説明

生体活性ガラスを用いたフッ化物取り込みを良くするための組成物及び方法

生体活性ガラス及びフッ化物を含んでいるオーラルケア組成物と、歯構造体を接触させることを含む、患者の歯構造体へのフッ化物取り込みを増大させるための方法が、開示される。このオーラルケア組成物は、本明細書に記載の処方を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯へのフッ化物取り込みを良くすることに関する。具体的には、本発明は、生体活性ガラスを用いた、歯へのフッ化物取り込みを良くするための組成物及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯の象牙質及びエナメル質は、主として、ヒドロキシアパタイト形態の結晶質リン酸カルシウムから構成されている。通常の口内pHレベルでは、この歯鉱物質は極めて不溶性である。しかしながら、酸性pHレベルでは、顕著な鉱物質脱落及び鉱物質喪失が起こり得る。元来カルシウムイオン及びリンイオンで過飽和している唾液は、常態では、歯表面の再石灰化と修復の役割を担っている。良くないオーラルケア習慣及び現代の食生活の結果として、歯は、齲蝕原性細菌及び酸性飲食物により絶えず鉱物質脱落しており、通常の修復プロセスのバランスが崩れている。さらには、頚部ガン、咽喉ガン、糖尿病、及び高血圧等の疾患や、ある種の病気と闘うために摂取される薬物も、常態修復プロセスの破壊に寄与している。歯表面の鉱物質脱落の量を減らすのに用いられている1つの方法は、口内環境に、フッ化物入り練り歯磨き及び洗口液の形態でフッ化物を導入する方法である。そのような製造物のフッ化物は唾液によってイオン化され、歯構造体にヒドロキシフルオロアパタイトの形態で組み込まれる。ヒドロキシフルオロアパタイトはヒドロキシアパタイトよりもずっと酸耐性があり、これによって、さらなる酸負荷によって引き起こされる歯表面の鉱物質脱落の速度は低減される。
【0003】
フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、さらには他のフッ化物化合物の形態にある、標準的フッ化物化合物をオーラルケア組成物に組み込むことで、再石灰化と歯鉱物質酸耐性が向上され得ることは知られている。炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、さらには他のカルシウム源の形態である研磨剤は、低濃度のカルシウムを放出し、歯鉱物質へのフッ化物取り込みを向上させ得ることも知られている。上記で言及した研磨剤のような僅かしか溶けないカルシウム源を用いることは、唾液には、低濃度のカルシウムが放出されているということになり、これによっては、歯構造体へのフッ化物取り込みの改善が十分もたらされるとはいえない。塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、非晶質リン酸カルシウム(ACP)、カゼインホスホペプチド非晶質リン酸カルシウム(CPP−ACP)、さらには他の極めて可溶性のカルシウム化合物の形態にある、極めて可溶性のカルシウム含有化合物を用いて、歯鉱物質へのフッ化物取り込みを向上させることが提案されたことがある。フッ化物含有化合物を極めて可溶性のカルシウム含有化合物とオーラルケア組成物中で直接組み合わせることは、可溶性のフッ化物とカルシウムがパッケージ中で反応して不溶性のフッ化カルシウムを形成し、その結果、口内環境に入れられたときのフッ化物の効果を低減させ得るので、難題が伴い得る。これらの極めて可溶性の化合物は口内環境に導入されたときも反応し得るので、その結果、フッ化カルシウムの形成がもたらされ、歯鉱物質へのフッ化物取り込みの低下がもたらされ得る。このような2つの源を含んでいる実用的なオーラルケア組成物を開発しようとする多くの試みが試みられてきた。
【0004】
1つの試みは、順次に各オーラルケア組成物を用いるという試み、すなわち、同時ではなく、1つのものの後にもう1つのものを用いるという方法である。この方法は、可溶性のカルシウム、リン、及びフッ化物を唾液に別々に導入することを可能にするものであり、導入されたものはその後に反応して歯構造体へのフッ化物取り込みを向上させ得る。例えば、特許文献1(Grabenstetterら)及び特許文献2(Raafら)には、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含有する別々の溶液で歯表面を続けて処置することによってエナメル質を再石灰化させるという方法が記載されている。この処置方法は、時間がかかって不便であり、複数回、連続的に適用するという不便さがある。
【0005】
もう1つの試みは、唾液へのフッ化物、カルシウム、及びリン化合物の溶解度を向上させて歯構造体へのフッ化物取り込みを向上させるために、低pHを有するオーラルケア組成物を開発するという試みである。特許文献3(Dugiulioら)には、低pH(2.5〜4.0)のカルシウム及びリン酸イオン準安定溶液が開示されている。鉱物質が脱落したエナメル質への溶液の浸透が起こって、pHが上昇するとリン酸カルシウムの沈殿から再石灰化が起こる。残念なこととして、準安定溶液はpHを下げるが、これは、練り歯磨きのような毎日使う製造物の中に組み込まれた場合、潜在的に象牙質及びエナメル質を鉱物質脱落させ得、及び/又は、口内軟組織を損傷又は刺激し得る。
【0006】
なおもう1つの試みは、可溶性のフッ化物とカルシウムが使用の時点まで別々に保持される二相送達系を用いるという試みである。特許文献2(Raafら)、特許文献4(Winstonら)、及び特許文献5(Chowら)には、二相送達系が開示されている。二送達系には、正確で、適切な投与量に関して、及び、適するフッ化物化合物の送達に関して、問題があり得る。さらには、二重送達系にはさらなる材料及びパッケージが必要とされるので、二重送達系にはさらなる費用が伴う。
【0007】
Tung及びAmerican Dental Association(米国歯科医師会)による特許文献6;特許文献7;特許文献8;特許文献9;及び特許文献10;には、歯を再石灰化するのに、また、歯にフッ素添加するのに用いるための非晶質カルシウム化合物例えば非晶質リン酸カルシウム(ACP)、非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACPF)、非晶質リン酸炭酸カルシウム(ACCP)、非晶質フッ化リン酸炭酸カルシウム(ACCPF)、及び非晶質フッ化カルシウム(ACF)の新規な組成物並びにその使用及び送達の方法が含まれている。これらの化合物は、あらゆる再石灰化性製造物の中でも最高の溶解度、最速の形成速度、及び最速の変換速度を特徴として主張している。しかしながら、高い溶解度は、開示されているカルシウム化合物の歯表面への長期間に亘っての堆積を妨げるものであるので、つまり歯無機質の再石灰化及び歯無機質へのフッ素添加を化合物が手助けするのを妨げるので、高い溶解度は潜在的に不利である。加えて、極めて可溶性の化合物から放出される可溶性のカルシウムは、不溶性のフッ化カルシウムを形成することによって処方中のフッ化物を不活化させ得るので、このような極めて可溶性の化合物は問題でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,083,955号明細書
【特許文献2】米国特許第4,397,837号明細書
【特許文献3】米国特許第4,080,440号明細書
【特許文献4】米国特許第6,485,708号明細書
【特許文献5】米国特許第5,891,448号明細書
【特許文献6】米国特許第5,437,857号明細書
【特許文献7】米国特許第5,460,803号明細書
【特許文献8】米国特許第5,871,360号明細書
【特許文献9】米国特許第6,000,341号明細書
【特許文献10】米国特許第6,056,930号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
つまり、極めて効果があり、現在利用可能な製造物並びに解決策の欠点を克服する、フッ化物、カルシウム、及びリンの可溶源が含まれているオーラルケア組成物を開発しようというニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様においては、患者の歯構造体へのフッ化物取り込みを増大させるための方法は、生体活性ガラス及びフッ化物を含んでいるオーラルケア組成物と歯構造体を接触させることを含む。本発明の一実施形態ではこのフッ化物は生体活性ガラス中にある。本発明のもう1つの実施形態では、このオーラルケア組成物は、以下の処方:
【表1】

を含んでいる。
【0011】
さらなる実施形態では、このオーラルケア組成物と接触させた後の歯構造体エナメル質フッ化物濃度は900ppmより高い。なおさらなる実施形態では、このオーラルケア組成物は、以下の処方:
【表2】

を含んでいる。
【0012】
さらなる実施形態では、このオーラルケア組成物は、歯磨剤及び歯科用バーニッシュ剤である。さらなる実施形態では、この界面活性剤は、ポリエトキシル化ソルビトールモノエステル、Tween、エチレンオキシド・プロピレンオキシド重縮合物(ポロキサマー)、プロピレングリコール重縮合物、ポリエトキシル化水素化ひまし油、及びラウリル硫酸ナトリウムからなる群から選択される。もう1つの実施形態では、このガムバインダーは、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カラヤ、キサンタン、アラビアガム、及びトラガカントからなる群から選択される。なおもう1つの実施形態では、この甘味剤は、サッカリン、シクラマート、アセサルフェームカリウム、キシリトール、及びタウマチンからなる群から選択される。
【0013】
本発明の第2の態様においては、オーラルケア組成物は、以下の処方:
【表3】

を含んでいる。
【0014】
この態様の一実施形態では、このオーラルケア組成物は、以下の処方:
【表4】

を含んでいる。
【0015】
さらなる実施形態では、このオーラルケア組成物は、歯磨剤、歯科用バーニッシュ剤、及びシーラント剤である。さらなる実施形態では、この界面活性剤は、ポリエトキシル化ソルビトールモノエステル、Tween、エチレンオキシド・プロピレンオキシド重縮合物(ポロキサマー)、プロピレングリコール重縮合物、ポリエトキシル化水素化ひまし油、及びラウリル硫酸ナトリウムからなる群から選択される。もう1つの実施形態では、このガムバインダーは、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カラヤ、キサンタン、アラビアガム、及びトラガカントからなる群から選択される。なおもう1つの実施形態では、この甘味剤は、サッカリン、シクラマート、アセサルフェームカリウム、キシリトール、及びタウマチンからなる群から選択される。
【0016】
本発明の第3の態様においては、歯磨剤は、以下の処方:
【表5】

を含んでいる。
【0017】
本発明の第4の態様においては、歯科用バーニッシュ剤は、以下の処方:
【表6】

を含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、生体活性ガラス及びフッ化物を含んでいる非水性のオーラルケア組成物に関する。以下により詳細に説明されるように、このオーラルケア組成物にはさらなる成分が含まれ得る。加えて、当業者には、オーラルケア組成物としては、歯磨剤、歯科用バーニッシュ剤、歯シーラント剤、チューインガム、溶解ストリップ、マウスウォッシュ、さらにはフッ化物を含有する他のオーラルケア製造物が包含され得ることは、理解されるだろう。このオーラルケア組成物は、生体活性ガラスが製剤と反応しそれによって製剤中にカルシウム及びリンが放出されてフッ化物源と反応することがないような方法で処方され製造されるべきである。
【0019】
このオーラルケア組成物のための例となる処方は、以下:
【表7】

の通りである。
【0020】
当業者には、このオーラルケア組成物の一部の実施形態のために含まれ得る成分はこのオーラルケア組成物の他の実施形態のために含まれていないことがあり得ることは、理解されるだろう。例えば、歯磨剤は、グリセリン、PEG、研磨剤、増粘剤、界面活性剤、さらには他の成分を含み得、そしてバーニッシュ剤は、コロホニー樹脂及びエチルアルコールを含み得るが、PEGやグリセリンは含んでいない。しかしながら、本発明に従うオーラルケア組成物は、すべて、生体活性ガラス及びフッ化物を含んでいる。
【0021】
歯表面へのフッ化物取り込みは唾液中のカルシウム濃度及びリン酸濃度によって影響される。生体活性ガラスは、水溶液中にカルシウムイオン、リンイオン、ナトリウムイオン、及びケイ素イオンを放出する。つまり、オーラルケアフッ化物組成物(例えば、歯磨剤)中に生体活性ガラスが含まれていると、その生体活性ガラスからの補足的なカルシウム及びリンの放出は、有利なことには、歯表面へのフッ化物の取り込みを増大させる。これらのイオンの放出はほどよいpH上昇も引き起こし得、これは口内環境での再石灰化を増大させる可能性を有している。
【0022】
本明細書で使われている、用語「歯構造体へのフッ化物取り込みを増大させる」とは、歯表面又は歯構造体に吸収された又は結合されたフッ化物の量を増大させること又は増強させることを意味する。歯構造体へのフッ化物取り込みの量を決定するためには歯エナメル質中のフッ化物濃度が測定され得る。FDA Monograph 40にはエナメル質フッ化物濃度の測定法が提供されている。
【0023】
本明細書で使われている、用語「歯構造体」及び「歯表面」とは、フッ化物が吸収又は結合され得る個人の歯の任意の部分を意味する。それゆえ、歯構造体及び歯表面としては、限定するものではないが、歯エナメル質、エナメル質初期損傷部、エナメル質中ヒドロキシアパタイト、象牙質、及びセメント質が挙げられる。
【0024】
本明細書で使われている、用語「非水性の」とは、無水又は実質的に水を含んでいないことを意味する。この非水性の組成物の個々の各成分は、組成物全体が実質的に水を含んでいない状態のままであるかぎりにおいて限定量の水を含有し得る。
【0025】
本明細書で使われている、用語「オーラルケア組成物」としては、口内空洞部における良好な一般的全体健康状態を改善又は維持するために個人の口内空洞部の全部又は一部に用いられるあらゆる調製物が挙げられる。例えば、オーラルケア組成物は、良好な口内衛生状態を改善又は維持すること、齲蝕を予防又は低減させること、歯肉炎及び/又は歯垢を予防又は低減させること、歯表面を再石灰化すること、さらには象牙質知覚過敏を治療することを可能にし得、又は助力し得る。
【0026】
本明細書で使われている、用語「歯磨剤」としては、個人の口内空洞部の全部又は一部を洗浄するのに用いられるあらゆる調製物が挙げられる。
【0027】
本明細書で使われている、用語「歯科用バーニッシュ剤」としては、フッ化物治療のために歯表面に局所的に適用される組成物が挙げられる。典型的には、歯科用バーニッシュ剤には、高濃度のフッ化物が含まれている。
【0028】
本明細書で使われている、用語「口内空洞部」とは、個人の歯、及び歯肉を意味し、歯から歯肉縁及び/又は歯周ポケットまでを含めた歯周領域すべてが含まれる。
【0029】
本明細書で使われている用語「生体活性ガラス」は、ケイ素の酸化物をその主な成分として含み、生理液と反応した場合に、成長する組織と結合することができる無機ガラス材を意味する。例として、本発明に従う生体活性ガラスは、インビトロで、擬似体液に入れられた場合、ヒドロキシアパタイトの層を形成するガラス組成物である。生体活性ガラスが体内で(例えば口内空洞部内で)耐えられないほどの有害免疫反応を引き起こさないように、本発明で用いられる生体活性ガラスは、生体適合性でもある。
【0030】
生体活性ガラスは当業者には良く知られており、例えば、An Introduction to Bioceramics, L. Hench and J. Wilson, eds. World Scientific, New Jersey (1993)に開示されている(この内容全体は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0031】
以下の組成(それぞれの元素の酸化物形態での重量パーセントで示されている)は生体活性ガラスを規定するものである:
【表8】

【0032】
この同じ生体活性ガラス組成物は、それぞれの元素の重量パーセントでは以下の通り表され得る:
【表9】

【0033】
この生体活性ガラスは、「溶融法」又は「ゾル−ゲル」法を用いて製造され得、これらの方法はいずれも生体活性ガラス製造の当業者には良く知られている。
【0034】
生体活性ガラスは、硬組織及び軟組織のいずれにも結合するクラスA生体活性物質と考えられる。そのことにおいて生体活性ガラスは、歯構造体と相互作用するためのより効果がある物質をもたらす。生体活性ガラスは、オーラルケア組成物処方中に、オーラルケア組成物の約0.5〜15重量パーセントの量、好ましくはオーラルケア組成物の約3〜10重量パーセントの量で存在し得る。
【0035】
このオーラルケア組成物製剤はさらにフッ化物含有化合物を含み、そのようなものとしては、イオンフッ化物(例えばアルカリ金属フッ化物)、アミンフッ化物及びイオンモノフルオロホスファート(例えばアルカリ金属モノフルオロホスファート)が挙げられ得、そして処方には、約100ppm〜5000ppm(好ましくは約500〜2000ppm)のフッ化物がもたらされるように組み込まれ得る。このフッ化物化合物はフッ化ナトリウム又はモノフルオロリン酸ナトリウムを含み得る。フッ化スズも上記濃度で用いられ得る。イオンモノフルオロホスファートの活性を良くすることが示されている、カルシウムグリセロホスファートは、フッ化物源がイオンモノフルオロホスファートであるときに場合により加えられ得る。オーラルケア組成物の約0〜5.0重量パーセントの量でフッ化物はオーラルケア組成物処方中に独立したフッ化物源として存在し得る。
【0036】
オーラルケア組成物中に独立したフッ化物源を用いることの別形態としては、フッ化物含有生体活性ガラス、例えば米国特許第4,775,646号明細書(これは参照により本明細書に組み込まれる)にある生体活性ガラスを用いることもフッ化物源として用いられ得、この場合は生体活性ガラス中のフッ化物が口内環境に放出されるので生体活性ガラス組成物は歯表面へのフッ化物取り込みを良くする。
【0037】
さらに、本発明のオーラルケア組成物にイオンフッ素含有化合物が組み込まれる場合は、研磨剤は、そのイオンフッ素含有化合物と研磨剤が適合性があるように選択されるべきであることは、理解されるだろう。つまり、例えば、フッ化ナトリウムと、過剰のカルシウムイオンを含む研磨剤とは、不溶性のフッ化カルシウムとしてのフッ化物の喪失を引き起こすので、これらのものは適合性がないものであることは当技術分野で良く知られている。したがって、不溶性である研磨剤、例えば、シリカ、アルミナ、オルトリン酸亜鉛やプラスチック粒子が好ましい。別形態としては、カルシウム研磨剤、例えば炭酸カルシウムやリン酸二カルシウムが、アルカリ金属モノフルオロホスファート、例えば、モノフルオロリン酸ナトリウムと用いられ得る。
【0038】
このオーラルケア組成物はさらにカルボキシビニルポリマーを含んでいる。このカルボキシビニルポリマーはその酸の形態で用いられ、必ずしも中和の形態をなんら必要としない。カルボキシビニルポリマーは湿潤物質を増粘し、また必要とされている研磨物質を懸濁させるための好ましいレオロジーももたらす。ここで使われている用語「レオロジー」とは、製剤の流動特性を反映するものである。
【0039】
このオーラルケア組成物中に用いるのに適しているカルボキシビニルポリマーは、ポリアリルスクロース(例えば、カルボポール[Carbopol]974及び934)、又はジビニルグリコール(例えば、Noveon AA−1)と架橋されたアクリル酸コポリマーである。Carbopolポリマーは、B.F.Goodrich Companyが製造している。カルボポール974が好ましい。カルボキシビニルポリマーは、このオーラルケア組成物の0.1〜7.5重量パーセント(好ましくは0.3〜1.0重量パーセント)の範囲で、より好ましくはこのオーラルケア組成物の約0.5重量パーセントの量で、存在し得る。
【0040】
このオーラルケア組成物中には他の天然の高分子及び合成の高分子が単独で又は組み合わせで用いられ得る。例としての高分子としては、限定するものではないが、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)並びにカラヤ、キサンタン、アラビアガム、及びトラガカントを含めた天然のガムバインダーが挙げられる。
【0041】
このオーラルケア組成物はさらに湿潤剤を含み得る。このオーラルケア組成物中に用いるのに適している湿潤剤としては、グリセリン、ソルビトール、及びプロピレングリコールあるいはこれらの混合物が挙げられる。市販のグリセリンはグリセリンとの組み合わせで0.5〜2.0重量パーセントの水を含有し得ることは良く知られている。典型的にはこの量は0.5〜1.0重量パーセントである。この少量の水はグリセリンに結合されており、したがって他の成分には利用可能となっていない。このことにおいて、当業者はグリセリン含有の組成物を非水性であるとみなしたのであった。湿潤剤は可能なかぎり無水であるべきであり、好ましくは固体形態で用いられるべきである。グリセリンが好ましい湿潤剤である。湿潤剤は処方を100%までにするのに用いられるので、湿潤剤はオーラルケア組成物の約20〜90重量パーセントの範囲の量で存在し得る。好ましくは、湿潤剤は、このオーラルケア組成物中に約35〜75重量パーセント、より好ましくは約45〜75重量パーセント存在している。
【0042】
このオーラルケア組成物はさらにポリエチレングリコールを含み得る。ポリエチレングリコールは、製剤の粘着性が低下するように、また滑らかな触感の製造物がもたらされるように選択される。ポリエチレングリコールは、PEG300〜PEG1000の分子量範囲から選択される。PEG400が好ましい。有利には、ポリエチレングリコールは、オーラルケア組成物の約0.1〜40重量パーセントの範囲、好ましくは約15〜20重量パーセントの範囲の量で存在している。
【0043】
このオーラルケア組成物はさらに研磨剤を含み得る。このオーラルケア組成物中に用いるのに適している研磨剤としては、例えば、シリカ、オルトリン酸亜鉛、重炭酸ナトリウム(ベーキングソーダ)、プラスチック粒子、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム及びピロリン酸カルシウムやこれらの混合物が挙げられる。シリカ研磨剤は、天然非晶質シリカ、例えば珪藻土;合成非晶質シリカ、例えば沈殿シリカ、例えばRhone Poulencによって製造されている「Tixosil 53B」;シリカゲル、例えばシリカキセロゲル;又はこれらの混合物;であり得る。一般的には、本発明の歯磨剤組成物中に用いるのに適している研磨剤の量は、許容されるレベルの洗浄及び研磨がもたらされるように、当技術分野では良く知られている方法に従って経験的に決定されるものである。好適には、研磨剤は、このオーラルケア組成物の約0〜約60重量パーセント、好ましくは約0〜約30重量パーセントの量で存在している。上記に関係なく、当業者なら、添加される研磨剤、例えば上記に掲載されているものは、生体活性ガラスは固有の研磨特性を有しているのでこのオーラルケア組成物には必要とされないかも知れないことを理解するだろう。
【0044】
このオーラルケア組成物に従来型のオーラルケア組成物のレオロジーにより近いレオロジーを賦与するために、本発明のオーラルケア組成物中には、有利には、増粘剤が存在し得る。増粘剤は増粘性シリカ、例えばDegussa Ltdによって製造されている、「Sident22S」であり得る。増粘性シリカは、このオーラルケア組成物の約0.01〜10重量パーセントの範囲、好ましくは約5.0〜7.0重量パーセントの範囲の量にあり得る。
【0045】
このオーラルケア組成物はさらに界面活性剤を含み得る。界面活性物質は洗浄及び/又は発泡特性を賦与するためにオーラルケア組成物製造物に通常加えられる。オーラルケア組成物処方中に用いられているいずれの従来型の界面活性剤も本発明物中に用いられ得るが、但し、それは、水性溶液の状態にはない固体粉末として加えられ得るものとする。適する界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性及び両イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0046】
適する非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエトキシル化ソルビトールエステル、特にはポリエトキシル化ソルビトールモノエステル、例えば、PEG(40)ソルビタンジイソステアラート、及びICIから商品名「Tween」で販売されている製品;エチレンオキシド・プロピレンオキシド重縮合物(ポロキサマー)、例えばBASF−Wyandotteから商品名「Pluronic」で販売されている製品;プロピレングリコール重縮合物;ポリエトキシル化水素化ひまし油、例えば、クレモホール;及びソルビタン脂肪エステル;が挙げられる。適するアニオン性界面活性剤としては、例えばAlbright and Wilsonから販売されていて「SLS」と呼ばれている、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。これは入手可能なものであって本発明物中には粉末形態で用いられる。有利には、界面活性剤は、このオーラルケア組成物の約0〜20重量パーセント、好ましくは約0〜10重量パーセント、より好ましくは約0〜2.5重量パーセントの範囲の量で存在している。
【0047】
このオーラルケア組成物はまたオーラルケア組成物処方中に慣用的に用いられている他の添加剤、例えば、ホワイトニング剤も含めた、着色剤、例えば二酸化チタン、過酸化水素、及びポリ三リン酸ナトリウム;防腐剤;及び甘味剤;を適切な濃度で含み得る。抗歯垢剤、例えば、トリクロサン、クロレキシジン、セチルピリジニウムクロリド及びニシン(好ましくは精製された形態のもので、Ambicin Nとして市販のもの);抗歯石剤、例えば、ピロリン酸塩;抗知覚過敏剤、例えばストロンチウム又はカリウムの塩;高分子補強剤、例えばGantrez;も必要なら存在していてよい。ブレスフレッシュニング剤(breath freshening agents:口臭清涼化剤)、例えば、重炭酸ナトリウムも適切な濃度で含まれ得る。一般的には、そのような添加剤は、少量又はその処方に合った量であり、通常、その組成物の約0.001〜5重量パーセントの量で存在している。水性環境で不安定である又は多少適合性がない活性成分又は活性物質の組み合わせも本発明の処方に加えられ得る。言い換えると、本発明の処方には、非水性環境で安定である又は多少適合性がある活性成分又は活性成分の組み合わせも加えられ得る。
【0048】
このオーラルケア組成物製剤には、香味剤も、通常、このオーラルケア組成物の約1.0重量パーセントの濃度で加えられ得る。香味剤は別の濃度でも加えられ得ることは理解されるだろう。適する甘味剤としては、サッカリン、シクラマート、及びアセサルフェームカリウムが挙げられ得、このオーラルケア組成物の約0.01〜1.0重量パーセント、好ましくは0.05〜0.5重量パーセントの量で存在し得る。別形態としては、キシリトール(これは強力な甘味剤ではない)が、甘味剤として、このオーラルケア組成物の約1.0〜約15重量パーセントの濃度で用いられ得る。タウマチンのような補助的な甘味剤も、このオーラルケア組成物の0.001〜0.1(好ましくは0.005〜0.05)重量パーセントの濃度で含まれ得る。タウマチンの適するブレンド品がTate and Lyle PLCから商品名「TALIN」で販売されている。
【0049】
このオーラルケア組成物はさらに汚染防止剤を含み得る。適する汚染防止剤としては、例えば、カルボン酸(例えば米国特許第4,256,731号明細書に開示されているもの)、アミノカルボキシラート化合物(例えば米国特許第4,080,441号明細書に開示されているもの)、及び米国特許第4,118,474号明細書に開示されているホスホノ酢酸が挙げられる。汚染防止剤はこのオーラルケア組成物処方に組み込まれてよいしあるいはこのオーラルケア組成物の後に用いるための、独立した組成物として提供されてもよい。
【0050】
このオーラルケア組成物(特には歯科用バーニッシュ剤)は、膜形成剤として働き得る樹脂を含み得る。好ましい樹脂はコロホニー樹脂である。コロホニーは、生木由来の天然樹脂である。コロホニー樹脂は、このオーラルケア組成物の約25〜75重量パーセントの量で存在し得る。コロホニー樹脂が好ましいが、吸収性で生体適合性の高分子も用いられ得る。
【0051】
このオーラルケア組成物(特には歯科用バーニッシュ剤)は、溶媒として働き得る、アルコールを含み得る。好ましいアルコールはエチルアルコールである。エチルアルコールは、このオーラルケア組成物の約5〜25重量パーセントの量で存在し得る。
【0052】
このオーラルケア組成物は約25,000〜400,000センチポイズの初期粘度を有し得るが、これは、消費者に受け入れられている従来型のオーラルケア組成物の粘度に比肩し得るものである。水で約3:1の比に希釈されたときの、この処方のpHは、10.0よりも低くあるべきである。このオーラルケア組成物の粘度は、TF20スピンドルBrookfield Viscometerを用いて測定されるものである。
【0053】
このオーラルケア組成物は、その各成分を適切な割合及び都合のよい任意の順序で混合し、その後、必要な場合は、そのpHを調整することによって、通常の方法で調製され得る。歯磨剤の特に好ましい調製方法では、ポリビニルポリマー及び湿潤剤が、十分な粘度がもたらされるように、例えば、必要な場合は、例えば50℃〜70℃の温度に、加熱しながら一緒に激しく撹拌される。ポリエチレングリコールと増粘性シリカがこの後この混合物に加えられ、強力な混合機を用いて、研磨剤がこの後この中に分散される。(存在する場合)フッ化物塩のような活性添加剤がこの後加えられ、続いて最終段階で界面活性剤と香味剤が加えられる。最終の混合は真空下で行われる。
【実施例】
【0054】
エナメル質フッ化物の取り込みは、フッ化物含有歯磨剤からどれくらいの量のフッ化物が歯表面に吸収されているかを評価するように設計されたインビトロ評価法である。フッ化物含有歯磨剤中の全フッ素含有量及び全可溶利用可能フッ化物を評価するための標準インビトロ法も開発されている。
【0055】
以下の実施例は本発明を説明するものである。
【0056】
(実施例1)
エナメル質初期損傷部へのフッ化物取り込みを促進することについての歯磨剤の影響を測定するためにインビトロ研究を5つの異なる歯磨剤処方で行った。エナメル質フッ化物取り込みを測定するための試験手順は、FDA Monograph中にProcedure 40と分類されている手順と同じであったが、但し損傷については、0.1M乳酸及び0.2%カルボポール907であって、HAPで50%飽和しているpH5.0にある溶液を用いて形成された。全フッ素はFDA Monograph方法3を用いて試験し、そして全可溶利用可能フッ化物はFDA Monograph方法16を用いて試験した。
【0057】
健康な、上部中央のウシ切歯を選択し、付着しているすべての軟組織を取り除いた。中空コアダイアモンドドリル錐で唇側面に直角に切り出すことによって、各歯から、直径3mmのエナメル質コアを調製した。標本が過熱するのを防ぐために、これは、水中で行われた。メチルメタクリレートを用いて各標本をプレキシガラス棒(1/4インチ直径×2インチ長さ)の末端部に包埋した。過剰アクリル樹脂を切除してエナメル質表面を露出させた。このエナメル質標本を600グリットのウェット/ドライペーパーで磨き、その後ミクロ微細Gamma Aluminaで磨いた。得られた標本は露出した表面が3mmのエナメル質ディスクで、それ以外はアクリル樹脂で覆われていた。
【0058】
各エナメル質標本をこの後0.5mlの1M HClOに15秒間浸漬することによって食刻した。この食刻の期間中は、食刻溶液は絶えず撹拌されていた。各溶液サンプルをこの後TISAB緩衝液でpH5.2に調節し(0.25mlサンプル、0.5ml TISAB、及び0.25ml 1N NaOH)、そのフッ化物含有量を、同じようにして準備された標準液曲線(1ml標準液及び1ml TISAB)と比較することによって測定した。食刻の深さを計算するのに用いるために、50μlを採取し、原子吸光によりCaについて分析することによって、食刻溶液のCa含有量を測定した(0.05ml適量〜5ml)。このデータは、各標本の、処置前固有フッ化物濃度とした。
【0059】
これらの標本を先に記載されているようにしてもう一度グラインダーにかけて磨いた。0.1M乳酸/0.2%カルボポール907溶液に24時間室温にて浸漬することによって各エナメル質標本に初期損傷部を形成させた。これらの標本をこの後蒸留水で良く濯ぎ洗いし、用いるときまで湿気のある環境に保存しておいた。
【0060】
処置は歯磨剤スラリーの上澄み液を用いて行われた。このスラリーは、1部の歯磨剤と3部の蒸留水とから構成されていた(9g:27ml、w/w)。各スラリーを30秒間良く混合し、その後約10,000rpmで10分間遠心分離した。この迅速混合時間は、一旦押出されると、試験製造物は利用可能なCaを含有していて、用いられている期間中に口の中で活性化されることを意味しているからであった。伝統に従ったより長い混合時間が、エナメル質標本がスラリーと接触状態にあることなしに、用いられたとすると、試験製造物は、対照と比較した場合、不公平に不利な条件にあることになる。各標本をこの後25mlのそれぞれの割り当てられた上澄み液に一定の撹拌(350rpm)で30分間浸漬した。処置に続いて、標本を蒸留水で濯ぎ洗いした。それぞれの標本から一エナメル質層をこの後取り外し、先に概略を述べたようにして(すなわち、15秒食刻)、フッ化物及びカルシウムについて分析した。それぞれの標本の処置前フッ化物(固有)濃度をこの後、処置後の値から差し引いて、この試験処置によるエナメル質フッ化物の変化を測定した。エナメル質フッ化物の変化を測定するためには、エナメル質フッ化物の取り込み(EFU)、全フッ素(TF;1:100希釈)、及び全可溶利用可能フッ化物(TSAF;1:10希釈)を、それぞれ、FDA方法#40、方法#3、及び方法#16を用いて測定した。結果は、ANOVA and Newman−Keulsの方法を用いて解析した(p<0.01)。
【0061】
試験に用いた歯磨剤は、以下の通り:1)RD07344−プラセボ;2)米国特許参考歯磨剤(#1277401 1000 SMFP/Silica、Lot PTG 07−04);3)RD07338−5%生体活性ガラス、1000ppmフッ化物、15%シリカベース処方;4)RD07339−7.5%生体活性ガラス、1000ppmフッ化物、15%シリカベース処方;及び5)RD07341−5%生体活性ガラス、1000ppmフッ化物、18.5%シリカベース処方;であった。表1は、試験歯磨剤1(RD07344−プラセボ)についての組成を示している。表2は、試験歯磨剤3(RD07338)についての組成を示している。表3は、試験歯磨剤4(RD07339)についての組成を示している。表4は、試験歯磨剤5(RD07341)についての組成を示している。
【0062】
試験結果は、プラセボ歯磨剤は17±3ppmのEFU結果(エナメル質フッ化物濃度の増加)をもたらすことを示した。米国特許の参考歯磨剤は、686±15ppmのEFU結果をもたらした。試験歯磨剤3(RD07338)は、929±26ppmのEFU結果をもたらした。試験歯磨剤4(RD07339)は、901±29ppmのEFU結果をもたらし、試験歯磨剤5(RD07341)は、991±25ppmのフッ化物取り込みをもたらした。試験歯磨剤3〜5はエナメル質フッ化物取り込みで米国特許の参考歯磨剤を凌駕する著しい増加を示した。より詳細には、米国特許の参考歯磨剤と比較して、試験歯磨剤3は35%より大きいEFUの増加をもたらし、試験歯磨剤4は30%より大きいEFUの増加をもたらし、試験歯磨剤5は44%より大きいEFUの増加をもたらした。TF(全フッ化物)結果は:米国特許参考−1055±4ppm F、歯磨剤3−936±7ppm F、歯磨剤4−935±9ppm F、であった。TSAF結果は:米国特許参考−1023±7ppm F、歯磨剤3−927±2ppm F、歯磨剤4−914±8ppm F、であった。これらの歯磨剤は、新鮮なシリカベースSMFP歯磨剤中におけるTF(850〜1150ppm F)及びTSAF(Total Soluble Available Fluoride:全可溶利用可能フッ化物)(≧800ppm F)についてのFDA要求事項を満たしている。この試験のより全部がそろった結果が表5に提供されている。
【0063】
表1:RD 07344組成
【表10】

【0064】
表2:RD 07338組成
【表11】

【0065】
表3:RD 07339組成
【表12】

【0066】
表4:RD 07341組成
【表13】

【0067】
表5:歯磨剤組成によって影響されるフッ化物取り込み
【表14】

【0068】
(実施例2)
フッ化物イオン放出に対するNovaMin(登録商標)生体活性ガラス添加の影響を測定するために2つのフッ化物バーニッシュ剤処方でインビトロ研究を行った。
【0069】
2つのサンプルバーニッシュ剤:1)0.100±0.002グラムの10% NovaMin(登録商標)+5%フッ化ナトリウムバーニッシュ剤;2)5%フッ化ナトリウムバーニッシュ剤;を試験した。各バーニッシュ剤サンプルをエポキシ製基体に塗布し、20mL脱イオン(DI)水に入れた。このサンプルを37℃及び200rpmにあるインキュベーターシェーカーに入れた。1、4、24、及び48時間後にDI水を取り出し、入れ換えた。各時間間隔におけるイオン含量についてこの取り出したDI水を分析した。
【0070】
イオン含量を分析するためには、このDI水サンプルを全イオン強度補正緩衝液[total ionic strength adjustment buffer](TISAB)で1:1に希釈し、フッ化物選択的電極を用いてフッ化物イオン濃度について分析した。カルシウム及びリンのイオン濃度は、誘導結合プラズマ[inductively coupled plasma](ICP)分光法を用いて測定した。結果は、すべて、累積平均μg[イオン]/gバーニッシュ剤として表された(n=9)。さらには、結果は、ANOVA and Student−Newman−Keulsの方法を用いて統計的にも解析された(p<0.05)。
【0071】
結果は以下の通りであった(結果は表6にも示されている)。1、4、24、48時間後におけるNovaMin(登録商標)+フッ化物バーニッシュ剤サンプルからのフッ化物イオン放出:97.8±1.5、1,134.9±50.3、9,835.8±52.3、10,346.8±27.2;フッ化物のみバーニッシュ剤サンプル:71.4±7.4、130.4±12.5、301.7±41.1、513.1±123.1。NovaMin(登録商標)+フッ化物サンプルからのカルシウムイオン放出:31.3±4.0、378.1±85.7、1,166.7±81.4、2,521.9±110.5;フッ化物のみサンプル:13.3±2.6、52.1±2.3、71.9±7.6、65.4±6.9。NovaMin(登録商標)+フッ化物サンプルからのリンイオン放出:115.8±1.4、340.4±8.8、1,491.5±31.5、1,618.2±34.2;フッ化物のみサンプル:112.5±0.5、219.5±2.2、307.6±2.5、396.1±3.2。NovaMin(登録商標)含有フッ化物バーニッシュ剤は、フッ化物のみバーニッシュ剤と比較して、すべての時間点において、測定されたイオンすべてが著しくより高い放出を有していた(p<0.05)。
【0072】
これらの結果は、NovaMin(登録商標)含有フッ化物バーニッシュ剤は、増大されたフッ化物放出を示すことを意味するものであり、これは、増大されたフッ化物取り込みをもたらす可能性があるものであって、フッ化物のみバーニッシュ剤よりもより良く歯表面を再石灰化する可能性があるものである。
【0073】
表6:NovaMin(登録商標)+フッ化物バーニッシュ剤によって影響されるイオン放出
【表15】

【0074】
示されているように、FDA一般薬基準方法(FDA monograph method)を用いて試験した場合、フッ化物歯磨剤に生体活性ガラスを加えると、エナメル質表面中の人工的虫歯損傷へのフッ化物取り込みを著しく良くした。生体活性ガラス含有フッ化物歯磨剤は、フッ化物利用可能性及び放出についてのすべてのFDA要求事項も満たした。これらの結果は、生体活性ガラス含有フッ化物歯磨剤は、従来型のフッ化物のみ歯磨剤よりも、歯表面をフッ素化するより大きな潜在力を有している、可能性があることを意味している。歯表面へのフッ化物取り込みに必要とされる補足的なカルシウム及びリンを生体活性ガラスがもたらしその結果再石灰化の潜在力が増大されるという、生体活性ガラスとフッ化物との間の相乗関係が、実証されている。
【0075】
これらの実施例は、生体活性ガラス及びフッ化物を含んでいる歯磨剤には良くなったフッ化物取り込みの結果を、そして生体活性ガラス及びフッ化物を含んでいるバーニッシュ剤には増大されたイオン放出の結果を示しているが、当業者なら、同じか又は似たようなフッ化物取り込みの結果及び/又はイオン放出の結果を、限定するものではないが、歯科用バーニッシュ剤、歯シーラント剤、チューインガム、可溶ストリップ、マウスウォッシュ、さらには他のフッ化物含有オーラルケア製造物を含めた、生体活性ガラス及びフッ化物を含んでいるあらゆるオーラルケア組成物にも期待するだろう。
【0076】
例示的な歯磨剤の処方は以下の通りである:
【表16】

【0077】
例示的な歯科用バーニッシュ剤の処方は以下の通りである:
【表17】

【0078】
局所的に塗布される歯科用バーニッシュ剤は、典型的には、樹脂担体中にフッ化ナトリウム調製物を含んでいる。歯科用バーニッシュ剤は、歯知覚過敏を低減させるために、また小児及びハイリスク虫歯患者の虫歯を予防するために、広く用いられてきた。多くの市販バーニッシュ剤製造物中に用いられているこの樹脂担体はコロホニー樹脂であり、これは、通常、松生木樹液から誘導される。オーラルケア用途に対しては、コロホニー樹脂の物理特性を改変するために、例えば、審美的な理由から、歯表面の色に樹脂の色がより近く一致するよう樹脂の色を薄くするために、エステル化処理が多くの場合用いられる。マレイン酸、無水マレイン酸、又はフマル酸と反応させることによって、その親水特性を増大させるためにも、また歯の湿った表面への付着を良くするためにも、コロホニー樹脂は改変され得る。コロホニー樹脂は、歯科用バーニッシュ剤中に、バーニッシュ剤の約20〜75重量パーセントの濃度で存在し得る。塗布し易いようバーニッシュ剤の粘度を下げるために溶媒(例えばエチルアルコール)がバーニッシュ剤の約5〜20重量パーセントの濃度で用いられ得る。溶媒は塗布後蒸発するので、歯表面にはバーニッシュ剤の膜の形成がもたらされる。歯科用バーニッシュ剤の粘度及び取り扱い特性を良くするためにはフィラー(例えばシリカ)がバーニッシュ剤のおよそ0.5〜5重量パーセントの濃度で用いられ得る。バーニッシュ剤組成物には、その製造物の外観及び味を良くするために着色剤及び香味剤も含まれ得る。歯科用バーニッシュ剤処方中にはさまざまなフッ素源がそのバーニッシュ剤の約0.5〜5重量パーセントの濃度で用いられ得る。
【0079】
上記からすると、フッ化物取り込みを良くするためにオーラルケア組成物中に生体活性ガラスを用いると、低フッ化物含有オーラルケア組成物の開発が可能になることになる。例えば、合衆国では、900ppm〜1450ppmの濃度が最も効果があることから法的な要求事項に従って消費者歯磨剤処方中にはフッ化物がそのような濃度で用いられている。しかしながら、そのような高い濃度でフッ化物を用いることは、国民の一部の構成員、例えば、小児や入院中の患者にとっては、フッ化物摂取と毒性の懸念から、懸念事となっている。つまり、900ppm以下の濃度にあるが、900ppmより高いフッ化物濃度と同じ効果があるフッ化物使用が、望ましい。
【0080】
当業者には、同じことが、広いが等価の条件及び他のパラメーターの範囲内で、並びにさまざまなオーラルケア製造物形態の範囲内で、本発明の範囲又はその実施形態になんら影響を及ぼすことなく行われ得ることは、理解されるだろう。本明細書中に引用されている特許、特許出願、及び刊行物は、すべて、参照により、本明細書にその全体が完全に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体活性ガラス及びフッ化物を含んでいるオーラルケア組成物と歯構造体を接触させることを含む、患者の歯構造体へのフッ化物取り込みを増大させるための方法。
【請求項2】
フッ化物が、生体活性ガラス中にある、請求項1記載の方法。
【請求項3】
オーラルケア組成物が、以下の処方:
【表1】

を含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
オーラルケア組成物と接触させた後の歯構造体のエナメル質フッ化物濃度が、900ppmより高い、請求項1記載の方法。
【請求項5】
オーラルケア組成物が、以下の処方:
【表2】

を含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
界面活性剤が、ポリエトキシル化ソルビトールモノエステル、Tween、エチレンオキシド・プロピレンオキシド重縮合物(ポロキサマー)、プロピレングリコール縮合物、ポリエトキシル化水素化ひまし油、及びラウリル硫酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ガムバインダーが、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カラヤ、キサンタン、アラビアガム、及びトラガカントからなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項8】
甘味剤が、サッカリン、シクラマート、アセサルフェームカリウム、キシリトール、及びタウマチンからなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項9】
オーラルケア組成物が、歯磨剤である、請求項5記載の方法。
【請求項10】
オーラルケア組成物が、歯科用バーニッシュ剤である、請求項5記載の方法。
【請求項11】
以下の処方:
【表3】

を含んでいるオーラルケア組成物。
【請求項12】
以下の処方:
【表4】

を含んでいる、請求項11記載のオーラルケア組成物。
【請求項13】
界面活性剤が、ポリエトキシル化ソルビトールモノエステル、Tween、エチレンオキシド・プロピレンオキシド重縮合物(ポロキサマー)、プロピレングリコール縮合物、ポリエトキシル化水素化ひまし油、及びラウリル硫酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
ガムバインダーが、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カラヤ、キサンタン、アラビアガム、及びトラガカントからなる群から選択される、請求項12記載の組成物。
【請求項15】
甘味剤が、サッカリン、シクラマート、アセサルフェームカリウム、キシリトール、及びタウマチンからなる群から選択される、請求項12記載の組成物。
【請求項16】
組成物が、歯磨剤である、請求項12記載の組成物。
【請求項17】
組成物が、歯科用バーニッシュ剤である、請求項12記載の組成物。
【請求項18】
組成物が、シーラント剤である、請求項12記載の組成物。
【請求項19】
以下の処方:
【表5】

を含んでいる歯磨剤。
【請求項20】
以下の処方:
【表6】

を含んでいる歯科用バーニッシュ剤。

【公表番号】特表2011−526298(P2011−526298A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516696(P2011−516696)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/048762
【国際公開番号】WO2009/158564
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(506207440)ノバミン テクノロジー インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】