生体液の細胞成分を同定する方法および装置
本発明は生体液試料に存在する細胞成分を分類し計数する方法に関し、通常はフローサイトメトリー装置(1)で実行される、試料中の一連の細胞成分が種々の集団に分類され計数されることを可能にする一連の一次的結果を得るための一次的細胞学的分析ステップ、および、同定された細胞特性に基づき特異な細胞成分を細胞学的に分析し、試料中の少なくとも1つの細胞の集団または亜集団が分類され計数されて、細胞特性の同定を可能にする補足的結果を得るための補足ステップを包含する。本発明は特に血液学的分析に適用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体液の細胞成分を同定し、生体液の細胞の集団および亜集団を定量する方法およびこの方法を実行するのに用いることのできる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲内において、「生体液」は細胞成分を含有するか、そうした成分を含有することのできる、血液、骨髄、脳脊髄液、胸膜液といったあらゆる天然液または生物学的製剤を指し、「細胞成分」は赤血球および白血球といった、いわゆる細胞とともに、血小板といった生体液に存在する他の種類の細胞を指す。同様に、「集団」は好塩基球、リンパ球などといった同じ種類に属する一群の細胞を指し、「亜集団」は、例えばリンパ球集団におけるB、T4、T8リンパ球といった同じ種類に属する特異性の細胞の複合体を指すが、また未熟型は変性型も指す。
【0003】
例えば血液といった種々の生体液における細胞の全集団を同定し計数することは、臨床における診断という観点からきわめて重要である。生体液の細胞学的分析を実行するための従来の方法では、フローサイトメトリーに基づく血液学用装置などの種々の従来の装置を用いて、生体液の試料に存在するすべての細胞を分類して正確かつ自動的に計数した後に、集団に分類することができる。これらの装置は通常、測定装置、典型的には電気的および/または光学的な装置であり、種々の試薬および染料が存在しても測定が可能であり、上述のような分析結果を導くことができる。従って、血液試料ではこれらの自動的装置で、血球数、白血球像および血小板数といった従来のパラメータを供給することのできる血液像を得ることが可能になる。追加的な別個の複数の装置を用いれば、網状赤血球、赤芽球、未熟な細胞などの同定における追加的な結果を得ることができ、血液像データを仕上げることができる。例としては、本出願人による、フローサイトメトリーを用いる複数パラメータの測定法による生物学的細胞の同定および計数を行うための方法および試薬に関するフランス特許出願第0102489号を参照できる。
【0004】
よって、生物学的細胞の各種類に関する情報を演繹することができ、その結果として分類が可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大半の例において、すべての細胞成分を正確かつ自動的に計数し、細胞成分の集団のそれぞれを分類できれば、医療従事者に不均衡または細胞学的な異常の存在といった情報を与えるには十分である。しかし、従来の自動的な細胞分析装置を用いて生体液を分析する場合には、通常期待された結果に比して異常な特異的な細胞の計数結果が、これらの結果の一つまたはそれ以上をさらに絞り込むために、さらなる検査が妥当とすることがある。さらには、こうした分析はある単一の集団またはファミリー内の細胞の異なる集団を正確に定量できるものではなく、これは特に、患者の特定の病態を検知し、その経過を監視することにおいては大きな欠点である。
【0006】
このように、血液試料中の選択した亜集団の細胞群、例えば白血球の計数に関するより正確な結果を得るには、補足的な分析が最も重要であるとわかる。特定の病態(免疫反応または白血病)が出現すれば、ある白血球に属する細胞集団が異常量存在することと相関することがある。
【0007】
この種の補足的分析は、従来の装置を用いて実行される分析とは異なり、マニュアルのスメア検査の後に顕微鏡下で観察する方法を取ることにある。この場合、細胞成分の同定および計数は、自動化装置を用いて得られた結果に対する追加または代替として用いられる。
【0008】
またこれらの分析には、おそらく蛍光色素を含む選択された抗体を用いて選択された標識細胞集団を識別する特異細胞標識または当該技術で既知の標識が含まれる。例えば、フローサイトメトリーですべての白血球数を分類するための抗CD45および抗CD71モノクローナル抗体を用いた標識を開示した欧州特許出願第0552707号にその旨の記載がある。国際公開第00/16103号は、抗体または抗体キットを用いてそれを蛍光分析法で検出することで、好酸球および好塩基球を識別することによってこれらを定量する方法を記載している。同じく、抗CD19、抗CD4および抗CD8抗体を用いてリンパ球集団を標識することで、それぞれB細胞、ヘルパーT細胞およびサプレッサーT細胞という亜集団を区別することができる。
【0009】
これらの分析は従来の自動的な装置を用いて得られた結果を監視および/または訂正するのに用いることができるが、こうした分析にはある程度の不正確性を伴い、自動装置を用いて得られた結果と統計学的に相関するのみであることが多い。フローサイトメトリーといった高性能の方法を用いると実質的に同じ結果が得られるが、分析が2回に分かれて実施されているため、自動装置を用いて得られた結果と直接的な相関関係は見込めず、全体としての結果の正確性が低下する。
【0010】
事実、ある一定分量の生体液の細胞成分の分析で、細胞成分の正確な計数に異常が認められた場合、ユーザーは同じ生体液の別の一定分量を対象に、2つの異なる分析システムを用いて、個別の根拠に基づく測定を行って、2回目の分析を実施することになる。すなわち、測定毎に異なる結果が得られることにより、各測定で得られた結果を数学的に相関させることが、結果を得るために必要であり、結局その結果は誤差を含む。これにより結果を解釈するが、異常な結果の真の原因を十分に同定することができないため、主観的な側面を有する。これはおそらくは試料それ自体に起因するか、装置に起因するかのいずれかで、場合によっては病態の正確な診断が不可能であることもある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はこの従来技術の欠点を改善するためになされている。
【0012】
この目的のため、下記のステップを含んだ、生体液試料に存在する細胞成分を分類し、計数する方法を提案する。
【0013】
−従来フローサイトメトリーによって実施される、細胞学的分析であって、試料のすべての細胞成分を異なる集団に分類し計数することを可能にする一連の初期結果を得る一次ステップ、および
−特有な細胞成分を、同定された細胞の特性に基づいて細胞学的に分析して、前記の細胞特性を同定するために試料の少なくとも1つの集団または亜集団を分類および計数を可能にする補足的結果を得ることができる追加ステップ。
【0014】
本発明に基づく過程は、従来フローサイトメトリーによって行われる、生体液または一定分量の生体液の従来の細胞学的分析である第1のステップを包含し、このステップは当業者に既知である、電気的および/または光学的測定手段および、細胞融解剤、細胞内物質のための染料、水性溶媒およびこれらの混合物を意味する試薬を含む。上記の測定手段から発信される信号を従来どおりに処理し、「標準化した一連の結果」、すなわち、分析の従来のパラメータを包含する一連の結果に変換する。このため、細胞成分を同定し、正確に計数することが可能になり、それらを次に種々の集団に分類する。これは例えばフランス特許出願第9701090号に記載がある。
【0015】
二次ステップまたは補足ステップで、細胞の特性を同定するのに用いることができる補足的結果を得ることができる。
【0016】
細胞成分の特有の種類または集団の数に対する異常計数の結果により、1つ以上の異常を同定することができる。本発明に基づく本過程において、これらの異常は例えば異常に多数の芽球または構造が異常なリンパ球に関連づけることができる。
【0017】
好ましい実施の形態において、まず始めに1回一次ステップが実施され、この初期結果が、同定された細胞特性に関連づけられる少なくとも1つの異常の同定を導くものである場合、操作者は一次ステップを続行し、これを最新の一連の初期結果を得るために反復して行い、同時にこの細胞特性に関連づけられる補足的結果を得るために補足ステップに取り掛かる。
【0018】
有利には、本方法はさらに、同定された細胞特性に基づき特異的な細胞を標識するステップとそれに続く細胞学的分析のステップにより、試料に含有される集団すべてを同定するためのすべての初期結果、並びに同定された細胞特性に関連づけられる集団または亜集団を同定するための補足的結果へと導かれる。
【0019】
これらの特性によって、血液中のリンパ球の亜集団のような特有の細胞成分を特異的に標識をするステップが生じ、一定分量の血液中のその数が通常期待されるものに比して異常であるため、その種々の亜集団を測定するべく、この特別な集団を分類し、計数するためのより集中的な検査が妥当とされる。
【0020】
細胞成分の標識が一旦実施されると、次には特異的に標識された細胞成分、または必要に応じて標識されていない細胞成分を明らかにする必要がある。これは、細胞学的測定の補足的ステップを実施することによってなされ、その数または存在に関連づけられる1つまたは複数の異常の原因であった細胞の集団または亜集団の細胞成分を定量および分類するための追加的結果をもたらす。上記の通り、操作者は、標識した細胞成分の補足的ステップを同時に伴う一次分析を反復し続ける。同じ一定分量の生体液で得られた一次分析ステップの反復に伴う補足的測定結果は、標的となる亜集団に対する、標準化された一連の結果の確立を可能にするものと同一の照合基準に基づいて確立される、分類および計数の結果を供給する。従って、非同一の分析方法、非一体型の装置で連続的に行われた分析で生じる誤差または正確性の欠如は取り除かれる。
【0021】
このため、細胞内物質(DNA、RNA)、特殊なタンパク質または酵素、膜構造などのような、少なくとも1つの物理化学特性に対して固有の親和性を有するために選択したマーカーを用いることによって、同じ細胞成分の異なる物理化学特性を測定することは可能である。これにより、標識されていない細胞成分と各標識された細胞成分を分類することが可能になる。このため、標識されたもしくは標識されていない細胞成分を既知の方法で検出する(下記を参照されたい)。同じく、細胞の標識により、例えばリンパ球集団のなかのB、T4およびT8リンパ球といった、細胞成分の異なる亜集団をきわめて正確に定量することが可能になる。
【0022】
結果として、本発明による方法を実施することにより、特定の病態に典型的な特定の細胞成分の存在、または生体液の単一の同じ試料におけるその異常に低い値または高い値に関連づけられる特性を同定することが可能になる。このため、特殊な集団または亜集団において細胞内の検査を行うことが可能になる。本発明に基づく方法によれば、これまでに到達されたことのない精度および信頼性を有する結果を得ることができる。なぜなら、これらの可能性に対応する補足的分析が、一連の標準化された結果へと導く分析と同時に協調して実行され、補足的結果および一連の標準化された結果に共通する照合基準の存在を保証し、それによって、特に、個別分析の欠点すべてを取り除くすることができる。
【0023】
本発明に基づく方法ではまた、異常として体系的な標準化処理を施される可能性のある、標準化された一連の結果から得られるずれの解釈における誤差の、圧倒的大部分を取り除くことができる。
【0024】
本発明による方法では、単一の操作で、完全かつ広範囲な結果を得ることができ、正確な病理学的診断を可能にするために医療従事者が指示するであろう連続的な複数かつ個別の分析の必要がない。ここでの利点は、これらの分析に伴うコストを削減することができる点である。
【0025】
同様に、同定されている病理について、その経過または治療の有効性を監視するにあたって、医療従事者にとっては、単一の参照基準に関連した一連の結果の保証された信頼性を伴って行われる、指示する分析の選択肢が増える。
【0026】
最後に、本発明による方法では、医療従事者に、標準化された一連の結果の細胞特性を検出および同定する場合において、より高い信頼性を与えることができる。
【0027】
細胞学的分析の一次ステップは、有利には、試料中に存在する細胞成分すべてを分類するための、インピーダンスを含む少なくとも1つの電気的な分類手段または回折、拡散、透過および蛍光発光を含む光学的分類手段による第1の測定手段の使用を包含する。
【0028】
さらに、この一次ステップは、試料中に存在するすべての細胞成分を分類するための1つ以上の試薬の使用を包含することができる。
【0029】
細胞学的分析の補足ステップは、有利には、生体液の試料中に存在する少なくとも1つの細胞集団または亜集団を分類および計数するための第2の測定手段の使用を包含する。
【0030】
第2の測定手段は、好ましくは、少なくとも1つの光学的分類手段の使用を包含する。このため、この第2の測定手段は、好ましくは、特に特定の波長または特定範囲の波長での、回折、透過、蛍光発光または吸光度から選択した光学的パラメータを、単一または組み合わせた形で測定することのできる、1つ以上の光学的測定方法を包含する。
【0031】
第2の測定手段は、蛍光発光とともに操作し、1つ以上の慎重に選択された波長を用いた、少なくとも1つの測定方法からなることができる。特に、第2の測定手段は、紫外線から赤外線までの範囲の選択された波長において操作可能である。
【0032】
好ましくは、特異的細胞標識ステップは、細胞特性を識別できる少なくとも1つのマーカーの使用を包含するのに対し、細胞学的分析の補足ステップは、一連の測定と同時に行われる1つまたは複数のマーカーを同定することのできる、少なくとも1つの測定方法を包含した第2の測定手段の使用を包含する。
【0033】
測定信号の処理は、データを処理し結果を集めるために好適な手段を包含するコンピュータを用いて実施することができる。これらの手段は、信号を処理して結果をグラフ状に表示するソフトウェアおよび結果の分析から得られた信号を処理するソフトウェアの、計2つのコンピュータソフトウェアからなることができる。コンピュータは特異的細胞の標識ステップを制御するための制御手段と組み合わせてもよい。
【0034】
標識ステップを実施するためには、少なくとも1つの染料と、少なくとも1つの、染料または蛍光色素と抱合させた抗体とからなるグループから選択した分子プローブを代表する、少なくとも1つの細胞マーカーを使用することができる。
【0035】
マーカーとして選択された染料は、あらかじめ規定された測定で用いられる細胞内物質のための染料とは異なるものでなくてはならない。すなわち、あらかじめ規定された測定で染料を検出するのに必要とされる波長とは異なる波長において、光学的測定技術によって検出可能でなければならない。
【0036】
少なくとも1つの抗体または抗体の混合物または抗体キットを用いた標識は、抗原・抗体反応によって従来から実施されており、好ましくは、フルオレセインまたはフィコエリトリン−シアニン5(PC5)といった、従来の染料または蛍光色素が有利にグラフトできるモノクローナル抗体を用いて実施される。
【0037】
さらに、分析ステップでは、電気的および光学的測定手段はそれぞれ、直流または交流細胞インピーダンスでの測定手段および光線の回折、分散、透過または蛍光発光から選択された測定手段である。
【0038】
本発明の範囲内において、生体液は、好ましくは、全血、希釈または未希釈血清、希釈または未希釈骨髄、脳脊髄液、尿、滑液、胸膜液などである。
【0039】
生体液の試料が血液である場合、細胞学的分析の一次ステップは、有利には、細胞計数、白血球式(leukocyte formula)および血小板計数のパラメータのすべてまたはいくつかを含む血液像を提供するのに必要な測定を包含する。
【0040】
この場合、標識ステップは、赤血球、白血球および血小板の集団から選択された血液試料の細胞成分に対する特異的なマーカー抗体の使用によって実施することができる。このため、本発明に基づく過程は、赤血球が標的とされる標識とともに白血球または血小板が標的とされる標識を行うことで実施することができ、分析における相互反応および干渉のリスクはない。
【0041】
標識ステップは有利には、血液試料の細胞集団に存在する少なくとも1つの特異的な亜集団を標識するための特異的な抗体の使用によって実施される。
【0042】
好ましくは、標識ステップは、リンパ球、好中球、好塩基球、好酸球、単球、赤血球、血小板およびこれらすべての前駆細胞から選択される少なくとも1つの亜集団を標識するための特異的な抗体の使用によって実施される。
【0043】
細胞の標識ステップは、少なくとも1つの抗体または蛍光色素と抱合した抗体の混合物とともに実施してよいのに対し、細胞学的分析の補足ステップでは、直交性の蛍光発光型(FL2)の細胞蛍光測定手段を使用する。
【0044】
細胞標識ステップは、有利には、CD3、CD4、CD8、CD9、CD10、CD11b、CD13、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD33、CD34、CD45、CD63、CD64、CD71、CD203、CRTH2、FMC7およびHLA−DRから選択された少なくとも1つの抗体を用いて実施される。
【0045】
また、細胞標識ステップは、少なくとも1つの染料、少なくとも1つの染料または蛍光色素と抱合させた抗体からなるグループから選択した分子プローブを代表する少なくとも1つの細胞マーカーを使用することができる。
【0046】
本発明のさらなる特性によれば、細胞学的分析の一次ステップおよび細胞学的分析の補足ステップは、同時に、同じフロー中で同じ細胞成分の異なる物理的特性を測定する。
【0047】
本発明による過程は、試薬と細胞マーカーを生体液と混合するステップ、そうして得た混合物を一つの分析室に移送するステップを包含することができ、それによって上述の通り、同じ生体液または一定分量の生体液で広範囲かつ同時に分析を行うことを可能にする。
【0048】
本発明による過程により、例えば血液試料では完全な血液像を得ることができる。すなわち、一連の標準化された結果の上をいく詳細な同定結果であり、血液中の細胞集団、すなわちリンパ球、単球、赤血球、顆粒球、好中球、好酸球および好塩基球、赤芽球、未熟な顆粒細胞、血小板およびその他の芽球を分類して計数し、存在するならば、期待されているリンパ球の分布と異なるといった理由で、リンパ球の集団のなかで異常な芽球の亜集団を検出し計数する可能性がある。例えば、これらのリンパ芽球は、抗CD45抗体に対する非陽性に基づき、他のリンパ球集団から単離する。
【0049】
本発明のもう一つの側面は、上述の方法を実施するための装置に関し、フローサイトメトリーによって操作する装置を包含する。これは、回折、拡散、透過および蛍光発光からなるグループの光学的パラメータ、およびインピーダンスを含む電気的パラメータから選択されたパラメータを測定することのできる少なくとも1つの測定チャネルを包含する第1の測定手段、回折、透過、蛍光発光および吸光度から選択される、光学的パラメータを測定することのできる少なくとも1つの測定チャネルを包含する二次的な分析手段および第1の測定手段および第2の測定手段から得られた結果を処理するコンピュータを有する。
【0050】
好ましい実施の形態において、第1の測定手段は、軸方向の回折センサー(FSC)、直交性拡散センサー(SSC)、直交性蛍光センサー(FL1)および抵抗率を測定する電極を包含するのに対し、第2の測定手段は直交性蛍光測定センサー(FL2)を包含する。
【0051】
本発明による装置は、よって、所定の従来のフローサイトメーターに組み込まれた第1の分析手段を包含する。有利には、これらの手段は、欧州特許第0425381号に記載のあるように、生体液の試料または一定分量の軸方向回折(FSC)、直交性拡散(SSC)、直交性蛍光発光(FL1)および抵抗率(RES)を包含するグループから選択された少なくとも1つの測定パラメータまたはチャネルを意味する。これらの第1の分析手段は従って、細胞成分の分類およびその正確な計数へと導き、それを集団に分類することを可能にする。
【0052】
有利には、一次的手段を調節して、フランス特許第0102489号に記載のあるように、細胞融解剤、細胞内物質のための染料、水性溶媒およびこれらの混合物からなるグループから選択された、生体液の細胞成分すべてを分類し計数するための少なくとも1つの試薬を組み込む。
【0053】
生体液の特定の細胞成分、特に赤血球の融解は、例えば第1アミド、クロルアミドなどであってよいイオン化および/または非イオン化洗剤を用いて実施される。融解剤の選択は、生体液の性状によって左右され、当業者は容易に決定することができる。
【0054】
細胞成分の染料は細胞内のRNAまたはDNAと結合することを意図したものである。従来はチアゾールオレンジ、チアゾールブルーなどからなる。試薬は任意には、当技術では既知の細胞成分の固定剤を包含することができる。
【0055】
本発明に基づく装置の一実施形態によれば、それはさらに以下を包含する。
−特定の細胞集団または特定の細胞成分の存在または数に対応する少なくとも1つの細胞特性を同定する手段
−同定された特性の機能としての特異的な細胞標識手段
標識手段は、好ましくは、少なくとも1つの染料、染料または蛍光色素と結合する少なくとも1つの抗体からなるグループから選択される分子プローブを意味する少なくとも1つの細胞マーカーを包含し、より好ましくは、少なくとも1つの抗体または蛍光色素をグラフトさせた抗体の混合物である。
【0056】
本発明による装置の一実施形態によれば、1つ以上の測定チャネルを構成する標識手段に適合する測定手段は、それぞれ直流または交流細胞インピーダンス測定手段および、回折、透過および蛍光発光または紫外線から赤外線の範囲の波長で標識された細胞の吸光度からなるグループから選択された少なくとも1つの測定手段である。
【0057】
好ましくは、細胞の蛍光発光に基づく測定手段は、特異的な抗体に結合した蛍光色素(FL2)の直交性の蛍光発光である。
【0058】
本発明による装置の好ましい実施の形態によれば、それは第1の測定手段および第2の測定手段から得られた結果を相関させるべく設計され、第1の測定手段および第2の測定手段から得られた結果をグラフ状に表示するコンピュータを包含する。
【0059】
有利には、コンピュータは細胞成分をそのファミリーまたはその物理的特性に応じて解釈および分類を実施するべく設計されている。
【0060】
コンピュータは測定信号を解釈するべく設計されており、上述のように、データを処理し結果を提示するのに好適な手段をさらに包含する。好ましくは種々の分析で得られた結果を保管するためのメモリーを包含する。
【0061】
こうした装置が、ルーチンな分析に加えて、検出された異常の原因であると考えられるか疑われる要素を同定し計数するのに必要とされる分析の実施における適切性の自動意思決定能力を有することができる。
【0062】
本発明の特性および利点は、下記の説明および添付の図表を参照の上、実施例による制限を設けない実施の形態により、より明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
図1では、本発明に基づいて一定分量の生体液を分析するための装置1を形成する具体的な要素を、機能図の形態で示したものである。この図はフランス特許出願第0102489号に記載のパラメータを部分的に用いている。フローサイトメトリーに基づく自動装置である装置1は、下記のパラメータおよび構成要素を有する。
−単色レーザー10
−光線を形作る装置11
−抵抗率および光学的測定による細胞の容積を測定するための循環コンテナー12
−軸方向の回折(FSC)の放射を採集するための光学的システム13
−寸法の解釈を提供する軸方向の回折(FSC)センサー14
−観察対象の細胞の構造を表現する直交性拡散(SSC)センサー15
−細胞内のRNAおよびDNAの発現を測定する直交性蛍光発光(FL1)センサー16
−蛍光色素とグラフトした抗体の反応性を測定する直交性蛍光発光(FL2)センサー17
−直交性放射を採集するための光学的システム18
−コンテナー12に組み込まれた抵抗率(RES)を測定するための電極19
−コンピュータ20
−結果を表示するシステム21
一定分量の生体液を、軸方向の回折、直交の拡散および細胞の直交性蛍光発光により光学的に測定するチャネルを包含する装置1を用いて分析する。その原理は以下に簡潔に述べる。
【0064】
最初の例では、生物学的試料の細胞を、測定コンテナー12に入れ、光源10から放射され装置11によって成形される光線が通過することにより、細胞の寸法に応じて放射の回折の程度が変化する。回折した放射光を採集するための光学的システム13を放射の直線上に置く。回折した放射光をセンサー14で採集する。その反応は細胞の回折によって左右される。
【0065】
直交性拡散の原理は、細胞成分を通過する光線の放射の拡散の測定に基づくものである。放射光はコンテナー12の出口で拡散される放射光と直交するセンサー15によって採集され、その反応は拡散の度合に比例する。
【0066】
直交性蛍光発光FL1およびFL2の測定は、それぞれ、特定の波長で染色された細胞が励起して蛍光を放射する励起波長とは異なる、特定の波長での励起、および、特異的な抗体にグラフトした蛍光色素が励起して、それが特異的な蛍光を放射するという原理に基づくものである。
【0067】
直交性放射FL1およびFL2を採集するための光学的システム18は、放射源10から放射される光と直交して置く。
【0068】
装置1も抵抗率(RES)による電気的測定のためのチャネルを包含する。この測定は、ある要素をコンテナー12に入れることで、電流が一定の電界に入れて、この要素によってこの電界で示される抵抗率が、オームの法則に従って電流を一定に保つために電圧を上昇させる必要を生じさせるという原理に基づくものである。
【0069】
コンテナー12に組み込まれた電極19は、この要素の抵抗率を測定し、それによりその容積を算出することが可能になる。
【実施例1】
【0070】
一定分量の正常な血液を、フランス特許出願第0102489号に記載があるように、フローサイトメトリーによる従来の自動分析機で分析し、白血球の同定および定量を行う。
【0071】
この分析結果を、各測定チャネルで得られた測定結果の種々の組み合わせである二次元マトリックスの形態で観察する。明瞭性を確保するため、各細胞要素を示す各マトリックスのドットは削除しておく。得られた集団のそれぞれの輪郭のみを描出する。
【0072】
図2は2つのチャネルFSCおよびSSCによって得られたマトリックスを示す。4つの集団を観察する。Lはリンパ球、Mは単球、Eは好酸球、Nは好中球を示す。図1では、集団NおよびEは明確に分離されていない。
【0073】
図3は2つのチャネルFSCおよびFL1によって得られたマトリックスを示す。集団NおよびEが出現し、集団LおよびMにはオーバーラップが認められる。
【0074】
図4は測定チャネルSSCおよびFL1によって形成したマトリックスを示す。集団NおよびEが出現し、集団LおよびMはそれぞれ完全に分離する。
【0075】
図5も2つのチャネルRESおよびFSCによって形成したマトリックスを示す。この配置では、集団LおよびEは分離しているが、集団NおよびMは分離していない。
【実施例2】
【0076】
一定分量の血液を、フランス特許第0102489号に記載がある測定チャネルを用いて、フローサイトメトリーに基づく従来の自動分析機で分析し、白血球の同定および定量を行う。
【0077】
図6は2つのチャネルFSCおよびSSCによって得られたマトリックスを示す。集団LおよびNは図2と似た特性を示してはいるが、対照的に集団Lは図2に示された正常なものに比して異常に広範囲にわたっている。これは同じく図7〜9にもそれぞれ図3〜5に示されたマトリックスに対応して認められる。これらの分析の最後に、リンパ球の集団のダイアグラム上の分布は、正常なリンパ球の集団に比して広範にわたっており、芽球といった異常な細胞を有していることが推測される。
【実施例3】
【0078】
実施例2で用いた一定分量の血液を、装置1を用いて本発明による過程によって分析する。
【0079】
分析は以下のように実施する。
【0080】
ヒトの血液試料50μlを採取し、蛍光色素としてPC5を含有する抗CD45モノクローナル抗体の溶液50μlと混合する。こうして得られた溶液を、数分間、約3〜30分間、光線が全く入らない状態で室温でインキュベートする。こうして得られた溶液を、細胞内染料としてチアゾールオレンジを含有する試薬と混合し、赤血球を融解し、一次分析ステップを実施するのに必要な細胞要素を固定する。
【0081】
ここで、レーザー10を用いるチアゾールオレンジの励起波長は488nmであり、放射波長は530nmである。この実施例では、成熟した正常な白血球を特定して標識するために抗CD45抗体を用いており、発現の強度は降順でリンパ球、好酸球、単球、好塩基球および好中球である。
【0082】
この溶液を次に分析装置1の循環コンテナー12に移送する。ユーザーはこの一定分量の分析を、種々の細胞の集団を分類し計数した従来の結果を供給する4つのチャネルおよび5番目のチャネルFL2(PC5の励起波長は488nmであり、放射波長は660nmである)で、同時にそれを実施するコンピュータ20を用いて開始する。ソフトウェアは上述のチャネルを用いて各測定から得られる結果を処理する。
【0083】
図10は2つのチャネルFSCおよびSSCによって得られたマトリックスを示す。5つの集団を観察する。Lはリンパ球、Mは単球、Eは好酸球、Bは芽球で、抗CD45抗体に対しては陰性である。
【0084】
図10では、集団NおよびEは明確に分離しておらず、集団L、MおよびBの間にはオーバーラップが認められる。
【0085】
図11は2つのチャネルFSCおよびFL1によって得られたマトリックスを示す。集団NおよびEが出現し、集団L、MおよびBの間にはオーバーラップが認められる。
【0086】
図12は測定チャネルSSCおよびFL1によって形成されたマトリックスを示す。集団NおよびEが出現し、集団Mは他の集団から分離しているが、集団BおよびLは完全に分離していない様子が認められる。
【0087】
図13も2つのチャネルRESおよびFSCによって形成されたマトリックスを示す。この配置では明確に分離している集団が存在しない。
【0088】
図14は2つのチャネルFL2およびSSCによって形成されたマトリックスを示す。このマトリックス図では、異常な芽球Bの集団をリンパ球の集団から分離することが可能である。
【0089】
本発明による装置1を用いて過程を実行することにより、芽球B(抗CD45に対して陰性)が分析対象の一定分量の血液に存在することを確認し、定量することが可能である。図14に示す補足的測定により、芽球Bを明確に分類することができる。これは血液像のあらゆる所定の測定では可能にならなかったことである。
【実施例4】
【0090】
この実施例の意図は、患者の治療の監視の範囲内で、芽球の集団が既知である血液試料中の非芽球の細胞成分を正確に計数する方法を示すものである。これまでの分析では、リンパ球の集団が異常に分布しており、さらなる検査が必要であることがすでに示されている。
【0091】
下記の分析は、リンパ球要素を同定し、正確に計数することを可能にすることを意図するものである。
【0092】
この同定は、同じ蛍光色素PC5と抱合させた抗CD19および抗CD3抗体を用いて、チャネルFL2によって標識されたリンパ球を検出することによって行う。
【0093】
芽球の集団が既知である一定分量の血液50μlを、前述の装置1で分析し、実施例3に記載の分析ステップおよび試薬を用いる。
【0094】
図15は2つのチャネルFSCおよびSSCによって得られたマトリックスを示す。3つの集団を観察する。Lは抗CD3および抗CD19抗体による標識に陽性のリンパ球、Nは好中球、Bはこれら2つの抗体に陰性のリンパ球である。集団Nは他の2つ、すなわちLおよびBから完全には区別されず、この2つの集団にはある程度のオーバーラップが認められる。これは図16〜18にもそれぞれ図3〜5に示されたマトリックスに対応して認められる。
【0095】
図19は2つのチャネルFL2およびSSCによって形成されたマトリックスを示す。このマトリックス図は検討対象の3つの集団を分離し、特に陽性のリンパ球を抗CD3および抗CD19抗体に陰性のリンパ球から、すべての白血球にわたって分離することを可能にし、それにより、正確な計数が可能になる。図19に示す補足的測定により、CD3抗体およびCD19抗体に陽性のリンパ球を明確に分類することができる。これは血液像のあらゆる所定の測定では可能でなかったことである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】好ましい実施形態に基づく分析装置を形成する、具体的な要素を表す図である。
【図2】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図3】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図4】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図5】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図6】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図7】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図8】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図9】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図10】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図11】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図12】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図13】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図14】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図15】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図16】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図17】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図18】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図19】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は生体液の細胞成分を同定し、生体液の細胞の集団および亜集団を定量する方法およびこの方法を実行するのに用いることのできる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲内において、「生体液」は細胞成分を含有するか、そうした成分を含有することのできる、血液、骨髄、脳脊髄液、胸膜液といったあらゆる天然液または生物学的製剤を指し、「細胞成分」は赤血球および白血球といった、いわゆる細胞とともに、血小板といった生体液に存在する他の種類の細胞を指す。同様に、「集団」は好塩基球、リンパ球などといった同じ種類に属する一群の細胞を指し、「亜集団」は、例えばリンパ球集団におけるB、T4、T8リンパ球といった同じ種類に属する特異性の細胞の複合体を指すが、また未熟型は変性型も指す。
【0003】
例えば血液といった種々の生体液における細胞の全集団を同定し計数することは、臨床における診断という観点からきわめて重要である。生体液の細胞学的分析を実行するための従来の方法では、フローサイトメトリーに基づく血液学用装置などの種々の従来の装置を用いて、生体液の試料に存在するすべての細胞を分類して正確かつ自動的に計数した後に、集団に分類することができる。これらの装置は通常、測定装置、典型的には電気的および/または光学的な装置であり、種々の試薬および染料が存在しても測定が可能であり、上述のような分析結果を導くことができる。従って、血液試料ではこれらの自動的装置で、血球数、白血球像および血小板数といった従来のパラメータを供給することのできる血液像を得ることが可能になる。追加的な別個の複数の装置を用いれば、網状赤血球、赤芽球、未熟な細胞などの同定における追加的な結果を得ることができ、血液像データを仕上げることができる。例としては、本出願人による、フローサイトメトリーを用いる複数パラメータの測定法による生物学的細胞の同定および計数を行うための方法および試薬に関するフランス特許出願第0102489号を参照できる。
【0004】
よって、生物学的細胞の各種類に関する情報を演繹することができ、その結果として分類が可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大半の例において、すべての細胞成分を正確かつ自動的に計数し、細胞成分の集団のそれぞれを分類できれば、医療従事者に不均衡または細胞学的な異常の存在といった情報を与えるには十分である。しかし、従来の自動的な細胞分析装置を用いて生体液を分析する場合には、通常期待された結果に比して異常な特異的な細胞の計数結果が、これらの結果の一つまたはそれ以上をさらに絞り込むために、さらなる検査が妥当とすることがある。さらには、こうした分析はある単一の集団またはファミリー内の細胞の異なる集団を正確に定量できるものではなく、これは特に、患者の特定の病態を検知し、その経過を監視することにおいては大きな欠点である。
【0006】
このように、血液試料中の選択した亜集団の細胞群、例えば白血球の計数に関するより正確な結果を得るには、補足的な分析が最も重要であるとわかる。特定の病態(免疫反応または白血病)が出現すれば、ある白血球に属する細胞集団が異常量存在することと相関することがある。
【0007】
この種の補足的分析は、従来の装置を用いて実行される分析とは異なり、マニュアルのスメア検査の後に顕微鏡下で観察する方法を取ることにある。この場合、細胞成分の同定および計数は、自動化装置を用いて得られた結果に対する追加または代替として用いられる。
【0008】
またこれらの分析には、おそらく蛍光色素を含む選択された抗体を用いて選択された標識細胞集団を識別する特異細胞標識または当該技術で既知の標識が含まれる。例えば、フローサイトメトリーですべての白血球数を分類するための抗CD45および抗CD71モノクローナル抗体を用いた標識を開示した欧州特許出願第0552707号にその旨の記載がある。国際公開第00/16103号は、抗体または抗体キットを用いてそれを蛍光分析法で検出することで、好酸球および好塩基球を識別することによってこれらを定量する方法を記載している。同じく、抗CD19、抗CD4および抗CD8抗体を用いてリンパ球集団を標識することで、それぞれB細胞、ヘルパーT細胞およびサプレッサーT細胞という亜集団を区別することができる。
【0009】
これらの分析は従来の自動的な装置を用いて得られた結果を監視および/または訂正するのに用いることができるが、こうした分析にはある程度の不正確性を伴い、自動装置を用いて得られた結果と統計学的に相関するのみであることが多い。フローサイトメトリーといった高性能の方法を用いると実質的に同じ結果が得られるが、分析が2回に分かれて実施されているため、自動装置を用いて得られた結果と直接的な相関関係は見込めず、全体としての結果の正確性が低下する。
【0010】
事実、ある一定分量の生体液の細胞成分の分析で、細胞成分の正確な計数に異常が認められた場合、ユーザーは同じ生体液の別の一定分量を対象に、2つの異なる分析システムを用いて、個別の根拠に基づく測定を行って、2回目の分析を実施することになる。すなわち、測定毎に異なる結果が得られることにより、各測定で得られた結果を数学的に相関させることが、結果を得るために必要であり、結局その結果は誤差を含む。これにより結果を解釈するが、異常な結果の真の原因を十分に同定することができないため、主観的な側面を有する。これはおそらくは試料それ自体に起因するか、装置に起因するかのいずれかで、場合によっては病態の正確な診断が不可能であることもある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はこの従来技術の欠点を改善するためになされている。
【0012】
この目的のため、下記のステップを含んだ、生体液試料に存在する細胞成分を分類し、計数する方法を提案する。
【0013】
−従来フローサイトメトリーによって実施される、細胞学的分析であって、試料のすべての細胞成分を異なる集団に分類し計数することを可能にする一連の初期結果を得る一次ステップ、および
−特有な細胞成分を、同定された細胞の特性に基づいて細胞学的に分析して、前記の細胞特性を同定するために試料の少なくとも1つの集団または亜集団を分類および計数を可能にする補足的結果を得ることができる追加ステップ。
【0014】
本発明に基づく過程は、従来フローサイトメトリーによって行われる、生体液または一定分量の生体液の従来の細胞学的分析である第1のステップを包含し、このステップは当業者に既知である、電気的および/または光学的測定手段および、細胞融解剤、細胞内物質のための染料、水性溶媒およびこれらの混合物を意味する試薬を含む。上記の測定手段から発信される信号を従来どおりに処理し、「標準化した一連の結果」、すなわち、分析の従来のパラメータを包含する一連の結果に変換する。このため、細胞成分を同定し、正確に計数することが可能になり、それらを次に種々の集団に分類する。これは例えばフランス特許出願第9701090号に記載がある。
【0015】
二次ステップまたは補足ステップで、細胞の特性を同定するのに用いることができる補足的結果を得ることができる。
【0016】
細胞成分の特有の種類または集団の数に対する異常計数の結果により、1つ以上の異常を同定することができる。本発明に基づく本過程において、これらの異常は例えば異常に多数の芽球または構造が異常なリンパ球に関連づけることができる。
【0017】
好ましい実施の形態において、まず始めに1回一次ステップが実施され、この初期結果が、同定された細胞特性に関連づけられる少なくとも1つの異常の同定を導くものである場合、操作者は一次ステップを続行し、これを最新の一連の初期結果を得るために反復して行い、同時にこの細胞特性に関連づけられる補足的結果を得るために補足ステップに取り掛かる。
【0018】
有利には、本方法はさらに、同定された細胞特性に基づき特異的な細胞を標識するステップとそれに続く細胞学的分析のステップにより、試料に含有される集団すべてを同定するためのすべての初期結果、並びに同定された細胞特性に関連づけられる集団または亜集団を同定するための補足的結果へと導かれる。
【0019】
これらの特性によって、血液中のリンパ球の亜集団のような特有の細胞成分を特異的に標識をするステップが生じ、一定分量の血液中のその数が通常期待されるものに比して異常であるため、その種々の亜集団を測定するべく、この特別な集団を分類し、計数するためのより集中的な検査が妥当とされる。
【0020】
細胞成分の標識が一旦実施されると、次には特異的に標識された細胞成分、または必要に応じて標識されていない細胞成分を明らかにする必要がある。これは、細胞学的測定の補足的ステップを実施することによってなされ、その数または存在に関連づけられる1つまたは複数の異常の原因であった細胞の集団または亜集団の細胞成分を定量および分類するための追加的結果をもたらす。上記の通り、操作者は、標識した細胞成分の補足的ステップを同時に伴う一次分析を反復し続ける。同じ一定分量の生体液で得られた一次分析ステップの反復に伴う補足的測定結果は、標的となる亜集団に対する、標準化された一連の結果の確立を可能にするものと同一の照合基準に基づいて確立される、分類および計数の結果を供給する。従って、非同一の分析方法、非一体型の装置で連続的に行われた分析で生じる誤差または正確性の欠如は取り除かれる。
【0021】
このため、細胞内物質(DNA、RNA)、特殊なタンパク質または酵素、膜構造などのような、少なくとも1つの物理化学特性に対して固有の親和性を有するために選択したマーカーを用いることによって、同じ細胞成分の異なる物理化学特性を測定することは可能である。これにより、標識されていない細胞成分と各標識された細胞成分を分類することが可能になる。このため、標識されたもしくは標識されていない細胞成分を既知の方法で検出する(下記を参照されたい)。同じく、細胞の標識により、例えばリンパ球集団のなかのB、T4およびT8リンパ球といった、細胞成分の異なる亜集団をきわめて正確に定量することが可能になる。
【0022】
結果として、本発明による方法を実施することにより、特定の病態に典型的な特定の細胞成分の存在、または生体液の単一の同じ試料におけるその異常に低い値または高い値に関連づけられる特性を同定することが可能になる。このため、特殊な集団または亜集団において細胞内の検査を行うことが可能になる。本発明に基づく方法によれば、これまでに到達されたことのない精度および信頼性を有する結果を得ることができる。なぜなら、これらの可能性に対応する補足的分析が、一連の標準化された結果へと導く分析と同時に協調して実行され、補足的結果および一連の標準化された結果に共通する照合基準の存在を保証し、それによって、特に、個別分析の欠点すべてを取り除くすることができる。
【0023】
本発明に基づく方法ではまた、異常として体系的な標準化処理を施される可能性のある、標準化された一連の結果から得られるずれの解釈における誤差の、圧倒的大部分を取り除くことができる。
【0024】
本発明による方法では、単一の操作で、完全かつ広範囲な結果を得ることができ、正確な病理学的診断を可能にするために医療従事者が指示するであろう連続的な複数かつ個別の分析の必要がない。ここでの利点は、これらの分析に伴うコストを削減することができる点である。
【0025】
同様に、同定されている病理について、その経過または治療の有効性を監視するにあたって、医療従事者にとっては、単一の参照基準に関連した一連の結果の保証された信頼性を伴って行われる、指示する分析の選択肢が増える。
【0026】
最後に、本発明による方法では、医療従事者に、標準化された一連の結果の細胞特性を検出および同定する場合において、より高い信頼性を与えることができる。
【0027】
細胞学的分析の一次ステップは、有利には、試料中に存在する細胞成分すべてを分類するための、インピーダンスを含む少なくとも1つの電気的な分類手段または回折、拡散、透過および蛍光発光を含む光学的分類手段による第1の測定手段の使用を包含する。
【0028】
さらに、この一次ステップは、試料中に存在するすべての細胞成分を分類するための1つ以上の試薬の使用を包含することができる。
【0029】
細胞学的分析の補足ステップは、有利には、生体液の試料中に存在する少なくとも1つの細胞集団または亜集団を分類および計数するための第2の測定手段の使用を包含する。
【0030】
第2の測定手段は、好ましくは、少なくとも1つの光学的分類手段の使用を包含する。このため、この第2の測定手段は、好ましくは、特に特定の波長または特定範囲の波長での、回折、透過、蛍光発光または吸光度から選択した光学的パラメータを、単一または組み合わせた形で測定することのできる、1つ以上の光学的測定方法を包含する。
【0031】
第2の測定手段は、蛍光発光とともに操作し、1つ以上の慎重に選択された波長を用いた、少なくとも1つの測定方法からなることができる。特に、第2の測定手段は、紫外線から赤外線までの範囲の選択された波長において操作可能である。
【0032】
好ましくは、特異的細胞標識ステップは、細胞特性を識別できる少なくとも1つのマーカーの使用を包含するのに対し、細胞学的分析の補足ステップは、一連の測定と同時に行われる1つまたは複数のマーカーを同定することのできる、少なくとも1つの測定方法を包含した第2の測定手段の使用を包含する。
【0033】
測定信号の処理は、データを処理し結果を集めるために好適な手段を包含するコンピュータを用いて実施することができる。これらの手段は、信号を処理して結果をグラフ状に表示するソフトウェアおよび結果の分析から得られた信号を処理するソフトウェアの、計2つのコンピュータソフトウェアからなることができる。コンピュータは特異的細胞の標識ステップを制御するための制御手段と組み合わせてもよい。
【0034】
標識ステップを実施するためには、少なくとも1つの染料と、少なくとも1つの、染料または蛍光色素と抱合させた抗体とからなるグループから選択した分子プローブを代表する、少なくとも1つの細胞マーカーを使用することができる。
【0035】
マーカーとして選択された染料は、あらかじめ規定された測定で用いられる細胞内物質のための染料とは異なるものでなくてはならない。すなわち、あらかじめ規定された測定で染料を検出するのに必要とされる波長とは異なる波長において、光学的測定技術によって検出可能でなければならない。
【0036】
少なくとも1つの抗体または抗体の混合物または抗体キットを用いた標識は、抗原・抗体反応によって従来から実施されており、好ましくは、フルオレセインまたはフィコエリトリン−シアニン5(PC5)といった、従来の染料または蛍光色素が有利にグラフトできるモノクローナル抗体を用いて実施される。
【0037】
さらに、分析ステップでは、電気的および光学的測定手段はそれぞれ、直流または交流細胞インピーダンスでの測定手段および光線の回折、分散、透過または蛍光発光から選択された測定手段である。
【0038】
本発明の範囲内において、生体液は、好ましくは、全血、希釈または未希釈血清、希釈または未希釈骨髄、脳脊髄液、尿、滑液、胸膜液などである。
【0039】
生体液の試料が血液である場合、細胞学的分析の一次ステップは、有利には、細胞計数、白血球式(leukocyte formula)および血小板計数のパラメータのすべてまたはいくつかを含む血液像を提供するのに必要な測定を包含する。
【0040】
この場合、標識ステップは、赤血球、白血球および血小板の集団から選択された血液試料の細胞成分に対する特異的なマーカー抗体の使用によって実施することができる。このため、本発明に基づく過程は、赤血球が標的とされる標識とともに白血球または血小板が標的とされる標識を行うことで実施することができ、分析における相互反応および干渉のリスクはない。
【0041】
標識ステップは有利には、血液試料の細胞集団に存在する少なくとも1つの特異的な亜集団を標識するための特異的な抗体の使用によって実施される。
【0042】
好ましくは、標識ステップは、リンパ球、好中球、好塩基球、好酸球、単球、赤血球、血小板およびこれらすべての前駆細胞から選択される少なくとも1つの亜集団を標識するための特異的な抗体の使用によって実施される。
【0043】
細胞の標識ステップは、少なくとも1つの抗体または蛍光色素と抱合した抗体の混合物とともに実施してよいのに対し、細胞学的分析の補足ステップでは、直交性の蛍光発光型(FL2)の細胞蛍光測定手段を使用する。
【0044】
細胞標識ステップは、有利には、CD3、CD4、CD8、CD9、CD10、CD11b、CD13、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD33、CD34、CD45、CD63、CD64、CD71、CD203、CRTH2、FMC7およびHLA−DRから選択された少なくとも1つの抗体を用いて実施される。
【0045】
また、細胞標識ステップは、少なくとも1つの染料、少なくとも1つの染料または蛍光色素と抱合させた抗体からなるグループから選択した分子プローブを代表する少なくとも1つの細胞マーカーを使用することができる。
【0046】
本発明のさらなる特性によれば、細胞学的分析の一次ステップおよび細胞学的分析の補足ステップは、同時に、同じフロー中で同じ細胞成分の異なる物理的特性を測定する。
【0047】
本発明による過程は、試薬と細胞マーカーを生体液と混合するステップ、そうして得た混合物を一つの分析室に移送するステップを包含することができ、それによって上述の通り、同じ生体液または一定分量の生体液で広範囲かつ同時に分析を行うことを可能にする。
【0048】
本発明による過程により、例えば血液試料では完全な血液像を得ることができる。すなわち、一連の標準化された結果の上をいく詳細な同定結果であり、血液中の細胞集団、すなわちリンパ球、単球、赤血球、顆粒球、好中球、好酸球および好塩基球、赤芽球、未熟な顆粒細胞、血小板およびその他の芽球を分類して計数し、存在するならば、期待されているリンパ球の分布と異なるといった理由で、リンパ球の集団のなかで異常な芽球の亜集団を検出し計数する可能性がある。例えば、これらのリンパ芽球は、抗CD45抗体に対する非陽性に基づき、他のリンパ球集団から単離する。
【0049】
本発明のもう一つの側面は、上述の方法を実施するための装置に関し、フローサイトメトリーによって操作する装置を包含する。これは、回折、拡散、透過および蛍光発光からなるグループの光学的パラメータ、およびインピーダンスを含む電気的パラメータから選択されたパラメータを測定することのできる少なくとも1つの測定チャネルを包含する第1の測定手段、回折、透過、蛍光発光および吸光度から選択される、光学的パラメータを測定することのできる少なくとも1つの測定チャネルを包含する二次的な分析手段および第1の測定手段および第2の測定手段から得られた結果を処理するコンピュータを有する。
【0050】
好ましい実施の形態において、第1の測定手段は、軸方向の回折センサー(FSC)、直交性拡散センサー(SSC)、直交性蛍光センサー(FL1)および抵抗率を測定する電極を包含するのに対し、第2の測定手段は直交性蛍光測定センサー(FL2)を包含する。
【0051】
本発明による装置は、よって、所定の従来のフローサイトメーターに組み込まれた第1の分析手段を包含する。有利には、これらの手段は、欧州特許第0425381号に記載のあるように、生体液の試料または一定分量の軸方向回折(FSC)、直交性拡散(SSC)、直交性蛍光発光(FL1)および抵抗率(RES)を包含するグループから選択された少なくとも1つの測定パラメータまたはチャネルを意味する。これらの第1の分析手段は従って、細胞成分の分類およびその正確な計数へと導き、それを集団に分類することを可能にする。
【0052】
有利には、一次的手段を調節して、フランス特許第0102489号に記載のあるように、細胞融解剤、細胞内物質のための染料、水性溶媒およびこれらの混合物からなるグループから選択された、生体液の細胞成分すべてを分類し計数するための少なくとも1つの試薬を組み込む。
【0053】
生体液の特定の細胞成分、特に赤血球の融解は、例えば第1アミド、クロルアミドなどであってよいイオン化および/または非イオン化洗剤を用いて実施される。融解剤の選択は、生体液の性状によって左右され、当業者は容易に決定することができる。
【0054】
細胞成分の染料は細胞内のRNAまたはDNAと結合することを意図したものである。従来はチアゾールオレンジ、チアゾールブルーなどからなる。試薬は任意には、当技術では既知の細胞成分の固定剤を包含することができる。
【0055】
本発明に基づく装置の一実施形態によれば、それはさらに以下を包含する。
−特定の細胞集団または特定の細胞成分の存在または数に対応する少なくとも1つの細胞特性を同定する手段
−同定された特性の機能としての特異的な細胞標識手段
標識手段は、好ましくは、少なくとも1つの染料、染料または蛍光色素と結合する少なくとも1つの抗体からなるグループから選択される分子プローブを意味する少なくとも1つの細胞マーカーを包含し、より好ましくは、少なくとも1つの抗体または蛍光色素をグラフトさせた抗体の混合物である。
【0056】
本発明による装置の一実施形態によれば、1つ以上の測定チャネルを構成する標識手段に適合する測定手段は、それぞれ直流または交流細胞インピーダンス測定手段および、回折、透過および蛍光発光または紫外線から赤外線の範囲の波長で標識された細胞の吸光度からなるグループから選択された少なくとも1つの測定手段である。
【0057】
好ましくは、細胞の蛍光発光に基づく測定手段は、特異的な抗体に結合した蛍光色素(FL2)の直交性の蛍光発光である。
【0058】
本発明による装置の好ましい実施の形態によれば、それは第1の測定手段および第2の測定手段から得られた結果を相関させるべく設計され、第1の測定手段および第2の測定手段から得られた結果をグラフ状に表示するコンピュータを包含する。
【0059】
有利には、コンピュータは細胞成分をそのファミリーまたはその物理的特性に応じて解釈および分類を実施するべく設計されている。
【0060】
コンピュータは測定信号を解釈するべく設計されており、上述のように、データを処理し結果を提示するのに好適な手段をさらに包含する。好ましくは種々の分析で得られた結果を保管するためのメモリーを包含する。
【0061】
こうした装置が、ルーチンな分析に加えて、検出された異常の原因であると考えられるか疑われる要素を同定し計数するのに必要とされる分析の実施における適切性の自動意思決定能力を有することができる。
【0062】
本発明の特性および利点は、下記の説明および添付の図表を参照の上、実施例による制限を設けない実施の形態により、より明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
図1では、本発明に基づいて一定分量の生体液を分析するための装置1を形成する具体的な要素を、機能図の形態で示したものである。この図はフランス特許出願第0102489号に記載のパラメータを部分的に用いている。フローサイトメトリーに基づく自動装置である装置1は、下記のパラメータおよび構成要素を有する。
−単色レーザー10
−光線を形作る装置11
−抵抗率および光学的測定による細胞の容積を測定するための循環コンテナー12
−軸方向の回折(FSC)の放射を採集するための光学的システム13
−寸法の解釈を提供する軸方向の回折(FSC)センサー14
−観察対象の細胞の構造を表現する直交性拡散(SSC)センサー15
−細胞内のRNAおよびDNAの発現を測定する直交性蛍光発光(FL1)センサー16
−蛍光色素とグラフトした抗体の反応性を測定する直交性蛍光発光(FL2)センサー17
−直交性放射を採集するための光学的システム18
−コンテナー12に組み込まれた抵抗率(RES)を測定するための電極19
−コンピュータ20
−結果を表示するシステム21
一定分量の生体液を、軸方向の回折、直交の拡散および細胞の直交性蛍光発光により光学的に測定するチャネルを包含する装置1を用いて分析する。その原理は以下に簡潔に述べる。
【0064】
最初の例では、生物学的試料の細胞を、測定コンテナー12に入れ、光源10から放射され装置11によって成形される光線が通過することにより、細胞の寸法に応じて放射の回折の程度が変化する。回折した放射光を採集するための光学的システム13を放射の直線上に置く。回折した放射光をセンサー14で採集する。その反応は細胞の回折によって左右される。
【0065】
直交性拡散の原理は、細胞成分を通過する光線の放射の拡散の測定に基づくものである。放射光はコンテナー12の出口で拡散される放射光と直交するセンサー15によって採集され、その反応は拡散の度合に比例する。
【0066】
直交性蛍光発光FL1およびFL2の測定は、それぞれ、特定の波長で染色された細胞が励起して蛍光を放射する励起波長とは異なる、特定の波長での励起、および、特異的な抗体にグラフトした蛍光色素が励起して、それが特異的な蛍光を放射するという原理に基づくものである。
【0067】
直交性放射FL1およびFL2を採集するための光学的システム18は、放射源10から放射される光と直交して置く。
【0068】
装置1も抵抗率(RES)による電気的測定のためのチャネルを包含する。この測定は、ある要素をコンテナー12に入れることで、電流が一定の電界に入れて、この要素によってこの電界で示される抵抗率が、オームの法則に従って電流を一定に保つために電圧を上昇させる必要を生じさせるという原理に基づくものである。
【0069】
コンテナー12に組み込まれた電極19は、この要素の抵抗率を測定し、それによりその容積を算出することが可能になる。
【実施例1】
【0070】
一定分量の正常な血液を、フランス特許出願第0102489号に記載があるように、フローサイトメトリーによる従来の自動分析機で分析し、白血球の同定および定量を行う。
【0071】
この分析結果を、各測定チャネルで得られた測定結果の種々の組み合わせである二次元マトリックスの形態で観察する。明瞭性を確保するため、各細胞要素を示す各マトリックスのドットは削除しておく。得られた集団のそれぞれの輪郭のみを描出する。
【0072】
図2は2つのチャネルFSCおよびSSCによって得られたマトリックスを示す。4つの集団を観察する。Lはリンパ球、Mは単球、Eは好酸球、Nは好中球を示す。図1では、集団NおよびEは明確に分離されていない。
【0073】
図3は2つのチャネルFSCおよびFL1によって得られたマトリックスを示す。集団NおよびEが出現し、集団LおよびMにはオーバーラップが認められる。
【0074】
図4は測定チャネルSSCおよびFL1によって形成したマトリックスを示す。集団NおよびEが出現し、集団LおよびMはそれぞれ完全に分離する。
【0075】
図5も2つのチャネルRESおよびFSCによって形成したマトリックスを示す。この配置では、集団LおよびEは分離しているが、集団NおよびMは分離していない。
【実施例2】
【0076】
一定分量の血液を、フランス特許第0102489号に記載がある測定チャネルを用いて、フローサイトメトリーに基づく従来の自動分析機で分析し、白血球の同定および定量を行う。
【0077】
図6は2つのチャネルFSCおよびSSCによって得られたマトリックスを示す。集団LおよびNは図2と似た特性を示してはいるが、対照的に集団Lは図2に示された正常なものに比して異常に広範囲にわたっている。これは同じく図7〜9にもそれぞれ図3〜5に示されたマトリックスに対応して認められる。これらの分析の最後に、リンパ球の集団のダイアグラム上の分布は、正常なリンパ球の集団に比して広範にわたっており、芽球といった異常な細胞を有していることが推測される。
【実施例3】
【0078】
実施例2で用いた一定分量の血液を、装置1を用いて本発明による過程によって分析する。
【0079】
分析は以下のように実施する。
【0080】
ヒトの血液試料50μlを採取し、蛍光色素としてPC5を含有する抗CD45モノクローナル抗体の溶液50μlと混合する。こうして得られた溶液を、数分間、約3〜30分間、光線が全く入らない状態で室温でインキュベートする。こうして得られた溶液を、細胞内染料としてチアゾールオレンジを含有する試薬と混合し、赤血球を融解し、一次分析ステップを実施するのに必要な細胞要素を固定する。
【0081】
ここで、レーザー10を用いるチアゾールオレンジの励起波長は488nmであり、放射波長は530nmである。この実施例では、成熟した正常な白血球を特定して標識するために抗CD45抗体を用いており、発現の強度は降順でリンパ球、好酸球、単球、好塩基球および好中球である。
【0082】
この溶液を次に分析装置1の循環コンテナー12に移送する。ユーザーはこの一定分量の分析を、種々の細胞の集団を分類し計数した従来の結果を供給する4つのチャネルおよび5番目のチャネルFL2(PC5の励起波長は488nmであり、放射波長は660nmである)で、同時にそれを実施するコンピュータ20を用いて開始する。ソフトウェアは上述のチャネルを用いて各測定から得られる結果を処理する。
【0083】
図10は2つのチャネルFSCおよびSSCによって得られたマトリックスを示す。5つの集団を観察する。Lはリンパ球、Mは単球、Eは好酸球、Bは芽球で、抗CD45抗体に対しては陰性である。
【0084】
図10では、集団NおよびEは明確に分離しておらず、集団L、MおよびBの間にはオーバーラップが認められる。
【0085】
図11は2つのチャネルFSCおよびFL1によって得られたマトリックスを示す。集団NおよびEが出現し、集団L、MおよびBの間にはオーバーラップが認められる。
【0086】
図12は測定チャネルSSCおよびFL1によって形成されたマトリックスを示す。集団NおよびEが出現し、集団Mは他の集団から分離しているが、集団BおよびLは完全に分離していない様子が認められる。
【0087】
図13も2つのチャネルRESおよびFSCによって形成されたマトリックスを示す。この配置では明確に分離している集団が存在しない。
【0088】
図14は2つのチャネルFL2およびSSCによって形成されたマトリックスを示す。このマトリックス図では、異常な芽球Bの集団をリンパ球の集団から分離することが可能である。
【0089】
本発明による装置1を用いて過程を実行することにより、芽球B(抗CD45に対して陰性)が分析対象の一定分量の血液に存在することを確認し、定量することが可能である。図14に示す補足的測定により、芽球Bを明確に分類することができる。これは血液像のあらゆる所定の測定では可能にならなかったことである。
【実施例4】
【0090】
この実施例の意図は、患者の治療の監視の範囲内で、芽球の集団が既知である血液試料中の非芽球の細胞成分を正確に計数する方法を示すものである。これまでの分析では、リンパ球の集団が異常に分布しており、さらなる検査が必要であることがすでに示されている。
【0091】
下記の分析は、リンパ球要素を同定し、正確に計数することを可能にすることを意図するものである。
【0092】
この同定は、同じ蛍光色素PC5と抱合させた抗CD19および抗CD3抗体を用いて、チャネルFL2によって標識されたリンパ球を検出することによって行う。
【0093】
芽球の集団が既知である一定分量の血液50μlを、前述の装置1で分析し、実施例3に記載の分析ステップおよび試薬を用いる。
【0094】
図15は2つのチャネルFSCおよびSSCによって得られたマトリックスを示す。3つの集団を観察する。Lは抗CD3および抗CD19抗体による標識に陽性のリンパ球、Nは好中球、Bはこれら2つの抗体に陰性のリンパ球である。集団Nは他の2つ、すなわちLおよびBから完全には区別されず、この2つの集団にはある程度のオーバーラップが認められる。これは図16〜18にもそれぞれ図3〜5に示されたマトリックスに対応して認められる。
【0095】
図19は2つのチャネルFL2およびSSCによって形成されたマトリックスを示す。このマトリックス図は検討対象の3つの集団を分離し、特に陽性のリンパ球を抗CD3および抗CD19抗体に陰性のリンパ球から、すべての白血球にわたって分離することを可能にし、それにより、正確な計数が可能になる。図19に示す補足的測定により、CD3抗体およびCD19抗体に陽性のリンパ球を明確に分類することができる。これは血液像のあらゆる所定の測定では可能でなかったことである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】好ましい実施形態に基づく分析装置を形成する、具体的な要素を表す図である。
【図2】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図3】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図4】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図5】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図6】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図7】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図8】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図9】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図10】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図11】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図12】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図13】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図14】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図15】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図16】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図17】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図18】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【図19】複数パラメータ測定のFSC、RES、SSC、FL1およびFL2によって得られた細胞の分布または二次元マトリックス図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体液試料に存在する細胞成分を分類し計数する方法であって、
−すべての細胞成分が種々の集団に分類され計数されることを可能にする一連の一次的結果を得るための、従来、フローサイトメトリーで実施していた細胞学的分析の一次ステップと、
−同定された細胞特性に基づき特有の細胞成分を細胞学的に分析し、前記試料中の少なくとも1つの細胞集団または亜集団が分類され計数されて、前記細胞特性の同定を可能にする、補足的結果を得るための補足ステップとを包含することを特徴とする方法。
【請求項2】
第1に一次ステップをそれ自体で実施し、初期結果により、同定された細胞特性に関連する少なくとも1つの異常を同定することができる場合は、前記一次ステップを再度実施し、一連の初期結果をもう一度得て、同時に前記補足ステップを実施し、この細胞特性に関連する補足的結果を得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記同定された細胞特性に基づき特異的な細胞を標識するステップをさらに包含し、その後、細胞学的分析のステップにより、前記試料に含有される集団すべてを同定した一次的結果のすべて、ならびに前記同定された細胞特性に関連した集団または亜集団を同定するための補足的結果へと導かれることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞学的分析の一次ステップが、前記試料中に存在する細胞成分すべてを分類するための第1の測定手段を用い、インピーダンスを含む少なくとも1つの電気的な分類手段または回折、拡散、透過および蛍光発光を含む光学的分類手段を包含することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記一次ステップが、前記試料中に存在するすべての細胞成分を分類するための1つ以上の試薬の使用を包含することができることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞学的分析の補足ステップが、分類し計数する生体液である前記試料中に存在する少なくとも1つの細胞の集団または亜集団を分類および計数するための第2の測定手段の使用を包含することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の測定手段が、少なくとも1つの光学的分類手段の使用を包含することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
二次的な測定手段が、回折、透過、蛍光発光または吸光度、特に、特定の波長または特定範囲の波長から選択した光学的パラメータを、単一または組み合わせたかたちで測定することのできる1つ以上の光学的測定方法を包含することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の測定手段が、蛍光発光とともに機能し、1つ以上の慎重に選択された波長を用いた、少なくとも1つの測定方法からなることができることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の蛍光発光を用いる測定手段が、紫外線から赤外線までの範囲の選択された波長において操作可能であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項3および6に記載の方法であって、これらをもとに、前記特異的細胞の標識ステップが、前記細胞特性を識別できる少なくとも1つのマーカーの使用を包含し、前記細胞学的分析の補足ステップが、一連の測定と同時に行われる1つまたは複数のマーカーを同定することのできる少なくとも1つの測定方法を包含する前記第2の測定手段の使用を包含することを特徴とする、請求項3および6に記載の方法。
【請求項12】
前記生体液の試料が
−希釈または未希釈の全血または非全血
−血清
−希釈または未希釈の骨髄
−脳脊髄液
−尿
−滑液
−胸膜液
の中から選択されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記生体液の試料が血液であり、前記細胞学的分析の一次ステップが、血球計数、白血球式および血小板計数のパラメータのすべてまたはいくつかを含む血液像を提供するのに必要な測定を包含することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記生体液の試料が血液であり、前記標識ステップが、赤血球、白血球および血小板の集団から選択された前記血液試料の細胞成分に対する特異的なマーカー抗体の使用を包含することを特徴とする、請求項3〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞標識ステップが、前記血液試料の細胞集団に存在する少なくとも1つの特異的な亜集団を標識するための特異的な抗体の使用を包含することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞標識ステップが、リンパ球、好中球、好塩基球、好酸球、単球、赤血球、血小板およびこれらすべての前駆細胞から選択される少なくとも1つの亜集団を標識するための、特異的な抗体の使用を包含することを特徴とする、請求項14および15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞標識ステップが、少なくとも1つの抗体または蛍光色素と抱合した抗体の混合物とともに実施され、前記細胞学的分析の補足ステップでは、直交性の蛍光発光型(FL2)の細胞蛍光発光を用いた測定手段を使用することを特徴とする、請求項3〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞標識ステップが、CD3、CD4、CD8、CD9、CD10、CD11b、CD13、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD33、CD34、CD45、CD63、CD64、CD71、CD203、CRTH2、FMC7およびHLA−DRから選択された少なくとも1つの抗体を用いて実施されることを特徴とする、請求項3〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞標識ステップが、少なくとも1つの染料、少なくとも1つの染料または蛍光色素と抱合させた抗体からなるグループから選択した分子プローブを代表する、少なくとも1つの細胞マーカーを使用することを特徴とする、請求項3〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞学的分析の一次ステップおよび前記細胞学的分析の補足ステップが、同時に、同じフロー中で、同じ細胞成分の、異なる物理的特性を測定することを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
フローサイトメトリーによって操作する装置(1)を包含し、回折、拡散、透過および蛍光発光からなるグループの光学的パラメータ、およびインピーダンスを含む電気的パラメータから選択されたパラメータを測定することのできる少なくとも1つの測定チャネルを包含する第1の測定手段(14、15、16、19)と、回折、透過、蛍光発光および吸光度から選択される光学的パラメータを測定することのできる少なくとも1つの測定チャネルを包含する二次的な分析手段(17)と、第1の測定手段および第2の測定手段から得られた結果を処理するコンピュータ(20)とを有することを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置。
【請求項22】
前記第1の測定手段が、軸方向の回折(FSC)センサー(14)と、直交性の拡散(SSC)センサー(15)と、直交性の蛍光発光(FL1)センサー(16)と、抵抗率(RES)とを測定する電極(19)を包含し、前記第2の測定手段が直交性の蛍光発光(FL2)センサー(17)を包含することを特徴とする、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記コンピュータ(20)が、前記第1の測定手段および第2の測定手段から得られた結果を相関させるべく設計され、前記第1の測定手段および第2の測定手段から得られた結果をグラフ状に表示することを特徴とする、請求項21および22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記コンピュータ(20)が、細胞成分のそのファミリーまたはその物理的特性に応じた解釈および分類を実施するべく設計されていることを特徴とする、請求項23に記載の装置。
【請求項1】
生体液試料に存在する細胞成分を分類し計数する方法であって、
−すべての細胞成分が種々の集団に分類され計数されることを可能にする一連の一次的結果を得るための、従来、フローサイトメトリーで実施していた細胞学的分析の一次ステップと、
−同定された細胞特性に基づき特有の細胞成分を細胞学的に分析し、前記試料中の少なくとも1つの細胞集団または亜集団が分類され計数されて、前記細胞特性の同定を可能にする、補足的結果を得るための補足ステップとを包含することを特徴とする方法。
【請求項2】
第1に一次ステップをそれ自体で実施し、初期結果により、同定された細胞特性に関連する少なくとも1つの異常を同定することができる場合は、前記一次ステップを再度実施し、一連の初期結果をもう一度得て、同時に前記補足ステップを実施し、この細胞特性に関連する補足的結果を得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記同定された細胞特性に基づき特異的な細胞を標識するステップをさらに包含し、その後、細胞学的分析のステップにより、前記試料に含有される集団すべてを同定した一次的結果のすべて、ならびに前記同定された細胞特性に関連した集団または亜集団を同定するための補足的結果へと導かれることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞学的分析の一次ステップが、前記試料中に存在する細胞成分すべてを分類するための第1の測定手段を用い、インピーダンスを含む少なくとも1つの電気的な分類手段または回折、拡散、透過および蛍光発光を含む光学的分類手段を包含することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記一次ステップが、前記試料中に存在するすべての細胞成分を分類するための1つ以上の試薬の使用を包含することができることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞学的分析の補足ステップが、分類し計数する生体液である前記試料中に存在する少なくとも1つの細胞の集団または亜集団を分類および計数するための第2の測定手段の使用を包含することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の測定手段が、少なくとも1つの光学的分類手段の使用を包含することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
二次的な測定手段が、回折、透過、蛍光発光または吸光度、特に、特定の波長または特定範囲の波長から選択した光学的パラメータを、単一または組み合わせたかたちで測定することのできる1つ以上の光学的測定方法を包含することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の測定手段が、蛍光発光とともに機能し、1つ以上の慎重に選択された波長を用いた、少なくとも1つの測定方法からなることができることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の蛍光発光を用いる測定手段が、紫外線から赤外線までの範囲の選択された波長において操作可能であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項3および6に記載の方法であって、これらをもとに、前記特異的細胞の標識ステップが、前記細胞特性を識別できる少なくとも1つのマーカーの使用を包含し、前記細胞学的分析の補足ステップが、一連の測定と同時に行われる1つまたは複数のマーカーを同定することのできる少なくとも1つの測定方法を包含する前記第2の測定手段の使用を包含することを特徴とする、請求項3および6に記載の方法。
【請求項12】
前記生体液の試料が
−希釈または未希釈の全血または非全血
−血清
−希釈または未希釈の骨髄
−脳脊髄液
−尿
−滑液
−胸膜液
の中から選択されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記生体液の試料が血液であり、前記細胞学的分析の一次ステップが、血球計数、白血球式および血小板計数のパラメータのすべてまたはいくつかを含む血液像を提供するのに必要な測定を包含することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記生体液の試料が血液であり、前記標識ステップが、赤血球、白血球および血小板の集団から選択された前記血液試料の細胞成分に対する特異的なマーカー抗体の使用を包含することを特徴とする、請求項3〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞標識ステップが、前記血液試料の細胞集団に存在する少なくとも1つの特異的な亜集団を標識するための特異的な抗体の使用を包含することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞標識ステップが、リンパ球、好中球、好塩基球、好酸球、単球、赤血球、血小板およびこれらすべての前駆細胞から選択される少なくとも1つの亜集団を標識するための、特異的な抗体の使用を包含することを特徴とする、請求項14および15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞標識ステップが、少なくとも1つの抗体または蛍光色素と抱合した抗体の混合物とともに実施され、前記細胞学的分析の補足ステップでは、直交性の蛍光発光型(FL2)の細胞蛍光発光を用いた測定手段を使用することを特徴とする、請求項3〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞標識ステップが、CD3、CD4、CD8、CD9、CD10、CD11b、CD13、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD33、CD34、CD45、CD63、CD64、CD71、CD203、CRTH2、FMC7およびHLA−DRから選択された少なくとも1つの抗体を用いて実施されることを特徴とする、請求項3〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞標識ステップが、少なくとも1つの染料、少なくとも1つの染料または蛍光色素と抱合させた抗体からなるグループから選択した分子プローブを代表する、少なくとも1つの細胞マーカーを使用することを特徴とする、請求項3〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞学的分析の一次ステップおよび前記細胞学的分析の補足ステップが、同時に、同じフロー中で、同じ細胞成分の、異なる物理的特性を測定することを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
フローサイトメトリーによって操作する装置(1)を包含し、回折、拡散、透過および蛍光発光からなるグループの光学的パラメータ、およびインピーダンスを含む電気的パラメータから選択されたパラメータを測定することのできる少なくとも1つの測定チャネルを包含する第1の測定手段(14、15、16、19)と、回折、透過、蛍光発光および吸光度から選択される光学的パラメータを測定することのできる少なくとも1つの測定チャネルを包含する二次的な分析手段(17)と、第1の測定手段および第2の測定手段から得られた結果を処理するコンピュータ(20)とを有することを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置。
【請求項22】
前記第1の測定手段が、軸方向の回折(FSC)センサー(14)と、直交性の拡散(SSC)センサー(15)と、直交性の蛍光発光(FL1)センサー(16)と、抵抗率(RES)とを測定する電極(19)を包含し、前記第2の測定手段が直交性の蛍光発光(FL2)センサー(17)を包含することを特徴とする、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記コンピュータ(20)が、前記第1の測定手段および第2の測定手段から得られた結果を相関させるべく設計され、前記第1の測定手段および第2の測定手段から得られた結果をグラフ状に表示することを特徴とする、請求項21および22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記コンピュータ(20)が、細胞成分のそのファミリーまたはその物理的特性に応じた解釈および分類を実施するべく設計されていることを特徴とする、請求項23に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2008−507966(P2008−507966A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523101(P2007−523101)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001740
【国際公開番号】WO2006/024716
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(506065013)ホリバ・エービーエックス・エスエーエス (5)
【氏名又は名称原語表記】HORIBA ABX SAS
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001740
【国際公開番号】WO2006/024716
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(506065013)ホリバ・エービーエックス・エスエーエス (5)
【氏名又は名称原語表記】HORIBA ABX SAS
【Fターム(参考)】
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