説明

生体模倣機械継ぎ手

生体模倣ロボット装置の支持部材の間に可変トルクを発生させるための生体模倣機械継ぎ手であって、ベース支持部材、ベース支持部材と回転可能に結合している回転支持部材、およびベース支持部材と回転支持部材との間に動作可能に結合している半径可変プーリを備える。半径可変プーリは、半径が可変であり外周表面に形成される1つまたは複数の腱溝を備える滑車本体を具備する。機械継ぎ手は、1つまたは複数の柔軟な腱と拮抗アクチュエータ対をさらに備え、それぞれのアクチュエータ対は1つまたは複数の腱と結合し、半径可変プーリの周りの腱をいずれの方向にも動作できるように構成され、ベース支持部材と回転支持部材との間に可変トルクを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によってその全体が本出願に援用される、2008年8月28日に出願された、「生体模倣機械継ぎ手(Biomimetic Mechanical Joint)」という名称の米国特許仮出願番号61/092,699号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明の技術分野は、一般に外骨格およびロボットに関し、さらに詳しくは、自然な、または人間のような特性を有する外骨格およびロボットのための機械継ぎ手に関する。
【背景技術】
【0003】
ロボットおよびロボット装置の開発における著しい進展が、近年達成されてきた。ロボット組み立ておよびマニピュレーターの使用によって得られる生産効率、探索ロボット車両(火星の表面を走行するものなど)、およびテーマパークおよび他のアトラクションの場面でしばしば見られるアニマトロニクスキャラクタが、よく知られたいくつかの例である。しかしながら、これらの専門化されたそれぞれのロボットは共通特性を有し、それは、真に人間に近い能力を持たず、また人間に近い動作もしないということである。実際、多くのロボット装置は、外部電源供給源とつながれており、また他のものは、2つの足部を使用せず、または人間に近い歩行をしないように構成されている。真に可動性があり、つながれていない人間型ロボットおよび外骨格は存在するが、発展の初期段階にあり、継続的に改良されて、可動性があり、人間に近い動作によりよく関与することができる。
【0004】
つながれていない人間型ロボットによる動作を目指した、人間に類似する、または生体を模倣するロボットシステムの進歩に、技術上の困難性が引き続き存在する1つの理由は、ロボットに運動能力を与える機械継ぎ手そのものに由来する非効率性があるからである。ロボット装置では、機械継ぎ手の周りの動作によって、エネルギーを主に消費する。さらにほとんど例外なく、ロボットおよび人間を補助する装置の機械継ぎ手は、制御と性能のために最適化されてきており、これらは効率を最適化するという観点よりも優先されている。たとえば、多くの現代的な非生体模倣産業ロボットは、重要な仕事を実行し、過剰なパワーを供給できる外部の電気、流体または機械的な動力システムに永久に接続されている利点を有することで、関節継ぎ手は正確で、力強い動作をすることができるが、非常にエネルギーを浪費する。
【0005】
これらの装置は、主に電源供給源をすぐに利用できる研究室、研究センター、または人口の多い地域に居住する個人に限定されてきたので、動力付き人工義肢では効率も犠牲にされてきた。しかしながら、遠隔作業または戦場環境では、長期間の動作および/または生存していくためには、効率が重大な問題であり、時期尚早に燃料切れまたはそのバッテリーが放電すると、外骨格または人間に近いロボットは役に立たない。人間に近いロボット装置または外骨格のより効率的な動作の進歩、および、特に広い動作範囲と負荷条件において、速度またはパワーを犠牲にしない生体模倣継ぎ手のより効率的な動作が、是非とも必要であり、これにより、改良された、つながれていない人間に近いロボットの動作を提供することに役に立つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
外骨格および人間に近いロボットの機械継ぎ手の効率を最適化するために、人体は1つのモデルであり得る。人間を含む動物界のすべての種の体は、長年をかけて高効率な動作をするように成長してきており、最後の食事だけでまたはエネルギー用の体脂肪だけで機能し、生き残る。天然関節の周囲の人間の手足の効率的な動作を模倣する能力は、少なくとも部分的には、生体模倣機械継ぎ手によって提供されることができる。
【0007】
本発明では、天然の関節が備える可変トルクを模倣する生体模倣機械継ぎ手を提供する能力を含み、その可変トルクは、さまざまな位置範囲でおよびさまざまな負荷条件のもとで、継ぎ手を効率的に回転させるために必要である。外骨格および人間に近いロボットでは、生体模倣機械継ぎ手は、1つまたは複数の柔軟な腱を備える1つまたは複数の対の拮抗アクチュエータと結合している半径可変プーリを具備してもよく、対応する天然の関節が備える可変トルクを模倣する、回転支持部材または四肢部分を回転させる場合に、可変トルクを供給する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に概括的に記載の代表的な実施形態によれば、本発明は天然の関節が備える可変トルクを模倣する生体模倣機械継ぎ手にあり、機械継ぎ手はロボット装置のベース支持部材と、ロボット装置の回転支持部材と、回転部材をベース部材へ回転可能に結合する半径可変(「VR」)プーリとを具備する。VRプーリは、さらに外周表面とピボットポイントを備える滑車本体と、外側表面の長さ方向に沿って変更可能である外側表面とピボットポイントとの間の半径方向距離と、外側表面に形成される1つまたは複数の腱溝と、腱溝の中に形成される腱取り付けポイントを備える。機械継ぎ手は、1つまたは複数の柔軟な腱も備え、それぞれの腱は腱取り付けポイントと結合し、前記腱溝の中で反対方向に前記プーリの周りを囲む第1の自由端部分と第2の自由端部分を備える。機械継ぎ手は、さらに1つまたは複数の拮抗アクチュエータ対を備え、それぞれのアクチュエータ対は腱の2つの端部部分と一対の端部コネクタで結合し、アクチュエータ対は半径可変プーリの周りで腱をいずれの方向にも引っ張るように構成され、ベース支持部材と回転支持部材との間に可変トルクを生成する。
【0009】
本明細書に概括的に記載されている別の代表的な実施形態によれば、本発明は天然の関節が備える可変トルクを模倣する生体模倣機械継ぎ手にあり、機械継ぎ手はロボット装置のベース支持部材と、ロボット装置の回転支持部材と、回転部材をベース部材へ回転可能に結合する半径可変(「VR」)プーリとを備える。VRプーリは、さらに外周表面とピボットポイントを備える滑車本体と、外側表面の長さ方向に沿って変更可能である外側表面とピボットポイントとの間の半径方向距離と、外側表面に形成された腱溝と、腱溝に形成された1つまたは複数の腱取り付けポイントを備える。機械継ぎ手は、腱取り付けポイントと結合し、腱溝の中でプーリの周りを囲む自由端部分を備える1つまたは複数の柔軟な腱も備え、1つまたは複数のアクチュエータは、腱の自由端部分に結合し、半径可変プーリの周りで腱を引っ張るように構成され、ベース支持部材と回転支持部材との間に可変トルクを生成する。
【0010】
本発明は、支持部材とロボット装置との間に可変トルクを生成するための生体模倣機械継ぎ手を製造する方法にもある。該方法は、ベース支持部材と回転支持部材を取得する工程と、ピボット手段を半径可変プーリをベース支持部材と回転支持部材との間に結合し、ベース支持部材の周囲の回転支持部材の回転を容易にする工程を含む。該方法は、さらに1つまたは複数の拮抗アクチュエータ対を回転支持部材に組み込む工程と、半径可変プーリと拮抗アクチュエータ対との間に1つまたは複数の柔軟な腱を据え付ける工程とを含み、アクチュエータ対は腱を半径可変プーリの周囲のいずれの方向にも駆動させ、ベース支持部材と回転支持部材との間に可変トルクを生成する。
【0011】
本発明の特徴および利点は、以下に記載され、添付図面とともに参照され、本発明の特徴を一緒に説明する詳細な説明によって明らかになるであろう。これらの図面は、単に本発明の例示的な実施形態をあらわし、したがって、本発明の範囲を制限するものではないことが理解されるべきである。さらに、本願の図の全体に記載され、図示される、本発明の構成要素は、多種多様な異なる構成で配置され、設計されることは当然のことである。それにもかかわらず、本発明は、添付図面によるさらなる特異性および詳細によって記載され、説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の生体模倣機械継ぎ手のためのプラットフォームを提供できる例示的外骨格の斜視図を示す図である。
【図2】本発明の例示的な実施形態による、生体模倣機械継ぎ手の側面図を示す図である。
【図3】図2の実施形態による、半径可変プーリの拡大側面図を示す図である。
【図4】図2の実施形態による、半径可変プーリおよび腱システムの拡大側面図を示す図である。
【図5】2つの腱溝を備える半径可変プーリの側面斜視図を示す図である。図5Aは、異なる直径の2つの腱溝を備える半径可変プーリの側面図を示す図である。図5Bは、異なる形状および配置の2つの腱溝を備える半径可変プーリの側面図を示す図である。
【図6】本発明の別の例示的実施形態による、生体模倣機械継ぎ手の斜視図を示す図である。
【図7】さらに本発明の別の例示的実施形態による、生体模倣機械継ぎ手の斜視図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の発明の詳細な説明は、発明の一部を形成し、説明目的で示される添付図面、および、本発明を実施できる例示的な実施形態を参照する。例示的な実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分詳細に記述されているが、他の実施形態で実現されてもよく、本発明のさまざまな変形形態が、本発明の精神および範囲を逸脱しない範囲で実施できることを理解するべきである。このように、以下の本発明の例示的な実施形態のより詳細な説明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定することを意図せず、本発明の特徴および特性を記述し、当業者が本発明を十分に実施することを可能にする説明目的のために示すものである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0014】
図1〜図7に示されるのは、生体模倣機械継ぎ手のさまざまな例示的な実施形態であり、動力付き人工義肢、人間に近いロボット、外骨格または他の生体模倣ロボット装置などに一体に組み込まれることができる。本発明の生体模倣機械継ぎ手は、1つまたは複数の拮抗アクチュエータと組み合わせて、半径可変(「VR」)プーリを使用することができ、単一の自由度(「DOF」)軸の周りの機械継ぎ手の動作要件を満たす。本発明は、システムが典型的には同一軸の周囲を回動させるための回転DCモータアクチュエータを使用する、従来技術とは異なるものであり得る。VRプーリが提供する機械的利点によって、拮抗アクチュエータの大きさを、類似のアクチュエータと比較して小さくできるとともに同一のトルクを供与する。この大きさの低減によって、効率と性能の両面を著しく改善することができる。
【0015】
前述したように、本発明は1つまたは複数の拮抗アクチュエータまたは対となった拮抗アクチュエータを使用でき、ベース支持部材の周りの回転支持部材を駆動する。それぞれの拮抗アクチュエータは、腱のどちらか一方の端部を引っ張る、拮抗的に配置された2つの一方向アクチュエータ(たとえば拮抗アクチュエータ対)を備えることができ、腱は両端部で拮抗アクチュエータに結合することができ、中央部でVRプーリに組み込まれた腱取り付けブロックに結合することができる。腱のどちらか一方の端部を引っ張ることによって、拮抗アクチュエータに対してVRプーリを、または逆にも同様に回転させることができる。拮抗アクチュエータは、さらに、単独で動作する油圧アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、リニアモータ、または電気回転モータ、またはいずれかの他の一方向アクチュエータ(たとえば、1つの方向だけに力を発生することができる)を備えてもよい。
【0016】
あるいは、単一の腱は、2つの腱に分割されることができ、それぞれの腱の1つの端部はVRプーリの腱取り付けポイントに結合され、それぞれの腱の他の端部は拮抗アクチュエータ対の1つのアクチュエータに結合される。本発明のさらに別の実施形態では、生体模倣機械継ぎ手は、VRプーリの同じ側で、腱取り付けポイントに接続される1つまたは複数の柔軟な腱と結合している1つまたは複数の一方向アクチュエータを備えることができ、一方向アクチュエータは継ぎ手を一方向だけに動作させ、作用荷重(たとえば重力の影響を受ける重量など)によって継ぎ手を反対方向に動作させる。
【0017】
本発明の生体模倣機械継ぎ手は、その一部が本願明細書で引用され、以下のより詳細な説明にわたって引用される、従来の関連する機械継ぎ手よりも著しい利点を提供することができる。第1に、継ぎ手の全位置範囲にわたって一定トルクを提供するDCモータなどを使用する、人工義肢、外骨格、人間に近いロボットまたはロボット装置の中に存在する機械継ぎ手よりも、生体模倣機械継ぎ手は著しく効率的であり得る。人体の自然な動作を模倣する機械継ぎ手は、重力に対する相互の支持部の位置に応じて変化するトルク要件を有する。たとえば、しゃがんだ姿勢から立ち上がる場合よりも、水平面に沿って歩く場合に、義足の継ぎ手を回転させるために要求されるトルクは小さい。その結果、最大トルク動作条件のための大きさを有する一定トルクシステムは、トルク動作条件が小さい場合には大きすぎ、したがってエネルギーを浪費するので不都合である。高トルク動作条件では、プーリとアクチュエータシステムとの間に機械的利点を生成する半径可変プーリを使用することによって、より適切な大きさとすることができ、異なる多くの低トルク動作条件を満たす。言い換えれば、特定の動作条件に対して効率を最適化することができる。
【0018】
複数の分割拮抗アクチュエータがVRプーリとともに使用されると、効率および性能をさらに改良することができる。「分割」アクチュエータは、機械継ぎ手に要求される、ほとんどのアクチュエータシステムで標準設計ポイントとなる、潜在的な最大トルクの100%未満に合致するアクチュエータとして定義できる。第1の分割アクチュエータは少なくとも1つの他の分割アクチュエータと組み合わされ、一組の分割アクチュエータは、一緒に動作し、機械継ぎ手の最大トルク要件を満たす。
【0019】
単一の、100%アクチュエータシステムは、すべてのアクチュエータがすべての時間で活性化されなければならないという点で、不都合であり得る。アクチュエータがその最適の設計ポイントで動作しない場合には、エネルギーを浪費する。最大トルク要件に合わせた大きさの油圧シリンダーを使用する油圧システムでは、たとえば、浪費されたエネルギーは、ごくわずかまたは負荷の無い場合に、油圧ピストンを動かすために使用される過剰な高圧油圧油で具現化できる。さらに、押圧されるべき荷重が存在する場合であっても、アクチュエータの動作が過剰に速い場合には、支持部材がゆっくり、より望ましいペースで動作するように、高圧流体は圧力調整弁またはサーボ弁によるスロットルでしばしば制御される。過剰な流体およびスロットルの使用の両方とも、加圧された油圧油に含まれる潜在的なエネルギーを浪費する例である。
【0020】
DOF毎の単一のアクチュエータを、DOF毎に2つ以上の分割アクチュエータに分割することで、機械継ぎ手は従来技術の固有の不都合さを克服できる。本質的には、複数の分割アクチュエータを使用することで、1つまたは複数のアクチュエータを選択的に採用する変速のシナリオを生成し、継ぎ手に要求されるすべての動作シナリオを効率的に満たす。このように、継ぎ手に対する最大の設計トルク条件未満の、任意の特定の動作条件で、1つのまたは他のまたは両方の分割アクチュエータは、その最適および最も効率がよい設計ポイントで動作することができる。
【0021】
2つの分割拮抗アクチュエータシステム間の分割割合は、95/5から50/50のどの範囲にもなり得るし、人型ロボット本体中の生体模倣機械継ぎ手の位置に応じて変化することができる。最適な比は、機械継ぎ手の性能境界条件に依存し、ロボット本体に指定された目的(たとえば汎用、思いものを持ち上げる、走行、登坂補助など)およびアクチュエータシステムのアクチュエータの種類および構成に応じて相当変わる。しかしながら、最適な効率のために構成された、2つの分割拮抗アクチュエータを備える生体模倣機械継ぎ手は、一般に80/20から60/40の範囲の分割割合を有することができる。
【0022】
それぞれのDOF軸の周りに動作する分割拮抗アクチュエータが、継ぎ手または四肢に要求される性能を満たすために十分な1つだけの筋肉を、任意の特定の時間、自然に使用する人体の構造をよりよく模倣できることが、改良された効率の理由の1つである。言い換えれば、望ましい方法で取り付けられた支持部材を動作させるために必要とされる、1つだけの筋肉または筋肉群を、選択的に採用し、または活性化することで、人体の関節のエネルギーが節約される。さらに、VRプーリと組み合わされて、結果としてVRプーリと組み合わせた分割アクチュエータの両方を選択的に使用できる本発明の機械継ぎ手は、天然の関節の性能および効率の両方を、より厳密に模倣することができる。
【0023】
上述される利点のそれぞれは、以下に記載される詳細な説明、および添付図面を参照してよりよく理解されることによって、明白であり、本発明の構成要素および特徴は、本願中に記載の数字によって指定される。これらの利点はどのような場合にも、限定的であることを意味しない。実際、当業者であれば、本発明を実施することによって、本明細書に詳細に記載される利点とは別の、他の利点を実現できることを理解するべきである。
【0024】
図1に示されるのは、外骨格10の例示的実施形態であり、本発明の生体模倣機械継ぎ手の種々の実施形態のためのプラットフォームを提供し得る。外骨格は、身体障害者の運動機能を高めること、肉体労働の増加、および兵士の活動の強化を含むさまざまな状況で、人間に機械的補助を提供する可能性を有する。図示されるように、外骨格は、全身支持フレームを具備し得る。別の実施形態では、下半身歩行部分などの一部分の身体フレームも具備することができ、それぞれの四肢でも実現できる。生体模倣機械継ぎ手は、外骨格のどのような荷重支持部材にも適用でき、1つまたは複数の脚部の関節または身体の下半身に特に好適である。
【0025】
図1に示すように、外骨格10は、下半身部分12を備える。下半身部分は、2つの脚部20が取り付けられる骨盤部14を備え、さらに2つの脚部20のそれぞれは、股関節22、膝継ぎ手28および足関節34から構成され得る。本出願の目的のために、生体模倣機械継ぎ手は、ピボット装置、取り付けられた回転支持部材およびアクチュエータサブ組み立て品を備える組み立て品によって特徴付けることができる。アクチュエータサブ組み立て品は、回転支持部材の内側にしばしば組み込まれる。したがって、生体模倣機械股関節22は、腰ピボット装置24および太股または大腿部支持部材26を備えることができ、膝継ぎ手28は、膝ピボット装置30および下肢またはふくらはぎ支持部材32を備えることができ、足関節34は、足首ピボット装置36および足支持部材38を備えることができる。
【0026】
図2に示されるのは、外骨格または生体模倣ロボット装置の耐荷重性継ぎ手のいずれにも適用できる、生体模倣機械継ぎ手の1つの例示的実施形態100の側面図である。生体模倣機械継ぎ手100は、ピボット装置140または半径可変(「VR」)プーリ142の周囲を覆い、機械継ぎ手の回転支持部材102を形成する強固な外側殻部104を備え得る。
【0027】
拮抗アクチュエータであって、この場合には2つの単独で動作する油圧アクチュエータ122、124を利用する単一の拮抗アクチュエータ対120は、拮抗アクチュエータの間に配置される制御モジュール112の中に組み込まれた、油圧制御システムによって駆動されるアクチュエータサブ組み立て品110の中に具備され得る。柔軟な腱130は、拮抗アクチュエータ対120から延在する油圧ピストン126および油圧ピストン128に両端部で結合することができ、中央部ではVRプーリに組み込まれた腱取り付けブロック162に結合することができる。本発明の別の態様では腱130は、2つの短い腱に分けられることができ、短い腱のそれぞれの1つの端部はVRプーリの腱取り付けポイントに結合され、他の端部は拮抗アクチュエータ対の1つのアクチュエータに結合される。
【0028】
図2に図示される拮抗アクチュエータ120は、柔軟な腱130と共にVRプーリ142の周りに結合される2つの単独で動作する線形油圧アクチュエータ122、124を備えることができるが、本発明の生体模倣機械継ぎ手を駆動する拮抗アクチュエータは、さらに、柔軟な腱を介してVRプーリの周囲に結合することができる、単独で動作する空気圧アクチュエータ、電気リニアモータ、電気回転モータ、または一方向アクチュエータ(たとえば、一方向だけに力を生成することができる)のいずれかの対を備えることができる。
【0029】
図2に示される生体模倣機械継ぎ手の例示的実施形態100では、アクチュエータサブ組み立て品110は、回転支持部材102の強固な殻部104の内側に組み込まれることができる一方で、VRプーリはベース支持部材106に対して固定されることができる。例示的な例によれば、生体模倣機械継ぎ手が図1の外骨格の股関節に一体化される場合には、継ぎ手のアクチュエータサブ組み立て品は、太股すなわち大腿部支持部材の内側に組み込むことができる一方で、腰VRプーリは、骨盤部に対して固定する。しかしながら、生体模倣機械継ぎ手の代替態様では、アクチュエータサブ組み立て品は、ベース支持部材106(この場合には骨盤部)に対して組み込むことができ、VRプーリ142は回転支持部材102(すなわち太股支持部材)に対して固定することができる。
【0030】
本明細書に記載の実施形態の多くは、回転支持部材102の内側にアクチュエータサブ組み立て品110を配置するが、いずれの構成も、ベース支持部材106に対して回転支持部材102を生体模倣機械継ぎ手100によって回転させることができる。さらに、ベース支持部材106は、隣接する機械継ぎ手の回転支持部材ばかりではなく、胴体などの生体模倣ロボット装置の硬い身体部を備えることができる。
【0031】
VRプーリ142の拡大側面図が、図3および図4に示される。VRプーリは、円盤部144と軸部分146を備えることができ、VRプーリの軸部分の中心孔148の内側に適合するピボットポスト180の周りを回転することができる。ピボットポスト180または中心孔148のどちらか一方、あるいは両方の中に配置されると、VRプーリとピボットポストを相互に回転できるようにする、軸受部または軸受筒(図示せず)などの接触面を、回転させることができる。
【0032】
円盤部144は、腱溝152をその中に形成できる外周表面150を備えることができる。腱溝は、腱と、腱がVRプーリから外れることを防ぐ側壁158とに接触する降着表面156を備えることができる。腱溝152を軸方向に分割し、腱取り付けブロック162をプーリに組み込むための場所を提供する、円盤部144の中に取り付けスロット160が形成できる。中空ポケットすなわち空洞170も円盤部の中に形成でき、VRプーリの質量を低減し、外側の降着表面を支持する長さが異なる構造リブ172を備えることができる。
【0033】
VRプーリ142の外周表面150は円形に形成でき、中心孔148が丸い外側表面または円盤本体144の幾何学的中心からオフセットまたは偏心した位置に形成される。中心孔148は、さらにVRプーリ142が周囲を回転するピボットポイントを規定でき、丸い外側表面とピボットポイントとの間の半径方向距離は、外側表面150の長さ方向に沿って可変である。このように、偏心した中心孔148と軸部分146を備える丸いプーリは、図示するようにVRプーリを形成できる。本発明の別の態様では、VRプーリの円盤本体と外側表面は丸くなくともよいが、その代わりに、図3〜図4に図示される偏心したピボットポイントを備える丸い実施形態142よりも偏心した、または偏心していない連続可変の半径を備えるVRプーリを形成する、長楕円形、楕円形、または他の非円形の本体または形状であり得る。
【0034】
VRプーリ142は、取り付けスロット160と、取り付けブロック162と直径方向の反対側にある円盤部144の切除ノッチ164とを備えることができる。切除部の中では、腱溝152の側壁158は、降着表面156の高さまで低く除去され、腱溝の降着表面と実質的に同一平面のノッチとなる。切除部のそれぞれの端部は、アクチュエータピストンの端部に組み込まれる端部コネクタ132、124の丸い外形に一致する、かどの丸み部166、168を備えることができる(図4参照)。このように、切除部のかどの丸み部は、VRプーリがいずれかの最も遠い回転位置まで回転された場合に、端部コネクタを部分的に受容するように構成できる。図4を参照すると、VRプーリがその時計回りの位置で最も遠くまで回転した場合に、切除ノッチのかどの丸み部168は、丸い端部−コネクタ134を受容できる。同様に、VRプーリがその反時計回りの位置で最も遠くまで回転した場合に、切除部のかどの丸み部166は、丸い端部−コネクタ132を受容できる。
【0035】
かどに半径を有する切除部を備えるVRプーリを備えることによって、アクチュエータピストンがVRプーリに隣接して再遠端の限度に達し場合であっても、腱とアクチュエータサブ組み立て品がガタガタ動くことを避けるばかりではなく、生体模倣機械継ぎ手の回転範囲を、いずれの方向にも数度、都合よく広げることができる。
【0036】
腱130の第1の端部分および第2の端部分は、当該技術分野において利用できるいずれかの手段で、アクチュエータピストンの先端に取り付けられることがでる。図示された実施形態では、たとえば、腱は、十分に長く製造でき、端部は、端部コネクタ132、134の周りで輪になって、つまり中を通って、取り付けブロック162に戻って接続される。さらに、端部コネクタは、腱の輪に合致し、腱を端部コネクタに接続するコネクタロッド136とともに構成されることができる。輪になった構成は、腱が、交互にVRプーリの周りを包んだり、包まなかったりするので、動作中にアクチュエータピストンが腱の微妙な動きを可能にすることで好都合であり得る。これらの動きは、応力を和らげ、摩耗を低減することができ、さらに拮抗アクチュエータに作用する荷重を純粋な引っ張り力にすることを確実にする。
【0037】
図5に示されるのは、外周表面250に形成される2つの腱溝252、254を備えるVRプーリ242の側面斜視図であり、2つの腱で動作するシステムを利用する、生体模倣機械継ぎ手の例示的な実施形態に適用される。図に示すように、腱溝は、異なる大きさの腱を保持するように形成でき、大きな溝254は、小さな溝252よりも著しく広い腱を保持するように構成できる。取り付けスロット260と、直径方向の反対側にある切除ノッチ264の両方とも、それぞれの腱溝を横方向に分割できる。腱溝252と腱溝254は直径D1と直径D2をそれぞれ有し、実質的に同じ直径とすることができる。
【0038】
図5Aに示される本発明の別の態様では、さらに、大きな腱溝254aは、小さな溝254aの直径D1aよりも小さい直径D2aを有し、それぞれの腱と拮抗アクチュエータ対に異なる機械的利点を割当てる。図5Bに図示されるさらに別の態様では、お互いに揃っておらず、それぞれが異なる直径D1b、D2bを有しても、有さなくともよい非円形または楕円形状を備える、小さな腱溝252bおよび大きな腱溝254bとともに、VRプーリが形成できる。2つの腱溝の間の大きさおよび/または形状および/または方向の差異は、拮抗アクチュエータまたは拮抗アクチュエータ対の大きさの違いと組み合わせて使用でき、以下により詳細に記載されているように、機械継ぎ手の性能特性を修正し、引き出すことで柔軟性をさらに付与する。その結果、生体模倣機械継ぎ手の可変トルク特性は、回転方向に依存し、機械継ぎ手に天然の関節の性能および効率をよりよく模倣させる。
【0039】
回転支持部材またはベース支持部材の強固な外側殻部が無い、2つの腱および2つの溝を備えるVRプーリを利用する、生体模倣機械継ぎ手の1つの例示的実施形態200を図6に図示する。生体模倣機械継ぎ手は、2つの拮抗アクチュエータ対220、230を備えることができる。拮抗アクチュエータのどちらか一方を構成する2つのアクチュエータと腱は、単一の拮抗アクチュエータ対としてみなされ、それぞれの個別のアクチュエータは、VRプーリ242を一方向にだけ回転させることができる、線形に単独で動作する装置である。さらに、例示的生体模倣機械継ぎ手200のそれぞれの拮抗アクチュエータ対は、対称性があるアクチュエータであり、これは同一対の中の単独で動作するアクチュエータの両方が、類似の大きさと構成であり、アクチュエータ対を両方向に対称性のある動きをさせることができることを意味する。
【0040】
別の例示的実施形態では、拮抗アクチュエータ対は、大きなアクチュエータ対230と小さなアクチュエータ対220などの異なる大きさの分割アクチュエータを備えることができ、上記のように、一緒に動作することができ、機械継ぎ手の最大トルク要件を満たす。分割アクチュエータが油圧シリンダーである場合には、小さなアクチュエータ対220は、大きなアクチュエータ対のアクチュエータ232、234とは異なる動作状態のために、小さい直径の油圧シリンダー222、224を備えることができる。当然のことながら、制御体212からの所定の流量の油圧油のために、より小さい油圧ピストン面積は、より大きい油圧ピストン面積よりもVRプーリをより早く回転させるが、力は低減される。このように、同一の流量の油圧油では、より直径が大きいアクチュエータ対はVRプーリをゆっくりした速度で回転させるが、アクチュエータによって付与される力は、油圧ピストンの面積に正比例するので、より大きい引っ張り力を腱に発生させる。
【0041】
それぞれの分割拮抗アクチュエータ対220、230の2つの対称的な大きさのアクチュエータは、VRプーリ242を介して腱280、腱290と結合することができる。
【0042】
腱はさまざまな形状大きさであってもよいが、実施形態200に示される腱は、規定の幅および厚さのベルト形状の輪郭を有することができ、さらに対応する腱溝252、254の幅および厚さに一致する寸法であり得るし、そのように構成される。それぞれの腱は、その中央部で、VRプーリに接続される取り付けブロック262に結合され、取り付けブロック262装置は腱をVRプーリに固定し、溝の中の腱がずれることを防止することができる。
【0043】
図示される実施形態200では、腱280、290は、端部コネクタ282、292を介して腱を輪にすることで、アクチュエータピストンの端部226、236に取り付けられることができ、腱の端部は取り付けブロック262に戻って結合する。加えて、それぞれの端部コネクタは、腱の輪の中に合致するとともに、腱を端部コネクタに固定するコネクタロッド284と一緒に構成できる。腱を分割拮抗アクチュエータに結合する他の手段は、当業者であれば容易に想到することができ、本発明の範囲内とみなされる。
【0044】
より効率的な動作を可能にするために、分割アクチュエータは、選択的に採用され、生体模倣機械継ぎ手から選択的に外されることができる。その結果、2つの腱280、290は、端部コネクタ282、292とともに、それらのそれぞれの拮抗アクチュエータ対220、230に別々に取り付けられ、たとえば、負荷のかかった腱は負荷のかかっていない腱よりも伸びることができるなどのさまざまな負荷条件に応じて、2つの腱の相対運動が可能になる。
【0045】
たとえば、大きなアクチュエータ対230が活性化され、小さなアクチュエータ対220が非活性化または取り外されると、動作する大きなアクチュエータ232に取り付けられる大きな腱290の断片は、荷重がかかった状態でわずかに伸びることができる一方で、隣接する小さなアクチュエータ222の小さな腱280の断片は、緩んだ状態を維持できる。両方の腱は、取り付けブロック262によってVRプーリ242に固定できるけれども、動作する大きなアクチュエータ232に接続される腱290の断片だけが、引っ張られてVRプーリを回転させてもよい。しかしながら、アクチュエータサブ組み立て品210の反対側では、小さな非活性アクチュエータ224と大きな非活性アクチュエータ234の両方のアクチュエータピストン226、236は、それらのそれぞれの腱280、290の動きに追随することができ、活性化して動作するアクチュエータ232の影響のもとに回転するVRプーリにそれぞれが巻き上げられる。
【0046】
代替の実施形態では、腱280、290は、端部コネクタ282、292で延長共通コネクタロッド284などと一緒に結合することができ。別の代替実施形態(図示せず)では、2つの拮抗アクチュエータ対は、単一の、2倍幅の腱ベルトに結合する共通端部コネクタを共有できる。端部コネクタに結合し、すなわち2倍の幅の腱ベルトを使用することで、機械継ぎ手の回転中に、非活性のアクチュエータを活性化したアクチュエータに確実に追随させることができ、時間内のどんな場合にも、活性化準備ができる位置を維持することができる。
【0047】
VRプーリ242と、選択的に使用できる分割アクチュエータ220、230を組み合わせることによって、天然の関節の性能と効率の両方を厳密に模倣する生体模倣機械継ぎ手200となる。たとえば、VRプーリ242は、高トルク動作条件で、ピボット装置240と、アクチュエータサブ組み立て品210との間に機械的利点を生成することによって、ベース支持部材の周りの回転支持部材の回転を容易にすることができる。これによって、その動きの全範囲にわたるさまざまな負荷条件のもとで、機械継ぎ手200を駆動するための動力の要件を、効果的に低減し、取り除くことができ、および、機械継ぎ手を駆動し、さらに要求される性能基準を満たす、より小さくて、強力ではない(たとえば、エネルギーをあまり要求および消費しない)拮抗アクチュエータを選択することができる。
【0048】
単一の拮抗アクチュエータを、2つ以上の分割拮抗アクチュエータ対220、230に分割することで、さらに、より効率的な方法でアクチュエータサブ組み立て品210が、VRプーリによる低減された動力要件を満たすことができる。分割アクチュエータは、機械継ぎ手200の瞬間速度および瞬間トルク要件にしたがって、選択的に採用されまたは取り外されることができ、小さな拮抗アクチュエータ対220または大きな拮抗アクチュエータ対230のいずれか、または両方が要求性能を満足するように利用される。
【0049】
生体模倣機械継ぎ手の計画された速度およびトルク要件を満たすために、分割アクチュエータの大きさを決定する方法は、参照によってその全体が本願明細書に援用される、「生体模倣機械継ぎ手のためのアクチュエータの大きさの決定方法(Method Of Sizing Actuator For Biomimetic Mechanical Joint)」という発明の名称である、2009年8月28日に出願された、同一譲渡人の同時係属の特許出願番号 号(代理人整理番号2865−25026.PROV.PCT)に記載されている。
【0050】
当然のことながら、VRプーリ142はアクチュエータサブ組み立て品210によって回転するので、VRプーリの半径の変化に応じて、腱280および腱290とVRプーリとの間の接触ポイントのアライメント、並びに、端部コネクタ282および端部コネクタ292と拮抗アクチュエータ220および拮抗アクチュエータ230の長軸との間の接触ポイントのアライメントは変化する。さらに、アライメントのずれは、アクチュエータサブ組み立て品のそれぞれの側面で異なってもよい。結果としてアライメントのずれを引き起こす、有害なねじれモーメントまたは横方向の力が、確実に、アクチュエータピストン226、236に加わらないようにするために、ピストン端部(あるいは制御体212のいずれかの側面のアクチュエータの他の部分(たとえば、中央部))が、制御モジュールに対して回転できる旋回ブロック276、278に組み込まれてもいい。旋回ブロックは、それらのピストン端部(あるいは、たとえば、中央部、上端部など)の周囲を自由に回転するアクチュエータを備え、アクチュエータの長軸と、端部コネクタと、腱とVRプーリとの間の接線方向の接触ポイントのアライメントを維持する。本発明の別の態様では、制御モジュールは伸びることができるので、アクチュエータの固体端部(たとえばアクチュエータピストンから反対側)は旋回ブロックの中に組み込まれることができ、中央というよりも、アクチュエータサブ組み立て品の基部で回転することができる。
【0051】
分割アクチュエータ、または拮抗アクチュエータ対220、230のいずれかが、時間内の任意の特定瞬間に選択的に採用されて、生体模倣機械継ぎ手200を駆動する場合には、その瞬間に使用されないアクチュエータは、選択的に機械継ぎ手から外されて、アクチュエータシステムの活性化した部分に、不必要な抗力を発生させない。この選択的な解放には、アクチュエータと流体供給源との間の流体的な(たとえば油圧または空気圧)解放、リニアモータまたは回連モータと電力供給装置との間の電力切断、または拮抗アクチュエータとVRプーリとの間の物理的切断などが含まれる。
【0052】
上記のように、図6に図示される本発明の実施形態200の一態様では、それぞれの拮抗アクチュエータ対220、230のそれぞれ個別のアクチュエータは、単独で動作する線形油圧アクチュエータであってもよい。それぞれのアクチュエータは、さらに、制御体212の中に配置される、パイロット弁を制御できる圧力制御弁(PCV)と流体連通できる。PCVおよびパイロット弁は、非活性の拮抗アクチュエータ対が「スロッシュ(slosh)」モードにしたがって動作するように構成されることができ、非活性の拮抗アクチュエータ対に含まれる油圧油を、消費または仕事をしない単独で動作する2つの油圧シリンダーの間で行きつ戻りつ分流させる。言い換えれば、非活性の分割アクチュエータは、スロッシュモードのために、PCVとパイロット弁を選択することによって、アイドリング動作をするように構成でき、システムから分割アクチュエータを外して、生体模倣機械継ぎ手を引っ張りまたは制動させないようにすることができる。
【0053】
対応するPCVとパイロット弁と連動して、2つの拮抗アクチュエータ対を利用することができる油圧システムは、1つのアクチュエータ対を活性化した動作にさせ、他の一方をスロッシュモード動作にさせることができ、参照によってその全体が本願明細書に援用される、同一譲渡人の同時係属の「選択的に使用可能なアクチュエータを備える流体制御システム(Fluid Control System Having Selective Recruitable Actuators)」という発明の名称の2008年2月28日出願された米国特許出願公開番号12/074,261号、と、「能動および受動アクチュエータ動作に対する拮抗流体制御システム(Antagonistic Fluid Control System for Active and Passive Actuator Operation)」という発明の名称の2008年2月28日に出願された米国特許出願公開番号12/074,260号に、より詳細に記載されている。
【0054】
本発明の別の態様では、機械継ぎ手200を駆動する場合に、両方の分割アクチュエータ220、230を、弁モジュール(図示せず)などで、連続的にスロットル調整させることが可能であってもよい。その結果、当然のことながら、複数の分割アクチュエータの連続的なスロットリング、および選択的な使用および/または解放する能力を有する生体模倣機械継ぎ手は、2つの自由度を制御するシステムを動作または駆動させることになる。アクチュエータシステムを動作させる場合のこの柔軟性は、最も効率がよくなるように選択できる、1つまたは複数のアクチュエータを使用する構成およびスロットルの設定によって、機械継ぎ手をさまざまな動作ポイントに到達させることができるので、従来技術よりも好都合であり得る。
【0055】
選択的な使用/解放と、連続的なスロットリングの両方を実施する能力を有する、複数の分割アクチュエータを動作させる方法は、生体模倣機械継ぎ手の瞬間速度およびトルク動作要件を満たし、参照によってその全体が本願明細書に援用される、「生体模倣継ぎ手のための制御ロジック(Control Logic for Biomimetic Joint Actuators)」という名称の2009年8月28日に出願された、同一譲渡人の同時係属の特許出願番号 番(代理人整理番号2865−20080627.PROV.PCT)に記載されている。
【0056】
本発明のさらに別の態様(図示せず)では、生体模倣機械継ぎ手は、VRプーリの腱取り付けポイントと接続され、単一の柔軟な腱と結合している単一の一方向アクチュエータで構成することができ、能動的に継ぎ手を一方向に動作または回転させるとともに、作用荷重(たとえば重力の影響を受ける重量など)で継ぎ手を反対方向に動作させることができる。生体模倣機械継ぎ手の一方向の実施形態は、特定の業務または機能に合わせた、人間に近いまたは自然な人工装具を含むさまざまな用途で有用であり得る。加えて、さらに別の実施形態では、一方向生体模倣機械継ぎ手は、VRプーリの同じ側に接続される、2つ以上の腱/アクチュエータ対を備えることができ、上述の拮抗アクチュエータ構成に記載されたものと、同一の変動負荷および速度能力を有する。当業者であれば容易に想到できる、一方向生体模倣継ぎ手の他の変形例は、本発明の範囲内に入るものとみなされる。
【0057】
図7に示されるのは、2つの分割拮抗アクチュエータ対で駆動されるVRプーリ342を備える、前述の実施形態に類似する生体模倣機械継ぎ手300の別の例示的実施形態である。しかしながら、分割アクチュエータ320、330の両方にあるそれぞれ個別のアクチュエータが、アクチュエータサブ組み立て品310の中のそれぞれの他のアクチュエータとは大きさが異なり、VRプーリのテコの形態をさらにうまく利用し、よりよく天然の関節の性能を模倣する前の実施形態とは、機械継ぎ手300は区別される。この設計上の改良された変動性および柔軟性は、図5Aおよび図5Bに図示され記述された、異なる大きさおよび/または形状/構成の腱溝を備えるVRプーリと組み合わされると、さらにより明確になる。
【0058】
例として、小さな分割拮抗アクチュエータ対320は、大半径アクチュエータ322を備えてもよく、それは使用されると、VRプーリの352の大きな半径部分を使用してVRプーリ342を回転させ、小半径アクチュエータ324が使用されると、VRプーリの354の小半径部分を使用してピボット装置を回転させる。同様の態様で、大きな、分割拮抗アクチュエータ対330は、半径可変プーリ大半径部分352の周囲および小半径部分354の周囲をそれぞれ動作する、大半径アクチュエータ332と小半径アクチュエータ334を備えもよい。
【0059】
大半径アクチュエータ322、332は、それらと関連する小半径アクチュエータ324、334とは大きさが異なってもよく、それによってVRプーリによって提供される機械的利点を利用し、天然の関節の性能をよりよく模倣する。たとえば、天然の関節は、他の方向よりも一方向に動かすとより大きなトルクを発生させることができる(たとえば、太股部分を股関節の周りに回転させる場合には、大腿四頭筋はハムストリング筋よりも非常に強い)。VRプーリ342が、異なる大きさのアクチュエータ対322、324およびアクチュエータ対332、334を備えるアクチュエータサブ組み立て品310と組み立てられると、機械継ぎ手の性能特性は、修正され、拡張されることができ、機械継ぎ手の回転方向に依存するようになる。その結果、生体模倣機械継ぎ手は、天然の関節の性能および効率をよりよく模倣することができるようになる。
【0060】
前述の詳細な説明は、特定の例示的な実施形態を参照して本発明を記述した。しかしながら、当然のことながら、さまざまな修正形態および変形形態が、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から、逸脱しない範囲内で実施可能である。詳細な説明および添付図面は、限定的ではなく単に例示としてみなされ、すべての修正形態または変形形態は、もしあれば、前述した、および本明細書に開示された本発明の範囲内に入るものである。
【0061】
さらに詳しくは、本発明の具体的な例示的実施形態が本明細書に記載されたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるわけではなく、前述の詳細な説明に基づいて当業者であれば容易に想到できる、修正形態、省略形態、組み合わせ(たとえば、種々の実施形態にわたる態様の)、変形形態および/または変形形態を含むあらゆる実施形態を含む。特許請求の範囲の限定は、特許請求の範囲に記載されている言語に基づいて、広く解釈されるべきであり、前述の詳細な説明または出願の審査手続き中の例に限定されず、その例は非排他的に構成される。たとえば、本開示では、用語「好ましくは」は非排他的であり、「好ましくは、しかし限定的ではない」を意味するものとする。すべての方法またはプロセルクレームで引用されるすべてのステップは、どのような順番で実施されてもよく、特許請求の範囲に記載の順番には限定されない。Means−plus−function、またはstep−plus−functionの限定は、特定の特許請求の範囲の限定であって、その限定に対して以下の条件のすべてが存在する場合だけに採用される。a)「means for」または「step for」が明確に引用され、b)対応する機能が明確に引用される場合。means−plus functionを支持する構造、材料または動作は、本明細書中の記載に明確に引用される。したがって、本発明の範囲は、前述の記載および実施例というよりも、添付の特許請求の範囲およびそれらの合法的な均等物によってのみ定義される。特許請求の範囲および特許証によって保証されるべきことを望む範囲は以下の通りである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体模倣ロボット装置の支持部材の間に可変トルクを発生させる生体模倣機械継ぎ手であって、
ベース支持部材と、
前記ベース支持部材と回転可能に結合する回転支持部材と、
前記ベース支持部材の周りの前記回転支持部材の回転を補助するために、当該ベース支持部材と当該回転支持部材との間に動作可能に結合する半径可変プーリであって、
外周外側表面とピボットポイントとを備え、当該外側表面と当該ピボットポイントとの間の半径方向距離が当該外側表面の長さ方向に沿って変更可能である、滑車本体と、
腱降着表面と側壁とを備え、前記外側表面に形成される少なくとも1つの腱溝と、
前記少なくとも1つの腱溝の中に腱取り付けポイントと、を備えるプーリと、
第1の自由端部分および第2の自由端部分が、前記腱溝の中で反対方向に前記プーリの周りを囲み、前記腱取り付けポイントと結合している少なくとも1つの柔軟な腱と、
前記プーリの周りの前記腱をいずれの方向にも選択的に動作させ、前記ベース支持部材と前記回転支持部材との間に可変トルクを生成するように構成され、一対の端部コネクタで前記第1の自由端部分と前記第2の自由端部分と結合している、少なくとも1つの拮抗アクチュエータ対と、を具備する機械継ぎ手。
【請求項2】
請求項1に記載の機械継ぎ手において、
前記腱取り付けポイントと実質的に反対側の前記滑車本体の前記側壁に切除部をさらに備え、
前記切除部は、前記プーリがいずれかの最遠の回転位置まで回転すると、端部コネクタを受容するように構成される機械継ぎ手。
【請求項3】
請求項1に記載の機械継ぎ手において、
前記拮抗アクチュエータ対のそれぞれのアクチュエータは、枢動運動が可能なように支持され、前記アクチュエータの長軸と、前記腱と前記プーリとの間の接線方向の接触ポイントの配置を維持する機械継ぎ手。
【請求項4】
請求項1に記載の機械継ぎ手において、
前記拮抗アクチュエータ対のそれぞれのアクチュエータは、油圧パワーシリンダー、空気圧パワーシリンダー、電気リニアモータ、および電気回転モータからなる群から選択される機械継ぎ手。
【請求項5】
請求項1に記載の機械継ぎ手において、
前記プーリの前記滑車本体は、円形であり、前記ピボットポイントが円の中心から偏心している機械継ぎ手。
【請求項6】
請求項1に記載の機械継ぎ手において、
前記腱取り付けポイントは、前記滑車本体の前記外周表面に形成される横スロットに挿入される腱取り付けブロックをさらに備える機械継ぎ手。
【請求項7】
請求項1に記載の機械継ぎ手において、
前記第1の自由端部分および前記第2の自由端部分のそれぞれは、端部コネクタの周りで輪になり、
前記自由端部分の先端は、前記腱取り付けポイントと結合する機械継ぎ手。
【請求項8】
請求項1に記載の機械継ぎ手において、
前記滑車本体は、前記ベース支持部材に対して固定され、
前記アクチュエータ対は、前記回転支持部材に結合される機械継ぎ手。
【請求項9】
請求項1に記載の機械継ぎ手において、
前記拮抗アクチュエータ対は、前記ベース支持部材と結合され、
前記滑車本体は、前記回転支持部材に対して固定される機械継ぎ手。
【請求項10】
請求項1に記載の機械継ぎ手において、
前記ベース支持部材は、生体模倣ロボット装置の胴体を備える機械継ぎ手。
【請求項11】
請求項1に記載の機械継ぎ手において、
前記ベース支持部材は、隣接する生体模倣機械継ぎ手の回転支持部材を備える機械継ぎ手。
【請求項12】
請求項1に記載の機械継ぎ手において、
前記生体模倣ロボット装置は、外骨格である機械継ぎ手。
【請求項13】
生体模倣ロボット装置の支持部材の間に可変トルクを生成する生体模倣機械継ぎ手であって、
ベース支持部材と、
前記ベース支持部材と回転可能に結合している回転支持部材と、
前記ベース支持部材の周りに前記回転支持部材が回転することを補助するために、当該ベース支持部材と当該回転支持部材との間に動作可能に結合する半径可変プーリであって、
外周外側表面と、ピボットポイントと、当該外側表面の長さ方向に沿って変更可能である当該外側表面と当該ピボットポイントとの間の半径方向距離と、を備える滑車本体と、
前記外側表面に形成された腱溝と、
前記腱溝の中に少なくとも1つの腱取り付けポイントと、を備える半径可変プーリと、
前記腱取り付けポイントと結合し、前記腱溝の中で前記プーリの周りを囲む自由端部分を備える少なくとも1つの柔軟な腱と、
前記自由端部分と結合し、前記半径可変プーリの周りで前記腱を引っ張るように構成され、前記ベース支持部材と前記回転支持部材との間に可変トルクを生成する少なくとも1つのアクチュエータと、を備える機械継ぎ手。
【請求項14】
請求項13に記載の機械継ぎ手において、
前記少なくとも1つの柔軟な腱は、第1の柔軟な腱と第2の柔軟な腱を備え、
それぞれの腱は、腱取り付けポイントと結合し、他方から反対方向に前記プーリの周りを包み、拮抗アクチュエータ対のアクチュエータに結合する自由端部分を備え、
前記アクチュエータ対は、前記半径可変プーリの周りの前記腱をいずれの方向にも選択的に引っ張るように構成される機械継ぎ手。
【請求項15】
請求項13に記載の機械継ぎ手において、
前記柔軟な腱は、前記腱取り付けポイントと結合する中間部分と、反対方向に前記プーリの周りを囲み、拮抗アクチュエータ対のアクチュエータに結合する第1の自由端部分および第2の自由端部分とをさらに備え、
前記アクチュエータ対は、前記半径可変プーリの周りの前記腱をいずれの方向にも選択的に引っ張るように構成される機械継ぎ手。
【請求項16】
生体模倣ロボット装置の支持部材の間に可変トルクを生成する生体模倣機械継ぎ手を製造する方法であって、
ベース支持部材と回転支持部材とを取得する工程と、
前記ベース支持部材と前記回転支持部材との間のピボット手段を備える半径可変プーリを当該ベース支持部材の周囲で当該回転支持部材が容易に回転するように結合する工程と、
少なくとも1つの拮抗アクチュエータ対を前記回転支持部材に組み込む工程と、
少なくとも1つの柔軟な腱を前記半径可変プーリと前記拮抗アクチュエータ対との間に据え付ける工程と、を備え、
前記アクチュエータ対は、前記半径可変プーリの周りの前記腱をいずれの方向にも引っ張るように動作し、前記ベース支持部材と前記回転支持部材との間に可変トルクを生成する方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
前記半径可変プーリは、
外周表面とピボット手段を備え、当該外側表面と当該ピボット手段との間の半径方向距離が当該外側表面の長さ方向に沿って変更可能である、滑車本体と、
前記外側表面に形成される少なくとも1つの腱溝と、
腱溝の中に腱取り付けポイントと、をさらに備える方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記柔軟な腱は、
第1の柔軟な腱と、第2の柔軟な腱と、を備え、
それぞれの腱は、前記腱取り付けポイントと結合し、それぞれ反対方向に腱溝の中で前記プーリの周りを囲み、前記拮抗アクチュエータ対のアクチュエータと結合する自由端部分をさらに備える方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、
前記柔軟な腱は、
前記腱取り付けポイントと結合する中間部分と、
反対方向に前記腱溝の中で前記プーリの周りを囲み、前記拮抗アクチュエータ対のアクチュエータと結合する第1の自由端部分および第2の自由端部分をさらに備える方法。
【請求項20】
生体模倣ロボット装置の支持部材の間に可変トルクを生成する生体模倣機械継ぎ手であって、
ベース支持部材と、
前記ベース支持部材と回転可能に結合する回転支持部材と、
前記ベース支持部材の周りで前記回転支持部材の回転を補助するために、当該ベース支持部材と当該回転支持部材との間に動作可能に結合する半径可変プーリであって、
外周外側表面とピボットポイントとを備え、当該外側表面と当該ピボットポイントとの間の半径方向距離が当該外側表面の長さ方向に沿って変更可能である、滑車本体と、
それぞれが腱降着面と側壁を備え、前記外側表面に形成される少なくとも2つの腱溝と、
前記腱溝のそれぞれの中に腱取り付けポイントと、を備えるプーリと、
それぞれが腱取り付けポイントの1つと結合し、前記腱溝の中で反対方向に前記プーリの周りを包む第1の自由端部分と第2の自由端部分とを備える少なくとも2つの柔軟な腱と、
少なくとも2つの拮抗アクチュエータ対であって、それぞれのアクチュエータ対が、一対の端部コネクタで前記少なくとも2つの腱中の1つの腱の前記第1の端部部分と前記第2の端部部分と結合し、前記プーリの周りの前記腱をいずれの方向にも選択的に動作させ、前記ベース支持部材と前記回転支持部材との間に可変トルクを生成するように構成される少なくとも2つの拮抗アクチュエータ対と、を備える機械継ぎ手。
【請求項21】
請求項20に記載の機械継ぎ手において、
前記腱取り付けポイントと反対側の滑車本体の側壁に切除部をさらに備え、
前記切除部は、前記プーリがいずれかの最遠の回転位置まで回転すると、端部コネクタを受容するように構成される機械継ぎ手。
【請求項22】
請求項20に記載の機械継ぎ手において、
前記拮抗アクチュエータ対の1つは、他のものよりも大きい機械継ぎ手。
【請求項23】
請求項22に記載の機械継ぎ手において、
前記柔軟な腱は、長方形横断面を有する腱ベルトをさらに備え、
前記柔軟な腱の1つと対応する腱溝は、他のものよりも広い機械継ぎ手。
【請求項24】
請求項23に記載の機械継ぎ手において、
前記少なくとも2つの拮抗アクチュエータ対のそれぞれのアクチュエータは、他のいずれかのアクチュエータとはそれぞれ大きさが異なる機械継ぎ手。
【請求項25】
請求項20に記載の機械継ぎ手において、
前記少なくとも2つの拮抗アクチュエータ対のそれぞれのアクチュエータは、油圧パワーシリンダー、空気圧パワーシリンダー、電気リニアモータ、および電気回転モータからなる群から選択される機械継ぎ手。
【請求項26】
請求項1、13または20のいずれか1項に記載の機械継ぎ手において、
前記半径可変プーリは、小さな腱溝とは異なる直径を有する大きな腱溝をさらに備え、それを用いて動作可能な腱およびアクチュエータ対に異なる機械的利点を提供する機械継ぎ手。
【請求項27】
請求項1、13または20のいずれか1項に記載の機械継ぎ手において、
前記半径可変プーリは、大きな腱溝と小さな腱溝をさらに備え、それぞれの腱溝は非円形形状であり、他方に対して偏心しており、位置が合っていない機械継ぎ手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−501425(P2012−501425A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525252(P2011−525252)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/055429
【国際公開番号】WO2010/025409
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
【Fターム(参考)】