cにより構成されている。また、図5および図6に示すように、平面的に見て、エア流入部55は円形形状を有している。また、エア流入部55は、第4流路59により第3流路58に接続されている。第4流路59は、カートリッジ本体51の上面側に設けられた第2流路57と同様の構成で、カートリッジ本体51の下面側に開放されるように溝形状に形成されている。これにより、エア流入部55および液体収容部52は、第2流路57、第3流路58および第4流路59を介して空間的に接続される。
【0048】
また、平面的に見て、円形形状のエア流入部55の直径は、半球形状を有する噴出部14dの直径よりも小さくなるように形成されている。これにより、抽出カートリッジ50が装置本体10の抽出カートリッジ取付部14に取り付けられた状態において、エア流入部55のカートリッジ本体51の上面側の開口部を、噴出部14dの外側表面により塞ぐことが可能である。また、この際、噴出部14dは、図示しないバネ部材により抽出カートリッジ取付部14の外側方向に突出するように付勢されているので、噴出部14dの外側表面およびエア流入部55の開口部の縁部は所定の付勢力がかかった状態で当接されている。これにより、噴出部14dから噴出されるエアが、エア流入部55のカートリッジ本体51の上面側の開口部から漏れてしまうのを抑制することが可能である。
【0049】
また、図5に示すように、カートリッジ本体51の上面には、平面的に見て、抽出媒体保持部53(第1凹部51a)の矢印Y2方向側の端部と重なるように第3凹部51dが長方形状に形成されている。また、図4に示すように、第3凹部51dの第3底面511dは、第1凹部51aの第1底面512aよりも上側(矢印Z2方向側)に配置されている。すなわち、第3凹部51dおよび抽出媒体保持部53は、高さ方向(矢印Z1および矢印Z2方向)において重ならないように配置されている。また、第3底面511dの、平面的に見て第3凹部51dおよび抽出媒体保持部53が重なる部分には、第1凹部51aの第1底面512aまで貫通する第5流路60が形成されている。また、図5に示すように、カートリッジ本体51の矢印X1および矢印X2方向側のほぼ中央部には、第3凹部51dからカートリッジ本体51の矢印Y2方向側の端部まで延びる溝部61が形成されている。また、溝部61は、その深さが第3凹部51dの深さとほぼ同じ深さになるように形成されている。
【0050】
また、本実施形態では、図5に示すように、第3凹部51dの第3底面511dには、平面的に見て、第3底面511dのほぼ中央部を長方形状に取り囲むように、所定の高さを有する2つの遮光テープ71および72が配置されている。具体的には、一方の遮光テープ71は、長方形状を有するとともに、他方の遮光テープ72は、L字形状を有している。また、一方の遮光テープ71は、他方の遮光テープ72に対して矢印X1方向側で、かつ、第3凹部51dの内側面から所定距離だけ離間した位置に配置されている。また、他方のL字形状を有する遮光テープ72は、一方の遮光テープ71に対して矢印X2方向側で、かつ、第3凹部51dの内側面から所定距離だけ離間した位置に配置されている。また、L字形状を有する遮光テープ72の矢印X1方向に延びる部分72aは、その先端部が一方の遮光テープ71から所定距離だけ離間した位置に配置されるように形成されている。また、遮光テープ71および72は、検出部40によるグルコースの検出の際に、光を遮光する機能を有している。
【0051】
また、遮光テープ71および72の上面には、後述するセンサ部材80が配置されている。センサ部材80は、平面的に見て、第3凹部51dとほぼ同じ大きさの長方形状を有しており、第3凹部51dの開口部を塞ぐように第3凹部51dに嵌め込まれている。また、遮光テープ71および72がスペーサとして機能することによって、センサ部材80が第3凹部51dの第3底面511dから所定距離(ほぼ遮光テープの高さ分の距離)だけ離間する位置に配置されている。ここで、反応部54は、平面的に見て第3凹部51dのほぼ中央部において、遮光テープ71および72と、第3凹部51dの第3底面511dと、センサ部材80の下面80aとにより取り囲まれることにより構成されている。また、第3凹部51d内において、第3凹部51dの内側面と、遮光テープ71および72と、第3凹部51dの底面511dと、センサ部材80の下面80aとにより取り囲まれた反応部54以外の部分は、反応部54のエア抜き、および、余剰分の液体を溝部61に逃がすための流路として機能する。また、反応部54は、抽出媒体保持部53が保持可能な所定量よりも少ない量(たとえば、約2.5μl〜約3μl)の液体を保持可能に構成されている。また、反応部54には、反応部54全域にわたって、遮光テープ71および72とほぼ同じ高さを有するメッシュシート62が配置されている。これにより、反応部54に移送された液体がメッシュシート62に吸収されるので、反応部54内に一定量以上の液体を確実に保持することが可能であるとともに、反応部54内に移送された液体をセンサ部材80の下面80aに容易に接触させることが可能となる。
【0052】
また、図6に示すように、カートリッジ本体51の下面には、開口部511aの矢印X1方向および矢印X2方向にそれぞれ第1電極63および第2電極64が取り付けられている。また、抽出カートリッジ50が装置本体10の抽出カートリッジ取付部14に取り付けられている状態において、第1電極63および第2電極64は、抽出カートリッジ取付部14の端子部14cおよび端子部14cと当接される抽出カートリッジ50の端子部51eを介して、装置本体10の電源16に電気的に接続されている。また、第1電極63は、開口部511aの矢印Y1方向側の端部から矢印Y2方向側の端部近傍まで延びるように配置されている。また、第2電極64は、第1電極63に接触されないように、開口部511aの矢印Y2方向側の端部から矢印Y1方向に微小距離だけ延びるように配置されている。すなわち、第1電極63と第2電極64とは、開口部511aの矢印Y2方向側の端部近傍において離間するように配置されている。なお、第1電極63および第2電極64は、実際には図4には現れない位置に配置されているが、ここでは、説明のために便宜上、図4に第1電極63および第2電極64を記載している。
【0053】
また、カートリッジ本体51の下面には、抽出媒体保持部53の開口部511a以外の領域に両面テープ65が貼り付けられている。これにより、カートリッジ本体51の下面側に開放された貫通孔51cおよび第4流路59を塞ぐことが可能であるとともに、カートリッジ本体51を被験者の腕110に密着させることが可能となる。また、図4および図5に示すように、カートリッジ本体51の上面側に開放された第2凹部51bおよび第2流路57を塞ぐように、カートリッジ本体51の上面にテープ66が貼り付けられている。
【0054】
また、センサ部材80の下面80aの反応部54内に露出される部分には、グルコースが反応することに起因して発色する発色色素と、所定の酵素とを含む混合ゲルが塗布され、その混合ゲルを乾燥させる処理が施されている。具体的には、センサ部材80の下面80aには、グルコースに対する触媒としての酸化酵素であるグルコースオキシダーゼ(GOD)と、グルコースがGODを触媒として反応することによって生成される過酸化水素(H)に対する触媒としての酸化還元酵素であるペルオキシダーゼ(POD)と、HがPODを触媒として反応することによって生成されるO(活性酸素)と反応して発色する発色色素とをゲルに混合した混合ゲルが塗布され、その混合ゲルを乾燥させる処理が施されている。
【0055】
図8は、被験者が血糖値推定装置を使用する際の手順を説明するためのフローチャートである。図9〜図11は、図1に示した一実施形態による血糖値推定装置の使用手順を説明するための図である。次に、図8〜図11を参照して、本実施形態による血糖値推定装置100の使用手順について説明する。
【0056】
まず、本実施形態では、ステップS1において、図9に示すように、保持部材20と装着部材30の挟み部32との間に被験者の腕110が挟みこまれるように、血糖値推定装置100を被験者の腕110に装着する。これにより、保持部材20の開口部21aにより測定対象領域110aが規定される。そして、ステップS2において、微細孔形成装置120により、被験者の腕110の開口部21aによって規定された測定対象領域110aに微細孔(抽出孔)111(図10参照)を形成する。具体的には、微細孔形成装置120のガイド部122を保持部材本体部21の段差部21dに嵌め込んだ後、被験者が、ボタン部121を押圧することにより、微細孔形成装置120の内部から微細針(図示せず)が突出する。これにより、被験者の腕110の開口部21aに規定された測定対象領域110aに微細孔(抽出孔)111(図10参照)が形成される。この際、図10に示すように、被験者の腕110に、表皮を貫通し、真皮までは到達するが、皮下組織までは到達しない微細孔(抽出孔)111が形成されるので、これらの複数の微細孔(抽出孔)111を介して被験者の腕110から体液を抽出することが可能となる。これにより、血糖値推定装置100を用いて被験者の腕110からグルコースを抽出する際に、被験者が感じる痛みを軽減することが可能である。この後、微細孔形成装置120を保持部材本体部21から取り外す。
【0057】
次に、ステップS3において、抽出カートリッジ50を装置本体10の抽出カートリッジ取付部14に取り付ける。具体的には、図11に示すように、未使用の抽出カートリッジ50には、カートリッジ本体51の上面および下面のほぼ全域を覆うようにフィルム90が貼り付けられており、カートリッジ本体51の上面および下面に露出されたすべての開口がフィルム90により塞がれている。これにより、カートリッジ本体51に設けられた各部に不純物が付着するのを防止している。また、フィルム90は、第1流路56の内側面に溶着されており、液体収容部52に収容された純水が外部に漏れ出すのを確実に防止するとともに、純水に不純物が混入するのを防止している。この状態で、被験者は、カートリッジ本体51の下面側の矢印Y1方向側に配置されたフィルム90の端部を矢印Y2方向に引っ張ることにより、カートリッジ本体51からフィルム90を剥がす。この際、第1流路56は開放されるが、第1流路56の直径が微小であるため液体収容部52の純水は漏れ出さない。また、カートリッジ本体51内部の液体収容部52以外の各部は、エア(気体)で満たされている。そして、被験者は、抽出カートリッジ50を装置本体10の抽出カートリッジ取付部14に取り付ける。その後、装置本体10をB方向に回動させて装置本体10を閉状態にし、操作ボタン12を操作することにより測定を開始する。
【0058】
図12は、図1に示した一実施形態による血糖値推定装置の制御部による測定処理を説明するためのフローチャートである。図13〜図18は、図1に示した一実施形態による血糖値推定装置の制御部による測定処理を説明するための図である。次に、図12〜図18を参照して、本実施形態による血糖値推定装置100の制御部17による測定処理について説明する。
【0059】
図13および図14に示すように、測定が開始された直後は、所定量(たとえば、約5μl〜約6μl)の純水が液体収容部52に収容されている。そして、ステップS11において、ポンプ18から送風されたエアが噴出部14dからエア流入部55に噴出される。これにより、エア流入部55、第4流路59、第3流路58および第2流路57に存在するエアがそれぞれ液体収容部52側に移送されるので、液体収容部52に収容された純水が、第2流路57から流入されるエアに押し出されるように、第1流路56を介して抽出媒体保持部53に移送される。そして、ステップS12において、制御部17により、液体収容部52から抽出媒体保持部53への純水の移送完了を確認する動作が行われる。具体的には、電源16により、第1電極63および第2電極64に高周波の電圧を印加するとともに、制御部17により、第1電極63および第2電極64の間のインピーダンスの変化を検知する。すなわち、抽出媒体保持部53の矢印Y1方向側に配置された第1流路56から抽出媒体保持部53に流入される純水が、抽出媒体保持部53の矢印Y2方向側の端部近傍にある、第1電極63と第2電極64との離間部分まで到達されると、第1電極63および第2電極64の間のインピーダンスが低下するので、その低下を制御部17により検知する。これにより、抽出媒体保持部53のほぼ全域に純水が移送されたことを確認することが可能となる。
【0060】
そして、ステップS13において、第1電極63および第2電極64の間のインピーダンスの変化の検知結果に基づいて、液体収容部52から抽出媒体保持部53への純水の移送が完了されたか否かが判断される。なお、この判断において、第1電極63および第2電極64の間のインピーダンスが所定の閾値を下回った場合に液体収容部52から抽出媒体保持部53への純水の移送が完了されたと判断するように制御部17を構成してもよいし、所定時間内のインピーダンスの低下量が閾値を超えた場合に液体収容部52から抽出媒体保持部53への純水の移送が完了されたと判断するように制御部17を構成してもよい。そして、所定時間が経過しても移送が完了しない場合には、ステップS19において、エラーとして取り扱われて、そのまま測定処理の動作が終了される。
【0061】
一方、制御部17により純水の移送が完了したと判断すると、ポンプ18によるエアの送風が停止され、純水の移送が停止される。この際、図15および図16に示すように、所定量(たとえば、約5μl〜約6μl)の純水が抽出媒体保持部53だけに存在する状態となる(すなわち、図15および図16において、純水が存在している領域が抽出媒体保持部53である)。そして、ステップS14において、被験者の腕110の表面により開口部511aが塞がれた抽出媒体保持部53に純水を保持したまま、所定の時間、被験者の腕110(微細孔111)からグルコースが抽出される。具体的には、制御部17の制御に基づいて、電源16により第1電極63および第2電極64が負極、装着部材30の内面に貼り付けられた導電性材料からなるシートが正極となるように定電流を供給する。これにより、被験者の体内のグルコースが負の電圧が印加された第1電極63および第2電極64に向かって移動され易くなるので、抽出媒体保持部53内の純水に被験者の腕110(微細孔111)からスムーズにグルコースを抽出することが可能となる。そして、所定の時間経過後、電源16による第1電極63および第2電極64と、装着部材30の導電性材料からなるシートとに対する定電流の供給が停止され、グルコースの抽出が完了される。なお、電源16は、直流電流を供給してもよいし、交流電流を供給してもよいし、直流と交流とを混合した電流を供給してもよい。また、電源16は、定電圧を印加する定電圧電源であってもよい。
【0062】
その後、ステップS15において、ポンプ18によるエアの送風が再開される。これにより、エア流入部55、第4流路59、第3流路58、第2流路57および液体収容部52に存在するエアがそれぞれ抽出媒体保持部53側に移送されるので、抽出したグルコースを保持する抽出媒体保持部53内の純水(以下、この液体をグルコース保持液とよぶ)の一部(たとえば、約2.5μl〜約3μl)が、第1流路56から流入されるエアに押し出されるように、第5流路60を介して反応部54に移送される。そして、反応部54に移送されたグルコース保持液は、反応部54に設置されたメッシュシート62に吸収されることによって、反応部54内に保持されるとともに、センサ部材80の下面80aに塗布された混合ゲルに接触される。また、グルコース保持液が移送される前に反応部54に存在したエアは、グルコース保持液の移送に伴って、溝部61を介して抽出カートリッジ50の外部に放出される。また、反応部54に移送されたグルコース保持液以外の余剰分のグルコース保持液は、第3凹部51d内の反応部54以外のスペース(流路)に逃がされる。
【0063】
そして、ステップS16において、グルコースの検出が開始される。具体的には、制御部17は、検出部40(図4参照)を構成する光源部41および受光部42を用いて、光源部41の光がセンサ部材80の発色色素により吸収された吸光度を所定時間、継続的に監視している。その後、ステップS17において、吸光度が実質的に飽和状態になった際の吸光度に基づいて、制御部17により血糖値が算出される。そして、ステップS18において、算出した血糖値が表示部11に表示され、制御部17による測定処理動作が終了される。
【0064】
本実施形態では、上記のように、被験者の腕110から抽出されるグルコースを保持するための所定量の抽出媒体(純水)を保持可能に構成された抽出媒体保持部53と、グルコースによって所定の反応を生じさせる反応部54と、被験者の腕110から抽出されたグルコースを保持した抽出媒体の少なくとも一部を抽出媒体保持部53から反応部54に移送するためのポンプ18とを設けることによって、グルコースを保持する抽出媒体が抽出媒体保持部53から反応部54に移送されるまで、反応部54を乾燥状態に保持しておくことができるので、グルコースに対する触媒を反応部54に設けた場合にも、触媒が抽出媒体に溶出されるのを抑制することができる。これにより、制御部17によるグルコースの分析精度が低下するのを抑制することができる。また、この血糖値推定装置100では、抽出媒体保持部53が保持可能な所定量と略等しい量の抽出媒体を収容した液体収容部52を設け、液体収容部52に収容された抽出媒体を所定量の抽出媒体を保持可能な抽出媒体保持部53に移送するようにポンプ18を制御することによって、ほぼ抽出媒体保持部53内にだけ抽出媒体が存在する状態でグルコースを抽出することができるので、抽出媒体に保持されたグルコースが抽出媒体保持部53の外にある抽出媒体に混和してしまうのを防止することができる。これにより、グルコースの濃度が不均一になるのを抑制することができるので、被験者の腕110から抽出されるグルコースをより精度よく分析することができる。
【0065】
また、本実施形態では、気体で満たされており、液体収容部52にそれぞれ接続される第1流路56および第2流路57を設けることによって、抽出媒体(純水)などの液体を介して、液体収容部52に収容された抽出媒体(純水)を抽出媒体保持部53に押し出す(移送する)のではなく、第2流路57の気体を介して、液体収容部52に収容された抽出媒体を抽出媒体保持部53に押し出す(移送する)ことができるので、抽出媒体保持部53に移送された抽出媒体が抽出媒体保持部53の外の液体に接触されるのを防止することができる。
【0066】
また、本実施形態では、抽出媒体保持部53、反応部54および液体収容部52を含む抽出カートリッジ50と、検出部40、ポンプ18および制御部17を含み、抽出カートリッジ50を着脱可能に構成された装置本体10とを設けることによって、抽出媒体保持部53、反応部54および液体収容部52を含む抽出カートリッジ50だけを容易に交換することができる。
【0067】
また、本実施形態では、抽出媒体保持部53内に、被験者の腕110の皮膚が抽出媒体保持部53に侵入するのを防止する侵入防止部を設けることによって、被験者の腕110の皮膚が抽出媒体保持部53に侵入することにより抽出媒体保持部53の容積が小さくなるのを防止することができるので、液体収容部52から抽出媒体保持部53に移送された抽出媒体が抽出媒体保持部53の外に溢れてしまうのを抑制することができる。
【0068】
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0069】
たとえば、上記実施形態では、生体成分分析装置の一例として血糖値推定装置を示したが、本発明はこれに限らず、他の生体成分分析装置にも適用可能である。
【0070】
また、上記実施形態では、微細孔形成装置により、被験者の操作に基づいて、被験者の腕に微細孔(抽出孔)を形成するとともに、電極に電圧を印加することによりグルコースの抽出を促進する例を示したが、本発明はこれに限らず、上記被験者の腕に微細孔(抽出孔)を形成する工程、および、電極に電圧を印加することによりグルコースの抽出を促進する工程のいずれか一方の工程を省略してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、抽出媒体を液体収容部から抽出媒体保持部に移送するように構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、前記所定量(たとえば、約5μl〜約6μl)の抽出媒体を予め抽出媒体保持部に収容するように構成してもよい。この場合、液体収容部を設ける必要はなく、抽出媒体保持部の入口流路(第5流路)と出口流路(第1流路)とが気体で満たされている限り、カートリッジの形状は限定されない。
【0072】
また、上記実施形態では、被験者が装置本体の操作ボタンを操作することにより測定を開始するように構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、被験者が操作ボタンを操作することなく、装置本体が閉じられた際に自動的に測定を開始するように構成してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、抽出媒体保持部内に円柱形状の侵入防止部を設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、円柱形状の侵入防止部以外であっても、たとえば、メッシュ状の侵入防止部を設けてもよいし、侵入防止部を設けなくてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、液体収容部に収容された抽出媒体を、エア(気体)を介して押し出すように構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、たとえば、エアを介さずに押圧部材で抽出媒体を直接押し出すようにしてもよいし、抽出媒体が混和されない液体を介して抽出媒体を押し出すようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態による血糖値推定装置を示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による血糖値推定装置の装置本体を開いた状態を示した斜視図である。
【図3】図1に示した一実施形態による血糖値推定装置の分析ユニットを被験者の腕に装着した状態を示した斜視図である。
【図4】図1に示した一実施形態による血糖値推定装置の構成を説明するための概略図である。
【図5】図1に示した一実施形態による血糖値推定装置の抽出カートリッジを上側から見た場合の平面図である。
【図6】図1に示した一実施形態による血糖値推定装置の抽出カートリッジを下側から見た場合の平面図である。
【図7】図5に示した200−200線に沿った断面図である。
【図8】被験者が血糖値推定装置を使用する際の手順を説明するためのフローチャートである。
【図9】図1に示した一実施形態による血糖値推定装置の使用手順を説明するための図である。
【図10】図9に示した微細孔形成装置により微細孔が形成された皮膚の状態を示した断面図である。
【図11】図1に示した一実施形態による血糖値推定装置に用いられる未使用の抽出カートリッジを示した概略図である。
【図12】図1に示した一実施形態による血糖値推定装置の制御部による測定処理を説明するためのフローチャートである。
【図13】図1に示した一実施形態による血糖値推定装置において、液体収容部に液体が収容された状態の抽出カートリッジを示した平面図である。
【図14】図1に示した一実施形態による血糖値推定装置において、液体収容部に液体が収容された状態の抽出カートリッジを示した断面図である。
【図15】図1に示した一実施形態による血糖値推定装置において、抽出媒体保持部に液体が保持された状態の抽出カートリッジを示した平面図である。
【図16】図1に示した一実施形態による血糖値推定装置において、抽出媒体保持部に液体が保持された状態の抽出カートリッジを示した断面図である。
【図17】図1に示した一実施形態による血糖値推定装置において、反応部に液体が保持された状態の抽出カートリッジを示した平面図である。
【図18】図1に示した一実施形態による血糖値推定装置において、反応部に液体が保持された状態の抽出カートリッジを示した断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 装置本体
16 電源(抽出促進部)
17 制御部(分析部)
18 ポンプ
40 検出部
50 抽出カートリッジ
52 液体収容部
53 抽出媒体保持部
54 反応部
56 第1流路(出口流路)
57 第2流路(入口流路)
63 第1電極(抽出促進部)
64 第2電極(抽出促進部)
100 血糖値推定装置(生体成分分析装置)
110 被験者の腕(生体)
513a 侵入防止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持可能に構成された抽出媒体保持部を被験者の皮膚に配置するステップと、
前記所定量と略等しい量の前記抽出媒体を収容した液体収容部に収容された前記抽出媒体を前記抽出媒体保持部に移送するステップと、
前記抽出媒体保持部に移送された前記抽出媒体に前記抽出物を抽出するステップと、
抽出された前記抽出物を保持した前記抽出媒体の少なくとも一部を、前記抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部に移送するステップと、
前記反応部で生じる前記所定の反応から前記抽出物を検出するステップと、
前記抽出物を検出した結果を分析するステップとを備える、生体成分分析方法。
【請求項2】
被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持可能な抽出媒体保持部と、
前記抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部と、
前記反応部で生じる所定の反応から前記抽出物を検出する検出部と、
前記所定量と略等しい量の前記抽出媒体を収容した液体収容部と、
前記液体収容部に収容された前記抽出媒体を前記抽出媒体保持部に移送するとともに、前記抽出媒体保持部に移送され、前記被験者から抽出された前記抽出物を保持した前記抽出媒体の少なくとも一部を、前記抽出媒体保持部から前記反応部に移送する液体移送部と、
前記抽出物を検出した結果を分析する分析部とを備え、
前記抽出媒体保持部を前記被験者の皮膚に接触させて配置することで、前記抽出媒体保持部に前記抽出物を抽出することが可能となるように構成された生体成分分析装置。
【請求項3】
前記抽出媒体保持部が保持可能な前記抽出媒体の前記所定量は、前記反応部が保持可能な前記抽出媒体の量よりも大きい、請求項2に記載の生体成分分析装置。
【請求項4】
気体で満たされており、前記液体収容部にそれぞれ接続される入口流路および出口流路をさらに備える、請求項2または3に記載の生体成分分析装置。
【請求項5】
前記抽出媒体保持部と、前記反応部と、前記液体収容部とを含むカートリッジと、
前記検出部と、前記液体移送部と、前記分析部とを含み、前記カートリッジを着脱可能に構成された分析装置本体とをさらに備える、請求項2〜4のいずれか1項に記載の生体成分分析装置。
【請求項6】
前記抽出物の抽出を促進する抽出促進部をさらに備える、請求項2〜5のいずれか1項に記載の生体成分分析装置。
【請求項7】
前記抽出媒体保持部は、前記被験者の皮膚が前記抽出媒体保持部に侵入するのを防止する侵入防止部をさらに備える、請求項2〜6のいずれか1項に記載の生体成分分析装置。
【請求項8】
前記抽出物はグルコースであり、
前記分析部は、前記グルコースを検出した結果を分析することによって、血糖値を推定するように構成されている、請求項2〜7のいずれか1項に記載の生体成分分析装置。
【請求項9】
被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持した抽出媒体保持部と、
気体で満たされており、前記抽出媒体保持部に接続される入口流路および出口流路と、
前記抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部と、
前記反応部で生じる所定の反応から前記抽出物を検出する検出部と、
前記被験者から抽出された前記抽出物を保持した前記抽出媒体の少なくとも一部を、前記抽出媒体保持部から前記出口流路を介して前記反応部に移送する液体移送部と、
前記抽出物を検出した結果を分析する分析部とを備え、
前記抽出媒体保持部を前記被験者の皮膚に接触させて配置することで、前記抽出媒体保持部に前記抽出物を抽出することが可能となるように構成された生体成分分析装置。
【請求項10】
被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持可能に構成された抽出媒体保持部と、
前記抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部と、
前記所定量と略等しい量の前記抽出媒体を収容した液体収容部とを備え、
前記反応部で生じる所定の反応から前記抽出物を検出して分析する分析装置本体に着脱可能に構成された、抽出カートリッジ。
【請求項11】
被験者から抽出される抽出物を保持するための所定量の抽出媒体を保持した抽出媒体保持部と、
気体で満たされており、前記抽出媒体保持部に接続される入口流路および出口流路と、
前記抽出物によって所定の反応を生じさせる反応部とを備え、
前記反応部で生じる所定の反応から前記抽出物を検出して分析する分析装置本体に着脱可能に構成された、抽出カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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